(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】導電性ピラー、接合構造、電子機器および導電性ピラーの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/60 20060101AFI20220928BHJP
【FI】
H01L21/92 603A
H01L21/60 311S
(21)【出願番号】P 2021554163
(86)(22)【出願日】2020-09-17
(86)【国際出願番号】 JP2020035176
(87)【国際公開番号】W WO2021079659
(87)【国際公開日】2021-04-29
【審査請求日】2021-12-02
(31)【優先権主張番号】P 2019194504
(32)【優先日】2019-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】山口 亮太
(72)【発明者】
【氏名】矢田 真
【審査官】安田 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0061796(US,A1)
【文献】特開2014-111800(JP,A)
【文献】国際公開第2005/025787(WO,A1)
【文献】特開2005-109467(JP,A)
【文献】特開2015-122435(JP,A)
【文献】特開2001-015869(JP,A)
【文献】特開2009-194357(JP,A)
【文献】特開2017-152646(JP,A)
【文献】特開2016-115846(JP,A)
【文献】特開2010-109380(JP,A)
【文献】特開2014-143305(JP,A)
【文献】特開平08-222840(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/60 -21/607
H01L 21/3205-21/3215
H01L 21/768
H01L 23/48 -23/538
H01L 25/00 -25/18
H05K 1/09 - 1/18
H05K 3/10 - 3/28
H05K 3/32 - 3/34
G03F 7/40 - 7/42
H01B 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に設けられた金属微粒子の焼結体で構成され、
前記金属微粒子のX線小角散乱測定法を用いて測定した平均粒子径が1μm未満であり、
前記金属微粒子がチオエーテル型有機化合物を用いて分散されたものであり、
前記焼結体の上面から前記基材に向かって延出する複数の溝部を有し 、かつ、前記基材側に窪んだ凹型形状であることを特徴とする導電性ピラー。
【請求項2】
前記金属微粒子が、AgおよびCuから選択される1種以上の金属であることを特徴とする請求項1に記載の導電性ピラー。
【請求項3】
基材と、基材と対向配置される被接合部材との間に配置された接合構造であって、
基材上に設けられた金属微粒子の焼結体で構成され、金属微粒子のX線小角散乱測定法を用いて測定した平均粒子径が1μm未満であり、
前記金属微粒子がチオエーテル型有機化合物を用いて分散されたものであり、
焼結体の上面から前記基材に向かって延出する複数の溝部を有し、かつ、前記基材側に窪んだ凹型形状である導電性ピラーと、
前記導電性ピラーの前記
凹部形状に沿って設けられた接合層と、
前記溝部内に前記接合層の一部が充填されたアンカー部と、
を有することを特徴とする接合構造。
【請求項4】
前記接合層が、Sn、Pb、AgおよびCuから選択される1種以上の金属を含有する合金からなることを特徴とする請求項3に記載の接合構造。
【請求項5】
前記導電性ピラーと前記接合層との間に、金属間化合物層を有することを特徴とする請求項3または4に記載の接合構造。
【請求項6】
請求項3~5のいずれか一項に記載の接合構造を含むことを特徴とする電子機器。
【請求項7】
前記接合構造を複数含み、複数の接合構造のうち、一部または全部が異なる形状である
請求項6に記載の電子機器。
【請求項8】
基材上に、チオエーテル型有機化合物を用いて
分散された平均一次粒子径1μm未満の金属微粒子を用いて柱状体を形成する工程と、
焼結体を形成する工程の前に、前記柱状体の少なくとも表面を酸素濃度200ppm以上の酸素含有雰囲気に暴露する工程と、
前記柱状体を焼結して、上面に前記基材側に窪んだ凹型形状を有する焼結体を形成する工程と、
を有することを特徴とする導電性ピラーの製造方法。
【請求項9】
前記金属微粒子が、AgおよびCuから選択される1種以上の金属であることを特徴とする請求項8に記載の導電性ピラーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性ピラー、接合構造、電子機器および導電性ピラーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体チップと半導体基板とを電気的に接続する方法として、フリップチップ実装法が用いられている。フリップチップ実装法は、半導体チップ上に配置された電極パッド上にバンプを形成し、バンプを介して半導体チップと半導体基板とを対向配置し、加熱することによりバンプを溶融して接合する方法である。また、フリップチップ実装法では、半導体チップ上に配置された電極パッド上に導電性ピラーを形成し、その上にバンプを形成する場合がある。
【0003】
電極パッド上に形成される導電性ピラーとして、銅ピラーがある。銅ピラーは、従来、以下に示す方法により形成されている。電極パッドを有する半導体チップ上に、メッキ下地層とレジスト層とをこの順に形成する。次に、レジスト層の一部を除去して、電極パット上のメッキ下地層を露出させる。続いて、電気メッキ法を用いてメッキ下地層上に銅ピラーを形成する。その後、レジスト層を除去し、レジスト層の下に配置されていたメッキ下地層を、エッチングにより除去する。
【0004】
電気メッキ法を用いずに銅ピラーを形成する方法として、金属粒子およびはんだを用いる方法が報告されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、半導体チップ上に従来の導電性ピラーを形成し、その上に形成したバンプを介して半導体チップと半導体基板とを電気的に接続した場合、半導体チップと半導体基板との接合強度が十分に得られない場合があった。このため、バンプなどの接合層を介して半導体チップと半導体基板とを高い接合強度で接合できる導電性ピラーが求められていた。
【0007】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、基材上に設けられ、基材と被接合部材とを接合層を介して高い接合強度で接合できる導電性ピラーおよびその製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、本発明の導電性ピラーを有し、基材と被接合部材とを高い接合強度で接合できる接合構造および電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[1] 基材上に設けられた金属微粒子の焼結体で構成され、
前記金属微粒子のX線小角散乱測定法を用いて測定した平均粒子径が1μm未満であり、
前記焼結体の上面が、前記基材側に窪んだ凹型形状であることを特徴とする導電性ピラー。
[2] 前記金属微粒子が、AgおよびCuから選択される1種以上の金属であることを特徴とする[1]に記載の導電性ピラー。
【0009】
[3] 前記基材と、前記基材と対向配置される被接合部材との間に配置された接合構造であって、
基材上に設けられた金属微粒子の焼結体で構成され、前記金属微粒子のX線小角散乱測定法を用いて測定した平均粒子径が1μm未満であり、前記焼結体の上面が、前記基材側に窪んだ凹型形状である導電性ピラーと、
前記導電性ピラーの前記凹部形状に沿って設けられた接合層とを有することを特徴とする接合構造。
[4] 前記導電性ピラーが上面から前記基材に向かって延出する複数の溝部を有し、 前記溝部内に前記接合層の一部が充填されたアンカー部を有することを特徴とする[3]に記載の接合構造。
【0010】
[5] 前記接合層が、Sn、Pb、AgおよびCuから選択される1種以上の金属を含有する合金からなることを特徴とする[3]または[4]に記載の接合構造。
[6] 前記導電性ピラーと前記接合層との間に、金属間化合物層を有することを特徴とする[3]~[5]のいずれかに記載の接合構造。
【0011】
[7] [3]~[6]のいずれかに記載の接合構造を含むことを特徴とする電子機器。[8] 前記接合構造を複数含み、複数の接合構造のうち、一部または全部が異なる形状である[7]に記載の電子機器。
