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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-29
(45)【発行日】2022-10-07
(54)【発明の名称】発光素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/32 20100101AFI20220930BHJP
   H01L 33/04 20100101ALI20220930BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20220930BHJP
【FI】
H01L33/32
H01L33/04
H01L21/205
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020075319
(22)【出願日】2020-04-21
(65)【公開番号】P2021174813
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2021-07-12
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】林 斉一
【審査官】右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-128502(JP,A)
【文献】特開2005-019874(JP,A)
【文献】特開2015-149342(JP,A)
【文献】特開2005-277401(JP,A)
【文献】特開2007-214548(JP,A)
【文献】特開2012-209488(JP,A)
【文献】特開2006-344930(JP,A)
【文献】特開2012-248765(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0207035(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第103296045(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00 - 33/64
H01S 5/00 - 5/50
H01L 21/205
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
n型不純物を含む第1n型窒化物半導体層を形成する工程と、
前記第1n型窒化物半導体層の上に、第1発光層を形成する工程と、
炉内にガリウムを含む第1流量のガスと、窒素を含むガスとを導入し、前記第1発光層の上に、アンドープの第1窒化物半導体層を形成する工程と、
前記第1窒化物半導体層の上に、第1p型窒化物半導体層を形成する工程と、
前記第1p型窒化物半導体層の上に、n型不純物を含み、前記第1n型窒化物半導体層よりも高い不純物濃度を有する窒化物半導体層からなるn型中間層を形成する工程と、
前記n型中間層の上に、第2n型窒化物半導体層を形成する工程と、
前記第2n型窒化物半導体層の上に、第2発光層を形成する工程と、
前記炉内にガリウムを含む第2流量のガスと、窒素を含むガスとを導入し、前記第2発光層の上に、アンドープの第2窒化物半導体層を形成する工程と、
前記第2窒化物半導体層の上に、第2p型窒化物半導体層を形成する工程と、
を備え、
前記第1流量は、前記第2流量の0.125倍以上0.5倍以下である発光素子の製造方法。
【請求項2】
前記第1p型窒化物半導体層は、p型不純物としてマグネシウムを含み、
前記第1p型窒化物半導体層の不純物濃度は、5×1019/cm以上2×1021/cm以下である請求項1に記載の発光素子の製造方法。
【請求項3】
前記n型中間層は、n型不純物としてシリコンを含み、
前記n型中間層の不純物濃度は、1×1020/cm以上5×1021/cm以下である請求項1又は2に記載の発光素子の製造方法。
【請求項4】
前記第1発光層を形成する工程において、前記炉内にガリウムを含む第3流量のガスと、窒素を含むガスとを導入し、
前記第2発光層を形成する工程において、前記炉内にガリウムを含む第4流量のガスと、窒素を含むガスとを導入し、
