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特許7148018軟質ポリウレタンフォーム形成用ポリオール組成物、軟質ポリウレタンフォーム形成用組成物、並びに、軟質ポリウレタンフォーム及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】軟質ポリウレタンフォーム形成用ポリオール組成物、軟質ポリウレタンフォーム形成用組成物、並びに、軟質ポリウレタンフォーム及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/66 20060101AFI20220928BHJP
   C08G 18/00 20060101ALI20220928BHJP
   C08G 18/48 20060101ALI20220928BHJP
   C08G 18/76 20060101ALI20220928BHJP
   C08L 75/08 20060101ALI20220928BHJP
   C08K 5/524 20060101ALI20220928BHJP
   C08G 101/00 20060101ALN20220928BHJP
【FI】
C08G18/66 007
C08G18/00 F
C08G18/48 066
C08G18/76 057
C08L75/08
C08K5/524
C08G101:00
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2022506464
(86)(22)【出願日】2021-04-13
(86)【国際出願番号】 JP2021015345
(87)【国際公開番号】W WO2021215309
(87)【国際公開日】2021-10-28
【審査請求日】2022-01-31
(31)【優先権主張番号】P 2020076560
(32)【優先日】2020-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020129860
(32)【優先日】2020-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100211018
【弁理士】
【氏名又は名称】財部 俊正
(72)【発明者】
【氏名】石橋 圭太
(72)【発明者】
【氏名】吉井 直哉
(72)【発明者】
【氏名】山本 純也
【審査官】西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/021871(WO,A1)
【文献】特開2019-157098(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00- 18/87
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
数平均分子量が2500以上であるポリオール成分と、触媒と、整泡剤と、発泡剤と、架橋剤とを含み、
前記発泡剤として、水を含み、
前記架橋剤として、数平均分子量が120以上2500未満の糖アルコールを含み、
前記糖アルコールの含有量が、前記ポリオール成分100質量部に対して、0.1~5.0質量部であり、
2価のスズ触媒を含まない、軟質ポリウレタンフォーム形成用ポリオール組成物。
【請求項2】
前記糖アルコールが、単糖アルコールを含む、請求項1に記載の軟質ポリウレタンフォーム形成用ポリオール組成物。
【請求項3】
前記単糖アルコールの含有量が、前記糖アルコールの総量に対して、90質量%以上である、請求項2に記載の軟質ポリウレタンフォーム形成用ポリオール組成物。
【請求項4】
前記ポリオール成分が、総不飽和度が0.04meq./g以下であるポリエーテルポリオールを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の軟質ポリウレタンフォーム形成用ポリオール組成物。
【請求項5】
前記架橋剤として、脂環族グリコール及び芳香族グリコールからなる群より選ばれる少なくとも一種の環状グリコールを更に含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の軟質ポリウレタンフォーム形成用ポリオール組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載のポリオール組成物からなる第一液と、ポリイソシアネート成分を含むイソシアネート組成物からなる第二液と、を備える、軟質ポリウレタンフォーム形成用組成物。
【請求項7】
前記ポリイソシアネート成分が、ジフェニルメタンジイソシアネートを含む、請求項6に記載の軟質ポリウレタンフォーム形成用組成物。
【請求項8】
前記ジフェニルメタンジイソシアネートの含有量が、前記ポリイソシアネート成分の総量に対して、50~85質量%である、請求項7に記載の軟質ポリウレタンフォーム形成用組成物。
【請求項9】
前記ジフェニルメタンジイソシアネートが、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート及び2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートの少なくとも一方を含み、
前記2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート及び前記2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートの総量が、前記ジフェニルメタンジイソシアネートの総量に対して、10~50質量%である、請求項7又は8に記載の軟質ポリウレタンフォーム形成用組成物。
【請求項10】
前記第一液及び前記第二液の少なくとも一方がホスファイト系酸化防止剤を含む、請求項6~9のいずれか一項に記載の軟質ポリウレタンフォーム形成用組成物。
【請求項11】
前記第一液と前記第二液とをNCOインデックスが95となるように混合したとき、混合液中の前記ホスファイト系酸化防止剤の含有量が、前記混合液の総量に対して50~1100質量ppmとなる、請求項10に記載の軟質ポリウレタンフォーム形成用組成物。
【請求項12】
請求項6~11のいずれか一項に記載の軟質ポリウレタンフォーム形成用組成物における前記第一液と前記第二液の混合液を反応発泡させてなる、軟質ポリウレタンフォーム。
【請求項13】
モールド成型体であり、
モールドの上型側に対応する下部と、モールドの下型側に対応する上部とを有し、
前記上部側の端面から前記下部側の端面までの長さを前記軟質ポリウレタンフォームの厚さとすると、
前記軟質ポリウレタンフォームを、上部側の端面からの前記厚さ方向の長さが前記軟質ポリウレタンフォームの厚さの45%となる位置及び90%となる位置で、前記厚さ方向に垂直な平面に沿って切断することにより、前記軟質ポリウレタンフォームの厚さの45%の厚さを有する2つのフォームを切り出し、切り出された2つのフォームの25%圧縮硬度の平均値を100としたとき、前記平均値に対する、前記2つのフォームのうちの前記上部側のフォームの25%圧縮硬度の比が50~85である、請求項12に記載の軟質ポリウレタンフォーム。
【請求項14】
見掛け密度が30~70kg/mであり、
JIS K6400記載のB法にしたがって作製されるスキン付きフォーム試験片の25%圧縮硬度が100~350N/314cmであり、
伸び率が100%以上である、請求項12又は13に記載の軟質ポリウレタンフォーム。
【請求項15】
反発弾性率が45~75%である、請求項12~14のいずれか一項に記載の軟質ポリウレタンフォーム。
【請求項16】
湿熱圧縮歪みが20%未満である、請求項12~15のいずれか一項に記載の軟質ポリウレタンフォーム。
【請求項17】
JIS K6400記載のB法にしたがって作製されるスキン付きフォーム試験片の25%圧縮硬度が183~350N/314cmである、請求項12~16のいずれか一項に記載の軟質ポリウレタンフォーム。
【請求項18】
数平均分子量が2500以上であるポリオール成分とポリイソシアネート成分とを、触媒、整泡剤、発泡剤及び架橋剤の存在下で反応させ、軟質ポリウレタンフォームを得る工程を備え、
前記工程では、前記発泡剤として、水を用い、前記架橋剤として、前記ポリオール成分100質量部に対して、0.1~5.0質量部の量の、数平均分子量が120以上2500未満の糖アルコールを用い、且つ、2価のスズ触媒を用いない、軟質ポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項19】