【0012】
[9] 基材上に、平均一次粒子径1μm未満の金属微粒子を用いて柱状体を形成する工程と、
前記柱状体を焼結して、上面に前記基材側に窪んだ凹型形状を有する焼結体を形成する工程とを有することを特徴とする導電性ピラーの製造方法。
【0013】
[10] 前記金属微粒子が、AgおよびCuから選択される1種以上の金属であることを特徴とする[9]に記載の導電性ピラーの製造方法。
[11] 前記焼結体を形成する工程の前に、前記柱状体の少なくとも表面を酸素濃度200ppm以上の酸素含有雰囲気に暴露する工程を有することを特徴とする[9]または[10]に記載の導電性ピラーの製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明の導電性ピラーは、基材上に設けられた金属微粒子の焼結体で構成され、金属微粒子のX線小角散乱測定法を用いて測定した平均粒子径が1μm未満であり、焼結体の上面が、基材側に窪んだ凹型形状である。このため、導電性ピラーの凹部形状に沿って接合層を設けることにより、導電性ピラーの凹部形状に入り込んだ接合層が形成される。しかも、本発明の導電性ピラーは、X線小角散乱測定法を用いて測定した平均粒子径が1μm未満である金属微粒子の焼結体からなり、金属微粒子が焼結により融着した多孔質構造を有する。このため、接合層を形成する際に、焼結体の多孔質構造に、接合層となる溶融した材料が入り込んで固化する。これらのことから、本発明の導電性ピラーは、接合層との接合面積が大きく、例えば、電気メッキ法で形成されることにより上面が基材と平行な平面とされた緻密な金属からなる導電性ピラーと比較して、接合層と高い接合強度で接合される。その結果、本発明の導電性ピラーによれば、基材と被接合部材とを接合層を介して高い接合強度で接合できる。
【0015】
さらに、本発明の導電性ピラーは、X線小角散乱測定法を用いて測定した平均粒子径が1μm未満である金属微粒子の焼結体からなり、金属微粒子が焼結により融着した多孔質構造を有するため、電気メッキ法などを用いて形成された緻密なバルク金属と比較して、熱膨張率の差によって生じる応力を緩和でき、優れた耐久性が得られる。
【0016】
本発明の接合構造は、基材と被接合部材との間に配置され、本発明の導電性ピラーと、導電性ピラーの凹部形状に沿って設けられた接合層とを有する。したがって、本発明の接合構造は、導電性ピラーの凹部形状に接合層が入り込んだものであり、接合層を介して基材と被接合部材とが高い接合強度で接合されたものとなる。
本発明の電子機器は、本発明の接合構造を含むため、基材と被接合部材とが高い接合強度で接合されたものとなる。
本発明の導電性ピラーの製造方法によれば、電気メッキ法を用いずに、基材と被接合部材とを接合層を介して高い接合強度で接合できる本発明の導電性ピラーを製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本実施形態の導電性ピラーの一例を示した側面図である。
【
図2】
図2(A)は
図1に示した導電性ピラーの平面図である。
図2(B)は
図2(A)に示した導電性ピラーをA-A´線に沿って切断した断面図である。
【
図3】
図3(A)~
図3(C)は、
図1および
図2に示す導電性ピラーの製造方法の一例を説明するための工程図である。
【
図4】
図4(A)は、本実施形態の接合構造の一例を示した断面図である。
図4(B)は、本実施形態の接合構造の他の一例を示した断面図である。
【
図5】
図5(A)~
図5(C)は、
図4(A)に示す接合構造の製造方法の一例を説明するための工程図である。
【
図6】
図6(A)は、実施例の導電性ピラーの断面を撮影した顕微鏡写真である。
図6(B)は、
図6(A)に示す実施例の導電性ピラーの断面の一部を撮影した拡大顕微鏡写真である。
図6(C)は、実施例の導電性ピラーの上面を撮影した顕微鏡写真である。
【
図7】
図7は、実施例の導電性ピラーを形成している焼結体の凹部形状に沿って接合層を形成し、レジスト層を除去した後の状態における断面を撮影した顕微鏡写真である。
【
図8】
図8は、実施例において基材と被接合部材とを接合し、封止樹脂を充填した状態の断面を撮影した顕微鏡写真である。
【
図9】
図9は、銅微粒子の粒子径分布を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の導電性ピラー、接合構造、電子機器および導電性ピラーの製造方法について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合がある。このため、各構成要素の寸法比率などは、実際とは異なっている場合がある。
【0019】
[導電性ピラー]
図1は、本実施形態の導電性ピラーの一例を示した側面図である。
図2(A)は
図1に示した導電性ピラーの平面図である。
図2(B)は
図2(A)に示した導電性ピラーをA-A´線に沿って切断した断面図である。
本実施形態の導電性ピラー1は、
図1に示すように、焼結体12で構成されている。焼結体12は、
図1に示すように、電極パッド13を有する基材11上に設けられている。
【0020】
電極パッド13を有する基材11としては、特に限定されるものではなく、任意の電気回路が形成された半導体チップ、インターポーザなどが挙げられる。基材11の材料としては、例えば、銅などの金属、セラミック、シリコン、樹脂、およびこれらの複合材料など、基材11に使用される公知の材料を用いることができる。また、電極パッド13の材料としては、Ti、Cu、Al、Auなどの金属または合金からなる導電材料を用いることができる。電極パッド13は、1種類の材料からなる単層構造のものであってもよいし、2種類以上の材料で形成された多層構造のものであってもよい。
【0021】
焼結体12は、
図1、
図2(A)および
図2(B)に示すように、略円柱状の外形形状を有する。焼結体12が、略円柱状の外形形状を有するものであると、後述する接合層との接合性が良好となり、基材11と、基材11と接合される被接合部材とがより高い接合強度で接合されるため、好ましい。
焼結体12の大きさ(導電性ピラー1の大きさ)は、電子機器の小型化に伴う接合構造の微細化に対応できるように、直径100μm以下であることが好ましく、更に好ましくは50μm以下であり、特に好ましくは30μm以下である。焼結体12の大きさ(導電性ピラー1の大きさ)は、後述する接合層との接合性および導電性がより一層良好なものとなるため、直径5μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましい。
【0022】
焼結体12の平面形状は、
図2(A)に示す略円形形状に限定されるものではなく、電極パッド13の平面形状などに応じて適宜決定できる。焼結体12の平面形状は、例えば、略矩形などの多角形状であってもよいし、略楕円形、略長円形などの形状であってもよい。
【0023】
焼結体12の上面12bは、
図2(B)に示すように、基材11側に窪んだ凹型形状を有している。凹部形状は、
図1、
図2(A)および
図2(B)に示すように、略半球型の形状を有することが好ましい。この場合、焼結体12の上面12bと、後述する接合層との接触面積が広いものとなり、焼結体12と接合層との接合性がより一層良好となる。その結果、基材11と、基材11と接合される被接合部材とがより高い接合強度で接合されるため、好ましい。
【0024】
焼結体12の上面12bには、
図2(B)に示すように、上面12bから基材11に向かって延出する複数の溝部12aが形成されていることが好ましい。焼結体12が、複数の溝部12aを有している場合、後述する接合層となる材料が溶融して溝部12a内に入り込み、その後に硬化することにより、アンカー部が形成される。その結果、焼結体12と接合層との接合性がより一層良好となり、基材11と、基材11と接合される被接合部材とがより高い接合強度で接合されるため、好ましい。
【0025】
焼結体12は、平均粒子径が1μm未満の金属微粒子の焼結体からなり、金属微粒子が焼結により融着した多孔質構造を有する。
本実施形態においては、焼結体12を形成している金属微粒子の平均粒子径として、X線小角散乱測定法(Small-Angle X-ray Scattering、SAXS)を用いて測定した測定値を用いる。
【0026】
本実施形態では、導電性ピラー1が、平均粒子径1μm未満の金属微粒子の焼結体12であるので、高密度で金属微粒子を含む導電性の良好なものとなる。また、導電性ピラー1が平均粒子径1μm未満の金属微粒子の焼結体12であると、例えば、焼結体12が略円柱状であって、直径が接合構造の微細化に対応できる100μm以下の小さいものであっても、十分な数の金属微粒子を高密度で含むことにより、十分な導電性を有するものとなる。したがって、本実施形態の導電性ピラー1は、接合構造の微細化に対応できる。
