(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-28
(45)【発行日】2022-10-06
(54)【発明の名称】ポリアセタール樹脂組成物及び樹脂製歯車
(51)【国際特許分類】
C08L 59/04 20060101AFI20220929BHJP
C08G 2/18 20060101ALI20220929BHJP
C08K 3/26 20060101ALI20220929BHJP
C08K 5/01 20060101ALI20220929BHJP
C08K 5/103 20060101ALI20220929BHJP
C08K 13/04 20060101ALI20220929BHJP
C08L 23/26 20060101ALI20220929BHJP
C08L 71/02 20060101ALI20220929BHJP
F16H 55/06 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
C08L59/04
C08G2/18
C08K3/26
C08K5/01
C08K5/103
C08K13/04
C08L23/26
C08L71/02
F16H55/06
(21)【出願番号】P 2021103213
(22)【出願日】2021-06-22
【審査請求日】2022-08-04
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390006323
【氏名又は名称】ポリプラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】神田 裕基
【審査官】櫛引 智子
(56)【参考文献】
【文献】特許第5847261(JP,B1)
【文献】国際公開第2019/065465(WO,A1)
【文献】特開2016-145278(JP,A)
【文献】特開2018-002830(JP,A)
【文献】特開2002-003694(JP,A)
【文献】特開2012-136656(JP,A)
【文献】特開2012-116883(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L,C08K,C08G,F16H
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)オキシメチレン単位を主たる構成成分とし、コモノマー単位としてオキシアルキレン単位(オキシメチレン単位を除く)を全構成単位に占める割合として0.4モル%以上0.9モル%以下含有し、メルトフローレート(MFR)が1~12g/10分である線状ポリアセタール共重合体100質量部に対し、
(B)(b1)トリオキサン、(b2)1分子中に環状エーテル単位を3以上4以下有する化合物及び(b3)1分子中に環状エーテル単位を1個有する化合物の共重合体である、分岐又は架橋構造を有するポリアセタール共重合体1質量部以上10質量部以下と、
(C)不飽和カルボン酸、不飽和脂肪酸の酸無水物及びこれらの誘導体から選択される少なくとも1種によってオレフィン系重合体が変性された変性オレフィン系重合体0.5質量部以上10質量部以下と、
(D)1級アミノ基又は2級アミノ基を有し、数平均分子量が400以上500,000以下であるアルキレングリコール系重合体0.01質量部以上5質量部以下と、
(E)紡錘状炭酸カルシウム0.1質量部以上20質量部以下と、
(F)2価以上4価以下の多価アルコールの部分エステル0.1質量部以上10質量部以下と、
(G)アルファオレフィンオリゴマー0.1質量部以上10質量部以下と、
を含有する、ポリアセタール樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1に記載のポリアセタール樹脂組成物を成形してなる樹脂製歯車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアセタール樹脂組成物及び樹脂製歯車に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアセタール樹脂(ポリオキシメチレン樹脂とも称され、POM樹脂と略される。)は、バランスのとれた機械的性質を有し、耐摩擦・摩耗特性、耐薬品性、耐熱性、電気特性等に優れるため、自動車、電気・電子製品等の分野で広く利用されている。かかる分野における要求特性は次第に高度化しつつあり、その一例として、一般物性と共に摺動特性の一層の向上が望まれている。かかる摺動特性とは、耐摩擦・摩耗特性であり、そのような特性の更なる向上を図るため、種々の添加剤を添加したPOM樹脂組成物が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
一方、砂などのダスト及び水分が存在する環境下においては、部材同士が擦れ合うと、いわゆる鳴き音(squeak noise)といった異音が発生したり、摩耗量が多くなったりするといった問題がある。そのため、ダスト及び水分が存在する環境下における摺動特性は、平常時と同じように考えることができず、本出願人は、そのような環境下において、耐摩擦摩耗性に優れ、摺動時において異音の発生が極めて少なく、かつ、優れた機械特性(引張強度)を有する、POM樹脂組成物からなる耐ダスト摺動性部材を提案した(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許5847261号公報