前記工程では、請求項6~11のいずれか一項に記載の軟質ポリウレタンフォーム形成用組成物における前記第一液と前記第二液とを混合することで、前記ポリオール成分と前記ポリイソシアネート成分とを反応させる、請求項18に記載の軟質ポリウレタンフォームの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟質ポリウレタンフォーム形成用ポリオール組成物、軟質ポリウレタンフォーム形成用組成物、並びに、軟質ポリウレタンフォーム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
軟質ポリウレタンフォームは生活用品、自動車用材料、衣料、スポーツ・レジャー用品、医療用材料、土木建築材料等、広範囲に使用されている。このような用途分野の中でも、特に、自動車用シート、車椅子等のクッション材用途においては、従来から求められる機能に加え、着座する際の初期圧縮時に感じる硬さ、カーブ走行時に乗員の腰部、臀部等が横方向に傾くことで感じるぐらつき感などを低減することが求められている。
【0003】
これらの課題を解決するためには、軟質ポリウレタンフォームの初期圧縮時には硬度が発現しにくく、かつ高圧縮時には硬度が発現しやすい硬度分布とすることで、着座姿勢をより安定に保持できるようにすることが必要である。この硬度分布を発現させるために従来種々の取り組みがなされている。
【0004】
例えば、特許文献1には、高弾性のポリウレタンフォームを上層(座面側)に配置し、粘弾性フォームを下層(底面側)に配置した積層構造のシートクッション構造が開示されている。これによれば、下層側粘弾性フォームが上層側高弾性フォームを介して軟らかいフィット感を乗員に間接的に与え、上層高弾性フォームがクッション感を乗員に直接与えるとされている。しかしながら、この方法では、部品点数が増加する他、接着等により発泡体を一体化する工程が多くなるといった問題が生じる。
【0005】
また、例えば、特許文献2には、部位別にシートの密度を変えることで硬度分布を発現させる技術が開示されている。しかしながら、密度変化で硬度を調整した場合、硬度を上げるためには密度を上げなければならず、コストの増加につながる。また、部位別に成型を行う必要があり、工数が増えるという問題がある。
【0006】
また、例えば、特許文献3には、ポリオール組成物中に含有される架橋剤成分の有する主な重合性基(反応性基)がエチレンオキサイド基であること、グリセリンを含有させること、及び発泡セルの形状を制御することで、同一密度で硬度分布を発現させる技術が開示されている(特許文献3)。しかしながら、これらの要因だけでは着座時に感じる初期圧縮時の硬さを低減し、且つぐらつき感を抑制する硬度分布の発現には不十分である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】実開平6-19604号公報
【文献】特開2002-300936号公報
【文献】国際公開2017/022824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、軟質ポリウレタンフォームを形成するために用いられるポリオール組成物は、船舶で輸送する場合等、常温(例えば25℃)を大きく超える温度に長期間さらされることがある。このような環境下でポリオール組成物が貯蔵されると、組成物中の成分が反応し、組成物の反応性の低下及び軟質ポリウレタンフォームの成型性の低下の原因となり得る。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、クッション材として用いたときの座り心地が良好となる硬度分布を有する軟質ポリウレタンフォームを形成可能であり、貯蔵安定性に優れる軟質ポリウレタンフォーム形成用ポリオール組成物、当該ポリオール組成物からなる第1液とポリイソシアネート組成物からなる第2液とを備える組成物、並びに、当該組成物を用いて得られる軟質ポリウレタンフォーム及びその製造方法を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は以下の(1)~(17)に示す実施形態を含むものである。
【0011】
(1) 数平均分子量が2500以上であるポリオール成分と、触媒と、整泡剤と、発泡剤と、架橋剤とを含み、前記発泡剤として、水を含み、前記架橋剤として、糖アルコールを含み、前記糖アルコールの含有量が、前記ポリオール成分100質量部に対して、0.1~5.0質量部であり、2価のスズ触媒を含まない、軟質ポリウレタンフォーム形成用ポリオール組成物。
【0012】
(2) 前記糖アルコールが、単糖アルコールを含む、(1)に記載の軟質ポリウレタンフォーム形成用ポリオール組成物。
【0013】
(3) 前記単糖アルコールの含有量が、前記糖アルコールの総量に対して、90質量%以上である、(2)に記載の軟質ポリウレタンフォーム形成用ポリオール組成物。
【0014】
(4) 前記ポリオール成分が、総不飽和度が0.001~0.04meq./gであるポリエーテルポリオールを含む、(1)~(3)のいずれかに記載の軟質ポリウレタンフォーム形成用ポリオール組成物。
【0015】
(5) 前記架橋剤として、脂環族グリコール及び芳香族グリコールからなる群より選ばれる少なくとも一種の環状グリコールを更に含む、(1)~(4)のいずれかに記載の軟質ポリウレタンフォーム形成用ポリオール組成物。
【0016】
(6) (1)~(5)のいずれかに記載のポリオール組成物からなる第一液と、ポリイソシアネート成分を含むイソシアネート組成物からなる第二液と、を備える、軟質ポリウレタンフォーム形成用組成物。
【0017】
(7) 前記ポリイソシアネート成分が、ジフェニルメタンジイソシアネートを含む、(6)に記載の軟質ポリウレタンフォーム形成用組成物。
【0018】
(8) 前記ジフェニルメタンジイソシアネートの含有量が、前記ポリイソシアネート成分の総量に対して、50~85質量%である、(7)に記載の軟質ポリウレタンフォーム形成用組成物。
【0019】
(9) 前記ジフェニルメタンジイソシアネートが、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート及び2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートの少なくとも一方を含み、前記2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート及び前記2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートの総量が、前記ジフェニルメタンジイソシアネートの総量に対して、10~50質量%である、(7)又は(8)に記載の軟質ポリウレタンフォーム形成用組成物。
【0020】
(10) 前記第一液及び前記第二液の少なくとも一方がホスファイト系酸化防止剤を含む、(6)~(9)のいずれかに記載の軟質ポリウレタンフォーム形成用組成物。
【0021】
(11) 前記第一液と前記第二液とをNCOインデックスが95となるように混合したとき、混合液中の前記ホスファイト系酸化防止剤の含有量が、前記混合液の総量に対して50~1100質量ppmとなる、(10)に記載の軟質ポリウレタンフォーム形成用組成物。
【0022】
(12) (6)~(11)のいずれかに記載の軟質ポリウレタンフォーム形成用組成物における前記第一液と前記第二液の混合液を反応発泡させてなる、軟質ポリウレタンフォーム。
【0023】
(13) モールド成型体であり、モールドの上型側に対応する下部と、モールドの下型側に対応する上部とを有し、前記上部側の端面から前記下部側の端面までの長さを前記軟質ポリウレタンフォームの厚さとすると、前記軟質ポリウレタンフォームを、上部側の端面からの前記厚さ方向の長さが前記軟質ポリウレタンフォームの厚さの45%となる位置及び90%となる位置で、前記厚さ方向に垂直な平面に沿って切断することにより、前記軟質ポリウレタンフォームの厚さの45%の厚さを有する2つのフォームを切り出し、切り出された2つのフォームの25%圧縮硬度の平均値を100としたとき、前記平均値に対する、前記2つのフォームのうちの前記上部側のフォームの25%圧縮硬度の比が50~85である、(12)に記載の軟質ポリウレタンフォーム。
【0024】
(14) 見掛け密度が30~70kg/mであり、JIS K6400記載のB法にしたがって作製されるスキン付きフォーム試験片の25%圧縮硬度が100~350N/314cmであり、伸び率が100%以上である、(12)又は(13)に記載の軟質ポリウレタンフォーム。
【0025】
(15) 反発弾性率が45~75%であり、湿熱圧縮歪みが20%未満である、(12)~(14)のいずれかに記載の軟質ポリウレタンフォーム。
【0026】
(16) ポリオール成分とポリイソシアネート成分とを、触媒、整泡剤、発泡剤及び架橋剤の存在下で反応させ、軟質ポリウレタンフォームを得る工程を備え、前記工程では、前記発泡剤として、水を用い、前記架橋剤として、前記ポリオール成分100質量部に対して、0.1~5.0質量部の量の糖アルコールを用い、且つ、2価のスズ触媒を用いない、軟質ポリウレタンフォームの製造方法。
【0027】