前記第3流量は、前記第4流量と同じである請求項1~3のいずれか1つに記載の発光素子の製造方法。
【請求項5】
前記第1p型窒化物半導体層を形成する工程において、前記第1窒化物半導体層に接して前記第1p型窒化物半導体層を形成する請求項1~4のいずれか1つに記載の発光素子の製造方法。
【請求項6】
前記第1窒化物半導体層及び前記第2窒化物半導体層は、窒化ガリウムからなる請求項1~5のいずれか1つに記載の発光素子の製造方法。
【請求項7】
前記第1窒化物半導体層を形成するときに前記炉内に導入される前記ガリウムを含むガス、および前記第2窒化物半導体層を形成するときに前記炉内に導入される前記ガリウムを含むガスは、トリメチルガリウムガスまたはトリエチルガリウムガスである請求項1~6のいずれか1つに記載の発光素子の製造方法。
【請求項8】
前記第1窒化物半導体層及び前記第2窒化物半導体層の膜厚は、50nm以上100nm以下である請求項1~7のいずれか1つに記載の発光素子の製造方法。
【請求項9】
前記第1発光層を形成する工程の後、前記第1発光層上に第1pクラッド層を形成する工程をさらに有し、
前記第1窒化物半導体層を形成する工程において、前記第1pクラッド層に接して前記第1窒化物半導体層を形成する請求項1~8のいずれか1つに記載の発光素子の製造方法。
【請求項10】
前記第2発光層を形成する工程の後、前記第2発光層上に第2pクラッド層を形成する工程をさらに有し、
前記第2窒化物半導体層を形成する工程において、前記第2pクラッド層に接して前記第2窒化物半導体層を形成する請求項1~9のいずれか1つに記載の発光素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、積層半導体中に積層された2つの活性領域を有し、その2つの活性領域の間にトンネル接合を形成する発光装置が開示されている。このような発光装置においては、トンネル接合を構成する高い不純物濃度のn型層及びp型層の結晶性を良好にしつつトンネル接合を形成することが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-128502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、半導体層の結晶性を良好にできる発光素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、発光素子の製造方法は、n型不純物を含む第1n型窒化物半導体層を形成する工程と、前記第1n型窒化物半導体層の上に、第1発光層を形成する工程と、炉内にガリウムを含む第1流量のガスと、窒素を含むガスとを導入し、前記第1発光層の上に、アンドープの第1窒化物半導体層を形成する工程と、前記第1窒化物半導体層の上に、第1p型窒化物半導体層を形成する工程と、前記第1p型窒化物半導体層の上に、n型不純物を含み、前記第1n型窒化物半導体層よりも高い不純物濃度を有する窒化物半導体層からなるn型中間層を形成する工程と、前記n型中間層の上に、第2n型窒化物半導体層を形成する工程と、前記第2n型窒化物半導体層の上に、第2発光層を形成する工程と、前記炉内にガリウムを含む第2流量のガスと、窒素を含むガスとを導入し、前記第2発光層の上に、アンドープの第2窒化物半導体層を形成する工程と、前記第2窒化物半導体層の上に、第2p型窒化物半導体層を形成する工程と、を備える。前記第1流量は、前記第2流量よりも少ない。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一態様によれば、半導体層の結晶性を良好にできる発光素子の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施形態の発光素子の模式断面図である。
図2】本発明の一実施形態の発光素子の製造方法を示す模式断面図である。
図3】本発明の一実施形態の発光素子の製造方法を示す模式断面図である。
図4】本発明の一実施形態の発光素子の製造方法を示す模式断面図である。
図5】本発明の一実施形態の発光素子の製造方法を示す模式断面図である。
図6】本発明の一実施形態の発光素子の製造方法を示す模式断面図である。
図7】本発明の一実施形態の発光素子の製造方法を示す模式断面図である。
図8】本発明の一実施形態の発光素子の製造方法を示す模式断面図である。
