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特許7149068プラズマ処理装置およびプラズマ処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-28
(45)【発行日】2022-10-06
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置およびプラズマ処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20220929BHJP
   H05H 1/46 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
H01L21/302 101D
H05H1/46 A
H05H1/46 C
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2017244727
(22)【出願日】2017-12-21
(65)【公開番号】P2019114591
(43)【公開日】2019-07-11
【審査請求日】2020-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒巻 徹
(72)【発明者】
【氏名】横川 賢悦
【審査官】加藤 芳健
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-009351(JP,A)
【文献】特開2016-027601(JP,A)
【文献】特開2013-143512(JP,A)
【文献】特開平10-308299(JP,A)
【文献】特開2010-021260(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
H05H 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマが形成される処理室を内部に備えた真空容器と、
前記処理室内の下部に配置され、処理対象の半導体ウエハが載せられる載置面を備えた試料台と、
前記処理室内に供給されたガスを用いてプラズマ形成用の電界を形成する電界形成部と、
前記試料台を構成し、前記プラズマが形成されている間に第1の高周波電源から第1の高周波電力が供給される第1の電極と、
前記試料台の前記載置面の外周部に配置されて前記試料台の表面を覆い、誘電体からなるリング状部材と、
前記リング状部材の内部に配置され、第2の高周波電源からの第2の高周波電力が供給される第2の電極と、
前記試料台の前記載置面を構成し、静電気による半導体ウエハ吸着用の直流電力が内部に供給される膜状の静電吸着用電極と、
前記第2の電極に前記第2の高周波電力を供給する経路を構成する給電コネクタと、
を有し、
前記給電コネクタは、前記試料台の前記載置面の外周側の部分であって前記リング状部材によって覆われる部分の内部を貫通する貫通孔内に配置された絶縁性の円筒形部材の内部であって大気圧にされた前記試料台の下面の下方の空間と連通された内部に配置され、かつ前記試料台の載置面の外周側の部分に対して位置決めされた上方の端子と前記下方の空間に配置された下方の端子と、これらの間で電気的に接続されて上下方向に付勢されて弾性を有した導電部材を備え、前記上方の端子と前記下方の端子との間の長さが伸縮するものであって、
前記上方の端子の外周側壁と前記絶縁性の円筒形部材の内周側壁との間の前記貫通孔の内部の箇所で気密に封止されている、プラズマ処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載のプラズマ処理装置において、
前記導電部材は、バネ部材である、プラズマ処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載のプラズマ処理装置において、
前記バネ部材は、板バネによって構成されている、プラズマ処理装置。
【請求項4】
請求項3に記載のプラズマ処理装置において、
前記板バネの厚みは、0.1~1.0mmである、プラズマ処理装置。
【請求項5】
請求項1または2に記載のプラズマ処理装置において、
前記導電部材は、バネ部材であり、
前記バネ部材は、コイルバネによって構成されている、プラズマ処理装置。
【請求項6】
請求項5に記載のプラズマ処理装置において、
前記コイルバネの線径は、0.2~3.0mmである、プラズマ処理装置。
【請求項7】
請求項1または2に記載のプラズマ処理装置において、
前記導電部材は、複数の給電用線路が撚り合わされた撚り線によって構成されている、プラズマ処理装置。
【請求項8】
請求項7に記載のプラズマ処理装置において、
前記撚り線の集合径は、0.6~10mmである、プラズマ処理装置。
【請求項9】
(a)プラズマ処理が行われる真空容器内に設けられた試料台の載置面上に半導体ウエハを載置する工程と、
(b)前記(a)工程の後、前記試料台の前記載置面上に載置された前記半導体ウエハ上にプラズマを形成し、前記プラズマを形成している間、第1の高周波電源から前記試料台に第1の高周波電力を供給して前記半導体ウエハにプラズマ処理を行う工程と、
を有し、
前記プラズマ処理中に、第2の高周波電源から前記試料台の外周部の上部に配置された電極に、前記試料台に設けられた給電コネクタを介して第2の高周波電力を供給し、
前記第2の高周波電力を供給する際には、前記試料台の前記載置面の外周側の部分に配置された誘電体からなるリング状部材によって覆われる部分の内部を貫通する貫通孔内に配置された絶縁性の円筒形部材の内部であって大気圧にされた前記試料台の下面の下方の空間と連通された内部に配置され、かつ前記試料台の前記載置面の外周側の部分に対して位置決めされた上方の端子と前記下方の空間に配置された下方の端子と、これらの間で電気的に接続されて上下方向に付勢されて弾性を有した導電部材を備え、前記上方の端子と前記下方の端子との間の長さが伸縮するものであって、前記上方の端子の外周側壁と前記絶縁性の円筒形部材の内周側壁との間の前記貫通孔の内部の箇所で気密に封止されている、前記給電コネクタを介して供給する、プラズマ処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ処理装置およびプラズマ処理方法に係り、特に半導体基板などの被処理材の加工に好適なプラズマ処理装置およびプラズマ処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程では、一般にプラズマを用いたドライエッチングが行われている。ドライエッチングを行うためのプラズマ処理装置は様々な方式が使用されている。
【0003】
