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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】レンズ鏡筒及び撮像装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/04 20210101AFI20220928BHJP
   H04N 5/225 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
G02B7/04 E
G02B7/04 D
H04N5/225 400
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021501624
(86)(22)【出願日】2019-12-18
(86)【国際出願番号】 JP2019049636
(87)【国際公開番号】W WO2020170586
(87)【国際公開日】2020-08-27
【審査請求日】2021-07-21
(31)【優先権主張番号】P 2019030092
(32)【優先日】2019-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100142147
【弁理士】
【氏名又は名称】本木 久美子
(72)【発明者】
【氏名】五味渕 治
(72)【発明者】
【氏名】堀越 誠
(72)【発明者】
【氏名】冨田 瑞葵
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 常雄
(72)【発明者】
【氏名】北野 賢一
【審査官】越河 勉
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/221723(WO,A1)
【文献】特開2018-124527(JP,A)
【文献】国際公開第2011/048752(WO,A1)
【文献】特開2013-11918(JP,A)
【文献】特開2015-49334(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/02-7/16
H04N 5/225
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
焦点距離の変更によって光軸に沿って移動する移動筒と、
前記移動筒に備えられる第1駆動部と、
前記第1駆動部によって前記移動筒に対して光軸に沿って相対的に移動する第1レンズと、
前記移動筒に備えられる第2駆動部と、
前記第2駆動部によって前記移動筒に対して光軸に沿って相対的に移動する第2レンズと、を備え、
第1焦点距離で前記第1レンズが最も被写体側に配置される第1状態において焦点距離を第2焦点距離に変更した場合の前記移動筒に対する前記第1レンズの移動量は、前記第1焦点距離で前記第1レンズが前記第1状態よりも像面側に配置される第2状態において焦点距離を前記第2焦点距離に変更した場合の前記移動筒に対する前記第1レンズの移動量より小さい
レンズ鏡筒。
【請求項2】
前記第2レンズは、前記第1レンズより像面側に配置され、
前記第1状態において焦点距離を前記第2焦点距離に変更した場合の前記移動筒に対する前記第1レンズの移動量は、前記第1状態において焦点距離を前記第2焦点距離に変更した場合の前記移動筒に対する前記第2レンズの移動量より小さい
請求項1に記載のレンズ鏡筒。
【請求項3】
前記第2状態において焦点距離を前記第2焦点距離に変更した場合の前記移動筒に対する前記第2レンズの移動量は、前記第1状態において焦点距離を前記第2焦点距離に変更した場合の前記移動筒に対する前記第2レンズの移動量より小さい
請求項1または2に記載のレンズ鏡筒。
【請求項4】
前記第2状態において焦点距離を前記第2焦点距離に変更した場合の前記移動筒に対する前記第2レンズの移動量は、前記第2状態において焦点距離を前記第2焦点距離に変更した場合の前記移動筒に対する前記第1レンズの移動量より小さい
請求項1から請求項3の何れか1項に記載のレンズ鏡筒。
【請求項5】
前記第2状態の前記第2レンズは、前記第1状態の前記第2レンズより像面側に配置される
請求項1から請求項4の何れか1項に記載のレンズ鏡筒。
【請求項6】
前記第1状態の前記第2レンズは、前記第2状態の前記第1レンズよりも像面側に配置され、
