IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社リコーの特許一覧 ▶ 公立大学法人首都大学東京の特許一覧

特許7150277情報取得方法、情報取得装置及びプログラム
<>
  • 特許-情報取得方法、情報取得装置及びプログラム 図1
  • 特許-情報取得方法、情報取得装置及びプログラム 図2
  • 特許-情報取得方法、情報取得装置及びプログラム 図3
  • 特許-情報取得方法、情報取得装置及びプログラム 図4
  • 特許-情報取得方法、情報取得装置及びプログラム 図5
  • 特許-情報取得方法、情報取得装置及びプログラム 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-30
(45)【発行日】2022-10-11
(54)【発明の名称】情報取得方法、情報取得装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/242 20210101AFI20221003BHJP
   G01R 33/035 20060101ALI20221003BHJP
   G01R 15/20 20060101ALI20221003BHJP
【FI】
A61B5/242 ZDM
G01R33/035
G01R15/20 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019052524
(22)【出願日】2019-03-20
(65)【公開番号】P2020153817
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2021-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(73)【特許権者】
【識別番号】305027401
【氏名又は名称】東京都公立大学法人
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】渡部 泰士
(72)【発明者】
【氏名】関原 謙介
【審査官】門田 宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-219717(JP,A)
【文献】特開2018-15036(JP,A)
【文献】特開2017-51600(JP,A)
【文献】特開2014-113252(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/242 - 5/248
G01R 15/20
G01R 33/035
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
IEEE Xplore
医中誌WEB
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号源の電流の向きと強度を推定する情報取得装置における情報取得方法であって、
信号源が存在しうる領域を分割し、画像の分解能を決定するボクセル分割V1を定義するボクセル定義ステップと、
前記領域において発せられた磁場を計測した磁界データを得るデータ収集ステップと、
得られた磁界データを用いて、各ボクセル位置における信号源の電流の向きと強度を、数理アルゴリズムを用いて推定する再構成ステップと、
を含み、
前記再構成ステップは、
前記ボクセル分割V1よりも粗く定義されたボクセル分割V2を用いて、グラム行列の計算を行うステップと、
前記グラム行列を用いて、前記ボクセル分割V1における信号源の電流の向きと強度の再構成を行うステップと、
を含むことを特徴とする情報取得方法。
【請求項2】
信号源の電流の向きと強度を推定する情報取得装置において、
信号源が存在しうる領域を分割し、画像の分解能を決定するボクセル分割V1を定義するボクセル定義手段と、
前記領域において発せられた磁場を計測した磁界データを得るデータ収集手段と、
得られた磁界データを用いて、各ボクセル位置における信号源の電流の向きと強度を、数理アルゴリズムを用いて推定する再構成手段と、
を備え、
前記再構成手段は、
前記ボクセル分割V1よりも粗く定義されたボクセル分割V2を用いて、グラム行列の計算を行い、
前記グラム行列を用いて、前記ボクセル分割V1における信号源の電流の向きと強度の再構成を行う、
ことを特徴とする情報取得装置。
【請求項3】
信号源の電流の向きと強度を推定する情報取得装置を制御するコンピュータを、
信号源が存在しうる領域を分割し、画像の分解能を決定するボクセル分割V1を定義するボクセル定義手段と、