【0027】
また、導電性ピラー1が平均粒子径1μm未満の金属微粒子の焼結体12であるので、平均粒子径1μm以上の金属微粒子の焼結体である場合と比較して、焼結体12の表面に露出する金属微粒子の表面積が広くなる。このため、焼結体12と、電極パッド13および後述する接合層との接合性および電気的接続が良好となる。
さらに、導電性ピラー1が平均粒子径1μm未満の金属微粒子の焼結体12であるため、焼結によって得られる金属微粒子同士の融着機能により、導電性ピラー1の形状を形成できる。
【0028】
これに対し、金属微粒子の平均粒子径が1μm以上である場合、焼結することによる金属微粒子同士の融着機能を用いて、導電性ピラーの形状を形成することはできない。したがって、金属微粒子の平均粒子径が1μm以上である場合、導電性ピラー中に、金属微粒子同士を接合するためのパインダー樹脂を含有させる必要がある。よって、金属微粒子の平均粒子径が1μm以上である場合、本実施形態の導電性ピラー1と比較して、耐熱性能が劣るものとなる。
【0029】
導電性ピラー1は、SAXSを用いて測定した平均粒子径が100nm以下である金属微粒子の焼結体12であることがより好ましい。金属微粒子の平均粒子径が100nm以下であると、より高密度で金属微粒子を含み、表面に露出する金属微粒子の表面積がより広い焼結体12からなる導電性ピラー1となり、好ましい。
【0030】
金属微粒子として用いられる金属種としては、金属微粒子の安定性の観点から、Au、Ag、Cu、Niから選択される一種以上を用いることが好ましく、AgおよびCuから選択される1種以上の金属であることがより好ましい。金属種は、一種類のみであってもよいし、二種類以上の混合物であってもよいし、二種類以上の金属元素を含む合金であっても良い。
【0031】
[導電性ピラーの製造方法]
次に、本実施形態の導電性ピラーの製造方法について、例を挙げて詳細に説明する。
図3(A)~
図3(C)は、
図1および
図2に示す導電性ピラー1の製造方法の一例を説明するための工程図である。
本実施形態では、
図3(A)~
図3(C)に示すように、基材11上に3つの導電性ピラー1を形成する場合を例に挙げて説明するが、基板11上に形成する導電性ピラー1の数は、3つに限定されるものではなく、1つまたは2つでもよいし、4つ以上であってもよく、必要に応じて決定される。また、基板11上に形成する複数の導電性ピラー1の配置は、基材11上に設けられた電極パッド13の配置に応じて、適宜決定される。
【0032】
図1に示す導電性ピラー1を製造するには、まず、電極パッド13を有する基材11上にレジスト層16を形成する。レジスト層16の材料としては、例えば、フォトレジスト (photo-resist)、ポリイミド、エポキシ、エポキシモールディングコンパウンド(epoxy-molding compound:EMC)など、各種ドライフィルムを用いることができる。
【0033】
次に、本実施形態では、レジスト層16をパターニングすることにより、レジスト層16の一部を除去して、電極パット13を露出させる円柱状の凹部からなるレジスト開口部16aを形成する(
図3(A)参照)。レジスト層16のパターニング方法としては、公知の方法を用いることができる。レジスト開口部16aは、焼結体12を製造するための鋳型として機能する。
【0034】
続いて、基材11上に、平均一次粒子径1μm未満の金属微粒子を用いて柱状体を形成する。具体的には、
図3(B)に示すように、スキージ12dを用いて、金属微粒子を含む導電性ペースト12cを、レジスト開口部16aに充填する。
導電性ペースト12cをレジスト開口部16aに充填する際には、アルゴンガス雰囲気などの不活性ガス雰囲気下または還元性ガス雰囲気下で行ってもよい。この場合、導電性ペースト12cに含まれる金属微粒子が酸化されにくく、好ましい。
【0035】
導電性ペースト12cの充填に使用するスキージ12dとしては、例えば、プラスチック、ウレタンゴムなどのゴム、セラミック、金属などからなるものを用いることができる。
導電性ペースト12cをレジスト開口部16aに充填する方法としては、スキージ12dを用いる方法に限定されるものではなく、ドクタープレード、ディスペンサ、インクジェット、プレス注入、真空印刷、加圧による押込みなどの方法を用いてもよい。
【0036】
本実施形態においてレジスト開口部16aに充填する導電性ペースト12cとしては、平均一次粒子径1μm未満の金属微粒子を含むものを用いる。導電性ペースト12cとしては、例えば、平均一次粒子径1μm未満の金属微粒子と、溶媒と、必要に応じて含有される分散剤、保護剤およびその他の添加剤との混合物などを用いることができる。金属微粒子および分散剤は、導電性ペースト12c中に、金属微粒子と分散剤との複合体として含有されていてもよい。また、金属微粒子および保護剤は、導電性ペースト12c中に、金属微粒子と保護剤との複合体として含有されていてもよい。導電性ペースト12cは、例えば、導電性ペースト12cとなる材料を、公知の方法で混合することにより製造できる。
【0037】
導電性ピラー1の材料として使用される導電性ペースト12cに含まれる金属微粒子の金属種は、製造される導電性ピラー1を形成する金属微粒子に対応するものを用いる。 導電性ペースト12cに含まれる金属微粒子の形状については、特に制限はない。例えば、金属微粒子として、球状、フレーク状などの金属微粒子を用いることができる。
【0038】
本実施形態において、導電性ピラー1の材料として使用される金属微粒子の平均一次粒子径は、焼結後の焼結体12(導電性ピラー1)を形成する金属微粒子のSAXSを用いて測定した平均粒子径が、所定の範囲内となるように、適宜決定される。例えば、SAXSを用いて測定した平均粒子径が1μm未満である金属微粒子の焼結体12からなる導電性ピラー1を製造する場合には、導電性ペースト12cに含まれる金属微粒子の平均一次粒子径を1μm未満とし、SAXSを用いて測定した平均粒子径が100nm以下である金属微粒子の焼結体12からなる導電性ピラー1を製造する場合には、導電性ペースト12cに含まれる金属微粒子の平均一次粒子径を100nm以下とする。
【0039】
本実施形態において、導電性ピラー1の材料として使用される金属微粒子の粒子径が1μm未満であるとは、金属微粒子の平均一次粒子径が1μm未満であることを意味する。
【0040】
導電性ピラー1の材料として使用される金属微粒子の平均一次粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)観察により算出できる。
本実施形態では、導電性ピラー1の材料として使用される金属微粒子の平均一次粒子径として、TEMを用いて撮影した写真の画像を解析することにより算出した値を用いる。
【0041】
具体的には、金属微粒子を、任意の濃度で溶媒に分散させた分散液を、カーボン膜被覆グリッド上にキャストし、乾燥させて溶媒を除去し、TEM観察用の試料とする。得られたTEM像の中から無作為に微粒子を200個抽出する。抽出した微粒子それぞれの面積を求め、真球に換算したときの粒子径を個数基準として算出した値を、平均一次粒子径として採用する。無作為に抽出される金属微粒子から、2個の粒子が重なったものは除外する。多数の粒子が、接触又は二次凝集して集合している場合には、集合を構成している金属微粒子はそれぞれ独立した粒子であるものとして取り扱う。例えば、5個の一次粒子が接触又は二次凝集して1つの集合を構成している場合、集合を構成する5個の粒子それぞれが金属微粒子の平均一次粒子径の算出対象となる。
【0042】
導電性ペースト12cに含まれる溶媒としては、金属微粒子が均一に分散した導電性ペースト12cが得られるように、導電性ペースト12c中に含まれる金属微粒子(金属微粒子が、分散剤との複合体および/または保護剤との複合体である場合には複合体)を凝集させないものを用いることが好ましい。溶媒としては、水酸基を含む1種以上の溶媒を用いてもよいし、水酸基を含まない1種以上の溶媒を用いてもよいし、水酸基を含有する溶媒と水酸基を含有しない溶媒とを混合して用いてもよい。
【0043】