前記第1状態において焦点距離を前記第2焦点距離に変更した場合の前記第2レンズは、前記第2状態において焦点距離を前記第2焦点距離に変更した場合の前記第1レンズよりも被写体側に配置される
請求項1から請求項5の何れか1項に記載のレンズ鏡筒。
【請求項7】
前記移動筒は、カムフォロアを有し、
前記第1状態又は前記第2状態において焦点距離を変更した場合に、前記カムフォロアに対して前記第1レンズは一定の方向に移動する
請求項1から請求項6の何れか1項に記載のレンズ鏡筒。
【請求項8】
前記第1状態において焦点距離を前記第2焦点距離に変更した場合の前記第1レンズの移動量が前記第2状態において焦点距離を前記第2焦点距離に変更した場合の前記第2レンズの移動量より大きい場合の前記移動筒の移動量は、前記第1状態において焦点距離を前記第2焦点距離に変更した場合の前記第1レンズの移動量が前記第2状態において焦点距離を前記第2焦点距離に変更した場合の前記第2レンズの移動量より小さい場合の前記移動筒の移動量より大きい
請求項1から請求項7の何れか1項に記載のレンズ鏡筒。
【請求項9】
焦点距離の変更によって光軸に沿って移動する移動筒と、
前記移動筒に備えられる第1駆動部と、
前記第1駆動部によって前記移動筒に対して光軸に沿って相対的に移動する第1レンズと、
前記移動筒に備えられる第2駆動部と、
前記第2駆動部によって前記移動筒に対して光軸に沿って相対的に移動する第2レンズと、を備え、
第1焦点距離で前記第1レンズが最も被写体側に配置される第1状態において焦点距離を第2焦点距離に変更した場合の前記移動筒に対する前記第1レンズの移動量は、第1状態において焦点距離を前記第2焦点距離に変更した場合の前記移動筒に対する前記第2レンズの移動量より小さい
レンズ鏡筒。
【請求項10】
焦点距離の変更によって光軸に沿って移動する移動筒と、
前記移動筒に備えられる第1駆動部と、
前記第1駆動部によって前記移動筒に対して光軸に沿って相対的に移動する第1レンズと、
前記移動筒に備えられる第2駆動部と、
前記第2駆動部によって前記移動筒に対して光軸に沿って相対的に移動する第2レンズと、を備え、
焦点距離を変更した場合に最も被写体側に配置されている前記第1レンズの移動量は、焦点距離を変更した場合に最も被写体側に配置されている前記第2レンズの移動量より小さい
レンズ鏡筒。
【請求項11】
請求項1から請求項10の何れか1項に記載のレンズ鏡筒を備える撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ鏡筒及び撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、フォーカスレンズを備え、フォーカスレンズをモータで駆動するものが種々提案されている(例えば特許文献1参照)。また、レンズ鏡筒のさらなる小型化が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-49334号公報
【発明の概要】
【0004】
第1の態様のレンズ鏡筒は、焦点距離の変更によって光軸に沿って移動する移動筒と、前記移動筒に備えられる第1駆動部と、前記第1駆動部によって前記移動筒に対して光軸に沿って相対的に移動する第1レンズと、前記移動筒に備えられる第2駆動部と、前記第2駆動部によって前記移動筒に対して光軸に沿って相対的に移動する第2レンズと、を備え、第1焦点距離で前記第1レンズが最も被写体側に配置される第1状態において焦点距離を第2焦点距離に変更した場合の前記移動筒に対する前記第1レンズの移動量は、前記第1焦点距離で前記第1レンズが前記第1状態よりも像面側に配置される第2状態において焦点距離を前記第2焦点距離に変更した場合の前記移動筒に対する前記第1レンズの移動量より小さい構成とした。
【0005】
第2の態様のレンズ鏡筒は、焦点距離の変更によって光軸に沿って移動する移動筒と、前記移動筒に備えられる第1駆動部と、前記第1駆動部によって前記移動筒に対して光軸に沿って相対的に移動する第1レンズと、前記移動筒に備えられる第2駆動部と、前記第2駆動部によって前記移動筒に対して光軸に沿って相対的に移動する第2レンズと、を備え、第1焦点距離で前記第1レンズが最も被写体側に配置される第1状態において焦点距離を第2焦点距離に変更した場合の前記移動筒に対する前記第1レンズの移動量は、第1状態において焦点距離を前記第2焦点距離に変更した場合の前記移動筒に対する前記第2レンズの移動量より小さい構成とした。
