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特許7148044二次電池分離膜用インク組成物およびこれを含む二次電池用分離膜
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】二次電池分離膜用インク組成物およびこれを含む二次電池用分離膜
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/409 20210101AFI20220928BHJP
【FI】
H01M50/409
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018554330
(86)(22)【出願日】2017-08-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-06-06
(86)【国際出願番号】 KR2017008767
(87)【国際公開番号】W WO2018030850
(87)【国際公開日】2018-02-15
【審査請求日】2018-10-29
【審判番号】
【審判請求日】2021-03-01
(31)【優先権主張番号】10-2016-0103132
(32)【優先日】2016-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リー、クン ソク
(72)【発明者】
【氏名】リー、ジョンヨン
(72)【発明者】
【氏名】リー、スン ホン
【合議体】
【審判長】酒井 朋広
【審判官】井上 信一
【審判官】山本 章裕
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/014118(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/409
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダー、水、第1溶媒、および第2溶媒を含み、
前記第1溶媒の表面エネルギーは、20℃で30mN/m以下であり、
前記第2溶媒の蒸気圧は、20℃で2kPa以下であり、
前記第1溶媒と前記第2溶媒は、互いに異なり、
前記第1溶媒は、エタノール、およびイソプロピルアルコールからなる群より選択される少なくとも1つであり、
前記第2溶媒は、2-ブタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、および2-エトキシエタノールからなる群より選択される少なくとも1つであり、
前記バインダーは、アクリル系共重合体、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、およびこれらの混合体からなる群より選択されるいずれか1つであり、前記バインダーが水系エマルジョン状態である、二次電池分離膜用インク組成物であって、
前記二次電池分離膜用インク組成物は、全100重量部を基準として、
前記バインダー1~20重量部、前記水5~60重量部、前記第1溶媒5~80重量部、および前記第2溶媒5~50重量部を含み、
前記エマルジョンの粒子直径は、100~1000nmである、二次電池分離膜用インク組成物。
【請求項2】
多孔性基材を用意するステップと、
前記多孔性基材上にコーティング液を印刷するステップとを含み、
前記コーティング液は、請求項に記載の二次電池分離膜用インク組成物によって形成される、二次電池用分離膜の製造方法。
【請求項3】
前記印刷するステップは、グラビア印刷による、請求項に記載の二次電池用分離膜の製造方法。
【請求項4】
前記多孔性基材の表面に無機物粒子を追加的に含む、請求項2または3に記載の二次電池用分離膜の製造方法。
【請求項5】
前記多孔性基材は、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(polyethyleneterephthalate)、ポリブチレンテレフタレート(polybutyleneterephthalate)、ポリエステル(polyester)、ポリアセタール(polyacetal)、ポリアミド(polyamide)、ポリカーボネート(polycarbonate)、ポリイミド(polyimide)、ポリエーテルエーテルケトン(polyetheretherketone)、ポリエーテルスルホン(polyethersulfone)、ポリフェニレンオキシド(polyphenyleneoxide)、ポリフェニレンスルフィド(polyphenylenesulfide)、ポリエチレンナフタレン(polyethylenenaphthalene)、およびこれらの混合体からなる群より選択されるいずれか1つ以上からなるシートである、請求項2~4のいずれか1項に記載の二次電池用分離膜の製造方法。
【請求項6】
