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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-29
(45)【発行日】2022-10-07
(54)【発明の名称】アクリル系樹脂フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 48/08 20190101AFI20220930BHJP
   B29C 48/18 20190101ALI20220930BHJP
   B29C 48/92 20190101ALI20220930BHJP
   C08F 265/06 20060101ALI20220930BHJP
   B29K 33/04 20060101ALN20220930BHJP
   B29L 7/00 20060101ALN20220930BHJP
【FI】
B29C48/08
B29C48/18
B29C48/92
C08F265/06
B29K33:04
B29L7:00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018210003
(22)【出願日】2018-11-07
(65)【公開番号】P2020075405
(43)【公開日】2020-05-21
【審査請求日】2021-06-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(74)【代理人】
【識別番号】100131635
【弁理士】
【氏名又は名称】有永 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100186989
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 智之
(72)【発明者】
【氏名】武田 英明
(72)【発明者】
【氏名】杉井 浩晃
(72)【発明者】
【氏名】井口 利之
【審査官】酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/062378(WO,A1)
【文献】特開2013-078900(JP,A)
【文献】特開2015-007255(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 48/00-48/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融押出法によるアクリル系樹脂フィルムの製造方法であって、
多層構造を有するアクリル系重合体を含有する樹脂組成物の溶融物がダイから押出される速度(V)と、前記樹脂組成物からなるフィルムの引取り速度(V)が下記式(1)を満たすと共に、前記V が1.39m/分以下、前記V が5~40m/分であり、
前記ダイのダイリップクリアランスが0.1~1.8mmであり、
前記樹脂組成物の溶媒可溶分が30~70質量%であり、
前記アクリル系樹脂フィルムの厚みが20~200μmである、 ことを特徴とするアクリル系樹脂フィルムの製造方法。
/V≦15 式(1)
【請求項2】
前記アクリル系樹脂フィルムの厚み精度が15%以下である、請求項1に記載のアクリル系樹脂フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記多層構造を有するアクリル系重合体は、コア、インナーシェル、及びアウターシェルの3層からなるコアシェル多層構造を有してなるものであり、
前記コアを構成する重合体(a)は、メチルメタクリレートに由来する構造単位40~98.99質量%、アルキル基の炭素数が1~8であるアルキルアクリレートに由来する構造単位1~59質量%、グラフト化剤に由来する構造単位0.01~1質量%、及び架橋剤に由来する構造単位0~0.5質量%を含む重合体であり、
前記インナーシェルを構成する重合体(b)は、アルキル基の炭素数が1~8であるアルキルアクリレートに由来する構造単位70~99.5質量%、メチルメタクリレートに由来する構造単位0~29質量%、グラフト化剤に由来する構造単位0.5~5質量%、及び架橋剤に由来する構造単位0~5質量%を含む重合体であり、且つ
前記アウターシェルを構成する重合体(c)は、メチルメタクリレートに由来する構造単位80~99質量%、及びアルキル基の炭素数が1~8であるアルキルアクリレートに由来する構造単位1~19質量%を含むガラス転移温度80℃以上の重合体である、請求項1又は2に記載のアクリル系樹脂フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融押出法によるアクリル系樹脂フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリル系樹脂フィルムは透明性及び耐候性に優れていることから、ポリカーボネートや塩化ビニル等の表面保護材として建材用途を中心に使用されている。
このようなアクリル系樹脂フィルムを溶融押出法により厚み精度よく製造する方法として、例えば特許文献1には、(1)溶融物が吐出される出口(ダイスリップ)の開口度/フィルムの平均膜厚が、10~1.2であるダイスリップを通して溶融物を押出しし、(2)多層構造アクリル系樹脂のガラス転移温度以上である間に、(3)ダイスリップから接触させるロール又は金属ベルトまでの距離が100mm以下で、(4)ロール又は金属ベルトに両面を接触させて成形すること、を特徴とするアクリル系樹脂フィルムの製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-25412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の製造方法によれば、アクリル系樹脂フィルムを高い厚み精度で製造することができるが、生産性を向上させることを目的として製膜速度を高くした場合、ダイリップからロールまでの間で溶融樹脂の流動が不安定になり、厚み精度が低下するという問題があった。
【0005】
本発明は、前記従来の課題を解決することを目的とするもので、溶融押出法によりアクリル系樹脂フィルムを製造する方法において、製膜速度を高くした場合でも厚み精度に優れるアクリル系樹脂フィルムを製造可能なアクリル系樹脂フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記課題を解決すべく検討を重ねた結果、樹脂組成物のダイからの吐出量、ダイリップクリアランス、及びダイリップ幅によって調整される押出速度、すなわち、原料となる樹脂組成物の溶融物がダイから押出される速度と、ダイから吐出された溶融物を引き取るロールの引取り速度とを特定の関係とすることにより、製膜速度を高くした場合であっても厚み精度に優れたアクリル系樹脂フィルムを得ることが可能になることを見出し、当該知見に基づいてさらに検討を重ねて本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は下記[1]~[7]を要旨とするものである。
[1]溶融押出法によるアクリル系樹脂フィルムの製造方法であって、