【0006】
第3の態様のレンズ鏡筒は、焦点距離の変更によって光軸に沿って移動する移動筒と、前記移動筒に備えられる第1駆動部と、前記第1駆動部によって前記移動筒に対して光軸に沿って相対的に移動する第1レンズと、前記移動筒に備えられる第2駆動部と、前記第2駆動部によって前記移動筒に対して光軸に沿って相対的に移動する第2レンズと、を備え、焦点距離を変更した場合に最も被写体側に配置されている前記第1レンズの移動量は、焦点距離を変更した場合に最も被写体側に配置されている前記第2レンズの移動量より小さい構成とした。
【0007】
第4の態様の撮像装置は、上記レンズ鏡筒を備える構成とした。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態であるレンズ鏡筒2をカメラボディ3に装着して構成されたカメラ1の概念図である。
図2】レンズ鏡筒2の内カム筒83及びその内径側に配置されている筒部材の斜視図である。
図3図2から内カム筒83を取り外して図2と逆側から見た斜視図である。
図4図3からモータ移動筒100を取り外した状態であって、5群枠50の駆動機構のみを示す図である。
図5】5群レンズL5及び6群レンズL6の移動状態を説明する図であり、(a)はズーム位置が広角端の状態、(b)はズーム位置が望遠端の状態である。
図6】焦点距離を広角端(W)から望遠端(T)に変更した場合の、5群レンズL5の移動量と、6群レンズL6の移動量と、モータ移動筒100の移動量を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、実施形態であるレンズ鏡筒2をカメラボディ3に装着して構成された撮像装置としてのカメラ1の概念図である。なお、以下の説明において、レンズ鏡筒2の光軸OA方向被写体側を前側、カメラボディ3側を後側とする。レンズ鏡筒2の光軸OA方向の移動を「直進」、光軸OAを中心とする回動を「回転」という。さらに、レンズ鏡筒2の光軸OAと直交する径方向において、光軸OAから離れる側を外径側、光軸OAに近づく側を内径側という。
【0010】
カメラ1は、カメラボディ3とレンズ鏡筒2とを備える。レンズ鏡筒2は、後部(基端部)にレンズマウントLMが設けられ、カメラボディ3のボディマウントBMと係合することで、カメラボディ3に着脱可能に装着されている。
【0011】
カメラボディ3は、光像を電気信号に変換する撮像素子4を備え、この撮像素子4による撮像データを画像処理して図示しない記録部に記録したり、図示しない表示部に表示したりするいわゆるデジタルカメラである。
なお、カメラとしては、一眼レフカメラ、ミラーレスカメラ、コンパクトデジタルカメラでもよく、また、二眼のカメラであってもよい。スマートフォンやタブレットに内蔵されたカメラでもよい。
カメラボディ3には電源スイッチ(図示せず)が設けられている。電源スイッチのON・OFF信号や、フォーカシングや絞り値を示す信号は、後述するレンズ鏡筒2の制御部90に送られる。
【0012】
レンズ鏡筒2は、前側から1群レンズL1、2群レンズL2、3群レンズL3、4群レンズL4、5群レンズL5、6群レンズL6及び7群レンズL7を備え、焦点距離が変更可能ないわゆるズームレンズである。
【0013】
1群レンズL1、2群レンズL2、3群レンズL3、4群レンズL4、5群レンズL5、6群レンズL6及び7群レンズL7は、ズーミング時に光軸OA方向に移動する。
5群レンズL5、6群レンズL6は、後述のモータ移動筒100内においてフォーカシング時に移動するフォーカスレンズ群である。本実施形態のレンズ鏡筒2は、このように2つのフォーカスレンズ群を備える。そのため、フォーカスレンズ群1つ当たりの重さを軽くすることができ、ステッピングモータのような駆動力の小さいアクチュエータでも駆動できる。また、フォーカスの性能をあげることができる。
【0014】
1群レンズL1は1群枠10に保持され、1群枠10から後方側に、1群摺動筒12が延びている。2群レンズL2は2群枠20に保持されている。3群レンズL3は3群枠30に保持されている。3群枠30の前側には絞りユニット32が取り付けられている。4群レンズL4は4群枠40に保持され、5群レンズL5は5群枠50に保持され、6群レンズL6は6群枠60に保持され、7群レンズL7は7群枠70に保持されている。
