(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-30
(45)【発行日】2022-10-11
(54)【発明の名称】HTLV-1関連脊髄症(HAM)治療又は予防剤、及びHAMの治療方法
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20221003BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20221003BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20221003BHJP
C07K 16/18 20060101ALN20221003BHJP
【FI】
A61K39/395 D ZNA
A61K39/395 N
A61P25/00
A61P31/14
C07K16/18
(21)【出願番号】P 2020531380
(86)(22)【出願日】2019-07-19
(86)【国際出願番号】 JP2019028431
(87)【国際公開番号】W WO2020017629
(87)【国際公開日】2020-01-23
【審査請求日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】P 2018135925
(32)【優先日】2018-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(73)【特許権者】
【識別番号】596165589
【氏名又は名称】学校法人 聖マリアンナ医科大学
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100152331
【氏名又は名称】山田 拓
(72)【発明者】
【氏名】内丸 薫
(72)【発明者】
【氏名】山岸 誠
(72)【発明者】
【氏名】石崎 伊純
(72)【発明者】
【氏名】山野 嘉久
【審査官】原口 美和
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/210278(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/175236(WO,A1)
【文献】国際公開第2005/087268(WO,A1)
【文献】特表2006-516594(JP,A)
【文献】国際公開第2014/007303(WO,A1)
【文献】特開2013-119531(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/395
A61P 25/00
A61P 31/14
C07K 16/18
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
RGMa阻害物質を含
み、前記RGMa阻害物質が、RGMaを認識する抗体である、HTLV-1関連脊髄症(HAM)の治療又は予防剤。
【請求項2】
RGMa阻害物質を含
み、前記RGMa阻害物質が、RGMaを認識する抗体である、HTLV-1関連脊髄症(HAM)の治療又は予防のための医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、HTLV-1関連脊髄症(HAM)治療又は予防剤に関する。また、本発明は、HAMの治療方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
HTLV-1(Human T-cell Lukemia Virus Type 1; ヒトT細胞白血病ウイルス)は、血液中の白血球のひとつであるT細胞等(主にCD4陽性T細胞)に感染するウイルスである。
HTLV-1に感染したT細胞は、脊髄に慢性の炎症を形成し、その結果、脊髄神経細胞の障害及び変性を引き起こし、痙性脊髄麻痺を惹起する。HTLV-1に感染した細胞が原因となって引き起こされる痙性脊髄麻痺は、HTLV-1関連脊髄症(HAMとも略記する。)と呼ばれる。
HAMの症状としては、神経の組織障害による、両足の麻痺、痛み、排尿障害、頑固な便秘等の症状等が挙げられる。これらの症状が進行すると、車いす生活、寝たきり生活になる。HAMは日本国の指定難病に指定される疾患の一つである。現在、有効なHAMの治療方法は確立されておらず、専ら対症療法がおこなわれている。
治療方法の一つとして、抗CCR4抗体を用いる治療方法が、HTLV-1感染細胞を減少させ、HAMの脊髄炎症を軽減し、症状改善効果を奏することが証明されている(非特許文献1、特許文献5)。
【0003】
RGMaタンパク質は、網膜や海馬の神経細胞の軸索誘導、神経管の閉鎖等に関与するタンパク質RGM(Repulsive guidance molecule)ファミリーの一種である。RGMのはたらきはこれらに限られず、様々な機能を有することが知られている。
【0004】
例えば、特許文献1には、骨髄由来樹状細胞(BMDCs)にRGMが発現していること、CD4+T細胞及びCD11b+マクロファージにRGM受容体が発現しており、当該RGM受容体にRGMが結合することによって、CD4+T細胞及びCD11b+マクロファージの細胞接着活性が増強することが開示されている。また、特許文献1には、抗RGM中和抗体によって、多発性硬化症モデルマウスの臨床症状及び組織病変の両方を軽減することができ、当該マウスから取得した脾細胞では抗原特異的及び非特異的なT細胞活性化が減弱したことが開示されている。
【0005】
特許文献2及び3には、RGMaの受容体ネオゲニン並びに骨形成タンパク質2及び4(BMP-2、BMP-4)へのRGMaの結合を選択的に阻害する、RGMaに対する中和モノクローナル抗体が開示されている。当該中和モノクローナル抗体によれば、損傷を受け、炎症を起こしたヒト中枢神経系、具体的には、多発性硬化症、急性脊髄損傷、脳外傷後、ハンチントン舞踏病、パーキンソン病、アルツハイマー病等の神経変性疾患において、破壊されたニューロン結合の神経再生及び再成長を促進することが可能であるとされている。
【0006】
特許文献4には、RGMaは外傷性脳損傷または虚血性卒中を患っているヒトの中枢神経系ミエリン、新鮮病巣及び成熟瘢痕組織に局在化しており、これらの神経変性疾患を診断することを目的に、RGMa断片を検出し、定量化する方法が開示されている。また、特許文献4には、RGMa断片を検出する対象の神経変性疾患及び障害として、多発性硬化症、パーキンソン病、アルツハイマー病、テイ-サックス病、ニーマン-ピック病、ゴーシェ病、ハーラー症候群、ハンチントン病、筋萎縮性側策硬化症、特発性炎症性脱髄疾患、ビタミンB12欠乏症、橋中心髄鞘崩壊症、脊髄ろう、横断性脊髄炎、デビック病、進行性多巣性白質脳症、視神経炎、脊髄損傷、外傷性脳損傷、卒中、緑内障、糖尿病性網膜症、加齢黄斑変性、白質ジストロフィーが挙げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開2011/071059号
【文献】特開2014-138599号
【文献】特開2016-175897号
【文献】特表2017-526930号
【文献】特開2010-100578号
【非特許文献】
【0008】
【文献】N Engl J Med, 2018, 378, 529-538.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
非特許文献1、特許文献5に開示されている抗CCR4抗体を用いる方法によればHAMの症状を改善することができるが、神経破壊が進行したHAM患者には抗CCR4抗体の効果が限定的である。そのため、HAMを治療することができる、より優れた方法が求められている。
