(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-28
(45)【発行日】2022-10-06
(54)【発明の名称】圧力減衰速度に基づく質量流量点検の方法、システム、及び装置
(51)【国際特許分類】
G05D 7/06 20060101AFI20220929BHJP
【FI】
G05D7/06 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022111502
(22)【出願日】2022-07-12
(62)【分割の表示】P 2020551281の分割
【原出願日】2019-02-20
【審査請求日】2022-08-12
(32)【優先日】2018-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】イェー, ジーユエン
(72)【発明者】
【氏名】ハウ, ジャスティン
(72)【発明者】
【氏名】ジョゼフソン, マーセル イー.
【審査官】牧 初
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-515660(JP,A)
【文献】特開2008-170410(JP,A)
【文献】国際公開第2018/008420(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 7/00- 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量流量制御点検システムであって、
テストされるマスフローコントローラ(MFC)を連結させるための位置を備え、且つガス供給源からガス流を受け入れるためのラインと、
前記ガス流を受け入れるための前記ラインに直列に連結された制御領域と、
前記制御領域に直列に連結された流れ制限器と、
前記MFCのための位置と前記制御領域の間に連結されたバルブと、
コントローラと
を備え、前記コントローラが、
前記ガス供給源に前記ラインを介してガスを流れさせ、
前記制御領域内の安定した圧力を検出し、
前記安定した圧力の検出に応じて前記バルブを閉じることによって、前記ガス供給源からの前記ガス流を停止し、
前記制御領域の経時的な圧力減衰速度を測定し、
測定された経時的な前記圧力減衰速度における減衰圧力変曲点を検出し、
前記減衰圧力変曲点の後の前記圧力減衰の曲線に適合する方程式を決定し、且つ
後方補外によって前記方程式を用いて、前記バルブが閉じられた時の前記圧力減衰速度の補正値を計算する
ように適合されている、質量流量制御点検システム。
【請求項2】
前記減衰圧力変曲点が、前記MFCの質量流量が安定した後の前記曲線の点を示す、請求項1に記載の質量流量制御点検システム。
【請求項3】
前記コントローラが、
前記バルブが閉じられた時の前記圧力減衰速度の前記補正値を用いて、前記MFCを通る実際の質量流量を決定し、且つ
前記MFCの設定値を前記MFCの前記実際の質量流量と比較することによって、前記MFCの測定の誤差を決定する
ように構成されている、請求項1に記載の質量流量制御点検システム。
【請求項4】
前記流れ制限器が、穿孔オリフィス流れ制限器及び多孔質媒体流れ制限器のうちの少なくとも1つである、請求項1に記載の質量流量制御点検システム。
【請求項5】
前記制御領域と前記流れ制限器との間に連結され、前記制御領域の圧力を高めるように前記コントローラによって操作可能な第2のバルブを更に備える、請求項1に記載の質量流量制御点検システム。
【請求項6】
前記制御領域に連結可能であり、前記制御領域に加圧ガスを供給することによって前記制御領域の圧力を高めるように前記コントローラによって操作可能な第2の領域を更に備える、請求項1に記載の質量流量制御点検システム。
【請求項7】
前記第2の領域を前記ガス供給源に連結させるための第1のバルブと、前記第2の領域を前記制御領域に連結させるための第2のバルブとを更に備える、請求項6に記載の質量流量制御点検システム。
【請求項8】
前記流れ制限器に直列に連結されたポンプを更に備える、請求項6に記載の質量流量制御点検システム。
【請求項9】
前記MFCが、前記圧力減衰速度の前記補正値に基づいて較正される、請求項1に記載の質量流量制御点検システム。
【請求項10】
方法であって、
コントローラによって、ガス供給源にラインを介してガスを流れさせ、ここで前記ラインはテストされるマスフローコントローラ(MFC)を連結させるための位置を備え、
前記コントローラによって、前記ラインに連結された制御領域内の安定した圧力を検出し、