図9】本発明の一実施形態の発光素子の製造方法を示す模式断面図である。
図10】本発明の一実施形態の発光素子の製造方法を示す模式断面図である。
図11】本発明の一実施形態の発光素子の製造方法を示す模式断面図である。
図12】本発明の一実施形態の発光素子の製造方法を示す模式断面図である。
図13】本発明の一実施形態の発光素子の製造方法を示す模式断面図である。
図14A】第2窒化物半導体層を形成するときのガリウムを含むガスの第2流量に対する第1窒化物半導体層を形成するときのガリウムを含むガスの第1流量の比と、出力Poとの関係を表すグラフである。
図14B】第2窒化物半導体層を形成するときのガリウムを含むガスの第2流量に対する第1窒化物半導体層を形成するときのガリウムを含むガスの第1流量の比と、駆動電圧Vfとの関係を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態について説明する。なお、各図面中、同じ構成には同じ符号を付している。
【0009】
図1は、本発明の一実施形態の発光素子1の模式断面図である。
【0010】
本実施形態の発光素子1は、基板10と、基板10上に設けられた半導体積層体100と、n側電極51と、p側電極52とを有する。
【0011】
半導体積層体100は、窒化物半導体からなる複数の半導体層が積層された積層体である。本明細書において「窒化物半導体」とは、InAlGa1-x-yN(0≦x≦1,0≦y≦1,x+y≦1)なる化学式において組成比x及びyをそれぞれの範囲内で変化させた全ての組成の半導体を含むものとする。
【0012】
半導体積層体100は、基板10上に設けられた第1積層部11と、第1積層部11上に設けられた第2積層部12とを有する。
【0013】
基板10の材料は、例えば、サファイア、シリコン、SiC、GaNなどである。半導体積層体100として窒化物半導体からなる半導体層を用いる場合、基板10の材料は、サファイアやGaNを用いることが好ましい。
【0014】
第1積層部11は、基板10上に設けられた第1n型窒化物半導体層21と、第1n型窒化物半導体層21上に設けられた第1発光層22と、第1発光層22上に設けられた第1pクラッド層23と、第1pクラッド層23上に設けられた第1窒化物半導体層24と、第1窒化物半導体層24上に設けられた第1p型窒化物半導体層25とを有する。
【0015】
第1n型窒化物半導体層21は、窒化ガリウム(GaN)を含み、さらにn型不純物として例えばシリコン(Si)がドープされている。第1n型窒化物半導体層21は、その他に、インジウム(In)、アルミニウム(Al)を含んでいてもよい。また、第1n型窒化物半導体層21には、アンドープのGaNからなる半導体層が含まれていてもよい。ここで、アンドープの層とは、導電性を制御するための不純物を意図的にドープするための原料ガス(例えばSiやMgを含むガス)を用いることなく形成された層であり、プロセス上不可避的に混入される不純物を含む場合もある。例えば、第1窒化物半導体層24の不純物濃度は、1×1018/cm以下である。
【0016】
第1発光層22は、第1n型窒化物半導体層21と第1pクラッド層23との間に設けられている。第1発光層22は、例えば、複数の井戸層と複数の障壁層とを有する多重量子井戸構造を有する。複数の井戸層には、例えば、Inを含有するInGaNを用いることができる。複数の障壁層には、例えば、GaNを用いることができる。
【0017】
第1pクラッド層23および第1p型窒化物半導体層25は、窒化ガリウム(GaN)を含み、さらにp型不純物として例えばマグネシウム(Mg)がドープされている。第1pクラッド層23および第1p型窒化物半導体層25は、その他に、インジウム(In)、アルミニウム(Al)を含んでいてもよい。
【0018】
第1p型窒化物半導体層25のp型不純物濃度は、第1pクラッド層23のp型不純物濃度よりも高い。例えば、Mgをp型不純物として含む第1p型窒化物半導体層25のMg濃度は、5×1019/cm以上2×1021/cm以下である。第1p型窒化物半導体層25は、第1pクラッド層23よりも高濃度のp型不純物を含む。
【0019】
第1窒化物半導体層24は、第1pクラッド層23と第1p型窒化物半導体層25との間に設けられている。第1窒化物半導体層24は、アンドープ層である。
