(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-28
(45)【発行日】2022-10-06
(54)【発明の名称】有機光電子素子用化合物、有機光電子素子用組成物、有機光電子素子、および表示装置
(51)【国際特許分類】
H01L 51/50 20060101AFI20220929BHJP
C07D 403/14 20060101ALI20220929BHJP
C07D 487/04 20060101ALI20220929BHJP
C07D 209/86 20060101ALI20220929BHJP
C09K 11/06 20060101ALI20220929BHJP
H01L 27/32 20060101ALI20220929BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
H05B33/14 B
C07D403/14 CSP
C07D487/04 137
C07D209/86
C09K11/06 690
H01L27/32
G09F9/30 365
(21)【出願番号】P 2021535752
(86)(22)【出願日】2019-11-22
(86)【国際出願番号】 KR2019016164
(87)【国際公開番号】W WO2020130381
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-07-30
(31)【優先権主張番号】10-2018-0167505
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514278061
【氏名又は名称】サムスン エスディアイ カンパニー,リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20, Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si,Gyeonggi-do 17084,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】シン,チャン ジュ
(72)【発明者】
【氏名】キム,チャンウ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヒュン スン
(72)【発明者】
【氏名】リュ,ドン ワン
(72)【発明者】
【氏名】イ,スンジェ
(72)【発明者】
【氏名】イ,ハンイル
(72)【発明者】
【氏名】ジュン,ホ クッ
(72)【発明者】
【氏名】ルイ,ジンヒュン
(72)【発明者】
【氏名】パク,スンイン
(72)【発明者】
【氏名】リュ,ドンキュ
(72)【発明者】
【氏名】ジュン,スン-ヒュン
【審査官】辻本 寛司
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-119723(JP,A)
【文献】特開2020-088398(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0317293(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 51/50
C07D 403/14
C07D 487/04
C07D 209/86
C09K 11/06
H01L 27/32
G09F 9/30
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表される有機光電子素子用化合物
(ただし、下記化学式306~309で表される化合物を除く):
【化1-1】
上記化学式1中、
Ar
1は、置換もしくは非置換の炭素数6~30のアリール基、置換もしくは非置換のジベンゾフラニル基または置換もしくは非置換のジベンゾチオフェニル基であり、
L
1は、非置換のビフェニレン基であり、
R
1~R
8はそれぞれ独立して、水素、重水素、シアノ基、ハロゲン基、置換もしくは非置換のアミン基、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6~30のアリール基、置換もしくは非置換の炭素数2~30のヘテロ環基またはこれらの組み合わせである。
【化1-2】
【請求項2】
前記L
1は、下記グループIに羅列された連結基から選択されるいずれか一つである、請求項1に記載の有機光電子素子用化合物:
【化2】
上記グループI中、*a
1は前記化学式1のトリアジンと連結される地点であり、*a
2は前記化学式1のカルバゾールと連結される地点である。
【請求項3】
前記L
1
は前記L-2またはL-4で表されるものである、請求項2に記載の有機光電子素子用化合物。
【請求項4】
前記Ar
1は、置換もしくは非置換のフェニル基または置換もしくは非置換のビフェニル基である、請求項1に記載の有機光電子素子用化合物。
【請求項5】
前記Ar
1は、重水素で置換されるか非置換のフェニル基、シアノ基で置換されるか非置換のフェニル基、炭素数1~5のアルキルシリル基で置換されるか非置換のフェニル基または非置換のビフェニル基である、請求項1に記載の有機光電子素子用化合物。
【請求項6】
下記グループ1に羅列された化合物のうちの一つである、請求項1に記載の有機光電子素子用化合物:
【化3】
【請求項7】
第1有機光電子素子用化合物、および第2有機光電子素子用化合物を含み、
前記第1有機光電子素子用化合物は、前記請求項1による化学式1で表され、
前記第2有機光電子素子用化合物は、下記化学式2;または下記化学式3および化学式4の組み合わせで表される、有機光電子素子用組成物:
【化4】
上記化学式2中、
Y
1およびY
2はそれぞれ独立して、置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリール基、または置換もしくは非置換の炭素数2~30のヘテロ環基であり、
L
2およびL
3はそれぞれ独立して、
単結合、または置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリーレン基であり、
R
aおよびR
9~R
12はそれぞれ独立して、水素、重水素、シアノ基、ハロゲン基、置換もしくは非置換のアミン基、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6~30のアリール基、置換もしくは非置換の炭素数2~30のヘテロ環基であり、
mは、0~2の整数であり;
【化5】
上記化学式3および4中、
Y
3およびY
4はそれぞれ独立して、置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリール基、または置換もしくは非置換の炭素数2~30のヘテロ環基であり、
化学式3の隣接した2個の*は化学式4と連結され、
化学式4と連結されない化学式3の*はそれぞれ独立して、C-L
a-R
bであり、
L
a、L
4およびL
5はそれぞれ独立して、
単結合、または置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリーレン基であり、
R
bおよびR
13~R
16はそれぞれ独立して、水素、重水素、シアノ基、ハロゲン基、置換もしくは非置換のアミン基、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6~30のアリール基、置換もしくは非置換の炭素数2~30のヘテロ環基である。
