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  • 特許-ガス精製装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】ガス精製装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/047 20060101AFI20220928BHJP
【FI】
B01D53/047
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022037825
(22)【出願日】2022-03-11
【審査請求日】2022-03-11
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】320011650
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】三沢 悟
(72)【発明者】
【氏名】武井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】副島 達雄
【審査官】長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-137909(JP,A)
【文献】特開平06-182133(JP,A)
【文献】特開2006-015221(JP,A)
【文献】特開2011-148670(JP,A)
【文献】国際公開第2018/055971(WO,A1)
【文献】特開2012-031050(JP,A)
【文献】特開2001-347125(JP,A)
【文献】特開2016-188153(JP,A)
【文献】特開平05-111609(JP,A)
【文献】特開2017-226562(JP,A)
【文献】国際公開第2003/045536(WO,A1)
【文献】特開昭52-036297(JP,A)
【文献】特開2004-337745(JP,A)
【文献】特開昭55-147119(JP,A)
【文献】特開平01-317521(JP,A)
【文献】特開昭57-045321(JP,A)
【文献】特開2013-154294(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/02-53/12
C01B 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料ガスを圧縮する圧縮機と、圧縮された原料ガスが導入される吸着剤を充填した吸着塔とを備え、前記吸着塔が、吸着工程と再生工程を順次行うことによりガス分離を行う圧力変動吸着分離法によって原料ガスを精製するガス精製装置において、
前記吸着塔の出口側と前記圧縮機の吸引側とをつなぐ残留ガス回収経路を設け、前記残留ガス回収経路は圧力調整器を備え
前記圧縮機の吐出側の原料ガス供給経路にマスフローコントローラを設けるとともに、前記マスフローコントローラをバイパスするバイパス経路を設け、前記バイパス経路はバルブを備えていることを特徴とするガス精製装置。
【請求項2】
前記吸着塔を複数備え、前記原料ガスが、不純物として空気、酸素又は窒素を含む希ガスであることを特徴とする請求項1記載のガス精製装置。
【請求項3】
前記圧縮機と前記マスフローコントローラの間にバッファタンクを設けたことを特徴とする請求項1又は2記載のガス精製装置。
【請求項4】
前記原料ガスの入口側に真空ポンプを設け、前記再生工程において、前記吸着塔を減圧することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項記載のガス精製装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス精製装置及びガス精製方法に関し、詳しくは、不純物を含むヘリウム等の高価な希ガスを圧力変動吸着分離法(PSA:Pressure Swing Adsorption)により、高収率で回収し精製するガス精製装置及びガス精製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘリウムは高熱伝導性,高拡散性,低沸点といった特性があり、MRI、光ファイバー、半導体、リークテストといった多種多様な産業分野において使用されている。世界的にヘリウム需要は成長が見込まれている一方、ヘリウム供給はヘリウムを含有したガス田の産出量減少、ヘリウム製造施設のトラブル長期化等により、常に供給量不足に陥るリスクが懸念されている。こうした供給面のリスクを不安視する需要者の間では、省ヘリウム、リサイクルといった対策を講じる動きがあり、ヘリウム回収のニーズ拡大が予想される。