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、HAMを治療することができる治療剤及び治療方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、RGMaを阻害する物質は、HAMの治療に有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]
RGMa阻害物質を含む、HTLV-1関連脊髄症(HAM)の治療又は予防剤。
[2]
前記RGMa阻害物質が、RGMaを認識する抗体である、[1]に記載のHAMの治療又は予防剤。
[3]
それを必要とするHTLV-1関連脊髄症(HAM)患者に薬理学的に有効量のRGMa阻害物質を投与することを含む、HAMの治療方法。
[4]
前記RGMa阻害物質が、RGMaを認識する抗体である、[3]に記載のHAMの治療方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、難治性疾患であるHAMを治療することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】CD4陽性T細胞において、HTLV-1感染細胞の指標であるCADM1と、CD7により分類された群P、D、Nを示す図である。
【
図2】正常T細胞(Normal.CD4)、HAM患者由来CD4陽性T細胞(HAM.CD4)、健常人由来CD4陽性/CADM1陰性/CD7陽性T細胞(Normal.P)、HTLV-1感染者CD4陽性/CADM1陰性/CD7陽性T細胞(P群)、HTLV-1感染者CD4陽性/CADM1陽性/CD7陽性T細胞(D群)、HTLV-1感染者CD4陽性/CADM1陽性/CD7陰性T細胞(N群)、急性型ATL患者CD4陽性/CADM1陽性/CD7陰性T細胞(Acute.N)、健常人CD4陽性T細胞(Normal.CD4.1)、くすぶり型ATL患者由来PBMC (Smoldering)、慢性型ATL患者由来PBMC (Chronic)、急性型ATL患者由来PBMC (Acute)における、RGMa遺伝子の発現レベルを示す図である。
【
図3】HAM患者CD4陽性T細胞及び健常者CD4陽性T細胞におけるRGMaの発現量を示す図である。
【
図4】HAM患者PBMCでの細胞種間におけるRGMaの発現量を解析した結果を示す図である。
【
図5】HAM患者PBMCの培養におけるHTLV-1ウイルスの発現に伴うRGMaの発現変化を示す図である。
【
図6】RGMa遺伝子の転写開始点から-2,916bp上流付近のH3K27me3レベルを示す図である。
【
図7】ヒトCD4陽性T細胞白血病細胞株Jurkatに対し、HTLV-1 TaxをコードするcDNAを挿入するレンチウイルスベクターを導入したときの、RGMa遺伝子mRNAのレベルを示す図である。
【
図8】HTLV-1-tax発現誘導細胞株JPX-9におけるTax及びRGMaのタンパク質発現の解析結果を示す図である。
【
図9】HAM患者PBMCに対するRGMa抗体の作用に関して、自発的増殖活性へのRGMa抗体の作用の結果を示す図である。
【
図10】HAM患者PBMCに対するRGMa抗体の作用に関して、HTLV-1プロウイルス量変化へのRGMa抗体の作用の結果を示す図である。
【
図11】HAM患者PBMCに対するRGMa抗体の作用に関して、CXCL10産生へのRGMa抗体の作用の結果を示す図である。
【
図12】HAM患者PBMCに対するRGMa抗体の作用に関して、HAM患者PBMCのサイトカイン産生に対するRGMa抗体の作用の結果を示す図である。
【
図13】HAM-PBMCが神経細胞株のアポトーシス誘導を引き起こしたことを表す図である。
【
図14】HTLV-1-tax誘導細胞株による神経細胞株のアポトーシス誘導に対するRGMa抗体の抑制作用の結果を示す図である。(a)は、NB-1細胞とJPX-9細胞(未刺激)とを共培養したときの、FACSプロットである。(b)は、NB-1細胞とCdCl
2刺激JPX-9細胞(HTLV-1-tax発現細胞)とを共培養したときの、FACSプロットである。(c)は、(b)の条件に、コントロール抗体を添加したときの、FACSプロットである。(d)は、(b)の条件に、抗RGMa抗体を添加したときの、FACSプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の本実施形態に制限されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0016】
本発明は、RGMa阻害物質を含む、HTLV-1関連脊髄症(HAM)の治療又は予防剤である。RGMa阻害物質は、RGMaそのものに作用してRGMaの活性を阻害する物質であってもよく、RGMaの発現を抑制する物質であってもよい。
RGMa阻害物質としては、例えば、RGMaを阻害する活性を有する化合物、及びRGMaを認識する抗体等が挙げられる。
【0017】
また、RGMa阻害物質としては、例えば、RGMaを発現する遺伝子のsiRNA(short interfering RNA)、shRNA(short hairpin RNA)、及びアンチセンスオリゴヌクレオチド等のRGMaの発現を抑制する物質が挙げられる。
RGMa遺伝子としては、例えば配列番号1に示される塩基配列からなるヒトRGMa遺伝子、配列番号2に示される塩基配列からなるRGMa遺伝子等が挙げられるが、これに限定されるものではない。種々の生物由来のRGMa遺伝子の塩基配列の情報は、GenBank等のデータベースから取得することができる。
【0018】
siRNAは、標的であるRGMa遺伝子の発現を抑制することができる二本鎖RNAである。siRNAにおける塩基配列の長さ(塩基長)は特に限定されないが、好ましくは約30塩基未満、より好ましくは約19~27塩基、さらに好ましくは約21~25塩基である。
shRNAは、一本鎖RNA中に部分的に回文状の塩基配列を含むことにより、分子内に二本鎖構造を有し、3’末端に突出部を有する短いヘアピン構造からからなる約20塩基対以上の分子を指す。shRNAは、細胞内に導入された後、細胞内で約20塩基の長さに分解され、siRNAと同様に標的であるRGMa遺伝子の発現を抑制することができる。
【0019】
siRNAおよびshRNAは、人工的に化学合成することができる。また、siRNAおよびshRNAは、例えば、T7RNAポリメラーゼ及びT7プロモーターを用いて、鋳型DNAからアンチセンス及びセンスのRNAをインビトロで合成することができる。
【0020】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、RGMa遺伝子のDNA配列中の連続する約30塩基未満の塩基配列に対して相補的な、又はハイブリダイズするヌクレオチドであればよく、DNA又はRNAのいずれであってもよい。また、機能に支障がない限り修飾されたものであってもよい。アンチセンスオリゴヌクレオチドは常法によって合成することができ、例えば、市販のDNA合成装置によって容易に合成することができる。
【0021】
本発明のHAMの治療又は予防剤に含まれるRGMa阻害物質としては、RGMaを認識する抗体が好ましい。以下、RGMaを認識する抗体をRGMa抗体ともいう。本発明におけるRGMa抗体は、RGMaに結合してその活性を阻害する抗体であればよく、例えば、RGMaに結合することによりRGMaがRGMa受容体に結合できないようにする抗体等が挙げられる。
【0022】
本発明におけるRGMa抗体は、モノクローナル抗体であってもポリクローナル抗体であってもよい。また、本発明における抗体は、IgG、IgM、IgA、IgD及びIgEのいずれのアイソタイプであってもよい。
