(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-29
(45)【発行日】2022-10-07
(54)【発明の名称】基板処理システム、基板搬送方法、および制御プログラム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/677 20060101AFI20220930BHJP
【FI】
H01L21/68 A
(21)【出願番号】P 2018127757
(22)【出願日】2018-07-04
【審査請求日】2021-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099944
【氏名又は名称】高山 宏志
(72)【発明者】
【氏名】松橋 孝文
(72)【発明者】
【氏名】鷹野 国夫
(72)【発明者】
【氏名】平田 俊治
【審査官】鈴木 孝章
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-190894(JP,A)
【文献】特開平06-089934(JP,A)
【文献】特開2006-108549(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の基板に対して処理を行う基板処理システムであって、
それぞれ所定の処理を行う複数の処理モジュールを有する処理部と、
複数の基板を保持し、前記処理部に対し基板を搬出入する搬出入部と、
前記複数の処理モジュールのそれぞれに対して基板を搬送し、かつ前記搬出入部内および前記搬出入部と前記処理部との間で基板を搬送する搬送部と、
前記処理部、前記搬出入部、および前記搬送部を制御する制御部と、
を具備し、
前記制御部は、
複数の基板が前記搬出入部から前記処理部に順次搬送されるとともに、搬送された基板が、前記複数の処理モジュールに対して、順次シリアルに搬送されるように制御し、かつ、前記搬出入部の所定のモジュールから基板を搬出した後、次の基板を搬出するまでのインターバルを設定し、そのインターバルの設定値で複数の基板を前記所定のモジュールから順次搬出するように制御
し、
前記インターバルの設定値を変更可能であり、先行する基板が前記所定のモジュールから搬出後に前記インターバルの設定値が変更された場合に、変更されたインターバルの設定値と、それまでの実測時間との差分の時間後に後続の基板が搬出されるように制御する、基板処理システム。
【請求項2】
前記制御部は、所定の処理モジュールで基板の滞留が発生した場合に、その基板の滞留を検知し、その結果をフィードバックして、前記インターバルの残り時間を、滞留時間の分延長するように再設定する、請求項
1に記載の基板処理システム。
【請求項3】
前記所定の処理モジュールでの滞留時間が所定時間以上のとき、滞留が発生したとみなす、請求項
2に記載の基板処理システム。
【請求項4】
前記制御部は、滞留が解消されて基板が動き始めたタイミングで、前記所定の処理モジュールからの基板の搬出遅れ時間を滞留時間とする、請求項
2または請求項
3に記載の基板処理システム。
【請求項5】
前記制御部は、基板の滞留が解消して複数の基板が動き始めた際に、最初に動き始めた基板のフィードバックのみを受け付ける、請求項
4に記載の基板処理システム。
【請求項6】
前記制御部は、一度滞留結果をフィードバックした際の基板について、その後フィードバックを受け付けない、請求項
4に記載の基板処理システム。
【請求項7】
前記インターバルの残り時間を延長した後の再設定値の最大値は、前記インターバルの設定値である、請求項
2から請求項
6のいずれか1項に記載の基板処理システム。
【請求項8】
前記制御部は、前記所定のモジュールにおいて設定されたインターバルが経過して、前記所定のモジュールから基板を搬出する際に、基板の搬送先のモジュールで基板の滞留が発生していることが検知された場合、前記所定のモジュールからの基板の搬出を停止する、請求項1から請求項
7のいずれか1項に記載の基板処理システム。
【請求項9】
前記制御部は、先行する基板が存在しなくなった場合、前記インターバルの設定値にかかわらず、インターバル設定モジュールから次の基板を即時搬出させる、請求項1から請求項
8のいずれか1項に記載の基板処理システム。
【請求項10】
前記搬出入部は、複数の基板を収容する基板収容容器が載置されるロードポートを有し、前記ロードポートが、前記インターバルが設定される前記所定のモジュールとして機能する、請求項1から請求項
9のいずれか1項に記載の基板処理システム。
【請求項11】
