IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ディスコの特許一覧

<>
  • 特許-被加工物の切削方法及び切削装置 図1
  • 特許-被加工物の切削方法及び切削装置 図2
  • 特許-被加工物の切削方法及び切削装置 図3
  • 特許-被加工物の切削方法及び切削装置 図4
  • 特許-被加工物の切削方法及び切削装置 図5
  • 特許-被加工物の切削方法及び切削装置 図6
  • 特許-被加工物の切削方法及び切削装置 図7
  • 特許-被加工物の切削方法及び切削装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】被加工物の切削方法及び切削装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20220928BHJP
   B24B 27/06 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
H01L21/78 F
B24B27/06 M
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017190291
(22)【出願日】2017-09-29
(65)【公開番号】P2019067862
(43)【公開日】2019-04-25
【審査請求日】2020-07-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 直子
【審査官】杢 哲次
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-110141(JP,A)
【文献】特開2011-249444(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0042437(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
B24B 27/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周部が環状フレームに貼着されたダイシングテープに貼着された被加工物を切削ブレードで切削する切削方法であって、
被加工物を保持テーブルで保持する保持ステップと、
該保持テーブルの保持面内で被加工物が載置されうる許容領域に対して該切削ブレードによる切削動作を行うことで被加工物を切削する切削ステップと、
該切削ブレードが被加工物に切り込んで切削を開始したことを検出して該切削ブレードが被加工物に切り込み切削を開始した座標位置を検出し、さらに、該保持テーブルの切削送り方向に水平面内において直交するインデックス送り方向への該切削ブレードのインデックス送りが開始されてから該切削ブレードによる被加工物の切削が開始されたラインの番数を検出する切削開始検出ステップと、を備え、
該許容領域における被加工物よりも該インデックス送り方向の外側の該ダイシングテープが切削されたラインも含め、該切削開始検出ステップで検出された該ラインの番数をもとに被加工物の位置を特定する、切削方法。
【請求項2】
前記切削開始検出ステップでは、前記切削ブレードが装着されるスピンドルの負荷電流値の変化で該切削ブレードが被加工物に切り込んだことを検出する、請求項1に記載の切削方法。
【請求項3】
前記切削開始検出ステップでは、前記切削ブレードを備える切削手段に配設された弾性波検出センサで該切削ブレードが被加工物に切り込んだことを検出する、請求項1に記載の切削方法。
【請求項4】
外周部が環状フレームに貼着されたダイシングテープに貼着された被加工物を保持する保持テーブルと該保持テーブルで保持された被加工物を切削する切削ブレードとを備えた切削装置であって、
該保持テーブルに対して該切削ブレードを相対移動させる移動手段と、
該切削ブレードが該保持テーブルで保持された被加工物に切り込んだことを検出する切削開始検出手段と、を備え、
該切削開始検出手段が該切削ブレードが被加工物に切り込んで切削を開始したことを検出することで、該切削ブレードが被加工物に切り込み切削を開始した座標位置を検出し、さらに、被加工物よりも該保持テーブルの切削送り方向に水平面内において直交するインデックス送り方向の外側の該ダイシングテープが切削されたラインも含め、該インデックス送り方向への該切削ブレードのインデックス送りが開始されてから該切削ブレードによる被加工物の切削が開始されたラインの番数を検出して、該ラインの番数をもとに被加工物の位置を特定する切削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物を切削ブレードで切削する切削方法、及び切削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハ等の板状の被加工物は、切削装置が備える保持テーブルに保持された状態で回転可能な切削ブレードによって切削され個々のチップ等に分割されて、各種電子機器等に利用されている。
【0003】
被加工物の切削加工時において、保持テーブルの中心と保持テーブルで保持された被加工物の中心とは完全には一致しない場合がある。これは、被加工物の環状フレームを用いたハンドリングを可能にするために行うテープの被加工物への貼着及びテープのフレームへの貼着の際に起きる貼着ずれ、又は保持テーブルに被加工物が搬送された際の搬送ずれ等に起因する。よって、保持テーブル上の被加工物の保持位置は被加工物毎に異なるため、実際の被加工物の大きさよりも広い領域に対して、切削ブレードを相対的に切削送りし、かつ、インデックス送りしている。具体的には、被加工物の外周縁よりさらに外側の位置から切削が開始され、何ラインかの切削ブレードによる空切りを経てから被加工物の実際の切削が開始される。
【0004】
