(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-28
(45)【発行日】2022-10-06
(54)【発明の名称】両性界面活性剤を含む研磨用組成物
(51)【国際特許分類】
C09K 3/14 20060101AFI20220929BHJP
C09G 1/02 20060101ALI20220929BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20220929BHJP
B24B 37/00 20120101ALI20220929BHJP
【FI】
C09K3/14 550Z
C09K3/14 550D
C09G1/02
H01L21/304 622D
B24B37/00 H
(21)【出願番号】P 2019513568
(86)(22)【出願日】2018-04-10
(86)【国際出願番号】 JP2018015089
(87)【国際公開番号】W WO2018193916
(87)【国際公開日】2018-10-25
【審査請求日】2020-12-24
(31)【優先権主張番号】P 2017081531
(32)【優先日】2017-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】特許業務法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】境田 広明
(72)【発明者】
【氏名】石水 英一郎
【審査官】上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-190363(JP,A)
【文献】国際公開第2016/132951(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/012159(WO,A1)
【文献】特開2009-187986(JP,A)
【文献】特開2013-251561(JP,A)
【文献】特開2016-194006(JP,A)
【文献】特開2015-233031(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/14
C09G 1/02
H01L 21/304
B24B 37/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水、シリカ粒子、アルカリ性物質、及び式(1)で示される両性界面活性剤:
【化1】
(式(1)中、R
1は炭素原子数10~20のアルキル基、又はアミド基を含む炭素原子数1~5のアルキル基であり、R
2及びR
3はそれぞれ独立して、炭素原子数1~9のアルキル基であり、X
-はカルボン酸イオン又はスルホン酸イオンを含む炭素原子数1~5の陰イオン性有機基である。)
を含
み、
研磨後のウェハーにおける中央部と周辺部の高低差が100nm以下である、レーザーマーク部分の研磨用組成物。
【請求項2】
上記のアミド基が炭素原子数10~20のアルキル基を有するアミド基である請求項1に記載の研磨用組成物。
【請求項3】
式(1)で示される両性界面活性剤は、式(1)中、R
1が炭素原子数10~20のアルキル基であり、X
-がカルボン酸イオンを含む炭素原子数1~5の陰イオン性有機基であり、R
2及びR
3がメチル基である化合物、又は式(1)中、R
1が炭素原子数10~20のアルキル基を有するアミド基を含む炭素原子数1~5のアルキル基であり、X
-がスルホン酸イオンを含む炭素原子数1~5の陰イオン性有機基であり、R
2及びR
3がメチル基である化合物である請求項1に記載の研磨用組成物。
【請求項4】
シリカ粒子が5~100nmの平均一次粒子径を有するシリカ粒子の水性分散体の形態に
あるシリカ粒子である請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の研磨用組成物。
【請求項5】
アルカリ性物質がアルカリ金属水酸化物、アンモニウム塩、水酸化第4級アンモニウム、有機アミン、又はアルカリ金属炭酸塩である請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の研磨用組成物。
【請求項6】
更にキレート剤を含む請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の研磨用組成物。
【請求項7】
研磨用組成物中、シリカ粒子が0.05~50質量%、アルカリ性物質が0.01~30質量%、両性界面活性剤が1~10000ppmそれぞれ含まれ、残部が水である請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の研磨用組成物。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の研磨用組成物を用いてウェハーを研磨する工程を含むウェハーの製造方法。
