(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-29
(45)【発行日】2022-10-07
(54)【発明の名称】記録ヘッド洗浄装置、記録ヘッド洗浄方法、及び記録装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/165 20060101AFI20220930BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20220930BHJP
【FI】
B41J2/165 401
B41J2/01 401
B41J2/165 307
(21)【出願番号】P 2020556026
(86)(22)【出願日】2019-10-31
(86)【国際出願番号】 JP2019042858
(87)【国際公開番号】W WO2020095822
(87)【国際公開日】2020-05-14
【審査請求日】2021-06-03
(31)【優先権主張番号】P 2018210402
(32)【優先日】2018-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【氏名又は名称】松浦 憲政
(72)【発明者】
【氏名】服部 和雅
【審査官】長田 守夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-054496(JP,A)
【文献】特開2018-047609(JP,A)
【文献】特開2011-212876(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0075154(US,A1)
【文献】特開2018-086797(JP,A)
【文献】特開2014-065227(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄液保持面を有する洗浄液保持部と、
前記洗浄液保持面に洗浄液を付与する洗浄液付与部と、
前記洗浄液保持面と記録ヘッドのインクを吐出するノズルが配置されたノズル面とを対向させて
前記洗浄液保持面と前記ノズル面とが非接触の状態で前記洗浄液保持面に保持された前記洗浄液で前記ノズル面を洗浄する洗浄部と、
洗浄液を含浸させない乾燥した状態の払拭ウエブによって前記洗浄された前記ノズル面を払拭する払拭部と、
前記ノズル面を洗浄する際の前記ノズルの背圧を-800パスカル~-200パスカルにする背圧制御部
であって、前記ノズル面を払拭する際の前記ノズルの背圧を-2100パスカル~-1900パスカルにする背圧制御部と、
を備えた記録ヘッド洗浄装置。
【請求項2】
前記背圧制御部は、前記ノズル面を洗浄する際の前記ノズルの背圧を-700パスカル~-300パスカルにする請求項1に記載の記録ヘッド洗浄装置。
【請求項3】
前記背圧制御部は、前記ノズル面を洗浄する際の前記ノズルの背圧を-600パスカル~-400パスカルにする請求項2に記載の記録ヘッド洗浄装置。
【請求項4】
前記洗浄部は、前記洗浄液保持面と前記ノズル面とを対向させた状態で前記記録ヘッドを前記洗浄液保持面に平行な第1方向に相対移動させる請求項1から3のいずれか1項に記載の記録ヘッド洗浄装置。
【請求項5】
前記洗浄液保持面は、第1方向の長さがW、及び前記第1方向に直交する第2方向の長さがDmの矩形形状であり、
前記洗浄部は、前記洗浄液保持面と前記第2方向の長さがDmより小さいDhの前記記録ヘッドの前記ノズル面とを距離Hで対向させ、
前記洗浄液付与部は、W×Dh×Hより多い量の洗浄液を付与する請求項
4に記載の記録ヘッド洗浄装置。
【請求項6】
前記記録ヘッドは、それぞれ前記ノズルが配置された複数のヘッドモジュールが前記第1方向に配列されている請求項4
又は5に記載の記録ヘッド洗浄装置。
【請求項7】
前記洗浄液保持部は、前記洗浄液保持面に洗浄液供給口を有し、
前記洗浄液付与部は、前記洗浄液供給口から前記洗浄液を噴き出させる請求項1から
6のいずれか1項に記載の記録ヘッド洗浄装置。
【請求項8】
前記ノズル面は、複数の前記ノズルが配置された撥液性を有するノズル部と、前記ノズル部よりも撥液性が相対的に低い非ノズル部とを有し、
前記洗浄部は、前記洗浄液供給口と前記非ノズル部とを対向させる請求項
7に記載の記録ヘッド洗浄装置。
【請求項9】
前記洗浄部は、前記洗浄液保持面とノズル面とを水平面に対して傾斜した状態で対向させる請求項1から
8のいずれか1項に記載の記録ヘッド洗浄装置。
【請求項10】
前記ノズルは、金属顔料及びカーボンブラックの少なくとも一方を含むインクを吐出する請求項1から
9のいずれか1項に記載の記録ヘッド洗浄装置。
【請求項11】
請求項1から
10のいずれか1項に記載の記録ヘッド洗浄装置と、
前記記録ヘッドと、
前記記録ヘッドと記録媒体とを相対移動させる移動部と、
前記記録ヘッド及び前記移動部を制御して前記記録媒体に画像を記録する記録制御部と、
を備えた記録装置。
【請求項12】
前記背圧制御部は、前記画像を記録する際の前記ノズルの背圧を-1100パスカル~-900パスカルにする請求項
11に記載の記録装置。
【請求項13】
洗浄液保持面を有する洗浄液保持部の前記洗浄液保持面に洗浄液を付与する洗浄液付与工程と、
前記洗浄液保持面と記録ヘッドのインクを吐出するノズルが配置されたノズル面とを対向させて
前記洗浄液保持面と前記ノズル面とが非接触の状態で前記洗浄液保持面に保持された前記洗浄液で前記ノズル面を洗浄する洗浄工程と、
洗浄液を含浸させない乾燥した状態の払拭ウエブによって前記洗浄された前記ノズル面を払拭する払拭工程と、
前記ノズル面を洗浄する際の前記ノズルの背圧を-800パスカル~-200パスカルにする背圧制御工程
であって、前記ノズル面を払拭する際の前記ノズルの背圧を-2100パスカル~-1900パスカルにする背圧制御工程と、
を備えた記録ヘッド洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は記録ヘッド洗浄装置、記録ヘッド洗浄方法、及び記録装置に係り、特に記録ヘッドのノズル面を洗浄する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置では、劣化したインクによってインクジェットヘッドのノズル面に汚れが発生すると、吐出異常のノズルが発生する。特に、ラインヘッドに吐出異常のノズルが発生すると記録画像にスジムラが発生してしまい、画像品質が著しく低下してしまう。したがって、インクジェット記録装置は、吐出異常の発生を未然に防ぎ、かつ、吐出異常を速やかに回復させるために、予備吐出、加圧パージ、ノズル面の払拭、及びノズル吸引といったインクジェットヘッドのメンテナンスを行う。
【0003】
また、特許文献1には、水平面に対して傾けて設けられたインクジェットヘッドのノズル面との間に所定の距離を有して対向する洗浄液保持面を具備する洗浄液保持手段と、洗浄液が洗浄液保持面とノズル面との間にメニスカスを形成しながらノズル面の傾斜を滑り落ちるように洗浄液保持面の傾斜の上部から洗浄液を供給する洗浄液供給口を有する洗浄液供給手段と、を備えたヘッド洗浄装置が開示されている。
【0004】
特許文献1に記載のヘッド洗浄装置によれば、インクジェットヘッドのノズル面の全面に洗浄液を付与し、ノズル面を洗浄することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ノズル面に洗浄液を付与すると、ノズル面の汚れが混入した洗浄液がノズルから記録ヘッドの内部に入り込み、記録ヘッドの内部が汚染されるという問題があった。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、ノズルからの洗浄液の混入を防止してノズル面を洗浄する記録ヘッド洗浄装置、記録ヘッド洗浄方法、及び記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために記録ヘッド洗浄装置の一の態様は、洗浄液保持面を有する洗浄液保持部と、洗浄液保持面に洗浄液を付与する洗浄液付与部と、洗浄液保持面と記録ヘッドのインクを吐出するノズルが配置されたノズル面とを対向させて洗浄液保持面に保持された洗浄液でノズル面を洗浄する洗浄部と、ノズル面を洗浄する際のノズルの背圧を-800パスカル~-200パスカルにする背圧制御部と、を備えた記録ヘッド洗浄装置である。
【0009】
本態様によれば、洗浄液保持面と記録ヘッドのインクを吐出するノズルが配置されたノズル面とを対向させて洗浄液保持面に保持された洗浄液でノズル面を洗浄する際のノズルの背圧を-800パスカル~-200パスカルにするようにしたので、ノズルからの洗浄液の混入を防止してノズル面を洗浄することができる。
【0010】
背圧制御部は、ノズル面を洗浄する際のノズルの背圧を-700パスカル~-300パスカルにすることが好ましい。また、背圧制御部は、ノズル面を洗浄する際のノズルの背圧を-600パスカル~-400パスカルにすることがより好ましい。これにより、ノズルからの洗浄液の混入を防止してノズル面を洗浄することができる。
【0011】
洗浄部は、洗浄液保持面とノズル面とを対向させた状態で記録ヘッドを洗浄液保持面に平行な第1方向に相対移動させることが好ましい。これにより、第1方向について洗浄液保持面よりもノズル面が大きい場合であっても、ノズル面を適切に洗浄することができる。