そして、切削装置では、切削中に保持テーブルの切削送り動作等を一時停止して、切削ブレードで形成された切削溝の撮像を行い、形成された撮像画像を用いて切削位置の補正(カット位置補正)や、切削が正常であるかの確認(カーフチェック)を行っている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-028635号公報
【文献】特開平6-326187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
被加工物の厚みや切削ブレードの状態によって、被加工物に形成される切削溝の位置は微妙に異なるため、例えばカット位置の補正は被加工物毎に加工開始初期に実施することが好ましい。そこで切削溝が写った撮像画像を形成するための撮像位置を、被加工物を保持する保持テーブルの切削送りが開始されてから例えば5ライン目の位置、即ち、加工が開始された比較的初期の位置に設定している。しかし、保持テーブル上における被加工物の保持位置のずれ等によって、該5ライン目の位置が切削ブレードによる空切りが行われた位置となり、この位置で撮像が行われて形成された撮像画像を基にカット位置補正やカーフチェックが実施されると、エラーとなり、装置の各種動作が停止してしまう。その結果、復旧に手間がかかる上、切削加工の生産性が落ちるという問題がある。
【0007】
よって、上記問題を鑑みて、被加工物を切削する切削装置においては、被加工物を実際に切削し始めたライン数が正確に検出されるようにして被加工物の位置を特定できるようにするという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明は、外周部が環状フレームに貼着されたダイシングテープに貼着された被加工物を切削ブレードで切削する切削方法であって、被加工物を保持テーブルで保持する保持ステップと、該保持テーブルの保持面内で被加工物が載置されうる許容領域に対して該切削ブレードによる切削動作を行うことで被加工物を切削する切削ステップと、該切削ブレードが被加工物に切り込んで切削を開始したことを検出して、切削ブレードが被加工物に切り込み切削を開始した座標位置を検出し、さらに、該保持テーブルの切削送り方向に水平面内において直交するインデックス送り方向への該切削ブレードのインデックス送りが開始されてから該切削ブレードによる被加工物の切削が開始されたラインの番数を検出する切削開始検出ステップと、を備え、該許容領域における被加工物よりも該インデックス送り方向の外側の該ダイシングテープが切削されたラインも含め、該切削開始検出ステップで検出された該ラインの番数をもとに被加工物の位置を特定する、切削方法である。
【0009】
前記切削開始検出ステップでは、前記切削ブレードが装着されるスピンドルの負荷電流値の変化で該切削ブレードが被加工物に切り込んだことを検出するものとすると好ましい。
【0010】
前記切削開始検出ステップでは、前記切削ブレードを備える切削手段に配設された弾性波検出センサで該切削ブレードが被加工物に切り込んだことを検出するものとすると好ましい。
【0011】
上記課題を解決するための本発明は、外周部が環状フレームに貼着されたダイシングテープに貼着された被加工物を保持する保持テーブルと該保持テーブルで保持された被加工物を切削する切削ブレードとを備えた切削装置であって、該保持テーブルに対して該切削ブレードを相対移動させる移動手段と、該切削ブレードが該保持テーブルで保持された被加工物に切り込んだことを検出する切削開始検出手段と、を備え、該切削開始検出手段が該切削ブレードが被加工物に切り込んで切削を開始したことを検出することで、該切削ブレードが被加工物に切り込み切削を開始した座標位置を検出し、さらに、被加工物よりも該保持テーブルの切削送り方向に水平面内において直交するインデックス送り方向の外側の該ダイシングテープが切削されたラインも含め、該インデックス送り方向への該切削ブレードのインデックス送りが開始されてから該切削ブレードによる被加工物の切削が開始されたラインの番数を検出して、該ラインの番数をもとに被加工物の位置を特定する切削装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る切削方法は、切削ブレードが被加工物に切り込んで切削を開始したことを検出して、切削ブレードが被加工物に切り込み切削を開始した座標位置を検出し、さらに、保持テーブルの切削送り方向に水平面内において直交するインデックス送り方向への切削ブレードのインデックス送りが開始されてから切削ブレードによる被加工物の切削が開始されたラインの番数を検出する切削開始検出ステップを備えているため、切削開始検出ステップで検出されたラインの番数をもとに被加工物の位置を正確に特定することが可能となり、該ラインの番数についての情報に基づいてカット位置補正又はカーフチェックを実施する被加工物の位置を決定でき、切削ブレードによる空切りが行われたライン上でカット位置補正又はカーフチェックが実施されてしまうことを防ぐことが可能となる。また、切削ブレードによる被加工物の切削不良が発生した場合等において、切削が開始されたラインの番数からさらに何番目のラインで切削不良を発生したかを容易に把握できる。
【0013】
また、本発明に係る切削装置は、切削ブレードが保持テーブルで保持された被加工物に
切り込んだことを検出する切削開始検出手段を備え、切削開始検出手段が切削ブレードが被加工物に切り込んで切削を開始したことを検出することで、切削ブレードが被加工物に切り込み切削を開始した座標位置を検出し、さらに、保持テーブルの切削送り方向に水平面内において直交するインデックス送り方向への切削ブレードのインデックス送りが開始されてから切削ブレードによる被加工物の切削が開始されたラインの番数を検出して、ラインの番数をもとに被加工物の位置を正確に特定する。そして、該ラインの番数についての情報に基づいてカット位置補正又はカーフチェックを実施する被加工物の位置を決定でき、切削ブレードによる空切りが行われたライン上でカット位置補正又はカーフチェックが実施されてしまうことを防ぐことが可能となる。また、切削ブレードによる被加工物の切削不良が発生した場合等において、切削が開始されたラインの番数からさらに何番目のラインで切削不良を発生したかを容易に把握することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】切削装置の一例を示す斜視図である。
