(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-30
(45)【発行日】2022-10-11
(54)【発明の名称】反射防止フィルム、偏光板およびディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
G02B 1/11 20150101AFI20221003BHJP
G02B 1/14 20150101ALI20221003BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20221003BHJP
G02B 1/18 20150101ALI20221003BHJP
【FI】
G02B1/11
G02B1/14
G02B5/30
G02B1/18
(21)【出願番号】P 2021526185
(86)(22)【出願日】2020-02-24
(86)【国際出願番号】 KR2020002633
(87)【国際公開番号】W WO2020184865
(87)【国際公開日】2020-09-17
【審査請求日】2021-01-20
(31)【優先権主張番号】10-2019-0028248
(32)【優先日】2019-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0020902
(32)【優先日】2020-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】キョン・ムン・コ
(72)【発明者】
【氏名】ジンソク・ビュン
(72)【発明者】
【氏名】チャンオ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ヨンレ・チャン
【審査官】植野 孝郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/157682(WO,A1)
【文献】特表2019-502163(JP,A)
【文献】特表2018-533067(JP,A)
【文献】国際公開第2016/063915(WO,A1)
【文献】特開2015-72429(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第3447543(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 1/10- 1/18
G02B 5/30
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハードコート層;および含フッ素化合物を含む低屈折層;を含み、
前記低屈折層の表面に存在するフッ素原子の含有量は8.0原子%超であり、
前記低屈折層の一面の表面積差百分率(SADP;surface area difference percentage)は20%以下である、反射防止フィルムであって、
前記含フッ素化合物が3,000~5,000の重量平均分子量を有し、
前記表面積差百分率は下記式1で定義される、反射防止フィルム
[式1]
表面積差百分率(%)=(3次元の面積-2次元の面積)/2次元の面積))×100。
【請求項2】
前記反射防止フィルムの中心線平均粗さ(Ra)は10nm以下である、請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項3】
前記フッ素原子の含有量は、前記低屈折層の一面から低屈折層の厚さ方向に10nm厚さ以内に存在する原子の総含有量に対するフッ素原子の含有量である、請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項4】
前記含フッ素化合物は反応性官能基を有する、請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項5】
前記反射防止フィルムは、380nm~780nmの可視光線波長帯域で2%以下の平均反射率を示す、請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項6】
前記低屈折層は中空状無機粒子をさらに含む、請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項7】
前記低屈折層の総重量に対する前記含フッ素化合物の含有量
(F)は
2≦F≦9
(重量%
)であり、
前記低屈折層の総重量に対する前記中空状無機粒子の含有量
(V)は29
≦V≦55(重量%
)であると同時に、前記含フッ素化合物の含有量(F)および中空状無機粒子の含有量(V)が下記式2を満足する、請求項6に記載の反射防止フィルム:
[式2]
F≧0.26V-6.11。
【請求項8】