【請求項8】
前記化学式2は、下記化学式2-1~化学式2-15のうちの一つで表される、請求項7に記載の有機光電子素子用組成物:
【化6】
上記化学式2-1~化学式2-15中、
R
9~R
12はそれぞれ独立して、水素、または置換もしくは非置換の炭素数6~12のアリール基であり、
*-L
2-Y
1および*-L
3-Y
2はそれぞれ独立して、下記グループIIに羅列された置換基のうちの一つであり、
【化7】
上記グループII中、*は連結地点である。
【請求項9】
前記化学式2は前記化学式2-8で表される、請求項8に記載の有機光電子素子用組成物。
【請求項10】
前記*-L
2-Y
1および*-L
3-Y
2はそれぞれ独立して、前記グループ
IIのB-1、B-2、およびB-3から選択される一つである、請求項9に記載の有機光電子素子用組成物。
【請求項11】
前記化学式3および化学式4の組み合わせは、下記化学式3Cで表される、請求項7に記載の有機光電子素子用組成物:
【化8】
上記化学式3C中、
Y
3およびY
4はそれぞれ独立して、置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリール基、または置換もしくは非置換の炭素数2~30のヘテロ環基であり、
L
a1、L
a2、L
4およびL
5はそれぞれ独立して、
単結合、または置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリーレン基であり、
R
b1、R
b2およびR
13~R
16はそれぞれ独立して、水素、重水素、シアノ基、ハロゲン基、置換もしくは非置換のアミン基、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6~30のアリール基、置換もしくは非置換の炭素数2~30のヘテロ環基である。
【請求項12】
前記Y
3およびY
4はそれぞれ独立して、置換もしくは非置換のフェニル基、置換もしくは非置換のビフェニル基、置換もしくは非置換のピリジニル基、置換もしくは非置換のカルバゾリル基、置換もしくは非置換のジベンゾフラニル基、または置換もしくは非置換のジベンゾチオフェニル基であり、
R
b1、R
b2およびR
13~R
16はそれぞれ独立して、水素、重水素、シアノ基、置換もしくは非置換のフェニル基、置換もしくは非置換のビフェニル基、置換もしくは非置換のピリジニル基、置換もしくは非置換のカルバゾリル基、置換もしくは非置換のジベンゾフラニル基、または置換もしくは非置換のジベンゾチオフェニル基である、請求項11に記載の有機光電子素子用組成物。
【請求項13】
前記Y
3およびY
4はそれぞれ独立して、下記グループIIIに羅列された置換基から選択される一つである、請求項11に記載の有機光電子素子用組成物:
【化9】
上記グループIII中、
*はそれぞれ、L
4およびL
5との連結地点である。
【請求項14】
前記第2有機光電子素子用化合物は、下記化学式2-8または化学式3Cで表される、請求項7に記載の有機光電子素子用組成物:
【化10】
上記化学式2-8および化学式3C中、
Y
1~Y
4はそれぞれ独立して、置換もしくは非置換のフェニル基、置換もしくは非置換のビフェニル基、置換もしくは非置換のピリジニル基、置換もしくは非置換のカルバゾリル基、置換もしくは非置換のジベンゾフラニル基、または置換もしくは非置換のジベンゾチオフェニル基であり、
L
2~L
5、L
a1およびL
a2はそれぞれ独立して、
単結合、または置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリーレン基であり、
R
b1、R
b2およびR
9~R
16はそれぞれ独立して、水素、重水素、シアノ基、置換もしくは非置換のフェニル基、置換もしくは非置換のビフェニル基、置換もしくは非置換のピリジニル基、置換もしくは非置換のカルバゾリル基、置換もしくは非置換のジベンゾフラニル基、または置換もしくは非置換のジベンゾチオフェニル基である。
【請求項15】
互いに対向する正極と負極、
前記正極と前記負極の間に位置する少なくとも1層の有機層を含み、
前記有機層は、請求項1~6のうちのいずれか一項による有機光電子素子用化合物;または請求項7~14のうちのいずれか一項による有機光電子素子用組成物を含む、有機光電子素子。
【請求項16】
前記有機層は発光層を含み、
前記発光層は前記有機光電子素子用化合物または前記有機光電子素子用組成物を含む、請求項15に記載の有機光電子素子。
【請求項17】
請求項15による有機光電子素子を含む、表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
有機光電子素子用化合物、有機光電子素子用組成物、有機光電子素子、および表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機光電子素子(organic optoelectronic diode)は、電気エネルギーと光エネルギーを相互転換することができる素子である。
【0003】
有機光電子素子は、動作原理によって大きく2種類に分けることができる。一つは光エネルギーによって形成されたエキシトン(exciton)が電子と正孔に分離され電子と正孔がそれぞれ他の電極に伝達されながら電気エネルギーを発生する光電素子であり、他の一つは電極に電圧または電流を供給して電気エネルギーから光エネルギーを発生する発光素子である。
【0004】
有機光電子素子の例としては、有機光電素子、有機発光素子、有機太陽電池、および有機感光体ドラム(organic photo conductor drum)などが挙げられる。
【0005】
このうち、有機発光素子(organic light emitting diode、OLED)は近来、平板表示装置(flat panel display device)の需要増加によって大きく注目されている。有機発光素子は電気エネルギーを光に転換させる素子であって、有機発光素子の性能は電極の間に位置する有機材料によって多くの影響を受ける。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一実施形態は、高効率および長寿命有機光電子素子を実現することができる有機光電子素子用化合物を提供する。
【0007】
他の実施形態は、前記有機光電子素子用化合物を含む有機光電子素子用組成物を提供する。
【0008】
また他の実施形態は、前記有機光電子素子用化合物または有機光電子素子用組成物を含む有機光電子素子を提供する。
【0009】
また他の実施形態は、前記有機光電子素子を含む表示装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一実施形態によれば、下記化学式1で表される有機光電子素子用化合物を提供する。
【0011】
【0012】
上記化学式1中、
Ar1は、置換もしくは非置換の炭素数6~30のアリール基、置換もしくは非置換のジベンゾフラニル基または置換もしくは非置換のジベンゾチオフェニル基であり、
L1は、非置換のビフェニレン基であり、
R1~R8はそれぞれ独立して、水素、重水素、シアノ基、ハロゲン基、置換もしくは非置換のアミン基、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6~30のアリール基、置換もしくは非置換の炭素数2~30のヘテロ環基またはこれらの組み合わせである。
【0013】
