(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】ウェーハの分離方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20220928BHJP
B23K 26/53 20140101ALI20220928BHJP
【FI】
H01L21/304 611Z
B23K26/53
(21)【出願番号】P 2018165201
(22)【出願日】2018-09-04
【審査請求日】2021-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】邱 暁明
【審査官】内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-133485(JP,A)
【文献】特開平08-039500(JP,A)
【文献】特開昭60-187380(JP,A)
【文献】特開平06-331429(JP,A)
【文献】特開2018-093106(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B23K 26/53
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インゴットの端面から生成すべきウェーハの厚みに相当する位置に面状に剥離層を形成したインゴットを液槽内の液体に液没させ、超音波振動板から発振され該液体に伝播した超音波振動を該剥離層に付与し、該剥離層を境にインゴットからウェーハを分離させるウェーハの分離方法であって、
該液槽に該液体をためる液体供給工程と、
該超音波振動板から該液体を伝播する超音波振動を発振させ、該液体の深さ方向において最も大きい音圧となる深さを圧電素子を用いて検出する位置検出工程と、
該位置検出工程で検出した深さに、インゴットの該剥離層を位置づけ該剥離層を境にインゴットからウェーハを分離させる分離工程と、からな
り、
該分離工程では、インゴットの該液体中における深さ方向の位置が変化することによって音圧が最も大きくなる深さが変化することに対応させて、該音圧が最も大きくなる深さにインゴットの該剥離層を移動させる
ウェーハの分離方法。
【請求項2】
インゴットの端面から生成すべきウェーハの厚みに相当する位置に面状に剥離層を形成したインゴットを液槽内に配置させ、該液槽に液体を供給して該インゴットを液没させ、超音波振動板から超音波を発振させ該液体を伝播した超音波振動を該剥離層に付与させて、該剥離層を境にインゴットからウェーハを分離させるウェーハの分離方法であって、
該液槽に該剥離層側を上側にしてインゴットを配設させ、インゴットの上面に圧電素子を配設させる準備工程と、
該準備工程の後、該超音波振動板から超音波振動を発振させるとともに該液槽に該液体を供給して液面を上昇させ、インゴット上の浸漬した該圧電素子が受振した超音波の音圧が最も大きくなったら該液体の供給を停止させる液体供給工程と、
該液体供給工程の後、該剥離層を境にインゴットからウェーハ分離させる分離工程と、からなるウェーハの分離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インゴットからウェーハを分離させるウェーハの分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザビームの照射によりインゴットに面状に剥離層を形成し、さらに、インゴットを液槽内に浸漬させ剥離層に液体(水)を介して超音波振動を付与してウェーハを分離するウェーハの分離方法がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
剥離層に対する超音波振動の付与においては、液槽下面側に配設される超音波振動板から超音波振動を発振させ、液槽内の液体に超音波振動を伝播させている。液体に伝播した超音波振動は、液体の深さで音圧が大きいところと音圧が小さいところとが存在している。そして、従来においては、該音圧が大きい深さを見つけ出し、該深さにインゴットの剥離層を位置づけて効率よくインゴットからウェーハを分離するのが難しかった。
【0005】
よって、超音波振動を付与してインゴットからウェーハを分離するウェーハの分離方法においては、液体中で音圧が最も大きくなる深さを見つけ、剥離層に最も大きな超音波振動を付与させてウェーハを効率よく分離するという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明は、インゴットの端面から生成すべきウェーハの厚みに相当する位置に面状に剥離層を形成したインゴットを液槽内の液体に液没させ、超音波振動板から発振され該液体に伝播した超音波振動を該剥離層に付与し、該剥離層を境にインゴットからウェーハを分離させるウェーハの分離方法であって、該液槽に該液体をためる液体供給工程と、該超音波振動板から該液体を伝播する超音波振動を発振させ、該液体の深さ方向において最も大きい音圧となる深さを圧電素子を用いて検出する位置検出工程と、該位置検出工程で検出した深さに、インゴットの該剥離層を位置づけ該剥離層を境にインゴットからウェーハを分離させる分離工程と、からなり、該分離工程では、インゴットの該液体中における深さ方向の位置が変化することによって音圧が最も大きくなる深さが変化することに対応させて、該音圧が最も大きくなる深さにインゴットの該剥離層を移動させるウェーハの分離方法である。
