(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-29
(45)【発行日】2022-10-07
(54)【発明の名称】基板洗浄方法および基板洗浄装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20220930BHJP
【FI】
H01L21/304 648G
H01L21/304 644C
H01L21/304 644B
H01L21/304 643A
(21)【出願番号】P 2019020880
(22)【出願日】2019-02-07
【審査請求日】2021-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】230112025
【氏名又は名称】小林 英了
(74)【代理人】
【識別番号】230117802
【氏名又は名称】大野 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100106840
【氏名又は名称】森田 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100131451
【氏名又は名称】津田 理
(74)【代理人】
【識別番号】100167933
【氏名又は名称】松野 知紘
(74)【代理人】
【識別番号】100174137
【氏名又は名称】酒谷 誠一
(74)【代理人】
【識別番号】100184181
【氏名又は名称】野本 裕史
(72)【発明者】
【氏名】石橋 知淳
(72)【発明者】
【氏名】石川 浩
(72)【発明者】
【氏名】西嶋 真澄
【審査官】安田 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-148179(JP,A)
【文献】特開2002-198345(JP,A)
【文献】特開平11-244796(JP,A)
【文献】特開2017-183516(JP,A)
【文献】特開2018-164036(JP,A)
【文献】特開平11-040530(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転する基板に洗浄部材が接触した状態で、前記洗浄部材を前記基板上の第1位置と、前記基板の縁近傍である第2位置との間で移動させることをn(nは2以上の整数)回行う基板の洗浄方法であって、
前記洗浄部材を移動させる駆動部を制御する制御部は、
1~(n-1)回目のうちの少なくとも1回において、前記洗浄部材が前記第2位置に到達した後に、所定時間、前記基板上の第2位置に前記洗浄部材が接触したまま前記基板の洗浄を行うエッジ洗浄工程を実行するように前記駆動部を制御し、
n回目において、前記洗浄部材が前記基板の前記第2位置に到達した時点で、前記洗浄部材が前記基板から離間するように前記駆動部を制御する、基板洗浄方法。
【請求項2】
回転する基板に洗浄部材が接触した状態で、前記洗浄部材を前記基板上の第1位置と、前記基板の縁近傍である第2位置との間で移動させることをn(nは2以上の整数)回行う基板の洗浄方法であって、
前記洗浄部材を移動させる駆動部を制御する制御部は、
1~(n-1)回目のうちの少なくとも1回において、前記洗浄部材が前記第2位置に到達した後に、所定時間、前記基板上の第2位置に前記洗浄部材が接触したまま前記基板の洗浄を行うエッジ洗浄工程を実行するように前記駆動部を制御し、
n回目において、前記洗浄部材が前記基板の第2位置に到達した後に、前記所定時間が経過する前に、前記洗浄部材が前記基板から離間するように前記駆動部を制御する、基板洗浄方法。
【請求項3】
前記制御部は、1~(n-1)回目のうちの少なくとも1回において、前記洗浄部材が前記第2位置に到達したことを示す信号を受信した後、前記エッジ洗浄工程を実行するように前記駆動部を制御する、請求項1または2に記載の基板洗浄方法。
【請求項4】
前記第1位置は前記基板上の中心またはその近傍であり、
前記制御部は、
(a)前記基板上の第1位置に洗浄部材が接触し、
(b)前記基板に前記基板を洗浄させた状態で前記洗浄部材が前記基板上の第2位置に移動し、
(c)前記基板上の第2位置に達した前記洗浄部材が前記基板から離間すること、をn回行うよう前記駆動部を制御し、かつ、
前記制御部は、
1~(n-1)回目のうちの少なくとも1回における上記(c)で、前記洗浄部材が前記第2位置に到達した後に、前記エッジ洗浄工程を実行するように前記駆動部を制御する、請求項1乃至3のいずれかに記載の基板洗浄方法。
【請求項5】
前記基板の外周の一部を保持部材で保持して前記基板を回転させ、
前記第2位置は、前記洗浄部材が前記保持部材と干渉しない位置である、請求項1乃至4のいずれかに記載の基板洗浄方法。
【請求項6】
前記洗浄部材は、前記基板と同じ方向に回転しながら前記基板に接触する、請求項1乃至5のいずれかに記載の基板洗浄方法。
【請求項7】
基板を保持して回転させる基板保持回転部材と、
洗浄部材と、
前記洗浄部材を移動させる駆動部と、
前記駆動部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