水酸基を含む溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、1-プロパノール、イソプロパノール、1-ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、アミルアルコール、tert-アミルアルコール、1-ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、2-エチル-1-ブタノール、1-ヘプタノール、1-オクタノール、4-メチル-2-ペンタノール、ネオペンチルグリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、イソブチレングリコール、2,2-ジメチル-1,3-ブタンジオール、2-メチル-1,3-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、ジプロピレングリコール、2,5-ヘキサンジオール、グリセリン、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテルなどが挙げられる。
【0044】
水酸基を含まない溶媒としては、例えば、アセトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、アセトフェノン、アクリロニトリル、プロピオニトリル、n-ブチロニトリル、イソブチロニトリル、γ-ブチロラクトン、ε-カプロラクト、プロピオラクトン、炭酸-2,3-ブチレン、炭酸エチレン、炭酸1,2-エチレン、炭酸ジメチル、炭酸エチレン、マロン酸ジメチル、乳酸エチル、安息香酸メチル、サリチル酸メチル、二酢酸エチレングリコール、ε-カプロラクタム、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルホルムアミド、N-メチルアセトアミド、N-エチルアセトアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、ホルムアミド、ピロリジン、1-メチル-2-ピロリジノン、ヘキサメチルリン酸トリアミド、ナフタレンなどが挙げられる。
【0045】
導電性ペースト12cに含有される添加剤としては、例えば、シリコン素系レベリング剤、フッ素系レベリング剤、消泡剤などが挙げられる。
【0046】
導電性ペースト12cに含有される分散剤としては、例えば、チオエーテル型有機化合物などを用いることができる。分散剤として好適なチオエーテル型有機化合物としては、例えば、下記式(1)で示されるエチル3-(3-(メトキシ(ポリエトキシ)エトキシ)-2-ヒドロキシプロピルスルファニル)プロピオナート〔ポリエチレングリコールメチルグリシジルエーテル(ポリエチレングリコール鎖の分子量200~3000(炭素数8~136))への3-メルカプトプロピオン酸エチルの付加化合物〕などが挙げられる。
【0047】
【化1】
(式(1)中、Meはメチル基を示し、Etはエチル基を示す。nは200~3000である。)
【0048】
式(1)で示される化合物は、ポリエチレングリコールメチルグリシジルエーテルへの3-メルカプトプロピオン酸エチルの付加化合物であり、ポリエチレングリコールメチルグリシジルエーテルにおけるポリエチレングリコール鎖の分子量が200~3000(炭素数8~136)のものである。式(1)で示される化合物として、具体的には、例えば、ポリエチレングリコール鎖が分子量200(炭素数8)、1000(炭素数46)、2000(炭素数91)、3000(炭素数136)であるものなどが挙げられる。
【0049】
ポリエチレングリコールメチルグリシジルエーテルにおけるポリエチレングリコール鎖の分子量が200以上であると、金属微粒子を溶媒に良好に分散させることができ、分散不良による凝集を抑制できる。また、分子量が3000以下であると、導電性ペースト12cを焼結して形成される焼結体12中に、分散剤が残留しにくくなる。その結果、後述する接合層となる材料に対する焼結体12の濡れ性が良好となり、接合層となる材料が焼結体12の複数の溝部12a内に充填されやすく、アンカー部が形成されやすくなる。
【0050】
式(1)で示される化合物は、金属微粒子と複合体を形成する。式(1)で示される化合物と金属微粒子との複合体は、水、エチレングリコールなどの溶媒に容易に均一に分散する。したがって、式(1)で示される化合物と金属微粒子との複合体を用いることで、容易に金属微粒子が均一に分散した導電性ペースト12cが得られる。金属微粒子が均一に分散した導電性ペースト12cを用いることにより、金属微粒子が均一に配置された特性の安定した導電性ピラー1が得られる。
【0051】
金属微粒子と分散剤との複合体は、例えば、金属微粒子と分散剤とを混合して反応させる方法により製造できる。金属微粒子と分散剤との複合体としては、例えば、以下に示す方法により製造した複合体〔1〕および複合体〔2〕などが挙げられる。複合体〔1〕および複合体〔2〕は必要に応じて精製してから導電性ペースト12cの材料として用いてもよい。
【0052】
<複合体〔1〕の製造>
酢酸銅(II)-水和物と、分散剤としての式(1)で示される化合物と、エチレングリコールとからなる混合物に、窒素を吹き込みながら加熱し、攪拌し、脱気してから室温に戻す。次いで、室温に戻した混合物に、ヒドラジン水和物を水で希釈したヒドラジン溶液を滴下して、銅を還元する。
以上の工程により、銅からなる金属微粒子と、式(1)で示される化合物からなる分散剤との複合体〔1〕が得られる。
【0053】
<複合体〔2〕の製造>
硝酸銀(I)と、分散剤としての式(1)で示される化合物と、蒸留水とからなる混合物に、還元剤としてのジメチルアミノエタノールと蒸留水との混合液を滴下する。その後、混合液を加熱して還元反応を終結させる。
以上の工程により、銀からなる金属微粒子と、式(1)で示される化合物からなる分散剤との複合体〔2〕が得られる。
【0054】
導電性ペースト12cに含有される保護剤としては、例えば、アミン化合物、カルボン酸、カルボン酸塩などを用いることができる。保護剤として好適なアミン化合物としては、例えば、オクチルアミン、N,N-ジメチルエチレンジアミン、3-(2-エチルヘキシルオキシ)プロピルアミンから選ばれる1種または2種以上などが挙げられる。保護剤として好適なカルボン酸としては、リノール酸などが挙げられる。
【0055】
オクチルアミン、N,N-ジメチルエチレンジアミン、3-(2-エチルヘキシルオキシ)プロピルアミン、リノール酸は、いずれも金属微粒子と複合体を形成し、金属と酸素との反応を抑制して、金属微粒子の酸化を防止する。したがって、これらの複合体を含む導電性ペースト12cを用いることにより、金属微粒子の酸化が抑制された導電性の良好な導電性ピラー1が得られる。
【0056】
金属微粒子と保護剤との複合体は、例えば、金属微粒子と保護剤とを混合して反応させる方法により製造できる。金属微粒子と保護剤との複合体としては、具体的には、例えば、以下に示す方法により製造した複合体〔3〕および複合体〔4〕などが挙げられる。複合体〔3〕および複合体〔4〕は必要に応じて精製してから導電性ペースト12cの材料として用いてもよい。
【0057】
<複合体〔3〕の製造>
硝酸銅と、保護剤としてのオクチルアミンおよびリノール酸とを、トリメチルペンタンに混合攪拌して溶解し、混合溶液とする。その後、この混合溶液に、水素化ホウ素ナトリウムを含むプロパノール溶液を滴下して銅を還元する。
以上の工程により、黒色の固体からなり、銅からなる金属微粒子と、有機物からなる保護剤との複合体〔3〕が得られる。
【0058】
<複合体〔4〕の製造>
アルゴンガス雰囲気下で、保護剤としてのN,N-ジメチルエチレンジアミンおよび3-(2-エチルヘキシルオキシ)プロピルアミンからなる混合液を加熱攪拌し、さらにシュウ酸銀を添加して加熱攪拌して反応させる。
以上の工程により、銀からなる金属微粒子と、有機物からなる保護剤との複合体〔4〕が得られる。
【0059】
本実施形態においては、金属微粒子を含む導電性ペースト12cを、レジスト開口部16aに充填して柱状体を形成した後、柱状体を焼結して焼結体12を形成する前に、柱状体の少なくとも表面(
図3(B)においては上面)を酸素濃度200ppm以上の酸素含有雰囲気に暴露する工程を行うことが好ましい。このことにより、柱状体の表面を形成している導電性ペースト12cに含まれる金属微粒子が酸化される。
【0060】
柱状体の少なくとも表面を暴露する酸素含有雰囲気における酸素濃度は、200ppm以上であることが好ましく、1000ppm以上であることがより好ましい。酸素含有雰囲気中の酸素濃度が200ppm以上であると、柱状体の表面を形成している導電性ペースト12cに含まれる金属微粒子の酸化が促進されるため、柱状体の少なくとも表面を酸素含有雰囲気に暴露する時間が短時間で済み、好ましい。
柱状体の少なくとも表面を暴露する酸素含有雰囲気における酸素濃度は、30%以下であることが好ましく、25%以下であることがより好ましく、大気中の酸素濃度(20.1%)以下であることがさらに好ましい。酸素含有雰囲気中の酸素濃度が30%以下であると、柱状体を形成している導電性ペースト12cに含まれる金属微粒子が、過剰に酸化されることを防止できる。