【0007】
また、上記課題を解決するための本発明は、インゴットの端面から生成すべきウェーハの厚みに相当する位置に面状に剥離層を形成したインゴットを液槽内に配置させ、該液槽に液体を供給して該インゴットを液没させ、超音波振動板から超音波を発振させ該液体を伝播した超音波振動を該剥離層に付与させて、該剥離層を境にインゴットからウェーハを分離させるウェーハの分離方法であって、該液槽に該剥離層側を上側にしてインゴットを配設させ、インゴットの上面に圧電素子を配設させる準備工程と、該準備工程の後、該超音波振動板から超音波振動を発振させるとともに該液槽に該液体を供給して液面を上昇させ、インゴット上の浸漬した該圧電素子が受振した超音波の音圧が最も大きくなったら該液体の供給を停止させる液体供給工程と、該液体供給工程の後、該剥離層を境にインゴットからウェーハ分離させる分離工程と、からなるウェーハの分離方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るウェーハの分離方法は、液槽に液体をためる液体供給工程と、超音波振動板から液体を伝播する超音波振動を発振させ、液体の深さ方向において最も大きい音圧となる深さを圧電素子を用いて検出する位置検出工程と、位置検出工程で検出した深さに、インゴットの剥離層を位置づけ剥離層を境にインゴットからウェーハを分離させる分離工程とを備えているため、剥離層に最も大きな超音波振動を付与させてウェーハを効率よくインゴットから分離することが可能となる。
【0009】
また、本発明に係るウェーハの分離方法は、液槽に剥離層側を上側にしてインゴットを配設させ、インゴットの上面に圧電素子を配設させる準備工程と、準備工程の後、超音波振動板から超音波振動を発振させるとともに液槽に液体を供給して液面を上昇させ、インゴット上の浸漬した圧電素子が受振した超音波の音圧が最も大きくなったら液体の供給を停止させる液体供給工程と、液体供給工程の後、剥離層を境にインゴットからウェーハ分離させる分離工程とを備えるため、剥離層に最も大きな超音波振動を付与させてウェーハを効率よくインゴットから分離することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】インゴットに剥離層を形成している状態を説明する斜視図である。
【
図2】インゴットに剥離層を形成している状態を説明する断面図である。
【
図3】実施形態1のウェーハの分離方法において、液体の深さ方向において最も大きい音圧となる深さを圧電素子を用いて検出している状態を説明する断面図である。
【
図5】位置検出工程で検出した深さに、インゴットの剥離層を位置づけ剥離層を境にインゴットからウェーハを分離させている状態を説明する断面図である。
【
図6】実施形態2のウェーハの分離方法における液体供給工程、位置検出工程、及び分離工程を説明するための断面図である。
【
図7】実施形態3のウェーハの分離方法における液体供給工程、位置検出工程、及び分離工程を説明するための断面図である。
【
図8】実施形態4のウェーハの分離方法における液体供給工程及び位置検出工程を説明するための断面図である。
【
図9】実施形態4のウェーハの分離方法における分離工程を説明するための断面図である。
【
図10】実施形態5のウェーハの分離方法における準備工程を説明するための断面図である。
【
図11】実施形態5のウェーハの分離方法における液体供給工程及び分離工程を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1、2に示すインゴットIは、例えば、円柱状のSi単結晶インゴット、SiC単結晶インゴット、又はGaN単結晶インゴット等であり、上端面である円形状の第1の面Iaと、第1の面Iaの反対側に位置し第1の面Iaと概ね平行な円形状の第2の面Ibと、第1の面Ia及び第2の面Ibの間に位置する円筒形状の外側面Icとを備えている。インゴットIの第1の面Iaは、レーザビームの照射面となるため鏡面に研磨されている。例えば、インゴットIは、X線回折等を利用して検出された鉛直方向(Z軸方向)の結晶軸と水平方向の結晶軸とをもとに分離面方向が設定されている。
【0012】
以下に、インゴットIの第1の面Iaから生成すべきウェーハの厚みTに相当する位置に面状に剥離層を形成する場合について簡潔に説明する。
図1、2に示すように、レーザビーム照射ヘッド30から照射されるレーザビームLBの集光点FPが、チャックテーブル31で保持されたインゴットIの内部の所定の高さ位置に位置づけられるとともに、平坦面であるインゴットIの第1の面Iaに向けてインゴットIに透過性を有する波長のレーザビームLBが照射されて、分離の起点となる改質領域がインゴットI内部に形成される。
【0013】