図2】切削加工が施されるウェーハの一例を示す斜視図である。
図3】切削手段の一例を示す分解斜視図である。
図4】弾性波検出センサを備える切削開始検出手段及び切削手段の構造の一例を示す断面図である。
図5】被加工物が保持テーブルで保持された状態を示す断面図である。
図6】被加工物の外周縁からインデックス送り方向に余裕幅だけ離れた位置から切削ブレードによる被加工物の切削を開始した状態を示す断面図である。
図7】切削開始検出ステップを説明する説明図である。
図8】撮像手段により形成された切削溝が写った撮像画像の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1に示す切削装置1は、保持テーブル30に保持された被加工物Wを回転する切削ブレード60を備える切削手段6で切削する装置である。
切削装置1の基台10の前方(-Y方向側)には、切削ブレード60に対して保持テーブル30をX軸方向に相対移動させるX軸移動手段(切削送り手段)12が配設されている。X軸移動手段12は、X軸方向の軸心を有するボールネジ120と、ボールネジ120と平行に配設された一対のガイドレール121と、ボールネジ120を回動させるモータ122と、内部のナットがボールネジ120に螺合し底部がガイドレール121に摺接する可動板123とから構成される。そして、モータ122がボールネジ120を回動させると、これに伴い可動板123がガイドレール121にガイドされてX軸方向に移動し、可動板123上に配設された保持テーブル30が可動板123の移動に伴いX軸方向に切削送りされる。
【0016】
図1に示す保持テーブル30は、例えば、その外形が円形状であり、被加工物Wを吸着する吸着部300と、吸着部300を支持する枠体301とを備える。吸着部300は図示しない吸引源に連通し、吸着部300の露出面であり枠体301の上面と面一である保持面300a上で被加工物Wを吸引保持する。保持テーブル30は、カバー32によって周囲から囲まれ、保持テーブル30の底面側に配設された回転手段33によりZ軸方向の軸心周りに回転可能となっている。枠体301の周囲には、被加工物Wを支持する環状フレームFを固定する固定クランプ34が周方向に均等に4つ配設されている。
【0017】
保持テーブル30に吸引保持される図1、2に示す被加工物Wは、例えば、外形が円形状のシリコンを母材とする半導体ウェーハであり、表面Waには、切削予定ラインSによって区画された格子状の領域にデバイスDが形成されている。例えば、被加工物Wの裏面WbはダイシングテープTの貼着面に貼着され、ダイシングテープTの外周部は環状フレームFに貼着されている。これにより、被加工物Wは環状フレームFを用いたハンドリングが可能な状態になっている。なお、被加工物Wは、上記のようなデバイスウェーハに限定されず、デバイスが形成されていないウェーハや板状物、デバイスが樹脂で封止された矩形状のパッケージ基板等であってもよい。
【0018】
図1に示すように、切削装置1の基台10上の中央から後方にかけては、X軸方向に水平面上において直交するY軸方向に切削手段6を往復移動させるY軸移動手段(インデックス送り手段)13が備えられている。Y軸移動手段13は、Y軸方向の軸心を有するボールネジ130と、ボールネジ130と平行に配設された一対のガイドレール131と、ボールネジ130を回動させるモータ132と、内部のナットがボールネジ130に螺合し底部がガイドレール131に摺接する可動板133とから構成される。モータ132がボールネジ130を回動させると、これに伴い可動板133がガイドレール131にガイドされてY軸方向に移動し、可動板133上に後述するZ軸移動手段14を介して配設された切削手段6が、可動板133の移動に伴いY軸方向にインデックス送りされる。
【0019】
可動板133上にはコラム145が一体的に立設されており、コラム145の側面にはZ軸方向に切削手段6を往復移動させるZ軸移動手段(切り込み送り手段)14が備えられている。Z軸移動手段14は、Z方向の軸心を有する図示しないボールネジと、ボールネジと平行に配設された一対のガイドレール141と、ボールネジを回動させるモータ142と、内部のナットがボールネジに螺合し側部がガイドレール141に摺接するホルダー143とから構成される。モータ142がボールネジを回動させると、これに伴いホルダー143がガイドレール141にガイドされてZ軸方向に移動し、ホルダー143に支持されている切削手段6がZ軸方向に切り込み送りされる。
【0020】
切削装置1は、装置全体の制御を行う制御手段9を備えている。CPU及びメモリ等の記憶素子等で構成される制御手段9は、X軸移動手段12、Y軸移動手段13、及びZ軸移動手段14等に電気的に接続されており、制御手段9の制御の下で、X軸移動手段12による保持テーブル30の切削送り動作やY軸移動手段13による切削手段6のインデックス送り動作等が制御される。
【0021】
例えば、X軸移動手段12のモータ122やY軸移動手段13のモータ132は、図示しないパルス発振器から供給される駆動パルスによって動作するパルスモータである。そして、制御手段9は、X軸移動手段12やY軸移動手段13に供給される駆動パルス数をカウントすることにより、保持テーブル30のX軸方向における位置や切削手段6のY軸方向におけるインデックス送り位置を検出することが可能である。