【0015】
レンズ鏡筒2は、外固定筒84と内固定筒85とを備え、外固定筒84の外周にズームリング81とフォーカスリング86とがそれぞれ回転可能に設けられている。外固定筒84から内径側に向かって、1群摺動筒12、外カム筒82、内固定筒85、内カム筒83及びモータ移動筒100が順に配置されている。
【0016】
ズームリング81から、内径側に連結ピン(図示せず)が延びている。連結ピンは外固定筒84に設けられた周溝(図示せず)を貫通し、外カム筒82に連結されている。ズームリング81を周方向に回転すると、連結ピンも周方向に回転し、外カム筒82がズームリング81とともに回転する。
【0017】
図2は、レンズ鏡筒2の内カム筒83及びその内径側に配置されている複数の筒部材の斜視図である。なお、5群レンズL5、6群レンズL6は図示していない。内カム筒83は外径側にカムフォロア92が設けられている。カムフォロア92は内固定筒85に設けられたカム駆動用のカム溝(図示せず)を貫通し、外カム筒82に設けられた直進溝(図示せず)に挿入されている。外カム筒82が周方向に回転すると、カムフォロア92は周方向に回転しつつ直進し、内カム筒83が回転及び直進する。
また、内カム筒83には、モータ移動筒100を駆動するカム溝83aが設けられている。なお、内カム筒83に設けられるモータ移動筒100を駆動するための溝は、周溝に限定されず、周溝又は直進溝でもよい。
【0018】
図3は、図2から内カム筒83を取り外して図2と逆側の被写体側から見た斜視図である。モータ移動筒100から外径側にカムピン101が延びている。カムピン101は、内カム筒83に設けられたカム溝83a及び内固定筒85の直進溝(図示せず)に係合している。
ズームリング81が回転すると、内カム筒83が回転しつつ直進し、モータ移動筒100は、カムピン101によって、内カム筒83の移動の直進成分によって、回転せずに直進方向に移動し、それとともに5群レンズL5及び6群レンズL6は直進する。
【0019】
モータ移動筒100の前壁部103とガイドバー押さえ部材170(図1に図示)との間には、5群用のメインガイドバー151及びサブガイドバー152、6群用のメインガイドバー161及びサブガイドバー162が延びている。メインガイドバー151、サブガイドバー152、メインガイドバー161及びサブガイドバー162は、光軸OA方向のほぼ同位置を重複して延びている。なお、これに限らず、これらのガイドバーは、光軸OA方向において少なくとも一部が重複していればよい。
【0020】
モータ移動筒100には例えばステッピングモータである5群用駆動部5M及び例えばステッピングモータである6群用駆動部6Mが固定されている。なお、5群用駆動部5M及び6群用駆動部6Mは、ステッピングモータに限らず、ボイスコイルモータや超音波モータ等のモータでもよい。
【0021】
図4は、図3からモータ移動筒100を取り外した状態であって、5群枠50の駆動機構のみを示す図である。なお、6群枠60の駆動機構は5群枠50の駆動機構とほぼ同様であるので、以下、5群枠50の駆動機構についてのみ説明し、6群枠60の駆動機構の説明は省略する。
【0022】
5群枠50には、5群レンズL5の外周を覆う5群保持部51と、5群保持部51の外周から外径側に延びる、メインガイドバー係合部511と、サブガイドバー係合部512とが設けられている。サブガイドバー係合部512は、メインガイドバー151に対して、略180度の位置に設けられている。
【0023】
メインガイドバー係合部511は、前後に設けられた前壁511aと後壁511bと、前壁511aと後壁511bとを連結する側壁511dとを備える。前壁511aと後壁511bとには、それぞれ、後述のメインガイドバー151がスライド可能に貫通するガイドバー挿通孔511eが設けられている。
【0024】
側壁511dからは遮光部511cが外径側に突出して設けられている。遮光部511cは光軸OA方向に所定距離延びる矩形板状部分である。遮光部511cは、モータ移動筒100に取り付けられたフォトインタラプタ(PI)5を遮光するための部材である。遮光部511c及びPI5によって5群レンズL5の位置を検出することができる。
【0025】
サブガイドバー係合部512は、外径側が開放したU字溝が設けられた部材である。このU字溝に、サブガイドバー152がスライド可能に挿通されている。このように、サブガイドバー係合部512のU字溝がサブガイドバー152に係合しているので、メインガイドバー151を中心とした周方向の回転が防止される。