例えば、レーザビームLBをインゴットIの第1の面Iaに照射しつつ、チャックテーブル31で保持されたインゴットIをX軸方向に所定の加工送り速度で加工送りし、インゴットIの内部に分離の起点となる改質領域をX軸方向に延びる線状に形成していく。さらに、インゴットIを保持するチャックテーブル31がY軸方向に割り出し送りされた後、同様のレーザビームLBの照射が行われることで、インゴットIの内部に改質領域を含み分離面方向に沿った剥離層Mが形成される。この剥離層Mは、例えば、第1の面Ia及び第2の面Ibに対して概ね平行に形成され、インゴットI中の他の領域に比べて強度が低いものである。
なお、剥離層Mの形成は本例に限定されるものではない。
【0014】
(ウェーハの分離方法の実施形態1)
以下に、本発明に係るウェーハの分離方法(実施形態1のウェーハの分離方法とする。)を実施して、
図3に示すインゴットIの端面(第1の面Ia)から生成すべきウェーハの厚みTに相当する位置に面状に剥離層Mを形成したインゴットIからウェーハを分離する場合の各工程について説明する。
【0015】
(1)液体供給工程
インゴットIは、例えば、
図3に示すウェーハ分離装置5に搬送される。
図3に示すウェーハ分離装置5の液槽59は、側壁51と、側壁51の下部に一体的に連接する底板50とから構成されている。液槽59の底板50の下面には、超音波振動板53が配設されている。なお、超音波振動板53は、液槽59内に配設されていてもよい。超音波振動板53には、図示しない端子が接続されており、この端子及び配線54を介して交流電圧を印加して高周波電力を超音波振動板53に供給する電源55が接続されている。
【0016】
液槽59内には、液槽59内に液体L(水)を供給する液体供給手段57が配設されている。液体供給手段57は、例えば、液槽59内に液体Lを供給する供給パイプ571を備えており、供給パイプ571は、ポンプ等からなる液体供給源570に開閉バルブ572を介して連通している。
液体供給源570から供給パイプ571に対して液体L(水)が供給され、液槽59内に液体Lがためられていく。そして、液槽59内に液体Lが所定の水位になるまでためられることで液体供給工程が完了する。
【0017】
(2)位置検出工程
図3に示す超音波音圧計1は、例えばSUS等の金属又は硬質プラスチック等からなりZ軸方向に所定の長さで延在する棒10を備えている。棒10の形状は円柱状であっても角柱状であってもよい。
棒10の長手方向(Z軸方向)の側面10aには、ウェーハ分離装置5の液槽59内にためられた液体L(水)に伝播する超音波振動の音圧を測定可能な検知部11が、該長手方向に並べて複数(例えば、
図3においては11個)配設されている。
【0018】
検知部11は、棒10の側面10a側に配設される振動絶縁体111と、振動絶縁体111により支持される圧電素子112と、圧電素子112に密接する受振プレート113とを備えている。
【0019】
例えば板状に形成された振動絶縁体111は、振動を吸収する素材(ゴムや、ウレタン等)で構成されており、棒10の側面10aに図示しない接着部材等で固定されている。そして、振動絶縁体111上に圧電素子112が図示しない接着部材で固定され、さらに圧電素子112上に受振プレート113が図示しない接着部材で固定されている。なお、一般的に、超音波音圧計による音圧の測定は、圧電素子の一方の面を密閉し、他方の面に音圧を与えることにより実現される。本発明に係る超音波音圧計1においても、圧電素子112の一方の面(-X方向側の面)は、振動絶縁体111によって密閉されて、棒10から超音波振動が伝わらないようになっており、圧電素子112の他方の面(+X方向側の面)は、受振プレート113を介して超音波振動が伝わる構成となっている。
【0020】
例えば板状に形成された圧電素子112は、クォーツ又はセラミックス等で構成されており、棒10内部及び振動絶縁体111を通された配線12に電気的に接続されている。なお、
図1において破線で示す配線12は、一本の配線12から分岐して各圧電素子112にそれぞれ接続するように示しているが、実際は各圧電素子112に対してそれぞれ別の独立した計11本の配線12が電気的に個別に接続されている。そして、各圧電素子112にそれぞれ個別に接続された各配線12は、超音波振動が最も大きくなる水深を判断する水深判断手段19に個別に接続されている。
例えば板状に形成され圧電素子112に密接する受振プレート113は、所定の金属(例えば、銅やニッケル)で構成され、受けた超音波振動を増幅させて圧電素子112に伝える増幅器としての役割を果たす。
【0021】
本工程において使用する超音波音圧計は、例えば、
図4に示す超音波音圧計1Aであってもよい。
図4に示す超音波音圧計1Aは、
図3に示す超音波音圧計1の別形態であり、超音波音圧計1と同様に、複数本(例えば、11本)の配線12が通された棒10、検知部15を構成する圧電素子112、及び受振プレート113を備えている。
図4においては、例えば、計11個の検知部15が、棒10の側面10aに長手方向(Z軸方向)に並べて配設されている。
【0022】
棒10の側面10aは、側面10aから内部側に向かって段階的に切り欠かれており、例えば環状に形成された振動絶縁体116が嵌合する第1の部屋114と、第1の部屋114よりも棒10の内部側に位置し圧電素子112が伸縮できる余裕のある大きさの第2の部屋115とが、棒10の長手方向に沿って複数形成されている。
【0023】