一般に、プラズマ処理装置は、真空処理室、これに接続されたガス供給装置、真空処理室内の圧力を所望の値に維持する真空排気系、被処理材であるウエハを載置する電極、真空処理室内にプラズマを発生させるためのプラズマ発生手段などから構成されている。プラズマ発生手段によりシャワープレート等から真空処理室内に供給された処理ガスをプラズマ状態とすることで、ウエハ載置用電極に保持されたウエハのエッチング処理が行われる。
【0004】
近年、半導体デバイスの集積度の向上に伴い、微細加工つまり加工精度の向上が要求されるとともに、半導体デバイスの回路構造もより微細となり、半導体デバイスの回路がその上に形成される半導体ウエハ等の基板のより外周縁部まで性能の良い半導体デバイスを歩留まり良く製造できるよう求められている。すなわち、プラズマ処理装置が施す処理が半導体デバイスの性能を悪化させてしまうことに至らないように基板の外周縁部の領域の大きさをより小さくすることが求められている。このような基板の外周側部分での性能の悪化を抑制するために、基板が載せられた試料台の上面の基板の外周側の領域において電界の集中を低減する。そして、基板の上面の外周側部分における処理の特性、例えばエッチング処理の場合には処理の速度(エッチングレート)が急激に増大してしまうことを抑制する必要がある。このことを達成するために、基板の処理中に基板の上面の上方に形成されるシースの厚みの基板の中心部から外周縁までの変化が抑制されるように、基板の外周側で試料台の上部の上面を覆って配置された誘電体製のサセプタリングを含む基板の外周側領域での電界を調節することが考えられてきた。
【0005】
このような技術として、例えば、特開2016-225376号公報(特許文献1)に開示のものが知られている。上記特許文献1では、半導体ウエハ等の基板状の試料が載せられた試料台上部の試料の外周を囲んで配置された絶縁体製のリングの下方でこれに覆われて、上記試料の外周側でこれを囲んで配置された導電体製のリングに所定の周波数の高周波電力を印加して、試料の上面の外周側部分での荷電粒子の進入方向を試料の上面に垂直に近づけて、処理の歩留まりの向上を図る技術が開示されている。
【0006】
また、特開2011-009351号公報(特許文献2)には、プラズマに面するフォーカスリングにバイアス電位形成用の高周波電力を供給し、これにより導電体の上面の上方に形成されたバイアス電位の大きさを導電体のプラズマによる削れや消耗の度合いに応じて調節することで処理の性能が時間とともに変動してしまうことを抑制する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2016-225376号公報
【文献】特開2011-009351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の技術は、次の点について考慮が不十分であったため、問題が生じている。
【0009】
すなわち、上記特許文献1は、導電性のリングに高周波電力が供給される給電ライン上での直列共振を生起することにより、給電ラインのインピーダンスを下げて大きな電流を流せる作用を奏するものの、大きな電流が流れることで給電経路での発熱量が大きくなってしまう点について考慮されていない。特に、大きな電流が流れた際には、試料台の内部での給電経路上に配置されたケーブルのコネクタ等の経路を構成する2つの部材の接続部分で大きな発熱が生じて上記接続部分を損傷させたり周囲の部材に悪影響を及ぼす虞がある点について考慮されていない。
【0010】
また、特許文献2においても、フォーカスリングがプラズマに面しているため、プラズマに接触することでフォーカスリングに対する給電ラインからの高周波電力の電流がプラズマに流れ込む虞があり、この際には特許文献1と同様の問題が生じてしまう。上記特許文献2の技術では、試料台の内部の給電経路上の接続部分において発熱が大きくなって給電経路が損傷して装置の信頼性が損なわれてしまう点や、試料台の上面またはその上に載せられるウエハの上面に、発熱からの影響による温度の不均一が生じた結果、処理後の形状が所望のものから大きくズレてしまう点について、考慮されていない。
【0011】
本発明の目的は、プラズマ処理装置の信頼性を向上させ、かつプラズマ処理における歩留まりを向上させることができる技術を提供することにある。
【0012】
本発明の前記の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願において開示される実施の形態のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0014】
一実施の形態におけるプラズマ処理装置は、プラズマが形成される処理室を内部に備えた真空容器と、上記処理室内の下部に配置され、処理対象の半導体ウエハが載せられる載置面を備えた試料台と、上記処理室内に供給されたガスを用いてプラズマ形成用の電界を形成する電界形成部と、を有する。さらに、上記試料台を構成し、上記プラズマが形成されている間に第1の高周波電源から第1の高周波電力が供給される第1の電極と、上記試料台の上記載置面の外周部に配置されて上記試料台の表面を覆い、誘電体からなるリング状部材と、上記リング状部材の内部に配置され、第2の高周波電源からの第2の高周波電力が供給される第2の電極と、を有する。さらに、上記試料台の上記載置面を構成し、静電気による半導体ウエハ吸着用の直流電力が内部に供給される膜状の静電吸着用電極と、上記第2の電極に上記第2の高周波電力を供給する経路を構成する給電コネクタと、を有する。そして、上記給電コネクタは、上記試料台の上記載置面の外周側の部分であって上記リング状部材によって覆われる部分の内部を貫通する貫通孔内に配置された絶縁性の円筒形部材の内部であって大気圧にされた上記試料台の下面の下方の空間と連通された内部に配置され、かつ上記試料台の載置面の外周側の部分に対して位置決めされた上方の端子と上記下方の空間に配置された下方の端子と、これらの間で電気的に接続されて上下方向に付勢されて弾性を有した導電部材を備え、上記上方の端子と上記下方の端子との間の長さが伸縮するものであって、上記上方の端子の外周側壁と上記絶縁性の円筒形部材の内周側壁との間の上記貫通孔の内部の箇所で気密に封止されている。
【0015】
