(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-28
(45)【発行日】2022-10-06
(54)【発明の名称】基板処理装置、半導体装置の製造方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/31 20060101AFI20220929BHJP
C23C 16/44 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
H01L21/31 B
C23C16/44 G
(21)【出願番号】P 2021548002
(86)(22)【出願日】2019-09-24
(86)【国際出願番号】 JP2019037292
(87)【国際公開番号】W WO2021059332
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2021-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100091362
【氏名又は名称】阿仁屋 節雄
(72)【発明者】
【氏名】竹林 雄二
(72)【発明者】
【氏名】大野 健治
【審査官】長谷川 直也
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-525162(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0092085(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0265982(US,A1)
【文献】特表2016-511797(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0186010(US,A1)
【文献】特表2011-506758(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/31
C23C 16/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に対する処理が行われる処理容器と、
前記処理容器内で前記基板を支持する支持部と、
前記処理容器内で前記基板に接触可能なガス流を形成するガス流制御部と、
前記処理容器内で前記支持部を往復移動させる第1駆動部と、
前記処理容器内で前記ガス流制御部を、前記支持部とは逆向きに往復移動させる第2駆動部と、
を有
し、
前記第1駆動部は、前記支持部を、前記処理容器内の一端側と他端側との間で往復移動させるよう構成され、
前記第2駆動部は、前記ガス流制御部を、前記処理容器内の前記他端側と前記一端側との間で往復移動させるよう構成され、
前記処理容器は、前記処理容器内における前記一端と前記他端との間の距離が、前記基板の直径の2倍と、前記ガス流制御部の移動方向における幅と、の合計未満となるよう構成されるか、もしくは、前記ガス流制御部の移動方向における幅の2倍と、前記基板の直径と、の合計未満となるよう構成される
基板処理装置。
【請求項2】
前記第1駆動部および前記第2駆動部は、前記一端側に前記支持部が位置する際には、前記他端側に前記ガス流制御部を位置させ、前記一端側に前記ガス流制御部が位置する際には、前記他端側に前記支持部を位置させるよう構成される
請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記第1駆動部および前記第2駆動部は、前記基板を支持した前記支持部および前記ガス流制御部に対し、平面視において前記支持部に支持された前記基板と前記ガス流制御部とが重ならない第1期間と、平面視において前記支持部に支持された前記基板と前記ガス流制御部との少なくとも一部が重なる第2期間とで、異なる態様の速度制御を行うよう構成される請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記第1駆動部および前記第2駆動部は、前記基板を支持した前記支持部に対する速度制御の態様を変化させるタイミングと、前記ガス流制御部に対する速度制御の態様を変化させるタイミングとを、同期させるよう構成される
請求項3に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記第1駆動部および前記第2駆動部は、前記第1期間において、前記基板を支持した前記支持部および前記ガス流制御部を非等速移動させるよう構成される
請求項3に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記第1駆動部および前記第2駆動部は、
前記第1期間のうち前記支持部に支持された前記基板と、前記ガス流制御部とが、お互いに近づく期間においては、前記基板を支持した前記支持部および前記ガス流制御部を加速移動させ、
前記第1期間のうち前記支持部に支持された前記基板と、前記ガス流制御部とが、お互いに離れる期間においては、前記基板を支持した前記支持部および前記ガス流制御部を減速移動させるよう構成される
請求項5に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記第1駆動部および前記第2駆動部は、前記第2期間において、前記基板を支持した前記支持部と前記ガス流制御部との相対速度を一定に維持するよう構成される
請求項3に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記第1駆動部および前記第2駆動部は、前記第2期間において、前記基板を支持した前記支持部と、前記ガス流制御部とを、それぞれ等速移動させるよう構成される
請求項7に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記第1駆動部および前記第2駆動部は、前記第2期間において、前記基板を支持した前記支持部の移動速度と、前記ガス流制御部の移動速度とを、等しくするよう構成される
請求項8に記載の基板処理装置。
【請求項10】
基板に対する処理が行われる処理容器と、
前記処理容器内で前記基板を支持する支持部と、
前記処理容器内で前記基板に接触可能なガス流を形成するガス流制御部と、
前記処理容器内で前記支持部を往復移動させる第1駆動部と、
前記処理容器内で前記ガス流制御部を、前記支持部とは逆向きに往復移動させる第2駆動部と、
を有し、
前記第1駆動部および前記第2駆動部は、前記基板を支持した前記支持部および前記ガス流制御部に対し、平面視において前記支持部に支持された前記基板と前記ガス流制御部とが重ならない第1期間と、平面視において前記支持部に支持された前記基板と前記ガス流制御部との少なくとも一部が重なる第2期間とで、異なる態様の速度制御を行うよう構成され、
前記第1駆動部および前記第2駆動部は、前記第2期間において、前記基板を支持した前記支持部と前記ガス流制御部との相対速度を一定に維持するよう構成され、
前記第1駆動部および前記第2駆動部は、前記第2期間において、前記基板を支持した前記支持部と、前記ガス流制御部とを、それぞれ等速移動させるよう構成され、
前記第1駆動部および前記第2駆動部は、前記第2期間において、前記基板を支持した前記支持部の移動速度と、前記ガス流制御部の移動速度とを、異ならせるよう構成され
る基板処理装置。
【請求項11】
前記第1駆動部および前記第2駆動部は、前記第2期間において、前記基板を支持した前記支持部と前記ガス流制御部との相対速度を、その期間の途中で変化させるよう構成される
請求項3に記載の基板処理装置。
【請求項12】
前記第1駆動部および前記第2駆動部は、前記第2期間のうち平面視において前記支持部に支持された前記基板の周辺部と前記ガス流制御部とが重なる期間と、前記第2期間のうち平面視において前記支持部に支持された前記基板の中央部と前記ガス流制御部とが重なる期間とで、前記基板を支持した前記支持部と前記ガス流制御部との相対速度を変化させるよう構成される
請求項3に記載の基板処理装置。
【請求項13】
前記第1駆動部および前記第2駆動部は、平面視において前記支持部に支持された前記基板と前記ガス流制御部との少なくとも一部が重なった状態を維持しつつ、前記基板を支持した前記支持部および前記ガス流制御部を往復移動させるよう構成される請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項14】
前記ガス流制御部は、原料ガス流制御部と、反応ガス流制御部と、を有し、
前記反応ガス流制御部は、前記原料ガス流制御部を、前記ガス流制御部の移動方向の両側から挟み込むように配置される
請求項1又は10に記載の基板処理装置。
【請求項15】
前記原料ガス流制御部は、原料ガス供給部と、その外周に設けられた原料ガス排気部と、その外周に設けられた不活性ガス供給部と、その内周および外周に設けられた不活性ガス排気部とを有し、
前記反応ガス流制御部は、反応ガス供給部と、その外周に設けられた反応ガス排気部と、その外周に設けられた不活性ガス供給部と、その内周および外周に設けられた不活性ガス排気部とを有する
請求項14に記載の基板処理装置。
【請求項16】
前記ガス流制御部は、第1ガス供給部および第1排気部を有し、
前記第1ガス供給部および前記第1排気部とは別個に設けられ、前記処理容器内に対するガス供給および排気を行う第2ガス供給部および第2排気部を更に有する
請求項1又は10に記載の基板処理装置。
【請求項17】
処理容器内で支持部により基板を支持する工程と、
前記処理容器内でガス流制御部により前記基板に接触可能なガス流を形成する工程と、
前記処理容器内における一端と他端との間の距離が、前記基板の直径の2倍と、前記ガス流制御部の移動方向における幅と、の合計未満となるよう構成されるか、もしくは、前記ガス流制御部の移動方向における幅の2倍と、前記基板の直径と、の合計未満となるよう構成される前記処理容器内で、前記基板を支持した前記支持部を
、前記処理容器内の前記一端側と前記他端側との間で、第1駆動部により往復移動させつつ、前記ガス流を形成した状態の前記ガス流制御部を
、前記処理容器内の前記他端側と前記一端側との間で、第2駆動部により前記支持部とは逆向きに往復移動させることで前記基板を処理する工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【請求項18】
処理容器内で支持部により基板を支持する工程と、
前記処理容器内でガス流制御部により前記基板に接触可能なガス流を形成する工程と、
前記処理容器内で、前記基板を支持した前記支持部を第1駆動部により往復移動させつつ、前記ガス流を形成した状態の前記ガス流制御部を第2駆動部により前記支持部とは逆向きに往復移動させることで前記基板を処理する工程と、
を有し、
前記基板を処理する工程では、前記第1駆動部および前記第2駆動部により、
前記基板を支持した前記支持部および前記ガス流制御部に対し、平面視において前記支持部に支持された前記基板と前記ガス流制御部とが重ならない第1期間と、平面視において前記支持部に支持された前記基板と前記ガス流制御部との少なくとも一部が重なる第2期間とで、異なる態様の速度制御を行い、
前記第2期間において、前記基板を支持した前記支持部と前記ガス流制御部との相対速度を一定に維持し、前記基板を支持した前記支持部と、前記ガス流制御部とを、それぞれ等速移動させ、前記基板を支持した前記支持部の移動速度と、前記ガス流制御部の移動速度とを、異ならせる
半導体装置の製造方法。
【請求項19】
処理容器内で支持部により基板を支持する手順と、
前記処理容器内でガス流制御部により前記基板に接触可能なガス流を形成する手順と、
前記処理容器内における一端と他端との間の距離が、前記基板の直径の2倍と、前記ガス流制御部の移動方向における幅と、の合計未満となるよう構成されるか、もしくは、前記ガス流制御部の移動方向における幅の2倍と、前記基板の直径と、の合計未満となるよう構成される前記処理容器内で、前記基板を支持した前記支持部を