第1の部屋114に嵌合する環状の振動絶縁体116は図示しない接着部材等で棒10に固定されており、その内側の開口には、例えば板状に形成された受振プレート113がはめ込まれる形で接着固定されている。即ち、棒10の側面10aに振動絶縁体116で受振プレート113が支持されている。
【0024】
第2の部屋115に収納された圧電素子112は、受振プレート113に接着固定されており、受振プレート113を介して振動絶縁体116に支持されている。各圧電素子112にはそれぞれ独立した配線12が電気的に接続されている。また、各配線12は、超音波振動が最も大きくなる水深を判断する水深判断手段19に個別に繋がっている。
なお、一般的に、超音波音圧計による音圧の測定は、圧電素子の一方の面を密閉し、他方の面に音圧を与えることにより実現される。超音波音圧計1Aにおいても、圧電素子112の一方の面(-X方向側の面)は、棒10とは非接触となっているため棒10から超音波振動が伝わらないようになっており、圧電素子112の他方の面(+X方向側の面)は、受振プレート113を介して超音波振動が伝わる構成となっている。
【0025】
図3に示すように、位置検出工程においては、超音波音圧計1が液槽59の液体L内に上方から差し入れられて、例えば、検知部11が液槽59の底板50の少し上方から液面までZ軸方向に複数並べられた状態になる。
また、電源55から超音波振動板53に対して、所定の出力で高周波電力が供給されて、超音波振動板53が高周波電力を主に上下方向の機械振動に変換することで所定の振動周波数の超音波を発振する。そして、発振された超音波が液槽59の底板50を介して液体Lに伝播する。
液体Lに伝播した超音波振動は、+Z方向(垂直方向)へ液面に向かって進み、液面に達した後、液面で全反射して底板50側に戻ってくる。これにより液面へむかう超音波(入射波)と液面から反射して底板50側に戻ってくる超音波(反射波)とが重なりあって、液体L中に音圧の強い深さと弱い深さとが生じる。なお、超音波の周波数に応じて、液体L中で最も音圧の高い深さは、振動面である底板50からZ軸方向において一定間隔で存在する。
【0026】
液体L中において、液体Lから各受振プレート113は超音波振動を受けて、超音波振動がさらに各圧電素子112に伝達される。そして、各圧電素子112は音圧に比例した電気出力を取り出し電圧に変換し、各々配線12を通して該電圧信号を水深判断手段19に送る。各圧電素子112から個別に送られてくる電圧信号を監視している水深判断手段19が、最も大きな電圧信号を送ってきた圧電素子112の棒10における高さ位置、即ち、例えば液面を0位置とした場合の液面からの深さZ1を特定することで、液体L中のZ軸方向において最も音圧が大きくなる深さZ1が測定される。なお、液体L中のZ軸方向において最も音圧が大きくなる深さは、1つに限定されるものではなく、複数となる場合もある。
【0027】
(3)分離工程
図5に示すように、ウェーハ分離装置5は、インゴットIを保持するインゴット保持手段60を備えている。インゴット保持手段60は、例えば、その下面(吸着面)でインゴットIを吸着保持する吸引パッド600と、吸引パッド600を支持するとともに昇降手段61に接続されたアーム部601とを備えている。なお、インゴット保持手段60は、本例に限定されるものではなく、インゴットIの外側面Icを挟持するクランプ等から構成されるものであってもよい。
図5に示すように、インゴット保持手段60によりインゴットIの第2の面Ibが吸引保持され、インゴットIの第1の面Iaが下側を向いた状態になる。
インゴット保持手段60を鉛直方向(Z軸方向)に昇降させる昇降手段61は、例えば、電動シリンダー又はモータ及びボールネジ等からなる機構である。
【0028】
図5に示すように、ウェーハ分離装置5は、装置全体の制御を行う制御手段9を備えている。CPUと、メモリ等の記憶素子等で構成される制御手段9は、水深判断手段19及び昇降手段61に電気的に接続されており、水深判断手段19から制御手段9に情報が送信された後、制御手段9の下で、昇降手段61によるインゴットIを保持したインゴット保持手段60の昇降動作が制御される。
【0029】
水深判断手段19は、液体L中のZ軸方向において最も音圧が大きくなる深さZ1についての情報を制御手段9に送信する。そして、例えば、インゴットIを保持するインゴット保持手段60が昇降手段61により-Z方向へと送られ、制御手段9による昇降手段61の制御の下で、インゴットIの第1の面Iaが液面の高さに位置づけられる。この状態から、制御手段9による昇降手段61の制御の下で、昇降手段61がインゴット保持手段60をさらに-Z方向に、深さZ1に生成すべきウェーハの厚みTを加えた距離だけ下降させる。これによって、位置検出工程で検出した深さZ1に、インゴットIの剥離層Mが位置づけられる。
【0030】
そして、液体L中のZ軸方向において最も音圧が大きくなる深さZ1に位置するインゴットI中の剥離層Mに最も大きな超音波振動が付与され、剥離層Mを境にインゴットIからウェーハが分離される。