【0020】
第1窒化物半導体層24は、例えば、窒化ガリウム(GaN)からなる。第1窒化物半導体層24は、その他に、インジウム(In)、アルミニウム(Al)を含んでいてもよい。
【0021】
第2積層部12は、第1p型窒化物半導体層25上に設けられたn型中間層26と、n型中間層26上に設けられた第2n型窒化物半導体層27と、第2n型窒化物半導体層27上に設けられた第2発光層28と、第2発光層28上に設けられた第2pクラッド層29と、第2pクラッド層29上に設けられた第2窒化物半導体層30と、第2窒化物半導体層30上に設けられた第2p型窒化物半導体層31とを有する。
【0022】
n型中間層26および第2n型窒化物半導体層27は、窒化ガリウム(GaN)を含み、さらにn型不純物として例えばシリコン(Si)がドープされている。第2n型窒化物半導体層27は、その他に、インジウム(In)、アルミニウム(Al)を含んでいてもよい。
【0023】
n型中間層26のn型不純物濃度は、第2n型窒化物半導体層27のn型不純物濃度よりも高い。例えば、Siをn型不純物として含むn型中間層26のSi濃度は、1×1020/cm以上5×1021/cm以下である。n型中間層26は、第2n型窒化物半導体層27よりも高濃度のn型不純物を含む。
【0024】
第2発光層28は、第2n型窒化物半導体層27と第2pクラッド層29との間に設けられている。第2発光層28は、例えば、複数の井戸層と複数の障壁層とを有する多重量子井戸構造を有する。第2発光層28における井戸層および障壁層には、例えば、上述した第1発光層22と同様の半導体層を用いる。
【0025】
第2pクラッド層29および第2p型窒化物半導体層31は、窒化ガリウム(GaN)を含み、さらにp型不純物として例えばマグネシウム(Mg)がドープされている。第2pクラッド層29および第2p型窒化物半導体層31は、その他に、インジウム(In)、アルミニウム(Al)を含んでいてもよい。
【0026】
第2p型窒化物半導体層31のp型不純物濃度は、第2pクラッド層29のp型不純物濃度よりも高い。
【0027】
第2窒化物半導体層30は、第2pクラッド層29と第2p型窒化物半導体層31との間に設けられている。第2窒化物半導体層30は、アンドープ層である。例えば、第2窒化物半導体層30の不純物濃度は、1×1018/cm以下である。第2窒化物半導体層30は、例えば、窒化ガリウム(GaN)からなる。第2窒化物半導体層30は、その他に、インジウム(In)、アルミニウム(Al)を含んでいてもよい。
【0028】
第2p型窒化物半導体層31上にp側電極52が設けられ、p側電極52は第2p型窒化物半導体層31に電気的に接続している。
【0029】
第1n型窒化物半導体層21は、第1発光層22、第1pクラッド層23、第1窒化物半導体層24、第1p型窒化物半導体層25、および第2積層部12が設けられていないnコンタクト面21aを有する。そのnコンタクト面21a上にn側電極51が設けられ、n側電極51は第1n型窒化物半導体層21に電気的に接続している。
【0030】
p側電極52とn側電極51との間に、順方向電圧を印加する。このとき、第1積層部11の第1発光層22には順方向電圧が印加され、第1発光層22にホールおよび電子が供給されることで第1発光層22が発光する。第2積層部12の第2発光層28にも順方向電圧が印加され、第2発光層28にホールおよび電子が供給されることで第2発光層28が発光する。
【0031】
第1発光層22の発光ピーク波長、および第2発光層28の発光ピーク波長は、例えば、430nm以上540nm以下である。第1発光層22および第2発光層28は、例えば、青色光や緑色光を発する。第1発光層22上に第2発光層28を積層することで、1つの発光層を有する発光素子に比べて、1つの発光素子の単位面積当たりの出力を高くすることができる。第1発光層22の発光ピーク波長と、第2発光層28の発光ピーク波長とは異なっていてもよい。
【0032】
p側電極52に正電位が、n側電極51にp側電極52よりも低い電位(例えば負電位)が印加されたとき、第1積層部11の第1p型窒化物半導体層25と、第2積層部12のn型中間層26との間には逆方向電圧が印加されることになる。そのため、第1p型窒化物半導体層25とn型中間層26との間の電流はトンネル効果を利用する。つまり、第1p型窒化物半導体層25の価電子帯に存在する電子を、n型中間層26の伝導帯にトンネリングさせることで電流を流す。