【請求項9】
ウェハーの研磨工程が、ウェハーの中央部と周辺部の高低差が100nm以下になるまで研磨を行う請求項8に記載のウェハーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はウェハー表面の研磨に用いられる研磨用組成物に係り、特にウェハーの研磨工程でウェハー中央部と周辺部(例えばレーザーマーク部分とも呼ぶ)の高低差がなく、フラットな研磨面にするための研磨用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に電子産業における基板用ウェハーの製造方法は、1)単結品インゴットをスライスして薄円板状のウェハーを得るスライス工程と、2)該ウェハーの外周部を面取りする面取り工程と、3)面取りしたウェハーを平坦化するラッピング工程と、4)ラッピングしたウェハーの加工歪みを除去するエッチング工程と、5)エッチングされたウェハーの表面を鏡面化する研磨工程と、6)研磨されたウェハーを洗浄する洗浄工程から構成されている。
【0003】
これら研磨剤にはPVPや第4級アンモニウム塩や界面活性剤等の種々の添加剤の適用が成されてきた。
例えば、ポリスチレン樹脂、( メタ) アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ゴム系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂等が挙げられ、熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂等の重合性樹脂と、アミン化合物、第4級アンモニウム塩、ベタイン等のカチオン性化合物を組み合わせた研磨用組成物が開示されている(特許文献1、2参照)。
【0004】
上記5)研磨工程は、研磨液組成物を研磨パッド表面に供給しながら、被研磨物であるウェハーを研磨パッドに圧接し相対移動させることにより行われる。その研磨工程は、1次研磨、2次研磨、最終研磨の複数段階からなるのが一般的である。1次研磨及び2次研磨は、ラッピングやエッチング工程で生じたウェハー表面の深い傷を除去することを目的として行なわれる。
【0005】
一方、最終研磨は1次研磨及び2次研磨後に残存した微小な表面欠陥を除去し、高精度に平坦化することを目的として行なわれる。
この最終研磨工程後のウェハーの中心部と周辺部(レーザーマーク部分とも呼ばれる)との高低差が生じる場合があり問題となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2004-204098
【文献】特開2004-247542
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はウェハーの研磨工程でウェハーの中心部と周辺部(レーザーマーク部分)の高低差が小さいフラット研磨面を与える研磨用組成物と、それを用いたウェハーの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明は第1観点として、水、シリカ粒子、アルカリ性物質、及び式(1)で示される両性界面活性剤:
【化1】
(式(1)中、R
1は炭素原子数10~20のアルキル基、又はアミド基を含む炭素原子数1~5のアルキル基であり、R
2及びR
3はそれぞれ独立して、炭素原子数1~9のアルキル基であり、X
-はカルボン酸イオン又はスルホン酸イオンを含む炭素原子数1~5の陰イオン性有機基である。)
を含む研磨用組成物、
第2観点として、上記のアミド基が炭素原子数10~20のアルキル基を有するアミド基である第1観点に記載の研磨用組成物、
第3観点として、式(1)で示される両性界面活性剤は、式(1)中、R
1が炭素原子数10~20のアルキル基であり、X
-がカルボン酸イオンを含む炭素原子数1~5の陰イオン性有機基であり、R
2及びR
3がメチル基である化合物、又は式(1)中、R
1が炭素原子数10~20のアルキル基を有するアミド基を含む炭素原子数1~5のアルキル基であり、X
-がスルホン酸イオンを含む炭素原子数1~5の陰イオン性有機基であり、R
2及びR
3がメチル基である化合物である第1観点に記載の研磨用組成物、
第4観点として、シリカ粒子が5~100nmの平均一次粒子径を有するシリカ粒子の水性分散体の形態にあるシリカ粒子である第1観点乃至第3観点のいずれか一つに記載の研磨用組成物、
第5観点として、アルカリ性物質がアルカリ金属水酸化物、アンモニウム塩、水酸化第4級アンモニウム、有機アミン、又はアルカリ金属炭酸塩である第1観点乃至第4観点のいずれか一つに記載の研磨用組成物、
第6観点として、更にキレート剤を含む第1観点乃至第5観点のいずれか一つに記載の研磨用組成物、