前記処理部の複数の処理モジュールは真空中で処理が行われ、前記搬出入部は、複数の基板を収容する基板収容容器が載置されるロードポートと、基板のアライメントを行うアライナーモジュールと、大気圧と真空との間で圧力可変のロードロックモジュールとを有し、前記インターバルが設定される前記所定のモジュールは、前記ロードポート、前記アライナーモジュール、および前記ロードロックモジュールのいずれかである、請求項1から請求項
9のいずれか1項に記載の基板処理システム。
【請求項12】
前記制御部は、前記インターバルが設定される前記所定のモジュールを変更可能である、請求項
11に記載の基板処理システム。
【請求項13】
それぞれ所定の処理を行う複数の処理モジュールを有する処理部と、複数の基板を保持し、前記処理部に対し基板を搬出入する搬出入部とを有する基板処理システムにおいて基板を搬送する基板搬送方法であって、
前記搬出入部に保持された基板を、前記搬出入部の所定のモジュールから搬出した後、次の基板を搬出するまでのインターバルを設定し、そのインターバルの設定値で複数の基板を前記所定のモジュールから順次搬出する工程と、
前記所定のモジュールから順次搬出された基板を前記処理部へ搬送する工程と、
前記処理部に搬送された基板を、前記複数の処理モジュールに対して、順次シリアルに搬送する工程と、
を有
し、
前記インターバルの設定値は変更可能であり、先行する基板が前記所定のモジュールから搬出後に前記インターバルの設定値が変更された場合に、変更されたインターバルの設定値と、それまでの実測時間との差分の時間後に後続の基板が搬出される、基板搬送方法。
【請求項14】
コンピュータ上で動作し、それぞれ所定の処理を行う複数の処理モジュールを有する処理部と、複数の基板を保持し、前記処理部に対し基板を搬出入する搬出入部とを有する基板処理システムにおいて基板の搬送を制御する制御プログラムであって、
前記制御プログラムは、実行時に、
前記搬出入部に保持された基板を、前記搬出入部の所定のモジュールから搬出した後、次の基板を搬出するまでのインターバルを設定し、そのインターバルの設定値で複数の基板を前記所定のモジュールから順次搬出する工程と、
前記所定のモジュールから順次搬出された基板を前記処理部へ搬送する工程と、
前記処理部に搬送された基板を、前記複数の処理モジュールに対して、順次シリアルに搬送する工程と、
を有し、
前記インターバルの設定値は変更可能であり、先行する基板が前記所定のモジュールから搬出後に前記インターバルの設定値が変更された場合に、変更されたインターバルの設定値と、それまでの実測時間との差分の時間後に後続の基板が搬出される、基板搬送方法が実行されるように、コンピュータに前記基板処理システムを制御させる、制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理システム、基板搬送方法、および制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の基板に対して処理を行う基板処理システムとして、それぞれ所定の処理を行う複数の処理モジュールと、これら複数の処理モジュールに対して基板を搬送する搬送機構とを有し、複数の処理モジュールに対して、基板を順次シリアルに搬送するように制御するものが提案されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、それぞれ所定の処理を行う複数の処理モジュールに対して、基板を順次シリアルに搬送して基板に一連の処理を行う際に、スループットの低下を抑制しつつ、基板による処理結果の不均一を抑制することができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一実施形態に係る基板処理システムは、複数の基板に対して処理を行う基板処理システムであって、それぞれ所定の処理を行う複数の処理モジュールを有する処理部と、複数の基板を保持し、前記処理部に対し基板を搬出入する搬出入部と、前記複数の処理モジュールのそれぞれに対して基板を搬送し、かつ前記搬出入部内および前記搬出入部と前記処理部との間で基板を搬送する搬送部と、前記処理部、前記搬出入部、および前記搬送部を制御する制御部と、を具備し、前記制御部は、複数の基板が前記搬出入部から前記処理部に順次搬送されるとともに、搬送された基板が、前記複数の処理モジュールに対して、順次シリアルに搬送されるように制御し、かつ、前記搬出入部の所定のモジュールから基板を搬出した後、次の基板を搬出するまでのインターバルを設定し、そのインターバルの設定値で複数の基板を前記所定のモジュールから順次搬出するように制御し、前記インターバルの設定値を変更可能であり、先行する基板が前記所定のモジュールから搬出後に前記インターバルの設定値が変更された場合に、変更されたインターバルの設定値と、それまでの実測時間との差分の時間後に後続の基板が搬出されるように制御する。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、複数の処理のそれぞれを行う複数の処理モジュールに対して、基板を順次シリアルに搬送して基板に一連の処理を行う際に、スループットの低下を抑制しつつ、基板による処理結果の不均一を抑制することが可能な技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】一実施形態に係る基板処理システムを示す概略断面図である。