前記領域において発せられた磁場を計測した磁界データを得るデータ収集手段と、
得られた磁界データを用いて、各ボクセル位置における信号源の電流の向きと強度を、数理アルゴリズムを用いて推定する再構成手段と、
として機能させ、
前記再構成手段は、
前記ボクセル分割V1よりも粗く定義されたボクセル分割V2を用いて、グラム行列の計算を行い、
前記グラム行列を用いて、前記ボクセル分割V1における信号源の電流の向きと強度の再構成を行う、
ことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報取得方法、情報取得装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、計測センサーで計測された信号の信号源の電流の向きと強度を、数理アルゴリズム(例えば、RENS(recursivenull‐steering)空間フィルター)を用いて推定することが行われている。
【0003】
特許文献1には、被検体から発生する微弱な磁気を測定することができる超電導磁気計測装置が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示の超電導磁気計測装置などによれば、微弱な磁気を発生する信号源の電流の向きと強度を取得することになるが、数理アルゴリズムによって非常に長い処理時間を要することが問題となっていた。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、再構成結果の精度を落とすことなく数理アルゴリズムにおける処理時間の短縮化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、信号源の電流の向きと強度を推定する情報取得装置における情報取得方法であって、信号源が存在しうる領域を分割し、画像の分解能を決定するボクセル分割V1を定義するボクセル定義ステップと、前記領域において発せられた磁場を計測した磁界データを得るデータ収集ステップと、得られた磁界データを用いて、各ボクセル位置における信号源の電流の向きと強度を、数理アルゴリズムを用いて推定する再構成ステップと、を含み、前記再構成ステップは、前記ボクセル分割V1よりも粗く定義されたボクセル分割V2を用いて、グラム行列の計算を行うステップと、前記グラム行列を用いて、前記ボクセル分割V1における信号源の電流の向きと強度の再構成を行うステップと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、再構成結果の精度を落とすことなく数理アルゴリズムにおける処理時間の短縮化を図ることができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施の形態にかかる情報取得システムの構成を示すブロック図である。
図2図2は、磁気センサーアレイの一例を模式的に示す図である。
図3図3は、データ解析装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
図4図4は、データ解析装置が有する機能の一例を示す図である。
図5図5は、信号源の再構成処理の流れを概略的に示すフローチャートである。
図6図6は、実施例の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照して、情報取得方法、情報取得装置及びプログラムの実施の形態を詳細に説明する。
【0010】
図1は、実施の形態にかかる情報取得システム100の構成を示すブロック図である。図1に示すように、情報取得システム100は、データ取得装置1と、情報取得装置であるデータ解析装置50と、X線撮影機80と、を備えている。データ取得装置1とデータ解析装置50とX線撮影機80とは、LAN(Local Area Network)等の通信回線60を介して接続されている。
【0011】
データ取得装置1は、被検体から発生する微弱な磁気を磁気センサー30で測定することができる超電導磁気計測装置である。例えば、磁気センサー30は、非常に微弱な磁場を検出することが可能な公知のSQUID(Superconducting Quantum Interference Device,超伝導量子干渉素子)磁束計(超伝導磁気センサー)を用いている。
【0012】
