(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-28
(45)【発行日】2022-10-06
(54)【発明の名称】倒立顕微鏡、操作ツール照明装置、および操作ツールの照明方法
(51)【国際特許分類】
G02B 21/32 20060101AFI20220929BHJP
【FI】
G02B21/32
(21)【出願番号】P 2018142887
(22)【出願日】2018-07-30
【審査請求日】2021-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】390022471
【氏名又は名称】アオイ電子株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100123984
【氏名又は名称】須藤 晃伸
(74)【代理人】
【識別番号】100102314
【氏名又は名称】須藤 阿佐子
(72)【発明者】
【氏名】森 昭登
(72)【発明者】
【氏名】杠 明日美
(72)【発明者】
【氏名】片岡 正俊
(72)【発明者】
【氏名】梶本 和昭
(72)【発明者】
【氏名】橋本 宗明
【審査官】森内 正明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2005/096063(WO,A1)
【文献】特開2013-40800(JP,A)
【文献】特開2015-114630(JP,A)
【文献】特開平5-253870(JP,A)
【文献】特開2006-255847(JP,A)
【文献】特開2011-133433(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 21/00 - 21/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板上の観察試料中の操作対象を操作ツールで操作しつつ観察を行うことができる倒立顕微鏡であって、
観察試料が配置される透明基板と、
観察試料中の操作対象を操作する操作ツールと、
前記透明基板の底部から前記観察試料を照明する落射照明部と、
前記透明基板を介して前記操作ツールを照明する照明光を出射するサイド照明部と、
前記透明基板の側面に入射する前記サイド照明部の照明光の光軸の、前記透明基板に入射する前記落射照明部の照明光の光軸に対する角度を調整する角度調整部とを備える、倒立顕微鏡。
【請求項2】
請求項1に記載の倒立顕微鏡において、
前記角度調整部は、前記透明基板の側面に入射した前記照明光の一部が前記透明基板の界面に対する全反射条件を満たす範囲で前記角度を調整できる、
倒立顕微鏡。
【請求項3】
請求項1または2に記載の倒立顕微鏡において、
前記角度調整部は、前記サイド照明部と、前記透明基板及び前記操作ツールとの位置関係に応じて前記角度を調整できる、倒立顕微鏡。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の倒立顕微鏡において、
前記サイド照明部は前記照明光として白色光を出射する、倒立顕微鏡。
【請求項5】
前記操作ツールは開閉可能な一対のアームを備えるナノピンセットである、請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の倒立顕微鏡。
【請求項6】
請求項5に記載の倒立顕微鏡において、
前記透明基板に入射する前記落射照明部の照明光の光軸に直交する方向に、前記ナノピンセット
、前記サイド照明部および
前記角度調整部を一体で移動させる移動装置をさらに備える、倒立顕微鏡。
【請求項7】
請求項5または6に記載の倒立顕微鏡において、
前記サイド照明部は前記照明光としてスポット状の光を出射する、倒立顕微鏡。
【請求項8】
請求項5から請求項7までのいずれか一項に記載の倒立顕微鏡において、前記一対のアームの少なくとも先端領域に金属膜が形成されている、倒立顕微鏡。
【請求項9】
観察試料が配置される透明基板、観察試料中の操作対象を操作する操作ツール、前記透明基板の底部から前記観察試料を照明する落射照明部、前記透明基板が載置されるステージを有する筐体、および、前記筐体に支柱を介して設けられた移動装置を備え、前記操作対象を前記操作ツールで操作しつつ観察を行うことができる倒立顕微鏡に取り付け可能な操作ツール照明装置であって、
前記移動装置に取り付けられる支持アームと、
前記支持アームに対する固定位置を上下に調整可能な位置調整部と、
前記透明基板を介して前記操作ツールを照明する照明光を出射するサイド照明部と、
前記透明基板の側面に入射する前記サイド照明部の照明光の光軸の、前記透明基板に入射する前記落射照明部の照明光の光軸に対する角度を調整する角度調整部とを備える、操作ツール照明装置。
【請求項10】
請求項1から請求項8までのいずれか一項に記載の倒立顕微鏡を用いた操作ツールの照明方法であって、
前記透明基板に対して、入射した前記サイド照明部の照明光の一部が前記透明基板の界面に対する全反射条件を満たすように前記照明光を入射させ、