多層構造を有するアクリル系重合体を含有する樹脂組成物の溶融物がダイから押出される速度(V)と、前記樹脂組成物からなるフィルムの引取り速度(V)が下記式(1)を満たすことを特徴とするアクリル系樹脂フィルムの製造方法。
/V≦15 式(1)
【0008】
[2]前記Vが0.5~3.0m/分である、[1]に記載のアクリル系樹脂フィルムの製造方法。
[3]ダイリップクリアランスが0.1~1.8mmである、[1]又は[2]に記載のアクリル系樹脂フィルムの製造方法。
[4]前記樹脂組成物の溶媒可溶分が30~70質量%である、[1]~[3]のいずれかに記載のアクリル系樹脂フィルムの製造方法。
[5]前記アクリル系樹脂フィルムの厚みが20~200μmである、[1]~[4]のいずれかに記載のアクリル系樹脂フィルムの製造方法。
[6]前記アクリル系樹脂フィルムの厚み精度が15%以下である、[1]~[5]のいずれかに記載のアクリル系樹脂フィルムの製造方法。
【0009】
[7]前記多層構造を有するアクリル系重合体は、コア、インナーシェル、及びアウターシェルの3層からなるコアシェル多層構造を有してなるものであり、
前記コアを構成する重合体(a)は、メチルメタクリレートに由来する構造単位40~98.99質量%、アルキル基の炭素数が1~8であるアルキルアクリレートに由来する構造単位1~59質量%、グラフト化剤に由来する構造単位0.01~1質量%、及び架橋剤に由来する構造単位0~0.5質量%を含む重合体であり、
前記インナーシェルを構成する重合体(b)は、アルキル基の炭素数が1~8であるアルキルアクリレートに由来する構造単位70~99.5質量%、メチルメタクリレートに由来する構造単位0~29質量%、グラフト化剤に由来する構造単位0.5~5質量%、及び架橋剤に由来する構造単位0~5質量%を含む重合体であり、且つ
前記アウターシェルを構成する重合体(c)は、メチルメタクリレートに由来する構造単位80~99質量%、及びアルキル基の炭素数が1~8であるアルキルアクリレートに由来する構造単位1~19質量%を含むガラス転移温度80℃以上の重合体である、[1]~[6]のいずれかに記載のアクリル系樹脂フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、溶融押出法によりアクリル系樹脂フィルムを製造する方法において、製膜速度を高くした場合でも厚み精度に優れるアクリル系樹脂フィルムを製造することが可能なアクリル系樹脂フィルムの製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<アクリル系樹脂フィルムの製造方法>
本発明のアクリル系樹脂フィルムの製造方法は、溶融押出法によるアクリル系樹脂フィルムの製造方法であって、
多層構造を有するアクリル系重合体を含有する樹脂組成物の溶融物がダイから押出される速度(V)と、前記樹脂組成物からなるフィルムの引取り速度(V)が下記式(1)を満たすことを特徴とするアクリル系樹脂フィルムの製造方法である。
/V≦15 式(1)
【0012】
本発明によれば、製膜速度を高くした場合であっても厚み精度に優れたアクリル系樹脂フィルムを得ることが可能になる。
【0013】
本発明では、V/Vが15以下であることが重要である。V/Vは、厚み精度やフィルム外観を向上させる観点から、好ましくは4以上であり、より好ましくは5以上であり、更に好ましくは6以上である。V/Vが4未満になると、ダイラインが発生し易くなる等外観不良を起こす場合がある。一方、V/Vは、厚み精度が高いアクリル系樹脂フィルムを得る観点から、好ましくは14以下であり、より好ましくは13以下であり、更に好ましくは12以下である。
【0014】
前記式(1)におけるV及びVは以下のとおり定義される。
(m/分)= Q ÷ 60 ÷ D ÷ (L× W)× 1000 式(2)
式(2)中、Q(kg/時間)はダイからの吐出量、Dは樹脂組成物の密度(g/cm)、L(mm)はダイリップクリアランス、W(mm)はダイリップ幅を示す。
【0015】
(m/分): フィルムの引取り速度
フィルムの引き取り速度は、ダイから吐出された溶融物を最初に引き取る金属ロールの直径及び回転数から算出した速度とすることができる。
【0016】
前記Vは、好ましくは0.5~3.0m/分であり、より好ましくは0.7~2.9m/分であり、更に好ましくは0.8~2.8m/分であり、特に好ましくは1.0~2.7m/分であり、最も好ましくは1.2~2.5m/分である。
また、前記Vは、好ましくは1~45m/分であり、より好ましくは5~40m/分であり、更に好ましくは10~30m/分である。VとVがそれぞれ前記範囲内であることによって、製膜速度を高くした場合であってもより厚み精度に優れたアクリル系樹脂フィルムを得ることが可能となる。
【0017】
前記吐出量Qは、ダイサイズにもよるが、好ましくは10~60kg/時間であり、より好ましくは15~55kg/時間であり、更に好ましくは20~50kg/時間である。
【0018】
ダイリップクリアランスLは、膜厚精度を高め、またダイラインの少ないフィルムを得やすくする観点から、好ましくは0.1~1.8mmであり、より好ましくは0.3~1.5mmであり、更に好ましくは0.6~1.0mmである。
ダイリップ幅Wは、ダイリップクリアランスLと同様の観点から、好ましくは300~700mmであり、より好ましくは350~600mmであり、更に好ましくは400~550mmである。
【0019】
本発明の製造方法における溶融押出温度は、好ましくは200~300℃であり、より好ましくは220~280℃であり、更に好ましくは240~270℃である。溶融押出温度が前記範囲内であることによって、原料となる樹脂組成物の熱分解が進行しにくくなり、着色や異物の発生を抑制することができる。なお、本発明の製造方法における溶融押出温度は、押出機のバレル設定温度とする。
また、本発明においては、押出機を含む製膜装置内における樹脂組成物の滞留時間が、好ましくは10分以下であり、より好ましくは7分以下である。滞留時間が前記範囲内であることによって、樹脂組成物の熱分解や着色を抑制することができる。
【0020】
本発明の製造方法としては、多層構造を有するアクリル系重合体を含有する樹脂組成物を押出機で溶融し、Tダイ法、インフレーション法、カレンダー法等により製造する方法が挙げられるが、厚み精度が良好なフィルムを得る観点から、特にTダイ法が好ましい。
【0021】
本発明の製造方法に用いる押出機としては、単軸や二軸のスクリューを有する押出機を使用することが好ましい。また、着色を抑制する観点から、ベントを有する押出機を使用し、減圧下又は窒素気流下で溶融混練を行うことが好ましい。
また、本発明の製造方法においては、異物を除去する観点からポリマーフィルターを設置することが好ましく、更に、厚み精度をより高くするためにギアポンプを設置することが好ましい。
【0022】
本発明の製造方法においては、アクリル系樹脂フィルムの表面平滑性及び厚み精度を向上させる観点から、押出された溶融物を、好ましくは金属製の鏡面ロール又は鏡面ベルトを用いて引き取り、挟圧することが好ましい。金属製の鏡面ロールとしては、金属弾性ロールや金属剛体ロール等が挙げられるが、アクリル系樹脂フィルムの表面平滑性を向上させる観点から、金属弾性ロールと金属剛体ロールを組み合わせて用いることが好ましい。