【0012】
払拭部材によってノズル面を払拭する払拭部を備えることが好ましい。これにより、洗浄後のノズル面を払拭することができる。
【0013】
背圧制御部は、ノズル面を払拭する際のノズルの背圧を-2100パスカル~-1900パスカルにすることが好ましい。これにより、ノズル内のインクを引き出すことなくノズル面を払拭することができる。
【0014】
洗浄液保持面は、第1方向の長さがW、及び第1方向に直交する第2方向の長さがDmの矩形形状であり、洗浄部は、洗浄液保持面と第2方向の長さがDmより小さいDhの記録ヘッドのノズル面とを距離Hで対向させ、洗浄液付与部は、W×Dh×Hより多い量の洗浄液を付与することが好ましい。これにより、洗浄液保持面とノズル面との間の空間を洗浄液で満たすことができ、ノズル面を適切に洗浄することができる。
【0015】
記録ヘッドは、それぞれノズルが配置された複数のヘッドモジュールが第1方向に配列されていることが好ましい。これにより、複数のヘッドモジュールが第1方向に配列された記録ヘッドの各ヘッドモジュールのノズル面を洗浄することができる。
【0016】
洗浄液保持部は、洗浄液保持面に洗浄液供給口を有し、洗浄液付与部は、洗浄液供給口から洗浄液を噴き出させることが好ましい。これにより、洗浄液保持面に洗浄液を適切に付与することができる。
【0017】
ノズル面は、複数のノズルが配置された撥液性を有するノズル部と、ノズル部よりも撥液性が相対的に低い非ノズル部とを有し、洗浄部は、洗浄液供給口と非ノズル部とを対向させることが好ましい。これにより、ノズル面を適切に洗浄することができる。
【0018】
洗浄部は、洗浄液保持面とノズル面とを水平面に対して傾斜した状態で対向させることが好ましい。このように、ノズル面が水平に対して傾斜している場合であっても、ノズル面を適切に洗浄することができる。
【0019】
ノズルは、金属顔料及びカーボンブラックの少なくとも一方を含むインクを吐出することが好ましい。これにより、金属顔料及びカーボンブラックの少なくとも一方を含むインクを吐出する記録ヘッドのノズル面を適切に洗浄することができる。
【0020】
上記目的を達成するために記録ヘッド洗浄装置の一の態様は、上記に記載の記録ヘッド洗浄装置と、記録ヘッドと、記録ヘッドと記録媒体とを相対移動させる移動部と、記録ヘッド及び移動部を制御して記録媒体に画像を記録する記録制御部と、を備えた記録装置である。
【0021】
本態様によれば、ノズル面が適切に洗浄された記録ヘッドによって記録媒体に画像を記録することができる。
【0022】
背圧制御部は、画像を記録する際のノズルの背圧を-1100パスカル~-900パスカルにすることが好ましい。これにより、画像を適切に記録することができる。
【0023】
上記目的を達成するために記録ヘッド洗浄方法の一の態様は、洗浄液保持面を有する洗浄液保持部の洗浄液保持面に洗浄液を付与する洗浄液付与工程と、洗浄液保持面と記録ヘッドのインクを吐出するノズルが配置されたノズル面とを対向させて洗浄液保持面に保持された洗浄液でノズル面を洗浄する洗浄工程と、ノズル面を洗浄する際のノズルの背圧を-800パスカル~-200パスカルにする背圧制御工程と、を備えた記録ヘッド洗浄方法である。
【0024】
本態様によれば、洗浄液保持面と記録ヘッドのインクを吐出するノズルが配置されたノズル面とを対向させて洗浄液保持面に保持された洗浄液でノズル面を洗浄する際のノズルの背圧を-800パスカル~-200パスカルにするようにしたので、ノズルからの洗浄液の混入を防止してノズル面を洗浄することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、ノズルからの洗浄液の混入を防止してノズル面を洗浄することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】インクジェット記録装置の画像記録部の概略構成を示す側面図
【
図2】インクジェット記録装置の画像記録部の概略構成を示す正面図
【
図4】インクジェットヘッドをノズル面側から見た拡大図
【
図5】ヘッドモジュールのノズル面の一例を示す平面図
【
図6】1ノズル分のインク滴吐出素子の内部構造例を示す断面図
【
図11】ノズル面払拭装置をメンテナンス位置側から見た側面図
【
図15】インクジェットヘッド洗浄方法の処理を示すフローチャート
【
図16】ノズル面洗浄時のノズルの背圧と、ノズル面洗浄直後のノズルの吐出悪化レベルとの関係を示すグラフ
【
図17】ノズル面洗浄時のノズルの背圧と、ノズル面洗浄直後に吐出性能が悪化した不良ノズルの比率との関係を示すグラフ
【
図18】ノズル面の払拭回数と吐出悪化レベルとの関係を示すグラフ
【
図19】撥液膜の傷を説明するためのノズルの概略図
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施形態について詳説する。ここでは、インクジェットヘッドを洗浄する例を説明する。
【0028】
<インクジェット記録装置の画像記録部の構成>
本発明に係る記録装置として、記録媒体に画像を記録するインクジェット記録装置に適用した例を説明する。画像の記録に用いられる記録媒体という用語は、用紙、記録用紙、印刷用紙、印刷媒体、印刷媒体、被印刷媒体、画像形成媒体、被画像形成媒体、受像媒体、被吐出媒体など様々な用語で呼ばれるものの総称である。記録媒体の材質や形状等は、特に限定されず、シール用紙、樹脂シート、フィルム、布、不織布、その他材質や形状を問わず、様々なシート体を用いることができる。記録媒体は枚葉媒体に限らず、連続紙、連帳紙、軟包装用のフィルム等の連続媒体であってもよい。連続媒体は、ロール状に収納されていてもよい。
【0029】
図1は、シングルパス方式で枚葉紙に画像を記録するインクジェット記録装置の画像記録部の概略構成を示す側面図である。
図1に示すように、画像記録部10は、枚葉紙12を画像記録ドラム14によってドラム搬送する。また、画像記録部10は、画像記録ドラム14による搬送過程でC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロ)、及びK(クロ)の各色のインク滴を画像記録ドラム14の周囲に配設されたインクジェットヘッド16C、16M、16Y、及び16Kからそれぞれ吐出させて、枚葉紙12の表面にカラー画像を記録する。
【0030】
画像記録ドラム14は回転軸18を有し、回転軸18の両端部を一対の軸受22に軸支されて回転自在に設けられている(
図2参照)。一対の軸受22は、インクジェット記録装置の本体フレーム20に設けられており、一対の軸受22に回転軸18の両端部が水平な設置面に対して平行に軸支されることにより、画像記録ドラム14は水平に取り付けられる。
【0031】
回転軸18には、不図示の回転伝達機構を介して不図示のモータが連結されている。画像記録ドラム14は、不図示のモータに駆動されて回転する。
【0032】
画像記録ドラム14は、枚葉紙12の先端部を把持するグリッパ24を有している。グリッパ24は、画像記録ドラム14の外周面上の2カ所にそれぞれ設けられている。枚葉紙12は、グリッパ24に先端部を把持されて、画像記録ドラム14の外周面上に保持される。
【0033】
画像記録ドラム14は、静電吸着、又は真空吸着等の不図示の吸着保持機構を有している。先端部をグリッパ24に把持されて、画像記録ドラム14の外周面上に巻き掛けられた枚葉紙12は、裏面を不図示の吸着保持機構によって吸着されて、画像記録ドラム14の外周面上に保持される。
【0034】
なお、画像記録前の枚葉紙12は、搬送ドラム26から画像記録ドラム14に受け渡される。搬送ドラム26は、画像記録ドラム14に並列して配置されており、タイミングを合わせて画像記録ドラム14に枚葉紙12を受け渡す。
【0035】
また、画像記録後の枚葉紙12は、画像記録ドラム14から搬送ドラム28に受け渡される。搬送ドラム28は、画像記録ドラム14に並列して配置されており、タイミングを合わせて画像記録ドラム14から枚葉紙12を受け取る。
【0036】
4本のインクジェットヘッド16C、16M、16Y、及び16Kは、枚葉紙12のX方向長さに対応したラインヘッドである。
【0037】
インクジェットヘッド16C、16M、16Y、及び16Kは、ヘッド支持フレーム40に取り付けられ、画像記録ドラム14の回転軸18を中心とした同心円上に一定の間隔をもって放射状に、かつ画像記録ドラム14を挟んで左右対称になるように配置される。即ち、画像記録ドラム14の中心を通る鉛直な線分に対してシアンのインクジェットヘッド16Cとクロのインクジェットヘッド16Kとが左右対称に配置され、かつマゼンタのインクジェットヘッド16Mとイエロのインクジェットヘッド16Yとが左右対称に配置されている。
【0038】
インクジェットヘッド16C、16M、16Y、及び16Kは、底部にそれぞれノズル128(
図5参照)が配置されたノズル面30C、30M、30Y、及び30Kを有している。インクジェットヘッド16C、16M、16Y、及び16Kは、それぞれ枚葉紙12の搬送方向であるY方向と直交させて、かつノズル面30C、30M、30Y、及び30Kを画像記録ドラム14の外周面に対向させて配置される。インクジェットヘッド16C、16M、16Y、及び16Kは、画像記録ドラム14の外周面とノズル面30C、30M、30Y、及び30Kとの間隔をそれぞれ同じ距離にして配置される。
