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特許7149485三次元測定結果の処理方法及び処理装置並びに三次元測定機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-29
(45)【発行日】2022-10-07
(54)【発明の名称】三次元測定結果の処理方法及び処理装置並びに三次元測定機
(51)【国際特許分類】
   G01B 5/20 20060101AFI20220930BHJP
   G01B 21/20 20060101ALI20220930BHJP
【FI】
G01B5/20 C
G01B21/20 101
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018191943
(22)【出願日】2018-10-10
(65)【公開番号】P2020060448
(43)【公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(72)【発明者】
【氏名】小堤 寛之
【審査官】信田 昌男
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-146114(JP,A)
【文献】特開2014-010103(JP,A)
【文献】特開平10-339630(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 5/00- 5/30
G01B 21/00-21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元測定機によって測定された被測定物の複数の要素の測定結果を用いて要素間計算を行ったときに、前記要素間計算の種類と、前記要素間計算において使用した要素の種類及び数の履歴とを記憶する工程と、
前記三次元測定機によって測定された複数の要素の測定結果を用いて、新たに要素間計算を行う場合に、過去に行った前記要素間計算の種類、並びに要素の種類及び数を選択するための操作部材を表示装置に表示させる工程と、
前記操作部材を介して、前記要素間計算の種類、並びに前記要素の種類及び数を選択する操作を受け付ける工程と、
を備える三次元測定結果の処理方法。
【請求項2】
前記操作部材が操作されてからの経過時間及び前記操作部材が操作された回数のうちの少なくとも1つに基づいて、前記表示装置に表示させる操作部材を決定する工程を更に備える請求項1記載の三次元測定結果の処理方法。
【請求項3】
前記要素間計算の種類に対応する前記操作部材に、前記要素間計算に用いる前記要素の種類及び数を示す情報を表示させる、請求項1又は2記載の三次元測定結果の処理方法。
【請求項4】
前記操作部材に対する操作を受け付けた場合に、前記操作部材に対応する前記要素の種類及び数と、前記三次元測定機による測定結果に含まれる前記要素の種類及び数とが一致する場合に、前記三次元測定機による測定結果の中から、前記操作部材に対応する種類及び数の要素を自動的に選択して前記表示装置に表示させる工程を更に含む、請求項1から3のいずれか1項記載の三次元測定結果の処理方法。
【請求項5】
三次元測定機によって測定された被測定物の複数の要素の測定結果を取得する測定結果取得部と、
前記測定結果を用いて要素間計算を行う要素間計算部と、
前記要素間計算を行ったときに、前記要素間計算の種類と、前記要素間計算において使用した要素の種類及び数の履歴とを記憶する記憶装置と、
表示装置と、
前記三次元測定機によって測定された複数の要素の測定結果を用いて、新たに要素間計算を行う場合に、過去に行った前記要素間計算の種類、並びに要素の種類及び数を選択するための操作部材を前記表示装置に表示させる表示制御部と、
前記操作部材を介して、前記要素間計算の種類、並びに前記要素の種類及び数を選択する操作を受け付ける受付部と、
を備える三次元測定結果の処理装置。
【請求項6】
被測定物に接触させて前記被測定物の測定を行うための測定子と、
前記測定子を用いて測定した前記被測定物の要素の測定結果を取得して、前記要素間計算を行う請求項5に記載の三次元測定結果の処理装置と、
を備える三次元測定機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は三次元測定結果の処理方法及び処理装置並びに三次元測定機に係り、被測定物について測定された複数の要素に関する要素間計算を行う機能を有する三次元測定結果の処理方法及び処理装置並びに三次元測定機に関する。
【背景技術】
【0002】
