(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】気化装置及び気化システム
(51)【国際特許分類】
B01J 7/00 20060101AFI20220928BHJP
【FI】
B01J7/00 Z
(21)【出願番号】P 2019512396
(86)(22)【出願日】2018-03-16
(86)【国際出願番号】 JP2018010421
(87)【国際公開番号】W WO2018190074
(87)【国際公開日】2018-10-18
【審査請求日】2021-02-16
(31)【優先権主張番号】P 2017079895
(32)【優先日】2017-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000127961
【氏名又は名称】株式会社堀場エステック
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【氏名又は名称】齊藤 真大
(72)【発明者】
【氏名】田口 明広
(72)【発明者】
【氏名】姜山 亮一
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-046631(JP,A)
【文献】特開昭64-083663(JP,A)
【文献】特開2014-007289(JP,A)
【文献】特開平11-005157(JP,A)
【文献】特開2006-045637(JP,A)
【文献】特開昭64-083666(JP,A)
【文献】特開平08-227848(JP,A)
【文献】特開2009-022905(JP,A)
【文献】実開昭61-135245(JP,U)
【文献】実開昭63-201691(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 7/00- 7/02
B01J 19/00-19/32
C23C 16/00-16/56
H01L 21/00-21/16
G01F 23/00-23/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気化装置と、
前記気化装置に液体材料を供給する液体材料供給装置と、
前記液体材料の供給量を制御する制御装置とを具備する気化システムであって、
前記気化装置が、
液体材料を収容する容器と、
前記容器内の前記液体材料を加熱するヒータと、
前記容器内の前記液体材料の液面を検出する液面センサとを具備し、
前記容器内を上方から視て、前記液体材料が気化される気化領域と、液面安定領域と
が仕切部材により仕切られており、
前記液面センサが、前記液面安定領域における前記液体材料の液面を検出するものであり、
前記液体材料供給装置から供給される前記液体材料を前記容器内に導入する導入口が、前記容器の
前記仕切部材よりも前記液面安定領域側であって、前記容器の側壁の下端部又は前記容器の底壁に形成されており、
前記制御装置が、前記液面センサの検出信号に基づいて、前記液体材料の供給量を制御する気化システム。
【請求項2】
前記ヒータが、前記容器の前記気化領域側の側壁又はその近傍に設けられている請求項1記載の気化システム。
【請求項3】
前記仕切部材が、前記気化領域及び前記液面安定領域を、これらの領域間で前記液体材料が気化されてなる材料ガスを流通可能に仕切る請求項
1記載の気化システム。
【請求項4】
単位体積当たりの単位時間当たりに与えられる熱量が、前記気化領域よりも前記液面安定領域の方が少ないように構成されている請求項1記載の気化システム。
【請求項5】
前記容器の上部に設けられて、前記液体材料が気化されてなる材料ガスを加熱するヒータを具備する請求項1記載の気化システム。
【請求項6】
前記液体材料が気化されてなる材料ガスを前記容器から導出する導出口が、前記容器の前記気化領域側に設けられている請求項1記載の気化システム。
【請求項7】
前記導入口が、前記容器の側壁の中央よりも下方に位置している、請求項1記載の気化システム。
【請求項8】
前記導入口が、前記容器に収容されている液体材料の液面よりも下方に位置している、請求項1記載の気化システム。
【請求項9】
前記導入口が、前記液面センサの下端部よりも下方に位置している、請求項1記載の気化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体材料を気化する気化装置及びこの気化装置を用いた気化システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の気化装置としては、特許文献1に示すように、液体材料が導入される容器と、容器内の液体材料を加熱するヒータとを備え、液体材料を加熱して気化させ、その気化したガスを容器から導出して種々の機器に導くように構成されたものがある。