他の実施形態によれば、第1有機光電子素子用化合物、および第2有機光電子素子用化合物を含み、前記第1有機光電子素子用化合物は前記請求項1による化学式1で表され、前記第2有機光電子素子用化合物は下記化学式2;または下記化学式3および化学式4の組み合わせで表される有機光電子素子用組成物を提供する。
【0014】
【0015】
上記化学式2中、
Y1およびY2はそれぞれ独立して、置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリール基、または置換もしくは非置換の炭素数2~30のヘテロ環基であり、
L2およびL3はそれぞれ独立して、単結合、または置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリーレン基であり、
RaおよびR9~R12はそれぞれ独立して、水素、重水素、シアノ基、ハロゲン基、置換もしくは非置換のアミン基、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6~30のアリール基、置換もしくは非置換の炭素数2~30のヘテロ環基であり、
mは、0~2の整数であり;
【0016】
【0017】
上記化学式3および4中、
Y3およびY4はそれぞれ独立して、置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリール基、または置換もしくは非置換の炭素数2~30のヘテロ環基であり、
化学式3の隣接した2個の*は化学式4と連結され、
化学式4と連結されない化学式3の*はそれぞれ独立して、C-La-Rbであり、
La、L4およびL5はそれぞれ独立して、単結合、または置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリーレン基であり、
RbおよびR13~R16はそれぞれ独立して、水素、重水素、シアノ基、ハロゲン基、置換もしくは非置換のアミン基、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6~30のアリール基、置換もしくは非置換の炭素数2~30のヘテロ環基である。
【0018】
また他の実施形態によれば、互いに対向する正極と負極、前記正極と前記負極の間に位置する少なくとも1層の有機層を含み、前記有機層は前記有機光電子素子用化合物または有機光電子素子用組成物を含む有機光電子素子を提供する。
【0019】
また他の実施形態によれば、前記有機光電子素子を含む表示装置を提供する。
【発明の効果】
【0020】
高効率長寿命有機光電子素子を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】一実施形態による有機発光素子を示した断面図である。
【
図2】一実施形態による有機発光素子を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を詳しく説明する。但し、これは例示として提示されるものであって、これによって本発明が制限されず、本発明は後述の特許請求の範囲の範疇によって定義されるだけである。
【0023】
本明細書で「置換」とは別途の定義がない限り、置換基または化合物中の少なくとも一つの水素が重水素(D)、ハロゲン基、ヒドロキシル基、アミノ基、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアミン基、ニトロ基、置換もしくは非置換の炭素数1~40のシリル基、炭素数1~30のアルキル基、炭素数1~10のアルキルシリル基、炭素数6~30のアリールシリル基、炭素数3~30のシクロアルキル基、炭素数3~30のヘテロシクロアルキル基、炭素数6~30のアリール基、炭素数2~30のヘテロアリール基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数1~10のトリフルオロアルキル基、シアノ基、またはこれらの組み合わせで置換されたことを意味する。
【0024】
本発明の一例で、「置換」は、置換基または化合物中の少なくとも一つの水素が重水素、炭素数1~30のアルキル基、炭素数1~10のアルキルシリル基、炭素数6~30のアリールシリル基、炭素数3~30のシクロアルキル基、炭素数3~30のヘテロシクロアルキル基、炭素数6~30のアリール基、炭素数2~30のヘテロアリール基、またはシアノ基で置換されたことを意味する。また、本発明の具体的な一例で、「置換」は、置換基または化合物中の少なくとも一つの水素が重水素、炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~30のアリール基、またはシアノ基で置換されたことを意味する。また、本発明の具体的な一例で、「置換」は、置換基または化合物中の少なくとも一つの水素が重水素、炭素数1~5のアルキル基、炭素数6~18のアリール基、シアノ基または炭素数1~5のアルキルシリル基で置換されたことを意味する。また、本発明の具体的な一例で、「置換」は置換基または化合物中の少なくとも一つの水素が重水素、シアノ基、トリメチルシリル基、フェニル基、ビフェニル基、テルフェニル基またはナフチル基で置換されたことを意味する。
【0025】
本明細書で「ヘテロ」とは別途の定義がない限り、一つの官能基内にN、O、S、PおよびSiからなる群より選択されるヘテロ原子を1~3個含有し、残りは炭素であることを意味する。
【0026】
本明細書で「アリール(aryl)基」は、炭化水素芳香族モイエティを一つ以上有するグループを総括する概念であって、炭化水素芳香族モイエティの全ての元素がp-オービタルを有しながら、これらp-オービタルが共役(conjugation)を形成している形態、例えばフェニル基、ナフチル基などを含み、2以上の炭化水素芳香族モイエティがシグマ結合を通じて連結された形態、例えばビフェニル基、テルフェニル基、クォーターフェニル基などを含み、2以上の炭化水素芳香族モイエティが直接または間接的に融合された非芳香族融合環、例えばフルオレニル基などを含むことができる。
【0027】
アリール基は、モノサイクリック、ポリサイクリックまたは融合環ポリサイクリック(即ち、炭素原子の隣接した対を分け持つ環)官能基を含む。
【0028】
本明細書で「ヘテロ環基(heterocyclic group)」は、ヘテロアリール基を含む上位概念であって、アリール基、シクロアルキル基、これらの融合環またはこれらの組み合わせのような環化合物内に炭素(C)の代わりにN、O、S、P、およびSiからなる群より選択されるヘテロ原子を少なくとも一つを含有するものを意味する。前記ヘテロ環基が融合環である場合、前記ヘテロ環基全体またはそれぞれの環ごとにヘテロ原子を一つ以上含むことができる。
【0029】
一例として、「ヘテロアリール(heteroaryl)基」は、アリール基内にN、O、S、P、およびSiからなる群より選択されるヘテロ原子を少なくとも一つを含有するものを意味する。2以上のヘテロアリール基はシグマ結合を通じて直接連結されるか、前記ヘテロアリール基が2以上の環を含む場合、2以上の環は互いに融合できる。前記ヘテロアリール基が融合環である場合、それぞれの環ごとに前記ヘテロ原子を1~3個含むことができる。
【0030】