【
図2】一実施形態に係る基板処理システムにおける基板の搬送経路を示す概略断面図である。
【
図3】一実施形態に係る基板処理システムにおける制御部のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図4】一実施形態に係る基板処理システムにおける制御部の機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して実施形態について説明する。
【0009】
図1は一実施形態に係る基板処理システムを示す概略断面図である。
この基板処理システム1は、基板Wに対して複数の処理を施すものであり、処理部2と、複数の基板Wを保持し、処理部2に対し基板を搬出入する搬出入部3と、制御部4とを有する。基板は特に限定されないが、例えば半導体ウエハである。
【0010】
処理部2は、基板Wに対して所定の真空処理を施す複数(本例では10個)の処理モジュールPM1~PM10を有する。これら複数の処理モジュールPM1~PM10に対しては、第1の搬送装置11により基板Wが順次搬送される。第1の搬送装置11は複数の搬送モジュールTM1~TM5を有する。搬送モジュールTM1~TM5は、それぞれ真空に保持される平面形状が六角状の容器30a、30b、30c、30d、30eと、各容器内に設けられた多関節構造の搬送機構31a、31b、31c、31d、31eとを有する。搬送モジュールTM1~TM5の搬送機構の間には、それぞれ搬送バッファとしての受け渡し部41、42、43、44が設けられている。搬送モジュールTM1~TM5の容器30a、30b、30c、30d、30eは連通して一つの搬送室12を構成する。搬送室12は図中Y方向に延びており、処理モジュールPM1~PM10は、開閉可能なゲートバルブGを介して搬送室12の両側に5個ずつ接続されている。処理モジュールPM1~PM10のゲートバルブGは、処理モジュールに搬送モジュールがアクセスする際には開かれ、処理を行っている際には閉じられる。
【0011】
搬出入部3は、処理部2の一端側に接続されている。搬出入部3は、大気搬送室(EFEM)21と、大気搬送室21に接続された、3つのロードポート22、アライナーモジュール23、ならびに2つのロードロックモジュールLLM1およびLLM2と、大気搬送室21内に設けられた第2の搬送装置24とを有する。
【0012】
大気搬送室21は、図中X方向を長手方向とする直方体状をなしている。3つのロードポート22は、大気搬送室21の処理部2とは反対側の長辺壁部に設けられている。各ロードポート22は載置台25と搬送口26とを有し、載置台25に複数の基板を収容する基板収容容器であるFOUP20が載置され、載置台25上のFOUP20は、搬送口26を介して大気搬送室21に密閉した状態で接続される。
【0013】
アライナーモジュール23は、大気搬送室21の一方の短辺壁部に接続されている。アライナーモジュール23において、基板Wのアライメントが行われる。
【0014】
2つのロードロックモジュールLLM1およびLLM2は、大気圧である大気搬送室21と真空雰囲気である搬送室12との間で基板Wの搬送を可能にするためのものであり、大気圧と搬送室12と同程度の真空との間で圧力可変となっている。2つのロードロックモジュールLLM1およびLLM2は、それぞれ2つの搬送口を有しており、一方の搬送口が大気搬送室21の処理部2側の長辺壁部にゲートバルブG2を介して接続され、他方の搬送口がゲートバルブG1を介して処理部2の搬送室12に接続されている。ロードロックモジュールLLM1は基板Wを搬出入部3から処理部2に搬送する際に用いられ、ロードロックモジュールLLM2は基板Wを処理部2から搬入出部3に搬送する際に用いられる。なお、ロードロックモジュールLLM1およびLLM2で、デガス処理等の処理を行うようにしてもよい。
【0015】
大気搬送室21内の第2の搬送装置24は、多関節構造を有しており、ロードポート22上のFOUP20、アライナーモジュール23、ロードロックモジュールLLM1およびLLM2に対する基板Wの搬送を行う。具体的には、第2の搬送装置24は、ロードポート22のFOUP20から未処理の基板Wを取り出し、アライナーモジュール23へ搬送し、アライナーモジュール23からロードロックモジュールLLM1へ基板Wを搬送する。また、第2の搬送装置24は、処理部2からロードロックモジュールLLM2に搬送された処理後の基板Wを受け取り、ロードポート22のFOUP20へ基板Wを搬送する。なお、
