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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】外径測定装置及びその調整方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 5/08 20060101AFI20220928BHJP
【FI】
G01B5/08
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021045953
(22)【出願日】2021-03-19
(62)【分割の表示】P 2017160776の分割
【原出願日】2017-08-24
(65)【公開番号】P2021092591
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2021-03-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100163533
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 義信
(72)【発明者】
【氏名】池村 幸夫
【審査官】信田 昌男
(56)【参考文献】
【文献】実開平07-012909(JP,U)
【文献】実公昭39-016768(JP,Y1)
【文献】特開平04-285801(JP,A)
【文献】実開昭49-097662(JP,U)
【文献】特開昭61-066101(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 5/00- 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッド本体に測定方向及びリトラクト方向に揺動自在に取り付けられた測定レバーと、該測定レバーに設けられ被測定物に当接する接触子と、前記接触子の変位量を検出する検出器と、を備えた外径測定装置において、
前記被測定物を挟み込んで当接する円柱形状のバーコンタクトとされた前記接触子と、
前記被測定物を挟み込んで当接する前記接触子の平行度を調整する角度調整機構と、
を備え、少なくとも前記被測定物を挟み込んで当接する一方の前記接触子は、前記測定レバーに設けられ、他方は固定されたことを特徴とする外径測定装置。
【請求項2】
前記角度調整機構は前記測定レバーに設けられたことを特徴とする請求項1に記載の外径測定装置。
【請求項3】
前記角度調整機構は、
前記測定レバーに設けられたスリットと、
該スリットに係合するように挿入され締め付け、あるいは緩めることにより、前記スリットの間隔を変化させるボルトと、
を備えたことを特徴とする請求項に記載の外径測定装置。
【請求項4】
前記被測定物を挿入して前記被測定物の姿勢を規制するガイドを備えたことを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の外径測定装置。
【請求項5】
前記被測定物の径が7~10mmで前記ガイドへの前記被測定物の挿入範囲が40~60mmの場合、前記被測定物と前記ガイドとの隙間を片側で180~250μmとしたことを特徴とする請求項に記載の外径測定装置。
【請求項6】
ヘッド本体に測定方向及びリトラクト方向に揺動自在に取り付けられた測定レバーと、
被測定物を挟み込んで当接する円柱形状のバーコンタクトとされた接触子と、前記接触子の変位量を検出する検出器と、を備えた外径測定装置の調整方法であって、
少なくとも前記被測定物を挟み込んで当接する一方の前記接触子は前記測定レバーに設けられ、前記被測定物の基準となるマスタを前記接触子の軸方向の中央にセットして径を測定し、中央から前記接触子の軸方向に前記マスタを移動して径を測定し、測定値の変化に応じて前記接触子の角度を調整し、径の変化が許容値以内となるようにして前記接触子を平行とすることを特徴とする外径測定装置の調整方法。
【請求項7】
少なくとも前記被測定物を挟み込んで当接する一方の前記接触子の角度を調整することを特徴とする請求項に記載の外径測定装置の調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば円柱状のワークの外径等を高精度に測定する接触式の外径測定装置及びその調整方法に関し、特に工作機械等に取り付けて自動測定するのに好適である。
【背景技術】
【0002】