なお、分離工程においてインゴットIを液体L中に下降させていくことで、液体L中のZ軸方向において最も音圧が大きくなる深さZ1が上方向又は下方向に少しだけ変化する場合もある。この場合には、水深判断手段19から送られてくる情報を下に、制御手段9による制御の下で、位置検出工程で検出した深さZ1にインゴットIの剥離層Mを位置付けた後に、昇降手段61がさらにインゴット保持手段60を該変化に追従できるように上方向又は下方向に少しだけ移動させてもよい。
【0031】
(ウェーハの分離方法の実施形態2)
以下に、本発明に係るウェーハの分離方法(実施形態2のウェーハの分離方法とする。)を実施して、
図6に示すインゴットIの端面(第1の面Ia)から生成すべきウェーハの厚みTに相当する位置に面状に剥離層Mを形成したインゴットIからウェーハを分離する場合の各工程について説明する。
【0032】
(1)液体供給工程
図6に示すウェーハ分離装置5Aは、
図3に示すウェーハ分離装置5の構成の一部を変更したものである。ウェーハ分離装置5Aは、液槽59内の上方に電源55に配線54を介して接続された超音波振動板53が配設されている。
液槽59の底板50にはインゴットIが載置されるテーブル56が配設されており、テーブル56は、テーブル昇降手段58によってZ軸方向に昇降可能となっている。例えば、テーブル昇降手段58は、底板50にシールリング580及び図示しない軸受を介して昇降自在に挿通されテーブル56の下面に接続された昇降軸581と、昇降軸581を昇降させるモータ等の駆動源582とを備えている。なお、テーブル昇降手段58は、本構成に限定されるものではない。
【0033】
図6に示すように、ウェーハ分離装置5Aは、装置全体の制御を行う制御手段9を備えている。制御手段9は、
図6に示す超音波音圧計1に接続された水深判断手段19及びテーブル昇降手段58に電気的に接続されており、水深判断手段19から制御手段9に情報が送信された後、制御手段9の下で、テーブル昇降手段58によるインゴットIが載置されたテーブル56の昇降動作が制御される。
【0034】
本工程において、インゴットIは、
図6に示すウェーハ分離装置5Aに搬送される。そして、インゴットIは、例えば、テーブル56上に第1の面Iaを上側に向けた状態で載置される。
また、液体供給源570から供給パイプ571に対して液体Lが供給され、液槽59内に液体Lがためられていく。そして、液槽59内に液体Lが所定の水位になるまでためられることで液体供給工程が完了する。また、超音波振動板53の下面側が液体Lに浸漬した状態になる。
【0035】
(2)位置検出工程
位置検出工程においては、超音波音圧計1が液槽59の液体L内に差し入れられて、検知部11が液槽59の底板50の少し上方から液面までZ軸方向に複数並べられた状態になる。また、電源55から超音波振動板53に対して所定出力で高周波電力が供給され、超音波振動板53が所定の振動周波数の超音波を発振し、超音波が液槽59内の液体Lに伝播する。
液体Lに伝播した超音波振動は、-Z方向へ液槽59の底板50側に向かって進み、底板50やインゴットIの第1の面Iaに達した後に全反射して液面に戻ってくる。これにより入射波と反射波とが重なりあって、液体L中に音圧の強い深さと弱い深さとが生じる。なお、超音波の周波数に応じて、液体L中で最も音圧の高い深さは、振動面である超音波振動板53の下面からZ軸方向において一定間隔で存在する。
【0036】
液体L中において、液体Lから各受振プレート113は超音波振動を受けて、超音波振動が各圧電素子112に伝達される。そして、各圧電素子112は音圧に比例した電圧信号を水深判断手段19に送る。そして、各圧電素子112から個別に送られてくる電圧信号を監視している水深判断手段19によって、最も大きな電圧信号を送ってきた圧電素子112の棒10における高さ位置、即ち、液体L中のZ軸方向において最も音圧が大きくなる深さZ2が測定される。なお、液体L中のZ軸方向において最も音圧が大きくなる深さは、1つに限定されるものではなく、複数となる場合もある。
【0037】
(3)分離工程
水深判断手段19は、液体L中のZ軸方向において最も音圧が大きくなる深さZ2についての情報を制御手段9に送信する。
ここで、インゴットIの厚みは既知の情報であり、また、インゴットIの厚み方向(Z軸方向)における剥離層Mの位置も既知の情報である。よって、例えば、テーブル56が原点位置である液槽59の底板50上にある場合におけるインゴットIの剥離層MのZ軸方向における高さ位置についての情報は予め制御手段9により把握されている。そして、制御手段9によるテーブル昇降手段58の制御の下で、テーブル昇降手段58が該原点位置にあるテーブル56を+Z方向に所定距離だけ上昇させる。これによって、位置検出工程で検出した深さZ2に、インゴットIの剥離層Mが位置づけられる。
【0038】
そして、液体L中のZ軸方向において最も音圧が大きくなる深さZ2に位置するインゴットI中の剥離層Mに最も大きな超音波振動が付与され、剥離層Mを境にインゴットIからウェーハWが分離される。
なお、分離工程においてインゴットIを液体L中で例えば上昇させていくことで、液体L中のZ軸方向において最も音圧が大きくなる深さZ2が上方向又は下方向に少しだけ変化する場合もある。この場合には、水深判断手段19から送られてくる情報を下に、制御手段9による制御の下で、位置検出工程で検出した深さZ2にインゴットIの剥離層Mを位置づけた後に、テーブル昇降手段58がさらにテーブル56を該変化に追従できるように上方向又は下方向に少しだけ移動させてもよい。
