(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】検査治具、及び基板検査装置
(51)【国際特許分類】
G01R 1/06 20060101AFI20220928BHJP
G01R 1/073 20060101ALI20220928BHJP
G01R 1/067 20060101ALI20220928BHJP
H01L 21/66 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
G01R1/06 D
G01R1/073 E
G01R1/067 C
H01L21/66 B
(21)【出願番号】P 2019514404
(86)(22)【出願日】2018-04-16
(86)【国際出願番号】 JP2018015727
(87)【国際公開番号】W WO2018198859
(87)【国際公開日】2018-11-01
【審査請求日】2021-04-01
(31)【優先権主張番号】P 2017088539
(32)【優先日】2017-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】392019709
【氏名又は名称】日本電産リード株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000104021
【氏名又は名称】オルガン針株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100138689
【氏名又は名称】梶原 慶
(72)【発明者】
【氏名】長沼 正樹
(72)【発明者】
【氏名】高橋 学
(72)【発明者】
【氏名】加藤 靖典
【審査官】梶田 真也
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-096747(JP,A)
【文献】特開2010-281583(JP,A)
【文献】国際公開第2016/108520(WO,A1)
【文献】特開2011-108734(JP,A)
【文献】特開平09-274054(JP,A)
【文献】特開2008-170255(JP,A)
【文献】特開2008-076281(JP,A)
【文献】米国特許第06255832(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0002124(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 1/06 - 1/073
G01R 31/02 - 31/06
G01R 31/28 - 31/302
G01R 31/316
G01R 31/317
G01R 31/3183- 31/3185
G01R 31/319
H01L 21/64 - 21/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象となる基板に設けられる検査点に対してプローブを接触させるための検査治具であって、
前記基板に対向して配置される対向面が設けられた対向プレートを有する検査側支持体と、
前記対向プレートの前記対向面とは反対側に対向配置される、支持プレートと平坦面とを有する電極側支持体と、
前記検査側支持体と前記電極側支持体とを所定距離隔てて保持する連結部材と、
前記平坦面に対して平行にスライド自在に対向配置された可動プレートとを備え、
前記対向プレートには、前記プローブの先端部を挿通するためのプローブ挿通孔が形成され、
前記支持プレートには、前記プローブの後端部を挿通させて支持するプローブ支持孔が、前記対向プレートのプローブ挿通孔に対応して設けられ、
前記可動プレートには、前記プローブを貫通させるためのプローブ貫通孔が、前記支持プレートのプローブ支持孔に対応して設けられ、
前記検査治具は、前記可動プレートを前記平坦面と平行な許容方向に沿って移動可能にさせる許容状態と、前記プローブ支持孔の中心に対して前記プローブ貫通孔の中心が前記許容方向に沿って所定のずれ量ずれるように前記可動プレートを位置させる拘束状態とを切り替え可能な切替部をさらに備え
、
前記プローブ支持孔は、
前記支持プレートの前記可動プレート側の面に開口する支持側大径部と、
前記支持側大径部よりも前記可動プレートから遠ざかる側に形成され、かつ前記支持側大径部よりも小径の支持側小径部とを含み、
前記プローブ貫通孔は、
前記可動プレートの前記支持プレート側の面に開口する可動側大径部と、
前記可動側大径部よりも前記支持プレートから遠ざかる側に形成され、かつ前記可動側大径部よりも小径の可動側小径部とを含み、
前記拘束状態における前記ずれ量は、前記支持側大径部の半径と前記可動側大径部の半径との合計値と前記プローブの直径との差より小さい検査治具。
【請求項2】
前記切替部は、
前記支持プレートを貫通すると共に前記可動プレートの位置を拘束するためのピンを挿通可能な位置決孔と、
前記支持プレートを貫通して前記位置決孔から突出する前記ピンを受け入れ可能に前記可動プレートに形成された受入孔とを含む請求項1記載の検査治具。
【請求項3】
前記ピンの先端部には、当該ピンの外周から軸心へ向かって傾斜する傾斜面が形成されている請求項2記載の検査治具。
【請求項4】
前記拘束状態における前記ずれ量は、前記プローブ支持孔の半径と前記プローブ貫通孔の半径との合計値と前記プローブの直径との差より小さい請求項1~3のいずれか1項に記載の検査治具。
【請求項5】
前記可動プレートの、前記平坦面に垂直な方向の移動を規制する離間規制部材をさらに備える請求項1~
4のいずれか1項に記載の検査治具。
【請求項6】
前記電極側支持体は、前記可動プレートを収容する凹部を備え、
前記凹部の底面が前記平坦面とされ、
前記凹部における前記ずれの方向に対向する側壁間の距離は、前記可動プレートの前記ずれの方向の長さよりも、前記ずれ量以上大きい請求項1~
5のいずれか1項に記載の検査治具。
【請求項7】
前記プローブをさらに備え、
前記可動プレートは、前記許容状態において、前記プローブの弾性復元力に基づき位置決めされる請求項1~
6のいずれか1項に記載の検査治具。
【請求項8】
請求項1~
7のいずれか1項に記載の検査治具と、
前記電極側支持体の前記平坦面とは反対側で、前記プローブの後端部と接触する電極と、
前記電極を介して前記プローブから得られた電気信号に基づき基板検査を行う検査部とを備える基板検査装置。
【請求項9】
請求項2又は3に記載の検査治具と、
前記電極側支持体の前記平坦面とは反対側で前記プローブの後端部と接触する電極が、形成された電極板と、
前記電極を介して前記プローブから得られた電気信号に基づき基板検査を行う検査部とを備え、