【文献】国際公開第2019/065465号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2に記載のPOM樹脂組成物は、上記のような特定環境下における摺動特性には優れるものの、耐久性及び機械特性が高いレベルで要求される用途、例えば歯車の材料とすることを考えた場合には更なる改善の余地が残されていた。
【0006】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであり、その課題は、耐久性、機械特性、及び摺動特性に優れるポリアセタール樹脂組成物及び樹脂製歯車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決する本発明の一態様は以下の通りである。
(1)(A)オキシメチレン単位を主たる構成成分とし、コモノマー単位としてオキシアルキレン単位(オキシメチレン単位を除く)を全構成単位に占める割合として0.4モル%以上0.9モル%以下含有し、メルトフローレート(MFR)が1~12g/10分である線状ポリアセタール共重合体100質量部に対し、
(B)(b1)トリオキサン、(b2)1分子中に環状エーテル単位を3以上4以下有する化合物及び(b3)1分子中に環状エーテル単位を1個有する化合物の共重合体である、分岐又は架橋構造を有するポリアセタール共重合体1質量部以上10質量部以下と、
(C)不飽和カルボン酸、不飽和脂肪酸の酸無水物及びこれらの誘導体から選択される少なくとも1種によってオレフィン系重合体が変性された変性オレフィン系重合体0.5質量部以上10質量部以下と、
(D)1級アミノ基又は2級アミノ基を有し、数平均分子量が400以上500,000以下であるアルキレングリコール系重合体0.01質量部以上5質量部以下と、
(E)紡錘状炭酸カルシウム0.1質量部以上20質量部以下と、
(F)2価以上4価以下の多価アルコールの部分エステル0.1質量部以上10質量部以下と、
(G)アルファオレフィンオリゴマー0.1質量部以上10質量部以下と、
を含有する、ポリアセタール樹脂組成物。
【0008】
(2)前記(1)に記載のポリアセタール樹脂組成物を成形してなる樹脂製歯車。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、耐久性、機械特性、及び摺動特性に優れるポリアセタール樹脂組成物及び樹脂製歯車を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<ポリアセタール樹脂組成物>
本実施形態のPOM樹脂組成物は、(A)オキシメチレン単位を主たる構成成分とし、コモノマー単位としてオキシアルキレン単位(オキシメチレン単位を除く。本明細書において以下同じ。)を全構成単位に占める割合として0.4モル%以上0.9モル%以下含有し、メルトフローレート(MFR)が1~12g/10分である線状ポリアセタール共重合体100質量部に対し、以下の(B)~(G)成分を含有する。
(B)(b1)トリオキサン、(b2)1分子中に環状エーテル単位を3以上4以下有する化合物及び(b3)1分子中に環状エーテル単位を1個有する化合物の共重合体である、分岐又は架橋構造を有するポリアセタール共重合体1質量部以上10質量部以下。
(C)不飽和カルボン酸、不飽和脂肪酸の酸無水物及びこれらの誘導体から選択される少なくとも1種によってオレフィン系重合体が変性された変性オレフィン系重合体0.5質量部以上10質量部以下。
(D)1級アミノ基又は2級アミノ基を有し、数平均分子量が400以上500,000以下であるアルキレングリコール系重合体0.01質量部以上5質量部以下。
(E)紡錘状炭酸カルシウム0.1質量部以上20質量部以下。
(F)2価以上4価以下の多価アルコールの部分エステル0.1質量部以上10質量部以下。
(G)アルファオレフィンオリゴマー0.1質量部以上10質量部以下。
【0011】
本実施形態のPOM樹脂組成物においては、ベース樹脂たる(A)線状ポリアセタール共重合体が、MFRが低く(すなわち高分子量)、コモノマー単位としてのオキシアルキレン単位の含有量が少ないこと、及び当該(A)線状ポリアセタール共重合体と、(B)分岐又は架橋構造を有するポリアセタール共重合体との組合せにより耐久性の向上を図っている。また、(A)線状ポリアセタール共重合体を用いることで十分な機械特性が得られるが、(B)分岐又は架橋構造を有するポリアセタール共重合体を含有することで機械特性の更なる向上を図っている。更に、(A)ポリアセタール共重合体100質量部に対して、(C)~(G)成分を所定量含有させることで、摺動特性の向上を図っている。
以下に、各成分について詳述する。
【0012】
[(A)線状ポリアセタール共重合体]
本実施形態においては、ベース樹脂として、線状ポリアセタール共重合体(A)(本明細書において、「(A)成分」ともいう。)を用いる。本実施形態に係る(A)成分は、オキシメチレン単位(-CH2O-)を主たる構成単位とし、オキシアルキレン単位を全構成単位に占める割合として0.4モル%以上0.9モル%以下含有する。このような(A)成分を用いることで機械特性の向上を図ることができる。
【0013】