、前記処理容器内の前記一端側と前記他端側との間で、第1駆動部により往復移動させつつ、前記ガス流を形成した状態の前記ガス流制御部を
、前記処理容器内の前記他端側と前記一端側との間で、第2駆動部により前記支持部とは逆向きに往復移動させることで前記基板を処理する手順と、
をコンピュータによっ
て基板処理装置に実行させるプログラム。
【請求項20】
処理容器内で支持部により基板を支持する手順と、
前記処理容器内でガス流制御部により前記基板に接触可能なガス流を形成する手順と、
前記処理容器内で、前記基板を支持した前記支持部を第1駆動部により往復移動させつつ、前記ガス流を形成した状態の前記ガス流制御部を第2駆動部により前記支持部とは逆向きに往復移動させることで前記基板を処理する手順と、
前記基板を処理する手順において、前記第1駆動部および前記第2駆動部により、
前記基板を支持した前記支持部および前記ガス流制御部に対し、平面視において前記支持部に支持された前記基板と前記ガス流制御部とが重ならない第1期間と、平面視において前記支持部に支持された前記基板と前記ガス流制御部との少なくとも一部が重なる第2期間とで、異なる態様の速度制御を行う手順と、
前記第2期間において、前記基板を支持した前記支持部と前記ガス流制御部との相対速度を一定に維持し、前記基板を支持した前記支持部と、前記ガス流制御部とを、それぞれ等速移動させ、前記基板を支持した前記支持部の移動速度と、前記ガス流制御部の移動速度とを、異ならせる手順と、
をコンピュータによって基板処理装置に実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理装置、半導体装置の製造方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体装置の製造工程では、ウエハ等の基板に対して所定のプロセス処理を行う基板処理装置が用いられる。プロセス処理としては、例えば、複数種類のガスを順に供給して行う成膜処理がある。このようなプロセス処理を行う基板処理装置としては、例えば、ガス供給を行うカートリッジ部または処理容器内で基板を支持する基板載置台のいずれか一方の直動運動により、基板位置とガス供給位置とを相対的に移動させて、基板上への膜形成等を行うように構成されたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した構成の基板処理装置では、直動運動の開始前と終了後のそれぞれについて、カートリッジ部または基板載置台の退避スペースを処理容器内に確保する必要がある。そのため、処理容器の大容積化を招くおそれがあり、これに伴って基板処理装置のフットプリント(占有領域)の増大化を招くおそれがある。
【0005】
本開示は、処理容器の小容積化および基板処理装置のフットプリントの低減を実現可能とする技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によれば、
基板に対する処理が行われる処理容器と、
前記処理容器内で前記基板を支持する支持部と、
前記処理容器内で前記基板に接触可能なガス流を形成するガス流制御部と、
前記処理容器内で前記支持部を往復移動させる第1駆動部と、
前記処理容器内で前記ガス流制御部を、前記支持部とは逆向きに往復移動させる第2駆動部と、
を有する構成が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、処理容器の小容積化および基板処理装置のフットプリントの低減が実現可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の第1実施形態で用いられる基板処理装置の概略構成例を示す概念図であり、(a)はA-A断面を示す平面図、(b)はB-B断面を示す側面図、(c)はC-C断面を示す正面図である。
【
図2】本開示の第1実施形態で用いられる基板処理装置におけるガスカートリッジヘッドアッセンブリーを示す概念図であり、(a)は構成例の概要を模式的に示す側断面図、(b)は要部の横断面を示す横断面図である。
【
図3】本開示の第1実施形態における基板処理工程の手順を示すフロー図である。
【
図4】本開示の第1実施形態における成膜工程で行う相対位置移動処理動作の概要を示すチャート図である。
【
図5】相対位置移動処理動作の移動範囲を比較する説明図であり、(a)は本開示の第1実施形態における移動範囲を示す図、(b)は比較例1における移動範囲を示す図、(c)は比較例2における移動範囲を示す図である。
【
図6】本開示の第2実施形態で用いられる基板処理装置におけるウエハ配置例を示す概念図であり、(a)はウエハ1枚処理の構成例を示す平面図、(b)はウエハ2枚同時処理の構成例を示す平面図、(c)はウエハ4枚同時処理の構成例を示す平面図である。
【
図7】本開示の第3実施形態で用いられる基板処理装置におけるガスカートリッジヘッドアッセンブリーを示す概念図であり、(a)は構成例の概要を模式的に示す側断面図、(b)は要部の横断面を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0010】
以下の説明で例に挙げる基板処理装置は、半導体装置の製造工程で用いられるもので、処理対象となる基板に対して所定のプロセス処理を行うように構成されたものである。
処理対象となる基板は、例えば、半導体装置(半導体デバイス)が作り込まれる半導体基板としてのシリコンウエハ(以下、単に「ウエハ」という。)である。なお、本明細書において「ウエハ」という言葉を用いた場合は、「ウエハそのもの」を意味する場合や、「ウエハとその表面に形成された所定の層や膜等との積層体(集合体)」を意味する場合(すなわち、表面に形成された所定の層や膜等を含めてウエハと称する場合)がある。また、本明細書において「ウエハの表面」という言葉を用いた場合は、「ウエハそのものの表面(露出面)」を意味する場合や、「ウエハ上に形成された所定の層や膜等の表面、すなわち、積層体としてのウエハの最表面」を意味する場合がある。本明細書において「基板」という言葉を用いた場合も、「ウエハ」という言葉を用いた場合と同義である。
ウエハに対して行う所定のプロセス処理(以下、単に「処理」ということもある。)としては、例えば、酸化処理、拡散処理、アニール処理、エッチング処理、プリクリーニング処理、チャンバクリーニング処理、成膜処理等がある。本実施形態では、特に成膜処理を行う場合を例に挙げる。
【0011】
<第1実施形態>
まず、本開示の第1実施形態について具体的に説明する。
【0012】
(1)基板処理装置の構成
図1は、第1実施形態で用いられる基板処理装置の概略構成例を示す概念図であり、(a)はA-A断面を示す平面図、(b)はB-B断面を示す側面図、(c)はC-C断面を示す正面図である。
【0013】
(処理容器)
基板処理装置100は、ウエハ200に対する処理を行うための処理容器101を有する。処理容器101は、例えばアルミニウム(Al)やステンレス鋼(SUS)等の金属材料により密閉容器として構成されている。処理容器101の内部、すなわち、中空部には、ウエハ200に対する処理が行われる処理空間である処理室101aが形成される。処理容器101の側壁(側面)には、ウエハ搬入出口102と、ウエハ搬入出口102を開閉するゲートバルブ103と、が設けられおり、ウエハ搬入出口102を介して処理容器101の内外にウエハ200を搬送することが可能となっている。
【0014】
処理容器101は、処理容器101内の一端側と他端側とに区画された複数のエリアを有する。具体的には、
図1(a)に示すように、平面視において矩形状である処理容器101は、仮想的な直線Lで区画された2つのエリアである第1エリアと第2エリアとを有している。第1エリアは、処理容器101内の一端側のエリアに相当し、処理容器101内のゲートバルブ103が設けられる側の空間である。第2エリアは、処理容器101内の他端側のエリアに相当し、処理容器101内のゲートバルブ103が設けられる側と反対側の空間である。すなわち、第1エリアは、平面視において、処理容器101のゲートバルブ103が設けられる側壁(内壁)と直線Lとの間の空間であり、第2エリアは、平面視において、処理容器101のゲートバルブ103が設けられる側壁と対向(対面)する側壁(内壁)と直線Lとの間の空間である。なお、第1エリアと第2エリアは連通しており、第1エリアと第2エリアとの間に仕切り板等は存在しない。また、第1エリアと第2エリアは、それらの間に異なるエリアを挟むことなく、隣接して配置されている。このように第1エリアと第2エリアを区画する直線Lは、例えば、処理容器101内の矩形状領域を等分するように想定することができる。例えば、直線Lは、平面視において、矩形状である処理容器101の外形の長辺の垂直二等分線を構成するように想定することができる。その場合に、第1エリアと第2エリアは、同一の容積を有し、平面視においては同一形状、同一幅、同一面積を有することになる。ただし、必ずしもこれに限定されることはなく、第1エリアと第2エリアに相違が生じるように直線Lが想定されていてもよい。
【0015】
(ガス供給部・排気部)
処理容器101には、処理容器101内へのガス供給を行うガス供給系としてのガス供給部と、処理容器101内からのガス排気を行う排気系としての排気部と、が接続されている。ガス供給部は、第1ガス供給部と、これとは別個に設けられた第2ガス供給部と、を含む。また、排気部は、第1排気部と、これとは別個に設けられた第2排気部と、を含む。
【0016】
第1ガス供給部および第1排気部は、後述するガス流制御部としてのカートリッジヘッド300を介して、処理容器101に接続されている。
【0017】
具体的には、処理容器101には、カートリッジヘッド300を介して、排気ライン(排気管)330b,330d,340b,340dが接続されている。排気ライン330b,330d,340b,340dには、ガス流の上流側から順に、圧力センサ109、APC(Auto Pressure Controller)バルブ等の圧力制御器105、排気バルブ104、真空ポンプ106が、それぞれ接続されている。主に、排気ライン330b,330d,340b,340d、圧力センサ109、圧力制御器105、排気バルブ104により、第1排気部が構成される。真空ポンプ106を第1排気部に含めて考えてもよい。
【0018】
また、処理容器101には、カートリッジヘッド300を介して、ガス供給ライン(供給管)330a,330c,340a,340cが接続されている。ガス供給ライン330a,330c,340a,340cには、ガス流の上流側から順に、マスフローコントローラー(MFC)108、バルブ107が、それぞれ接続されている。主に、ガス供給ライン330a,330c,340a,340c、MFC108、バルブ107により、第1ガス供給部が構成される。
【0019】
なお、排気ライン330b,330d,340b,340d内の圧力は圧力センサ109によりで測定され、この測定された圧力情報に基づき圧力制御器105がフィードバック制御されることで、排気ライン330b,330d,340b,340d内の圧力が所定の圧力となるように調整することが可能となっている。
【0020】
第2ガス供給部および第2排気部は、上述した第1ガス供給部および第1排気部とは別個に設けられている。
【0021】
具体的には、
図1(b)に示すように、処理容器101には、上述の排気ライン330b,330d,340b,340dとは異なる排気ライン500dが設けられている。排気ライン500dは、処理容器101の側壁に直接接続されている。排気ライン500dには、ガス流の上流側から順に、圧力センサ109a、APCバルブ等の圧力制御器105a、排気バルブ104a、真空ポンプ106aが接続されている。主に、排気ライン500d、圧力センサ109a、圧力制御器105a、排気バルブ104aにより、第2排気部が構成される。真空ポンプ106aを第2排気部に含めて考えてもよい。