前記ピンは、前記電極板に立設されている基板検査装置。
【請求項10】
検査対象となる基板に設けられる検査点に対してプローブを接触させるための検査治具であって、
前記基板に対向して配置される対向面が設けられた対向プレートを有する検査側支持体と、
前記対向プレートの前記対向面とは反対側に対向配置される、支持プレートと平坦面とを有する電極側支持体と、
前記検査側支持体と前記電極側支持体とを所定距離隔てて保持する連結部材と、
前記平坦面に対して平行にスライド自在に対向配置された可動プレートとを備え、
前記対向プレートには、前記プローブの先端部を挿通するためのプローブ挿通孔が形成され、
前記支持プレートには、前記プローブの後端部を挿通させて支持するプローブ支持孔が、前記対向プレートのプローブ挿通孔に対応して設けられ、
前記可動プレートには、前記プローブを貫通させるためのプローブ貫通孔が、前記支持プレートのプローブ支持孔に対応して設けられ、
前記検査治具は、前記可動プレートを前記平坦面と平行な許容方向に沿って移動可能にさせる許容状態と、前記プローブ支持孔の中心に対して前記プローブ貫通孔の中心が前記許容方向に沿って所定のずれ量ずれるように前記可動プレートを位置させる拘束状態とを切り替え可能な切替部をさらに備え、
前記プローブ挿通孔の中心に対して前記プローブ支持孔の中心が前記平坦面と平行な方向にずれており、
前記プローブ挿通孔の中心に対する前記プローブ支持孔の中心のずれ方向と、前記拘束状態における前記プローブ支持孔に対する前記プローブ貫通孔のずれ方向とが同一である検査治具。
【請求項11】
前記切替部は、
前記支持プレートを貫通すると共に前記可動プレートの位置を拘束するためのピンを挿通可能な位置決孔と、
前記支持プレートを貫通して前記位置決孔から突出する前記ピンを受け入れ可能に前記可動プレートに形成された受入孔とを含む請求項10記載の検査治具。
【請求項12】
前記ピンの先端部には、当該ピンの外周から軸心へ向かって傾斜する傾斜面が形成されている請求項11記載の検査治具。
【請求項13】
前記拘束状態における前記ずれ量は、前記プローブ支持孔の半径と前記プローブ貫通孔の半径との合計値と前記プローブの直径との差より小さい請求項10~12のいずれか1項に記載の検査治具。
【請求項14】
前記可動プレートの、前記平坦面に垂直な方向の移動を規制する離間規制部材をさらに備える請求項10~13のいずれか1項に記載の検査治具。
【請求項15】
前記電極側支持体は、前記可動プレートを収容する凹部を備え、
前記凹部の底面が前記平坦面とされ、
前記凹部における前記ずれの方向に対向する側壁間の距離は、前記可動プレートの前記ずれの方向の長さよりも、前記ずれ量以上大きい請求項10~14のいずれか1項に記載の検査治具。
【請求項16】
前記プローブをさらに備え、
前記可動プレートは、前記許容状態において、前記プローブの弾性復元力に基づき位置決めされる請求項10~15のいずれか1項に記載の検査治具。
【請求項17】
請求項10~16のいずれか1項に記載の検査治具と、
前記電極側支持体の前記平坦面とは反対側で、前記プローブの後端部と接触する電極と、
前記電極を介して前記プローブから得られた電気信号に基づき基板検査を行う検査部とを備える基板検査装置。
【請求項18】
請求項11又は12に記載の検査治具と、
前記電極側支持体の前記平坦面とは反対側で前記プローブの後端部と接触する電極が、形成された電極板と、
前記電極を介して前記プローブから得られた電気信号に基づき基板検査を行う検査部とを備え、
前記ピンは、前記電極板に立設されている基板検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査対象となる基板に設けられる検査点にプローブを接触させるための検査治具、及びこれを備えた基板検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
検査治具は、プローブ(接触ピン)を経由して、基板からなる検査対象が有する検査対象部(検査点)に、検査装置から電力(電気信号等)を供給するとともに、検査対象からの電気出力信号を検出することによって、検査対象の電気的特性を検出し、あるいは動作試験の実施等をするために用いられる。本明細書では、検査対象の基板に設定される検査対象部を「検査点」と称する。
【0003】
例えば、検査対象となる基板にIC等の半導体回路や抵抗器等の電気、電子部品が搭載される場合には、配線や半田バンプ等の電極が検査点となる。その場合には、検査点が、それら搭載部品に電気信号を正確に伝達できることを保証するため、電気、電子部品が実装される前のプリント配線基板、液晶パネルやプラズマディスプレイパネルに形成された配線上の所定の検査点間の抵抗値等の電気的特性を測定して、その配線の良否を判断している。
【0004】
具体的には、その配線の良否の判定は、検査対象の各検査点に、電流供給用のプローブと、電圧測定用のプローブとを当接させて、前記電流供給用のプローブから検査点に測定用電流を供給し、検査点に当接させた電圧測定用のプローブの先端間の配線に生じた電圧を測定し、それらの供給電流と測定した電圧とに基づき、所定の検査点間における配線の抵抗値を算出することによって行われている。
【0005】
このようなプローブを検査点に接触させるため、二枚のガイド板を枠体に固定して所定間隔あけて対向配置し、プローブを二枚のガイド板に挿通することで、プローブを保持する構成の検査治具が知られている。そして、このようなプローブを二枚のガイド板で曲げた状態で保持することで、プローブを検査点に弾性接触させ、接触安定性を向上するようにした検査治具が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【0007】
ところで、基板検査を繰り返すと検査点に対してプローブの離接が繰り返され、プローブが損傷する場合がある。損傷したプローブは、二枚のガイド板から抜き取って交換する必要がある。しかしながら、曲がった状態で保持されているプローブを、二枚のガイド板からそのまま抜き取ることは困難である。そこで、例えばガイド板を枠体に固定しているネジを外すなどして検査治具を分解し、プローブを交換して再び検査治具を組み立てる必要があり、プローブの交換に手間がかかるという不都合があった。
【0008】
本発明の目的は、曲げを生じさせた状態でプローブを保持可能であって、かつプローブの交換が容易な検査治具及び基板検査装置を提供することである。
【0009】