従来、精密部品の寸法測定、抜き取りの比較測定などは、ブロックゲージあるいは専用のマスタを予め製作し、ダイヤルゲージを用いた比較測定により行われている。これらの測定は、マスタとの比較測定を行うため、基本的に測定寸法毎のマスタあるいは測定台を備え、作業者がゲージの値を読み取り、部品寸法が公差内であるかを判断して行われる。また、設計寸法のワークの外径寸法の比較測定をするときは、その寸法のマスタを用いて検出器の零点調整をしなければならない。この零点調整は、被測定物であるワークの寸法が変わるたびに行わなければならず、多大な時間と労力を要していた。
【0003】
さらに、製品の多様化、商品寿命の短期化といった市場の流れに対応する生産設備の手段として加工機のフレキシブル化、自動化については、小中量、大量生産に係らず、加工品質の維持、監視など、インライン計測が必要となる。インライン計測は、加工現場での環境下で信頼性の高い、高精度かつ高能率な測定が必要とされる。また、要求される寸法精度や環境などの条件によって接触式、非接触式のインライン計測機を使い分けている。そして、切粉、切削液、温度変動、機械振動などの影響を十分回避するために、接触子をマスタ、ワークに当接させる接触式の外径測定装置が広く用いられている。
【0004】
インラインでの計測は、加工機の精度、安定性、能率、稼動率などの向上に寄与できるものでなくてはならなく、スクラップと休止時間を低減し、効率を上げるための正確な計測、作業時間削減、を維持しながら計測しなければならない。接触式の外径測定装置としては、零点調整が簡単にでき、小型・シンプルな構造であり、先端部に被測定物に当接される接触子を有する測定レバーを備えた測定ヘッドが知られ、例えば、特許文献1に記載されている。
【0005】
また、高精度の外径測定には、被測定物であるワークの精密な位置決めが必要なこと、ガイドに被測定物を挿入する場合、隙間量が少ないことが必要とされる。そのため、手作業機の場合、搬入出の作業性が悪く、自動機の場合、搬入出設備に精密な位置決め機構、フローティング機構、リリービング機構が必要となる。
【0006】
フローティング機構に関しては、筒状部材に棒状部材を嵌合させる際に、両部材間の相対位置関係が少々不正確でも正確な嵌合が可能なように、挿入側でそのずれを保証して良好な挿入作業を保証することが特許文献2に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2004-109110号公報
【文献】特開平7-96426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1に記載の測定ヘッドにおいて、接触子としては先端が球面又はボールとなったものが用いられる。そして、球面又はボール接触子がワークに当接されるが、測定ヘッドとワークの間には、径方向のクリアランス(ワークを挿入するための隙間)が必要となる。そして、ワークや測定ヘッドを縦置き姿勢にすると、測定時に傾くことがある。この傾きの向きなどにばらつきがあるため、測定精度が不安定になる。
【0009】
また、製造ラインでは、ワークを横置き姿勢(中心軸を水平方向に延ばした状態)にして搬送することが一般的である。このため、ワークの径を測定するときには、測定時に一旦ワークを縦置き姿勢にし、測定後に横置き姿勢に戻している。従って、高精度の外径測定には、被測定物であるワークの精密な位置決めが必要となる。そのため、測定機を構成する部品に高精度が必要となり、コスト高となる。
【0010】
また、ガイドにワークを挿入する場合、高精度に測定するためには、球面又はボール接触子とワークとの隙間量を少なくとも片側20~30μm程度と小さくしなければならない。そのため、測定が手作業機の場合は、搬入出の作業性が悪く、自動機の場合は、搬入出設備に精密な位置決め機構、フローティング機構、リリービング機構が必要となる。ただし、特許文献2に記載のようなフローティング機構は、構造が複雑になり小型化が難しく、かつ部品点数が増加し、コスト増や信頼性の低下を招く恐れがある。
【0011】
本発明の目的は、上記従来技術の課題を解決し、ガイドとワークとの隙間量を比較的に大きくしても高精度で、安定した測定精度、繰り返し精度を確保できるようにして、外径測定時、被測定物であるワークの精密な位置決めを不必要とすることにある。そして、測定機本体のコスト低減、手作業機の搬入出の作業性向上、自動機の搬入出設備の簡素化によるコスト低減を行うことにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成する本発明は、ヘッド本体に測定方向及びリトラクト方向に揺動自在に取り付けられた測定レバーと、該測定レバーに設けられ被測定物に当接する接触子と、前記接触子の変位量を検出する検出器と、を備えた外径測定装置において、前記被測定物を挟み込んで当接する円柱形状のバーコンタクトとされた前記接触子と、前記被測定物を挟み込んで当接する前記接触子の平行度を調整する角度調整機構と、を備え、少なくとも前記被測定物を挟み込んで当接する一方の前記接触子は、前記測定レバーに設けられたことを特徴としたものである。