なお、例えば、X軸移動手段12のモータ122やY軸移動手段13のモータ132をパルスモータではなくサーボモータとし、サーボモータにロータリエンコーダが接続された構成としてもよい。この場合、ロータリエンコーダは、サーボアンプとしての機能も有する制御手段9に接続されており、制御手段9からサーボモータに対して動作信号が供給された後、エンコーダ信号(サーボモータの回転数)を制御手段9に対して出力する。制御手段9は受け取ったエンコーダ信号によって、保持テーブル30のX軸方向における移動量や切削手段6のY軸方向における移動量を算出し、保持テーブル30のX軸方向における切削送り位置や切削手段6のY軸方向におけるインデックス送り位置を検出する。
【0022】
図3は切削手段6の各構成を示す分解斜視図であり、切削手段6は、例えば、スピンドルハウジング61と、Y軸方向の軸心を備え図示しないモータにより回転駆動されるスピンドル62と、スピンドル62に着脱可能に装着されるマウントフランジ63と、円形の切削ブレード60と、円環状の前フランジ64とを備えている。
【0023】
スピンドルハウジング61は、図1に示すZ軸移動手段14のホルダー143に保持されている円柱状のハウジング本体610と、ハウジング本体610の先端側に固定される円環状のハウジングカバー611とを備えている。ハウジング本体610の前面(-Y方向側の面)には、ネジ孔610aが周方向に180度間隔空けて2つ形成されている。
【0024】
ハウジング本体610中には、スピンドル62が回転可能に収容されており、スピンドル62は、ハウジング本体610内から突出しており、その先端にボルト孔620が形成されている。また、スピンドル62の後端側には、図示しないモータが接続されている。
【0025】
ハウジングカバー611の中央には、後述するマウントフランジ63の後端部632が没入されると共にスピンドル62が挿通されるスピンドル挿通孔611aが形成されている。ハウジングカバー611の前面には、環状のインダクタ収容溝611bが形成されている。また、ハウジングカバー611の側面には、ネジ挿通孔を備える取付部611cが2つ径方向外側に向かって延出している。
【0026】
スピンドル62の先端部の外周に装着されるマウントフランジ63は、厚み方向の中間位置に形成されたフランジ部630と、フランジ部630よりも小径に形成されフランジ部630から前方(-Y方向)に突出するボス部631と、フランジ部630よりも小径に形成されフランジ部630から後方(+Y方向)に突出する後端部632とを備えている。また、マウントフランジ63の中心には、スピンドル62が挿嵌される貫通孔633が形成されている。
【0027】
切削ブレード60は、例えば、ハブブレードであり、円盤状に形成され中央に装着孔を備えるアルミニウム製の基台600と、基台600の外周部に固定された切り刃601とを備える。切り刃601は、ダイヤモンド砥粒等を適宜のバインダーで固定して形成されている。なお、切削手段6に備える切削ブレードは、切り刃のみを備える環状のワッシャー型のハブレスブレードであってもよい。
【0028】
図4に示すように、ハウジング本体610のネジ孔610aとハウジングカバー611の取付部611cのネジ挿通孔とを重ね合わせて、ネジ挿通孔に固定ネジ67を挿通させネジ孔610aに螺合させて締めることで、ハウジングカバー611がハウジング本体610の前面に固定され、スピンドル62の先端部分がハウジングカバー611のスピンドル挿通孔611aから突出した状態になる。さらに、ハウジングカバー611のスピンドル挿通孔611aにマウントフランジ63の後端部632を没入させ、マウントフランジ63の貫通孔633にスピンドル62の先端部分を挿嵌させる。そして、平座金65を通した固定ボルト66をスピンドル62のボルト孔620に螺合することによって、マウントフランジ63をスピンドル62に装着することができる。
【0029】
次いで、マウントフランジ63のボス部631に切削ブレード60の装着孔を嵌合させ、切削ブレード60の背面をマウントフランジ63のフランジ部630を当接させる。さらに、前フランジ64をボス部631の側面に形成されたネジに螺合させて締め付けることにより、切削ブレード60が、マウントフランジ63と前フランジ64とにより挟持固定されスピンドル62に装着された状態になる。
【0030】
図1に示すように、切削手段6には、切削ブレード60を上方から跨ぐようにブレードカバー69が取り付けられる。ブレードカバー69には、被加工物Wに対して切削ブレード60が接触する加工点に切削水を供給する切削水供給ノズル68が取り付けられている。
【0031】
切削装置1は、ハウジング本体610の先端部側面に配設されたアライメント手段18を備えている。アライメント手段18は、撮像手段180を備えており、撮像手段180は、例えば、被加工物Wに光を照射する光照射部と、被加工物Wからの反射光を捕らえる光学系及び反射光に対応した電気信号を出力する撮像素子(CCD)等で構成されたカメラとを備えている。アライメント手段18は、撮像手段180により形成された被加工物Wの表面Waの撮像画像に基づきパターンマッチング等の画像処理を実行し、切削ブレード60を切り込ませるべき切削予定ラインSを検出することができる。アライメント手段18と切削手段6とは一体となって構成されており、両者は連動してY軸方向及びZ軸方向へと移動する。
【0032】
切削装置1は、例えば、タッチパネル式のモニター19を備えている。モニター19には、入力画面及び表示画面が映し出され、表示画面によって加工条件等の各種情報や撮像手段180により形成された撮像画像が表示され、入力画面から加工条件等の各種情報を入力することが可能である。
【0033】
切削装置1は、切削ブレード60が保持テーブル30で保持された被加工物Wに切り込んだことを検出する図4に示す切削開始検出手段7を備えている。切削開始検出手段7は、例えば、切削手段6のマウントフランジ63に配設された弾性波検出センサ(AEセンサ)71と、非接触型の伝送路72とを備える。
【0034】