前記無機物粒子は、BaTiO、Pb(Zr、Ti)O(PZT)、Pb1-xLaZr1-yTi(PLZT)(0<x<1、0<y<1)、Pb(MgNb2/3)O-PbTiO(PMN-PT)、hafnia(HfO)、SrTiO、SnO、CeO、MgO、NiO、CaO、ZnO、ZrO、Y、Al、TiO、SiC、(LiAlTiP)系glass(0<x<4、0<y<13)、リチウムゲルマニウムチオホスフェート(LiGe、0<x<4、0<y<1、0<z<1、0<w<5)、リチウムナイトライド(Li、0<x<4、0<y<2)、SiS系glass(LiSi、0<x<3、0<y<2、0<z<4)、P系glass(Li、0<x<3、0<y<3、0<z<7)、およびこれらの混合体からなる群より選択されたいずれか1つ以上である、請求項に記載の二次電池用分離膜の製造方法。
【請求項7】
分離膜、正極、および負極を含む、電極アセンブリの製造方法であって、
請求項2から6のいずれか1項に記載の二次電池用分離膜の製造方法により、前記分離膜を製造するステップを含む、電極アセンブリの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、2016年8月12日付で韓国特許庁に出願された韓国特許出願第10-2016-0103132号の出願日の利益を主張し、その内容のすべては本明細書に組み込まれる。
【0002】
本出願は、二次電池分離膜用インク組成物およびこれを含む二次電池用分離膜に関する。
【背景技術】
【0003】
最近、使用量が多い二次電池は便利性と危険性の両面を有する。特に、リチウム二次電池の場合、リチウム二次電池が過充電されると、正極から過剰のリチウムが出て、負極にリチウムが挿入されるにつれ、負極表面に反応性が非常に大きいリチウム金属が析出し、正極も熱的に不安定な状態になり、電解液として用いる有機溶媒の分解反応による急激な発熱反応によって電池が発火、爆発するなどの安全性の問題が生じる。
【0004】
このような発熱が発生する場合、分離膜が収縮して再度正極と負極の直接的な短絡を誘発し、繰り返される熱発生と分離膜の収縮によって短絡区間が増加するにつれ、熱暴走が発生したり、電池の内部を構成している正極、負極、および電解液が互いに反応したり燃焼するが、このような反応は非常に大きい発熱反応であるので、結局、電池が発火したり爆発したりする。前記のような危険性は特に、リチウム二次電池の高容量化に伴ってエネルギー密度が増加するほどより重要な問題になる。
【0005】
このような問題を解決し、過充電時の安全性を向上させるために、多孔性フィルム上に接着バインダーが含まれている水系エマルジョンインクを塗布して安全性を向上させた安全分離膜を用いようとする試みがあったが、多孔性フィルム上にエマルジョンインクを塗布する時、エマルジョン粒子が均一に分散せず、エマルジョンインクのコーティングが円滑でなく、時間の経過とともに粘度調節および維持が難しく、結局、安全分離膜の性能が減少する問題が発生した。
【0006】
また、エマルジョンインクを均一に塗布するために、コーティング方法の代わりに、印刷方法を利用することができるが、この場合には、エマルジョンの転写性を改善するために添加される溶媒によって粒子分散性が阻害され、長時間印刷による場合、インクリザーバ内の下部にバインダー粒子の沈殿が発生し、これは、溶液の全体的な固形分変化を起こして印刷物の不均一性をもたらしうる問題がある。
【0007】
したがって、分散性の阻害を防止しながらパターン厚さの均一性を確保する印刷を可能にするインク組成物の開発が急がれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本出願は、二次電池分離膜用インク組成物およびこれを含む二次電池用分離膜を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本出願は、バインダー、水、第1溶媒、および第2溶媒を含み、前記第1溶媒の表面エネルギーは、20℃で30mN/m以下であり、前記第2溶媒の蒸気圧は、20℃で2kPa以下であり、前記第1溶媒と前記第2溶媒は、互いに異なることを特徴とする二次電池分離膜用インク組成物を提供する。
【0010】
また、本出願は、多孔性基材と、前記多孔性基材上に塗布されているコーティング液とを含み、前記コーティング液は、本出願の一実施態様に係るインク組成物によって形成されることを特徴とする二次電池用分離膜を提供する。
【0011】
さらに、本出願は、多孔性基材を用意するステップと、前記多孔性基材上にコーティング液を印刷するステップとを含み、前記コーティング液は、本出願の一実施態様に係るインク組成物によって形成されることを特徴とする二次電池用分離膜の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本出願の一実施態様に係る二次電池分離膜用インク組成物は、印刷工程で基材上に均一に塗布できる。
【0013】