【0003】
この気化装置は、容器内の液体材料の残量をチェックできるようにすべく、容器内に挿通させた液面センサをさらに具備している。
【0004】
ところが、容器内には液体材料を気化させることによるバブリングが生じるので、液面が揺れたり、液面から飛散した液体材料が液面センサに付着するなどして、液面を正しく検出することができないという問題がある。かかる問題は、気化装置の小型化に伴いより顕著になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、上記問題点を解決すべくなされたものであって、容器内の液体材料の液面を精度良く検出することができる気化装置を提供することをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明の気化装置は、液体材料を収容する容器と、前記容器内の前記液体材料を加熱するヒータと、前記容器内の前記液体材料の液面を検出する液面センサとを具備し、前記容器内を上方から視て、前記液体材料が気化される気化領域と、液面安定領域とが形成されており、前記液面センサが、前記液面安定領域における前記液体材料の液面を検出することを特徴とするものである。
【0008】
このように構成された気化装置であれば、容器内を上方から視て、気化領域と液面安定領域とが形成されており、液面センサによって液面安定領域における液面を検出しているので、容器内の液体材料の液面を精度良く検出することができる。
なお、ここでいう液面安定領域は、液面が全く揺れていない領域には限られず、液面センサによる検出精度が従来よりも向上できる程度であれば液面が揺れていても構わない。
【0009】
より具体的な実施態様としては、前記ヒータが、前記容器の側壁の一部又はその近傍に設けられている構成が挙げられる。
このような構成であれば、容器内においてヒータが配置されている側を積極的に加熱することができ、ヒータ側に気化領域を形成するとともに、ヒータの反対側に液面安定領域を形成することができる。その結果、気化領域の液面で生じた揺れを液面安定領域に到達するまでに低減させることができたり、気化領域の液面から飛散した液体材料を液面センサに到達させないようにすることができたりするので、液体材料の液面を精度良く検出することが可能になる。
【0010】
前記気化領域及び前記液面安定領域を、これらの領域間で前記液体材料を流通可能に仕切る仕切部材をさらに具備することが好ましい。
このような構成であれば、気化領域の液面の揺れや気化領域の液面から飛散した液体材料が液面安定領域に到達してしまうことを仕切部材によってより確実に防ぐことができる。
【0011】
気化領域及び液面安定領域の液面を同じ高さに保つためには、前記仕切部材が、前記気化領域及び前記液面安定領域を、これらの領域間で前記液体材料が気化されてなる材料ガスを流通可能に仕切ることが好ましい。
【0012】
容器内に気化領域と液面安定領域とを形成するための具体的な実施態様としては、単位体積当たりの単位時間当たりに与えられる熱量が、前記気化領域よりも前記液面安定領域の方が少ないように構成されたものが挙げられる。
【0013】
ところで、液体材料が気化されてなる材料ガスが容器内で凝縮して液化すると、液体材料が材料ガスとともに容器から導出されてしまい、例えば材料ガスの流量などを精度良く制御することができなくなる恐れがある。
そこで、材料ガスの液化を抑えるためには、前記容器の上部に設けられて、前記液体材料が気化されてなる材料ガスを加熱するヒータを具備することが好ましい。
【0014】
仮に材料ガスが容器内で液化したとしても、その液化した液体材料が材料ガスとともに容器から導出されることを防ぐためには、前記液体材料が気化されてなる材料ガスを前記容器から導出する導出口が、前記容器の前記気化領域側に設けられていることが好ましい。
【0015】
気化領域に液体材料を導入する構成であると、導入された液体材料が一挙に気化されて容器内の圧力が急激に上昇してしまい、例えば材料ガスの流量を精度良く制御することができなくなる恐れがある。
そこで、容器内の急激な圧力上昇を避けるためには、前記液体材料を前記容器内に導入する導入口が、前記容器の前記液面安定領域側に形成されていることが好ましい。
【0016】
また、本発明に係る気化システムは、上述した気化装置と、前記気化装置に前記液体材料を供給する液体材料供給装置と、前記液面センサの検出信号に基づいて、前記液体材料の供給量を制御する制御装置とを具備することを特徴とするものである。
このような気化システムであれば、液面センサによって液体材料の液面を精度良く検出することができるので、制御装置による液体材料の供給量の制御を向上させることができる。
【発明の効果】
【0017】