また、一実施の形態におけるプラズマ処理方法は、(a)プラズマ処理が行われる真空容器内に設けられた試料台の載置面上に半導体ウエハを載置する工程と、(b)上記試料台の上記載置面上に載置された上記半導体ウエハ上にプラズマを形成し、上記プラズマを形成している間、第1の高周波電源から上記試料台に第1の高周波電力を供給して上記半導体ウエハにプラズマ処理を行う工程と、を有する。さらに、上記プラズマ処理中に、第2の高周波電源から上記試料台の外周部の上部に配置された電極に、上記試料台に設けられた給電コネクタを介して第2の高周波電力を供給する。さらに、上記第2の高周波電力を供給する際には、上記試料台の上記載置面の外周側の部分に配置された誘電体からなるリング状部材によって覆われる部分の内部を貫通する貫通孔内に配置された絶縁性の円筒形部材の内部であって大気圧にされた上記試料台の下面の下方の空間と連通された内部に配置され、かつ上記試料台の上記載置面の外周側の部分に対して位置決めされた上方の端子と上記下方の空間に配置された下方の端子と、これらの間で電気的に接続されて上下方向に付勢されて弾性を有した導電部材を備え、上記上方の端子と上記下方の端子との間の長さが伸縮するものであって、上記上方の端子の外周側壁と上記絶縁性の円筒形部材の内周側壁との間の上記貫通孔の内部の箇所で気密に封止されている、上記給電コネクタを介して供給する。
【発明の効果】
【0016】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0017】
プラズマ処理装置の信頼性を向上させ、プラズマ処理における歩留まりを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施の形態に係るプラズマ処理装置の構成の概略を模式的に示す断面図である。
図2図1に示すプラズマ処理装置の試料台のサセプタリングの部分の構成を拡大して模式的に示す断面図である。
図3図2に示す板バネの構成を拡大して模式的に示す斜視図である。
図4】パッシェンの法則を模式的に示すグラフである。
図5図2に示す試料台のサセプタリングの別の部分の構成を拡大して模式的に示す断面図である。
図6】本発明の実施の形態の変形例1に係るプラズマ処理装置の試料台のサセプタリングの部分の構成を拡大して模式的に示す断面図である。
図7】本発明の実施の形態の変形例2に係るプラズマ処理装置の試料台のサセプタリングの部分の構成を拡大して模式的に示す断面図である。
図8図7に示す曲面板バネの構成を拡大して模式的に示す斜視図である。
図9】本発明の実施の形態の変形例3に係るプラズマ処理装置の試料台のサセプタリングの部分の構成を拡大して模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図1図5を用いて説明する。図1は、本発明の実施の形態に係るプラズマ処理装置の構成の概略を模式的に示す断面図である。特に、図1は、プラズマを形成するための電界としてマイクロ波の電界を用いて、上記マイクロ波の電界と磁界とのECR(Electron Cyclotron Resonance)を生起してプラズマを形成し、上記プラズマを用いて半導体ウエハなどの基板状の試料をエッチング処理するプラズマエッチング装置を示している。
【0021】
図1に示すプラズマエッチング装置(プラズマ処理装置)100について説明する。プラズマエッチング装置100は、プラズマが形成される処理室104を内部に備えた真空容器101を有している。真空容器101は、円筒形状を有した上部が開放されており、その上部にマイクロ波を導入するための誘電体窓103(例えば石英製)が蓋部材として配置され、内部と外部とが気密に区画された処理室104が形成されている。
【0022】
また、真空容器101の下部には真空排気口110が配置され、真空容器101の下方に配置されて接続された真空排気装置(図示省略)と連通されている。さらに、真空容器101の上部の蓋部材を構成する誘電体窓103の下面の下方には、処理室104の天井面を構成するシャワープレート102が設けられている。シャワープレート102は、中央部に配置された複数のガス導入孔102aを有しており、この複数のガス導入孔102aを通してエッチング処理用のガスが処理室104に導入される。シャワープレート102は、例えば石英などの誘電体製の円板である。
【0023】
また、真空容器101の外側の上方の箇所にはプラズマ116を生成するための電界および磁界を形成する電界・磁界形成部160が配置されている。電界・磁界形成部160は、以下の構成を含んでプラズマエッチング装置100に備えられている。すなわち、電界・磁界形成部160には、誘電体窓103の上方に配置され、かつプラズマ116を生成するための所定の周波数の高周波電界を処理室104内に供給するため電界が内部を伝送される導波管105が配置されている。さらに、導波管105の内部を伝送される電界は、電界発生用電源106において発振されて形成される。上記電界の周波数は、特に限定されないが、本実施の形態では2.45GHzのマイクロ波が使用される。
【0024】
また、処理室104の誘電体窓103の上方および処理室104の円筒形状部を構成する真空容器101の側壁および導波管105の下端部の外周側のそれぞれには、磁場を形成する磁場発生コイル107がこれらを囲んだ状態で配置されている。そして、電界発生用電源106より発振されたマイクロ波の電界は、導波管105の内部を伝播して誘電体窓103およびシャワープレート102を透過して処理室104に上方から供給される。さらに、磁場発生コイル107が生起して処理室104内に供給された磁界との相互作用により、ECR(Electron Cyclotron Resonance)を生起する。そして、シャワープレート102のガス導入孔102aを介して処理室104内に導入された処理用のガスの原子または分子を励起、解離させることにより、処理室104内に高密度のプラズマ116が生成される。
【0025】
また、処理室104の下部であり、かつプラズマ116が形成される空間の下方には、試料台を構成するウエハ載置用電極(第1の電極)120が設けられている。なお、ウエハ載置用電極120は、試料(処理対象)である半導体ウエハ(以降、単にウエハとも言う)109が載せられる載置面120aを備えている。そして、ウエハ載置用電極120は、その載置面120aが、シャワープレート102または誘電体窓103に対向するように配置されている。ウエハ載置用電極120は、図2に示すように、その上面120bが、載置面120aを構成する誘電体膜140で被覆されている。誘電体膜140の内部には、図1に示す高周波フィルタ125を介して直流電源126と接続された静電吸着用の複数の導電体膜(静電吸着用電極)111が配置されている。ここで、導電体膜111は、試料台の載置面120aを構成しており、静電気による半導体ウエハ吸着用の直流電力が内部に供給される膜状の静電吸着用電極である。その際、導電体膜111は、複数の膜状の電極の一方と他方とが異なる極性が付与される双極であってもよく、または同じ極性が付与される単極でもよいが、本実施の形態では単極として示されている。
【0026】