図1では、第2の搬送装置24の基板Wを受け取るピックが1本の例を示しているが、ピックが2本であってもよい。
【0016】
なお、上記第1の搬送装置11と第2の搬送装置24とで、処理システム1の搬送部が構成される。
【0017】
上記処理部2においては、搬送室12の一方側に、ロードロックモジュールLLM1側から順に、処理モジュールPM1、PM3、PM5、PM7、PM9が配置され、搬送室12の他方側に、ロードロックモジュールLLM2側から順に、処理モジュールPM2、PM4、PM6、PM8、PM10が配置されている。また、第1の搬送装置11においては、ロードロックモジュールLLM1およびLLM2側から順に搬送モジュールTM1、TM2、TM3、TM4、TM5が配置されている。
【0018】
搬送モジュールTM1の搬送機構31aは、ロードロックモジュールLLM1およびLLM2、処理モジュールPM1およびPM2、ならびに受け渡し部41にアクセス可能である。搬送モジュールTM2の搬送機構31bは、処理モジュールPM1、PM2、PM3、およびPM4、ならびに受け渡し部41および42にアクセス可能である。搬送モジュールTM3の搬送機構31cは、処理モジュールPM3、PM4、PM5、およびPM6、ならびに受け渡し部42および43にアクセス可能である。搬送モジュールTM4の搬送機構31dは、処理モジュールPM5、PM6、PM7、およびPM8、ならびに受け渡し部43および44にアクセス可能である。搬送モジュールTM5の搬送機構31eは、処理モジュールPM7、PM8、PM9、およびPM10、ならびに受け渡し部44にアクセス可能である。
【0019】
第2の搬送装置24、および第1の搬送装置11の搬送モジュールTM1~TM5がこのように構成されているため、
図2に示すように、FOUP20から取り出された基板Wは、処理部2において略U字状の経路Pに沿って一方向にシリアルに搬送されて各処理モジュールで処理され、FOUP20に戻される。すなわち、基板Wは、処理モジュールPM1、PM3、PM5、PM7、PM9、PM10、PM8、PM6、PM4、PM2の順に搬送されてそれぞれの処理モジュールで所定の処理がなされる。
【0020】
処理システム1は、例えば、MRAM(Magnetoresistive Random Access Memory)に用いられる積層膜(MTJ膜)の製造に用いることができる。MTJ膜の製造には、前洗浄処理、成膜処理、酸化処理、加熱処理、冷却処理等の複数の処理が存在し、これら処理のそれぞれを、処理モジュールPM1~PM10で行う。処理モジュールPM1~PM10の1つ以上が基板Wを待機させる待機モジュールであってもよい。
【0021】
制御部4は、基板処理システム1の各構成部、例えば、搬送モジュールTM1~TM5(搬送機構31a~31e)、および第2の搬送装置24、処理モジュールPM1~PM10、ロードロックモジュールLLM1およびLLM2、搬送室12、ゲートバルブG、G1、G2等を制御する。制御部4は、典型的にはコンピュータである。
図3に制御部4のハードウェア構成の一例を示す。制御部4は、主制御部101と、キーボード、マウス等の入力装置102と、プリンタ等の出力装置103と、表示装置104と、記憶装置105と、外部インターフェース106と、これらを互いに接続するバス107とを備えている。主制御部101は、CPU(中央処理装置)111、RAM112およびROM113を有している。記憶装置105は、制御に必要な情報の記録および読み取りを行うようになっている。記憶装置105には、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体を有しており、記憶媒体には、基板Wに対する処理の処理レシピ等が記憶されている。
【0022】
制御部4では、CPU111が、RAM112を作業領域として用いて、ROM113または記憶装置105の記憶媒体に格納されたプログラムを実行することにより、基板処理装置1において基板であるウエハWの処理を実行させる。
【0023】
図4は、制御部4の機能ブロック図であり、主に基板Wの搬送制御機能を示す。制御部4は、搬送制御部121と、インターバル設定部122と、基板検知部123と、滞留検知部124と、インターバル設定モジュール変更部125とを有する。なお、制御部4は、搬送制御機能以外の他の機能も有しているが、ここでは説明を省略する。
【0024】
