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特許7149536カーボンナノチューブ膜、テラヘルツ波検出装置およびカーボンナノチューブ膜のPN接合形成方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-29
(45)【発行日】2022-10-07
(54)【発明の名称】カーボンナノチューブ膜、テラヘルツ波検出装置およびカーボンナノチューブ膜のPN接合形成方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/158 20170101AFI20220930BHJP
   C01B 32/159 20170101ALI20220930BHJP
   G01N 21/3581 20140101ALI20220930BHJP
   G01J 1/02 20060101ALI20220930BHJP
   H01L 29/06 20060101ALI20220930BHJP
【FI】
C01B32/158
C01B32/159
G01N21/3581
G01J1/02 C
H01L29/06 601N
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019517639
(86)(22)【出願日】2018-05-08
(86)【国際出願番号】 JP2018017797
(87)【国際公開番号】W WO2018207780
(87)【国際公開日】2018-11-15
【審査請求日】2021-04-16
(31)【優先権主張番号】P 2017093445
(32)【優先日】2017-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 1.応用物理学会、第77回応用物理学会秋季学術講演会 講演予稿集、講演番号:16a-B2-12、発行年月日:平成28年9月1日 2.第77回応用物理学会秋季学術講演会(16a-B2-12)、開催日:平成28年9月16日 3.応用物理学会、第77回応用物理学会秋季学術講演会 講演予稿集、講演番号:16a-B2-13、発行年月日:平成28年9月1日 4.第77回応用物理学会秋季学術講演会(16a-B2-13)、開催日:平成28年9月16日 5.掲載日:平成28年11月14日、http://www.nature.com/nphoton/index.html http://www.nature.com/nphoton/journal/v10/n12/full/nphoton.2016.209.html、 6.掲載日:平成28年11月9日、http://www.titech.ac.jp/news/index.html、http://www.titech.ac.jp/news/pdf/tokyotechpr20161109_kawano.pdf 7.東工大プレスリリース記者説明会、開催日:平成28年11月11日 8.掲載日:平成28年11月15日、http://www.titech.ac.jp/news/index.html 、http://www.titech.ac.jp/news/2016/036686.html 9.掲載日:平成28年11月17日、http://www.titech.ac.jp/news/index.html 、http://www.titech.ac.jp/english/news/2016/036652.html 10.日本経済新聞社、日経産業新聞の朝刊第8面、発行日:平成28年11月16日 11.日刊工業新聞社、日刊工業新聞の朝刊第25面、発行日:平成28年11月16日 12.電波新聞社、電波新聞の朝刊第3面、発行日:平成28年11月18日 13.科学新聞社、科学新聞の第4面、発行日:平成28年12月16日 14.掲載日:平成29年1月24日、http://techon.nikkeibp.co.jp/atcl/mag/15/320925/012300130/
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 15.掲載日:平成28年11月22日 http://www.fbi-award.jp/sentan/jusyou/index.html
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、産学共創基礎基盤研究プログラム、「ナノカーボン材料を用いた新規テラヘルツ検出器の開発」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける出願
(73)【特許権者】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】河野 行雄
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 大地
(72)【発明者】
【氏名】落合 雄輝
(72)【発明者】
【氏名】長宗 勉
【審査官】神野 将志
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-157942(JP,A)
【文献】HE, X. et al.,Carbon Nanotube Terahertz Detector,Nano Lett.,2014年,Vol. 14,pp.3953-3958
【文献】AKAMA, T. et al.,Photovoltaic features of densely-alignedpn junction semiconducting single-walled carbon nanotube films,第47回フラーレン・ナノチューブ・グラフェン総合シンポジウム講演要旨集,2014年,p. 53
【文献】KANEKO, T. et al., Biomolecule Encapsulated Carbon Nanotubes UsingNano Processing in Electrolyte Plasmas,ransactions of the MaterialsResearch Society of Japan,2008年,Vol. 33, No. 3,pp. 673-677
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/158
C01B 32/159
G01N 21/3581
G01J 1/02
H01L 29/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本のカーボンナノチューブにより形成されるカーボンナノチューブ膜であって、
前記カーボンナノチューブ膜内に、P型半導体領域、N型半導体領域、および、前記P型半導体領域と前記N型半導体領域とが接するPN接合部を備え、
前記カーボンナノチューブ膜内の前記N型半導体領域を形成する部位は、前記カーボンナノチューブ膜の表面において、前記カーボンナノチューブと、イオン液体との複合体により形成される
ことを特徴とするカーボンナノチューブ膜。
【請求項2】
前記カーボンナノチューブ膜内の前記PN接合部近傍にてテラヘルツ波を検出し得る構成のテラヘルツ検出装置に用いられる
ことを特徴とする請求項1に記載のカーボンナノチューブ膜。
【請求項3】
前記カーボンナノチューブ膜は、前記イオン液体が表面に接触した場合、前記イオン液体のカチオンを吸着する構造を有する
ことを特徴とする請求項1に記載のカーボンナノチューブ膜。
【請求項4】
前記カーボンナノチューブ膜は、有機系または水系の分散液を用いて成膜された