このように構成した本発明によれば、仮に小型な装置であってとしても、容器内の液体材料の液面を精度良く検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態の気化システムの構成を模式的に示す図。
【
図2】同実施形態の気化装置の構成を模式的に示す図。
【
図3】同実施形態の気化装置を液面の面方向から視た図。
【
図4】その他の実施形態の気化装置を液面の面方向から視た図。
【
図5】その他の実施形態における気化装置の構成を模式的に示す図。
【
図6】その他の実施形態における気化装置の構成を模式的に示す図。
【
図7】その他の実施形態における気化装置の構成を模式的に示す図。
【符号の説明】
【0019】
100・・・気化装置
X ・・・液体材料
10 ・・・容器
20 ・・・液面センサ
30 ・・・ヒータ
P1 ・・・導入口
P2 ・・・導出口
11 ・・・側壁
S1 ・・・気化領域
S2 ・・・液面安定領域
40 ・・・仕切部材
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明に係る気化装置の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0021】
本実施形態の気化装置100は、例えば半導体等の製造工程に用いられる気化システムZの一部を構成するものであり、
図1に示すように、液体材料供給装置200からの液体材料Xが導入路L1を介して供給され、その液体材料Xを気化して材料ガスを生成する。気化装置100によって生成された材料ガスは、
図1に示すように、導出路L2を介して対象機器へ送られる。
【0022】
導入路L1及び導出路L2には、それぞれ開閉弁V1、V2が設けられており、これらの開閉弁V1、V2を適宜状況に合わせて開閉することで、例えば気化装置100に液体材料Xを導入するか、又は、気化装置100から材料ガスを導出するかのいずれか一方に切り替えられるようにしてある。なお、開閉弁V1、V2の両方を開くこともできるし、両方を閉じることもできる。
具体的には、気化装置100内の液体材料Xの液面を後述する液面センサ20が検出して、その検出信号に基づいて図示しない制御装置が導入路L1に設けられた開閉弁V1の開度を調整することで、液体材料Xの供給量を制御できるようにしてある。
また、導出路L2には、例えば差圧式又は熱式のマスフローコントローラ等の流量制御装置MFCが設けられており、導出路L2を流れる材料ガスの流量を例えば予め設定した目標流量に制御できるようにしてある。なお、流量制御装置MFCを構成する制御弁に上述した開閉弁V2としての機能を備えさせることができ、その場合は必ずしも開閉弁V2を設ける必要はない。
【0023】
本実施形態の気化装置100は、
図2に示すように、液体材料Xを収容する容器10と、容器10内の液体材料Xの液面を検出する液面センサ20と、容器10内の液体材料Xを加熱するヒータ30とを具備している。
【0024】
容器10は、内部が液体材料Xを気化する気化室Sとして形成された例えば筐体形状をなすものである。ここでの容器10は、縦長の縦置きタイプのものであり、上述した導入路L1が接続される導入口P1と、上述した導出路L2が接続される導出口P2とが形成されている。
【0025】
導入口P1は、容器10の下部に位置しており、具体的には容器10の側壁11の下端部に形成されている。なお、導入口P1は容器10の底壁12に形成されていても良いし、容器10の上部に設けられていても良い。
【0026】
導出口P2は、容器10の上部に位置しており、具体的には容器10の側壁11の上端部に形成されている。なお、導出口P2は容器10の上壁13に形成されていても良い。
【0027】
液面センサ20は、センサ部(不図示)が液体材料Xと接触した状態で液面を検出する接触式のものや、センサ部が液体材料Xと非接触な状態で液面を検出する非接触式のもの、或いは、フロート式のように可動部を有するものや、電極式のように可動部を有していないものなど、種々のものを用いることができる。ただし、可動部を有していると、容器10内でパーティクルが生じる恐れがあることから、ここでは可動部を有していない液面センサ20を用いている。
具体的にこの液面センサ20は、容器10の上壁13に設けられた挿通孔から容器10内に挿通された接触式のものであり、サーミスタ等の測温抵抗体(不図示)を備え、液相と気相とで熱放散定数が異なることを利用して液面を検出できるように構成されている。
【0028】
ヒータ30は、カートリッジヒータや電熱線ヒータを利用したものなど、種々のものを用いることができ、ここでは例えばシリコン等で構成されたラバーヒータである。なお、ヒータ30の詳細な配置については、後述する。
【0029】
然して、本実施形態の気化装置100は、
図3に示すように、容器10内を上方(