【0026】
5群用駆動部5Mの光軸OA方向像側に、モータ移動筒100にねじ止めされるユニット枠501が取り付けられている。5群用駆動部5Mから光軸OA方向後側にリードスクリュー502が延び、後端がユニット枠501に回転可能に保持されている。なお、5群レンズL5の移動範囲によっては、5群用駆動部5Mの光軸OA方向被写体側にリードスクリュー502が伸びている構成でもよい。
リードスクリュー502には、移動ラック503が噛み合っている。移動ラック503はメインガイドバー係合部511に保持されている。
【0027】
図1に戻り、内固定筒85の後側の端部には、メイン基板88がビスによって取り付けられている。メイン基板88は制御部90を有し、フォーカスリング86またはズームリング81が回転すると、その回転量が検出されて制御部90に入力される。
また、撮影者のレリーズ半押し等によるフォーカシング操作によってもカメラボディ3から信号が制御部90に入力される。
そうすると、制御部90から5群用駆動部5Mにパルスが送信されて、5群用駆動部5Mが駆動される。5群用駆動部5Mの駆動により、図4等に示すリードスクリュー502が回転し、リードスクリュー502と噛み合う移動ラック503が光軸OA(光軸OAに沿う方向)方向に移動する。移動ラック503の移動により、メインガイドバー係合部511がメインガイドバー151によって直進案内されて、5群枠50及び5群レンズL5が光軸OA方向に移動する。
6群枠60及び6群レンズL6についても同様に、ズーミング時及びフォーカシング時には、6群用駆動部6Mによって光軸OA方向に駆動される。
以上のように、5群レンズL5は、モータ移動筒100及び5群用駆動部5Mによって光軸方向を移動する。よって5群レンズL5の移動量は、モータ移動筒100によって移動する量と、5群用駆動部5Mによって移動する量とに分けられる。6群レンズL6も同様に、6群レンズL6の移動量は、モータ移動筒100によって移動する量と、6群用駆動部6Mによって移動する量とに分けられる。
【0028】
図5は、5群レンズL5及び6群レンズL6の移動状態を説明する図であり、(a)はズーム位置が広角端Wの状態、(b)はズーム位置が望遠端Tの状態である。
実施形態では、上述のように、レンズ鏡筒2は、カムピン101を有し、焦点距離の変更によって光軸OAに沿って移動するモータ移動筒100と、モータ移動筒100に備えられる5群用駆動部5Mと、5群用駆動部5Mによってモータ移動筒100に対して光軸OAに沿って相対的に移動する5群レンズL5と、モータ移動筒100に備えられる6群用駆動部6Mと、6群用駆動部6Mによってモータ移動筒100に対して光軸OAに沿って相対的に移動する6群レンズL6と、を備える。なお、簡単のために図5(a)(b)においては、5群用駆動部5M、5群枠50、6群用駆動部6M、6群枠60、サブガイドバー152、サブガイドバー162、等を省略している。
【0029】
以下の説明では一例として、第1焦点距離を広角端W、第2焦点距離を望遠端Tとして説明する。また、5群レンズL5は、第1焦点距離(広角端W)及び第2焦点距離(望遠端T)において、被写体距離が至近Nの場合に最も被写体側に配置され、被写体距離が無限遠∞の場合に最も像面側に配置されるものとする。また、6群レンズL6は、第1焦点距離(広角端W)及び第2焦点距離(望遠端T)において、被写体距離が至近Nの場合に最も被写体側に配置され、被写体距離が無限遠∞の場合に最も像面側に配置されるものとする。
【0030】
(1)5群レンズL5の移動量X1とX2との関係
図5(a)に示すように、第1焦点距離(広角端W)において、5群レンズL5が最も被写体側に配置される第1状態(WN)での5群レンズL5の位置を図5(a)のWN5で示す。図5(a)に示すWN5の状態から、焦点距離を第2焦点距離(望遠端T)に変更すると、5群レンズL5は図5(b)に示すTN5の位置へ移動する。このように、第1状態(WN)から被写体距離は変更せずに、焦点距離を第2焦点距離(望遠端T)に変更した場合のモータ移動筒100に対する5群レンズL5の移動量をX1とする。