【0033】
このようなトンネル効果を得るために、高濃度でp型不純物がドープされた第1p型窒化物半導体層25と、高濃度でn型不純物がドープされたn型中間層26とによりpn接合を形成する。そして、第1p型窒化物半導体層25とn型中間層26とが形成する空乏層の幅を狭くする。このような構造とすることで、第1p型窒化物半導体層25の価電子帯の電子が、第1p型窒化物半導体層25とn型中間層26とが形成する空乏層をトンネリングし、n型中間層26の伝導帯に移動させることができる。第1p型窒化物半導体層25とn型中間層26とが形成する空乏層の幅を狭くすることで電子のトンネリングが効率よく行われ、低濃度でp型不純物がドープされた第1p型窒化物半導体層25と低濃度でn型不純物がドープされたn型中間層26とを用いる場合に比べて、発光素子の駆動電圧Vfを低くすることができる。また、第1p型窒化物半導体層25及びn型中間層26には、高濃度の不純物をドープする必要があるため、下地層となる半導体層の表面状態は良好であることが好ましい。
【0034】
例えば、Siをn型不純物として含むn型中間層26のSi濃度は、1×1020/cm以上5×1021/cm以下である。Mgをp型不純物として含む第1p型窒化物半導体層25のMg濃度は、5×1019/cm以上2×1021/cm以下である。このような第1p型窒化物半導体層25とn型中間層26とが形成する空乏層の幅は、例えば、5nm以上8nm以下である。
【0035】
本実施形態の発光素子1は、半導体積層体100に第1発光層22と第2発光層28の2つの発光層が積層されているため、発光層が1つである発光素子に比べて単位面積当たりの出力を高くすることできる。
【0036】
図2図13は、本実施形態の発光素子1の製造方法を示す模式断面図である。半導体積層体100の前述した各層は、圧力および温度の調整が可能な炉内においてMOCVD(metal organic chemical vapor deposition)法により、基板10上にエピタキシャル成長される。
【0037】
まず、図2に示すように、基板10上に、第1n型窒化物半導体層21が形成される。
【0038】
図3に示すように、第1n型窒化物半導体層21上に、第1発光層22が形成される。第1発光層22は、第1n型窒化物半導体層21に接する。
【0039】
図4に示すように、第1発光層22上に、第1pクラッド層23が形成される。第1pクラッド層23は、第1発光層22に接する。
【0040】
図5に示すように、第1pクラッド層23上に、第1窒化物半導体層24が形成される。第1窒化物半導体層24は、第1pクラッド層23に接する。
【0041】
図6に示すように、第1窒化物半導体層24上に、第1p型窒化物半導体層25が形成される。第1p型窒化物半導体層25は、第1窒化物半導体層24に接する。
【0042】
図7に示すように、第1p型窒化物半導体層25上に、n型中間層26が形成される。n型中間層26は、第1p型窒化物半導体層25に接する。
【0043】
図8に示すように、n型中間層26上に、第2n型窒化物半導体層27が形成される。第2n型窒化物半導体層27は、n型中間層26に接する。
【0044】
図9に示すように、第2n型窒化物半導体層27上に、第2発光層28が形成される。第2発光層28は、第2n型窒化物半導体層27に接する。
【0045】
図10に示すように、第2発光層28上に、第2pクラッド層29が形成される。第2pクラッド層29は、第2発光層28に接する。
【0046】
図11に示すように、第2pクラッド層29上に、第2窒化物半導体層30が形成される。第2窒化物半導体層30は、第2pクラッド層29に接する。
【0047】
図12に示すように、第2窒化物半導体層30上に、第2p型窒化物半導体層31が形成される。第2p型窒化物半導体層31は、第2窒化物半導体層30に接する。このようにして、基板10上に半導体積層体100が形成される。
【0048】
この後、半導体積層体100の一部を除去して、図13に示すように、第1n型窒化物半導体層21の一部を露出させ、nコンタクト面21aを形成する。
【0049】