前記コントローラによって、前記検出に応じてバルブを閉じることによって、前記ガス供給源からのガス流を停止し、ここで前記バルブは前記MFCのための前記位置と前記制御領域の間に連結されており、
前記コントローラによって、測定された圧力減衰速度を決定するために前記制御領域の経時的な圧力減衰速度を測定し、
前記コントローラによって、測定された経時的な前記圧力減衰速度における減衰圧力変曲点を検出し、
前記コントローラによって、前記減衰圧力変曲点の後の前記圧力減衰の曲線に適合する方程式を決定し、且つ
前記コントローラによって、後方補外によって前記方程式を用いて、前記バルブが閉じられた時の前記圧力減衰速度の補正値を計算する
ことを含む、方法。
【請求項11】
前記減衰圧力変曲点が、前記MFCの質量流量が安定した後の前記曲線の点を示す、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記圧力減衰速度の前記補正値に基づいて前記MFCを較正することを更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記バルブが閉じられた時の前記圧力減衰速度の前記補正値を用いて、前記MFCを通る実際の質量流量を決定し、且つ
前記MFCの設定値を前記MFCの前記実際の質量流量と比較することによって、前記MFCの測定の誤差を決定する
ことを更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記制御領域に直列に連結された流れ制限器を用いてガス流を制限することを更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記制御領域と前記流れ制限器との間に連結された第2のバルブを制御することによって、前記制御領域の圧力を高めることを更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記制御領域に連結可能である第2の領域から加圧ガスを流すことによって、前記コントローラによって前記制御領域の圧力を高めることを更に含む、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
[001]本出願は、2018年3月26日に出願された「METHODS,SYSTEMS,AND APPARATUS FOR MASS FLOW VERIFICATION BASED ON RATE OF PRESSURE DECAY」(代理人整理番号第44014915US01号)と題する米国特許出願第15/936428号から優先権を主張し、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0002】
[002]本開示は、電子デバイスの製造に関し、より具体的には、圧力減衰速度に基づいてマスフローコントローラの質量流量速度を点検することに関する。
【背景技術】
【0003】
[003]電子デバイス製造システムは、1又は複数のマスフローコントローラ(MFC)を含み得る。MFCは、電子デバイスの製造に使用されるプロセス化学物質の質量流量を制御する。プロセス化学物質は、電子デバイスが半導体ウエハ、ガラス板上等に製造され得る1又は複数のプロセスチャンバに送られる様々なプロセスガス(例えば、洗浄、堆積、及びエッチャントガス)を含み得る。プロセスガスの正確な質量流量制御は、電子デバイスの製造プロセスの1又は複数のステップで使用され得る。MFCによって提供される正確な質量流量制御は、微視的に小さい寸法を有する電子デバイスの高歩留生産に貢献し得る。
【0004】
[004]プロセス化学物質が正確に送られるようにするために、MFCの点検と較正が定期的に実施され得る。ただし、MFCを点検及び較正する従来の方法では、かなりかさばる高価な付加機器が必要になる場合があり、使用に時間がかかって非効率的であり得、低質量流量範囲(例えば、最大3000sccmのみの(標準立方センチメートル/分)窒素当量)に限定され得、著しいプロセスダウンタイムが発生し得る、及び/又はプロセス化学物質の正確な質量流量制御を保証するのに十分な精度がない可能性がある。
【発明の概要】
【0005】
[005]幾つかの実施形態では、質量流量制御点検システムが提供される。質量流量点検システムは、ガス供給源からガス流を受け入れるためのラインにおいて、テストされる較正されたガス流標準器又はMFCを連結させる位置と、ガス流を受け入れるためのラインの位置に直列に連結された制御領域と、制御領域に直列に連結された流れ制限器と、流れ制限器に直列に連結されたポンプと、ガス供給源に質量流量制御点検システムを介してガスを流させて制御領域の圧力を安定させ、ガス供給源からのガス流を停止させ、制御領域の経時的な圧力減衰速度を測定するように適合されたコントローラとを含む。