また、本出願の一実施態様に係る二次電池分離膜用インク組成物は、高い転写性を得ると同時にパターンの滲みを防止して均一な印刷物を作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本出願の一実施態様に係るインク組成物のパターン形状と液集中発生の有無を確認するための実験結果を示す写真である。
図2】本出願の一実施態様に係るインク組成物の蒸発速度を確認するための実験結果を示す写真である。
図3】本出願の一実施態様に係るインク組成物の印刷時間に応じたパターンの滲み現象を確認するための実験結果を示す写真である。
図4】本出願の一実施態様に係るインク組成物の溶媒の種類に応じたパターンの滲み現象を確認するための実験結果を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本明細書についてより詳細に説明する。
【0016】
本出願の一実施態様は、バインダー、水、第1溶媒、および第2溶媒を含み、前記第1溶媒の表面エネルギーは、20℃で30mN/m以下であり、前記第2溶媒の蒸気圧は、20℃で2kPa以下であり、前記第1溶媒と前記第2溶媒は、互いに異なることを特徴とする二次電池分離膜用インク組成物を提供する。
【0017】
前記第1溶媒は、低い表面エネルギーを有する溶媒に相当するもので、前記第1溶媒の表面エネルギーは、20℃で30mN/m以下であってもよいし、より具体的には、20℃で25mN/m以下であってもよい。また、最小表面エネルギーは、20℃で10mN/mであってもよい。このような数値範囲に相当する溶媒を第1溶媒として用いた時、基材に対する転写性が50%以上になる。
【0018】
前記表面エネルギーを測定する方法においては、通常の表面エネルギー測定方法であればその種類を問わず適用可能であるが、潤滑法で白金環を液体面に水平に当接させてからそのまま引っ張り上げて液体面から落ちようとする瞬間環に作用する表面張力と均衡をなす力を秤で測定する方法で測定することができる。
【0019】
本明細書の一実施態様によれば、前記第1溶媒の種類としては、前記言及した表面エネルギー値の範囲に相当する溶媒であれば特に限定があるわけではないが、エタノール、イソプロピルアルコール、2-ブタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、および2-エトキシエタノールからなる群より選択される少なくとも1つであってもよい。
【0020】
特に、エタノール、イソプロピルアルコール、および2-ブタノールを用いる場合には、基材に対して90%以上の転写性を得ることができる。
【0021】
また、前記第2溶媒は、低い蒸気圧を有する溶媒に相当するもので、前記第2溶媒の蒸気圧は、20℃で2kPa以下であってもよい。また、最小蒸気圧は、0.2kPaであってよい。このような数値範囲に相当する溶媒を用いた時、パターンの滲みを防止することができる。
【0022】
前記蒸気圧値は、単一溶媒において通常知られているものを用いることができる。
【0023】
本明細書の一実施態様によれば、前記第2溶媒の種類としては、前記言及した蒸気圧値の範囲に相当する溶媒であれば特に限定があるわけではないが、2-ブタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、および2-エトキシエタノールからなる群より選択される少なくとも1つであってもよい。
【0024】
本明細書の一実施態様によれば、前記インク組成物は、全100重量部を基準として、前記バインダー1~20重量部、前記水5~60重量部、第1溶媒5~80重量部、および第2溶媒5~50重量部を含むことができる。前記数値範囲の構成を用いた時、本発明により得ようとする転写性と液集中防止効果を得ることができる。
【0025】
本明細書の一実施態様によれば、前記バインダーは、エマルジョン形態で設けられ、前記エマルジョンの粒子直径は、100~1000nmであってもよい。エマルジョン粒子の場合、通常球形に形成されており、粒子の直径は球形の直径を意味するものであってよい。前記エマルジョン粒子の直径を求める方法は、通常知られている方法であれば特に制限はないが、SEMおよびレーザ粒度分析器を用いて求められる。エマルジョン粒子の大きさが前記言及した範囲にある時、バインダーの分散安定性を得ることができ、これによって、所望の転写性および液集中防止効果を得ることができる。
【0026】
また、前記バインダーの種類としては特に限定があるわけではないが、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリレート、アクリル系共重合体、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンターポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレン-ブタジエンゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム、およびこれらの混合体からなる群より選択されるいずれか1つであってもよい。
