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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-29
(45)【発行日】2022-10-07
(54)【発明の名称】バリアーフィルム
(51)【国際特許分類】
   C23C 18/12 20060101AFI20220930BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20220930BHJP
   C08J 7/06 20060101ALI20220930BHJP
   H01L 21/312 20060101ALI20220930BHJP
【FI】
C23C18/12
B32B9/00
C08J7/06 Z CER
C08J7/06 CEZ
H01L21/312 A
H01L21/312 M
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021521330
(86)(22)【出願日】2019-10-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-14
(86)【国際出願番号】 KR2019013862
(87)【国際公開番号】W WO2020085750
(87)【国際公開日】2020-04-30
【審査請求日】2021-04-19
(31)【優先権主張番号】10-2018-0128791
(32)【優先日】2018-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】スン・ジン・シン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン・ヨン・ファン
(72)【発明者】
【氏名】ヒ・ジュン・ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ボ・ラ・パク
(72)【発明者】
【氏名】ヒ・ワン・ヤン
【審査官】池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-196155(JP,A)
【文献】国際公開第2011/007543(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/035432(WO,A1)
【文献】特開2017-177640(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 18/12
B32B 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層;およびXPSにより測定されるSi、N、およびOの元素含量(atomic%)が互いに異なる第1領域および第2領域を含み、Taを0.09nm/s速度でエッチングするArイオンエッチング条件に対する厚み方向でのエッチング速度が0.17nm/s以下である無機層;を含み、
前記第2領域は、前記第1領域よりNの元素含量が高く、
前記第1領域の厚みは、50nm以上であり、
前記第1領域の厚み(d1)と第2領域の厚み(d2)間の比率(d1/d2)は、2以下であり、
前記第1領域は、前記第2領域より基材層に近く、
前記第1領域のO含量は、50~65atomic%の範囲内であり、Si含量は、35~45atomic%の範囲内であり、N含量は、1~15atomic%の範囲内であり、
前記第2領域のSi含量は、45~60atomic%の範囲内であり、N含量は、20~35atomic%の範囲内であり、O含量は、10~30atomic%の範囲内である、バリアーフィルム。
【請求項2】
38℃の温度および100%の相対湿度で測定された透湿度が10×10-4g/m・day以下である、請求項1に記載のバリアーフィルム。
【請求項3】
前記第1領域は、O含量(a)とSi含量(b)の比率(a/b)が1.1~1.9範囲内である、請求項1~のいずれか一項に記載のバリアーフィルム。
【請求項4】
前記第2領域Si含量の最高値と第1領域O含量の最高値の差異が15atomic%以下である、請求項1~のいずれか一項に記載のバリアーフィルム。
【請求項5】
前記無機層は、下記化学式1の単位を有するポリシラザンをプラズマ処理して得られる、請求項1~のいずれか一項に記載のバリアーフィルム:
【化1】
化学式1でR、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルキルシリル基、アルキルアミノ基またはアルコキシ基である。
【請求項6】
前記第2領域の厚みは50nm以上である、請求項1~5のいずれか一項に記載のバリアーフィルム。
【請求項7】
請求項1~のいずれか一項に記載のバリアーフィルムを含む電気または電子素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互引用
本出願は、2018年10月26日付けの韓国特許出願第10-2018-0128791号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は、本明細書の一部として含まれる。
【0002】
技術分野
本出願は、バリアーフィルムに関する。具体的に、本出願は、酸素や水分などのような外部物質に対する遮断特性に優れたバリアーフィルムに関する。
【背景技術】
【0003】
酸素や水分などの外部成分を遮断するバリアーフィルムは、従来の主な用途である食品または医薬品などの包装材料用途のみならず、LCD(Liquid Crystal Display)などのFPD(FlatPanel Display)や太陽電池用部材、電子ペーパーやOLED(Organic Light Emitting Diode)用基板や密封フィルムなどにも用いられている。特に、電気または電子素子に使用されるバリアーフィルムの場合には、酸素や水分などに対する高い遮断性の他にも、機器の性能保証の観点から、湿熱条件に放置された後にも、バリアー性が低下しない耐湿熱性も要求される。
【0004】
バリアーフィルムを製造できる方法としては、湿式法を例示することができる。具体的に、基材フィルムにコーティングしたポリシラザンをシリカに転換させる方法を通じてバリアーフィルムを製造することができる。この際、ポリシラザンは、所定の条件下で加熱したり加水分解などの過程を経てシリカに転換され得る。例えば、日本国特開平10-194873号では、パーヒドロポリシラザンまたはその変性物を基材フィルムに塗布し、真空下で焼成する方法を開示する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本出願の目的は、酸素や水分などのような外部物質に対する遮断特性に優れたバリアーフィルムを提供することにある。
【0006】
本出願の他の目的は、前記バリアーフィルムを含む包装材、機器または装置を提供することにある。
【0007】
本出願の前記目的およびその他の目的は、下記に詳細に説明される本出願により全部解決され得る。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本出願に関する一例において、本出願は、バリアーフィルムに関する。本出願において前記バリアーフィルムは、意図された透光性およびバリアー特性を満たすフィルムを意味する。
【0009】
透光性と関連して、前記バリアーフィルムは、380~780nmの波長範囲内の可視光、具体的には、波長550nmの光に対する透過率が90%以上または95%以上であるフィルムを意味する。前記透過率の上限は、例えば、約100%であって、前記フィルムは、100%未満の透過率を有し得る。
【0010】
バリアー特性と関連して、前記バリアーフィルムは、優れた透湿度を有し得る。
【0011】