【0003】
回収したヘリウムは不純物として空気(窒素、酸素、二酸化炭素、水分等)を含んでいることが多い。回収したヘリウム中の不純物を除去する精製手法の一つとして、圧力変動吸着分離法(PSA法)が挙げられる。一般的なPSA法によるガス精製装置は、2塔の吸着塔と8個のバルブを基本構成として、吸着工程、均圧減圧工程、再生工程、均圧昇圧工程を繰り返し、連続的にガスを精製する。再生工程では、吸着塔内のガスを排気して減圧操作を行うため、ヘリウムの損失が発生する。再生工程時のヘリウム損失の低減を目的として均圧操作が行われるが、2塔式のPSA装置では、均圧工程において、吸着工程が終了した吸着塔内の残留ガスを再生工程が終了した吸着塔へ回収する。ここで、吸着塔の塔数を3塔以上とし、均圧操作回数を2回以上とすることで、ヘリウム損失のさらなる低減が可能である。しかしながら、吸着塔数を増やすことで装置価格の上昇、装置の大型化といった問題が発生するため、限界がある。
【0004】
そこで、ヘリウム損失を低減するために、PSA装置の排気ガスを原料ガスに混合しリサイクルしながら希ガスを回収する装置及び方法(特許文献1)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第3385053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の装置及び方法では、排気ガスを原料ガスに混合すると、原料ガス中の除去成分濃度が上昇するため、一定の純度で製品ガスを供給するために、分析計を用いて原料ガスもしくは製品ガス中の不純物濃度を常時測定し、濃度に応じてPSAのガス処理量を調節しなければならなかった。分析計による不純物濃度の測定値に対して流量値を最適化するため制御パラメーターの調節が必要であり、制御システムの高度化・複雑化が課題であった。
【0007】
そこで本発明は、分析計による濃度測定に基づいた複雑な制御システムの構築が不要で、装置価格の上昇、装置の大型化を抑えつつ、精製ガス(ヘリウム)の損失量を低減し、回収メリットを最大化できるようにしたガス精製装置及びガス精製方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明のガス精製装置は、原料ガスを圧縮する圧縮機と、圧縮された原料ガスが導入される吸着剤を充填した吸着塔とを備え、前記吸着塔が、吸着工程と再生工程を順次行うことによりガス分離を行う圧力変動吸着分離法によって原料ガスを精製するガス精製装置において、前記吸着塔の出口側と前記圧縮機の吸引側とをつなぐ残留ガス回収経路を設け、前記残留ガス回収経路は圧力調整器を備え、前記圧縮機の吐出側の原料ガス供給経路にマスフローコントローラを設けるとともに、前記マスフローコントローラをバイパスするバイパス経路を設け、前記バイパス経路はバルブを備えていることを特徴としている。
【0009】
また、本発明のガス精製装置は、前記吸着塔を複数備え、前記原料ガスが、不純物として空気、酸素又は窒素を含む希ガスであることを特徴としている。また、前記圧縮機と前記マスフローコントローラの間にバッファタンクを設けてもよい。さらに、前記原料ガスの入口側に真空ポンプを設け、前記再生工程において、前記吸着塔を減圧することを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明のガス精製装置及びガス精製方法によれば、吸着工程が終了した吸着塔内の残留ガスを均圧減圧工程で回収することに加えて、さらに、圧縮機の吸引側の原料ガスに合流させることにより、精製ガスの損失量を低減することができる。また、残留ガス回収経路は減圧弁といった圧力調整器を設けることにより、吸着塔の圧力によらず圧縮機の吸引圧力を大気圧に保つことが可能である。
【0013】
さらに、マスフローコントローラを設けることで、原料ガス中の不純物濃度が上昇したとしても、自動的に製品ガス純度を維持することが可能である。また、マスフローコントローラをバイパスするバイパス経路を設け、バイパス経路にバルブを備えることで、残留ガス回収時の原料ガス流量の一時的な増加に対し、吸着筒への導入流量を増加させて対応することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明のガス精製方法を実施可能な本発明のガス精製装置の一形態例を示す系統図である。