【0039】
インクジェットヘッド16C、16M、16Y、及び16Kは、ノズル面30C、30M、30Y、及び30Kに配置されたノズル128から画像記録ドラム14の外周面に向けて垂直にインク滴を吐出する。
【0040】
図2は、インクジェット記録装置の画像記録部の概略構成を示す正面図である。インクジェットヘッド16C、16M、16Y、及び16Kが取り付けられるヘッド支持フレーム40は、画像記録ドラム14の回転軸18と直交して設けられた一対のサイドプレート42L及び42Rと、一対のサイドプレート42L及び42Rを上端部で連結する連結フレーム44とで構成されている。
【0041】
一対のサイドプレート42L及び42Rは、板形状を有しており、画像記録ドラム14を挟んで互いに対向するように配置されている。一対のサイドプレート42L及び42Rの内側には、インクジェットヘッド16C、16M、16Y、及び16Kを取り付けるための取付部46C、46M、46Y、及び46Kが設けられている。なお、
図2では便宜上、取付部46Yのみ図示している。
【0042】
取付部46C、46M、46Y、及び46Kは、画像記録ドラム14の回転軸18を中心とした同心円上に一定の間隔をもって放射状に配置されている。インクジェットヘッド16C、16M、16Y、及び16Kは、両端に設けられた被取付部48C、48M、48Y、及び48K(
図2では便宜上、被取付部48Yのみ図示)を取付部46C、46M、46Y、及び46Kに固定することにより、ヘッド支持フレーム40に取り付けられる。
【0043】
ヘッド支持フレーム40は、不図示のガイドレールにガイドされて、画像記録ドラム14の回転軸18と平行にスライド移動自在に設けられている。ヘッド支持フレーム40は、不図示のリニア駆動機構(たとえば、送りネジ機構など)に駆動されて、
図2に実線で示す「画像記録位置」と
図2に破線で示す「メンテナンス位置」との間を所定の移動速度で移動する。
【0044】
インクジェットヘッド16C、16M、16Y、及び16Kは、ヘッド支持フレーム40を画像記録位置に位置させると、画像記録ドラム14の周囲に配置され、画像記録可能な状態になる。
【0045】
メンテナンス位置は、インクジェットヘッド16C、16M、16Y、及び16Kが画像記録ドラム14から退避する位置に設定される。メンテナンス位置には、インクジェットヘッド16C、16M、16Y、及び16Kを保湿するための保湿ユニット50が設けられる。
【0046】
保湿ユニット50は、インクジェットヘッド16C、16M、16Y、及び16Kのノズル面30C、30M、30Y、及び30Kをそれぞれ覆うキャップ52C、52M、52Y、及び52K(
図2では便宜上、キャップ52Yのみ図示)を備えている。装置を長時間停止する場合は、ノズル面30C、30M、30Y、及び30Kはキャップ52C、52M、52Y、及び52Kによって覆われる。これにより、ノズル128が乾燥することによる不吐出を防止することができる。
【0047】
なお、キャップ52C、52M、52Y、及び52Kは、不図示の加圧機構及び吸引機構を備えており、ノズル128を加圧及び吸引することができる。また、キャップ52C、52M、52Y、及び52Kは、不図示の洗浄液供給機構を備えており、内部に洗浄液を供給することができる。
【0048】
キャップ52C、52M、52Y、及び52Kの下方位置には、廃液トレイ54が配置される。キャップ52C、52M、52Y、及び52Kに供給された洗浄液は、廃液トレイ54に廃棄され、廃液回収配管56を介して廃液タンク58に回収される。
【0049】
画像記録位置とメンテナンス位置との間には、インクジェットヘッド16C、16M、16Y、及び16Kのノズル面30C、30M、30Y、及び30Kを清掃するためのノズル面清掃装置60が設けられる。インクジェットヘッド16C、16M、16Y、及び16Kは、メンテナンス位置と画像記録位置との間を移動することにより、ノズル面清掃装置60によってノズル面30C、30M、30Y、及び30Kが清掃される。
【0050】
<インクジェットヘッドの構成例>
インクジェットヘッド16C、16M、16Y、及び16Kの構成は共通しているため、ここではインクジェットヘッド16として構成を説明する。
【0051】
図3は、インクジェットヘッド16の斜視図である。インクジェットヘッド16は、複数個のヘッドモジュール112-i(i=1,2,…n)をX方向に繋ぎ合わせて構成される。ここでは17個(n=17)のヘッドモジュール112-iを並べた例を示している。フレーム116は、複数個のヘッドモジュール112-iを固定するための枠体として機能する。各ヘッドモジュール112-iは、ノズル面30を共通の方向に向けてフレーム116に固定されている。各ヘッドモジュール112-iの構造は共通している。
【0052】
各ヘッドモジュール112-iには、それぞれフレキシブル基板118が接続される。フレキシブル基板118を介して各ヘッドモジュール112-iに駆動信号及び吐出制御信号等が供給される。
【0053】
図4は、インクジェットヘッド16をノズル面30側から見た拡大図である。
図4に示すように、インクジェットヘッド16は、X方向に直交する方向であって、ノズル面30に沿った方向(第2方向の一例)の長さがDhである。インクジェットヘッド16は、ヘッドモジュール保持部材122によって、各ヘッドモジュール112-iをY方向の両側から支持する。また、インクジェットヘッド16は、ヘッド保護部材124によって、複数個のヘッドモジュール112-iからなるヘッドモジュール列をX方向の両側から支持する。
【0054】
ノズル面30には撥液処理が施され、撥液膜が形成される。したがって、ノズル面30は、撥液性を有するノズル部に相当する。また、ヘッドモジュール保持部材122及びヘッド保護部材124には撥液処理は施されない。したがって、ヘッドモジュール保持部材122及びヘッド保護部材124は、ノズル面30よりも撥液性が劣る、又は撥液性を有さない非ノズル部に相当する。
【0055】
図5は、ヘッドモジュール112-iのノズル面30の一例を示す平面図である。ヘッドモジュール112-iは、X方向に対して角度γの傾きを有するV方向に沿った長辺側の端面と、Y方向に対して角度αの傾きを持つW方向に沿った短辺側の端面とを有する平行四辺形の平面視形状である。ノズル面30には、ノズル128が二次元配列されている。
図5に示す例では、ノズル128はXY平面視において円形状であるが、四角形状、又は多角形状であってもよい。
【0056】
X方向に投影される投影ノズル列LNは、記録解像度を達成するノズル密度でノズル128が等間隔で並ぶ一列のノズル列と等価なものである。ヘッドモジュール112-iのX方向のノズル密度は、例えば1200dpi(dot per inch)である。
【0057】
ヘッドモジュール112-iをX方向に複数個繋ぎ合わせることにより(
図3参照)、インクジェットヘッド16は、枚葉紙12の全面にノズル128が配置される。即ち、インクジェットヘッド16は、枚葉紙12の1回の搬送で1200dpiの記録解像度による印刷が可能なフルライン型のバーヘッドである。
【0058】
シングルパス方式に適用されるフルライン型のバーヘッドは、枚葉紙12の全面を印刷範囲とする場合に限らず、枚葉紙12の周囲に余白部を設ける場合等、枚葉紙12の一部が印刷領域となっている場合には、印刷に必要な範囲にノズルが配置されていればよい。
【0059】
ヘッドモジュール112-iのノズル数、ノズル密度、及びノズルの配列形態は特に限定されない。本実施形態は、600dpi以上のノズル密度を有するインクジェットヘッドに特に有効である。
【0060】
<ヘッドモジュールの内部構造例>
ヘッドモジュール112-iは、各ノズル128に対応してインク吐出に必要な吐出エネルギーを発生させる吐出エネルギー発生素子(例えば、圧電素子又は発熱素子)を備えている。ヘッドモジュール112-iは、フレキシブル基板118を介して供給される駆動信号及び吐出制御信号に従い、オンデマンドでインクを吐出する。
【0061】
図6は、ヘッドモジュール112-iの1ノズル分のインク滴吐出素子の内部構造例を示す断面図である。ヘッドモジュール112-iは、インク滴の吐出口であるノズル128が形成されたノズルプレート130と、ノズル128に対応する圧力室132、供給口134、共通流路136等の流路が形成された流路板138とを含んでいる。
【0062】
流路板138は、圧力室132の側壁部を構成し、かつ共通流路136から圧力室132にインクを導く個別供給路の絞り部(最狭窄部)としての供給口134を形成する流路形成部材である。流路板138は一枚の基板で構成してもよいし、複数枚の基板を積層した構造であってもよい。ノズルプレート130及び流路板138は、シリコンを材料として半導体製造技術を利用して所要の形状に加工することが可能である。
【0063】
共通流路136には複数の圧力室132がそれぞれの供給口134を介して接続されている。また、共通流路136は、インクジェットヘッド16に設けられたインク供給口160及びインク回収口162(
図7参照)と連通しており、インク供給システム200(
