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特許7147941磁気計測システム、及び磁気センサの校正方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】磁気計測システム、及び磁気センサの校正方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 33/02 20060101AFI20220928BHJP
   G01R 35/00 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
G01R33/02 X
G01R33/02 D
G01R33/02 Q
G01R35/00 M
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021140273
(22)【出願日】2021-08-30
(62)【分割の表示】P 2018077184の分割
【原出願日】2018-04-12
(65)【公開番号】P2021182016
(43)【公開日】2021-11-25
【審査請求日】2021-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000116655
【氏名又は名称】愛知製鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129654
【弁理士】
【氏名又は名称】大池 達也
(72)【発明者】
【氏名】山本 道治
(72)【発明者】
【氏名】長尾 知彦
(72)【発明者】
【氏名】青山 均
【審査官】永井 皓喜
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-194531(JP,A)
【文献】特開平11-52036(JP,A)
【文献】特開平3-130804(JP,A)
【文献】特開2000-193728(JP,A)
【文献】特開2000-227998(JP,A)
【文献】特開2002-243815(JP,A)
【文献】特開2009-192510(JP,A)
【文献】特開2015-55520(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 33/02
G01R 35/00
G01V 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気センサを用いて磁気を計測する磁気計測システムであって、
前記磁気センサには、通電した電流に応じて磁界を発生させる磁界発生部が付設されており、
該磁界発生部に電流を供給する回路と、
該磁界発生部に供給される電流の大きさを計測する回路と、
前記磁界発生部に通電する電流と、前記磁気センサに作用する磁気と、の関係である磁気出力特性を表す磁界発生部の特性情報を記憶する記憶部と、
前記記憶部により記憶される前記磁界発生部の特性情報を参照して、前記磁界発生部に通電する電流の変化量である電流差分値Aに起因して前記磁気センサに作用する磁気の変化量である磁気差分値Aを推定する推定部と、
前記磁界発生部に作用する前記電流差分値A分の電流の変化に応じて前記磁気センサが出力するセンサ出力の変化量である出力差分値Aと、前記推定部が前記電流差分値Aについて推定する磁気差分値Aと、の比率を調整することで磁気センサを校正する校正部と、を備える磁気計測システム。
【請求項2】
請求項1において、前記記憶部が記憶する前記磁界発生部の特性情報は、前記磁界発生部に通電する電流の変化量である電流差分値と、前記磁気センサに作用する磁気の変化量である磁気差分値と、の組み合わせの情報である磁気計測システム。
【請求項3】
請求項1または2において、前記磁界発生部は、電線が巻回されたコイルを含み、該コイルへの通電に応じて磁界を発生させる磁気計測システム。
【請求項4】
請求項3において、前記磁気センサは、感磁体としての磁性体ワイヤと、該磁性体ワイヤの周囲に電線が巻回されたコイルと、を含み、
当該磁気センサのコイルと、前記磁界発生部のコイルとは、巻数を除く仕様が共通している磁気計測システム。
【請求項5】
磁気を計測する磁気センサの校正方法であって、
通電した電流に応じて磁界を発生させる磁界発生部が付設されていると共に、
前記磁界発生部に通電する電流と、前記磁気センサに作用する磁気と、の関係である磁気出力特性を表す磁界発生部の特性情報を記憶する記憶部が付設された磁気センサについて、
前記磁界発生部に電流を供給するステップと、
前記磁界発生部に供給された電流の大きさを計測するステップと、
前記記憶部により記憶される前記磁界発生部の特性情報に基づき、前記磁界発生部に通電する電流の変化量である電流差分値Aに起因して前記磁気センサに作用する磁気の変化量である磁気差分値Aを推定する磁気推定ステップと、
前記磁界発生部に作用する前記電流差分値A分の電流の変化に応じて前記磁気センサが出力するセンサ出力の変化量である出力差分値Aと、前記磁気推定ステップで前記電流差分値Aについて推定される磁気差分値Aと、の比率を調整することで前記磁気センサを校正する校正ステップと、を実施する磁気センサの校正方法。
【請求項6】
請求項5において、前記記憶部が記憶する前記磁界発生部の特性情報は、前記磁界発生部に通電する電流の変化量である電流差分値と、前記磁気センサに作用する磁気の変化量である磁気差分値と、の組み合わせの情報である磁気センサの校正方法。
【請求項7】
請求項5または6において、前記磁気センサに作用する磁気を基準量の分だけ変化させたときの該磁気センサのセンサ出力の基準となる変化量を計測することで、前記磁気センサに作用する磁気と、前記磁気センサが出力するセンサ出力と、の関係であるセンサ出力特性を表す磁気センサの特性情報を取得するセンサ特性取得ステップと、
前記磁界発生部に通電する電流を変化させたときに前記磁気センサに作用する磁気を計測し、当該磁界発生部に通電する電流の変化量である電流差分値Bに応じて該磁気センサが出力するセンサ出力の変化量である出力差分値Bを取得する磁気計測ステップと、
前記磁気センサのセンサ出力特性を表す特性情報を参照して、前記磁気計測ステップで取得された出力差分値Bに対応する磁気差分値Bを推定すると共に、当該磁気差分値Bと前記電流差分値Bとの組み合わせを、前記磁界発生部の磁気出力特性を表す特性情報として取得し、前記記憶部に記憶させる磁気出力特性取得ステップと、を実施する磁気センサの校正方法。
【請求項8】
請求項7において、前記磁気センサの特性情報は、前記基準量に当たる磁気差分値Cと、前記磁気センサが出力するセンサ出力の基準となる変化量である出力差分値Cと、の組み合わせの情報であり、
前記センサ特性取得ステップは、前記磁気センサにおける前記磁気差分値Cと前記出力差分値Cとの比率を調整する校正処理を含んでいる磁気センサの校正方法。
【請求項9】
請求項5~8のいずれか1項における磁気センサは、請求項1~4のいずれか1項に記載されたものである磁気センサの校正方法。
【請求項10】
請求項1~4のいずれか1項において、前記磁気センサを複数有すると共に、少なくともいずれか2つの磁気センサの間で磁気計測値の差分を取得する回路を含み、
前記校正部は、上記いずれか2つの磁気センサについて、比率が一致するように当該比率を調整する磁気計測システム。
【請求項11】