一つの例示において、前記バリアーフィルムは、38℃の温度および100%の相対湿度で測定された透湿度が10×10-4g/m・day以下を満たすことができる。より具体的に、前記バリアーフィルムは、前記条件で測定された透湿度が9×10-4g/m・day以下、8×10-4g/m・day以下、7×10-4g/m・day以下、6×10-4g/m・day以下、5×10-4g/m・day以下、4×10-4g/m・day以下、3×10-4g/m・day以下、2×10-4g/m・day以下、または1×10-4g/m・day以下でありうる。透湿度の数値が低いほどバリアー特性に優れていることであるから、前記透湿度の下限は、特に制限されない。一つの例示において、前記透湿度の下限は、0.001×10-4g/m・day以上、0.005×10-4g/m・day以上、0.01×10-4g/m・day以上、0.05×10-4g/m・day以上、0.1×10-4g/m・day以上または0.5×10-4g/m・day以上でありうる。透湿度を測定する代表的な規格としては、ASTM F1249またはISO15506-3などが知られており、本出願の透湿度は、前記のうち適切な方式によって測定され得る。
【0012】
前記説明された範囲の透光性およびバリアー特性を満たす本出願のバリアーフィルムは、基材層および無機層を含む。そして、前記無機層は、Si、N、およびOを含む。
【0013】
前記基材層は、例えば、透光性を提供できるガラスまたは高分子フィルムを含むことができる。
【0014】
一つの例示において、前記基材層は、十分な可撓性を提供できる高分子フィルムを含むことができる。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルムまたはポリアリレートフィルムなどのポリエステルフィルム、ポリエーテルスルホンフィルムなどのポリエーテルフィルム、シクロオレフィンポリマーフィルム、ポリエチレンフィルムまたはポリプロピレンフィルムなどのポリオレフィンフィルム、ジアセチルセルロースフィルム、トリアセチルセルロースフィルムまたはアセチルセルロースブチレートフィルムなどのセルロース樹脂フィルム、ポリイミドフィルム、アクリルフィルムおよびエポキシ樹脂フィルムなどが基材層に使用され得る。本出願において前記基材層は、単層または多層構造を有し得る。
【0015】
前記基材層の厚みは、特に制限されない。例えば、基材層の厚みは、約1μm以上、5μm以上、10μm以上、20μm以上、30μm以上、40μm以上または50μm以上でありうる。前記厚みを満たす場合、無機層が基材層上に安定的に形成され得る。基材層の厚みの上限は、特に制限されないが、例えば、500μm以下、400μm以下、300μm以下、200μm以下または100μm以下でありうる。
【0016】
前記無機層は、被コーティング体(例:基材層)上に塗布されたポリシラザン組成物、すなわちポリシラザン層に対するプラズマ変性を通じて形成され得る。
【0017】
本出願においてポリシラザン組成物は、ポリシラザンを主成分として含む組成物を意味する。例えば、ポリシラザン組成物内でポリシラザンの比率は、重量を基準とするとき、55%以上、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上または90%以上である場合を意味する。前記重量比は、例えば、100%以下、99%以下、98%以下、97%以下、96%以下または95%以下でありうる。
【0018】
本出願においてポリシラザンは、ケイ素元素(Si)と窒素元素(N)が繰り返されることによって、基本バックボーン(basic backbone)を形成しているポリマーを意味する。このようなポリシラザンは、所定の処理(例:プラズマ処理)を通じて変性されてバリアー性を有する酸化ケイ素または酸窒化ケイ素を形成することができる。これにより、無機層は、Si、N、およびOを含むことができる。
【0019】
一つの例示において、本出願において使用されるポリシラザンは、下記化学式1で表される単位を含むことができる。
【0020】
【化1】
【0021】
化学式1において、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素元素、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルキルシリル基、アルキルアミノ基またはアルコキシ基でありうる。
【0022】
本出願において用語「アルキル基」は、特に別途規定しない限り、炭素数1~20、炭素数1~16、炭素数1~12、炭素数1~8または炭素数1~4のアルキル基を意味する。前記アルキル基は、直鎖状、分岐鎖状または環状でありうる。また、前記アルキル基は、任意に一つ以上の置換基で置換されていてもよい。
【0023】
本出願において用語「アルケニル基」は、特に別途規定しない限り、炭素数2~20、炭素数2~16、炭素数2~12、炭素数2~8または炭素数2~4のアルケニル基を意味する。前記アルケニル基は、直鎖状、分岐鎖状または環状であり得、任意に一つ以上の置換基で置換されていてもよい。
【0024】
本出願において用語「アルキニル基」は、特に別途規定しない限り、炭素数2~20、炭素数2~16、炭素数2~12、炭素数2~8または炭素数2~4のアルキニル基を意味する。前記アルキニル基は、直鎖状、分岐鎖状または環状であり得、任意に一つ以上の置換基で置換されていてもよい。
【0025】
本出願において用語「アリール基」は、特に別途規定しない限り、ベンゼン環または2個以上のベンゼン環が連結されているか、または一つまたは二つ以上の炭素元素を共有しつつ、縮合または結合された構造を含む化合物またはその誘導体に由来する1価残基を意味する。本出願においてアリール基の範囲には、通常、アリール基と呼称される官能基はもちろん、いわゆるアラルキル基(aralkyl group)またはアリールアルキル基なども含まれ得る。アリール基は、例えば、炭素数6~25、炭素数6~21、炭素数6~18または炭素数6~12のアリール基でありうる。アリール基としては、フェニル基、ジクロロフェニル、クロロフェニル、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、ベンジル基、トリル基、キシリル基(xylyl group)またはナフチル基などが例示され得る。
【0026】
本出願において用語「アルコキシ基」は、特に別途規定しない限り、炭素数1~20、炭素数1~16、炭素数1~12、炭素数1~8または炭素数1~4のアルコキシ基を意味する。前記アルコキシ基は、直鎖状、分岐鎖状または環状でありうる。また、前記アルコキシ基は、任意に一つ以上の置換基で置換されていてもよい。
【0027】
前記化学式1で表される単位を含むと、ポリシラザンの具体的な種類は、特に制限されない。
【0028】
一つの例示において、前記ポリシラザンは、前記R~Rが全部水素元素である化学式1の単位を含むポリシラザン、例えば、パーヒドロポリシラザンでありうる。
【0029】
一つの例示において、前記ポリシラザン層組成物は、例えば、適切な有機溶媒にポリシラザンを溶解させて製造されたものであり得る。例えば、前記ポリシラザンとしては、有機溶媒に溶解した状態の市販製品でありうる。このような市販製品としては、AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社(またはMerck社)製造のアクアミカ(登録商標)NN120-10、NN120-20、NAX120-10、NAX120-20、NN110、NN310、NN320、NL110A、NL120A、NL150A、NP110、NP140、またはSP140などを例示することができるが、これらに制限されるものではない。
【0030】
他の一つの例示において、前記ポリシラザン層組成物は、所定の濃度で希釈された組成物でありうる。希釈された濃度は、特に制限されず、例えば、総固形分の重量比が1~95%の範囲でありうる。一つの例示において、前記組成物は、総固形分の重量比が1~10%以下でありうる。