より具体的に、置換もしくは非置換の炭素数6~30のアリール基は、置換もしくは非置換のフェニル基、置換もしくは非置換のナフチル基、置換もしくは非置換のアントラセニル基、置換もしくは非置換のフェナントレニル基、置換もしくは非置換のナフタセニル基、置換もしくは非置換のピレニル基、置換もしくは非置換のビフェニル基、置換もしくは非置換のp-テルフェニル基、置換もしくは非置換のm-テルフェニル基、置換もしくは非置換のo-テルフェニル基、置換もしくは非置換のクリセニル基、置換もしくは非置換のトリフェニレン基、置換もしくは非置換のペリレニル基、置換もしくは非置換のフルオレニル基、置換もしくは非置換のインデニル基、またはこれらの組み合わせであってもよいが、これに制限されない。
【0031】
より具体的に、置換もしくは非置換の炭素数2~30のヘテロ環基は、置換もしくは非置換のフラニル基、置換もしくは非置換のチオフェニル基、置換もしくは非置換のピロリル基、置換もしくは非置換のピラゾリル基、置換もしくは非置換のイミダゾリル基、置換もしくは非置換のトリアゾリル基、置換もしくは非置換のオキサゾリル基、置換もしくは非置換のチアゾリル基、置換もしくは非置換のオキサジアゾリル基、置換もしくは非置換のチアジアゾリル基、置換もしくは非置換のピリジル基、置換もしくは非置換のピリミジニル基、置換もしくは非置換のピラジニル基、置換もしくは非置換のトリアジニル基、置換もしくは非置換のベンゾフラニル基、置換もしくは非置換のベンゾチオフェニル基、置換もしくは非置換のベンゾイミダゾリル基、置換もしくは非置換のインドリル基、置換もしくは非置換のキノリニル基、置換もしくは非置換のイソキノリニル基、置換もしくは非置換のキナゾリニル基、置換もしくは非置換のキノキサリニル基、置換もしくは非置換のナフチリジニル基、置換もしくは非置換のベンゾオキサジニル基、置換もしくは非置換のベンゾチアジニル基、置換もしくは非置換のアクリジニル基、置換もしくは非置換のフェナジニル基、置換もしくは非置換のフェノチアジニル基、置換もしくは非置換のフェノキサジニル基、置換もしくは非置換のカルバゾリル基、置換もしくは非置換のジベンゾフラニル基、または置換もしくは非置換のジベンゾチオフェニル基、またはこれらの組み合わせであってもよいが、これに制限されない。
【0032】
本明細書で、正孔特性とは、電場(electric field)を加えた時、電子を供与して正孔を形成することができる特性をいうものであって、HOMO準位に沿って伝導特性を有して正極で形成された正孔の発光層への注入、発光層で形成された正孔の正極への移動、および発光層での移動を容易にする特性を意味する。
【0033】
また、電子特性とは、電場を加えた時、電子を受けることができる特性をいうものであって、LUMO準位に沿って伝導特性を有して負極で形成された電子の発光層への注入、発光層で形成された電子の負極への移動、および発光層での移動を容易にする特性を意味する。
【0034】
以下、一実施形態による化合物を説明する。
【0035】
一実施形態による化合物は、下記化学式1で表される。
【0036】
【0037】
上記化学式1中、
Ar1は、置換もしくは非置換の炭素数6~30のアリール基、置換もしくは非置換のジベンゾフラニル基または置換もしくは非置換のジベンゾチオフェニル基であり、
L1は、非置換のビフェニレン基であり、
R1~R8はそれぞれ独立して、水素、重水素、シアノ基、ハロゲン基、置換もしくは非置換のアミン基、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6~30のアリール基、置換もしくは非置換の炭素数2~30のヘテロ環基またはこれらの組み合わせである。
【0038】
化学式1で表される化合物は、トリアジンを中心にして一つのカルバゾール基がN-方向にトリアジンに連結基なく直接連結され、また他のカルバゾール基がN-方向にビフェニレンを通じてトリアジンに連結される構造を有することができる。
【0039】
一つのカルバゾール基がN-方向、即ち、9番位置でトリアジンに連結基なく直接連結されることによって相対的にdeepなLUMOエネルギー準位を有するようになって電子注入および移動に有利である。
【0040】
また他のカルバゾール基がN-方向、即ち、9番位置でトリアジンに連結されることによってC-N結合を通じたπ-結合が切れるようになってHOMO-LUMO間電子雲が正孔輸送部分と電子輸送部分に明確に地域化され、このような地域化はカルバゾール基がビフェニレンを通じてトリアジンに連結されることによってさらに効果的に分離されるようになるので、寿命改善効果が極大化できる。
【0041】
即ち、化学式1で表される化合物を含む素子では正孔/電子注入および移動が有利であり電子雲が効果的に地域化されて電子、正孔の両方ともに安定な構造を実現するようになるので、寿命にさらに有利な特性を有することができる。
【0042】
特に、トリアジンを中心コアとして含むことによって速い電子注入および移動度を確保して強い正孔移動度を有するカルバゾールモイエティと電荷均衡を成してこれも長寿命特性に大きく寄与する。
【0043】
一例として、前記L1は、下記グループIに羅列された連結基から選択されるいずれか一つであってもよい。
【0044】
【0045】
上記グループI中、*a1は前記化学式1のトリアジンと連結される地点であり、*a2は前記化学式1のカルバゾールと連結される地点である。
【0046】
特に、前記ビフェニレンはパラ連結およびメタ連結が組み合わせられた構造であってもよく、例えば、前記L1は前記L-2またはL-4で表すことができる。
【0047】
一例として、前記Ar1は、置換もしくは非置換のフェニル基または置換もしくは非置換のビフェニル基であってもよい。
【0048】
例えば、前記Ar1は、重水素(D)で置換されるか非置換のフェニル基、シアノ基で置換されるか非置換のフェニル基、炭素数1~5のアルキルシリル基で置換されるか非置換のフェニル基、重水素(D)で置換されるか非置換のビフェニル基、シアノ基で置換されるか非置換のビフェニル基または炭素数1~5のアルキルシリル基で置換されるか非置換のビフェニル基であってもよく、
一実施形態によれば、前記Ar1は、重水素で置換されるか非置換のフェニル基、シアノ基で置換されるか非置換のフェニル基、炭素数1~5のアルキルシリル基で置換されるか非置換のフェニル基または非置換のビフェニル基であってもよい。
【0049】
最も具体的な一実施形態で前記Ar1は非置換のフェニル基であってもよいが、これに限定されるのではない。
【0050】
一例として、前記R1~R4はそれぞれ独立して、水素、重水素、シアノ基、ハロゲン基、炭素数1~10のアルキル基または炭素数6~12のアリール基であってもよく、
例えば、前記R1~R4はそれぞれ独立して、水素、シアノ基、炭素数1~5のアルキル基またはフェニル基であってもよく、
最も具体的な一実施形態で前記R1~R4は全て水素であってもよいが、これに限定されるのではない。
【0051】
一例として、前記R5~R8はそれぞれ独立して、水素、重水素、シアノ基、ハロゲン基、炭素数1~10のアルキル基または炭素数6~12のアリール基であってもよく、
例えば、前記R5~R8はそれぞれ独立して、水素、シアノ基、炭素数1~5のアルキル基またはフェニル基であってもよく、
最も具体的な一実施形態で前記R5~R8は全て水素であってもよいが、これに限定されるのではない。
【0052】
具体的な一例として、前記Ar1は非置換のフェニル基であり、前記R5~R8は全て水素であってもよい。
【0053】
例えば、前記化学式1で表される有機光電子素子用化合物は下記グループ1に羅列された化合物から選択された一つであってもよいが、これに限定されるのではない。
【0054】
【0055】
