(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】増幅回路
(51)【国際特許分類】
H03F 1/42 20060101AFI20220928BHJP
H03F 1/34 20060101ALI20220928BHJP
H03K 19/0944 20060101ALI20220928BHJP
H01L 21/8238 20060101ALI20220928BHJP
H01L 27/092 20060101ALI20220928BHJP
H01L 29/786 20060101ALI20220928BHJP
H01L 27/088 20060101ALI20220928BHJP
H01L 21/8234 20060101ALI20220928BHJP
H01L 27/06 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
H03F1/42
H03F1/34
H03K19/0944
H01L27/092 C
H01L29/78 613A
H01L27/088 331E
H01L27/06 102A
(21)【出願番号】P 2021508932
(86)(22)【出願日】2020-03-06
(86)【国際出願番号】 JP2020009594
(87)【国際公開番号】W WO2020195694
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-06-28
(31)【優先権主張番号】P 2019062242
(32)【優先日】2019-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(73)【特許権者】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】木村 知玄
(72)【発明者】
【氏名】陶山 武史
(72)【発明者】
【氏名】竹市 弥生
(72)【発明者】
【氏名】関谷 毅
(72)【発明者】
【氏名】植村 隆文
【審査官】工藤 一光
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/147770(WO,A1)
【文献】国際公開第2003/003461(WO,A1)
【文献】特開2015-169815(JP,A)
【文献】特開2007-104367(JP,A)
【文献】特開平7-94953(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111211781(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F1/00-3/72
H03K19/08-19/10
H01L21/8232-21/8246
H01L27/088
H01L29/786
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力端子に入力される信号を増幅して出力端子から出力する増幅回路であって、
入力部に入力される入力信号を反転させた出力信号を出力部から前記出力端子へ出力するインバータ回路と、
前記入力端子と前記インバータ回路の前記入力部との間に接続されたキャパシタと、
前記インバータ回路の前記入力部と前記出力部との間に接続された帰還素子と
を備え、
前記インバータ回路では、半導体チャネルの伝導型が互いに同じである複数のトランジスタが擬CMOSインバータを構成し、
前記帰還素子は、前記擬CMOSインバータを構成する前記トランジスタと伝導型が同じであるトランジスタのゲート電極とドレイン電極とを接続した二端子素子であり、該二端子素子は、チャネルにおける順方向の電流が前記出力部から前記入力部へ向けて流れるように前記インバータ回路に接続される、増幅回路。
【請求項2】
前記インバータ回路を構成する前記トランジスタの伝導型がP型であり、
前記帰還素子を構成する前記トランジスタのドレイン電極が前記インバータ回路の前記入力部に、ソース電極が前記インバータ回路の前記出力部にそれぞれ接続されている請求項1に記載の増幅回路。
【請求項3】
前記インバータ回路を構成する前記トランジスタの伝導型がN型であり、
前記帰還素子を構成する前記トランジスタのドレイン電極が前記インバータ回路の前記出力部に、ソース電極が前記インバータ回路の前記入力部にそれぞれ接続されている請求項1に記載の増幅回路。
【請求項4】
前記帰還素子を構成する前記トランジスタのゲートしきい値電圧の絶対値が、接地電位と前記インバータ回路の電源電圧との間の値である請求項1ないし3のいずれかに記載の増幅回路。
【請求項5】
前記インバータ回路および前記帰還素子を構成する前記トランジスタが、有機半導体トランジスタである請求項1ないし4のいずれかに記載の増幅回路。
【請求項6】
前記インバータ回路および前記帰還素子を構成する前記トランジスタが、互いに同一の製造プロセスにより同時に形成された請求項1ないし5のいずれかに記載の増幅回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、トランジスタを用いて構成される増幅回路に関し、例えば有機トランジスタなどの薄膜トランジスタを用いる増幅回路に適用可能なものである。