回転する前記基板に前記洗浄部材が接触した状態で、前記洗浄部材を前記基板上の第1位置と、前記基板の縁近傍である第2位置との間で移動させることをn(nは2以上の整数)回行い、
1~(n-1)回目のうちの少なくとも1回において、前記洗浄部材が前記第2位置に到達した後に、所定時間、前記基板上の第2位置に前記洗浄部材が接触したまま前記基板の洗浄を行うエッジ洗浄工程を実行し、
n回目において、前記洗浄部材が前記基板の第2位置に到達した時点で、前記洗浄部材が前記基板から離間するよう前記駆動部を制御する、基板洗浄装置。
【請求項8】
基板を保持して回転させる基板保持回転部材と、
洗浄部材と、
前記洗浄部材を移動させる駆動部と、
前記駆動部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
回転する前記基板に前記洗浄部材が接触した状態で、前記洗浄部材を前記基板上の第1位置と、前記基板の縁近傍である第2位置との間で移動させることをn(nは2以上の整数)回行い、
1~(n-1)回目のうちの少なくとも1回において、前記洗浄部材が前記第2位置に到達した後に、所定時間、前記基板上の第2位置に前記洗浄部材が接触したまま前記基板の洗浄を行うエッジ洗浄工程を実行し、
n回目において、前記洗浄部材が前記基板の第2位置に到達した後に、前記所定時間が経過する前に、前記洗浄部材が前記基板から離間するよう前記駆動部を制御する、基板洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄部材で基板を洗浄する基板洗浄方法および基板洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、半導体ウエハなどの基板を洗浄する基板洗浄装置が開示されている。この基板洗浄装置は、洗浄部材を回転させながら基板に接触させることで、その表面を洗浄するものである。従来の基板洗浄装置では、基板の特にエッジ近傍の洗浄力が必ずしも十分ではなかった。
特許文献1に記載されているように、スクラブ洗浄部材を基板に接触させながら、基板の半径方向に移動させる基板洗浄装置においては、スクラブ洗浄部材の揺動の外周端において、スクラブ洗浄部材を基板に接触させたまま所定時間、定位置で洗浄を行うことが知られている。これは、洗浄すべきエッジ近傍の領域は外周に沿って広く広がっているため、揺動の外周端に到達した時点ですぐに洗浄を終了(スクラブ洗浄部材を離反)してしまうと、洗浄が不十分になるためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、デバイスの進化とともに除去すべきパーティクルのサイズが年々小さくなり、スクラブ洗浄部材を揺動の外周端で停止させて洗浄を行うことにより、新たな基板汚染の問題が生じることが明らかになってきた。
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、本発明の課題は、基板のエッジ近傍の洗浄力を向上できる基板洗浄方法および基板洗浄装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、回転する基板に洗浄部材が接触した状態で、前記洗浄部材を前記基板上の第1位置と、前記基板の縁近傍である第2位置との間で移動させることをn(nは2以上の整数)回行う基板の洗浄方法であって、前記洗浄部材を移動させる駆動部を制御する制御部は、1~(n-1)回目のうちの少なくとも1回において、前記洗浄部材が前記第2位置に到達した後に、所定時間、前記基板上の第2位置に前記洗浄部材が接触したまま前記基板の洗浄を行うエッジ洗浄工程を実行するように前記駆動部を制御し、n回目において、前記洗浄部材が前記基板の前記第2位置に到達した時点で、前記洗浄部材が前記基板から離間するように前記駆動部を制御する、基板洗浄方法が提供される。
【0006】
本発明の別の態様によれば、回転する基板に洗浄部材が接触した状態で、前記洗浄部材を前記基板上の第1位置と、前記基板の縁近傍である第2位置との間で移動させることをn(nは2以上の整数)回行う基板の洗浄方法であって、前記洗浄部材を移動させる駆動部を制御する制御部は、1~(n-1)回目のうちの少なくとも1回において、前記洗浄部材が前記第2位置に到達した後に、所定時間、前記基板上の第2位置に前記洗浄部材が接触したまま前記基板の洗浄を行うエッジ洗浄工程を実行するように前記駆動部を制御し、n回目において、前記洗浄部材が前記基板の第2位置に到達した後に、前記所定時間が経過する前に、前記洗浄部材が前記基板から離間するように前記駆動部を制御する、基板洗浄方法が提供される。
【0007】
前記制御部は、1~(n-1)回目のうちの少なくとも1回において、前記洗浄部材が前記第2位置に到達したことを示す信号を受信した後、前記エッジ洗浄工程を実行するように前記駆動部を制御するのが望ましい。
【0008】
前記第1位置は前記基板上の中心またはその近傍であり、前記制御部は、(a)前記基板上の第1位置に洗浄部材が接触し、(b)前記基板に前記基板を洗浄させた状態で前記洗浄部材が前記基板上の第2位置に移動し、(c)前記基板上の第2位置に達した前記洗浄部材が前記基板から離間すること、をn回行うよう前記駆動部を制御し、かつ、前記制御部は、1~(n-1)回目のうちの少なくとも1回における上記(c)で、前記洗浄部材が前記第2位置に到達した後に、前記エッジ洗浄工程を実行するように前記駆動部を制御するのが望ましい。