図7参照)によってインクが循環される。
【0064】
圧力室132の一部の面(
図6において天面)を構成する振動板140には、圧力室132毎に個別電極142を備えた圧電素子144が設けられている。振動板140は、圧電素子144の下部電極に相当する共通電極146として機能する導電層付きのシリコンから成り、各圧力室132に対応して配置される圧電素子144の共通電極を兼ねる。なお、樹脂等の非導電性材料によって振動板を形成する態様も可能であり、この場合は、振動板部材の表面に金属等の導電性材料による共通電極層が形成される。また、ステンレス鋼等の金属(導電性材料)によって共通電極を兼ねる振動板を構成してもよい。
【0065】
個別電極142に駆動電圧を印加することによって圧電素子144が変形して圧力室132の容積が変化し、これに伴う圧力変化によりノズル128からインクが吐出される。インク吐出後は、共通流路136から供給口134を通って新しいインクが圧力室132に再充填される。
【0066】
ヘッドモジュール112-iは、個別電極142に印加する駆動電圧を選択することによって、各ノズル128からインク量が相対的に少ない小滴、小滴よりもインク量が相対的に多い中滴、及び中滴よりもインク量が相対的に多い大滴、の3種類のインク滴のうちいずれかのインク滴を吐出することができる。このように、ヘッドモジュール112-iは、枚葉紙12に複数の異なる径のインクドットを形成可能である。
【0067】
ノズル128、圧力室132、供給口134、圧電素子144を含んだインク室ユニット150が、1画素の記録を担う記録素子単位としてのインク滴吐出素子である。ヘッドモジュール112-iは、
図5で説明した二次元ノズル配列に対応した複数のインク室ユニット150を備えている。
【0068】
<インク供給システム>
図7は、インクジェットヘッド16にインクを供給するインク供給システム200の概略構成図である。インク供給システム200は、メインタンク202と、バッファータンク206と、メインポンプ208と、供給タンク214と、回収タンク222と、供給ポンプ228と、回収ポンプ234と、を含んで構成される。
【0069】
メインタンク202には、インクジェットヘッド16が吐出する色のインクが貯留されている。インクには、金属顔料及びカーボンブラックの少なくとも一方を含んでいてもよい。インクの粘度は、2~10センチポアズの範囲が好ましい。1センチポアズは0.001パスカル秒(Pa・s)である。なお、本明細書中で、数値範囲を“ ~ ”を用いて表す場合は、“ ~ ”で示される上限、下限の数値も数値範囲に含むものとする。
【0070】
メインタンク202は、メインタンク接続配管204を介してバッファータンク206と連結されている。メインタンク接続配管204には、メインポンプ208が設けられている。メインポンプ208は、メインタンク202に貯留されたインクをバッファータンク206に送液する。
【0071】
バッファータンク206は、天面に設けられた大気開放穴206Aを介して内部が大気開放されている。バッファータンク206の内部には、メインタンク202から供給されるインクによって、内部に所定量のインクが貯留される。
【0072】
バッファータンク206は、第1供給流路212を介して供給タンク214に連通されている。さらに、供給タンク214は、第2供給流路216を介してインクジェットヘッド16のインク供給口160に連通されている。
【0073】
また、バッファータンク206は、第1回収流路220を介して回収タンク222に連通されている。さらに、回収タンク222は、第2回収流路224を介して、インクジェットヘッド16のインク回収口162に連通されている。
【0074】
第1供給流路212には、供給ポンプ228が設けられている。供給ポンプ228は、バッファータンク206から供給タンク214にインクを送液する。また、第1回収流路220には、回収ポンプ234が設けられている。回収ポンプ234は、回収タンク222からバッファータンク206にインクを送液する。
【0075】
供給タンク214の内部は、弾性膜238によって供給インク室214Aと供給気体室214Bとに区画されている。供給インク室214Aには、第1供給流路212と第2供給流路216とが連通されている。バッファータンク206に貯留されたインクは、供給ポンプ228によって、第1供給流路212、供給インク室214A、及び第2供給流路216を介してインクジェットヘッド16に供給される。
【0076】
一方、供給気体室214Bには、気体が充填されている。供給気体室214Bには、供給気体室214Bを大気に開放するための大気開放管242が連通されている。大気開放管242には、大気開放バルブ244が設けられている。大気開放バルブ244は、大気開放管242を開閉する。
【0077】
回収タンク222の構成も同様である。即ち、回収タンク222の内部は、弾性膜246によって回収インク室222Aと回収気体室222Bとに区画されている。
【0078】
回収インク室222Aには、第1回収流路220と第2回収流路224とが連通されている。インクジェットヘッド16の内部のインクは、回収ポンプ234によって、第2回収流路224、回収インク室222A、及び第1回収流路220を介してバッファータンク206に回収される。
【0079】
回収気体室222Bには、気体が充填されている。回収気体室222Bには、回収気体室222Bを大気に開放するための大気開放管250が連通されている。大気開放管250には、大気開放バルブ252が設けられている。大気開放バルブ252は、制御装置からの指令に応じて作動し、大気開放管250を開閉する。
【0080】
<ノズル面清掃装置の構成>
図2に示すように、ノズル面清掃装置60は、インクジェットヘッド16C、16M、16Y、及び16Kのノズル面30C、30M、30Y、及び30Kに洗浄液を付与して洗浄する洗浄液付与部62と、洗浄液が付与されたノズル面30C、30M、30Y、及び30Kを払拭する払拭部64とで構成される。ノズル面清掃装置60は、ヘッド支持フレーム40の移動経路上に配置される。
【0081】
ノズル面清掃装置60(記録ヘッド洗浄装置の一例)は、インクジェットヘッド16C、16M、16Y、及び16Kをメンテナンス位置から画像記録位置、又は画像記録位置からメンテナンス位置に移動(相対移動の一例)させることにより、ノズル面30C、30M、30Y、及び30Kを清掃する。
【0082】
図2に示す例では、払拭部64は、洗浄液付与部62に対して画像記録位置側に配置されているが、洗浄液付与部62に対してメンテナンス位置側に配置されてもよい。
【0083】
<洗浄液付与部の構成>
図8は、洗浄液付与部62をメンテナンス位置側から見た側面図である。洗浄液付与部62は、保湿ユニット50に備えられた廃液トレイ54の内側に設置される(
図2参照)。洗浄液付与部62は、インクジェットヘッド16C、16M、16Y、及び16Kにそれぞれ対応して設けられた洗浄液付与ユニット70C、70M、70Y、及び70Kと、洗浄液付与ユニット70C、70M、70Y、及び70Kが搭載される本体72と、を備えて構成される。
【0084】
本体72は、水平に設置され、不図示の昇降装置によって昇降自在に設けられる。本体72は、上面部分に洗浄液付与ユニット取付部72C、72M、72Y、及び72Kを有する。洗浄液付与ユニット70C、70M、70Y、及び70Kは、本体72に設けられた洗浄液付与ユニット取付部72C、72M、72Y、及び72Kにボルト等で固定されて、それぞれ対応するインクジェットヘッド16C、16M、16Y、及び16Kの移動経路上に配置される。
【0085】
洗浄液付与ユニット70C、70M、70Y、及び70Kの基本構成は共通しているため、ここでは洗浄液付与ユニット70として構成を説明する。
図9及び
図10は、それぞれ洗浄液付与ユニット70の正面図及び側面図である。
図9及び
図10に示すように、洗浄液付与ユニット70は、ノズル面30に洗浄液を付与する洗浄液付与ヘッド74と、ノズル面30から落ちる洗浄液を回収する洗浄液回収皿76と、を備えて構成される。
【0086】
洗浄液回収皿76は、上部が開口した矩形の箱形状を有する。洗浄液付与ヘッド74は、洗浄液回収皿76の内部に垂直に立設される。
【0087】
洗浄液付与ヘッド74(洗浄液保持部の一例)は、四角いブロック形状を有し、上部に水平面に対して傾斜した洗浄液保持面74Aを備えている。洗浄液保持面74Aは、洗浄対象とするインクジェットヘッド16のノズル面30と同じ傾斜角度を有する。
【0088】
洗浄液付与ヘッド74は、洗浄液保持面74Aに対向するノズル面30を洗浄液保持面74Aに保持した洗浄液で洗浄する。洗浄液保持面74Aは、X方向(第1方向の一例)の長さがW、及びX方向に直交する方向であって、洗浄液保持面74Aに沿った方向(第2方向の一例)の長さがDhより大きいDmの矩形形状である。即ち、Dm>Dhの関係を有する。
【0089】
なお、ノズル面30の洗浄時は、ノズル面30の全体が洗浄液保持面74Aと対向する。また、ノズル面30と洗浄液保持面74Aとが対向した際のノズル面30と洗浄液保持面74Aとの間隔(距離)はHである。
【0090】