【0031】
本出願において、ポリシラザンから形成された層、すなわち無機層は、前記透湿度を満足できるほどの耐久性と緻密性を有する。本出願における緻密性は、エッチング速度を通じて表現され得る。例えば、前記無機層は、基準条件に対して所定の値を満たすエッチング速度を有し得る。本出願において「エッチング速度」というのは、下記に説明される基準条件と同じ条件下でエッチングが行われることを前提に、エッチングされた厚み(単位:nm)をエッチング進行時間(単位:秒)で割った値を意味する。前記エッチング速度を測定するためのエッチングは、いわゆるドライエッチング(dry etching)であって、反応性ガスのプラズマ状態を利用したエッチングである。反応性ガスとしては、Arを使用する。
【0032】
無機層のエッチング速度と関連して、本出願の発明者は、無機層がポリシラザンから形成されてSi、NおよびOを含むことのように、その構成元素が類似していても、無機層の厚み方向で無機層を成す元素の含量、分布傾向性の変化、および/または無機層の形成条件によって層の堅固性または緻密性の程度が相異になり得、その結果、基準条件に対するエッチング速度もやはり変わり得るという点を確認した。具体的に、バリアーフィルムに関連した従来技術では、無機層内の元素の種類や数値として表現される元素の含量などが主にバリアー特性を決定する重要因子として考慮されたが、無機層を形成する元素の含量、分布傾向性の変化、および/または無機層の形成条件によって無機層の緻密性が変わり得、結果的に、バリアーフィルムの透湿性が顕著に改善され得る。
【0033】
具体的に、前記無機層は、基準条件、すなわちTa(フィルム)を0.09nm/sの速度でエッチングするArイオンエッチング条件に対するエッチング速度が0.17nm/s以下を満たすことができる。前記エッチング速度は、無機層の緻密な程度を示すことができる。すなわち、前記エッチング速度を有する無機層は、例えば、エッチング速度が0.19nm/sである場合のように、前記エッチング速度を満たさない無機層よりさらに緻密な構造を有すると見ることができる。例えば、前記無機層は、前記条件に対するエッチング速度が0.165nm/s以下、0.160nm/s以下、0.155nm/s以下、0.150nm/s以下、0.145nm/s以下、0.140nm/s以下、0.135nm/s以下、0.130nm/s以下、0.125nm/s以下または0.120nm/s以下でありうる。前記エッチング速度の範囲を満たす場合、十分に緻密であると見られるので、エッチング速度の下限は、特に制限されないが、例えば、0.05nm/s以上または0.10nm/s以上でありうる。
【0034】
前記無機層は、第1領域と第2領域を含む。本出願において、前記第1領域は、第2領域より基材層に近く存在する。
【0035】
本出願において、一つの無機層を成す第1領域と第2領域は、厚み方向でXPS(X-ray photoelectron spectroscopy)により分析または測定されるSi、N、およびOの元素含量(atomic%)が互いに異なっている。すなわち、第1領域と第2領域は、Si、N、およびOの元素含量の分布の相異によって区別され得る。例えば、各領域の元素含量は、無機層の厚み方向でエッチング深さによって分析され得るが、深さによる各元素含量の変化程度が相対的に少ないので、平たい区間が観察される場合や各元素含量の大小傾向性が共通する区間が観察される場合、当該区間内の各元素含量の中間値または平均値をその領域での元素含量(範囲)と見ることができる。そして、元素含量による領域区別と関連して第1領域と第2領域の界面での元素含量は、連続的にまたは段階的に変化し得るが、このような含量変化の結果として各領域が規定している元素含量比を満たす領域が観察される程度であれば、第1領域と第2領域を区別するのに十分であり、第1領域と第2領域の界面が必ず明確に区分される必要はない。このような区別は、XPSを利用して確認されるエッチング深さによる元素含量の分布グラフを通じて当業者が明確に行うことができる。
【0036】
前記第1領域と第2領域は、先立って説明したような緻密性を有し得る。具体的に、前記第1領域および/または第2領域それぞれは、Taを0.09nm/sの速度でエッチングするArイオンエッチング条件で測定されたエッチング速度が0.17nm/s以下を満たす領域でありうる。例えば、前記第1領域および/または第2領域は、前記基準条件に対するエッチング速度が0.165nm/s以下、0.160nm/s以下、0.155nm/s以下、0.150nm/s以下、0.145nm/s以下、0.140nm/s以下、0.135nm/s以下、0.130nm/s以下、0.125nm/s以下または0.120nm/s以下を満たすことができる。第1領域および/または第2領域のエッチング速度の下限は、特に制限されないが、例えば、0.05nm/s以上または0.10nm/s以上でありうる。
【0037】
本出願において前記第2領域は、無機層内で窒素高濃度領域である。すなわち、第2領域は、第1領域より窒素含量がさらに高い領域でありうる。本出願の発明者は、基準条件に対するエッチング速度が0.17nm/s以下であることのように、エッチング速度を通じて確認される無機層の緻密性が確保されることを前提に、窒素高濃度領域である第2領域の厚みが厚いほど、バリアー特性(例:透湿度)が改善されることを確認した。このような結果は、下記実験例を通じて確認される。
【0038】
本出願において、前記第1領域は、少なくとも50nm以上または60nm以上の厚みを有し得る。具体的に、第1領域と隣接する基材層や下記説明される中間層の場合、その表面に所定の粗度(roughness)を有し得るので、第1領域は、全体無機層が安定的に形成され得るように少なくともの厚みを有する必要がある。第1領域が無機層が安定的に形成される程の所定の厚みを有する場合、無機層の緻密性の確保に有利であり、バリアーフィルムの耐久性を改善することができる。より具体的に、前記元素含量を満たす第1領域の厚みは、例えば、50nm以上、55nm以上、60nm以上、65nm以上、70nm以上、75nm以上、80nm以上、85nm以上、90nm以上、95nm以上または100nm以上でありうる。第1領域の厚みの上限は、特に制限されないが、例えば、300nm以下、250nm以下または200nm以下でありうる。
【0039】
また、本出願において、バリアーフィルムは、第1領域と第2領域が所定の厚み比率を有するように構成された無機層を含む。基材層に隣接した第1領域は、無機層の安定した形成を通じてフィルムのバリアー特性に寄与することができ、窒素が豊富な第2領域は、低い透湿度の提供に寄与することができるが、本出願では、前記のような各領域の機能が十分に具現され得るように第1領域と第2領域が所定範囲の厚み比率を有するように構成される。例えば、第1領域の厚み(d1)と第2領域の厚み(d2)間の比率(d1/d2)は、2.0以下でありうる。第1領域が前記説明された範囲の厚みを有することを前提に、前記比率(d1/d2)を満たす場合、前記バリアーフィルムは、窒素高濃度である第2領域を適正厚みで確保することができ、優れた水分遮断性を有し得る。
【0040】
一つの例示において、前記第1領域は、O含量>Si含量>N含量を満たす領域でありうる。すなわち、前記第1領域は、前記のような元素含量を満たす領域を意味する。
【0041】
本出願において、元素の含量は、Si、OおよびNの含量と、場合によって各層または領域で測定され得る不純物(例:C)の含量の合計量を全体100と見るときの値である。特に別途言及しない以上、Cの含量は、Si、OおよびNの含量を除いた値であるから、省略され得る。
【0042】