また、図5(a)に示す第1焦点距離(広角端W)において、5群レンズL5が最も像面側に配置される第2状態(W∞)での5群レンズL5の位置を図5(a)のW∞5で示す。図5(a)に示すW∞5の状態から、焦点距離を第2焦点距離(望遠端T)に変更すると、5群レンズL5は図5(b)に示すT∞5の位置へ移動する。このように、第2状態(W∞)から被写体距離は変更せずに、焦点距離を第2焦点距離(望遠端T)に変更した場合のモータ移動筒100に対する5群レンズL5の移動量をX2とする。
このとき、移動量X1は移動量X2より小さくなるように、モータ移動筒100の移動量Zを設定する。
【0031】
言い換えると、図5(a)に示すWN5の第1状態から、焦点距離を第2焦点距離(望遠端T)に変更した場合の5群用駆動部5Mの駆動量X1は、図5(a)に示すW∞5の第2状態から、焦点距離を第2焦点距離(望遠端T)に変更した場合の5群用駆動部5Mの駆動量X2より小さくなる。
【0032】
または、図5(a)に示すWN5の第1状態から、焦点距離を第2焦点距離(望遠端T)に変更した場合のメインガイドバー151に対する5群レンズL5の移動量X1は、図5(a)に示すW∞5の第2状態から、焦点距離を第2焦点距離(望遠端T)に変更した場合のメインガイドバー151に対する5群レンズL5の移動量X2より小さくなる。
【0033】
これらにより、5群レンズL5が最も被写体側に配置される状態から焦点距離を変更した場合に、モータ移動筒100に対する5群レンズL5の移動量X1を小さくできるので、メインガイドバー151やモータ移動筒100を被写体側に延ばす必要がない。そのため、光軸方向に薄型にすることができる。
【0034】
(2)5群レンズL5の移動量X1と6群レンズL6の移動量Y1との関係
図5(a)に示すように、第1焦点距離(広角端W)において、6群レンズL6が最も被写体側に配置される第1状態(WN)での6群レンズL6の位置を図5(a)のWN6で示す。図5(a)に示すWN6の状態から、焦点距離を第2焦点距離(望遠端T)に変更すると、6群レンズL6は図5(b)に示すTN6の位置へ移動する。このように、第1状態(WN)から被写体距離は変更せずに、焦点距離を第2焦点距離(望遠端T)に変更した場合のモータ移動筒100に対する6群レンズL6の移動量をY1とする。なお、Y1は、第1状態(WN)から焦点距離を第2焦点距離(望遠端T)へ変更した場合のメインガイドバー161に対する6群レンズL6の移動量としてもよいし、6群用駆動部6Mの駆動量としてもよい。
このとき、移動量X1は移動量Y1より小さくなるように、モータ移動筒100の移動量Zを設定する。
これにより、5群レンズL5が最も被写体側に配置される状態から焦点距離を変更した場合に、モータ移動筒100に対する5群レンズL5の移動量X1を小さくできるので、メインガイドバー151やモータ移動筒100を被写体側に延ばす必要がない。そのため、光軸方向に薄型にすることができる。
【0035】
(1)及び(2)の効果
モータ移動筒100内において、被写体側に5群レンズL5、像側に6群レンズL6が配置されている。
モータ移動筒100の被写体側に配置されている5群レンズL5が、その中でも最も被写体側に配置されている状態のときに、ズーミングによるモータ移動筒100やガイドバー151に対する移動量を大きくすると、メインガイドバー151やサブガイドバー152の長さやモータ移動筒100の長さを長くする必要があり大型化する。
実施形態によると、モータ移動筒100の被写体側に配置されている5群レンズL5が、その中でも最も被写体側に配置されている状態のときに、ズーミングよるモータ移動筒100やガイドバー151に対する移動量を小さくするので、メインガイドバー151やサブガイドバー152の長さを長くする必要がなく、レンズ鏡筒2の小型化、薄型化が可能となる。
【0036】
(3)6群レンズL6の移動量Y1とY2との関係
図5(a)に示すように、第1焦点距離(広角端W)において、6群レンズL6が最も像面側に配置される第2状態(W∞)での6群レンズL6の位置を図5(a)のW∞6で示す。図5(a)に示すW∞6の状態から、焦点距離を第2焦点距離(望遠端T)に変更すると、6群レンズL6は図5(b)に示すT∞6の位置へ移動する。このように、第2状態(W∞)から被写体距離は変更せずに、焦点距離を第2焦点距離(望遠端T)に変更した場合のモータ移動筒100に対する6群レンズL6の移動量をY2とする。なお、Y2は、第2状態(W∞)から焦点距離を第2焦点距離(望遠端T)へ変更した場合のメインガイドバー161に対する6群レンズL6の移動量としてもよいし、6群用駆動部6Mの駆動量としてもよい。