図2】本発明における吸着塔での各工程の時間的順序を示すタイミングチャートと各弁の開閉状態を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明のガス精製方法を実施可能な本発明のガス精製装置の一形態例を示す系統図である。本形態例に示すガス精製装置1は、吸着剤を充填した2つの吸着塔(第1吸着塔10,第2吸着塔20)を使用した2塔式の圧力変動吸着式ガス分離装置(PSA装置)であって、各吸着塔を、吸着工程と再生工程とに、交互に切り換えることにより、不純物成分ガスを含む原料ガスから不純物成分ガスを分離し、高純度の主成分ガスからなる精製ガスを連続的に導出できるように形成している。また、吸着工程と再生工程とを切り換える際に一方の吸着塔から他方の吸着塔に塔内ガスを移動させる均圧操作を行っている。
【0016】
本形態例における原料ガスは、不純物成分ガスとして空気を含むヘリウムである。
【0017】
各吸着塔10,20の原料ガス入口側(塔下部)には、入口弁11V,21Vを有する原料ガス入口経路L1,L2と、減圧排気弁12V,22Vを有する減圧排気経路L3,L4とが設けられている。
【0018】
各吸着塔10,20の精製ガス出口側(塔上部)には、出口弁13V,23Vを有する精製ガス出口経路L5,L6が設けられている。また、各吸着塔10,20の精製ガス出口側同士を接続する均圧経路L7には、均圧弁14Vが備えられている。さらに、各吸着塔10,20の精製ガス出口側には各吸着塔内に残留するガスを導出する残留ガス導出弁15V,25Vを有する残留ガス導出経路L8,L9が設けられている。
【0019】
さらに、原料ガス入口経路L1,L2は、圧縮機51を有する原料ガス供給経路L10にそれぞれ接続しており、減圧排気経路L3,L4は、真空ポンプ52を有する真空排気経路L11にそれぞれ接続している。一方、精製ガス出口経路L5、L6は、精製ガス導出経路L12に接続している。
【0020】
また、残留ガス導出経路L8,L9は、圧縮機51の吸引側の原料ガス供給経路L10に合流する残留ガス回収経路L13に接続している。残留ガス回収経路L13には減圧弁30が備えられている。
【0021】
圧縮機51の吐出側の原料ガス供給経路L10にマスフローコントローラ(MFC)31を設けるとともに、マスフローコントローラ31をバイパスするバイパス経路L14を設け、バイパス経路L14はバルブ32を備えている。バルブ32は、自動弁である。MFC31は希ガス用のマスフローコントローラを用いると好適である。
【0022】
さらに、圧縮機51とマスフローコントローラ31の間には、圧縮機51による脈動を緩衝するためのバッファタンク33が設けられている。
【0023】
また、各吸着塔10,20の内部には、原料ガス中の不純物を吸着するための第1吸着剤と第2吸着剤との2種類の吸着剤が積層充填されている。吸着剤としては、ゼオライト,活性アルミナ,シリカゲル等を使用することができる。
【0024】
本発明のガス精製分離方法は、吸着工程、均圧減圧工程、残留ガス回収工程、再生工程、均圧昇圧工程を各吸着塔10、20で交互に経時的に実施するもので、図2に示すようなシーケンスで行われる。図2には、各工程に対応して各弁(バルブ)の開閉状態を示しており、塗色部は、その弁が開状態であることを示している。
【0025】
圧縮機51で圧縮(昇圧)されたヘリウム(原料ガス)が、MFC31、入口弁11Vを介して、原料ガス供給経路L10,原料ガス供給経路L1から第1吸着塔10に入る。第1吸着塔10では、ヘリウム中の不純物である空気が吸着剤に吸着され、出口弁13Vを介して、精製ガス出口経路L5、精製ガス導出経路L12を通り、精製ガス(製品ガス)として取り出される。このような工程が第1吸着塔10における吸着工程である。吸着工程は例えば1~24時間,好適には4~24時間継続する
【0026】
第1吸着塔10が吸着工程にあるとき、第2吸着塔20では、残留ガス回収工程,再生工程が行われる。
【0027】
残留ガス回収工程では、第2吸着塔20内に貯留(残留)しているガスを、残留ガス導出弁25V,減圧弁30を介して、残留ガス導出経路L9、残留ガス回収経路L13を通して、圧縮機51の吸引側の原料ガス供給経路L10に合流させる。減圧弁30を設けることにより、吸着塔の圧力によらず圧縮機51の吸引圧力を大気圧に保つことが可能である。残留ガス回収工程は例えば1時間以内、好適には30分以内の時間で行う。
【0028】
第2吸着塔20が残留ガス回収工程中にあるとき、第1吸着塔10の吸着工程において、第2吸着塔20から回収したガスの分、原料ガスの流量が一時的に増加するため、バルブ32を介し、バイパス経路L14を通じて、第1吸着塔10への導入流量を増加させる。