【0009】
前記基板の外周の一部を保持部材で保持して前記基板を回転させ、前記第2位置は、前記洗浄部材が前記保持部材と干渉しない位置であるのが望ましい。
【0010】
前記洗浄部材は、前記基板と同じ方向に回転しながら前記基板に接触するのが望ましい。
【0011】
本発明の別の態様によれば、基板を保持して回転させる基板保持回転部材と、洗浄部材と、前記洗浄部材を移動させる駆動部と、前記駆動部を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、回転する前記基板に前記洗浄部材が接触した状態で、前記洗浄部材を前記基板上の第1位置と、前記基板の縁近傍である第2位置との間で移動させることをn(nは2以上の整数)回行い、1~(n-1)回目のうちの少なくとも1回において、前記洗浄部材が前記第2位置に到達した後に、所定時間、前記基板上の第2位置に前記洗浄部材が接触したまま前記基板の洗浄を行うエッジ洗浄工程を実行し、n回目において、前記洗浄部材が前記基板の第2位置に到達した前記洗浄部材が前記基板から離間するよう前記駆動部を制御する、基板洗浄装置が提供される。
【0012】
本発明の別の態様によれば、基板を保持して回転させる基板保持回転部材と、洗浄部材と、前記洗浄部材を移動させる駆動部と、前記駆動部を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、回転する前記基板に前記洗浄部材が接触した状態で、前記洗浄部材を前記基板上の第1位置と、前記基板の縁近傍である第2位置との間で移動させることをn(nは2以上の整数)回行い、1~(n-1)回目のうちの少なくとも1回において、前記洗浄部材が前記第2位置に到達した後に、所定時間、前記基板上の第2位置に前記洗浄部材が接触したまま前記基板の洗浄を行うエッジ洗浄工程を実行し、n回目において、前記洗浄部材が前記基板の第2位置に到達した後に、前記所定時間が経過する前に、前記洗浄部材が前記基板から離間するよう前記駆動部を制御する、基板洗浄装置が提供される。
【発明の効果】
【0013】
基板のエッジ近傍の洗浄力が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】一実施形態に係る基板処理装置の概略上面図。
【
図3】洗浄部材61が基板Wの縁近傍に接触している状態を模式的に示す図。
【
図4】本実施形態に係る基板洗浄の手順を示すフローチャート。
【
図5A】エッジストップ処理を行わない比較例に係る基板洗浄を行う際の洗浄部材61の動きを示すタイムチャート。
【
図6A】最終回の洗浄工程においてエッジストップ処理を行う比較例に係る基板洗浄を行う際の洗浄部材61の動きを示すタイムチャート。
【
図7A】最終回以外の洗浄工程においてエッジストップ処理を行う本実施形態に係る基板洗浄を行う際の洗浄部材61の動きを示すタイムチャート。
【
図8】別の基板洗浄装置4Aの概略構成を示す斜視図。
【
図9A】また別の基板洗浄装置4Cの概略構成を示す正面図。
【
図9B】また別の基板洗浄装置4Cの概略構成を示す側面図。
【
図10A】また別の基板洗浄装置4Fの概略構成を示す上面図。
【
図10B】また別の基板洗浄装置4Fの概略構成を示す側面図。
【
図11】また別の基板洗浄装置4Gの概略構成を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0016】
図1は、一実施形態に係る基板処理装置の概略上面図である。本基板処理装置は、直径300mmあるいは450mmの半導体ウエハ、フラットパネル、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)やCCD(Charge Coupled Device)などのイメージセンサ、MRAM(Magnetoresistive Random Access Memory)における磁性膜の製造工程において、種々の基板を処理するものである。また、基板の形状は円形に限られず、矩形形状(角形状)や、多角形形状のものであってもよい。
【0017】
基板処理装置は、略矩形状のハウジング1と、多数の基板をストックする基板カセットが載置されるロードポート2と、1または複数(
図1に示す態様では4つ)の基板研磨装置3と、1または複数(
図1に示す態様では2つ)の基板洗浄装置4と、基板乾燥装置5と、搬送機構6a~6dと、制御部7とを備えている。
【0018】
ロードポート2は、ハウジング1に隣接して配置されている。ロードポート2には、オープンカセット、SMIF(Standard Mechanical Interface)ポッド、又はFOUP(Front Opening Unified Pod)を搭載することができる。SMIFポッド、FOUPは、内部に基板カセットを収納し、隔壁で覆うことにより、外部空間とは独立した環境を保つことができる密閉容器である。基板としては、例えば半導体ウエハ等を挙げることができる。
【0019】
基板を研磨する基板研磨装置3、研磨後の基板を洗浄する基板洗浄装置4、洗浄後の基板を乾燥させる基板乾燥装置5が、ハウジング1内に収容されている。基板研磨装置3は、基板処理装置の長手方向に沿って配列され、基板洗浄装置4および基板乾燥装置5も基板処理装置の長手方向に沿って配列されている。