三次元測定機(CMM:Coordinate Measuring Machine)では、被測定物(以下、「ワーク」という。)の複数の要素について測定が行われ、測定した要素のうちの任意の複数の要素に関する測定結果を用いて要素間計算が行われる。要素間計算の結果は、ワークの加工精度の検証等に用いられる。
【0003】
特許文献1には、測定メニューの中に、要素測定、交差照合、距離計算、交角計算、交差計算、二等分計算等のコマンドを含む三次元測定システムが開示されている。特許文献1において、要素測定には、点要素測定、円要素測定、線要素測定、平面要素測定、円筒要素測定、円錐要素測定、球要素測定、楕円要素測定等が含まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平10-339630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
要素間計算は、例えば、次のような手順で行われる。まず、ユーザは、三次元測定機を用いて、ワークの複数の要素(例えば、点、直線、平面、円等)の測定を行う。ここで、要素の測定は、1つの要素に対して複数回行う場合もある。これにより、三次元測定機を用いて測定された要素の測定結果(例えば、位置、座標、寸法等)が記憶される。
【0006】
次に、ユーザは、表示画面に表示されたメニューの中から要素間計算における計算の種類又は評価の対象を示す項目を選択する。ここで、要素間計算とは、既に記憶されている複数の要素を組み合わせて、別の機械的な指標(パラメータ)を計算することをいう。要素間計算の項目は、例えば、交差要素(交点、交線等)、対称要素(中点、対称線、対称面等)、最短・最長距離、2点間の距離、2点間の座標差、2平面間及び直線と平面との間の直角度等の計算又は評価を含む。ユーザは、表示画面に表示された複数の要素に関する測定結果のリストの中から要素間計算に用いる要素を選択する。これにより、選択した項目について、選択した要素の測定結果を用いた要素間計算が行われ、要素間計算の結果が表示画面に表示される。
【0007】
上記のように、要素間計算では、要素間計算を行うごとに項目の選択及び要素の選択を行う必要がある。具体的には、要素間計算を行うごとに、要素の測定結果の表示画面、項目の選択画面及び要素の選択画面を含む複数の操作画面の間で、画面を遷移させる操作を行うことになる。このため、画面の遷移の回数が多くなり、操作が煩雑になるという問題がある。
【0008】
例えば、同じ形状のワークを複数個測定する場合には、要素間計算における項目の選択、並びに要素の種類及び個数の選択の操作手順はほぼ同様になり得る。この場合、ユーザは、ワークを1個測定するごとに同様の操作手順を繰り返すことになる。このため、測定対象のワークの個数に対応して同様の操作手順を繰り返すことになる。
【0009】
また、ユーザ又は測定対象のワークの種類によっては、要素間計算における項目、要素の種類及び個数があらかじめ決まっている場合がある。この場合、ユーザは、ワークを測定するごとに、項目の選択及び要素の選択について同じ操作を繰り返すことになる。
【0010】
上記のような場合においても、1個のワークの測定を行って要素間計算を行うごとに項目及び要素の選択を行うとすると、操作が煩わしくなる。さらに、同様の操作手順の繰り返しに作業時間を要するため、ワークの測定のスループットが低下するという問題がある。そして、ワークの加工精度の検証のための測定及び要素間計算のスループットが低下すると、ワークの生産性が低下するという問題がある。
【0011】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、ワークの測定及び要素間計算を行うときの操作手順を簡略化することが可能な三次元測定結果の処理方法及び処理装置並びに三次元測定機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様に係る三次元測定結果の処理方法は、三次元測定機によって測定された被測定物の複数の要素の測定結果を用いて要素間計算を行ったときに、要素間計算の種類と、要素間計算において使用した要素の種類及び数の履歴とを記憶する工程と、三次元測定機によって測定された複数の要素の測定結果を用いて、新たに要素間計算を行う場合に、過去に行った要素間計算の種類、並びに要素の種類及び数を選択するための操作部材を表示装置に表示させる工程と、操作部材を介して、要素間計算の種類、並びに要素の種類及び数を選択する操作を受け付ける工程とを備える。
【0013】
第1の態様によれば、被測定物(ワーク)の複数の要素の測定結果に基づいて要素間計算を行うときに、要素間計算の種類並びに要素間計算に用いる要素の種類及び数の選択のための操作手順を簡略化することが可能になる。