搬送制御部121は、搬送モジュールTM1~TM5(搬送機構31a~31e)、および第2の搬送装置24を制御する。具体的には、基板WがFOUP20から搬出され、アライナーモジュール23、ロードロックモジュールLLM1を経て処理部2に至り、各処理モジュールに順次搬送され、ロードロックモジュールLLM2を経てFOUP20に戻るように制御する。搬送制御部121は、タイマーを内蔵している。インターバル設定部122は、搬出入部3の所定のモジュールからある基板Wを搬出した後、次の基板Wを搬出するまでのインターバルを設定し、その設定値を搬送制御部121に送る機能を有する。基板検知部123は、システム内の基板Wの位置を検知する。検知された基板Wの位置は、表示装置104の装置画面に表示される。滞留検知部124は、基板Wの滞留を検知し、搬送制御部121にフィードバックする機能を有する。インターバル設定モジュール変更部125は、基板Wを搬出した後、次の基板Wを搬出するまでのインターバルを設定するモジュールの変更を設定し、その変更を搬送制御部121に送る機能を有する。
【0025】
以下、具体的に説明する。
搬送制御部121は、搬出入部3の所定のモジュールから複数の基板を順次搬出する際、インターバル設定部122で設定されたインターバルの設定値で、複数の基板Wを順次搬出するように第2の搬送装置24等の搬送機構を制御する。このとき、インターバルは装置パラメータとして設定される。インターバル設定部122は、プロセスに要求されるスループットに応じてインターバルを適宜の値に可変である。
【0026】
インターバルが設定される所定のモジュール(インターバル設定モジュール)は、例えばロードポート22(FOUP20)である。インターバル設定モジュールがロードポート22(FOUP20)である場合、搬送制御部121は、FOUP20から基板Wを取り出した後、インターバル設定部122で設定されたインターバルの設定値で次の基板Wを取り出すよう、第2の搬送装置24を制御する。インターバル設定部122の設定値は、例えば、処理モジュールPM1~PM10のうち、処理時間が最も長いものの時間を基準として設定する。
【0027】
また、インターバル設定部122が設定する設定値(パラメータ)を途中で変更することができる。この場合に、搬送制御部121は、パラメータ変更を即時有効にすることが好ましい。先行基板がインターバル設定モジュールから搬出後(インターバルタイマー計測中)にパラメータ変更された場合には、搬送制御部121は、変更されたパラメータと、それまでの実測時間との差分のタイマー時間後に後続基板を搬出する。
【0028】
例えば、インターバルの設定値(パラメータ)が120秒のときは以下の通りである。
(a)先行基板搬出後、30秒経過したときに、パラメータを100秒に変更した場合、パラメータ変更時点から70秒後(先行基板搬出から100秒後)に後続基板が搬送される。
(b)先行基板搬出後、30秒経過したときに、パラメータを10秒に変更した場合、パラメータ変更時点の直後に後続基板が搬出される。
【0029】
インターバル設定モジュール変更部125は、上記インターバル設定モジュールの変更を設定する。例えば、インターバル設定モジュールを、ロードポート22(FOUP20)から、アライナーモジュール23またはロードロックモジュールLLM1に変更する。変更されたインターバル設定モジュールが、アライナーモジュール23の場合、搬送制御部121は、アライナーモジュール23から基板Wを搬出した後、設定されたインターバルで次の基板Wを取り出すよう、第2の搬送装置24を制御する。このとき、搬送制御部121は、FOUP20からアライナーモジュール23へ基板Wを搬送する際に、インターバルを考慮しない通常の搬送となるように第2の搬送装置24を制御する。変更されたインターバル設定モジュールがロードロックモジュールLLM1の場合、搬送制御部121は、ロードロックモジュールLLM1から基板Wを搬出した後、設定されたインターバルで次の基板Wを取り出すよう、搬送モジュールTM1の搬送機構31aを制御する。
【0030】
なお、以上の説明では、インターバル設定モジュールの初期設定をロードポート22(FOUP20)としたが、インターバル設定モジュールの初期設定を他のモジュールとしてもよい。
【0031】
滞留検知部124は、上記インターバル設定にもかかわらず、所定の処理モジュールで基板の滞留が発生した場合に、その滞留を検知し、滞留時間を搬送制御部121にフィードバックする。フィードバックを受けた搬送制御部121は、インターバル設定部122で設定されたインターバルの設定値の残り時間を、滞留時間分延長する。滞留検知部124の滞留検知は、基板検知部123による基板Wの位置検知結果に基づき、所定のモジュールからの基板Wの搬出の遅れ時間が所定時間以上のときに、その基板Wが滞留したとみなし、その搬出遅れ時間を滞留時間とする。滞留時間は基板が動き始めて初めてわかるので、滞留時間の検知は、滞留が解消されて基板Wが動き始めたタイミングでなされる。フィードバックを受けた搬送制御部121は、インターバル設定部122で設定されたインターバルの残り時間が搬出遅れ時間の分延長されるように、タイマーを再設定する。