また、高周波フィルタ125より静電吸着用電極(導電体膜111)に近い箇所に高周波電源(第1の高周波電源)124と整合器129が配置されており、これら高周波電源124や整合器129は、ウエハ載置用電極120の内部に配置された導電体製の円形または円筒形状を有した電極基材108と接続されている。なお、高周波電源124は、接地112に接続されている。そして、電極基材108に高周波電源124からの所定の周波数の高周波電力(第1の高周波電力)が供給され、ウエハ109の処理中に、ウエハ載置用電極120の上面上に吸着されて保持されたウエハ109の上方にバイアス電位が形成される。言い換えると、上記試料台は、プラズマ116が形成されている間に高周波電源124から高周波電力(第1の高周波電力)が供給されるウエハ載置用電極(第1の電極)120を有している。
【0027】
なお、この電極基材108には、温度センサ(図示省略)やウエハ109を先端上に保持して載置面120aの上方で持ち上げまたは降下させる複数のリフトピンが内蔵される貫通孔が設けられている。さらに、上記リフトピンの位置を検知する上下センサ(図示省略)などが配置される。このため、ウエハ載置用電極120のこのような検知器(センサ)が電気的ノイズの環境下にあると誤動作する虞がある。さらに、冷媒流炉内を通流して循環する冷媒も電気的ノイズの環境下では静電気を帯びる虞がある。
【0028】
そこで、電極基材108を図示しないアース電極と接続して接地電位にするとともに、電極基材108の表面の誘電体膜140中に別の導電体製の膜状の電極を配置し、この膜状の電極を整合回路129を介して高周波電源124と接続して高周波電力を供給し、これによって、ウエハ109の処理中にその上面の上方にバイアス電位を形成するようにしてもよい。また、電極基材108の内部には、伝達される熱を除去してウエハ載置用電極120を冷却するために、電極基材108またはウエハ載置用電極120の上下方向の中心軸周りに螺旋状または同心状に多重に冷媒流路153が配置されている。この冷媒流路153には、電極基材108を冷却する冷却用の冷媒が流れる。
【0029】
さらに、ウエハ載置用電極120の上部の外周側には、載置面120aの外周側でこの上部を囲んで配置された凹み部120dが配置されている。この凹み部120dの試料台の載置面120aより高さが低く形成されたリング状の上面には、石英あるいはアルミナなどのセラミクスといった誘電体製のリング状部材であるサセプタリング113が載せられて配置されている。サセプタリング113の上面が凹み部120dに載せられた状態で、サセプタリング113の上面はウエハ載置用電極120の載置面120aより高くなる寸法を有している。なお、サセプタリング113は、ウエハ載置用電極(試料台)120の載置面120aの外周部に配置されており、かつウエハ載置用電極120の表面を覆っている。具体的には、サセプタリング113は、凹み部120dの上面および凹み部120dの円筒形の側壁面、ならびに凹み部120dの下方のウエハ載置用電極(試料台)120の円筒形の側壁面を覆うように構成されている。
【0030】
このようなプラズマエッチング装置100では、真空容器101の側壁に連結された別の真空容器である真空搬送容器の内部の処理室104と同様の圧力まで減圧された真空搬送室内において、処理前のウエハ109が、真空搬送室内に配置されたウエハ搬送用のロボットのアーム先端上に載せられる。そして、真空搬送室と処理室104との間を連通する通路であるゲートが真空搬送室内に配置されたバルブの動作により開放され、上記処理前のウエハ109は、上記ロボットのアーム先端上に載せられた状態で処理室104内に搬送される。さらに、処理室104内のウエハ載置用電極120の載置面120aの上方まで搬送されたウエハ109は、リフトピンの上下の移動により上記リフトピン上に受け渡され、さらに載置面上に載せられた後、直流電源126から印加される直流電力により形成された静電気力によってウエハ載置用電極120の載置面120aに吸着されて保持される。
【0031】
この状態で、エッチング処理用のガスは、マスフローコントローラ(図示省略)によりその流量または速度が調節されて誘電体窓103と石英製のシャワープレート102の間のすき間の空間に導入され、この空間内で拡散した後、シャワープレート102のガス導入孔102aを通して処理室104に導入される。その後、真空排気装置の動作により、真空排気口110を通して処理室104内のガスや粒子が排気される。シャワープレート102のガス導入孔102aからのガスの供給量と真空排気口110からの排気量とのバランスに応じて、処理室104内がウエハ109の処理に適した範囲内の所定の値に調整される。
【0032】
また、ウエハ109が吸着保持されている間、ウエハ109とウエハ載置用電極120の載置面120aである誘電体膜140の上面との間のすき間には、誘電体膜140の上面の図示しない開口からHe(ヘリウム)などの熱伝達性を有したガスが供給され、これによりウエハ109とウエハ載置用電極120との間の熱伝達が促進される。なお、所定の範囲内の温度に調節された冷媒がウエハ載置用電極120の電極基材108内に配置された冷媒流路153内を通流して循環することで、ウエハ載置用電極120または電極基材108の温度はウエハ109が載置される前に予め調節されている。したがって、熱容量の大きなウエハ載置用電極120または電極基材108との間で熱伝達がされることで、処理前にウエハ109の温度はこれらの温度に近接するように調節され、処理の開始後もウエハ109からの熱が伝達されてウエハ109の温度が調節される。
【0033】
この状態で、処理室104内にマイクロ波の電界と磁界とが供給されてガスを用いてプラズマ116が生成される。プラズマ116が形成されると、電極基材108に高周波電源124から高周波(RF)バイアス電力が供給され、ウエハ109の上面の上方にバイアス電位が形成されてプラズマ116の電位との間の電位差に応じてプラズマ116内のイオンなどの荷電粒子がウエハ109の上面に誘引される。さらに、上記荷電粒子が、ウエハ109の上面に予め配置されたマスクおよび処理対象の膜層を含む膜構造の上記処理対象の膜層表面と衝突してエッチング処理が行われる。エッチング処理中は、処理室104内に導入された処理用のガスや処理中に発生した反応生成物の粒子が真空排気口110から排気される。
【0034】
そして、本実施の形態のプラズマエッチング装置100では、プラズマ処理中に、上記試料台に設けられ、かつ弾性を有する導電部材を備えた後述する給電コネクタ161を介して高周波電源(第2の高周波電源)127から上記試料台の外周部の上部に配置された導体リング(第2の電極)131に第2の高周波電力を供給する。
【0035】