弾性波検出センサ71は、例えば、環状の外形を備えており、マウントフランジ63のフランジ部630の背面側に形成された環状溝に嵌めこまれている。弾性波検出センサ71は、チタン酸バリウム(BaTiO)、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zi,Ti)O)、リチウムナイオベート(LiNbO)又はリチウムタンタレート(LiTaO)等の圧電セラミックスで形成されており、所定の超音波領域の弾性波を検出対象としている。そして、弾性波検出センサ71は、回転する切削ブレード60が切削対象に接触した際に発生する弾性波を電気信号に変換して検出する。
【0035】
非接触型の伝送路72は、マウントフランジ63のフランジ部630に弾性波検出センサ71に接続するように配設された第1のインダクタ721と、ハウジングカバー611のインダクタ収容溝611bに配設された第2のインダクタ722とを備えており、第2のインダクタ722は第1のインダクタ721に対してY軸方向に所定の間隔だけ離れて対向している。本実施形態においては、第1のインダクタ721及び第2のインダクタ722は、導線が巻回された円環状のコイルである。
【0036】
互いに対向する第1のインダクタ721と第2のインダクタ722とは磁気的に結合しているため、弾性波検出センサ71が検出した弾性波についての電気信号(検出信号)は、第1のインダクタ721と第2のインダクタ722との相互誘導によって、第2のインダクタ722側に伝送される。第2のインダクタ722には、制御手段9が電気的に接続されており、第2のインダクタ722に伝送された検出信号は制御手段9に送出される。なお、第2のインダクタ722から送出された検出信号は、例えば、プリアンプ等によって後の信号処理が容易となるように増幅され、さらに、信号処理に無関係な周波数帯の信号がフィルタで除去されてから、制御手段9に到達するものとしてもよい。
【0037】
切削ブレード60が保持テーブル30で保持された被加工物Wに切り込んだことを検出する切削開始検出手段は、上記弾性波検出センサ71等で構成される切削開始検出手段7に限定されるものではない。例えば、図1に示す切削開始検出手段7Aは、スピンドル負荷電流値検出手段79を備えており、スピンドル負荷電流値検出手段79が、スピンドル62を回転駆動するモータに流れる電流値をスピンドル62の負荷電流値として検出し、スピンドル62の負荷電流値の変化で切削ブレード60が被加工物Wに切り込んだことを検出する構成となっている。
なお、切削装置1は、切削開始検出手段7又は切削開始検出手段7Aのどちらか一方を備えていればよい。
【0038】
以下に、上述した切削装置1を用いて被加工物Wを切削する場合の各ステップ及び切削装置1の動作について説明する。
【0039】
(1)加工条件及び被加工物の情報の入力と記憶
例えば、まず、図1に示すモニター19に入力画面が表示され、オペレータが該入力画面から被加工物Wのサイズ(直径若しくは半径及び厚み、又は、縦横の長さ及び厚み)、被加工物Wの形状(円形又は矩形)、余裕幅、及び被加工物Wのインデックスサイズ(図2に示すある切削予定ラインSの幅方向の中心線Scからその隣の切削予定ラインSの中心線Scまでの距離)を入力し、制御手段9の条件記憶部90に記憶させる。なお、余裕幅とは、切削加工開始時に被加工物Wの外周縁からさらに外側の所定位置に切削ブレード60を切り込ませて空切りを行うためにX軸方向及びY軸方向において設定される所定の距離である。余裕幅の値は、保持テーブル30の保持面300a内で被加工物Wが載置されうる許容領域等を考慮して決められる。
【0040】
図2に示す被加工物Wの各デバイスDの表面には同一の回路パターンが形成されている。そして、該回路パターンのうちの特徴的な形状を有する一つのパターンが、ターゲットパターンPとしてあらかじめ選定され、このターゲットパターンPについての情報が条件記憶部90に記憶される。なお、ターゲットパターンPは、複数のデバイスDの一つ一つについて、同様の位置、例えば、デバイスDのコーナー部分に形成されている。図2の例のターゲットパターンPはL字型に形成されているが、この形状に限定されるものではない。また、図2においては、3つのデバイスDのターゲットパターンPのみを図示しており、その他のデバイスDのターゲットパターンPは省略して示している。そして、あるターゲットパターンPから該ターゲットパターンPに隣接する切削予定ラインSの中心線Scまでの距離L1(以下、基準距離L1とする。)が条件記憶部90に記憶される。
【0041】
(2)保持ステップ
図5に示すように、環状フレームFによって支持された被加工物Wが、ダイシングテープT側を下方に向けた状態で保持テーブル30の保持面300a上に載置される。保持面300aに連通する図示しない吸引源により生み出された吸引力が保持面300aに伝達されることで、保持テーブル30によって被加工物Wが吸引保持される。また、各固定クランプ34により環状フレームFが挟持固定される。なお、保持面300aの中心と被加工物Wの中心とは、ある程度一致した状態になる。
【0042】
(3)切削予定ラインのθ合わせ及びアライメント
被加工物Wが保持テーブル30で吸引保持された後、X軸移動手段12によって、保持テーブル30が例えば-X方向(図5における紙面奥側)に送られて、保持テーブル30上の被加工物Wが撮像手段180の直下に位置付けられた後、撮像手段180により被加工物Wの表面Waが撮像される。撮像手段180による本撮像は、被加工物Wの切削予定ラインSをX軸方向と平行に合わせるθ合わせ(平行出し)、及び切削予定ラインSのアライメントに基づく切削ブレード60の切り込み座標位置の決定のために実施される。
【0043】
上記撮像手段180による撮像は、例えば、X軸方向に延びる一本の切削予定ラインSに隣接しX軸方向において互いに離れた位置にある2つのデバイスDを対象とし、デバイスDが写った2つの撮像画像が形成される。そして、アライメント手段18が、2つの撮像画像中のデバイスDの表面に形成されたパターンと、条件記憶部90に記憶されている図2に示すターゲットパターンPとのマッチングを行い、2つの撮像画像中の各ターゲットパターンPを検出する。また、撮像手段180の位置から、撮像画像中の各ターゲットパターンPのX軸Y軸座標位置が検出される。そして、この2つのターゲットパターンPのY軸方向における座標が一致するように、保持テーブル30が所定の角度θだけ回転することで、X軸方向に延びる切削予定ラインSをX軸方向と平行に合わせることができる。
