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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-29
(45)【発行日】2022-10-07
(54)【発明の名称】成膜方法及び成膜装置
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/08 20060101AFI20220930BHJP
   C23C 16/455 20060101ALI20220930BHJP
   H01L 21/285 20060101ALI20220930BHJP
   H01L 21/768 20060101ALI20220930BHJP
【FI】
C23C16/08
C23C16/455
H01L21/285 C
H01L21/90 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018177532
(22)【出願日】2018-09-21
(65)【公開番号】P2020045548
(43)【公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】成嶋 健索
(72)【発明者】
【氏名】堀田 隼史
(72)【発明者】
【氏名】松本 淳志
【審査官】山本 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-190020(JP,A)
【文献】特開2013-032575(JP,A)
【文献】特開2009-026864(JP,A)
【文献】国際公開第2015/080058(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/08
C23C 16/455
H01L 21/285
H01L 21/768
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に凹部を有し、前記凹部を覆うように下地膜が形成された基板が収容された処理容器内に塩化タングステンガスをパージを挟んで間欠的に供給することで、前記下地膜の一部をエッチングして前記下地膜の膜厚を減ずるエッチング工程と、
前記エッチング工程の後、前記処理容器内に前記塩化タングステンガスと前記塩化タングステンガスを還元する還元ガスとをパージを挟んで交互に供給することで、前記下地膜の上にタングステン膜を成膜する成膜工程と、
を有
前記下地膜は、前記タングステン膜とは異なる金属を含む膜からなり、
前記エッチング工程後の前記下地膜の膜厚は1Å~40Åである、
成膜方法。
【請求項2】
前記エッチング工程と前記成膜工程とは、同一の処理容器内で連続して行われる、
請求項1に記載の成膜方法。
【請求項3】
前記成膜工程は、
前記処理容器内に前記塩化タングステンガスを供給する第1ステップと、
前記処理容器内にパージガスを供給する第2ステップと、
前記処理容器内に前記還元ガスを供給する第3ステップと、
前記処理容器内にパージガスを供給する第4ステップと、
をこの順序で繰り返す工程であり、
前記エッチング工程は、
前記成膜工程の前記第3ステップにおいて前記還元ガスを供給することなく、前記第1ステップ、前記第2ステップ、前記第3ステップ、及び前記第4ステップをこの順序で繰り返す工程である、
請求項1又は2に記載の成膜方法。
【請求項4】
前記エッチング工程の前に行われ、前記塩化タングステンガスを、前記処理容器をバイパスして排気配管に接続されるエバックラインに供給して排気する初期流量安定化工程を有する、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の成膜方法。
【請求項5】
前記初期流量安定化工程では、前記エッチング工程と同一又は略同一の周期で前記塩化タングステンガスを間欠的に供給する、
請求項4に記載の成膜方法。
【請求項6】
前記基板の表面には凹部が形成され、
前記下地膜は少なくとも前記凹部内に形成されており、
前記成膜工程では、前記凹部内に前記タングステン膜を成膜して前記凹部を埋め込む、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の成膜方法。
【請求項7】
前記下地膜は、TiN膜であり、
前記塩化タングステンガスは、WClを昇華させて生成したガスであり、
前記還元ガスは、Hガスである、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の成膜方法。
【請求項8】
表面に凹部を有し、前記凹部を覆うように下地膜が形成された基板を収容する処理容器と、
前記処理容器内に塩化タングステンガス及び前記塩化タングステンガスを還元する還元ガスを供給する処理ガス供給機構と、