請求項5~9のいずれか1項において、前記磁気センサは、前記磁気センサを複数備えると共に、少なくともいずれか2つの磁気センサの間で磁気計測値の差分を取得する回路を有するユニットを構成する磁気センサであって、
前記校正ステップは、上記いずれか2つの磁気センサについて、比率が一致するように当該比率を調整するステップである磁気センサの校正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気センサを利用して磁気を計測する磁気計測システム、及び磁気センサの校正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両に取り付けた複数の磁気センサを用いて道路に敷設された磁気マーカを検出するための磁気マーカ検出方法の提案がある(例えば下記の特許文献1参照。)。この磁気マーカ検出方法では、複数の磁気センサのうちの2つ以上の磁気センサの出力値の差分を求めることで外乱磁気の影響を抑制し、磁気マーカの検出精度を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-083189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の磁気マーカ検出方法では、次のような問題がある。すなわち、各磁気センサの出力特性に個体差があると、個体差に起因する出力値のばらつき誤差が差分演算によって増幅されて大きな誤差となることから、車両の使用期間において定期的に磁気センサを校正する必要があり、車両のユーザー側の負担が高くなるおそれがあるという問題がある。
【0005】
本発明は、前記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、磁気センサを利用して精度高く磁気を計測するための磁気計測システム及び磁気センサの校正方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、磁気センサを用いて磁気を計測する磁気計測システムであって、
前記磁気センサには、通電した電流に応じて磁界を発生させる磁界発生部が付設されており、
前記磁界発生部に通電する電流と、前記磁気センサに作用する磁気と、の関係である磁気出力特性を表す磁界発生部の特性情報を記憶する記憶部と、
前記記憶部により記憶される前記磁界発生部の特性情報を参照して、前記磁界発生部に通電する電流の変化量である電流差分値Aに起因して前記磁気センサに作用する磁気の変化量である磁気差分値Aを推定する推定部と、
前記磁界発生部に作用する前記電流差分値A分の電流の変化に応じて前記磁気センサが出力するセンサ出力の変化量である出力差分値Aと、前記推定部が前記電流差分値Aについて推定する磁気差分値Aと、の比率を調整することで磁気センサを校正する校正部と、を備える磁気計測システムにある。
【0007】
本発明の一態様は、磁気を計測する磁気センサの校正方法であって、
通電した電流に応じて磁界を発生させる磁界発生部が付設されていると共に、
前記磁界発生部に通電する電流と、前記磁気センサに作用する磁気と、の関係である磁気出力特性を表す磁界発生部の特性情報を記憶する記憶部が付設された磁気センサについて、
前記記憶部により記憶される前記磁界発生部の特性情報に基づき、前記磁界発生部に通電する電流の変化量である電流差分値Aに起因して前記磁気センサに作用する磁気の変化量である磁気差分値Aを推定する磁気推定ステップと、
前記磁界発生部に作用する前記電流差分値A分の電流の変化に応じて前記磁気センサが出力するセンサ出力の変化量である出力差分値Aと、前記磁気推定ステップで前記電流差分値Aについて推定される磁気差分値Aと、の比率を調整することで前記磁気センサを校正する校正ステップと、を実施する磁気センサの校正方法にある。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、磁界発生部の特性情報に基づき、磁界発生部が磁気センサに作用する磁気差分値の推定が可能である。そして本発明では、磁気センサに作用する磁気差分値を推定した結果を利用して、磁気センサの校正を可能としている。
【0009】
以上のように本発明によれば、付設された磁界発生部を利用して校正された磁気センサにより、精度の高い磁気計測を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1における、センサアレイを取り付けた車両の正面図。
図2】実施例1における、磁気マーカが敷設された車線を示す俯瞰図。
図3】実施例1における、センサアレイの構成を示すブロック図。
図4】実施例1における、磁気センサ及びキャリブレーション回路の構成を示すブロック図。
図5】実施例1における、検出ユニットの構成を示すブロック図。
図6】実施例1における、磁気マーカを検出するための処理の流れを示すフロー図。
図7】実施例1における、メンテナンスモード下の処理を実施するための装置の説明図。
図8】実施例1における、メンテナンスモード下の処理の流れを示すフロー図。
図9】実施例1における、通常モード下の処理の流れを示すフロー図。
図10】実施例1における、磁気センサの校正処理の説明図((a)校正前の磁気センサのセンサ出力特性、(b)校正後の磁気センサのセンサ出力特性)。
図11】実施例2における、アモルファスワイヤに沿って並列配置されたピックアップコイルと磁界発生コイルを示す説明図。
図12】実施例2における、コイルの形成方法を説明するための参照図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明における磁界発生部に作用する電流差分値は、通電する電流の変化量である。例えば、磁界発生部への非通電状態から通電状態への切換を行う場合には、通電する電流値がゼロの状態から通電状態下の電流値に切り換わるので、電流差分値は、通電状態下の電流値そのものとなる。
【実施例
【0012】
本発明の実施の形態につき、以下の実施例を用いて具体的に説明する。
(実施例1)
本例は、磁気センサを用いて磁気を計測する磁気計測システム、及び磁気センサの校正方法に関する例である。この内容について、図1図10を用いて説明する。
【0013】
磁気計測システムの一例をなすマーカ検出装置1は、図1及び図2のごとく、道路に敷設された磁気マーカ10を検出するために車両5に組み込まれる車載装置である。磁気マーカ10は、例えば、車両5が走行する車線100の中央に沿うように路面100Sに敷設される。この磁気マーカ10は、例えば、直径20mm、高さ28mmの円柱状をなし、路面100Sに穿設された収容孔100Hに収容されて埋設される。
【0014】
(1)マーカ検出装置の構成
マーカ検出装置1は、図1及び図2のごとく、複数の磁気センサSnを含むセンサアレイ11と、図示しないCPU(central processing unit)等を内蔵する検出ユニット12と、を組み合わせた装置である。特に本例のセンサアレイ11は、磁気センサ10の校正機能を備えている。
【0015】
センサアレイ11は、車両5の底面に当たる車体フロア50に取り付けられる。本例の車両5の場合、路面100Sを基準とした取付け高さが約200mmとなっている。
検出ユニット12は、センサアレイ11が出力するセンサ信号に処理を施して磁気マーカ10を検出するユニットである。検出ユニット12による検出結果は、例えば車両5側の図示しないECU等に入力され、車線を維持して車両5が走行するための自動操舵制御や車線逸脱警報など各種の制御に利用される。
【0016】
(1.1)センサアレイの構成