【0044】
制御手段9は保持テーブル30の保持面300aの中心のX軸Y軸座標位置を常に把握している。例えば、上記のようにθ合わせが行われた後、保持テーブル30の保持面300aの中心座標を基準として、条件記憶部90に記憶されている被加工物Wのサイズに余裕幅L2を加算した許容領域(図7において2点鎖線で示す円の内側の領域)、即ち、X軸移動手段12による保持テーブル30のX軸方向における切削送り範囲、及びY軸移動手段13による切削手段6のY軸方向におけるインデックス送り範囲が算出される。さらに、アライメント手段18により検出されたターゲットパターンPのY軸座標位置から条件記憶部90に記憶されているインデックスサイズの整数倍の距離ずつ離れた各Y軸座標位置のうち、該許容領域の内側にあり、且つ、最も該許容領域の外周側となるダイシングテープT上のY軸座標位置が、切削開始のインデックス送り位置として決定される。また、決定された切削開始のインデックス送り位置(Y軸座標位置)に対応する許容領域内のX軸方向における一番端のX座標位置が、X軸方向におけるダイシングテープT上の切削開始位置として決定される。
【0045】
(4-1)切削ステップにおける切削ブレードによる空切り及び切削ブレードの被加工物への最初の切り込み
図6に示すように、切削手段6がY軸移動手段13によってY軸方向に駆動され、切削ブレード60がY軸方向における切削開始当初のインデックス送り位置に位置付けられる。スピンドル62が-Y方向側から見て時計回り方向に回転することに伴い、切削ブレード60も同方向に回転する。また、被加工物Wを保持する保持テーブル30がX軸方向に送り出され、切削ブレード60の直下にX軸方向におけるダイシングテープT上の切削開始位置が位置付けられる。さらに、Z軸移動手段14(図6には不図示)によって切削手段6が-Z方向に向かって切り込み送りされ、切削ブレード60の最下端が被加工物Wを完全に切断しダイシングテープTに切り込む所定の高さ位置に切削手段6が位置付けられる。なお、切削ブレード60の切り込み高さ位置は、被加工物Wを完全切断しない高さ位置であってもよい。
【0046】
被加工物Wを保持する保持テーブル30が所定の切削送り速度で-X方向(図6における紙面奥側)に送り出されることで、保持テーブル30と切削ブレード60とが相対的に所定速度でX軸方向に移動し、切削ブレード60が高速回転をしながら、被加工物Wの周囲のダイシングテープTに切り込み、ダイシングテープTだけを切削していく、即ち、切削ブレード60による空切りが行われる。その結果、図7に示すように、ダイシングテープT上に切削痕K1が形成されていく。
【0047】
保持テーブル30の保持面300a内で被加工物Wが載置されうる許容領域(図7において2点鎖線で示す円の内側の領域)において、切削ブレード60が1ラインを切削し終える-X方向の所定の位置まで保持テーブル30が送られると、保持テーブル30の-X方向への切削送りが停止され、切削ブレード60が被加工物Wの表面Waの高さ位置よりも上方に引き上げられる。次いで、保持テーブル30が+X方向に移動し原点位置に戻される。そして、条件記憶部90に記憶されているインデックスサイズの間隔だけ切削ブレード60が+Y方向にインデックス送りされる。
【0048】
切削ブレード60が切り込み高さ位置に位置付けられ、保持テーブル30が-X方向に向かって切削送りされることで、先の切削ブレード60による空切りと同様にダイシングテープT上に切削痕K2が形成されていき、再び保持テーブル30が+X方向に移動し原点位置に戻される。再び、インデックスサイズの間隔だけ切削ブレード60が+Y方向にインデックス送りされ、保持テーブル30が所定の切削送り速度で-X方向側に送り出されることで、切削ブレード60が所定距離ダイシングテープTだけを切削して切削痕K3が形成された後、切削ブレード60が被加工物Wに初めて切り込む。
【0049】
(5)切削開始検出ステップの実施形態1
切削ブレード60が被加工物Wに切り込んで切削を開始したことを検出する切削開始検出ステップの実施形態1について、以下に説明する。本実施形態1の切削開始検出ステップにおいては、図4に示す切削手段6に配設された切削開始検出手段7によって、切削ブレード60が被加工物Wに切り込んだことが検出される。
【0050】
先に説明した(4-1)切削ステップにおける切削ブレード60による空切りが開始されると、切削ブレードが被切削対象を切削することで発生する音(弾性波)を弾性波検出センサ71が検出し始める。そして、弾性波検出センサ71は、検出した弾性波の値を電気信号に変換して、順次伝送路72を介して制御手段9に送る。そして、切削ブレード60が高分子樹脂等からなるダイシングテープTを切削した際に発生する弾性波の値と、切削ブレード60がシリコンを母材とする被加工物Wを切削した際に発生する弾性波の値とは異なる。そのため、ダイシングテープTのみを切削していた切削ブレード60が被加工物Wに切り込むことで、弾性波検出センサ71から制御手段9に送られる検出信号が変化し、検出信号の変化から切削ブレード60の被加工物Wへの切り込みが検出される。
【0051】
切削ブレード60が被加工物Wの切削を開始したことが検出されると、切削ブレード60が被加工物Wに切り込んで切削を開始したX軸Y軸平面における図7に示す座標位置Q(x1、y1)が検出される。該座標位置Q(x1、y1)は、例えば、被加工物Wに切削ブレード60が切り込んだ時点において、制御手段9がカウントしたX軸移動手段12に供給された駆動パルス数及びY軸移動手段13に供給された駆動パルス数から検出される。さらに、切削ブレード60が被加工物Wに切り込んで切削が開始された時間も検出される。