制御部と、
を有し、
前記制御部は、
前記処理容器内に塩化タングステンガスをパージを挟んで間欠的に供給することで、前記下地膜の一部をエッチングして前記下地膜の膜厚を減ずるエッチング工程と、
前記処理容器内に前記塩化タングステンガスと前記塩化タングステンガスを還元する還元ガスとをパージを挟んで交互に供給することで、前記下地膜の上にタングステン膜を成膜する成膜工程と、
をこの順序で実行するように構成され
前記下地膜は、前記タングステン膜とは異なる金属を含む膜からなり、
前記エッチング工程後の前記下地膜の膜厚は1Å~40Åである、
成膜装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、成膜方法及び成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トレンチ、ホール等の凹部内にTiN膜等の下地膜を形成した後、下地膜の上にタングステン膜を成膜することにより、凹部内をタングステン膜で埋め込む技術が知られている。タングステン膜を成膜する方法としては、基板を収容する処理容器内に、塩化タングステンガス及び還元ガスを供給し、基板上で塩化タングステンガス及び還元ガスを反応させる方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2015/080058号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、下地膜を薄膜化して凹部に埋め込まれるタングステン膜の割合を高めることができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様による成膜方法は、表面に凹部を有し、前記凹部を覆うように下地膜が形成された基板が収容された処理容器内に塩化タングステンガスをパージを挟んで間欠的に供給することで、前記下地膜の一部をエッチングして前記下地膜の膜厚を減ずるエッチング工程と、前記エッチング工程の後、前記処理容器内に前記塩化タングステンガスと前記塩化タングステンガスを還元する還元ガスとをパージを挟んで交互に供給することで、前記下地膜の上にタングステン膜を成膜する成膜工程と、を有前記下地膜は、前記タングステン膜とは異なる金属を含む膜からなり、前記エッチング工程後の前記下地膜の膜厚は1Å~40Åである
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、下地膜を薄膜化して凹部に埋め込まれるタングステン膜の割合を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】成膜装置の構成例を示す概略図
図2】成膜方法の一例を示すフローチャート
図3】エッチング工程及び成膜工程のガス供給シーケンスの一例を示す図
図4】成膜方法の一例を示す工程断面図
図5】従来の成膜方法の説明図
図6】エッチング工程のサイクル数と下地膜のエッチング量との関係の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付の図面を参照しながら、本開示の限定的でない例示の実施形態について説明する。添付の全図面中、同一又は対応する部材又は部品については、同一又は対応する参照符号を付し、重複する説明を省略する。
【0009】
(成膜装置)
一実施形態に係る成膜装置について説明する。図1は、成膜装置の構成例を示す概略図である。図1に示される成膜装置は、原子層堆積(ALD:Atomic Layer Deposition)法によりタングステン膜を成膜できる装置である。
【0010】
図1に示されるように、成膜装置は、処理容器1と、載置台2と、シャワーヘッド3と、排気部4と、処理ガス供給機構5と、制御部6と、を有する。
【0011】
処理容器1は、アルミニウム等の金属により構成され、略円筒状を有する。処理容器1の側壁には、ウエハWを搬入又は搬出するための搬入出口11が形成されている。搬入出口11は、ゲートバルブ12により開閉される。処理容器1の本体の上には、断面が矩形状をなす円環状の排気ダクト13が設けられている。排気ダクト13には、内周面に沿ってスリット13aが形成されている。排気ダクト13の外壁には、排気口13bが形成されている。排気ダクト13の上面には、処理容器1の上部開口を塞ぐように天壁14が設けられている。排気ダクト13と天壁14との間はシールリング15で気密に封止されている。
【0012】
載置台2は、処理容器1内で基板の一例である半導体ウエハ(以下「ウエハW」という。)を水平に支持する。載置台2は、ウエハWに対応した大きさの円板状をなし、支持部材23に支持されている。載置台2は、窒化アルミニウム(AlN)等のセラミックス材料や、アルミニウムやニッケル基合金等の金属材料で構成されている。載置台2の内部には、ウエハWを加熱するためのヒータ21が埋め込まれている。ヒータ21は、ヒータ電源(図示せず)から給電されて発熱する。そして、載置台2の上面のウエハ載置面近傍に設けられた熱電対(図示せず)の温度信号によりヒータ21の出力を制御することにより、ウエハWが所定の温度に制御される。