(17) 前記工程では、(6)~(11)のいずれかに記載の軟質ポリウレタンフォーム形成用組成物における前記第一液と前記第二液とを混合することで、前記ポリオール成分と前記ポリイソシアネート成分とを反応させる、(16)に記載の軟質ポリウレタンフォームの製造方法。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、クッション材として用いたときの座り心地が良好となる硬度分布を有する軟質ポリウレタンフォームを形成可能であり、貯蔵安定性に優れる軟質ポリウレタンフォーム形成用ポリオール組成物、当該ポリオール組成物からなる第1液とポリイソシアネート組成物からなる第2液とを備える組成物、並びに、当該組成物を用いて得られる軟質ポリウレタンフォーム及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本明細書中、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。また、個別に記載した上限値及び下限値は任意に組み合わせ可能である。
【0030】
以下、本発明の一実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0031】
<ポリオール組成物>
一実施形態のポリオール組成物は、軟質ポリウレタンフォームの形成(例えば成型)に用いられるポリオール組成物である。このポリオール組成物は、ポリオール成分、触媒、整泡剤、発泡剤及び架橋剤を含み、発泡剤として、水を含み、架橋剤として、糖アルコールを含み、当該糖アルコールの含有量が、ポリオール成分100質量部に対して、0.1~5.0質量部である。このポリオール組成物は一液の組成物であり、ポリオール成分、触媒、整泡剤、発泡剤及び架橋剤は混在している。なお、本明細書において、ポリオール成分とは、水酸基を複数有するポリオール化合物のうち、数平均分子量が2500以上である高分子量のポリオール化合物を意味する。数平均分子量が2500未満のポリオール化合物は、架橋剤に分類されるものとする。
【0032】
上記構成を備えるポリオール組成物によれば、クッション材として用いたときの座り心地が良好となる硬度分布を有する軟質ポリウレタンフォームを形成することができる。具体的には、例えば、座面側を上部側とし、上部側の端面から下部側の端面までの長さを軟質ポリウレタンフォームの厚さとすると、軟質ポリウレタンフォームを、上部側の端面からの厚さ方向の長さが軟質ポリウレタンフォームの厚さの45%となる位置及び90%となる位置で、厚さ方向に垂直な平面に沿って切断することにより、軟質ポリウレタンフォームの厚さの45%の厚さを有する2つのフォームを切り出し、切り出された2つのフォームの25%圧縮硬度の平均値を100としたとき、平均値に対する、2つのフォームのうちの上部側のフォームの25%圧縮硬度の比が50~85となる軟質ポリウレタンフォームを形成することができる。
【0033】
ところで、ウレタン化触媒としては、例えばスタナスオクトエート等の2価のスズ触媒が知られている。本発明者らの検討の結果、これらの2価のスズ触媒を用いた場合、例えば、ポリオール組成物が高温環境に長時間さらされた際に、ポリオール組成物の反応性及び軟質ポリウレタンフォームの成型性が悪化することが明らかになった。一方、本実施形態のポリオール組成物は、2価のスズ触媒を含まないため、高温環境に長時間さらされた場合でも、ポリオール組成物の反応性及び軟質ポリウレタンフォームの成型性の低下が起こり難い。すなわち、本実施形態のポリオール組成物は、貯蔵安定性に優れる。
【0034】
以下、ポリオール組成物に含まれる各成分について説明する。
【0035】
(ポリオール成分)
ポリオール成分は、ポリイソシアネート成分と重付加してポリウレタンを形成する成分である。ポリオール成分としては、公称官能基数、数平均分子量等を調整することが容易であり、幅広い硬度及び弾性率が得られる観点から、ポリエーテルポリオール及びポリエステルポリオールからなる群より選ばれる少なくとも一種を用いることが好ましい。ポリオール成分は一種を単独で用いてよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリプロピレンエーテルポリオール、ポリエチレンポリプロピレンエーテルポリオール(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオール)、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTG)等が使用できる。
【0037】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、重縮合型ポリエステル系ポリオール、ラクトン系ポリエステルポリオール等が使用できる。重縮合型ポリエステル系ポリオールとしては、例えば、アジピン酸とジオールとの共重合体であるポリエステルポリオールが使用できる。ラクトン系ポリエステルポリオールとしては、例えば、ポリカプロラクトンポリオールが使用できる。
【0038】
ポリオール成分は、軟質ポリウレタンフォームの破泡を促進する観点から、構成単位としてオキシエチレン単位及びオキシプロピレン単位を含むポリオキシアルキレン鎖(例えば、オキシエチレンとオキシプロピレンとの共重合体からなるポリオキシアルキレン鎖)を有する、ポリエーテルポリオールを含むことが好ましく、ポリエチレンポリプロピレンエーテルポリオールを含むことがより好ましい。このようなポリオールの公称官能基数は2~4であることが好ましい。また、低温での貯蔵安定性の観点では、オキシエチレン単位とオキシプロピレン単位は、ランダムに配列されている(例えば、オキシエチレンとオキシプロピレンとの共重合体がランダム共重合体である)ことが好ましい。
【0039】
ポリオール成分は、軟質ポリウレタンフォームの硬度分布が得られやすくなり、耐久性をより向上させることができる観点では、オキシエチレン単位を主構成単位として含むポリエーテルポリオールを含むことが好ましい。オキシエチレン単位を主構成単位として含むポリエーテルポリオールにおけるオキシエチレン単位の含有量は、50質量%超であり、60~90質量%であることが好ましく、60~80質量%であることがより好ましい。
【0040】
オキシエチレン単位を主構成単位として含むポリエーテルポリオールの含有量は、軟質ポリウレタンフォームの成型性が向上し、上記耐久性の向上効果が得られやすくなる観点から、ポリオール成分の総量に対して、0.5質量%以上であってよい。オキシエチレン単位を主構成単位として含むポリエーテルポリオールの含有量は、軟質ポリウレタンフォームの伸び率低下が抑制でき、上記耐久性の向上効果が得られやすくなる観点から、ポリオール成分の総量に対して、5.0質量%以下であってよい。これらの観点から、オキシエチレン単位を主構成単位として含むポリエーテルポリオールの含有量は、ポリオール成分の総量に対して、0.5~5.0質量%であることが好ましい。
【0041】
ポリエーテルポリオールの総不飽和度は、軟質ポリウレタンフォームの耐久性をより向上させる観点から、0.04meq./g以下であってよい。ポリエーテルポリオールの総不飽和度が大きくなることは、末端に不飽和基を有するモノオール成分等が多くなることを意味する。総不飽和度が0.04meq./g以下であると、軟質ポリウレタンフォームの架橋密度が充分となりやすく、充分な耐久性が得られやすい。総不飽和度は0meq./g以上であり、例えば、0.001meq./g以上であってよい。総不飽和度が0.001meq./g以上のポリエーテルポリオールは入手が容易である。これらの観点から、ポリエーテルポリオールの総不飽和度は、例えば、0.001~0.04meq./gであってよい。上記総不飽和度を有するポリエーテルポリオールは、例えば、ポリエーテルポリオールを製造する際の重合触媒(エチレンオキシド、プロピレンオキシド等のアルキレンオキシドの重合触媒)として、複合金属シアン化物錯体触媒、ホスファゼン触媒及びイミノ基含有ホスファゼニウム塩から選ばれる少なくとも一種を用いることで容易に入手可能である。
【0042】
ポリオール成分の数平均分子量は、充分な柔軟性を有する軟質ポリウレタンフォームが得られやすくなる観点から、3,500以上である。ポリオール成分の数平均分子量は、充分な硬度を有する軟質ポリウレタンフォームが得られやすくなる観点から、10,000以下であってよい。これらの観点から、ポリオール成分の数平均分子量は、例えば、3,500~10,000である。
【0043】
ポリオール成分の公称官能基数は、耐久性の指標である湿熱圧縮歪みが良好となる観点から、2以上であってよい。ポリオール成分の公称官能基数は、充分な柔軟性を有する軟質ポリウレタンフォームが得られやすくなる観点から、4以下であってよい。これらの観点から、公称官能基数は、好ましくは2~4である。ポリオール成分が複数種のポリオール化合物を含む場合は、少なくとも1種のポリオール化合物の公称官能基数が上記範囲であることが好ましく、全てのポリオール化合物の公称官能基数が上記範囲であることが好ましい。なお、公称官能基数とは、ポリオールの重合反応中に副反応が生じないと仮定した場合の理論平均官能基数(分子当たりの活性水素原子の数)を示す。