【0020】
また、基板洗浄装置4および基板乾燥装置5は、それぞれ、図示しない略矩形状の筐体であって、シャッター機構により開閉自在とされ筐体部に設けられた開閉部から被処理対象の基板を出し入れするように構成されていてもよい。あるいは、変形実施例としては、基板洗浄装置4および基板乾燥装置5を一体化し、基板洗浄処理と基板乾燥処理とを連続的に1つのユニット内で行うようにしてもよい。
【0021】
ロードポート2、ロードポート2側に位置する基板研磨装置3および基板乾燥装置5に囲まれた領域には、搬送機構6aが配置されている。また、基板研磨装置3ならびに基板洗浄装置4および基板乾燥装置5と平行に、搬送機構6bが配置されている。搬送機構6aは、研磨前の基板をロードポート2から受け取って搬送機構6bに受け渡したり、基板乾燥装置5から取り出された乾燥後の基板を搬送機構6bから受け取ったりする。
【0022】
2つの基板洗浄装置4間に、これら基板洗浄装置4間で基板の受け渡しを行う搬送機構6cが配置され、基板洗浄装置4と基板乾燥装置5との間に、これら基板洗浄装置4と基板乾燥装置5間で基板の受け渡しを行う搬送機構6cが配置されている。
【0023】
さらに、ハウジング1の内部には、基板処理装置の各機器の動きを制御する制御部7が配置されている。本実施形態では、ハウジング1の内部に制御部7が配置されている態様を用いて説明するが、これに限られることはなく、ハウジング1の外部に制御部7が配置されてもよい。例えば、この制御部7により、後述する実施形態のように、基板の保持及び回転を行う基板保持回転機構41の動作や、基板に向かって超音波洗浄液を噴射するノズルの吐出開始及び終了タイミング、あるいは、ノズルの上下動および垂直面水平面内での旋回動を制御するように構成することもできる。なお、制御部は、所定のプログラムを格納したメモリと、メモリのプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)と、CPUがプログラムを実行することで実現される制御モジュールとを有してもよい。制御モジュールは、また、制御部は、基板処理装置及びその他の関連装置を統括制御する図示しない上位コントローラと通信可能に構成され、上位コントローラが有するデータベースとの間でデータのやり取りをすることができる。ここで、メモリを構成する記憶媒体は、各種の設定データや処理プログラム等の各種のプログラムを格納している。記憶媒体としては、コンピュータで読み取り可能なROMやRAMなどのメモリや、ハードディスク、CD-ROM、DVD-ROMやフレキシブルディスクなどのディスク状記憶媒体などの公知のものが使用され得る。
【0024】
図2は、基板洗浄装置4の概略構成を示す斜視図である。基板洗浄装置4は、基板保持回転機構41と、洗浄機構42と、1または複数のノズル43とを備えている。
【0025】
基板保持回転機構41は、半導体ウエハなどの基板Wを水平に保持し、回転させる。より具体的には、基板保持回転機構41は、基板Wの外周端部(エッジ部分)を保持するためのチャック51が装着された複数本(
図2では4本)のアーム52、アーム52が一体的に取り付けられる基台53、基台53を回転させる回転軸54などから構成される。回転軸54は基板Wの面に対して垂直(すなわち鉛直)に延びており、回転軸54の回転により基板Wを水平面内で回転させる。
【0026】
洗浄機構42は、洗浄部材61、回転軸62、揺動アーム63および揺動軸64などから構成される。
【0027】
洗浄部材61は、例えばPVA製のペンシル型洗浄具であり、その下面が洗浄面であり、上面は回転軸62の下端に固定される。
【0028】
回転軸62は基板Wの面に対して垂直(すなわち鉛直)に延びており、回転軸62の回転により洗浄部材61を水平面内で回転させる。
【0029】
揺動アーム63は水平方向に延びており、一端側に回転軸62の上端が接続され、他端側に揺動軸64が接続される。揺動軸64には、図示しないモータが取り付けられている。
【0030】
揺動軸64は基板Wの面に対して垂直(すなわち鉛直)に延びており、昇降可能である。揺動軸64が下降することで洗浄部材61の下面が基板Wの表面に接触し、揺動軸64が上昇することで洗浄部材61の下面が基板Wの表面から離間する。また、揺動軸64の回転により揺動アーム63を水平面内で揺動させる。
【0031】
なお、洗浄機構42は、洗浄部材61を揺動させる手段と、洗浄部材61の基板Wとの接触/非接触を切り替える手段(以下、これら洗浄部材61を移動させる手段を「駆動部45」と総称する)とを有していればよく、具体的な構成は図示の揺動軸64に限られない。また、これらの手段は、例えば所定のレシピに基づいて制御装置46が制御するようにしてもよい。本実施形態では、揺動軸64に取り付けられたモータを回転させるモータドライバから揺動アーム63の回転角度を示す信号を受信することで、制御装置46は洗浄部材61の位置を把握する。また、制御装置46はモータの回転角度を制御する。
【0032】
