(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】絶縁電線、コイル及び車両用モーター
(51)【国際特許分類】
H01B 7/02 20060101AFI20220928BHJP
H01F 5/06 20060101ALI20220928BHJP
H01F 5/00 20060101ALI20220928BHJP
H02K 3/30 20060101ALI20220928BHJP
H02K 3/44 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
H01B7/02 A
H01F5/06 Q
H01F5/06 H
H01F5/00 D
H02K3/30
H02K3/44 Z
(21)【出願番号】P 2021028959
(22)【出願日】2021-02-25
(62)【分割の表示】P 2018508334の分割
【原出願日】2016-04-01
【審査請求日】2021-02-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(72)【発明者】
【氏名】田中 康太郎
(72)【発明者】
【氏名】菊池 英行
(72)【発明者】
【氏名】本田 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】鍋島 秀太
(72)【発明者】
【氏名】花輪 秀仁
(72)【発明者】
【氏名】船山 泰弘
【審査官】中嶋 久雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-082083(JP,A)
【文献】特開2013-253124(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/02
H01F 5/06
H01F 5/00
H02K 3/30
H02K 3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体と、
前記導体の外周に被覆され、前記導体の直上に被覆されたポリイミド層、及び前記ポリイミド層の外周に被覆された最外絶縁皮膜層としてのポリアミドイミド層の2層構造からなる絶縁皮膜層と、を備え、
前記ポリイミド層のイミド基濃度が32%であり、前記ポリアミドイミド層の厚さが20μm以上40μm以下であり、前記絶縁皮膜層の厚さに対する前記ポリアミドイミド層の厚さの比率が50%以下である場合に、
下記の条件で耐ATF性試験を行ったときの耐電圧が1.5kVより大きく、
下記の条件で部分放電開始電圧の測定を行ったときの前記部分放電開始電圧の低下率が7%以下であり、
下記の条件で可とう性試験を行ったときの前記絶縁皮膜層に割れが発生しない最小の曲げ径が20%伸長で3mmを超え5mm以下、30%伸長で4mmを超え8mm以下である、絶縁電線。
<条件>
耐ATF性試験:150℃に加熱した含水量0.5wt%のATF(合成潤滑油を10~20wt%含むATF)1300g中に、絶縁電線300mmを浸漬し、504時間、1008時間、1752時間経過時に耐圧試験(1.5kV-3分間)を行う。
部分放電開始電圧の測定:JIS C 3003に準拠する試験方法により、絶縁電線を背合わせにしたサンプルを作製し、前記サンプルの端部から10mmの位置まで絶縁皮膜層を削って端末処理部を形成し、前記端末処理部に電極を接続し、温度23℃、湿度50%の雰囲気で50Hzの電圧を印加した後、10~30V/sの割合で昇圧し、前記絶縁電線に100pCの放電が1秒間に50回発生するときの電圧値を測定し、前記測定を3回繰返して得られた3つの電圧値の平均値を部分放電開始電圧とする。
可とう性試験:20%又は30%で伸長した絶縁電線を180度曲げたときに、絶縁皮膜層に割れが発生しない最小の曲げ径を測定する。
【請求項2】
請求項
1に記載の絶縁電線からなるコイル。
【請求項3】
請求項
2に記載のコイルを備えた車両用モーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁電線、コイル及び車両用モーターに関する。
【背景技術】
【0002】
高電圧で使用されるモーター等の電気機器に用いられる絶縁電線には、部分放電(コロナ放電)開始電圧の向上が求められている(特許文献1参照)。
【0003】
また、近年、車両用モーターとして、トランスミッションと一体型となり、ATF(Automatic Transmission Fluid)で満たされた構造が用いられている。当該用途では、モーターの構成要素である絶縁電線に可とう性などの特性が求められるほか、絶縁電線の絶縁層が直接、ATFに触れる構造となるため、耐ATF性が特に求められる(特許文献2参照)。ここで、耐ATF性とは、絶縁電線が直接、ATFに触れても電気絶縁性能の低下が生じにくい特性を言う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5837397号公報
【文献】特開2015-133218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、部分放電開始電圧が高く、かつ可とう性及び耐ATF性に優れた絶縁電