【0022】
また、処理容器101には、上述のガス供給ライン330a,330c,340a,340cとは異なるガス供給ライン500cが設けられている。ガス供給ライン500cは、処理容器101の側壁に直接接続されている。ガス供給ライン500cには、ガス流の上流側から順に、MFC108a、バルブ107aが接続されている。主に、ガス供給ライン500c、MFC108a、バルブ107aにより、第2ガス供給部が構成される。
【0023】
なお、処理容器101内の圧力は圧力センサ109aにより測定され、この測定された圧力情報に基づき圧力制御器105がフィードバック制御されることで、処理容器101内の圧力が所定の圧力となるように調整することが可能となっている。
【0024】
(基板載置台)
処理容器101の内部には、ウエハ200が載置されて支持される支持部(支持台)としての基板載置台210が設けられている。基板載置台210は、
図1(c)に示すように、正面視においては門型に形成され、
図1(a)に示すように、平面視においては矩形状に形成されている。基板載置台210の上端部の上面(基板載置面)には、ウエハ200が載置されて支持される。
【0025】
基板載置台210の下端部には、後述する第1駆動部としてのスライド機構220が連結されている。これにより、ウエハ200を支持する基板載置台210は、処理容器101内の一端側と他端側との間で、すなわち、第1エリアと第2エリアとの間で往復移動することが可能となっている。
【0026】
また、基板載置台210の下方には、ウエハ200を加熱するための加熱源としてヒータ230が設けられている。ヒータ230は、基板載置台210のように往復運動することなく、処理容器101の底部に固定され、第1エリアおよび第2エリアの両エリアに跨って設けられている。ヒータ230は、ウエハ200の近傍に設けられた温度センサ230aにより検出された温度情報に基づいて、通電具合がフィードバック制御される。これにより、ヒータ230は、基板載置台210に支持されるウエハ200の温度を所定温度に維持し得るように構成されている。
【0027】
基板載置台210における基板載置面は、ウエハ200と直接触れるため、例えば石英(SiO2)やアルミナ(Al2O3)等の材質で構成することが望ましい。例えば、基板載置台210における基板載置面に、石英やアルミナ等により構成された支持板としてのサセプタを載置し、このサセプタ上にウエハ200を載置して支持することが好ましい。
【0028】
(処理ガスカートリッジヘッドアッセンブリー)
処理容器101の内部には、基板載置台210上のウエハ200に接触可能なガス流を形成するガス流制御部としての処理ガスカートリッジヘッドアッセンブリー(以下、単に「カートリッジヘッド」という。)300が設けられている。カートリッジヘッド300には、ウエハ200に接触可能なガス流を形成するために、上述した第1ガス供給部および第1排気部が接続されている。
【0029】
カートリッジヘッド300は、カートリッジヘッド載置台310により支持されている。カートリッジヘッド載置台310は、
図1(c)に示すように、正面視においては門型に形成され、
図1(a)に示すように、平面視においては矩形状に形成されている。カートリッジヘッド載置台310の上端部によりカートリッジヘッド300が支持される。
【0030】
カートリッジヘッド載置台310の下端部には、後述する第2駆動部としてのスライド機構320が連結されている。これにより、カートリッジヘッド300を支持するカートリッジヘッド載置台310は、第2エリアと第1エリアとの間で往復移動することが可能となっている。
【0031】
カートリッジヘッド載置台310によって往復移動可能に支持されるカートリッジヘッド300は、原料ガス流制御部としての原料ガスカートリッジ330と、反応ガス流制御部としての反応ガスカートリッジ340と、を含む。原料ガスカートリッジ330と反応ガスカートリッジ340は、原料ガスカートリッジ330の両側に反応ガスカートリッジ340が位置するように、それぞれが配置されている。つまり、反応ガスカートリッジ340は、原料ガスカートリッジ330を、カートリッジヘッド300の移動方向の両側から挟み込むように配置されている。これにより、カートリッジヘッド300は、カートリッジヘッド300をウエハ200に対して相対的に移動させる際、そのウエハ200に対して、最後に、反応ガスカートリッジ340から供給される反応ガスをウエハ200に曝露して、成膜処理を終了するように構成されることになる。なお、成膜処理とは、原料ガスおよび反応ガスのうち一方がウエハ200の表面に吸着した状態で、吸着したものに他方を接触させることで、ウエハ200の表面上に薄膜を形成する処理を意味する。
【0032】
ここで、カートリッジヘッド300を構成する原料ガスカートリッジ330および反応ガスカートリッジ340について、さらに詳しく説明する。
図2は、第1実施形態におけるカートリッジヘッド300を示す概念図であり、(a)はカートリッジヘッド300の構成例の概要を模式的に示す側断面図、(b)はカートリッジヘッド300の要部の横断面を示す横断面図である。
【0033】
原料ガスカートリッジ330は、原料ガス供給部331と、その外周に設けられた原料ガス排気部332と、その外周に設けられた不活性ガス供給部333と、その内周および外周に設けられた不活性ガス排気部334と、を有する。原料ガス供給部331には、原料ガスを供給するガス供給ライン330aが接続されている。原料ガス排気部332には、原料ガスを排気する排気ライン330bが接続されている。不活性ガス供給部333には、パージガスを供給するガス供給ライン330cが接続されている。不活性ガス排気部334には、パージガスを排気する排気ライン330dが接続されている。排気ライン330b,330dは、共用、すなわち、共有した構成であってもよい。
【0034】
反応ガスカートリッジ340は、反応ガス供給部341と、その外周に設けられた反応ガス排気部342と、その外周に設けられた不活性ガス供給部343と、その内周および外周に設けられた不活性ガス排気部344と、を有する。反応ガス供給部341には、反応ガスを供給するガス供給ライン340aが接続されている。反応ガス排気部342には、反応ガスを排気する排気ライン340bが接続されている。不活性ガス供給部343には、パージガスを供給するガス供給ライン340cが接続されている。不活性ガス排気部344には、パージガスを排気する排気ライン340dが接続されている。排気ライン340b,340dは、共用、すなわち、共有した構成であってもよい。
【0035】
ガス供給ライン330a,330c,340a,340c、排気ライン330b,330d,340b,340dのそれぞれには、スライド機構320の移動範囲に応じたフレキチューブ350が接続されている。
【0036】
各ガスカートリッジ(原料ガスカートリッジ330、反応ガスカートリッジ340)は、上述の第1排気部と第1ガス供給部とを用いて、各ガスカートリッジ内を所定圧力に調整し得るように構成されており、より効果的に原料ガスが供給される空間と反応ガスが供給される空間とを分離(以下、単に空間分離ともいう。)するよう構成されている。
【0037】
つまり、原料ガスカートリッジ330においては、原料ガス供給部331から原料ガスが供給されるとともに、その原料ガスが原料ガス排気部332から排気されて、その空間が所定圧力に調整されるようになっている。さらには、不活性ガス供給部333から不活性ガスが供給されるとともに、その不活性ガスが不活性ガス排気部334から排気されて、原料ガスが供給される空間とその外方側とが、不活性ガスによるガスシールドにより、空間分離されるようになっている。
【0038】
また、反応ガスカートリッジ340においては、反応ガス供給部341から反応ガスが供給されるとともに、その反応ガスが反応ガス排気部342から排気されて、その空間が所定圧力に調整されるようになっている。さらには、不活性ガス供給部343から不活性ガスが供給されるとともに、その不活性ガスが不活性ガス排気部344から排気されて、反応ガスが供給される空間とその外方側とが、不活性ガスによるガスシールドにより、空間分離されるようになっている。
【0039】
なお、原料ガスカートリッジ330および反応ガスカートリッジ340を含むカートリッジヘッド300は、カートリッジヘッド300をウエハ200に対して相対的に移動させる際、ウエハ200の面内全域に各ガスを均一に曝露させることができるように構成されている。具体的には、ウエハ200の面内全域に各ガスを均一に曝露させるために、カートリッジヘッド300は、移動方向と直交する方向の形成幅がウエハ200の外形幅すなわち直径よりも大きく形成されており、これによりウエハ200の外周端を超えて各ガスの曝露を行えるように構成されている。
【0040】
また、原料ガスカートリッジ330、反応ガスカートリッジ340の設置総数は、図例では1つの原料ガスカートリッジ330の両側に2つの反応ガスカートリッジ340を配置する場合を示しているが、これに限ることなく、ウエハ200に対して供給するガス種の数や処理スループット等を考慮して適宣設定されたものであればよい。例えば、原料ガスと反応ガスを供給する場合であれば、総数で成膜スループットの向上を図るためには、設置総数が多いほうが望ましい。ただし、複数配置する場合においても、必ず反応ガスカートリッジ340を両端部に配置する組み合わせとする。最後に反応ガスカートリッジ340から供給される反応ガスをウエハ200に曝露して成膜処理を終了するように構成するためである。
【0041】
また、カートリッジヘッド300は、原料ガスカートリッジ330および反応ガスカートリッジ340以外の他のカートリッジを含むものであってもよい。他のカートリッジとしては、例えば、プラズマやランプ等の反応系に与えるエネルギーをアシストするものや、酸化や窒化をアシストするものや、ガス置換をアシストするものや、これらを組み合わせたもの等がある。
【0042】
(スライド機構)
図1に示すように、基板載置台210の下端部には、処理容器101内で基板載置台210を往復運動させる第1駆動部としてのスライド機構220が連結されている。スライド機構220は、処理容器101の底部に固定されている。スライド機構220は、基板載置台210、すなわち基板載置面上のウエハ200を、第1エリアと第2エリアとの間で水平方向に往復動作(往復移動)させるように構成されている。スライド機構220は、例えば、ガイドレール、送りねじ(ボールねじ)、電動モータMに代表される駆動源等の組み合わせによって実現することができる。
【0043】
カートリッジヘッド載置台310の下端部には、処理容器101内でカートリッジヘッド載置台310を往復運動させる第2駆動部としてのスライド機構320が連結されている。スライド機構320は、処理容器101の底部に固定されている。スライド機構320は、カートリッジヘッド載置台310、すなわちその上端部に支持されるカートリッジヘッド300(原料ガスカートリッジ330、反応ガスカートリッジ340)を、第2エリアと第1エリアとの間で水平方向に往復動作(往復移動)させるように構成されている。スライド機構320は、例えば、ガイドレール、送りねじ(ボールねじ)、電動モータMに代表される駆動源等の組み合わせによって実現することができる。
【0044】
つまり、処理容器101の内部においては、スライド機構220によって、基板載置台210を往復移動させることにより、基板載置台210に支持されたウエハ200が往復移動することとなる。また、スライド機構320によって、カートリッジヘッド載置台310を往復移動させることにより、カートリッジヘッド載置台310に支持されたカートリッジヘッド300が往復移動することとなる。
【0045】
また、処理容器101の内部を平面視、正面視した場合、