鏡面ロール又は鏡面ベルトを用いる場合、その押付圧は、アクリル系樹脂フィルムの表面平滑性を向上させる観点から、好ましくは0.5MPa以上であり、より好ましく1.0MPa以上である。
また、鏡面ロール又は鏡面ベルトを用いる場合、その表面温度は、アクリル系樹脂フィルムの表面平滑性、ヘーズ及び外観等を向上させる観点から、好ましくは50~130℃であり、より好ましくは60~90℃である。
【0023】
本発明によれば、例えば、厚み20~200μmのアクリル系樹脂フィルムを高い厚み精度で得ることができる。更に、アクリル系樹脂フィルムのハンドリング性の向上やコストを低く抑える観点から、アクリル系樹脂フィルムの厚みは、好ましくは25~180μmであり、より好ましくは30~150μmである。厚みが前記下限値以上であることによって剛性が高くなり、アクリル系樹脂フィルムのハンドリング性が向上する。また、フィルム厚みが前記上限値以下であることによって、アクリル系樹脂フィルムの強度と製造コストとのバランスが向上する。
【0024】
本発明によって得られるアクリル系樹脂フィルムの厚み精度は、好ましくは15%以下であり、より好ましくは10%以下であり、更に好ましくは7%以下であり、特に好ましくは5%以下であり、最も好ましくは3%以下である。
なお、フィルムの厚み精度は、実施例に記載の方法で求めることができる。
【0025】
<原料となる樹脂組成物>
本発明の製造方法においては、原料として多層構造を有するアクリル系重合体を含有する樹脂組成物を用いる。以下、原料となる樹脂組成物について詳細に説明する。
【0026】
≪多層構造を有するアクリル系重合体≫
本発明において用いる多層構造を有するアクリル系重合体は、多層構造を有するものであれば特に制限はなく、例えば、コアシェル多層構造を有するアクリル系重合体を挙げることができる。また、多層構造を構成する層の数に特に制限はなく、2層でも3層以上でもよい。
これらの中でも、アクリル系樹脂フィルムの耐衝撃性を向上させる観点から、コアシェル多層構造を有するアクリル系重合体が好ましく、より具体的には、コア(内層)、インナーシェル(中間層)、及びアウターシェル(外層)の3層からなるコアシェル多層構造を有するアクリル系重合体が好ましい。本発明において、3層からなるコアシェル多層構造を有するアクリル系重合体とは、コアとインナーシェル、インナーシェルとアウターシェルが各々異なる重合体で構成されたものを指す。
なお、前記の3層からなるコアシェル多層構造を有するアクリル系重合体は、これを含む樹脂組成物を溶融混練した場合に、前記アウターシェルの全部又は一部が融着してマトリックスを形成し、該マトリックスがコアとインナーシェルの2層からなるコアシェル粒子を含有するようになる。
【0027】
以下、コア(内層)、インナーシェル(中間層)、及びアウターシェル(外層)の3層からなるコアシェル多層構造を有するアクリル系重合体について詳細に説明する。なお、コアを構成する重合体を「重合体(a)」、インナーシェルを構成する重合体を「重合体(b)」、及びアウターシェルを構成する重合体を「重合体(c)」として説明する。
【0028】
〔重合体(a):コアを構成する重合体〕
重合体(a)は、メチルメタクリレートに由来する構造単位、アルキルアクリレートに由来する構造単位、グラフト化剤に由来する構造単位、及び必要に応じて架橋剤に由来する構造単位を含む重合体であることが好ましい。
【0029】
重合体(a)に用いるアルキルアクリレートに特に制限はないが、アルキル基の炭素数が好ましくは1~8であり、より好ましくは2~6である。アルキルアクリレート中のアルキル基の炭素数が前記範囲内であることによって、多層構造を有するアクリル系重合体の耐熱分解性が向上すると共にアクリル系樹脂フィルムの耐温水白化性や耐沸水白化性が向上する。具体的なアルキルアクリレートとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、s-ブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、n-ブチルメチルアクリレート、n-ヘプチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、n-オクチルアクリレート等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも前記の観点から、n-ブチルアクリレートが特に好ましい。
【0030】
重合体(a)は、重合体(a)と重合体(b)とを化学的に結合させることを目的として、また、重合体(a)の架橋構造の形成を補助することを目的として、グラフト化剤に由来する構造単位を含むことが好ましい。
重合体(a)に用いるグラフト化剤としては、異なる重合性基を2個以上有する単量体であれば特に制限はなく、例えば、アリルメタクリレート、アリルアクリレート、モノ-又はジ-アリルマレエート、モノ-又はジ-アリルフマレート、クロチルアクリレート、及びクロチルメタクリレート等を挙げることができる。これらのグラフト化剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、重合体(a)と重合体(b)との間の結合能を向上させ、アクリル系樹脂フィルムの耐応力白化性及び透明性を向上させる観点から、アリルメタクリレートが好ましい。
【0031】
重合体(a)は、重合体(a)中で架橋構造を形成することを目的として、また、重合体(a)と重合体(b)との間で架橋構造を形成することを目的として、架橋剤に由来する構造単位を含んでいてもよい。
重合体(a)に用いる架橋剤としては、同種の重合性基を2個以上有する単量体(ただし、前記グラフト化剤を除く)であれば特に制限はなく、例えば、ジアクリル化合物、ジメタクリル化合物、ジアリル化合物、ジビニル化合物、ジエン化合物、トリビニル化合物等が挙げられる。より具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、エチレングリコールジアリルエーテル、プロピレングリコールジアリルエーテル、ブタジエン等を挙げることができる。これらの架橋剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】
重合体(a)におけるメチルメタクリレートに由来する構造単位の量は、重合体(a)の全構造単位中に、好ましくは40~98.99質量%であり、より好ましくは45~96.9質量%である。メチルメタクリレートに由来する構造単位の量が前記下限値以上であることによってアクリル系樹脂フィルムの耐候性が向上し、前記上限値以下であることによってアクリル系樹脂フィルムの耐衝撃性が向上する。
【0033】
重合体(a)におけるアルキルアクリレートに由来する構造単位の量は、重合体(a)の全構造単位中に、好ましくは1~59質量%であり、より好ましくは3~55質量%である。アルキルアクリレートに由来する構造単位の量が前記下限値以上であることによって多層構造を有するアクリル系重合体の耐熱分解性が向上し、前記上限値以下であることによってアクリル系樹脂フィルムの耐温水白化性や耐沸水白化性が向上する。
【0034】