センサアレイ11は、図3のごとく、15個のセンサチップ2が一直線上に配置されたユニットである。センサアレイ11は、15個のセンサチップ2のほか、差分回路Dn(nは1~15の自然数。)、差分回路Gm(mは1~14の自然数。)、キャリブレーション回路110等を含めて構成されている。
【0017】
センサチップ2は、磁気センサSnと磁界発生コイル(磁界発生部の一例)Cnとが1個ずつ組み込まれ、さらに電子回路が組み込まれて1チップ化された電子部品である。電子回路としては、後述するパルス回路22や信号処理回路24等が組み込まれている。センサアレイ11では、15個のセンサチップ2を一直線上に配置することで、15個の磁気センサSnが一直線上に配列された態様が実現されている。また、磁界発生コイルCnが組み込まれたセンサチップ2を採用することで、各磁気センサSnに対して磁界発生コイルCnが個別に付設された態様が実現されている。
【0018】
センサアレイ11は、磁気センサS1が車両5の左側(右ハンドル車の助手席側)に位置し、右側に向かって番号順に並ぶように車幅方向に沿って取り付けられている。センサアレイ11における磁気センサSnの間隔は、隣り合う2つの磁気センサが磁気マーカ10の磁気を同時に検出できるように70mmに設定されている。このような間隔を設定すれば、隣り合う2つの磁気センサの出力値、あるいは出力値に基づく演算値の差分演算等により車幅方向の勾配を表す差分値を算出できる。
【0019】
差分回路Dnは、図3のごとく、各磁気センサSnの出力値について、時間方向の勾配を表す差分演算値を演算する回路である。差分回路Dnは、時間的に先行する前回の磁気計測(サンプリング)時の出力値を記憶しており、時間的に後続する今回の出力値から前回の出力値を差し引くことで時間方向の勾配を表す時間差分値を演算する。
【0020】
差分回路Gmは、隣り合う磁気センサSnに対応する2つの差分回路Dnの時間差分値について、一方の時間差分値から他方の時間差分値を差し引くことにより、車幅方向の勾配を表す差分演算値である車幅方向差分値を演算する回路である。
【0021】
センサアレイ11は、14個の差分回路Gmによる差分演算値(車幅方向差分値)をセンサ信号として出力する。センサアレイ11は、14個の差分回路Gmの差分演算値を同時に出力できるよう、14チャンネルの出力ポートを備えている。なお、本例のセンサアレイ11は、車両5の高速走行に対応できるように3kHzの周期で磁気計測を実行し、磁気計測を実施する毎にセンサ信号を検出ユニット12に入力する。
【0022】
センサアレイ11が備えるセンサチップ2では、図4のごとく、CoFeSiB系合金製のほぼ零磁歪であるアモルファスワイヤ(磁性体ワイヤ)20と、このアモルファスワイヤ20の周囲に巻回されたピックアップコイル(コイル)21と、を含むMI(Magneto-Impedance)素子を利用して磁気センサSnが構成されている。磁気センサSnは、磁束密度の測定レンジが±0.6ミリテスラであって、測定レンジ内の磁束分解能が0.02マイクロテスラという高感度のセンサである。このような高感度は、アモルファスワイヤ20のインピーダンスが外部磁界に応じて敏感に変化するというMI効果により実現されている。
【0023】
MI素子は、アモルファスワイヤ20にパルス電流を通電したときにピックアップコイル21に発生する電圧を計測することで、アモルファスワイヤ20に作用する磁気を検出する。このMI素子は、感磁体であるアモルファスワイヤ20の軸方向に検出感度を有している。なお、センサアレイ11は、各磁気センサSnのアモルファスワイヤ20が車幅方向に沿うように車両5に組み付けられている。
【0024】
センサチップ2に組み込まれたパルス回路22(図4)は、アモルファスワイヤ20に通電するパルス電流の元となるパルス信号を生成する回路である。
信号処理回路24(図4)は、パルス信号に連動して開閉する同期検波器241を利用してピックアップコイル21の誘起電圧を取り出し、増幅器242がその誘起電圧を増幅する回路である。信号処理回路24は、増幅後の誘起電圧を磁気センサSnの出力値とし、差分回路Dn(図3)に入力する。なお、磁気センサSnの出力値は、キャリブレーション回路110にも入力される。信号処理回路24の増幅器242は、キャリブレーション回路110による制御により増幅率を調整可能である。
【0025】
各センサチップ2の磁界発生コイルCnは、電線が巻回されて形成されたコイルであり、互いに電気的な直列をなすように接続されている。磁界発生コイルCnは、キャリブレーション回路110による通電に応じて磁界を発生し、磁気センサSnに磁気を作用する。センサアレイ11が備える磁気センサSnの校正機能は、この磁界発生コイルCnを利用して実現される。電線が巻回されたコイルである磁界発生コイルCnは、通電電流の大きさに対する磁気量の線形性が高いという特性があるので、磁気センサSnの校正に好適である。
【0026】
各磁界発生コイルCnは、設計仕様が共通していると共に、磁気センサSnとの相対的な位置関係を規定する組込仕様も共通している。また、直列に接続された各磁界発生コイルCnには、キャリブレーション回路110から供給される電流が等しく通電される。したがって、設計上は、各磁界発生コイルCnが対応する磁気センサSnに対して等しく磁気を作用できる。しかしながら、各磁界発生コイルCnの磁気出力特性のばらつきは不可避であり、さらに、磁気センサSnとの位置関係のばらつきも不可避である。そのため、各磁界発生コイルCnが対応する磁気センサSnに作用する磁気量には、ばらつき誤差が生じてくる。
【0027】
キャリブレーション回路110(図4)は、磁界発生コイルCnへの通電等を実行するコイル駆動部114と、磁気センサSnの校正処理等を実行する校正部112と、を含めて構成されている。校正部112は、CPU、ROM(read only memory)・RAM(random access memory)・フラッシュROM、I/Oなどを含めて構成されている。この校正部112は、磁気センサSnを校正するために必要となる磁界発生コイルCnの特性情報(磁気出力特性)を記憶する記憶部、磁界発生コイルCnに作用する電流差分値に起因して磁気センサSnに作用する磁気差分値を推定する推定部、等としての機能を備えている。ここで、電流差分値は、磁界発生コイルCnに通電する電流の変化量である。磁気差分値は、磁気センサSnに作用する磁気の変化量である。
【0028】
コイル駆動部114は、磁界発生コイルCnに電流を供給する定電流回路114Aと、供給電流の電流値を計測する電流計測回路114Bと、を含めて構成されている。定電流回路114Aは、キャリブレーション回路110の制御に応じて磁界発生コイルCnに電流を供給する。電流計測回路114Bは、計測した磁界発生コイルCnの電流値を校正部112に入力する。
【0029】
校正部112は、ROMから読み出したプログラムをCPUが処理することで、少なくとも2種の動作モードを実行可能である。動作モードとしては、車両5の使用期間中に実行される通常モード、及び工場出荷時やメンテナンス作業時のメンテナンスモード、がある。通常モードとメンテナンスモードとの切替は、例えば、外部接続されたメンテナンス装置61(図7参照。)の制御により実行される。
【0030】