図1(a)および(c)に示すように、カートリッジヘッド載置台310の幅は、基板載置台210の幅よりも大きく構成されている。そして、カートリッジヘッド載置台310は基板載置台210の外側をスライドし、基板載置台210はカートリッジヘッド載置台310の内側をスライドするように構成されている。なお、基板載置台210はヒータ230の外側をスライドするように構成されており、ヒータ230はスライドする基板載置台210の内側に固定されている。
【0046】
このような構成により、基板載置台210とカートリッジヘッド載置台310とは、それぞれが互いに干渉することなく、かつ、それぞれが独立して、水平方向に向かって直線状に動作する往復移動を行うことが可能となっている。
【0047】
そして、基板載置台210とカートリッジヘッド載置台310とは、それぞれが逆方向に向かって往復移動を行うように構成されている。つまり、スライド機構220が基板載置台210を往復移動させるのに対して、スライド機構320は、カートリッジヘッド載置台310に支持されるカートリッジヘッド300を、基板載置台210とは逆方向に、すなわち、基板載置台210の移動方向とは逆向きに、往復移動させるように構成されている。
【0048】
例えば、スライド機構220,320は、第1エリアに基板載置台210(ウエハ200)が位置する際には、第2エリアにカートリッジヘッド300を位置させ、その状態からそれぞれの移動を開始すると、基板載置台210を第1エリアから第2エリアに移動させるとともに、カートリッジヘッド300を第2エリアから第1エリアに移動させるように構成されている。また、例えば、スライド機構220,320は、第1エリアにカートリッジヘッド300が位置する際には、第2エリアに基板載置台210(ウエハ200)を位置させ、その状態からそれぞれの移動を開始すると、カートリッジヘッド300を第1エリアから第2エリアに移動させるとともに、基板載置台210を第2エリアから第1エリアに移動させるように構成されている。
【0049】
スライド機構220,320は、以上のような往復移動を、それぞれにおける電動モータM等の駆動源を動作させることで行う。したがって、基板載置台210の上面に載置されたウエハ200とカートリッジヘッド300との相対位置関係については、スライド機構220,320の各駆動源を制御することによって、調整することが可能となっている。
【0050】
なお、互いに逆方向に往復移動させる基板載置台210およびカートリッジヘッド載置台310については、カートリッジヘッド300とウエハ200とのギャップに起因するそれぞれへのヒータ230からの熱の影響の変化を最小とするために、それぞれを同一材料または熱膨張係数が近似した材料により形成することが望ましい。また、これらを移動させる各スライド機構220、320のガイドレール設置高さについても、処理容器101内で近似させた高さとなるように構成することが望ましい。また、基板載置台210の基板載置面よりも下方、好ましくはヒータ230よりも下方であって、各スライド機構220、320のガイドレールよりも高い位置には、各スライド機構220、320へのガスカートリッジ300からの漏れガス影響を最小とするよう、局所的なガスパージや局所的な排気を行う局所パージ・排気機構160が設置されていることが望ましい。
【0051】
(コントローラ)
図1に示すように、基板処理装置100は、基板処理装置100の各部の動作を制御する制御部としてのコントローラ110を有している。コントローラ110は、少なくとも演算部120および記憶部130といったハードウエア資源を備えたコンピュータ装置として構成されている。コントローラ110は、上述した各構成に接続され、上位コントローラや操作者等の指示に応じて記憶部130から所定ソフトウエアである制御プログラムやプロセスレシピ(以下、これらを単に「プログラム」と総称する。)を読み出し、その内容に応じて各構成の動作を制御するよう構成されている。つまり、コントローラ110は、所定ソフトウエアであるプログラムをハードウエア資源が実行することで、ハードウエア資源と所定ソフトウエアとが協同して、基板処理装置100の各部の動作を制御するように構成されている。なお、本明細書において、プログラムという言葉を用いた場合は、制御プログラム単体のみを含む場合、プロセスレシピ単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。
【0052】
以上のようなコントローラ110は、専用のコンピュータとして構成してもよいし、汎用のコンピュータとして構成してもよい。例えば、上述のプログラムを格納した外部記憶装置140を用意し、その外部記憶装置140を用いて汎用のコンピュータにプログラムをインストールすることにより、本実施形態におけるコントローラ110を構成することができる。なお、外部記憶装置140は、例えば、磁気テープ、フレキシブルディスクやハードディスク等の磁気ディスク、CDやDVD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリやメモリカード等の半導体メモリ等を含む。また、コンピュータにプログラムを供給するための手段は、外部記憶装置140を介して供給する場合に限らない。例えば、インターネットや専用回線等の通信手段を用いてもよいし、上位装置から受信部を介して情報を受信し、外部記憶装置140を介さずにプログラムを供給するようにしてもよい。
【0053】
コントローラ110における記憶部130、および、コントローラ110に接続可能な外部記憶装置140は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成される。以下、これらを総称して、単に記録媒体ともいう。なお、本明細書において記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶装置である記憶部130単体のみを含む場合、外部記憶装置140単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。
【0054】
(2)基板処理工程の概要
次に、半導体装置の製造工程の一工程として、基板処理装置100を使用して、ウエハ200上に薄膜を形成する工程について説明する。なお、以下の説明において、基板処理装置100を構成する各部の動作はコントローラ110により制御される。
【0055】
ここでは、原料ガスとしてテトラクロロチタン(TiCl4)ガスを用い、反応ガスとしてアンモニア(NH3)ガスを用い、カートリッジヘッド300と基板載置台210との相対移動により、それらのガスがウエハ200の表面に対して交互に曝露されるようにすることによって、ウエハ200上に導電性の金属薄膜として金属窒化膜であるチタン窒化膜(TiN膜)を形成する例について説明する。
【0056】
図3は、第1実施形態における基板処理工程の手順を示すフロー図である。
【0057】
(基板搬入工程:S101)
基板処理工程においては、まず、ウエハ200を処理容器101内に搬入する。具体的には、基板処理装置100の処理容器101の側面に設けられた基板搬入出口102に設置したゲートバルブ103を開いて、図示しないウエハ移載機を用いて処理容器101内にウエハ200を搬入する。その後、処理容器101内に搬入されたウエハ200を、リフトピン等を備えるウエハ昇降機構150を用いて基板載置台210の基板載置面上に載置する。そして、ウエハ移載機を処理容器101の外へ退避させ、ゲートバルブ103を閉じて基板搬入出口102を閉塞し、処理容器101内を密閉する。
【0058】
(圧力、温度調整工程:S102)
ウエハ200を処理容器101内に搬入し、基板載置台210の基板載置面上に載置した後、処理容器101内の圧力および温度を調整する。具体的には、処理容器101に直接接続されている排気ライン500dに設けられた排気バルブ104aを開き、その排気ライン500dに接続された真空ポンプ106aを用いて処理容器101内の真空引きを行う。それと並行して、処理容器101に直接接続されたガス供給ライン500cに設けられたバルブ107aを開き、MFC108aで所望の流量、例えば0.1~20slmの範囲内の所定の流量となるように制御されたN2ガスを処理容器101内へ供給する。そして、処理容器101内の圧力を、圧力制御器105aを用いて所望の処理圧力、例えば10~5000Paの範囲内の所定の圧力となるように制御する。このとき、処理容器101内の圧力は圧力センサ109aにより測定され、この測定された圧力情報に基づき圧力制御器105aがフィードバック制御される。また、ウエハ200が所望の処理温度、例えば300~600℃の範囲内の所定の温度となるように、ヒータ230を制御する。このとき、ウエハ200の近傍に設けられた温度センサ230aにより検出された温度情報に基づいてヒータ230への通電具合がフィードバック制御される。真空ポンプ106の稼働、ウエハ200の加熱は、いずれも、少なくともウエハ200に対する処理が終了するまでの間は継続して行われる。
【0059】
(成膜工程:S103)
処理容器101内が所望の処理圧力となり、ウエハ200が所望の処理温度となった後、成膜工程(S103)を行う。成膜工程(S103)は、大別すると、相対位置移動処理動作と、ガス供給排気処理動作とを含む。
【0060】
(相対位置移動処理動作)
相対位置移動処理動作は、ウエハ200とカートリッジヘッド300との相対位置を移動させる処理動作である。詳しくは、スライド機構220が基板載置台210を往復移動させ、スライド機構320がカートリッジヘッド載置台310を往復移動させることで、基板載置台210上面に載置されたウエハ200と、カートリッジヘッド載置台310に支持されたカートリッジヘッド300と、の相対位置を移動させる。このとき、基板載置台210とカートリッジヘッド載置台310とを、それぞれが互いに逆方向に向かうように往復移動させる。
【0061】
このような相対位置移動処理動作により、ウエハ200の少なくとも一部と、ガスを供給した状態のカートリッジヘッド300の少なくとも一部と、が平面視において重なる間は、カートリッジヘッド300から供給されるガスがウエハ200の表面に対して曝露される。これにより、ウエハ200の表面に対して後述するガス供給排気処理動作が行われることになり、その結果として、ウエハ200の表面に対して実質的な成膜処理が実行されることになる。
【0062】
なお、ウエハ200とカートリッジヘッド300との相対位置を移動させる際の具体的な処理動作については、詳細を後述する。
【0063】
(ガス供給排気処理動作)
次に、成膜工程(S103)におけるガス供給排気処理動作について説明する。
【0064】
ガス供給排気処理動作は、以下に述べる第1~第4のガス供給および排気を行う処理動作である。
【0065】
第1に、処理容器101に直接接続された排気ライン500dに設けられた排気バルブ104aを開き、その排気ライン500dに接続された真空ポンプ106aを用いて処理容器101内の真空引きを行いつつ、処理容器101に直接接続されたガス供給ライン500cに設けられたバルブ107aを開き、MFC108aで所望の流量、例えば0.1~20slmの範囲内の所定の流量となるように制御されたN2ガスを処理容器101内へ供給する。このとき、処理容器101内の圧力を、圧力制御器105aを用いて、所望の処理圧力、例えば10~5000Paの範囲内の所定の圧力となるように制御する。
【0066】
第2に、原料ガスカートリッジ330、反応ガスカートリッジ340にそれぞれ接続された排気ライン330d,340dのそれぞれに設けられた排気バルブ104を開き、真空ポンプ106を用いて排気ライン330d,340d内の真空引きをそれぞれ行いつつ、原料ガスカートリッジ330、反応ガスカートリッジ340にそれぞれ接続されたガス供給ライン330c,340cのそれぞれに設けられたバルブ107を開き、それぞれのMFC108で所望の流量、例えば0.1~20slmの範囲内の所定の流量となるように制御されたN2ガスをパージガスとしてそれぞれ供給する。このとき、排気ライン330d,340d内の圧力を、排気ライン330d,340dのそれぞれに設けられた圧力制御器105を用いて、例えば10~100Paの範囲内の所定の圧力となるようにそれぞれ制御する。これにより、上述の空間分離を行うためのガスシールドを形成することができる。