重合体(a)におけるグラフト化剤に由来する構造単位の量は、重合体(a)の全構造単位中に、好ましくは0.01~1質量%であり、より好ましくは0.1~0.5質量%である。グラフト化剤に由来する構造単位の量が前記下限値以上であることによって、重合体(a)と重合体(b)との結合力が向上し、また前記上限値以下であることによってアクリル系樹脂フィルムの耐衝撃性が向上する。
【0035】
重合体(a)における架橋剤に由来する構造単位の量は、重合体(a)の全構造単位中に、好ましくは0~0.5質量%であり、より好ましくは0~0.2質量%である。架橋剤に由来する構造単位の量が前記範囲内であることによってアクリル系樹脂フィルムの耐衝撃性が向上する。
【0036】
重合体(a)及び後述する重合体(b)は、アセトン等の溶媒に不溶なもの、すなわち、グラフト化されたものであることが好ましい。重合体(a)及び重合体(b)がグラフト化されたものであると、後述する重合体(c)のマトリックス中に重合体(a)及び重合体(b)が2層構造の粒子として存在するようになり、アクリル系樹脂フィルムの耐衝撃性を向上させるため好ましい。
【0037】
〔重合体(b):インナーシェルを構成する重合体〕
重合体(b)は、アルキルアクリレートに由来する構造単位、グラフト化剤に由来する構造単位、及び必要に応じてメチルメタクリレートに由来する構造単位、架橋剤に由来する構造単位を含む重合体であることが好ましい。
【0038】
重合体(b)に用いるアルキルアクリレートとしては、前記重合体(a)で例示したアルキルアクリレートを挙げることができ、多層構造を有するアクリル系重合体の耐熱分解性が向上すると共にアクリル系樹脂フィルムの耐温水白化性や耐沸水白化性を向上させる観点から、n-ブチルアクリレートが特に好ましい。
【0039】
また、重合体(b)に用いるグラフト化剤としては、前記重合体(a)で例示したグラフト化剤を挙げることができ、重合体(a)と重合体(b)との間の結合能を向上させ、アクリル系樹脂フィルムの耐応力白化性及び透明性を向上させる観点から、アリルメタクリレートが好ましい。
【0040】
重合体(b)に用いる架橋剤としては、前記重合体(a)で例示した架橋剤を挙げることができ、重合体(b)中で架橋構造を形成する観点、及び重合体(a)と重合体(b)との間で架橋構造を形成する観点から、ジアクリル化合物、ジメタクリル化合物、ジアリル化合物、ジビニル化合物等が好ましい。
【0041】
重合体(b)におけるアルキルアクリレートに由来する構造単位の量は、重合体(b)の全構造単位中に、好ましくは70~99.5質量%であり、より好ましくは80~99質量%である。アルキルアクリレートに由来する構造単位が前記下限値以上であることによってアクリル系樹脂フィルムの耐衝撃性が向上し、前記上限値以下であることによってアクリル系樹脂フィルムの耐応力白化性及び透明性が向上する。
【0042】
重合体(b)におけるメチルメタクリレートに由来する構造単位の量は、重合体(b)の全構造単位中に、好ましくは0~29質量%であり、より好ましくは0~20質量%である。メチルメタクリレートに由来する構造単位の量が前記範囲内であることによってアクリル系樹脂フィルムの耐衝撃性が向上する。
【0043】
重合体(b)におけるグラフト化剤に由来する構造単位の量は、重合体(b)の全構造単位中に、好ましくは0.5~5質量%であり、より好ましくは1~4質量%である。グラフト化剤に由来する構造単位の量が前記下限値以上であることによってアクリル系樹脂フィルムの耐応力白化性が向上する。一方、前記上限値以下であることによってアクリル系樹脂フィルムの耐衝撃性が向上する。
【0044】
重合体(b)における架橋剤に由来する構造単位の量は、重合体(b)の全構造単位中に、好ましくは0~5質量%であり、より好ましくは0~2質量%である。架橋剤に由来する構造単位の量が前記範囲内であることによってアクリル系樹脂フィルムの耐衝撃性が向上する。
【0045】
本発明において、重合体(b)は、重合体(a)及び重合体(c)よりも軟らかいことが好ましい。重合体(b)が、重合体(a)及び重合体(c)よりも軟らかいことによって耐衝撃性が向上する。
【0046】
〔重合体(c):アウターシェルを構成する重合体〕
重合体(c)は、メチルメタクリレートに由来する構造単位、及びアルキルアクリレートに由来する構造単位を含む重合体であることが好ましい。
重合体(c)に用いるアルキルアクリレートとしては、前記重合体(a)で例示したアルキルアクリレートを挙げることができ、多層構造を有するアクリル系重合体の耐熱分解性が向上すると共にアクリル系樹脂フィルムの耐温水白化性や耐沸水白化性を向上させる観点から、メチルアクリレート及びn-ブチルアクリレートが特に好ましい。
【0047】
重合体(c)におけるメチルメタクリレートに由来する構造単位の量は、重合体(c)の全構造単位中に、好ましくは80~99質量%であり、より好ましくは85~98質量%である。メチルメタクリレートに由来する構造単位の量が前記下限値以上であることによってアクリル系樹脂フィルムの耐応力白化性が向上する。一方、前記上限値以下であることによってアクリル系樹脂フィルムの耐熱分解性が向上する。
【0048】
重合体(c)におけるアルキルアクリレートに由来する構造単位の量は、重合体(c)の全構造単位中に、好ましくは1~19質量%であり、より好ましくは2~15質量%である。アルキルアクリレートに由来する構造単位の量が前記下限値以上であることによって多層構造を有するアクリル系重合体の耐熱分解性が向上し、前記下限値以上であることによってアクリル系樹脂フィルムの耐応力白化性が向上する。
【0049】
重合体(c)のガラス転移温度は、好ましくは80℃以上であり、より好ましくは90℃以上であり、更に好ましくは100℃以上である。重合体(c)のガラス転移温度が高いほどアクリル系樹脂フィルムの耐温水白化性及び耐沸水白化性が向上する。ガラス転移温度はメチルメタクリレートと共重合する単量体の種類及び量を変更することや、重合温度等により立体規則性を制御すること等によって調整することができる。重合体(c)のガラス転移温度は通常130℃以下である。
【0050】
重合体(c)のガラス転移温度はJIS K7121:2012に準拠して測定することができる。すなわち、重合体(a)、及び重合体(b)を含有しない状態で、重合体(c)のみを別途合成し、得られた重合体(c)を250℃まで一度昇温し、次いで30℃以下まで冷却し、その後30℃から230℃までを20℃/分で昇温させる条件にて、示差走査熱量測定法によりDSC曲線を測定し、2回目の昇温時に測定されるDSC曲線から求められる中間点ガラス転移温度を、重合体(c)のガラス転移温度とすることができる。
【0051】
重合体(c)はアセトン等の溶剤に可溶なものであること、すなわち、架橋されていないことが好ましい。重合体(c)が架橋されていない場合、重合体(a)、重合体(b)及び重合体(c)からなる多層構造を有するアクリル系重合体を用いた際に、重合体(c)がマトリックスを形成し、その中に重合体(a)及び重合体(b)からなる粒子が存在するようになり、アクリル系樹脂フィルムの製造容易性が向上する。
【0052】
〔重合体(a)、重合体(b)及び重合体(c)の質量比〕