【背景技術】
【0002】
例えば表示装置やタッチパネル装置、ウェアラブル電子装置等を製造することを目的として、ガラス板や樹脂板、樹脂シート等の基板の表面に薄膜トランジスタなどの薄膜半導体素子を形成するための技術が研究されている。特に近年では、その性能や生産技術の向上が著しく、また材料によっては印刷技術を利用したデバイス作成が可能であるとの観点から、薄膜半導体素子の材料として有機半導体が注目されている。
【0003】
このような材料により形成される半導体デバイスでは、一般的にその伝導型は使用される半導体材料の種類に大きく依存する。このため、互いに特性の揃ったP型デバイスとN型デバイスとを混在させた、いわゆるコンプリメンタリ型の回路を構成することが困難である。このことに関して、P型またはN型の一方のみを用いてCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)回路と同等の機能を実現した回路も考案されている。
【0004】
例えば特許文献1には、P型の薄膜トランジスタのみを用いてCMOSインバータと同等の機能を果たす回路が記載されている。このような回路は「擬CMOSインバータ」と称呼されている。また例えば特許文献2には、擬CMOSインバータ回路の入出力間に帰還抵抗を接続することで、該回路を増幅回路として利用することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-204702号公報
【文献】特開2017-217098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2に記載された、擬CMOSインバータ回路を用いた増幅回路においては、以下の2つの点において改善の余地が残されている。第1に、帰還素子としての抵抗体を、他の半導体トランジスタの製造プロセスとは別に作り込む、または外付けする必要があり、製造工程が複雑になる。第2に、レベルシフトまたは直流遮断等の目的で増幅回路に入力キャパシタを接続するとき、回路の周波数特性と電源投入時の起動の速さとの両立が難しいという問題がある。より詳しくは後述するが、具体的には以下の通りである。
【0007】
周波数特性と起動の速さとの間には、帰還素子と入力キャパシタとで決まる時定数に対してトレードオフの関係がある。すなわち、回路の周波数特性を改善するためには時定数は大きい方がよい一方、電源投入時に回路が定常状態に至るまでの時間(本明細書では「起動時間」と称する)を短くするためには、時定数は小さい方が好ましい。
【0008】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、擬CMOSインバータ回路を用い、かつ入力キャパシタを有する増幅回路において、製造プロセスを複雑にすることなく、しかも、優れた周波数特性と短い起動時間とを両立させることのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の一の態様は、入力端子に入力される信号を増幅して出力端子から出力する増幅回路であって、上記目的を達成するため、入力部に入力される入力信号を反転させた出力信号を出力部から前記出力端子へ出力するインバータ回路と、前記入力端子と前記インバータ回路の前記入力部との間に接続されたキャパシタと、前記インバータ回路の前記入力部と前記出力部との間に接続された帰還素子とを備える。ここで、前記インバータ回路では、半導体チャネルの伝導型が互いに同じである複数のトランジスタが擬CMOSインバータを構成し、前記帰還素子は、前記擬CMOSインバータを構成する前記トランジスタと伝導型が同じであるトランジスタのゲート電極とドレイン電極とを接続した二端子素子であり、該二端子素子は、チャネルにおける順方向の電流が前記出力部から前記入力部へ向けて流れるように前記インバータ回路に接続される。
【0010】
前述した特許文献2に記載の増幅回路では、帰還素子として抵抗が用いられていた。一方、上記のように構成された発明では、擬CMOSインバータの入出力間に接続される帰還素子が、擬CMOSインバータを構成するトランジスタと同じ伝導型のトランジスタにより構成されている。このため、帰還素子となるトランジスタを形成するためのプロセスは、擬CMOSインバータを構成するトランジスタを製造するプロセス中に組み込むことが可能である。より具体的には、擬CMOSインバータを構成するトランジスタを形成する際に、帰還素子となるトランジスタを併せて形成することができる。したがって、単なるインバータ回路を形成する場合と比較して、製造工程としては形成されるトランジスタの数が異なるだけで基本的に同じであり、新たな工程を設ける必要がない。
【0011】