ここで、図2は磁気センサーアレイの一例を模式的に示す図である。本実施形態においては、SQUID磁束計を124ch用いた124ch仰臥位型SQUID(sensor)システムを使用している。図2に示すように、磁気センサー30である124ch仰臥位型SQUID(sensor)システムのセンサーアレイは、X方向の磁場を計測するセンサーが40ch、Y方向の磁場を計測するセンサーが40ch、Z方向の磁場を計測するセンサーが44ch実装されている。X,Y方向の磁場を計測するセンサーアレイ34は図2において黒丸で示すように並んでおり、Z方向の磁場の計測するセンサーアレイ32は図2において白丸で示すように隅に4つ並べてある。それぞれのシステムの計算領域は、本実施形態においては、160mm×110mmである。
【0013】
なお、例えば120ch仰臥位型SQUID(sensor)システムは、X,Y,Z方向それぞれ40chずつあり、5×8のマトリクス状に並べてある。それぞれのシステムの計算領域は140mm×90mmであってもよい。
【0014】
なお、センサーアレイを構成するセンサーは、図2に示すように千鳥形状に並べられている必要はなく、2次元に配置されていればよい。さらに、センサーアレイの形状としては完全に平面であるものに限るものではなく、凹形状になっているものなど平面以外の形状であってもよい。
【0015】
データ取得装置1は、磁気センサー30から所定間隔を空けて配置される被検体の所定の測定箇所から発せられる磁場測定を行う。そして、データ取得装置1は、磁気センサー30で検出された磁界データを、デジタルデータに変換するデータ変換ユニット41と、データ変換ユニット41により変換されたデジタルデータを収集するデータ収集ユニット42とを具備する。
【0016】
また、データ取得装置1は、ポジショニングユニット43を備える。ポジショニングユニット43は、磁気センサー30を基準とした3次元座標系に対する被検体の位置関係を把握するための装置である。例えば、被検体の複数箇所に小コイルを取り付け、これらの小コイルにポジショニングユニット43から給電する。そして、各コイルから発生した磁界を磁気センサー30で検出することにより、磁気センサー30に対する被検体の位置関係を把握する。
【0017】
X線撮影機80は、データ取得装置1の磁気センサー30で計測する磁気を発生する被検体の所定の部分をX線撮影する。
【0018】
データ解析装置50は、データ取得装置1のデータ収集ユニット42に集められた磁界データに基づいて、被検体の診断対象領域内における電流源の同定や解析等の処理を行う装置である。
【0019】
ここで、図3はデータ解析装置50のハードウェア構成の一例を示す図である。ここでは、データ解析装置50のハードウェア構成について説明する。
【0020】
図3に示されているように、データ解析装置50は、コンピュータによって構築されており、CPU501、ROM502、RAM503、HD504、HDD(Hard Disk Drive)コントローラ505、ディスプレイ506、外部機器接続I/F(Interface)508、ネットワークI/F509、バスライン510、キーボード511、ポインティングデバイス512、DVD-RW(Digital Versatile Disk Rewritable)ドライブ514、メディアI/F516を備えている。
【0021】
これらのうち、CPU501は、データ解析装置50全体の動作を制御する。ROM502は、IPL等のCPU501の駆動に用いられるプログラムを記憶する。RAM503は、CPU501のワークエリアとして使用される。
【0022】
HD504は、被検体の診断対象領域内における電流源の同定や解析等の処理を実行させるための情報取得プログラム等の各種データを記憶する。HDDコントローラ505は、CPU501の制御にしたがってHD504に対する各種データの読み出し又は書き込みを制御する。
【0023】
ディスプレイ506は、カーソル、メニュー、ウィンドウ、文字、又は画像などの各種情報を表示する。
【0024】
外部機器接続I/F508は、各種の外部機器を接続するためのインターフェースである。この場合の外部機器は、例えば、USB(Universal Serial Bus)メモリやプリンタ等である。
【0025】
ネットワークI/F509は、ネットワーク3およびローカルネットワーク4を利用してデータ通信をするためのインターフェースである。バスライン510は、図2に示されているCPU501等の各構成要素を電気的に接続するためのアドレスバスやデータバス等である。
【0026】
また、キーボード511は、文字、数値、各種指示などの入力のための複数のキーを備えた入力手段の一種である。ポインティングデバイス512は、各種指示の選択や実行、処理対象の選択、カーソルの移動などを行う入力手段の一種である。
【0027】
DVD-RWドライブ514は、着脱可能な記録媒体の一例としてのDVD-RW513に対する各種データの読み出し又は書き込みを制御する。なお、DVD-RWに限らず、DVD-R等であってもよい。メディアI/F516は、フラッシュメモリ等の記録メディア515に対するデータの読み出し又は書き込み(記憶)を制御する。