このときY2はY1より小さくなるように、モータ移動筒100の移動量Zを設定する。これにより、6群レンズL6が最も像面側に配置される状態から焦点距離を変更した場合に、モータ移動筒100に対する6群レンズL6の移動量Y2を小さくできるので、メインガイドバー161やモータ移動筒100を像面側に延ばす必要がない。そのため、光軸方向に薄型にすることができる。
【0037】
(4)5群レンズL5の移動量X2と6群レンズL6の移動量Y2との関係
第2状態(W∞)から焦点距離を第2焦点距離(望遠端T)に変更した場合のモータ移動筒100に対する6群レンズL6の移動量Y2は、第2状態(W∞)から焦点距離を第2焦点距離(望遠端T)に変更した場合のモータ移動筒100に対する5群レンズL5の移動量X2よりも小さくなるように、モータ移動筒100の移動量Zを設定する。
これにより、6群レンズL6が最も像面側に配置される状態から焦点距離を変更した場合に、モータ移動筒100に対する6群レンズL6の移動量Y2を小さくできるので、メインガイドバー161やモータ移動筒100を像面側に延ばす必要がない。そのため、光軸方向に薄型にすることができる。
【0038】
(3)及び(4)の効果
モータ移動筒100内において、被写体側に5群レンズL5、像側に6群レンズL6が配置されている。
モータ移動筒100の像側に配置されている6群レンズL6が、その中でも最も像側に配置されている状態のときに、ズーミングによるモータ移動筒100やガイドバー161に対する移動量を大きくすると、メインガイドバー161やサブガイドバー162の長さやモータ移動筒100の長さを長くする必要があり大型化する。
実施形態によると、モータ移動筒100の像側に配置されている6群レンズL6が、その中でも最も像側に配置されている状態のときに、ズーミングによるモータ移動筒100やガイドバー161に対する移動量を小さくするので、メインガイドバー161やサブガイドバー162の長さを長くする必要がなく、レンズ鏡筒2の小型化が可能となる。
【0039】
(5)5群レンズL5と6群レンズL6との位置関係
第1状態(広角端Wで、至近状態N)での6群レンズL6(WN6)は、第2状態(広角端Wで、無限遠状態∞)での5群レンズL5(W∞5)よりも像面側に配置される。また、第1状態(WN)から焦点距離を第2焦点距離(望遠端T)に変更した場合での6群レンズL6(TN6)は、第2状態(W∞)から焦点距離を第2焦点距離(望遠端T)に変更した場合での5群レンズL5(T∞5)よりも被写体側に配置される。つまり、図5(a)(b)に示すように、広角端Wにおいて最も像面側に5群レンズL5が配置される位置(W∞5)と最も被写体側に6群レンズL6が配置される位置(WN6)との位置関係は、望遠端Tにおいて最も像面側に5群レンズL5が配置される位置(T∞5)と最も被写体側に6群レンズL6が配置される位置(TN6)との位置関係とは反対になる。これにより、5群レンズL5はより像面側に、6群レンズL6はより被写体側に移動可能となり、ガイドバー151・161やモータ移動筒100の範囲内でより多く移動することができる。
【0040】
(5)の効果
至近N状態から無限遠∞状態に5群レンズL5と6群レンズL6とが同一方向に動くようなレンズ鏡筒2において、広角端Wでの5群レンズL5の無限状態(W∞5)と6群レンズL6の至近状態(WN6)との位置関係と、望遠端Tでの5群レンズL5の無限状態(T∞5)と6群レンズL6の至近状態(TN6)との位置関係が変わる。
これにより、5群レンズL5と6群レンズL6とを案内するガイドバー151,152,161,162を効率よく使用することができるため、レンズ鏡筒2の小型、薄型化が可能となる。
【0041】
(6)図6は、焦点距離を広角端Wから望遠端Tに変更した場合の、5群レンズL5の至近N状態での移動量と、6群レンズL6の無限遠∞状態での移動量と、モータ移動筒100の移動量を説明する図である。
至近N状態で、焦点距離を広角端Wから望遠端Tに変更した場合の5群レンズL5の移動量をXX1とする。無限遠∞状態で、焦点距離を広角端Wから望遠端Tに変更した場合の6群レンズL6の移動量をYY1とする。また、焦点距離を広角端Wから望遠端Tに変更した場合のモータ移動筒100の移動量をZZとする。