このような構成の基板洗浄装置4は以下のように動作する。基板保持回転機構41のチャック51に保持され、回転軸54によって回転されている基板W上に、ノズル43から洗浄液(純水や薬液)が供給される。同時に、回転軸62が洗浄部材61を回転させるとともに、揺動軸64が洗浄部材61の下面を基板Wの表面に接触させた状態で洗浄部材61を揺動させる。これにより基板Wが洗浄される。
【0033】
洗浄部材61の移動の詳細は以下のとおりである。
(1)洗浄部材61が基板Wから離間した状態で揺動軸64が回転し、洗浄部材61が基板の中心の上方に移動する。
(2)揺動軸64が下降し、基板W上の中心に洗浄部材61の下面が接触する。
(3)揺動軸64が回転し、基板Wに洗浄部材61の下面が接触した状態で、洗浄部材61が基板W上の中心から縁(エッジ)に向かって移動する。
(4)洗浄部材61が縁近傍の所定位置まで達すると、揺動軸64が上昇し、洗浄部材61の下面は基板Wから離間する。
以上の(1)~(4)の洗浄を複数回繰り返す。
【0034】
ここで、上記(4)において、基板Wの縁近傍までは洗浄部材61を移動させることができるが、基板Wを抜けてその側方まで移動させる(オーバーハング)ことは難しい。基板Wの外周端部を保持するチャック51に洗浄部材61が衝突してしまうためである。
【0035】
なお、洗浄工程の最終回における上記(4)において、洗浄部材61が縁近傍の所定位置まで達した時点で洗浄部材61の移動(すなわち揺動軸64の回転)を止め、一定時間、洗浄部材61が基板Wの縁近傍に接触した状態を保った後に、洗浄部材61を基板Wから離間させることも考えられる。これは、円周方向に広がる基板Wの縁近傍の領域の単位面積当たりの洗浄時間を十分に確保するためである。
【0036】
図3は、洗浄部材61が基板Wの縁近傍に接触している状態を模式的に示す図である。この状態を一定時間保つことで、洗浄部材61が接触している部分は洗浄される。しかし、以下の理由により、図の点線部分は却って汚染されることとなる。
【0037】
図示のように、基板Wと洗浄部材61は同じ方向(
図3では時計回り)に回転している。基板Wの最外周において、基板Wの回転方向と洗浄部材61の回転方向とを一致させ、洗浄後の汚染された洗浄液を基板Wの外側に排出するためである(矢印F)。しかし、この場合、基板Wの内側(点A付近)では、基板Wと洗浄部材61とが逆方向に回転することとなり、この位置に洗浄後の汚染された洗浄液が集まる。洗浄部材61の揺動を止めて接触させ続けることにより、結果として点線部分が逆汚染されることとなる。このような逆汚染の問題は、基板Wに形成されるデバイスの微小化に伴って特に顕著になる。現象として詳細に解明できてはいないが、点線部分に微小なパーティクルが残る現象は、洗浄部材61に付着していたパーティクルが洗浄液の流れに乗って点線部分に集まり、基板に再付着しているものと考えられる。
【0038】
そこで、本実施形態では以下のように、最終回以外の上記(4)において、洗浄部材61が縁近傍まで達した時点で洗浄部材61の移動(すなわち揺動軸64の回転)を止め、一定時間、洗浄部材61が基板Wの縁近傍に接触した状態を保った後に、洗浄部材61を基板Wから離間させる。そして、最終回の上記(4)では、洗浄部材61が縁近傍に達した時点で基板Wから離間させる。これにより、最終回より前の洗浄工程で
図3に示す点線部分の汚染が生じたとしても、最終回の洗浄で洗浄されることとなる。
【0039】
図4は、本実施形態に係る基板洗浄の手順を示すフローチャートである。以下では、洗浄工程を3回行うものとする。また、基板Wは基板保持回転機構41によって保持され、回転されている。さらに、ノズル43から洗浄液が基板W上に供給されているものとする。
【0040】
まず、揺動軸64が上昇した状態で揺動軸64が回転することにより、洗浄部材61を基板Wの中心の上方に移動させる(ステップS1)。具体的には、制御装置46は、揺動軸64に取り付けられたモータドライバからの揺動アーム63の回転角度を示す信号を監視しておき、洗浄部材61が基板Wの中心に到達したことを示した時点で、モータによる揺動軸64の回転を停止するよう制御する。
【0041】
次いで、揺動軸64が下降し、洗浄部材61の下面を基板W上の中心に接触させる(ステップS2)。そして、洗浄部材61が基板Wに接触したまま揺動軸64が回転し、洗浄部材61を基板Wの縁近傍の所定位置まで移動させる(ステップS3)。具体的には、制御装置46は、揺動軸64に取り付けられたモータドライバからの揺動アーム63の回転角度を示す信号を監視しておき、洗浄部材61が上記所定位置に達したことを示した時点で、モータによる揺動軸64の回転を停止するよう制御する。この位置は、回転するチャック51と衝突(干渉)しない位置である。
【0042】
1回目の洗浄工程においては(ステップS4のNO)、洗浄部材61が所定位置(
図3参照)に達した時点で揺動軸64の回転が停止するが、回転軸54は回転を続ける。これにより、洗浄部材61は基板W上で停止するが、回転は続ける。そして、回転する洗浄部材61の下面を一定時間基板Wに接触させ続ける(ステップS5)。なお、以下ではステップS5に示す処理をエッジストップ処理と呼ぶことがある。また、制御装置46は何回目の洗浄工程であるかをカウントしている。なお、ステップS5に示す工程をエッジ洗浄工程と呼ぶこともできる。すなわち、制御装置46はステップS5において、洗浄部材61が所定位置に停止した状態で洗浄部材61が基板Wに接触したまま基板Wの洗浄を行うエッジ洗浄工程を実行するように駆動部45を制御する。