前記透明基板に入射した前記サイド照明部の照明光を前記界面での全反射により前記透明基板上の観察試料に導き、前記観察試料の操作対象を操作する操作ツールを照明する、操作ツールの照明方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作ツール照明装置、ナノピンセットシステムおよび操作ツールの照明方法に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞等の観察試料をナノピンセットやピペット等の操作ツールで操作しながら観察する場合、一般には特許文献1に記載のような倒立顕微鏡が用いられる。このような倒立顕微鏡において落射照明系を用いることで、操作ツールによる観察試料の操作が行いやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、蛍光色素により染色された細胞等を蛍光観察する場合には操作ツールが観察し難くいため、操作ツールの取り扱いが非常に難しい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様による操作ツール照明装置は、透明基板上の観察試料中の操作対象を操作ツールで操作しつつ観察を行う倒立顕微鏡に用いられる操作ツール照明装置であって、前記透明基板を介して前記操作ツールを照明する照明光を出射する照明部と、前記透明基板に入射する前記照明光の光軸の、前記倒立顕微鏡の対物レンズの光軸に対する角度を調整する角度調整部とを備える。
本発明の第2の態様によるナノピンセットシステムは、開閉可能な一対のアームを前記操作ツールとして備えるナノピンセットと、前記操作対象を操作する前記一対のアームを前記透明基板を介して照明する前記操作ツール照明装置と、を備える。
本発明の第3の態様による操作ツールの照明方法は、倒立顕微鏡のステージ上に載置された透明基板に対して、入射した照明光の一部が前記透明基板の界面に対する全反射条件を満たすように前記照明光を入射させ、前記透明基板に入射した前記照明光を前記界面での全反射により前記透明基板上の観察試料に導き、前記観察試料の操作対象を操作する操作ツールを照明する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、観察試料を操作している操作ツールを容易に観察することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、ナノピンセットシステムが取り付けられた顕微鏡装置の側面図である。
【
図2】
図2は、ナノピンセットシステムを接眼レンズ方向から見た図である。
【
図4】
図4は、ホルダに取り付けられたナノピンセットを示す図である。
【
図5】
図5は、サイド照明による照明方法を説明する図である。
【
図7】
図7は、ナノピンセットシステムの概略構成を示すブロック図である。
【
図8】
図8は、ナノピンセットシステムを用いた細胞の捕集動作手順の一例を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、ナノピンセットの移動動作を説明する図である。
【
図10】
図10は、複数の凹部が形成された透明基板の場合のナノピンセットとサイド照明との位置関係を示す図である。
【
図11】
図11は、操作ツール照明装置の詳細を示す図である。
【
図12】
図12は、観察試料が保持されたスライドガラスの一例を示す図である。
【
図13】
図13は、スライドガラスを用いた場合のナノピンセットによる操作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図を参照して本発明を実施するための形態について説明する。
図1はナノピンセットシステム1の一実施の形態を示す図であり、ナノピンセットシステム1が取り付けられた顕微鏡装置2の側面図である。また、
図2は、ナノピンセットシステム1を接眼レンズ23の方向から見た図である。
【0009】
顕微鏡装置2は倒立型顕微鏡であり、筐体20には対物レンズ21が装着されたレボルバ22、接眼レンズ23、落射照明用光源24、蛍光投光管25、xyステージ26および撮像装置27等を備えている。対物レンズ21を通った観察光は、不図示のリレー光学系により接眼レンズ23および撮像装置27に導かれる。xyステージ26上には観察試料を有するスライドガラス等の透明基板28が載置される。撮像装置27の撮像データは、不図示の出力端子から外部へ出力される。例えば、撮像データは顕微鏡用ソフトウェアがインストールされたPC(パーソナルコンピュータ)に入力され、観察画像がPCの表示装置に表示される。
【0010】
図1において、ナノピンセットシステム1は、顕微鏡装置2の
筐体20に固定される支柱30と、支柱30の上部に設けられたxy方向移動部31と、xy方向移動部31に取り付けられた支持アーム32と、支持アーム32に取り付けられたz方向移動部33と、z方向移動部33に保持されるホルダ35に設けられたナノピンセット10と、操作ツール照明装置34とを備えている。
【0011】
図1,2では、操作ツール照明装置34として、操作ツール照明装置34に含まれる複数の要素の内の位置調整部341と、位置調整部341に取り付けられたサイド照明340と、操作ツール照明装置34をxy方向移動部31に固定する支持アーム342、を示したが、操作ツール照明装置34の詳細な構成は後述する。
【0012】