【0029】
次いで、バルブ32及び残留ガス導出弁25Vを閉じ、第2吸着塔20の残留ガス回収工程を終了し、再生工程を行う。再生工程では、第2吸着塔20内のガスを、減圧排気弁22Vを介し、減圧排気経路L4,真空排気経路L11を通じて、真空ポンプ52に吸引させる。これにより、第2吸着塔20を減圧し、吸着した不純物である空気を脱着させ、吸着剤を再生させる。再生工程は、例えば1~24時間、好適には4~24時間継続する。
【0030】
第1吸着塔10が吸着飽和に達する前に、入口弁11V,出口弁13Vを閉じて第1吸着塔10の吸着工程を終了するとともに、減圧排気弁22Vを閉じて第2吸着塔20の再生工程を終了する。次いで、均圧弁14Vを開き、第1吸着塔10と第2吸着塔20の出口側同士を均圧経路L7により連通させて、均圧操作を行い、第1吸着塔10内のガスが第2吸着塔20に導入される。この工程が、第1吸着塔10にとっては均圧減圧工程となり、第2吸着塔20にとっては均圧昇圧工程となる。均圧減圧工程・均圧昇圧工程は例えば5分以内、好適には1~3分程度の時間で行う。
【0031】
均圧昇圧工程が終了した第2吸着塔20は、吸着工程を行う。上述した第1吸着塔10の吸着工程と同様に、圧縮機51で圧縮されたヘリウムが、MFC31、入口弁21Vを介して、原料ガス供給経路L10,原料ガス供給経路L2から第2吸着塔20に入り、第2吸着塔20内で不純物である空気が吸着剤に吸着され、出口弁23Vを介して、精製ガス出口経路L6、精製ガス導出経路L12を通り、精製ガスとして取り出される。
【0032】
第2吸着塔20が吸着工程にあるとき、第1吸着塔10では、残留ガス回収工程,再生工程が行われる。
【0033】
第1吸着塔10の残留ガス回収工程では、第1吸着塔10内に残留しているガスを、残留ガス導出弁15V,減圧弁30を介して、残留ガス導出経路L8、残留ガス回収経路L13を通して、圧縮機51の吸引側の原料ガス供給経路L10に合流させる。
【0034】
このとき、第1吸着塔10から回収したガスの分、原料ガス流量が一時的に増加するため、バルブ32を介し、バイパス経路14を通じて、第2吸着塔20への導入流量を増加させる。
【0035】
次いで、バルブ32及び残留ガス導出弁15Vを閉じ、第1吸着塔10の残留ガス回収工程を終了し、再生工程を行う。再生工程では、第1吸着塔10内のガスを、減圧排気弁12Vを介し、減圧排気経路L3,真空排気経路L11を通じて、真空ポンプ52に吸引させ、第1吸着塔10を減圧し、吸着した不純物である空気を脱着させ、吸着剤を再生させる。
【0036】
第2吸着塔20が吸着飽和に達する前に、入口弁21V,出口弁23Vを閉じて第2吸着塔20の吸着工程を終了するとともに、減圧排気弁12Vを閉じて第1吸着塔10の再生工程を終了する。次いで、均圧弁14Vを開き、第1吸着塔10と第2吸着塔20の出口側同士を均圧経路L7により連通させて、均圧操作を行い、第2吸着塔20内のガスが第1吸着塔10に導入される。この工程が、第1吸着塔10にとっては均圧昇圧工程となり、第2吸着塔20にとっては均圧減圧工程となる。
【0037】
本形態例のガス精製装置1は、各吸着塔10、20において、上述の吸着工程、均圧減圧工程、残留ガス回収工程、再生工程、均圧昇圧工程を行って吸着工程に戻る一連の状態の繰り返しを、各吸着塔10、20で交互に経時的に実施することにより、原料ガスを連続的に精製することができる。
【0038】
さらに、均圧操作によって、吸着工程終了後の吸着塔内の残留ガスを他方の吸着塔に回収することに加え、残留ガス回収工程において、均圧操作後の残留ガスを圧縮機51の吸引側へ再供給することで、補助吸着筒や回収タンクを使用せず回収メリットの向上を実現することができる。
【0039】
また、吸着塔内の残留ガスを圧縮機51の吸引側へ再供給する際、原料ガスと合流させるため、一時的に原料ガス供給経路L10の流量が増加する。また、他方の吸着塔は吸着工程の開始直後の状態にあり、所望の吸着圧力まで吸着塔の内圧を上昇させる必要がある。昇圧途上の吸着塔からは精製ガスを取り出すことができないため、昇圧工程は短時間で完了することが望ましい。本発明においては、マスフローコントローラをバイパスするバイパス経路L14を設け、バイパス経路L14に自動弁であるバルブ32を開くことで流量増加に対応可能であるとともに、吸着塔の昇圧に要する時間を短縮することが可能である。
【0040】