(A)成分の主原料として、トリオキサンが広く用いられる。トリオキサンは、ホルムアルデヒドの環状三量体であり、一般的には酸性触媒の存在下でホルムアルデヒド水溶液を反応させることによって得られ、これを蒸留等の方法で精製して用いられる。トリオキサンは、水、メタノール、蟻酸等の不純物を極力含まないものが好ましい。
【0014】
本実施形態に係る(A)成分において、全構成単位に占める割合としてオキシアルキレン単位を0.4モル%以上0.9モル%以下含有するが、0.4モル%未満であると熱安定性が不十分となり、0.9モル%を超えると機械特性(引張強度)が劣化する。当該オキシアルキレン単位を全構成単位に占める割合は、0.5モル%以上0.8モル%以下であることが好ましく、0.5モル%以上0.7モル%以下であることがより好ましい。
【0015】
オキシアルキレン単位としては、例えば、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、などが挙げられる。
【0016】
オキシアルキレン単位の炭素数は特に限定されるものではないが、2以上4以下であることがより好ましい。
【0017】
オキシアルキレン単位の由来となるコモノマーの例として、単官能環状エーテル化合物及び単官能環状ホルマール化合物から選択される1種以上の化合物が挙げられる。本実施形態において、単官能環状エーテル化合物とは、環状エーテル単位を1分子中に1個有する化合物をいい、単官能環状ホルマール化合物とは、環状ホルマール単位を1分子中に1個有する化合物をいう。具体的には、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、スチレンオキシド、オキセタン、3,3-ビス(クロルメチル)オキセタン、テトラヒドロフラン、トリオキセパン、1,3-ジオキソラン、エチレングリコールホルマール、プロピレングリコールホルマール、ジエチレングリコールホルマール、トリエチレングリコールホルマール、1,4-ブタンジオールホルマール、1,5-ペンタンジオールホルマール、1,6-ヘキサンジオールホルマール等が挙げられる。
【0018】
(A)成分は、耐クリープ特性の向上を図るため、190℃、2160g荷重下でのメルトフローレート(MFR)が1~12g/10分のものを用いる。当該メルトフローレートは、好ましくは1.2~10g/10分であり、より好ましくは1.5g/10分以上7g/10分未満である。
なお、メルトフローレートは、ISO 1133に準拠して測定される数値である。
【0019】
(A)成分は公知の製造方法によって製造することができる。
【0020】
[(B)分岐又は架橋構造を有するポリアセタール共重合体]
(B)分岐又は架橋構造を有するポリアセタール共重合体は、(b1)トリオキサンと、(b2)1分子中に環状エーテル単位を3以上4以下有する化合物と、(b3)1分子中に環状エーテル単位を1個有する化合物との共重合体である。本明細書において、(B)分岐又は架橋構造を有するポリアセタール共重合体を「(B)成分」ともいう。
【0021】
((b1)トリオキサン)
(b1)トリオキサンは、(A)成分で説明したトリオキサンと同じであり、ホルムアルデヒドの環状三量体である。(b1)トリオキサンについてもまた、不純物を極力含まないことが好ましい。
【0022】
((b2)1分子中に環状エーテル単位を3以上4以下有する化合物)
(b2)1分子中に環状エーテル単位を3以上4以下有する化合物とは、1分子中に、エポキシ単位、グリシジル単位、1,3-ジオキソラン単位、1,4-ブタンジオールホルマール単位、ジエチレングリコールホルマール単位及び1,3,6-トリオキセパン単位等からなる群から選択される環状エーテル単位を3以上4以下有する化合物の総称をいう。環状エーテル単位の個数が2であると、十分な剛性を得られない可能性がある。具体的には、ISO178に準拠する試験片の曲げ弾性率が2700MPa未満である可能性がある。一方、環状エーテル単位の個数が多すぎると、靭性が低下する可能性がある。
【0023】
また、環状エーテル単位としてはグリシジル単位が好ましく、トリグリシジルエーテル化合物及びテトラグリシジルエーテル化合物が好ましい化合物として挙げられる。その例としては、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル等が挙げられる。これらの化合物は単独で又は2種以上を併用して(a)トリオキサンとの共重合に供することができる。
【0024】
(b2)1分子中に環状エーテル単位を3以上4以下有する化合物の共重合量は特に限定されるものでないが、目的とする特性を有するポリアセタール樹脂組成物を好適に得ることを踏まえると、共重合量は、(b1)トリオキサン100質量部に対して0.01質量部以上1質量部以下であることが好ましく、0.05質量部以上0.5質量部以下であることがより好ましく、0.1質量部以上0.3質量部以下であることが更に好ましい。
【0025】
((b3)1分子中に環状エーテル単位を1個有する化合物)
(b3)1分子中に環状エーテル単位を1個有する化合物は、(B)成分を製造する際の重合反応を安定化させると共に、生成した(B)成分の熱安定性を高められる点で好適である。
【0026】