ことを特徴とする請求項1に記載のカーボンナノチューブ膜。
【請求項5】
複数の前記カーボンナノチューブは、50重量%以上が、単層カーボンナノチューブである
ことを特徴とする請求項1に記載のカーボンナノチューブ膜。
【請求項6】
前記N型半導体領域は、前記イオン液体のカチオンを有する
ことを特徴とする請求項1に記載のカーボンナノチューブ膜。
【請求項7】
前記PN接合部は、前記カーボンナノチューブ膜のフェルミ準位を操作する
ことを特徴とする請求項1に記載のカーボンナノチューブ膜。
【請求項8】
前記イオン液体は、N,N-ジエチル-N-メチル-N-(2-メトキシ)-N-エチル ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドDEME-TFSI、N-(2-メトキシエチル)-N-メチルピロリジニウム テトラフルオロボラートMEMP-BF4、N-(2-メトキシエチル)-N-メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドMEMP-TFSI、N,N-ジエチルメチル-N-(2-メトキシエチル)アンモニウム テトラフルオロボラートDEME-BF4、N,N-ジエチルメチル-N-(2-メトキシエチル)アンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドDEMP-TFSI、および脂肪族系イオン液体からなる群より選択される少なくとも一つである
ことを特徴とする請求項1に記載のカーボンナノチューブ膜。
【請求項9】
請求項1乃至請求項のいずれか一項に記載のカーボンナノチューブ膜と、
前記カーボンナノチューブ膜の2次元平面上に、前記PN接合部を挟んで対向配置された第1電極および第2電極と、を備える
ことを特徴とする記載のテラヘルツ波検出装置。
【請求項10】
カーボンナノチューブ膜の表面にイオン液体を付着する付着工程と、
前記カーボンナノチューブ膜の表面において、前記イオン液体のカチオンを前記カーボンナノチューブ膜中に吸着させてN型半導体領域を形成し、当該カーボンナノチューブ膜のP型半導体領域と前記N型半導体領域との界面でPN接合を形成する形成工程と、を含む
ことを特徴とするカーボンナノチューブ膜のPN接合形成方法。
【請求項11】
前記付着工程において、複数の前記イオン液体のうち、いずれかを選択して、
前記カーボンナノチューブ膜のフェルミ準位を操作する
ことを特徴とする請求項10に記載のカーボンナノチューブ膜のPN接合形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブ膜、テラヘルツ波検出装置およびカーボンナノチューブ膜のPN接合形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
テラヘルツ(THz)波は、周波数が0.1~30THz(1THz=1012Hz)程度の領域、すなわち波長が0.01mm~3mm程度のサブミリ波から遠赤外線領域の電磁波を意味する。
THz波は、エレクトロニクスによる電子制御の高周波極限であり、オプティクスやフォトニクスによる光制御の低エネルギー極限でもあるため、未開拓とされてきた。そのため、他周波数帯に比べて光源や検出器という基本的な素子が未開拓の現状にある。また、THz波の波長は可視光に比べて2、3桁長いことから、イメージングの空間分解能が低いという課題がある。
【0003】
特許文献1には、表面から一定の位置に2次元電子ガスが形成された半導体チップと、該半導体チップの表面に密着して設けられたカーボンナノチューブ、導電性のソース電極、ドレイン電極及びゲート電極とを備えるテラヘルツ光検出装置が記載されている。前記カーボンナノチューブは、半導体チップの表面に沿って延び、かつその両端部がソース電極とドレイン電極に接続され、前記ゲート電極は、カーボンナノチューブの側面から一定の間隔を隔てて位置する。さらに、テラヘルツ光検出装置は、前記ソース電極とドレイン電極の間に所定の電圧を印加し、その間のSD電流を検出するSD電流検出回路と、前記ソース電極とゲート電極の間に可変ゲート電圧を印加するゲート電圧印加回路と、前記半導体チップに可変磁場を印加する磁場発生装置と、を備える。
【0004】
また、テラヘルツ波の周波数を検出できる検出器として、例えば、非特許文献1~4がある。周波数を選択できる検出器は、非特許文献3,4である。従来のTHz検出器は、光子1個の吸収に対して伝導電子1個の励起となるため、必然的に検出感度に限界がある。
これに対して、非特許文献4には、カーボンナノチューブ(CNT:Carbon Nanotube)アレイ、グラフェン(graphene)、半導体ヘテロ界面2次元電子ガス(Two-Dimensional Electron Gas:2DEG)という低次元電子系の機能を利用した、新しいTHz波検出・分光・撮像技術が示されている。非特許文献4には、CNT量子ドットと半導体中2DEGが結合したハイブリッド構造を作製し、2次元電子中で励起されたキャリアをCNTによる高感度電荷センサで読み取る新機構が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-060284号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】Xiaowei He, Naoki Fujimura, J. Meagan Lloyd, Kristopher J. Erickson, A. Alec Talin, Qi Zhang, Weilu Gao, Qijia Jiang, Yukio Kawano, Robert H. Hauge, Francois Leonard and Junichiro Kono, "Carbon Nanotube Terahertz Detector", Nano Letters 14, 3953-3958 (2014).
【文献】Kristopher Erickson, Xiaowei He, A. Alec Talin, Bernice Mills, Robert H. Hauge, Takashi Iguchi, Naoki Fujimura, Yukio Kawano, Junichiro Kono, Francois Leonard, “Figure of Merit for Carbon Nanotube Photothermoelectric Detectors”, ACS Nano 9, 11618-11627 (2015)
【文献】Yukio Kawano, “Terahertz Response of Carbon Nanotubes and Graphene”, Journal of the Physical Society of Japan 84, 121010-1-9 (2015).
【文献】河野 行雄、“低次元電子系の機能に基づくテラヘルツ波検出・分光・撮像デバイス”、応用物理学会誌「応用物理」 Vol. 84, pp. 643-647 (2015).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