他の一実施形態による有機光電子素子用組成物は第1有機光電子素子用化合物、および第2有機光電子素子用化合物を含み、前記第1有機光電子素子用化合物は前述の化学式1で表され、前記第2有機光電子素子用化合物は下記化学式2;または化学式3および化学式4の組み合わせで表すことができる。
【0056】
【0057】
上記化学式2中、
Y1およびY2はそれぞれ独立して、置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリール基、または置換もしくは非置換の炭素数2~30のヘテロ環基であり、
L2およびL3はそれぞれ独立して、単結合、または置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリーレン基であり、
RaおよびR9~R12はそれぞれ独立して、水素、重水素、シアノ基、ハロゲン基、置換もしくは非置換のアミン基、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6~30のアリール基、置換もしくは非置換の炭素数2~30のヘテロ環基であり、
mは、0~2の整数であり;
【0058】
【0059】
上記化学式3および4中、
Y3およびY4はそれぞれ独立して、置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリール基、または置換もしくは非置換の炭素数2~30のヘテロ環基であり、
化学式3の隣接した2個の*は化学式4と連結され、
化学式4と連結されない化学式3の*はそれぞれ独立して、C-La-Rbであり、
La、L4およびL5はそれぞれ独立して、単結合、または置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリーレン基であり、
RbおよびR13~R16はそれぞれ独立して、水素、重水素、シアノ基、ハロゲン基、置換もしくは非置換のアミン基、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6~30のアリール基、置換もしくは非置換の炭素数2~30のヘテロ環基である。
【0060】
前記第2有機光電子素子用化合物は、前記第1有機光電子素子用化合物と共に発光層に使用されて電荷の移動性を高め安定性を高めることによって発光効率および寿命特性を改善させることができる。
【0061】
一例として、前記化学式2のY1およびY2はそれぞれ独立して、置換もしくは非置換のフェニル基、置換もしくは非置換のビフェニル基、置換もしくは非置換のテルフェニル基、置換もしくは非置換のナフチル基、置換もしくは非置換のアントラセニル基、置換もしくは非置換のトリフェニレニル基、置換もしくは非置換のカルバゾリル基、置換もしくは非置換のジベンゾチオフェニル基、置換もしくは非置換のジベンゾフラニル基、置換もしくは非置換のフルオレニル基、または置換もしくは非置換のピリジニル基であり、
前記化学式2のL2およびL3はそれぞれ独立して、単結合、置換もしくは非置換のフェニレン基、または置換もしくは非置換のビフェニレン基であり、
前記化学式2のR9~R12はそれぞれ独立して、水素、重水素、または置換もしくは非置換の炭素数6~12のアリール基であり、
mは、0または1であってもよい。
【0062】
一例として、前記化学式2の「置換」とは、少なくとも一つの水素が重水素、炭素数1~4のアルキル基、炭素数6~18のアリール基、または炭素数2~30のヘテロアリール基で置換されたことを意味する。
【0063】
本発明の具体的な一実施形態で、前記化学式2は、下記化学式2-1~化学式2-15のうちの一つで表すことができる。
【0064】
【0065】
上記化学式2-1~化学式2-15中、R9~R12はそれぞれ独立して、水素、または置換もしくは非置換の炭素数6~12のアリール基であり、*-L2-Y1および*-L3-Y2はそれぞれ独立して、下記グループIIに羅列された置換基のうちの一つであってもよい。
【0066】
【0067】
上記グループII中、*は連結地点である。
【0068】
一実施形態で、前記化学式2は前記化学式2-8で表すことができる。
【0069】
また、前記化学式2-8の*-L1-Y1および*-L2-Y2はそれぞれ独立して前記グループIIから選択でき、例えばB-1、B-2およびB-3のうちのいずれか一つであってもよい。
【0070】
最も具体的な一実施形態で、前記*-L1-Y1および*-L2-Y2は全て前記グループIIのB-2で表すことができるが、これに限定されるのではない。
【0071】
一例として、前記化学式3および化学式4の組み合わせで表される第2有機光電子素子用化合物は、下記化学式3A、化学式3B、化学式3C、化学式3D、および化学式3Eのうちのいずれか一つで表すことができる。
【0072】
【0073】
上記化学式3A~化学式3E中、Y3およびY4、L4およびL5、およびR13~R16は前述の通りであり、
La1~La4は、前述のL4およびL5の定義と同一であり、
Rb1~Rb4は、前述のR13~R16の定義と同一である。
【0074】
例えば、前記化学式3および4のY3およびY4はそれぞれ独立して、置換もしくは非置換のフェニル基、置換もしくは非置換のビフェニル基、置換もしくは非置換のピリジニル基、置換もしくは非置換のカルバゾリル基、置換もしくは非置換のジベンゾフラニル基、または置換もしくは非置換のジベンゾチオフェニル基であり、
Rb1~Rb4およびR13~R16はそれぞれ独立して、水素、重水素、シアノ基、置換もしくは非置換のフェニル基、置換もしくは非置換のビフェニル基、置換もしくは非置換のピリジニル基、置換もしくは非置換のカルバゾリル基、置換もしくは非置換のジベンゾフラニル基、または置換もしくは非置換のジベンゾチオフェニル基であってもよい。
【0075】
本発明の具体的な一実施形態で、前記化学式3および4のY3およびY4はそれぞれ独立して下記グループIIIに羅列された置換基から選択できる。
【0076】
【0077】
上記グループIII中、*はそれぞれL4およびL5との連結地点である。
【0078】
一実施形態で、前記Rb1~Rb4およびR13~R16はそれぞれ独立して、水素、重水素、シアノ基、置換もしくは非置換のフェニル基、置換もしくは非置換のビフェニル基、置換もしくは非置換のピリジニル基、置換もしくは非置換のカルバゾリル基、置換もしくは非置換のジベンゾフラニル基、または置換もしくは非置換のジベンゾチオフェニル基であってもよい。
【0079】
例えば、前記Rb1~Rb4およびR13~R16はそれぞれ独立して、水素、重水素、シアノ基、または置換もしくは非置換のフェニル基であってもよく、
具体的な一実施形態で、前記Rb1~Rb4はそれぞれ水素であり、R13~R16はそれぞれ独立して水素、またはフェニル基であってもよい。
【0080】
本発明の具体的な一実施形態で、前記第2有機光電子素子用化合物は、前記化学式2-8または化学式3Cで表すことができる。
【0081】
ここで、前記化学式2-8および化学式3CのY1~Y4はそれぞれ独立して置換もしくは非置換のフェニル基、置換もしくは非置換のビフェニル基、置換もしくは非置換のピリジニル基、置換もしくは非置換のカルバゾリル基、置換もしくは非置換のジベンゾフラニル基、または置換もしくは非置換のジベンゾチオフェニル基であり、L2~L5、La1およびLa2はそれぞれ独立して単結合、または置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリーレン基であり、Rb1、Rb2およびR9~R16はそれぞれ独立して水素、重水素、シアノ基、置換もしくは非置換のフェニル基、置換もしくは非置換のビフェニル基、置換もしくは非置換のピリジニル基、置換もしくは非置換のカルバゾリル基、置換もしくは非置換のジベンゾフラニル基、または置換もしくは非置換のジベンゾチオフェニル基であってもよい。