(b3)1分子中に環状エーテル単位を1個有する化合物としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、スチレンオキシド、オキセタン、3,3-ビス(クロルメチル)オキセタン、テトラヒドロフラン、トリオキセパン、1,3-ジオキソラン、エチレングリコールホルマール、プロピレングリコールホルマール、ジエチレングリコールホルマール、トリエチレングリコールホルマール、1,4-ブタンジオールホルマール、1,5-ペンタンジオールホルマール、1,6-ヘキサンジオールホルマール等が挙げられる。中でも、エチレンオキシド、1,3-ジオキソラン、1,4-ブタンジオールホルマール、ジエチレングリコールホルマールが好ましい。
【0027】
(B)成分における(b3)1分子中に環状エーテル単位を1個有する化合物の共重合量は特に限定されるものでないが、(b1)トリオキサン100質量部に対して20質量部以下であることが好ましく、0.05質量部以上15質量部以下であることがより好ましく、0.1質量部以上10質量部以下であることが更に好ましい。
【0028】
次いで、本実施形態において使用する(C)~(G)成分について、以下に説明する。以下の(C)~(G)成分は、上記の通り、摺動特性の向上のために添加される。
【0029】
[(C)不飽和カルボン酸、不飽和脂肪酸の酸無水物及びこれらの誘導体から選択される少なくとも1種によってオレフィン系重合体が変性された変性オレフィン系重合体]
本明細書において、上記変性オレフィン系重合体を「(C)成分」ともいう。本実施形態に係るポリアセタール樹脂組成物おいて、(C)成分を含有させることで、摺動特性に優れる。逆に、ポリアセタール樹脂組成物おいて、(C)成分以外のオレフィン系重合体を含有させる場合、摺動特性が劣る。
【0030】
(C)成分において用いられるオレフィン系重合体(変性前)としては、エチレン、プロピレン、ブテン、ヘキセン、オクテン、ノネン、デセン、ドデセン等のα-オレフィンの単独重合体、及びこれらの2種以上からなるランダム、ブロック又はグラフト共重合体、及びこれらに1,4-ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、2,5-ノルボナジエン等の非共役ジエン成分、ブタジエン、イソプレン、ピペリレン等の共役ジエン成分、アクリル酸、メタクリル酸等のα,β-不飽和酸又はそのエステル等の誘導体、アクリロニトリル、スチレン、α-メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物、又は酢酸ビニル等のビニルエステル、ビニルメチルエーテル等のビニルエーテルやこれらのビニル系化合物の誘導体等のコモノマー成分のうちの少なくとも1種を含んでなるランダム、ブロック又はグラフト共重合体等が挙げられ、その重合度、側鎖や分岐の有無や程度、共重合組成比等の如何を問わない。
【0031】
オレフィン系重合体の例としては、高圧法ポリエチレン、中低圧法ポリエチレン、気相法エチレン-α-オレフィン共重合体、LLDPE、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸メチル共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-アクリル酸ブチル共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体等がある。好ましくは、ポリエチレン、エチレン-アクリル酸メチル共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体である。
【0032】
本実施形態において使用される(C)成分とは、上記のオレフィン系重合体を、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、テトラヒドロフタル酸、ナジック酸、メチルナジック酸、アリルコハク酸などの不飽和カルボン酸、及び無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水イタコン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水ナジック酸、無水メチルナジック酸、アリル無水コハク酸等の不飽和カルボン酸無水物、及びこれらの誘導体等からなる群より選ばれた少なくとも1種で変性したものである。
【0033】
好ましい(C)成分は、そのメルトフローレート(MFR)が0.01~100g/10分のものであり、更に好ましいのは、MFRが0.1~50g/10分のものであり、特に好ましいのは、MFRが0.2~30g/10分のものである。尚、メルトフローレート(MFR)は、ISO 1133に準拠して測定される数値である。
【0034】
好ましい(C)成分の具体例としては、無水マレイン酸で変性されたポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体等が挙げられる。中でも、(C)成分が無水マレイン酸で変性されたポリエチレンを含有するものであると、ポリアセタール樹脂組成物を成形してなる成形品の摺動特性が高まる点で好ましい。
【0035】