【0027】
また、本明細書の一実施態様によれば、多孔性基材と、前記多孔性基材上に塗布されているコーティング液とを含み、前記コーティング液は、本出願の一実施態様に係るインク組成物によって形成されることを特徴とする二次電池用分離膜を提供する。
【0028】
さらに、本明細書の一実施態様は、多孔性基材を用意するステップと、前記多孔性基材上にコーティング液を印刷するステップとを含み、前記コーティング液は、本出願の一実施態様に係るインク組成物によって形成されることを特徴とする二次電池用分離膜の製造方法を提供する。
【0029】
前記印刷するステップは特に限定があるわけではないが、グラビア印刷によるものであってもよい。これにより、接着層が全面に塗布されると、陽イオンの伝達に抵抗として作用し、これは、電池抵抗として大きく作用するため、グラビア印刷を利用してパターン印刷により接着層を部分的に形成して電池抵抗を最小化することができる。
【0030】
また、本明細書の一実施態様によれば、前記多孔性基材の表面に無機物粒子を追加的に含んでもよい。
【0031】
前記多孔性基材は、当該技術分野で通常使用されるポリオレフイン系分離膜であってもよく、その種類に特に限定があるわけではないが、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(polyethyleneterephthalate)、ポリブチレンテレフタレート(polybutyleneterephthalate)、ポリエステル(polyester)、ポリアセタール(polyacetal)、ポリアミド(polyamide)、ポリカーボネート(polycarbonate)、ポリイミド(polyimide)、ポリエーテルエーテルケトン(polyetheretherketone)、ポリエーテルスルホン(polyethersulfone)、ポリフェニレンオキシド(polyphenyleneoxide)、ポリフェニレンスルフィドロ(polyphenylenesulfidro)、ポリエチレンナフタレン(polyethylenenaphthalene)、およびこれらの混合体からなる群より選択されるいずれか1つからなるシートであってもよい。
【0032】
前記多孔性基材の気孔サイズおよび気孔度は特別な制限がないが、気孔度は10~95%の範囲、気孔サイズ(直径)は0.1~50μmであってもよい。気孔サイズおよび気孔度がそれぞれ0.1μmおよび10%未満の場合には、抵抗層として作用し、気孔サイズおよび気孔度が50μmおよび95%を超える場合には、機械的物性を維持しにくくなる。
【0033】
本出願の一実施態様に係るコーティング液は、電池の正極および負極容器の間にありながら、減極作用、伝導作用を果たせる薬品混合物を指し示すものであってもよい。また、本出願の一実施態様に係るインク組成物によって形成されるものであってもよい。
【0034】
また、前記多孔性基材の表面に設けられる無機物粒子は、その表面にイオン性を呈しているため、本出願の一実施態様に係る分散剤との関係からイオン性成分による引力によって化学的吸着が可能で、無機物粒子が吸着された分散剤が水系溶媒と均一に混合されることによって分散性を維持することができる。
【0035】
前記無機物粒子の種類としては特に限定があるわけではないが、BaTiO、Pb(Zr、Ti)O(PZT)、Pb1-xLaZr1-yTi(PLZT)(0<x<1、0<y<1)、PB(MgNb2/3)O-PbTiO(PMN-PT)、hafnia(HfO)、SrTiO、SnO、CeO、MgO、NiO、CaO、ZnO、ZrO、Y、Al、TiO、SiC、(LiAlTiP)系glass(0<x<4、0<y<13)、リチウムゲルマニウムチオホスフェート(LiGe、0<x<4、0<y<1、0<z<1、0<w<5)、リチウムナイトライド(Li、0<x<4、0<y<2)、SiS系glass(LiSi、0<x<3、0<y<2、0<z<4)、P系glass(Li、0<x<3、0<y<3、0<z<7)、およびこれらの混合体からなる群より選択されるいずれか1つであることを特徴とすることができる。
【0036】
本出願の一実施態様によれば、多孔性基材を用意するステップと、前記多孔性基材上にコーティング液を印刷するステップとを含み、前記コーティング液は、本出願の一実施態様に係るインク組成物によって形成されることを特徴とする二次電池用分離膜の製造方法を提供する。
【0037】
また、本明細書の一実施態様によれば、前記多孔性基材の表面に無機物粒子を追加的に含んでもよい。
【0038】
本出願の一実施態様に係るコーティング液を多孔性基材上に塗布する方法は、印刷によるもので、これは、コーティングとは異なる方法に相当する。コーティングによってコーティング液を多孔性基材上に塗布する場合には、粒子が均一に分散せず、混合物形態のコーティング液のコーティングが円滑でなく、時間の経過とともに粘度調節および維持が難しいため、分離膜の性能が減少することがある。したがって、コーティングではない、印刷する方式により均一な分散性を長時間維持したまま二次電池用分離膜を製造することができる。