【0039】
(ウェーハの分離方法の実施形態3)
以下に、本発明に係るウェーハの分離方法(実施形態3のウェーハの分離方法とする。)を実施して、
図7に示すインゴットIの端面(第1の面Ia)から生成すべきウェーハの厚みTに相当する位置に面状に剥離層Mを形成したインゴットIからウェーハを分離する場合の各工程について説明する。本実施形態におけるウェーハの分離方法においては、下記に示す(1)液体供給工程、(2)位置検出工程、及び(3)分離工程が例えば並行して行われる。
【0040】
(1)液体供給工程
本実施形態においては、インゴットIは、例えば、
図7に示すウェーハ分離装置5Bに搬送される。
図7に示すウェーハ分離装置5Bは、
図6に示すウェーハ分離装置5Aの構成の一部を変更したものであり、ウェーハ分離装置5Aと異なり
図6に示すテーブル56及びテーブル昇降手段58を備えない構成となっている。
図7に示すように、ウェーハ分離装置5Bは、装置全体の制御を行う制御手段9を備えている。制御手段9は、例えば、
図7に示す超音波音圧計1に接続された水深判断手段19及び液体供給手段57の開閉バルブ572(例えば、電磁弁)に電気的に接続されており、水深判断手段19から制御手段9に情報が送信された後、制御手段9の下で、開閉バルブ572の開閉動作が制御される。
【0041】
インゴットIは、例えば、液槽59の底板50上に第1の面Iaを上側に向けた状態で載置される。また、超音波音圧計1が液槽59の液体L内に差し入れられて、検知部11が液槽59の底板50の少し上方から液面までZ軸方向に複数並べられた状態になる。ここで、インゴットIの厚みは既知の情報であり、また、インゴットIの厚み方向(Z軸方向)における剥離層Mの位置も既知の情報である。そして、底板50上に載置されたインゴットIの剥離層MのZ軸方向における高さ位置についての情報、及びインゴットIの剥離層MのZ軸方向における高さ位置に対応する超音波音圧計1の圧電素子112の深さ位置Z3についての情報が予め制御手段9に記憶される。
【0042】
そして、制御手段9による制御の下で、液体供給手段57の開閉バルブ572が開状態になり、液体供給源570から供給パイプ571に対して液体L(水)が供給され、液槽59内に液体Lがためられていく。
【0043】
(2)位置検出工程
電源55から超音波振動板53に対して所定出力で高周波電力が供給され、超音波振動板53が所定の振動周波数の超音波を発振し、超音波が液槽59内の液体Lに伝播する。そして、液体L中において入射波と反射波とが重なりあって、液体L中に音圧の強い深さと弱い深さとが生じる。
【0044】
液体L中において、超音波振動が各受振プレート113を介して各圧電素子112に伝達される。そして、各圧電素子112は音圧に比例した電圧信号を水深判断手段19に送る。水深判断手段19は、例えば、各圧電素子112中で深さ位置Z3に位置する圧電素子112から送られてくる電圧信号の監視を開始する。
【0045】
(3)分離工程
液体供給源570から供給パイプ571に対して液体Lが供給され、液槽59内に液体Lがためられていき液面が上昇していく。そして、水深判断手段19は、監視している深さ位置Z3に位置する圧電素子112から送られてくる電圧信号が最大になったならば、該圧電素子112が受振した超音波の音圧が最も大きくなった旨の情報を制御手段9に通知する。
そして、制御手段9による制御の下で、液体供給手段57の開閉バルブ572が閉じられる。これによって、液体L中のZ軸方向において最も音圧が大きくなる深さZ3に、インゴットIの剥離層Mが位置づけられた状態になる。
なお、例えば上記のように各工程を実施した後に液体L中における最大の音圧となる深さが分かっていないときは、一度液槽59内に液体Lを満たしてから液体Lの供給を止めた後、
図7に示す排液バルブ591を開けて液槽59の排液口590から排液をしつつ、液体L供給時に取得した測定データも使用する等して超音波音圧計1によって最大の音圧になる水深を測定し、最大の音圧になる水深にインゴットIの剥離層Mを位置づけてもよい。
【0046】
そして、液体L中のZ軸方向において最も音圧が大きくなる深さZ3に位置するインゴットI中の剥離層Mに最も大きな超音波振動が付与され、剥離層Mを境にインゴットIからウェーハWが分離される。
【0047】
(ウェーハの分離方法の実施形態4)
以下に、本発明に係るウェーハの分離方法(実施形態4のウェーハの分離方法とする。)を実施して、
図8に示すインゴットIの端面(第1の面Ia)から生成すべきウェーハの厚みTに相当する位置に面状に剥離層Mを形成したインゴットIからウェーハを分離する場合の各工程について説明する。
【0048】
(1)液体供給工程
本実施形態においては、インゴットIは、例えば、
図8に示すウェーハ分離装置5Cに搬送される。また、液体供給源570から供給パイプ571に対して液体L(水)が供給され、液槽59内に液体Lがためられていく。そして、液槽59内に液体Lが所定の水位になるまでためられることで液体供給工程が完了する。
【0049】
(2)位置検出工程