本発明におけるRGMa抗体は、例えば、マウス抗体、ヒト型CDR移植抗体、ヒト型キメラ抗体、ヒト化抗体、又は完全ヒト抗体であってもよく、低分子抗体であってもよい。これらの抗体は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
ヒト型CDR移植抗体は、ヒト以外の動物の抗体のCDRを、ヒト抗体のCDRで置換した抗体である。ヒト型キメラ抗体は、ヒト以外の動物の抗体に由来する可変領域と、ヒト抗体に由来する定常領域からなる抗体である。また、ヒト化抗体とは、ヒト以外の動物の抗体において、安全性の高い一部の領域を残して、ヒトの抗体に由来する部分を組み込んだものをいい、ヒト型キメラ抗体、及びヒト型CDR移植抗体を含む概念である。
【0024】
本明細書において「低分子抗体」とは、抗体の断片又は抗体の断片に任意の分子を結合させたものであって、もとの抗体と同一のエピトープを認識するものを意味する。具体的には、VL、VH、CL及びCH1領域からなるFab;2つのFabがヒンジ領域でジスルフィド結合によって連結されているF(ab’)2;VL及びVHからなるFv;VL及びVHを人工のポリペプチドリンカーで連結した一本鎖抗体であるscFvのほか、sdFv、Diabody、sc(Fv)2が挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
本発明において用いられるRGMa抗体は、RGMa又はそのフラグメントを免疫原として用い、公知の方法で作製することができる。
得られた抗体がRGMa抗体であることは、RGMa活性を指標とし確認することができる。
RGMaとしては、例えば配列番号3に示されるアミノ酸配列を含むヒトRGMa、配列番号4に示されるアミノ酸配列を含むRGMa等が挙げられる。種々の生物由来のRGMaを免疫原として用いることができる。RGMaのアミノ酸配列は公知のデータベースであるProtein Data Bank等から取得することができる。
【0026】
本発明において用いられるRGMa抗体がポリクローナル抗体であるとき、例えば以下のようにして作製することができる。まず、抗原としてRGMa又はこれらのフラグメントをリン酸緩衝生理食塩水(PBSとも記載する)に溶解し、必要に応じて通常のアジュバント、例えばフロイント完全アジュバントを適量混合したものを免疫原として、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、及びウマ等の哺乳動物を免疫する。免疫方法は特に限定されないが、例えば、1回又は適当な間隔で2回以上、皮下注射又は腹腔内注射する方法が挙げられる。次いで、常法に従い、免疫した動物から血液を採取して血清を分離し、ポリクローナル抗体画分を精製することにより取得することができる。
本発明において用いられるRGMa抗体がモノクローナル抗体であるとき、当該モノクローナル抗体は、上記免疫された哺乳動物から得た免疫細胞、例えば脾細胞とミエローマ細胞とを融合させてハイブリドーマを得、当該ハイブリドーマの培養物から抗体を採取することによって得ることができる。また、上記モノクローナル抗体は、抗体遺伝子をハイブリドーマからクローニングし、適当なベクターに組み込んで、これを宿主細胞に導入し、遺伝子組換え技術を用いて組換え型のモノクローナル抗体を産生させることもできる。さらに、上記モノクローナル抗体は、ファージディスプレイ法を用いて作製することもできる。
【0027】
本発明において用いられるRGMa抗体としては、例えば、Yamashita, T., Mueller, B.K. & Hata, K. Neogenin and repulsive guidance molecule signaling in the central nervous system. Curr. Opin. Neurobiol. 17, 29-34 (2007);特開2014-138599号公報;特開2016-175897号公報;特表2017-526930号公報;国際公開2016/175236号;特表2015-508061号公報等に開示されている抗体を用いることができる。
また、本発明において用いられるRGMa抗体としては、例えば、株式会社免疫生物研究所(IBL)製、R&D Systems社製等の市販品として入手することもできる。
【0028】
RGMa抗体は、抗原結合ドメインとして、
GTTPDY(配列番号7);
FQATHDPLT(配列番号10);
ARRNEYYGSSFFDY(配列番号13);
LQGYIPPRT(配列番号16);及び
該配列の1つと少なくとも50%の配列同一性を有する修飾CDRアミノ酸配列;
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む少なくとも1つのCDRを含むことが好ましい。上記の配列同一性は、好ましくは80%以上であり、より好ましくは90%以上である。なお、本明細書においてアミノ酸は慣用的な一文字表記又は三文字表記で示されることがある。
【0029】
相補性決定領域(CDR)とは免疫グロブリン分子の可変領域のうち、抗原結合部位を形成する領域をいい、超可変領域とも呼ばれ、免疫グロブリン分子ごとに特にアミノ酸配列の変化が大きい部分をいう。CDRには軽鎖及び重鎖それぞれに3つのCDR(CDR-L1、CDR-L2、CDR-L3、及びCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3)がある。本願では、免疫グロブリン分子のCDRはカバット(Kabat)の番号付けシステム(Kabatら、1987、Sequences of Proteins of Immunological Interest、US Department of Health and Human Services、NIH、USA)に従って決定される。
また、本発明における、軽鎖及び重鎖のアミノ酸配列で規定される抗体においては、CDRのアミノ酸配列が所定の配列から不変であり、CDR以外が変異等によって変化していてもよい。CDR以外に変異等があるとき、相同性は90%以上であることが好ましい。
【0030】
また、RGMa抗体は、配列番号5、6、8、9、11、12、14、15及び該配列の1つと少なくとも50%の配列同一性を有する修飾CDRアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む少なくとも1つのCDRをさらに含むことが好ましい。上記の配列同一性は、好ましくは80%以上であり、より好ましくは90%以上である。
【0031】
RGMa抗体は、表1に示す可変ドメインCDRセット、又は該3つのCDRの少なくとも1つが、親配列と少なくとも50%、好ましくは80%、より好ましくは90%の配列同一性を有する修飾CDRアミノ酸配列である可変ドメインセットから選択される少なくとも3つのCDRを含むことがより好ましい。また、RGMa抗体は、表1に示す可変ドメインCDRセットを少なくとも2つ含むことがさらに好ましい。さらに、少なくとも2つの可変ドメインCDRセットは、VH5F9セット及びVL5F9セットの組み合わせ、又は、VH8D1セット及びVL8D1セットの組み合わせであることが好ましい。
【0032】
【0033】
RGMa抗体は、フレームワーク領域を含んでいてもよい。フレームワーク領域が含むアミノ酸配列としては、配列番号22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39及び40が挙げられる。これらのアミノ酸配列は、1種単独であってもよく、2種以上の組み合わせであってもよい。
また、RGMa抗体は、重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインとして、配列番号41、42、43、44、45、46、47、48及び49から選択される少なくとも1つの重鎖可変ドメイン;及び/又は配列番号50、51及び52から選択される少なくとも1つの軽鎖可変ドメインを含むことが好ましい。