【0013】
載置台2には、ウエハ載置面の外周領域、及び載置台2の側面を覆うようにアルミナ等のセラミックスからなるカバー部材22が設けられている。
【0014】
支持部材23は、載置台2の底面中央から処理容器1の底壁に形成された孔部を貫通して処理容器1の下方に延び、その下端が昇降機構24に接続されている。載置台2は、昇降機構24により支持部材23を介して、図1で示す処理位置と、その下方の二点鎖線で示すウエハの搬送が可能な搬送位置との間で昇降する。支持部材23の処理容器1の下方には、鍔部25が取り付けられている。処理容器1の底面と鍔部25との間には、処理容器1内の雰囲気を外気と区画し、載置台2の昇降動作にともなって伸縮するベローズ26が設けられている。
【0015】
処理容器1の底面近傍には、昇降板27aから上方に突出するように3本(2本のみ図示)のウエハ支持ピン27が設けられている。ウエハ支持ピン27は、処理容器1の下方に設けられた昇降機構28により昇降板27aを介して昇降可能になっており、搬送位置にある載置台2に設けられた貫通孔2aに挿通されて載置台2の上面に対して突没可能となっている。このようにウエハ支持ピン27を昇降させることにより、ウエハ搬送機構(図示せず)と載置台2との間でウエハWの受け渡しが行われる。
【0016】
シャワーヘッド3は、処理容器1内に処理ガスをシャワー状に供給する。シャワーヘッド3は、金属により形成され、載置台2に対向するように設けられており、載置台2とほぼ同じ直径を有している。シャワーヘッド3は、処理容器1の天壁14に固定された本体部31と、本体部31の下に接続されたシャワープレート32と、を有する。本体部31とシャワープレート32との間にはガス拡散空間33が形成されている。ガス拡散空間33には、本体部31及び処理容器1の天壁14の中央を貫通するようにガス導入孔36が設けられている。シャワープレート32の周縁部には、下方に突出する環状突起部34が形成されている。シャワープレート32の環状突起部34の内側の平坦面には、ガス吐出孔35が形成されている。
【0017】
載置台2が処理位置に存在した状態では、載置台2とシャワープレート32との間に処理空間37が形成され、載置台2のカバー部材22の上面と環状突起部34とが近接して環状隙間38が形成される。
【0018】
排気部4は、処理容器1の内部を排気する。排気部4は、排気ダクト13の排気口13bに接続された排気配管41と、排気配管41に接続された排気機構42と、を有する。排気機構42は、真空ポンプや圧力制御バルブ等を有する。処理に際しては、処理容器1内のガスはスリット13aを介して排気ダクト13に至り、排気ダクト13から排気部4の排気機構42により排気配管41を通って排気される。
【0019】
処理ガス供給機構5は、シャワーヘッド3に処理ガスを供給する。処理ガス供給機構5は、WClガス供給機構G1、Hガス供給源G2、第1のNガス供給源G3、及び第2のNガス供給源G4を有する。
【0020】
WClガス供給機構G1は、処理容器1内に、WClガス供給ラインL1を介して塩化タングステンガスの一例である六塩化タングステン(WCl)ガスを供給する。WClガス供給ラインL1は、WClガス供給機構G1から延びるラインである。
【0021】
WClガス供給ラインL1には、上流側から順に、開閉バルブ96a、開閉バルブ96b、流量計97、バッファタンクT1、及び開閉バルブV1が設けられている。開閉バルブ96a,96bは、WClガス供給ラインL1の成膜原料タンク91の近傍に設けられている。流量計97は、WClガス供給ラインL1を流れるWClガスの流量を検出する。バッファタンクT1は、WClガスを一時的に貯留し、短時間で必要なWClガスを供給する。開閉バルブV1は、ALDの際にガスの供給及び停止を切り替えるためのバルブであり、例えば高速で開閉可能なALDバルブである。ALDバルブは、0.5秒以下の間隔で開閉可能であることが好ましく、0.01秒以下の間隔で開閉可能であることがより好ましい。
【0022】
WClガス供給機構G1は、常温で固体の固体原料であるWClを収容する原料容器である成膜原料タンク91を有する。成膜原料タンク91の周囲にはヒータ91aが設けられている。ヒータ91aは、成膜原料タンク91内の成膜原料を適宜の温度に加熱して、WClを昇華させる。成膜原料タンク91内には、WClガス供給ラインL1が上方から挿入されている。
【0023】