通常モードは、車両5の使用期間において各磁気センサSnを校正するための動作モードである。メンテナンスモードは、ヘルムホルツコイル60(図7参照。)の基準磁気を利用して各磁界発生コイルCnの磁気出力特性(特性情報)を特定するための動作モードである。このメンテナンスモードによって特定された各磁界発生コイルCnの特性情報(後述)は、フラッシュROM等を利用してキャリブレーション回路110(校正部112)に設けられた記憶部により記憶され、磁気センサSnの校正に利用される。なお、各動作モードの内容については、図8及び図9のフロー図などを参照して後で説明する。
【0031】
ここで、図7のヘルムホルツコイル60は、同軸上で離隔して配置された共通仕様の2つの円形コイルを含み、2つの円形コイルの間隔がコイルの半径と等しいコイルシステムである。このヘルムホルツコイル60では、同じ向きの等しい電流を2つの円形コイルに対して通電することで均一性の高い磁場を生成できる。ヘルムホルツコイル60が生成する磁気は、基準の磁気量である基準磁気として利用可能である。なお、ヘルムホルツコイル60の外周側に大径のコイルを同芯配置して磁場の均一性を一層高めたマックスウェルコイルを利用することも良い。
【0032】
(1.2)検出ユニットの構成
検出ユニット12は、図5のごとく、各種の演算を実行するCPUのほか、ROMやRAMなどのメモリ素子等が実装された電子基板(図示略)を備えるユニットである。この検出ユニット12は、センサアレイ11が出力する14チャンネルのセンサ信号の一斉取り込みに対応している。
【0033】
検出ユニット12は、センサアレイ11が出力するセンサ信号に基づく時系列データについてフィルタ処理を施すフィルタ処理回路125と、マーカ検出処理を実行する検出処理回路127と、を備えている。また、この検出ユニット12には、センサアレイ11が出力するセンサ信号を格納するデータエリアM1~M14(適宜Mmと記載)、フィルタ処理回路125のフィルタ出力値を格納するデータエリアH1~H14(適宜Hmと記載)が設けられている。
【0034】
データエリアMmは、上記のようにセンサアレイ11が3kHz周期で出力する14チャンネルのセンサ信号が表すデータを順次、記憶し、チャンネル毎の時系列データとして格納する記憶エリアである。
フィルタ処理回路125は、データエリアMmに格納された14チャンネルの時系列データについて、チャンネル毎にフィルタ処理を施す回路である。このフィルタ処理に適用するフィルタは、低周波成分を抑圧あるいは遮断し高周波成分を通過させるハイパスフィルタである。
【0035】
(2)マーカ検出装置の動作
マーカ検出装置1の動作として、(2.1)磁気マーカ10の検出動作、を概説した後、(2.2)磁気センサSnの校正動作、の内容を説明する。なお、(2.2)磁気センサSnの校正動作には、上記したように(2.2.1)メンテナンスモード下の処理と、(2.2.2)通常モード下の処理と、がある。
【0036】
(2.1)磁気マーカの検出動作
磁気マーカ10を検出するに当たって、検出ユニット12は、図6のように、例えば3kHzの周期で各磁気センサSnによる磁気計測が実行されるようにセンサアレイ11を制御する(S101)。各磁気センサSnの出力値Rnは、まず、差分回路Dn(図3)に入力され、磁気センサSnの出力値Rnの時間方向の勾配を表す時間差分値が求められる(S102)。
【0037】
各磁気センサSnの時間差分値は、車幅方向の差分を演算する差分回路Gm(図3)に入力される。例えば、差分回路G1には、差分回路D1及びD2の時間差分値が入力され、D2の時間差分値からD1の時間差分値を差し引く差分演算が実行される(S103)。差分回路Gmによる車幅方向の差分演算値である車幅方向差分値は、センサアレイ11において隣り合う2つの磁気センサSnに係る時間差分値の差分の値であり、時間差分値の車幅方向の勾配を示している。
【0038】
ここで、差分回路Dn、差分回路Gmによる図6中のS102やS103の差分演算は、各磁気センサSnに対して一様に作用するコモン磁気ノイズの除去に極めて有効である。コモン磁気ノイズは、地磁気だけでなく、例えば鉄橋や他の車両などのサイズ的に大きな磁気発生源からも生じる可能性が高い。大きな磁気発生源の場合、N極からS極への磁界ループが非常に大きくなるため、両極の中間的な位置で磁界が一様に近づき、各磁気センサSnに作用する磁気が一様に近いコモン磁気ノイズの態様を呈する。上記のS102、S103の差分演算によれば、このようなコモン磁気ノイズを効率良く除去できる。
【0039】
センサアレイ11は、差分回路Gmによる車幅方向差分値よりなる14チャンネルのセンサ信号を一斉に出力する。検出ユニット12は、このセンサ信号に基づくチャンネル毎の時系列データをデータエリアMm(図5)に格納する。検出ユニット12は、新たなセンサ信号を取得したとき、データエリアMmに格納されたデータのうち、最も古いデータを消去すると共にデータエリアMmの各データを順送りして空き領域を設け、新たに取得したセンサ信号が表すデータをその空き領域に格納する。これによりデータエリアMmにおいて、差分回路Gmによる車幅方向差分値の過去の所定期間に亘る時系列データが生成される。
【0040】
検出ユニット12は、データエリアMmに格納されたチャンネル毎の時系列データをフィルタ処理回路125に入力する。フィルタ処理回路125は、低周波成分を遮断し高周波成分を通過させるフィルタ処理(ハイパスフィルタ処理)を実行し(図6中、S104)、フィルタ出力値をデータエリアHmに格納する。そして、検出ユニット12は、データエリアHmに格納されたフィルタ出力値を利用して磁気マーカ10を検出するためのマーカ検出処理を実行する(S105)。
【0041】
このマーカ検出処理を実行する検出ユニット12は、例えば、データエリアHmに格納されたフィルタ出力値に関する閾値処理等により磁気マーカ10に由来するフィルタ出力値を抽出し、これにより、磁気マーカ10を検出する。さらに、例えば閾値を超えるフィルタ出力値がデータエリアH1~H14のうちのいずれに属するか等に基づいて、磁気マーカ10の車幅方向の相対位置を特定する。
【0042】
例えば橋やトンネルなどの大きな磁気発生源の場合、上記のように図6のS102やS103の差分演算が、一様に作用するコモン磁気ノイズ等の外部磁気を抑圧できるという一定の効果を発揮する。しかしながら、大きな磁気発生源であっても磁極となる端部の周辺では、磁力線がループ状の経路をなす磁界が形成されて磁気勾配が生じる。磁気勾配が生じていれば、S102やS103の差分演算のみで除去することは難しくなる。
【0043】
大きな磁気発生源の周辺磁界と、小さな磁気発生源の周辺磁界とでは、磁極間距離の違いによって磁気勾配の変化率が異なってくる。すなわち、磁極間の距離が長い大きな磁気発生源の周辺磁界では、一方の磁極の磁気勾配が他方の磁極の磁気勾配に遷移するまでの距離が長く、磁極となる端部の周辺であっても、磁気勾配の変化が緩やかである。一方、磁極間の距離が短い小さな磁気発生源の周辺磁界の場合、磁気勾配の変化が急激となってその変化率が大きくなる。
【0044】
低周波成分を遮断するフィルタ処理(S104)によれば、橋やトンネルなどの大きな磁気発生源の端部の周辺磁界における変化が緩やかな磁気勾配の成分の除去あるいは抑圧が可能である。一方、小さな磁気発生源である磁気マーカ10に由来する変化が急激な磁気勾配の成分は、S104のフィルタ処理で抑圧されずに通過できる。このように磁気マーカ10に由来する磁気勾配の成分が多く含まれるフィルタ処理(S104)のフィルタ出力値に基づけば、小さな磁気発生源である磁気マーカ10を確実性高く検出できる。
【0045】
(2.2)磁気センサの校正動作