ナノピンセット10は、xy方向移動部31により図示x方向およびy方向に移動され、z方向移動部33により図示z方向に移動される。また、支持アーム342に取り付けられたサイド照明340も、xy方向移動部31によりナノピンセット10と一体でx方向およびy方向に移動される。詳細は後述するが、支持アーム342に対する位置調整部341の固定位置をz方向に上下に調整することにより、透明基板28に対するサイド照明340のz方向位置を調整することができる。このように、本実施の形態では対物レンズ21の光軸に直交する方向に、ナノピンセット10および操作ツール照明装置34を一体で移動させるxy方向移動部31を備えたので、ナノピンセット10とサイド照明340とのxy方向の相対位置は一定に保たれる。
【0013】
なお、本実施の形態では、サイド照明340を支持する支持アーム342をxy方向移動部31に固定することで、サイド照明340をナノピンセット10と一体でx方向およびy方向に移動させるようにしたが、支持アーム342をz方向移動部33に取り付けるようにしても良い。その場合、サイド照明340のz方向位置はナノピンセット10の先端位置とほぼ一致する位置に設定され、z方向移動部33を駆動してナノピンセット10をz方向に移動すると、サイド照明340もナノピンセット10と一体にz方向に移動する。すなわち、ナノピンセット10とサイド照明340との相対位置は一定に保たれる。
【0014】
図3は、ナノピンセット10の平面図である。ナノピンセット10は、例えば、SOI(Silicon on Insulator)ウエハから一体で作製される(例えば、特開2007-69322号公報参照)。SOIウエハは、2枚のSi単結晶板の一方にSiO
2層を形成し、SiO
2層を介して貼り合わせたものである。ナノピンセット10は、一対のアーム13a,13b、一対の静電アクチュエータ14a,14b、一対の支持部17a,17b、一対の連結部18a,18b、一対のアーム支持部19a,19b、および台座11を備えている。静電アクチュエータ14aには、固定電極15aおよび可動電極16aが設けられ、静電アクチュエータ14bには固定電極15bおよび可動電極16bが設けられている。台座11は、前述したホルダ35に接合される。
【0015】
左右対称形状となっているアーム13aに関する静電アクチュエータ14aとアーム13bに関する静電アクチュエータ14bとは、同一構造を有している。固定電極15aおよび可動電極16aは、いずれも櫛歯形状を有しており、互いの櫛歯同士が隙間を介して噛み合うような状態で対向配置されている。固定電極15aは台座11上に形成されている。一方、可動電極16aは、細いビーム状の支持部17aによって台座11に弾性的に固定されている。固定電極15bおよび可動電極16bも同様の構造となっている。
【0016】
アーム13a,13bは、それぞれ細いビーム状のアーム支持部19a,19bを介して台座11に弾性的に固定されている。アーム13aと可動電極16aとは連結部18aによって連結され、アーム13bと可動電極16bとは連結部18bによって連結されている。
【0017】
左側のアーム13aには端子12cが接続され、固定電極15aには端子12aが接続され、可動電極16aには端子12bが接続されている。一方、右側のアーム13bには端子12dが接続され、可動電極16bには端子12eが接続され、固定電極15bには端子12fが接続されている。端子12a,12b,12e,12f,12gは電圧を印加するための端子である。端子12c,12dは、アーム13a,13b間に作用する電気量などを検出するために設けられている。そのため、アーム13a,13bは、それぞれ可動電極16a,16bとは絶縁されている。また、端子12gは、台座11が浮遊電極となるのを防止するためのアース端子である。
【0018】
図3の固定電極15aと可動電極16aとの間に電圧を印加すると、可動電極16aが固定電極15aに近づく方向(図示右方向)に動くことにより、アーム13aがアーム13bに近づく方向(図示右方向)に駆動される。電圧印加を解除すると、アーム13aは元の位置へ復帰する。右側のアーム13bについては動作が反転するだけであり、同様に、可動電極16bが固定電極15bに近づく方向(図示左方向)に動くことにより、アーム13bがアーム13aに近づく方向(図示左方向)に駆動される。その結果、アーム13aとアーム13bとの間に微小物体を把持したり、微小物体の把持を解除したりすることができる。
【0019】
図4はホルダ35に取り付けられたナノピンセット10を示す図であり、(a)は正面図、(b)は側面図である。ナノピンセット10は、セラミックスなどの絶縁部材を平板状に形成したホルダ35に接合され、ホルダ35と一体化されている。各端子12a~12gは、Auワイヤにより対応する配線パターン36a~36gに接続されている。配線パターン36gはアースされている。配線パターン36a~36fは、過電圧印加防止用のチップ抵抗Rを介して配線パターン36gに接続されている。チップ抵抗Rは、外界の電磁波による交番電界によって導線に生じる起電力が静電アクチュエータ14a,14b等に印加されるのを防止する目的で設けられたものである。
【0020】