また、WClガス供給機構G1には、成膜原料タンク91内に上方からキャリアガス配管92の一端が挿入されている。キャリアガス配管92の他端は、キャリアNガス供給源93に接続されている。キャリアNガス供給源93は、キャリアガス配管92にキャリアガスの一例であるNガスを供給する。
【0024】
キャリアガス配管92には、上流側から順に、マスフローコントローラ94、開閉バルブ95a、及び開閉バルブ95bが設けられている。マスフローコントローラ94は、キャリアガス配管92を流れるキャリアNガスの流量を制御する。
【0025】
キャリアガス配管92における開閉バルブ95aと開閉バルブ95bとの間の位置と、WClガス供給ラインL1における開閉バルブ96aと開閉バルブ96bとの間の位置とを繋ぐように、バイパス配管98が設けられている。バイパス配管98は、キャリアNガス供給源93からキャリアガス配管92に供給されるキャリアNガスを、成膜原料タンク91を経由することなくWClガス供給ラインL1に供給する配管である。バイパス配管98には、開閉バルブ99が介設されている。開閉バルブ95b,96aを閉じて開閉バルブ95a,99,96bを開くことにより、キャリアNガス供給源93から供給されるNガスがキャリアガス配管92、バイパス配管98を経て、WClガス供給ラインL1に供給される。これにより、WClガス供給ラインL1をパージできる。
【0026】
WClガス供給ラインL1における流量計97の上流側には、希釈ガスであるNガスを供給する希釈Nガス供給ライン100の下流側の端部が合流している。希釈Nガス供給ライン100の上流側の端部には、Nガスの供給源である希釈Nガス供給源101が設けられている。希釈Nガス供給ライン100には、上流側から順に、マスフローコントローラ102及び開閉バルブ103が介設されている。
【0027】
WClガス供給ラインL1におけるバッファタンクT1と開閉バルブV1との間には、エバックライン104の一端が接続されている。エバックライン104は、処理容器1をバイパスしてWClガス供給ラインL1と排気配管41とを接続する配管である。エバックライン104の他端は、排気配管41に接続されている。これにより、エバックライン104を介してバッファタンクT1内を排気機構42により排気できる。
【0028】
エバックライン104には、上流側から順に、開閉バルブ105、オリフィス107、及び開閉バルブ106が介設されている。
【0029】
開閉バルブ105は、高速で開閉可能なALDバルブである。ALDバルブは、0.5秒以下の間隔で開閉可能であることが好ましく、0.01秒以下の間隔で開閉可能であることがより好ましい。開閉バルブ105の開閉動作により、成膜原料タンク91から供給されるWClガスをエバックライン104に間欠的に供給できる。開閉バルブ105は、開閉バルブV1と同一又は略同一の速度で開閉可能なバルブであることが好ましい。これにより、成膜原料タンク91から開閉バルブV1を介して処理空間37に供給されるWClガスと同様の周期で、エバックライン104にWClガスを供給・排気できる。
【0030】
オリフィス107は、開閉バルブ105と開閉バルブ106との間に設けられている。オリフィス107は、エバックライン104内の圧力を、プロセス時の処理容器1内の圧力に近づけるために設けられている。
【0031】
開閉バルブ106は、オリフィス107の下流側に設けられている。開閉バルブ106を開くことで、エバックライン104内が排気機構42により排気される。
【0032】
エバックライン104における開閉バルブ105の下流側、且つオリフィス107の上流側には、エバックライン104に圧力調整用ガスを供給する圧力調整用ガス供給ライン110の下流側の端部が合流している。圧力調整用ガス供給ライン110の上流側の端部には、圧力調整用ガスの供給源である圧力調整用ガス供給源111が設けられている。圧力調整用ガス供給ライン110には、上流側から順に、マスフローコントローラ112及び開閉バルブ113が介設されている。圧力調整用ガス供給源111から供給され、マスフローコントローラ112で流量が調整された圧力調整用ガスは、圧力調整用ガス供給ライン110を通ってエバックライン104に供給される。圧力調整用ガスは、例えばNガスであってよい。
【0033】
ガス供給源G2は、処理容器1内に、Hガス供給ラインL2を介して還元ガスの一例であるHガスを供給する。Hガス供給ラインL2は、Hガス供給源G2から延びるラインである。WClガス供給ラインL1及びHガス供給ラインL2は、合流配管L0に合流しており、合流配管L0は、前述したガス導入孔36に接続されている。Hガス供給ラインL2には、上流側から順に、マスフローコントローラM2、バッファタンクT2、開閉バルブV2が設けられている。マスフローコントローラM2は、Hガス供給ラインL2を流れるHガスの流量を制御する。バッファタンクT2は、Hガスを一時的に貯留し、短時間で必要なHガスを供給する。開閉バルブV2は、ALDの際にガスの供給及び停止を切り替えるためのバルブであり、例えば高速で開閉可能なALDバルブである。ALDバルブは、0.01秒から1.0秒の間隔で開閉可能であることが好ましい。