【0013】
また、2本の前記接触子のうち一方は前記測定レバーに設けられ、他方は固定されたことが望ましい。
【0014】
さらに、前記角度調整機構は前記測定レバーに設けられることが望ましい。
【0015】
さらに、前記角度調整機構は、前記測定レバーに設けられたスリットと、該スリットに係合するように挿入され締め付け、あるいは緩めることにより、前記スリットの間隔を変化させるボルトと、を備えたことが望ましい。
【0016】
さらに、前記被測定物を挿入して前記被測定物の姿勢を規制するガイドを備えたことが望ましい。
【0017】
さらに、前記被測定物の径が7~10mmで前記ガイドへの前記被測定物の挿入範囲が40~60mmの場合、前記被測定物と前記ガイドとの隙間を片側で180~250μmとしたことが望ましい。
【0018】
本発明は、ヘッド本体に測定方向及びリトラクト方向に揺動自在に取り付けられた測定レバーと、前記被測定物を挟み込んで当接する円柱形状のバーコンタクトとされた接触子と、前記接触子の変位量を検出する検出器と、を備えた外径測定装置の調整方法であって、少なくとも前記被測定物を挟み込んで当接する一方の前記接触子は前記測定レバーに設けられ、前記被測定物の基準となるマスタを前記接触子の軸方向の中央にセットして径を測定し、中央から前記接触子の軸方向に前記マスタを移動して径を測定し、測定値の変化に応じて前記接触子の角度を調整し、径の変化が許容値以内となるようにして前記接触子を平行とすることを特徴とする。
【0019】
上記において、少なくとも前記被測定物を挟み込んで当接する一方の前記接触子の角度を調整することが望ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、被測定物を挟み込んで当接する接触子を円柱形状のバーコンタクトとし、接触子が設けられる測定レバーに2本の接触子を平行となるようにする角度調整機構を備えるので、被測定物の倒れによる傾きによる測定誤差を低減することができる。その結果、ガイドとワークとの隙間量を比較的に大きくしても高精度で、安定した測定精度、繰り返し精度を確保できる。したがって、容易かつ高精度並びに自動で被測定物の外径を測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明による一実施形態に係る外径測定装置の概略を示す側面図
図2】一実施形態において、被測定物であるワークを装着した状態を示す側面図
図3図2における、主要部の上面図
図4】ワーク傾きの測定精度への影響を示す説明図
図5】ワークの外径の測定精度への影響を示す説明図
図6】接触子の径の測定精度への影響を示す説明図
図7】接触子の平行度とワークの位置との測定誤差に対する影響を示す部分上面図
図8】接触子を平行に調整した例を図7と同様に示す部分上面図
図9】一実施形態における接触子の角度調整機構を示す上面図
図10】一実施形態における角度調整方法を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0023】
図1は、一実施形態である外径測定装置の概略を示す側面図、図2は、被測定物であるワーク50をガイド51に装着した測定時の状態を示す側面図、図3は、その上面図である。ヘッド本体12には、一対の基部レバー14-1、14-2が設けられ、検出器内部の支点である支軸16-1、16-2を中心に測定方向(矢印A方向)及びリトラクト方向(矢印B方向)に揺動自在に設けられる。
【0024】
基部レバー14-1、14-2の各基端部(図面視下端)には、基部レバー14-1、14-2の変位量を検出する検出器となる差動トランス18-1、18-2が設けられている。差動トランス18-1、18-2は、コア18-1A、18-2Aとボビン18-1B、18-2Bとから構成される。コア18-1A、18-2Aは基部レバー14-1、14-2の基端部に固定されると共に、ボビン18-1B、18-2Bはヘッド本体12に固定される。
【0025】
また、基部レバー14-1、14-2の基端部には、スプリング20-1、20-2が取り付けられている。スプリング20-1、20-2の付勢力によって、基部レバー14-1、14-2は測定方向である矢印A方向(基部レバー14-1、14-2の先端が互いに近づく方向)に付勢されている。