また、帰還素子となるトランジスタは、ドレイン電極とゲート電極とが接続された二端子素子を構成している。該二端子素子では、インバータ回路の出力側から入力側に順方向の電流が流れる。つまり帰還素子はダイオードとして機能する。無入力状態のとき擬CMOSインバータ回路の出力部の電位は高電位(理想的には電源電位)となる。このため電源投入直後においては、帰還素子であるダイオードに比較的大きな順方向電圧が印加されることになり、低抵抗状態の該ダイオードを介してインバータ回路の出力部から入力部に電流が流れ込む。これにより入力部の電位が上昇する一方、反転電圧が出力される出力部では電位が低下する。両電位が均衡した時点で回路は定常状態となる。このとき帰還素子の端子間電圧は小さく、帰還素子は高抵抗状態となる。
【0012】
このように、電源投入直後には帰還素子は低抵抗であるため、入力キャパシタとの組み合わせで決まる時定数は比較的小さい。したがって、インバータ回路の入出力間の電位差は短時間で収束し定常状態に至る。つまり、起動時間が短い。一方、定常状態においては、帰還素子が高抵抗であるため時定数が大きく、周波数特性(より具体的には低周波域での増幅度)が向上する。したがって、この増幅回路では、優れた周波数特性と短い起動時間とを両立させることが可能である。
【発明の効果】
【0013】
上記のように、本発明によれば、インバータ回路を構成するトランジスタと同じ伝導型のトランジスタを帰還素子として用いるので、帰還素子を形成することにより製造工程が複雑となることはない。また、帰還素子は、電源投入直後には低抵抗となるため起動時間が短い一方、定常状態では高抵抗となるため、低周波数域での増幅度の低下が抑えられる。すなわち、本発明では、製造プロセスを複雑にすることなく、しかも、優れた周波数特性と短い起動時間とを両立させることが可能である。
【0014】
この発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、添付図面を参照しながら次の詳細な説明を読めば、より完全に明らかとなるであろう。ただし、図面は専ら解説のためのものであって、この発明の範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1A】擬CMOSインバータの構成例を示す図である。
【
図1B】擬CMOSインバータの動作特性例を示す図である。
【
図2A】インバータ回路を増幅回路として使用した例を示す図である。
【
図2B】増幅回路の電圧利得の周波数特性を示す図である。
【
図3A】本実施形態における増幅回路の回路構成を示す図である。
【
図3B】帰還素子として用いられるトランジスタの動作特性例を示す図である。
【
図3C】増幅回路における入力電圧および出力電圧の変化例を示す図である。
【
図4A】増幅回路を薄膜トランジスタにより構成する場合の回路レイアウトの例を示す図である。
【
図4B】回路の構成部品であるトランジスタの断面構造を例示する図である。
【
図5】各タイプのトランジスタによる増幅回路の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る増幅回路のいくつかの実施形態について、図面を参照しながら説明する。本発明の一実施形態は、いわゆる擬CMOSインバータを使用した増幅回路である。擬CMOSインバータは、伝導型が互いに同一であるトランジスタの組み合わせにより、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)インバータの回路構成および機能を模したインバータ回路である。CMOSインバータ、およびCMOSインバータを用いた増幅回路の回路構成およびその動作原理は公知である。そのため、ここでは説明を省略し、まず擬CMOSインバータ回路について説明する。
【0017】
図1Aおよび
図1Bは擬CMOSインバータの構成例を示す図である。より具体的には、
図1Aは擬CMOSインバータの回路構成の一例を示す図であり、
図1Bはその動作特性例を示す図である。擬CMOSインバータ100は、4つのトランジスタ101~104を備えている。これらのトランジスタ101~104はいずれも、P型の伝導型を有するデプレション型トランジスタである。例えば全てのトランジスタ101~104が、同一構造を有するものであってよい。したがって、これらのトランジスタ101~104を同一の製造プロセスで同時に形成することが可能である。なお、以下の説明においては、「擬CMOSインバータ」を単に「インバータ」と称することがある。
【0018】
第1のトランジスタ101のゲート(G)端子は入力端子Vi’に接続されている。また、そのソース(S)端子は図示しない電源に接続されて、適宜の正電位の電源電圧Vddが印加されている。ドレインD端子は第2のトランジスタ102のソース端子と接続されている。第2のトランジスタ102のゲート端子はソース端子に接続され、ドレイン端子には電源電圧Vs1が印加される。電源電圧Vs1は電源電圧Vddの電位より低く、例えば接地電位または適宜の負電位とすることができる。
【0019】
第3のトランジスタ103のゲート端子は、第1のトランジスタ101のゲート端子と接続されている。つまり、第1のトランジスタ101のゲート端子と第3のトランジスタ103のゲート端子とは互いに並列に、入力端子Vi’に接続されている。第3のトランジスタ103のソース端子には電源電圧Vddが印加されている。また、第3のトランジスタ103のドレイン端子は第4のトランジスタ104のソース端子に接続され、さらに出力端子Vo’に接続されている。