【0034】
第1のNガス供給源G3は、処理容器1内に、第1のNガス供給ラインL3を介してパージガスの一例であるNガスを供給する。第1のNガス供給ラインL3は、第1のNガス供給源G3から延び、WClガス供給ラインL1側にNガスを供給するラインである。第1のNガス供給ラインL3は、ALD法による成膜中に常にNガスを供給する第1の連続Nガス供給ラインL31と、パージステップのときのみNガスを供給する第1のフラッシュパージラインL32とに分岐している。第1の連続Nガス供給ラインL31及び第1のフラッシュパージラインL32は第1の接続ラインL33に接続され、第1の接続ラインL33はWClガス供給ラインL1に接続されている。第1の連続Nガス供給ラインL31には、上流側から順に、マスフローコントローラM31、開閉バルブV31が設けられている。第1のフラッシュパージラインL32には、上流側から順に、マスフローコントローラM32、開閉バルブV32が設けられている。マスフローコントローラM31,M32は、それぞれ第1の連続Nガス供給ラインL31及び第1のフラッシュパージラインL32を流れるNガスの流量を制御する。開閉バルブV31及び開閉バルブV32は、ALDの際にガスの供給及び停止を切り替えるためのバルブであり、例えば高速で開閉可能なALDバルブである。ALDバルブは、0.01秒から1.0秒の間隔で開閉可能であることが好ましい。
【0035】
第2のNガス供給源G4は、処理容器1内に、第2のNガス供給ラインL4を介してパージガスの一例であるNガスを供給する。第2のNガス供給ラインL4は、第2のNガス供給源G4から延び、Hガス供給ラインL2側にNガスを供給するラインである。第2のNガス供給ラインL4は、ALD法による成膜中に常にNガスを供給する第2の連続Nガス供給ラインL41と、パージステップのときのみNガスを供給する第2のフラッシュパージラインL42とに分岐している。第2の連続Nガス供給ラインL41、及び第2のフラッシュパージラインL42は第2の接続ラインL43に接続され、第2の接続ラインL43はHガス供給ラインL2に接続されている。第2の連続Nガス供給ラインL41には、上流側から順に、マスフローコントローラM41、開閉バルブV41が設けられている。第2のフラッシュパージラインL42には、上流側から順に、マスフローコントローラM42、開閉バルブV42が設けられている。マスフローコントローラM41,M42は、それぞれ第2の連続Nガス供給ラインL41及び第2のフラッシュパージラインL42を流れるNガスの流量を制御する。開閉バルブV41及び開閉バルブV42は、ALDの際にガスの供給及び停止を切り替えるためのバルブであり、例えば高速で開閉可能なALDバルブである。ALDバルブは、0.01秒から1.0秒の間隔で開閉可能であることが好ましい。
【0036】
制御部6は、成膜装置の各部の動作を制御する。制御部6は、例えばコンピュータであってよい。成膜装置の各部の動作を行うコンピュータのプログラムは、記憶媒体に記憶されている。記憶媒体は、例えばフレキシブルディスク、コンパクトディスク、ハードディスク、フラッシュメモリ、DVD等であってよい。
【0037】
(成膜方法)
一実施形態に係る成膜方法について、図1の成膜装置を用いてタングステン膜を成膜する場合を例に挙げて説明する。一実施形態に係る成膜方法は、制御部6が成膜装置の各部の動作を制御することにより実行される。図2は、成膜方法の一例を示すフローチャートである。
【0038】
図2に示されるように、一実施形態に係る成膜方法は、初期流量安定化工程S1、エッチング工程S2、及び成膜工程S3をこの順序で行うことにより、基板の表面に形成された下地膜の上にタングステン膜を成膜する方法である。但し、初期流量安定化工程S1は省略してもよい。
【0039】
以下、各工程について説明する。図3は、エッチング工程S2及び成膜工程S3のガス供給シーケンスの一例を示す図である。図4は、成膜方法の一例を示す工程断面図である。図4(a)はエッチング工程S2前の基板の断面を示し、図4(b)はエッチング工程S2後の基板の断面を示し、図4(c)は成膜工程S3後の基板の断面を示す。なお、以下では、開閉バルブV1,V2,V31,V32,V41,V42が閉じている状態から一実施形態に係る成膜方法を実施する場合を一例として説明する。
【0040】