【0006】
[006]幾つかの他の実施形態では、電子デバイス製造システムが提供される。電子デバイス製造システムは、ガス供給源と、ガス供給源に連結されたマスフローコントローラ(MFC)と、入口及び出口を有する質量流量制御点検システムであって、入口はMFCに連結されており、ガス流を受け入れるために入口に直列に連結された制御領域と、制御領域と出口に直列に連結された流れ制限器と、ガス供給源に質量流量制御点検システムを介してガスを流させて制御領域の圧力を安定させ、ガス供給源からのガス流を停止させ、制御領域の経時的な圧力減衰速度を測定するように適合されたコントローラとを含む質量流量制御点検システムと、マスフローコントローラに連結された流路に連結され、マスフローコントローラを介して1又は複数のプロセス化学物質を受け入れるように構成されたプロセスチャンバとを含む。
【0007】
[007]更に他の実施形態では、マスフローコントローラを点検する方法が提供される。本方法は、ガス供給源からガスを、較正された流量標準器、制御領域、及び流れ制限器を介して制御領域で測定された一定の圧力で流すことと、ガス供給源からのガス流を停止することと、制御領域の第1のガス圧減衰速度を測定することと、較正された流量標準器をマスフローコントローラに置き換えることと、ガス供給源からガスを、マスフローコントローラ、制御領域、及び流れ制限器を介して制御領域で測定された一定の圧力で流すことと、ガス供給源からのガス流を停止することと、制御領域の第2のガス圧減衰速度を測定することとを含む。
【0008】
[008]本開示のこれら及び他の実施形態による更に他の態様、特徴、及び利点は、以下の詳細な説明、添付の特許請求の範囲、及び添付の図面から容易に明らかになり得る。したがって、本明細書の図面及び説明は、本質的に例示的なものと見なされるべきであり、限定的なものとして見なされるべきではない。
【0009】
[009]以下に説明する図面は、例示のみを目的としており、必ずしも一定の縮尺で描かれているわけではない。図面は、いかなる方法でも本開示の範囲を限定することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の実施形態に係る第1の質量流量制御点検システムを示す図である。
【
図2】本開示の実施形態に係る第2の質量流量制御点検システムを示す図である。
【
図3】本開示の実施形態に係る第3の質量流量制御点検システムを示す図である。
【
図4】本開示の実施形態に係る質量流量点検中に測定された幾つかの圧力のグラフを示す図である。
【
図5】本開示の実施形態に係る電子デバイス製造システムを示す図である。
【
図6】本開示の実施形態に係る質量流量制御点検の方法のフロー図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[0016]次に、添付の図面に示す本開示の例示的な実施形態を詳細に参照する。可能な限り、同じ又は同様の部品を参照するために、図面全体で同じ参照番号が使用される。
【0012】
[0017]微視的に小さい寸法を有する電子デバイスは、最大+/-1%の質量流量精度を有するプロセスガス化学物質で製造され得る。多くのマスフローコントローラ(MFC)はそのように指定され、新品の場合はそれらの仕様を満たし得るが、ごく一部のMFCはそのように指定される場合があっても、新品又はその他の場合は実際には満たし得ない。更に、最初は正確なMFCでさえ、時間の経過とともに質量流量の精度ドリフトが発生し、指定された精度の範囲外になる可能性がある。したがって、半導体製造機器において使用されるようなMFCの点検と較正を定期的に実施して、プロセスガス化学物質が正確に送られるようにすることができる。
【0013】
[0018]質量流量点検のための既存の方法及び関連するハードウェアは、通常、既知の領域の圧力上昇速度(ROR)の測定に基づいて動作する。RORの原理は、質量流量を測定された既知の密閉領域の圧力上昇速度と相関させるために使用される理想気体の法則に基づく。質量流量が高いほど、精度を確保するために密閉領域を大きくする必要がある。RORの原理には、密閉領域にガスを充填し、密閉領域のRORを測定するという長いプロセス(例えば、場合によっては10時間以上)が伴い得る。密閉領域は、製造システムのプロセスチャンバ又は外部領域であり得る。プロセスチャンバ又は外部領域の正確な体積の不確実性は、結果の精度に悪影響を及ぼし得る。RORの原理を使用するプロセスには、圧力、温度、体積、及び時間の測定が伴い得る。従来のRORベースの方法の重要な課題の1つは、既知の領域には通常、リザーバと、テスト対象のMFCユニット(UUT)からリザーバにつながる流路が含まれることである。圧力変化の速度は、ほぼ停留した状態でリザーバ内で測定され、リザーバにつながる流路内の動圧は測定されない。既知の領域の2つの部分のうちの1つにおいて圧力変化の速度の測定が欠けていると、計算を誤り、UUTからの流れを誤って特徴づけてしまう可能性がある。このような従来の方法とは対照的に、本明細書に開示される実施形態は、流路の体積によって導入される誤差を排除する。本発明の方法及び装置は、既知の領域における圧力減衰速度の測定に基づいて動作し、したがって、測定されていない流路を含まない。