【0020】
第4のトランジスタ104のゲート端子は第1のトランジスタ101のドレイン端子、第2のトランジスタ102のソース端子およびゲート端子に接続されている。第4のトランジスタ104のドレイン端子には電源電圧Vs2が印加されている。電源電圧Vs2は例えば電源電圧Vs1と共通とすることができる。なお、既に知られているように、擬CMOSインバータ回路の特徴として、これらの電源電圧Vs1、Vs2を異ならせることによりその動作特性を変調することが可能である。ただし、以下では最も簡単な例として電源電圧Vs1、Vs2を同電位、例えばいずれも接地電位とした場合で考える。
【0021】
このように構成された擬CMOSインバータ100は、入力端子Vi’にHレベルの信号が入力されたときには出力端子Vo’にLレベルを出力する一方、入力端子Vi’にLレベルの信号が入力されたときには出力端子Vo’にHレベルを出力する反転回路として機能する。なお、以下の説明において特に区別する必要がない限り、入力端子およびこれに印加される入力電圧をいずれも符号Vi’により表す。同様に、出力端子およびこれに現れる出力電圧をいずれも符号Vo’により表す。
【0022】
具体的には、
図1Bに示すように、入力電圧Vi’が接地電位(0V)に近いときには、出力電圧Vo’は、ほぼ電源電圧Vddに近い値となる。一方、入力電圧Vi’が電源電圧Vddに近いときには、出力電圧Vo’は、ほぼ電源電圧Vs2となる。Vs2=0とした本例では、出力電圧Vo’はほぼ接地電位となる。そして、接地電位と電源電圧Vddとの中間的な電圧Vnにおいて、出力電圧Vo’は大きく変動する。言い換えれば、この電圧Vnの近辺では入力電圧Vi’の僅かな変化に対して出力電圧Vo’が大きく変動する。この性質を利用して、インバータ回路を反転増幅回路として利用することが可能である。
【0023】
図2はインバータ回路を増幅回路として使用した例を示す図である。より具体的には、
図2Aは増幅回路50の回路構成例を示し、
図2Bはその電圧利得の周波数特性を示す図である。また、
図2Cは増幅回路50の起動時間を説明する図である。
図2Aに示すように、前述した擬CMOSインバータ100の入力端子Vi’と出力端子Vo’との間に帰還素子としての抵抗Rを接続することにより、擬CMOSインバータ100を反転増幅回路として動作させることができる。
【0024】
出力端子Vo’から入力端子Vi’への電圧帰還により、無信号状態では両端子が同電位となる。より具体的には、入力電圧Vi’と出力電圧Vo’とがいずれも電圧Vnであるとき平衡状態となる。したがって入力端子Vi’に直流電位が現れることとなるので、増幅回路50の入力端子Viとインバータ10の入力端子Vi’との間には直流カット用の入力キャパシタCが設けられる。なお、以下の説明において特に区別する必要がない限り、増幅回路50の入力端子およびこれに印加される入力電圧をいずれも符号Viにより表す。同様に、出力端子およびこれに現れる出力電圧をいずれも符号Voにより表す。増幅回路50の出力端子Voは、インバータ100の出力端子Vo’と電気的には同一である。
【0025】
増幅回路50の入力端子Viに信号が入力されると、インバータ100の入力端子Vi’の電位は電圧Vnを中心として信号に応じた変化を示す。これに応じてインバータ100の出力電圧Vo’が大きく変化することで、増幅された信号が増幅回路50の出力端子Voに現れる。
図1Bに示されるように、入力電圧Vi’の上昇に対し出力電圧Vo’は低下する方向に変化するから、増幅回路50は反転増幅回路として機能する。
【0026】
増幅回路50の電圧利得(=Vo/Vi)としては、
図2Bに点線で示すように、ある周波数より低い周波数領域で一定であり、より高い周波数で一様に低下する特性が理想的である。しかしながら、入力キャパシタCによって低周波信号の伝達が制限される。そのため実際の増幅回路50においては、
図2Bに実線で示すように、入力キャパシタCと抵抗Rとの時定数で決まる周波数より低い周波数では電圧利得が低下する。これを抑制するためには、時定数を大きく、つまり抵抗Rの抵抗値および入力キャパシタCの容量を大きくすればよい。
【0027】
ただし、時定数を大きくすることで、特に電源投入直後において次のような問題が生じ得る。電源投入直後の増幅回路50では、
図2Cに示すように、インバータ100の入力電圧Vi’がほぼ0、出力電圧Vo’がほぼ電源電圧Vddである。これらの電位差が帰還素子である抵抗Rの両端に加わるため、抵抗Rを介して出力端子Vo’から入力端子Vi’に向かって電流が流れ込む。これにより入力端子Vi’の電位が上昇する一方、出力端子Vo’の電位は低下し、
Vi’=Vo’≒Vn
となった時点で電位の変化が収束し回路は定常状態に達する。収束までに要する時間Tsは、入力キャパシタCと抵抗Rとがなす時定数が大きいほど長くなる。
【0028】