ポリエチレンを無水マレイン酸で変性する変性方法としては、オレフィン系重合体と、不飽和カルボン酸、その無水物、及びそれらの誘導体からなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物を、溶液状態又は溶融状態で適当な有機過酸化物等のラジカル開始剤の存在下で加熱して反応させる方法等が好適であるが、特にこれに限定されるものではない。両成分の配合量は、オレフィン系重合体100質量部に対して、前記化合物0.1質量部以上20質量部以下、好ましくは0.1質量部以上10質量部以下が適当である。そのような化合物で変性したオレフィン系重合体中の有効なその化合物の量が少なすぎる場合、(A)成分と(C)成分との間の親和性が不十分となる場合があり、多すぎる場合、摺動特性等の改善すべき物性を低下させる場合がある。
【0036】
本実施形態において、(C)成分は、(A)成分100質量部に対して、0.5質量部以上10質量部以下含有させることが好ましく、2質量部以上7質量部以下含有させることがより好ましい。得られるポリアセタール樹脂組成物において、(C)成分の配合量が0.5質量部未満であると、摩擦摩耗量が増加する可能性があるため、好ましくない。(C)成分の配合量が10質量部を超える場合は、機械物性が低下する可能性があるため、好ましくない。
【0037】
[(D)1級アミノ基又は2級アミノ基を有し、数平均分子量が400以上500,000以下であるアルキレングリコール系重合体]
本明細書において、当該アルキレングリコール系重合体を「(D)成分」ともいう。本実施形態に係るポリアセタール樹脂組成物において、(D)成分を含有させることで、摺動特性に優れる。
【0038】
(D)成分である、1級アミノ基又は2級アミノ基を有するアルキレングリコール系重合体とは、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコールのホモポリマー又はコポリマーであって、その末端又は分子鎖中に1級又は2 級アミノ基を有するポリマーをいう。更に脂肪酸とのエステル、脂肪族アルコールとのエーテルを形成する等の若干の変性をした重合体でもよい。その例として、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、及びこれらの構成単位からなるコポリマーであって、少なくとも1つのアミノプロピル基、アミノオクチル基を有するもの等がある。
【0039】
重合体の種類は特に限定されるものでないが、アルキレングリコール系重合体が、脂肪酸とのエステル、脂肪族アルコールとのエーテルを形成する等の若干の変性をした重合体であると、ポリアセタール樹脂組成物を成形してなる成形品の摺動特性が高まる点で好ましい。
【0040】
(D)成分の数平均分子量は、400以上500,000以下であり、400以上100,000以下であることが好ましく、1,000以上6,000以下であることが更に好ましい。これは、(D)成分の配合により、(C)成分のポリアセタール樹脂への分散性が改善されるが、(D)成分の数平均分子量が400未満では(A)成分又は(C)成分の高分子材料として持つ機械物性、摺動特性を損ない、数平均分子量が50万を超えては、溶融粘度が高くなりポリアセタール樹脂に分散させることが困難になるからである。
【0041】
(D)成分の配合量は、(A)成分に対して0.01質量部以上5質量部以下であり、0.1質量部以上4質量部以下であることがより好ましく、0.3質量部以上3質量部以下であることが更に好ましく、1質量部以上2質量部以下であることが特に好ましい。中でも、(D)成分の配合量が1質量部以上であると、ポリアセタール樹脂組成物を成形してなる成形品の摺動特性を大きく改善できる点で好ましい。(D)成分が0.01質量部未満であると、成形品の摺動特性の改質効果を充分得られず、また5質量部を超えると機械物性を低下させ、好ましくない。
【0042】
[(E)紡錘状炭酸カルシウム]
本明細書において、上記(E)紡錘状炭酸カルシウムを「(E)成分」ともいう。本実施形態において、(A)線状ポリアセタール樹脂に配合される(E)成分は軽質炭酸カルシウムに属し、その形状が紡錘状をなしている粒子である。紡錘状とは、糸をつむぐ際に使用される紡錘に似た形、すなわち円柱状で中央部が太く、両端が次第に細くなっている形を言うが、本実施形態で使用する(E)成分たる紡錘状炭酸カルシウムは、概ねこれに類似する形状を有するものであればよい。その平均粒子径は0.1~1μm、平均粒子長さは0.5~10μm、粒子長さ/粒子径の平均値は、2~10のものが好ましく、3~6がより好ましい。ここで、粒子径とは紡錘状粒子の最大直径部(通常は長さ方向のほぼ中央部)の直径、粒子長さとは紡錘状粒子の長さを指し、平均粒子径及び平均粒子長さは、紡錘状炭酸カルシウムを電子顕微鏡で撮影し、写真から無作為に選択した50個の粒子についてその粒子径及び粒子長さを読み取り、その平均値を求める方法で測定した値を指す。
【0043】
このような特定の(E)成分としては白石工業(株)製のシルバーW、PC、PCX、カルライトSA等が例示される。本実施形態において使用する(E)成分は、表面処理剤で表面処理されたものが好ましく、特に、アミノシランで表面処理されたものが好ましい。このような表面処理された(E)成分としては白石工業(株)製のSL-101が例示される。
【0044】
(E)成分の配合量は、(A)成分に対して0.1質量部以上20質量部以下であり、0.1質量部以上1質量部以下であることがより好ましい。(E)成分が0.1質量部未満であると摩擦摩耗量が増加する可能性があり、また20質量部を超える表面性が悪化する可能性があるため、好ましくない。