まず、載置台2を搬送位置に下降させた状態でゲートバルブ12を開き、搬送装置(図示せず)によりウエハWを、搬入出口11を介して処理容器1内に搬入し、ヒータ21により所定温度(例えば、350℃~550℃)に加熱された載置台2上に載置する。続いて、載置台2を処理位置まで上昇させ、処理容器1内を所定圧力まで減圧する。その後、開閉バルブV31,V41を開く。これにより、第1のNガス供給源G3及び第2のNガス供給源G4から、第1の連続Nガス供給ラインL31及び第2の連続Nガス供給ラインL41を経てNガスを処理容器1内に供給して圧力を上昇させ、載置台2上のウエハWの温度を安定させる。ウエハWとしては、例えば図4(a)に示されるように、凹部501aを有するシリコン膜501の表面に下地膜502が形成されたものを利用できる。但し、シリコン膜501に代えてシリコン酸化膜であってもよい。下地膜502としては、TiN膜、TiSiN膜、Tiシリサイド膜、Ti膜、TiO膜、TiAlN膜等のチタン系材料膜、TaN、TaSiN等のタンタル系材料膜、WN膜、WSix膜、WSiN膜等のタングステン系化合物膜が挙げられる。下地膜502は同じ真空搬送系を介した別の装置で成膜処理されてもよい。また、下地膜502はエッチング工程S2と同一の処理容器1内でエッチング工程S2に先立って成膜処理されてもよい。このように下地膜502を成膜処理した後、下地膜502を大気に曝露することなくエッチング工程S2を行うことにより、下地膜502の表面の酸化が防止され、エッチング工程S2において下地膜502のエッチング速度にばらつきが生じることを抑制できる。なお、下地膜502の膜厚は1Åから50Å程度である。
【0041】
続いて、初期流量安定化工程S1を実行する。初期流量安定化工程S1は、エバックライン104にWClガスを間欠的に供給する工程であり、処理容器1内にウエハWが搬入された後に実行される。
【0042】
初期流量安定化工程S1では、まず、WClガス供給ラインL1にWClガスを供給し、バッファタンクT1内にWClガスを充填させる。具体的には、開閉バルブV1,105を閉じた状態で、開閉バルブ95a,95b,96a,96bを開くことにより、キャリアNガス供給源93及び成膜原料タンク91からWClガス供給ラインL1にそれぞれNガス及びWClガスを供給する。また、開閉バルブ103を開くことにより、希釈Nガス供給ライン100からWClガス供給ラインL1にNガスを供給する。WClガス供給ラインL1に供給されたWClガス及びNガスは、バッファタンクT1内に充填される。
【0043】
バッファタンクT1内にWClガス及びNガスが充填された後、エバックライン104にWClガス及びNガスを間欠的に供給する。具体的には、開閉バルブV1を閉じた状態で開閉バルブ105を高速で開閉動作させることにより、エバックライン104にWClガス及びNガスを間欠的に供給する。また、開閉バルブ106を開き、エバックライン104に供給されるWClガス及びNガスを、オリフィス107を介して排気機構42により排気する。これにより、エッチング工程S2に先立って、処理容器1内にWClガス及びNガスを供給することなく、エッチング工程S2と略同等のガス供給環境を実現できるので、エッチング工程S2の開始時におけるWClガスの流量が短時間で安定化する。開閉バルブ105の開閉タイミングは、エッチング工程S2における開閉バルブV1の開閉タイミングと同一又は略同一であることが好ましい。これにより、エッチング工程S2におけるガス供給環境を高い精度で実現できる。
【0044】
また、初期流量安定化工程S1では、エバックライン104内の圧力を成膜中の処理空間37の圧力により近づけるために、開閉バルブ113を開いて圧力調整用ガス供給源111からエバックライン104に圧力調整用ガスを供給することが好ましい。このとき、マスフローコントローラ112により、エバックライン104内の圧力が成膜中の処理空間37の圧力と略同一となるように、エバックライン104に供給する圧力調整用ガスの流量を調整することが好ましい。
【0045】
続いて、エッチング工程S2を実行する。エッチング工程S2は、ウエハWが収容された処理容器1内に塩化タングステンガスの一例であるWClガスをパージを挟んで間欠的に供給することで、下地膜の一部をエッチングして下地膜の膜厚を減ずる工程である。エッチング工程S2では、図3に示されるように、第1ステップS21~第4ステップS24を順番に行う一連の動作を所定の回数繰り返すことで、図4(b)に示されるように、下地膜502の一部をエッチングして下地膜502を所定の膜厚に薄膜化する。所定の回数は、例えば予め定められたエッチング工程のサイクル数と下地膜のエッチング量との関係を示す関係情報に基づいて定められる。関係情報は、例えば図6に示されるようにエッチング工程のサイクル数と下地膜のエッチング量との関係を示すグラフであってよい。また、関係情報は、例えばテーブル、数式等であってもよい。これらの関係情報は、例えば予備実験の結果に基づいて生成される。一実施形態では、所定の回数は1回~100回であり、所定の膜厚は1Å~40Åである。エッチング工程S2の第1ステップS21~第4ステップS24は、還元ガスを供給しない点を除いて、それぞれ後述する成膜工程S3の第1ステップS31~第4ステップS34と同様であってよい。