上記の磁気マーカ10の検出動作では、磁気センサSnの出力値の時間的な差分、車幅方向の差分を求めることでコモン磁気ノイズを除去し、磁気マーカ10の検出精度を高めようとしている。しかしながら、差分演算には、誤差を増幅する特性がある。特に異なる磁気センサ間の差分演算については、磁気センサSnの個体差に起因するばらつき誤差の悪影響を拡大してしまうという問題がある。差分演算による悪影響を未然に抑制するために、磁気センサSnの校正が重要になってくる。
【0046】
磁気センサSnを校正するためにキャリブレーション回路110(図3)が実行する処理としては、(2.2.1)工場出荷時やメンテナンス作業時のメンテナンスモード下の処理と、(2.2.2)車両の使用期間中に実行される動作モードである通常モード下の処理と、がある。
【0047】
(2.2.1)メンテナンスモード下の処理
メンテナンスモード下の処理は、ヘルムホルツコイル60の基準磁気を利用して磁界発生コイルCnの磁気出力特性(特性情報)を特定するための処理である。磁界発生コイルCnは、電流値と磁気量との線形性が高いため、磁気出力特性が分かれば磁気センサSnに作用する磁気量を定量的に制御あるいは推定できる。例えば、磁界発生コイルCnの磁気出力特性として、ある電流値Iの電流を通電したとき、磁気量Hであることが把握されている場合について説明する。このとき、0.5Iの電流値の電流を磁界発生コイルCnに通電すれば、対応する磁気センサSnに対して、0.5Hの磁気量を磁界発生コイルCnから作用できるということになる。
【0048】
メンテナンスモード下の処理は、図7のごとく、例えば電源供給や動作モードの切替等を実行する専用のメンテナンス装置61、均一な磁場を発生する磁界発生装置6などを利用して実行される。磁界発生装置6は、例えばヘルムホルツコイル60を備える磁気装置である。メンテナンス装置61は、センサアレイ11及び磁界発生装置6の両方に接続されている。メンテナンス装置61は、センサアレイ11に対して動作電力を供給するほか、センサアレイ11と磁界発生装置6との間で、動作状況を表すステータス情報の送受信を仲介する。
【0049】
メンテナンスモード下の処理は、磁界発生装置6が一様に磁場を形成する空間にセンサアレイ11が保持された状態で実施される(図7)。メンテナンス装置61は、磁界発生装置6からヘルムホルツコイル60への通電準備が完了したスタンバイ状態である旨のステータス情報を取得すると、そのステータス情報をセンサアレイ11に転送する。
【0050】
スタンバイ状態である旨の磁界発生装置6のステータス情報を受信したとき、センサアレイ11のキャリブレーション回路110が、各磁気センサSnに磁気計測を実行させ、ヘルムホルツコイル60による磁気が作用していないときのセンサ出力値R1nを取得する(図8、S201)。キャリブレーション回路110は、ヘルムホルツコイル60及び磁界発生コイルCnの非通電状態における各磁気センサSnのセンサ出力としてセンサ出力値R1nを記憶する。一般に、このセンサ出力値R1nは、自然界の外部磁気や、センサ出力値のオフセット等のため、ゼロにはならないことが多い。
【0051】
磁界発生装置6は、センサアレイ11から磁気計測完了のステータス情報を受信すると、ヘルムホルツコイル60への通電を開始する(S202)。磁界発生装置6は、センサアレイ11の各磁気センサSnに対して基準の磁気量である基準磁気Hkを作用させるようにヘルムホルツコイル60の通電電流を制御する。
【0052】
ヘルムホルツコイル60が発生する磁界は、外部磁界に対して重畳されるバイアス磁界として各磁気センサSnに作用する。したがって、ヘルムホルツコイル60の基準磁気Hkを各磁気センサSnに作用すると、磁気センサSnに作用する磁気量が基準磁気Hkの分だけ変化する。すなわち、ヘルツホルツコイル60への通電を開始したときの各磁気センサSnに作用する磁気の変化量である基準の磁気差分値(磁気差分値Cの一例)ΔHsは、ΔHs=Hkとなる。磁界発生装置6は、基準磁気Hkを各磁気センサSnに作用する状態になった後、通電中である旨のステータス情報をメンテナンス装置61を介してキャリブレーション回路110へ送信する。
【0053】
キャリブレーション回路110は、通電中という磁界発生装置6のステータス情報を受信すると、各磁気センサSnに磁気計測を実行させることでセンサ出力値R2nを取得する(S203)。さらに、メンテナンス装置61は、ヘルムホルツコイル60への通電を開始したときの磁気センサSnのセンサ出力の変化量である基準の出力差分値ΔRsn(=R2n-R1n、出力差分値Cの一例)を、各磁気センサSnについて演算する(S204、センサ特性取得ステップ)。
【0054】
キャリブレーション回路110は、上記のステップS202で記憶した基準の磁気差分値ΔHs(各磁気センサSnについて共通)と、ステップS204で演算した基準の出力差分値ΔRsnと、の数値的な組合せ(ΔHs⇔ΔRsn)を、各磁気センサSnの特性情報であるセンサ出力特性として磁気センサSn毎に記憶する(S205、センサ特性取得ステップ)。この組合せは、磁気センサSnに作用する磁気量がΔHs変化したときの磁気センサSnの出力差分値がΔRsnであるというセンサ出力特性を表している。
【0055】
磁界発生装置6は、全ての磁気センサSnのセンサ出力特性(特性情報)の記憶が完了した旨のステータス情報をセンサアレイ11から受信すると、ヘルムホルツコイル60(図7)への通電を停止する(S206)。センサアレイ11は、ヘルムホルツコイル60への通電が停止された旨のステータス情報を受信すると、磁界発生コイルCnへの通電を開始する(S207)。
【0056】
なお、磁界発生コイルCnは、直列をなすように接続されているため、各磁界発生コイルCnの通電電流の大きさは等しくなる。磁界発生コイルCnに通電する電流値I1としては、磁界発生コイルCnの巻数やコイル径などの設計仕様に基づいて、ヘルムホルツコイル60による基準磁気Hkに近い磁気量を磁気センサSnに作用できる電流値を設定すると良い。磁界発生コイルCnへの通電電流を電流値ゼロから電流値I1に切り替えれば、磁界発生コイルCnに通電する電流値の変化量である電流差分値がΔIa=I1となる。なお、磁界発生コイルCnは互いに直列をなすように接続されているため、電流差分値Bの一例である電流差分値ΔIaは、各磁界発生コイルCnについて共通になる。一方、各磁界発生コイルCnでは磁気出力特性にばらつきがあるので、各磁界発生コイルCnが磁気センサSnに作用する磁気量は一定にならず、ばらつきが生じる。
【0057】
キャリブレーション回路110は、電流値I1を各磁界発生コイルCnに通電している期間中に、各磁気センサSnによる磁気計測を実行し、センサ出力値R3nを磁気センサSn毎に取得する(S208、磁気計測ステップ)。そして、キャリブレーション回路110は、磁界発生コイルCnの磁気が作用しているときのセンサ出力値R3nから、磁界発生コイルCn及びヘルムホルツコイル60からの磁気が作用していないときのセンサ出力値R1n(上記S201のセンサ出力値)を差し引く演算を、各磁気センサSnについて実施する。これにより、磁界発生コイルCnへの通電電流の変化量である電流差分値ΔIaに応じた磁気センサSnのセンサ出力の変化量である出力差分値ΔRcn(=R3n-R1n、出力差分値Bの一例)を、磁気センサSn毎に取得する(S209、磁気計測ステップ)。
【0058】