第7観点として、研磨用組成物中、シリカ粒子が0.05~50質量%、アルカリ性物質が0.01~30質量%、両性界面活性剤が1~10000ppmそれぞれ含まれ、残部が水である第1観点乃至第6観点のいずれか一つに記載の研磨用組成物、
第8観点として、第1観点乃至第7観点のいずれか一つに記載の研磨用組成物を用いてウェハーを研磨する工程を含むウェハーの製造方法、及び
第9観点として、ウェハーの研磨工程が、ウェハーの中央部と周辺部の高低差が100nm以下になるまで研磨を行う第8観点に記載のウェハーの製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の研磨用組成物ではウェハーの研磨工程でウェハーの中心部と周辺部(レーザーマーク部分)の高低差が小さいフラットな研磨面を与えることができる。
このレーザーマーク部分、いわゆる研磨端面での研磨残りが生じないように研磨する上で、研磨用組成物中に含まれるシリカ粒子と水以外の成分の役割が大きい。本発明ではアルカリ性物質と式(1)で示される両性界面活性剤の組み合わせにより上記問題を解決することができる。
【0010】
式(1)で示される両性界面活性剤は、分子内に第4級アンモニウムに基づくカチオン部分と、陰イオン構造に基づくアニオン部分を有する分子内塩の構造を有する。カチオン部分を構成する窒素原子に結合するR1、R2、R3の有機基のうち、R1は長鎖炭化水素構造を有し、R2及びR3が短鎖炭化水素構造を有する非対称構造を有することで上記問題を解決することができた。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本願発明は水、シリカ粒子、アルカリ性物質、及び式(1)で示される両性界面活性剤を含む研磨用組成物である。
式(1)中、R1は炭素原子数10~20のアルキル基、又はアミド基を含む炭素原子数1~5のアルキル基であり、R2及びR3はそれぞれ独立して、炭素原子数1~9のアルキル基であり、X-はカルボン酸イオン又はスルホン酸イオンを含む炭素原子数1~5の陰イオン性有機基である。X-の炭素原子数1~5の陰イオン性有機基において、炭化水素部分はヒドロキシル基等の置換基を有することができる。
【0012】
上記のアミド基が炭素原子数10~20のアルキル基を有するアミド基とすることができる。
【0013】
上記炭素原子数1~5のアルキル基は例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、シクロプロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、1-メチル-n-ブチル基等があげられる。
【0014】
炭素原子数1~9のアルキル基は、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、シクロプロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、1-メチル-n-ブチル基、オクチル基等があげられる。
【0015】
また、炭素原子数10~20のアルキル基は、例えば炭素原子数11のウンデシル基、炭素原子数12のラウリル基、炭素原子数13のトリデシル基、炭素原子数14のミリスチル基、炭素原子数15のファルネセン基、炭素原子数16のパルミチル基、炭素原子数17のマルガリル基、炭素原子数18のステアリル基等があげられる。
【0016】
上記式(1)で示される両性界面活性剤はベタイン型、アルキルベタイン型、スルホベタイン型のベタイン化合物を用いることができる。
【0017】
ベタイン型化合物としてはヤシ油ジメチルアミノ酢酸ベタイン(式(1-1))があげられ、アルキルベタイン型化合物としてはラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン(式(1-2))があげられ、スルホベタイン型化合物としてはラウラミドプロピルヒドロキシスルタイン(式(1-3))があげられる。
【化2】
【0018】
ベタイン型化合物は、例えばヤシ油脂肪酸(例えばラウリン酸)とジメチルアミノプロピルアミンを加熱縮合させ、得られた生成物とクロロ酢酸ナトリウムを反応させることで得られる。
【0019】
また、アルキルベタイン型化合物は、例えば3級アルキルアミン(例えばラウリルジメチルアミン)とクロロ酢酸ナトリウムを反応させることで得られる。
【0020】
上記式(1)で示される両性界面活性剤の中でも、ベタイン型化合物よりも、スルホベタイン化合物と、アルキルベタイン型化合物が最も効果が高い。
【0021】
本発明において、式(1)中、R1が炭素原子数10~20のアルキル基であり、R2及びR3がメチル基であり、X-がカルボン酸イオンを含む炭素原子数1~5の陰イオンである両性界面活性剤を好ましく用いることができる。