【0034】
また、RGMa抗体は、RGMa阻害を引き起こす部位であればRGMaに結合する際の結合部位は特に限定されないが、例えば、ヒトRGMaでいうと、
EEVVNAVEDWDSQG(配列番号53)
NQQIDFQAFHTNAE(配列番号54)
PTAPETFPYET(配列番号55)
KLPVEDLYYQA(配列番号56)
LYERTRDLPGRAAAGL(配列番号57)
で表されるアミノ酸配列を有する一つ以上のペプチドに結合することが好ましい。
RGMa抗体は、配列番号53及び/又は配列番号54で表されるアミノ酸配列を有するペプチドに結合することがより好ましく、配列番号53及び/又は配列番号54で表されるアミノ酸配列を有するペプチドと、配列番号55及び/又は配列番号56で表されるアミノ酸配列を有するペプチドに結合することがより好ましい。
RGMa抗体は、ヒトRGMaのアミノ酸配列における250番目以降に結合する抗体であることが好ましい。
RGMa抗体は、配列番号53と配列番号54、かつ配列番号55又は配列番号56で表されるアミノ酸配列を有するペプチドに結合することがより好ましい。
【0035】
RGMa抗体は、RGMaタンパク質またはその部分断片(例えば、配列番号53~57の一つ以上を含む断片)を抗原として、該抗原をマウス等の哺乳動物に免疫して得られるポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体、遺伝子組換え技術を用いて製造されるキメラ抗体及びヒト化抗体、並びにヒト抗体産生トランスジェニック動物等を用いて製造されるヒト抗体等であってもよい。
本発明において、RGMa抗体は、医薬としてヒトに投与する場合、副作用の観点から、ヒト化抗体またはヒト抗体が望ましい。
RGMa抗体は、RGMaタンパク質またはその部分断片(例えば、配列番号53~57の一つ以上を含む断片)を抗原として認識するポリクローナル抗体及び/又はモノクローナル抗体の部分断片として用いてもよく、低分子抗体であってもよい。
【0036】
RGMa抗体としては、表1に示したものに加え、軽鎖の相補性決定領域1(LCDR1)、軽鎖の相補性決定領域2(LCDR2)、軽鎖の相補性決定領域3(LCDR3)、重鎖の相補性決定領域1(HCDR1)、重鎖の相補性決定領域2(HCDR2)及び重鎖の相補性決定領域3(HCDR3)のそれぞれのアミノ酸配列が、
LCDR1:RASQDISSYLN(配列番号58)
LCDR2:YTSRLHS(配列番号59)
LCDR3:QQLNTLP(配列番号60)
HCDR1:DAWMD(配列番号61)
HCDR2:EIRSKANNHATYYAESVKG(配列番号62)及び
HCDR3:RDGAY(配列番号63)を含む、
又は、
LCDR1:RSSQSLVHSNGNTYLH(配列番号64)
LCDR2:KVSNRFS(配列番号65)
LCDR3:SQSTHVP(配列番号66)
HCDR1:TSYYWN(配列番号67)
HCDR2:YISYDGTNNYNPSLKN(配列番号68)及び
HCDR3:SFGを含む、
単離されたRGMa抗体、またはその抗原結合断片であってもよい。
各CDR配列においては、1又は数個のアミノ酸が置換、欠失、及び/または付加されていてもよく、例えば、1個又は2個のアミノ酸が置換、欠失、及び/または付加されていてもよい。
【0037】
RGMa抗体としては、軽鎖に配列番号73のアミノ酸配列を、重鎖に配列番号74のアミノ酸配列を有する抗体が例示される。これら配列番号で表されるアミノ酸配列において、1又は数個のアミノ酸(1~20個、1~10個又は1~5個)の置換、欠失、付加又は挿入があってもよい。このような置換、欠失、付加はCDRに導入されてもよいが、CDR以外の領域に導入されることが好ましい。
【0038】
定常領域をヒト由来としたマウス/ヒトキメラ抗体であってもよく、マウス/ヒトキメラ抗体としては、軽鎖に配列番号77のアミノ酸配列(可変領域は1~107)を、重鎖に配列番号78のアミノ酸配列(可変領域は1~116)を有する抗体が例示される。これらの配列番号で表されるアミノ酸配列において、1又は数個のアミノ酸(1~20個、1~10個又は1~5個)の置換、欠失、付加又は挿入があってもよい。このような置換、欠失、付加はCDRに導入されてもよいが、CDR以外の領域に導入されることが好ましい。
【0039】
CDR以外をヒト由来としたヒト化抗体であてもよく。ヒト化抗体としては、重鎖に配列番号70~87(可変領域はN末端側116残基まで)のいずれかのアミノ酸配列を有し、軽鎖に配列番号88~94(可変領域はN末端側1~107残基まで)のいずれかのアミノ酸配列を有する抗体が例示される。これらの配列番号で表されるアミノ酸配列は、1又は数個のアミノ酸(1~20個、1~10個又は1~5個)の置換、欠失、付加又は挿入があってもよい。このような置換、欠失、付加はCDRに導入されてもよいが、CDR以外の領域に導入されることが好ましい。
【0040】
重鎖アミノ酸配列と軽鎖アミノ酸配列はこれらの任意の組み合わせでよいが、好ましくは、重鎖に配列番号84のアミノ酸配列、軽鎖に配列番号88のアミノ酸配列を有する抗体である。配列番号84のアミノ酸配列のうち、重鎖可変領域に相当するアミノ酸配列は、配列番号95で表され、軽鎖可変領域に相当するアミノ酸配列は、配列番号96で表される。
【0041】
RGMa抗体としては、重鎖可変領域(VH)が
EVQLVESGGGLVQPGRSLRLSCTASGFTFSDAWMDWVRQAPGKGLEWVAEIRSKANNHATYYAESVKGRFTISRDDSKSIVYLQMNSLRTEDTALYYCTRRDGAYWGKGTTVTVSS(配列番号95)
又は該アミノ酸配列に少なくとも90%の同一性のあるアミノ酸配列を含み、
軽鎖可変領域(VL)が
DIQMTQSPSSVSASVGDRVTITCRASQDISSYLNWYQQKPGKAPKLLIYYTSRLHSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFASYFCQQLNTLPWTFGGGTKVEME(配列番号96)
又は該アミノ酸配列に少なくとも90%の同一性のあるアミノ酸配列を含む、単離されたRGMa抗体、又はその抗原結合断片が好ましい。
【0042】
RGMa抗体としては、軽鎖に配列番号75のアミノ酸配列を、重鎖に配列番号76のアミノ酸配列を有する抗体が例示される。これら配列番号で表されるアミノ酸配列において、1又は数個のアミノ酸(1~20個、1~10個又は1~5個)の置換、欠失、付加又は挿入があってもよい。このような置換、欠失、付加はCDRに導入されてもよいが、CDR以外の領域に導入されることが好ましい。
定常領域をヒト由来としたマウス/ヒトキメラ抗体であってもよく、CDR以外をヒト由来としたヒト化抗体であってもよい。
【0043】
また、抗RGMa抗体としては、下記(a1)~(h1)から選択される、単離されたRGMa抗体、またはその抗原結合断片であってもよい。
(a1)配列番号97に記載のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号98に記載のアミノ酸配列を含むLCDR2及び配列番号99に記載のアミノ酸配列を含むLCDR3を含む軽鎖可変領域、並びに配列番号100に記載のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号101に記載のアミノ酸配列を含むHCDR2及び配列番号102に記載のアミノ酸配列を含むHCDR3を含む重鎖可変領域を含む抗RGMa抗体、またはその抗原結合断片、