なお、該座標位置Q(x1、y1)は、保持テーブル30の座標位置、スピンドル62の座標位置、及び切削ブレード60のサイズから検出されるものとしてもよい。
【0052】
また、切削ブレード60による被加工物Wの切削が開始されたラインが、Y軸移動手段13による切削手段6のインデックス送りが開始されてから何番目のライン(本実施形態1においては3番目のライン)であるかが検出される。そして、該座標位置Q(x1、y1)及び被加工物Wの切削が開始されたラインの番数(3ライン目)が制御手段9に記憶されることで、制御手段9は、被加工物Wの切削が開始された該3番目のライン以後に被加工物Wに形成される切削溝のライン番数をカウントしながら切削加工を実施していく、換言すれば、被加工物Wの切削が開始されたラインを基準として被加工物Wの位置の特定しつつ切削加工を実施していくことが可能となる。
【0053】
(5)切削開始検出ステップの実施形態2
切削開始検出ステップは、上記実施形態1のように実施する代わりに、以下に説明する実施形態2のように実施してもよい。本実施形態2の切削開始検出ステップにおいては、切削ブレード60が装着されるスピンドル62の負荷電流値の変化で切削ブレード60が被加工物Wに切り込んだことが検出される。
【0054】
先に説明した(4-1)切削ステップにおける切削ブレード60による空切りが開始されると、図1に示すスピンドル負荷電流値検出手段79が、スピンドル62を回転駆動するモータに流れる電流値を検出し始める。例えば、切削ブレード60がダイシングテープTのみを切削(空切り)している状態において、スピンドル負荷電流値検出手段79が検出するモータの電流値は1.8A程度となる。そして、スピンドル負荷電流値検出手段79が、検出したモータの電流値(スピンドル62の負荷電流値)についての情報を順次制御手段9に送り、制御手段9が、スピンドル62を回転駆動するモータの電流値の監視を開始する。即ち、制御手段9が、新たに検出された電流値から単位時間前に検出された電流値を引いた差分を算出し、単位時間毎の電流値の変化を監視していく。
【0055】
被加工物WはダイシングテープTよりも硬いため、ダイシングテープTのみを切削していた切削ブレード60が被加工物Wに切り込むことで、切削ブレード60に掛かる負荷が大きくなる。切削ブレード60が回転している最中においては、図示しない電源からモータに電力が供給され続けており、被加工物Wへの切り込みによって切削ブレード60に作用する負荷が大きくなった場合でもスピンドル62を一定の回転数で回転させるようにモータはフィードバック制御されているため、モータの電流値が上昇する。即ち、例えば、スピンドル負荷電流値検出手段79が検出するモータの電流値が、2.5A程度まで急上昇する。そして、スピンドル62を駆動するモータの単位時間毎の電流値の変化を逐次監視している制御手段9は、該電流値の急激な上昇から切削ブレード60が被加工物Wに切り込んだことを検出する。
その後、切削ブレード60が被加工物Wに切り込み切削を開始したX軸Y軸平面における図7に示す座標位置Q(x1、y1)や、切削ブレード60による被加工物Wの切削が開始されたラインの番数(3ライン目)等が検出され、これらの検出情報が制御手段9に記憶される。
【0056】
従来においては、例えば上述した(1)加工条件及び被加工物の情報の入力時において、オペレータが、制御手段9にカット位置補正又はカーフチェックが実施される実施位置を加工開始初期のライン上になるように設定していた。これに対して、例えば、本発明に係る切削装置1においては、被加工物Wの切削が開始された座標位置Q(x1、y1)についての情報及び被加工物Wの切削が開始されたライン番数(3ライン目)についての情報に基づいて、制御手段9によってカット位置補正又はカーフチェックが実施される実施位置が決定される。したがって、切削装置1においては、切削ブレード60による空切りが行われたライン上が、カット位置補正又はカーフチェックが実施される実施位置となることがなくなり、エラーの発生を原因とする装置の各種動作の停止が防がれる。
【0057】
カット位置補正又はカーフチェックが実施される実施位置は、例えば、被加工物Wの切削ブレード60による切削が開始された図7に示す3ライン目を基準として、該3ライン目からさらに+Y方向側の1ライン目~5ライン目の切削予定ラインのいずれか、即ち、例えば、図7に示す1本の切削予定ラインSM上に決定される。
【0058】
(4-2)切削ステップにおける切削ブレードによる被加工物の切削
切削ブレード60の被加工物Wへの最初の切り込みが行われた後、図7に示す保持テーブル30が所定の切削送り速度で-X方向に送り出され、切削ブレード60が高速回転をしながら被加工物Wを切削していく。その後、保持テーブル30の切削送りと切削手段6のインデックスサイズの間隔分のインデックス送りとが複数回繰り返されることで、被加工物WがX軸方向に延びる切削予定ラインSに沿って切削され、被加工物Wに切削溝(フルカット溝)が形成されていく。
【0059】
そして、切削ブレード60が上記図7に示す切削予定ラインSMに沿って被加工物Wを切削し終えた後、保持テーブル30の切削送りが一度停止される。そして、切削予定ラインSMに沿って被加工物Wの表面Waに形成された切削溝が撮像手段180(図7には不図示)によって撮像され、形成された撮像画像G(図8参照)を用いたカット位置補正やカーフチェックが実施される。図8に示す撮像画像Gは、例えば、図1に示すモニター19の出力画面に表示されたものである。なお、モニター19の出力画面上に表示される撮像画像Gは、例えば、エッジを強調する鮮鋭化フィルタを用いたフィルタ処理が施されたり、フィルタ処理後の処理画像にさらに二値化処理が施されたりしたものであってもよい。
【0060】