本発明の一局面に従う検査治具は、検査対象となる基板に設けられる検査点に対してプローブを接触させるための検査治具であって、前記基板に対向して配置される対向面が設けられた対向プレートを有する検査側支持体と、前記対向プレートの前記対向面とは反対側に対向配置される、支持プレートと平坦面とを有する電極側支持体と、前記検査側支持体と前記電極側支持体とを所定距離隔てて保持する連結部材と、前記平坦面に対して平行にスライド自在に対向配置された可動プレートとを備え、前記対向プレートには、前記プローブの先端部を挿通するためのプローブ挿通孔が形成され、前記支持プレートには、前記プローブの後端部を挿通させて支持するプローブ支持孔が、前記対向プレートのプローブ挿通孔に対応して設けられ、前記可動プレートには、前記プローブを貫通させるためのプローブ貫通孔が、前記支持プレートのプローブ支持孔に対応して設けられ、前記検査治具は、前記可動プレートを前記平坦面と平行な許容方向に沿って移動可能にさせる許容状態と、前記プローブ支持孔の中心に対して前記プローブ貫通孔の中心が前記許容方向に沿って所定のずれ量ずれるように前記可動プレートを位置させる拘束状態とを切り替え可能な切替部をさらに備える。
【0010】
また、本発明の一局面に従う基板検査装置は、上述の検査治具と、前記電極側支持体の前記平坦面とは反対側で、前記プローブの後端部と接触する電極と、前記電極を介して前記プローブから得られた電気信号に基づき基板検査を行う検査部とを備える。
【0011】
また、本発明の一局面に従う基板検査装置は、上述の検査治具と、前記電極側支持体の前記平坦面とは反対側で前記プローブの後端部と接触する電極が、形成された電極板と、前記電極を介して前記プローブから得られた電気信号に基づき基板検査を行う検査部とを備え、前記ピンは、前記電極板に立設されている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る検査治具を備えた基板検査装置の構成を概略的に示す正面図である。
【
図2】
図1に示す検査治具の一例を示す斜視図である。
【
図4】
図2、
図3に示す検査治具のIV-IV線断面図である。
【
図5】
図4に示す検査治具が許容状態になったときの断面図である。
【
図6】
図4に示す拘束状態の検査治具における一本のプローブ及びピン付近を拡大して示す断面図である。
【
図7】許容状態になった検査治具を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、その説明を省略する。なお、説明の便宜上、図面に適宜前後左右の方向を付し、この方向に基づき説明している場合があるが、本発明はこの方向に限定されるものではない。
(第1実施形態)
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係る検査治具を備えた基板検査装置1の構成を概略的に示す正面図である。
図1に示す基板検査装置1は、検査対象の基板100に形成された回路パターンを検査するための装置である。
【0015】
図1に示す基板検査装置1は、筐体11を有している。筐体11の内部空間には、基板固定装置12と、第一検査部13(検査部)と、第二検査部14(検査部)とが主に設けられている。基板固定装置12は、検査対象となる基板100を所定の位置に固定するように構成されている。
【0016】
基板100は、例えば、プリント配線基板、ガラスエポキシ基板、フレキシブル基板、セラミック多層配線基板、液晶ディスプレイやEL(Electro-Luminescence)ディスプレイ等のディスプレイ用の電極板、タッチパネル用等の透明導電板、及び半導体パッケージ用のパッケージ基板やフィルムキャリア、半導体ウェハや半導体チップやCSP(Chip size package)等の半導体基板等々種々の基板であってもよい。基板100には、配線パターンや半田バンプ等の検査点が形成されている。
【0017】
第一検査部13は、基板固定装置12に固定された基板100の上方に位置する。第二検査部14は、基板固定装置12に固定された基板100の下方に位置する。第一検査部13及び第二検査部14は、プローブPrに対して電気的に接続されるための電極91が形成された電極板9を備えている。第一検査部13及び第二検査部14の各電極板9には、基板100に形成された回路パターンを検査するための検査治具4U,4Lが取り付けられている。検査治具4U,4Lには、複数のプローブPrが取り付けられている。また、第一検査部13及び第二検査部14は、後述する図略のスキャナ回路と、筐体11内で適宜移動するための検査部移動機構15とを備えている。
【0018】
基板検査装置1は、基板固定装置12、第一検査部13、及び第二検査部14等の動作を制御する制御部2を備えている。制御部2は、例えばマイクロコンピュータを用いて構成されている。制御部2は、第一検査部13及び第二検査部14を適宜移動させ、基板固定装置12に固定された基板100に検査治具4U,4LのプローブPrを接触させることにより、基板100に形成された回路パターンを検査治具4U,4Lを用いて検査するように構成されている。検査治具4U,4Lは、互いに同様に構成されている。以下、検査治具4U,4Lを総称して検査治具4と称する。
【0019】
図2は、
図1に示す検査治具4の一例を示す斜視図である。
図3は、
図2に示す検査治具4の分解斜視図である。
図4は、
図2、
図3に示す検査治具4のIV-IV線断面図である。
図5は、
図4に示す検査治具4が許容状態になったときの断面図である。
図2及び
図4は、拘束状態の検査治具4を示し、
図3及び
図5は、許容状態の検査治具4を示している。
図2及び
図3では、プローブPrの記載を省略している。
【0020】
検査治具4を示す図については、下側の第二検査部14に取り付けられる検査治具4Lの向きを示しており、上側の検査治具4Uは、図示の上下左右とは逆向きに第一検査部13に取り付けられることになる。
【0021】
図2~
図5に示す検査治具4は、基板100と対向して配置される検査側支持体5と、この検査側支持体5の基板100側とは反対側に対向配置される電極側支持体6と、これらの検査側支持体5および電極側支持体6を所定距離隔てて互いに平行に保持する連結部材7と、可動プレート8とを備えている。
【0022】
検査側支持体5は、対向プレート51、案内プレート52がこの順に、基板100が配置される上方から積層されることにより構成されている。対向プレート51は、基板100と対向して配置される対向面Fを有している。対向プレート51は、案内プレート52に対して、ボルト等の脱着可能な固定手段によって一体に固定されている。
【0023】
対向プレート51には、プローブPrの先端部が挿通される後述の複数のプローブ挿通孔16が形成されている(
図6参照)。各プローブ挿通孔16は、基板100に設けられた複数の検査点に対してそれぞれプローブPrの先端を案内する。案内プレート52には、複数のプローブ挿通孔16と連通する後述の複数のプローブ案内孔21が形成されている。