前記含フッ素化合物に含まれているフッ素原子の含有量は1~60重量%である、請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項9】
前記低屈折層は、光重合性化合物の(共)重合体をさらに含む、請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項10】
前記低屈折層は、光重合性化合物、含フッ素化合物および反応性官能基が1以上置換されたポリシルセスキオキサン(polysilsesquioxane)間の架橋重合体をさらに含む、請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項11】
前記ハードコート層は、光硬化性樹脂を含むバインダー樹脂および前記バインダー樹脂に分散した有機または無機微粒子;を含む、請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項12】
請求項1に規定の反射防止フィルムおよび偏光子を含む、偏光板。
【請求項13】
請求項1に規定の反射防止フィルムを含む、ディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2019年3月12日付の韓国特許出願第10-2019-0028248号および2020年2月20日付の韓国特許出願第10-2020-0020902号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
本発明は、反射防止フィルム、偏光板およびディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、PDP、LCDなどの平板ディスプレイ装置には、外部から入射する光の反射を最小化するための反射防止フィルムが装着される。光の反射を最小化するための方法としては、樹脂に無機微粒子などのフィラーを分散させて基材フィルム上にコーティングし凹凸を付与する方法(anti-glare:AGコーティング);基材フィルム上に屈折率が異なる複数の層を形成させて光の干渉を利用する方法(anti-reflection:ARコーティング)またはこれらを混用する方法などがある。
【0003】
そのうち、前記AGコーティングの場合、反射する光の絶対量は一般的なハードコーティングと同等の水準であるが、凹凸を通した光の散乱を利用して目に入る光の量を減らすことによって低反射効果を得ることができる。しかし、前記AGコーティングは、表面の凹凸によって画面の鮮明度が低下するため、最近はARコーティングに関する多くの研究が行われている。
【0004】
前記ARコーティングを利用したフィルムとしては、光透過性基材フィルム上にハードコート層(高屈折率層)、低反射コーティング層などが積層された多層構造のものが商用化されている。しかし、このような複数の層を形成させる方法は、各層を形成する工程を別途に行うことによって、層間密着力(界面接着力)が弱く耐スクラッチ性が低下するという欠点がある。
【0005】
また、従来は反射防止フィルムに含まれる低屈折層の耐スクラッチ性を向上させるためにナノメートルサイズの多様な粒子(例えば、シリカ、アルミナ、ゼオライトなどの粒子)を添加する方法が主に試みられた。しかし、前記のようにナノメートルサイズの粒子を用いる場合、低屈折層の反射率を低くしつつ耐スクラッチ性を同時に高めることには限界があり、ナノメートルサイズの粒子によって低屈折層の表面が有する防汚性が大きく低下した。
【0006】
これにより、外部から入射する光の絶対反射量を低減しながら表面の耐スクラッチ性と共に防汚性を向上させるための多くの研究が行われているが、これによる物性改善の程度が不十分であるのが現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、高い耐スクラッチ性および防汚性を同時に実現でき、ディスプレイ装置の画面の鮮明度を高められる反射防止フィルムを提供するものである。
【0008】
また、本発明は、前記反射防止フィルムを含む偏光板を提供するものである。
また、本発明は、前記反射防止フィルムを含み、高い画面の鮮明度を提供するディスプレイ装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書では、ハードコート層、および含フッ素化合物を含む低屈折層を含み、前記低屈折層の表面に存在するフッ素原子の含有量は8.0原子%超であり、前記低屈折層の一面の表面積差百分率(SADP;surface area difference percentage)は20%以下である反射防止フィルムが提供される。
【0010】
また、本明細書では、前記反射防止フィルムを含む偏光板が提供される。