本実施の形態のウエハ載置用電極120では、高周波電源(第2の高周波電源)127から発生した交流高電圧は、負荷の整合器128と負荷インピーダンス可変ボックス130を介してサセプタリング113内に配置された導電体製の導体リング(第2の電極)131に導入される。この構成により、好適なインピーダンスの値に調節された負荷インピーダンス可変ボックス130と、サセプタリング113の上部に配置された相対的に高いインピーダンス部分との組み合わせで、高周波電源127から電極基材108を通してウエハ109の外周縁部までの高周波電力に対するインピーダンスの値を相対的に低くする。これにより、ウエハ109の外周側部分および外周縁部に高周波電力を効果的に供給し、外周側部分または外周縁部での電界の集中を緩和してプラズマ中のイオンなどの荷電粒子を所望の方向でウエハ109上面に誘引することができる。高周波電源127は、接地112に接続されている。なお、本実施の形態での高周波電源127の周波数は、好ましくは高周波電源124と同じか定数倍の値に設定される。
【0036】
次に、図2を用いて、本実施の形態のサセプタリング113内の導体リング131への給電ラインの構成の詳細を説明する。図2図1に示すプラズマ処理装置の試料台のサセプタリングの部分の構成を拡大して模式的に示す断面図、図3図2に示す板バネの構成を拡大して模式的に示す斜視図である。
【0037】
図2に示す導体リング131は、金属などからなる導電体であるが、その表面に絶縁性を有する皮膜が形成された導電体から構成された部材であればよい。本実施の形態の導体リング131は、母材としてアルミニウム製の部材の表面に陽極酸化処理によるアルマイトの被覆を施したものとして説明する。
【0038】
上記導体リング(第2の電極)131は、サセプタリング113の内部に配置されており、さらに高周波電源127から第2の高周波電力が供給される。
【0039】
また、上記導体リング131にバイアス形成用の高周波電力を給電するための給電経路として、導体リング131の下方に配置され、かつその下面に接続する導電体製の給電コネクタ161が配置されている。そして、給電コネクタ161と導体リング131とが、導体リング131の上方から導体リング131に形成された孔部にはめ込まれた導電性ネジ132により締結され、かつ電気的に接続されている。給電コネクタ161は、金属などの導電体製の部材から構成された円筒形状を有する導電体製の給電ボス133と、給電ボス133の下面に当接して電気的に接続された円筒形の上部端子(上端の端子)143と、を備えている。さらに、給電コネクタ161は、上部端子143の下面に上端が接続された板バネ(バネ部材、導電部材)135と、板バネ135の下端がその上面に接続された円筒形の下部端子(下端の端子)145と、下部端子145の下面とネジまたはボルトにより締結され、かつ接続された導電体製の中継端子148と、を備えている。板バネ135は、図3に示す構造であり、上下方向Pに弾性を有するものである。中継端子148は、案内部149内に配置されている。以上のように、給電コネクタ161は、導体リング131に第2の高周波電力を供給する経路を構成するコネクタ部材である。
【0040】
また、ウエハ載置用電極120は、その上部を構成する電極基材108を有している。この電極基材108は、円筒または円板形を有し、かつ冷媒が内側を通流する冷媒流路153を備えている。そして、ウエハ載置用電極120は、電極基材108と、電極基材108の下面の下方で電極基材108に接続して配置された円板状の絶縁プレート151と、絶縁プレート151の下面の下方で絶縁プレート151に当接して配置された円板状の導電体製の部材であり、かつ接地電位にされた接地プレート152と、からなる。さらに、ウエハ載置用電極120は、電極基材108と絶縁プレート151と接地プレート152とが、図示しないボルトなどで締結されて一体に連結されている。
【0041】
また、接地プレート152の外周端の下面が、上端面上に載せられる円筒形状を有した電極ベース147と、図示しないボルトによりこれらの間にOリングなどのシール部材146を挟んで締結されている。詳細には、接地プレート152の下方および電極ベース147の中央側の空間150と、ウエハ載置用電極120の外部の処理室104とが気密になるように封止されて締結されている。
【0042】
本実施の形態において、給電コネクタ161は、電極基材108とその下方の絶縁プレート151と接地プレート152とを貫通する貫通孔120cと、絶縁体製または誘電体製のリング状の絶縁リング139に形成された貫通孔139aと、の内部にはめ込まれて配置されている。貫通孔120cは、電極基材108の上部でウエハ109が載せられる中央部の円筒形の凸部の外周側にリング状に配置された凹み部120dの上面に開口している孔である。また、貫通孔139aは、凹み部120dに載せられたサセプタリング113を構成する絶縁体製または誘電体製のリング状の絶縁リング139に形成された孔である。
【0043】
そして、電極基材108とその下方の絶縁プレート151と接地プレート152とを貫通する貫通孔120cの内側には、絶縁性の材料で構成された円筒形の絶縁ボス(円筒形部材)144が、その外周の壁面を貫通孔120cの周壁面に当接させてはめ込まれている。また、絶縁ボス144の内側の空間141には、給電ボス133およびその下方の上部端子143、板バネ135、下部端子145が挿入されて収納されており、絶縁ボス144の外側の電極基材108と接地プレート152との間で絶縁されている。さらに、給電ボス133の外周の側壁と絶縁ボス144の内周側壁との間にこれらに挟まれて配置され、かつ給電ボス133の下方の空間141と上方の空間との間をシールするOリング134が配置されている。
【0044】
なお、本実施の形態では、シール部であるOリング134は、絶縁ボス144または貫通孔120cの上方の処理室104と連通された空間との間を気密に封止している。このことにより、空間150に連通されて同じ大気圧またはこれと見做せる程度に近似した圧力に維持された空間141内において接触する上部端子143、金属製の板バネ135、下部端子145、中継端子148との間の電気的な接続を確実に確保することができる。さらに、これら上部端子143、金属製の板バネ135、下部端子145、中継端子148同士が接触する箇所へ処理室104内の反応性の高い粒子が進入して腐食し、または反応物が生成され、あるいは部材の変質による電気的接続の性能の劣化が生じることを抑制することができる。
【0045】