【0082】
最も具体的な一実施形態で、前記化学式2-8および化学式3Cの*-L2-Y1、*-L3-Y2、*-L4-Y3、および*-L5-Y4は全て前記グループIIのB-2で表すことができるが、これに限定されるのではない。
【0083】
例えば、第2有機光電子素子用化合物は下記グループ2に羅列された化合物から選択された一つであってもよいが、これに限定されるのではない。
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
【0088】
【0089】
【0090】
【0091】
第1有機光電子素子用化合物と第2有機光電子素子用化合物は、例えば1:99~99:1の重量比で含まれてもよい。前記範囲で含まれることによって第1有機光電子素子用化合物の電子輸送能力と第2有機光電子素子用化合物の正孔輸送能力を用いて適切な重量比を合わせてバイポーラ特性を実現して効率と寿命を改善することができる。前記範囲内で、例えば、約10:90~90:10、約20:80~80:20の重量比で含まれてもよく、例えば、約20:80~約70:30、約20:80~約60:40、そして約20:80~約50:50の重量比で含まれてもよい。一例として、20:80~40:60の重量比で含まれてもよく、具体的な一例として、30:70、40:60または50:50の重量比で含まれてもよい。さらに具体的な一例として、30:70または50:50の重量比で含まれてもよい。
【0092】
前述の第1有機光電子素子用化合物および第2有機光電子素子用化合物以外に1種以上の化合物をさらに含むことができる。
【0093】
前述の有機光電子素子用化合物または有機光電子素子用組成物は、ドーパントをさらに含む組成物であってもよい。
【0094】
ドーパントは、例えば、燐光ドーパントであってもよく、例えば、赤色、緑色または青色の燐光ドーパントであってもよく、例えば、赤色または緑色燐光ドーパントであってもよい。
【0095】
ドーパントは有機光電子素子用化合物または組成物に微量混合されて発光を起こす物質であって、一般に三重項状態以上に励起させる多重項励起(multiple excitation)によって発光する金属錯体(metal complex)のような物質が使用できる。ドーパントは、例えば、無機、有機、有機-無機化合物であってもよく、1種または2種以上含まれてもよい。
【0096】
ドーパントの一例として燐光ドーパントが挙げられ、燐光ドーパントの例としてはIr、Pt、Os、Ti、Zr、Hf、Eu、Tb、Tm、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pdまたはこれらの組み合わせを含む有機金属化合物が挙げられる。燐光ドーパントは例えば下記化学式Zで表される化合物を使用することができるが、これに限定されるのではない。
【0097】
【0098】
上記化学式Z中、Mは金属であり、L5およびXaは互いに同一であるか異なりMと錯化合物を形成するリガンドである。
【0099】
前記Mは例えばIr、Pt、Os、Ti、Zr、Hf、Eu、Tb、Tm、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pdまたはこれらの組み合わせであってもよく、前記LおよびXは例えばバイデンテートリガンドであってもよい。
【0100】
前述の有機光電子素子用化合物または有機光電子素子用組成物は、化学気相蒸着のような乾式成膜法によって形成できる。
【0101】
以下、前述の有機光電子素子用化合物または有機光電子素子用組成物を適用した有機光電子素子を説明する。
【0102】
有機光電子素子は電気エネルギーと光エネルギーを相互転換することができる素子であれば特に限定されず、例えば、有機光電素子、有機発光素子、有機太陽電池、および有機感光体ドラムなどが挙げられる。
【0103】
ここでは、有機光電子素子の一例である有機発光素子を図面を参照して説明する。
【0104】
図1および
図2は、一実施形態による有機発光素子を示す断面図である。
【0105】
図1を参照すれば、一実施形態による有機発光素子100は、互いに対向する正極120と負極110、そして正極120と負極110の間に位置する有機層105を含む。
【0106】
正極120は例えば正孔注入が円滑なように仕事関数の高い導電体から形成でき、例えば、金属、金属酸化物および/または導電性高分子から形成できる。正極120は、例えば、ニッケル、白金、バナジウム、クロム、銅、亜鉛、金のような金属またはこれらの合金;亜鉛酸化物、インジウム酸化物、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)のような金属酸化物;ZnOとAlまたはSnO2とSbのような金属と酸化物の組み合わせ;ポリ(3-メチルチオフェン)、ポリ(3,4-(エチレン-1,2-ジオキシ)チオフェン)(polyehtylenedioxythiophene:PEDT)、ポリピロールおよびポリアニリンのような導電性高分子などが挙げられるが、これに限定されるのではない。
【0107】
負極110は例えば電子注入が円滑なように仕事関数の低い導電体から形成でき、例えば金属、金属酸化物および/または導電性高分子から形成できる。負極110は、例えば、マグネシウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、チタニウム、インジウム、イットリウム、リチウム、ガドリニウム、アルミニウム、銀、錫、鉛、セシウム、バリウムなどのような金属またはこれらの合金;LiF/Al、LiO2/Al、LiF/Ca、LiF/AlおよびBaF2/Caのような多層構造物質が挙げられるが、これに限定されるのではない。
【0108】
有機層105は、前述の有機光電子素子用化合物または有機光電子素子用組成物を含むことができる。
【0109】
前記有機層105は発光層130を含み、発光層130は前述の有機光電子素子用化合物または有機光電子素子用組成物を含むことができる。
【0110】
ドーパントをさらに含む前記有機光電子素子用組成物は、例えば、緑色発光組成物であってもよい。
【0111】
発光層130は、例えば、前述の第1有機光電子素子用化合物と第2有機光電子素子用化合物をそれぞれ燐光ホストとして含むことができる。
【0112】
有機層は、発光層以外に補助層をさらに含むことができる。
【0113】
前記補助層は、例えば、正孔補助層140であってもよい。
【0114】
図2を参照すれば、有機発光素子200は、発光層130以外に正孔補助層140をさらに含む。正孔補助層140は、正極120と発光層130の間の正孔注入および/または正孔移動性をさらに高め電子を遮断することができる。
【0115】
前記正孔補助層140は、例えば、下記グループAに羅列された化合物のうちの少なくとも一つを含むことができる。
【0116】
具体的に、前記正孔補助層140は、正極120と発光層130の間の正孔輸送層、および前記発光層130と前記正孔輸送層の間の正孔輸送補助層を含むことができ、下記グループDに羅列された化合物のうちの少なくとも一つは前記正孔輸送補助層に含まれてもよい。
【0117】
【0118】
【0119】