非特許文献1~4には、カーボンナノチューブをテラヘルツ検出器やアレイセンサとして使用する場合、材料や電極の最適条件が分らないという課題があった。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、カーボンナノチューブのフェルミ準位を制御することができるカーボンナノチューブ膜、テラヘルツ波検出装置およびカーボンナノチューブ膜のPN接合形成方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記した課題を解決するため、本発明に係るカーボンナノチューブ膜は、複数本のカーボンナノチューブにより形成されるカーボンナノチューブ膜であって、前記カーボンナノチューブ膜内に、P型半導体領域、N型半導体領域、および、前記P型半導体領域と前記N型半導体領域とが接するPN接合部を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明に係るテラヘルツ波検出装置は、請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載のカーボンナノチューブ膜と、前記カーボンナノチューブ膜の2次元平面上に、前記PN接合部を挟んで対向配置された第1電極および第2電極と、を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明に係るカーボンナノチューブ膜のPN接合形成方法は、カーボンナノチューブ膜の表面にイオン液体を付着する付着工程と、前記カーボンナノチューブ膜の表面において、前記イオン液体のカチオンを前記カーボンナノチューブ膜中に吸着させてN型半導体領域を形成し、当該カーボンナノチューブ膜のP型半導体領域と前記N型半導体領域との界面でPN接合を形成する形成工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、検出感度が向上し、カーボンナノチューブのフェルミ準位を制御することができるカーボンナノチューブ膜、テラヘルツ波検出装置およびカーボンナノチューブ膜のPN接合形成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係るカーボンナノチューブ膜の構成を示す模式図である。
図2A】本実施形態に係るカーボンナノチューブ膜におけるPN接合形成方法を説明する図である。
図2B】本実施形態に係るカーボンナノチューブ膜におけるPN接合形成方法を説明する図である。
図2C】本実施形態に係るカーボンナノチューブ膜におけるPN接合形成方法を説明する図である。
図3A】本実施形態に係るカーボンナノチューブ膜の実験方法のP型カーボンナノチューブ膜を示す斜視図である。
図3B】本実施形態に係るカーボンナノチューブ膜の実験方法の右半分にイオン溶液を垂らして作製されたPN接合部を有するカーボンナノチューブ膜を示す斜視図である。
図3C】本実施形態に係るカーボンナノチューブ膜の実験方法の全面にイオン溶液を垂らして作製された比較例のN型半導体領域を示す斜視図である。
図3D】本実施形態に係るカーボンナノチューブ膜の実験方法のカーボンナノチューブ膜を用いたテラヘルツ波検出装置を示す斜視図である。
図3E】本実施形態に係るカーボンナノチューブ膜の実験方法の比較例のテラヘルツ波検出装置を示す斜視図である。
図4】本実施形態に係るカーボンナノチューブ膜の光熱電効果を示す模式図である。
図5】本実施形態に係るカーボンナノチューブ膜のPN接合を用いた熱電変換素子を示す模式図である。
図6】本実施形態に係るカーボンナノチューブ膜を備えるテラヘルツ波検出装置の動作を説明する図である。
図7】本実施形態に係るカーボンナノチューブ膜を備えるテラヘルツ波検出装置において、29THzのテラヘルツ波をX軸方向に移動しながら照射した場合の応答特性を示す図であり、上段は、テラヘルツ波のX軸方向の照射位置を示す図、下段は、上記上段の照射位置における電流計による電流[mA]をプロットした図である。
図8A】本実施形態に係るカーボンナノチューブ膜のドーピングの効果の説明において、評価に用いた第1電極、供試カーボンナノチューブ膜、および第2電極の寸法を示す図である。
図8B図8Aの構成においてdopingする前とdopingした後の供試カーボンナノチューブ膜の抵抗値、応答[mV/W]、および時定数 [ms]を示す図である。
図9】本実施形態に係るカーボンナノチューブ膜の構成を示す模式図である。
図10】本実施形態に係るカーボンナノチューブ膜を備えるテラヘルツ波検出装置のPN制御を説明する図である。
図11】本実施形態に係るカーボンナノチューブ膜を備えるテラヘルツ波検出装置のPN接合によるTHz応答(THz応答感度)の高感度化を説明する図である。
図12】本実施形態に係るカーボンナノチューブ膜を備えるテラヘルツ波検出装置のPN接合によるTHz応答(THz応答強度)の高感度化を説明する図である。
図13A】本実施形態に係る有機系または水系の分散液を用いて成膜されたカーボンナノチューブ膜の時間経過によるPN接合位置の変化の説明において、有機系の分散液を用いて成膜されたカーボンナノチューブフィルムの光反応を日数経過でプロットした図である。
図13B】本実施形態に係る有機系または水系の分散液を用いて成膜されたカーボンナノチューブ膜の時間経過によるPN接合位置の変化の説明において、水系の分散液を用いて成膜されたカーボンナノチューブフィルムの光反応を日数経過でプロットした図である。
図14】本実施形態に係るカーボンナノチューブ膜の時間経過による感度の劣化を説明する図であり、有機系・水系の分散液を用いて成膜されたカーボンナノチューブフィルムの光起電力 [V/W]の経日変化を示す図である。
図15】本実施形態に係るカーボンナノチューブ膜の時間経過による感度の劣化を説明する図であり、有機系・水系の分散液を用いて成膜されたカーボンナノチューブフィルムのNEP [pW/√Hz]の経日変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
(実施形態)
図1は、本発明の実施形態に係るカーボンナノチューブ膜の構成を示す模式図である。本実施形態では、テラヘルツ波検出装置の検出素子として使用されるカーボンナノチューブ(Carbon Nanotubes:CNTs)膜の最適条件を明らかにする。
【0015】
[カーボンナノチューブ膜]
本実施形態に係るカーボンナノチューブ膜10は、複数本のカーボンナノチューブにより形成される。カーボンナノチューブ膜10は、常温・大気中の条件下では、P型半導体の性能を示す。
図1に示すように、本実施形態に係るカーボンナノチューブ膜10は、膜内に、P型(p-type)半導体領域11、N型半導体領域12、および、P型半導体領域11とN型半導体領域12とが接するPN接合(p-n junction)部13を備える。すなわち、カーボンナノチューブ膜10は、P型半導体領域11と、N型半導体領域12と、PN接合部13とを、同一のカーボンナノチューブ膜10内に備える。
ここで、P型半導体領域11は、P型半導体性能を有する領域をいい、N型半導体領域12は、N型半導体性能を有する領域をいう。
【0016】
カーボンナノチューブ膜10内のN型半導体領域12を形成する部位は、カーボンナノチューブと、イオン液体(Ionic liquid)20および/またはカチオンを内包したクラウンエーテル(crown ether)30との複合体により形成される。
カーボンナノチューブ膜10は、PN接合部13近傍にてテラヘルツ波を検出し得る構成のテラヘルツ検出装置100(後記)に用いられる。
カーボンナノチューブ膜10は、イオン液体20またはクラウンエーテル30が、カーボンナノチューブ膜10の表面に接触した場合、イオン液体20またはクラウンエーテル30に内包されたカチオンを吸着する構造を有する。
【0017】
また、カーボンナノチューブ膜10は、有機系または水系の分散液を用いて成膜されたものであってもよい。