具体的に、前記第1領域においてO含量は、50~65atomic%の範囲内であり、Si含量は、35~45atomic%の範囲内であり、N含量は、1~15atomic%の範囲内でありうる。前記のような元素含量は、前記説明されたエッチング速度で表現される無機層の緻密性を確保することができ、バリアーフィルムの水分遮断特性を改善することができるものと考えられる。
【0043】
一つの例示において、前記第1領域は、O含量(a)とSi含量(b)間の比率(a/b)が1.1~1.9の範囲を満たすことができる。好ましくは、1.2以上、1.3以上または1.4以上でありうる。Si、NおよびOの含量が前記範囲を満たす第1領域において、前記比率(a/b)の値が1.1~1.9の範囲である場合、前記説明されたエッチング速度で表現される無機層の緻密性を確保することができ、バリアーフィルムの水分遮断特性を改善することができるものと考えられる。
【0044】
一つの例示において、前記第2領域は、Si含量>N含量>O含量を満たす領域でありうる。すなわち、前記第2領域は、前記のような元素含量を満たす領域を意味する。実験的に確認した結果、第2領域がSi含量>O含量>N含量を有する場合よりSi含量>N含量>O含量を満たす場合が、無機層の緻密性を高め、フィルムのバリアー特性をさらに優秀に調節することができた。
【0045】
具体的に、前記第2領域においてSi含量は、45~60atomic%の範囲内であり、N含量は、20~35atomic%の範囲内であり、O含量は、10~30atomic%の範囲内でありうる。前記のような元素含量は、前記説明されたエッチング速度で表現される無機層の緻密性を確保するのに有利なものと考えられる。
【0046】
一つの例示において、前記元素含量比を満たす第2領域の厚みは、25nm以上、30nm以上、35nm以上、40nm以上、45nm以上、または50nm以上でありうる。その上限は、特に限定されないが、例えば約250nm以下または約200nm以下でありうる。下記実験例で確認されるように、窒素高濃度領域である第2領域の厚みがフィルムのバリアー特性の改善に影響を与えると見られるが、前記厚みの範囲を満たす場合、バリアーフィルムが適正水準の薄い厚みに形成されると同時に、厚みに対して優れたバリアー特性が提供され得る。より具体的に、前記元素含量を満たす第2領域の厚みは、例えば、190nm以下、185nm以下、180nm以下、175nm以下、170nm以下、165nm以下、160nm以下、155nm以下、150nm以下、145nm以下、140nm以下または135nm以下でありうる
【0047】
一つの例示において、前記第2領域Si含量の最高値と第1領域O含量の最高値の差異(d)は、15atomic%以下でありうる。Si、NおよびOの含量が前記範囲を満たす各領域において、前記差異(d)を満たす場合、前記説明されたエッチング速度で表現される無機層の緻密性を確保することができ、バリアーフィルムの水分遮断特性を改善することができるものと考えられる。
【0048】
前記第1領域と第2領域の形成は、ポリシラザンを含む組成物、すなわちポリシラザン層に対するプラズマ処理を通じて行われ得る。
【0049】
一つの例示において、前記第1領域と第2領域は、コーティングされた一つのポリシラザン組成物、すなわち一つのポリシラザン層に対して行われた1回のプラズマ処理を経て形成された無機層内の領域でありうる。すなわち、無機層は、その内部に形成された第1領域と第2領域とに区切られる。プラズマ処理を通じてNが豊富な第2領域が形成されることによって、第1領域と第2領域とに区別されると考えられる。
【0050】
他の一つの例示において、前記第1領域と第2領域は、互いに異なるポリシラザン層に対するプラズマ処理を経て形成された隣接する領域でありうる。例えば、第1領域は、ポリシラザン層(A)に対するプラズマ処理を通じて形成された領域であり得、第2領域は、前記第1領域が形成された無機層上に塗布されたポリシラザン層(B)に対するプラズマ処理を通じて形成された領域でありうる。これらの第1領域と第2領域は、Si、NおよびOを含み、無機層を構成する。先立って説明したように、プラズマ処理を通じてNが豊富な領域が、プラズマ処理されたポリシラザン層の表層部に位置することになるが、これは、前記プラズマ処理されたポリシラザン層(A)の場合にも同一であり、これにより、前記ポリシラザン層(B)に対して別途のプラズマ処理をしても、前記ポリシラザン層(A)の表層部と同じ元素含量の分布を示す第2領域が形成されるものと考えられる。このような場合、プラズマ処理された各ポリシラザン層(A、B)の界面は、例えば図1のように、前記第1領域と第2領域との間で元素含量の変化が起こる区間と観察され得る。下記実施例1~4で確認されるように、このような方式で無機層を形成する場合、第2領域の厚みをさらに大きく確保することができ、これにより、無機層内の窒素高濃度領域が増加することによって、フィルムのバリアー特性が改善され得る。
【0051】
一つの例示において、前記無機層と基材層との間には、炭素の含量が多い変性層が存在し得る。前記変性層は、プラズマ処理された無機層と基材層の界面でありうる。または、前記変性層は、プラズマ処理された無機層と下記に説明される中間層の界面でありうる。前記変性層は、前記第1領域および第2領域より炭素の含量が多い領域でありうる。例えば、前記変性層は、C含量>O含量>Si含量>N含量を満たす領域でありうる。
【0052】
具体的に、前記変性層においてC含量は、40~50atomic%の範囲内であり、O含量は、30~40atomic%の範囲内であり、Si含量は、15~30atomic%の範囲内であり、N含量は、1~5atomic%の範囲内でありうる。
【0053】
前記第1領域と第2領域を有する無機層の厚みは、例えば、600nm以下または500nm以下でありうる。より具体的に、前記無機層の厚みは、450nm以下、400nm以下、350nm以下、300nm以下、250nm以下または200nm以下でありうる。前記説明された構成の無機層は、薄い厚みでも十分なバリアー特性を有し得る。無機層の厚みの下限は、特に制限されないが、例えば、50nm以上でありうる。
【0054】
一つの例示において、前記バリアーフィルムは、中間層をさらに含むことができる。具体的に、前記バリアーフィルムは、基材層、中間層および無機層を順に含むことができる。前記中間層は、無機層と基材層の接着力の向上や誘電率の調節などを目的に形成され得る。中間層は、アンダーコーティング層(UC、under coating layer)と呼称され得る。
【0055】
中間層は、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、シロキサンポリマーおよび/または下記化学式2で表される有機シラン化合物の縮合物などよりなる群から選択された1種以上を含むことができる。
【0056】
【化2】
【0057】
化学式2において、Xは、水素、ハロゲン、アルコキシ基、アシルオキシ基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基または-N(R2)であり、前記でR2は、水素またはアルキル基であり、Rは、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリールアルキル基、アルキルアリール基、アリールアルケニル基、アルケニルアリール基、アリールアルキニル基、アルキニルアリール基、ハロゲン、アミノ基、アミド基、アルデヒド基、アルキルカルボニル基、カルボキシ基、メルカプト基、シアノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、スルホニル基、ホスホリル基(phosphoryl group)、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基またはエポキシ基であり、Qは、単一結合、酸素元素または-N(R2)-であり、前記でR2は、水素元素またはアルキル基であり、mは、1~3の範囲内の数でありうる。