【0022】
ウェハーの研磨後の研磨面の評価において、ベタイン型化合物を用いた研磨用組成物では ウェハー表面の中央部と周辺部(レーザーマーク部分)の高低差が100nm程度であるが、スルホベタイン化合物やアルキルベタイン型化合物ではそれらの値が0~60nmまで低減することが可能であり、より好ましい。
【0023】
研磨用組成物中で、式(1)で示される両性界面活性剤は1~10000ppm、100~5000ppm、又は300~4000ppmの範囲で用いることが好ましい。
【0024】
本発明に用いられるシリカ粒子は、5~100nmの平均一次粒子径を有するシリカ粒子の水性分散体の形態にあるシリカ粒子を用いることができる。これらの水性分散体はシリカゾルであり、シリカゾル中のシリカが本発明の研磨組成物中のシリカ粒子であり、シリカゾル中の水性媒体は研磨用組成物中の水に置き換わることができる。研磨用組成物中の水は、上記シリカゾル中の水に起因するが、それ以外に希釈水として加える水を加算することができる。
【0025】
本発明に用いられるシリ力粒子は、窒素吸着法から求められる平均一次粒子径が5~100nmのコ口イダルシリ力である。平均一次粒子径が5nmより小さいと研磨速度が低くなり、またシリ力粒子の凝集が起こりやすいために研磨液組成物の安定性が低くなる。平均一次粒子径が100nmより大きいとウェハー表面にスクラッチが発生しやすく、また研磨面の平坦性は悪くなる。
【0026】
シリ力粒子が水性媒体に分散されたシリ力ゾルに0.5μm以上の粗大粒子が含まれている場合には、その粗大粒子を除去することが好ましい。粗大粒子の除去には、強制沈降法や精密ろ過法が挙げられる。精密ろ過に使用するフィルターには、デプスフィルター、プリーツフィルター、メンブレンフィルター、中空糸フィルタ一等があり、いずれも使用することが出来る。また、フィルターの材質にはコットン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ナイロン、セルロース、ガラス等があるが、いずれも使用することが出来る。フィルターのろ過精度は絶対ろ過精度(99.9%以上補足される粒子の大きさ)で表されるが、前記シリカ粒子においては、生産効率(処理時間、フィルターの目詰まりの程度等)の観点から、絶対ろ過精度0.5μm~1.0μmのフィルターで処理することが好ましい。
【0027】
前記シリ力粒子の含有量は、ウェハーの研磨用組成物の全質量に対して、0.05~50質量%、好ましくは0.1~20質量%、更に好ましくは5~10質量%である。0.05質量%未満では研磨性能が十分に発揮できず、50質量%を超えると研磨用組成物の安定性が悪くなる。
【0028】
本発明に用いられるアルカリ化合物は、アルカリ金属水酸化物、アンモニウム塩、水酸化第4級アンモニウム、有機アミン、又はアルカリ金属炭酸塩があげられる。
【0029】
前記アルカリ金属水酸化物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等があげられる。特に水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。
【0030】
アルカリ金属炭酸塩は、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等が挙げられる。特に炭酸ナトリウム、又は炭酸カリウムが好ましい。
【0031】
アンモニウム塩としては、水酸化アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム等が挙げられる。その中でも水酸化アンモニウムが好ましい。
【0032】
第4級アンモニウム塩として、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化エチルトリメチルアンモニウム、水酸化ジエチルジメチルアンモニウム、水酸化トリエチルメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、塩化テトラメチルアンモニウム、塩化テトラエチルアンモニウム等が挙げられる。
【0033】
前記有機アミンとしては、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、N-メチル-N,N-ジエタノールアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、N,N-ジエチルエタノールアミン、N,N-ジブチルエタノールアミン、エチレンジアミン、ヘキサエチレンジアミン、エチルエチレンジアミンピペラジン・六水和物、無水ピペラジン、N-メチルピペラジン、ヒドロキシエチルピペラジン、N-アミノエチルピペラジン、1,3-プロパンジアミンN,N-ジメチルエチレンジアミン、ジエチレン卜リアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソブロパノールアミン等が挙げられ、その中でもモノエタノールアミン、エチレンジアミン、又はピペラジンが好ましい。