(b1)配列番号97に記載のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号98に記載のアミノ酸配列を含むLCDR2及び配列番号103に記載のアミノ酸配列を含むLCDR3を含む軽鎖可変領域、並びに配列番号100に記載のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号101に記載のアミノ酸配列を含むHCDR2及び配列番号102に記載のアミノ酸配列を含むHCDR3を含む重鎖可変領域を含む抗RGMa抗体、またはその抗原結合断片、
(c1)配列番号97に記載のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号98に記載のアミノ酸配列を含むLCDR2及び配列番号104に記載のアミノ酸配列を含むLCDR3を含む軽鎖可変領域、並びに配列番号100に記載のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号101に記載のアミノ酸配列を含むHCDR2及び配列番号102に記載のアミノ酸配列を含むHCDR3を含む重鎖可変領域を含む抗RGMa抗体、またはその抗原結合断片、
(d1)配列番号97に記載のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号98に記載のアミノ酸配列を含むLCDR2及び配列番号105に記載のアミノ酸配列を含むLCDR3を含む軽鎖可変領域、並びに配列番号100に記載のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号101に記載のアミノ酸配列を含むHCDR2及び配列番号102に記載のアミノ酸配列を含むHCDR3を含む重鎖可変領域を含む抗RGMa抗体、またはその抗原結合断片、
(e1)配列番号97に記載のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号98に記載のアミノ酸配列を含むLCDR2及び配列番号106に記載のアミノ酸配列を含むLCDR3を含む軽鎖可変領域、並びに配列番号100に記載のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号101に記載のアミノ酸配列を含むHCDR2及び配列番号102に記載のアミノ酸配列を含むHCDR3を含む重鎖可変領域を含む抗RGMa抗体、またはその抗原結合断片、
(f1)配列番号97に記載のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号98に記載のアミノ酸配列を含むLCDR2及び配列番号107に記載のアミノ酸配列を含むLCDR3を含む軽鎖可変領域、並びに配列番号100に記載のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号101に記載のアミノ酸配列を含むHCDR2及び配列番号102に記載のアミノ酸配列を含むHCDR3を含む重鎖可変領域を含む抗RGMa抗体、またはその抗原結合断片、
(g1)配列番号97に記載のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号98に記載のアミノ酸配列を含むLCDR2及び配列番号108に記載のアミノ酸配列を含むLCDR3を含む軽鎖可変領域、並びに配列番号100に記載のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号101に記載のアミノ酸配列を含むHCDR2及び配列番号102に記載のアミノ酸配列を含むHCDR3を含む重鎖可変領域を含む抗RGMa抗体、またはその抗原結合断片、及び
(h1)配列番号97に記載のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号98に記載のアミノ酸配列を含むLCDR2及び配列番号109に記載のアミノ酸配列を含むLCDR3を含む軽鎖可変領域、並びに配列番号100に記載のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号101に記載のアミノ酸配列を含むHCDR2及び配列番号102に記載のアミノ酸配列を含むHCDR3を含む重鎖可変領域を含む抗RGMa抗体、またはその抗原結合断片。
【0044】
RGMa抗体は、上述のアミノ酸配列を有する抗体であって、ヒト化抗体であることが好ましく、また、ヒトIgGの定常領域を有することが好ましい。
【0045】
本発明におけるRGMa阻害物質によって、HAMを治療又は予防することができる。
後述の実施例及び
図13に示されるように、HAM患者ではHAM患者由来細胞によって神経細胞死、すなわち脊髄組織の損傷及び変性の誘導が起こっている。
本発明者らが検討した結果、後述する実施例に示したように、HAM患者の主なHTLV-1感染細胞であるCD4陽性T細胞においてRGMaが顕著に発現しており、HAMにはRGMaの発現が関与することがわかった。また、RGMa抗体を用いてRGMaの阻害を行う試験の結果、RGMaがCXCL10、IL-2、及びIL-10の産生に関与することがわかった。
CXCL10は、IFN-γに応答してHAM病原性のHTLV-1感染T細胞から産生されるタンパク質であり、HAMの病態を誘導することが知られており(Brain 2013)、またHAMの症状の進行速度とも強く相関することが知られている(PLoS Negl Trop Dis 2013)。HAM患者の細胞にRGMa抗体を作用させると、このCXCL10の産生が抑えられた。また、IL-10はサイトカインの一つであり、炎症を抑制するようにはたらく。HAM患者の細胞にRGMa抗体を作用させると、IL-10の産生が顕著に増加した。
HAMに真の治療効果をもたらすためには、神経細胞の傷害を抑えることが求められる。HAM患者のHTLV-1感染細胞ではHTLV-1-taxの発現レベルが高く(Blood 2002)、HTLV-1-taxが病態形成に重要であることが示されている(J Clin Invest 2014)。本発明では、HTLV-1-taxがRGMaの発現を誘導し、RGMa発現レベルが高いHAM患者由来細胞が神経細胞死を誘導することが示され、重要なことに、HTLV-1-tax発現細胞による神経細胞死をRGMa阻害物質が抑制することが示された。
以上のように、RGMa阻害物質は、HAMの炎症病態の誘導を抑え、また、HAM患者細胞による炎症反応を抑制することができるため、HAMを治療又は予防することができる。さらにRGMa阻害物質はHAM特有の炎症反応を抑制するのみでなく、HAM患者の病原的な細胞であるHTLV-1-tax発現細胞による神経細胞死を抑制することができるため、HAMを治療又は予防することができる。
【0046】
上述のとおりRGMa阻害物質はHAMを治療又は予防することができ、本発明は、HAMの治療に使用するためのRGMa阻害物質;HAMの治療に使用するための医薬組成物;HAMを治療するためのRGMa阻害物質の使用;HAMの治療用医薬の製造におけるRGMa阻害物質の使用;HAMの治療用医薬の製造に使用するためのRGMa阻害物質;有効量のRGMa阻害物質を、その必要のある対象に投与することを含む、HAMの治療または予防方法;を提供する。
【0047】
本発明のHAMの治療又は予防剤は、RGMa阻害物質を含み、さらに薬学的に許容される担体及び/又は添加剤を適宜配合して製剤化してもよい。
製剤化の形態としては、例えば、錠剤、被覆錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、液剤、懸濁剤、乳剤等の経口剤;注射剤、輸液、坐剤、軟膏、パッチ剤等の非経口剤;が挙げられる。
担体又は添加剤の配合割合については、医薬品分野において通常採用されている範囲に基づいて適宜設定すればよい。