【0032】
ただし、スループットの低下を考慮すると、再設定タイマーの最大値、つまり延長後のインターバルの再設定は、インターバル設定部122での設定値とすることが好ましい。
例えば、インターバル設定部122で設定されたインターバル設定値が280秒のときは以下の通りである。
(a)先行基板の滞留時間が30秒、タイマーの経過時間が100秒の場合
280-100+30=210秒のタイマーを再設定する。
(b)先行基板の滞留時間が300秒、タイマーの経過時間が100秒の場合
280-100+300=480秒であるが、設定値280秒より長いので、280秒のタイマーを再設定する。
【0033】
滞留検知部124の滞留とみなす所定時間は、設定可能であることが好ましい。この所定時間は、実質的に滞留が生じたとすることができる時間、例えば15秒に設定される。つまり、滞留検知部124は、基板Wが所定のモジュールからの搬出遅れ時間が所定時間(例えば15秒)以上長いときに、滞留が生じたとみなしてフィードバックを搬送制御部121に送る。
【0034】
また、搬送制御部121は、基板Wの滞留が解消して複数の基板が動き始めた際に、最初に動き始めた基板Wのフィードバックのみを受け付けるようにする。先行基板が何らかの原因で滞留した場合、それに続く基板も滞留して、複数の基板が滞留することとなるが、このとき滞留が解消されて動き始めた基板は複数あり、これら複数の基板について滞留検知部124からフィードバックが送られる。これらの基板の中では、最初に動き始めた基板の滞留時間が最も長いので、搬送制御部121は、最初に動き始めた基板のフィードバックのみを受け付けるようにする。
【0035】
また、搬送制御部121は、一度フィードバックを送信した際の基板について、その後フィードバックは受け付けないようにする。上述したように複数の基板が滞留した後、滞留が解消されたとき、先頭の基板は滞留なく搬送可能であるが、2枚目以降の基板は、先頭の基板の各処理モジュールでの処理時間によっては複数回滞留する場合がある。このとき、その都度、滞留のフードバックを受け付けると、搬送サイクルの乱れが大きくなりスループットの低下を招く。このため、搬送制御部121は、一度フィードバックを送信した基板についてのフィードバックは受け付けないようにする。
【0036】
また、搬送制御部121は、設定されたインターバルが経過してインターバル設定モジュールから基板Wを搬出する際に、その基板Wの搬送先のモジュールで基板Wの滞留が発生していることが検知された場合、インターバル設定モジュールからの基板Wの搬出を停止する機能を有する。基板検知部123により滞留が解消したことが検知された場合、搬送制御部121は搬出停止を解除する。
【0037】
さらに、搬送制御部121は、先行する基板が存在しなくなった場合(先行基板の情報がソフト的にロストされた場合)、設定されたインターバル時間にかかわらず、インターバル設定モジュールから次の基板Wを即時搬出させる機能を有する。また、先行基板Wの搬送時間よりも設定されたインターバル時間が長い場合および先行基板Wのプロセスジョブがアボードされて基板が予定よりも早く戻ってきた場合も、基板が戻ってきた時点で、同様に、次の基板を即時搬出させる。
【0038】
さらに、搬送制御部121は、ロードロックモジュール(LLM1)の大気開放が遅い場合、インターバル設定モジュールから1枚目の基板Wを搬出する際に、インターバル設定値にかかわらず、大気開放処理が完了してから搬出する機能を有する。
【0039】
次に、以上のように構成された基板処理システム1における処理動作について説明する。以下の処理動作は制御部4による制御の下に実行される。
【0040】
まず、第2の搬送装置24によりロードポート22上のFOUP20から基板Wが取り出され、アライナーモジュール23に搬送される。アライナーモジュール23で基板Wがアライメントされた後、基板Wは、第2の搬送装置24により取り出され、ロードロックモジュールLLM1に搬送される。このときロードロックモジュールLLM1は大気圧であり、基板Wを受け取った後、真空排気される。
【0041】