【0039】
また、本出願の一実施態様に係る印刷するステップにおいて、印刷方法は特に限定があるわけではないが、グラビア印刷によることを特徴とすることができる。
【0040】
多孔性基材および無機物粒子は、前記言及した内容が適用可能である。
【0041】
また、本出願の一実施態様は、前記分離膜、正極、および負極を含む電極アセンブリを提供し、前記電極アセンブリが非水電解液とともに電池ケースに内蔵されているリチウム二次電池を提供する。
【0042】
前記正極は、正極集電体上に、正極活物質、導電材、およびバインダーの混合物を塗布した後、乾燥およびプレスして製造され、必要に応じては、前記混合物に充填剤をさらに添加したりする。
【0043】
前記正極集電体は、一般的に3~500μmの厚さに作る。このような正極集電体は、当該電池に化学的変化を誘発することなく高い導電性を有するものであれば特に制限されるわけではなく、例えば、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、またはアルミニウムやステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものなどが使用できる。集電体は、その表面に微細な凹凸を形成して正極活物質の接着力を高めることもでき、フィルム、シート、箔、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など多様な形態が可能である。
【0044】
前記導電材は、通常、正極活物質を含む混合物の全重量を基準として、1~30重量部添加される。
【0045】
このような導電材は、当該電池に化学的変化を誘発することなく導電性を有するものであれば特に制限されるわけではなく、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスキー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などが使用できる。
【0046】
前記充填剤は、正極の膨張を抑制する成分として選択的に使用され、当該電池に化学的変化を誘発することなく繊維状材料であれば特に制限されるわけではなく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン系重合体;ガラス繊維、炭素繊維などの繊維状物質が使用される。
【0047】
一方、前記負極は、負極集電体上に負極活物質を塗布、乾燥およびプレスして製造され、必要に応じて、前記のような導電材、バインダー、充填剤などが選択的にさらに含まれてもよい。
【0048】
前記負極集電体は、一般的に3~500μmの厚さに作られる。このような負極集電体は、当該電池に化学的変化を誘発することなく導電性を有するものであれば特に制限されるわけではなく、例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの、アルミニウム-カドミウム合金などが使用できる。また、正極集電体と同じく、表面に微細な凹凸を形成して負極活物質の結合力を強化させることもでき、フィルム、シート、箔、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など多様な形態で使用できる。
【0049】
前記負極活物質は、例えば、難黒鉛化炭素、黒鉛系炭素などの炭素;LixFe2O3(0≦x≦1)、LixWO2(0≦x≦1)、SnxMe1-xMe'yOz(Me:Mn、Fe、Pb、Ge;Me':Al、B、P、Si、周期律表の1族、2族、3族元素、ハロゲン;0<x≦1;1≦y≦3;1≦z≦8)などの金属複合酸化物;リチウム金属;リチウム合金;ケイ素系合金;スズ系合金;SnO、SnO2、PbO、PbO2、Pb2O3、Pb3O4、Sb2O3、Sb2O4、Sb2O5、GeO、GeO2、Bi2O3、Bi2O4、およびBi2O5などの金属酸化物;ポリアセチレンなどの導電性高分子;Li-Co-Ni系材料などを使用することができる。
【実施例
【0050】
以下、本明細書の一実施態様に係る実施例を通じて本出願をより具体的に説明しようとするが、これによって本発明の範疇が限定されるものではない。
【0051】
実施例1
バインダー10重量部、水50重量部、第1溶媒としてエタノール30重量部、および第2溶媒として2-ブタノール10重量部を含ませてインク組成物を製造した。
【0052】
実施例2
バインダー10重量部、水50重量部、第1溶媒としてイソプロピルアルコール30重量部、および第2溶媒として2-ブタノール10重量部を含ませてインク組成物を製造した。
【0053】
実施例3
バインダー10重量部、水50重量部、第1溶媒として2-ブタノール30重量部、および第2溶媒として2-ブタノール10重量部を含ませてインク組成物を製造した。(2-ブタノール計40重量部である)