【0028】
例えば、DVD-RW513には、例えばX線撮影機80で得られた画像が記憶されており、データ解析装置50で同定された電流源が、これらの断層像上に重ね合わされてディスプレイ506に表示され、或いはカラープリンタに印字出力されるようになっている。なお、X線撮影機80などで得られた画像は、通信回線60を介してデータ解析装置50に直接伝送される。
【0029】
本実施の形態のデータ解析装置50で実行されるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成してもよい。
【0030】
さらに、本実施の形態のデータ解析装置50で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、本実施の形態のデータ解析装置50で実行されるプログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。
【0031】
次に、データ解析装置50のCPU501がHD504に記憶された情報取得プログラムを実行することによって発揮する機能について説明する。なお、ここでは従来から知られている機能については説明を省略し、本実施の形態のデータ解析装置50のCPU501が発揮する特徴的な機能について詳述する。
【0032】
ここで、図4はデータ解析装置50が有する機能の一例を示す図である。図4に示すように、データ解析装置50は、ボクセル定義手段51と、データ収集手段52と、再構成手段53と、を有する。
【0033】
ボクセル定義手段51は、信号源が存在しうる領域を分割し、画像の分解能を決定するボクセル分割V1(詳細は後述する)を定義する。
【0034】
データ収集手段52は、上記領域において発せられた磁場を計測した磁界データを得る。
【0035】
再構成手段53は、得られた磁界データを用いて、各ボクセル位置における信号源の電流の向きと強度を、数理アルゴリズムを用いて推定する。より詳細には、再構成手段53は、ボクセル分割V1よりも粗く定義されたボクセル分割V2(詳細は後述する)を用いて、グラム行列の計算を行い、グラム行列を用いて、ボクセル分割V1における信号源の電流の向きと強度の再構成を行う。
【0036】
次に、データ解析装置50における信号源の再構成処理について説明する。
【0037】
ここで、図5は信号源の再構成処理の流れを概略的に示すフローチャートである。
【0038】
(ステップS1:ボクセル定義ステップ)
図5に示すように、データ解析装置50(ボクセル定義手段51)は、信号源が存在しうる領域を分割し、ボクセル分割V1を定義する(ステップS1)。ここで、ボクセル分割は、信号源が存在しうる領域を均等に分割して成る分割領域である。また、ボクセルは、それぞれ分割された領域1つ1つを指す。
【0039】
(ステップS2:データ収集ステップ)
次いで、データ解析装置50(データ収集手段52)は、上記領域における神経電気活動より発せられた磁場をデータ取得装置1の磁気センサー30により体表面で計測して磁界データを得る(ステップS2)。なお、ステップS2は、上述したステップS1の前に行われても良い。
【0040】
(ステップS3:再構成ステップ)
次いで、データ解析装置50(再構成手段53)は、ステップS2で得られた磁界データを用いて、各ボクセル位置における電流の向きと強度を、数理アルゴリズムを用いて推定する。
【0041】
ここで用いられる数理アルゴリズムは、好ましくはRENS空間フィルターである。RENS空間フィルターは、磁気センサー30の持つ感度分布をある特定の領域にのみ感度を持つように、人工的に磁気センサー30の感度分布を局在化させる方法である。これにより、信号源と磁気センサー30とを1対1の関係で捉えることができ、この局在化した感度を持つ領域を信号源の存在する領域においてスキャンすることで信号源を分布として再構成することができる。
【0042】
ここで、データ解析装置50(再構成手段53)は、下記式(1)に示したRENS空間フィルターの逐次計算の部分が2つのプロセスである(a)グラム行列の計算と、(b)神経電流神経活動電流の再構成に分けられることに注目し、以下2つのステップを実行する。
【0043】
【数1】
【0044】
ここでs(r,t)は位置rにおける時刻tの再構成信号源ベクトルを示す。また、W(r)は、信号源再構成のための重み行列で、M×3の行列W(r)=[Wx(r),Wy(r),Wz(r)]と定義される。この各成分Wx(r),Wy(r),Wz(r)は、それぞれ信号源ベクトルのx,y,z方向の成分を求める重みである。