また、高周波電力が供給されて加熱される導体リング131からの熱の伝達を促進して、サセプタリング113の温度の上昇によるウエハ109の外周部での処理結果が所期のものから許容範囲外になってしまうことを抑制できるように冷却が促進される。すなわち、本実施の形態の給電コネクタ161においては、導電体製の端子同士の間の給電の経路として、受ける外力に応じて長さ方向の寸法が伸縮する板バネ135が用いられている。つまり、本実施の形態のプラズマエッチング装置100に設けられた給電コネクタ161は、試料台(ウエハ載置用電極120)のサセプタリング113によって覆われる部分の内部を貫通する貫通孔120c内に配置された絶縁体製の絶縁ボス144の内部に配置され、かつ上部端子143および下部端子145に接続されて上下方向に付勢されて伸縮する弾性を有した板バネ135を備えている。上下方向は、図2の矢印Pの方向である。
【0046】
さらに、プラズマエッチング装置100では、板バネ135、上部端子143および下部端子145は、大気圧にされた空間141内に配置されている。そして、Oリング134などのシール部材により、大気圧の空間141と処理室104内との間の位置で、かつ上部端子143の上方の貫通孔120cの内部の箇所で気密に封止されている。
【0047】
ここで、本願発明者が検討した本願の課題について説明する。
【0048】
例えば、本発明者が比較検討したプラズマ処理装置では、ウエハ109の処理中に処理室104内に形成されるプラズマ116からの熱やウエハ109の表面の処理に係る相互作用により生じる熱を受けてウエハ載置用電極120は加熱される。この際、導電体製の部材である電極基材108および接地プレート152とこれに接続された絶縁性材料または誘電体材料から構成された絶縁プレート151との間での熱膨張係数の差によって形状に差が生じる結果、一体に接続されたこれらの部材の間で歪が生じてしまう。すると、電極基材108、絶縁プレート151、接地プレート152を貫通する貫通孔の長さなどの寸法が変化し、電極基材108上に載せられた導体リング131とウエハ載置用電極120の内部の空間150内に配置された給電経路の端子部との間の距離が変動する。そして、これらを接続する給電コネクタに対してこの給電コネクタを変形させようとする外力が作用する。
【0049】
上記技術では、上記外力が給電コネクタの構造的強度を超えた際に給電コネクタが破損したり、または生じる歪の大きさが給電コネクタが変形可能な範囲内であっても、連続的に複数枚のウエハ109が処理されるプラズマエッチング装置の半導体デバイスを製造する工程において、ウエハ載置用電極120には処理毎の加熱および冷却とこれに伴う膨張に起因する歪が繰り返して生じることになる。これにより、給電コネクタの内部あるいはこれと他の部材との接触部分において変形に伴う摺動が生起して摩耗、相互作用による反応物の形成、破損が生じてしまう。その結果、上記プラズマ処理装置の長期間に渡る信頼性が損なわれてしまうという課題が生じている。
【0050】
そこで、本実施の形態のプラズマエッチング装置100では、絶縁ボス144の内部の空間141において、給電ボス133の下方の上部端子143、下部端子145の間の板バネ135が上部端子143、下部端子145に対して図2の矢印Pの方向(上下方向)に付勢されて挟まれて配置されている。これにより、上記の歪に起因する貫通孔120cの形状の変化、特に貫通孔120c内の上下方向の給電経路の長さの変化に伴ってボルトで接続された上部端子143、下部端子145の位置の変動に対して、弾性を有した板バネ135の上下方向の伸長または収縮によって接続箇所に追随するように板バネ135が変形する。そして、これらの接続箇所は大気圧にされた空間141内に配置されているため、板バネ135による熱の伝達の性能が高く維持され、導体リング131の温度の過度の上昇を抑制することができる。
【0051】
さらに、本実施の形態のプラズマエッチング装置100では、給電コネクタ161を介した導体リング131への高周波電力の給電経路、特に、ウエハ載置用電極120の内部においては、部材同士の間の隙間を適切に配置して、高周波電流の流れる距離を大きく確保して耐電圧を上げる構成が備えられている。
【0052】
ここで、図4はパッシェンの法則を模式的に示すグラフである。図4に示すように、横軸に2つの部材の間の電位差(電圧)と部材同士の最短距離との積を取った場合、放電が開始される電圧を示す実線Qは下向きに凸の曲線として示される。部材同士の距離が非常に近くグラフの曲線の左側の領域に属する条件では、上記最短距離をできるだけ小さくすることで耐電圧を高くすることができる。一方で、本実施の形態のように、電極基材108の内部に配置された貫通孔120c内に給電経路を構成する給電コネクタ161を配置し、電極基材108と電気的に完全に分離する場合には、図4の曲線右側の領域の条件となり、電位差が生じる部材同士の間で電流が伝わる距離をより大きくすることで耐電圧を高くすることができる。
【0053】
つまり、耐電圧を高くするためには、矢印701に示すように横軸に取ったパラメータである圧力×距離、すなわち距離または圧力を高くすることが必要となる。例えば、部材同士の間のすき間を大気圧にすることで矢印702に示すように耐電圧を大きくして放電を効果的に抑制することができる。また、仕様上で必要な値以上の耐電圧が得られる圧力にすることで、部材同士のすき間の大きさを必要な耐電圧が得られる範囲内で小さくすることもできる(矢印703)。
【0054】
さらに、大気圧にされた空間141の内部の給電ボス133、板バネ135、上部端子143、下部端子145などは、大気圧のガスを介した電極基材108との間の熱伝達が促進され、給電コネクタ161あるいは導体リング131、サセプタリング113の過度の温度の上昇を抑えることが可能になる。
【0055】
また、板バネ135は、図2に示すように、上下方向Pの伸縮の際にも絶縁ボス144の内壁と接触しない寸法を有している。さらに、高周波電流が通過する際の表皮抵抗を下げ、高周波電流の通過する面積をより広くできるように、所定の幅の金属製の板材を長さ方向(ここでは、上下方向P)について蛇腹状に互い違いに折り曲げられた構成を備えている。
【0056】
そして、本実施の形態の板バネ135は、例えば、オーステナイト系のSUS304-CSPを材料として用い、高周波電流の表皮抵抗を下げるために板材の表面には金メッキが施されている。バネ性を維持可能な一般的なステンレスやチタンやアルミニウムや銅を用いてもよい。
【0057】
また、板バネ135の厚さは、所定の周波数の高周波電流に対する表皮深さ×2の大きさにすることで、電流を伝達する効率を最も大きくすることができる。ここで、高周波電力の周波数として400kHzを用いた本実施の形態では、金で表皮深さを計算した結果0.1mmとなった。そのため、板厚は0.1mm×2=0.2mmで製作することが最も好ましい。製作上の公差や精度の限界を考慮すると0.1乃至1.0mm(0.1~1.0mm)程度が好ましい。