【0044】
ポリオール成分は、上記観点から、数平均分子量が3,500~10.000であり、公称官能基数が2以上である、ポリエーテルポリオール又はポリエステルポリオールを含むことが好ましい。
【0045】
ポリオール成分としては、硬さの調整を目的として、ポリオール中でビニル系モノマーを重合したポリマーポリオールを使用してもよい。ビニル系モノマーの重合方法は通常の方法(例えばラジカル重合法)であってよい。このようなポリマーポリオールとしては、例えば、上記ポリエチレンポリプロピレンエーテルポリオール等のポリエーテルポリオール中、ラジカル開始剤の存在下でビニル系モノマーを重合させ、安定分散させたものが挙げられる。また、ビニル系モノマーとしては、例えばアクリロニトリル、スチレン、塩化ビニリデン、ヒドロキシアルキルメタアクリレート、アルキルメタアクリレート等が挙げられる。これらの中でもアクリロニトリル及びスチレンが好ましい。このようなポリマーポリオールとしては、例えばAGC株式会社製のEL-910、EL-923(商品名)、三洋化成工業株式会社製のFA-728R(商品名)等が挙げられる。
【0046】
(触媒)
触媒としては、本技術分野において公知である各種のウレタン化触媒の中から2価のスズ触媒以外の触媒を選択して使用できる。触媒としては、例えば、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン、ジメチルベンジルアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N,N,N’,N’,N’’-ペンタメチルジエチレントリアミン、ビス-(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、トリエチレンジアミン、1,8-ジアザ-ビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7、1,2-ジメチルイミダゾール等の3級アミン触媒及びこれらの有機酸塩、ナフテン酸亜鉛等の有機金属化合物(ただし、2価のスズ触媒は除く)等が挙げられる。これらは一種を単独で用いてよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
触媒としては、本発明の効果が得られやすい観点から、3級アミン触媒が好ましく用いられる。3級アミン触媒としては、イソシアネートと反応してウレタン樹脂に組み込まれることでアミンエミッションが発生しない観点から、N,N-ジメチルエタノールアミン、N,N-ジエチルエタノールアミン、N,N-ジメチル-N-ヘキサノールアミン、2-ヒドロキシメチルトリエチレンジアミン、N,N,N’-トリメチル-N’-ヒドロキシエチル-ビスアミノエチルエーテル等の活性水素を有する3級アミン触媒(例えばヒドロキシ基を有する3級アミン触媒)が好ましく用いられる。
【0048】
触媒の含有量は、ポリオール成分100質量部に対して、0.01~10質量部であることが好ましい。触媒の含有量が0.01質量部以上であると、キュアがより充分になりやすく、10質量部以下であると、より良好な成型性が得られやすい。これらの観点から、触媒の含有量は、ポリオール成分100質量部に対して、0.1質量部以上、0.3質量部以上又は0.5質量部以上であってもよく、5.0質量部以下、3.0質量部以下又は1.0質量部以下であってもよい。
【0049】
(整泡剤)
整泡剤は、例えば界面活性剤である。界面活性剤としては、有機珪素系(例えばシリコーン系)の界面活性剤が好適に使用できる。具体的な整泡剤としては、例えば、ダウ・東レ社製のSZ-1327、SZ-1325、SZ-1336、SZ-3601等、モメンティブ社製のY-10366、L-5309等、エボニック社製のB-8724LF2、B-8715LF2等が挙げられる。整泡剤は一種を単独で用いてよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
整泡剤の含有量は、ポリオール成分100質量部に対して、0.1~3.0質量部であることが好ましい。整泡剤の含有量が0.1質量部以上であると、気泡(セル)が均一化しやすく、3.0質量部以下であると、良好な物性の軟質ポリウレタンフォームが得られやすい。これらの観点から、整泡剤の含有量は、ポリオール成分100質量部に対して、0.3質量部以上又は0.5質量部以上であってもよく、2.0質量部以下又は1.0質量部以下であってもよい。
【0051】
(発泡剤)
ポリオール組成物は、発泡剤として水を含む。水はイソシアネート基との反応で高硬度のウレア基を形成すると共に炭酸ガスを発生するため、ポリオール組成物をイソシアネート組成物とを混合した際に、混合液を発泡させることができる。
【0052】
発泡剤の総量に対する水の含有量は、例えば50質量%超であり、70質量%以上又は90質量%以上であってもよく、100質量%であってもよい。発泡剤の総量に対する水の含有量は、100質量%以下であってよい。
【0053】
ポリオール組成物は、発泡剤として、水に加えて任意の発泡剤を含んでいてもよい。例えば、少量のシクロペンタン、イソペンタン等の低沸点有機化合物を水と併用してもよい。また、例えば、ガスローディング装置を用いて上記混合液中に空気、窒素ガス、液化二酸化炭素等を混入させ、溶解させて、当該混合液を発泡させることもできる。
【0054】
発泡剤の含有量は、ポリオール組成物の総量に対して、0.5~10質量%であってよい。発泡剤の含有量が10質量%以下であると、安定した発泡が得られやすく、0.5質量%以上であると、低密度の発泡体が得られやすい。見掛け密度が40kg/m未満の低密度軟質ポリウレタンフォームを得る場合、発泡剤の含有量は、ポリオール組成物の総量に対して、3.0~6.0質量%であることが好ましく、3.0~5.5質量%であることがより好ましい。
【0055】
(架橋剤)
架橋剤は、ポリオール成分がイソシアネート成分と重付加してポリウレタンを形成する際にイソシアネート成分と反応して架橋構造を形成する化合物であり、例えば、イソシアネート成分に対する反応性を有する反応性基(例えば水酸基)を有する。架橋剤は、例えば数平均分子量が2500未満の低分子化合物(例えばポリオール化合物)である。
【0056】
ポリオール組成物は、架橋剤として糖アルコールを含む。糖アルコールとは、アルドース、ケトース等の糖類のカルボニル基が還元されて生成する糖質の一種である。糖アルコールとしては、単糖アルコール、二糖アルコール、オリゴ糖アルコール等が挙げられる。
【0057】
単糖アルコールとしては、例えば、エリスリトール、スレイトール等のテトリオール類;アラビトール、キシリトール、リビトール等のペンチトール類;ソルビトール、マンニトール、ガラクチトール等のヘキシトール類;ボレミトール等のヘプチトール類;D-エリスロ-D-ガラクトオクチトール等のオクチトール類;ノニトール類;デシトール類が挙げられる。これらの糖アルコール類の立体配置には制限はなく、糖アルコールはD体でもL体でもよく、D体とL体の混合物のDL体であってもよい。
【0058】
二糖アルコールとしては、マルチトール、ラクチトール、パラチニット等が挙げられる。
【0059】
オリゴ糖アルコールは、三糖以上の糖アルコールであり、例えば、三糖アルコール~十糖アルコール(三糖アルコール、四糖アルコール、五糖アルコール、六糖アルコール、七糖アルコール、八糖アルコール、九糖アルコール及び十糖アルコール)がオリゴ糖アルコールに分類される。オリゴ糖アルコールは、3分子以上(例えば3~10分子)の単糖アルコールが1種単独でグリコシド結合を介して脱水縮合したホモオリゴ糖アルコールと、少なくとも2種の3分子以上(例えば3~10分子)の単糖類及び/又は糖アルコール(ただし、少なくとも1種は糖アルコールである)が、グリコシド結合を介して脱水縮合したヘテロオリゴ糖アルコールに大別される。
【0060】
オリゴ糖アルコールは環状構造を有していてよく、無水物でも水和物でもよい。オリゴ糖アルコールとしては、マルトトリイトール、マルトテトライトール、マルトペンタイトール、マルトヘキサイトール等が挙げられる。
【0061】
これらの単糖アルコール、二糖アルコール及びオリゴ糖アルコールは一種を単独で又は複数種を組み合わせて使用できる。糖アルコールは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン等の親水性ポリオール及び/又は水との混合物として、常温液状で使用することが好ましい。また、各種還元水飴(糖アルコール混合物)を用いることもできる。
【0062】