カーボンナノチューブ膜10は、チップキャリア基板1上に形成される。また、カーボンナノチューブ膜10には、一方の端部に第1電極2が接合され、他方の端部に第2電極3が接合される。
なお、説明の便宜上、イオン液体20とクラウンエーテル30とを総称してイオン溶液(ドーピング溶液)と呼ぶことがある。
【0018】
<カーボンナノチューブ膜10>
カーボンナノチューブは、高い電気伝導性と高い機械的強度を兼ね備え、柔軟性をもつ。カーボンナノチューブは、DCに近い周波数から紫外光領域に至る、極めて広い周波数帯での電磁波を吸収する。特に、サブテラヘルツから紫外光までの極めて広い周波数帯域の光を吸収可能である。
カーボンナノチューブは、ゼーベック係数(後記)が正の値であることからもわかるように、常温・大気中の条件下では、P型半導体性能を示す材料である。
【0019】
カーボンナノチューブ膜10は、単層カーボンナノチューブ(SWCNTs : Single-Walled Carbon Nanotubes)を含んで形成されることが好ましい。カーボンナノチューブ膜10は、単層カーボンナノチューブが50重量%以上を含むことが好ましく、80重量%以上含むことがより好ましい。さらに好ましくは、平均直径に対する標準偏差に3を乗じた値の比が(3×標準偏差/平均直径)が0.20より大きく、0.60未満を満たし、吸着等温線から得られるt-プロットが上に凸な形状を示す単層カーボンナノチューブを使用することが好適である。
カーボンナノチューブ膜10は、単層カーボンナノチューブ(SWCNTs)、二層カーボンナノチューブ(DWCNTs: Double-Walled Carbon Nanotubes)、多層カーボンナノチューブ(MWCNTs: Multi-Walled Carbon Nanotubes)を、それぞれ単独で使用、および/または、併用しても構わない。
【0020】
本実施形態では、カーボンナノチューブ膜10は、カーボンナノチューブ単層膜(単層カーボンナノチューブ)を用いる。
カーボンナノチューブ膜10は、支持体が存在していなくとも膜としての形状を保つことができる自立膜であるとよい。具体的には、カーボンナノチューブ膜10は、膜厚10nm~50μm、面積が1mm~100cmのサイズにおいて支持体無しで膜としても形状を保つことがより好ましい。
【0021】
カーボンナノチューブ膜10は、チップキャリア基板1上に、例えば幅1mm×長さ10mm×厚さ37μmの長尺直方体のチップ形状に形成され、両端部には第1電極2と第2電極3とが接合される。
カーボンナノチューブ膜10の幅、長さ、および厚さは、一例であり限定されない。
【0022】
<P型半導体領域11>
カーボンナノチューブ膜10は、常温・大気中の条件下で、P型半導体の性能を示す。したがって、P型半導体領域11は、カーボンナノチューブ膜10の一部分をそのまま用いることができる。また、P型半導体領域11は、前述したカーボンナノチューブ膜10に対して、ドーピング剤(例えば、ピリジン (pyridine)、トリアジン (triazine)等)を使用することにより、P型半導体性能を向上させてもよい。
【0023】
<N型半導体領域12>
N型半導体領域12は、後記するPN接合形成方法を用いて、カーボンナノチューブ膜10にイオン液体20またはクラウンエーテル30を付着してN型に形成される。N型半導体領域12は、イオン液体20またはクラウンエーテル30に内包されたカチオンを含有する。
本実施形態では、N型半導体領域12は、第2電極3から第1電極2と第2電極3との中間部分に至るまでの領域である。ただし、N型半導体領域12は、後記するPN接合形成方法を用いて、所望の大きさ(面積)に形成することができる。N型半導体領域12の深さは、カーボンナノチューブ膜10の表面部分と考えられる。
【0024】
<PN接合部13>
PN接合部13は、カーボンナノチューブ膜10中(CNTの単層膜中)に形成されたN型半導体領域12とP型半導体領域11との境界部分である。PN接合部13は、カーボンナノチューブ膜10全体のフェルミ準位を操作する。
本実施形態では、N型半導体領域12は、第2電極3から第1電極2と第2電極3との中間部分に至るまでの領域に形成されるので、PN接合部13は、第1電極2と第2電極3との中間(1/2)に形成される。カーボンナノチューブ膜10中におけるN型半導体領域12の位置には、自由度がある。ただし、後記するように、第1電極2の近くのカーボンナノチューブ膜10にテラヘルツ波を照射して起電力を発生させる場合、第1電極2がソース電極であり、第2電極3がドレイン電極である。この場合、各電極に近いところで高感度に正負の応答信号(Response[μA])が検出される。このため、各電極から離れた位置、すなわち第1電極2と第2電極3との中間(1/2)にPN接合部13を備えることが好ましい。
【0025】
<イオン液体20>
イオン液体は、イオンから構成される塩(常温溶融塩)であって、一般に融点が100℃以下のものをいう。イオン液体は、非常に高いイオン導電性を持ち、蒸気圧がほとんど無い、幅広い温度域で不燃性、幅広い温度域で液状を保つなどの特徴がある。イオン液体は、イミダゾリウムイオン,ピリジニウムイオン,第4級アンモニウムイオン,第4級ホスホニウムイオンなどの陽イオン(cation:カチオン)と、ハロゲン(X-),トリフラート(CF3SO3 -),テトラフルオロボラート(BF4 -),ヘキサフルオロホスファート(PF6 -)などの陰イオン(anion:アニオン)からなる塩である。
【0026】
本実施形態では、下記6種類のイオン液体20を用いて、それぞれ良好な特性を得た。
(1)
イオン液体20は、下記の化学構造図で示されるN,N-ジエチル-N-メチル-N-(2-メトキシ)-N-エチル ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドDEME-TFSIである。DEME-TFSIは、DEME(cation)とTFSI(anion)とからなる塩である。
N,N-diethyl-N-methyl-N-(2-methoxyethyl)-N-methylammonium bis(trifluoromethylsulfonyl)imide (DEME-TFSI)
【化1】
【0027】
(2)
イオン液体20は、下記の化学構造図で示されるN-(2-メトキシエチル)-N-メチルピロリジニウム テトラフルオロボラートMEMP-BF4である。MEMP-BF4は、MEMP(cation)とBF4(anions)とからなる塩である。
N-(2-Methoxyethyl)-N-methylpyrrolidinium tetrafluoroborate (MEMP-BF4)
【化2】
【0028】
(3)
イオン液体20は、下記の化学構造図で示されるN-(2-メトキシエチル)-N-メチルピロリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドMEMP-TFSIである。MEMPTFSIは、MEMP(cation)と[(CF3SO2)2N]-(anion)とからなる塩である。
N-(2-Methoxyethyl)-N-methylpyrrolidinium bis(trifluoromethanesulfonyl)imido (MEMPTFSI or MEMPTFSA)
【化3】
【0029】
(4)
イオン液体20は、下記の化学構造図で示されるN,N-ジエチルメチル-N-(2-メトキシエチル)アンモニウム テトラフルオロボラートDEME-BF4である。DEME-BF4は、DEMM(cation)とBF4(anion)とからなる塩である。