さらに、洗浄液保持面74Aの傾斜方向の上部近傍であって、ノズル面30と洗浄液保持面74Aとが対向した際にヘッドモジュール保持部材122と対向する位置には、洗浄液が噴出する洗浄液噴出口78が配置されている。洗浄液噴出口78から噴出した洗浄液は、傾斜した洗浄液保持面74Aを流れ落ちる。これにより、洗浄液保持面74Aの上に洗浄液の層(膜)が形成される。洗浄液保持面74Aの上に形成される洗浄液の層にインクジェットヘッド16のノズル面30を接触させることにより、ノズル面30に洗浄液が付与され、付与された洗浄液によってノズル面30が洗浄される。
【0091】
洗浄液付与ヘッド74は、洗浄液噴出口78に連通する供給流路80を有する。供給流路80は、洗浄液回収皿76に設けられた連通流路76Aと連通する。連通流路76Aは、洗浄液回収皿76に設けられた洗浄液供給口76Bに連通する。洗浄液付与ヘッド74は、洗浄液供給口76Bに洗浄液が供給されることにより、洗浄液噴出口78から洗浄液を噴出する。
【0092】
洗浄液は、不図示の洗浄液タンクから洗浄液供給口76Bに供給される。洗浄液供給口76Bには、洗浄液タンクに接続された不図示の配管が接続される。配管には不図示の洗浄液供給ポンプ及び不図示のバルブが設けられる。バルブを開け、洗浄液供給ポンプを駆動すると、洗浄液タンクから洗浄液付与ヘッド74に洗浄液が供給される。
【0093】
また、洗浄液回収皿76の底部は水平面に対して傾斜を有し、傾斜方向の下端部に回収穴88を有する。回収穴88は、回収流路76Cを介して洗浄液排出口76Dに連通する。洗浄液排出口76Dは、不図示の配管を介して廃液タンク58(
図2参照)に接続される。洗浄液付与ヘッド74の洗浄液噴出口78から噴出した洗浄液は、洗浄液保持面74Aから流れ落ちて洗浄液回収皿76に回収され、不図示の配管を介して廃液タンク58に回収される。
【0094】
ここでは、洗浄液保持面74Aに配置した洗浄液噴出口78から洗浄液を噴出することで洗浄液保持面74Aに洗浄液を供給したが、洗浄液を供給する方法はこれに限定されない。例えば、別途設けた洗浄液ノズルから洗浄液保持面74Aの傾斜方向の上部近傍に洗浄液を滴下することで供給してもよい。
【0095】
洗浄液としては、例えば、ジエチレンモノブチルエーテルを主成分とする洗浄液が用いられる。この種の洗浄液をノズル面30に付与することで、ノズル面30に付着したインク由来の固着物を溶解し除去しやすくすることができる。
【0096】
<払拭部の構成>
図11は、払拭部をメンテナンス位置側から見た側面図である。
図11に示すように、払拭部64は、インクジェットヘッド16C、16M、16Y、及び16Kに対応して設けられた払拭ユニット300C、300M、300Y、及び300Kと、払拭ユニット300C、300M、300Y、及び300Kがセットされる本体フレーム302と、を備えて構成される。
【0097】
<本体フレームの構成>
本体フレーム302は、上端部が開口した箱形状を有している。本体フレーム302は、水平に設置されており、不図示の昇降装置によって昇降自在に設けられている。本体フレーム302の内部には、払拭ユニット300C、300M、300Y、及び300Kを装着するための払拭ユニット装着部304C、304M、304Y、及び304Kが設けられている。
【0098】
払拭ユニット装着部304C、304M、304Y、及び304Kは、払拭ユニット300C、300M、300Y、及び300Kを収容可能な空間であり、上部が開口している。払拭ユニット300C、300M、300Y、及び300Kは、払拭ユニット装着部304C、304M、304Y、及び304Kの上部開口部から鉛直下向きに差し込むことにより、払拭ユニット装着部304C、304M、304Y、及び304Kにセットされる。
【0099】
なお、払拭ユニット装着部304C、304M、304Y、及び304Kには、不図示のロック機構が備えられ、ロック機構により装着された払拭ユニット300C、300M、300Y、及び300Kがロックされる。ロック機構は、払拭ユニット300C、300M、300Y、及び300Kを払拭ユニット装着部304C、304M、304Y、及び304Kに差し込むと、自動的に作動する。
【0100】
<払拭ユニットの構成>
払拭ユニット300C、300M、300Y、及び300Kの基本構成は共通しているため、ここでは払拭ユニット300として構成を説明する。
【0101】
図12は払拭ユニットの平面図であり、
図13は払拭ユニットの正面部分断面図である。
図12及び
図13に示すように、払拭ユニット300は、傾斜して設置された押圧ローラ318に帯状の払拭ウエブ310(払拭部材の一例)を巻き掛け、押圧ローラ318に巻き掛けた払拭ウエブ310をインクジェットヘッド16のノズル面30(
図3参照)に押圧当接させることにより、ノズル面30を払拭する。本実施形態では、払拭ユニット300は、洗浄液を含浸させない乾燥した状態の払拭ウエブ310でノズル面30を払拭する。
【0102】
払拭ユニット300は、ケース312と、払拭ウエブ310を繰り出す繰出軸314と、払拭ウエブ310を巻き取る巻取軸316と、繰出軸314から繰り出された払拭ウエブ310が押圧ローラ318に巻き掛けられるようにガイドする前段ガイド320と、押圧ローラ318に巻き掛けられた払拭ウエブ310が巻取軸316に巻き取られるようにガイドする後段ガイド322と、払拭ウエブ310を搬送するグリッドローラ(駆動ローラ)324と、を備えて構成される。
【0103】
繰出軸314は、円柱形状を有する。繰出軸314は、基端部をケース本体326に設けられた軸支持部に固定(片持ち支持)されて、ケース本体326の内部に水平に設置される。繰出軸314には繰出コア338が着脱自在に装着される。なお、繰出軸314は、繰出コア338の長さよりも若干短い。したがって、繰出コア338が装着されると、繰出軸314は、繰出コア338の内周部に退避する。
【0104】
繰出コア338は、円筒形状を有する。帯状の払拭ウエブ310は、繰出コア338にロール状に巻回される。
【0105】
繰出コア338は、内周部に繰出軸314を挿入して、繰出軸314に嵌めることにより、繰出軸314に装着される。繰出軸314に装着された繰出コア338は、繰出軸314の周りを回転して、回転自在に支持される。
【0106】
なお、払拭ウエブ310は、例えば、PET(polyethylene terephthalate;ポリエチレンテレフタラート)、PE(Polyethylene;ポリエチレン)、NY(NYLON;ナイロン)等の極微細繊維を用いた編み又は織りからなるシートで構成される。払拭ウエブ310は、払拭対象とするインクジェットヘッド16の幅に対応した幅を有する。
【0107】
巻取軸316は、繰出軸314の下方位置に水平に配設される。即ち、巻取軸316と繰出軸314とは、上下に並列して配置される。
【0108】
巻取軸316には、繰出コア338から繰り出された払拭ウエブ310を巻き取る巻取コア342が装着される。
【0109】
巻取コア342の構成は、繰出コア338の構成とほぼ同様である。即ち、巻取コア342は、円筒形状を有する。繰出コア338に巻回された払拭ウエブ310の先端は、巻取コア342に固定される。
【0110】
巻取コア342は、内周部に巻取軸316を嵌めることにより、巻取軸316に装着される。
【0111】
巻取軸316の主軸は、基端部がケース本体326の外側に突出して設けられており、突出した基端部に巻取軸ギア358が取り付けられる。巻取軸316(主軸)は、巻取軸ギア358が不図示のモータにより回転駆動されることにより回転する。
【0112】
押圧ローラ318は、繰出軸314の上方に配置されており(本例では、押圧ローラ318と繰出軸314と巻取軸316とが同一直線上に配置されている。)、水平面に対して所定角度傾斜して配置されている。即ち、押圧ローラ318は、払拭ウエブ310をインクジェットヘッド16のノズル面30に押圧当接させるものであるため、払拭対象とするインクジェットヘッド16のノズル面30の水平面に対する傾斜に合わせて傾けて配置され、押圧ローラ318とノズル面30とは平行に配置される。
【0113】
前段ガイド320は、第1前段ガイド360と、第2前段ガイド362とで構成され、繰出軸314から繰り出された払拭ウエブ310が、傾斜して設置された押圧ローラ318に巻き掛けられるようにガイドする。
【0114】
一方、後段ガイド322は、第1後段ガイド364と、第2後段ガイド366とで構成され、傾斜して設置された押圧ローラ318に巻き掛けられた払拭ウエブ310が、水平に設置された巻取軸316に巻き取れるようにガイドする。
【0115】
前段ガイド320と後段ガイド322は、押圧ローラ318を挟んで対称に配置されている。即ち、第1前段ガイド360と第1後段ガイド364とが押圧ローラ318を挟んで対称に配置され、かつ第2前段ガイド362と第2後段ガイド366とが押圧ローラ318を挟んで対称に配置されている。
【0116】
第1前段ガイド360は、所定の幅の板形状であり、昇降ステージ370の上に垂直に立設されている。第1前段ガイド360は、上縁部360Aが、払拭ウエブ310の巻き掛け部であり、表面に円弧形状を有している。また、上縁部360Aは、水平面に対して所定角度傾斜している。これにより、払拭ウエブ310の走行方向が変換される。
【0117】