線を得ることは難しく、これらの特性を充足する絶縁電線が求められている。
【0006】
また、種々の新たなATFが開発されているため、ある特定のATFに対しては耐AT
F性を有していた絶縁電線であっても、別の特定のATFに対しては耐ATF性を有さな
いという問題が生じてきている。
【0007】
そこで、本発明の目的は、部分放電開始電圧が高く、かつ可とう性及び耐ATF性に優
れた絶縁電線、当該絶縁電線からなるコイル及び当該コイルを備えた車両用モーターを提
供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するために、下記の絶縁電線、コイル及び車両用モーターを提供する。
【0009】
[1]導体と、前記導体の外周に被覆され、前記導体の直上に被覆されたポリイミド層、及び前記ポリイミド層の外周に被覆された最外絶縁皮膜層としてのポリアミドイミド層の2層構造からなる絶縁皮膜層と、を備え、下記の条件で耐ATF性試験を行ったときの耐電圧が1.5kVより大きく、下記の条件で部分放電開始電圧の測定を行ったときの前記部分放電開始電圧の低下率が7%以下であり、下記の条件で可とう性試験を行ったときの前記絶縁皮膜層に割れが発生しない最小の曲げ径が20%伸長で3mmを超え5mm以下、30%伸長で4mmを超え8mm以下である、絶縁電線。
<条件>
耐ATF性試験:150℃に加熱した含水量0.5wt%のATF(合成潤滑油を10~20wt%含むATF)1300g中に、絶縁電線300mmを浸漬し、504時間、1008時間、1752時間経過時に耐圧試験(1.5kV-3分間)を行う。
部分放電開始電圧の測定:JIS C 3003に準拠する試験方法により、絶縁電線を背合わせにしたサンプルを作製し、前記サンプルの端部から10mmの位置まで絶縁皮膜層を削って端末処理部を形成し、前記端末処理部に電極を接続し、温度23℃、湿度50%の雰囲気で50Hzの電圧を印加した後、10~30V/sの割合で昇圧し、前記絶縁電線に100pCの放電が1秒間に50回発生するときの電圧値を測定し、前記測定を3回繰返して得られた3つの電圧値の平均値を部分放電開始電圧とする。
可とう性試験:20%又は30%で伸長した絶縁電線を180度曲げたときに、絶縁皮膜層に割れが発生しない最小の曲げ径を測定する。
[2]前記ポリイミド層は、イミド基濃度が28~34%のポリイミドからなる前記[1]に記載の絶縁電線。
[3]前記ポリアミドイミド層は、厚さが20μm以上40μm以下である請求項1又は2に記載の絶縁電線。
[4]前記[1]~[3]のいずれか1つに記載の絶縁電線からなるコイル。
[5]前記[4]に記載のコイルを備えた車両用モーター。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、部分放電開始電圧が高く、かつ可とう性及び耐ATF性に優れた絶縁電線、当該絶縁電線からなるコイル及び当該コイルを備えた車両用モーターを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施の形態に係る絶縁電線の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔絶縁電線〕
図1は、本発明の実施の形態に係る絶縁電線の横断面図である。
本発明の実施の形態に係る絶縁電線10は、導体1と、導体1の外周に被覆された、最内絶縁皮膜層としての、イミド基濃度が36%以下のポリイミドからなるポリイミド層2と、ポリイミド層2の外周に被覆された、最外絶縁皮膜層としてのポリアミドイミド層3とを備え、ポリアミドイミド層3は、厚さ20μm以上40μm以下であり、絶縁皮膜層の全膜厚に対する厚さの比率が50%以下である。以下、詳細に説明する。
【0013】
(導体1)
導体1としては、絶縁電線に使用されるものであれば特に限定されることなく使用でき、例えば、銅線や銅合金線が挙げられる。これらの表面にニッケル等の金属めっきを施したものであっても良い。また、導体1は、丸線、平角線、異形状の線等の種々の形状のものが使用できるが、特に
図1に示されるような平角線が好適である。
【0014】
(ポリイミド層2)
ポリイミド層2は、導体1の外周に被覆された最内絶縁皮膜層、すなわち、導体1の直上に被覆された絶縁皮膜層である。
【0015】
ポリイミド層2は、芳香族ジアミン成分と芳香族テトラカルボン酸二無水物を反応させて得られたポリイミド前駆体をイミド化したポリイミドであって、イミド基濃度が36%以下のポリイミドからなる。ポリイミドのイミド基濃度は、28~34%であることが好ましい。なお、以下の説明において、a~bは、a以上b以下を意味する。
【0016】
イミド基濃度が36%以下のポリイミドの具体例としては、ベンゼン環を3つ以上有する芳香族ジアミンを1種以上含有したジアミン成分と、テトラカルボン酸二無水物からなる酸を脱水反応させて製造するポリイミド前駆体をイミド化したものが挙げられる。
【0017】