上記担体としては、特に制限されないが、例えば、水、生理食塩水、その他の水性溶媒、及び、水性又は油性基剤等が挙げられる。上記添加剤としては、特に制限されないが、賦形剤、結合剤、pH調整剤、崩壊剤、吸収促進剤、滑沢剤、着色剤、矯味剤、及び香料等が挙げられる。
【0048】
本発明におけるRGMa阻害物質がRGMaを認識する抗体であるとき、当該抗体を薬学的に許容される担体と共に製剤化された注射剤又は輸液として、非経口投与経路、例えば、静脈内、筋肉内、皮膚内、腹腔内、皮下又は局所に投与することが好ましい。
RGMa抗体を含む注射剤又は輸液は、溶液、懸濁液又は乳濁液として用いることができる。その溶剤としては、例えば、注射用蒸留水、生理食塩水、ブドウ糖溶液、及び等張液(例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、グリセリン、マンニトール、ソルビトール、ホウ酸、ホウ砂、プロピレングリコール等の溶液)等を用いることができる。これらの溶剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
さらに、上記注射剤又は輸液は、安定剤、溶解補助剤、懸濁化剤、乳化剤、無痛化剤、緩衝剤、保存剤、防腐剤、pH調整剤等の添加剤を含んでいてもよい。
安定剤としては、例えば、アルブミン、グロブリン、ゼラチン、マンニトール、グルコース、デキストラン、エチレングリコール、プロピレングリコール、アスコルビン酸、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、EDTAナトリウム、クエン酸ナトリウム、ジブチルヒドロキシトルエン等を用いることができる。
溶解補助剤としては、例えば、アルコール(例えば、エタノール等)、ポリアルコール(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)、非イオン性界面活性剤(例えば、ポリソルベート80(登録商標)、HCO-50等)等を用いることができる。
懸濁化剤としては、例えば、モノステアリン酸グリセリン、モノステアリン酸アルミニウム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ラウリル硫酸ナトリウム等を用いることができる。
乳化剤としては、例えば、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、トラガント等を用いることができる。
無痛化剤としては、例えば、ベンジルアルコール、クロロブタノール、ソルビトール等を用いることができる。
緩衝剤としては、例えば、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、炭酸緩衝液、クエン酸緩衝液、トリス緩衝液、等を用いることができる。
保存剤としては、例えば、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、クロロブタノール、ベンジルアルコール、塩化ベンザルコニウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム、ホウ酸、ホウ砂等を用いることができる。
防腐剤としては、例えば、塩化ベンザルコニウム、パラオキシ安息香酸、クロロブタノール等を用いることができる。
pH調整剤としては、例えば、塩酸、水酸化ナトリウム、リン酸、酢酸等を用いることができる。
【0050】
本発明におけるRGMa阻害物質が、RGMaを発現する遺伝子のsiRNA(short interfering RNA)、shRNA(short hairpin RNA)、及びアンチセンスオリゴヌクレオチド等のRGMaの発現を抑制する物質であるとき、非ウイルスベクター又はウイルスベクターの形態で投与することができる。
RGMa阻害物質が非ウイルスベクター形態のとき、投与の方法としては、リポソームを用いて核酸分子を導入する方法(リポソーム法、HVJ-リポソーム法、カチオニックリポソーム法、リポフェクション法、リポフェクトアミン法等)、マイクロインジェクション法、遺伝子銃(Gene Gun)でキャリア(金属粒子)とともに核酸分子を細胞に移入する方法等を上げることができる。
siRNA又はshRNAを、ウイルスベクターを用いて生体に投与する場合、組換えアデノウイルス、レトロウイルス等のウイルスベクターを利用することができる。無毒化したレトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス、ポリオウイルス、シンドビスウイルス、センダイウイルス、SV40等のDNAウイルス又はRNAウイルスに、siRNAまたはshRNAを発現するDNAを導入し、細胞又は組織にこの組換えウイルスを感染させることにより、細胞又は組織内に遺伝子を導入することができる。
【0051】
このようにして得られる製剤は、例えばヒト、並びに、ラット、マウス、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、及びサル等の他の哺乳動物に対して、その有効量を投与することにより、HAMを予防又は治療することができる。
投与量は、目的、疾患の重篤度、患者の年齢、体重、性別、既往歴、有効成分の種類などを考慮して、適宜設定される。
【実施例】
【0052】
[実施例1:HAM及び成人T細胞白血病リンパ腫(ALT;adult T-cell leukemia/lymphoma)の発症機構並びに病態の解明のための網羅的比較解析]
図1に示すように、HTLV-1感染未発症者の検体については、CD4陽性細胞のうち、HTLV-1感染細胞の指標であるCADM1と、CD7により分類された群P、D、Nについて、mRNAの発現解析を行った。
またHAMは、HAM患者末梢血単核細胞から、磁気ビーズで濃縮したCD4陽性細胞とCD4陰性細胞も4例ずつ解析した。HTLV-1非感染健常者(Normal)についても同様に分離した。末梢血単核細胞は、PBMCとも記載する。ATL(smodering, chronic, acuteの各病型)は、主にCD4陽性細胞からなるPBMCを用いた。
アジレントテクノロジー株式会社製の一色マイクロアレイ遺伝子発現解析法を行った。
【0053】
神経に関連する分子について網羅的に比較解析したところ、HAM患者のCD4陽性細胞においてRGMaが顕著に発現していることがわかった。
正常T細胞 4例(Normal.CD4)、HAM患者由来CD4陽性T細胞 4例(HAM.CD4)、健常人由来CD4陽性/CADM1陰性/CD7陽性T細胞 3例(Normal.P)、HTLV-1感染者CD4陽性/CADM1陰性/CD7陽性T細胞5例 (P群)、HTLV-1感染者CD4陽性/CADM1陽性/CD7陽性T細胞 5例(D群)、HTLV-1感染者CD4陽性/CADM1陽性/CD7陰性T細胞5例(N群)、急性型ATL患者CD4陽性/CADM1陽性/CD7陰性T細胞 3例(Acute.N)、健常人CD4陽性T細胞 21例(Normal.CD4.1)、くすぶり型ATL患者由来PBMC 3例(Smoldering)、慢性型ATL患者由来PBMC 20例(Chronic)、急性型ATL患者由来PBMC 26例(Acute)について、アジレントテクノロジー株式会社のHuman Gene Expression 4x44K Microarrayを用いて全遺伝子発現データを取得し、中央値で標準化したのち、RGMa遺伝子レベルをグラフ化した。
グラフではアレイの蛍光強度のLog
2値をプロットした。HAM患者由来CD4陽性T細胞群は、その他の全ての群と有意差をもって上昇していた(P < 0.05)。グラフを
図2に示す。
【0054】
[実施例2:CD4陽性HAM患者における遺伝子発現アッセイ]