第1後段ガイド364は、第1前段ガイド360と同様の構成である。即ち、所定の幅の板形状であり、昇降ステージ370の上に垂直に立設されている。第1後段ガイド364は、上縁部364Aが、払拭ウエブ310の巻き掛け部であり、円弧形状を有している。また、上縁部364Aは、水平面に対して所定角度傾斜している。
【0118】
第1前段ガイド360と第1後段ガイド364とは、押圧ローラ318を挟んで対称に配置されている。繰出軸314から繰り出された払拭ウエブ310は、第1前段ガイド360に巻き掛けられることにより、繰出軸314と直交する方向から押圧ローラ318と略直交する方向に方向転換される。また、第2後段ガイド366に巻き掛けられた払拭ウエブ310は、第1後段ガイド364に巻き掛けられることにより、巻取軸316と直交する方向に方向転換される。
【0119】
第2前段ガイド362は、両端部にフランジ362L、362Rを有するガイドローラとして構成されている。第2前段ガイド362は、第1前段ガイド360と押圧ローラ318との間に配置され、第1前段ガイド360に巻き掛けられた払拭ウエブ310が、押圧ローラ318に巻き掛けられるようにガイドする。即ち、第1前段ガイド360によって押圧ローラ318と略直交する方向に方向転換された払拭ウエブ310が、押圧ローラ318と直交する方向に走行するように、払拭ウエブ310の走行方向を微調整する。また、両端のフランジ362L及び362Rによって、払拭ウエブ310の斜行を防止する。
【0120】
第2前段ガイド362は、一端をブラケット368Aに片持ち支持されて、所定角度傾斜して設けられている。ブラケット368Aは、
図12に示すように、先端に屈曲したプレート形状を有しており、基端部がケース本体326の背面上端部に固定されている。ブラケット368Aは、ケース本体326の上端部から上方に向けて垂直に突出して設けられている。第2前段ガイド362は、ブラケット368Aの先端の屈曲部に片持ち支持されて回動自在に支持されている。
【0121】
第2後段ガイド366は、第2前段ガイド362と同様の構成である。即ち、第2後段ガイド366は、両端部にフランジ366L及び366Rを有するガイドローラとして構成され、一端をブラケット368Bに片持ち支持されて、所定角度傾斜して設けられている。ブラケット368Bは、先端が屈曲したプレート形状を有しており、基端部がケース本体326の背面上端部に固定されている。第2後段ガイド366は、ブラケット368Bの先端の屈曲部に片持ち支持されて回動自在に支持されている。
【0122】
第2後段ガイド366は、押圧ローラ318と第1後段ガイド364との間に配置され、押圧ローラ318に巻き掛けられた払拭ウエブ310が、第1後段ガイド364に巻き掛けられるようにガイドする。
【0123】
第2前段ガイド362と第2後段ガイド366とは、押圧ローラ318を挟んで対称に配置されている。第1前段ガイド360によって押圧ローラ318と略直交する方向に方向転換された払拭ウエブ310は、第2前段ガイド362に巻き掛けられることにより、押圧ローラ318と直交する方向に走行するように、走行方向が微調整される。また、押圧ローラ318に巻き掛けられた払拭ウエブ310は、第1後段ガイド364に巻き掛けられるように、第2後段ガイド366によって走行方向が微調整される。払拭ウエブ310は、第1後段ガイド364に巻き掛けられることにより、巻取軸316と直交する方向に方向転換される。
【0124】
このように、前段ガイド320と後段ガイド322とは、段階的に払拭ウエブ310の走行方向を切り換えることにより、払拭ウエブ310が、無理なく押圧ローラ318に巻き掛けられるようにガイドする。
【0125】
このため、第1前段ガイド360の傾斜角度に比べて第2前段ガイド362の傾斜角度は押圧ローラ318の傾斜角度に近い角度となっており、同様に第1後段ガイド364の傾斜角度に比べて第2後段ガイド366の傾斜角度は押圧ローラ318の傾斜角度に近い角度となっている。
【0126】
<画像記録部の電気的構成>
図14は、画像記録部10の電気的構成を示すブロック図である。画像記録部10は、移動制御部400と、搬送制御部402と、画像記録制御部406と、保湿ユニット制御部408と、洗浄液制御部410と、払拭制御部412と、背圧制御部414と、を備えて構成される。
【0127】
移動制御部400(移動部の一例)は、インクジェットヘッド16C、16M、16Y、及び16Kの移動を制御する。移動制御部400は、不図示のリニア駆動機構を駆動してヘッド支持フレーム40に支持されたインクジェットヘッド16C、16M、16Y、及び16Kを、画像記録位置とメンテナンス位置(
図2参照)との間で移動させる。
【0128】
搬送制御部402は、枚葉紙12の搬送を制御する。搬送制御部402は、グリッパ24(
図1参照)を制御し、枚葉紙12の先端部をグリッパ24に把持させる。また、搬送制御部402は、不図示の吸着保持機構を制御し、枚葉紙12を画像記録ドラム14の外周面に保持させる。さらに、搬送制御部402は、不図示のモータを駆動して画像記録ドラム14を回転させ、枚葉紙12を画像記録ドラム14に保持させて搬送させる。
【0129】
また、搬送制御部402は、搬送ドラム26及び搬送ドラム28(
図1参照)を駆動して、枚葉紙12を搬送ドラム26から画像記録ドラム14へ、さらに画像記録ドラム14から搬送ドラム28へ搬送させる。
【0130】
画像記録制御部406は、インクジェットヘッド16C、16M、16Y、及び16Kを制御する。画像記録制御部406は、インクジェットヘッド16C、16M、16Y、及び16Kからそれぞれインク滴を吐出させて、画像記録ドラム14によって搬送される枚葉紙12の表面にカラー画像を記録させる。
【0131】
保湿ユニット制御部408は、保湿ユニット50を制御し、インクジェットヘッド16C、16M、16Y、及び16Kを保湿させる。保湿ユニット制御部408は、不図示の加圧機構及び吸引機構を制御し、キャップ52C、52M、52Y、及び52Kからインクジェットヘッド16C、16M、16Y、及び16Kのノズル128の加圧及び吸引を行う。保湿ユニット制御部408は、不図示の洗浄液供給機構を制御し、キャップ52C、52M、52Y、及び52Kの内部に洗浄液を供給する。
【0132】
洗浄液制御部410は、洗浄液付与部62を制御し、インクジェットヘッド16C、16M、16Y、及び16Kのノズル面30C、30M、30Y、及び30Kに洗浄液を付与する。洗浄液制御部410は、本体72(
図8参照)を待機位置から所定量上昇して作動位置に移動させる。また、洗浄液制御部410は、不図示の洗浄液供給ポンプを駆動し、洗浄液付与ヘッド74の洗浄液噴出口78から洗浄液を噴き出させる。
【0133】
払拭制御部412は、払拭部64を制御し、インクジェットヘッド16C、16M、16Y、及び16Kのノズル面30C、30M、30Y、及び30Kを払拭ウエブ310で払拭する。払拭制御部412は、不図示の昇降装置によって本体フレーム302を待機位置から作動位置に移動させる。払拭制御部412は、不図示のモータを駆動して巻取軸316(
図13参照)を回転させ、払拭ウエブ310を走行させる。
【0134】
背圧制御部414は、インクの色毎にそれぞれ設けられたインク供給システム200を制御し、各インクジェットヘッド16にそれぞれインクを循環させる。背圧制御部414は、インクジェットヘッド16に設けられた供給側圧力センサ164及び回収側圧力センサ166(
図7参照)によってインクジェットヘッド16の圧力(背圧)を測定し、測定結果に基づいて供給ポンプ228及び回収ポンプ234の駆動を制御する。
【0135】
例えば、インクジェットヘッド16を使用して画像を記録する場合、供給ポンプ228による供給側圧力Pin、及び回収ポンプ234による回収側圧力Poutをそれぞれ負圧とし、Pin>Poutとする。即ち、供給ポンプ228の供給側圧力は負圧であるが、回収ポンプ234の回収側圧力がさらに低圧の負圧であるため、インクは、インク供給口160からインク回収口162へ流れ、かつ、インクジェットヘッド16のノズル128の背圧Pnが負圧に維持される。したがって、ヘッドモジュール112-iのノズル128ではインクのメニスカスが保持されつつ、インクジェットヘッド16にインクが循環する。
【0136】
<インクジェットヘッド洗浄方法>
図15は、インクジェットヘッド洗浄方法の処理を示すフローチャートである。インクジェットヘッド洗浄方法は、背圧制御工程(ステップS1)と、洗浄液供給工程(ステップS2)と、移動工程(ステップS3)と、払拭工程(ステップS4)と、を備えている。
【0137】
ここでは、インクジェットヘッド16C、16M、16Y、及び16Kは、メンテナンス位置においてノズル面30C、30M、30Y、及び30Kがキャップ52C、52M、52Y、及び52Kによって覆われているものとする。このメンテナンス状態では、背圧制御部414は、インクジェットヘッド16C、16M、16Y、及び16Kのノズル128の背圧をメンテナンス時用の背圧に制御する。ここでは、背圧制御部414は、ノズル128の背圧を-1000パスカルにする。メンテナンス時用の背圧は、-1100パスカル~-900パスカルであればよい。
【0138】