このように、低域における電圧利得の低下を抑えるためには、入力キャパシタCと抵抗Rとがなす時定数が大きい方が好ましい。一方、時定数が大きいと、電源投入後に増幅回路50が定常状態に到達するまでの起動時間が長くなってしまうという問題がある。つまり、入力キャパシタCと抵抗Rとの時定数に関して、低域の電圧利得と起動時間とはトレードオフの関係にある。以下に説明する本実施形態の増幅回路は、この問題を解消し、低域での利得低下を抑制し、しかも起動時間の増大を抑えることができるものである。
【0029】
また、特にトランジスタが有機半導体の製造プロセスによって形成されるものである場合には、このプロセスによって安定した抵抗体を形成する方法はまだ確立されていない。このため、抵抗を含む回路を製造するためには抵抗器を外付けする必要が生じ、製造工程が複雑になる。一方、本実施形態の増幅回路は抵抗を使用していないため、このような問題は生じない。
【0030】
図3Aないし
図3Cは本実施形態の増幅回路の構成を示す図である。より具体的には、
図3Aは本実施形態における増幅回路10の回路構成を示し、
図3Bは帰還素子として用いられるトランジスタ111の動作特性例を示す図である。また、
図3Cは増幅回路10における入力電圧および出力電圧の変化例を示す図である。
【0031】
図3Aに示すように、この実施形態の増幅回路10では、インバータ100の入出力端子間に接続する帰還素子として、トランジスタ111が用いられる。トランジスタ111は、インバータ100を構成するトランジスタ101~104と同じ伝導型を有している。この例では、伝導型がP型のデプレション型トランジスタが用いられる。
【0032】
トランジスタ111では、ソース(S)端子がインバータ100の出力端子Vo’に、ドレインD端子がインバータ100の入力端子Vi’に接続されている。したがって、P型チャネルを有するトランジスタ111においては、チャネルの順方向電流は、インバータ100の出力端子Vo’から入力端子Vi’に向かって流れる。また、ゲート(G)端子はドレイン端子と接続されており、トランジスタ111は二端子素子、具体的にはダイオードとして機能する。
【0033】
以下の説明のために、トランジスタ111のドレイン電位を基準としたときのソース電位であるソース・ドレイン間電圧Vsd、ソース端子からドレイン端子に向けて流れるドレイン電流Id、二端子素子としてみたときのトランジスタ111の抵抗Rsdを導入する。これらの物理量の間には下式:
Vo’-Vi’=Vsd=Rsd・Id … (式1)
の関係がある。ただし、抵抗Rsdは一定ではなくソース・ドレイン間電圧Vsdによって変化する。
【0034】
図3Bの上段に示すように、ゲート・ドレイン間が短絡されダイオードとして動作するトランジスタ111のドレイン電流Idは、ソース・ドレイン間電圧Vsdが当該トランジスタ固有のしきい値電圧Vthより小さいときにはほとんど流れない(カットオフ状態)。ソース・ドレイン間電圧Vsdがしきい値電圧Vthより大きくなると、ソース・ドレイン間電圧Vsdの大きさに応じた大きさのドレイン電流Idが流れる(オン状態)。なお、一般的な定義におけるしきい値電圧Vthは、ソース電位を基準としたときのゲート電位として表される。一方、上記したソース・ドレイン間電圧Vsdは、正の値とするためにドレイン電位を基準としたソース電位として定義されている。したがって、ソース電位を基準とする場合とは正負が逆になる。このことから、ここでいうソース・ドレイン間電圧Vsdとの比較におけるしきい値電圧Vthは、その大きさを絶対値で表したものとする。
【0035】
このため、
図3Bの下段に示すように、トランジスタ111の抵抗Rsdは、ソース・ドレイン間電圧Vsdがしきい値電圧Vthより小さいときには大きな値を示す。一方、これよりソース・ドレイン間電圧Vsdが大きくなるほど小さな値を示す。このことは、次のような作用をもたらす。
【0036】
図2Cを用いて先に説明したように、電源投入直後においてはインバータ100の出力電圧Vo’はほぼ電源電圧Vddであり、入力電圧Vi’はほぼ0である。この状態から、出力電圧Vo’は次第に低下する一方、入力電圧Vi’は次第に上昇して最終的に両電圧が電圧Vnに収束して回路が定常状態に達する。これに要する時間は、帰還素子の抵抗値と入力キャパシタの容量とで決まる時定数に依存する。
【0037】
本実施形態の回路においても同様であるが、電源投入直後ではインバータ100の出力電圧Vo’と入力電圧Vi’との差、つまりトランジスタ111のソース・ドレイン間電圧Vsdが大きいため、トランジスタ111は低抵抗状態である。例えば、
図3Cに示す時刻T1におけるソース・ドレイン間電圧Vsdがトランジスタ111のしきい値電圧Vthより十分大きければ、
図3B下段に示すように抵抗Rsdは小さい。
【0038】
このため、抵抗Rsdと入力キャパシタCの容量とで決まる時定数は小さく、
図3Cに実線で示すように、入出力間の電圧差は急速に小さくなる。つまり、回路が定常状態に収束するまでの起動時間が、
図3Cに点線で示す、抵抗値の大きな帰還素子を使用した場合に比べて短くなる。
【0039】
一方、例えば
図3Cに示す時刻T2のように、回路が定常状態に達した後では、トランジスタ111のソース・ドレイン間電圧Vsdが十分に小さくなっており、このとき、