HAM患者5名の末梢血から分離したPBMCよりhuman CD4+ isolation kit(Miltenyi Biotec)を用いてCD4陽性T細胞を分離し、HTLV-1感染細胞が多数含まれる細胞集団とした。同様に健常者4名のPBMCからCD4陽性T細胞を分離し、コントロール群とした。
分離したCD4陽性T細胞から全RNAを回収し、ReverTra Ace(東洋紡)を用いてcDNAを作製した。作製されたcDNAを用いてHAM患者CD4陽性T細胞と健常者CD4陽性T細胞との間におけるRGMaの発現量の差をReal time PCRにより解析した。インターナルコントロールには18srRNAを用いた。
解析の結果のグラフを
図3に示す。グラフにおけるHD-CD4+は、コントロール群を指し、HAM-CD4+は、HAM患者の群を指す。
【0055】
[実施例3:PBMCにおけるRGMa発現細胞の解析]
HAM患者PBMCにClear Back(MBL)を用いてFc block処理した後、抗CD3-PECy7(TONBO), CD4-FITC(eBioscience), CD14-PE(eBioscience)抗体を加えて4℃で30分間染色を行った。
抗体染色されたPBMCを洗浄した後にAriaIIIu(BD)を用いてFACSソーティングを行い、CD3陽性CD4陰性細胞(CD3+CD4-)、CD3陽性CD4陽性細胞(CD3+CD4+)、CD3陰性CD14陰性細胞(CD3-CD14-)およびCD3陰性CD14陽性細胞(CD3-CD14+)の分離回収を行った。
回収された各細胞から全RNAを回収し、ReverTra Ace(東洋紡)を用いてcDNAを作製した。作製されたcDNAを用いて細胞種間におけるRGMaの発現量の差をReal time PCRにより解析した。インターナルコントロールには18s rRNAを用いた。解析の結果のグラフを
図4に示す。
HAM-PBMCでは、感染細胞が多く存在するCD3陽性CD4陽性細胞(CD3+CD4+)においてRGMaの発現が最も高いことがわかった。
【0056】
[実施例4:HAM患者PBMCの培養に伴うRGMa発現変化]
HAM患者2名のPBMCを培地(10% FBS(GIBCO)を含むRPMI1640培地(wako))に懸濁し1e5 cellsずつ96 well round bottom plateに10well分播種した後に1, 3, 5, 7日間培養した。
培養を行っていないDay0のPBMCとともに各期間培養したPBMCより全RNAを抽出してReverTra Ace(東洋紡)を用いてcDNAを作製した。HAM患者PBMCは培養するとHTLV-1ウイルスが過剰に発現することが知られており、作製されたcDNAを用いてHAM患者PBMCの培養に伴う、すなわち、ウイルスの発現に伴うRGMaの発現変化について、Real time PCRにより解析した。インターナルコントロールには18s rRNAを用いた。解析の結果を示すグラフを
図5に示す。
【0057】
[実施例5:全プロモーター上のH3K27me3レベルの解析]
正常T細胞 3例(Normal T cell)、HAM患者由来CD4陽性T細胞 4例(HAM)、急性型ATL患者由来PBMC 3例(ATL)について、Agilent Technologies社のSurePrint G3 Human Promoter 2x400K Microarrayを用いて全プロモーター上のH3K27me3レベルを取得し、標準化したのち、RGMa遺伝子の転写開始点から-2,916bp上流付近のH3K27me3レベルをグラフ化した。
グラフを
図6に示す。グラフではアレイの蛍光強度のLog
2値をプロットした。なお、図中のHAM50及びHAM123は、それぞれCD4陽性T細胞を得たHAM患者を指す。HAM患者由来のCD4陽性T細胞では、RGMaの遺伝子発現抑制が解除されていることが示唆された。
【0058】
[実施例6:RGMa遺伝子mRNAレベルの定量]
ヒトCD4陽性T細胞白血病細胞株Jurkatに対し、HTLV-1 TaxをコードするcDNAを挿入するレンチウイルスベクターを導入し、導入後3日間の継時的なRGMa遺伝子mRNAのレベルを定量的RT-PCRで測定した。RPL19遺伝子mRNAも測定し、内部標準として使用した。
定量の結果を表すグラフを
図7に示す。HTLV-1ウイルスによってRGMa発現が引き起こされることが示唆された。
【0059】
[実施例7:HTLV-1-tax発現誘導細胞株JPX-9細胞におけるTax依存的なRGMaの発現誘導]
JPX9細胞を培地(10% FBSを含むRPMI1640培地)で24時間培養し、HTLV-1-tax発現を誘導する塩化カドミウム(CdCl2;ナカライテスク)を終濃度20μMとなるように添加した後、1、2、及び3日間培養した。塩化カドミウム処理及び未処理のJPX9細胞について、Tax及びRGMaのタンパク質発現についてFACS解析した。
塩化カドミウム処理及び未処理のJPX9細胞をそれぞれ洗浄し、Foxp3/Transcription Factor Staining Buffer Kit (eBioscience)を用いて細胞透過処理を行った。その後、抗Tax-FITC抗体(Lt-4:琉球大学 田中先生より分与)を添加して4℃で1時間処理することにより細胞内に発現するTaxタンパク質を染色した。染色されたTaxタンパク質はCantoIIを用いたFACS解析により検出した。
塩化カドミウム処理及び未処理のJPX9細胞をそれぞれ洗浄し、抗RGMa抗体(株式会社免疫生物研究所(IBL)製)を添加して4℃で30分間処理した。その後、細胞を洗浄し、抗mouse IgG-PE抗体(BioLegend)を添加し4℃で30分間反応させ、JPX9に発現するRGMaタンパク質を染色した。染色されたRGMaタンパク質はCantoIIを用いたFACS解析により検出した。
図8にTax及びRGMaのタンパク質発現の解析結果を示す。
【0060】
[実施例8:HAM患者PBMCに対するRGMa抗体の作用検討]
(自発的増殖活性へのRGMa抗体の作用)
4例のHAM患者PBMCを培地(10% FBSを含むRPMI1640培地)に懸濁し、1e5 cellsずつ96 well round bottom plateに播種し、終濃度10μg/mlとなるようRGMa抗体(R&D Systems製)を加え合計0.1mlの培養液において37℃、5% CO
2条件下で7日間培養した。
何も添加しなかった群(Medium)、同濃度のNormal Goat IgG (Santa Cruz Biotechnology)添加群(Normal IgG)、及び1μg/ml プレドニゾロン(PSL)(フナコシ)添加群をコントロールとした。
培養開始から6日後、各ウェルに1μ Ci
3H-Thymidineを添加し、37℃、5% CO
2条件下で16時間培養を行った。その後、培養細胞をセルハーべスター(Tomtec MH3 PerkinElmer)を用いてガラスフィルター(Printed Filtermat A PerkinElmer)に吸着させ、乾燥させた後に固体シンチレータMeltilex-A(PerkinElmer)を染み込ませ、MicroBeta (WALLAC MicroBeta TriLux 1450-021)を用いて細胞に取り込まれた
3H-Thymidine量の測定を行った。各HAM患者PBMCのMedium群における
3H-Thymidineのカウントの平均を100%として、各群の相対値を算出し、HAM患者4例の
3H-Thymidine取り込み率の平均値を求めた。結果を
図9に示す。
【0061】
(HTLV-1プロウイルス量変化へのRGMa抗体の作用)