【0024】
電極側支持体6は、支持プレート61、スペーサフィルム63、及びスペーサプレート62がこの順に、対向面Fとは反対側から積層されて構成されている。支持プレート61の下面は、後述する電極91が形成された電極板9に当接される背面Bとされている。支持プレート61には、複数のプローブ挿通孔16と対応する後述の複数のプローブ支持孔23(
図6)が形成されている。
【0025】
スペーサプレート62、スペーサフィルム63の略中央部には、上下方向に貫通する開口部621、631が形成されている。対向プレート51上に、開口部621、631が形成されたスペーサプレート62と、スペーサフィルム63とを積層することによって、開口部621、631が凹没した凹部64が形成されている。そして、開口部621、631内に露出する支持プレート61の上面、すなわち凹部64の底面が、対向面Fと略平行に平坦な平坦面Xとされている。また、支持プレート61における凹部64の底面に対応する位置には、
図4,
図5に示すように、支持プレート61を貫通する位置決孔19が形成されている。
【0026】
可動プレート8は、凹部64内に収容されている。可動プレート8には、プローブPrを貫通させるための後述する複数のプローブ貫通孔18(
図6)が、複数のプローブ支持孔23に対応して設けられている。可動プレート8の許容方向である左右方向の幅W1は、
図3に示すように、凹部64の左右方向の幅W2よりも小さくされている。
【0027】
これにより、可動プレート8は、プローブPrが挿通されていないときは、凹部64内でスライド自在にされており、左右方向(許容方向)に幅W1と幅W2との差dの範囲で移動可能にされている。差dは、例えば2mm程度とされており、凹部64の中央に可動プレート8が位置したとき、可動プレート8は、左右両側に対して1mmずつ移動可能にされている。
【0028】
可動プレート8には、拘束状態のときに支持プレート61を貫通して位置決孔19から突出するピンPを受け入れ可能に受入孔20が形成されている(
図4)。受入孔20は、例えば可動プレート8の対角線上の二箇所に設けられている(
図3)。
【0029】
連結部材7は、前後方向に延び、案内プレート52に立設される壁部71と、壁部71と略平行に間隔を空けて対向配置される壁部72と、壁部71,72の後端部を連結する壁部73とを備えている。壁部71,72,73には、窓状に貫通して開口された開口部711,721,731が形成されている。
【0030】
連結部材7は、連結部材7の下面が凹部64の縁部を跨ぐ領域Aとなるように、案内プレート52に取り付けられている。これにより、連結部材7の下端部が、凹部64の内側に突出し、凹部64内に収容された可動プレート8の縁部に覆い被さるようになっている。その結果、可動プレート8の、平坦面Xに垂直な方向の移動が連結部材7の下端部によって規制される。連結部材7は、離間規制部材の一例に相当し、連結部材と離間規制部材とを兼ねている。
【0031】
可動プレート8とスペーサプレート62とは、同一の厚さを有する板材から構成されている。支持プレート61上にスペーサプレート62とスペーサフィルム63とが積層されていることによって、凹部64の深さが、可動プレート8の厚さよりもスペーサフィルム63の厚さ分、深くなっている。その結果、連結部材7の下端部と可動プレート8の上面との間に間隔が生じ、可動プレート8が連結部材7と平坦面Xとに挟まれることがないので、可動プレート8が左右方向(許容方向)に移動する際の摩擦抵抗が低減され、可動プレート8がスライド自在にされている。
【0032】
連結部材7は、可動プレート8が、平坦面Xに垂直な方向に、スペーサフィルム63の厚さによって予め設定された垂直移動許容距離を超えて移動することを規制するようになっている。上側の検査治具4Uでは、
図2~
図5とは上下反転し、可動プレート8が連結部材7(離間規制部材)によって支持され、可動プレート8と平坦面Xとの間に垂直移動許容距離の間隔が生じることになる。
【0033】
なお、必ずしもスペーサフィルム63を積層する必要はなく、スペーサプレート62の板厚を可動プレート8の板厚よりも垂直移動許容距離だけ厚くしてもよい。また、電極側支持体6は、スペーサプレート62と支持プレート61とを備える例に限られず、電極側支持体6が一枚の支持プレート61からなり、支持プレート61の上面に凹部64が形成されていてもよい。
【0034】
また、電極側支持体6には、凹部64が形成されている例に限らない。電極側支持体6の上面が平坦面Xとされていてもよく、電極側支持体6が一枚の支持プレート61からなり、支持プレート61の上面が平坦面Xとされていてもよい。
【0035】
また、連結部材7が離間規制部材を兼ねる例に限らない。連結部材7は凹部64内に突出しない構成とし、連結部材7とは別に離間規制部材を設けてもよい。また、下側の検査治具4Lでは、可動プレート8が自重で平坦面Xに接するので、必ずしも離間規制部材を設けなくてもよい。しかしながら、ピンPの挿入時や、プローブPrを屈曲させる際等に可動プレート8が平坦面Xから浮き上がることを防止する観点から、検査治具4Lにおいても離間規制部材が設けられることが好ましい。
【0036】
図6は、
図4に示す拘束状態の検査治具4における一本のプローブPr及びピンP付近を拡大して示す断面図である。
図6は、検査治具4が第二検査部14の電極板9に取り付けられた状態を示している。
【0037】
対向プレート51には、対向プレート51を垂直に貫通してプローブPrを挿通するためのプローブ挿通孔16が形成されている。プローブ挿通孔16は、基板100に設けられた検査点と対応して複数形成されている。プローブ挿通孔16には、大径部16aと、大径部16aと同心であって大径部16aより小径の小径部16bとが設けられている。
【0038】
案内プレート52には、案内プレート52を垂直に貫通してプローブPrを案内するためのプローブ案内孔21が形成されている。プローブ案内孔21は、プローブ挿通孔16と対応してプローブ挿通孔16と同心に複数形成されている。プローブ案内孔21には、大径部21a,21bと、大径部21a,21bと同心であって大径部21a,21bより小径の小径部21cとが設けられている。
【0039】
プローブPrは、例えば直径100μm程度の棒状の導体部31と、この導体部31の外周面を覆う絶縁部32とを備えている。導体部31としては、例えば、弾性を有し、かつハンダが付きにくいパラジウム合金を好適に用いることができる。絶縁部32は、合成樹脂等の絶縁体で形成されている。絶縁部32としては、導体部31の表面に絶縁塗装を施すことによって形成される絶縁被膜を用いることができる。
【0040】