【0043】
一定時間が経過した後、揺動軸64が上昇し、洗浄部材61を基板Wから離間させる(ステップS6)。そして、揺動軸64が回転することにより、洗浄部材61を基板Wの中心の上方に移動させる(ステップS1)。続いて、ステップS2,S3を行う。2回目の洗浄工程においても(ステップS4のNO)、ステップS5,S6に進み、ステップS1に戻る。
【0044】
3回目の洗浄工程では(ステップS4のYES)、洗浄部材61が所定位置に達した時点で揺動軸64が停止するのみならず、揺動軸64が上昇し、洗浄部材61を基板Wから離間させる(ステップS7)。以上で、洗浄処理を終了とする。なお、以上説明した洗浄工程の一部または全部をオペレータが制御(具体的には、揺動軸64の上下動や回転など)してもよいし、所定のプログラムで動作する制御部が制御してもよい。
【0045】
続いて、洗浄部材61の動きに着目して説明する。
【0046】
図5Aは、エッジストップ処理を行わない比較例に係る基板洗浄を行う際の洗浄部材61の動きを示すタイムチャートである。上段のタイムチャートは基板Wを基準とする洗浄部材61の位置を示している。この位置は揺動軸64の回転角度によって制御される。中断のタイムチャートは基板Wに対する洗浄部材61の押圧力を示している。説明を簡略化するために、同図では、洗浄部材61が基板Wに接触しているか否かの2値で押圧力を表している。この押圧力(接触/非接触)は揺動軸64の上下動によって制御される。下段のタイムチャートは基板Wの面内方向における洗浄部材61の移動速度を示しており、基板Wの中心から縁に向かう方向を正としている。この移動速度は揺動軸64の回転速度によって制御される。
【0047】
基板保持回転機構41のチャック51に基板Wが保持されると、洗浄部材61は基板Wと接触することなく基板Wの中心に向かって移動し、洗浄部材61は基板Wの中心の上方で停止する(時刻t0~t1)。そして、時刻t2において洗浄部材61が下降して基板Wに接触する。その後、時刻t3で洗浄部材61は基板Wの縁に向かって移動を開始する。なお、下段のタイムチャートの時刻t0~t1において、洗浄部材61の移動速度は一定にしているが、基板Wの中心付近では速度が速く、縁に向かって遅くなるようにしてもよい。他の時間における洗浄部材61の移動速度についても同様である。
【0048】
時刻t4で洗浄部材61が基板Wの縁近傍の所定位置に達すると、その時点で洗浄部材61は移動を停止し、かつ、上昇して基板Wに対して非接触となる。その後の時刻t5で、洗浄部材61は基板Wと接触することなく基板Wの中心に向かって移動を開始し、洗浄部材61は基板Wの中心の上方で停止する(時刻t5~t6)。以降、同様の洗浄工程を3回行う(時刻t6~t14)。
【0049】
時刻t14において、洗浄部材61が基板の縁近傍まで達した時点で最終回である3回目の洗浄工程が終了とし、洗浄部材61は移動を停止し、かつ、上昇して基板Wに対して非接触となる。その後、時刻t15において洗浄部材61は基板Wの外側に向かって移動する。
【0050】
図5Bは、
図5Aに示す基板洗浄の結果を模式的に示す図である。黒丸で基板Wに残存する(除去さるべき)パーティクルなどを示している。上述したように、オーバーハングができないことから、基板Wの外周部分は洗浄が不十分となる。
【0051】
図6Aは、最終回の洗浄工程においてエッジストップ処理を行う比較例に係る基板洗浄を行う際の洗浄部材61の動きを示すタイムチャートであり、
図5Aと対応している。時刻t0~t14までは
図5Aと同じである。
【0052】
時刻t14で基板Wの縁近傍の所定位置に達すると、エッジストップ処理を行う。すなわち、基板Wの縁近傍の所定位置に達した時点で揺動軸64は回転を停止するが、揺動軸64は上昇せず、一定時間(時刻t14~t21)、洗浄部材61は基板Wと接触したままとなる。この一定時間は基板Wを十分に洗浄するために要する時間であり、例えば10秒とする。
【0053】
一定時間が経過した時刻t21において、最終回であってエッジストップ処理を含む3回目の洗浄工程が終了とし、洗浄部材61は上昇して基板Wに対して非接触となる。その後、時刻t22において洗浄部材61は基板Wの外側に向かって移動する。
【0054】
図6Bは、
図6Aに示す基板洗浄の結果を模式的に示す図である。
図5Bと比較すると、エッジストップ処理を行うことで、基板Wの外周部分は洗浄される。しかし、
図3を用いて説明したように、基板Wの最外周から洗浄部材61の直径に相当する内側部分は逆汚染されてしまう。
【0055】
図7Aは、最終回以外の洗浄工程においてエッジストップ処理を行う本実施形態に係る基板洗浄を行う際の洗浄部材61の動きを示すタイムチャートであり、
図6Aと対応している。時刻t0~t4までは
図6Aと同じである。
【0056】
時刻t4で基板Wの縁近傍の所定位置に達すると、エッジストップ処理を行う。すなわち、基板Wの縁近傍の所定位置に達した時点で揺動軸64は回転を停止する(これにより洗浄部材61の揺動は停止する)が、揺動軸64は上昇せず、一定時間(時刻t4~t31)、洗浄部材61は基板Wと接触したままとなる。この一定時間は基板Wを十分に洗浄するために要する時間であり、例えば5秒とする。