【0034】
前記アルカリ化合物の好ましい含有量は、使用するアルカリ化合物によって異なるが、本発明のウェハーの研磨用組成物の全質量に対して0.01~30質量%である。アルカリ化合物がアルカリ金属の無機塩である場合は0.01~1.0質量%が好ましく、第4級アンモニウム塩である場合は0.01~5.0質量%が好ましく、有機アミンの場合は0.01~1.0質量%が好ましい。該アルカリ化合物の含有量が0.01質量%未満では、加工促進剤としての作用が十分ではなく、逆に30質量%を超えても、研磨性能の更なる向上は期待でない。また、前記アルカリ化合物の内、2種以上を併用することも可能である。
【0035】
本発明では更にキレート化合物を添加することができる。キレート化合物としては例えば、エチレンジアミン四酢酸塩、エチレンジアミン二コハク酸塩、ニトリロ三酢酸塩、ジエチレントリアミン五酢酸塩、トリエチレンテトラミン六酢酸塩、ヒドロキシエタンホスホン酸塩等があげられる。キレート化合物の添加量は、本発明のウェハーの研磨用組成物の全質量に対して0.005~1.0質量%である。
【0036】
本発明のウェハーの研磨用組成物を適用できるウェハーとは、シリコンウェハー、SiCウェハー、GaNウェハー、GaAsウェハー、GaPウェハー、ガラスウェハー、アルミウェハー、サファイアウェハー等である。
【0037】
ウェハーを研磨するときの研磨装置には、片面研磨方式と両面研磨方式があり、本発明のウェハー用研磨液組成物は、いずれの装置にも用いることができる。
【0038】
本発明の研磨用組成物を用いて研磨を行うことにより、ウェハーの研磨工程でウェハーの中心部と周辺部(レーザーマーク部分)の高低差が小さいフラット研磨面を与えるウェハーを製造することができる。
【実施例】
【0039】
研磨特性の評価方法
市販のシリコンウェハーを以下の方法で研磨した。
1)研磨用組成物調製
窒素吸着法から求められる平均一次粒子径40nmのコロイダルシリカ(シリカゾルに基づくシリカ粒子)20質量%、と、塩基性化合物として、水酸化エチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド(ETMAH、試薬)1.0質量%、炭酸カリウム(K2CO3)2.0質量%、キレート剤として、エチレンジアミンテトラ酢酸ナトリウム(試薬)0.7質量%、各種添加剤を下記に示す割合で添加量し、残部は水となるような研磨用組成物を製造した。
2)研磨希釈液
研磨用組成物を、水で所定濃度に希釈し、10分撹拌し研磨用組成物とした。
3)研磨条件
研磨機:浜井産業社製両面研磨機13BF
荷重:150g/cm2
上定盤回転数:7rpm
下定盤回転数:20rpm
研磨パッド:発泡ポリウレタン製研磨パッド
研磨希釈液の供給量:6.0L/分
研磨時間:30分
シリコンウェハー:直径200mm、伝導型P型、結晶方位が<100>、抵抗率が100Ω・cm未満
4)洗浄条件
水洗浄を行った後、40℃に加温したSC1洗浄液(29%アンモニア水:30%過酸化水素水:水の重量比=1:1:28の洗浄液)で洗浄し、ウェハー表面の不純物を除去した。
5)レーザーマーク高さの測定方法
ケーエルエーテンコール社製触針式プロファイラーP-16を用い、一定幅(5mm)をスキャンして得られる粗さ曲線に対し、ウェハー表面の最も高い部分と最も低い部分の高さの差分を測定した。「レーザーマーク高さ」で示される100nm以下の値は良好な結果を示し、100nm以上の値は好ましくない結果であることを示す。
【0040】
<実施例1>
上記研磨用組成物調製で研磨用組成物に含まれる添加剤が、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン(日油社製、商品名ニッサンアノンBL-SF、式(1-2))で、添加量が研磨用組成物中に630ppmとなるように加えた。水を加え、研磨用組成物とし、シリコンウェハーを研磨した。引き続き洗浄し、レーザーマーク高さの測定を行った結果、レーザーマーク高さは100nm未満となり、良好な結果を得た。
【0041】
<実施例2>
上記研磨用組成物調製でラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン(日油社製、商品名ニッサンアノンBL-SF、式(1-2))の含有量が2100ppmとなるよう添加した以外は、実施例1と同様に行った結果、レーザーマーク高さは100nm未満となり、良好な結果を得た。
【0042】
<実施例3>