【0058】
また、本実施の形態の誘電体製のサセプタリング113は、複数の部材から構成され、少なくとも2つに分割することが可能である。すなわち、サセプタリング113は、導体リング131の上面と内周、かつ外周の壁面を覆って電極基材108の凸部の外周側の凹み部120d上でこれを覆って配置される上部サセプタ138と、上部サセプタ138の内周側部分の下方に配置され、かつ導体リング131がその上に載せられる絶縁リング139と、に分割されている。導体リング131は、絶縁リング139の上面の上方に載せられた状態で上部サセプタ138に上方と側方とを覆われる結果、サセプタリング113の内側に内蔵される。
【0059】
なお、サセプタリング113は、複数の部材に分割されず一体に繋げられた部材であってもよく、そして、この一体型のサセプタリング113の内部に導体リング131が配置されていてもよい。例えば、2つの石英製の部材により導体リング131を挟んだ状態で石英同士の拡散接合や一体焼結を用いてもよい。
【0060】
次に、図5図2に示す試料台のサセプタリングの別の部分の構成を拡大して模式的に示す断面図である。
【0061】
図5に示す構成では、絶縁リング139は、それを電極基材108の上部の外周側部分の凹み部120dに載せて位置を固定するために、導体リング131が載せられる箇所の外周側に配置された貫通孔139bに挿入された絶縁性ネジ136により電極基材108に締結されている。
【0062】
さらに、絶縁リング139上に載せられた導体リング131をこれに締結して位置を固定するために、絶縁リング139のリング状の上面の複数箇所に配置した穴の内側に雌ネジ部を有したヘリサート137を挿入し、これにより、絶縁リング139に接着して固定する。複数のヘリサート137を覆うように載せられた導体リング131の貫通孔131aとヘリサート137との位置を併せて導電性ネジ132を貫通孔131aに挿入して絶縁リング139に対して締結する。
【0063】
本実施の形態のヘリサート137は、絶縁リング139の周方向について3箇所以上の箇所に配置され、平面度が良くない導体リング131を3つ以上の箇所で締結している。これにより、絶縁リング139および上部サセプタ138が導体リング131の上下および外周の周囲を囲んで配置される。複数のヘリサート137の箇所で絶縁リング139に連結されたことで、導体リング131の上面は、その周方向についての平面度を向上させ、処理中のウエハ109の上方の空間内の電位の分布に影響を及ぼす導体リング131の上面の高さのバラ付きを抑制することができる。その結果、ウエハ109の外周側部分の上面の処理の特性や結果を周方向により均一に近づけることができる。
【0064】
また、上部サセプタ138の内周側部分の底面には、上部サセプタ138が導体リング131を内蔵して絶縁リング139上に載せられた状態で、絶縁リング139の上面の内周側部分と接触して当接する当たり面138aが導体リング131の内周側の位置にリング状に形成される。導体リング131の表面とプラズマ116の反応性の高い粒子との相互作用を低減するため、上部サセプタ138と絶縁リング139の当たり面138aを形成し、これにより、ウエハ109の外周縁部やプラズマ116の内部からの反応性生物が導体リング131の表面に付着することを抑制できる。
【0065】
以上の実施の形態によれば、導体リング131に繋がる高周波電力の給電経路に給電コネクタ161が設けられたことにより、サセプタリング113の内部に配置され、かつ高周波電力が供給される導体リング131への高周波電力の給電経路のインピーダンスを低くすることができ、さらに給電経路、特に電極基材108の内部の給電コネクタ161を効率よく冷却することができる。さらに、給電コネクタ161での発熱による変形や摺動と、これに起因する故障や消耗の進行とを低減することができ、長期間に渡りプラズマエッチング装置100の信頼性と歩留まりとを高く維持することができる。
【0066】
また、給電コネクタ161の構成部材として、板バネ135が設けられたことにより、ウエハ109の周囲に高周波が印加される給電経路の放熱面積を広くすることができ、上記給電経路のインピーダンスを低減することが可能となる。さらに、ウエハ109のエッジに高周波を効率よく伝播させて上記給電経路の発熱を抑えることができる。これにより、プラズマ処理装置の信頼性を向上させることができるとともに、プラズマ処理における歩留まりを向上させことができる。
【0067】
(変形例1)
本実施の形態の変形例1を図6を用いて説明する。図6は本発明の実施の形態の変形例1に係るプラズマ処理装置の試料台のサセプタリングの部分の構成を拡大して模式的に示す断面図である。
【0068】
本変形例1のプラズマエッチング装置100は、図2の構造の給電コネクタ161の板バネ135に換えて、金属などの導電性部材から構成され、かつ上下方向Pの軸回りに複数段に巻かれて弾性を有したコイルバネ(バネ部材、導電部材)154を備えている。コイルバネ154以外の他の構成については図2のプラズマエッチング装置100と同等のものを備えている。コイルバネ154の材料は、例えば、オーステナイト系のSUS304-CSPが用いられ、高周波電力に対する表皮抵抗を下げるために、コイルバネ154の表面に金メッキが施されている。材料としては、一般的なステンレスやチタンやアルミや銅であってもよい。
【0069】
図6のプラズマエッチング装置100では、高周波電力の周波数として400kHzが用いられるため、この周波数に対する金での表皮深さは0.1mmとなった。このことから、0.1mm×2=0.2mm以上の径を有した線状の部材でコイルバネ154を構成することが好ましい。製造上の公差や精度を考慮すると0.2~3.0mmの線径の部材を用いることが好ましい。
【0070】
(変形例2)
上記変形例1の別の変形例(変形例2)を図7および図8を用いて説明する。図7は本発明の実施の形態の変形例2に係るプラズマ処理装置の試料台のサセプタリングの部分の構成を拡大して模式的に示す断面図、図8図7に示す曲面板バネの構成を拡大して模式的に示す斜視図である。
【0071】
本変形例2のプラズマエッチング装置100は、図2の構造の給電コネクタ161の板バネ135に換えて、金属などの導電性部材から構成された板部材が図8に示す左右方向Rに凹凸を有した曲面板バネ142を備えている。曲面板バネ142以外の他の構成については図2のプラズマエッチング装置100と同等のものを備えている。曲面板バネ142の材料には、例えば、オーステナイト系のSUS304-CSPが用いられ、高周波電力に対する表皮抵抗を下げるために、曲面板バネ142の表面に金メッキが施されている。材料としては、一般的なステンレスやチタンやアルミや銅であってもよい。