【0058】
有機シランとしては、前記化学式2で表される化合物よりなるグループから1種以上を選択して使用することができ、この際、1種の有機シラン化合物を使用する場合、架橋が可能になり得る。
【0059】
有機シランの例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、フェニルジメトキシシラン、フェニルジエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリフェニルメトキシシラン、トリフェニルエトキシシラン、フェニルジメチルメトキシシラン、フェニルジメチルエトキシシラン、ジフェニルメチルメトキシシラン、ジフェニルメチルエトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジフェニルメトキシシラン、ジフェニルエトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、p-アミノフェニルシラン、アリルトリメトキシシラン、n-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミンプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルジイソプロピルエトキシシラン、(3-グリシドキシプロピル)メチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、n-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランおよびこれらの混合物よりなるグループから選択して使用することができる。
【0060】
他の例示において、前記中間層は、一つ以上の多官能性アクリレートを重合させて製造され得る。前記多官能性アクリレートの種類としては、例えば、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペート(neopentylglycol adipate)ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバル酸(hydroxyl puivalic acid)ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(dicyclopentanyl)ジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリロキシエチルイソシアヌレート、アリル(allyl)化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ヘキサヒドロフタル酸ジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチルプロパンジ(メタ)アクリレート、アダマンタン(adamantane)ジ(メタ)アクリレートまたは9,9-ビス[4-(2-アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン(fluorine)などのような二官能型アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、3官能型ウレタン(メタ)アクリレートまたはトリス(メタ)アクリロキシエチルイソシアヌレートなどの三官能型アクリレート;ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレートまたはペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどの四官能型アクリレート;プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートなどの五官能型アクリレート;およびジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートまたはウレタン(メタ)アクリレート(ex.イソシアネート単量体およびトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートの反応物などの六官能型アクリレートなどを使用することができるが、これに制限されるものではない。
【0061】
一つの例示において、前記中間層は、フッ素系化合物を含むことができる。例えば、フッ素系(メタ)アクリレートまたはフッ素系シロキサン化合物が使用され得る。特に制限されるものではないが、前記フッ素系(メタ)アクリレートとしては、パーフルオルポリエーテルアクリレートのようなパーフルオル化合物が使用され得、フッ素系シロキサン化合物としては、フッ素含有鎖で置換されたアルコキシシラン化合物を使用することができる。
【0062】
中間層の形成に適用され得るエポキシ系樹脂としては、脂環族エポキシ樹脂および芳香族エポキシ樹脂よりなる群から選ばれた1種以上が使用され得る。
【0063】
脂環族エポキシ樹脂としては、例えば、脂環族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂および脂環族グリシジルエステル型エポキシ樹脂よりなる群から選ばれる1種以上が使用され得る。また、例えば、Celloxide 2021P(Daicel社)の3,4-エポキシシクロヘキシル-メチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(3,4-epoxycyclohexyl-methyl-3,4-epoxycyclohexane carboxylate)およびその誘導体を使用することができ、これらは、高温でも安定であり、無色透明であり、丈夫であり(toughness)、粘着力(adhesion)およびラミ用接着力(adhesives)に優れている。特にコーティング用に使用した場合、表面硬度に優れている。
【0064】
芳香族エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、フルオレン含有エポキシ樹脂およびトリグリシジルイソシアヌレートよりなる群から選ばれる1種以上の芳香族エポキシ樹脂が使用されることもできる。
【0065】
前記中間層は、例えば、ゾル-ゲル反応で形成されたコーティング層であってもよい。例えば、SiOx(ここで、xは、1~4の整数)、SiOxNy(ここで、xおよびyは、それぞれ1~3の整数)、Al、TiO、ZrOおよびITOよりなるグループから選ばれる1種以上が前記中間層に含まれ得る。
【0066】
また、前記中間層は、下記化学式3で表される金属アルコキシドまたはその縮合物を含むこともできる。
【0067】
【化3】
【0068】
化学式3において、Mは、アルミニウム、ジルコニウムおよびチタニウムよりなる群から選ばれるいずれか一つの金属であり、Rは、ハロゲン、アルキル基、アルコキシ基、アシルオキシ基またはヒドロキシ基であり、zは、3または4でありうる。
【0069】
一つの例示において、前記中間層は、フィラーをさらに含むことができる。前記フィラーは、例えば、中間層の屈折率の調節および/または機械的強度の調節などを考慮して使用され得る。一つの例示において、前記フィラーとしては、CaO、CaF、MgO、ZrO、TiO、SiO、In、SnO、CeO、BaO、Ga、ZnO、Sb、NiOおよびAlよりなる群から選ばれた一つ以上が使用され得る。
【0070】
前記のような素材を使用して中間層を形成する方式は、特に制限されず、使用される素材によって公知の方式、例えば、蒸着方式、ゾルゲルコーティング方式などの多様な乾式および/または湿式コーティング方式が使用され得る。
【0071】
前記中間層の厚みは、特に制限されない。例えば、50μm以下でありうる。具体的に、その厚みの上限は、40μm以下、30μm以下、20μm以下、10μm以下または5μm以下であり得、その下限は、0.5μm以上または1μm以上でありうる。