【0057】
図6Aに示す比較例では最終回の洗浄工程のみエッジストップ処理を行うものであった。それに対し、本実施形態では、1回目および2回目の洗浄工程でエッジストップ処理を行う。そのため、洗浄部材61を基板Wに接触したままとする1回当たりの時間を短くできる。
【0058】
一定時間が経過した時刻t31において、洗浄部材61は上昇して基板Wに対して非接触となる。その後、その後、時刻t32において洗浄部材61は基板Wの中心に向かって移動する。以降、エッジストップ処理を含む同様の洗浄工程をもう1度行う(時刻t33~t38)。
【0059】
最終回である3回目の洗浄工程では、エッジストップ処理を行わない。すなわち、時刻t42で洗浄部材61が基板Wの縁近傍の所定位置に達すると、その時点で洗浄部材61は移動を停止し、かつ、上昇して基板Wに対して非接触となる。言い換えると、時刻t42で、揺動軸64は回転を停止するとともに、上昇する。その後、時刻t43において洗浄部材61は基板Wの外側に向かって移動する。
【0060】
図7Bは、
図7Aに示す基板洗浄の結果を模式的に示す図である。1回目および2回目のエッジストップ処理により、基板Wの外周部分は洗浄される。このエッジストップ処理によって
図6Bに示すような逆汚染が生じることもある。しかし、本実施形態に係る基板洗浄では最終回の洗浄工程でエッジストップ処理を行わないため、
図6Bとは異なり、基板Wの最外周から洗浄部材61の直径に相当する内側部分の逆汚染も解消される。
【0061】
なお、制御装置46は、洗浄部材61が基板Wの縁近傍の所定位置に到達したことを示す信号を受信し、その後エッジストップ処理を行う。つまり、揺動アーム63の揺動を停止し、所定時間、洗浄部材61の基板Wへの接触を継続させる。上述した例では、洗浄部材61が基板Wの縁近傍の所定位置に到達したことを示す信号は、揺動軸64を回転させるモータドライバから制御装置64に送信される揺動アーム63の角度に関する信号である。その他、洗浄部材61が基板Wの縁近傍の所定位置に到達したことを検知するセンサを基板洗浄装置4に設けて、センサからの信号を制御装置46が受信するようにしてもよい。より具体的には、基板Wの縁近傍の所定位置の上方にレーザーを配置して基板Wにレーザー光を照射し、基板Wからの反射光をセンサでセンシングすることとし、反射光がセンシングされるまでの時間に応じて基板Wが縁近傍の所定位置の上方にあることを検出してもよい。
【0062】
エッジストップ処理を行わない場合は、制御装置46は、洗浄部材61が基板Wの縁近傍の所定位置に到達したことを示す信号を受信した後、洗浄部材61を基板から離間させる。
【0063】
なお、洗浄部材61の揺動速度と、洗浄部材61が基板Wの中心で基板W上に下降して洗浄を開始してから基板Wの縁近傍に移動するまでの移動時間を設定しておくことも考えられる。この場合、制御装置46は、洗浄部材61が基板Wの縁近傍の所定位置に到達したことを示す信号を受信することなく、移動時間が経過したらエッジストップ処理を行うようにしてもよい。
【0064】
なお、以上説明した本実施形態に係る洗浄手法は、1回目および2回目の洗浄工程でエッジストップ処理を行う例を示したが、1回目および2回目の少なくとも一方でエッジストップ処理を行ってもよい。また、エッジストップ処理を行わない最終回の洗浄工程(
図5のステップS7)では、厳密に洗浄部材61が所定位置に達した時点で揺動軸64が上昇しなくてもよく、少なくともエッジストップ処理における一定時間が経過する前に洗浄部材61を基板Wから離間させればよい。
【0065】
また、上述した説明では、洗浄部材61を基板W上の中心に接触させ、基板Wの中心から縁に向かって洗浄部材61を一方向に移動させて洗浄を行う(すなわち、縁に達する都度、洗浄部材61を基板Wから離間させる)例を示した。しかし、必ずしも初め(ステップS1)に基板Wの中心に接触させる必要はなく、基板Wの中心から多少ずれた位置でもよいし、反対側の縁近傍の位置であってもよい。
【0066】
さらに、洗浄部材61を基板Wに接触させたままの状態で、基板Wの任意の位置(例えば、中心や反対側の縁近傍の位置)と、縁近傍の位置との間で洗浄部材61を複数回往復移動させてもよい。この場合でも、最終回の洗浄工程以外の往復移動において、基板W上の縁近傍で洗浄部材61を一定時間停止させて反対側へ折り返し、最終回の洗浄工程の往復移動では、基板W上の縁で洗浄部材61を一定時間停止させることなく反対側へ折り返すようにすればよい。
【0067】
このように、本実施形態では、最終回以外の洗浄工程でエッジストップ処理を行うため、基板Wのエッジ近傍も十分に洗浄できる。そして、最終回の洗浄工程ではエッジストップ処理を行わないため、エッジストップ処理に起因する逆汚染の影響も軽減できる。
【0068】
以上説明した洗浄手法は、
図2に示す基板洗浄装置4以外にも適用可能である。以下、
図2の基板洗浄装置4の変形例をいくつか説明する(
図2と共通する説明は適宜省略する)。
【0069】
図8は、別の基板洗浄装置4Aの概略構成を示す斜視図である。
図2との違いとして、