【0045】
Gはグラム行列を示し、LはLead field行列を示し、b(t)は計測磁場データを、s(r,t)は信号源ベクトルを示す。P(r)は、s=(r、t)2測定値の離散化やモデルを表現する際の任意の行列である。
【0046】
RENS空間フィルターは、磁気センサー30で検出された計測磁場データb(t)から、位置rにおける信号源ベクトルs(r,t)を式(1)より再構成する。
【0047】
(ステップS3-1)
データ解析装置50(再構成手段53)は、ステップS2において得られたボクセル分割V1よりも粗いボクセル分割V2を用いて、上記に示した式(1)における(a)部を計算することでグラム行列を計算する。
【0048】
(ステップS3-2)
データ解析装置50(再構成手段53)は、ステップS3-1により得られたグラム行列を用いて、ボクセル分割V1における神経活動電流の再構成を行う。
【0049】
以上のステップにより、データ解析装置50は、最終的な再構成結果の精度を落とすことなくRENS空間フィルターの高速化を図ることができる。
【0050】
上述したように、本実施の形態においては、ボクセル分割V1によって画像の分解能を決定し、ボクセル分割V2によって計算時間を決定している。したがって、ボクセル分割V1は画像の質を要求されているレベルにまで精細な画像とする程度のボクセル分割とし、ボクセル分割V2は再構成するための計算時間を早くし、且つボクセル分割V1のステップで得られるデータを正確に活用できる程度のボクセル分割とするのが好ましい。
【0051】
この際、所定のボクセル分割V1は、例えば、分割された各ボクセルの大きさが1辺5mm程度となるように設定し、ボクセル分割V2は分割された各ボクセルの大きさが一辺2cm程度となるように設定するのが好ましい。この場合、計算時間は通常のRENS空間フィルターを用いた場合の1/7程度となる。
【0052】
なお、ボクセル分割V2は、測定対象部位と磁気センサー30との距離や信号の品質などによって最適な分割大きさが変わる。
【0053】
以上の各ステップを行うことにより、データ解析装置50は、神経活動電流の流れについて把握することが可能となる。そして、データ解析装置50は、得られたデータをHD504などに記録し、ディスプレイ506などに表示する。
【0054】
このように本実施の形態によれば、最終的な再構成結果の精度を落とすことなくRENS空間フィルターにおける処理時間の短縮化を図ることができる。
【0055】
本発明は上述した実施形態に何ら制限されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形可能である。例えば、磁気センサーとしては、光ポンピングセンサー、TMRセンサー、原子吸光センサーであり、特定の1方向にしか感度を持っていなくとも良い。
【実施例
【0056】
以下、本発明の実施例を例示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0057】
[実施例1]
例として、神経活動電流を模した信号源を設定し、仮想的に設定されたセンサーアレイにより得られた磁場データに対して上述のステップS1~S3を行い、信号源推定を行った。このとき、神経活動電流はある一定の距離を開けて配置された4つの点電流であるとした。
【0058】
結果を図6に示す。実施例の結果をRENSmark2として示し(図6の(3)(4))、比較対象としてV2=V1としてS1~S3を行った場合(通常のRENS空間フィルター)をRENSとして示す(図6の(1)(2))。
【0059】
図6の(1)においては、高精細な電流再構成結果が得られているが、6.8秒の処理時間がかかっている。対して図6の(3)においては、ボクセル分割V2を1辺5mmで分割することにより、約1/7程度の処理時間で図6の(1)とほぼ同等の再構成結果が得られている。
【0060】
図6の(2)においては、ボクセル分割V1を1辺7mmで分割することで処理が高速化されているが、分解能が低く、粗い結果が得られている。対して図6の(4)においては、ボクセル分割V1を1辺1mmで、ボクセル分割V2を1辺7mmで分割することにより、処理時間は伸びるものの図6の(1)とほぼ同等の結果が得られている。
【符号の説明】
【0061】
50 情報取得装置
51 ボクセル定義手段
52 データ収集手段
53 再構成手段
【先行技術文献】
【特許文献】
【0062】
【文献】特開2009-219717号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6