【0067】
第3に、反応ガスカートリッジ340に接続された排気ライン340bに設けられた排気バルブ104を開き、真空ポンプ106を用いて排気ライン340b内の真空引きを行いつつ、反応ガスカートリッジ340に接続されたガス供給ライン340aに設けられたバルブ107を開き、MFC108で所望の流量、例えば0.1~20slmの範囲内の所定の流量となるように制御されたNH3ガスを反応ガスとして供給する。このとき、排気ライン340b内の圧力を、圧力制御器105を用いて、例えば排気ライン330d,340d内の圧力よりも高い圧力となるように制御する。このとき、排気ライン340b内の圧力をより高い圧力とするほど、より高い反応効果が期待できるが、パージガスによるガスシールドが損なわれないよう注意が必要である。
【0068】
第4に、原料ガスカートリッジ330に接続された排気ライン330bに設けられた排気バルブ104を開き、真空ポンプ106を用いて排気ライン330b内の真空引きを行いつつ、原料ガスカートリッジ330に接続されたガス供給ライン330aに設けられたバルブ107を開き、MFC108で所望の流量、例えば0.01~5slmの範囲内の所定の流量となるように制御されたTiCl4ガスを原料ガスとして供給する。このとき、排気ライン330b内の圧力を、圧力制御器105を用いて、例えば排気ライン330d,340d内の圧力以上の圧力となるように制御する。このとき、排気ライン330b内の圧力をより高い圧力とするほど、より高い反応効果が期待できるが、パージガスによるガスシールドが損なわれないよう、また、原料ガスすなわちTiCl4ガスの異常反応や副生成物の影響で成膜性能が損なわれないよう注意が必要である。ただし、原料ガスの種類によっては、排気ライン330b内の圧力をより低い圧力とする方が好ましい場合もあり、その場合は、排気ライン330b内の圧力を、圧力制御器105を用いて、例えば排気ライン330d,340d内の圧力よりも低い圧力となるように制御する。
【0069】
以上のガス供給排気処理動作、すなわち、第1~第4のガス供給および排気を行う処理動作は、少なくともウエハ200に対する成膜処理が終了するまでの間は継続して行われる。すなわち、ガス供給排気処理動作を開始した後、少なくともウエハ200に対する成膜処理が終了するまでの間は、各排気バルブ104a,104および各バルブ107a,107が開いた状態を維持する。これにより、この間、各排気バルブ104a,104および各バルブ107a,107の開閉動作を行わないようにすることができる。結果として、各排気バルブ104a,104および各バルブ107a,107の寿命を大幅に延ばすことが可能となり、これらの交換頻度を大幅に減らすことが可能となる。
【0070】
以上のようなガス供給排気処理動作を、上述した相対位置移動処理動作と合わせて行うことで、ウエハ200上にはTiN膜が形成される。なお、ウエハ200の上面をカートリッジヘッド300が一方向に通過する動作を1サイクルとすると、ウエハ200とカートリッジヘッド300とを互いに逆方向に往復移動させる動作は2サイクルとなり、ウエハ200上に形成されるTiN膜が所定の膜厚になるまでこのサイクルを所定回数繰り返すものとする。
【0071】
例えば、
図2(a)および
図2(b)に示す構成のカートリッジヘッド300の場合、そのカートリッジヘッド300がウエハ200の上面を一方向に通過することでウエハ200が受けるガス供給排気処理動作の順は、以下のとおりとなる。なお、以下の説明において、(V)は、排気領域を意味する。
【0072】
(V)N2(V)→(V)NH3(V)→(V)N2(V)→(V)N2(V)→(V)TiCl4(V)→(V)N2(V)→(V)N2(V)→(V)NH3(V)→(V)N2(V)
【0073】
また、カートリッジヘッド300がウエハ200の上面を一方向に通過する動作(1サイクル)に着目すると、ウエハ200の表面は、以下の順に各種ガスに曝露されることとなる。
【0074】
N2→NH3→N2→N2→TiCl4→N2→N2→NH3→N2
【0075】
また、カートリッジヘッド300とウエハ200とを互いに逆方向に一往復させる動作(2サイクル)に着目すると、ウエハ200の表面は、以下の順に各種ガスに曝露されることとなる。
【0076】
N2→NH3→N2→N2→TiCl4→N2→N2→NH3→N2→N2→NH3→N2→N2→TiCl4→N2→N2→NH3→N2
【0077】
また、原料ガス、反応ガスだけに着目し、往復経路(2サイクル)に注目すると、ウエハ200の表面は、以下の順に各種ガスに曝露されることとなる。
【0078】
NH3→TiCl4→NH3→NH3→TiCl4→NH3
【0079】
つまり、カートリッジヘッド300とウエハ200とを互いに逆方向に往復移動させる場合、カートリッジヘッド300とウエハ200とのそれぞれが処理容器101内の一端側または他端側に到達し折り返す際に、ウエハ200の表面は、反応ガスであるNH3に2回連続で曝露され、2回連続で窒化処理が行われることとなる。
【0080】
(反応メカニズム)
カートリッジヘッド300とウエハ200とを互いに逆方向に往復移動(以下、クロススイングとも称する。)させる際、ウエハ200の表面のうち垂直方向においてカートリッジヘッド300と対向(対面)する部分、すなわち、ウエハ200の表面のうち平面視においてカートリッジヘッド300とオーバーラップする部分(以下、OL部)は、まず、NH3ガスに曝露されることとなるが、このとき、ウエハ200の表面におけるOL部はNH3ガスにより窒化され、その最表面がNH終端される。
【0081】
次に、ウエハ200の表面におけるNH終端されたOL部は、N2ガスに曝露され、OL部上に残留するNH3ガスがパージされることとなる。
【0082】
次に、ウエハ200の表面におけるNH終端されたOL部はTiCl4ガスに曝露されることとなり、NH終端されたOL部上に、Clを含むTi含有層が形成される。Clを含むTi含有層は、OL部へのTiCl4の物理吸着や化学吸着、TiCl4の一部が分解した物質(TiClx)の化学吸着、TiCl4の熱分解によるTiの堆積等により形成される。Clを含むTi含有層は、TiCl4やTiClxの吸着層(物理吸着層や化学吸着層)であってもよく、Clを含むTiの堆積層であってもよい。本明細書では、Clを含むTi含有層を、単に、Ti含有層とも称する。Ti含有層を形成する際、TiCl4ガスに含まれていたClの一部は、Ti含有層が形成される過程において、Clを含むガス状物質を構成し、脱離することとなる。
【0083】
原料ガスとしては、TiCl4ガスの他、テトラキスジメチルアミノチタニウム(Ti[N(CH3)2]4、略称:TDMAT)ガス、テトラキスジエチルアミノチタニウム(Ti[N(C2H5)2]4、略称:TDEAT)ガス等を用いることができる。
【0084】
次に、ウエハ200の表面におけるTi含有層が形成されたOL部は、N2ガスに曝露され、OL部上に残留するTiCl4ガスや反応副生成物等がパージされることとなる。
【0085】
次に、ウエハ200の表面におけるTi含有層が形成されたOL部はNH3ガスに曝露されることとなり、OL部上に形成されたTi含有層の少なくとも一部が窒化される。Ti含有層が窒化されることで、OL部上に、TiおよびNを含む層、すなわち、チタン窒化層(TiN層)が形成される。TiN層を形成する際、Ti含有層に含まれていたCl等の不純物は、NH3ガスによるTi含有層の窒化反応の過程において、Clを含むガス状物質を構成し、脱離することとなる。これにより、TiN層は、窒化前のTi含有層に比べてCl等の不純物が少ない層となる。
【0086】
反応ガスとしては、NH3の他、例えば、ジアゼン(N2H2)ガス、ヒドラジン(N2H4)ガス、N3H8ガス等の窒化水素系ガスを用いることができる。
【0087】
次に、ウエハ200の表面におけるTiN層が形成されたOL部は、N2ガスに曝露され、OL部上に残留するNH3ガスや反応副生成物等がパージされることとなる。
【0088】
これらがクロススイングの往路、すなわち、1サイクルで生じる反応であり、このサイクルを所定回数(n回、nは1以上の整数)行うことで、ウエハ200上に、所定組成、所定膜厚のTiN膜が形成されることとなる。上述のサイクルは、複数回繰り返すのが好ましい。すなわち、1サイクルあたりに形成されるTiN層の厚さを所望の膜厚よりも薄くし、TiN層を積層することで形成されるTiN膜の膜厚が所望の膜厚になるまで、上述のサイクルを複数回繰り返すのが好ましい。
【0089】
成膜工程(S103)における処理条件としては、下記が例示される。
処理温度:300~600℃、好ましくは450~550℃
処理圧力:10~5000Pa、好ましくは50~1000Pa
TiCl4ガス供給流量:0.01~5slm、好ましくは0.1~1slm
NH3ガス供給流量(各ライン):0.1~20slm、好ましくは0.1~1slm
N2ガス供給流量(各ライン):0.1~20slm、好ましくは1~10slm
1サイクル(片側通過)あたりの時間:2~10秒
【0090】
(アフターパージ、不活性ガス置換)
ウエハ200上に所定組成、所定膜厚のTiN膜が形成された後、ガス供給ライン330c,340c,500cのそれぞれからパージガスとしてN2ガスを処理容器101内へ供給し、排気ライン330d,340d,500dより排気する。これにより、処理容器101内がパージされ、処理容器101内に残留するガスや反応副生成物等が処理容器101内から除去される(アフターパージ)。その後、処理容器101内の雰囲気が不活性ガスに置換され(不活性ガス置換)、処理容器101内の圧力が、所定の搬送圧力に変更されるか、または、常圧に復帰される(大気圧復帰)。
【0091】
(基板搬出工程:S104)
その後、基板搬出工程(S104)を行う。基板搬出工程(S104)では、基板搬入工程(S101)と逆の手順で、ウエハ移載機を用いて処理済のウエハ200を処理容器101外へ搬出する。
【0092】
以上に説明した基板搬入工程(S101)から基板搬出工程(S104)までの一連の処理を、処理対象ウエハ200のそれぞれに対して行う。すなわち、上述の一連の処理(S101~S104)を、ウエハ200を換えて所定回数行う。処理対象ウエハ200の全てに対する処理が完了すると、基板処理工程を終了する。
【0093】
(3)相対位置移動の具体的な処理動作
次に、上述した成膜工程(S103)における相対位置移動の具体的な処理動作、すなわちウエハ200とカートリッジヘッド300との相対位置を移動させる際の具体的な処理動作について、さらに詳しく説明する。
【0094】
(相対位置移動の手順)
図4は、第1実施形態における成膜工程で行う相対位置移動処理動作の概要を示すチャート図である。
【0095】
ここで、例えば、
図4に示すように、処理容器101内の一端側である第1エリアにウエハ200を支持する基板載置台210が位置し、処理容器101内の他端側である第2エリアにカートリッジヘッド300を支持するカートリッジヘッド載置台310が位置する状態を考える。以下、この状態におけるウエハ200およびカートリッジヘッド300の位置をホームポジション(A)と称する(S111)。
【0096】
ホームポジション(A)からウエハ200とカートリッジヘッド300との相対位置移動を開始する場合、スライド機構220は、基板載置台210を第2エリアに向けて移動させ、加減速エリア101bを通過するまでに所望速度に達するように、その移動速度を加速させる(S112,S112a)。これと合わせて、スライド機構320は、カートリッジヘッド載置台310を第1エリアに向けて移動させ、加減速エリア101cを通過するまでに所望速度に達するように、その移動速度を加速させる(S112,S112b)。