電源回路の配線長さや周囲の環境によっては、上述の交番電界による周期的に変化する起電力がアーム13a,13bの開閉に必要な電圧を大きく越えてしまう可能性がある。そのような過大な起電力が静電アクチュエータ14a,14b等に印加されると、アーム13a,13bの先端が過度に振動し、互いに接触して破損をもたらしたり、ナノピンセット10の内部で絶縁破壊を引き起こしたりするおそれがある。上記チップ抵抗Rは、このような過電圧が印加されるのを防止するため設けられている。
【0021】
配線パターン36a,36b,36e,36fはケーブル39により不図示のDC電源に接続されている。ケーブル39と配線パターン36a,36b,36e,36fとの接続部分およびAuワイヤ37による接続部分には、配線外れ防止の補強のために樹脂38a,38bが塗布される。なお、チップ抵抗Rの代わりにダイオードを用いても良く、同様に過電圧が印加されるのを防止することができる。
【0022】
図5は、サイド照明340による照明方法を説明する図である。xyステージ26上に載置された透明基板28には、観察試料281を収容する凹部280が形成されている。凹部280の平面視形状(z軸負方向から見た形状)は直径1mm程度の円形であるが、凹部280の形状は必ずしも
図5に示す形状に限定されない。なお、凹部280は、透明基板28に複数形成されていても良い。
図5に示す例では、凹部280には複数の細胞281a,281bを含んだ緩衝液と呼ばれる液体281cが観察試料281として収容されている。細胞281aは異常細胞であって蛍光物質によって染色されている。細胞281bは正常細胞である。
【0023】
本実施の形態の顕微鏡装置2は観察試料281を蛍光観察する場合の構成を示している。落射照明用光源24の照明光を励起フィルタ200に通すと、励起フィルタ200から励起光L1が出射される。励起光L1はダイクロイックミラー201により反射され、対物レンズ21に入射して観察試料281に照射される。蛍光物質によって染色されている細胞281aからは蛍光L2が放射され、蛍光L2は対物レンズ21を通ってダイクロイックミラー201に入射する。蛍光L2はダイクロイックミラー201を透過し、吸収フィルタ202を通って接眼レンズ23や撮像装置27へと向かう。対物レンズ21からの観察光には励起光L1の反射光や散乱光も含まれているので、それらを吸収フィルタ202で除去する。
【0024】
このようにして観察された細胞281aは、ナノピンセット10のアーム13a,13bでピックアップして採取され、さらに詳細な検査が行われる。そのためには、細胞281aと共にアーム13a,13bも観察できなければならない。本実施の形態におけるナノピンセットシステム1は、アーム13a,13bを照明するためのサイド照明340を備えている。サイド照明340には、LED光源やハロゲン光源等の白色光源を用いるのが好ましい。
【0025】
図5に示すように、サイド照明340の照明光L3は、対物レンズ21の光軸の軸外から対物レンズ21の光軸方向へと照射される、サイド照明340の光軸は透明基板28の側面284の法線nに対して角度θ1[deg]に設定されている。凹部280が形成された透明基板28は矩形の板材であって、側面284は表面282および裏面283に対してほぼ垂直に形成されている。そのため、サイド照明340の光軸は対物レンズ21の光軸に対して90-θ1[deg]の角度を成している。なお、xyステージ26上に載置された透明基板28の表裏面282,283は、対物レンズ21の光軸に対して垂直であると仮定して説明する。なお、本実施の形態では、透明基板28をxyステージ26上に載置した場合における透明基板28のxyステージ26側の面を裏面283と称し、透明基板28の裏面283とは反対側の面を表面282と称することにする。
【0026】
透明基板28の材料にはサイド照明340の光を透過可能な材料であれば種々のものが使用可能であり、例えば、ガラスや透明なプラスチック材等が用いられる。プラスチック材としては、例えば、ポリスチレンやアクリル樹脂やジメチルポリシロキサン(PDMS:Polydimethylsiloxane)等を使用される。各材料の屈折率は、ガラスが1.4~1.5程度、ポリスチレンが1.6程度、アクリル樹脂が1.6程度、PDMSが1.4程度であり、水は1.3程度である。
【0027】
サイド照明340の角度θ1は、側面284から入射したサイド照明340の照明光L3が透明基板28の表面282および裏面283で全反射される角度に設定される。例えば、透明基板28の屈折率を1.6とした場合、全反射の臨界角θmはsinθm=1/1.6からθm≒38.68となる。よって、
図5において角度θ3をθ3≧38.7[deg]に設定すれば透明基板28の裏面283で全反射される。一方、側面284から透明基板28内に入射する照明光L3の角度θ2は、θ2≦θm(≒38.68[deg])の角度となる。角度θ3はθ3=90-θ2なので、角度θ2がθ2<θmである場合には上述の条件θ3≧38.7[deg]を自動的に満足している。
【0028】
すなわち、透明基板28の屈折率が1.6の場合には、サイド照明340の角度θ1がどのような値であっても、透明基板28に入射した照明光L3は表裏面282,283で全反射されることになる。言い換えると、サイド照明340を