図2の矢印Rの方向)から視て(すなわち、容器10内で安定している液面の面方向から視て)、容器10内に液体材料Xが気化する気化領域S1と、前記気化領域S1とは異なり液面が安定的な液面安定領域S2とが形成されるように構成されており、上述した液面センサ20が液面安定領域S2における液面を検出するように配置されている。なお、気化領域S1及び液面安定領域S2は、厳密に区別される領域である必要はなく、これらの領域S1、S2が連続して形成されている場合など、境界部分において気化領域S1と液面安定領域S2との一部が重なり合っていても構わない。
【0030】
気化領域S1は、容器10内において上述したヒータ30が設けられている側の領域であり、液体材料Xを積極的に加熱する領域である。ここでの気化領域S1は、液面安定領域S2よりも単位体積当たりの単位時間当たりに与えられる熱量が多い領域であり、大小様々な気泡が発生している。
【0031】
一方、液面安定領域S2は、容器10内において上述した液面センサ20が設けられている側の領域であり、気化領域S1よりも液面の変動が小さい領域である。ここでの液面安定領域S2は、気化領域S1よりも低温な領域であるが、容器10が小型な場合などは液面安定領域S2と気化領域S1との温度がほぼ同じになることもある。なお、液面安定領域S2は、液面が全く揺れていない領域である必要はなく、液面センサ20の検出精度を従来よりも向上させることができる程度であれば、液面が揺れていても良いし、気泡が発生していても良いし、液体材料Xが気化されていても良い。
【0032】
本実施形態の気化領域S1及び液面安定領域S2は、
図2及び
図3に示すように、上述したヒータ30の配置によって形成されており、ここではさらに気化領域S1及び液面安定領域S2を仕切る仕切部材40を気化装置100に備えさせている。
【0033】
より具体的に説明すると、ヒータ30は、気化室Sの全体を取り囲むことなく、気化室Sの一部の周囲に設けられている。これにより、気化室Sにおいてヒータ30から近く伝熱量が多い領域が気化領域S1となり、ヒータ30から遠く伝熱量が少ない領域が液面安定領域S2となる。
ここでのヒータ30は、容器10の側壁11の一部に設けられており、液体材料Xを部分的に加熱するように配置されている。なおヒータ30は、必ずしも側壁11に設けられている必要はなく、側壁11の近傍に設けられていても構わないし、液体材料Xを気化できる程度であれば側壁11から離れていても構わない。すなわち、ヒータ30は、側壁11と一体的に設けられていても良いし、側壁11とは別体として形成されて側壁11から離れて設けられていても良い。
【0034】
本実施形態の容器10は、直方体形状をなし、
図3に示すように、互いに対向する第1の側壁111及び第2の側壁112と、これらの間に介在して互いに対向する第3の側壁113を第4の側壁114とを有している。そこで本実施形態では、ヒータ30を第1の側壁111に設けることなく、第2の側壁112に設けてある。ヒータ30を第3の側壁113や第4の側壁114に設けるか否かは適宜選択して構わないが、設ける場合には、第3の側壁113や第4の側壁114の少なくとも第1の側壁111側には設けることなく、第2の側壁112側に設けておくことが好ましい。
【0035】
本実施形態では、
図2に示すように、上述のヒータ30(以下、第1ヒータ31ともいう)に加えて、液体材料Xが気化した材料ガスを加熱する第2ヒータ32を容器10の上部に設けてあり、液体材料Xの気化の高効率化を図るための第3ヒータ33を容器10の下部に設けてある。
なお、第1ヒータ31、第2ヒータ32及び第3ヒータ33は、それぞれ別体のものであっても良いし、一部又は全部が一体に形成されたものであっても良い。
【0036】
第2ヒータ32は、材料ガスの液化を抑えるものであり、容器10の上壁13における少なくとも気化領域S1側に設けられている。なお、第2ヒータ32は、上壁13における気化領域S1側から液面安定領域S2側に亘って設けられていても良いし、上壁13から第1の側壁111の上部に亘って設けられていても良い。また、第2ヒータ32は、必ずしも上壁13に設けられている必要はなく、上壁13の近傍に設けられていても構わないし、材料ガスの液化を抑えることができる程度であれば上壁13から離れていても構わない。
【0037】
第3ヒータ33は、液体材料Xを加熱するものであり、容器10の底壁12における気化領域S1側に設けられている。なお第3ヒータ33は、必ずしも底壁12に設けられている必要はなく、底壁12の近傍に設けられていても構わないし、液体材料Xを加熱できる程度であれば底壁12から離れていても構わない。
【0038】
仕切部材40は、
図2及び