上記単糖アルコール類、二糖アルコール類、オリゴ糖アルコール及びこれらの混合物は、ポリオール組成物を構成する他の成分との混合性の改善等の目的で、それらが有する水酸基の一部がエーテル変性又はエステル変性されたもの(エーテル変性体又はエステル変性体)であってもよい。ただし、本発明の効果が顕著に得られる観点では、水酸基の変性率は、全水酸基の30mol%以下(0~30mol%)であることが好ましい。
【0063】
糖アルコールとしては、単糖アルコール~十糖アルコールから選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましく、単糖アルコール~六糖アルコールから選ばれる少なくとも一種を含むことがより好ましい。
【0064】
糖アルコールは、貯蔵安定性(例えばポリオール組成物を船舶で輸送する場合等、常温を大きく超える温度に長期間さらされる環境での貯蔵安定性)により優れる観点から、単糖アルコールを含むことが特に好ましい。このような効果が顕著に得られる観点では、単糖アルコールの含有量は、糖アルコールの総量に対して、好ましくは90質量%以上であり、より好ましくは95質量%以上である。単糖アルコールの含有量は、糖アルコールの総量に対して、100質量%であってもよい。すなわち、単糖アルコールの含有量は、糖アルコールの総量に対して、90~100質量%又は95~100質量%であってよい。
【0065】
糖アルコールはポリオール組成物の貯蔵安定性に影響を及ぼさない範囲であれば、糖アルコール以外の糖質を併用してもよいし、それらと結合していてもよい。糖アルコール以外の糖質としては、例えば、単糖類、二糖類、オリゴ糖(例えば、三糖類~十糖類)等が挙げられる。
【0066】
糖アルコールの数平均分子量は2500未満である。糖アルコールの数平均分子量は、好ましくは120以上2500未満であり、より好ましくは120以上2100以下である。糖アルコールの数平均分子量が120以上であると、硬度分布が発現し易くなる傾向があり、2100以下であると、軟質ポリウレタンフォームの成型性及び伸び率が向上する傾向がある。糖アルコールの数平均分子量は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により標準ポリスチレンの検量線を用いて測定することができる。
【0067】
糖アルコールの含有量は、ポリオール成分100質量部に対して、0.1~5.0質量部である。本実施形態のポリオール組成物は、糖アルコールの含有量が上記範囲であることで良好な硬度分布を発現する。糖アルコールの含有量は、軟質ポリウレタンフォームの硬度分布がより良好となりやすい観点では、ポリオール成分100質量部に対して、0.3質量部以上であることが好ましく、0.6質量部以上、1.0質量部以上、1.5質量部以上、2.0質量部以上、3.0質量部以上又は4.0質量部以上であってもよい。糖アルコールの含有量は、軟質ポリウレタンフォームの成型性及び伸び率がより良好となる観点では、ポリオール成分100質量部に対して、4.0質量部以下であることが好ましく、3.0質量部以下又は2.0質量部以下であってもよい。
【0068】
フォームの伸び率、湿熱圧縮歪み等の物性面を更に良好とする観点では、ポリオール組成物が、糖アルコール以外の架橋剤成分として、脂環族グリコール及び芳香族グリコールからなる群より選ばれる少なくとも一種の環状グリコール(以下、単に「環状グリコール」ともいう。)を含むことが好ましい。
【0069】
環状グリコールは、化合物中に環構造を有する。環状グリコールとしては、例えば、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ヒドロキノンビス(2-ヒドロキシエチル)エーテル、ジヒドロキシジフェニルメタン、ビスフェノールA水素化物、ポリオキシエチレンビスフェノールエーテル、ポリオキシプロピレンビスフェノールエーテル等を挙げることができる。これらの中でも、得られる軟質ポリウレタンフォームの湿熱圧縮歪みの改善効果が高いという観点から、1,4-シクロヘキサンジメタノール及びポリオキシエチレンビスフェノールAエーテルが好ましい。これらの環状グリコールは一種を単独で用いてよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0070】
環状グリコールの含有量は、フォームの伸び率、湿熱圧縮歪み等の物性面を更に良好とする観点から、ポリオール成分100質量部に対して、0.5質量部以上であることが好ましく、1.0質量部以上であることがより好ましく、1.5質量部以上であることが更に好ましい。環状グリコールの含有量は、25%圧縮硬度を所望の範囲に調整しやすくなる観点から、ポリオール成分100質量部に対して、8.0質量部以下であることが好ましく、6.0質量部以下であることがより好ましく、4.0質量部以下であることが更に好ましい。これらの観点から、環状グリコールの含有量は、ポリオール成分100質量部に対して、0.5~8.0質量部、1.0~6.0質量部、1.5~8.0質量部、1.5~6.0質量部又は1.5~4.0質量部であってよい。
【0071】
架橋剤の含有量は、良好な硬度分布と成型性を両立する観点では、ポリオール成分100質量部に対して、0.5~7.0質量部であることが好ましい。このような観点から、架橋剤の含有量は、ポリオール成分100質量部に対して、1.0質量部以上又は2.0質量部以上であってもよく、5.0質量部以下又は3.0質量部以下であってもよい。
【0072】
(他の成分)
ポリオ-ル組成物は、上述した成分以外の成分(他の成分)を更に含んでいてもよい。ポリオール組成物は、例えば酸化防止剤を更に含んでいてもよい。ポリオール組成物が酸化防止剤を含む場合、軟質ポリウレタンフォームの形成時及び形成後に発生するアルデヒド揮発量を低減できる傾向がある。
【0073】
酸化防止剤としては、ホスファイト系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤等が挙げられる。これらの中でも、アルデヒド揮発量をより低減する観点では、ホスファイト系酸化防止剤を用いることが好ましい。酸化防止剤は、一種を単独で用いてよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。例えば、ホスファイト系酸化防止剤をヒンダードフェノール系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤等と組み合わせて用いることもできる。
【0074】
ホスファイト系酸化防止剤は、無機化合物であっても有機化合物であってもよい。ホスファイト系酸化防止剤の数平均分子量は500以上であることが好ましい。数平均分子量が500以上のホスファイト系酸化防止剤を使用することによって、軟質ポリウレタンフォームから発生するアルデヒド類の揮発をより効果的に抑えることができる。このような効果がより顕著に得られる観点では、ホスファイト系酸化防止剤の数平均分子量は、750以上又は1000以上であってもよい。ホスファイト系酸化防止剤の数平均分子量は、リン濃度が確保でき、アルデヒド類の揮発量低減効果が得られやすい観点から、3000以下、2000以下又は1500以下であってよい。ホスファイト系酸化防止剤として数平均分子量が500以上のホスファイト系酸化防止剤を使用する場合、数平均分子量が500未満のホスファイト系酸化防止剤を併用してもよいが、酸化防止剤自体が揮発することを防止する観点では、数平均分子量が500未満のホスファイト系酸化防止剤を用いないことが好ましい。
【0075】
好ましいホスファイト系酸化防止剤としては、リン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、亜リン酸ナトリウム、亜リン酸カルシウム、亜リン酸マグネシウム、亜リン酸マンガン、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カルシウム、次亜リン酸カリウム等の無機リン酸塩、及び、トリフェニルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリノニルフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、テトラ(トリデシル-4,4’-イソプロピリデンジフェニルジホスファイト、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)オクチルホスファイト等の有機リン化合物が挙げられる。これらは単独で又はこれらの混合物で用いることができる。なかでも、株式会社ADEKA製のアデカスタブ1500及びアデカスタブ3010(いずれも商品名)が好適に使用できる。
【0076】
酸化防止剤の含有量(例えばホスファイト系酸化防止剤の含有量)は、アルデヒド類の揮発量をより低減する観点から、ポリオール成分100質量部に対して、0.02~0.10質量部であることが好ましく、0.03~0.08質量部であることがより好ましい。