N,N-Diethyl-N-methyl-N-(2-methoxyethyl)ammonium tetrafluoroborate (DEME-BF4)
【化4】
【0030】
(5)
イオン液体20は、下記の化学構造図で示されるN,N-ジエチルメチル-N-(2-メトキシエチル)アンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドDEMP-TFSIである。DEMP-TFSIは、DEMP(cation)と[(CF3SO2)2N]-(anion)とからなる塩である。
N,N-Diethyl-N-methyl-N-(2-methoxyethyl)ammonium bis(trifluoromethanesulfonyl)imido (DEMP-TFSI or DEMP-TFSA)
【化5】
【0031】
(6)
イオン液体20は、下記の化学構造図で示される脂肪族系イオン液体である。
N,N,N-Trimethyl-N-propylammonium bis(trifluoromethanesulfonyl)imide (TMPA-TFSI)
TMPA-TFSIは、TMPA(cation)とTFSI(anion)とからなる塩である。
【化6】
【0032】
<クラウンエーテル30>
クラウンエーテルは、一般構造式 (-CH2-CH2-O-)n で表される大環状のエーテルである。クラウンエーテルは、環の内側に酸素原子の非共有電子対があるため、金属カチオンを取り込みやすい。環の大きさによって取り込む金属カチオンの大きさが異なる。例えば、金属カチオンがLi+の場合は、12-クラウン-4-エーテル、金属カチオンがNa+の場合は、15-クラウン-5-エーテル、金属カチオンがK+の場合は、18-クラウン-6-エーテルがそれぞれ好ましい。
【0033】
クラウンエーテル30は、上記一般構造式 (-CH2-CH2-O-)nで表されるクラウンエーテルが、化合物中の金属イオンを取り込むことによって形成された錯体(すなわち、金属カチオンが内包されたクラウンエーテルに相当する)である。例えば、クラウンエーテル30は、12-クラウン-4-エーテルが水酸化リチウム由来のLi+を取り込むことによって形成された錯体、15-クラウン-5-エーテルが水酸化ナトリウム由来のNa+を取り込むことによって形成された錯体、18-クラウン-6-エーテルが水酸化カリウム由来のK+を取り込むことによって形成された錯体である。
【0034】
<チップキャリア基板1>
チップキャリア基板1は、カーボンナノチューブ膜10のキャリア用である。チップキャリア基板1は、非ノイズ性、低熱伝導率、絶縁性、耐候性、所定の強度等の支持基板としての必要な条件を満たせば、如何なる材質の基板でもよい。
【0035】
<第1電極2と第2電極3>
第1電極2(ソース電極)および第2電極3(ドレイン電極)は、金属からなる。第1電極2と第2電極3は、例えばAuである。
その他、電極材料としては、Al、Mo、Ni、Tiがある。ただし、貴金属ではAu以外のCu、Ag、Ptなど、アルミニウム族元素ではAl以外のGa、Inなど、クロム族元素ではMo以外のCr、Wなど、鉄族元素ではNi以外のFe、Coなど、スズ族元素ではTi以外のZr、Sn、Hf、Pb、Thなど、マグネシウム族元素のBe、Mg、Znなど、さらにこれらの金属の合金が使用できる。
【0036】
第1電極2と第2電極3は、とは、本実施形態のように、同種金属を用いてもよいし、異種金属を用いてもよい。
電極材料は、熱伝導率(熱伝導度)が高い金属が好ましい。熱伝導率は、熱の流れに垂直な単位面積を通って単位時間に流れる熱量を、単位長さ当たりの温度差(温度勾配)で割った値である。
【0037】
以下、上述のように構成されたカーボンナノチューブ膜10のPN接合形成について説明する。
(原理説明)
従来、カーボンナノチューブ(CNT)のフェルミ準位を変えるためにはゲート電極を用いる方法しかなかった。
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討を重ねた結果、カーボンナノチューブにイオン液体を垂らすことで、イオン液体を垂らした部分がP型からN型に変わることを見出し、本発明に至る知見を得た。
イオン液体のカチオンは、カーボンナノチューブの表面に吸着し易い性質があると考えられる。カーボンナノチューブ膜に、イオン液体(DEME-TFSI)を垂らすことで、結果的にイオン液体のカチオンだけがカーボンナノチューブの表面に吸着した。
本発明は、イオン液体を用いて、カーボンナノチューブ膜全体のフェルミ準位を制御し、それによりカーボンナノチューブ膜内にPN接合を形成する。後記するように、カーボンナノチューブ膜内にPN接合ができるので、応答が約4倍程度大きいことが確かめられた。
【0038】
[カーボンナノチューブ膜におけるPN接合形成方法]
次に、カーボンナノチューブ膜におけるPN接合形成方法について説明する。
図2A-Cは、カーボンナノチューブ膜10におけるPN接合形成方法を説明する図である。
<イオン溶液の準備>
図2Aに示すように、イオン液体20を用いる場合は、例えばDEME-TFSIを準備する。
一方、クラウンエーテルを用いる場合は、例えば純水に水酸化ナトリウムNaOHを0.1M(0.1mol/L)、15-クラウン-5-エーテルを0.1M(0.1mol/L)入れ、モル比が1:1になるクラウンエーテルを作る。この場合、クラウンエーテル30は、15-クラウン-5-エーテルが水酸化ナトリウム由来のNa+を取り込むことによって形成された錯体である。Na+が金属イオン(カチオン)となる。なお、金属イオンとクラウンエーテルとのモル比、および溶媒の濃度は限定されない。この溶媒は水であってもよく有機溶媒であってもよい。
上述したように、イオン液体20(DEME-TFSI)とクラウンエーテル30(15-クラウン-5-エーテル)とは、いずれか一方が使用される。
【0039】
<カーボンナノチューブ膜10の準備>
カーボンナノチューブ膜10を準備する。
カーボンナノチューブ膜10は、P型半導体性を示す材料である。また、カーボンナノチューブ膜10は、単層カーボンナノチューブを用いることで、半導体カーボンナノチューブの比率を増やしている。カーボンナノチューブ膜10は、単層カーボンナノチューブが80重量%以上含むことが好ましい。カーボンナノチューブ膜10の表面に対して、EB(electron beam)描画・蒸着lift-offにより第1電極2と第2電極3が形成されている。
上記、カーボンナノチューブ膜10を用意する。なお、カーボンナノチューブ膜10が、第1電極2および第2電極3を備えることは一例であり限定されるものではない。カーボンナノチューブ膜10がゲート電極(後記図9参照)を備えるものでもよい。
【0040】
<イオン溶液(ドーピング溶液)の滴下>
図2Bに示すように、イオン液体20(DEME-TFSI)またはクラウンエーテル30(15-クラウン-5-エーテル)をスポイド50で吸込み、吸込んだイオン液体20(DEME-TFSI)またはクラウンエーテル30(15-クラウン-5-エーテル)を、第1電極2と第2電極3間のカーボンナノチューブ膜10上の一部に垂らす(滴下させる)(付着工程)。
【0041】
なお、カーボンナノチューブ膜10のP型半導体領域11の表面にイオン液体20またはクラウンエーテル30を付着する方法では、滴下に限らずどのような方法でもよい。例えばイオン液体20またはクラウンエーテル30溶液中にカーボンナノチューブ膜10を浸潤させる、上記溶液上に置く、上記溶液を噴霧する等が挙げられる。