【0014】
[0019]より具体的には、本開示の1又は複数の実施形態に係る質量流量点検方法、システム、及び装置は、「sccm」(標準立方センチメートル/分)又は「slm」(標準リットル/分)の単位であり得るガス質量流量を決定するための圧力減衰の原理に基づく。本開示の1又は複数の実施形態に係る圧力減衰の原理に基づく質量流量点検方法、システム、及び装置は、質量流量を計算するために必要な変数の数を減らし、点検装置の設置面積を縮小し、従来のRORベースの原理に基づく質量流量点検方法、システム、及び装置よりも時間効率が高く、より正確であり得る。RORベースの方法とは対照的に、非ROR圧力減衰測定はほぼ瞬時に行われ得、圧力減衰速度(ROPD)の原理に基づいて質量流量を計算するには、圧力と温度の2つの測定のみが伴い得る。
【0015】
[0020]一般気体方程式とも呼ばれる理想気体の法則は、仮想の理想気体の状態方程式である。これは、多くの条件下での多くのガスの挙動の近似値である。理想気体の法則は、多くの場合、次のように表される:
上記式において、Pはガスの圧力、Vはガスの体積、nはガスの物質量(モル単位)、Rは理想的な、又は普遍的なガス定数であり、ボルツマン定数とアボガドロ定数との積に等しく、Tはガスの絶対温度である。
【0016】
[0021]
図1に、MFCを点検するための例示的な配置を示す。
図1の質量流量点検システム100は、好適なガス(例えば、窒素、酸素、クリーンドライエア(CDA)等)の加圧された流れを設置位置(location)104に提供するガス供給源102を含む。ガスの流量は、適切な監視領域110及び流れ制限器116のサイズを指定することにより、無制限に増減可能である。ガスを受け入れるために、設置位置104に基準器(例えば、較正された流量標準器)又はUUTのいずれかを位置づけし得る。設置位置104における基準器又はUUTのアウトプットは、監視領域110に連結されたバルブ108(例えば絶縁バルブ)につながるライン106に連結され得る。監視領域110は、接続された熱電対112及び接続されたマノメータ114又は他の適切な圧力測定装置を使用して監視される。監視領域110のアウトプットは、真空ポンプ118に連結された流れ制限器116に連結される。幾つかの実施形態では、流れ制限器116は、流れ制限器116の下流の圧力及び温度が測定される場合、穿孔オリフィス制限器、又は多孔質媒体流れ制限器であり得る。質量流量点検システム100は、各操作可能構成要素及び各センサ構成要素に連結され得るコントローラ120の制御下で操作される(注:例示を明確にするために接続部は図示せず)。
【0017】
[0022]
図1に示す配置を使用し、設置位置104において較正された流量標準器を使用することによって、制御領域(V)(すなわち、監視領域110を含むバルブ108と流れ制限器116との間の表示された領域)が最初に決定される。設置位置104の較正された流量標準器には設定値が付与され、監視領域110内の圧力及び温度が定常状態に安定するための十分な時間が与えられる。圧力が測定された且つP
oと表示された時間t
oにおいて、バルブ108は、コントローラ120によって閉じるように命令される。時間t
oの後、ガスが流れ制限器116を通って流れ続けるにつれ、制御領域内の圧力が減衰し始める。制御領域は、以下に基づいて計算される:
圧力がP
oである時間t
oにおいてdP/dtを評価し、設置位置104における較正された流量標準器の設定値を上記式t
oにおけるdn/dtとして使用すると、制御領域の値が得られる。制御領域の体積が決定すると、設置位置104における較正された流量標準器がUUT MFCに置き換えられる。UUT MFCには、点検対象の設定値が付与される。dn/dtについて上記式を解けば、次の式を使用し、付与された設定値を計算された質量流量と比較することによって、UUT MFCの精度が決定され得る。
【0018】