4例のHAM患者PBMCを培地(10% FBSを含むRPMI1640培地)に懸濁し1e5 cellsずつ96 well round bottom plateに播種し、終濃度10μg/mlとなるようRGMa抗体(R&D Systems製)を加え合計0.1mlの培養液において37℃、5% CO
2条件下で7日間培養した。
何も添加しなかった群(Medium)、同濃度のNormal Goat IgG (Santa Cruz Biotechnology)添加群(Normal IgG)、1μg/ml プレドニゾロン(PSL)(フナコシ)添加群をコントロールとした。
培養開始から7日後、遠心し上清を除いた細胞塊からゲノムDNA抽出を行った。抽出されたゲノムDNAを用いて、リアルタイムPCRによりHTLV-1プロウイルス量(感染細胞率)の測定を行った。
各HAM患者PBMCのMedium群おけるHTLV-1プロウイルス量を100%として、各群におけるHTLV-1プロウイルス量の相対値を算出し、HAM患者4例のHTLV-1プロウイルス量の平均値を求めた。結果を
図10に示す。
【0062】
(CXCL10産生へのRGMa抗体の作用)
HAM患者PBMCからのCXCL10産生に対するRGMa抗体の作用について解析するため、4例のHAM患者PBMCを培地(10% FBSを含むRPMI1640培地)に懸濁し1e5 cellsずつ96 well round bottom plateに播種し、終濃度10μg/mlとなるようRGMa抗体(R&D Systems製)を加え合計0.1mlの培養液において37℃、5% CO
2条件下で7日間培養した。
何も添加しなかった群(Medium)、同濃度のNormal Goat IgG (Santa Cruz Biotechnology)添加群(Normal IgG)、1μg/ml プレドニゾロン(PSL)(フナコシ)添加群をコントロールとした。
培養開始から7日後、培養液を遠心分離して培養上清のみを回収した。培養上清中のCXCL10濃度はCytokine Beads Array kit(BD Biosciences)を用いて、フローサイトメーターFACSCantoII(BD Biosciences)により測定した。
Medium群の培養液中におけるCXCL10濃度を100%として、各群における各群の培養液中CXCL10濃度の相対値を算出し、HAM患者4例のCXCL10濃度の平均値を求めた。結果を
図11に示す。
【0063】
(HAM患者PBMCのサイトカイン産生に対するRGMa抗体の作用)
HAM患者PBMCにおける各種サイトカインの産生に対するRGMa抗体の作用について解析するため、4例のHAM患者PBMCを培地(10% FBSを含むRPMI1640培地)に懸濁し1e5 cellsずつ98 well round bottom plateに播種し、終濃度10μg/mlとなるようRGMa抗体(R&D Systems製)を加え合計0.1mlの培養液において37℃、5% CO2条件下で7日間培養した。
何も添加しなかった群(Medium)、同濃度のNormal Goat IgG (Santa Cruz Biotechnology)添加群(Normal IgG)、1μg/ml プレドニゾロン(PSL)(フナコシ)添加群をコントロールとした。
培養開始から7日後、培養液を遠心分離して培養上清のみを回収した。培養上清中のIFNγ、TNF、IL-2、IL-10濃度はCytokine Beads Array kit(BD Biosciences)を用いて、フローサイトメーターFACSCantoII(BD Biosciences)により測定した。
Medium群の培養液中における各サイトカイン濃度を100%として、各培養条件におけるサイトカイン濃度の相対値を算出し、HAM患者4例の平均値を求めた。
【0064】
[実施例9:HAM-PBMCによる神経細胞株のアポトーシス誘導]
神経細胞株NB-1又はSK-N-ASを6well plateに播種し24時間培養後、健常者(HD)又はHAM患者PBMCを添加し共培養を行った。共培養開始から48時間後に培地とともに添加したPBMCを除去し、PBSで洗浄後に神経細胞株を回収した。
回収された各神経細胞株について、アポトーシスによりDNA断片化を起こしている細胞を特異的に検出するTUNEL法(MEBSTAIN Apoptosis TUNEL Kit Direct(MBL))により解析を行った。
図13に解析結果を示す。ヒストグラムにおけるX軸が、DNA断片化陽性の強度を示す。HAM由来細胞はHD由来細胞と比較して、神経細胞株にアポトーシスをより強く誘導した。
具体的には、以下の<実験手順>にしたがって、細胞死の解析を行った。
<実験手順>
神経細胞株NB-1、SK-N-ASをそれぞれ6well plateに播種し、24時間培養した。
次に、HDまたはHAM-PBMCを添加(神経細胞株の播種数の2倍量)し、48時間培養した。
その後、4%パラホルムアルデヒドを用いて細胞固定し、70%エタノールにより細胞透過処理を行った。
DNA nick end labelingを行うため、MEBSTAIN Apoptosis TUNEL Kit Direct(MBL)のTdT solution 20uL(TdT buffer II : TdT : FITC-dUTP = 18 : 1 : 1)に細胞を懸濁させ、37℃で60分間反応させた後、FACS解析を行った。
【0065】
[実施例10:HTLV-1 Tax発現T細胞株により誘導される神経細胞株のアポトーシスに対するRGMa抗体の抑制作用]
神経細胞株NB-1を6well plateに播種し24時間培養後、未刺激JPX9(JPX9(-))または20μM塩化カドミウムを24時間添加してTax発現を誘導したJPX9(JPX9(+CdCl2))を加えて共培養を行った。また、NB-1細胞と(JPX9(+CdCl
2)の共培養に終濃度10μg/ml になるようにNormal Mouse IgG2b(MBL)またはRGMa抗体(IBL)を加えた。共培養開始から48時間後に培地とともに添加したJPX9を除去し、PBSで洗浄後に神経細胞株を回収した。回収された各神経細胞株について、アポトーシスによりDNA断片化を起こしている細胞を特異的に検出するTUNEL法(MEBSTAIN Apoptosis TUNEL Kit Direct(MBL))により解析を行った。
図14に解析結果を示す。ヒストグラムにおけるX軸が、DNA断片化陽性の強度を示す。
具体的には、以下の<実験手順>にしたがって、細胞死の解析を行った。
<実験手順>
神経細胞株(NB-1)を6well plateに播種し、24時間培養した。
次に、JPX9(-)またはJPX9(+CdCl
2)をNB-1細胞に添加して共培養した。なお、JPX9(-)またはJPX9(+CdCl
2)の細胞数はNB-1細胞の播種数の2倍量とした。JPX9(+CdCl
2)については、塩化カドミウムを除去するために培地10mlで3回洗浄してNB-1細胞に加えた。
続いて、NB-1細胞と(JPX9(+CdCl
2)の共培養にNormal Mouse IgG2b(MBL)または抗RGMa抗体(IBL)を終濃度10μg/mlとなるように加え、48時間培養した。
その後、4%パラホルムアルデヒドを用いて細胞固定し、70%エタノールにより細胞透過処理を行い、抗CD45-V450抗体を加えて染色した。
DNA nick end labelingを行うため、MEBSTAIN Apoptosis TUNEL Kit Direct(MBL)のTdT solution 20uL(TdT buffer II : TdT : FITC-dUTP = 18 : 1 : 1)に細胞を懸濁し、37℃で60分間反応させた後、FACS解析を行った。
【0066】
本明細書において引用して記載する刊行物、特許文献及び非特許文献に記載されるすべての内容は、そのまま参考として本明細書において取り込まれる。
【配列表】