【0097】
そして、基板載置台210の移動速度が所望速度に達すると、スライド機構220は、基板載置台210をそのまま所望速度で第2エリアに向けて移動させる(S113,S113a)。一方、カートリッジヘッド載置台310の移動速度が所望速度に達すると、スライド機構320は、カートリッジヘッド載置台310をそのまま所望速度で第1エリアに向けて移動させる(S113,S113b)。これにより、基板載置台210に支持されたウエハ200と、カートリッジヘッド載置台310に支持されたカートリッジヘッド300とは、平面視においてウエハ200とカートリッジヘッド300との少なくとも一部が重なった状態で、互いに逆方向に向かって移動することになる。このとき、カートリッジヘッド300から供給されるガスがウエハ200の表面に対して曝露されることで、そのウエハ200の表面に対する成膜処理が実行される。
【0098】
その後、平面視においてウエハ200とカートリッジヘッド300との重なりが解消すると、スライド機構220は、加減速エリア101cを利用しつつ基板載置台210が停止するまで基板載置台210の移動速度を減速させる(S114,S114a)。これと合わせて、スライド機構320は、加減速エリア101bを利用しつつカートリッジヘッド載置台310が停止するまでカートリッジヘッド載置台310の移動速度を減速させる(S114,S114b)。
【0099】
基板載置台210およびカートリッジヘッド載置台310が停止すると、処理容器101内の他端側である第2エリアにウエハ200を支持する基板載置台210が位置し、処理容器101内の一端側である第1エリアにカートリッジヘッド300を支持するカートリッジヘッド載置台310が位置することになる。以下、この状態におけるウエハ200およびカートリッジヘッド300の位置をホームポジション(B)と称する(S115)。
【0100】
ウエハ200およびカートリッジヘッド300がホームポジション(B)に位置した後は、再びウエハ200およびカートリッジヘッド300がホームポジション(A)に位置するように、上述とは逆方向に、スライド機構220が基板載置台210を移動させるとともに、スライド機構320がカートリッジヘッド載置台310を移動させる。
【0101】
このように、ウエハ200とカートリッジヘッド300との相対位置移動に際しては、スライド機構220が基板載置台210を第1エリアと第2エリアとの間で往復移動させるとともに、スライド機構320がカートリッジヘッド載置台310を第2エリアと第1エリアとの間で往復移動させる。つまり、ウエハ200とカートリッジヘッド300は、それぞれが互いに逆向きに往復移動する。これにより、処理容器101内では、ウエハ200およびカートリッジヘッド300がホームポジション(A)に位置する状態と、ウエハ200およびカートリッジヘッド300がホームポジション(B)に位置する状態とが、順次遷移するようになる。
【0102】
以上のような相対位置移動処理動作を行えば、ウエハ200とカートリッジヘッド300のそれぞれが互いに逆向きに往復移動するので、これらのいずれか一方のみが直動運動する場合に比べると、相対位置移動を行う際のウエハ200とカートリッジヘッド300の移動範囲(以下、単に移動範囲とも称する。)を小さくすることができる。
【0103】
以下、相対位置移動処理動作の移動範囲について、具体例を挙げて説明する。
図5は、相対位置移動処理動作の移動範囲を比較する説明図であり、(a)は第1実施形態における移動範囲を示す図、(b)は比較例1における移動範囲を示す図、(c)は比較例2における移動範囲を示す図である。
【0104】
第1実施形態における相対位置移動処理動作によれば、
図5(a)に示すように、処理容器101内における一端と他端との間の距離L1として、少なくとも、ウエハ200の直径と、カートリッジヘッド300の移動方向における幅と、加減速エリア101b,101cの幅と、の合計を確保すれば足りる。つまり、この場合の相対位置移動処理動作の移動範囲L1は、加減速エリア101b,101cの大きさに加えて、少なくとも、ウエハ200およびカートリッジヘッド300の大きさがあればよい。
【0105】
これに対して、相対位置移動にあたり、カートリッジヘッド固定でウエハのみを直動運動させる比較例1の場合は、
図5(b)に示すように、移動範囲L2として、加減速エリアに加えて、ウエハの直径の2倍と、カートリッジヘッドの移動方向における幅と、の合計を必要としてしまう。つまり、直動運動の前後のそれぞれについてウエハの退避スペースを処理容器内に確保する必要があるため、ウエハの直径の2倍をその合計に含ませなければならない。
【0106】
また、相対位置移動にあたり、ウエハ固定でカートリッジヘッドのみを直動運動させる比較例2の場合は、
図5(c)に示すように、移動範囲L3として、加減速エリアに加えて、ウエハの直径と、カートリッジヘッドの移動方向における幅の2倍と、の合計を必要としてしまう。つまり、直動運動の前後のそれぞれについてカートリッジヘッドの退避スペースを処理容器内に確保する必要があるため、カートリッジヘッドの移動方向における幅の2倍をその合計に含ませなければならない。
【0107】
このように、第1実施形態における相対位置移動処理動作によれば、ウエハ200とカートリッジヘッド300のそれぞれが互いに逆向きに往復移動するので、相対位置移動を行う際の移動範囲L1を、比較例1の場合の移動範囲L2、または、比較例2の場合の移動範囲L3に比べて、小さくすることができる。
【0108】
このことは、第1実施形態において、処理容器101内における一端と他端との間の距離L1が、ウエハ200の直径の2倍と、カートリッジヘッド300の移動方向における幅と、の合計未満であるか、または、カートリッジヘッド300の移動方向における幅の2倍と、ウエハ200の直径と、の合計未満であることを意味する。つまり、処理容器101は、ウエハ200およびカートリッジヘッド300の移動方向における一端と他端との間の距離L1が、ウエハ200の直径の2倍と、カートリッジヘッド300の移動方向における幅と、の合計未満となるよう構成されるか、もしくは、カートリッジヘッド300の移動方向における幅の2倍と、ウエハ200の直径と、の合計未満となるよう構成されている。
【0109】
したがって、第1実施形態における基板処理装置100では、ウエハ200とカートリッジヘッド300の相対位置移動を行う際の移動範囲L1を小さくすることができるので、処理容器101の小容積化が可能となり、これに伴って基板処理装置100のフットプリント(占有領域)の低減も可能となる。
【0110】
なお、ここでは、相対位置移動処理動作にあたり、ウエハ200およびカートリッジヘッド300を、ホームポジション(A)とホームポジション(B)との間で遷移させる場合を例に挙げたが、必ずしもこれに限定されるものではない。例えば、ウエハ200およびカートリッジヘッド300の移動方向の折り返し(反転)は、ウエハ200およびカートリッジヘッド300がホームポジション(A)またはホームポジション(B)に到達する前に、すなわち、平面視においてウエハ200とカートリッジヘッド300との少なくとも一部が重なった状態で行うようにしてもよい。つまり、平面視において、ウエハ200とカートリッジヘッド300とが完全な分離位置とならない状態で、ウエハ200およびカートリッジヘッド300の移動方向を反転させるようにしてもよい。その場合に、スライド機構220,320は、基板載置台210に支持されたウエハ200とカートリッジヘッド載置台310に支持されたカートリッジヘッド300との少なくとも一部が平面視において重なった状態を維持しつつ、ウエハ200を支持した基板載置台210およびカートリッジヘッド300を支持したカートリッジヘッド載置台310を往復移動させるよう構成されることになる。
【0111】
このように、ウエハ200とカートリッジヘッド300との平面視における重なりを維持しつつ、それらを往復移動させる場合であっても、例えば原料ガスカートリッジ330の両側に反応ガスカートリッジ340が配置されてカートリッジヘッド300が構成されていれば、それらの重なりを維持した状態での、それぞれの移動方向の折り返し(反転)が、成膜処理に悪影響を及ぼさないようにすることができる。その一方で、ウエハ200とカートリッジヘッド300との平面視における重なりを維持しつつ、それらを往復移動させるようにすれば、ウエハ200およびカートリッジヘッド300を、ホームポジション(A)またはホームポジション(B)に到達させる場合に比べて、相対位置移動を行う際の移動範囲(ストローク)を小さくする(短縮させる)ことができ、その分だけ、処理容器101の更なる小容積化および基板処理装置100の更なるフットプリントの低減が可能となる。また、その分だけ、成膜処理の迅速化が図れるようになる。
【0112】
(速度制御態様)
次に、ウエハ200とカートリッジヘッド300との相対位置を移動させる際のウエハ200およびカートリッジヘッド300の速度制御(以下、単に速度制御とも称する。)の態様について具体的に説明する。なお、以下に説明する速度制御の態様は、コントローラ110により制御される。
【0113】
上述のように、相対位置移動処理動作においては、平面視においてウエハ200とカートリッジヘッド300とが重なり合わない期間(
図4のS111,S112,S114,S115)と、平面視においてウエハ200とカートリッジヘッド300との少なくとも一部が重なり合う期間(
図4のS113)とがある。以下、ウエハ200とカートリッジヘッド300とが重ならない期間を「第1期間」といい、ウエハ200とカートリッジヘッド300との少なくとも一部が重なる期間を「第2期間」という。第2期間は、実質的な成膜処理の期間に相当する。
【0114】
第1期間と第2期間とでは、異なる態様の速度制御を行うようにする。つまり、スライド機構220,320は、ウエハ200を支持した基板載置台210およびカートリッジヘッド300を支持したカートリッジヘッド載置台310に対し、第1期間と第2期間とで異なる態様の速度制御を行う。具体的には、例えば、第1期間では、ウエハ200およびカートリッジヘッド300の移動速度を加速または減速させるように速度制御を行い、第2期間では、ウエハ200とカートリッジヘッド300との相対移動速度が等速となるように速度制御を行う。
【0115】
このように、第1期間と第2期間とで異なる態様の速度制御を行えば、第2期間では成膜処理に適した速度でウエハ200およびカートリッジヘッド300を移動させつつ、第1期間ではウエハ200およびカートリッジヘッド300を効率的に加速または減速させる、といったことが実現可能となる。したがって、ウエハ200とカートリッジヘッド300とをそれぞれ逆方向に往復移動させる場合であっても、その往復移動を円滑かつ効率的に行うことができる。しかも、第1期間での速度変動が第2期間での移動速度に影響を及ぼしてしまうこともないので、成膜処理の適正化を図る上でも好ましいものとなる。
【0116】
第1期間と第2期間とで異なる態様の速度制御を行うためには、第1期間と第2期間との間で、速度制御の態様を変化させる必要がある。速度制御の態様の変化は、ウエハ200の移動とカートリッジヘッド300の移動とのそれぞれにつき、変化のタイミングを同期させることが望ましい。つまり、スライド機構220,320は、ウエハ200を支持した基板載置台210に対する速度制御の態様を変化させるタイミングと、カートリッジヘッド300を支持したカートリッジヘッド載置台310に対する速度制御の態様を変化させるタイミングとを、同期させるようにすることが望ましい。
【0117】