【0026】
基部レバー14-1、14-2の先端部(図面視上端)には、ナット部26-1、26-2が形成され、このナット部26-1、26-2には軸部28-1、28-2が設けられている。軸部28-1、28-2には、バーコンタクトフィンガとされた2本の測定レバー32-1、32-2が角度調整を可能として設けられている。
【0027】
測定レバー32-1、32-2の先端部には、円柱形状のバーコンタクトとされた接触子34-1、34-2がそれぞれ取り付けられており、接触子34-1、34-2を被測定物であるワーク50に当接させてワーク50の外径寸法の測定を行う。接触子34-1、34-2は、変位センサとして被測定物である円柱形状のワーク50に直接接触する部分である。
【0028】
接触子34-1、34-2は、軸方向がワーク50の軸方向と直交するように配置され、ワーク50を挟み込んで当接する。接触子としては、ボール接触子、球面接触子、ローラ接触子、円形フラット接触子などが知られている。接触子34-1、34-2は、ワーク50のガイド51への搬入出が容易であり、ワーク50とガイド51との隙間が大きくても繰り返し精度を確保するため、円柱形状のバーコンタクトとしている。
【0029】
図2はワーク50をガイド51に装着した状態を示し、ワーク50の傾きが測定精度に大きく影響するので、図示のようにワーク50が上から挿入された場合のガイドとなり、ワーク50の姿勢を規制するために必要とされている。このように構成したワーク50の外径測定では、ガイド51を精密に位置決めし、その後にワーク50をガイド51の穴内へ挿入し、所定深さに位置したら、2本の接触子34-1、34-2をワーク50に当接させる。
【0030】
このとき、測定レバー32-1、32-2は、支軸16-1、16-2を中心に回動し、基部レバー14-1、14-2の基端部に固定されたコア18-1A、18-2Aが変位する。そして、接触子34-1、34-2がワーク50に当接すると、変位量の検出器となる差動トランス18-1、18-2によって変位量を検出して、変位量に応じた信号をワーク50の外径として出力する。
【0031】
図3は、主に測定レバー32-1、32-2及びワーク50を挟み込むため対向している接触子34-1、34-2を示している。一方の測定レバー32-1は、スリット35-1、35-2及びボルト36-1、36-2によるA方向、B方向の角度調整機構を有している。
【0032】
つまり、ボルト36-1、36-2はスリット35-1、35-2に係合するように挿入され、ボルト36-1、36-2を締め付け、あるいは緩めることを行えば、スリット35-1、35-2の間隔が変化して測定レバー32-1を弾性変形させる。これにより、接触子34-1の接触子34-2に対する角度を調整してより厳密に接触子34-1と接触子34-2とを平行とすることができる。
【0033】
図4は、ワーク50の倒れ(傾き)の測定精度への影響を示したもので、傾きの精度への影響、図5がワーク50の外径の大きさの影響、図6が接触子34-1、34-2の径の影響を示している。図4(a)はワーク50の傾きが無い場合で、接触子34-1、34-2の径が2mm、ワーク50の外径が7mmとしている。この場合、接触子34-1、34-2の中心間の距離は9mmとなる。
【0034】
図4(b)はワーク50の傾きが1°の場合で、接触子34-1、34-2の中心間の距離は(1/cos(1°))×9=9.00137mmとなる。
【0035】
図4(c)は、ワーク50の傾きが5°の場合で、接触子34-1、34-2の中心間の距離は、同様に、9.03438mmとなる。つまり、ワーク50に傾きがあると、径が大きい方向の誤差となり、傾きが大きい程、測定誤差は大きくなる。したがって、図2で示したように、ワーク50の姿勢をガイド51で極力小さな傾きとなるように規制することが重要となる。
【0036】
図5図4に対して、ワーク50の外径の大きさを17mmと大きくして、同様にワーク50の傾きの影響を示している。図5(a)はワーク50の傾きが無い場合であり、接触子34-1、34-2の中心間の距離は19mmとなる。図5(b)はワーク50の傾きが1°の場合で、接触子34-1、34-2の中心間の距離は19.00289mmとなる。
【0037】
図5(c)は、ワーク50の傾きが5°の場合で、接触子34-1、34-2の中心間の距離は19.07258mmとなる。つまり、同じ傾きであっても、ワーク50の外径が大きい程、測定誤差は大きくなる。
【0038】