図5の破線L(側面284と一致する直線)よりも図示右側(側面284に関して対物レンズ21の光軸とは反対の側)に配置して、透明基板28の側面284に照明光L3が入射するようにすれば、照明光L3は表裏面282,283で全反射される。
【0029】
次に、透明基板28の屈折率が1.4の場合について考える。屈折率が1.4の場合の臨界角θmはθm≒45.58[deg]となり、照明光L3が表裏面282,283で全反射されるためには、θ3=90-θ2≧45.58[deg]のように設定する必要がある。このとき、θ2≦44.42[deg]となるので、スネルの法則により入射角θ1にはθ1≦78.48[deg]という条件が課せられる。
【0030】
このように、透明基板28に用いられる材料の屈折率に応じて照明光L3の入射角θ1に課せられる条件は異なるが、照明光L3を対物レンズ21の光軸の軸外から対物レンズ21の光軸方向へと照射することで、凹部280の液体281cに浸かったアーム13a,13bの先端部分を照明することができる。なお、サイド照明340から出射される光が全てL3の方向に揃っている場合を除き、照明光L3が開き角度を有する光束である場合には、水平方向から側面284に対して垂直に照明した場合でも、透明基板28内を斜めに進行して表裏面282,283で全反射される光線が存在し、アーム13a,13bが照明されることになる。
【0031】
このように、照明光L3を透明基板28と透明基板28に接する空気との境界である界面(表裏面282,283)で全反射させるためには、透明基板28に対するサイド照明340の配置が重要である。そのため、本実施の形態では、サイド照明340のz方向位置および角度θ1を調整できるような構成とした。
【0032】
図11は、操作ツール照明装置34の詳細を示す図である。操作ツール照明装置34は、
図1,2に示したサイド照明340、位置調整部341および支持アーム342に加えて、角度調整用のボルト343とz位置調整用のボルト344とを備えている。位置調整部341はボルト344により支持アーム342に固定されている。支持アーム342にはz軸方向に長い長穴342aが形成されており、ボルト344は長穴342aを貫通して位置調整部341のネジ穴341aに螺合している。サイド照明340は、ボルト343により位置調整部341に固定されている。
【0033】
サイド照明340の照明光L3の角度を調整する場合には、ボルト343を緩めてサイド照明340の傾き(対物レンズ21の光軸に対する傾き)を調整する。その結果、透明基板28の屈折率に応じて、照明光L3の入射角度θ1を最適に調整することができる。また、サイド照明340のz軸方向位置を調整する場合には、ボルト344を緩めて、支持アーム342に対する位置調整部341のz軸方向位置を調整する。その結果、xyステージ26(
図2参照)の高さや透明基板28を厚さに応じて、サイド照明340の高さを最適に調整することができる。
【0034】
なお、上述した説明では、サイド照明340の角度および高さを調整できるような構成としたが、一定の角度および高さで支持アーム342に固定する構成であっても良い。また、位置調整部341に角度変更用アクチュエータおよび角度検出センサを設けて、角度検出センサの検出値およびxy方向移動部31の位置検出装置の検出値に基づいて、サイド照明340の角度θ1を自動で所定の角度に調整するようにしても良い。
【0035】
本実施の形態では、
図11に示すように角度調整部であるボルト343を備えたので、透明基板28の屈折率に応じて、透明基板28に入射する照明光L3の光軸の対物レンズ21の光軸に対する角度を、透明基板28に入射した照明光L3の一部が透明基板28の界面に対する全反射条件を満たす範囲に調整することができる。また、透明基板28のy軸方向の寸法が異なる場合も、ボルト343を緩めてサイド照明340の角度を調整することで、照明光L3が透明基板28の側面284に確実に入射するように角度θ1を調整することができる。
【0036】
上述のように
図5の角度θ1を設定することで、透明基板28内に入射した照明光L3内の全反射条件を満たすものは入射側の側面284から反対方向の側面側へと透明基板28内を進行することになる。透明基板28と液体281cとの間の屈折率差は小さいのでこれらの境界面では全反射はほぼ生じず、
図5に示すように、透明基板28内を図示左方向へ進む光は凹部280に収容された液体281c内へ進入する。その結果、液体281c内に浸かっているアーム13a,13bは照明光L3により照明され、アーム13a,13bの先端面で反射・散乱される。
【0037】
アーム13a,13bの先端面で反射・散乱された光L4の一部は、対物レンズ21を通ってダイクロイックミラー201に入射する。上述したように、サイド照明340の光源には白色光源が用いられるので、光L4の内でダイクロイックミラー201を透過する波長成分はダイクロイックミラー201を透過して接眼レンズ23および撮像装置27に導かれる。その結果、
図6に示すように、観察画像40内に、蛍光により光っている細胞(異常細胞)281aとサイド照明340により照明されているアーム13a,13bの先端面131の像(以下では、アーム像と称する)131A,131Bが観察される。