【0061】
柱状体の少なくとも表面を酸素濃度200ppm以上の酸素含有雰囲気に暴露する暴露時間は、暴露する温度、導電性ペースト12cに含まれる金属微粒子の種類などに応じて適宜決定できる。暴露時間は特に限定されないが、例えば、温度25℃の環境下で酸素濃度200ppm以上の酸素含有雰囲気に暴露する場合、1分~180分の範囲であることが好ましく、3分~60分の範囲であることがより好ましい。暴露時間が1分以上であると、柱状体の表面を形成している導電性ペースト12cに含まれる金属微粒子が十分に酸化される。その結果、柱状体を焼結することによって、十分な深さおよび数を有する複数の溝部12aが形成され、好ましい。また、暴露時間が180分以下であると、柱状体の表面を形成している導電性ペースト12cに含まれる金属微粒子が過剰に酸化されることを防止できる。
【0062】
柱状体を焼結して焼結体12を形成する前に、柱状体に含まれる金属微粒子が過剰に酸化されると、焼結後に得られる焼結体12の導電性が不十分になる恐れがある。柱状体に含まれる金属微粒子が過剰に酸化された場合には、焼結体12を形成した後に、必要に応じて従来公知の方法により焼結体12を還元すればよい。
酸素濃度200ppm以上の酸素含有雰囲気としては、例えば、大気が挙げられる。
【0063】
次に、柱状体を焼結して、
図3(C)に示すように、上面12bに基材11側に窪んだ凹型形状を有する焼結体12を形成する。焼結体12の凹型形状は、導電性ペースト12cからなる柱状体が焼結されることによって、レジスト16に対する濡れ性の良好な柱状体(導電性ペースト12c)が、レジスト開口部16aの内面と密着した状態を維持しつつ、柱状体に含まれる金属微粒子同士が融着して柱状体よりも体積が減少したことにより形成されるものと推定される。
【0064】
また、焼結体12を形成する工程の前に、柱状体の少なくとも表面(
図3(B)においては上面)を酸素濃度200ppm以上の酸素含有雰囲気に暴露する工程を行った場合、柱状体を焼結することにより、焼結体12の上面12bには、
図3(C)に示すように、上面12bから基材11に向かって延出する複数の溝部12aが形成される。これは、焼結体12となる柱状体の表面を形成している導電性ペースト12cに含まれる金属微粒子が、酸化されていることによるものと推定される。
【0065】
なお、従来の技術では、銅微粒子などの金属微粒子を含むペーストを基材上に塗布して焼結し、焼結体からなる配線などを形成する場合、金属微粒子を含むペーストを基板上に塗布する工程から焼成が完了するまでの一連の工程を不活性ガス雰囲気中で行っている。これは、金属微粒子を含むペースト中に含まれる銅微粒子などの金属微粒子が酸化される(例えば、特許第6168837号公報、特許第6316683号公報参照。)こと防ぐためである。したがって、従来の技術では、金属微粒子を含むペーストを基板上に塗布する工程から焼成が完了するまでの一連の工程の途中で雰囲気を変更することはなく、基板上に塗布された金属微粒子を含むペーストが、焼結される前に酸素を含む雰囲気に暴露されることはなく、焼結体の上面に溝部が形成されることはなかった。
【0066】
本実施形態においては、必要に応じて、柱状体を焼成する前に、柱状体に含まれる溶媒を低温で揮発させる仮焼成を行ってもよい。
柱状体を焼成する焼成方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、真空はんだリフロー装置、ホットプレート、熱風オーブンなどを用いることができる。
【0067】
柱状体の焼結温度および焼結時間は、柱状体(導電性ペースト12c)に含まれる金属微粒子同士が融着して、十分な導電性および強度を有する焼結体12が得られる範囲であればよい。焼成温度は、150~350℃であることが好ましく、200~250℃であることがより好ましい。焼成時間は、1~60分間の範囲であることが好ましく、5~15分間の範囲であることがより好ましい。
【0068】
金属微粒子が融着する温度は、金属微粒子に使用する金属種によって異なる。金属微粒子が融着する温度は、熱重量分析装置(TG-DTA)または示差走査熱量計(DSC)を用いて測定できる。
【0069】
焼結する際の雰囲気は特に限定されるものではなく、金属微粒子に使用する金属種に応じて決定できる。例えば、金属微粒子の金属種が貴金属である場合、不活性ガス雰囲気であってもよいし、大気中であってもよい。金属微粒子の金属種が卑金属である場合、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気下で焼結を行うことが好ましい。また、金属微粒子の金属種が卑金属である場合、焼結する際の雰囲気ガスとして、水素を含有したフォーミングガスを使用してもよいし、蟻酸などの還元成分を添加したガスを用いてもよい。
以上の工程により、本実施形態の導電性ピラー1が得られる。
【0070】
本実施形態の導電性ピラー1の製造方法では、SAXSを用いて測定した平均粒子径が1μm未満である金属微粒子の焼結体12を製造するために、平均一次粒子径1μm未満の金属微粒子を含む導電性ペースト12cを用いる。金属微粒子の平均一次粒子径が1μm未満である導電性ペースト12cは、レジスト開口部16aに充填する際の充填性が良好である。したがって、レジスト開口部16aに充填した導電性ペースト12c(柱状体)を焼結して形成された焼結体12からなる導電性ピラー1は、金属微粒子を高密度で含む導電性の良好なものとなる。また、導電性ペースト12cが良好な充填性を有するため、接合構造の微細化に対応できる微細な導電性ピラー1を形成できる。しかも、導電性ペースト12cが良好な充填性を有するため、導電性ペースト12c(柱状体)を焼結して形成された焼結体12は、電極パッド13および後述する接合層との接合性および電気的接続が良好となる。
【0071】
また、本実施形態の導電性ピラー1が、SAXSを用いて測定した平均粒子径が100nm以下の金属微粒子の焼結体12である場合、導電性ペースト12cとして、平均一次粒子径が100nm以下の金属微粒子を含むものを用いる。この導電性ペースト12cは、レジスト開口部16aに充填する際の充填性がより一層良好であり、より好ましい。 具体的には、導電性ペースト12cに含まれる金属微粒子の平均一次粒子径が100nm以下である場合、例えば、レジスト開口部16aが直径100μmの円柱形状を有する微細なものであっても、導電ペースト12cをレジスト開口部16内に高密度で充填できる。
【0072】
これに対し、例えば、SAXSを用いて測定した平均粒子径が1μm以上である金属微粒子の焼結体を製造するために、平均一次粒子径が1μm以上の金属微粒子を含む導電性ペーストを用いる場合、導電性ペーストのレジスト開口部への充填性が不十分となる。したがって、微細な導電性ピラーの製造が困難となり、接合構造の微細化に対応しにくい。
【0073】
また、本実施形態の導電性ピラー1の製造方法では、導電性ペースト12cに含まれる金属微粒子の平均一次粒子径が1μm未満であるので、ペースト12c(柱状体)を焼結することによって得られる金属微粒子同士の融着機能により、導電性ピラー1の形状を形成できる。
【0074】
[接合構造]
次に、本実施形態の接合構造について詳細に説明する。
図4(A)は、本実施形態の接合構造の一例を示した断面図である。
図4(A)に示す接合構造20は、上述した本実施形態の導電性ピラー1を有する。
図4(A)に示すように、本実施形態の接合構造20は、基材11と、基材11と対向配置される被接合部材21との間に配置されている。被接合部材21としては、例えば、任意の電気回路が形成され、表面に電極23を有する半導体パッケージなどが挙げられる。
【0075】
図4(A)には、基材11と被接合部材21との間に配置された3つの接合構造20を示しているが、基材11と被接合部材21との間に配置される接合構造20の数は、3つに限定されるものではなく、1つまたは2つでもよいし、4つ以上であってもよく、必要に応じて決定される。
本実施形態の接合構造20は、本実施形態の導電性ピラー1と、導電性ピラー1の凹部形状に沿って設けられた接合層22とを有する。
図4(A)に示す接合構造20では、
図3(C)に示す導電性ピラー1が、
図3(C)における上下方向を反転させた状態で設置されている。
本実施形態においては、接合層22が一種類の材料からなる単層構造である場合を例に挙げて説明するが、接合層は、二種類以上の材料が積層された多層構造のものであってもよい。
【0076】