【0046】
第1ステップS21は、原料ガスであるWClガスを処理空間37に供給するステップである。第1ステップS21では、開閉バルブV31,V41を開いた状態で、第1のNガス供給源G3及び第2のNガス供給源G4から第1の連続Nガス供給ラインL31及び第2の連続Nガス供給ラインL41を経てNガス(連続パージNガス)を供給する。一実施形態では、連続パージNガスの合計の流量は200sccm~5000sccmである。また、開閉バルブV1を開くことにより、WClガス供給機構G1からWClガス供給ラインL1を経てWClガスを処理空間37に供給する。このとき、バッファタンクT1に一旦貯留され、初期流量安定化工程S1により安定化された流量のWClガスが供給される。一実施形態では、WClガスの流量は10mg/min~200mg/minである。
【0047】
第2ステップS22は、処理空間37の余剰のWClガス等をパージするステップである。第2ステップS22では、第1の連続Nガス供給ラインL31及び第2の連続Nガス供給ラインL41を介してのNガスの供給を継続した状態で、開閉バルブV1を閉じてWClガスの供給を停止する。また、開閉バルブV32,V42を開くことにより、第1のフラッシュパージラインL32及び第2のフラッシュパージラインL42からもNガス(フラッシュパージNガス)を供給する。これにより、大流量のNガスにより、処理空間37の余剰のWClガス等をパージする。
【0048】
第3ステップS23は、連続パージNガスのみを処理空間37に供給するステップである。第3ステップS23では、開閉バルブV32,V42を閉じて第1のフラッシュパージラインL32及び第2のフラッシュパージラインL42からのNガスの供給を停止する。一方、第1の連続Nガス供給ラインL31及び第2の連続Nガス供給ラインL41を介してのNガスの供給を継続する。
【0049】
第4ステップS24は、処理空間37をパージするステップである。第4ステップS24では、第1の連続Nガス供給ラインL31及び第2の連続Nガス供給ラインL41を介してのNガスの供給を継続した状態で、開閉バルブV32,V42を開く。これにより、第1のフラッシュパージラインL32及び第2のフラッシュパージラインL42からNガス(フラッシュパージNガス)を供給し、大流量のNガスにより、処理空間37をパージする。
【0050】
続いて、成膜工程S3を実行する。成膜工程S3は、処理容器1内にWClガスとWClガスを還元する還元ガスの一例であるHガスとをパージを挟んで交互に供給することで、下地膜の上にタングステン膜を成膜する工程である。成膜工程S3では、図3に示されるように、第1ステップS31~第4ステップS34を順番に行う一連の動作を所定の回数繰り返す。これにより、図4(c)に示されるように、エッチング工程S2において薄膜化された下地膜502の上に所望の膜厚のタングステン膜503を成膜する。一実施形態では、所定の回数は20回~200回である。
【0051】
第1ステップS31は、原料ガスであるWClガスを処理空間37に供給するステップである。第1ステップS31では、開閉バルブV31,V41を開いた状態で、第1のNガス供給源G3及び第2のNガス供給源G4から第1の連続Nガス供給ラインL31及び第2の連続Nガス供給ラインL41を経てNガス(連続パージNガス)を供給する。一実施形態では、連続パージNガスの合計の流量は200sccm~5000sccmである。また、開閉バルブV1を開くことにより、WClガス供給機構G1からWClガス供給ラインL1を経てWClガスを処理空間37に供給する。このとき、バッファタンクT1に一旦貯留されたWClガスが供給される。一実施形態では、WClガスの流量は10mg/min~200mg/minである。
【0052】
第2ステップS32は、処理空間37の余剰のWClガス等をパージするステップである。第2ステップS32では、第1の連続Nガス供給ラインL31及び第2の連続Nガス供給ラインL41を介してのNガスの供給を継続した状態で、開閉バルブV1を閉じてWClガスの供給を停止する。また、開閉バルブV32,V42を開くことにより、第1のフラッシュパージラインL32及び第2のフラッシュパージラインL42からもNガス(フラッシュパージNガス)を供給する。これにより、大流量のNガスにより、処理空間37の余剰のWClガス等をパージする。
【0053】