【0038】
上述のように、本実施の形態では、サイド照明340は、対物レンズ21の光軸の軸外から、顕微鏡装置2のxyステージ26上に載置された透明基板28に照明光L3を入射する。その際、透明基板28に対して、入射した照明光L3の一部が透明基板28の界面に対する全反射条件を満たすように照明光L3を入射させる。透明基板28に入射した照明光L3は、透明基板28と透明基板28に接する空気との境界である界面で全反射されて透明基板28上の観察試料281に導かれ、観察試料281の操作対象である細胞281aを操作する操作ツールであるアーム13a,13bを照明する。
【0039】
観察画像40内のアーム像は、アーム13a,13bの先端面で反射・散乱された照明光L3が対物レンズ21を通ることにより観察される。そのため、アーム13a,13bの先端面131に金属膜(例えば、Auの膜)を形成することで反射率が向上し、より明るいアーム像が得られる。また、視認性を確保しつつサイド照明340の照度を抑えることができる。金属膜は、アーム13a,13bの少なくとも先端面131を含む先端領域に形成するのが好ましい。なお、
図5に示す例では、アーム13a,13bの先端面131を対物レンズ21の光軸に垂直な面としているが、先端面131を傾斜面としても良い。
【0040】
顕微鏡の焦点深度は比較的浅く、顕微鏡観察時には観察試料281の細胞281a,281bにピントが合っている。アーム13a,13bの先端面131が焦点深度の範囲内にあればアーム像はシャープであるが、先端面131が液面近くであって焦点深度の範囲から外れてしまうとぼやけたアーム像となる。また、液体281cの屈折率が水の屈折率(1.333)と同程度であると仮定すると、液面から空気中に出射される照明光L3は少ない。そのため、アーム13a,13bの先端面131が液体281cの外へ出てしまうと、アーム13a,13bは非常に弱い照明光で照明されると共にぼやけたアーム像となり、アーム13a,13bはほとんど観察されなくなる。
【0041】
次に、ナノピンセットシステム1を用いた細胞281aの捕集動作の手順について説明する。まず、
図7のブロック図を用いて、制御部も含むナノピンセットシステム1の概略構成を説明する。なお、
図7はナノピンセットシステム1の概略構成を示すブロック図であるが、捕集動作の説明に必要な他の構成も記載した。
【0042】
図7において、ナノピンセットシステム1は、前述した
図1にも示したように、ナノピンセット10とxy方向移動部31、z方向移動部33およびサイド照明340と、それらを制御する制御装置60とを備えている。制御装置60は、xy方向移動部31およびz方向移動部33を制御する移動制御部600と、ナノピンセット10のアーム13a,13bの開閉動作を制御する開閉制御部601と、サイド照明340のオンオフおよび照度を制御する照明制御部602と、外部からの指令が入力される入力部603を備えている。図示は省略したが、入力部603にはオペレータが操作して移動指令や開閉指令や照明に関する指令を入力するための操作部(スイッチやジョイスティック等)が設けられている。
【0043】
図示していないが、xy方向移動部31およびz方向移動部33にはそれらの位置を検出するための位置検出装置(例えば、エンコーダ等)がそれぞれ設けられており、位置検出装置で検出された位置情報は移動制御部600に入力される。移動制御部600は、それらの位置情報に基づいてxy方向移動部31およびz方向移動部33の位置を制御する。初期状態ではxy方向移動部31およびz方向移動部33は原点位置に位置決めされており、そのときナノピンセット10は
図5に示した対物レンズ21の光軸上に位置決めされる。
【0044】
顕微鏡装置2には、xyステージ26を駆動制御するステージ制御部210と、ステージ制御部210への移動指令を手動入力するための入力装置211とが設けられている。xyステージ26はステージ位置を検出する位置検出装置が設けられており、ステージ制御部210は位置検出装置からの位置情報に基づいてxyステージ26の位置を制御する。また、顕微鏡装置2の撮像装置27から出力される撮像データは、顕微鏡用ソフトウェアがインストールされたPC(パーソナルコンピュータ)300に入力される。PC300は画像処理装置として機能し、PC300に接続された表示装置301に観察画像を表示する。なお、顕微鏡装置2の入力装置211に代えて、PC300から移動指令をステージ制御部210に入力するようにしても良い。
【0045】
図8は、ナノピンセットシステム1を用いた細胞281aの捕集動作手順の一例を示すフローチャートである。ステップS10では、ステージ制御部210は、透明基板28が載置された顕微鏡装置2のxyステージ26を移動して、観察試料281が収容されている凹部280を対物レンズ21の光軸上に位置決めする。凹部280の位置情報は入力装置211により予め入力されている。ステップS20では、オペレータは、観察試料281を蛍光観察して異常細胞である細胞281aの位置を確認する。
【0046】