ベンゼン環を3つ以上有する芳香族ジアミンとしては、 2,2-ビス(4-アミノフェノキシフェニル)プロパン(BAPP)、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル(BAPB)、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(BAPS)、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE-R)、 1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE-Q)、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(APB)、 9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン(FDA)等が挙げられる。これらは単独で使用しても2種以上を併用してもよい。なお、上記したベンゼン環を3つ以上有する芳香族ジアミンと、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(ODA)とを併用してもよい。
【0018】
特に、イミド基濃度が28%から34%のポリイミドの場合は、BAPP、BAPB、BAPS等のベンゼン環を4つ以上持つ芳香族ジアミンを1種以上使用することが好ましい。
【0019】
本実施形態で使用するポリイミドは、重量平均分子量Mwが25000以上であることが好ましい。
【0020】
一方、テトラカルボン酸二無水物としては、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、4,4’-オキシジフタル酸二無水物(ODPA)等が挙げられる。これらは単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0021】
ポリイミド層2は、厚さ30~85μmであることが好ましく、55~85μmであることがより好ましく、60~80μmであることがさらに好ましい。
【0022】
(ポリアミドイミド層3)
ポリアミドイミド層3は、ポリイミド層2の外周に被覆された、最外絶縁皮膜層である。
【0023】
ポリアミドイミド層3は、塗料の不揮発分が31%のときの粘度が7000~10000mPa・sのポリアミドイミドからなることが好ましく、当該粘度が7000~9000mPa・sのポリアミドイミドからなることがより好ましい。
【0024】
上記ポリアミドイミドは、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)等のジイソシアネート成分と、トリメリット酸無水物(TMA)、テレフタル酸(TPA)、イソフタル酸(IPA)等の酸成分とからなる。
【0025】
ポリアミドイミド層3は、厚さ20μm以上40μm以下であり、絶縁皮膜層の全膜厚に対する厚さの比率が50%以下である。ポリアミドイミド層の厚さは、20~35μmであることが好ましく、20~30μmであることがより好ましい。また、絶縁皮膜層の全膜厚に対するポリアミドイミド層の厚さの比率は、15%以上45%以下であることが好ましく、20%以上40%以下であることがより好ましい。
【0026】
本実施形態で使用するポリアミドイミドは、重量平均分子量Mwが50000以上であることが好ましい。
【0027】
絶縁電線10は、上記ポリイミド層2と上記ポリアミドイミド層3の間にその他の絶縁層を備えていても良いが、上記ポリイミド層2と上記ポリアミドイミド層3の2層構造からなる絶縁皮膜層を備えた絶縁電線(エナメル線)であることが好ましい。
【0028】
ポリイミド層2は、導体1上に、絶縁塗料を塗布し、焼付けることにより形成できる。
また、ポリアミドイミド層3は、ポリイミド層2上に、絶縁塗料を塗布し、焼付けることにより形成できる。所望の厚さとなるまで、塗布と焼付けを繰り返し行なう。
【0029】
絶縁塗料は、有機溶剤と、有機溶剤に溶解した前述のポリイミド又はポリアミドイミドとを含む。絶縁塗料の製造は、例えば公知の二段階合成法や高温溶液重合法、イソシアネート法を用いる一段階合成法により行なうことができる。
【0030】
有機溶剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、クレゾール、γ-ブチロラクトン、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルイミダゾリジノン(DMI)、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノンが挙げられる。これらは、単独で使用しても複数種の溶剤を併用してもよく、希釈して用いてもよい。
【0031】
〔コイル〕
本発明の実施の形態に係るコイルは、本発明の実施の形態に係る上記絶縁電線からなる。
【0032】
本発明の実施の形態に係るコイルの用途としては、車両用モーターが好適なものとして挙げられるが、その他のモーターや発電機等にも使用できる。
【0033】
〔車両用モーター〕
本発明の実施の形態に係る車両用モーターは、本発明の実施の形態に係る上記コイルを備える。
【0034】