キャリブレーション回路110は、各磁気センサSnの出力差分値ΔRcnに対応する磁気差分値ΔHan(磁気差分値Bの一例)を推定するために、まず、上記のステップS205で記憶した磁気センサSnのセンサ出力特性(ΔHs⇔ΔRsn)を参照する(S210、磁気出力特性取得ステップ)。そして、磁気差分値ΔHsに起因して出力差分値ΔRsnが生じるという磁気センサSnのセンサ出力特性に基づく比例計算により、各磁気センサSnの出力差分値ΔRcn(上記のS209)に対応する磁気差分値ΔHan(=(ΔRcn/ΔRsn)×ΔHs)を求める(S211、磁気出力特性取得ステップ)。そして、キャリブレーション回路110は、磁界発生コイルCnの磁気出力特性として、磁気差分値ΔHanと電流差分値ΔIaとを対応付けて記憶することにより両者の数値的な組合せを記憶する(S212、磁気出力特性取得ステップ)。
【0059】
以上のような手順のメンテナンスモード下の処理を実施すれば、ヘルムホルツコイル60の基準磁気Hkを磁気センサSnに計測させることで、各磁気センサSnのセンサ出力特性を把握できる(センサ特性取得ステップ)。さらに、センサ出力特性が把握された各磁気センサSnを用いて磁界発生コイルCnが作用する磁気を計測すれば(磁気計測ステップ)、該磁界発生コイルCnの磁気出力特性を把握できる(磁気出力特性取得ステップ)。
【0060】
一般的に、電線が巻回された磁界発生コイルCnは、通電する電流の大きさに対する磁気の大きさの線形性が高く、通電電流の電流値に略比例して磁気量が変化する。したがって、磁気出力特性が把握された磁界発生コイルCnによれば、対応する磁気センサSnに作用する磁気量を定量的に制御できるようになり、磁気センサSnの校正に役立つ。
【0061】
(2.2.2)通常モード下の処理
車両の使用期間においては、各磁気センサSnに対して車両5の内外からさまざまな磁気が作用する。特に車両5には、磁気発生源となり得るさまざまな電子部品が搭載されており、これらの電子部品からの磁気が磁気センサSnに作用し、その磁気量が磁気マーカ10から作用する磁気量よりも大きくなることもある。また、道路を構成するトンネルや橋などのRC構造の構造物は大きな磁気発生源となり得るため、走行環境に応じて外部から車両5に作用する外部磁気の大きさも変動する。
【0062】
一般的に、磁気センサの感度、すなわち、作用する磁気量がΔH変化したときのセンサ出力値の変化量ΔRの比率は、ΔHが小さければ一定と取り扱うことができる。一方、磁気センサSnの感度は、計測対象の磁気量の絶対値の高低、すなわち磁気量の変動範囲の高低に応じて大きく変化することがある。さらに、このような感度の変動度合いは、個体差のため磁気センサSn毎に異なってくる。そのため、車両5の使用期間において、各磁気センサSnに作用する磁気量の変動範囲がシフトすれば、各磁気センサSnの感度にばらつきが生じてくる可能性が高い。磁気センサSn毎に感度にばらつきが生じれば、各差分回路Dnによる時間差分値に誤差が生じてくる。そして、このような時間差分値の誤差は、差分回路Gmによる差分演算によってさらに拡大するため、磁気マーカ10の検出精度を低下させる要因となり得る。
【0063】
キャリブレーション回路110による通常モード下の処理は、車両5の使用期間において、各磁気センサSnの感度の均一性を高めて時間差分値の誤差を抑制するために実行される。この通常モード下の処理は、センサアレイ11の各磁気センサSnに対して外部磁気が一様に近く磁気が作用している状況で実施すると良い。例えば、磁気マーカ10やマンホールなどの比較的小さな磁気発生源や、RC構造の橋などの大きな磁気発生源の端部などに由来する磁気がセンサアレイ11に作用していない状況が好適である。
【0064】
キャリブレーション回路110は、図9のごとく、まず、磁界発生コイルCnに非通電の状態で、各磁気センサSnに対して外部から一様に近く作用する磁気を計測し、各磁気センサSnのセンサ出力値R4nを順次記憶する(S301)。続いてキャリブレーション回路110は、磁界発生コイルCnへの通電を開始する(S302)。このときの電流値I2としては、メンテナンスモード下の上記のステップS207と同じ電流値I1を設定しても良いし、異なる電流値であっても良い。本例では、電流値I1と同じ電流値I2を各磁界発生コイルCnに通電している。そのため、各磁界発生コイルCnに通電する電流の変化量である電流差分値ΔIb(電流差分値Aの一例)=I2=I1となる。
【0065】
キャリブレーション回路110は、各磁界発生コイルCnへの通電中に、各磁気センサSnに磁気計測を実行させ、センサ出力値R5nを取得する(S303)。そして、磁界発生コイルCnへの通電開始時の電流差分値ΔIb分の電流変化に応じた各磁気センサSnの出力差分値ΔRcn(=R5n-R4n、出力差分値Aの一例)を演算により求める(S304)。
【0066】
キャリブレーション回路110は、メンテナンスモード下の上記のステップS212で記憶した磁界発生コイルCnの磁気出力特性(ΔHan⇔ΔIa)を参照する(S305)。そして、この磁気出力特性を利用して、ステップS302において電流値I2を磁界発生コイルCnに通電したときの電流差分値ΔIbによって各磁気センサSnに作用する磁気量の変化である磁気差分値ΔHbn(磁気差分値Aの一例)を推定する(S306、磁気推定ステップ)。
【0067】
この磁気差分値ΔHbnの推定方法は、電流差分値に対して磁気差分値がほぼ線形に変化すること、外部環境が変動してもステップS305で参照した磁気出力特性(ΔHan⇔ΔIa)におけるΔHanとΔIaとの比例関係が保持されること、を前提にしている。電流差分値ΔIbを磁界発生コイルCnに作用したときの磁気差分値ΔHbnは、ΔHbn=(ΔIb/ΔIa)×ΔHanの演算式により推定可能である。本例の場合、電流差分値ΔIa=ΔIbであるため、磁気差分値ΔHbnがΔHanに等しくなる。
【0068】
キャリブレーション回路110は、ステップS304に係る磁気センサSnの出力差分値ΔRcnと、ステップS306で推定した磁気差分値ΔHbnと、の比率が所定値となるように、出力差分値ΔRcnの増幅率を求める(S307、校正ステップ)。そして、キャリブレーション回路110は、演算により求めた各磁気センサSnの増幅率を、対応する増幅器242に設定することで各磁気センサSnを校正する(S308、校正ステップ)。
【0069】
ここで、上記のステップS307における所定値は、作用する磁気差分値ΔHbnに対する磁気センサSnの感度を表している。したがって、各磁気センサSnについて上記のステップS307を実施すれば、全ての磁気センサSnの感度を均一に近づけることができる。この内容について、磁気センサSnのうちのいずれか2つの磁気センサSα、Sβ(α、βは1~15のうちの異なる自然数。)のセンサ出力特性を例示する図10(a)(b)を参照して説明する。同図の横軸は、磁気センサに作用する磁気量Hを示し、縦軸は、磁気センサのセンサ出力値Rを示している。
【0070】
例えば、作用する磁気量がΔH変化したとき(すなわち、磁気差分値がΔHであるとき)、いずれか2つの磁気センサSα及びSβに感度の違いがあれば、図10(a)のように出力値の変化量である出力差分値ΔRα及びΔRβに差が生じる。各磁気センサSα、Sβに対して増幅率を個別設定する上記のステップS307及びS308を実施すれば、図10(b)のように各磁気センサSα及びSβに対応する変化量ΔRα’と変化量ΔRβ’とを等しくできる。
【0071】