[0023]上記の方法は、バルブ108が瞬時に閉じることを前提としている。実際には、コントローラ120からの通信の待ち時間及びハードウェアアクチュエータの応答のためにバルブ108が完全に閉じるのにかかる実際の時間は、わずかではあるが、toを超えるかなりの量Δtである。Δtの間、制御領域内の圧力が待機時間の結果として上記の計算で示すよりも遅い速度で減衰している間、較正されたガス流はまだ制御領域に流れている。バルブ108が完全に閉じられると、較正されたガス流はもはや制御領域に流れず、制御領域内の圧力は減衰し続けるが、より速い速度である。本開示の実施形態は、バルブ108が完全に閉じるのにかかる時間Δtを補うための方法及び装置を提供する。具体的には、本開示の実施形態は、Δtが経過した後でないと質量流量は安定しないが、toにおいてdP/dtを評価するための方法を提供する。
【0019】
[0024]t
oにおいてdP/dtを評価する第1の例示的な方法では、既知の設定値で設置位置104に取り付けられた較正された流量標準器を備えた
図1に示す質量流量点検システム100を使用して、バルブ108を開き、制御領域を通る流れを確立させ、マノメータ114を介して監視領域110の圧力を測定する。バルブ108は、作動するまで通常は閉じていることに留意されたい。定常状態を確立するのに十分な時間がたつと、安定した流れがP
oの基線測定が行われるまで通過することが可能になる。
図4のグラフ400、具体的には時間の経過に伴う圧力の変化dP/dtプロット402を参照すると、P
oは、t
oの前の時間の間安定している。t
oにおいてバルブ108は閉じている。次に、時間t
o+Δtは、dP/dtプロット402上に減衰圧力変曲点404を位置決めすることによって決定される。次に、時間t
o+Δtを超えて測定されたデータ点を使用して、減衰圧力の方程式が決定される。任意の数の曲線適合アルゴリズム又は方法を使用して、曲線の方程式が決定され得る。次に、決定された式に基づいて、P
o(すなわち、点406)におけるdP/dtの補正値が、測定されたデータ点から再び外挿される。次に、上述したように、較正された流量標準器のP
oにおけるdP/dtの補正値を使用して、以下に基づいてVが計算される:
次に、MFC UUTが、テスト設定値に設定された設置位置104に取り付けられ、次に、バルブ108が開かれて、制御領域を通る流れが再び確立され、マノメータ114を介して監視領域110の圧力が測定される。定常状態を確立するのに十分な時間がたつと、UUTにおけるP
oの測定が行われるまで安定した流れが通過することが可能になる。t
oの前の時間の間にP
oが安定すると、バルブ108が閉じられ、UUTのt
oの時間が確立される。次に、時間t
o+Δtは、減衰圧力変曲点404をdP/dtプロット402と同等の位置に位置決めすることによって決定される。次に、時間t
o+Δtを超えて測定されたデータ点を使用して、減衰圧力の方程式が決定される。任意の数の曲線適合アルゴリズム又は方法を使用して、曲線の方程式が決定され得る。次に、決定された式に基づいて、UUTのP
oにおけるdP/dtの補正値(つまり、点406)が、測定されたデータ点から外挿される。実際の質量流量の式は次の通りである:
最後に、上記の式を使用して、UUTのP
oにおけるdP/dtの補正値を使用して、実際の質量流量(dn/dt)が計算され、テスト設定値と比較してすべての誤差が決定される。幾つかの実施形態では、誤差に基づいて、UUT MFCを較正して誤差を補正し得る。
【0020】
[0025]MFC点検の第2の例示的な代替方法を使用して、点検の精度を更に高めることができる。第2の方法は、
図2に示すMFC点検システム200を使用する。質量流量点検システム200は、好適なガス(例えば、窒素、酸素、クリーンドライエア(CDA)等)の加圧された流れを設置位置204に提供するガス供給源202を含む。ガスの流量は、適切な監視領域210及び流れ制限器216のサイズを指定することにより、無制限に増減可能である。ガスを受け入れるために、設置位置204に基準器(例えば、較正された流量標準器)又はUUTのいずれかを位置づけし得る。設置位置204における基準器又はUUTのアウトプットは、監視領域210に連結されたバルブ208(例えば絶縁バルブ)につながるライン206に連結され得る。監視領域210は、接続された熱電対212及び接続されたマノメータ214を使用して監視される。監視領域210のアウトプットは、流れ制限器216に連結されたバルブ222に連結される。幾つかの実施形態では、流れ制限器216は、流れ制限器216の下流の圧力及び温度が測定される場合、穿孔オリフィス制限器リストリクタ、又は多孔質媒体流れ制限器であり得る。流れ制限器216のアウトプットは真空ポンプ218に連結される。質量流量点検システム200は、各操作可能構成要素及び各センサ構成要素に連結され得るコントローラ220の制御下で操作される(注:例示を明確にするために接続部は図示せず)。