前記正孔輸送補助層には、前述の化合物以外にも、US5061569A、JP1993-009471A、WO1995-009147A1、JP1995-126615A、JP1998-095973Aなどに記載された公知の化合物およびこれと類似の構造の化合物も使用できる。
【0120】
また、本発明の一実施形態では、
図1または
図2で有機層105として追加的に電子輸送層、電子注入層、正孔注入層などをさらに含む有機発光素子であってもよい。
【0121】
有機発光素子100、200は、基板上に正極または負極を形成した後、真空蒸着法(evaporation)、スパッタリング(sputtering)、プラズマメッキおよびイオンメッキのような乾式成膜法などで有機層を形成した後、その上に負極または正極を形成して製造することができる。
【0122】
前述の有機発光素子は、有機発光表示装置に適用できる。
【0123】
以下、実施例を通じて前述の実施形態をより詳細に説明する。但し、下記の実施例はただ説明の目的のためのものであり、権利範囲を制限するのではない。
【実施例】
【0124】
以下、実施例および合成例で使用された出発物質および反応物質は、特別な言及がない限り、Sigma-Aldrich社、TCI社、tokyo chemical industryまたはP&H techで購入するか、公知された方法を通じて合成した。
【0125】
(有機光電子素子用化合物の製造)
本発明の化合物のより具体的な例として提示された化合物を下記段階を通じて合成した。
【0126】
(第1有機光電子素子用化合物の製造)
合成例1:中間体Aの合成
【0127】
【0128】
2-phenyl-4,6-dichlorotriazine 58.81g(260.15mmol)とCarbazole 30g(179.42mmol)をTHF500mlに懸濁させた後、NaO(t-Bu)18.11gを徐々に投入した後、常温で12時間攪拌した。反応完了後、生成された固体をFilterし、蒸留水およびacetoneで洗浄および乾燥して、目的化合物である中間体A 40g(収率62.5%)を得た。
【0129】
(LC/MS:理論値356.81、測定値:357.30)
合成例2:中間体Bの合成
【0130】
【0131】
3-(9H-carbazole-9-yl)phenyl boronic acid 30.29g(105mmol)と1-Bromo-4-chlorobenzene 20g(105mmol)、Pd(PPh3)4 0.03eq、K2CO3 2eqをTHFおよび蒸留水に懸濁させた後、12時間還流攪拌する。反応終了後、抽出し有機層を濃縮してシリカゲルカラムして、目的化合物である中間体B 35g(yield:94%)を得た。
【0132】
合成例3:中間体Cの合成
【0133】
【0134】
合成例2で合成した中間体B 35g(100mmol)、Pd(dppf)Cl2 4.85g(10mmol)、KOAc 29.12g(300mmol)、Bis(pinacolato)diboron 30.14g(120mmol)、P(Cy)3 6.66g(20mmol)をDMF500mlに懸濁させた後、12時間還流攪拌する。反応終了後、前記反応液に蒸留水を添加し、Methylene Chlorideで抽出/濃縮しシリカゲルカラムして、目的化合物である中間体C 30.8g(yield70%)を得た。
【0135】
合成例4:化合物A-1の合成
【0136】
【0137】
中間体A 5g(14.01mmol)と中間体C 6.86g(15.41mmol)Pd(PPh3)4 0.49g(0.42mmol)K2CO3 3.87g(28.03mmol)を入れた後、THF100ml蒸留水 50mlに懸濁させた後、12時間還流攪拌する。反応終了後、常温に冷却し、生成された固体をろ過した後、蒸留水およびAcetoneで洗浄する。その後、Toluene 200mlに加熱溶解させた後、シリカゲルフィルターし、ろ液を常温に冷却させた後、生成された固体をFilterし、Acetoneで洗浄後、乾燥して、目的化合物であるA-1 6.7g(収率74%)を得た。
【0138】
(LC/MS:理論値639.75、測定値:640.45)
合成例5:中間体Dの合成
【0139】
【0140】
4-(9H-carbazole-9-yl)phenyl boronic acid 20g(69.66mmol)と1-Bromo-3-Chlorobenzene 13.34g(69.66mmol)、Pd(PPh3)4 2.42g(2.09mmol)、K2CO3 19.25g(139.31mmol)をTHF300mlおよび蒸留水150mlに懸濁させた後、合成例2と同様な方法で合成して、目的化合物である中間体D 19.82g(81%yield)を得た。
【0141】
合成例6:中間体Eの合成
【0142】
【0143】
合成例5で合成した中間体D 19.82g(56.01mmol)を入れたことを除いては合成例3と同様な方法で合成して、目的化合物である中間体E 17g(68%Yield)を得た。
【0144】
合成例7:A-3の合成
【0145】
【0146】
合成例1で合成した中間体A 4.55g(12.7mmol)と合成例6で合成した中間体E 5.79g(13.01mmol)を入れたことを除いては合成例4と同様な方法で合成して、目的化合物であるA-3 6g(74%yield)を得た。
【0147】
(LC/MS:理論値639.75、測定値:640.44)
合成例8:比較化合物R1の合成
【0148】
【0149】
合成例3で合成した中間体C 5.0g(11.23mmol)と2-chloro-4,6-diphenyltriazine 3g(11.23mmol)、Pd(PPh3)4 0.03eq、K2CO3 2eqをTHFおよび蒸留水に懸濁させた後、12時間還流攪拌する。反応完了後、生成された固体をFilterし、蒸留水およびacetoneで洗浄する。Monochlorobenzeneに再結晶して比較化合物R1 4g(65%yield)を得た。
【0150】
(LC/MS:理論値550.65、測定値:551.4)
合成例9:中間体Fの合成
【0151】
【0152】
Cyanuric Chloride 10g(54.23mmol)とCarbazole 18.13g(108.45mmol)をTHF250mlに懸濁させた後、NaO(t-Bu)7.81g(81.35mmol)を徐々に入れた後、12時間攪拌する。反応終了後、生成された固体をFilterし、蒸留水およびAcetone/hexaneで洗浄して、目的化合物である中間体F 12g(49.6%yield)を得た。
【0153】
合成例10:比較化合物R2の合成
【0154】
【0155】
合成例9で合成した中間体F 6g(13.46mmol)と4-(9H-carbazole-9-yl)biphenyl boronic acid 5.13g(14.13mmol)、Pd(PPh3)4 0.47g(0.40mmol)、K2CO3 3.72g(26.91mmol)をTHF100ml蒸留水50mlに懸濁した後、12時間還流攪拌する。反応終了後、生成された固体をfilterし蒸留水/acetoneで洗浄した。Dichlorobenzene 300mlに加熱溶解させた後、Silicagel filterしてろ液を常温に冷却させ、生成された固体をろ過乾燥して、目的化合物である比較化合物R2 3.9g(40%yield)を得た。
【0156】
(LC/MS:理論値728.84、測定値:729.6)