その後、第1の搬送装置11における搬送モジュールTM1の搬送機構31aにより、基板WがロードロックモジュールLLM1内から取り出され、処理モジュールPM1に搬送される。そして、処理モジュールPM1で基板Wに対して所定の処理が実行される。その後、基板Wは、搬送モジュールTM1~TM5の搬送機構31a~31eにより、処理モジュールPM3、PM5、PM7、PM9、PM10、PM8、PM6、PM4、PM2に順次搬送され、これら処理モジュールで順次所定の処理が行われる。基板Wは、処理モジュールPM2での処理が終了した後、搬送モジュールTM1の搬送機構31aによりロードロックモジュールLLM2に搬送される。このときロードロックモジュールLLM2は真空であり、基板Wを受け取った後、大気開放される。
【0042】
その後、ロードロックモジュールLLM2内の基板Wは、第2の搬送装置24によりロードポート22のFOUP20内に搬送される。
【0043】
以上のような一連の処理を、複数枚の基板Wに対して繰り返し行う。
【0044】
従来、この種の基板処理システムにおける搬送系は、搬送効率を重視し、トリガー搬送により複数の基板を最短の時間で連続的に搬送するように制御されていた。
【0045】
しかし、各処理モジュールの処理時間は一定ではなく、1枚目の基板は待ち時間なく搬送できたとしても、2枚目以降の基板は、レシピ時間の長い処理モジュールより前の処理モジュールで待機せざるを得ず、これにより、プロセス結果が異なることがある。
【0046】
例えば、MRAMのMTJ膜の製造の場合には、前洗浄処理、成膜処理、酸化処理、加熱処理、冷却処理等の複数の処理が存在する。その際の処理時間は、例えば、処理モジュールPM7で最長の280秒、その前の処理モジュールPM1、PM3、PM5では数十秒である。したがって、2枚目以降の基板は、処理モジュールPM7での先行基板の処理が終了するまで処理モジュールPM1、PM3、PM5で待機することになる。
【0047】
このとき、待機する処理モジュールPM1、PM3、PM5で行われる処理が、酸化処理や冷却処理等の、待機中に基板の状態を変化させる可能性がある処理の場合、1枚目の基板と2枚目以降の基板とでプロセス結果が異なることがある。
【0048】
一方、ソフトウエアの機能で基板の間隔をあけることにより、後続基板の滞留を防止してプロセス結果の不均一を抑制することができるが、既存の制御を維持したまま基板の搬送間隔をあけると、スループットが低下してしまう。
【0049】
そこで、本実施形態では、インターバル設定部122により、搬出入部3の所定のモジュールからある基板を搬出した後、次の基板を搬出するまでのインターバルを設定し、搬送制御部121により、その設定されたインターバルの設定値で複数の基板をインターバル設定モジュールから順次搬出するように基板Wの搬送を制御する。
【0050】
これにより、基板Wの搬出インターバルを、処理に要求されるスループットに合わせて適切に設定することができ、スループットの低下を抑制しつつ、処理モジュールでの基板Wの滞留を解消して、基板による処理結果の不均一を抑制することができる。
【0051】
インターバル設定部122の設定値を、処理モジュールPM1~PM10のうち、処理時間が最も長いものの時間を基準として設定することにより、基板の滞留の発生をより有効に抑制することができる。
【0052】
また、インターバル設定部122が設定する設定値(パラメータ)を途中で変更可能とし、搬送制御部121がパラメータ変更を即時有効にすることにより、きめ細かい搬送制御を行うことができる。
【0053】
基板Wが全ての処理モジュールPM1~PM10で予定通り処理され、かつ予定通り搬送される場合は、このような機能のみで基板Wの滞留を有効に抑制することができる。しかし、実際には、処理モジュールにおいてエラーや突発的な遅れが生じて、予定通りの時間で処理できない場合があり、その場合は、上記機能があっても基板Wの滞留が生じてしまう。
【0054】
これに対しては、所定の処理モジュールで発生した滞留を、滞留検知部124により検知し、搬送制御部121にフィードバックし、インターバル設定部122で設定されたインターバルの設定値の残り時間を、当該処理モジュールからの搬出遅れ時間の分延長する。このときの滞留時間は基板が動き始めて初めてわかるので、滞留検知部124は、所定のモジュールからの基板Wの搬出遅れを検知したとき、すなわち、滞留が解消されて基板が動き始めたタイミングで滞留を検知する。そして、フィードバックを受けた搬送制御部121は、インターバル設定部122で設定された設定値(パラメータ)が滞留時間分延長されるように、タイマーを再設定する。これにより、予期せぬ基板Wの滞留が生じても、後続基板の待ち時間を抑制することができ、滞留の伝搬を防止することができる。
【0055】
このとき、再設定タイマーの最大値をインターバル設定部122でのインターバルの設定値とすることにより、スループットの低下を極力抑制することができる。