ここでいう同期とは、変化のタイミングを合わせることをいう。具体的には、例えば、加速、等速、減速といったように速度制御の態様を変化させる場合に、ウエハ200とカートリッジヘッド300とのそれぞれにつき、変化のタイミングを一致させることをいう。ただし、完全には一致していないが、一致していると見做せる場合についても、ここでいう同期に含まれる。さらには、それぞれのタイミングがずれていても、所定の規定に基づく密接な関連性が各タイミングにあれば、ここでいう同期に含まれる。密接な関連性としては、例えば、一方の加速が完了するまでに他方の加速を完了させる、遅い方の加速が完了するまでに早い方の加速を完了させる、ウエハ200の加速が完了するまでにカートリッジヘッド300の加速を完了させる、といった関連性が挙げられる。
【0118】
このように、それぞれの速度制御態様の変化のタイミングを同期させるようにすれば、相対位置移動処理動作において、ウエハ200の往復動作とカートリッジヘッド300の往復動作とが互いにシンクロすることになる。したがって、ウエハ200とカートリッジヘッド300とをそれぞれ逆方向に往復移動させる場合であっても、その往復移動を円滑かつ効率的に行うことができる。しかも、往復動作のシンクロによって無駄な移動範囲が生じてしまうのを抑制でき、処理容器101の小容積化を図る上でも好ましいものとなる。
【0119】
以下、第1期間と第2期間での速度制御の態様について具体例を挙げて説明する。
【0120】
第1期間では、ウエハ200およびカートリッジヘッド300を、それぞれ非等速で移動させる。つまり、第1期間において、スライド機構220は、ウエハ200を支持した基板載置台210を非等速移動させる。また、第1期間において、スライド機構320は、カートリッジヘッド300を支持したカートリッジヘッド載置台310を非等速移動させる。
【0121】
ここでいう非等速とは、移動速度が一定ではないことを意味し、具体的には例えば加速または減速が該当する。加速または減速の場合、その速度変化の度合い(加速度)は、一定であってもよいし、一定でなくても構わない。ただし、第1期間の全てにおいて常に速度が変化している必要はなく、例えば一時的に等速である期間を含んでいても、期間全体で速度が変化していれば、ここでいう非等速に該当し得る。また、ここでいう非等速は、主として、ウエハ200およびカートリッジヘッド300の間の相対速度のことをいう場合もある。この場合、ウエハ200またはカートリッジヘッド300のいずれか一方が加速または減速していれば、他方が等速であっても、ここでいう非等速に該当し得る。
【0122】
このように、第1期間で非等速移動を行うことにより、第2期間での移動動作に影響を及ぼすことなく、ウエハ200およびカートリッジヘッド300を加速または減速させることができる。したがって、第2期間におけるウエハ200およびカートリッジヘッド300の所望速度での移動を確実なものとする上で好ましいものとなる。
【0123】
また、第1期間には、ウエハ200とカートリッジヘッド300とがお互いに近づく期間と、ウエハ200とカートリッジヘッド300とがお互いに離れる期間とがある。このような第1期間のうち、それぞれがお互いに近づく期間においては、スライド機構220,320が、ウエハ200およびカートリッジヘッド300を加速移動させる。また、第1期間のうち、それぞれがお互いに離れる期間においては、スライド機構220,320が、ウエハ200およびカートリッジヘッド300を減速移動させる。
【0124】
このように、第1期間のうち、それぞれが近づく期間にそれぞれを加速移動させ、それぞれが離れる期間にそれぞれを減速移動させれば、ウエハ200とカートリッジヘッド300とをそれぞれ逆方向に往復移動させる場合であっても、その往復移動を円滑かつ効率的に行うことができる。しかも、ウエハ200およびカートリッジヘッド300のそれぞれが同時期に逆方向に加速または減速されることになるので、それぞれの速度変化の度合い(加速度)を必要以上に高めることなく、相対的な加速度を十分に高めることができ、第1期間における非等速移動の効率化が図れる。さらには、非等速移動の効率化に伴って、処理容器101の小容積化も図れるようになる。
【0125】
一方、第2期間では、例えば、ウエハ200とカートリッジヘッド300との相対速度を一定に維持するように、ウエハ200およびカートリッジヘッド300を移動させる。つまり、第2期間において、スライド機構220,320は、ウエハ200を支持した基板載置台210とカートリッジヘッド300を支持したカートリッジヘッド載置台310とのそれぞれが移動する際の相対速度を一定に維持するようにする。
【0126】
ここでいう一定とは、ウエハ200とカートリッジヘッド300との相対速度を同一の速度に保つことを意味する。ただし、全く同一の速度である必要はなく、例えば、予め設定された許容範囲内で速度が変動する場合であっても、許容範囲を超えない限りにおいては、ここでいう一定に該当し得る。
【0127】
このように、第2期間でのウエハ200とカートリッジヘッド300との相対速度を一定に維持すれば、カートリッジヘッド300の直下をウエハ200が通過する際のウエハ200の面内における各ガスの曝露量の変動を抑制することができる。したがって、ウエハ200とカートリッジヘッド300とのそれぞれを移動させる場合であっても、ウエハ200の面内における各ガスの曝露量を均一化させることができ、これにより、成膜処理の面内ばらつきを抑制することが可能となり、第2期間にて行う成膜処理の適正化を図る上で好ましいものとなる。
【0128】
ウエハ200とカートリッジヘッド300との相対速度を一定に維持するためには、例えば、ウエハ200およびカートリッジヘッド300をそれぞれ等速で移動させればよい。つまり、第2期間において、スライド機構220により、ウエハ200を支持した基板載置台210を等速移動させるようにすればよい。また、第2期間において、スライド機構320により、カートリッジヘッド300を支持したカートリッジヘッド載置台310を等速移動させるようにすればよい。
【0129】
ここでいう等速とは、移動速度が一定であること、すなわち移動速度を同一の速度値に保つことを意味する。ただし、全く同一の速度値である必要はなく、例えば、予め設定された許容範囲内で速度が変動する場合であっても、許容範囲を超えない限りにおいては、ここでいう等速に該当し得る。また、ここでいう等速は、主として、ウエハ200またはカートリッジヘッド300の移動速度のことをいう。
【0130】
このように、ウエハ200およびカートリッジヘッド300をそれぞれ等速移動させれば、それぞれの間の相対速度を非常に容易かつ確実に一定に維持することができる。しかも、それぞれを等速移動させればよいので、複雑な速度制御が不要となる。また、ウエハ200およびカートリッジヘッド300をそれぞれ等速移動させれば、カートリッジヘッド300から供給される各ガスのウエハ200の表面への曝露量がウエハ200の面内にわたり均一となるので、ウエハ200の面内において同じ条件で成膜することができる。
【0131】
ウエハ200およびカートリッジヘッド300を等速移動させる場合には、ウエハ200を移動させる際の速度値と、カートリッジヘッド300を移動させる際の速度値とを、それぞれ等しくすればよい。その場合、スライド機構220,320は、第2期間において、ウエハ200を支持した基板載置台210の移動速度と、カートリッジヘッド300を支持したカートリッジヘッド載置台310の移動速度とを、互いに等しくすることになる。具体的には、それぞれの速度値を、例えば10~1000mm/secの範囲内における同一の速度値、または同一と見做せる速度値とする。このようにすれば、例えば、ウエハ200の直径とカートリッジヘッド300の移動方向における幅が同等のサイズである場合に、ウエハ200とカートリッジヘッド300との相対速度を高める上で最も有用であり、第2期間にて行う成膜処理の迅速化を図る上で好ましいものとなる。
【0132】
ただし、ウエハ200とカートリッジヘッド300との相対速度を一定に維持する場合に、ウエハ200およびカートリッジヘッド300の移動速度を、必ずしも互いに等しくする必要はなく、それぞれを異ならせるようにしてもよい。その場合、スライド機構220,320は、第2期間において、ウエハ200を支持した基板載置台210の移動速度と、カートリッジヘッド300を支持したカートリッジヘッド載置台310の移動速度とを、互いに異ならせるようにすることになる。具体的には、いずれか一方を高い速度値として等速移動させ、他方を低い速度値として等速移動させる。このようにすれば、例えば、ウエハ200の直径とカートリッジヘッド300の移動方向における幅が異なるサイズであっても、それぞれのサイズに応じて移動速度を異ならせつつ、ウエハ200とカートリッジヘッド300との相対速度を一定に維持することが可能となる。つまり、移動部分のサイズやイナーシャ等の違いに柔軟に対応することが可能となり、相対位置移動処理動作の汎用性を高める上で好ましいものとなる。
【0133】
なお、第2期間では、必ずしもウエハ200とカートリッジヘッド300との相対速度を一定に維持する場合のみに限定されることはなく、例えば、ウエハ200とカートリッジヘッド300との相対速度を第2期間の途中で変化させるようにしてもよい。その場合、スライド機構220,320は、第2期間において、ウエハ200を支持した基板載置台210とカートリッジヘッド300を支持したカートリッジヘッド載置台310とのそれぞれが移動する際の相対速度を、その期間の途中で変化させるようにする。
【0134】
第2期間中でのウエハ200とカートリッジヘッド300との相対速度の変化は、例えば、ウエハ200を加速移動または減速移動させ、カートリッジヘッド300を等速移動させることで行うようにしてもよい。また、例えば、ウエハ200を等速移動させ、カートリッジヘッド300を加速移動または減速移動させることで行うようにしてもよい。また、例えば、ウエハ200を加速移動または減速移動させ、カートリッジヘッド300を加速移動または減速移動させることで行うようにしてもよい。
【0135】
このように、第2期間中に、ウエハ200とカートリッジヘッド300との相対速度を変化させるようにすれば、例えば、成膜処理によって得られる膜の品質がウエハ200の面内で均一になるように、ウエハ200とカートリッジヘッド300との相対位置に応じて相対速度を異ならせる、といったことが実現可能となる。したがって、様々な移動態様での成膜処理にも柔軟に対応することが可能となり、第2期間にて行う成膜処理の適正化を図る上で好ましいものとなる。
【0136】
第2期間中での相対速度変化の例として、以下のようなものが挙げられる。すなわち、第2期間のうち、平面視においてウエハ200の周辺部とカートリッジヘッド300とが重なる期間と、平面視においてウエハ200の中央部とカートリッジヘッド300とが重なる期間とで、ウエハ200とカートリッジヘッド300との相対速度を変化させる(異ならせる)ようにする。このようにすれば、例えば、ウエハ200の周辺部についてはこの相対速度を低速にして各ガスの曝露量を増大させて形成膜厚を厚くする一方で、ウエハ200の中央部についてはこの相対速度を高速にして各ガスの曝露量を減少させて形成膜厚を薄くする、といったことが実現可能となる。また、これとは逆に、例えば、ウエハ200の周辺部についてはこの相対速度を高速にして各ガスの曝露量を減少させて形成膜厚を薄くする一方で、ウエハ200の中央部についてはこの相対速度を低速にして各ガスの曝露量を増大させて形成膜厚を厚くする、といったことも実現可能となる。すなわち、ウエハ200上に形成される膜のウエハ200の面内における膜厚分布を自在に制御することが可能となる。また、ウエハ200上に形成される膜のウエハ200の面内における膜質分布を自在に制御することも可能となる。このように、第2期間中において、ウエハ200とカートリッジヘッド300との相対速度を変化させることで、ウエハ200の面内における周辺部と中央部への各ガスの曝露量のバランスを自在に調整することが可能となり、ウエハ200の面内における周辺部と中央部とでの膜厚差や膜質差を緩和して、ウエハ200の面内での膜品質の均一化(膜厚分布、膜質分布の均一化)を図ることが可能となる。