プローブPrの先端部及び後端部には、絶縁部32が形成されておらず、導体部31が露出した露出部が設けられている。プローブPrの先端部の露出部がプローブ挿通孔16の小径部16bから突出して基板100の検査点に当接されるようになっている。
【0041】
小径部16b及び小径部21cの内径は導体部31の外径よりも若干大きくされ、小径部21cの内径は絶縁部32の外径よりも若干小さくされている。これにより、小径の小径部16bによって導体部31を精度よく検査点へ案内しつつ、絶縁部32が小径部21cと干渉することによって、プローブPrが対向面F側から抜け落ちることがないようにされている。
【0042】
電極板9には、電極側支持体6への取り付け面とは反対側の裏面からワイヤーケーブル92の一端が、電極板9の厚み方向に貫通するように貫入されている。電極板9の電極側支持体6への取り付け面は平坦に研磨されて、複数のワイヤーケーブル92の端面が露出するようにされている。これらのワイヤーケーブル92の露出した端面が、電極91とされている。各ワイヤーケーブル92はスキャナ回路に接続されている。
【0043】
また、電極板9には、支持プレート61に取り付けられる面から垂直に突出するピンPが取り付けられている。ピンPの電極板9からの突出長さは、支持プレート61の厚みよりも長くされている。ピンPの先端部には、ピンPの外周に連なって軸心へ向かって傾斜する傾斜面P1が形成されている。ピンPの先端部の形状としては、傾斜面P1を有する種々の形状を採用することができ、例えば円錐状や半球面状等の形状とすることが出来る。
【0044】
支持プレート61には、電極91にプローブPrの後端部を案内するプローブ支持孔23が形成されている。プローブ支持孔23は、支持プレート61を垂直に貫通してプローブPrの後端部を挿通させて支持する。プローブ支持孔23は、プローブ挿通孔16及び電極91と対応して複数形成されている。
【0045】
プローブ支持孔23には、支持プレート61の可動プレート8側の面に開口する支持側大径部23aと、支持側大径部23aよりも可動プレート8から遠ざかる側に形成された支持側小径部23bとが設けられている。支持側小径部23bは、支持側大径部23aと同心であって、かつ支持側大径部23aよりも小径である。プローブ支持孔23に挿通されたプローブPrの後端部は、支持側小径部23bから突出して電極91と当接されるようになっている。
【0046】
さらに、支持プレート61には、支持プレート61を貫通する位置決孔19が形成されている。位置決孔19は、可動プレート8の位置を拘束するためのピンPを、挿通可能にされている。
【0047】
可動プレート8には、プローブPrを貫通させるためのプローブ貫通孔18が、支持プレート61のプローブ支持孔23に対応して複数設けられている。プローブ貫通孔18には、可動プレート8の支持プレート61側の面に開口する可動側大径部18aが形成されている。また、プローブ貫通孔18には、可動側大径部18aよりも支持プレート61から遠ざかる側に形成された可動側小径部18bが形成されている。可動側小径部18bは、可動側大径部18aと同心であって、かつ可動側大径部18aよりも小径である。
【0048】
さらに、可動プレート8には、支持プレート61を貫通して位置決孔19から突出するピンPを受け入れ可能に形成された受入孔20が形成されている。ピンPを位置決孔19及び受入孔20に挿入することによって、位置決孔19の中心線と受入孔20の中心線が一致し、可動プレート8が支持プレート61に対して相対的に位置決めされて、拘束状態となる。
【0049】
拘束状態では、プローブ支持孔23の中心に対してプローブ貫通孔18の中心が、許容方向(図の左右方向)に沿って所定のずれ量Laずれた位置に可動プレート8が位置するように、位置決孔19及び受入孔20が配置されている。拘束状態におけるずれ量Laは、支持側大径部23aの半径と可動側大径部18aの半径との合計値と、プローブPrの外径との差より小さい。これにより、拘束状態においても、プローブ支持孔23とプローブ貫通孔18とをプローブPrが貫通可能にされている。
【0050】
位置決孔19及び受入孔20は、可動プレート8を平坦面Xと平行な許容方向に移動可能にさせる許容状態と、プローブ支持孔23の中心に対してプローブ貫通孔18の中心が許容方向に沿って所定のずれ量Laずれるように可動プレート8を位置させる拘束状態とを切り替える切替部の一例に相当している。
【0051】
なお、受入孔20は、必ずしも可動プレート8を貫通する例に限られず、有底の孔(凹部)であってもよい。また、切替部は、位置決孔19及び受入孔20に限らない。切替部は、可動プレート8を平坦面Xと平行な許容方向に移動可能にさせる許容状態と、プローブ支持孔23の中心に対してプローブ貫通孔18の中心が許容方向に沿って所定のずれ量Laずれるように可動プレート8を位置させる拘束状態とを切り替え可能な金具等であってもよい。
【0052】
ピンPは、電極板9に立設されているので、電極板9に検査治具4を取り付けることによってピンPが位置決孔19及び受入孔20に挿入されて可動プレート8が拘束状態に位置決めされ、電極板9から検査治具4を取り外すことによって位置決孔19及び受入孔20からピンPが抜き取られて許容状態に切り替わる。
【0053】
図6に示すように、拘束状態では、プローブ貫通孔18の中心18cが、プローブ支持孔23の中心23cに対して許容方向(左右方向)に沿ってずれ量Laずれている。このため、位置決孔19に挿入され、支持側小径部23bによって先端部を保持されたプローブPrが、プローブ貫通孔18の可動側小径部18bによって許容方向に沿って、
図6では左方向へずれ量La曲げられる。その結果、プローブPrは、略S字状に湾曲する。
【0054】
プローブ貫通孔18は可動側大径部18aと可動側小径部18bとを備え、プローブ支持孔23は支持側大径部23aと支持側小径部23bとを備えている。従って、プローブPrは、可動側小径部18bと支持側小径部23bとで支持され、かつ可動側大径部18aと支持側大径部23aとの内部で傾斜することができる。その結果、プローブPrをスムーズに湾曲させることが可能となる。
【0055】
なお、プローブ貫通孔18を可動側大径部18aのみで構成し、プローブ支持孔23を支持側大径部23aのみで構成してもよい。しかしながら、プローブ貫通孔18を可動側大径部18aのみで構成し、プローブ支持孔23を支持側大径部23aのみで構成した場合、拘束状態のとき、プローブ貫通孔18及びプローブ支持孔23の内部でプローブPrが傾斜せずにずれ方向(
図6では左方向)に平行移動する可能性がある。プローブ貫通孔18及びプローブ支持孔23の内部でプローブPrが傾斜せずに平行移動すると、プローブPrが略S字状に湾曲しにくくなる。従って、プローブ貫通孔18は可動側大径部18aと可動側小径部18bとを備え、プローブ支持孔23は支持側大径部23aと支持側小径部23bとを備えることが好ましい。