上記研磨用組成物調製でヤシ油ジメチルアミノ酢酸ベタイン(日油社製、商品名ニッサンアノンBF、式(1-1))の含有量が630ppmとなるよう添加した以外は、実施例1と同様に行った結果、レーザーマーク高さは100nm未満となり、良好な結果を得た。
【0043】
<実施例4>
上記研磨用組成物調製でヤシ油ジメチルアミノ酢酸ベタイン(日油社製、商品名ニッサンアノンBF、式(1-1))の含有量が2100ppmとなるよう添加した以外は、実施例1と同様に行った結果、レーザーマーク高さは100nm未満となり、良好な結果を得た。
【0044】
<実施例5>
上記研磨用組成物調製でラウラミドプロピルヒドロキシスルタイン(川研ファインケミカル社製、商品名ソフタゾリンLSB、式(1-3))の含有量が630ppmとなるよう添加した以外は、実施例1と同様に行った結果、レーザーマーク高さは100nm未満となり、良好な結果を得た。
【0045】
<実施例6>
上記研磨用組成物調製でラウラミドプロピルヒドロキシスルタイン(川研ファインケミカル社製、商品名ソフタゾリンLSB、式(1-3))の含有量が2100ppmとなるよう添加した以外は、実施例1と同様に行った結果、レーザーマーク高さは100nm未満となり、良好な結果を得た。
【0046】
<比較例1>
上記研磨用組成物調製で研磨用組成物に含まれる添加剤が、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(アクロス オルガニクス社製、式(2-1))で、添加量が研磨用組成物中に630ppmとなるように加えた。水を加え、研磨用組成物とし、シリコンウェハーを研磨した。引き続き洗浄し、レーザーマーク高さの測定を行った結果、レーザーマーク高さは1000nmであり、好ましくなかった。
【化3】
【0047】
<比較例2>
テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(東京応化工業(株)製、式(2-2))の含有量が630ppmとなるよう添加した以外は、比較例1と同様に行った結果、レーザーマーク高さは270nmであり、好ましくなかった。
【化4】
【0048】
<比較例3>
N-ラウロイル-N-メチルグリシン・Na(日油社製、商品名フィレットL、式(2-3))の含有量が630ppmとなるよう添加した以外は、比較例1と同様に行った結果、レーザーマーク高さは380nmであり、好ましくなかった。
【化5】
【0049】
<比較例4>
脂肪酸アミドエーテル硫酸エステル・Na(日油社製、商品名サンアミドCF-3、式(2-4))の含有量が630ppmとなるよう添加した以外は、比較例1と同様に行った結果、レーザーマーク高さは510nmであり、好ましくなかった。
【化6】
【0050】
<比較例5>
ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド(第一工業製薬(株)製、商品名ダイヤノールCDE、式(2-5))の含有量が630ppmとなるよう添加した以外は、比較例1と同様に行った結果、レーザーマーク高さは690nmであり、好ましくなかった。
【化7】
【0051】
<比較例6>
2-ピロリドン(関東化学(株)製、式(2-6))の含有量が630ppmとなるよう添加した以外は、比較例1と同様に行った結果、レーザーマーク高さは860nmであり、好ましくなかった。
【化8】
【0052】
<比較例7>
ピログルタミン酸(アクロス オルガニクス社製、式(2-7))の含有量が630ppmとなるよう添加した以外は、比較例1と同様に行った結果、レーザーマーク高さは130nmであり、好ましくなかった。
【化9】
【0053】
<比較例8>
グリセリン(日油(株)製、商品名グリセリン85、式(2-8))の含有量が630ppmとなるよう添加した以外は、比較例1と同様に行った結果、レーザーマーク高さは260nmであり、」好ましくなかった。
【化10】
【0054】
<比較例9>
ポリグリセリン(阪本薬品工業(株)製、商品名ポリグリセリン#310、式(2-9))の含有量が630ppmとなるよう添加した以外は、比較例1と同様に行った結果、レーザーマーク高さは460nmであり、好ましくなかった。
【化11】
【0055】
<比較例10>
ポリオキシエチレンポリグリセリルエーテル(阪本薬品工業(株)製、商品名SC-E1500、式(2-10))の含有量が630ppmとなるよう添加した以外は、比較例1と同様に行った結果、レーザーマーク高さは270nmであり、好ましくなかった。
【化12】
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の研磨用組成物を用いて研磨を行うことにより、ウェハーの研磨工程でウェハーの中心部と周辺部(レーザーマーク部分)の高低差が小さいフラット研磨面を与えるウェハーを製造することができる。