第3ステップS33は、還元ガスであるHガスを処理空間37に供給するステップである。第3ステップS33では、開閉バルブV32,V42を閉じて第1のフラッシュパージラインL32及び第2のフラッシュパージラインL42からのNガスの供給を停止する。また、第1の連続Nガス供給ラインL31及び第2の連続Nガス供給ラインL41を介してのNガスの供給を継続した状態で、開閉バルブV2を開く。これにより、Hガス供給源G2からHガス供給ラインL2を経て還元ガスの一例であるHガスを処理空間37に供給する。このとき、Hガスは、バッファタンクT2に一旦貯留された後に処理容器1内に供給される。第3ステップS33により、ウエハW上に吸着したWClガスが還元される。このときのHガスの流量は、十分に還元反応が生じる量とすることができる。
【0054】
第4ステップS34は、処理空間37の余剰のHガスをパージするステップである。第4ステップS34では、第1の連続Nガス供給ラインL31及び第2の連続Nガス供給ラインL41を介してのNガスの供給を継続した状態で、開閉バルブV2を閉じてHガス供給ラインL2からのHガスの供給を停止する。また、開閉バルブV32,V42を開き、第1のフラッシュパージラインL32及び第2のフラッシュパージラインL42からもNガス(フラッシュパージNガス)を供給し、大流量のNガスにより、処理空間37の余剰のHガスをパージする。
【0055】
以上に説明したように、一実施形態に係る成膜方法によれば、凹部501aを有するシリコン膜501の表面に連続膜である下地膜502が形成されたウエハWに対し、エッチング工程S2及び成膜工程S3をこの順序で行う。これにより、エッチング工程S2において下地膜502を所定の膜厚(例えば1Å~40Å)に薄膜化しても連続膜の状態が維持される。そのため、成膜工程S3においてタングステン膜503をシリコン膜501へダメージを与えることなく、また、良好な密着性で成膜できる。また、凹部501a内の下地膜502を薄膜化することで、凹部に埋め込まれるタングステン膜の割合を高めることができる。その結果、凹部501aに埋め込まれるタングステン膜の抵抗を小さくできる。
【0056】
ところで、凹部501aを有するシリコン膜501の表面に初めから膜厚が薄い下地膜502を成膜することも考えられる。しかし、この場合、図5に示されるように、下地膜502が島状に形成されて不連続膜になる。そのため、成膜工程S3においてタングステン膜503をシリコン膜501へダメージを与えることなく、また、良好な密着性で成膜することが困難である。なお、図5は、従来の成膜方法の説明図である。
【0057】
また、一実施形態に係る成膜方法によれば、エッチング工程S2と成膜工程S3とが同一の処理容器内で連続して行われる。これにより、下地膜502の表面が酸化されることを防止できるので、成膜工程S3においてタングステン膜503をより酸素を含まない低抵抗、かつ、良好な密着性で成膜できる。
【0058】
また、一実施形態に係る成膜方法によれば、エッチング工程S2の第1ステップS21~第4ステップS24は、還元ガスを供給しない点を除いて、それぞれ成膜工程S3の第1ステップS31~第4ステップS34と同様である。これにより、エッチング工程S2と成膜工程S3の切り替えに伴う固体原料の不安定化を発生させることなく、安定供給が可能となる。
【0059】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【0060】
上記の実施形態では、塩化タングステンガスとしてWClガスを用いる場合を例に挙げて説明したが、これに限定されず、例えば五塩化タングステン(WCl)ガスを用いることもでき、WClガスを用いてもWClガスとほぼ同じ挙動を示す。WClガスを用いる場合、成膜原料としては常温で固体のWClを利用できる。
【0061】
また、上記の実施形態では、還元ガスとしてHガスを用いる場合を例に挙げて説明したが、水素を含む還元性のガスであればよく、Hガスの他に、SiHガス、Bガス、NHガス等を用いることもできる。Hガス、SiHガス、Bガス、及びNHガスのうち2つ以上を供給できるようにしてもよい。また、これら以外の他の還元ガス、例えばPHガス、SiHClガスを用いてもよい。膜中の不純物をより低減して低抵抗値を得る観点からは、Hガスを用いることが好ましい。さらに、パージガス及びキャリアガスとしてNガスの代わりにArガス等の他の不活性ガスを用いることもできる。
【0062】
また、上記の実施形態では、基板として半導体ウエハを例に挙げて説明したが、半導体ウエハはシリコンウエハであってもよく、GaAs、SiC、GaN等の化合物半導体ウエハであってもよい。さらに、基板は半導体ウエハに限定されず、液晶表示装置等のFPD(フラットパネルディスプレイ)に用いるガラス基板や、セラミック基板等であってもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 処理容器
4 排気部
5 処理ガス供給機構
6 制御部
41 排気配管
104 エバックライン
501 シリコン膜
501a 凹部
502 下地膜
503 タングステン膜
G1 WClガス供給機構
G2 Hガス供給源
図1
図2
図3
図4
図5
図6