その後、図1に示すように、第2p型窒化物半導体層31上にp側電極52が形成され、nコンタクト面21a上にn側電極51が形成される。
【0050】
半導体積層体100の各層は、加熱された炉内に、キャリアガスと、ガリウムを含むガスと、窒素を含むガスとを導入することで形成される。p型の層を形成するときには、さらにp型不純物を含むガスが炉内に導入される。n型の層を形成するときには、さらにn型不純物を含むガスが炉内に導入される。
【0051】
キャリアガスは、例えば、窒素(N)ガス、水素(H)ガスである。ガリウムを含むガスは、例えば、TMG(トリメチルガリウム)ガス、またはTEG(トリエチルガリウム)ガスである。窒素を含むガスは、例えば、アンモニア(NH)ガスである。
【0052】
第1窒化物半導体層24は、トンネル接合を形成する第1p型窒化物半導体層25およびn型中間層26を形成する際の下地層となるため、結晶性が良好な状態で形成されることが好ましい。例えば、第1窒化物半導体層24の結晶性が良好であることで、積層後における第1窒化物半導体層24の表面に存在するVピットの径が小さい、あるいはVピットの発生数が少ない状態になっていることが好ましい。このような第1窒化物半導体層24の表面状態が得られる成膜条件で第1窒化物半導体層24を形成する。ここで、Vピットとは、半導体層に形成される転位に起因して半導体層の表面に生じる凹状のピットである。
【0053】
第1窒化物半導体層24は以下のようにして形成される。第1pクラッド層23を形成した後、炉内に、キャリアガスと、ガリウムを含むガスと、窒素を含むガスとを導入し、炉内を第1温度に加熱した状態で、第1pクラッド層23上に第1窒化物半導体層24が形成される。第1窒化物半導体層24として、例えば、アンドープのGaN層が形成される。第1窒化物半導体層24をアンドープのGaN層で形成することで、不純物をドープする、あるいはAlなどを混晶させて成長させることによる表面状態の悪化を抑制し、結晶性を良好にできる。第1窒化物半導体層24の膜厚は、例えば、50nm以上100nm以下である。
【0054】
第2窒化物半導体層30は、第2p型窒化物半導体層31を形成する際の下地層となるため、結晶性が良好な状態で形成されることが好ましい。例えば、第2窒化物半導体層30の結晶性が良好であることで、積層後における第2窒化物半導体層30の表面に存在するVピットの径が小さい、あるいはVピットの発生数が少ない状態になっていることが好ましい。このような第2窒化物半導体層30の表面状態が得られる成膜条件で第2窒化物半導体層30を形成する。
【0055】
第2窒化物半導体層30は以下のようにして形成される。第2pクラッド層29を形成した後、炉内に、キャリアガスと、ガリウムを含むガスと、窒素を含むガスとを導入し、炉内を、第1窒化物半導体層24を形成するときと同じ第1温度に加熱した状態で、第2pクラッド層29上に第2窒化物半導体層30が形成される。第2窒化物半導体層30として、例えば、アンドープのGaN層が形成される。第2窒化物半導体層30の膜厚は、例えば、50nm以上100nm以下である。第2窒化物半導体層30の膜厚は、例えば、第1窒化物半導体層24の膜厚と同じである。
【0056】
第1窒化物半導体層24を形成するときに炉内に導入されるガリウムを含むガスの第1流量は、第2窒化物半導体層30を形成するときに炉内に導入されるガリウムを含むガスの第2流量よりも少ない。第1流量は第2流量よりも少ないため、第1窒化物半導体層24の成膜速度は、第2窒化物半導体層30の成膜速度よりも遅い。第1窒化物半導体層24の成膜速度を遅くすることで、第1窒化物半導体層24の結晶性を改善することができる。これにより、第1窒化物半導体24を下地層として形成する第1p型窒化物半導体層25およびn型中間層26を結晶性よく形成できるため、発光素子の駆動電圧を低くすることできる。また、第2窒化物半導体層30を成膜する際、すでに形成されている第1発光層22及び第2発光層28への熱ダメージを考慮して、第2窒化物半導体層30の成膜速度は第1窒化物半導体層24の成膜速度より速くすることが好ましい。第1窒化物半導体層24の成膜速度は、例えば、2.5nm/min以上、5nm/min以下とすることができる。第2窒化物半導体層30の成膜速度は、例えば、7.5nm/min以上、10nm/min以下とすることができる。