また、MFC31を使用することで、ガス精製装置1に導入されるガスの温度、圧力の変動に対し、流量を一定に維持することが可能である。特に、希ガス用のMFCを用いることにより、原料ガス中の不純物(空気)濃度が上昇した場合、MFC単体の動作により流量が自動的に低減され、吸着塔への負荷を一定以下に抑えることができる。このような形態を採用することにより、分析計による濃度測定に基づいた複雑な制御システムを構築することなく、原料ガス中の不純物濃度上昇に対し製品ガス純度を維持することが可能である。
【0041】
なお、吸着塔の出口側から残留ガスを回収することで、ヘリウム濃度の高いガスを効率良く回収することが可能である。
【0042】
また、残留ガス回収時、圧縮機の負荷増大・故障を防止するため、吸引側を大気圧程度に保つ必要がある。このため、容量可変型のバルーン式タンク等を設けることも考えられるが、バルーン式タンクは一般に気密性が低く、ヘリウムが外部へ流出する恐れが懸念される。この点、本発明では、残留ガス回収経路L13に減圧弁30を設けることにより、大気圧に保つことが可能である。
【0043】
なお、本発明は上述の形態例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施できる。
【0044】
上述の形態例では、2塔式のPSA装置であったが、吸着塔の塔数は1塔のみであっても、3塔以上であってもよい。また、各吸着塔は強吸着成分吸着塔と弱吸着成分吸着塔とに分割してもよく、再生工程においては強吸着成分吸着塔をヒータで加熱し再生を促進してもよい。
【0045】
また、残留ガス回収経路L13上に減圧弁を設けているが、減圧弁に限らず、コントロールバルブ、圧力調整弁等の圧力調整器を設けることができる。
【0046】
さらに、残留ガス回収経路L13上に流量調節弁を追加し、残留ガス回収時の脱圧速度を低減してもよい。残留ガス回収時に脱圧速度を制御することで、回収するガス中のヘリウム濃度を調節可能である。
【0047】
また、精製ガス導出経路L12に製品ガスのレシーバータンクを設けてもよい。さらに、ガス精製装置1の前後に微量不純物除去装置、粉塵フィルター等を取り付けてもよい。
【0048】
また、本発明は、ヘリウム以外の希ガスと空気、希ガスと窒素、希ガスと酸素の混合ガスを原料ガスとして実施することも可能である。
【0049】
本発明の有効性を示すために、以下の条件で、残留ガス回収工程を実施した場合と実施しなかった場合のヘリウム回収率を比較する実験を行った。
【0050】
原料ガス組成:ヘリウム75%(volume),空気25%(volume)
原料ガス流量:1m/h(normal)
吸着塔数:1
切替時間:12h
塔上部(弱吸着成分):ゼオライト(CaX)充填、500A×高さ1800mm
塔下部(強吸着成分):ゼオライト(NaX)充填、1インチ×高さ1000mm
真空ポンプ:到達圧力10Pa、排気速度40L/min
精製ガス純度:99%(volume)以上
【0051】
残留ガス回収工程を実施しなかった場合の回収率は75%であったのに対し、残留ガス回収工程を実施した場合には回収率は90%まで向上した。
【符号の説明】
【0052】
1…ガス精製装置、10,20…吸着塔、11V,21V…入口弁、12V,22V…減圧排気弁、13V,23V…出口弁、14V…均圧弁、15V,25V…残留ガス導出弁、30…減圧弁、31…マスフローコントローラ(MFC)、32…バルブ、33…バッファタンク、51…圧縮機、52…真空ポンプ、L1,L2…原料ガス入口経路、L3,L4…減圧排気経路、L5,L6…精製ガス出口経路、L7…均圧経路、L8,L9…残留ガス導出経路、L10…原料ガス供給経路、L11…真空排気経路、L12…精製ガス導出経路、L13…残留ガス回収経路、L14…バイパス経路
【要約】
【課題】 装置価格の上昇、装置の大型化を抑えつつ、精製ガスの損失量を低減し、回収メリットを最大化できるようにしたガス精製装置及びガス精製方法を提供する。
【解決手段】 原料ガスを圧縮する圧縮機51と、圧縮された原料ガスが導入される吸着剤を充填した吸着塔10,20とを備え、吸着塔10,20が、吸着工程と再生工程を順次行うことによりガス分離を行う圧力変動吸着分離法によって原料ガスを精製するガス精製装置1において、吸着塔10,20の出口側と圧縮機51の吸引側とをつなぐ残留ガス回収経路L13を設け、残留ガス回収経路L13は減圧弁30といった圧力調整器を備えている。圧縮機51の吐出側の原料ガス供給経路L10にマスフローコントローラ31を設けるとともに、マスフローコントローラをバイパスするバイパス経路L14を設け、バルブ32を備えている。
【選択図】 図1
図1
図2