【0077】
上記酸化防止剤は、ポリオール組成物に含まれていなくてもよい。この場合、後述するように、ポリオール組成物と混合して用いられるイソシアネート組成物中に上記酸化防止剤が含まれていてよい。
【0078】
ポリオ-ル組成物は、例えば、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の充填剤、難燃剤、可塑剤、着色剤、抗カビ剤などの公知の各種添加剤及び助剤を更に含んでいてもよい。これらは必要に応じて使用することができる。
【0079】
<軟質ポリウレタンフォーム形成用組成物>
一実施形態の軟質ポリウレタンフォーム形成用組成物は、例えば、二液型の組成物であり、上記実施形態のポリオール組成物からなる第一液と、ポリイソシアネート成分を含むイソシアネート組成物からなる第二液と、を備える。軟質ポリウレタンフォーム形成用組成物における上記第一液と第二液とは、別々に貯蔵され、使用時に混合して用いられる。
【0080】
ポリイソシアネート成分は、イソシアネート基を複数有する化合物である。ポリイソシアネート成分としては、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)及びポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネート(P-MDI)からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく用いられる。ポリイソシアネート成分としては、MDI及びP-MDIの混合物の他、MDI又はP-MDIのウレタン変性体、ウレア変性体、アロファネート変性体、ヌレート変性体、ビュウレット変性体等の各種変性体も使用し得る。ポリイソシアネート成分は一種を単独で用いてよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0081】
MDIには、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’-MDI)、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4’-MDI)及び2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート(2,2’-MDI)の三種類の異性体が存在するが、MDIとしては、これらのうちの一種を単独で用いてよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0082】
ポリイソシアネート成分におけるMDI含有率は、50~85質量%であることが好ましい。ここで、MDI含有率とは、ポリイソシアネート成分の総量に対するジフェニルメタンジイソシアネートの含有量といいかえることができる。MDI含有率が85質量%以下であると、イソシアネート組成物(第二液)の低温における貯蔵安定性、及び、得られる軟質ポリウレタンフォームの耐久性が向上する傾向がある。また、MDI含有率が50質量%以上であると、架橋密度の上昇に伴う軟質ポリウレタンフォームの伸びの低下が生じ難く、充分なフォーム強度が得られやすくなる。これらの観点から、MDI含有率は、60質量%以上又は70質量%以上であってもよく、80質量%以下であってもよい。
【0083】
2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート(2,2’-MDI)及び2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4’-MDI)の総量は、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)の総量に対して10~50質量%であることが好ましい。換言すれば、MDIにおけるアイソマー含有率(MDI総量を基準とする2,2’-MDIの含有率と2,4’-MDIの含有率の合計)は、10~50質量%であることが好ましい。上記アイソマー含有率が10質量%以上であると、イソシアネート組成物(第二液)の低温における貯蔵安定性が向上する傾向があり、イソシアネート保管場所、配管、発泡成型機内の常時加温を行う必要がない。また、軟質ポリウレタンフォームの成型安定性が向上し、発泡途中でのフォーム崩壊等の発生が抑制される傾向がある。また、上記アイソマー含有率が50質量%以下であると、反応性が向上し、成型サイクルの延長、フォームの独泡率が高くなり成型後に収縮する等の問題が生じにくくなる。
【0084】
イソシアネート組成物は、上記実施形態のポリオール組成物に含まれ得る成分として説明した成分(ただし、ポリオール成分は除く)を含んでいてもよい。ポリオール組成物に含まれ得る成分の中でも、ホスファイト系酸化防止剤は、イソシアネート組成物に含まれることが好ましい。
【0085】
酸化防止剤がイソシアネート組成物に含まれる場合、酸化防止剤の含有量(例えばホスファイト系酸化防止剤の含有量)は、ポリイソシアネート成分100質量部に対して、0.01~0.30質量部であることが好ましく、0.02~0.28質量部であることがより好ましい。
【0086】
ホスファイト系酸化防止剤の含有量は、アルデヒド類の揮発量の低減効果が得られやすくなる観点から、第一液と第二液とをNCOインデックスが95となるように混合したときに得られる混合液中のホスファイト系酸化防止剤の含有量が、混合液の総量に対して、50~1100質量ppmとなる量であることが好ましい。上記含有量は、アルデヒド類の揮発量の低減効果がより顕著に得られる観点から、100質量ppm以上、200質量ppm以上、300質量ppm以上、400質量ppm以上、500質量ppm以上又は600質量ppm以上であってもよく、800質量ppm以下であってもよい。上記含有量は、より好ましくは100~800質量ppmである。ここで、NCOインデックスとは、混合液中に含まれる、活性水素基含有化合物中の全活性水素基のモル数に対する、イソシアネート基含有化合物中の全イソシアネート基(NCO基)のモル数の百分率(NCO基/活性水素基×100)を意味する。なお、活性水素基含有化合物には水も含まれる。
【0087】
以上説明した本実施形態の軟質ポリウレタンフォーム形成用組成物は、第一液と第二液の混合液を反応発泡させることで軟質ポリウレタンフォームを形成する。上記組成物における第一液及び第二液は、例えばNCOインデックスが95となるように使用(混合)されるが、第一液と第二液との混合比率は変更可能である。上記組成物における第一液及び第二液は、例えば、NCOインデックスが70~140となるように使用(混合)されてよい。
【0088】
本実施形態の軟質ポリウレタンフォーム形成用組成物によれば、クッション材として用いたときの座り心地が良好となる硬度分布を有する軟質ポリウレタンフォームを得ることができる。また、本実施形態の軟質ポリウレタンフォームによれば、見掛け密度が30~70kg/mであり、JIS K6400記載のB法にしたがって作製されるスキン付きフォーム試験片の25%圧縮硬度が100~350N/314cmであり、伸び率が100%以上である、軟質ポリウレタンフォームを得ることもできる。さらに、反発弾性率が45~75%であり、湿熱圧縮歪みが20%未満である軟質ポリウレタンフォームを得ることもできる。
【0089】
<軟質ポリウレタンフォームの製造方法>
一実施形態の軟質ポリウレタンフォームの製造方法は、ポリオール成分とポリイソシアネート成分とを、触媒、整泡剤、発泡剤、架橋剤及び任意で使用される他の成分(酸化防止剤等)の存在下で反応させ、軟質ポリウレタンフォームを得る工程を備える。上記方法は、発泡剤として、水を用い、架橋剤として、ポリオール成分100質量部に対して、0.1~5.0質量部の量の糖アルコールを用い、且つ、2価のスズ触媒を用いないことを特徴とする。上記工程で使用される各成分の詳細は、上述したポリオール組成物及びイソシアネート組成物に含まれ得る成分と同じである。
【0090】
上記工程では、例えば、ポリオール成分、ポリイソシアネート成分、触媒、整泡剤、発泡剤、架橋剤及び任意で使用される他の成分(酸化防止剤等)を混合し、混合液を反応発泡させる。混合液は、例えば、上記実施形態の軟質ポリウレタンフォーム形成用組成物における第一液と第二液とを予め調製し、これらを混合することで得ることができる。
【0091】
混合時のNCOインデックスは、フォームの耐久性が良好となる観点及び独泡性の過度の上昇を抑える観点では、好ましくは70以上である。混合時のNCOインデックスは、未反応イソシアネートが長く残存しにくくなり成型サイクルの延長が生じにくくなる観点及び高分子量化の遅延が生じにくくなりポリウレタンフォームの成型性が良好となる観点では、好ましくは140以下であり、より好ましくは120以下である。これらの観点から、混合時のNCOインデックスは、70~140であることが好ましく、70~120であることがより好ましい。