【0054】
実施例4
バインダー10重量部、水50重量部、第1溶媒としてエタノール30重量部、および第2溶媒として1-メトキシ-2-プロパノール10重量部を含ませてインク組成物を製造した。
【0055】
実施例5
バインダー10重量部、水50重量部、第1溶媒としてエタノール30重量部、および第2溶媒として2-エトキシエタノール10重量部を含ませてインク組成物を製造した。
【0056】
比較例1
バインダー10重量部、水50重量部、第1溶媒として1-メトキシ-2-プロパノール30重量部、および第2溶媒として2-ブタノール10重量部を含ませてインク組成物を製造した。
【0057】
比較例2
バインダー10重量部、水50重量部、第1溶媒として2-エトキシエタノール30重量部、および第2溶媒として2-ブタノール10重量部を含ませてインク組成物を製造した。
【0058】
比較例3
バインダー10重量部、水50重量部、第1溶媒としてエチレングリコール30重量部、および第2溶媒として2-ブタノール10重量部を含ませてインク組成物を製造した。
【0059】
比較例4
バインダー10重量部、水50重量部、第1溶媒としてエタノール30重量部、および第2溶媒としてエタノール10重量部を含ませてインク組成物を製造した(エタノール計40重量部である)
【0060】
比較例5
バインダー10重量部、水50重量部、第1溶媒としてエタノール30重量部、および第2溶媒としてイソプロピルアルコール10重量部を含ませてインク組成物を製造した。
【0061】
実験例
水系接着バインダーエマルジョンの水分散性を確認するために、水系接着エマルジョンと水が混合された溶液と溶媒を1:1で混合した後、接着バインダーの沈殿状態を確認した。その結果、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、2-ブタノール、2-エトキシエタノール、1-メトキシ-2-プロパノールは沈殿が発生せず混和されていることを確認し、MEK、アセトン、NMPは接着バインダーが互いにかたまって沈殿が発生した。前記溶媒に限らない溶媒において、水系接着バインダーエマルジョンの水分散性を阻害する溶媒はインクに使用することができない。
【0062】
前記実施例1~5および比較例1~5で製造されたインク組成物によりパターンの基材に対する転写性およびパターンの滲み発生の有無に対する実験を進行させた。
【0063】
前記実施例1~5および比較例1~5で製造されたインク組成物を、プリンティングプルーファーを用いてポリプロピレン分離膜にグラビア印刷方法で印刷した。具体的には、グラビア印刷版にインクを塗布し、ドクターブレードでパターン溝部を除いた部分のインクを取り除いてパターン溝部にインクを満たした後、ポリプロピレン分離膜が巻かれたゴムローラを圧力をかけて転がして印刷を進行させた。
【0064】
その結果、実施例1~3のパターンは、印刷版パターンの90%以上が印刷されることを確認した。比較例1~2のパターンは、印刷版パターンの50%以上90%以下が印刷されることを確認した。比較例3のパターンは、印刷版パターンの50%以下が印刷されることを確認した。
【0065】
前記実施例1と比較例5のパターン形状と液集中発生の有無に対する観察結果を図1に示した。図1を参照すれば、比較例5と比較して、実施例1はパターンの液集中現象が著しく減少して、均一な厚さのパターンを印刷することが可能であることが分かる。特に、図1の1番目の写真を参照すれば、上下の写真ともすべて下方向が印刷方向であり、本願の実施例1はパターンが鮮明に形成されたのに対し、比較例5はパターン自体もぼやけており、パターンの中間に液集中が激しく形成されることが分かる。また、2番目写真からも、比較例5はパターンの右側に濃い色で表される液集中現象が発生することを観察することができ、3番目の写真も、比較例5は液集中でパターン上に濃くて高いパターンが形成されることを確認することができる。
【0066】
また、実施例1と比較例5のインクの蒸発速度に対する観察結果を図2に示した。図2を参照すれば、時間に対して比較例5の重量が実施例1の重量に比べて減少する幅が大きいことを確認することができる。これは、比較例5に揮発性溶媒が急激に蒸発して相対的に水の含有量比が増加することを表す。水の含有量比が増加すると、表面エネルギーが増加してパターンの滲みが発生する。
【0067】
さらに、実施例1と比較例5の印刷時間に応じたパターンの滲み(液集中)現象に対する観察結果を図3に示した。図3を参照すれば、時間の経過とともに実施例1によるインク組成物で形成したパターンは元の形態を維持するのに対し、比較例5によるパターンは滲みが激しくなることが分かる。
【0068】
前記実施例1、4および5と比較例4および5のパターンの滲みに対する実験結果を図4に示した。図4を参照すれば、実施例1、4および5はパターンの滲みが発生しないのに対し、前記比較例4および5は印刷方向にパターンの滲みが発生することを確認することができる。
図1
図2
図3
図4