【0045】
[(F)2価以上4価以下の多価アルコールの部分エステル]
本明細書において、当該多価アルコールの部分エステルを「(F)成分」ともいう。本実施形態に係るポリアセタール樹脂組成物において、(F)成分を含有させることで、表面性及び摺動特性に優れる。
【0046】
従来より、ポリアセタール樹脂組成物の成分として、潤滑剤を用いることが知られている。また、潤滑剤として、鉱油、炭化水素、脂肪酸、脂肪族アルコール、脂肪酸と脂肪族アルコールよりなる脂肪族エステル、多価アルコールの部分エステル及び/又はフルエステル、カルボン酸と無機酸とのエステル、脂肪酸とアミン化合物とのアミド、金属石鹸、天然ワックス、シリコーン及びその誘導体、置換ジフェニルエーテル等が知られている。しかしながら、本実施形態においては、(F)成分としての部分エステルと、後に説明する(G)成分としてのアルファオレフィンオリゴマーとの両方が必須の構成要素である。潤滑剤として、これら(F)成分及び(G)成分以外の他の潤滑剤を含有していたとしても、本実施形態ほど、表面性に優れるとはいえないため、好ましくない。
【0047】
(F)成分の具体例として、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリンモノベヘネート、ペンタエリスリトールモノステアレート等が挙げられる。(F)成分としての部分エステルに関し、エステルが部分エステルでないと、ポリアセタール樹脂組成物を成形してなる成形品の表面性及び摺動特性が劣る点で好ましくない。
【0048】
(F)成分の配合量は、(A)成分に対して0.1質量部以上10質量部以下であり、0.5質量部以上2質量部以下であることがより好ましい。(F)成分が0.1質量部未満であると摩擦摩耗量が増加する可能性があり、また10質量部を超えると染み出しが発生する可能性があるため、好ましくない。
【0049】
[(G)アルファオレフィンオリゴマー]
本明細書において、当該オリゴマーを「(G)成分」ともいう。本実施形態に係るポリアセタール樹脂組成物において、(G)成分を含有させることで、摺動特性に優れる。
【0050】
(G)成分の配合量は、(A)成分に対して0.1質量部以上10質量部以下であり、1質量部以上5質量部以下であることがより好ましい。(G)成分が0.1質量部未満であると、ポリアセタール樹脂組成物を成形してなる成形品の摺動特性が劣る可能性があり、また10質量部を超えると染み出し、剥離が発生する可能性があるため、好ましくない。
【0051】
[他の安定剤及び添加剤]
本実施形態に係るポリアセタール樹脂組成物は、公知の各種安定剤を更に添加して安定性を補強することができる。また、目的とする用途に応じてその物性を改善するために、公知の各種の添加剤を更に配合し得る。
【0052】
添加剤として、各種の着色剤、離型剤、核剤、帯電防止剤、その他の界面活性剤、異種ポリマー(前記のグラフト共重合体以外)等が挙げられる。また、本実施形態の目的とする組成物の性能を大幅に低下させない範囲内であれば、無機・有機・金属等の繊維状、粉粒状、板状の充填剤を1種又は2種混合使用することもできる。
【0053】
[ポリアセタール樹脂組成物の調製]
本実施形態に係るポリアセタール樹脂組成物の調製は、従来の樹脂組成物調製法として一般に用いられる公知の方法により容易に調製される。例えば、(1)組成物を構成する全成分を混合し、これを押出機に供給して溶融混練し、ペレット状の組成物を得る方法、(2)組成物を構成する成分の一部を押出機の主フィード口から、残余成分をサイドフィード口から供給して溶融混練し、ペレット状の組成物を得る方法、(3)押出し等により一旦組成の異なるペレットを調製し、そのペレットを混合して所定の組成に調整する方法等を採用できる。
【0054】
<樹脂製歯車>
本実施形態の樹脂製歯車は、上述のポリアセタール樹脂組成物を成形してなる。上記の本実施形態のポリアセタール樹脂組成物と同様に、本実施形態の樹脂製歯車は、耐久性、機械特性、及び摺動特性に優れる。
【0055】
本実施形態に係るポリアセタール樹脂組成物を用いて樹脂製歯車を成形する方法としては特に限定はなく、当該技術分野で知られている各種方法を採用することができる。例えば、本実施形態に係るポリアセタール樹脂組成物を押出機に投入して溶融混練してペレット化し、このペレットを所定の金型を装備した射出成形機に投入し、射出成形することで作製することができる。
【0056】
その他、本実施形態の樹脂製歯車は、本実施形態に係るポリアセタール樹脂組成物を板状又は棒状に成形したあと、それらを切削加工などの一般的な成形加工により成形することができる。
【0057】
本実施形態の樹脂製歯車が適用できる歯車の種類としては、特に限定はないが、例えば、平歯車、ラック、内歯車、はすば歯車、はすば内歯車、はすばラック、やまば歯車、すぐばかさ歯車、まがりばかさ歯車、ゼロールかさ歯車、ねじ歯車、円筒ウォームギヤ等が挙げられる。
【実施例】
【0058】
以下に、実施例により本実施形態を更に具体的に説明するが、本実施形態は以下の実施例に限定されるものではない。
【0059】
(1)(A)線状ポリアセタール共重合体の調製
以下のようにして、線状ポリアセタール共重合体A-1~A-6を得た。
【0060】
《線状ポリアセタール共重合体A-1》