図3に示すように、容器10内において気化領域S1及び液面安定領域S2の間に介在するものであり、気化領域S1及び液面安定領域S2の間で液体材料Xを流通可能にするとともに、ここでは材料ガスをも気化領域S1及び液面安定領域S2の間で流通可能にしている。
【0039】
具体的に仕切部材40は、第1の側壁111や第2の側壁112と略平行に設けられたものであり、ここでは第3の側壁113と第4の側壁114との間に亘って設けられた例えば矩形状の平板である。この仕切部材40は、気化領域S1及び液面安定領域S2の容積が互いに略同じになるようにこれらの領域S1、S2を仕切っている。なお、仕切部材40の形状や配置、仕切部材40によって仕切られる気化領域S1及び液面安定領域S2の容積比等は適宜変更して構わない。
【0040】
本実施形態では、仕切部材40の下端を底壁12から離間させて、この隙間を介して液体材料Xを流通可能にするとともに、仕切部材40の上端を上壁13から離間させて、この隙間を介して材料ガスを連通可能にしている。言い換えると、仕切部材40の下端及び底壁12の隙間によって気化領域S1の液相及び液面安定領域S2の液相が連通するとともに、仕切部材40の上端及び上壁13の隙間によって気化領域S1の気相及び液面安定領域S2の気相が連通している。なお、ここでいう液相とは液体が存在する領域のことであり、気相とは気体が存在する領域のことである。
【0041】
ここでは液面安定領域S2に上述した液面センサ20が設けられており、具体的には液面センサ20の下端が仕切部材40の上端よりも下方に位置するように配置されている。また、液面安定領域S2には、上述した導入口P1が設けられており、ここでは第1ヒータ31と対向した位置、すなわち第1の側壁111に導入口P1を形成してある。
一方、気化領域S1には、上述した導出口P2が設けられており、ここでは第2の側壁112における第1ヒータ31の上方に形成されている。
【0042】
このように構成された本実施形態に係る気化装置100によれば、ヒータ30の配置や仕切部材40によって、気化室Sを気化領域S1と液面安定領域S2とに仕切るとともに、液面センサ20が液面安定領域S2における液面を検出するように構成してあるので、気化領域S1で生じたバブリングによる液面の揺れが液面安定領域S2に到達してしまうことや、気化領域S1における液面から飛散した液体材料Xを液面センサ20に付着してしまうことを防ぐことができる。
その結果、液面センサ20によって液体材料Xの液面を精度良く検出することが可能となり、検出された液面高さに基づいて例えば液体材料Xの供給量を精度良く制御することができたり、容器10内の液体材料Xの残量を精度良く把握することができたりするようになる。かかる作用効果は、気化装置100が小型化するほどより顕著に発揮されるが、大型の気化装置100であっても同様の作用効果が得られることはいうまでもない。
【0043】
また、材料ガスが気化領域S1及び液面安定領域S2の間で通過可能であるので、気化領域S1における気相と液面安定領域S2における気相との圧力はほぼ同じになり、気化領域S1及び液面安定領域S2の液面をほぼ同じ高さに保つことができる。
【0044】
さらに、第2ヒータ32によって材料ガスを加熱しているので、材料ガスの液化を抑えることができる。そのうえ、導出口P2を気化領域S1に形成しているので、仮に材料ガスが液化したとしても、液化した液体材料Xが容器10から導出されてしまうことを防ぐことができ、例えばマスフローコントローラ等による流量制御の精度を担保できる。
【0045】
加えて、導入口P1が液面安定領域S2に形成されているので、導入口P1から容器10内に導入された液体材料Xが一挙に気化されてしまうことを防ぐことができ、容器10内の急激な圧力上昇を防ぐことができる。
【0046】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0047】
例えば、前記実施形態では、第2の側壁112にヒータ30を設けていたが、ヒータ30は第2の側壁112に設けられることなく、底壁12における気化領域S1側、すなわち底壁12における仕切部材40よりも第1の側壁111側(第1の側壁111の近傍)に設けられていても良い。つまり、第1実施形態における第1ヒータ31を設けることなく、第3ヒータ33を設けた構成であっても良い。
【0048】
さらに気化装置100としては、容器10の側壁11の全周(つまり、第1の側壁111、第2の側壁112、第3の側壁113、及び第4の側壁114)にヒータ30を設ける、或いは、容器10の底壁12の全体にヒータ30を設ける構成であっても、気化領域S1よりも液面安定領域S2が低温になるように構成されていれば良い。
具体的には、ヒータ30が、気化領域S1に対する加熱能力よりも、液面安定領域S2に対する加熱能力の方が低くなるように構成されたものや、液面安定領域S2に冷却機構を設ける構成などが挙げられる。