図6は接触子34-1、34-2の径を4mmと大きくして、同様にワーク50の傾きの影響を示している。接触子34-1、34-2の径が4mm、ワーク50の外径が7mmとしている。図6(a)はワーク50の傾きが無い場合であり、接触子34-1、34-2の中心間の距離は11mmとなる。図6(b)はワーク50の傾きが1°の場合で、接触子34-1、34-2の中心間の距離は11.00168mmとなる。
【0039】
図6(c)は、ワーク50の傾きが5°の場合で、接触子34-1、34-2の中心間の距離は11.04202mmとなる。つまり、同じ傾きであっても、接触子34-1、34-2の径が大きい程、測定誤差は大きくなる。
【0040】
図7は、円柱形状のバーコンタクトとされた接触子34-1、34-2の平行度とワーク50の位置との測定誤差に対する影響を示した部分上面図である。ワーク50は、接触子34-1、34-2に対して図7(a)に示すようにA、B、C、D方向に位置が移動、ずれて位置決めされる可能性がある。図7(b)(c)(d)は、接触子34-1と34-2とが平行でない場合を図示している。
【0041】
図7(b)は、ワーク50が接触子34-1と34-2との中央に位置した場合、図7(c)はワーク50がA方向、上にずれた場合、図7(d)はB方向、下にずれた場合である。測定圧は、接触子34-1、34-2の軸方向の中央に掛かる。
【0042】
図7(b)を基準にすると、図7(c)では接触子34-1と34-2との間隔が小さくなった位置にワーク50が位置するので、ワーク50の外径が実際より大きく測定される誤差を生じる。逆に、図7(d)では接触子34-1と34-2との間隔が大きくなった位置にワーク50が位置するので、ワーク50の外径が実際より小さく測定される。
【0043】
ワーク50がC方向、D方向に移動した場合は、変位量を検出する二個の差動トランス18-1、18-2の差をワーク50の外径に演算するので、相殺されて誤差は生じない。したがって、C、D方向は問題ないが、A、B方向にワーク50を精密に位置決めしなければならず、ワーク50とガイド51の隙間を小さくする必要がある。
【0044】
図8は、円柱形状のバーコンタクトとされた接触子34-1と34-2とを平行に調整した例を図7と同様に示したものである。図8からも分かるように接触子34-1と34-2とが平行であれば、ワーク50がA方向、B方向にずれた場合でも測定誤差を生じることがない。したがって、ワーク50とガイド51の隙間を大きくして、ワーク50の測定時における搬入出の作業性向上、自動機の搬入出設備の簡素化が可能となり、測定機本体のコスト低減に繋がる。
【0045】
図9は、接触子34-1と34-2との平行出しを行う角度調整機構を示す上面図、図10は角度調整方法を示すフローチャートである。図3で説明したように、一方の測定レバー32-1は、スリット35-1、35-2及びボルト36-1、36-2によるA方向、B方向の角度調整機構を有している。他方の測定レバー32-2は、角度調整機構を有していない。角度調整に伴う被測定物は、真円度の高いマスタ52を用いる。
【0046】
マスタ52を円柱形状のバーコンタクトとされた接触子34-1、34-2の軸方向の中央にセットする。マスタ52をA方向に移動して測定値が大きくなるならば、図9(a)の状態であるので、ボルト36-2を締めて押し込む。これにより、スリット35-2の間隔が開いて行き、スリット35-1、35-2の略中間点を支点として接触子34-1の角度が図9(b)に示すように変化して、接触子34-1と34-2とを平行にして行くことができる。
【0047】
同様に、マスタ52をB方向に移動して測定値が大きくなるならば、図9(c)の状態であるので、ボルト36-1を締めて押し込む。これにより、スリット35-1の間隔が開いて行き、スリット35-1、35-2の略中間点を支点として接触子34-1の角度が図9(d)に示すように変化して、接触子34-1と34-2とを平行にして行くことができる。
【0048】
上記の調整を行い、A方向、B方向にマスタ52を動かしても測定値が変動しなくなれば、接触子34-1と34-2とが平行になったことになる。そこで、ボルト36-1、36-2を固定して平行出し調整が完了したことになる。平行出し調整が完了した後は、マスタ52を用いてA方向、B方向に動かして径変化が無ければ終了し、径変化があれば調整を始めからやり直す。
【0049】
図10は、上記の手順を示すフローチャートであり、まず、真円度の高いマスタ52を接触子34-1、34-2の軸方向の中央にセットして径を測定する。接触子34-1、34-2の軸方向であるA及びB方向にマスタ52を中央から移動して同様に径を測定する。そして、径の測定値の変化に応じて接触子34-1と34-2とが互いに平行となるように角度を調整する。