重合反応装置として連続式二軸重合機を用いた。この重合機は、外側に加熱用又は冷却用の媒体を通すためのジャケットを備えており、その内部には撹拌、推進用の多数のパドルを付した2本の回転軸が長手方向に設けられている。この二軸重合機のジャケットに80℃の熱媒を通し、2本の回転軸を一定の速度で回転させながら、その一端に、トリオキサン10.0kg/hrとコモノマーとしての1,3-ジオキソラン0.13kg/hrと連鎖移動剤としてのメチラール3.0g/hrを連続的に供給した。これに触媒として三フッ化ホウ素をガス状で用い、全モノマー量に対し20質量ppmになるように連続供給し、重合を行った。重合機の他端に設けられた吐出口から粗ポリアセタール共重合体を排出し、排出された反応生成物は速やかに破砕機に通しながら、トリエチルアミンを0.05質量%含有する60℃の水溶液に加え触媒を失活させた。更に、分離、洗浄、乾燥することで、粗ポリアセタール共重合体を得た。次いで、この粗ポリアセタール共重合体100質量部に対して、トリエチルアミン5質量%水溶液を4質量部、ペンタエリスリチル-テトラキス〔3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕を0.3質量部添加して、二軸押出機にて210℃で溶融混練し不安定部分を除去し、線状ポリアセタール共重合体A-1を得た。得られた線状ポリアセタール共重合体A-1の性状は、MFR=2.5g/10分、オキシエチレン単位=0.5モル%(対オキシメチレン単位+オキシエチレン単位)であった。
【0061】
《線状ポリアセタール共重合体A-2》
上記線状ポリアセタール共重合体A-1と同様にして線状ポリアセタール共重合体A-2を得た。ただし、メチラール量は0.5g/hrとした。
線状ポリアセタール共重合体A-2の性状は、MFR=1.5g/10分、オキシエチレン単位=0.5モル%(対オキシメチレン単位+オキシエチレン単位)であった。
【0062】
《線状ポリアセタール共重合体A-3》
上記線状ポリアセタール共重合体A-1と同様にして線状ポリアセタール共重合体A-3を得た。ただし、1,3-ジオキソラン量は0.19kg/hrとした。
線状ポリアセタール共重合体A-3の性状は、MFR=2.5g/10分、オキシエチレン単位=0.7モル%(対オキシメチレン単位+オキシエチレン単位)であった。
【0063】
《線状ポリアセタール共重合体A-4》
上記線状ポリアセタール共重合体A-1と同様にして線状ポリアセタール共重合体A-4を得た。ただし、メチラール量は11.0g/hrとした。
線状ポリアセタール共重合体A-4の性状は、MFR=9.0g/10分、オキシエチレン単位=0.5モル%(対オキシメチレン単位+オキシエチレン単位)であった。
【0064】
《線状ポリアセタール共重合体A-5》
上記線状ポリアセタール共重合体A-1と同様にして線状ポリアセタール共重合体A-5を得た。ただし、1,3-ジオキソラン量は0.29Kg/hrとした。
線状ポリアセタール共重合体A-5の性状は、MFR=2.5g/10分、オキシエチレン単位=1.2モル%(対オキシメチレン単位+オキシエチレン単位)であった。
【0065】
《線状ポリアセタール共重合体A-6》
上記線状ポリアセタール共重合体A-1と同様にして線状ポリアセタール共重合体A-6を得た。ただし、メチラール量は13.5g/hrとした。
線状ポリアセタール共重合体A-6の性状は、MFR=14.0g/10分、オキシエチレン単位=0.5モル%(対オキシメチレン単位+オキシエチレン単位)であった。
【0066】
(メルトフローレート(MFR)の測定)
上記のようにして得られた線状ポリアセタール共重合体A-1~A-6のメルトフローレート(MFR)を、ISO 1133に従って測定した。測定結果を表1に示す。
【0067】
(2)(B)分岐又は架橋構造を有するポリアセタール共重合体の調製
《ポリアセタール共重合体B-1(3官能)》
上記線状ポリアセタール共重合体A-1と同様にしてポリアセタール共重合体B-1を得た。ただし、コモノマーとしての1,3-ジオキソランの代わりに、第1コモノマー(b2)としてトリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(TMPTGE)(3官能)10g/hrを、第2コモノマー(b3)として1,3-ジオキソラン0.11kg/hrを使用し、メチラール量は4.0g/hrとした。
ポリアセタール共重合体B-1の性状は、MFR=1.5g/10分、オキシエチレン単位=0.5モル%(対オキシメチレン単位+オキシエチレン単位)であった。また、TMPTGEの含量は0.1質量%であった。
【0068】
《ポリアセタール共重合体B-2(4官能)》
上記線状ポリアセタール共重合体A-1と同様にしてポリアセタール共重合体B-2を得た。ただし、コモノマーとしての1,3-ジオキソランの代わりに、第1コモノマー(b2)としてペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル(PETGE) (4官能)10g/hrを、第2コモノマー(b3)として1,3-ジオキソラン0.11Kg/hrを使用し、メチラール量は4.0g/hrとした。
ポリアセタール共重合体B-2の性状は、MFR=1.5g/10分、オキシエチレン単位=0.5モル%(対オキシメチレン単位+オキシエチレン単位)であった。また、PETGEの含量は0.1質量%であった。