実施形態では、図6(a)に示すように、5群レンズL5の移動量XX1が、6群レンズL6の移動量YY1より大きい場合のモータ移動筒100の移動量ZZは、図6(b)に示すように、5群レンズL5の移動量XX1が、6群レンズL6の移動量YY1より小さい場合のモータ移動筒100の移動量ZZより大きい。
【0042】
(6)の効果
モータ移動筒100の移動軌跡をこのようにすることにより、図5(b)におけるX1及びY2を両方とも小さくなるようにすることができる。
【0043】
(7)モータ移動筒100は、レンズ鏡筒2が広角端Wから望遠端Tにズーミングすると、光軸OA方向に移動する。また、5群レンズL5及び6群レンズL6は、5群用駆動部5M及び6群用駆動部6Mによってモータ移動筒100に対して移動する。
このとき、5群レンズL5及び6群レンズL6は、モータ移動筒100に対して一方向に移動する。すなわち、5群レンズL5とモータ移動筒100の例えばカムピン101との位置関係は、無限遠∞に合焦している状態でズームした時に常に遠ざかる。また、6群レンズL6とモータ移動筒100の例えばカムピン101との位置関係も、無限遠∞に合焦している状態でズームした時に常に遠ざかる。
ただし、これに限らず、5群レンズL5及び6群レンズL6とモータ移動筒100の例えばカムピン101との位置関係は、無限遠∞に合焦している状態でズームした時に常に近づく又一定であってもよい。
なお、至近Nにおいて5群レンズL5及び6群レンズL6とモータ移動筒100との位置関係は、無限遠∞に合焦している状態でズームした時に常に近づく又は遠ざかる又は一定であってもよい。
【0044】
(7)の効果
5群レンズL5及び6群レンズL6とモータ移動筒100との位置関係が、無限遠∞に合焦している状態でズームした時に一方向でなく、逆方向に移動する場合があると(Uターンする場合があると)、5群用駆動部5M及び6群用駆動部6Mが逆回転することになる。
そうすると、5群用駆動部5M及び6群用駆動部6Mと、リードスクリューとの間のガタにより、その分遅れが生じてしまう可能性がある。
しかし、実施形態では5群用駆動部5M及び6群用駆動部6Mは常に一方向に回転するので、ガタが生じず、移動の遅れなどが発生することがない。
なお、レンズ鏡筒2は至近状態よりも無限遠状態でズーミングされる可能性が高いため、実施形態のように無限遠状態で逆回転しないようにするとよい。ただし、至近状態で逆回転しないようにしてもよく、無限遠状態と至近状態との両方の状態で逆回転しないようにしてもよい。
【0045】
上述した実施形態では、第1焦点距離を広角端W、第2焦点距離を望遠端Tとして説明したが、それに限らない。例えば第1焦点距離がミドル1であり、第2焦点距離がミドル1よりも焦点距離が長いミドル2の状態であってもよい。
また、上述した実施形態では、5群レンズL5は、広角端W及び望遠端Tにおいて、被写体距離が至近Nの場合に最も被写体側に配置され、被写体距離が無限遠∞の場合に最も像面側に配置されるものとして説明したが、それに限らない。例えば被写体距離が無限遠∞の場合に最も被写体側に配置され、被写体距離が至近Nの場合に最も像面側に配置されてもよい。
また、6群レンズL6は、第1焦点距離(広角端W)及び第2焦点距離(望遠端T)において、被写体距離が至近Nの場合に最も被写体側に配置され、被写体距離が無限遠∞の場合に最も像面側に配置されるものとして説明したが、それに限らない。例えば被写体距離が無限遠∞の場合に最も被写体側に配置され、被写体距離が至近Nの場合に最も像面側に配置されてもよい。
なお、上述した実施形態に限らず任意の組み合わせでも良い。
【符号の説明】
【0046】
OA:光軸、2:レンズ鏡筒、3:カメラボディ、5M:5群用駆動部、50:5群枠、51:5群保持部、6M:6群用駆動部、60:6群枠、81:ズームリング、82:外カム筒、83:内カム筒、84:外固定筒、85:内固定筒、86:フォーカスリング、90:制御部、92:カムフォロア、100:モータ移動筒、101:カムピン、103:前壁部、151:メインガイドバー、152:サブガイドバー、161:メインガイドバー、162:サブガイドバー、170:ガイドバー押さえ部材、501:ユニット枠、502:リードスクリュー、503:移動ラック、511:メインガイドバー係合部、511a:前壁、511b:後壁、511c:遮光部、511d:側壁、511e:ガイドバー挿通孔、512:サブガイドバー係合部
図1
図2
図3
図4
図5
図6