カット位置補正においては、撮像画像G中の切削予定ラインSMに沿って形成された切削溝Mと、切削予定ラインSMに隣接するデバイスDに形成されているターゲットパターンPとが検出される。さらに、切削溝Mの中心線Mcから切削予定ラインSMに隣接するデバイスD上のターゲットパターンPまでの距離L3が画素のカウント等により算出される。次に、予め図1に示す条件記憶部90に記憶されている基準距離L1と算出された距離L3との差L3-L1(又は、L1-L3)が、インデックス送りのずれ量L4として算出される。
【0061】
そして、切削が施された切削予定ラインSMの隣に位置し切削が施されていない切削予定ラインSN(図7参照)と切削ブレード60とのY軸方向における位置合わせが行われる。ここで、Y軸移動手段13による切削手段6の+Y方向へのインデックス送りの送り量が、上述したずれ量に応じて補正される。具体的には、既に設定されている送り量(インデックスサイズの間隔分の送り量)に対し、上述したずれ量に相当する補正量が加えられる(又は、減じられる)。そして、補正されたインデックス送り量で切削手段6が+Y方向に向かって送られることで、インデックス送り後の切削ブレード60が切削予定ラインSNの幅方向の中心線に合わせて位置付けられた状態になる。
【0062】
一方、カーフチェックにおいては、単位長さ(例えば、図8に示す切削溝MのX軸方向の一端から他端までの長さ)当たりにおける切削溝Mの両側に形成された平均的なチッピングMe(欠け)の大きさ及びチッピングMeの数が許容値内にあるか否かの判定によってなされる。また、切削溝Mの溝幅L5が、許容値範囲内にあるか否かの判定が行われる。例えば、切削溝Mの溝幅L5が許容値を下回っている場合には、切削ブレード60に側面やせ等の異常磨耗が発生している可能性がある。
上記各判定において許容値範囲内にないとの判定が出された場合、制御手段9の制御の下で、図7に示す切削予定ラインSNの切削加工が停止される。又は、オペレータが該判定結果を認識できるように、スピーカー等から警告が発報されたり、図1に示すモニター19に警告が表示されたりする。
【0063】
カット位置補正が上記のように行われた後、被加工物Wを保持する保持テーブル30が所定の切削送り速度で-X方向に送り出されることで、切削予定ラインSNの幅方向の中心線に合わせて位置付けられた切削ブレード60が被加工物Wを切削していく。そして、保持テーブル30の保持面300a内で被加工物Wが載置されうる許容領域において、切削予定ラインSNに沿って切削ブレード60が1ライン切削し終えた後、保持テーブル30が+X方向に移動し原点位置に戻される。そして、条件記憶部90に記憶されているインデックスサイズの間隔だけ切削ブレード60が、+Y方向にインデックス送りされる。つまり、元のインデックス送り量(補正前のインデックス送り量)に戻して被加工物Wの切削が実施されていく。
【0064】
X軸方向の全ての切削予定ラインSが切削されてから、さらに、保持テーブル30が90度回転されて、上記と同様の切削が行われることで、全ての切削予定ラインSが縦横に全てカットされて被加工物WがデバイスDを備えるチップへと分割される。
【0065】
本発明に係る切削方法は、切削ブレード60が被加工物Wに切り込んで切削を開始したことを検出して、切削ブレード60が被加工物Wに切り込み切削を開始した位置を検出する切削開始検出ステップを備えているため、切削開始検出ステップで検出された位置Q(x1、y1)及び被加工物Wの切削が開始されたラインの番数をもとに保持テーブル30上における被加工物Wの位置を正確に特定することが可能となる。
【0066】
また、本発明に係る切削装置1は、切削ブレード60が保持テーブル30で保持された被加工物Wに切り込んだことを検出する切削開始検出手段7(又は、切削開始検出手段7A)を備えているため、被加工物Wが実際に切削され始めた位置Q(x1、y1)及び被加工物Wの切削が開始されたラインの番数を検出して、保持テーブル30上における被加工物Wの位置を正確に特定することが可能となる。即ち、例えば、本切削装置1においては、被加工物Wが実際に切削され始めた位置Q(x1、y1)及び被加工物Wの切削が開始されたラインの番数(3ライン目)を検出してから、保持テーブル30上における被加工物Wの位置を制御手段9が正確に特定しつつ切削加工が行われていくため、切削ブレード60による被加工物Wの切削不良が発生した場合等において、制御手段9は、切削が開始されたラインの番数からさらに何番目のラインで切削不良を発生したかを容易に把握することができる。
【0067】
なお、本発明に係る切削方法は上記の例に限定されるものではなく、また、添付図面に図示されている切削装置1の構成についても、これに限定されず、本発明の効果を発揮できる範囲内で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0068】
1:切削装置 10:基台
12:X軸移動手段
120:ボールネジ 122:モータ 123:可動板
30:保持テーブル 300a:保持面 34:固定クランプ 33:回転手段
13:Y軸移動手段 130:ボールネジ 132:モータ 133:可動板
14:Z軸移動手段 142:モータ 143:ホルダー 145:コラム
18:撮像手段 19:モニター
6:切削手段 60:切削ブレード 600:基台 601:切り刃
61:スピンドルハウジング 610:ハウジング本体
611:ハウジングカバー 611a:スピンドル挿通孔 611b:インダクタ収容溝
62:スピンドル
63:マウントフランジ 630:フランジ部 631:ボス部 632:後端部
64:前フランジ 65:平座金 66:固定ボルト 68:切削水供給ノズル 69:ブレードカバー 7:切削開始検出手段 71:弾性波検出センサ 72:伝送路
7A:切削開始検出手段 79:スピンドル負荷電流値検出手段
9:制御手段 90:条件記憶部
W:被加工物 Wa:被加工物の表面 Wb:被加工物の裏面 S:切削予定ライン
D:デバイス T:ダイシングテープ F:環状フレーム P:ターゲットパターン
M:切削溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8