【0069】
《ポリアセタール共重合体B-3(2官能)》
上記線状ポリアセタール共重合体A-1と同様にしてポリアセタール共重合体B-3を得た。ただし、コモノマーとしての1,3-ジオキソランの代わりに、第1コモノマー(b2)としてブタンジオールジグリシジルエーテル(BDGE) (2官能)10g/hrを、第2コモノマー(b3)として1,3-ジオキソラン0.11Kg/hrを使用し、メチラール量は4.0g/hrとした。
ポリアセタール共重合体B-3の性状は、MFR=1.5g/10分、オキシエチレン単位=0.5モル%(対オキシメチレン単位+オキシエチレン単位)であった。また、BDGEの含量は0.1質量%であった。
【0070】
[実施例1~7、比較例1~7]
上記<(1)(A)線状ポリアセタール共重合体の調製>及び(2)<(B)分岐又は架橋構造を有するポリアセタール共重合体の調製>で得た(A)成分及び(B)成分並びに下記(C)~(G)成分を表1に示す割合(単位は質量部)でプリブレンドした後、1ヶ所のベント口を有する30mm径の二軸押出機の主フィード口に投入して溶融混合(押出条件:L/D=35、押出し温度=200℃、スクリュー回転数=120rpm、ベント真空度=-700mmHg、吐出量=12kg/hr)し、ペレット状のポリアセタール樹脂組成物を得た。
【0071】
(C)変性オレフィン系重合体
(C-1)無水マレイン酸変性低密度ポリエチレン(LDPE)(製品名:タフマーMM6850,三井化学(株)製)
(C-2)無水マレイン酸変性エチレン-アクリル酸エチルコポリマー(EEA)(製品名:HPR AR2011,三井デュポンポリケミカル(株)製)
(D)1級アミノ基又は2級アミノ基を有し、数平均分子量が400以上500,000以下であるアルキレングリコール系重合体
(D-1)両末端アミン変性ポリエチレングリコール(PEG)(製品名:ケミスタットY-400,数平均分子量:4,000,三洋化成工業(株)製)
(E)紡錘状炭酸カルシウム
(E-1)紡錘状炭酸カルシウム(製品名:SL-101,平均粒子径:0.3μm,平均粒子長さ:1.2μm,白石工業(株)製)
(F)多価アルコールの部分エステル
(F-1)グリセリンモノステアレート(製品名:リケマールS100,理研ビタミン(株)製)
(G)アルファオレフィンオリゴマー
(G-1)アルファオレフィンオリゴマー(製品名:ルーカントHC600,三井化学(株)製)
【0072】
[評価]
実施例及び比較例に係るペレット状のポリアセタール共重合体の耐クリープ特性、機械特性(引張強度)及び静音性を以下のようにして評価した。
【0073】
(1)耐クリープ特性(クリープ破断時間)
厚さ 4mmのISO Type-A試験片を成形し、クリープ試験機を用いて、80℃環境下で、20MPaの荷重をかけクリープ試験を実施し、破断するまでの時間(クリープ破断時間(h))で比較した。3本を測定し、その平均値をクリープ破断時間とした。
【0074】
(2)機械特性(引張強度)
各実施例・比較例において、ISO527に従って、得られた樹脂組成物ペレットを用いて試験片を作製して引張強度を測定した(ISO527-2/1A/50)。
【0075】
(3)静音性(鳴き音)
JIS K 7218 A法に従い、以下の試験機を用い、荷重を0MPaから段階的に増大させていき、異音が発生したときの面圧を得る。
試験片:中空円筒形(内径:20mm、外径:25.6mm、高さ:15mm)
試験機:(株)オリエンテック製、スラスト式摩擦摩耗試験機EFM-III-E
環境:23℃,50%RH
線速度:10mm/sec
相手材:同材
【0076】
【0077】
表1より、実施例1~7のポリアセタール樹脂組成物はいずれの評価結果も良好な結果が得られたことが分かる。それに対して、(A)成分におけるオキシエチレン単位の割合が過多の比較例1は、耐クリープ特性及び機械強度に劣っていた。また、(A)成分のMFRが過大である比較例2は、耐クリープ特性に劣っていた。更に、(B)成分として、(b2)1分子中に環状エーテル単位を3以上4以下有する化合物を用いなかった比較例3は、耐クリープ特性及び機械強度に劣っていた。更に、(B)成分の含有量が過少又は(B)成分を含有していない比較例4、6は、耐クリープ特性及び機械強度に劣っていた。更に、(B)成分の含有量が過多の比較例5は、耐クリープ特性に劣っていた。更に、(B)~(G)成分を含有していない比較例7は、静音性に劣っていた。すなわち、比較例7は摺動特性に劣っていた。
【要約】
【課題】耐久性、機械特性、及び摺動特性に優れるポリアセタール樹脂組成物及び樹脂製歯車を提供する。
【解決手段】(A)オキシメチレン単位を主たる構成成分とし、コモノマー単位としてオキシアルキレン単位を所定の割合で含有し、MFRが所定値の線状ポリアセタール共重合体100質量部に対し、(B)所定の分岐又は架橋構造を有するポリアセタール共重合体1~10質量部と、(C)所定の変性オレフィン系重合体0.5~10質量部と、(D)所定のアルキレングリコール系重合体0.01~5質量部と、(E)所定の炭酸カルシウム0.1~20質量部と、(F)2価以上4価以下の多価アルコールの部分エステル0.1~10質量部と、(G)アルファオレフィンオリゴマー0.1~10質量部と、を含有する、ポリアセタール樹脂組成物である。
【選択図】なし