【0042】
<乾燥>
イオン液体20(DEME-TFSI)またはクラウンエーテル30(15-クラウン-5-エーテル)を垂らしたカーボンナノチューブ膜10を自然乾燥する。イオン液体20は、不揮発性で、安定な常温溶融塩であるので、特別な乾燥手段は不要である。すなわち、実時間で次工程に進むことができる。
【0043】
<形成>
図2Cに示すように、イオン液体20(DEME-TFSI)またはクラウンエーテル30(15-クラウン-5-エーテル)を垂らした部分のカーボンナノチューブ膜10のP型半導体領域11が、N型半導体領域12に変わる。また、イオン溶液20を垂らしていない箇所は、カーボンナノチューブ膜10のままであり、常温大気下ではP型の半導体性能を有することから、その部分がP型半導体領域11となる。これより、カーボンナノチューブ膜10内にP型半導体領域11とN型半導体領域12の接合であるPN接合部13が形成される(形成工程)。
ここで、イオン液体20またはクラウンエーテル30を垂らしてP型がN型に変わるのは、半導体型カーボンナノチューブである。このため、カーボンナノチューブ膜10は、単層カーボンナノチューブを用いることがより好ましい。
完成したカーボンナノチューブ膜10は、単層カーボンナノチューブの単層膜中にイオン溶液を垂らして作製されたPN接合部13を有する構造である。
【0044】
単層カーボンナノチューブの単層膜中に、どのイオン溶液を垂らしてもP型からN型に変化することが確認できた。
〔化1〕の(DEME)や〔化2〕の(MEMP)のように、カーボンナノチューブに吸着しやすいカチオンを含むイオン溶液で洗えばN型に変化する。経時変化等の実験結果については、後記する。
【0045】
[カーボンナノチューブ膜の実験方法]
次に、カーボンナノチューブ膜の実験方法について説明する。
図3A-Eは、カーボンナノチューブ膜10の実験方法を示す図であり、図3AはP型半導体領域11を示す斜視図、図3Bは右半分にイオン溶液を垂らして作製されたPN接合部13を有するカーボンナノチューブ膜10を示す斜視図、図3Cは全面にイオン溶液を垂らして作製された比較例のN型半導体領域12を示す斜視図、図3Dはカーボンナノチューブ膜10を用いたテラヘルツ波検出装置100を示す斜視図、図3Eは比較例のテラヘルツ波検出装置を示す斜視図である。
【0046】
図3Aに示すカーボンナノチューブ膜10のP型半導体領域11に対して、図3Bに示すように右半分にイオン溶液(ドーピング溶液)を垂らす。イオン溶液を垂らしたカーボンナノチューブ膜10が、N型半導体領域12に変わり、その界面でPN接合部13が形成される。
【0047】
一方、図3Aに示すカーボンナノチューブ膜10のP型半導体領域11に対して、図3Cに示すように全面にイオン溶液を垂らすと、イオン溶液を垂らしたカーボンナノチューブ膜10が、全てN型半導体領域12に変わる。図3Bに示すようなPN接合部13は形成されない。
【0048】
図3Dに示すように、PN接合部13を有するカーボンナノチューブ膜10を、テラヘルツ波検出装置100の検出素子として使用する。テラヘルツ波検出装置100は、第1電極2と第2電極3間に、電圧計51を接続する。第1電極2の近くのカーボンナノチューブ膜10のP型半導体領域11にテラヘルツ波60が照射され起電力が発生するので、第1電極2がソース電極であり、第2電極3がドレイン電極である。
テラヘルツ波検出装置100は、カーボンナノチューブ膜10が、CNTの単層膜中にPN接合部13を有する構造を持つので、応答が約4倍程度大きい超高感度なセンサを実現できる(詳細後記)。
【0049】
一方、図3Dに示す比較例では、イオン溶液を垂らしたカーボンナノチューブ膜10が、全てN型半導体領域12に変わるので、PN接合部13は形成されない。このため、応答は格別向上しない。ただし、簡易な製造方法で、カーボンナノチューブ膜10のP型半導体領域11をN型に変化させることができるので、いままで容易にN型材料(N型を示す材料)を得にくかった用途、例えば熱電変換素子のN型材料に好適に使用できる。
【0050】
以下、上述のように構成されたカーボンナノチューブ膜10を備えるテラヘルツ波検出装置100の詳細について説明する。
<光熱電効果>
図4は、光熱電効果を示す模式図である。
発生する起電力ΔVとゼーベック係数Sと温度勾配(温度差)ΔTとの間には、次式(1)の関係がある。

ΔV=S×ΔT …(1)
【0051】
また、温度勾配(温度差)ΔTは、熱の伝わり易さを示す熱伝導率をk、熱移動量をQ、伝熱面積をA、熱移動長をLとすると、次式(2)の関係がある。

ΔT = Q×L /(A×k) …(2)
【0052】
カーボンナノチューブ膜10(図1参照)の膜厚が薄いと伝熱面積Aが小さいので、式(2)より、カーボンナノチューブ膜10の長手方向の温度勾配ΔTが大きい。そのため、式(1)より起電力ΔVが上がり、感度が上がると考えられる。したがって、カーボンナノチューブ膜10の膜厚が薄いほど、光熱起電力が大きい。
【0053】
<PN接合を用いた熱電変換>
固体に温度差を与えると電位差が生じ、金属の熱起電力は、50[μV/K]程度である。半導体材料では、数100[μV/K]に及ぶ熱起電力が得られる。N型とP型半導体は反対符号の熱起電力を生じるので、両者を組み合わせることにより電位差を倍増することができる。
【0054】
図5は、PN接合を用いた熱電変換素子を示す模式図である。
図5に示すように、加熱されたN型半導体素子(電子の数が正孔より多い材料)では高温領域の電子が活性化され、低温度領域へ電子が伝導して熱起電力が発生して高温側が高電位になる。一方、P型半導体素子(正孔の数が電子よりも多い材料)では加熱されると高温領域の正孔が活性化され、低温領域に正孔が移動して熱起電力を発生して低温側が高電位となる。
【0055】
以下の式(3)に示すように、PN接合を用いた熱電変換のゼーベック係数Stotalは、P型半導体におけるゼーベック係数Sp-typeとN型半導体におけるゼーベック係数Sn-typeとを組み合わせたもの(N型とP型半導体は反対符号の熱起電力を生じる)となる。

Stotal=Sp-type-Sn-type …(3)

また、一般的には、Sp-typeは正の値、Sn-typeは負の値を取る。したがって、PN接合を用いてフェルミ準位を操作できることが重要となる。
【0056】
[テラヘルツ波検出装置100の動作]
次に、カーボンナノチューブ膜10を備えるテラヘルツ波検出装置100の動作を説明する。
図6は、カーボンナノチューブ膜10を備えるテラヘルツ波検出装置100の動作を説明する図である。
PN接合部13を有するカーボンナノチューブ膜10を、テラヘルツ波検出装置100の検出素子として使用する。
図6に示すように、カーボンナノチューブ膜10は、P型半導体領域11の右半分にイオン溶液(イオン液体20またはクラウンエーテル30)を垂らしてN型半導体領域12に変え、その界面でPN接合部13を形成する。
【0057】
テラヘルツ波検出装置100は、PN接合部13を有するカーボンナノチューブ膜10と、カーボンナノチューブ膜10の2次元平面上に対向して配置される第1電極2および第2電極3と、を備える。
第1電極2と第2電極3は、同じ熱伝導率を有する金属や異なる熱伝導率を有する金属等である。本実施形態では、第1電極2と第2電極3は、熱伝導率が高いAuを用いている。なお、第1電極2と第2電極3にAu合金を用いてもよい。第1電極2と第2電極3間には、電流計52が接続される。第1電極2がソース電極であり、第2電極3がドレイン電極である。なお、IV特性を測るために電圧計を接続してもよい。