【0072】
図7のプラズマエッチング装置100では、曲面板バネ142の厚さは、表皮深さ×2が最も効率がよい。本変形例2では高周波電力の周波数は400kHzが用いられるため、この周波数に対する金での表皮深さは0.1mmである。したがって、曲面板バネ142の厚さは0.1mm×2=0.2mm以上が好ましい。製造上の公差や精度を考慮すると、曲面板バネ142の板厚さは0.1~1.0mm程度が好ましい。
【0073】
(変形例3)
上記実施例のさらに別の変形例(変形例3)を図9を用いて説明する。図9は本発明の実施の形態の変形例3に係るプラズマ処理装置の試料台のサセプタリングの部分の構成を拡大して模式的に示す断面図である。
【0074】
本変形例3のプラズマエッチング装置100は、図2の構造の給電コネクタ161の板バネ135に換えて、金属などの導電性部材の導線(例えば、給電用線路)が複数撚り合わされて形成された撚り線(導電部材)155を備えている。撚り線155以外の他の構成については図2のプラズマエッチング装置100と同等のものを備えている。本変形例3では、撚り線155の材料には、例えば、オーステナイト系のSUS304-CSPが用いられ、高周波電力に対する表皮抵抗を下げるために、各々の導線の表面に錫メッキが施されている。材料としては、一般的なステンレスやチタンやアルミや銅であってもよい。
【0075】
図9のプラズマエッチング装置100では、撚り線155の集合した線の径は表皮深さ×2が最も効率がよい。本変形例3では高周波電力の周波数は400kHzが用いられるため、この周波数に対する錫での表皮深さは0.3mmである。したがって、撚り線155の集合径は、0.3mm×2=0.6mm以上が好ましい。製造上の公差や精度を考慮すると、撚り線155の集合径は、0.6~10mm程度が好ましい。なお、撚り線155の集合径とは、集合した撚り線155の最も径が大きい箇所の径を表すものである。
【0076】
次に、上記実施の形態または変形例1~3では、処理前に予めウエハ109の上面に配置される膜構造に含まれる処理対象の膜層の被エッチング材料をシリコン酸化膜としており、この場合には、エッチング用の処理ガスおよびクリーニング用のクリーニングガスとして、四フッ化メタンガス、酸素ガス、トリフルオロメタンガスが用いられる。また、上記被エッチング材料としては、シリコン酸化膜だけでなく、ポリシリコン膜、フォトレジスト膜、反射防止有機膜、反射防止無機膜、有機系材料、無機系材料、シリコン酸化膜、窒化シリコン酸化膜、窒化シリコン膜、Low-k材料、High-k材料、アモルファスカーボン膜、Si基板、メタル材料などを用いることができ、これら場合においても同等の効果が得られる。
【0077】
また、エッチング用の処理ガスとしては、塩素ガス、臭化水素ガス、四フッ化メタンガス、三フッ化メタンガス、二フッ化メタンガス、アルゴンガス、ヘリウムガス、酸素ガス、窒素ガス、二酸化炭素ガス、一酸化炭素ガス、水素ガスなどを使用することができる。さらに、エッチング用の処理ガスとしては、アンモニアガス、八フッ化プロパンガス、三フッ化窒素ガス、六フッ化硫黄ガス、メタンガス、四フッ化シリコンガス、四塩化シリコンガス、ネオンガス、クリプトンガス、キセノンガス、ラドンガスなどを使用することができる。
【0078】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【0079】
また、ある実施の形態の構成の一部を他の実施の形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施の形態の構成に他の実施の形態の構成を加えることも可能である。また、各実施の形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることが可能である。なお、図面に記載した各部材や相対的なサイズは、本発明を分かりやすく説明するため簡素化・理想化しており、実装上はより複雑な形状となる。
【0080】
上記実施の形態では、処理室104内に周波数が2.45GHzのマイクロ波の電界とこれに併せてECRを形成できる磁界を供給し、処理用ガスを放電させてプラズマを形成する構成を説明した。しかしながら、上記実施の形態で説明した構成は、他の放電(有磁場UHF放電、容量結合型放電、誘導結合型放電、マグネトロン放電、表面波励起放電、トランスファー・カップルド放電)を用いてプラズマを形成する場合であっても、上記の実施の形態などで説明したものと同様の作用・効果を奏することができる。また、プラズマ処理を行うその他のプラズマ処理装置、例えばプラズマCVD装置、アッシング装置、表面改質装置などで配置されるウエハ載置用電極に、上記実施の形態および変形例1~3を適用した場合についても同様の作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0081】
100 プラズマエッチング装置(プラズマ処理装置)
101 真空容器
102 シャワープレート
102a ガス導入孔
103 誘電体窓
104 処理室
105 導波管
106 電界発生用電源
107 磁場発生コイル
108 電極基材
109 半導体ウエハ
110 真空排気口
111 導電体膜(静電吸着用電極)
112 接地
113 サセプタリング(リング状部材)
116 プラズマ
120 ウエハ載置用電極(試料台、第1の電極)
120a 載置面
120b 上面
120c 貫通孔
120d 凹み部
124 高周波電源(第1の高周波電源)
125 高周波フィルタ
126 直流電源
127 高周波電源(第2の高周波電源)
128、129 整合器
130 負荷インピーダンス可変ボックス
131 導体リング(第2の電極)
131a 貫通孔
132 導電性ネジ
133 給電ボス
134 Oリング
135 板バネ(バネ部材、導電部材)
136 絶縁性ネジ
137 ヘリサート
138 上部サセプタ
138a 当たり面
139 絶縁リング
139a、139b 貫通孔
140 誘電体膜
141 空間
142 曲面板バネ
143 上部端子(上端の端子)
144 絶縁ボス(円筒形部材)
145 下部端子(下端の端子)
146 シール部材
147 電極ベース
148 中継端子
149 案内部
150 空間
151 絶縁プレート
152 接地プレート
153 冷媒流路
154 コイルバネ(バネ部材、導電部材)
155 撚り線(導電部材)
160 電界・磁界形成部
161 給電コネクタ
701、702、703 矢印
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9