【0072】
一つの例示において、前記中間層は、無機層が形成され得る平坦な面を提供する層でありうる。すなわち、前記中間層は、平坦化層でありうる。前記平坦化層は、基材層と対向する面の反対の一面、すなわち無機層が形成される面の平均表面粗さ(Rt)が15~45nmの範囲内である層でありうる。前記中間層の表面粗さは、粗度(roughness)を有する所定の領域で最も高い部分と最も低い部分の高さの差異に対する平均値を意味するものであり、下記実験例で説明されることのような方法で測定され得る。
【0073】
一つの例示において、前記無機層の第1領域は、平坦化層の平均表面粗さ(Rt)に比べて少なくとも2倍以上の厚みを有し得る。例えば、平坦化層の平均表面粗さ(Rt)が25nmである場合、前記第1領域の厚みは、50nm以上であり得、さらに他の例示において、平坦化層の平均表面粗さ(Rt)が30nmである場合、前記第1領域の厚みは、60nm以上でありうる。バリアーフィルム内で平坦化層と第1領域が前記厚みの関係を満たす場合、安定的に無機層が形成され得る。そして、安定的に形成された無機層は、優れた透湿度を提供することができる。特に制限されるものではないが、一般的に前記組成の平坦化層が形成された場合、その一面上に形成された表面粗さが約20nm以上、25nm以上または30nm以上である点を考慮すれば、前記第1領域の厚みは、約60nm以上、65nm以上、70nm以上または75nm以上であることが好ましい。この際にも、第1領域の厚みの上限は、例えば、300nmの範囲でありうる。
【0074】
前記バリアーフィルムは、所定の方法で製造され得る。
【0075】
例えば、前記バリアーフィルムを製造する方法は、基材層を含む被コーティング体上にポリシラザン組成物を塗布する段階と、被コーティング体上に形成されたポリシラザン層に対してプラズマ処理を行う段階とを含むことができる。具体的な方法は、下記の通りである。
【0076】
プラズマ処理は、Arのようなプラズマ生成ガスを含む雰囲気下でプラズマを発生させ、ポリシラザン層に対してプラズマのうちカチオンを注入するものであって、プラズマは、例えば、外部電界や負の高電圧パルスなどにより発生し得る。このようなプラズマ処理は、公知の装置を利用して行われ得る。
【0077】
前記プラズマ処理は、下記のような条件で行われ得る。
【0078】
一つの例示において、前記プラズマ処理は、電極からプラズマ処理対象体の距離を調節する方式で行われ得る。この際、プラズマ処理対象体とは、被コーティング体(例:基材層)上にポリシラザン組成物がコーティングされた状態の積層体、または被コーティング体上に塗布された前記組成物に対する所定の加温(加熱)状態を経てポリシラザン層が形成された状態の積層体を意味する。このような積層体をバリアーフィルム前駆体と呼ぶことができる。例えば、前記プラズマ処理時に、電極(ポジティブおよび/またはネガティブ電極)から前記バリアーフィルム前駆体の距離は、150mm以下に調節され得る。前駆体サンプルとポジティブ電極の間の距離が、前記距離を満たす範囲からさらに近いほど、プラズマエネルギーの損失(loss)を減らし、プラズマエネルギーをバリアーフィルム前駆体に伝達することができ、プラズマ放電時に発生する熱エネルギーがバリアーフィルム前駆体に効果的に伝達され、ポリシラザンの変性可能性が高くなり得ると考えられる。例えば、前記距離は、140mm以下、130mm以下、120mm以下、110mm以下、100mm以下、90mm以下または80mm以下でありうる。前記距離の下限は、特に制限されないが、ネガティブ電極とバリアーフィルム前駆体の距離があまり近づくと、基材層の損傷可能性があるので、例えば、前記距離の下限は、15mm以上または20mm以上でありうる。
【0079】
一つの例示において、前記プラズマ処理は、所定の電力密度下で行われ得る。具体的に、前記プラズマ処理時に電極の単位面積当たりの電力密度は、約0.05W/cmまたは0.10W/cm以上でありうる。前記電力密度は、他の例示において、約0.2W/cm以上、約0.3W/cm以上、約0.4W/cm以上、約0.5W/cm以上、約0.6W/cm以上、約0.7W/cm以上、約0.8W/cm以上または約0.9W/cm以上でありうる。前記電力密度を満たす範囲内で、ポジティブ電極の場合、電力密度が高いほど、短い時間の間プラズマ処理程度を高めることができ、高電圧の印加によるポリシラザンの変性程度を高めることができる。ネガティブ電極の場合、過度に高い電力密度は、高電圧による基材層の損傷を誘発し得るので、このような点を考慮すれば、前記電力密度の上限は、約2W/cm以下、1.5W/cm以下、または1.0W/cm以下でありうる。
【0080】
一つの例示において、前記電力密度を有する場合、電力密度と処理時間の積で定められるプラズマ処理時の処理エネルギーは、50J/cm以下でありうる。具体的に、前記エネルギーは、45J/cm以下、40J/cm以下、35J/cm以下、30J/cm以下、25J/cm以下または20J/cm以下であり得、その下限は、5J/cm以上、10J/cm以上または15J/cm以上でありうる。
【0081】
一つの例示において、前記プラズマ処理は、所定の工程圧力下で行われ得る。具体的に、前記プラズマ処理時の工程圧力は、350mTorr以下でありうる。ポジティブ電極の場合、工程圧力が低いほど平均自由経路(Mean FreePath)の確保が容易になるので、気体分子との衝突によるエネルギー損失なしにプラズマ処理が行われ得る。例えば、前記工程圧力は、340mTorr以下、330mTorr以下、320mTorr以下、310mTorr以下、300mTorr以下、290mTorr以下、280mTorr以下、270mTorr以下、260mTorr以下、250mTorr以下、240mTorr以下、230mTorr以下、220mTorr以下、210mTorr以下または200mTorr以下でありうる。一方、ネガティブ電極の場合、工程圧力が低いほど気体分子が少ないので、プラズマを発生させるために、高い電圧と電力が必要になるが、高電圧と高電力は、基材層の損傷をもたらすことがあるので、例えば前記工程圧の下限は、50mTorr以上、60mTorr以上、70mTorr以上、80mTorr以上、90mTorr以上、100mTorr以上、110mTorr以上、120mTorr以上、130mTorr以上、140mTorr以上、150mTorr以上、160mTorr以上、170mTorr以上、180mTorr以上または190mTorr以上でありうる。前記圧力は、工程開始時の圧力であり得、工程中にも前記範囲内に圧力が維持され得る。
【0082】
一つの例示において、前記プラズマ処理は、工程ガスの種類と流量などを調節することによって行われ得る。具体的に、前記プラズマ処理は、前記処理空間内に水蒸気、放電ガス(Ar)および酸素を注入することによって行われ得る。前記のような工程ガスの雰囲気下でプラズマ処理を行う場合、処理空間内水蒸気から解離した水素ラジカルがポリシラザンの水素元素を引き離して結合して水素(H)を形成することによって、ポリシラザンの反応性が増加することができ、その結果、バリアー特性が改善され得るものと考えられる。
【0083】
水蒸気、放電ガスおよび酸素を工程ガスとして使用する場合、処理空間内水蒸気の蒸気圧は、5%以上でありうる。前記水蒸気の蒸気圧は、処理空間内に注入されるガスの全体流量に対して注入される水蒸気の注入流量の百分率であって、水蒸気、放電ガスおよび反応ガスをそれぞれA sccm、B sccmおよびC sccmの流量で注入しつつ、前記プラズマ処理を行う場合に、前記水蒸気の蒸気圧は、100×A/(A+B+C)で計算され得る。前記水蒸気の蒸気圧は、他の例示において、約10%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上または約30%以上でありうる。前記水蒸気の蒸気圧の上限は、特に制限されず、例えば、約90%以下、約85%以下、約80%以下、約75%以下、約70%以下、約65%以下、約60%以下、約55%以下、約50%以下、約45%以下、約40%以下または約35%以下でありうる。