多層構造を有するアクリル系重合体中の重合体(a)の量は、好ましくは1~30質量%であり、より好ましくは3~20質量%であり、更に好ましくは4~15質量%である。重合体(a)の量が前記下限値以上であることによってアクリル系樹脂フィルムの熱安定性及び生産性が向上する。一方、重合体(a)の量が前記上限値以下であることによってアクリル系樹脂フィルムの耐衝撃性及び柔軟性が向上する。
【0053】
多層構造を有するアクリル系重合体中の重合体(b)の量は、好ましくは20~45質量%であり、より好ましくは25~40質量%であり、更に好ましくは28~35質量%である。重合体(b)の量が前記下限値以上であることによってアクリル系樹脂フィルムの熱安定性及び生産性が向上する。一方、重合体(b)の量が前記上限値以下であることによってアクリル系樹脂フィルムの耐衝撃性及び柔軟性が向上する。
【0054】
多層構造を有するアクリル系重合体中の重合体(c)の量は、好ましくは50~75質量%であり、より好ましくは55~70質量%であり、更に好ましくは58~68質量%である。重合体(c)の量が前記下限値以上であることによって多層構造を有するアクリル系重合体の流動性及びアクリル系樹脂フィルムの成形性が向上する。重合体(c)の量が前記上限値以下であることによってアクリル系樹脂フィルムの耐衝撃性及び耐応力白化性が向上する。
【0055】
〔多層構造を有するアクリル系重合体のメルトフローレート(MFR)〕
多層構造を有するアクリル系重合体は、230℃、3.8kg荷重下でのメルトフローレートが、好ましくは0.5~20g/10分であり、より好ましくは0.8~10g/10分である。多層構造を有するアクリル系重合体のメルトフローレートが前記下限値以上であることによって、多層構造を有するアクリル系重合体の流動性及びアクリル系樹脂フィルムの成形性が向上する。一方、前記メルトフローレートが前記上限値以下であることによってアクリル系樹脂フィルムの力学的特性が向上する。
なお、本発明におけるメルトフローレートは、JIS K7210-1:2014に準じて、230℃、3.8kg荷重で測定することができる。
【0056】
〔多層構造を有するアクリル系重合体の製造方法〕
本発明に用いられる多層構造を有するアクリル系重合体の製造方法に特に制限はないが、例えば重合体(a)、重合体(b)、及び重合体(c)を順次(シード)乳化重合法によって形成させることにより得ることができる。
より具体的には、乳化剤の存在下に、メチルメタクリレート40~98.99質量%、より好ましくは45~96.9質量%、アルキル基の炭素数が1~8であるアルキルアクリレート1~59質量%、より好ましくは3~55質量%、グラフト化剤0.01~1質量%、より好ましくは0.1~0.5質量%及び架橋剤0~0.5質量%、より好ましくは0~0.2質量%を重合(第1次重合)することにより重合体(a)を含有するラテックス(I)を得る。
次いで、ラテックス(I)の存在下に、アルキル基の炭素数が1~8であるアルキルアクリレート70~99.5質量%、より好ましくは80~99質量%、メチルメタクリレート0~29質量%、より好ましくは0~20質量%、グラフト化剤0.5~5質量%、より好ましくは1~4質量%及び架橋剤0~5質量%、より好ましくは0~2質量%を、ラテックス(I)をシードとして重合(第2次重合)することにより重合体(a)と重合体(b)とを含有するラテックス(II)を得る。
その後、ラテックス(II)の存在下に、メチルメタクリレート80~99質量%、より好ましくは85~98質量%及びアルキル基の炭素数が1~8であるアルキルアクリレート1~19質量%、より好ましくは2~15質量%を、ラテックス(II)をシードとして重合(第3次重合)することによりコアとして重合体(a)、インナーシェルとして重合体(b)、アウターシェルとして重合体(c)を含有する多層構造を有するアクリル系重合体を含むラテックス(III)を得る。次いで、前記ラテックス(III)を凝固させてスラリーを得た後、該スラリーを洗浄及び脱水し、脱水されたスラリーを乾燥させることにより、コアとして重合体(a)、インナーシェルとして重合体(b)、アウターシェルとして重合体(c)を含有する多層構造を有するアクリル系重合体を得ることができる。
【0057】
〔重合開始剤〕
多層構造を有するアクリル系重合体の製造に用いる重合開始剤に特に制限はないが、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の水溶性の無機系開始剤;無機系開始剤に亜硫酸塩又はチオ硫酸塩等を併用してなるレドックス開始剤;有機過酸化物に第一鉄塩又はナトリウムスルホキシレート等を併用してなるレドックス開始剤等を挙げることができる。
重合開始剤は重合開始時に一括して反応系に添加してもよいし、反応速度等を勘案して重合開始時と重合途中とに分割して反応系に添加してもよい。重合開始剤の使用量は、例えば、多層構造を有するアクリル系重合体の平均粒子径が後述の範囲になるように適宜設定できる。
【0058】
〔乳化剤〕
多層構造を有するアクリル系重合体の製造に用いる乳化剤に特に制限はないが、例えば、長鎖アルキルスルホン酸塩、スルホコハク酸アルキルエステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩等のアニオン系乳化剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のノニオン系乳化剤;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸ナトリウム等のアルキルエーテルカルボン酸塩等のノニオン・アニオン系乳化剤を挙げることができる。乳化剤の使用量は、例えば、多層構造を有するアクリル系重合体の平均粒子径が後述の範囲になるように適宜設定できる。
【0059】
〔連鎖移動剤〕
本発明においては、多層構造を有するアクリル系重合体の分子量を調整することを目的として、各重合において連鎖移動剤を使用することができる。特に第3次重合において、連鎖移動剤を反応系に添加して重合体(c)の分子量を調節することによって、多層構造を有するアクリル系重合体のメルトフローレートを前記の範囲にすることができる。
多層構造を有するアクリル系重合体の製造に用いる連鎖移動剤に特に制限はないが、例えば、n-オクチルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、n-ヘキサデシルメルカプタン等のアルキルメルカプタン類;ジメチルキサントゲンジスルフィド、ジエチルキサントゲンジスルフィド等のキサントゲンジスルフィド類;テトラチウラムジスルフィド等のチウラムジスルフィド類;四塩化炭素、臭化エチレン等のハロゲン化炭化水素等を挙げることができる。
【0060】
連鎖移動剤の使用量は、各重合において重合体を所定の分子量に調節できる範囲で適宜設定できる。第3次重合において使用される連鎖移動剤の量は、第3次重合に使用する重合開始剤の量等によって変わるが、第3次重合において使用する単量体、具体的にはメチルメタクリレート及びアルキルアクリレートの合計量100質量部に対して、好ましくは0.05~2質量部であり、より好ましくは0.08~1質量部である。
【0061】
〔紫外線吸収剤〕