【0058】
図6の白抜き矢印に示すように、第1電極2上から第2電極3方向のX軸方向に移動させながら、カーボンナノチューブ膜10にテラヘルツ波60を照射する。すると、第1電極2の近くのカーボンナノチューブ膜10にテラヘルツ波60が照射されたとき、カーボンナノチューブ膜10のPN接合部13にテラヘルツ波60が照射されたとき、第2電極3の近くのカーボンナノチューブ膜10にテラヘルツ波60が照射されたときに、有意な応答が得られる。
【0059】
図7は、図6のテラヘルツ波検出装置100において、29THzのテラヘルツ波をX軸方向に移動しながら照射した場合の応答特性を示す図であり、上段は、テラヘルツ波のX軸方向の照射位置を示す図、下段は、上記上段の照射位置における電流計52による電流[mA]をプロットした図である。図7下段では、比較のために、half dopingしたカーボンナノチューブ膜10(p-n junctionあり)の応答と、all dopingしたカーボンナノチューブ膜(n-type)の応答と、dopingをする前のカーボンナノチューブ膜(p-type)の応答と、を重ね合わせて描画している。
【0060】
図7下段の太実線に示すhalf dopingしたカーボンナノチューブ膜10の応答と、図7下段の細実線に示すdopingをする前のカーボンナノチューブ膜(p-type)の応答とを対比して明らかなように、カーボンナノチューブ膜10は、PN接合部13(図7上段参照)で大きな応答を得ている。
同様に、図7下段の太実線に示すhalf dopingしたカーボンナノチューブ膜10の応答と、図7下段の破線に示すall dopingしたカーボンナノチューブ膜(n-type)の応答とを対比して明らかなように、カーボンナノチューブ膜10は、PN接合部13(図7上段参照)で大きな応答を得ている。
【0061】
また、half dopingしたカーボンナノチューブ膜10とdopingをする前のカーボンナノチューブ膜(p-type)は、第1電極2近くのカーボンナノチューブ膜上で、テラヘルツ波60の照射による応答がある。half dopingしたカーボンナノチューブ膜10とall dopingしたカーボンナノチューブ膜(n-type)は、第2電極3近くのカーボンナノチューブ膜上で、テラヘルツ波60の照射による応答がある。
【0062】
[ドーピングの効果]
図8A-Bは、テラヘルツ波検出装置100のドーピングの効果を説明する図であり、図8Aは、評価に用いた第1電極2、供試カーボンナノチューブ膜10、および第2電極3の寸法を示す図、図8Bは、上記図8Aの構成においてdopingする前とdopingした後の供試カーボンナノチューブ膜10の抵抗値、応答[mV/W]、および時定数(Time constant)[ms]を示す図である。
図8Aに示すように、第1電極2および第2電極3は、長手方向寸法5mm、短手方向寸法2mm、厚さ50nmである。供試カーボンナノチューブ膜10は、長手方向寸法10mm、短手方向寸法2mmであり、膜厚は50μである。第1電極2は、第1結線5に接続され、第2電極3は、第2結線6に接続される。第1結線5と第2結線6との間の距離は、20mmである。
【0063】
図8Bに示すように、dopingする前とdopingした後の供試カーボンナノチューブ膜10の性能を比較する。doping後は、doping前と比較して、抵抗値、応答[mV/W]、および応答時間[ms]は、いずれも低下しているが、デバイス(テラヘルツ波検出装置100)の性能をそれ程低下させるものではないことが確かめられた。dopingによる効果(影響)は限定されたものとなっている。
なお、all dopingしたカーボンナノチューブ膜(n-type)についても同様の試験を行った。その結果、上記供試カーボンナノチューブ膜10(p-n junctionあり)の場合と同様に、dopingによる効果は限定されたものであることが確かめられた。
【0064】
[構造を最適化したデバイス]
構造を最適化したデバイス(テラヘルツ波検出装置100)として、例えば以下がある。
図8Aにおいて、構造を最適化したデバイスは、一例として、供試カーボンナノチューブ膜10は、長手方向寸法2mm、短手方向寸法1mmであり、膜厚は4μmとした。
この構造の供試カーボンナノチューブ膜10に、29THzのテラヘルツ波60を照射した。その結果、雑音等価パワー(NEP:Noise equivalent power )[pW/√Hz]は、25[pW/√Hz]、時定数(Time constant)は、20[ms]であった。NEP:25[pW/√Hz]は、小さく感度が良好である。なお、NEPは、バンド幅1で信号雑音比が1のときにどれだけ弱いパワーで受光できるかを示す指標である。
テラヘルツ波検出装置100の検出素子として、カーボンナノチューブ膜10を用いることで、テラヘルツ波60を効果的にセンシングできる。
なお、構造を最適化したデバイスは、一例であり、感度改善の余地はあると考察される。
【0065】
[イオン液体20によるPN制御]
図9は、本実施形態に係るカーボンナノチューブ膜10の構成を示す模式図である。
図9に示すように、本実施形態に係るカーボンナノチューブ膜10は、P型半導体領域11と、カーボンナノチューブ膜10中に、DEME-TFSIからなるイオン液体20のカチオンを吸着してN型に形成されたN型半導体領域12と、PN接合部13と、を有する。
カーボンナノチューブ膜10は、チップキャリア基板1上に形成される。また、カーボンナノチューブ膜10には、一方の端部に第1電極2が接合され、他方の端部に第2電極3が接合される。また、カーボンナノチューブ膜10と並列に第2のカーボンナノチューブ膜14をさらに備え、第2のカーボンナノチューブ膜14には、ゲート電極4が接続される。第1電極2、第2電極3およびゲート電極4の材質は、Auである。
【0066】
イオン液体20を、カーボンナノチューブ膜10の右半分と第2のカーボンナノチューブ膜14上に垂らし、自然乾燥させる。
イオン液体20(DEME-TFSI)を垂らしたカーボンナノチューブ膜10の右半分と第2のカーボンナノチューブ膜14とが、N型半導体領域に変わる。カーボンナノチューブ膜10内には、PN接合部13が形成される。カーボンナノチューブ膜10は、単層カーボンナノチューブの単層膜中にイオン液体20(DEME-TFSI)を垂らして作製されたPN接合部13を有する構造である。
【0067】
図10は、図9のテラヘルツ波検出装置100のPN制御を説明する図である。図10は、テラヘルツ波検出装置100のソース-ドレイン電圧Vsdとして100mVを印加し、ゲート電圧Vgを0V中心に振った場合のソース-ドレイン電流Isdをプロットしている。
図10に示すように、ソース-ドレイン電圧Vsdとして100mVを印加し、ゲート電圧Vgを0V中心に振った場合、ゲート電圧Vg=-1.75Vでソース-ドレイン電流Isdは最小となる。ゲート電圧Vgをプラス側またはマイナス側に振るとソース-ドレイン電流Isdが増える。このことから、図9のテラヘルツ波検出装置100は、PN制御ができている。
また、ゲート電圧Vg=0Vのとき、ソース-ドレイン電流Isdが流れることから、カーボンナノチューブ膜10は、ゲート電圧Vg=0VではN型になっている。
【0068】
[PN接合によるTHz応答(THz応答感度)の高感度化]
図11は、図9のテラヘルツ波検出装置100のPN接合によるTHz応答(THz応答感度)の高感度化を説明する図であり、横軸にTHz応答のX軸スキャンX[mm]をとり、縦軸に応答信号(応答電流)(Response[μA])をとる。