【0084】
前記水準の水蒸気の蒸気圧を維持するために、所定の流量以上の水蒸気を空間内に流入させながら、プラズマ処理が行われ得る。例えば、処理空間内に50sccm以上の流量で水蒸気を注入しつつ、変性処理を行うことができる。他の例示において、前記水蒸気の注入流量は、他の例示において、60sccm以上、70sccm以上、80sccm以上、90sccm以上、100sccm以上、110sccm以上または120sccm以上でありうる。前記注入流量の上限は、特に制限されず、例えば、前記注入流量の上限は、約500sccm以下、400sccm以下、300sccm以下、200sccm以下または約150sccm以下でありうる。
【0085】
上記のように水蒸気の蒸気圧を維持することによって、前記処理空間内の水素分圧が制御され得る。
【0086】
工程ガスの種類と蒸気圧を上記のように調節する場合、水蒸気から発生した水素ラジカルによるポリシラザン層の水素離脱がなされるが、これにより、処理空間内水素分圧が調節され得る。例えば、処理空間内の水素(H)分圧は、約2.00×10-5Pa~1.00×10-4Paの範囲でありうる。
【0087】
一つの例示において、プラズマ処理条件と関連して、放電ガスと水蒸気の注入流量が調節され得る。具体的に、処理空間に対する前記放電ガスの注入流量(N)と水蒸気の注入流量(H)の比率(H/N)が0.4以上に維持され得る。前記比率(H/N)は、他の例示において、約0.45以上または約0.5以上に維持され得る。前記比率(H/N)の上限は、特に制限されず、例えば、約5以下、約4以下、約3以下、約2以下、約1以下または約0.9以下でありうる。このような範囲下で変性処理を効果的に行うことができる。
【0088】
一つの例示において、プラズマ処理条件と関連して、水蒸気と酸素の注入流量が調節され得る。具体的に、処理空間に対する酸素ガスの注入流量(O)と水蒸気の注入流量(H)の比率(H/O)は、0.4以上でありうる。前記比率(H/O)は、他の例示において、約0.45以上または約0.5以上に維持され得る。前記比率(H/O)の上限は、特に制限されず、例えば、約5以下、約4以下、約3以下、約2以下、約1以下または約0.9以下でありうる。このような範囲下で変性処理を効果的に行うことができる。
【0089】
前記プラズマ処理を行う温度は、特に制限されるものではないが、温度が高くなると、バリアー層の形成のための反応がよりスムーズに行われ得るので、常温以上で行うことが適切である。例えば、前記変性処理時の工程温度は、30℃以上、40℃以上、50℃以上、60℃以上、70℃以上または80℃以上でありうる。前記工程温度は、他の例示において、約85℃以上、約90℃以上、約95℃以上、約100℃以上、約105℃以上または約110℃以上でありうる。前記工程温度は、約200℃以下、約190℃以下、約180℃以下、約170℃以下、約160℃以下、約150℃以下、約140℃以下、約130℃以下または約120℃以下に維持され得る。
【0090】
前記プラズマ処理時間は、フィルムのバリアー特性に障害にならない水準で適切に調節され得る。例えば、約10秒~10分間プラズマ処理が行われ得る。
【0091】
前記条件でのプラズマ処理を通じて被コーティング体上に形成されたポリシラザン層を変性することができ、これにより前記説明されたバリアーフィルムの特性が付与され得る。例えば、無機層の形成時にポリシラザンは、脱水素架橋反応やシリカ形成反応を進めることになるが、無基層のうち基材層または下記に説明される中間層に隣接する第1領域が形成される場合には、基材層や中間層に由来する有機物の部分で残留水分や酸素が供給されて、シリカの形成が優勢に起こるものと考えられる。また、第2領域の形成時には、すでに形成された第1領域により基材層や中間層由来の残留水分や酸素などの供給が制限されるので、脱水素架橋反応が非常に進行されることによって、窒素の含量が増加すると考えられる。そして、このような元素含量(分布)を有する無機層に緻密性が付与されるものと考えられる。
【0092】
一つの例示において、前記バリアーフィルムを製造する方法は、プラズマ処理を行う前に、フィルム前駆体に対する加熱段階をさらに含むことができる。前記加熱は、例えば、40~150℃の範囲内で数分~数時間の間行われ得る。前記加熱を通じて溶媒を蒸発させた後、プラズマ処理を行うことができる。
【0093】
前記のような方式で形成された本出願のバリアーフィルムは、優れたバリアー性を有して、食品や医薬品などの包装材料、LCD(Liquid Crystal Display)などのFPD(Flat Panel Display)や太陽電池用部材、電子ペーパーやOLED(Organic Light Emitting Diode)用基板や密封フィルムなどの多様な用途に使用され得る。特に前記のような方式で形成されたバリアーフィルムは、透明性などの光学的性能に優れていて、各種ディスプレイ装置または照明装置などの光学的デバイスでも効果的に利用され得る。
【0094】
前記のような用途に使用される場合、バリアーフィルムと光学デバイスの積層順序は、特に制限されない。
【0095】
例えば、前記バリアーフィルムは、その第2領域が保護対象、すなわち水分に脆弱な構成に隣接するように位置することができる。具体的に、前記バリアーフィルムがOLED素子に付着される場合、その積層順序は、基材層、第1領域、第2領域およびOLED素子でありうる。この際、第2領域は、OLED上に直接形成されるか、他の層の構成を媒介にOLEDと隣接し得る。
【0096】
さらに他の例示では、該第1領域が保護対象、すなわち水分に脆弱な構成に隣接するように位置し得る。具体的に、前記バリアーフィルムがOLED素子に付着される場合、その積層順序は、OLED、第1領域および第2領域でありうる。この際、第1領域は、OLED上に直接形成されるか、他の層の構成を媒介にOLEDと隣接し得る。
【0097】
本出願に関する他の一例において、本出願は、電気または電子素子に関する。これらの素子は、先立って説明されたものと同じ構成または特性を有するバリアーフィルムを含むことができる。
【0098】
本出願に関するさらに他の一例において、本出願は、バリアーフィルムの製造方法に関する。前記方法は、基材層上にポリシラザン組成物を塗布し、プラズマ処理する段階を含むことができる。
【0099】
基材層およびポリシラザン組成物の具体的な特徴や構成は、先立って説明したものと同じである。
【0100】
また、無機層を形成するためのプラズマ処理方式に関しても、前記説明した内容が同一に適用され得る。
【発明の効果】
【0101】
本出願の一例によれば、バリアー特性と透光性に優れたバリアーフィルムが提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0102】
図1図1は、実施例2の無機層に対するXPS分析結果を示す図である。
図2図2は、比較例1の無機層に対するXPS分析結果を示す図である。
図3図3は、実施例1のバリアーフィルムの断面をTEM分析した図である。
【発明を実施するための形態】
【0103】
以下、本出願による実施例および比較例を通じて本出願のバリアーフィルムを説明するが、本出願の範囲が下記実施例により制限されるものではない。
【0104】
測定方法
*透湿度:MOCON Aquatron IIを利用して、製造されたバリアーフィルムの水分透過度を38℃および100%の相対湿度の条件で測定した。