図3C下段に示すように抵抗Rsdは大きな値となっている。回路が増幅動作を行う定常状態においては、抵抗Rsdと入力キャパシタCとがなす時定数が大きくなるため、低周波数領域での利得の低下を抑制することができる。
【0040】
帰還素子が低抵抗状態となることで起動時間を短縮する、との効果を得るためには、電源投入直後にトランジスタ111がオン状態となる必要がある。したがって、少なくともトランジスタ111のしきい値電圧Vthが、接地電位と電源電圧Vddとの間の大きさであることが必要である。そして、起動時間をさらに短縮するとの観点からは、抵抗Rsdが小さい状態ができるだけ長く続くことが望ましい。したがって、トランジスタ111のしきい値電圧Vthはできるだけ小さいことが望ましい。
【0041】
しかしながら、帰還素子が高抵抗となるソース・ドレイン間電圧Vsdの電圧範囲が狭くなると、増幅回路としての許容入力電圧は小さくなってしまう。というのは、増幅回路10への入力電圧Viの振幅が大きくなり、これに応じて出力電圧Voが大きくなると、帰還素子であるトランジスタ111の両端に加わる電圧(つまりソース・ドレイン間電圧Vsd)も大きくなり、これがしきい値電圧Vthを超えるとトランジスタ111が低抵抗状態となり利得が低下してしまうからである。この観点からは、トランジスタ111のしきい値電圧Vth(正確にはその絶対値)は、電源電圧Vddにできるだけ近い大きな値であることが望ましいことになる。
【0042】
このように、
図3Aの回路が、起動時間を短縮しつつ増幅回路として適切に動作するためには、帰還素子となるトランジスタ111が有するしきい値電圧Vthを適切なものとすることが望まれる。例えば、しきい値電圧Vthを電源電圧Vddの半分程度とすることができる。
【0043】
以上のように、この実施形態の増幅回路10は、電源投入後に定常状態に達するまでの起動時間を短くし、しかも起動後には低周波数領域における利得の低下を抑えて、優れた周波数特性を得ることができるものである。さらに、擬CMOSインバータ100を構成するトランジスタ101~104と、帰還素子として機能するトランジスタ111とを、同じ伝導型のトランジスタとして形成することができる。このため、製造プロセスの面でも優れている。具体的には、帰還素子となるトランジスタ111を形成するプロセスを、擬CMOSインバータ100を構成するトランジスタ101~104を形成するプロセスに組み入れることができ、帰還素子を追加することによる工程の増加が生じない。
【0044】
図4Aおよび
図4Bは本実施形態の増幅回路のレイアウト例を示す図である。より具体的には、
図4Aは
図3Aに示す増幅回路10を薄膜トランジスタにより構成する場合の回路レイアウトの例を示す。また、
図4Bは回路の構成部品であるトランジスタの断面構造を例示する図である。
図4Aにおいて、斜線を付した構造物は、チャネルCHとして機能する有機半導体薄膜SCを表している。薄膜トランジスタの主要部となる半導体薄膜の材料としては、半導体材料として知られている種々のものを用いることができる。
【0045】
図4Aに示すように、インバータ100を構成するトランジスタ101~104と帰還素子となるトランジスタ111とは、基本的にいずれも同一構造とすることが可能である。したがって、各トランジスタを同一の製造プロセスで製造することが可能である。
図4B右側では、各トランジスタ101~104、111を統一的に扱うため、代表的に符号Trを付している。同図に示すように、トランジスタTrは基本的に、基板SBに形成されたドレイン電極Edおよびソース電極Es、これらを接続する有機半導体薄膜SC、有機半導体薄膜SCの表面を覆う絶縁膜IG、絶縁膜IGを介して有機半導体薄膜SCと対向するゲート電極Egが順次積層された構造を有している。これらの各機能層は、塗布、真空蒸着、化学的気相成長、フォトリソグラフィ、印刷、めっき等、それぞれの材料に応じた適宜の成膜方法により形成することが可能である。このようなトランジスタにおいて、ドレイン電極とソース電極とは構造的には同一であり相互に交換可能である。
【0046】
このように構成されたトランジスタ同士が、
図4Aに示すように適宜の配線パターンPTで相互に接続される。これにより、
図3Aに示す増幅回路10を形成することが可能である。なお、入力キャパシタCについては、
図4B左側に示すように、絶縁膜IGを介して近接対向する2つの電極E1,E2により構成することが可能である。このような構造を形成するための製造プロセスも、トランジスタを製造するプロセスと共通化することが可能である。
【0047】
また、配線パターンPTについては、絶縁膜IGにより相互に隔離された電極同士を接続する必要もある。例えば
図4B左側に示すキャパシタCの電極板E1と
図4B右側に示すトランジスタTrのゲート電極Egとを接続する場合(トランジスタTrがトランジスタ101として機能する場合に相当)、配線パターンPTは絶縁膜IGの上面に沿って両電極を接続するように形成されればよい。
【0048】
一方、例えば