【0050】
具体的には、A方向にマスタ52を移動したとき、測定された径の値が中央にセットした場合に比べ大となれば、図9(a)の状態であり、ボルト36-2を締めて押し込む。B方向にマスタ52を移動したとき、測定された径の値が中央にセットした場合に比べ大となれば、図9(c)の状態であり、ボルト36-1を締めて押し込む。上記のステップを径の変化が無くなる、あるいは許容値以内となるまで繰り返す。
【0051】
次にボルト36-1、36-2を図2で示される固定ボルト35-3を締め付けることで固定する。この状態で再度、マスタ52を接触子34-1、34-2の軸方向の中央にセットして径を測定する。A及びB方向にマスタ52を移動して同様に径を測定して径の変化が無くなる、あるいは許容値以内であることを確認する。径の変化が有る場合は、ボルト36-1、36-2の固定を緩めて、始めからやり直す。
【0052】
以上、円柱形状のバーコンタクトとされた接触子34-1、34-2を用いて、少なくとも一方に角度調整機構(図3におけるスリット35-1、35-2及びボルト36-1、36-2)を設ける。これにより、円柱形状のバーコンタクトを厳密に平行とすることができ、被測定物であるワーク50のy方向(図7のAB方向)の位置精度を必要としない。
【0053】
また、x方向(図7のCD方向)は、検出器である差動トランス18-1、18-2の検出の倍率が同じであれば、どこの位置にいても相殺されて測定値が安定する。そして、被測定物とガイドの隙間量を大きくしても、高精度な測定が可能となる。また、被測定物の搬入出が容易となる。具体的には従来の測定器の5倍以上の隙間量で繰り返し1μm以下の保障が可能となった。なお、検出器は差動トランスとして説明したが、例えば光方式等の変位測定器であれば同様である。
【0054】
さらに、被測定物の傾きには円柱形状のバーコンタクトとされた接触子34-1、34-2の径が小さく、被測定物の測定径が小さい方が、測定誤差が小さく有利となる。本発明者の鋭意研究の結果、接触子34-1、34-2の径は2~4mmが実用的であり、誤差が小さく適切であることが判明した。
【0055】
図7で示した測定圧に差を付け、片側を低測定圧とすると測定値が安定する。これは、被測定物の測定時のみならず、接触子34-1の角度調整のためのマスタの測定時にも有効である。また、揺動自在の2本の測定レバー32-1、32-2を用いることで説明したが、角度調整機構を設けていない測定レバー32-2の揺動量を小さくしたものや、ほぼ固定したものに円柱形状のバーコンタクトとされた接触子34-1、34-2を適用しても、被測定物の傾きに対する誤差を低減する効果がある。
【0056】
以上によれば、被測定物の倒れによる傾きのみ誤差要因となる。また、小径のバーコンタクトとされた接触子を使うことにより、この誤差要因を低減することができる。具体的には、バーコンタクトの直径1mm、傾き0.5°で0.4μm程度の誤差までに改善できた。
【0057】
さらに、被測定物であるワーク50と被測定物の傾き規制用のガイド51の径に依存するが、従来の1.5~10倍程度の隙間であっても、繰り返し精度1μm程度を達成することが可能となった。具体的には、被測定物の径が7~10mmでガイド挿入範囲が40~60mmの場合、片側180~250μmの隙間で繰り返し精度が1μmであった。従来は、繰り返し精度1μmを達成するには、片側30μmの隙間が必要であった。
【0058】
その結果、外径測定装置へワーク50を搬入出するローダーの精度を落とせる。そして、自動機の場合、搬入出設備に精密な位置決め機構、フローティング機構、リリービング機構を低価格とすることができる。
【0059】
また、従来の外径測定装置に対して測定レバーを代えるだけで良いので、検出器等は代える必要がなく、コスト上昇は最小限で済む。さらに、工作機械や専用機における加工後のワークの測定工程が促進され、作業効率が向上する。
【符号の説明】
【0060】
12…ヘッド本体
14-1、14-2…基部レバー
16-1、16-2…支軸
18-1、18-2…差動トランス(検出器)
18-1A、18-2A…コア
18-1B、18-2B…ボビン
20-1、20-2…スプリング
26-1、26-2…ナット部
28-1、28-2…軸部
32-1、32-2…測定レバー
34-1、34-2…接触子
35-1、35-2…スリット
35-3…固定ボルト
36-1、36-2…ボルト
50…ワーク
51…ガイド
52…マスタ
図1
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