図8の基板洗浄装置4Aは、基板保持回転機構として、基板Wの周縁部を支持して水平面内で回転させるスピンドル55を有する。より具体的には、スピンドル55の上部に設けたコマ55aの外周側面に形成した把持溝内に基板Wの周縁部を位置させて内方に押し付け、少なくとも1つのコマ55aを回転(自転)させることにより基板Wが回転する。ここで、「コマ」は基板を把持するための「把持部」と言い換えられる。また、「スピンドル」は「ローラー」と言い換えることもできる。
【0070】
基板洗浄装置4、基板洗浄装置4Aにおいては、洗浄部材61を揺動軸64を中心に円弧状に移動させる例を示したが、洗浄部材61を直線状に移動させてもよい。
【0071】
図9Aおよび
図9Bは、また別の基板洗浄装置4Cの概略構成を示す正面図および側面図である。この基板洗浄装置4Cは基板Wを鉛直方向に保持して回転させるものである。
【0072】
基板洗浄装置4Cは、基板保持回転機構として、基板Wの下側を保持して回転させる2つのスピンドル55と、上側を保持して回転させる2つのスピンドル55とを備えている。これらのスピンドル55が同一鉛直面内に配置されることで、基板Wは鉛直方向に保持される。そして、少なくとも1つ(好ましくは下側)のスピンドル55が回転することで、基板Wは鉛直面内で回転する。なお、スピンドル55に代えて、
図2と同様のチャックで基板Wを保持してもよい。洗浄部材61を揺動させたり、基板Wとの接触/非接触を切り替えたりする揺動軸64は、パーティクルが基板W上に落ちるのを抑制すべく、できるだけ低い位置に設けるのが望ましい。
【0073】
基板洗浄装置4Cのさらなる変形例としては、上側のスピンドル55と、下側のスピンドル55とを同一鉛直面内に配置しないことで、基板Wが斜め方向に保持して回転させてもよい。
【0074】
図10Aおよび
図10Bは、また別の基板洗浄装置4Fの概略構成を示す上面図および側面図である。基板洗浄装置4Fは、洗浄液として薬液を噴霧するためのノズル44が、揺動アーム63に設けられている。このように、揺動アーム63に固定されており、揺動アーム63の回動によって揺動するノズルをオンアーム(On Arm)ノズルという。ノズル44は、洗浄部材61の近傍に設けられている。具体的には、ノズル44は、揺動アーム63において、洗浄部材61より先端側(基板Wの回転の上流側)に設けられる。
【0075】
図10Bに示すように、ノズル44の噴霧方向は、洗浄部材61に向けて若干傾けられている。そのため、ノズル44から噴霧される洗浄液は洗浄部材61に向かって広がる。洗浄部材61およびノズル44がともに揺動アーム63に取り付けられているため、洗浄部材61に洗浄液が追従することとなる。
【0076】
図11は、また別の基板洗浄装置4Gの概略構成を示す側面図である。図示のように、基板Wの下面を洗浄する洗浄機構42’を設けてもよい。洗浄機構42’は洗浄機構42と同じ構成とすることができ、その洗浄部材61’は基板Wの下面に接触してこれを洗浄する。基板Wの上面を洗浄する洗浄部材61によって力が加わる箇所と、基板Wの下面を洗浄する洗浄部材61によって力が加わる箇所とが、平面図において点対称となるように制御してもよい。。このようにすることで、基板Wの上面側から加わる力と下面側から加わる力を点対称とすることができ、バランスよく相殺することを期待できる。あるいは平面図において同じ箇所となるように制御してもよい。
【0077】
その他、洗浄部材61として、ハードパッドやソフトパッドといったより物理力の強い接触洗浄を行うバフ洗浄にも本発明を適用可能である。バフ洗浄では、基板Wの下面を真空吸着によって保持し、回転させる。
【0078】
チャックで基板を保持する以外の手法で基板を保持・回転させる場合、洗浄部材61のオーバーハングも可能である。洗浄部材61が揺動の外周端において、洗浄部材61の洗浄面の一部が基板Wの外周よりも外側にはみ出した状態になる、すなわちオーバーハング状態での洗浄を行う場合においても、洗浄部材61の揺動端の位置において、洗浄部材61を停止させて洗浄を行うエッジストップ処理は有効である。本実施形態で説明したように、最終回以外の洗浄工程でエッジストップ処理を行うことで、洗浄力を低下させることなく洗浄部材61の移動距離を狭くすることができ、洗浄時間の短縮を図れる。そのため、様々な基板洗浄装置にとって本実施形態で説明した基板洗浄は有用である。洗浄部材がオーバーハングした状態で揺動を停止するために制御装置が受信する信号は、洗浄機構42が有する洗浄部材の圧力センサ(図示せず)からの信号であってもよい。
また、各基板洗浄装置の構成を適宜組み合わせてもよい。
【0079】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうることである。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲とすべきである。
【符号の説明】
【0080】
4,4A,4B 基板洗浄装置
41,41’ 基板保持回転機構
42,42’ 洗浄機構
43,44 ノズル
45 駆動部
46 制御装置
51 チャック
52 アーム
53 基台
54 回転軸
55 スピンドル
55a コマ
61,61’ 洗浄部材
62 回転軸
63 揺動アーム
63’ アーム
64 揺動軸
65 移動機構