図10(a)(b)のケースと同様の考え方により、磁気量がΔH変化したときの各磁気センサSnの出力値Rnの変動量ΔRnが均一となるように各磁気センサSnを校正すれば、差分回路Dnによる時間差分値について磁気センサSn毎のばらつきによる誤差を抑制できる。時間差分値の磁気センサSn毎のばらつき誤差を抑制すれば、差分回路Gmが時間差分値について車幅方向差分値を求める際、誤差が増幅されて過大となるおそれを未然に回避できる。誤差が少ない車幅方向差分値を利用すれば、その後のフィルタ処理等により精度高く磁気マーカ10を検出できる。
【0072】
なお、キャリブレーション回路110は、外部磁気の大きさの変動等により磁気センサSnに作用する磁気量の変動範囲がシフトしたときや、あるいは定期的な校正時期が訪れたとき、等に上記の通常モード下の処理を繰り返し実行し、随時、磁気センサSnの校正を実行する。磁気センサSnを校正する処理を含む上記のマーカ検出装置1の運用方法によれば、磁気的な環境の変化、経時的な変化、温度や湿度などの環境的な変化等が生じても、磁気センサSn毎の時間差分値の誤差を回避でき、検出精度を高く維持できる。また、磁気センサSnの校正を含むメンテナンスのために整備工場等に車両をその都度、持ち込む必要がなくなるので、車両ユーザー側の手間や出費等を低減できる。磁気量の変動範囲の高低について閾値を設定することも良い。例えば磁気マーカの磁気が作用していないときの磁気量が、閾値以上変動したとき、磁気量の変動範囲がシフトしたと判断して通常モード下の処理を実行することも良い。
【0073】
以上の通り、本例のマーカ検出装置1は、磁気センサSnの校正機能を備える装置である。このマーカ検出装置1では、各磁気センサSnが良好に校正された状態を維持できるので、磁気マーカ10の磁気を精度高く計測できる。そして、各磁気センサSnが精度高く磁気を計測することで得られたセンサ出力に基づけば、磁気マーカ10を精度高く検出可能である。
【0074】
本例では、磁気センサを15個備えるセンサアレイ11について、各磁気センサSnの感度を均一に近づけるための通常モードを例示している。1個の磁気センサについて、図7及び図8のメンテナンスモード、図9の通常モードを実施しても良い。1個の磁気センサの場合、図7におけるセンサアレイ11を1個の磁気センサに置き換えた場合を想定すると良い。例示したセンサアレイ11の場合、図8及び図9におけるnが15となるが、磁気センサ1個のみの場合は、このnが1となる。
【0075】
この場合、時間的に間隔をあけて実施される各回の通常モードにおいて、図9中のS307のΔRcn/ΔHbnが所定値(各回の通常モードにおいて一定の値)となるような増幅率を決定し増幅器に設定すると良い。この場合には、外部磁気の大きさや磁気センサの特性が時間的に変動した場合であっても、所定の大きさの磁気が磁気センサに対して重畳して作用したときのセンサ出力値の変化量を均一に近づけることができる。ΔRcn/ΔHbnの所定値としては、図8中のS205におけるΔHsとΔRsnとの比率に相当する値としても良い。この場合、メンテナンスモード下の処理において、次に説明する校正処理を実施するとさらに良い。
【0076】
15個の磁気センサを含むセンサアレイ11に係る本例の構成では、上記の通り、各磁界発生コイルCnを電気的に直列に接続する構成を採用している。直列に磁界発生コイルCnを接続する場合には、等しい電流を各磁界発生コイルCnに同時に通電でき、効率良く各磁気センサSnを校正できる。
メンテナンスモード下の処理において、ヘルムホルツコイル60が各磁気センサSnに作用する基準磁気Hkを利用して、各磁気センサSnの感度を均一にする校正処理を実施することも良い。この校正処理では、ヘルムホルツコイル60が各磁気センサSnに作用する磁気差分値ΔHsに対して、磁気センサSnが出力するセンサ出力の変化量である出力差分値が均一になるように、各増幅器242の増幅率を設定すれば良い。この場合、図8中のステップS205では、この校正処理を実施した後のセンサ出力特性を記憶すると良い。
【0077】
なお、本例のセンサアレイ11の構成に基づき、差分回路Dnを省略することも良い。この場合には、各磁気センサSnのセンサ出力値Rnについて時間差分を実施せず、他の磁気センサとの間でセンサ出力値Rnの差分が行われることになる。したがって、この場合には、各磁気センサSnの出力値Rnを均一に近づけるように、磁気センサSnを校正すると良い。磁気センサSnの出力値Rnを均一にするためには、磁気マーカ10の磁気がセンサアレイ11に作用しないときの各磁気センサSnの出力値Rnが均一になるように、各増幅器242の増幅率と共にオフセット値を適切に設定すると良い。
【0078】
なお、非通電状態から通電状態への切換により磁界発生コイルCnに作用する通電する電流を変化させる場合であれば、変化前の電流値がゼロであるので、通電状態への切換後の電流値そのものが電流差分値となる。この場合の電流差分値は、磁界発生コイルCnを非通電状態から通電状態へ切り換える場合における切換後の電流値に相当している。
【0079】
磁界発生部の一例をなす磁界発生コイルCnの磁気出力特性を表す特性情報として、磁界発生コイルCnに作用する電流差分値と、対応する磁気センサSnに作用する磁気差分値と、の組み合わせの情報を例示している。磁界発生コイルCnの特性情報としては、磁界発生コイルに通電する電流値と、磁気センサに作用する磁気量と、の組み合わせであっても良く、通電する電流に対して磁気センサSnに作用する磁気の大きさの比率、すなわち感度であっても良い。特性情報は、磁界発生コイルCnに通電する電流と、磁気センサSnに作用する磁気、との関係を表す情報であれば良い。
【0080】
磁気センサSnのセンサ出力特性を表す特性情報については、磁気センサSnに作用する磁気差分値と、磁気センサSnが出力するセンサ出力の変化量である出力差分値と、の組み合わせの情報を例示している。磁気センサSnの特性情報としては、磁気センサに作用する磁気量と、磁気センサが出力するセンサ出力値と、の組み合わせであっても良く、作用する磁気量に対するセンサ出力値の比率であっても良い。特性情報は、磁気センサSnに作用する磁気と、磁気センサによるセンサ出力と、の関係を表す情報であれば良い。
【0081】
本例では、差分回路Dnの下流側に差分回路Gmを設けた構成を例示したが、これに代えて、磁気センサSnの出力値の車幅方向の差分値を対象として、時間方向の差分値を演算するような構成を採用することも良い。なお、差分回路Dn、差分回路Gmの順番を入れ替えた場合の処理は、以下に説明する通り、本例のセンサアレイ11の処理と等価となる。
【0082】
例えば、異なるタイミングT1・T2での磁気センサS1の出力値がR1[T1]・R1[T2]であって、同様の磁気センサS2の出力値がR2[T1]・R2[T2]であるとして、差分回路の順番の入替を説明する。磁気センサS1及びS2の出力値に関する時間差分値は、それぞれ、(R1[T1]-R1[T2])、(R2[T1]-R2[T2])となる。そうすると、この2つの時間差分値についての車幅方向差分値は、(R2[T1]-R2[T2])-(R1[T1]-R1[T2])=(R2[T1]-R2[T2]-R1[T1]+R1[T2])となる。
一方、磁気センサS1、S2の出力値に関するタイミングT1及びT2での車幅方向差分値は、それぞれ、(R2[T1]-R1[T1])、(R2[T2]-R1[T2])となる。したがって、これらの車幅方向差分値についての時間差分値は(R2[T1]-R1[T1])-(R2[T2]-R1[T2])=(R2[T1]-R1[T1]-R2[T2]+R1[T2])となる。この演算式は、時間差分値を演算してから車幅方向差分値を演算する上記の演算式と等価である。