インクジェットヘッド16C、16M、16Y、及び16Kの洗浄が開始すると、ステップS1では、背圧制御部414は、インクジェットヘッド16C、16M、16Y、及び16Kのノズル128の背圧をノズル面洗浄時用の背圧にする。
【0139】
ステップS2では、洗浄液制御部410は、本体72(
図8参照)を待機位置から所定量上昇させて作動位置に移動させる。さらに、洗浄液制御部410は、不図示の洗浄液供給ポンプを駆動し、洗浄液付与ヘッド74の洗浄液噴出口78から洗浄液を噴き出させ、洗浄液保持面74Aに洗浄液を付与する(洗浄液付与工程の一例)。
【0140】
ステップS3では、移動制御部400(洗浄部の一例)は、インクジェットヘッド16C、16M、16Y、及び16Kを画像記録位置に向けて移動させる。インクジェットヘッド16C、16M、16Y、及び16Kが洗浄液付与部62に到達すると、インクジェットヘッド16C、16M、16Y、及び16Kのノズル面30C、30M、30Y、及び30Kが、洗浄液付与ユニット70C、70M、70Y、及び70Kの洗浄液保持面74Aにそれぞれ対向する。これにより、ノズル面30C、30M、30Y、及び30Kは、洗浄液保持面74Aに保持された洗浄液によって洗浄される(洗浄工程の一例)。
【0141】
前述したように、各洗浄液保持面74Aは、X方向の長さがW、X方向に直交する方向であって、洗浄液保持面74Aに沿った方向の長さがDmである。また、インクジェットヘッド16C、16M、16Y、及び16Kは、それぞれX方向に直交する方向であって、ノズル面30に沿った方向の長さがDhである。したがって、洗浄液制御部410は、各空間にW×Dh×Hより多い量の洗浄液を付与する。例えば、毎秒あたりW×Dh×Hの流速で洗浄液を付与する。これにより、ノズル面30C、30M、30Y、及び30Kと、各洗浄液保持面74Aとの間の空間が洗浄液で満たされた状態となり、ノズル面30C、30M、30Y、及び30Kを適切に洗浄することができる。
【0142】
ここで、インクジェットヘッド16C、16M、16Y、及び16Kのノズル128の背圧がノズル面洗浄時用の背圧にされることで、洗浄液で洗浄する際に、ノズル128の内部に洗浄液が入り込むことを防止することができる。
【0143】
さらに、移動制御部400は、インクジェットヘッド16C、16M、16Y、及び16Kを画像記録位置まで移動させる。したがって、画像記録位置に到達するまでの過程でノズル面30C、30M、30Y、及び30Kの全体が各洗浄液保持面74Aと対向し、洗浄液により洗浄される。
【0144】
移動制御部400がインクジェットヘッド16C、16M、16Y、及び16Kを画像記録位置まで到達させると、洗浄液制御部410は、洗浄液噴出口78からの洗浄液の供給を停止し、本体72を待機位置に移動させる。また、移動制御部400は、インクジェットヘッド16C、16M、16Y、及び16Kを再びメンテナンス位置まで移動させる。
【0145】
ステップS4では、背圧制御部414は、インクジェットヘッド16C、16M、16Y、及び16Kのノズル128の背圧を払拭時用の背圧である-2000パスカルにする。払拭時用の背圧は、-2100パスカル~-1900パスカルであればよい。また、払拭制御部412は、本体フレーム302を待機位置から作動位置に移動させ、払拭ウエブ310を走行させる。
【0146】
さらに、移動制御部400は、インクジェットヘッド16C、16M、16Y、及び16Kをメンテナンス位置から画像記録位置まで移動させる。これにおり、インクジェットヘッド16C、16M、16Y、及び16Kのノズル面30C、30M、30Y、及び30Kが払拭ウエブ310によって払拭される。
【0147】
ここで、インクジェットヘッド16C、16M、16Y、及び16Kのノズル128の背圧が払拭時用の背圧の-2000パスカルにされることで、乾燥した払拭ウエブ310によってノズル面30C、30M、30Y、及び30Kを払拭する際に、ノズル128からインクが引き出されることを防止することができる。
【0148】
移動制御部400がインクジェットヘッド16C、16M、16Y、及び16Kを画像記録位置まで到達させると、払拭制御部412は、払拭ウエブ310の走行を停止させ、本体フレーム302を待機位置に移動させる。
【0149】
以上により、インクジェットヘッド16C、16M、16Y、及び16Kの洗浄が終了する。なお、画像記録位置において画像記録を行う場合は、背圧制御部414は、インクジェットヘッド16C、16M、16Y、及び16Kのノズル128の背圧を画像記録時用の背圧である-1000パスカルにする。画像記録時用の背圧は、-1100パスカル~-900パスカルであればよい。これにより、ノズル128のメニスカスが溢れることを防止することができる。
【0150】
本実施形態に係るインクジェットヘッド洗浄方法では、洗浄液付与部62においてノズル面30C、30M、30Y、及び30Kに洗浄液を付与した後に、払拭部64においてノズル面30C、30M、30Y、及び30Kを払拭したが、払拭は必須ではない。
【0151】
また、インクジェットヘッド16C、16M、16Y、及び16Kのメンテナンス位置から画像記録位置までの一度の移動で洗浄液付与及び払拭の両方を行ってもよい。この場合は、洗浄液付与部62によって洗浄液が付与されるヘッドモジュール112-iと払拭部64によって払拭されるヘッドモジュール112-iとをそれぞれノズル面洗浄時用の背圧と払拭時用の背圧に制御することが好ましい。
【0152】
<ノズル面洗浄時用のノズルの背圧>
ノズル面30を洗浄液で洗浄する際に、ノズル128の内部に洗浄液が入り込むことを防止することができる背圧を、実験によって求めた。ここでは、洗浄液のノズル128の内部への入り込みを、ノズル面30の洗浄後の吐出悪化レベル、及び不良ノズルの比率から推測した。
【0153】
ここでは、洗浄液保持面74AのX方向の長さWを15ミリメートル、洗浄液保持面74AのX方向に直交する方向の長さDmを50ミリメートル、インクジェットヘッド16のX方向に直交する方向の長さDhを43.5ミリメートル、ノズル面30と洗浄液保持面74Aとの間隔Hを1.5ミリメートルとした。対向するノズル面30と洗浄液保持面74Aとの間の空間の体積Vは、約979立方ミリメートルである。
【0154】
また、ノズル面30及び洗浄液保持面74Aが水平面に対して8度だけZ方向に傾いた条件で実施した。洗浄液の供給量Vmは、1000立方ミリメートル/秒とした。洗浄液はノズル面30と洗浄液保持面74Aとの間の空間を常に満たしていた。
【0155】
また、洗浄液付与部62においてノズル面30に洗浄液を付与した後、払拭部64において払拭を行った。払拭時の背圧は-2000パスカルとした。
【0156】
図16は、ノズル面30の洗浄時のノズル128の背圧と、ノズル面30の洗浄直後のノズル128の吐出悪化レベルとの関係を示すグラフである。ノズル128の吐出悪化レベルは、ノズル面30の洗浄前後の着弾位置ばらつきの差から求め、以下の基準で数値化した。
【0157】
1.0:ベタを印刷した場合にスジが見えるため不合格レベル
0.5:吐出性能は悪化しているもののスジが視認できない、又は容易に視認できないため合格レベル
0.25:吐出性能の悪化もスジも視認できないため合格レベル
【0158】
図16に示すように、吐出悪化レベルが許容できる範囲のノズル128の背圧、即ち吐出悪化レベルが1.0未満のノズル128の背圧は、-840パスカル~-120パスカルである。
【0159】
図17は、ノズル面30の洗浄時のノズル128の背圧と、ノズル面30の洗浄直後に吐出性能が悪化した不良ノズルの比率との関係を示すグラフである。吐出性能が悪化したノズル128の比率は、被覆率が100%を超えるベタ画像を枚葉紙12に記録した際に、スジの原因となる15マイクロメートル以上の吐出曲がりが発生したノズル128、及びインクが吐出されない不吐出のノズル128の数を計数し、全てのノズル128の数で除算して算出した。許容できる不良ノズルの比率の上限を0.5パーセントとすると、この基準を満たすノズル128の背圧は-820パスカル~-180パスカルである。
【0160】
したがって、ノズル面30の洗浄直後のノズル128の吐出悪化レベルと不良ノズルの比率との両方の基準を満たすノズル128の背圧は-820パスカル~-180パスカルであることがわかった。
【0161】
本実施形態では、背圧制御部414は、洗浄液付与時には、インクジェットヘッド16C、16M、16Y、及び16Kのノズル128の背圧を-800パスカル~-200パスカルにする。背圧制御部414は、洗浄液付与時には、ノズル128の背圧を-700パスカル~-300パスカルにすることが好ましく、-600パスカル~-400パスカルにすることがより好ましい。
【0162】
なお、ノズル面30及び洗浄液保持面74Aの傾斜が水平面に対して0度~24度の範囲では、空間を満たすのに必要な洗浄液の量は、ぼほ差が無かった。より好ましくは、ノズル面30及び洗浄液保持面74Aの水平面に対する傾斜が増加するに従って洗浄液の量を増加させるとよい。
【0163】
<払拭回数と吐出悪化レベルとの関係>
以上のように、シアン、マゼンタ、イエロ、及びクロのインク滴をそれぞれ吐出するインクジェットヘッド16C、16M、16Y、及び16Kについて、ノズル面30の洗浄及び払拭において適切な背圧にすることで、吐出性能を維持することができることがわかった。
【0164】