多層構造を有するアクリル系重合体の製造方法においては、第1次重合、第2次重合及び第3次重合のいずれか又は2以上において、必要に応じて、反応性紫外線吸収剤を用いてもよい。反応性紫外線吸収剤としては、例えば2-[2-ヒドロキシ-5-(2-メタクリロイルオキシエチル)フェニル]-2H-1,2,3-ベンゾトリアゾール等を用いることができる。反応性紫外線吸収剤を用いると、該反応性紫外線吸収剤が多層構造を有するアクリル系重合体の分子鎖に導入され、多層構造を有するアクリル系重合体の耐紫外線性が向上する。反応性紫外線吸収剤の添加量は、多層構造を有するアクリル系重合体の重合に使用される単量体の合計量100質量部に対して、好ましくは0.05~5質量部である。
【0062】
前記製造方法において、第1次重合、第2次重合及び第3次重合は一つの重合槽中で順次行ってもよいし、第1次重合、第2次重合、及び第3次重合の度に重合槽を変えて順次行ってもよいが、各重合を一つの重合槽中で順次行うことが好ましい。また、重合を行っている間の反応系の温度は、好ましくは30~120℃であり、より好ましくは50~100℃である。
【0063】
前記各重合は、前記の単量体、具体的にはメチルメタクリレート、アルキルアクリレート、グラフト化剤及び架橋剤を前記の割合で混ぜ合わせて反応系に供給することにより行うことができる。前記単量体を反応系に供給する速度に特に制限はないが、各重合において使用される単量体の合計量に対して、好ましくは0.05~3質量%/分であり、より好ましくは0.1~1質量%/分であり、更に好ましくは0.2~0.8質量%/分になるような速度で供給することが好ましい。前記速度で供給することによって、望ましくない重合体凝集物の生成や重合体スケールの反応槽への付着を防ぐことができ、重合体凝集物や重合体スケールの混入で生じることがあるフィッシュアイ等の外観不良を生じさせないようにすることができる。
【0064】
前記の方法により得られたラテックスの凝固は、公知の方法で行うことができる。凝固法としては、凍結凝固法、塩析凝固法、酸析凝固法等を挙げることができる。これらのうち、多層構造を有するアクリル系重合体にとって不純物となる凝固剤の添加を要しない点から、凍結凝固法が好ましい。
【0065】
凝固によって得られたスラリーの洗浄及び脱水は十分に行うことが好ましい。スラリーの洗浄及び脱水によって、乳化剤や触媒等の水溶性成分をスラリーから除去できる。スラリーの洗浄及び脱水は、例えば、フィルタープレス、ベルトプレス、ギナ型遠心分離機、スクリューデカンタ型遠心分離機等で行うことができる。生産性、洗浄効率の観点からスクリューデカンタ式遠心分離機を用いることが好ましい。スラリーの洗浄及び脱水は、少なくとも2回行うことが好ましい。洗浄及び脱水の回数が多いほど水溶性成分の残存量が下がる。生産性の観点から、洗浄及び脱水の回数は、3回以下であることが好ましい。
【0066】
更に得られたスラリーは乾燥することが好ましい。スラリーの乾燥は、前記の方法によって得られた多層構造を有するアクリル系重合体の水分率が、好ましくは0.2質量%未満、より好ましくは0.1質量%未満になるように行うことが好ましい。水分率が高いほど溶融押出成形の際に多層構造を有するアクリル系重合体にエステル加水分解反応が起き、分子鎖にカルボキシル基が生成する傾向があり、その結果、アクリル系樹脂フィルムのスジの発生を招きやすい。
【0067】
得られた多層構造を有するアクリル系重合体は、運搬、保管、成形等を容易にするために、ペレット化することが好ましい。多層構造を有するアクリル系重合体をペレット化する際に用いる押出機はベントを備えることが好ましい。ベントは真空ベント又はオープンベントであることが好ましい。ベントは樹脂溶融開始部より下流側に少なくとも1個設けることが好ましい。なお、真空ベントにおける圧力は、30Torr以下であることが好ましく、15Torr以下であることがより好ましく、9Torr以下であることが更に好ましく、6Torr以下であることが最も好ましい。該真空ベントにおける圧力が前記範囲内であることによって、脱揮効率がよく、残存水分及び残存単量体を少なくすることができる。
【0068】
多層構造を有するアクリル系重合体をペレット化するために使用する押出機のシリンダ加熱温度は、好ましくは210~270℃であり、より好ましくは220~260℃であり、更に好ましくは230~250℃である。押出機での滞留時間は、好ましくは7分間以下であり、より好ましくは5分間以下であり、更に好ましくは3分間以下である。シリンダ加熱温度が高いほど又は滞留時間が長いほど、多層構造を有するアクリル系重合体等に与えるせん断エネルギーが大きく、重合体の熱分解が進行しやすいため、フィルムの耐温水白化性が低下する。
【0069】
多層構造を有するアクリル系重合体の平均粒子径は、好ましくは0.01μm以上であり、より好ましくは0.04μm以上であり、更に好ましくは0.05μm以上であり、特に好ましくは0.07μm以上であり、好ましくは0.35μm以下であり、より好ましくは0.3μm以下であり、更に好ましくは0.2μm以下であり、特に好ましくは0.15μm以下である。平均粒子径が大きすぎるとアクリル系樹脂フィルムの耐応力白化性は低下する傾向がある。平均粒子径は、光散乱法に基づいて実施例に記載の方法により求められる。
【0070】
≪アクリル系樹脂≫
本発明において用いられる樹脂組成物は、多層構造を有するアクリル系重合体の他にアクリル系樹脂を含有してもよい。前記樹脂組成物がアクリル系樹脂を含有する場合、得られるアクリル系樹脂フィルムの機械強度や厚み精度が向上する。
アクリル系樹脂の好ましい含有量は、アクリル系樹脂フィルムの機械強度と加工性とを向上させる観点から、多層構造を有するアクリル系重合体100質量部に対して4~50質量部であることが好ましく、6~30質量部であることがより好ましく、8~20質量部であることが更に好ましい。
【0071】
アクリル系樹脂は、メチルメタクリレートに由来する構造単位と、必要に応じてアクリル酸エステルに由来する構造単位とを含有することが好ましい。アクリル系樹脂に用いることができるアクリル酸エステルとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、s-ブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、アミルアクリレート、イソアミルアクリレート、n-へキシルアクリレート、2-エチルへキシルアクリレート、ペンタデシルアクリレート、ドデシルアクリレート、シクロへキシルアクリレート、ノルボルネニルアクリレート、イソボニルアクリレート、ベンジルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-エトキシエチルアクリレート、グリシジルアクリレート、アリルアクリレート、フェニルアクリレート等を挙げることができる。これらのうち、アルキル基の炭素数が1~6であるアルキルアクリレートが好ましい。
【0072】
アクリル系樹脂中のメチルメタクリレートに由来する構造単位の量は、アクリル系樹脂フィルムの機械強度を向上する観点から、好ましくは85~100質量%であり、より好ましくは90~100質量%である。
また、アクリル系樹脂がアクリル酸エステルに由来する構造単位を含有する場合、その量は、アクリル系樹脂フィルムの厚み精度を向上させる観点から、アクリル系樹脂中に、好ましくは0~15質量%であり、より好ましくは0~10質量%である。