【0137】
(4)本実施形態による効果
本実施形態によれば、以下に示す一つまたは複数の効果が得られる。
【0138】
(a)本実施形態によれば、ウエハ200とカートリッジヘッド300とのそれぞれを互いに逆向きに往復移動させるので、これらのいずれか一方のみを直動運動させる場合に比べ、相対位置移動を行う際の移動範囲L1を小さくすることができる。したがって、処理容器101の小容積化が可能となり、これに伴って基板処理装置100のフットプリントの低減が可能となる。具体的には、例えば、本実施形態のように相対位置移動を行う際の移動範囲L1と、いずれか一方のみが直動運動する場合の移動範囲L2,L3とを算出してこれらを比較すると(
図5参照)、移動範囲L1を移動範囲L2,L3よりも30~40%程度低減することが可能となる。これにより、基板処理装置100の単位面積当たりの生産性向上が図れるようにもなる。
【0139】
(b)本実施形態によれば、ウエハ200とカートリッジヘッド300との相対位置移動処理動作において、第1期間と第2期間とで異なる態様の速度制御を行うので、ウエハ200とカートリッジヘッド300とをそれぞれ逆方向に往復移動させる場合であっても、その往復移動を円滑かつ効率的に行うことができる。しかも、第1期間での速度変動が第2期間での移動速度に影響を及ぼしてしまうこともないので、成膜処理の適正化を図る上でも好ましいものとなる。
【0140】
(c)本実施形態によれば、ウエハ200とカートリッジヘッド300との相対位置移動処理動作において、第1期間と第2期間とでの速度制御態様の変化にあたり、ウエハ200の速度制御態様の変化のタイミングとカートリッジヘッド300の速度制御態様の変化のタイミングとを同期させるので、それぞれの往復動作がシンクロして行われることになる。したがって、ウエハ200とカートリッジヘッド300とをそれぞれ逆方向に往復移動させる場合であっても、その往復移動を円滑かつ効率的に行うことができる。しかも、往復動作のシンクロによって無駄な移動範囲が生じてしまうのを抑制でき、処理容器101の小容積化を図る上でも好ましいものとなる。
【0141】
(d)本実施形態によれば、ウエハ200とカートリッジヘッド300との相対位置移動処理動作の第2期間において、ウエハ200とカートリッジヘッド300との相対速度を一定に維持することで、カートリッジヘッド300の直下をウエハ200が通過する際のウエハ200の面内における各ガスの曝露量の変動を抑制することができる。したがって、ウエハ200とカートリッジヘッド300とのそれぞれを移動させる場合であっても、ウエハ200の面内における各ガスの曝露量を均一化させることができ、これにより、成膜処理の面内ばらつきを抑制することが可能となり、第2期間にて行う成膜処理の適正化を図る上で好ましいものとなる。
【0142】
(e)本実施形態によれば、ウエハ200とカートリッジヘッド300との相対位置移動処理動作の第2期間において、ウエハ200とカートリッジヘッド300との相対速度を、その期間の途中で変化させるようにすることで、成膜処理によって得られる膜の品質がウエハ200の面内で均一になるように、ウエハ200とカートリッジヘッド300との相対位置に応じて相対速度を異ならせる、といったことが実現可能となる。したがって、様々な移動態様での成膜処理にも柔軟に対応することが可能となり、第2期間にて行う成膜処理の適正化を図る上で好ましいものとなる。
【0143】
(f)本実施形態によれば、カートリッジヘッド300が原料ガスカートリッジ330および反応ガスカートリッジ340を有し、反応ガスカートリッジ340が原料ガスカートリッジ330を両側から挟み込むように配置されているので、サイクリックプロセス処理において原料ガスと反応ガスのガス分離により適切な成膜処理を行うことが可能となり、特にウエハ200とカートリッジヘッド300のそれぞれを互いに逆向きに往復移動させる場合に用いて非常に好ましいものとなる。それぞれを互いに逆向きに往復移動させる場合であっても、最後に反応ガスカートリッジ340から供給されるガスをウエハ200に曝露して成膜処理を終了することになるので、その成膜処理の適正化を図る上で好ましいものとなる。
【0144】
(g)本実施形態によれば、カートリッジヘッド300とウエハ200とが処理容器101内の一端側または他端側に到達し折り返す際に、ウエハ200の表面に対し、反応ガスであるNH3ガスを2回連続で曝露させ、2回連続で窒化処理を行うことが可能となる。ウエハ200の表面にNH3ガスを曝露させることでHClが発生することがあり、このようにして発生したHClにより吸着サイトが埋まり、上述の反応が進みにくくなることがある。しかしながら、その場合であっても、本実施形態によれば、ウエハ200の表面に対し、2回連続で窒化処理を行うことができることから、2回目のウエハ200の表面への窒化処理時に、吸着サイトを埋めていたHClを除去することが可能となる。これにより、サイクル毎に吸着サイトを適正化することができ、上述の反応を適正に進行させることが可能となる。また、TiN膜を形成する過程において、ウエハ200の表面上に形成されるTiN層中にClが残留することもあるが、この場合であっても、2回連続で行われる窒化処理により、TiN層中の残留Clを充分に除去することが可能となる。これにより、Cl濃度が極めて低いTiN膜を形成することが可能となる。
【0145】
(h)本実施形態によれば、カートリッジヘッド300に接続する第1ガス供給部および第1排気部とは別個に、処理容器101内に対するガス供給および排気を行う第2ガス供給部および第2排気部を更に有するので、カートリッジヘッド300において行われる圧力制御とは別個独立に、処理容器101内の圧力制御を自在に行うことができ、処理容器101内で行う成膜処理の適正化を図る上でも非常に好ましいものとなる。
【0146】
<第2実施形態>
次に、本開示の第2実施形態について具体的に説明する。ここでは、主として、上述した第1実施形態との相違点について説明し、その他の点については説明を省略する。
【0147】
図6は、第2実施形態で用いられる基板処理装置におけるウエハ配置例を示す概念図であり、(a)はウエハ1枚処理の構成例を示す平面図、(b)はウエハ2枚同時処理の構成例を示す平面図、(c)はウエハ4枚同時処理の構成例を示す平面図である。
【0148】
上述の第1実施形態では、
図6(a)に示すように、処理容器101内の基板載置台210が1枚のウエハ200を支持する場合を例に挙げたが、第2実施形態では、
図6(b)または(c)に示すように、基板載置台210が複数枚のウエハ200を支持するように構成されている。
【0149】
具体的には、第2実施形態の一例としての基板処理装置100では、
図6(b)に示すように、基板載置台210上に2枚のウエハ200が載置され、これらが同時に処理されるようになっている。このとき、
図6(b)に示すように、2枚のウエハ200が、基板載置台210の往復移動方向との直交方向に沿って並ぶように配置されていると、相対位置移動の移動範囲L1をウエハ200が1枚の場合と同等に抑えることができる。
【0150】
また、第2実施形態の他の例としての基板処理装置100では、
図6(c)に示すように、基板載置台210上に4枚のウエハ200が載置され、これらが同時に処理されるようになっている。このとき、
図6(c)に示すように、4枚のウエハ200が、平面視において2行2列で並ぶように配置されていると、相対位置移動の移動範囲L1の増大を抑制しつつ、カートリッジヘッド300の往復移動方向と直交する方向の形成幅の増大をも抑制することができる。
【0151】
このように、第2実施形態によれば、基板載置台210にウエハ200を2枚以上、例えば2枚または4枚載置し、これらを同時に処理するようになっているので、ウエハ200に対する処理の生産性を向上させることが可能となる。したがって、基板処理装置100における処理スループットを向上させる上で好ましいものとなる。
【0152】
なお、ここでは、複数枚のウエハ200が2枚または4枚である場合を例に挙げたが、同時に処理するウエハ200の枚数は、2枚以上であればよく、特に限定されるものではない。また、その枚数は、偶数である場合だけでなく、奇数であってもよい。
【0153】
<第3実施形態>
次に、本開示の第3実施形態について具体的に説明する。ここでも、主として、上述した第1実施形態との相違点について説明し、その他の点については説明を省略する。
【0154】
第3実施形態では、カートリッジヘッド300の構成が、第1実施形態とは異なる。
図7は、第3実施形態で用いられる基板処理装置におけるガスカートリッジヘッドアッセンブリーを示す概念図であり、(a)は構成例の概要を模式的に示す側断面図、(b)は要部の横断面を示す横断面図である。
【0155】
図7に示すように、ここで例に挙げるカートリッジヘッド300は、原料ガスカートリッジ330と反応ガスカートリッジ340とで、不活性ガス供給部333,343を共通化するとともに、その外周に設けられた不活性ガス排気部334,344を共通化して構成されている。
【0156】
例えば、
図7に示す構成のカートリッジヘッド300の場合、そのカートリッジヘッド300が一方向に通過することでウエハ200が受けるガス供給排気処理動作の順は、以下のとおりとなる。
【0157】
(V)N2(V)→(V)NH3(V)→(V)N2(V)→(V)TiCl4(V)→(V)N2(V)→(V)NH3(V)→(V)N2(V)
【0158】
また、原料ガス、反応ガスだけに着目し、往復経路に注目すると、ウエハ200の表面は、以下の順に各種ガスに曝露されることとなる。
【0159】
NH3→TiCl4→NH3→NH3→TiCl4→NH3
【0160】
このように、第3実施形態によれば、不活性ガス供給部333,343および不活性ガス排気部334,344の共通化により、カートリッジヘッド300の小型化、構成部品数低減による装置製作コスト低減が実現可能となる。しかも、カートリッジヘッド300の小型化等を実現可能にしつつ、第1実施形態と同様にウエハ200に対する成膜処理を行うことが可能である。したがって、第1実施形態で得られる効果に加え、カートリッジヘッド300の小型化等の効果も得られることになり、より一層の処理容器101の小容積化が実現可能となる。
【0161】
<他の実施形態>
以上、本開示の第1実施形態~第3実施形態を具体的に説明したが、本開示が上述の各実施形態に限定されることはなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更することが可能である。
【0162】
例えば、上述の各実施形態では、ウエハ200上にTiN膜を形成する例について説明したが、TiN膜の他、例えば、WN膜等の導電性金属元素含有膜(金属窒化膜)や、TiO膜、AlO膜、HfO膜、ZrO膜等の絶縁性金属元素含有膜(金属酸化膜、高誘電率絶縁膜)や、SiN膜、SiO膜等の絶縁性半金属元素含有膜(シリコン絶縁膜)等を形成する場合にも、本開示を適用することができる。
また、これら2元系膜を形成する場合の他、3元系膜、4元系膜を形成する場合にも、本開示を適用することができる。
【0163】
また、上述した各実施形態では、ウエハに対して行う処理として成膜処理を例に挙げたが、本開示はこれに限定されることはなく、酸化、窒化、拡散、アニール、エッチング、プリクリーニング、チャンバクリーニング等の他の処理であっても、本開示を適用することができる。
【符号の説明】
【0164】
100…基板処理装置、101…処理容器、200…ウエハ、210…基板載置台、220…スライド機構、300…カートリッジヘッド、310…カートリッジヘッド載置台、320…スライド機構、330…原料ガスカートリッジ、340…反応ガスカートリッジ