【0021】
[0026]MFC点検システム200は、コントローラ220によって操作される第2のバルブ222が監視領域210と流れ制限器216との間のラインに配置されることを除いて、
図1のMFC点検システム100と構造的に同一であることに留意されたい。第2のバルブ222の使用により、第1の例示的な方法で使用される初期圧力と比較して、制御領域の初期圧力が初期安定化圧力を超えて高められ得る。減衰期間が始まる前に初期圧力を高めることにより、長期間の減衰期間にわたってより多くの圧力測定を行うことができ、これにより、結果としてより正確な曲線に適合するより多くのデータ点をもって、より正確な特性方程式を決定することが可能になる。高められた初期圧力は、
図4のグラフ400のdP/dtプロット408の経時的に変化する圧力のP
o´として表される。
【0022】
[0027]MFC点検の第2の例示的な代替方法は、以下のものを含む。最初に、バルブ208とバルブ222の両方が、定常状態の安定した流れを確立して圧力を測定するのに十分な時間開かれる。次に、バルブ222が、P
o´までの制御領域の圧力上昇を引き起こすのに十分な時間閉じられる。P
o´に達すると、バルブ208が閉じられると同時にバルブ222が開かれる。次に、時間t
o´+Δt´が、dP/dtプロット408上の減衰圧力変曲点410を見つけることによって決定される。次に、時間t
o´+Δt´を超えて測定されたデータ点を使用して、減衰圧力の方程式が決定される。任意の数の異なる曲線適合アルゴリズム又は方法を使用して、曲線の方程式が決定され得る。次に、決定された式に基づいて、P
o´(つまり、点412)におけるdP/dtの補正値が、測定されたデータ点から外挿される。次に、上述したように、較正された流量標準器のP
o´におけるdP/dtの補正値を使用し、以下に基づいてVが計算される:
次に、MFC UUTが基準器の代わりに設置位置204に取り付けられ、テスト設定値に設定され、上記の方法を繰り返してP
o´におけるdP/dtが決定される。実際の質量流量の式は次の通りである:
最後に、上記式を使用して、UUTのP
o´におけるdP/dtの補正値を使用して、実際の質量流量(dn/dt)が計算され、テスト設定値と比較してすべての誤差が決定される。幾つかの実施形態では、誤差に基づいて、UUT MFCを較正して誤差を補正し得る。
【0023】
[0028]MFC点検の第3の例示的な代替方法を使用して、点検の精度を更に高めることができる。第3の方法は、
図3に示すMFC点検システム300を使用する。質量流量点検システム300は、好適なガス(例えば、窒素、酸素、クリーンドライエア(CDA)等)の加圧された流れを設置位置304に提供するガス供給源302を含む。ガスの流量は、適切な監視領域310及び流れ制限器316のサイズを指定することにより、無制限に増減可能である。ガスを受け入れるために、設置位置304に基準器(例えば、較正された流量標準器)又はUUTのいずれかを位置づけし得る。設置位置304における基準器又はUUTのアウトプットは、監視領域310に連結されたバルブ308(例えば絶縁バルブ)につながるライン306に連結され得る。監視領域310は、接続された熱電対312及び接続されたマノメータ314又は他の適切な圧力センサを使用して監視される。監視領域310のアウトプットは、流れ制限器316に連結される。幾つかの実施形態では、流れ制限器316は、流れ制限器316の下流の圧力及び温度が測定される場合、穿孔オリフィス制限器、又は多孔質媒体流れ制限器であり得る。流れ制限器316のアウトプットは真空ポンプ318に連結される。質量流量点検システム300は、各操作可能構成要素及び各センサ構成要素に連結され得るコントローラ320の制御下で操作される(注:例示を明確にするために接続部は図示せず)。また、ライン306に(バルブ308と並列に)接続されているのは、第2の領域326に連結された第2のバルブ324である。第2の領域326は、そのアウトプットが監視領域310に連結された第3のバルブ328に連結されたアウトプットを含む。
【0024】
[0029]第2のバルブ324、第2の領域326、及び第3のバルブ328を使用することにより、第1の例示的な方法で使用される初期圧力と比較して、制御領域の初期圧力を初期安定化圧力より上に高めることが可能になる。貯蔵された加圧ガスは第2の領域326に含有され、監視領域310に注入されて、減衰期間が始まる前に監視領域310の初期圧力を高める。第2の例示的な方法と同様に、これにより(例えば、第1の例示的な方法に対して)長期間の減衰期間の間により多くの圧力測定を行うことができ、結果としてより正確な曲線に適合するより多くのデータ点をもって、より正確な特性方程式を決定することが可能になる。第2の例示的な方法と同様に、高められた初期圧力は、