本実施形態においては、
図8に示す超音波音圧計2を用いて液体Lの深さ方向(Z軸方向)において最も大きい音圧となる深さが検出される。超音波音圧計2は、Z軸方向に延在する棒状の本体部20の末端に検知部21を備えている。
【0050】
本体部20の底面は上方に向かって段階的に切り欠かれており、例えば環状に形成された振動絶縁体211が嵌合する第1の部屋201と、第1の部屋201よりも本体部20内部のより上方に位置し圧電素子212が伸縮できる余裕のある大きさの第2の部屋202とが形成されている。
【0051】
第1の部屋201に嵌合する環状の振動絶縁体211は図示しない接着部材等で本体部20に固定されており、その内側の開口には、例えば板状に形成された受振プレート213がはめ込まれる形で接着固定されている。
【0052】
第2の部屋202に収納された圧電素子212は、受振プレート213に接着固定されており、受振プレート213を介して振動絶縁体211に支持されている。圧電素子212には配線22が電気的に接続されている。また、配線22は、圧電素子から送られる電圧信号に基づいて超音波振動が最も大きくなる水深を判断する電圧監視手段29に繋がっている。
【0053】
超音波音圧計2は、例えば、電動シリンダー又はモータ及びボールネジ等からなる機構を備える超音波音圧計昇降手段27によってZ軸方向に昇降可能となっている。
【0054】
ウェーハ分離装置5Cは、実施形態1において説明したインゴットIを保持するインゴット保持手段60と、インゴット保持手段60を鉛直方向(Z軸方向)に昇降させる昇降手段61とを備えており、また、装置全体の制御を行う制御手段9を備えている。そして、制御手段9は、電圧監視手段29、超音波音圧計昇降手段27、及び昇降手段61に電気的に接続されている。
【0055】
位置検出工程においては、電源55から超音波振動板53に対して、高周波電力が供給されて、超音波振動板53が所定の振動周波数の超音波を発振し、発振された超音波が液槽59の底板50を介して液体Lに伝播する。そして、液面へ向かう超音波(入射波)と液面から反射して底板50側に戻ってくる超音波(反射波)とが重なりあって、液体L中に音圧の強い深さと弱い深さとが生じる。
【0056】
例えば、超音波音圧計2が超音波音圧計昇降手段27により-Z方向へと送られ、制御手段9による超音波音圧計昇降手段27の制御の下で、検知部21が液槽59内の液体Lの液面の高さに位置づけられる。この状態から、制御手段9による超音波音圧計昇降手段27の制御の下で、超音波音圧計昇降手段27が超音波音圧計2をさらに-Z方向に下降させて、検知部21を液体L内に沈めていく。また、制御手段9により検知部21の液面からの下降量がカウントされる。
【0057】
液体L中において、液体Lから受振プレート213は超音波振動を受けて、超音波振動がさらに圧電素子212に伝達される。そして、下降する圧電素子212は音圧に比例した電気出力を取り出し電圧に変換し、配線22を通して該電圧信号を電圧監視手段29に順次送る。圧電素子212から送られてくる電圧信号を監視している電圧監視手段29は、圧電素子212から送られてくる電圧信号が最大になったならば、圧電素子212が受振した超音波の音圧が最も大きくなった旨の情報を制御手段9に通知する。
【0058】
超音波音圧計昇降手段27を制御する制御手段9は、例えば、圧電素子212が受振した超音波の音圧が最も大きくなった時点における液体L中の検知部21の液面からの深さZ4を把握する。
【0059】
(3)分離工程
次いで、
図9に示すように、インゴットIを保持するインゴット保持手段60が昇降手段61により-Z方向へと送られ、制御手段9による昇降手段61の制御の下で、インゴットIの第1の面Iaが液面の高さに位置づけられる。この状態から、制御手段9による昇降手段61の制御の下で、昇降手段61がインゴット保持手段60をさらに-Z方向に、深さZ4に生成すべきウェーハの厚みTを加えた距離だけ下降させる。これによって、位置検出工程で検出した深さZ4に、インゴットIの剥離層Mが位置づけられる。
【0060】
これによって、液体L中のZ軸方向において最も音圧が大きくなる深さZ4に位置するインゴットI中の剥離層Mに最も大きな超音波振動が付与され、剥離層Mを境にインゴットIからウェーハWが分離される。
なお、分離工程においてインゴットIを液体L中で下降させていくことで、液体L中のZ軸方向において最も音圧が大きくなる深さZ4が上方向又は下方向に少しだけ変化する場合もある。この場合には、電圧監視手段29から送られてくる情報を下に、制御手段9による制御の下で、位置検出工程で検出した深さZ4にインゴットIの剥離層Mを位置付けた後に、昇降手段61がさらにインゴット保持手段60を該変化に追従できるように上方向又は下方向に少しだけ移動させてもよい。
【0061】
(ウェーハの分離方法の実施形態5)
以下に、本発明に係るウェーハの分離方法(実施形態5のウェーハの分離方法とする。)を実施して、
図10に示すインゴットIの端面(第1の面Ia)から生成すべきウェーハの厚みTに相当する位置に面状に剥離層Mを形成したインゴットIからウェーハを分離する場合の各工程について説明する。
【0062】
(1)準備工程
インゴットIは、例えば、