【0056】
プローブPrの先端部は、検査治具4の対向面Fが基板100に当接されていないときは、対向面Fから突出している。そして、基板100を検査するべく検査治具4の対向面Fが基板100に当接されると、プローブPrの先端部は、検査点に当接してその突出部分がプローブ挿通孔16内に押し込まれる。
【0057】
このときプローブPrが略S字状に湾曲していることによって、先端部の押し込みに応じてプローブPrがスムーズに湾曲し、その押し込み量を吸収する。さらに、略S字状に湾曲したプローブPrは、その弾性復元力によってプローブPrの先端を検査点に付勢するので、プローブPrの先端を検査点に弾性的に接触させることができる。その結果、検査点とプローブPrとの接触安定性を向上させることができる。
【0058】
このように、検査治具4を電極板9に取り付けると、電極板9に立設されたピンPが位置決孔19と受入孔20とに挿通されて可動プレート8が拘束状態とされ、プローブPrが略S字状に湾曲されて、基板100の検査に適した状態にされる。
【0059】
また、プローブ挿通孔16の中心16cに対してプローブ支持孔23の中心23cが平坦面と平行な方向にずれ量Lbだけずれている。中心16cは、プローブ案内孔21の中心でもある。さらに、プローブ挿通孔16の中心16cに対するプローブ支持孔23の中心23cのずれ方向(
図6では左方向)と、拘束状態におけるプローブ支持孔23の中心23cに対するプローブ貫通孔18の中心18cのずれ方向(
図6では左方向)とが同一である。
【0060】
これにより、拘束状態のとき、プローブPrの可動側小径部18bで保持されている部分は、プローブ挿通孔16の中心16cに対して、ずれ量Laとずれ量Lbとが加算された長さ分、ずれ方向(
図6では左方向)にずらされることになる結果、プローブPrの湾曲量を増大することができる。
【0061】
なお、必ずしもプローブ挿通孔16の中心16cに対するプローブ支持孔23の中心23cのずれ方向と、拘束状態におけるプローブ支持孔23の中心23cに対するプローブ貫通孔18の中心18cのずれ方向とは、同一でなくてもよい。
【0062】
プローブPrは、検査点の数に対応して、検査治具4U,4Lにぞれぞれ例えば数千本程度備えられている。そして、そのうちの1本が劣化又は損傷等するなどして交換が必要になった場合、損傷等したプローブPrを検査治具4から抜き取って、新たなプローブPrを再び検査治具4に挿入する必要がある。
【0063】
曲がった状態で保持されているプローブを交換する場合、曲がったままのプローブを抜き差しすることはできない。そのため従来は、プレートを固定しているネジを外すなどして検査治具を分解し、プローブを交換して再び検査治具を組み立てる必要があった。
【0064】
一方、基板検査装置1の場合、下記のようにしてプローブPrを交換することができる。すなわち、プローブPrを交換する場合、ユーザは、まず電極板9から検査治具4を取り外す。電極板9から検査治具4を取り外すと、電極板9に立設されたピンPが受入孔20及び位置決孔19から抜き取られ、可動プレート8が許容方向に沿って移動可能な許容状態に切り替わる。
【0065】
図7は、許容状態になった検査治具4を説明するための説明図である。許容状態になると、撓んでいたプローブPrが直線状に戻ろうとする弾性復元力によって、可動プレート8がずれ方向(
図7では左方向)とは逆方向(
図7では右方向)に移動する。この場合、プローブ挿通孔16及びプローブ案内孔21の中心16cと、プローブ支持孔23の中心23cとは、許容方向に沿ってずれ量Lbずれているので、プローブPrは、プローブ支持孔23と案内プレート52とを結ぶ直線状に復元しようとする。その結果、プローブPrは、平坦面Xと垂直な方向に対して、傾斜角Rで傾斜する。
【0066】
傾斜角Rは、例えば0.5度~2度、より好ましくは略1度である。許容状態においてプローブPrがこのような僅かな傾斜角で傾斜することによって、プローブ挿通孔16、プローブ案内孔21、プローブ貫通孔18、及びプローブ支持孔23と、プローブPrとが干渉し、僅かな摩擦力が生じる。この摩擦力によって、電極板9から検査治具4が取り外されたときに、背面Bが下向きにされた場合であっても、検査治具4からプローブPrが抜け落ち難くされている。これにより、交換する必要のないプローブPrが検査治具4から抜け落ちるおそれが低減されている。
【0067】
なお、プローブ挿通孔16及びプローブ案内孔21の中心16cと、プローブ支持孔23の中心23cとは、必ずしもずれていなくてもよく、対向面Fに対して垂直な一直線上に各孔が設けられていてもよい。この場合であっても、プローブPrの交換は容易である。
【0068】
さらに、許容状態では、プローブPrが直線状に戻ろうとする弾性復元力によって可動プレート8が移動するので、プローブPrが略直線状となる。そのため、許容状態では、検査治具4がプローブPrを保持する力は僅かな傾斜角Rによって生じる僅かな摩擦力だけとなる。この摩擦力は、プローブPrの落下を防止する程度の僅かな抵抗力である。従って、ユーザが、この摩擦力に抗して検査治具4からプローブPrを引き抜き、新たなプローブPrを検査治具4に挿入することが容易である。
【0069】
連結部材7の壁部71,72,73に、開口部711,721,731が形成されているので、ユーザがプローブPrを交換する際、ユーザは検査側支持体5と電極側支持体6との間の空間で開口部711,721,731からプローブPrを目視しながらプローブPrを交換することが出来る。その結果、プローブPrの交換作業が容易になる。
【0070】
基板検査装置1によれば、プローブPrを交換する際に、検査治具4を基板検査装置1から取り外すだけで、検査治具4が、プローブPrが湾曲した拘束状態からプローブPrが略直線状になる許容状態に切り替わるので、プローブPrに曲げを生じさせた状態でプローブPrを保持可能であって、かつプローブPrの交換が容易となる。
【0071】
また、許容状態になってプローブPrの復元力で可動プレート8が移動した後に位置決孔19の内壁面に対して受入孔20の下端(支持プレート61側の端部)の開口部周縁の開口縁部20aが突出する突出長さLcが、ピンPの傾斜面P1の、軸心と直交する方向に沿う幅Wpより小さくされている。
【0072】
そのため、許容状態で位置決孔19にピンPを挿入し、さらにピンPを押し込むと、受入孔20の開口縁部20aがピンPの傾斜面P1に当接する。ここからさらにピンPを押し込むと、傾斜面P1と開口縁部20aとが摺動し、ピンPの進行に伴い位置決孔19と受入孔20の中心を一致させる方向(左方向)に可動プレート8が移動され、ピンPが受入孔20に挿入されて可動プレート8が拘束状態にされる。