【0083】
本例では、車幅方向に感度を持つ磁気センサSnを採用したが、進行方向に感度を持つ磁気センサであっても良く、鉛直方向に感度を持つ磁気センサであっても良い。さらに、例えば車幅方向と進行方向の2軸方向や、進行方向と鉛直方向の2軸方向に感度を持つ磁気センサを採用しても良く、例えば車幅方向と進行方向と鉛直方向の3軸方向に感度を持つ磁気センサを採用しても良い。複数の軸方向に感度を持つ磁気センサを利用すれば、磁気の大きさと共に磁気の作用方向を計測でき、磁気ベクトルを生成できる。磁気ベクトルの差分や、その差分の進行方向の変化率を利用して、磁気マーカ10の磁気と外乱磁気との区別を行なうことも良い。
【0084】
磁界発生部として磁界発生コイルCnを例示したが、磁界発生部は、通電に応じて磁界を発生するものであれば良く、単なる電線であっても良い。また、本例では、アモルファスワイヤ20の周囲に磁界発生コイルCnを巻回しているが、磁界発生コイルCnに対してアモルファスワイヤが内挿配置されていなくても良い。
なお、本例は、センサアレイ11と検出ユニット12とを別体とする構成例であるが、両者を一体化する構成を採用しても良い。
【0085】
(実施例2)
本例は、実施例1の構成に基づいて、センサチップ2のピックアップコイル21と同様の方法により磁界発生コイルCnを形成した例である。この内容について図11及び図12を参照して説明する。
本例のセンサチップ2では、感磁体をなすアモルファスワイヤ20に対して、ピックアップコイル21と磁界発生コイルCnとが並列して配置されている。
【0086】
センサチップ2では、図11及び図12に示すごとく、凹溝状の延在溝25が延設された電極配線基板2Aを利用して磁気センサSnが形成されている。このセンサチップ2では、延在溝25に充填されたエポキシ樹脂等からなる絶縁体にアモルファスワイヤ20が埋設されている。そして、絶縁体の外周に沿って形成された導電パターン28、29により、ピックアップコイル21、磁界発生コイルCnが形成されている。
【0087】
導電パターンとしては、延在溝25の内周面に形成された第1の導電パターン28と、電極配線基板2Aの表面側に面する絶縁体の外側面に形成された第2の導電パターン29と、がある。
第1の導電パターン28は、延在溝25の溝方向と略直交するように延在溝25の内周面に形成され、両端が電極配線基板2Aの表面に延設されたパターンである。第1の導電パターン28は、延在溝25の底面に形成されたパターン282と、延在溝25の内側面に形成されたパターン281と、により構成されている。この第1の導電パターン28は、梯子のように溝方向に複数並列して配置されている。
【0088】
第2の導電パターン29は、電極配線基板2Aの表面側に露出する絶縁体の表面に沿って、溝方向に斜行する導電パターンである。第1の導電パターン28と同様、第2の導電パターン29は、溝方向に複数並列している。第2の導電パターン29の各パターンは、溝方向に対して斜行することにより、溝方向に隣り合う2本の第1の導電パターン28を直列に接続している。
【0089】
センサチップ2のピックアップコイル21は、第1および第2の導電パターン28、29の組み合わせにより全体として螺旋状の電気的な経路をなすように形成されている。センサチップ2では、ピックアップコイル21の全長に対してアモルファスワイヤ20の方が長くなっている。そして、ピックアップコイル21からはみ出したアモルファスワイヤ20の端部に磁界発生コイルCnが設けられている。この磁界発生コイルCnは、ピックアップコイル21と同様、第1の導電パターン28と第2の導電パターン29との組合せにより形成され、巻数のみがピックアップコイル21と相違している。
【0090】
ここで、第1及び第2の導電パターン28、29の形成方法を説明する。第1の導電パターン28の形成に当たっては、まず、絶縁体を形成する前の延在溝25の内周面の全面、及び電極配線基板2Aの表面のうち延在溝25に隣接する縁部、に導電性の金属薄膜を蒸着する。その後、選択エッチング手法を用いて金属薄膜の一部を選択的に除去することで、梯子状に複数のパターンが並列する第1の導電パターン28を形成する。そして、アモルファスワイヤ20が埋設されるように延在溝25にエポキシ樹脂等を充填することで絶縁体を形成する。
【0091】
第2の導電パターン29を形成するに当たっては、まず、延在溝25に絶縁体が形成された電極配線基板2Aの表面のうち、絶縁体の表面及び延在溝25の外側の縁部に導電性の金属薄膜を蒸着する。その後、選択エッチング手法を用いて金属薄膜の一部を除去すれば、隣り合う第1の導電パターン28の端部を接続する第2の導電パターン29を形成できる。
【0092】
以上のように、磁気センサSnを構成するピックアップコイル21と同様の方法により形成される磁界発生コイルCnは、巻数を除く仕様がピックアップコイル21と同じである。この磁界発生コイルCnは、磁気センサSnを作成する際、同様の工程で作成できるので、コストアップを誘発するおそれが少ない。また、磁界発生コイルCnは、磁気センサSnに対して組み込まれて一体化されているので、磁気センサSnとの離間距離などが変動するおそれがない。
【0093】
磁気センサSnのアモルファスワイヤ20の周囲に磁界発生コイルCnが巻回された構造であれば、磁気センサSnに対して効率良く磁気を作用できる。この構造の場合、磁界発生コイルCnが作用する磁気のうち磁気センサSnに供給される磁気の割合が、外的な要因等により変動するおそれが少なくなる。このようにアモルファスワイヤ20の周囲に磁界発生コイルCnが巻回された構造は、磁界発生コイルCnを利用した校正の精度向上に有効である。
【0094】
なお、磁界発生コイルCnに対してアモルファスワイヤ20が内挿配置されていることは必須ではない。アモルファスワイヤ20の長さを、ピックアップコイル21の全長とほぼ同等とし、ピックアップコイル21からのはみ出しを少なくしても良い。この場合には、磁界発生コイルCnに対してアモルファスワイヤ20が内挿配置されない状態となる。
なお、その他の構成及び作用効果については、実施例1と同様である。
【0095】
以上、実施例のごとく本発明の具体例を詳細に説明したが、これらの具体例は、特許請求の範囲に包含される技術の一例を開示しているにすぎない。言うまでもなく、具体例の構成や数値等によって、特許請求の範囲が限定的に解釈されるべきではない。特許請求の範囲は、公知技術や当業者の知識等を利用して前記具体例を多様に変形、変更あるいは適宜組み合わせた技術を包含している。
【符号の説明】
【0096】
1 マーカ検出装置(磁気計測システム)
10 磁気マーカ
11 センサアレイ
110 キャリブレーション回路
112 校正部(記憶部、推定部)
12 検出ユニット
125 フィルタ処理回路
127 検出処理回路
2 センサチップ
20 アモルファスワイヤ(磁性体ワイヤ)
21 ピックアップコイル(コイル)
Sn 磁気センサ
Cn 磁界発生コイル(磁界発生部、コイル)
5 車両
6 磁界発生装置
60 ヘルムホルツコイル
図1
図2
図3
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図5
図6
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図10
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図12