接合層22の材料としては、Au、Ag、Cu、Sn、Ni、はんだ合金等を用いることができ、Sn、Pb、AgおよびCuから選択される1種以上の金属を含有する合金を用いることが好ましい。接合層22は、単一成分のみで形成されていてもよいし、複数の成分を含むものであってもよい。
接合層22の材料として用いるはんだ合金としては、Sn-Ag合金、Sn-Pb合金、Sn-Bi合金、Sn-Zn合金、Sn-Sb合金、Sn-Bi合金、Sn-In合金、Sn-Cu合金、SnにAu、Ag、Bi、InおよびCuからなる群より選ばれる2つの元素を添加した合金等を用いることができる。
【0077】
図4(A)に示すように、本実施形態の接合構造20では、導電性ピラー1の上面12b(
図4(A)においては下面)から基材11に向かって延出する複数の溝部12a内に、接合層22の一部が充填されてアンカー部が形成されている。このため、本実施形態の接合構造20では、導電性ピラー1の焼結体12と接合層22とがより一層高い接合強度で接合されたものとなる。
【0078】
図4(A)に示すように、本実施形態の接合構造20は、導電性ピラー1と接合層22との界面に金属間化合物層25を有する。金属間化合物層25は、導電性ピラー1と接合層22との接合強度を向上させる。金属間化合物層25は、接合層22中の成分が導電性ピラー1の内部に向かって拡散するとともに、導電性ピラー1(焼結体12)中の金属微粒子成分が接合層22の内部に向かって拡散することにより形成される。したがって、金属間化合物層25の組成は、導電性ピラー1(焼結体12)および接合層22を形成している金属種および焼結条件により変化する。
【0079】
図4(A)に示すように、基材11と被接合部材21との間における接合構造20の配置されていない領域には、封止樹脂26が充填されている。封止樹脂26の材料としては、エポキシ樹脂など従来公知のものを用いることができる。
【0080】
[接合構造の製造方法]
次に、
図4(A)に示す本実施形態の接合構造20の製造方法として、
図3(C)に示す導電性ピラー1を用いて接合構造を製造する場合を例に挙げて詳細に説明する。
図5(A)~
図5(C)は、
図4(A)に示す接合構造の製造方法の一例を説明するための工程図である。
【0081】
図4(A)に示す接合構造20を製造するには、
図5(A)に示すように、
図3(C)に示す焼結体12の基材11側に窪んだ凹型形状に、接合層22となる材料22aを供給して溶融(リフロー)させて固化させる。このことにより、焼結体12の凹部形状に沿って接合層22からなるバンプを設ける。得られた接合層22は、
図5(A)に示すように、レジスト層16と、接合層22となる材料22aとの表面エネルギー差により、凸曲面状に盛り上がった形状を有するものとなる。
【0082】
焼結体12の凹型形状に接合層22となる材料22aを供給する方法としては、例えば、ステンシルマスク法・ドライフィルム法などの印刷法、ボールマウント法、蒸着法、溶融はんだインジェクション法(IMS法)などを用いることができる。これらの中でも特に、
図5(A)に示すように、注入ヘッド22bを用いて溶融はんだを焼結体12の凹型形状に埋め込むIMS法を用いることが好ましい。IMS法を用いることで、接合層22となる材料22aであるはんだを、溶融した状態で焼結体12の凹型形状に供給でき、好ましい。
【0083】
本実施形態では、
図5(A)に示すように、焼結体12の上面12bに、上面12bから基材11に向かって延出する複数の溝部12aが形成されている。したがって、接合層22となる材料22aを溶融(リフロー)することにより、接合層22となる材料22aが溝部12a内に入り込み、溝部12a内に充填されてアンカー部が形成される。また、焼結体12の多孔質構造にも、接合層22となる溶融した材料22aが入り込んで固化する。
【0084】
また、焼結体12の凹型形状に供給された接合層22となる材料22aは、導電性ピラー1(焼結体12)中の金属微粒子成分と金属間化合物層25を形成する。焼結体12は、多孔質構造であるため、比表面積が大きい。このため、本実施形態では、例えば、導電性ピラーが電気メッキ法などを用いて形成された緻密なバルク金属からなるものである場合と比較して、素早く金属間化合物層25が形成される。
【0085】
次に、
図5(B)に示すように、レジスト層16を除去する。レジスト層16を除去する方法としては、公知の方法を用いることができる。
本実施形態では、接合層22を形成した後に、レジスト層16を除去する場合を例に挙げて説明したが、レジスト層16は、接合層22の形成後に除去しなくてもよい。レジスト層16を除去しない場合、レジスト層16は、基材11と後述する被接合部材とを積層することにより、基材11と被接合部材との間に配置される。
【0086】
次に、フリップチップ実装法により、基材11と被接合部材21とを電気的に接続する。具体的には、
図5(C)に示すように、焼結体12上に接合層22が形成された基材11と、被接合部材21とを対向配置させて積層する。本実施形態では、被接合部材21の電極23が設けられた面を上に向けて配置し、基材11の接合層22が形成された面を下に向けて配置する。そして、
図5(C)に示すように、被接合部材21の電極23と、基材11の接合層22とを重ね合わせた状態とする。その後、基材11と被接合部材21とを積層した状態で加熱して接合層22を溶融し、基材11と被接合部材21とを接合し、接合層22を固化させる。
以上の工程により、
図4(A)に示す接合構造20が得られる。
【0087】
その後、
図4(A)に示すように、基材11と被接合部材21との間における接合構造20の配置されていない領域に、封止樹脂26を充填する。封止樹脂26の充填方法としては、従来公知の方法を用いることができる。
【0088】
本実施形態の導電性ピラー1は、基材11上に設けられた金属微粒子の焼結体12で構成され、金属微粒子のSAXSを用いて測定した平均粒子径が1μm未満であり、焼結体12の上面12b(
図4(A)においては下面)が、基材11側に窪んだ凹型形状である。このため、導電性ピラー1の凹部形状に沿って接合層22を設けることにより、導電性ピラー1の凹部形状に入り込んだ接合層22が形成される。しかも、本実施形態の導電性ピラー1は、SAXSを用いて測定した平均粒子径が1μm未満である金属微粒子の焼結体12からなり、金属微粒子が焼結により融着した多孔質構造を有する。このため、接合層22を形成する際に、焼結体12の多孔質構造に、接合層22となる溶融した材料22aが入り込んで固化する。これらのことから、本実施形態の導電性ピラー1は、接合層22との接合面積が大きく、例えば、電気メッキ法で形成されることにより上面が基材と平行な平面とされた緻密な金属からなる導電性ピラーと比較して、接合層22と高い接合強度で接合される。その結果、本実施形態の導電性ピラー1によれば、基材11と被接合部材21とを接合層22を介して高い接合強度で接合できる。
【0089】
また、本実施形態の導電性ピラー1は、平均粒子径1μm未満の金属微粒子の焼結体12からなり、金属微粒子が焼結により融着した多孔質構造を有するため、電気メッキ法などを用いて形成された緻密なバルク金属と比較して、熱膨張率の差によって生じる応力を緩和でき、優れた耐久性が得られる。
【0090】
本実施形態の導電性ピラー1の製造方法は、基材11上に、平均一次粒子径1μm未満の金属微粒子を用いて柱状体を形成する工程と、前記柱状体を焼結して、上面12bに基材11側に窪んだ凹型形状を有する焼結体12を形成する工程とを有する。したがって、本実施形態の導電性ピラー1の製造方法によれば、電気メッキ法を用いずに、導電性ピラー1を製造できる。
【0091】
これに対し、例えば、電気メッキ法を用いて基材上に銅ピラーを形成する場合、銅ピラーを形成した後、レジスト層の下に配置されていたメッキ下地層をエッチング除去する際に、メッキ下地層とともに基材の一部が除去されてしまうことがあった。また、電気メッキ法を用いて銅ピラーを形成する場合、銅ピラーの形成に必要な設備を導入するコストが大きく、有害廃液による環境負荷も大きかった。
【0092】
本実施形態の接合構造20は、基材11と被接合部材21との間に配置され、本実施形態の導電性ピラー1と、導電性ピラー1の凹部形状に沿って設けられた接合層22とを有する。したがって、本実施形態の接合構造20は、導電性ピラー1の凹部形状に接合層22が入り込んだものであり、接合層22を介して基材11と被接合部材21とが高い接合強度で接合されたものとなる。
【0093】
これに対し、特許文献1には、金属粒子を用いて導電性ピラーを作製する方法が開示されている。しかし、特許文献1には、金属粒子の粒子径について何ら記載されておらず、どのような粒子径の金属粒子を用いて導電性ピラーを作成することにより、高い接合強度が得られるかについては不明であった。
【0094】
(他の例)