車両用モーターとしては、コイルとATF(Automatic Transmission Fluid)が直接に触れる構造のトランスミッション一体型車両用モーターが好適なものとして挙げられる。特にATFとして合成潤滑油を含むATFを使用したものが使用でき、この場合においても耐ATF性を発揮する。例えば、合成潤滑油を10~20wt%含有するATFが挙げられる。
【実施例】
【0035】
以下に、本発明を実施例に基づいて更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0036】
表1(実施例1~5、比較例1~5)に示す構成の絶縁皮膜層を備えた
図1の構造(但し、比較例2、4はポリイミド層のみ)の絶縁電線(エナメル線)を製造した。導体としては、純銅からなる平角線を使用した。
【0037】
ポリイミド層(下層)を構成するポリイミドとしては、イミド基濃度が32%のポリイミド(ジアミン成分として、BAPBとODAをBAPB:ODA=20:80の割合(質量比)で含有し、酸成分としてPMDAとBPDAをPMDA:BPDA=70:30の割合(質量比)で含有するもの)を用いた。各絶縁皮膜塗料の有機溶剤としては、DMAcを用いた。
【0038】
ポリアミドイミド層(上層)を構成するポリアミドイミドとしては、塗料の不揮発分が31%で、粘度が8000mPa・sのポリアミドイミドを用いた。各絶縁皮膜塗料の有機溶剤としては、NMPを用いた。
【0039】
製造した各絶縁電線(エナメル線)に対して、下記の耐ATF性試験、部分放電開始電圧の測定及び可とう性試験を行った。結果を表1に示す。
【0040】
〔耐ATF性試験〕
150℃に加熱した含水量0.5wt%のATF1300g中に、絶縁電線(エナメル線)300mmを浸漬し、504時間、1008時間、1752時間経過時に耐圧試験(1.5kV-3分間)を行い、耐電圧1.5kV以下のサンプルは不合格とした。サンプル数はそれぞれ10本であり、表1中の数字は10サンプル中の不合格数である。1752時間経過時に不合格数が0本である場合を◎(合格)、1~2本である場合を〇(合格)、3本以上である場合を×(不合格)と評価した。なお、ATFとしては、合成潤滑油を10~20wt%含むものを用いた。
【0041】
〔部分放電開始電圧の測定〕
JIS C 3003に準拠する試験方法により、絶縁電線(エナメル線)を背合わせにしたサンプルを作製した。次に、サンプルの端部から10mmの位置まで絶縁皮膜を削って端末処理部を形成した。次に、端末処理部に電極を接続し、温度23℃、湿度50%の雰囲気で50Hzの電圧を印加した。その後、10~30V/sの割合で昇圧し、絶縁電線に100pCの放電が1秒間に50回発生するときの電圧値を求めた。これを3回繰返し、3つの電圧値の平均値を部分放電開始電圧とした。
【0042】
実施例1~3、比較例1及び3では、絶縁皮膜層がポリイミド層(100μm)のみであるとき(比較例2)の部分放電開始電圧(PDIV)に対するPDIV低下率で評価し、実施例4では、絶縁皮膜層がポリイミド層(60μm)のみであるとき(比較例4)のPDIVに対するPDIV低下率で評価し、実施例5では、絶縁皮膜層がポリイミド層(80μm)のみであるとき(比較例、表中に記載せず)のPDIVに対するPDIV低下率で評価し、比較例5では、絶縁皮膜層がポリイミド層(70μm)のみであるとき(比較例、表中に記載せず)のPDIVに対するPDIV低下率で評価した。PDIV低下率が5%以内である場合を◎(合格)、5%を超え7%以内である場合を〇(合格)、7%を超える場合を×(不合格)と評価した。なお、比較例2、4では、PDIV低下率の評価基準であるため「-」(評価せず)とした。
【0043】
〔可とう性試験〕
あらかじめ特定の割合(20%又は30%)で伸長した絶縁電線(エナメル線)を180度曲げたときに、絶縁皮膜に割れが発生しない最小の曲げ径(導体の直径)を求めた。「割れ」は目視で判定した。最小の曲げ径(直径)が、20%伸長で3mm以下、30%伸長で4mm以下である場合を◎(合格)、20%伸長で3mmを超え5mm以下、30%伸長で4mmを超え8mm以下である場合を〇(合格)、20%伸長で5mmを超える、30%伸長で8mmを超える場合を×(不合格)と評価した。
【0044】
〔総合評価〕
耐ATF性試験、部分放電開始電圧の測定及び可とう性試験のいずれにおいても評価が◎又は〇であるものは〇(合格)とし、いずれかの評価において×があるものは×(不合格)とした。
【0045】
【0046】
表1より、ポリアミドイミド層(上層)が20μm以上40μm以下ならば、耐ATF性について所望の性能が得られることが分かる。
【0047】
また、ポリアミドイミド層の比率が低いほどPDIV低下率が低く(PDIVが高く)、ポリアミドイミド層が20μm以上40μm以下において、ポリアミドイミド層比50%以下で、PDIV低下率が7%以内であった。
【0048】
また、ポリアミドイミド層が20μm以上40μm以下において、ポリアミドイミド層比50%以下で、可とう性評価が合格であった。
【0049】
なお、本発明は、上記実施の形態及び実施例に限定されず種々に変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0050】
10:絶縁電線(エナメル線)、1:導体、2:ポリイミド層、3:ポリアミドイミド層