【0049】
また、仕切部材40は、第3の側壁113及び第4の側壁114に亘っている必要はなく、
図4に示すように、第3の側壁113と第4の側壁114の一方又は両方から離間するように例えば底壁12に取り付けられていても良い。
【0050】
さらに、前記実施形態の仕切部材40は、気化領域S1及び液面安定領域S2の間で材料ガスを流通可能にしつつ、気化領域S1及び液面安定領域S2を仕切っていたが、例えば液面安定領域S2の気相を大気開放するなどすれば、材料ガスが気化領域S1及び液面安定領域S2の間で流通不能であっても良い。
【0051】
さらに、導入口P1は、
図4に示すように、気化領域S1側に形成されていても良く、例えば第2の側壁112や、第3の側壁113又は第4の側壁114における気化領域S1側に形成されていても良い。
このような構成であれば、液体材料Xが液面安定領域S2に直接導入されないので、液体材料Xの導入によって液面安定領域S2の液面が揺れてしまうことを抑えることができる。
【0052】
一方、導出口P2は、
図4に示すように、液面安定領域S2側に形成されていても良く、例えば第1の側壁111の上端部や、第3の側壁113又は第4の側壁114における液面安定領域S2側の上端部に形成されていても良い。
このような構成であれば、導出口P2を気化領域S1の液面から遠ざけることができ、気化領域S1における液面で液体材料Xが飛散したとしても、飛散した液体材料Xが導出口P2に到達してしまうことを抑えることができる。
【0053】
加えて、気化装置100としては、
図5に示すように、内部に気化領域S1が形成された第1容器10Aと、内部に液面安定領域S2が形成されるとともに第1容器10Aと連通する第2容器10Bとを具備し、第2容器10Bに液面センサ20が設けられた構成であっても良い。
【0054】
より具体的に説明すると、第1容器10A及び第2容器10Bは、空間S3を介して互いに離間して配置されており、ここでは管軸方向が互いに平行になるように設けられた管状部材である。
第1容器10Aは、その外周部にヒータ30(ラバーヒータや巻線ヒータ)が設けられており、その上端部が材料ガスを導出する導出口P2に連通している。
第2容器10Bは、その内部に液面センサ20が挿通されており、その下端部が液体材料Xを導入する導入口P1に連通している。
【0055】
これらの第1容器10A及び第2容器10Bは、互いの上端部同士が連通するとともに、互いの下端部同士が連通しており、第1容器10Aの気相及び第2容器10Bの気相が連通するとともに、第1容器10Aの液相及び第2容器10Bの液相が連通するように構成されている。
【0056】
このような構成であれば、第1容器10Aと第2容器10Bとの間に介在する空間S3が仕切部材40として機能するので、仕切部材40を各容器10A、10Bとは別に設けることなく、前記第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0057】
さらに別の実施態様として、
図6に示すように、仕切部材40が第1の側壁111や第2の側壁112に対して傾斜していても良い。具体的にこの仕切部材40は、液面センサ20の下方に設けられており、気化領域S1で生じた気泡が仕切部材40に沿って浮き上がることで、液面センサ20から離れるように配置されている。言い換えると、この気化装置100は、底壁12の第2の側壁112側にヒータ30が設けられており、仕切部材40が第1の側壁111から第2の側壁112に向かって徐々に高くなるように傾斜している。
このような構成であっても、水面の面方方向から視て、容器10内に気化領域S1及び液面安定領域S2を形成することができるので、液面センサ20によって液面安定領域S2における液面を精度良く検出することが可能となる。
【0058】
そのうえ、気化装置100としては、仕切部材40を備えていないものであっても良い。
具体的にこのような気化装置100としては、
図7に示すように、容器10が横長のものであって、その長手方向一端部にヒータ30が設けられるとともに、長手方向他端部に液面センサ20が設けられている構成が挙げられる。かかる構成により、容器10の気化室Sは、長手方向一端部側が気化領域S1として形成されるとともに、長手方向他端部側が液面安定領域S2として形成され、液面センサ20が液面安定領域S2の液面を検出するように配置されている。
このような構成であれば、気化領域S1における液面から飛散した液体材料Xが、液面センサ20に到達してしまうことを防ぐことができ、液体材料Xの液面を精度良く検出することが可能になる。
【0059】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明によれば、容器内の液体材料の液面を精度良く検出することができる。