ステップS30では、照明制御部602は入力部603に入力される照明点灯指令に基づいて、サイド照明340を点灯する。オペレータはナノピンセットシステム1の入力部603を操作して、照明制御部602に照明点灯指令を入力する。ステップS40では、移動制御部600は、入力部603に入力されるz軸正方向の移動指令に基づいてz方向移動部33を移動し、ナノピンセット10を降下させる。オペレータは、表示装置301に表示された観察画像40を見ながら、または、接眼レンズ23で観察しながら、入力部603を操作してz方向移動部33をz軸正方向へ移動させる移動指令を入力する。
【0047】
ステップS50では、ナノピンセット10のアーム13a,13bが視認可能となった否かを判定する。判定は、オペレータが観察画像を見て判断しても良いし、PC300にインストールされた顕微鏡用ソフトウェアによって自動的に判定しても良い。上述したように初期状態ではナノピンセット10は対物レンズ21の光軸上に位置している。アーム13a,13bの先端部分が液体281cの液面よりも降下して液体281cに浸かると、アーム13a,13bの先端面131が照明光L3により照明されて光り、アーム像131A,131Bが
図9(a)のように視野中央(観察画像40の中央)に観察されることになる。
図9(a)では、アーム像131A,131Bを破線で表示することで、アーム像131A,131Bがぼけていることを表現している。
【0048】
アーム13a,13bの先端面131が液面付近に浸かっている場合には、焦点深度範囲から外れているのでアーム像131A,131Bは
図9(a)のようにぼけているが、ナノピンセット10が降下してアーム13a,13bの先端面131が焦点深度範囲に近づくとアーム像131A,131Bは徐々にシャープになる。そこで、観察画像40内におけるアーム13a,13bの位置が認識できる程度までアーム像131A,131Bのぼけが低減したならば、オペレータは視認可能と判断する。
【0049】
オペレータは、観察画像40内におけるアーム13a,13bの位置が認識できる程度までアーム像131A,131Bのボケが低減したならば、アーム13a,13bが視認可能と判断し、z軸正方向への移動を停止する命令を入力部603により入力する。ステップS60では、移動制御部600は、入力部603により入力されたz軸正方向への移動を停止する命令に基づいて、z方向移動部33のz軸正方向への移動を停止する。その結果、ナノピンセット10の降下が停止する。
【0050】
ステップS70では、移動制御部600は、入力部603により入力されたxy方向移動指令に基づいてxy方向移動部31を移動し、アーム13a,13bを細胞281aの位置へ移動させる。オペレータは、制御装置60の入力部603を操作してxy方向移動指令を入力する。
図9(b)に示すように観察画像40内において一対のアーム像131A,131Bの間にピックアップすべき細胞281aが位置したら、オペレータは、xy方向移動指令の入力を停止する。
【0051】
ステップS80では、開閉制御部601は、入力部603により入力されるオペレータの閉動作指令に基づいてアーム13a,13bの閉動作を行わせ、アーム13a,13bによって細胞281aを把持させる。次いで、オペレータによりピックアップ指令が入力部603により入力されると、ステップS90において、移動制御部600は、xy方向移動部31およびz方向移動部を移動して、細胞281aをアーム13a,13bで把持した状態のナノピンセット10を所定位置(例えば、初期位置)まで移動させる。この所定位置は、xyステージ26を移動しても透明基板28とナノピンセット10とが干渉しない位置に設定される。
【0052】
ステップS100では、オペレータは、顕微鏡装置2の入力装置211を操作して、xyステージ26上に載置された捕集容器212が対物レンズ21の光軸上に位置するようにxyステージ26を移動させる。ステップS110では、オペレータは、アーム13a,13bで把持している細胞281aを捕集容器212(
図7参照)へ移動させる。具体的には、オペレータは、入力部603を操作してz方向移動部33を移動させてナノピンセット10を捕集容器212の上方所定位置まで下げた後に、開閉制御部601によりアーム13a,13bを開動作させ、細胞281aを捕集容器212内へリリースさせる。
【0053】
図5に示した例では、透明基板28に凹部280が1つ形成されている場合を示した。
図10に示す透明基板28のように複数の凹部280a~280lが形成されている場合、それぞれの凹部280a~280lに観察試料281が収容される。そして、各凹部280a~280lの観察試料281に含まれている細胞(異常細胞)281aに対して、
図8に示した捕集動作が行われることになる。
【0054】
ところで、細胞281aに照明光L3が長時間照射されると細胞281aの蛍光物質からの蛍光が減光されやすくなるので、照明光L3を細胞281aに長時間照射するのは好ましくない。
図1に示したナノピンセットシステム1では、光束の断面積が比較的小さなスポット状のサイド照明340をナノピンセット10と一体で移動させて、アーム13a,13bの先端領域を照明するような構成としている。そのため、
図10に示すように凹部280eの観察試料281を操作する場合には、凹部280a~280c,280g~280lに収容されている観察試料281にサイド照明340の照明光L3が入射するのを低減することができる。なお、ナノピンセット10のアーム13a,13bの先端部分の厚さ寸法は1~60μm程度なので、照明光L3の光束の直径は1mm程度あれば十分である。