図4B右側に示すトランジスタTrのゲート電極Egとドレイン電極Edとを接続する場合(トランジスタTrが帰還用トランジスタ111として機能する場合に相当)、両電極が絶縁膜IGによって隔てられている。この場合には、絶縁膜IGに部分的に貫通孔を設けて上下の配線を電気的に接続する、いわゆるヴィアホール接続によって配線パターンPTを形成することが可能である。
【0049】
なお、上記実施形態の増幅回路10は、P型かつデプレション型のトランジスタ101~104,111を組み合わせて構成されている。しかしながら、伝導型がN型であるトランジスタや、エンハンスメント型のトランジスタによっても同様の回路を構成することが可能である。ただし、その動作特性の差異に起因して回路構成は部分的に異なる。
【0050】
図5は各タイプのトランジスタによる増幅回路の構成例を示す図である。このうち左上欄の増幅回路10は、P型半導体を使用したデプレション型トランジスタにより構成されたものである。すなわち増幅回路10は、
図3Aに示した本実施形態の回路と同じものである。なお、各タイプのトランジスタを用いた擬CMOSインバータの回路構成は公知であるので、詳しい説明を省略する。また、これらの回路においては低電位側の電源を共通化し、電源電圧Vssとして表している。
【0051】
また、右上欄の増幅回路20は、P型、エンハンスメント型トランジスタにより構成された回路の例である。この増幅回路20は、擬CMOSインバータを構成するトランジスタ201~204と、帰還素子となるトランジスタ211とを備えている。回路構成はデプレション型のものと概ね同じであるが、トランジスタ202のゲート電位については、当該トランジスタ202が有するしきい値電圧Vthの大きさに応じて、点線で示すようにドレイン端子と同電位とされるケースと、実線で示すように適宜の制御電圧Vcが印加される場合とがあり得る。
【0052】
左下欄の増幅回路30は、N型、デプレション型トランジスタにより構成された回路の例である。この増幅回路30は、擬CMOSインバータを構成するトランジスタ301~304と、帰還素子となるトランジスタ311とを備えている。インバータの回路構成は、P型の増幅回路10の極性を反転したものとなる。また、帰還素子となるトランジスタ311は、ドレイン・ゲート間が接続されてダイオードとして用いられる点についてはP型のものと同じである。ただし、ドレイン端子がインバータの出力側に、ソース端子がインバータの入力側に接続される点で相違がある。N型トランジスタにおいては、前述の(式1)に代えて下式:
Vo’-Vi’=Vds=Rds・Id … (式2)
の関係が成立する。ここで、符号Vdsはソース端子に対するドレイン端子電位、符号Rdsはドレイン・ソース間の抵抗である。
【0053】
また、右下欄の増幅回路40は、N型、エンハンスメント型トランジスタにより構成された回路の例である。この増幅回路40は、擬CMOSインバータを構成するトランジスタ401~404と、帰還素子となるトランジスタ411とを備えている。インバータの回路構成は、P型の増幅回路20の極性を反転したものとなる。この場合も、帰還素子となるトランジスタ411は、ドレイン・ゲート間が接続され、ドレイン端子がインバータの出力側に、ソース端子がインバータの入力側にそれぞれ接続される。
【0054】
このように、使用されるトランジスタのタイプ(P型/N型、デプレション型/エンハンスメント型)によってインバータの回路構成が一部異なるが、これに帰還素子を接続して増幅回路として動作させるための回路の改変については共通している。それは、入力側に入力キャパシタを接続することと、トランジスタをダイオード接続したものを帰還素子として用いることとである。このときのトランジスタについては、P型、N型とも、ゲート・ドレイン間を接続し、チャネルにおける順方向電流の方向がインバータの出力側から入力側へ向かう方向と一致するように、インバータの入出力間に介挿される。
【0055】
これにより、いずれの回路例においても、電源投入直後においては帰還用トランジスタが低抵抗となり、入力キャパシタCとでなす時定数が小さくなる。そのため、回路が定常状態に達するまでに要する起動時間を短くすることができる。一方、定常状態に達した後には、帰還用トランジスタが高抵抗となる。そのため、入力キャパシタCとでなす時定数に依存する低周波数領域での利得低下を抑制することができる。すなわち、本発明に係る増幅回路は、優れた周波数特性と短い起動時間とを両立させることができる。また、帰還用トランジスタを、インバータを構成するトランジスタと同じ製造プロセス中で形成することができる。このため、単にインバータを製造する場合と比べて工程が複雑になることはなく、効率的に増幅回路を製造することが可能である。
【0056】
以上説明したように、本実施形態の増幅回路10においては、その入力端子Viおよび出力端子Voが、それぞれ本発明の「入力端子」および「出力端子」に相当している。一方、増幅回路10の構成要素である擬CMOSインバータ100が本発明の「インバータ回路」に相当しており、その入力端子Vi’および出力端子Vo’が、それぞれ本発明の「入力部」および「出力部」に相当している。また、上記実施形態では、キャパシタCおよびトランジスタ111がそれぞれ本発明の「キャパシタ」および「帰還素子」として機能している。