本実施形態では、
図4(A)に示すように、基材11と被接合部材21との間に配置された3つの接合構造20が、全て略同じ形状を有する場合を例に挙げて説明したが、基材11と被接合部材21との間に本実施形態の接合構造が複数設けられている場合、複数の接合構造のうち、一部または全部が異なる形状であってもよい。すなわち、各接合構造の有する導電性ピラーおよび接合層の形状は、基材11の電極パッドおよび被接合部材21の電極の平面形状に応じて適宜決定できる。
【0095】
図4(B)は、本実施形態の接合構造の他の一例を示した断面図である。
図4(B)に示す例が、
図4(A)に示す例と異なるところは、接合構造の形状のみである。このため、
図4(B)において、
図4(A)と同じ部材については、同じ符号を付し、説明を省略する。
図4(B)に示すように、基材11と被接合部材21との間には、複数(
図4(B)に示す例では3つ)の接合構造20a、20b、20cが設けられている。
図4(B)に示す接合構造20a、20b、20cにおいては、3つの接合構造20a、20b、20cのうち1つの接合構造20aの平面形状が、他の接合構造20b、20cよりも大きいものとなっており、他の接合構造20b、20cの形状が同じとなっている。
【0096】
より詳細には、
図4(B)に示すように、3つの接合構造20a、20b、20cのうち、1つの接合構造20aと接触している電極パッド13aおよび電極23aの平面形状が、他の電極パッド13および電極23よりも大きいものとなっている。それに伴って接合構造20aの有する略円柱状の導電性ピラー1aの外径(直径)が、他の導電性ピラー1b、1cと比較して大きいものとされている。また、接合構造20aの有する接合層22aの大きさも、他の接合構造20b、20cの有する接合層22と比較して大きいものとされている。また、
図4(B)に示すように、基材11と被接合部材21との間隔は略一定とされており、3つの接合構造20a、20b、20cにおける基材11の厚み方向の長さは略同じとされている。
【0097】
図4(B)に示す3つの接合構造20a、20b、20cは、レジスト層16をパターニングする工程において、導電性ピラー1a、1b、1cの外形形状にそれぞれ対応する形状を有するレジスト開口部を形成すること以外は、上述した
図4(A)に示す3つの接合構造20と同様の方法を用いて、同時に製造できる。したがって、
図4(B)に示す3つの接合構造20a、20b、20cを製造する場合と、
図4(A)に示す3つの接合構造20を製造する場合とでは、得られる接合構造の寸法精度および製造工程数に違いはない。
【0098】
これに対し、例えば、電気メッキ法を用いて基材上に複数の銅ピラーを形成する場合、複数の銅ピラー中に形状の異なる銅ピラーが含まれていると、以下に示す不都合が生じる。すなわち、メッキレートの制御が困難となって、銅ピラーの寸法精度が不十分になる場合がある。また、全ての銅ピラーを同時に形成できず、製造工程が非常に煩雑になる場合がある。したがって、電気メッキ法を用いて基材上に複数の銅ピラーを形成する場合には、形状の異なる銅ピラーを含む複数の銅ピラーを設けることは困難であった。
【0099】
なお、
図4(B)においては、基材11と被接合部材21との間に配置された3つの接合構造20a、20b、20cを示しているが、基材11と被接合部材21との間に配置される接合構造20a、20b、20cの数は、3つに限定されるものではなく、例えば、接合構造20aと接合構造20bの2つのみであってもよいし、4つ以上であってもよく、必要に応じて決定される。
【0100】
また、
図4(B)においては、導電性ピラー1a、1b、1c(焼結体12)の平面形状が全て略円形形状(
図2(A)参照)である場合を例に挙げて説明したが、各導電性ピラーの平面形状は略円形に限定されるものではなく、電極パッド13の平面形状などに応じて適宜決定できる。
また、
図4(B)においては、3つの接合構造20a、20b、20cにおける基材11の厚み方向の長さが略同じである場合を例に挙げて説明したが、各接合構造の基材11の厚み方向の長さは、一部または全部が異なっていてもよい。
【0101】
[電子機器]
本実施形態の電子機器は、本実施形態の接合構造20を含む。本実施形態の電子機器は、接合構造20を複数含むことが好ましい。この場合、複数の接合構造20のうち、一部または全部が異なる形状であってもよい。
具体的には、本実施形態の電子機器としては、本実施形態の接合構造20を複数含む3次元(3D)実装構造を有するデバイス、または本実施形態の接合構造20を複数含むインターポーザを用いた2.5次元(2.5D)実装構造を有するデバイスなどが挙げられる。
本実施形態の電子機器は、本実施形態の接合構造20を含むため、基材11と被接合部材21とが高い接合強度で接合されたものとなる。
【実施例】
【0102】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、以下の実施例のみに限定されない。
[金属微粒子を含む導電性ペーストの製造]
導電性ピラーの製造に使用する導電性ペーストとして、以下に示す方法により、金属微粒子と分散剤との複合体と、溶媒とを含むものを製造した。
【0103】
<複合体の水分散液の製造>
酢酸銅(II)-水和物(3.00g、15.0mmol)(東京化成工業社製)、式(1)で示されるエチル3-(3-(メトキシ(ポリエトキシ)エトキシ)-2-ヒドロキシプロピルスルファニル)プロピオナート〔ポリエチレングリコールメチルグリシジルエーテル(ポリエチレングリコール鎖の分子量2000(炭素数91))への3-メルカプトプロピオン酸エチルの付加化合物〕(0.451g)、およびエチレングリコール(10mL)(関東化学社製)からなる混合物に、窒素を50mL/分の流量で吹き込みながら加熱し、125℃で2時間通気攪拌して脱気した。この混合物を室温に戻し、ヒドラジン水和物(1.50g、30.0mmol)(東京化成工業社製)を水7mLで希釈した希釈溶液を、シリンジポンプを用いて滴下した。希釈溶液は、約1/4量を2時間かけて滴下して一旦停止し、2時間攪拌して発泡が沈静化するのを確認した後、残量を更に1時間かけて滴下した。得られた褐色の溶液を60℃に昇温して、さらに2時間攪拌し、還元反応を終結させた。
【0104】
得られた反応混合物をダイセン・メンブレン・システムズ社製の中空糸型限外濾過膜モジュール(HIT-1-FUS1582、145cm2、分画分子量15万)中に循環させ、浸出する濾液と同量の0.1%ヒドラジン水和物水溶液を加えながら、限外濾過モジュールからの濾液が約500mLとなるまで循環させて精製した。0.1%ヒドラジン水和物水溶液の供給を止め、そのまま限外濾過法により濃縮することにより、2.85gのチオエーテル型有機化合物と銅微粒子との複合体の水分散液を得た。水分散液中の不揮発物含量は16%であった。
【0105】
<導電性ペーストの調製>
上記の水分散液5mLをそれぞれ50mL三口フラスコに封入し、ウォーターバスを用いて40℃に加温しながら、減圧下で窒素を5mL/分の流速で流して、水を完全に除去し、銅微粒子複合体の乾燥粉末1.0gを得た。得られた銅微粒子複合体の乾燥粉末に、アルゴンガス置換したグローブバッグ内で30分間窒素バブリングしたエチレングリコール0.11gを、溶媒として添加した。銅微粒子複合体の乾燥粉末にエチレングリコールを添加した後、乳鉢で10分間混合し、金属微粒子含有率90%の導電性ペーストを得た。
【0106】
<熱重量分析(TG-DTA)による重量減少率の測定>
合成した銅微粒子複合体の乾燥粉末2~25mgを、熱重量分析用アルミパンに精密にはかりとり、EXSTAR TG/DTA6300型示差熱重量分析装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製)に載せた。そして、不活性ガス雰囲気下において、室温~600℃まで毎分10℃の割合で昇温し、100℃~600℃の重量減少率を測定した。その結果から、銅微粒子複合体の乾燥粉末中に、3%のポリエチレンオキシド構造を含む有機物が存在することを確認した。
【0107】
<平均一次粒子径の測定>
合成した銅微粒子複合体の平均一次粒子径を、TEM観察により測定した。まず、合成した銅微粒子複合体の乾燥粉末を、水で100倍に希釈して分散液とした。次に、分散液をカーボン膜被覆グリッド上にキャストして乾燥させ、透過型電子顕微鏡(装置:TEMJEM-1400(JEOL製)、加速電圧:120kV)にて観察した。そして、得られたTEM像の中から無作為に200個の銅微粒子複合体を抽出し、それぞれ面積を求め、真球に換算したときの粒子径を個数基準として算出し、平均一次粒子径とした。その結果、合成した銅微粒子複合体の平均一次粒子径は、42nmであった。