図4のグラフ400のdP/dtプロット408の経時的に変化する圧力のP
o´として表される。
【0025】
[0030]MFC点検の第3の例示的な代替方法は、以下のものを含む。最初に、第2のバルブ324を開いて流れを確立させ、第2の領域326を加圧する。第2の領域326は、ガス供給源302の圧力レベルまで加圧され得る。幾つかの実施形態では、追加の機器(例えば、ポンプ)を使用して、第2の領域326をより高いレベルに加圧し得る。次に、第2のバルブ324が閉じられて定常状態の安定した流れを確立され、監視領域310の圧力を測定するのに十分長く第1のバルブ308が開かれる。基線P
o安定化圧力に達すると、第3のバルブ328が開かれると同時に第1のバルブ308が閉じられる。第3のバルブ328は、P
o´までの制御領域の圧力上昇を引き起こすのに十分な時間開いたままである。P
o´に達すると、第3のバルブ328が閉じられる。次に、時間t
o´+Δt´が、dP/dtプロット408上の減衰圧力変曲点410を見つけることによって決定される。次に、時間t
o´+Δt´を超えて測定されたデータ点を使用して、減衰圧力の方程式が決定される。任意の数の異なる曲線適合アルゴリズム又は方法を使用して、曲線の方程式を決定し得る。次に、決定された式に基づいて、P
o´(つまり、点412)におけるdP/dtの補正値が、測定されたデータ点から再び外挿される。次に、上述したように、較正された流量標準器のP
o´におけるdP/dtの補正値を使用し、以下に基づいてVが計算される:
次に、MFC UUTが基準器の代わりに設置位置204に取り付けられ、テスト設定値に設定され、上記の方法を繰り返してP
o´におけるdP/dtが決定される。実際の質量流量の式は次の通りである:
最後に、上記式を使用して、UUTのP
o´におけるdP/dtの補正値を使用して、実際の質量流量(dn/dt)が計算され、テスト設定値と比較してすべての誤差が決定される。幾つかの実施形態では、誤差に基づいて、UUT MFCを較正して誤差を補正し得る。
【0026】
[0031]特に小径のドリルオリフィスを備えた流れ制限器は、厳密な再現性仕様で製造するのが困難である。本実施例の方法及び装置は、方程式から流れ制限器の変動性を除去する。幾つかの実施形態では、本実施例の方法及び装置を使用して、穿孔オリフィスの流出係数を決定し、理論的に計算された質量流量に対する実際の質量流量の比を計算することによって多孔質媒体流れ制限器を特徴付けすることができる。
【0027】
[0032]減圧(つまり、真空ベース)用途において上記の理想気体方程式を使用すると、減圧MFCの点検に十分な精度が得られる。大気用途(例えば、真空ポンプなし)に適合した実施形態では、非理想気体方程式(以下のファンデルワールス方程式等)を、質量流量点検のための本発明の方法及び装置に適用することができる。ファンデルワールスの方程式は以下の通りである:
分子間力(パラメータa)及び有限分子サイズ(パラメータb)の気体固有の補正を上記の式に適用することにより、大気用途の理想気体の法則の代わりに使用することができる。より広い範囲の質量流量点検要件では、複数の領域サイズが使用可能である。上記の場合、適切なパーティションを有する単一の最適化された領域が使用され得る。パーティションにより、領域は小さなセグメントに分割され、パーティションを選択的に除去することで、大きな領域の複数の組み合わせが作られ得る。
【0028】
[0033]
図5に、1又は複数の実施形態に係る電子デバイス製造システム500を示す。電子デバイス製造システム500は、MFC502、質量流量点検システム504、及びプロセスチャンバ506を含み得る。幾つかの実施形態では、MFC502は、共通のマニホルド又はヘッダを介して共通の出口に連結された複数のMFCを表し得、以下に記載されるMFC502は、点検対象の複数のMFCのうちの1つのMFC(すなわち、点検中にガスを流す、複数のMFCのうちの唯一のMFC)を表し得る。
【0029】
[0034]プロセスチャンバ506は、絶縁バルブ510を介してマスフローコントローラ502に連結された流路508に連結され得る。プロセスチャンバ506は、MFC502を介して1又は複数のプロセス化学物質を受け入れ、減圧化学気相堆積プロセス、又は減圧エピタキシプロセス、又はその中で実施される1又は複数の堆積、酸化、窒化、エッチング、研磨、洗浄、及び/又はリソグラフィプロセスを有するように構成され得る。
【0030】