【0057】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記した実施形態は、本発明に係る増幅回路を、有機半導体材料を用いた有機薄膜トランジスタの組み合わせにより実現したものである。しかしながら、本発明の増幅回路は、有機薄膜トランジスタに限定されず、各種の半導体素子を用いて構成することが可能である。
【0058】
また、上記実施形態の各増幅回路10~40はいずれも、デプレション型またはエンハンスメント型のいずれかのトランジスタを組み合わせて構成されたものである。ここで、P型半導体およびN型半導体を1つの回路中で混在させることは、特に有機半導体材料を使用する場合には、それぞれ異なる材料を用いて回路を形成する必要があり、製造工程が複雑になるため好ましくない。これに対し、伝導型についてはP型またはN型のいずれかに統一する一方で、デプレション型のトランジスタとエンハンスメント型のトランジスタとを混在させることは許容される。
【0059】
また、ゲート端子がドレイン端子またはソース端子に直結されたトランジスタにおいては、このような直結に代えて、ゲート端子に適宜のバイアス電圧が印加された態様で使用されてもよい。このような態様によれば、ゲートバイアスにより当該トランジスタの実効的なしきい値電圧Vthを制御することが可能となる。
【0060】
以上、具体的な実施形態を例示して説明してきたように、本発明に係る増幅回路においては、例えばインバータ回路を構成するトランジスタの伝導型がP型であれば、帰還素子を構成するトランジスタのドレイン電極がインバータ回路の入力部に、ソース電極がインバータ回路の出力部にそれぞれ接続されればよい。また、インバータ回路を構成するトランジスタの伝導型がN型であれば、帰還素子を構成するトランジスタのドレイン電極がインバータ回路の出力部に、ソース電極がインバータ回路の入力部にそれぞれ接続されればよい。これらの構成によれば、帰還素子としてのトランジスタが、インバータ回路の出力部から入力部に向かって電流が流れる方向をチャネル電流の順方向となるようにすることができ、本発明に係る帰還素子として有効に機能することになる。
【0061】
また例えば、帰還素子を構成するトランジスタのゲートしきい値電圧は、その絶対値が接地電位とインバータ回路の電源電圧との間の値であるように構成されてよい。このような構成によれば、インバータ回路の入出力部間の電位差がほぼ電源電圧となる電源投入直後において、当該トランジスタが確実にオン状態となる。そのため、低抵抗化による起動時間の短縮効果を確実に得ることができる。また、インバータ回路の入出力部間の電位差がほぼ0である状態ではトランジスタがカットオフ状態となる。そのため、高抵抗化による周波数特性の改善効果を確実に得ることが可能となる。
【0062】
また例えば、インバータ回路および帰還素子を構成するトランジスタは、有機半導体トランジスタであってよい。本発明では、単一の伝導型を有するトランジスタの組み合わせによって優れた特性を有する増幅回路を構成することが可能である。このような特徴は、同一材料で相補的な伝導型のトランジスタを形成することが困難である有機半導体を用いる場合に特に有効なものとなるからである。
【0063】
また例えば、インバータ回路および帰還素子を構成するトランジスタは、互いに同一の製造プロセスにより同時に形成されたものであってよい。本発明に係る増幅回路では、インバータ回路および帰還素子を構成する複数のトランジスタが、互いに同一の伝導型を有する。また、各トランジスタの構造も、原理的には同一のものとすることができる。このため、1つのトランジスタを形成するための製造プロセスと同一の工程で、複数のトランジスタを同時に形成することが可能である。これにより、低い製造コストで優れた特性の増幅回路を製造することができる。
【0064】
以上、特定の実施例に沿って発明を説明したが、この説明は限定的な意味で解釈されることを意図したものではない。発明の説明を参照すれば、本発明のその他の実施形態と同様に、開示された実施形態の様々な変形例が、この技術に精通した者に明らかとなるであろう。故に、添付の特許請求の範囲は、発明の真の範囲を逸脱しない範囲内で、当該変形例または実施形態を含むものと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
この発明に係る増幅回路は、例えば表示装置やタッチパネル装置、ウェアラブル電子装置等の各種電子装置に搭載可能である。特に、薄膜トランジスタを用いて増幅回路を構成することができるので、ガラス基板や柔軟な樹脂基板等の表面に増幅回路を実装する用途にも好適である。
【符号の説明】
【0066】
10~40 増幅回路
100 擬CMOSインバータ(インバータ回路)
101~104、201~204、301~304、401~404 トランジスタ
111、211、311、411 帰還用トランジスタ
C 入力キャパシタ(キャパシタ)
Vi 入力端子
Vi’ 入力部
Vo 出力端子
Vo’ 出力部