【0014】
本発明の第2の態様に係る三次元測定結果の処理方法は、第1の態様において、操作部材が操作されてからの経過時間及び操作部材が操作された回数のうちの少なくとも1つに基づいて、表示装置に表示させる操作部材を決定する工程を更に備える。
【0015】
本発明の第3の態様に係る三次元測定結果の処理方法は、第1又は第2の態様において、要素間計算の種類に対応する操作部材に、要素間計算に用いる要素の種類及び数を示す情報を表示させるようにしたものである。
【0016】
本発明の第4の態様に係る三次元測定結果の処理方法は、第1から第3の態様のいずれかにおいて、操作部材に対する操作を受け付けた場合に、操作部材に対応する要素の種類及び数と、三次元測定機による測定結果に含まれる要素の種類及び数とが一致する場合に、三次元測定機による測定結果の中から、操作部材に対応する種類及び数の要素を自動的に選択して表示装置に表示させる工程を更に含む。
【0017】
本発明の第5の態様に係る三次元測定結果の処理装置は、三次元測定機によって測定された被測定物の複数の要素の測定結果を取得する測定結果取得部と、測定結果を用いて要素間計算を行う要素間計算部と、要素間計算を行ったときに、要素間計算の種類と、要素間計算において使用した要素の種類及び数の履歴とを記憶する記憶装置と、表示装置と、三次元測定機によって測定された複数の要素の測定結果を用いて、新たに要素間計算を行う場合に、過去に行った要素間計算の種類、並びに要素の種類及び数を選択するための操作部材を表示装置に表示させる表示制御部と、操作部材を介して、要素間計算の種類、並びに要素の種類及び数を選択する操作を受け付ける受付部とを備える。
【0018】
本発明の第6の態様に係る三次元測定機は、被測定物に接触させて被測定物の測定を行うための測定子と、測定子を用いて測定した被測定物の要素の測定結果を取得して、要素間計算を行う、第5の態様に係る三次元測定結果の処理装置とを備える。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、被測定物(ワーク)の複数の要素の測定結果に基づいて要素間計算を行うときに、要素間計算の種類並びに要素間計算に用いる要素の種類及び数の選択のための操作手順を簡略化することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る三次元測定機を示す図(斜視図及びブロック図)である。
図2図2は、測定対象のワークを示す一部平面図である。
図3図3は、要素間計算用プログラムによって生成される測定メニュー(GUI)の例を示す図である。
図4図4は、要素間計算用プログラムによって生成される測定メニュー(GUI)の例を示す図である。
図5図5は、要素間計算用プログラムによって生成される測定メニュー(GUI)の例を示す図である。
図6図6は、要素間計算用プログラムによって生成される測定メニュー(GUI)の例を示す図である。
図7図7は、要素間計算用プログラムによって生成される測定メニュー(GUI)の例を示す図である。
図8図8は、要素間計算用プログラムによって生成される測定メニュー(GUI)の例を示す図である。
図9図9は、要素間計算用プログラムによって生成される測定メニュー(GUI)の例を示す図である。
図10図10は、要素間計算用プログラムによって生成される測定メニュー(GUI)の例を示す図である。
図11図11は、測定及び要素間計算の処理の流れを示すフローチャートである。
図12図12は、選択候補の表示画面の生成処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面に従って本発明に係る三次元測定結果の処理方法及び処理装置並びに三次元測定機の実施の形態について説明する。
【0022】
以下の実施形態では、三次元測定機1に含まれるコンピュータ100における要素間計算のGUI(Graphical User Interface)について説明するが、本発明はこれに限定されない。本発明に係る三次元測定結果の処理方法及び処理装置は、例えば、三次元測定機1とは別のコンピュータ(例えば、パーソナルコンピュータ、ワークステーション等)において、三次元測定機1から取得した測定結果を用いた要素間計算を行う場合にも適用することが可能である。
【0023】
[三次元測定機]
図1は、本発明の一実施形態に係る三次元測定機を示す図(斜視図及びブロック図)である。
【0024】
図1に示すように、本実施形態に係る三次元測定機1は、測定機本体10と、コンピュータ100とを含んでいる。以下の説明では、測定機本体10の配置及び駆動方向について、xyz直交座標を機械座標として説明する。