[0035]質量流量点検システム504は、入口512及び出口514を有し得る。入口512は、絶縁バルブ510を介してMFC502に連結され得る。質量流量点検システム504は、上記の質量流量点検システム100、200、又は300のうちのいずれか1つであり得る。
【0031】
[0036]電子デバイス製造システム500が減圧用途の下で動作するこれらの実施形態では、質量流量点検システム504は、質量流量点検システム100、200、又は300のうちのいずれか1つであり得る。質量流量点検システム504は、出口514を介して、絶縁バルブ518を介して電子デバイス製造システム500のシステム真空ポンプ516に連結され得る。システム真空ポンプ516はまた、絶縁バルブ518を介してプロセスチャンバ506に結合され得る。
【0032】
[0037]電子デバイス製造システム500が大気用途の下で動作するこれらの実施形態では、質量流量点検システム504は、質量流量点検システム100、200、又は300であり得、システム真空ポンプ516は、電子デバイス製造システム500から除外され得る。
【0033】
[0038]電子デバイス製造システム500及び/又は質量流量点検システム504の動作は、例えば、コントローラ120、220、又は320のうちの1つ等のコントローラによって制御され得る。
【0034】
[0039]
図6に、1又は複数の実施形態に係るMFC流量を点検する方法600のフロー図を示す。最初に、ガスは較正された流量標準器に供給され、直列に接続された制御領域と流れ制限器を介して流される(602)。ガスは、制御領域に定常状態の安定した圧力が達成されるまで流される。オプションとして、制御領域の圧力を高めて(604)、減衰圧力が測定され得る、より広い範囲を得ることが可能である。次に、制御領域の流れ制限器の上流で、圧力が測定される(606)。ガス供給源からの流れが停止され、制御領域のガス圧力の経時的な減衰が測定され(608)、このデータは、較正された流量標準器の設定値とともに、制御領域の実際の体積を計算するために使用される(608)。較正された制御標準器はテスト対象のMFC(UUT)に置き換えられ、制御領域に定常状態の安定した圧力が達成されるまでガスが流される(610)。オプションとして、制御領域の圧力を高めて(612)、減衰圧力が測定され得る、より広い範囲を得ることが可能である。制御領域の圧力が測定され(614)、ガス供給源からの流れが停止され、制御領域のガス圧力減衰が、計算された実際の制御領域に基づいて経時的に測定される(616)。テスト対象のMFCの設定値は、テスト対象のMFCの設定値を、テスト済みのMFCを取り付けた状態で圧力減衰を測定することにより決定された実際の計算された質量流量と比較することによって点検され、すべての誤差はMFCの誤差である(618)。MFCは、MFCで決定された誤差を補正するように較正される(620)。
【0035】
[0040]方法600の上記のプロセスブロックは、図示し、説明した順序及びシーケンスに限定されない順序又はシーケンスで実行又は実施され得る。例えば、幾つかの実施形態では、1つのプロセスブロックは、別のプロセスブロックと同時に、又は別のプロセスブロックの後に実行され得る。幾つかの実施形態では、例えば、リムーバブル記憶ディスク、メモリ又はデバイス等の非一過性のコンピュータ可読媒体は、方法600のプロセスブロック602~620を実行する、例えば、コントローラ120、220、320等のプロセッサによって実行され得る、その上に格納されたコンピュータ可読命令を含み得る。
【0036】
[0041]前述の説明は、本開示の例示的な実施形態のみを開示している。上記で開示されたアセンブリ、装置、システム、及び方法の変更は、本開示の範囲内に含まれ得る。したがって、本開示の例示的な実施形態が開示されているが、特許請求の範囲によって定義されるように、他の実施形態が本開示の範囲内に含まれ得ることを理解されたい。
【要約】
質量流量点検システム及び装置は、圧力減衰の原理に基づいてマスフローコントローラ(MFC)の質量流量を点検する。実施形態は、ガス供給源からガス流を受け入れるためのラインにおいて、テストされる較正されたガス流標準器又はマスフローコントローラ(MFC)を連結させる位置と、ガス流を受け入れるためのラインの位置に直列に連結された制御領域と、制御領域に直列に連結された流れ制限器と、流れ制限器に直列に連結されたポンプと、ガス供給源に質量流量制御点検システムを介してガスを流させて制御領域の圧力を安定させ、ガス供給源からのガス流を停止させ、制御領域の経時的な圧力減衰速度を測定するように適合されたコントローラとを含む。多数の追加の態様が開示されている。
【選択図】
図1