また、本明細書では、前記反射防止フィルムを含むディスプレイ装置が提供される。
【0011】
以下、発明の具体的な実施形態による反射防止フィルム、これを含む偏光板およびディスプレイ装置についてより詳しく説明する。
【0012】
本明細書において、低屈折層は、低い屈折率を有する層を意味し、例えば、550nmの波長で約1.2~1.6の屈折率を示す層を意味する。
【0013】
また、中空状無機粒子とは、無機粒子の表面および/または内部に空き空間が存在する形態の粒子を意味する。
【0014】
また、(メタ)アクリレート[(Meth)acrylate]は、アクリレート(acrylate)およびメタクリレート(Methacrylate)の両方ともを含む意味である。
【0015】
また、(共)重合体は、共重合体(co-polymer)および単独重合体(homo-polymer)の両方ともを含む意味である。
【0016】
また、光重合性化合物は、光の照射によって、例えば、可視光線または紫外線の照射によって重合された高分子化合物を通称する。
【0017】
また、含フッ素化合物は、化合物中に少なくとも1個以上のフッ素元素が含まれている化合物を意味する。
【0018】
発明の一実施形態によれば、ハードコート層、および含フッ素化合物を含む低屈折層を含み、前記低屈折層の表面に存在するフッ素原子の含有量は8.0原子%超であり、前記低屈折層の一面の表面積差百分率(SADP;surface area difference percentage)は20%以下である反射防止フィルムが提供される。
【0019】
そこで、本発明者らは反射防止フィルムに関する研究を進行して、ハードコート層、および含フッ素化合物を含む低屈折層を含み、前記低屈折層の表面に存在するフッ素の含有量が8.0原子%超であり、前記低屈折層の一面の表面積差百分率(SADP)は20%以下である反射防止フィルムは、高い耐スクラッチ性および防汚性を同時に実現でき、ディスプレイ装置の画面の鮮明度を有することを実験を通して確認して、発明を完成した。
【0020】
また、前記反射防止フィルムは、ディスプレイ装置の画面の鮮明度を高めつつも優れた耐スクラッチ性および高い防汚性を有し、ディスプレイ装置または偏光板の製造工程などに特に制限なく容易に適用可能である。
【0021】
具体的には、前記一実施形態による反射防止フィルムは、前記低屈折層の一面の表面積差百分率(SADP;surface area difference percentage)が20%以下、0.1~20%、0.8~19%、1~18%、1.5~17%、または2~16%であってもよい。
【0022】
前記表面積差百分率は、前記低屈折層の一面の3次元表面粗さを示す一つの指標(index)であり、下記式1で定義される。
[式1]
表面積差百分率(%)=((3次元の面積-2次元の面積)/(2次元の面積))×100
具体的には、表面積差百分率は、3次元の表面積と2次元の表面積との差を2次元の面積で割った後、100を掛けて算出することができ、これは原子間力顕微鏡装置を用いて得ることができる。より具体的には、2次元の面積は、測定対象の面積、例えば測定対象が四角形の場合横長さと縦長さの積に相当し、3次元の面積は、原子間力顕微鏡を通して得られたプロファイル(profile)から3Dイメージを形成した後、得られた測定値により確認できる。
【0023】
また、前記表面積差百分率は、反射防止フィルムの防汚性に影響を与えられ、前記表面積差百分率は、例えば、前記低屈折層に含まれている中空状無機粒子の含有量で制御することができる。
【0024】
具体的には、前記表面積差百分率(SADP)は20%以下、0.1~20%、0.8~19%、1~18%、1.5~17%、または2~16%であってもよい。前記反射防止フィルムの表面積差百分率が20%を超えれば、防汚性の効果が得られない。また、後述する内容に該当するが、表面積差百分率が20%を超える場合低屈折層の表面に含まれているフッ素の含有量が増加しても防汚性を示さないことがある。
【0025】
一方、前記原子間力顕微鏡を通して前記反射防止フィルムの中心線平均粗さ(Ra)を測定することができ、このような中心線平均粗さ(Ra)は10nm以下、8~0.1nm、7~0.3nm、5~0.5nm、または4~0.6nmであってもよい。前記中心線平均粗さ(Ra)が10nmを超えれば防汚性の効果が得られない。
【0026】
前記一実施形態による反射防止フィルムは、ハードコート層および含フッ素化合物を有する低屈折層を含むことができる。前記含フッ素化合物に含まれているフッ素元素は、反射防止フィルムに転写される汚染物質の量を大きく低減できるだけでなく、転写された汚染物質が表面に残留する現象を防止可能であり、前記汚染物質自体を簡単に除去できる特性を有する。