【0025】
(測定機本体)
まず、測定機本体10について説明する。測定機本体10は、プローブ22(スタイラス24を含む。)の先端に形成された測定子26を、被測定物(ワーク)に接触させて走査させることにより、非接触物の形状(輪郭)及び寸法等を測定する装置である。
【0026】
図1に示すように、測定機本体10は、基台20と、基台20上に設けられた定盤18とを含んでいる。定盤18の表面は、xy平面に平行な平面状に形成されている。ワークは、定盤18の表面に固定される。ワークを定盤18の表面に固定するための手段としては、例えば、クランプ機構を用いることができる。
【0027】
定盤18には、定盤18の表面から図中上側(+z方向)に伸びる一対のコラム(支柱)16が取り付けられている。コラム16の上端部(+z側の端部)には、ビーム(梁)14が架け渡されている。一対のコラム16は、定盤18上をy方向に同期して移動可能となっており、ビーム14は、x方向に平行な状態で、y方向に移動可能となっている。コラム16を定盤18に対して移動させるための駆動手段としては、モータを使用することができる。なお、一対のコラム16は、定盤18の下面側で接続されていてもよい。
【0028】
ビーム14には、z方向に伸びるヘッド12が取り付けられている。ヘッド12は、ビーム14の長さ方向(x方向)に沿って移動可能となっている。ヘッド12をビーム14に対して移動させるための駆動手段としては、モータを使用することができる。
【0029】
ヘッド12の下端部(-z側の端部)には、プローブ22が図中の上下方向(z方向)に移動可能に取り付けられている。プローブ22を上下方向に移動させるための駆動手段としては、モータを使用することができる。
【0030】
測定機本体10は、コラム16、ヘッド12及びプローブ22のそれぞれの移動量を測定するための移動量測定部(例えば、リニアエンコーダ。不図示)を含んでいる。
【0031】
プローブ22は、剛性が高い軸状の部材(スタイラス24)を含んでいる。このスタイラス24の材料としては、例えば、超硬質合金、チタン、ステンレス、セラミック、カーボンファイバー等を使用することができる。
【0032】
プローブ22のスタイラス24の先端部には、測定子26が設けられている。測定子26は、硬度が高く、耐摩耗性に優れた球状の部材である。測定子26の材料としては、例えば、ルビー、窒化珪素、ジルコニア、セラミック等を使用することができる。測定子26の直径(以下、スタイラス径という。)は一例で4.0mmである。
【0033】
ワークの測定を行う場合には、コラム16、ヘッド12及びプローブ22をxyz方向に移動させて測定子26をワークに接触させる。そして、測定子26をワークの外形に沿って走査させながら、測定子26の変位量等を測定する。この変位量の測定値等のデータはコンピュータ100に送信される。コンピュータ100は、汎用測定プログラムを使用してこのデータを処理することにより、ワークの形状(輪郭)及び寸法等を求めることが可能となっている。
【0034】
(コンピュータ)
次に、コンピュータ100について説明する。コンピュータ100は、操作装置104を介したオペレータからの操作入力に応じて測定機本体10に指令を送信して、測定機本体10によるワークの測定及び測定子26の校正を行う。コンピュータ100は、パーソナルコンピュータ又はワークステーションにより構成されていてもよい。
【0035】
処理装置102は、測定機本体10及びコンピュータ100の各部の動作を制御するCPU(Central Processing Unit)を含んでいる。処理装置102は、操作装置104を介してオペレータからの操作入力を受け付け、コントローラ110を介してこの操作入力に応じた制御信号を、測定機本体10及びコンピュータ100の各部に送信して各部の動作を制御する。
【0036】
操作装置104は、オペレータからの操作入力を受け付ける操作部材を含んでいる。この操作部材としては、例えば、文字入力のためのキーボード、ポインティングデバイス、マウス、表示装置108の表面に設けられたタッチパネル等を用いることができる。
【0037】
コントローラ110は、測定機本体10との間で通信を行うための手段であり、測定機本体10との間で送受信するデータの変換処理を行う。コントローラ110は、コンピュータ100から測定機本体10に送信されるデジタルの指令をアナログ信号に変換するためのD/A(digital-to-analog)変換器と、測定機本体10からコンピュータ100に送られる測定値等のデータをデジタルデータに変換するためのA/D(analog-to-digital)変換器とを含んでいてもよい。