【0073】
従って、ユーザがプローブPrを交換した後、基板検査装置1に検査治具4を取り付けるだけで、ピンPが位置決孔19及び受入孔20に挿入されて可動プレート8が拘束状態にされ、プローブPrが略S字状に湾曲し、検査に適した状態とされる。これにより、ユーザは、プローブPrを交換した後、基板検査装置1に検査治具4を取り付けるだけで、可動プレート8が拘束状態にされて検査に適した状態となるので、プローブPrの交換後に検査治具4を検査可能な状態にするのが容易である。
【0074】
なお、ピンPは、必ずしも電極板9に立設されていなくてもよい。ピンPが電極板9に立設されていなくても、検査治具4は、ピンPを位置決孔19及び受入孔20に挿入することによって拘束状態となり、ピンPを受入孔20から抜き取ることによって許容状態となってプローブPrの交換が容易になる。従って、検査治具4は、ピンPが電極板9に立設されていなくても、曲げを生じさせた状態でプローブPrを保持しつつ、プローブPrの交換が容易である。
【0075】
また、プローブPrには、傾斜面P1が形成されていなくてもよい。傾斜面P1が形成されていなくても、位置決孔19及び受入孔20の位置を合わせてプローブPrを挿入することによって検査治具4は拘束状態となり、ピンPを受入孔20から抜き取ることによって検査治具4は許容状態となる。
【0076】
次に、
図1に示す第一検査部13、第二検査部14、及び制御部2について説明する。第一検査部13及び第二検査部14には、例えば電流計、電圧計、電流源、マルチプレクサ、スイッチ回路等を含む図略のスキャナ回路が収容されている。スキャナ回路には、
図6に示すワイヤーケーブル92が接続されている。これにより、電極板9に検査治具4が取り付けられると、各プローブPrの後端部が電極91に当接し、各プローブPrがスキャナ回路に電気的に接続される。
【0077】
この状態で、対向プレート51に基板100が圧接されると、プローブPrの先端部が基板100によって押圧され、プローブPrの弾力性に応じた付勢力によって、プローブPrの先端部が基板100の検査点に圧接されるようになっている。
【0078】
スキャナ回路は、例えば制御部2からの制御信号に応じて、検査箇所に対応した一対のプローブPr間に所定の電流を供給し、その検査箇所に対応した一対のプローブPr間の電圧を測定し、その測定結果を制御部2へ送信する。
【0079】
制御部2は、スキャナ回路から得られた測定結果に基づいて基板検査を実行する。具体的には、例えば、制御部2は、検査治具4の検査側支持体5を基板100に圧接させ、各検査点に対してプローブPrを接触させる。そして、制御部2は、検査対象の二つの検査点間で、一方の検査点に接触されたプローブPrと他方の検査点に接触されたプローブPrとの間にスキャナ回路により予め設定された検査用電流を流させ、その一方の検査点に接触されたプローブPrと他方の検査点に接触されたプローブPrとの間の電圧を検出電圧としてスキャナ回路により測定させる。制御部2は、例えばその検出電圧等の電気信号や、その検出電圧から求められた検査点間の抵抗値等を予め設定された基準値と比較することにより、基板100の良否判定を実行する。このようにして、基板検査装置1は、検査治具4を用いて基板100の検査を実行可能にされている。
【0080】
すなわち、本発明の一局面に従う検査治具は、検査対象となる基板に設けられる検査点に対してプローブを接触させるための検査治具であって、前記基板に対向して配置される対向面が設けられた対向プレートを有する検査側支持体と、前記対向プレートの前記対向面とは反対側に対向配置される、支持プレートと平坦面とを有する電極側支持体と、前記検査側支持体と前記電極側支持体とを所定距離隔てて保持する連結部材と、前記平坦面に対して平行にスライド自在に対向配置された可動プレートとを備え、前記対向プレートには、前記プローブの先端部を挿通するためのプローブ挿通孔が形成され、前記支持プレートには、前記プローブの後端部を挿通させて支持するプローブ支持孔が、前記対向プレートのプローブ挿通孔に対応して設けられ、前記可動プレートには、前記プローブを貫通させるためのプローブ貫通孔が、前記支持プレートのプローブ支持孔に対応して設けられ、前記検査治具は、前記可動プレートを前記平坦面と平行な許容方向に沿って移動可能にさせる許容状態と、前記プローブ支持孔の中心に対して前記プローブ貫通孔の中心が前記許容方向に沿って所定のずれ量ずれるように前記可動プレートを位置させる拘束状態とを切り替え可能な切替部をさらに備える。
【0081】
この構成によれば、切替部によって、拘束状態と許容状態とを切り替え可能にされている。拘束状態では、プローブの後端部を支持するプローブ支持孔の中心に対して、プローブが貫通するプローブ貫通孔の中心が許容方向に沿って所定のずれ量ずらされる。そのずれによって、プローブが曲げられた状態で保持される。一方、許容状態では、プローブが貫通する可動プレートが、平坦面と平行な許容方向に沿って移動可能となる。そうすると、許容状態では、曲げられたプローブの弾性復元力によって可動プレートが移動され、プローブが略直線状となる。略直線状となったプローブは、検査側支持体及び電極側支持体に対して抜き差しすることが容易となる。従って、曲げを生じさせた状態でプローブを保持可能であって、かつプローブの交換が容易となる。
【0082】
また、前記切替部は、前記支持プレートを貫通すると共に前記可動プレートの位置を拘束するためのピンを挿通可能な位置決孔と、前記支持プレートを貫通して前記位置決孔から突出する前記ピンを受け入れ可能に前記可動プレートに形成された受入孔とを含むことが好ましい。
【0083】
この構成によれば、支持プレートの位置決孔にピンを貫通挿通し、受入孔にそのピンを挿入することによって、支持プレートに対して可動プレート位置を拘束する拘束状態に切り替えることが容易となる。
【0084】
また、前記ピンの先端部には、当該ピンの外周から軸心へ向かって傾斜する傾斜面が形成されていることが好ましい。
【0085】
この構成によれば、位置決孔に挿入したピンをさらに押し込むことによって傾斜面を受入孔の開口縁部に当接させることが可能になる。さらにピンを押し込むことによって、傾斜面と開口縁部とが摺動し、ピンの進行に伴い位置決孔と受入孔の中心を一致させる方向に可動プレートが移動され、ピンが受入孔に受け入れられて可動プレートが拘束状態にされる。この場合、ピンを位置決孔及び受入孔に挿入するだけで可動プレートを拘束状態に位置決めすることができるので、拘束状態に切り替えることが容易となる。
【0086】