【0055】
さらにまた、サイド照明340を顕微鏡装置2のxyステージ26上に設置するようにしても良い。その場合、
図10に示すように透明基板28に複数の凹部280a~280lが形成されている場合は、凹部280a~280lのいずれにナノピンセット10が移動しても、アーム13a,13bの先端領域がサイド照明により照明されるようにするために、透明基板28の一側面全体に照明光L3を入射できるようなバー状のサイド照明340aを用いるのが好ましい。
【0056】
図5に示す例では、透明基板28の凹部280に収容された観察試料281をナノピンセット10で操作する場合を例に説明したが、例えば、
図12,13に示すようなスライドガラス29上に保持された観察試料281に関しても同様に適用することができる。
図12は観察試料281が保持されたスライドガラス29の一例を示す図であり、(a)は平面図、(b)は断面図である。透明基板であるスライドガラス29上には、観察試料281を保持するための枠291が設けられている。矩形リング状の枠291は、例えばアクリル材で形成される。もちろん、枠291の形状は矩形リング状に限定されず円形リング状等であっても良いし、材質についてもアクリル材に限定されない。
【0057】
図12のようなスライドガラス29を透明基板として使用する場合も、
図13に示すようにサイド照明340をスライドガラス29の側方に配置し、サイド照明340の照明光L3を、スライドガラス29を介してアーム13a,13bの先端領域を照明する。スライドガラス29の側面294からスライドガラス29内に入射した照明光L3は、スライドガラス29の表面292および裏面293で全反射され、観察試料281の液体281cに進入し、アーム13a,13bの先端領域を照明する。
【0058】
上述した実施の形態では、観察試料281を操作する操作ツールがナノピンセット10である場合について説明したが、サイド照明340は、ナノピンセット10以外の操作ツールの照明にも適用することができる。例えば、操作ツールとして観察試料中の細胞を吸引するガラス製細管の場合には、細管の先端に照明光L3を反射する金属膜を形成することで、照明光L3によって照明された細管先端部を容易に観察することが可能となる。
【0059】
なお、上述した実施の形態では、サイド照明340をxyステージ26の透明基板28を載置する面(載置面)よりも上方側(ナノピンセット10が配置される側)に配置し、透明基板28の側面284に照明光L3を入射させた。しかし、xyステージ26の載置面よりも下方側(対物レンズ21側)にサイド照明340を配置するスペースが確保でき、照明光L3がxyステージ26により遮られない場合には、xyステージ26の載置面よりも下方側にサイド照明340を配置して、載置面よりも下方側から透明基板28の側面284に照明光L3を入射させるようにしても良い。その場合も、載置面よりも上方側から照明光L3を入射させる場合と同様に、照明光L3を透明基板28内で全反射させて液体281c内のアーム13a,13bを照明することができる。
【0060】
上述のように、本実施の形態の操作ツール照明装置34は、透明基板28上の観察試料281中の操作対象である細胞281aを操作ツールであるナノピンセット10で操作しつつ観察を行う倒立型の顕微鏡装置2に用いられる。そして、透明基板28を介してナノピンセット10を照明する照明光L3を出射する照明部であるサイド照明340と、透明基板28に入射する照明光L3の光軸の、顕微鏡装置2の対物レンズ21の光軸に対する角度を調整する角度調整部であるボルト343を備える。
【0061】
角度調整部であるボルト343を調整することにより、透明基板28に入射する照明光L3の光軸の、対物レンズ21の光軸に対する角度を、透明基板28の屈折率に応じて適切に調整することができる。そのように調整することで、サイド照明340は、照明光L3を透明基板28に入射し、透明基板28を介してナノピンセット10を照明する。ナノピンセット10は、サイド照明340から出射された照明光L3により透明基板28を介して照明されることにより、顕微鏡観察視野内にて光って見える。オペレータは、接眼レンズ23を通して観察される観察像、または、PC300にインストールされた顕微鏡用ソフトウェアにより表示装置301の観察画像により、観察試料281中の操作対象物である細胞181aを操作しているナノピンセット10のアーム13a,13bの識別が可能となる。
【0062】
上記では、種々の実施の形態および変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0063】
1…ナノピンセットシステム、2…顕微鏡装置、10…ナノピンセット、13a,13b…アーム、21…対物レンズ、26…xyステージ、28…透明基板、29…スライドガラス、31…xy方向移動部、32,342…支持アーム、33…z方向移動部、34…操作ツール照明装置、131…先端面、281…観察試料、281a,281b…細胞、340,340a…サイド照明、341…位置調整部、343,344…ボルト、L3…照明光