【0038】
記憶装置106は、処理装置102による演算に使用されるプログラム、及び測定機本体10から取得した測定結果等のデータを記憶する。記憶装置106としては、例えば、例えば、HDD(Hard Disk Drive)等の磁気ディスクを含む装置、eMMC(embedded Multi Media Card)、SSD(Solid State Drive)等のフラッシュメモリを含む装置等を用いることができる。
【0039】
図1には、記憶装置106に記憶されるプログラムの例として、要素間計算用プログラムが図示されている。また、記憶装置106に記憶されるデータの例として、要素の測定結果データが図示されている。
【0040】
表示装置108は、文字情報、画像、GUI(Graphical User Interface)等を表示するための装置である。表示装置108としては、例えば、液晶ディスプレイを用いることができる。表示装置108には、測定機本体10から取得した測定値等のデータ等を表示させることができる。
【0041】
[測定メニューの具体例]
次に、本実施形態に係る三次元測定機1において、ワークの測定及び要素間計算を行うための測定メニューの具体例について説明する。
【0042】
以下では、図2に示すワークW1の複数の要素の測定を行う例について説明する。図2は、測定対象のワークを示す一部平面図である。図2に示す例では、ワークW1の表面S1(平面)に、要素として3つの円C1からC3が図示されている。
【0043】
図3から図10は、要素間計算用プログラムによって生成される測定メニュー(GUI)の例を示す図である。各測定メニューに示すボタンは、操作装置104としてのタッチパネルによりタッチ操作できるようにしてもよいし、操作装置104としてのキーボードのボタン(例えば、ファンクションキー)又はマウスジェスチャーと対応づけられていてもよい。
【0044】
(初回測定時)
まず、三次元測定機1における初回測定時の画面遷移について説明する。
【0045】
図3は、三次元測定を行う場合の要素を選択するためのメニューを示している。本実施形態では、要素の種類を特定するための符号(文字、数字、又はこれらの組み合わせ)を割り当てておいて、要素間計算用プログラムでは、要素の種類に割り当てた符号を用いて、各要素の演算及び表示を行うようにしてもよい。例えば、点にa、直線にb、円にc、部分円にd、球にe、平面にf、円筒にg、円錐にhを割り当てて、処理装置102が要素の種類をこれらの符号により認識するようにしてもよい。
【0046】
コンピュータ100の操作装置104を用いてプロービングのボタン(図3参照)が操作されると、処理装置102は、測定機本体10に対してプロービング信号を送信する。測定機本体10は、プロービング信号を受信すると、プローブ22を用いてワークW1の要素の測定を開始する。これにより、ワークW1に対する測定座標(以下、XYZ三次元直交座標(図2参照)とする。)の設定等の測定の準備処理が行われる。
【0047】
ユーザは、測定機本体10を操作して、定盤18に載置されて固定されたワークW1の測定を行う。ワークW1の測定結果は、コントローラ110を介してコンピュータ100に送信される。
【0048】
処理装置102(測定結果取得部)は、三次元測定機1によって測定された要素の結果を取得(受信)して、記憶装置106に測定結果データとして記憶させる。また、処理装置102は、測定結果データを表示装置108に表示させる。これにより、図4の測定結果表示画面に示すように、ワークW1の要素ごとの測定結果が表示装置108の表示画面に表示される。
【0049】
図4に示す例では、要素の測定結果として、点の測定結果PNT1、直線の測定結果LIN1、LIN2及びLIN3、平面の測定結果PLN1並びに円の測定結果CIR1、CIR2及びCIR3が図示されている。図4に示す例では、各測定結果に対応する代表点の座標が示されている。
【0050】
図4に示す例では、直線LIN1、LIN2及びLIN3は、異なる直線を1回ずつ測定した測定結果を示している。そして、図4におけるCIR1、CIR2及びCIR3は、それぞれ図2に示す円C1、C2及びC3の中心の座標を1回ずつ測定した測定結果を示している。
【0051】
なお、同一の種類の要素を複数回測定する場合も考えられる。例えば、図2に示す円C1を3回測定した場合、円C1の測定結果をCIR1、CIR2及びCIR3として表示してもよい。また、円C1を1回、円C2を2回測定した場合には、円C1の測定結果をCIR1、円C2の測定結果をCIR2及びCIR3として表示してもよい。この場合、複数回測定した要素については、同一の要素の測定結果であることを示す表示、例えば、円等の要素を識別するための識別子を付してもよい。