また、前記拘束状態における前記ずれ量は、前記プローブ支持孔の半径と前記プローブ貫通孔の半径との合計値と前記プローブの直径との差より小さいことが好ましい。
【0087】
この構成によれば、拘束状態においても、プローブをプローブ支持孔とプローブ貫通孔とに貫通させることが可能となる。
【0088】
また、前記プローブ支持孔は、前記支持プレートの前記可動プレート側の面に開口する支持側大径部と、前記支持側大径部よりも前記可動プレートから遠ざかる側に形成され、かつ前記支持側大径部よりも小径の支持側小径部とを含み、前記プローブ貫通孔は、前記可動プレートの前記支持プレート側の面に開口する可動側大径部と、前記可動側大径部よりも前記支持プレートから遠ざかる側に形成され、かつ前記可動側大径部よりも小径の可動側小径部とを含み、前記拘束状態における前記ずれ量は、前記支持側大径部の半径と前記可動側大径部の半径との合計値と前記プローブの直径との差より小さいことが好ましい。
【0089】
この構成によれば、プローブは可動側小径部と支持側小径部とで支持され、拘束状態において可動側大径部と支持側大径部との内部でプローブを傾斜させることができる。その結果、拘束状態において、プローブをスムーズに湾曲させることが可能となる。
【0090】
また、前記可動プレートの、前記平坦面に垂直な方向の移動を規制する離間規制部材をさらに備えることが好ましい。
【0091】
この構成によれば、可動プレートが支持プレートから離脱することが防止される。
【0092】
また、前記電極側支持体は、前記可動プレートを収容する凹部を備え、前記凹部の底面が前記平坦面とされ、前記凹部における前記ずれの方向に対向する側壁間の距離は、前記可動プレートの前記ずれの方向の長さよりも、前記ずれ量以上大きいことが好ましい。
【0093】
この構成によれば、凹部内に収容された可動プレートを、許容状態と拘束状態とをとり得るように保持しつつ、可動プレートが平坦面と平行な方向の過度の移動を防止することが可能となる。
【0094】
また、前記プローブ挿通孔の中心に対して前記プローブ支持孔の中心が前記平坦面と平行な方向にずれていることが好ましい。
【0095】
この構成によれば、許容状態になると、撓んでいたプローブが直線状に戻ろうとする弾性復元力によって可動プレートが移動し、プローブが略直線状になる。この場合、プローブ挿通孔の中心と、プローブ支持孔の中心とがずれているので、プローブは、プローブ挿通孔とプローブ支持孔とを結ぶ直線状に復元しようとする。その結果、プローブは、平坦面と垂直な方向に対して傾斜する。プローブが傾斜することによって、プローブ挿通孔及びプローブ支持孔とプローブとが干渉し、僅かな摩擦力が生じる。この摩擦力によって、交換する必要のないプローブが検査治具から抜け落ちるおそれが低減される。
【0096】
また、前記プローブ挿通孔の中心に対する前記プローブ支持孔の中心のずれ方向と、前記拘束状態における前記プローブ支持孔に対する前記プローブ貫通孔のずれ方向とが同一であることが好ましい。
【0097】
この構成によれば、拘束状態のとき、プローブがプローブ貫通孔で保持されている部分のプローブ挿通孔に対するずれ量は、プローブ挿通孔に対するプローブ支持孔のずれ量と、プローブ支持孔に対するプローブ貫通孔のずれ量とが加算されたずれ量となる。その結果、拘束状態におけるプローブの湾曲量を増大することができる。
【0098】
また、前記プローブをさらに備え、前記可動プレートは、前記許容状態において、前記プローブの弾性復元力に基づき位置決めされることが好ましい。
【0099】
この構成によれば、許容状態では、プローブが略直線状になろうとする弾性復元力によって可動プレートが移動され、位置決めされる。従って、許容状態に切り替えることによって、プローブを略直線状にできる位置に自動的に可動プレートを位置させることが可能になる。
【0100】
また、本発明の一局面に従う基板検査装置は、上述の検査治具と、前記電極側支持体の前記平坦面とは反対側で、前記プローブの後端部と接触する電極と、前記電極を介して前記プローブから得られた電気信号に基づき基板検査を行う検査部とを備える。
【0101】
この構成によれば、曲げを生じさせた状態でプローブを保持可能であって、かつプローブの交換が容易な基板検査装置を提供することができる。
【0102】
また、本発明の一局面に従う基板検査装置は、上述の検査治具と、前記電極側支持体の前記平坦面とは反対側で前記プローブの後端部と接触する電極が、形成された電極板と、前記電極を介して前記プローブから得られた電気信号に基づき基板検査を行う検査部とを備え、前記ピンは、前記電極板に立設されている。
【0103】
この構成によれば、プローブを交換する際に、検査治具を基板検査装置の電極板から取り外すことによって、検査治具からピンが抜き取られ、プローブが湾曲した拘束状態からプローブが略直線状になる許容状態に切り替わるので、プローブに曲げを生じさせた状態でプローブPrを保持可能であって、かつプローブの交換が容易となる。
【0104】
このような構成の検査治具、及び基板検査装置は、プローブに曲げを生じさせた状態でプローブPrを保持可能であって、かつプローブの交換が容易となる。
【0105】
この出願は、2017年4月27日に出願された日本国特許出願特願2017-088539を基礎とするものであり、その内容は、本願に含まれるものである。なお、発明を実施するための形態の項においてなされた具体的な実施態様又は実施例は、あくまでも、本発明の技術内容を明らかにするものであって、本発明は、そのような具体例にのみ限定して狭義に解釈されるべきものではない。
【符号の説明】
【0106】
1 基板検査装置
2 制御部
4,4U,4L 検査治具
5 検査側支持体
6 電極側支持体
7 連結部材(離間規制部材)
8 可動プレート
9 電極板
11 筐体
12 基板固定装置
13 第一検査部(検査部)
14 第二検査部(検査部)
15 検査部移動機構
16 プローブ挿通孔
16a 大径部
16b 小径部
16c,18c,23c 中心
18 プローブ貫通孔
18a 可動側大径部
18b 可動側小径部
19 位置決孔(切替部)
20 受入孔(切替部)
20a 開口縁部
21 プローブ案内孔
21a,21b 大径部
21c 小径部
23 プローブ支持孔
23a 支持側大径部
23b 支持側小径部
31 導体部
32 絶縁部
51 対向プレート
52 案内プレート
61 支持プレート
62 スペーサプレート
63 スペーサフィルム
64 凹部
71,72,73 壁部
91 電極
92 ワイヤーケーブル
100 基板
621、631,711,721,731 開口部
A 領域
B 背面
d 差
F 対向面
La,Lb ずれ量
P ピン
P1 傾斜面
Pr プローブ
R 傾斜角
W1,W2,Wp 幅
X 平坦面