合成例11:中間体Gの合成
【0157】
【0158】
Cyanuric Chloride 36.9g(200mmol)、Carbazole 33.4g(200mmol)をTHF300mlに懸濁させた後、NaO(t-Bu)19.22g(200mmol)を0℃で徐々に投入した。反応終了後、生成された固体をfilterし蒸留水/Acetone/Hexaneで洗浄して、目的化合物である中間体G 10g(16%yield)を得た。
【0159】
合成例12:中間体Hの合成
【0160】
【0161】
合成例11で合成した中間体G 4.9g(15.55mmol)と中間体I(韓国公開特許第10-2014-0135524号の合成例3参照)6.69g(15.55mmol)、Pd(PPh3)4 0.89g(0.78mmol)、K2CO3 5.37g(38.87mmol)をTHF50ml/Toluene 50ml/蒸留水 50mlに懸濁させた後、12時間還流攪拌する。反応終了後、生成された固体をfilterし蒸留水/Acetoneで洗浄した後、乾燥して、目的化合物である中間体H 5g(56%yield)を得た。
【0162】
合成例13:比較化合物R3の合成
【0163】
【0164】
合成例12で合成した中間体H 2.4g(4.11mmol)と9-[3-(4,4,5,5-tetramethyl-1,3,2-dioxaborolan-2-yl)phenyl]-9H-Carbazole 1.67g(4.53mmol)、Pd(PPh3)4 0.14g(0.12mmol)、K2CO3 1.14g(8.23mmol)をTHF50mlDIW50mlに懸濁させた後、12時間還流攪拌する。反応終了後、生成された固体をfilterし蒸留水およびAcetoneで洗浄する。前記固体をDichlorobenzene 100mlに加熱溶解しシリカゲルフィルターした後、ろ液を常温に冷却させる。ろ液に生成された固体をろ過しacetoneで洗浄して、目的化合物である比較化合物R3 2.94g(89.5%yield)を得た。
【0165】
(LC/MS:理論値789.92、測定値:790.40)
(第2有機光電子素子用化合物の製造)
合成例14:化合物B-99の合成
US2017-0317293A1に公知された方法と同様に化合物B-99を合成した。
【0166】
合成例15:化合物C-4の合成
【0167】
【0168】
丸底フラスコに5,8-Dihydroindolo[2,3-c]carbazole(CAS No.:200339-30-6)8g(31.2mmol)、4-ヨードビフェニル 20.5g(73.32mmol)、CuI 1.19g(6.24mmol)、1,10-phenanthoroline 1.12g(6.24mmol)、K2CO3 12.9g(93.6mmol)を入れ、DMF50mlを加えて窒素雰囲気下で24時間還流攪拌させる。反応終了後、蒸留水で加えて結晶を析出させ、ろ過した。固体をxylene 250mlに溶かしてシリカゲルでろ過した後、白色固体として析出させて化合物C-4 16.2g(収率93%)を合成した。
【0169】
LC/MS calculated for:C42H28N2 Exact Mass:560.2252 found for:561.23
(有機発光素子の製作)
実施例1
ITO(Indium tin oxide)が1500Åの厚さで薄膜コーティングされたガラス基板を蒸留水超音波で洗浄した。蒸留水洗浄が終わると、イソプロピルアルコール、アセトン、メタノールなどの溶剤で超音波洗浄して乾燥させた後、プラズマ洗浄機に移送させた後、酸素プラズマを用いて前記基板を10分間洗浄した後、真空蒸着機に基板を移送した。このように準備されたITO透明電極を正極として使用してITO基板上部に化合物Aを真空蒸着して700Åの厚さの正孔注入層を形成し、前記注入層上部に化合物Bを50Åの厚さで蒸着した後、化合物Cを1020Åの厚さで蒸着して正孔輸送層を形成した。正孔輸送層上部に合成例4のA-1をホストとして使用し、ド-パントとしてPhGDを7wt%でドーピングして真空蒸着で400Åの厚さの発光層を形成した。次いで、前記発光層上部に化合物DとLiqを同時に1:1比率で真空蒸着して300Åの厚さの電子輸送層を形成し、前記電子輸送層上部にLiq 15ÅとAl 1200Åを順次に真空蒸着して負極を形成することによって有機発光素子を製作した。
【0170】
前記有機発光素子は5層の有機薄膜層を有する構造からなっており、具体的に次の通りである。
【0171】
ITO/化合物A(700Å)/化合物B(50Å)/化合物C(1020Å)/EML[A-1:PhGD(7wt%)](400Å)/化合物D:Liq(300Å)/Liq(15Å)/Al(1200Å)の構造で製作した。
【0172】
化合物A:N4,N4’-diphenyl-N4,N4’-bis(9-phenyl-9H-carbazol-3-yl)biphenyl-4,4’-diamine
化合物B:1,4,5,8,9,11-hexaazatriphenylene-hexacarbonitrile(HAT-CN)、
化合物C:N-(biphenyl-4-yl)-9,9-dimethyl-N-(4-(9-phenyl-9H-carbazol-3-yl)phenyl)-9H-fluoren-2-amine
化合物D:8-(4-(4,6-di(naphthalen-2-yl)-1,3,5-triazin-2-yl)phenyl)quinoline
【0173】
【0174】
実施例2~実施例9、および比較例1~比較例5
下記表1~5に記載したようにホストとその比率を変更したことを除いては、前記実施例1と同様な方法で実施例2~実施例9、および比較例1~比較例5の素子を製作した。
【0175】
評価:寿命上昇効果確認
前記実施例1~実施例9、および比較例1~比較例5による有機発光素子の寿命特性を評価した。具体的な測定方法は下記の通りであり、その結果は表1~5の通りである。
【0176】
(1)寿命測定
製造された有機発光素子に対してポラロニクス寿命測定システムを使用して実施例1~9および比較例1~5の素子を初期輝度(cd/m2)を24000cd/m2に発光させ、時間経過による輝度の減少を測定して初期輝度に対して90%に輝度が減少された時点をT90寿命として測定した。
【0177】
(2)T90寿命比(%)計算
単一ホスト評価または同一な第2ホストを適用した混合ホスト実施例(第1化合物を第1ホストとして適用)と混合ホスト比較例(比較化合物を第1ホストとして適用)のT90(h)の相対比較値を示す。
【0178】
T90寿命比(%)={[実施例(第1化合物を単独または混合ホストとして使用)のT90(h)/[比較例(比較化合物を単独または混合ホストとして使用)のT90(h)]}×100
【0179】
【0180】
【0181】
【0182】
【0183】
【0184】
表1~5を参照すれば、本発明による化合物は比較化合物と比較して寿命が大きく改善されたのを確認することができる。
【0185】
以上で本発明の好ましい実施例について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されるのではなく、次の特許請求の範囲で定義している本発明の基本概念を用いた当業者の様々な変形および改良形態も本発明の権利範囲に属するのである。
【符号の説明】
【0186】
100、200:有機発光素子
105:有機層
110:負極
120:正極
130:発光層
140:正孔補助層