しかしながら、これらのインクの顔料よりも相対的に硬い顔料を含むインクを吐出するインクジェットヘッド16では、硬い顔料によって払拭の際にノズル面30の撥液処理にダメージを与える可能性がある。そこで、金属顔料及びカーボンブラックの少なくとも一方を含むインクを吐出するインクジェットヘッド16について、払拭部64による払拭の際の洗浄液の付与の効果を調べた。
【0165】
ここでは、メンテナンス位置において各ノズル128から20000発の予備吐出(ダミージェット)を行い、予備吐出後にメンテナンス位置から画像記録位置への移動により乾燥した払拭ウエブ310で払拭を行い、これを1回の払拭とした。
【0166】
払拭するインクジェットヘッド16として、粒径約200ナノメートルの酸化チタン顔料を8パーセント含む白のインクを吐出するインクジェットヘッド16、及びカーボンブラックを含むクロのインクを吐出するインクジェットヘッド16を用いた。
【0167】
また、それぞれのインクジェットヘッド16について、予備吐出後に洗浄液を付与せずに払拭した場合と、予備吐出後に洗浄液付与部62において洗浄液を付与してから払拭した場合について評価を行った。洗浄液付与の条件は、
図16及び
図17の説明に用いた場合と同様である。
【0168】
図18は、ノズル面30の払拭回数と吐出悪化レベルとの関係を示すグラフである。吐出悪化レベルの評価基準は、
図16の場合と同様である。
図18に示すように、白のインクのインクジェットヘッド16及びクロのインクのインクジェットヘッド16において、洗浄液を付与しない条件での吐出悪化レベルよりも洗浄液を付与した条件での吐出悪化レベルの方が低かった。
【0169】
図19は、ノズル面30の撥液膜の傷を説明するためのノズル128の概略図である。ここでは、四角形状のノズル128について示している。F191に示すノズル128は、正常な状態である。一方、F192に示すノズル128は、ノズル面30の撥液膜の傷500(剥がれ)が発生した状態である。このように、ノズル128付近の撥液膜に傷500が発生すると、吐出曲がり等が発生し、吐出性能が悪化する。
【0170】
白のインクのインクジェットヘッド16では、洗浄液を付与した条件では、払拭3000回後においてノズル面30の撥液膜に傷が発生したノズル128の数は、全てのノズル128の数に対して0.2パーセントであった。一方、洗浄液を付与しない条件では、約80パーセントのノズル128に傷が発生した。
【0171】
このように、金属顔料及びカーボンブラックの少なくとも一方を含むインクを吐出するインクジェットヘッド16では、ノズル面30を払拭する前に洗浄液を付与することで、ノズル面30に付着した金属顔料及びカーボンブラックを除去することができ、払拭によるノズル面30の撥液膜へのダメージを減らすことができることがわかった。
【0172】
<その他>
上記の記録ヘッド洗浄方法は、各工程をコンピュータに実現させるためのプログラムとして構成し、このプログラムを記憶したCD-ROM(Compact Disk-Read Only Memory)等の非一時的な記録媒体を構成することも可能である。
【0173】
ここまで説明した実施形態において、例えば、画像記録部10の各種の処理を実行する処理部(processing unit)のハードウェア的な構造は、次に示すような各種のプロセッサ(processor)である。各種のプロセッサには、ソフトウェア(プログラム)を実行して各種の処理部として機能する汎用的なプロセッサであるCPU(Central Processing Unit)、画像処理に特化したプロセッサであるGPU(Graphics Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device:PLD)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が含まれる。
【0174】
1つの処理部は、これら各種のプロセッサのうちの1つで構成されていてもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサ(例えば、複数のFPGA、或いはCPUとFPGAの組み合わせ、又はCPUとGPUの組み合わせ)で構成されてもよい。また、複数の処理部を1つのプロセッサで構成してもよい。複数の処理部を1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、サーバ及びクライアント等のコンピュータに代表されるように、1つ以上のCPUとソフトウェアの組合せで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが複数の処理部として機能する形態がある。第2に、システムオンチップ(System On Chip:SoC)等に代表されるように、複数の処理部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、各種の処理部は、ハードウェア的な構造として、各種のプロセッサを1つ以上用いて構成される。
【0175】
さらに、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路(circuitry)である。
【0176】
本発明の技術的範囲は、上記の実施形態に記載の範囲には限定されない。各実施形態における構成等は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、各実施形態間で適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0177】
10…画像記録部
12…枚葉紙
14…画像記録ドラム
16…インクジェットヘッド
16C…インクジェットヘッド
16K…インクジェットヘッド
16M…インクジェットヘッド
16Y…インクジェットヘッド
18…回転軸
20…本体フレーム
22…軸受
24…グリッパ
26…搬送ドラム
28…搬送ドラム
30…ノズル面
30C…ノズル面
30K…ノズル面
30M…ノズル面
30Y…ノズル面
40…ヘッド支持フレーム
42L…サイドプレート
42R…サイドプレート
44…連結フレーム
46C…取付部
46K…取付部
46M…取付部
46Y…取付部
48C…被取付部
48K…被取付部
48M…被取付部
48Y…被取付部
50…保湿ユニット
52C…キャップ
52K…キャップ
52M…キャップ
52Y…キャップ
54…廃液トレイ
56…廃液回収配管
58…廃液タンク
60…ノズル面清掃装置
62…洗浄液付与部
64…払拭部
70…洗浄液付与ユニット
70C…洗浄液付与ユニット
70K…洗浄液付与ユニット
70M…洗浄液付与ユニット
70Y…洗浄液付与ユニット
72…本体
72C…洗浄液付与ユニット取付部
72K…洗浄液付与ユニット取付部
72M…洗浄液付与ユニット取付部
72Y…洗浄液付与ユニット取付部
74…洗浄液付与ヘッド
74A…洗浄液保持面
76…洗浄液回収皿
76A…連通流路
76B…洗浄液供給口
76C…回収流路
76D…洗浄液排出口
78…洗浄液噴出口
80…供給流路
88…回収穴
112-i(i=1~n)…ヘッドモジュール
116…フレーム
118…フレキシブル基板
122…ヘッドモジュール保持部材
124…ヘッド保護部材
128…ノズル
130…ノズルプレート
132…圧力室
134…供給口
136…共通流路
138…流路板
140…振動板
142…個別電極
144…圧電素子
146…共通電極
150…インク室ユニット
160…インク供給口
162…インク回収口
164…供給側圧力センサ
166…回収側圧力センサ
200…インク供給システム
202…メインタンク
204…メインタンク接続配管
206…バッファータンク
206A…大気開放穴
208…メインポンプ
212…第1供給流路
214…供給タンク
214A…供給インク室
214B…供給気体室
216…第2供給流路
220…第1回収流路
222…回収タンク
222A…回収インク室
222B…回収気体室
224…第2回収流路
228…供給ポンプ
234…回収ポンプ
238…弾性膜
242…大気開放管
244…大気開放バルブ
246…弾性膜
250…大気開放管
252…大気開放バルブ
300…払拭ユニット
300C…払拭ユニット
300K…払拭ユニット
300M…払拭ユニット
300Y…払拭ユニット
302…本体フレーム
304C…払拭ユニット装着部
304K…払拭ユニット装着部
304M…払拭ユニット装着部
304Y…払拭ユニット装着部
310…払拭ウエブ
312…ケース
314…繰出軸
316…巻取軸
318…押圧ローラ
320…前段ガイド
322…後段ガイド
324…グリッドローラ
326…ケース本体
338…繰出コア
342…巻取コア
358…巻取軸ギア
360…第1前段ガイド
360A…上縁部
362…第2前段ガイド
362L…フランジ
362R…フランジ
364…第1後段ガイド
364A…上縁部
366…第2後段ガイド
366L…フランジ
366R…フランジ
368A…ブラケット
368B…ブラケット
370…昇降ステージ
400…移動制御部
402…搬送制御部
406…画像記録制御部
408…保湿ユニット制御部
410…洗浄液制御部
412…払拭制御部
414…背圧制御部
500…傷