図10に示すウェーハ分離装置5Dに搬送され、液槽59の底板50上に第1の面Iaを上側に向けた状態、即ち、剥離層M側を上側にした状態で載置される。ウェーハ分離装置5Dは、
図3に示すウェーハ分離装置5の構成の一部を変更したものである。
【0063】
さらに、インゴットIの第1の面Ia(上面)に、圧電素子112を備える検知部11が配設される。検知部11は、実施形態1において説明した
図3に示すものと同一のものである。検知部11は、振動絶縁体111側を下にしてインゴットIの第1の面Iaに配設される。
【0064】
検知部11の圧電素子112には配線12が電気的に接続されている。また、配線12は、超音波振動が最も大きくなる水深を判断する電圧監視手段29に繋がっている。
図10に示すように、ウェーハ分離装置5Dは、装置全体の制御を行う制御手段9を備えている。制御手段9は、例えば、
図10に示す検知部11に接続された電圧監視手段29及び液体供給手段57の開閉バルブ572(例えば、電磁弁)に電気的に接続されており、電圧監視手段29から制御手段9に情報が送信された後、制御手段9の下で、開閉バルブ572の開閉動作が制御される。
【0065】
(2)液体供給工程
該準備工程の後、
図11に示すように、制御手段9による制御の下で、液体供給手段57の開閉バルブ572が開状態になり、液体供給源570から供給パイプ571に対して液体L(水)が供給され、液槽59内に液体Lがためられていく。
また、電源55から超音波振動板53に対して所定出力で高周波電力が供給され、超音波振動板53が所定の振動周波数の超音波を発振し、超音波が液槽59内の液体Lに伝播する。そして、液体L中において入射波と反射波とが重なりあって、液体L中に音圧の強い深さと弱い深さとが生じる。
【0066】
液体L中において、超音波振動が受振プレート113を介して圧電素子112に伝達される。そして、圧電素子112は音圧に比例した電圧信号を電圧監視手段29に送り、電圧監視手段29は圧電素子112から送られてくる電圧信号の監視を開始する。
液体供給源570から供給パイプ571に対して液体Lが供給され、液槽59内に液体Lがためられていき液面が上昇していくことで、インゴットI上の浸漬した圧電素子112が受振した超音波の音圧が最も大きくなる。そして、電圧監視手段29は、圧電素子112から送られてくる電圧信号が最大になったならば、圧電素子112が受振した超音波の音圧が最も大きくなった旨の情報を制御手段9に通知する。
【0067】
そして、制御手段9による制御の下で、液体供給手段57の開閉バルブ572が閉じられる。これによって、液体L中のZ軸方向において最も音圧が大きくなる深さZ5に、インゴットIの剥離層Mが位置づけられる。なお、インゴットIの剥離層Mの高さ位置と圧電素子112の深さ位置とは、
図11においては若干の差があるように図示しているが、ウェーハの厚みTは例えば1000μmと非常に薄いため、該差は無視できる程度の非常に小さな差である。
なお、例えば上記のように各工程を実施した後に液体L中における最大の音圧となる深さが分かっていないときは、一度液槽59内に液体Lを満たしてから液体Lの供給を止めた後、
図11に示す排液バルブ591を開けて液槽59の排液口590から排液をしつつ、液体L供給時に取得した測定データも使用する等して検知部11によって最大の音圧になる水深を測定し、最大の音圧になる水深にインゴットIの剥離層Mを位置づけてもよい。
【0068】
(3)分離工程
上記液体供給工程が実施されることで、液体L中のZ軸方向において最も音圧が大きくなる深さZ5に位置するインゴットI中の剥離層Mに最も大きな超音波振動が付与され、剥離層Mを境にインゴットIからウェーハWが分離される。
【0069】
本発明に係るウェーハの分離方法は上述の実施形態1~5に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。また、添付図面に図示されている各ウェーハ分離装置、及び各超音波音圧計等の構成についても、これに限定されず、本発明の効果を発揮できる範囲内で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0070】
I:インゴット Ia:インゴットの第1の面 Ib:インゴットの第2の面 M:剥離層
30:レーザビーム照射ヘッド 31:チャックテーブル
5:ウェーハ分離装置 59:液槽 50:底板 51:側壁 53:超音波振動板
55:電源 57:液体供給手段 571:供給パイプ 570:液体供給源 572:開閉バルブ
1:超音波音圧計 10:棒 10a:棒の側面 12:配線
11:検知部 111:振動絶縁体 112:圧電素子 113:受振プレート
19:水深判断手段
1A:超音波音圧計 15:検知部 114:第1の部屋 115:第2の部屋
116:振動絶縁体
60:インゴット保持手段 600:吸引パッド 601:アーム部 61:昇降手段
9:制御手段
5A:ウェーハ分離装置 56:テーブル 58:テーブル昇降手段
5B:ウェーハ分離装置
5C:ウェーハ分離装置 2:超音波音圧計 20:本体部 21:検知部
22:配線 29:電圧監視手段 27:超音波音圧計昇降手段
5D:ウェーハ分離装置