図11に示すように、カーボンナノチューブ膜10(図9参照)の中間位置(X=8[mm])でp-n junctionが形成されている。
【0069】
PN接合による応答(THz応答感度)と、金属界面照射時の応答とを比較する。図11の例では、p-n junction形成位置の応答信号(応答電流)=-28.8[μA]と、例えば第1電極2近くのカーボンナノチューブ膜10にテラヘルツ波60が照射された場合の応答信号(応答電流)=7.08[μA]とを比較すると絶対値比較で約4倍のTHz応答感度の高感度化ができていることが分かる。なお、前記図7の例でも、同様の比較で約4倍のTHz応答感度の高感度化ができている。
【0070】
[PN接合によるTHz応答(THz応答強度)の高感度化]
図12は、図9のテラヘルツ波検出装置100のPN接合によるTHz応答(THz応答強度)の高感度化を説明する図であり、テラヘルツ波検出装置100のI-V特性とTHz応答の結果(室温下)を示す。横軸にソース-ドレイン電圧Vsd[mV]をとり、縦軸にソース-ドレイン電流Isd[μA])をとる。また、図12のI-V特性の細実線は、THz照射がない場合(Off)を、太実線は、p-n junction領域でTHz照射がある場合(On)、破線は、p-type領域でTHz照射がある場合(On)を示す。
図12に示すように、29THzのTHz照射によりTHz照射した場合、I-V特性は線形であり、I-V特性のシフトが観測された。
【0071】
PN接合による応答(THz応答強度)と、金属界面照射時の応答とを比較する。図12に示すように、p-n junction領域でTHz照射がある場合(太実線)のソース-ドレイン電流Isdとp-type領域でTHz照射がある場合(破線)のソース-ドレイン電流Isdとを比較すると、約3倍のTHz応答の高感度化ができている。
【0072】
[時間経過によるPN接合位置の変化]
図13A-Bは、有機系または水系の分散液を用いて成膜されたカーボンナノチューブ膜10の時間経過によるPN接合位置の変化を説明する図であり、日数経過をパラメータにして縦軸に光応答、横軸に図7(a)に記載された位置X[mm]をとり、X[mm]でスキャンさせて、光応答をプロットしたものである。図13Aは有機系の分散液を用いて成膜されたカーボンナノチューブフィルムの光反応をプロットした図、図13Bは水系の分散液を用いて成膜されたカーボンナノチューブフィルムの光反応をプロットした図である。光応答がピークとなる位置がPN接合位置に対応している。図13A-Bのドット(●印)は、1日、2日、7日、11日、25日経過の各プロットである。ただし、図13A-B中の表記が煩雑となるため一部を省略している。同一の日は、同一の濃淡のドットで表記している。
図13A-Bに示すように、有機系、水系の分散液を用いて成膜されたカーボンナノチューブフィルムのいずれの場合においても時間経過によるPN接合位置(光応答のピーク位置)の変化は見られなかった。
【0073】
[時間経過による感度の劣化]
図14および図15は、カーボンナノチューブ膜10の時間経過による感度の劣化を説明する図である。図14は、有機系・水系の分散液を用いて成膜されたカーボンナノチューブフィルムの光起電力(photo voltage)[V/W]の経日変化を示す。図15は、有機系・水系の分散液を用いて成膜されたカーボンナノチューブフィルムのNEP [pW/√Hz]の経日変化を示す図である。
図14に示すように、有機系、水系の分散液を用いて成膜されたカーボンナノチューブフィルムのいずれの場合においても時間経過による感度(光起電力)の低下はほとんど見られない。むしろ、1日目よりも時間が経つにつれ、多少感度がよくなっているように見える。
図15に示すように、有機系、水系の分散液を用いて成膜されたカーボンナノチューブフィルムのいずれの場合においても2日目以降は時間経過によるNEPの変化はほとんど見られない。
【0074】
以上説明したように、本実施形態に係るカーボンナノチューブ膜10は、膜内に、P型半導体領域11、N型半導体領域12、および、P型半導体領域11とN型半導体領域12とが接するPN接合部13を備える。N型半導体領域12を形成する部位は、カーボンナノチューブと、イオン液体20および/またはカチオンを内包したクラウンエーテル30との複合体により形成される。また、テラヘルツ波検出装置100は、カーボンナノチューブ膜10の2次元平面上に、PN接合部13を挟んで対向配置された第1電極2および第2電極3と、を備える。
【0075】
カーボンナノチューブ膜10のPN接合形成方法は、カーボンナノチューブ膜10のP型半導体領域11の表面にイオン液体20またはカチオンを内包したクラウンエーテル30を付着する付着工程と、イオン液体20またはクラウンエーテル30に内包されたカチオンをカーボンナノチューブ膜10のP型半導体領域11中に吸着させてN型半導体領域12を形成し、カーボンナノチューブ膜10のP型半導体領域11とN型半導体領域12との界面でPN接合を形成する形成工程と、を含む。
【0076】
これにより、カーボンナノチューブ膜10にイオン液体20またはクラウンエーテル30を垂らすという極めて簡単な方法でカーボンナノチューブ膜10のP型半導体領域11をN型半導体領域12に変化させ、PN接合部13を形成することができる。すなわち、カーボンナノチューブ膜10全体のフェルミ準位を制御し、それによりカーボンナノチューブ膜10内にPN接合部13を形成する。
カーボンナノチューブ膜10は、PN接合部13を有する構造持つので、カーボンナノチューブ膜10を用いてテラヘルツ波検出装置100を作製すると、極めて高感度なTHzセンサを実現することができる。
また、超高感度なTHzセンサを実現できるので、外部THz光源を用いずにパッシブセンサとして使用できる。
また、イオン液体20を用いた場合、どこまでN型になるかをチューニングできる。ゼーベック係数を最大にするには、N型をチューニングできることが好ましい。なお、イオン液体20だけがチューニングできる。
【0077】
本発明は上記の実施形態例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、他の変形例、応用例を含む。
また、上記した実施形態例は本発明をわかりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態例の構成の一部を他の実施形態例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態例の構成に他の実施形態例の構成を加えることも可能である。また、各実施形態例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
また、上記実施の形態では、カーボンナノチューブ膜、テラヘルツ波検出装置およびPN接合形成方法という名称を用いたが、これは説明の便宜上であり、装置の名称はカーボンナノチューブフィルム、テラヘルツ波検出器等、方法の名称はカーボンナノチューブの作製方法等であってもよい。
【符号の説明】
【0078】
1 チップキャリア基板
2 第1電極
3 第2電極
4 ゲート電極
10 カーボンナノチューブ膜
11 P型半導体領域
12 N型半導体領域
13 PN接合部
14 第2のカーボンナノチューブ膜
20 イオン液体
30 クラウンエーテル
60 テラヘルツ波
100 テラヘルツ波検出装置
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図14
図15