【0052】
次に、ユーザが操作装置104を用いて測定の終了(ターミネート)の指示を入力すると、処理装置102は、測定機本体10に対してターミネート信号を送信する。測定機本体10は、ターミネート信号を受信すると、ワークW1の測定を終了し、測定結果の記憶等の後処理を行う。
【0053】
次に、図4(測定結果表示画面)及び図5(項目選択画面)において項目の選択が行われる。図4及び図5の左側のボタンのうち「要素作成」は、例えば、複数の要素の測定結果を用いて新たな要素の計算(交差要素、対称要素、測定点リコール、再計算等)を行うためのボタンである。また、「評価」は、例えば、2点間の距離、若しくは、2つの直線同士、平面同士又は直線と平面との間における直角度の評価を行うためのボタンである。
【0054】
図4(測定結果表示画面)において要素作成のボタンが操作されると、図5に示す要素作成に関する項目選択画面に移行する。以下では、図5において、測定点リコールが選択された例について説明する。図5では、選択された要素作成のボタンと測定点リコールのボタンが、選択されていないボタンとは異なる色で示されている。
【0055】
図5(項目選択画面)において測定点リコールのボタンが操作されると、図6に示す測定点リコールのための要素選択画面に移行する。要素選択画面では、同図右側に示されたスクロールバーを操作しながら、測定点リコールにおいて使用する要素の選択を行うことが可能となっている。図6に示す例では、3つの円の測定結果が選択されて、非選択の要素とは異なる色で示されている。また、図6に示す例では、選択された測定結果に対して、選択された順番に応じた番号が付与されて表示されている。
【0056】
次に、図6において要素の選択後に次へボタンが操作されると、図7に遷移し、要素間計算の結果が表示される。処理装置102(要素間計算部)は、図6において選択された要素の測定結果CIR1、CIR2及びCIR3を記憶装置106に記憶させる。また、測定結果CIR1、CIR2及びCIR3から作成された要素の計算結果、例えば、各円の中心を通る円C10(図2参照)のデータを記憶装置106に記憶させる。
【0057】
(2回目以降の測定時)
次に、三次元測定機1における2回目以降の測定時の画面遷移について説明する。
【0058】
プロービングの開始から終了までは、初回測定時と同様の操作にしたがって操作メニューが遷移する(図3及び図4参照)。
【0059】
プロービングが終了すると、図8に示すように、処理装置102(表示制御部)は、測定結果表示画面に選択候補表示画面D12を表示装置108に表示させる。選択候補表示画面D12には、過去の測定時に選択された項目及び要素に対応する操作部材(例えば、ボタン)が表示される。処理装置102(受付部)は、この操作部材を介して要素間計算の項目及び要素の選択を受け付ける。図8に示す例では、上記の初回測定時において選択された測定点リコールのボタンが表示されている。そして、測定結果表示領域D10において、初回の測定点リコールで使用された要素の種類及び数に応じて、円の測定結果が3つ自動的に選択されている。図8では、円の測定結果CIR1、CIR2及びCIR3の色の変化により、これらの測定結果が自動的に選択されたことが示されている。
【0060】
ユーザは、初回測定時と同様に、3つの円の測定結果を用いて測定点リコールを行う場合には、選択候補表示画面D12に表示された測定点リコールのボタンを操作することにより、測定点リコールを実行することができる。
【0061】
なお、選択候補表示画面D12に表示されるボタンには、要素間計算に必要な要素の種類及び個数(例えば、円:3つ)を示す情報(例えば、符号等)の表示を付してもよい。
【0062】
三次元測定機1において測定及び要素間計算が繰り返し行われると、図9に示すように、三次元測定機1において過去に行われた要素間計算の項目を示すボタンが複数表示される。
【0063】
図9に示す例では、測定点リコールに加えて、2点間の距離及び直角度のボタンが示されている。そして、各ボタンに対応する要素間計算に使用される要素の種類及び数に応じて、測定結果表示領域D10において、要素の測定結果が自動的に選択されている。選択候補表示画面D12のボタンと、自動的に選択された測定結果とは、同じ色で表示されている。図9に示す例では、2点間の距離のボタンと2点の測定結果(PNT1及びPNT2)とが濃い灰色で示されており、直角度のボタンと直線の測定結果(LIN1)及び平面の測定結果(PLN2)とが薄い灰色で示されている。
【0064】