【0057】
なお、第1発光層22を形成するときに炉内に導入されるガリウムを含むガスの第3流量は、第2発光層28を形成するときに炉内に導入されるガリウムを含むガスの第4流量と同じである。
【0058】
図14Aは、第2窒化物半導体層30を形成するときのガリウムを含むガスの第2流量に対する第1窒化物半導体層24を形成するときのガリウムを含むガスの第1流量の比と、発光素子1の出力(明るさ)Po[a.u.]との関係を表すグラフである。
【0059】
出力Poは、ウェーハの中心から外周に向かって半径方向に沿って10mmずつ離れた5カ所の測定値の平均を表す。
【0060】
図14Bは、第2窒化物半導体層30を形成するときのガリウムを含むガスの第2流量に対する第1窒化物半導体層24を形成するときのガリウムを含むガスの第1流量の比と、発光素子1の駆動電圧Vf[V]との関係を表すグラフである。図14A及び図14Bでは、第2窒化物半導体層30を形成するときのガリウムを含むガスの第2流量に対する第1窒化物半導体層24を形成するときのガリウムを含むガスの第1流量の比を(第1流量/第2流量)と示している。
【0061】
駆動電圧Vfは、ウェーハの中心から外周に向かって半径方向に沿って10mmずつ離れた5カ所の測定値の平均を表す。
【0062】
図14Aに示すように、第2流量に対する第1流量の比を1倍とした場合に比べて、第2流量に対する第1流量の比を0.75倍、0.5倍、0.25倍、0.125倍と低下させることで、出力Poが上昇する。これは、第1窒化物半導体層24の成膜速度を遅くすることで第1窒化物半導体層24の半導体層の結晶性を良好にできたためであると考えられる。そして、結晶性が良好である第1窒化物半導体層24の上に形成される第2発光層28の結晶性の悪化が抑制でき、出力Poが上昇するものと推測される。
【0063】
図14Bに示すように、第2流量に対する第1流量の比を1倍とした場合に比べて、第2流量に対する第1流量の比を0.75倍、0.5倍、0.25倍、0.125倍と低下させることで、駆動電圧Vfが低下する。これは、第1窒化物半導体層24の成膜速度を遅くすることで第1窒化物半導体層24の半導体層の結晶性を良好にできたためであると考えられる。そして、結晶性が良好である第1窒化物半導体層24の上に形成されるトンネル接合を形成する第1p型窒化物半導体層25およびn型中間層26の結晶性の悪化を抑制でき、駆動電圧Vfが低下するものと推測される。
【0064】
図14Aおよび図14Bの結果より、第1窒化物半導体層24を形成するときに炉内に導入されるガリウムを含むガスの第1流量は、第2窒化物半導体層30を形成するときに炉内に導入されるガリウムを含むガスの第2流量の0.125倍以上0.5倍以下であることが好ましい。半導体層の成膜速度を遅くすることによる各半導体層への熱ダメージを考慮すると、第1窒化物半導体層24を形成するときに炉内に導入されるガリウムを含むガスの第1流量は、第2窒化物半導体層30を形成するときに炉内に導入されるガリウムを含むガスの第2流量の0.25倍以上0.5倍以下であることがさらに好ましい。
【0065】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施形態及び実施例について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。本発明の上述した実施形態を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての形態も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものである。
【符号の説明】
【0066】
1…発光素子、10…基板、11…第1積層部、12…第2積層部、21…第1n型窒化物半導体層、22…第1発光層、23…第1pクラッド層、24…第1窒化物半導体層、25…第1p型窒化物半導体層、26…n型中間層、27…第2n型窒化物半導体層、28…第2発光層、29…第2pクラッド層、30…第2窒化物半導体層、31…第2p型窒化物半導体層、51…n側電極、52…p側電極、100…半導体積層体
図1
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図14A
図14B