【0073】
本発明において用いられるアクリル系樹脂のガラス転移温度は、好ましくは95℃以上であり、より好ましくは100℃以上であり、更に好ましくは105℃以上である。ガラス転移温度が前記範囲内であることによってアクリル系樹脂フィルムの厚み精度が向上する。本発明において用いられるアクリル系樹脂のガラス転移温度は通常130℃以下である。
アクリル系樹脂のガラス転移温度は、多層構造を有するアクリル系重合体の重合体(c)と同様の方法で測定することができる。
【0074】
本発明において用いられるアクリル系樹脂の230℃、3.8kg荷重下でのメルトフローレートは好ましくは0.5~20g/10分であり、より好ましくは0.8~10g/10分である。メルトフローレートが前記範囲内であることによって、アクリル系樹脂フィルムの製造容易性が向上する。
なお、本発明におけるメルトフローレートは、JIS K7210-1:2014に準じて、230℃、3.8kg荷重で測定することができる。
【0075】
前記アクリル系樹脂の製造方法は特に制限されず、例えば、ラジカル重合法、アニオン重合法等の公知の重合法によって製造することができる。製造条件に特に制限はなく、重合温度、重合時間、連鎖移動剤の種類や量、重合開始剤の種類や量等を適宜調整することにより所望のアクリル系樹脂を得ることができる。
【0076】
本発明に用いられるアクリル系樹脂は、運搬、保管、成形等を容易にするために、多層構造を有するアクリル系重合体と同様に、ペレット化することが好ましい。アクリル系重合体のペレット化は、多層構造を有するアクリル系重合体のペレット化と同様の条件で行うことができる。
【0077】
押出成形に供する前にアクリル系樹脂を乾燥させて水分率を減らすことが好ましい。押出成形に供する前におけるアクリル系樹脂の水分率は、好ましくは0.2質量%未満であり、より好ましくは0.1質量%未満である。水分率が高いほど、フィルムのスジの発生を招きやすい。
【0078】
本発明の製造方法によれば、原料となる樹脂組成物中に多層構造を有するアクリル系重合体を比較的多く含む場合であっても、高い厚み精度でアクリル系樹脂フィルムを製造することができる。樹脂組成物中に含まれる溶媒可溶分は、30~70質量%であることが好ましく、40~70質量%であることがより好ましく、45~70質量%であることが更に好ましい。樹脂組成物中の可溶分が前記範囲である場合に、本発明の効果が有効に発揮されやすい。
本明細書における溶媒可溶分は、実施例に記載する方法で測定することができる。
【0079】
≪任意成分≫
本発明に用いられる樹脂組成物は、必要に応じて紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、可塑剤、高分子加工助剤、滑剤、染料、顔料等の公知の添加剤を含んでいてもよい。
樹脂組成物が添加剤を含有する場合、その含有量は樹脂組成物中に20質量%以下であることが好ましい。
添加剤は、例えば、フィルム成形機内で溶融している樹脂組成物に添加してもよいし、ペレット化された樹脂組成物にドライブレンドしてもよいし、多層構造を有するアクリル系重合体及び/又はアクリル系樹脂をペレット化する際に添加してもよい(マスターバッチ法)。
【0080】
本発明に用いられる樹脂組成物には、紫外線吸収剤を含有させることが好ましい。紫外線吸収剤としては、例えば2,2’-メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]を挙げることができる。紫外線吸収剤の含有量は、樹脂組成物の合計量100質量部に対して、好ましくは0.05~5質量部である。
【0081】
<アクリル系樹脂フィルムの使用態様>
本発明によって得られるアクリル系樹脂フィルムは単層で用いられてもよいし、他の1以上の樹脂層との積層体として使用することもできる。他の樹脂層としては、特に制限されないが、カーボネート系重合体、塩化ビニル系重合体、フッ化ビニリデン系重合体、酢酸ビニル系重合体、マレイン酸系共重合体、メタクリル樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、AS樹脂が、本発明によって得られるアクリル系樹脂フィルムとの接着性が良好なので、好ましく用いられる。
【実施例
【0082】
以下、実施例に基づき更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、実施例において「部」は特段の記載がない限り「質量部」を意味する。
なお、本実施例における測定方法等は以下のとおりである。
【0083】
[測定方法]
<厚み精度>
実施例及び比較例で得られたフィルム中央部のフィルムの流れ方向(MD方向)における1000mmの範囲において、5mm間隔でフィルムの厚みをマイクロメーターで測定した。
得られた厚みの平均値及び標準偏差から下記式(3)より変動係数を算出し、厚み精度の指標とした。変動係数が小さいほど、厚み精度に優れることを示す。
変動係数(%)= 厚みの標準偏差 ÷ 厚みの平均値 × 100 式(3)
なお、厚み精度の合否基準は以下のとおりとした。
変動係数が15%未満:○(合格)
変動係数が15%以上:×(不合格)
【0084】
<ダイライン>
暗室内にてフィルムにHID光源のライト(ポラリオン製、ポラリオンライト NP-1(出力:35W))を照射し、実施例及び比較例で得られたフィルムの流れ方向に生じた平行なスジを目視でカウントし、以下の指標にて評価した。
フィルムの流れ方向のスジの数が5本以下 :◎(合格)
フィルムの流れ方向のスジの数が6本以上10本以下:○(実用上問題ないレベル)
フィルムの流れ方向のスジの数が11本以上 :△(不合格)
なお、今回の実施例及び比較例においては、△(不合格)に該当するものはなかった。
【0085】
<樹脂組成物中の溶媒可溶分の測定>
実施例及び比較例で使用した樹脂組成物2gをアセトン50mLに入れ常温にて24時間撹拌した。得られた液全量を遠心分離機(日立工機株式会社製、CR20G III)を用いて、回転数20000rpm、温度0℃条件で180分間遠心分離した。上澄み液と沈殿物を分け採り、上澄み液を50℃にて8時間真空下で乾燥させて、得られた試料(溶媒可溶物)の重量を測定し、式(4)から溶媒可溶分を算出した。
溶媒可溶分(質量%)= 溶媒可溶物の重量 ÷ 試料の重量 × 100 式(4)
【0086】
<平均粒子径>
試料粒子を含むラテックスを水で200倍に希釈し、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置(株式会社堀場製作所社製、LA-960)を用いて、光散乱法により平均粒子径を求めた。
【0087】
<メルトフローレート>
JIS K7210-1:2014に準じて、230℃、3.8kg荷重でのメルトフローレートを測定した。
【0088】
<ガラス転移温度>
JIS K7121:2012に準拠して、示差走査熱量計(株式会社島津製作所製、DSC-50)を用いて、250℃まで一度昇温し、次いで室温まで冷却した。その後、室温から230℃までを20℃/分で昇温させる条件にて、示差走査熱量測定法によりDSC曲線を測定し、2回目の昇温時に測定されるDSC曲線から求められる中間点ガラス転移温度をガラス転移温度とした。