【0056】
また、滞留検知部124の滞留とみなす所定時間を設定可能とすることで、実質的に滞留したとみなされないような搬送モジュールの奪い合いや、処理ユニットでのプラズマ着火のリトライ等の軽微なものまで滞留と検知することを防止することができる。
【0057】
さらに、基板Wの滞留が解消して複数の基板が動き始めた際に、複数の基板からフィードバック信号が送信されることになるが、搬送制御部121は、最初に動き始めた基板Wのフィードバックのみを受け付けるようにする。初めに動き始めた基板Wの滞留時間が一番長く、これに対応してインターバル設定値のタイマーを延長すれば十分であり、これにより、基板搬送の過剰調整によるスループットの低下を抑制することができる。
【0058】
さらにまた、搬送制御部121は、一度フィードバックを送信した基板についてのフィードバックは受け付けないようにする。これにより、複数の基板が滞留した後、滞留が解消されたとき、複数回滞留する可能性がある2枚目以降の基板について、滞留が生じた都度、滞留のフードバックを受け付けて搬送サイクルが乱れることを回避することができる。つまり、これによっても、基板搬送の過剰調整によるスループットの低下を抑制することができる。
【0059】
さらにまた、搬送制御部121は、設定されたインターバルが経過してインターバル設定モジュールから基板Wを搬出する際に、その基板Wの搬送先のモジュールで基板Wの滞留が発生していることが検知された場合、基板Wの搬出を停止する機能を有する。これにより、インターバル設定モジュールから新たに搬出された基板Wが滞留する危険性を回避することができる。
【0060】
さらにまた、搬送制御部121は、先行する基板が存在しなくなった場合(先行基板の情報がソフト的にロストされた場合)、設定されたインターバル時間にかかわらず、インターバル設定モジュールから基板Wを即時搬出させる機能を有する。これにより、過剰な待ち時間を解消し、スループットをより高めることができる。また、先行基板Wの搬送時間よりも設定されたインターバル時間が長い場合および先行基板Wが予定よりも早く戻ってきた場合も、基板が戻ってきた時点で、同様に、次の基板を即時搬出させる機能を有するので、同様の効果が得られる。
【0061】
また、インターバル設定モジュール変更部125により、インターバル設定モジュールの変更を設定することができるので、インターバル設定モジュールを固定することによる不都合を解消することができる。例えば、ロードロックモジュールLLM1の大気開放の時間が長く、ロードポート22から基板Wを搬出する際にロードロックモジュールLLM1の大気開放を始めても、その基板WがロードロックモジュールLLM1に達する前に大気開放が終わらないことがある。そのような場合、ロードポート22(FOUP20)でインターバルを設定すると、搬送サイクルが乱れてしまう。そのような場合は、インターバル設定モジュールをアライナーモジュール23に変更することが有効である。ただし、第2の搬送装置24のピックが2本の場合、インターバル設定モジュールがアライナーモジュール23では不都合があるため、ロードロックモジュールLLM1の大気開放の時間が短いことを前提として、インターバル設定モジュールをロードポート22とする。
【0062】
ロードロックモジュール(LLM1)の大気開放が遅い場合、インターバル設定モジュールから1枚目の基板Wを搬出する際に、インターバル設定値にかかわらず、大気開放処理が完了してから搬出するように制御してもよい。これにより、インターバル設定の恩恵を受けない1枚目の基板Wが、ロードロックモジュールLLM1への搬入前に待機することを回避することができる。
【0063】
以上、実施形態について説明したが、今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の特許請求の範囲およびその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【0064】
例えば、実施形態の処理システム1は例示に過ぎず、複数の処理モジュールに対して基板を順次シリアルに搬送して処理するものであればよい。また、処理の例として、MRAMのMTJ膜の製造を挙げたが、これに限るものではない。
【符号の説明】
【0065】
1;処理システム
2;処理部
3;搬出入部
4;制御部
11;第1の搬送装置
20;FOUP
22;ロードポート
23;アライナーモジュール
24;第2の搬送装置
121;搬送制御部
122;インターバル設定部
123;基板検知部
124;滞留検知部
125;インターバル設定モジュール変更部
LLM1,LLM2;ロードロックモジュール
PM1~PM10;処理モジュール
TM1~TM5;搬送モジュール
W;基板