*エッチング速度および元素含量の分析:無機物層の表面で基材方向に深さ(厚み)方向の元素分布の分析は、Arイオンを使用して無機層を少しずつ除去しながら進めた。エッチング条件は、基準物質であるTaに対してエッチング速度が0.09nm/sであるArイオン設定を使用した。また、XPS(X-ray photoelectron spectroscopy)を利用して無機層の元素含量を分析した(基材に由来する不純物としてCが検出され得る)。
【0105】
実験例1:無機層の緻密度および水分透過度の比較
下記のように製造されたバリアーフィルムに対する、厚み、エッチング速度および透湿度を測定し、その結果を表1に記載した。
【0106】
実施例1
厚みが約50μmのPET(poly(ethylene terephthalate))(Teijin社製品)フィルム上に厚み1μmの平坦化層を積層し、前記平坦化層上に無機物層を形成した。具体的な過程は、下記の通りである。
【0107】
平坦化層の形成:フルオレン系アクリレートHR6060:PETA(pentaerythritol triacrylate):DPHA(dipentaerythritol hexaacrylate)の含量(重量)比が80:10:10である混合物に、光硬化開始剤2重量比を含む組成物をPGME(Propylene glycol methyl ether)に25%で希釈して、平坦化層用コーティング液を製造した。前記コーティング液をメイヤーバーを利用して基材であるPETフィルムの上に塗布し、100℃で5分間乾燥した。次に、水銀ランプで紫外線を0.6J/cmで照射し、コーティング層を硬化して、平坦化層を形成した。平坦化層の表面のうち約100 μmの面積を有する互いに異なる10個の領域を指定し、Optical Profilerを利用して各領域で最も高い部分と最も低い部分の高さの差異を求め、平均表面粗さ値(Rt)として30nm(標準偏差5.8nm)を得た。
【0108】
無機コーティング層1の形成:Merck社NLグレードDibutyletherでポリシラザンを3.7%で希釈し、メイヤーバーを利用して前記平坦化層上に塗布した後、100℃で5分間乾燥した。ポリシラザンコーティング層に対して下記のような条件でプラズマ処理を行い、無機コーティング層を形成した。希釈されたポリシラザンの濃度と関連して、%は、総固形分(total solid content)の重量比を意味する。
-圧力250mTorr(流量sccm基準Ar:O:HO=1.5:1:1の雰囲気)
-ポリシラザンコーティング面と電極の距離25mm
-電力密度:直流電力0.8W/cmを25秒間供給
【0109】
無機コーティング層2の形成:前記無機層1の上に、さらにシラザン濃度3.7%であるコーティング液を使用してポリシラザン層を形成し、無機層1の形成と同じ条件でプラズマ処理を行って、無機コーティング層2をさらに積層した。
【0110】
実施例2
実施例1で製作した無機コーティング層1の上に、さらにシラザン濃度2.4%であるコーティング液を使用してポリシラザン層を形成し、実施例1と同じ条件でプラズマ処理を行って、無機コーティング層2-1をさらに積層した。
【0111】
実施例3
実施例1で製作した無機コーティング層1の代わりに、シラザン濃度2.4%であるコーティング液を使用し、実施例1と同じ条件でプラズマ処理をして、無機コーティング層1-1を形成した。そして、その上にさらにシラザン濃度2.4%であるコーティング液を使用してポリシラザン層を形成した。その後、実施例1と同じ条件でプラズマ処理を行って、無機コーティング層2-2をさらに積層した。
【0112】
実施例4
無機コーティング層の製造時にシラザン濃度2.4%であるコーティング液を平坦化層上に塗布し、下記のようにプラズマ処理条件を異ならしめたことを除いて、実施例1と同じ方法で基材層/平坦化層/無機コーティング層1-2を含むバリアーフィルムを製造した。以後、前記無機コーティング層1-2上にシラザン濃度2.4%であるコーティング液を塗布し、下記条件でプラズマ処理を行って、基材層/平坦化層/無機コーティング層1-2/無機コーティング層2-3を含むバリアーフィルムを製造した。
-圧力150mTorr(流量sccm基準Ar:O:HO=1.5:1:1の雰囲気)
-ポリシラザンコーティング面と電極の距離40mm
-電力密度:直流電力0.45W/cmを45秒間供給
【0113】
比較例1
4.5%で希釈されたポリシラザン溶液を使用し、下記のようにプラズマ条件を異ならしめたことを除いて、実施例1と同一にバリアーフィルムを製造した。
-圧力100mTorr(流量sccm基準Ar:O=1:1の雰囲気)
-ポリシラザンコーティング面と電極の距離10mm
-電力密度:直流電力0.3W/cmを65秒間供給
【0114】
比較例2
4.9%で希釈されたポリシラザン溶液を使用し、電極との距離が175mmであることを除いて、比較例1と同じ方法でバリアーフィルムを製造した。
【0115】
【表1】
【0116】
前記表1のように、エッチング速度が0.17nm/s以下を満たす無機層を含む実施例は、前記エッチング速度を満たさない比較例に比べて水分透過度が非常に低いことが分かる。特に、本件の実施例3や4の場合、比較例より無機層の厚みが薄いが、優れた水分透過度を確保することができることを確認することができる。これは、実施例のバリアーフィルムの無機層が、比較例のバリアーフィルムの無機層より緻密であることを意味する。
【0117】
また、比較例2のバリアーフィルムの形成時には、4.9%のシラザン溶液を使用し、実施例4のバリアーフィルムの形成時には、2.4%シラザン溶液を2回使用したが、シラザン溶液の濃度がほぼ類似しているにも関わらず(比較例の濃度がさらに高い)、水分透過度の差異が発生したことが分かる。これは、膜の緻密性は、コーティング溶液の濃度に起因するものではないことを示唆する。
【0118】
実験例2:第1領域と第2領域の厚み比による水分透過度の比較
下記のように参考例1と参考例2で製造されたバリアーフィルムと、前記から製造された実施例1~5のバリアーフィルムに対する水分透過度を比較した。
【0119】
参考例1
実施例1で製作した無機層1の上に、さらにシラザン濃度1%であるコーティング液を使用してポリシラザン層を形成し、実施例1と同じ条件でプラズマ処理を行って、無機層2-4をさらに積層して、基準条件での無機層エッチング速度が0.17nm/s未満であるバリアーフィルムを製造した。
【0120】
参考例2
実施例1で製作した無機層1の代わりに、シラザン濃度1.8%であるコーティング液を使用し、実施例1と同じ条件でプラズマ処理をして無機層1-3を形成した。そして、その上にさらにシラザン濃度3.1%であるコーティング液を使用してポリシラザン層を形成した。その後、実施例1と同じ条件でプラズマ処理を行って、無機層2-4をさらに積層して、基準条件での無機層エッチング速度が0.17nm/s未満であるバリアーフィルムを製造した。
【0121】
【表2】
【0122】
類似した緻密度を有するという前提下で、層の厚みが増加すると、ガスや水分に対する遮断性は高まることが一般的である(前記表1で、比較例1と比較例2の透湿度を参照)。これと関連して、実施例4と参考例1を比較すると、厚みがさらに低い実施例4の水分透過度がさらに低いことが分かる。これは、窒素高濃度領域である第2領域の厚みが実施例4のフィルムでさらに大きいためであると考えられる。
【0123】
一方、参考例2は、第2領域の厚みが実施例2~4に比べて大きいが、水分透過度が相対的に良くないことが分かる。これは、参考例2の第1領域が有する厚み(45nm)では、中間層が有する表面粗度(30nm)を十分に吸収できないので、無機層が安定的に形成されることができず、その結果、透湿度が良くないことになると考えられる。
【0124】
整理すれば、本出願によるバリアーフィルムは、より緻密な無機層を有し、前記無機層は、バリアー特性と特に関連した窒素高濃度第2領域と無機層の安定的形成に関連した第1領域を適正厚み(比率)で含むので、優れたバリアー特性を提供することができる。
図1
図2
図3