【0089】
[製造例]
以下、多層構造を有するアクリル系重合体、及びアクリル系樹脂の製造例を説明する。メチルメタクリレートを「MMA」、n-ブチルアクリレートを「nBA」、メチルアクリレートを「MA」、アリルメタクリレートを「ALMA」、n-オクチルメルカプタン(連鎖移動剤)を「nOM」と表記する。
【0090】
<多層構造を有するアクリル系重合体の製造>
〔製造例1:多層構造を有するアクリル系重合体(A1)の製造〕
撹拌機、温度計、窒素ガス導入部、単量体導入管及び還流冷却器を有する反応容器内に、イオン交換水150部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.3部及び炭酸ナトリウム0.05部を仕込み、容器内を窒素ガスで充分に置換して実質的に酸素の影響がない状態とした。
次いで、反応容器内の温度を80℃にした後、反応容器内に過硫酸カリウム0.015部を投入し、5分間撹拌した。次に、MMA2.5部、nBA2.5部及びALMA0.015部からなる単量体混合物を20分間かけて連続的に滴加し、乳化重合を行った。滴加終了後、更に30分間撹拌し、乳化重合を転化率98%以上となるように行うことにより重合体(a-1)を含有するラテックスを得た。
【0091】
重合体(a-1)を含有するラテックスの入った反応器内に、過硫酸カリウム0.030部を投入し、5分間撹拌した。次いで、MMA2部、nBA28部及びALMA0.9部からなる単量体混合物を40分間かけて連続的に滴加し、重合体(a-1)をシードとしてシード乳化重合を行った。滴加終了後、更に30分間撹拌し、シード乳化重合を転化率98%以上となるように行うことにより重合体(a-1)と重合体(b-1)とを含有するラテックスを得た。
【0092】
重合体(a-1)と重合体(b-1)とを含有するラテックスの入った反応器内に、過硫酸カリウム0.055部を投入し、5分間撹拌した。その後、MMA62部、nBA3部及びnOM0.25部からなる単量体混合物を100分間かけて連続的に滴加してシード乳化重合を行った。滴加終了後、更に60分間撹拌し、重合体(a-1)及び重合体(b-1)をシードとしてシード乳化重合を転化率98%以上となるように行うことにより、重合体(a-1)、重合体(b-1)及び重合体(c-1)を含有するラテックスを得た。
重合体(a-1)、重合体(b-1)及び重合体(c-1)の単量体単位組成比及び多層構造を有するアクリル系重合体(A1)の平均粒子径を表1に示す。
【0093】
前記ラテックスを-20℃の雰囲気に4時間置いて凍結させた。得られた凍結物を3倍量の80℃の水に投入して融解させて、スラリーを得た。スクリューデカンタ式遠心分離機を用いて2100Gの遠心力によりスラリーの洗浄及び脱水を行った。続いてスラリー濃度10%になるようにイオン交換水を加え、再度スクリューデカンタ式遠心分離機で洗浄及び脱水を行った。
【0094】
その後、80℃に設定された連続式流動層乾燥機にて脱水されたスラリーを乾燥させて、コアシェル多層構造を有するアクリル系重合体(以下、多層構造を有するアクリル系重合体(A1)と表記する。)を得た。得られた3層構造を有するアクリル系重合体(A1)の平均粒子径は0.09μm、各層の質量比(内層:中間層:外層)は、5:31:64であった。重合体(c-1)のガラス転移温度は110℃であった。
多層構造を有するアクリル系重合体(A1)をベント付単軸スクリュー式押出機に供給して、ベント真空圧力5Torr、溶融押出温度245℃の条件下にてペレット化した。
【0095】
〔製造例2:多層構造を有するアクリル系重合体(A2)の製造〕
重合体(a-1)、重合体(b-1)及び重合体(c-1)の単量体単位組成比を表1に記載のとおり変更したこと以外は製造例1と同様の方法により多層構造を有するアクリル系重合体(A2)のペレットを得た。3層構造を有するアクリル系重合体(A2)の平均粒子径は0.09μm、各層の質量比(内層:中間層:外層)は、5:30:65であった。重合体(c-2)のガラス転移温度は96℃であった。
【0096】
【表1】
【0097】
<アクリル系樹脂の製造>
〔製造例3:アクリル系樹脂(B1)の製造〕
攪拌機及び採取管付オートクレーブに対して、精製されたMMA92部、及びMA8部を入れて単量体混合物を調製した。単量体混合物に重合開始剤〔2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)、水素引抜能:1%、1時間半減期温度:83℃〕0.006部及びnOM0.15部を加え、溶解させて原料液を得た。次いで、窒素ガスにより製造装置内の酸素ガスを追出した。
【0098】
前記原料液をオートクレーブから温度140℃に制御された連続流通式槽型反応器に、平均滞留時間120分間となるように一定流量で供給して、重合転化率57%で塊状重合させることによりアクリル系樹脂(B1)を得た。
【0099】
前記の槽型反応器から排出される液を240℃に加温し、250℃に制御されたオープンベントと真空ベントとを備える二軸押出機に一定流量で供給し、押出機供給口で断熱フラッシュ蒸発させることにより、揮発した成分(単量体、二量体、及び三量体等)をオープンベントから排出した。また、二軸スクリューによる溶融混練で揮発した成分(単量体等)を押出機供給口よりも下流側に設けられた6Torrに減圧された真空ベントから排出した。
揮発成分がほぼ除去された樹脂成分を二軸スクリューで押し出してストランドを得た後、該ストランドをペレタイザーでカットすることによりアクリル系樹脂(B1)をペレット化した。
得られたアクリル系樹脂(B1)は、ガラス転移温度が110℃、MFRが2g/10分であった。
【0100】
[実施例1~6、及び比較例1~3]
前記多層構造を有するアクリル系重合体(A1)、(A2)及びアクリル系樹脂(B1)のペレットを表2に示す割合でドライブレンドし、直径65mm単軸押出機、ギアポンプ、ダイリップ幅が500mmのTダイ、2本の金属鏡面ロール、引取り機を備えた製膜装置へ供給した。押出機のバレル温度260℃、アダプター及びギアポンプ温度をそれぞれ255℃、ダイ温度を260℃に設定し、表2に示す条件で幅400mmのフィルムを作製した。得られたアクリル系樹脂フィルムの幅方向の中心部300mmを長さ1000mmで採取して、前記の各評価を行った。
なお、ダイから押出された溶融樹脂は、エアーギャップ80mm、70℃に温度設定した金属弾性ロールと金属剛体ロールでロール押付圧1.4MPaで挟圧してフィルム化した。
【0101】
【表2】
【0102】
実施例1~6は、樹脂組成物の溶融物がダイから押出される速度(V)と、前記樹脂組成物からなるフィルムの引取り速度(V)が式(1)の関係を満たしており、得られたフィルムの厚み精度は優れていた。実施例5はダイラインが発生し易かったが実用レベルであった。一方、比較例1~3は樹脂組成物の溶融物がダイから押出される速度(V)と、前記樹脂組成物からなるフィルムの引取り速度(V)が式(1)の関係を満たしておらず、得られたフィルムの厚み精度が劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明によって得られるアクリル系樹脂フィルムは、建材用途、自動車用途等に好適に使用することができる。