ここで、選択候補表示画面D12に表示された要素間計算の項目に用いる要素の種類及び数と、測定結果表示領域D10に表示された要素の種類及び数が異なる場合には、測定結果が自動的に選択されないようにしてもよい。
【0065】
また、選択候補表示画面D12に表示された要素間計算の項目に用いる要素の数よりも、測定結果表示領域D10に表示された要素の数が多い場合には、選択する要素の候補が強調表示されるようにしてもよい。例えば、点の測定結果が3以上ある場合に、2点間の距離のボタンが押された場合に、すべての点の測定結果が強調表示されるようにしてもよい。これにより、ユーザは、要素間計算に必要な測定結果を容易に選択することが可能になる。
【0066】
また、選択候補表示画面D12に表示された要素間計算の項目に用いる要素の数よりも、測定結果表示領域D10に表示された要素の数が少ない場合には、要素の測定結果が不足していることを報知し、追加の測定を行うように促すメッセージを表示装置108に表示させて、要素間計算を終了するようにしてもよい。
【0067】
また、処理装置102は、選択候補表示画面D12に表示された要素間計算の項目に用いる要素のボタンが選択操作されてからの経過時間及び選択操作された選択回数(選択頻度)に基づいて、ボタンを表示させるかどうかを決定するようにしてもよい。また、経過時間及び選択回数の両方に基づいて、選択候補の重要度を計算し、計算した重要度に応じて、選択候補表示画面D12に表示する選択候補を選択するようにしてもよい。図10に示す例は、このボタンの選択機能により、直角度のボタンが削除された例を示している。
【0068】
なお、選択候補表示画面D12では、要素間計算の項目を示すボタンは、一覧性を維持するため、例えば、一画面に収まるようにリサイズされてもよいし、スクロールバーを設けてスクロール表示可能としてもよい。また、選択候補表示画面D12では、要素間計算の項目を示すボタンは、例えば、使用頻度又は最新の使用日時に応じてソートされるようにしてもよい。
【0069】
本実施形態に係る三次元測定機1及びその三次元測定結果の処理方法は、上記した測定点リコール等に限定されず、上記以外の要素間計算、例えば、測定結果を用いた要素作成及び測定結果の評価のために用いることが可能である。要素作成としては、例えば、交差要素、対称要素、測定点リコール、再計算、測定平面投影、傾斜面投影、回転投影、最大最少点、切口中心円及び垂線の計算等にも、本発明を適用することが可能である。また、評価としては、2点間の距離、2点間の座標差、最短最長距離、位置度、同心度、同軸度(突出公差)、平行度(突出公差)、及び直角度(突出公差)の評価等にも、本発明を適用することが可能である。
【0070】
[測定及び要素間計算の処理の流れ]
次に、測定及び要素間計算の処理について、図11及び図12を参照して説明する。図11は、測定及び要素間計算の処理の流れを示すフローチャートである。
【0071】
(初回測定時)
まず、測定機本体10によりワークの要素測定が行われる(ステップS10)。要素測定が終了(ターミネート)すると、処理装置102は、三次元測定機1によって測定された要素の結果を受信して、記憶装置106に測定結果データとして記憶させる。そして、初回の測定時には、選択候補がないため(ステップS12のNo)、ステップS14に進む。
【0072】
次に、処理装置102は、測定結果データを表示装置108に表示させる(図4参照)。そして、処理装置102は、項目選択画面(図5参照)を表示装置108に表示させ、ユーザからの項目の選択操作を受け付ける(ステップS14)。
【0073】
次に、処理装置102は、ユーザからの項目の選択操作を受け付けると、要素選択画面(図6参照)を表示装置108に表示させ、ユーザからの要素の選択操作を受け付ける(ステップS16)。
【0074】
次に、処理装置102は、ステップS14及びS16における項目及び要素の選択結果に応じて要素間計算を行って、その結果(例えば、要素作成の結果、又は要素間計算に基づく直角度等の評価結果)を表示装置108に表示させる(ステップS26)。そして、処理装置102は、要素間計算の結果を記憶装置106に記憶させる(ステップS28)。
【0075】
(2回目以降の測定時)
次に、2回目以降の測定時について説明する。
【0076】
まず、測定機本体10によりワークの要素測定が行われる(ステップS10)。要素測定が終了(ターミネート)すると、処理装置102は、三次元測定機1によって測定された要素の結果を受信して、記憶装置106に測定結果データとして記憶させる。
【0077】
次に、処理装置102は、選択候補表示画面D12(図8から図10参照)を表示装置108に表示させ(ステップS18)、ユーザからの選択候補の選択操作を受け付ける(ステップS20)。なお、表示する選択候補の選択については、図12を参照して後述する。