【0092】
軟質ポリウレタンフォームの製造方法は、上記混合液(未発泡の原液)を金型内に注入し、その後、発泡させて硬化させる、軟質ポリウレタンモールドフォーム(以下、軟質モールドフォーム)の製造方法であってよい。
【0093】
軟質モールドフォームの製造方法において、上記混合液(未発泡の原液)を金型内に注入する際の金型温度としては、通常30~80℃であり、好ましくは45~70℃である。上記混合液(未発泡の原液)を金型内に注入する際の金型温度が30℃以上であると、反応速度低下による生産サイクルの延長が起こり難い。また、上記金型温度が80℃以下であると、ポリオールとイソシアネートの反応に対し、発泡剤である水とイソシアネートとの反応が穏やかに進行しやすく、ポリウレタンフォームの成型性が良好となりやすい。
【0094】
上記混合液(未発泡の原液)を発泡させて硬化させる際の硬化時間としては、一般的な軟質モールドフォームの生産サイクルを考慮すると、10分以下が好ましく、7分以下がより好ましい。
【0095】
軟質モールドフォームを製造する際には、通常の軟質モールドフォームの場合と同様、高圧発泡機、低圧発泡機等を用いて、上記各成分を混合することができる。
【0096】
混合方法としては、発泡機のマシンヘッド混合室内で混合を行うダイナミックミキシング、送液配管内で混合を行うスタティックミキシング等の方法が挙げられる。これらの混合方法を併用してもよい。物理発泡剤等のガス状成分と液状成分との混合はスタティックミキシングで実施される場合が多い。また、液体として安定に貯留可能な成分同士の混合はダイナミックミキシングで実施される場合が多い。発泡装置は、混合部の溶剤洗浄が必要のない高圧発泡装置であることが好ましい。
【0097】
上記混合後は、得られた混合液を金型(モールド)内に吐出し、発泡及び硬化させ、その後脱型が行われる。上記脱型を円滑に行うため、金型に予め離型剤を塗布しておくことも好適である。使用する離型剤としては、成型加工分野で通常用いられる離型剤を用いてよい。
【0098】
脱型後の製品(軟質モールドフォーム)はそのままでも使用できるが、圧縮又は減圧下で、フォームのセル膜を破壊し、製品外観及び寸法を安定化させることが好ましい。圧縮及び減圧は公知の方法で実施してよい。
【0099】
以上の方法により製造される軟質ポリウレタンフォームは、硬さ、反発弾性率等の物性に優れるのみならず、厚さ方向(フォーム形成時の発泡方向)に硬度分布を有しており、厚さ方向の一方側が他方側よりも低い圧縮硬度を有する(例えば、厚さ方向の一方側から他方側にかけて圧縮硬度が上昇する硬度分布を有する)ことから、より圧縮硬度が低い側(軟質側)を座面側とすることで、乗り心地性に優れたクッション材として提供することが可能となる。
【0100】
具体的には、上記方法により製造される軟質ポリウレタンフォームの座面側(軟質側)を上部側とし、上部側の端面から下部側の端面までの長さを軟質ポリウレタンフォームの厚さとすると、軟質ポリウレタンフォームを、上部側の端面(上面)からの厚さ方向の長さが軟質ポリウレタンフォームの厚さの45%となる位置及び90%となる位置で、厚さ方向に垂直な平面に沿って切断することにより、軟質ポリウレタンフォームの厚さの45%の厚さを有する2つのフォームを切り出し、切り出された2つのフォームの25%圧縮硬度の平均値を100としたとき、平均値に対する、2つのフォームのうちの上部側のフォームの25%圧縮硬度の比が50~85となる。軟質ポリウレタンフォームをモールド成型により形成する場合、すなわち、軟質ポリウレタンフォームがモールド成型体である場合、モールドの上型側が下部となり、モールドの下型側が上部となる。
【0101】
上記方法により製造される軟質ポリウレタンフォームが良好な硬度分布を呈するメカニズムについて、本発明者らは以下のように推察する。上述したとおり、例えばクッション材として使用される軟質ポリウレタンフォームがモールド成型される場合、モールドの下型側が上部となり、上型側が下部となる。軟質ポリウレタンフォームは、モールド内で上部側が先に形成され、発泡による体積膨張の末、最終的に下部が形成される。上部側でフォームが形成される際には、糖アルコールが発泡剤である水と会合することで、水とポリイソシアネートとの反応を遅延化し、高硬度の原因となるウレア結合の生成が抑制される。一方、高温反応で形成される芯層部から下面側においては、ウレア結合が集中して生成するため高硬度化し、硬度分布が発現すると考えられる。
【0102】
軟質ポリウレタンフォームの見掛け密度は、例えば、30~70kg/mである。また、JIS K6400記載のB法にしたがって作製されるスキン付きフォーム試験片の25%圧縮硬度は、例えば、100~350N/314cmである。また、伸び率は、100%以上である。また、反発弾性率は、例えば、45~75%である。また、湿熱圧縮歪みは、例えば、20%未満である。見かけ密度、25%圧縮硬度、伸び率、反発弾性率及び湿熱圧縮歪みは、JIS K6400記載の方法により求めることができる。
【実施例
【0103】
以下、実施例比較例及び参考例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0104】
以下の実施例比較例及び参考例では、下記原料を使用した。
[使用原料]
・ポリオール1:平均官能基数=3.0、水酸基価=24(mgKOH/g)、末端一級化率=84mol%、オキシエチレン単位=14.6質量%、総不飽和度0.03meq./gのポリエチレンポリプロピレンエーテルポリオール(東ソー株式会社製、商品名:NEF-693)
・ポリオール2:平均官能基数=3.0、水酸基価=24(mgKOH/g)、末端一級化率=79mol%、オキシエチレン単位=14.0質量%、総不飽和度0.19meq./gのポリエチレンポリプロピレンエーテルポリオール(東ソー株式会社製、商品名:NEF-728)
・ポリオール3:平均官能基数=3.0、水酸基価=24(mgKOH/g)、オキシエチレン単位=70質量%のポリエーテルポリオール(東ソー株式会社製、商品名:NEF-729)
・架橋剤1:D-ソルビトール(東京化成工業株式会社製、単糖アルコール、糖組成として単糖アルコール97質量%含有、数平均分子量:182)
・架橋剤2:マルチトール(東京化成工業株式会社製、二糖アルコール、糖組成として単糖アルコール4質量%含有、数平均分子量:344)
・架橋剤3:糖アルコール混合物1(単糖アルコール~十糖アルコールの混合物、糖組成として単糖アルコール85質量%含有、70質量%水溶液、数平均分子量:214)
・架橋剤4:ソルビトールC(物産フードサイエンス株式会社製、単糖アルコール~十糖アルコールの混合物、糖組成として単糖アルコール90質量%含有、70質量%水溶液、数平均分子量:202)
・架橋剤5:糖アルコール混合物2(単糖アルコール~十糖アルコールの混合物、糖組成として単糖アルコール3質量%含有、数平均分子量:2013)
・架橋剤6:D-(+)-グルコース(富士フィルム和光純薬株式会社製、糖質(還元糖の単糖類))
・架橋剤7:精製グリセリン(阪本薬品工業株式会社製)
・架橋剤8:トリメチロールプロパン(三菱ガス化学株式会社製)
・架橋剤9:ジエタノールアミン(三井化学株式会社製)
・架橋剤10:ポリエチレングリコール(三洋化成工業株式会社製、商品名:PEG200、数平均分子量200)
・架橋剤11:1,4-シクロヘキサンジメタノール(EASTMAN CHEMICAL社製、商品名:CHDM―D)
・触媒1:2-ヒドロキシメチルトリエチレンジアミン(東ソー株式会社製、商品名:RZETA HD)
・触媒2:N,N,N’-トリメチル-N’-ヒドロキシエチル-ビスアミノエチルエーテル(東ソー株式会社製、商品名:TOYOCAT RX-10)
・触媒3:2-エチルヘキサン酸スズ(II)(富士フィルム和光純薬株式会社製)
・整泡剤1:シリコーン系整泡剤(モメンティブ社製、商品名:L-3639LF)
・イソシアネート1:MDI含有率が85質量%であり、アイソマー含有率が38質量%であり、ポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネートを含むポリイソシアネート混合物(東ソー株式会社製、商品名:CEF-550)
・酸化防止剤1:ホスファイト系酸化防止剤(ADEKA株式会社製、商品名:アデカスタブ1500)
【0105】
<実施例1~13、比較例1~7、参考例1
(ポリオール組成物の調製)
攪拌機、冷却管、窒素導入管及び温度計を備えた反応器を窒素置換した後、ポリオール1を100g、ポリオール3を1.5g、架橋剤1を1.5g、架橋剤11を2.0g、触媒1を0.8g、触媒2を0.2g、整泡剤1を1.0g、及び、水を3.6g仕込み、23℃にて0.5時間撹拌することにより、ポリオール組成物(P-1)を得た。その他のポリオール組成物(P-2~P-17)も、表1~表3に記載のとおり各原料を仕込み、ポリオール組成物(P-1)と同様に調製した。