【0108】
<導電性ピラーを形成している金属微粒子の平均粒子径の測定>
後述する実施例の導電性ピラーの製造方法を模擬して、上記の方法により得られた導電性ペーストの焼結体を作成した。具体的には、上記の方法により得られた導電性ペーストを、アルゴンガス雰囲気中でシリコンウエハ上に、膜厚が1mmとなるように均一に塗布した。
【0109】
次に、導電性ペーストの塗布されたシリコンウエハを、温度25℃の環境下で大気中に20分間暴露した。
次に、シリコンウエハ上に塗布した導電性ペースト中の溶媒を低温で揮発させる仮焼成を行った。仮焼成は、窒素ガス雰囲気中で、卓上型真空はんだリフロー装置(ユニテンプ社製)を用いて、導電性ペーストの塗布されたシリコンウエハを120℃で5分間加熱することにより行った。
次に、シリコンウエハ上に塗布した導電性ペーストを焼結して、焼結体を形成した。導電性ペーストの焼結は、蟻酸蒸気を含む窒素雰囲気中で、卓上型真空はんだリフロー装置(ユニテンプ社製)を用いて、仮焼成後のシリコンウエハを250℃で10分間加熱することにより行った。
【0110】
得られた焼結体をシリコンウエハから掻き落とし、銅微粒子焼結体の粉末を採取した。採取した銅微粒子焼結体の平均粒子径を、X線小角散乱測定(SAXS)法により測定した。その結果は、後述する実施例の導電性ピラーを形成している金属微粒子の平均粒子径とみなすことができる。
焼結体中の銅微粒子の平均粒子径の測定には、リガク社製のX線回折装置(商品名:SmartLab)を用いた。測定は、回折角度2θを0から4°までの範囲とし、ステップモードで行った。なお、ステップ角は0.005°、計測時間は5秒とした。
【0111】
銅微粒子の平均粒子径は、SAXSにより得られた測定データを、解析ソフト(NANO-Solver Ver.3)を用いて計算することにより見積もった。その結果を
図9に示す。
図9は、銅微粒子の粒子径分布を示したグラフである。
図9に示すように、焼結体中の銅微粒子の粒子径は、体積分率6%が322nm(分布1)、体積分率91%が45nm(分布2)、体積分率4%が15nm(分布3)であった。この結果から、焼結体中の銅微粒子の平均粒子径は59.112nmと見積もられた。
【0112】
<導電性ピラーの作製>
直径4インチのシリコンウエハ上に、スパッタ法によりTi(厚さ50nm)とCu(250nm)とがこの順に積層された電極パッドを形成し、電極パッドを有する基材とした。次に、電極パッドを有する基材の電極パッド側の面上に、レジスト樹脂を塗布してパターニングすることにより、直径30μmの円柱状の凹部からなる複数のレジスト開口部を有する膜厚30μmのレジスト層を形成した。レジスト開口部のアスペクト比(深さ:直径)は、1:1であった。
【0113】
次いで、以下に示す方法により、上記の方法により得られた導電性ペーストを、円柱状のレジスト開口部内に充填し、基材上に金属微粒子で構成される柱状体を形成した。導電性ペーストの充填は、アルゴンガス雰囲気中で行った。導電性ペーストの充填は、基材上に導電性ペーストを載せ、半自動スクリーン印刷装置(セリア製)に設置したスキージを、基板上でアタック角度70°、移動速度10mm/sで1往復掃引して塗布する方法により行った。スキージとしては、硬度70°のウレタンゴム製の角スキージを用いた。
【0114】
次に、柱状体の形成された基材を、温度25℃の環境下で大気中に20分間暴露することにより、柱状体の少なくとも表面を酸素濃度200ppm以上の酸素含有雰囲気に暴露した。
【0115】
次に、柱状体に含まれる溶媒を低温で揮発させる仮焼成を行った。仮焼成は、窒素ガス雰囲気中で、卓上型真空はんだリフロー装置(ユニテンプ社製)を用いて、柱状体の形成された基材を120℃で5分間加熱することにより行った。
次に、柱状体を焼結して、上面に基材側に窪んだ凹型形状を有する焼結体を形成した。柱状体の焼結は、蟻酸蒸気を含む窒素雰囲気中で、卓上型真空はんだリフロー装置(ユニテンプ社製)を用いて、仮焼成後の基材を250℃で10分間加熱することにより行った。
以上の工程により、実施例の導電性ピラーを得た。
【0116】
図6(A)は、実施例の導電性ピラーの断面を撮影した顕微鏡写真である。
図6(B)は、
図6(A)に示す実施例の導電性ピラーの断面の一部を撮影した拡大顕微鏡写真である。
図6(C)は、実施例の導電性ピラーの上面を撮影した顕微鏡写真である。
図6(A)において、符号11は基材、符号12は焼結体、符号12aは溝部、符号12bは上面、符号13は電極パッドを示す。
図6(A)に示すように、実施例の導電性ピラー(焼結体12)は、上面12bが基材11側に窪んだ凹型形状であった。また、実施例の導電性ピラーの上面12bには、上面12bから基材11に向かって延出する複数の溝部12aが形成されていた。
また、
図6(B)および
図6(C)に示すように、実施例の導電性ピラーは、金属微粒子が焼結により融着した多孔質構造を有していた。
【0117】
次に、導電性ピラーを形成している焼結体の基材側に窪んだ凹型形状に、IMS(Injection Molded Soldering)工法(例えば、特開2015-106617号公報参照。)を用いて、溶融はんだを供給し、焼結体の凹部形状に沿ってバンプを設けた。具体的には、溶融はんだを保持する注入ヘッド(リザーバ)からレジスト開口部分に、直接溶融はんだを射出して供給した。はんだ合金としては、SAC305を使用した。これにより、はんだ合金からなる接合層(バンプ)を作製した。得られた接合層は、凸曲面状に盛り上がった形状であった。その後、レジスト層を除去した。
【0118】
図7は、実施例の導電性ピラーを形成している焼結体の凹部形状に沿って接合層を形成し、レジスト層を除去した後の状態における断面を撮影した顕微鏡写真である。
図7に示すように、実施例の導電性ピラー(焼結体12)の上面12bに形成された複数の溝部12a内に接合層となる材料22aが入り込み、溝部12a内に充填されてアンカー部が形成されていることが確認できた。また、焼結体12と接合層との界面に、金属間化合物層が形成されていることが確認できた。
【0119】
次に、焼結体上に接合層が形成された基材と、表面に銅からなる電極を有する半導体パッケージ(被接合部材)とを対向配置させて積層した。具体的には、被接合部材の電極が設けられた面を上に向けて配置し、基材の接合層が形成された面を下に向けて配置して、被接合部材の電極と、基材の接合層とを重ね合わせた状態とした。そして、基材と被接合部材とを積層した状態で加熱して、接合層を溶融し、基材と被接合部材とを接合し、接合構造を形成した。その後、基材と被接合部材との間における接合構造の配置されていない領域に、エポキシ樹脂からなるアンダーフィル剤を注入する方法により、封止樹脂を充填した。
【0120】
図8は、実施例において基材と被接合部材とを接合し、封止樹脂を充填した状態の断面を撮影した顕微鏡写真である。
図8において、符号11は基材、符号12は焼結体、符号12aは溝部、符号12bは上面、符号13は電極パッド、符号21は被接合部材、符号22は接合層、符号23は電極、符号25は金属間化合物層、符号26は封止樹脂を示す。
図8に示すように、基材11と被接合部材21との間には、導電性ピラーの焼結体12と、焼結体12の凹部形状に沿って設けられた接合層22とを有する接合構造が形成されていた。
【0121】
(評価)
実施例の接合構造について以下に示す方法により「接合強度」「絶縁抵抗」「信頼性」を評価した。
「接合強度」
実施例の接合構造を8個(No.1~No.8)用意し、それぞれから接合試験片を採取した。そして、JIS Z-03918-5:2003「鉛フリーはんだ試験方法」に記載の方法で、各接合試験片にそれぞれせん断力を付加し、接合強度を測定した。その結果を表1に示す。
表1に示すように、実施例の接合構造は、いずれも接合強度が170~230MPaの範囲内であり、ばらつきが少なく、高い接合強度を有していることが確認できた。
【0122】
【0123】
「絶縁抵抗」「信頼性」
実施例の接合構造について、温度130℃、相対湿度85%で3.7Vの電圧を96時間付与した時の絶縁抵抗を測定した。その結果、実施例の接合構造は、1MΩ以上の絶縁抵抗であって、抵抗変化率が10%未満であった。
このことから、実施例の接合構造は良好な抵抗値を示し、優れた信頼性を有していることが確認できた。
【符号の説明】
【0124】
1:導電性ピラー、11:基材、12:焼結体、12a:溝部、12b:上面、12c:導電性ペースト、12d:スキージ、13:電極パッド、16:レジスト層、16a:レジスト開口部、20:接合構造、21:被接合部材、22:接合層、22b:注入ヘッド、23:電極、25:金属間化合物層、26:封止樹脂。