【0078】
ステップS20において選択した要素間計算の項目に用いる要素の数よりも、ステップS10において測定された要素の数が多い場合には(ステップS22のNo、かつステップS24のNo)、処理装置102は、要素選択画面(図6参照)を表示装置108に表示させ、要素の選択を受け付ける(ステップS24)。
【0079】
一方、ステップS20において選択した要素間計算の項目に用いる要素の数と、ステップS10において測定された要素の数が一致する場合には(ステップS22のYes)、ステップS24の要素選択画面をスキップして、ステップS26に進む。
【0080】
また、ステップS20において選択した要素間計算の項目に用いる要素の数よりも、ステップS10において測定された要素の数が多い場合には(ステップS22のNo、かつステップS24のYes)、要素の測定結果が不足していることを報知し、追加の測定を行うように促すメッセージを表示装置108に表示させて、要素間計算を終了する。
【0081】
次に、処理装置102は、ステップS14及びS16における項目及び要素の選択結果に応じて要素間計算を行って、その結果を表示装置108に表示させる(ステップS26)。そして、処理装置102は、要素間計算の結果を記憶装置106に記憶させる(ステップS28)。
【0082】
(選択候補表示画面)
次に、ステップS18において表示する選択候補の選択について、図12を参照して説明する。図12は、選択候補の表示画面の生成処理の流れを示すフローチャートである。
【0083】
選択候補表示画面D12を生成する場合、処理装置102は、まず、過去に選択された要素間計算の項目並びに要素の種類及び数の履歴を記憶装置106から選択候補として取得する(ステップS180)。
【0084】
次に、処理装置102は、各選択候補の最新の選択日時を取得し(ステップS182)、各選択候補の最新の選択日時に基づいて、選択候補表示画面D12に表示する選択候補を選択する(ステップS184)。ステップS184では、処理装置102は、例えば、各選択候補の最新の選択日時からの経過時間が所定時間以内の選択候補を、選択候補表示画面D12に表示する選択候補として選択する。そして、処理装置102は、ステップS184において選択した選択候補を選択候補表示画面D12に表示させる(ステップS186)。
【0085】
なお、本実施形態では、最新の選択日時からの経過時間に応じて、選択候補表示画面D12に表示する選択候補を選択するようにしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、選択候補の選択回数(選択頻度)に応じて、選択候補表示画面D12に表示する選択候補を選択するようにしてもよい。また、経過時間及び選択回数の両方に基づいて、選択候補の重要度を計算し、計算した重要度に応じて、選択候補表示画面D12に表示する選択候補を選択するようにしてもよい。
【0086】
また、経過時間、選択回数又は重要度に応じて、選択候補表示画面D12における表示の順序を変更するようにしてもよい。例えば、選択候補表示画面D12において、経過時間が短い、選択回数が多い又は重要度が高い順に、選択候補のボタンを並べ替えるようにしてもよい。
【0087】
本実施形態によれば、選択候補表示画面D12に過去に行われた要素間計算に対応する選択候補のボタンを設けることにより、要素間計算の種類並びに要素間計算に用いる要素の種類及び数の選択のための操作手順を簡略化することが可能になる。さらに、本実施形態によれば、選択候補が選択操作されてからの経過時間又は選択回数に基づいて、選択候補表示画面D12に過去に行われた要素間計算に対応する選択候補のボタンの表示を減らすことにより、選択候補表示画面D12にユーザの利用状況を反映させることが可能になる。
【符号の説明】
【0088】
1…三次元測定機、10…測定機本体、12…ヘッド、14…ビーム(梁)、16…コラム(支柱)、18…定盤、20…基台、22…プローブ、24…スタイラス、26…測定子、100…コンピュータ、102…処理装置、104…操作装置、106…記憶装置、108…表示装置、110…コントローラ
図1
図2
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図4
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図6
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図10
図11
図12