【0106】
(イソシアネート組成物(I-1)の準備)
実施例1~9比較例1~7及び参考例1では、イソシアネート1をイソシアネート組成物(I-1)として用いた。
【0107】
(イソシアネート組成物(I-2~I-5)の調製)
攪拌機、冷却管、窒素導入管及び温度計を備えた反応器を窒素置換した後、イソシアネート1を100g、及び、酸化防止剤1を0.03g仕込み、23℃にて0.5時間撹拌することにより、イソシアネート組成物(I-2)を得た。その他のイソシアネート組成物(I-3~I-5)も、表2に記載のとおり各原料を仕込み、イソシアネート組成物(I-2)と同様に調製した。
【0108】
(軟質ポリウレタンフォームの作製)
表1~表3に示す組み合わせでポリオール組成物及びイソシアネート組成物を用い、軟質ポリウレタンフォームを作製した。具体的には、まず、イソシアネート組成物、及び、ポリオール組成物(イソシアネート組成物以外の全原料の混合物)の液温をそれぞれ24℃~26℃に調整した。次いで、NCOインデックス(配合物中に存在する活性水素原子数に対するNCO基の百分率)が95となるように、ポリオール組成物にポリイソシアネート成分を所定量加えて、ミキサー(毎分7000回転)で7秒間混合した。その後、得られた混合液を金型内に注入し、混合液を反応発泡させた。反応発泡の条件は以下のとおりとした。
[条件]
・金型温度:60~70℃
・金型形状:300mm×300mm×100mm
・金型材質:アルミニウム
・キュア時間:5分
【0109】
以上の方法で軟質ポリウレタンフォームを成型した後、得られた軟質ポリウレタンフォームの成型体(モールド成型体)を金型より取り出した。
【0110】
【表1】
【0111】
【表2】
【0112】
【表3】
【0113】
(ポリオール組成物の貯蔵安定性評価)
ポリオール組成物を調製後、40℃又は60℃の乾燥機内で30日間保管した後の分離及び着色の有無により貯蔵安定性を評価した。30日間経過した後もポリオール組成物に分離及び着色がみられない場合をA評価とし、ポリオール組成物に分離は生じないが着色が生じた場合をB評価とし、ポリオール組成物に分離及び着色が生じた場合をC評価とした。結果を表4~表6に示す。
【0114】
(成型性評価)
軟質ポリウレタンフォームの成型中に成型性を評価した。具体的には、ポリウレタンフォームが最高の高さに達した後に大きく沈んでいき崩壊する現象、及び、生成したポリウレタンフォームが発泡直後又はキュア後に収縮する現象が生じることなく、軟質ポリウレタンフォームを成型できた場合にA評価とし、これらの現象が確認され、軟質ポリウレタンフォームを成型できなかった場合にB評価とした。結果を表4~表6に示す。
【0115】
(軟質ポリウレタンフォームの物性評価)
上記方法で成型された軟質ポリウレタンフォームの見掛け密度、反発弾性率、湿熱圧縮歪み及び伸び率をJIS K6400記載の方法により求めた。また、JIS K6400記載のB法にしたがって、スキン付きフォーム試験片を作製し、25%圧縮硬度(25%ILD)を求めた。結果を表4~表6に示す。
【0116】
(軟質ポリウレタンフォームの硬度分布測定)
上記方法で成型された軟質ポリウレタンフォームの発泡方向における硬度分布を以下の方法で測定した。まず、モールドの上型側が下部となり、下型側が上部となるように軟質ポリウレタンフォームを配置し、当該軟質ポリウレタンフォームを上部側の端面(上面)から下面側に向かって45mm毎に切断した。具体的には、軟質ポリウレタンフォームを、上部側の端面からの厚さ方向(発泡方向)の長さが45mmとなる位置及び90mmとなる位置で、厚さ方向に垂直な平面に沿って切断した。これにより、軟質ポリウレタンフォームから、厚さ0mm(上面側)~45.0mmに対応する上面側フォームと、厚さ45.0mm~90.0mmの部分に対応する下面側フォームを切り出した。
【0117】
得られた2つのフォームを評価サンプルとし、それぞれについて、25%圧縮硬度を測定した。具体的には、まず、評価サンプル上に加圧板(直径200mmの円盤)を配置し、加圧板の受ける応力が0.98Nになるまで評価サンプルを圧縮した。この位置を加圧板の初期位置とし、この位置における評価サンプルの厚さを厚さ100%と見なした。次に、加圧板を評価サンプルに向けて50mm/minの速さで、評価サンプルの厚さの25%の距離を動かし、評価サンプルを圧縮させた。その後、加圧板を50mm/minの速さで初期位置に復帰させた。以上の過程において、評価サンプルが25%圧縮変形した時に、評価サンプルに及ぼされた応力値を測定し、この値を25%圧縮硬度とした。次いで、2つの評価サンプルの25%圧縮硬度の平均値を100としたときの当該平均値に対する各フォームの25%圧縮硬度の比を求めた。この硬度比は、発泡方向(厚さ方向)の平均的な圧縮硬度に対する各評価サンプルの圧縮硬度の比を意味する。上記平均値に対する上面側フォームの圧縮硬度の比が、50~85である場合に、クッション材として用いたときの座り心地が良好となる硬度分布を有すると評価した。結果を表4~表6に示す。
【0118】
(ウレア結合比の算出方法)
上記硬度分布測定において作製した評価サンプルについて、FT-IR測定を行った。得られたIRスペクトルにおける、波数1660cm-1付近に観測されたウレア結合由来のピーク高さを波数1710cm-1付近に観測されたウレタン結合由来のピーク高さで割ることで、それぞれの評価サンプルにおけるウレア結合比を算出した。このウレア結合比が小さいほど、ウレア結合の生成が抑制されており、硬度が発現しにくいことを意味する。
【0119】
(軟質ポリウレタンフォームのセルの異方性(形状)の評価)
上記方法で成型された実施例1及び比較例3の軟質ポリウレタンフォームのセルの異方性を以下の方法で評価した。まず、モールドの上型側が下部となり、下型側が上部となるように軟質ポリウレタンフォームを配置し、当該軟質ポリウレタンフォームを上部側の端面(上面)から下面側に向かって22.5mm毎に切断した。具体的には、軟質ポリウレタンフォームを、上部側の端面からの厚さ方向(発泡方向)の長さが22.5mmとなる位置、45mmとなる位置、67.5mmとなる位置及び90mmとなる位置で、厚さ方向に垂直な平面に沿って切断した。これにより、軟質ポリウレタンフォームから、厚さ0mm(上面側)~22.5mmの部分に対応する第1層、厚さ22.5mm~45mmの部分に対応する第2層、厚さ45mm~67.5mmの部分に対応する第3層、及び、厚さ67.5mm~90mmの部分に対応する第4層を切り出した。
【0120】
得られた4つのフォーム(第1~第4層)を垂直方向に2等分し、その断面の中心部分(視野:3.2mm×3.2mm)の拡大画像をマイクロスコープ顕微鏡により取得した。取得した画像を下から上に向かう方向が発泡方向となるように見て、画像の中からセル(発泡セル)をランダムに30個選択し、各セルにおける発泡方向のセル長と発泡方向に直交するセル長を測定した。セル毎に発泡方向のセル長を発泡方向に直交するセル長で割った値を求め、セル30個の平均値をセル異方性の評価値として用いた。異方性の数値が1に近いほどセル形状が球状に近づき、数値が小さいほど発泡方向に対して横長であり、数値が大きいほど発泡方向に対して縦長であることを意味する。結果を表4及び表6に示す。
【0121】
(アルデヒド類の揮発量の測定)
上記方法で成型された実施例1及び実施例10~13の軟質ポリウレタンフォームについて、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド及びプロピオンアルデヒドの揮発量を測定した。具体的には、まず、各モールド成型体から、縦100mm×横70mmのスキン表面を含み、厚さが80mmの直方体状の試験片を切り出した。次いで、得られた試験片を窒素4Lと共に10Lのサンプリングバッグ内に封入した。次いで、サンプリングバッグを65℃で2時間加熱し、専用の捕集管(DNPHカートリッジ)に揮発成分を捕集した。捕集された揮発成分を高速液体クロマトグラフィにて分析することで、各アルデヒドガスの揮発量(放散量)を測定した。結果を表4及び表5に示す。なお、高速液体クロマトグラフィの測定条件は以下のとおりである。
[条件]
・装置:島津製作所社製のLC-20Aシリーズ
・カラム:TSKgel ODS-80TsQA
・移動相:アセトニトリル/水
・移動相速度:1.0mL/min
・カラム温度:40℃
・検出器:UV(λ=360nm)
・検量線:アルデヒド-DNPHのアセトニトリル溶液を標準試料溶液として作成
【0122】
ホルムアルデヒドの揮発量は、0.35μg/サンプル以下であれば良好と判断した。アセトアルデヒドの揮発量は、0.30μg/サンプル以下であれば良好と判断した。プロピオンアルデヒドの揮発量は、0.18μg/サンプル以下であれば良好と判断した。
【0123】
【表4】
【0124】
【表5】
【0125】
【表6】