【0027】
したがって、前記低屈折層の表面に汚染物質自体を簡単に除去できるフッ素原子を多量で含むことが好ましく、例えば、前記低屈折層の表面に存在するフッ素原子の含有量は8.0原子%超、8.2原子%以上、8.4原子%以上、8.6原子%以上、8.8原子%以上、8.9原子%以上、9.0原子%以上、9.5原子%以上、または10原子%以上であってもよい。前記低屈折層の表面に存在するフッ素の含有量が8.0原子%以下であれば防汚性の効果が得られない。ただし、前記フッ素の含有量が多すぎる場合ケイ素、炭素などの他の原子の含有量が少なくなることによって、低い平均反射率、優れた耐スクラッチ性および鮮明度に関する効果を実現できず、表面エネルギー(surface energy)の不均衡によるコーティング性不良現象が現れるので、前記低屈折層の表面に存在するフッ素の含有量は50原子%以下、40原子%以下、30原子%以下、または20原子%以下であってもよい。一方、前記フッ素の含有量は、前記低屈折層の一面(例えば、空気層と接する低屈折層の一面)から低屈折層の厚さ方向に10nm厚さ以内に存在する元素の総原子量に対するフッ素元素の含有量である。
【0028】
前記低屈折層の表面に存在するフッ素の含有量は、反射防止フィルムの防汚性に影響を与えられ、このようなフッ素の含有量は、前記低屈折層に含まれている含フッ素化合物の含有量などによって制御することができる。
【0029】
また、前記低屈折層に含まれている含フッ素化合物の含有量などを制御して、低屈折層の表面に存在するフッ素の含有量が8.0原子%を超えても、前記低屈折層の一面の表面積差百分率が20%以下である条件を満足しない場合、優れた防汚性に関する効果が具現され難い。
【0030】
前記含フッ素化合物には、1以上の反応性官能基が含まれるかまたは置換され、前記反応性官能基は、光の照射(例えば、可視光線または紫外線の照射など)または加熱などによって重合反応に参加可能な官能基を意味する。前記反応性官能基は、光の照射または加熱によって重合反応に参加可能と知られた多様な官能基を含むことができ、その具体例としては、(メタ)アクリレート基、エポキシド基、ビニル(Vinyl)基またはチオール(Thiol)基が挙げられる。
【0031】
また、前記低屈折層および反射防止フィルムの形成過程で前記含フッ素化合物に含まれている反応性官能基が架橋作用をし、これにより、前記低屈折層および反射防止フィルムが有する物理的耐久性、耐スクラッチ性および熱的安定性を高めることができる。
【0032】
前記含フッ素化合物は1,000~200,000、2,000~100,000、または3,000~5,000の重量平均分子量(GPC法)によって測定したポリスチレン換算の重量平均分子量を有し得る。前記含フッ素化合物の重量平均分子量が小さすぎると、前記含フッ素化合物が前記低屈折層の表面に均一かつ効果的に配列できず内部に位置するが、これにより、前記低屈折層および反射防止フィルムの表面が有する防汚性が低下し、前記低屈折層および反射防止フィルムの内部の架橋密度が低くなって、全体的な強度や耐スクラッチ性などの機械的物性が低下することがある。また、前記含フッ素化合物の重量平均分子量が高すぎると、前記低屈折層および反射防止フィルムのヘイズが高くなるか、または光透過度が低下することがあり、前記低屈折層および反射防止フィルムの強度も低下することがある。
【0033】
具体的には、前記含フッ素化合物は、i)1個以上の反応性官能基が置換され、少なくとも1個の炭素に1以上のフッ素が置換された脂肪族化合物または脂肪族環化合物;ii)1以上の反応性官能基で置換され、少なくとも1個の水素がフッ素に置換され、1個以上の炭素がケイ素に置換されたヘテロ(hetero)脂肪族化合物またはヘテロ(hetero)脂肪族環化合物;iii)1個以上の反応性官能基が置換され、少なくとも1個のシリコンに1以上のフッ素が置換されたポリジアルキルシロキサン系高分子(例えば、ポリジメチルシロキサン系高分子);iv)1以上の反応性官能基で置換され、少なくとも1個の水素がフッ素に置換されたポリエーテル化合物からなる群より選ばれた1種以上を含むことができる。
【0034】
例えば、前記含フッ素化合物は、ペーフルオロポリエーテル(perfluoropolyether)が重合した化合物であり、アクリレートおよびシロキサンが官能基で置換されていてもよい。
【0035】
前記低屈折層の総重量に対する含フッ素化合物の含有量は2~9重量%、2~8重量%、または3~7重量%であり得る。前記含フッ素化合物は、低屈折層の表面にスリップ(Slip)性を付与して防汚性を向上させる役割を果たすが、前記含フッ素化合物の含有量が少なすぎると防汚性の効果が得られず、前記含フッ素化合物の含有量が多すぎると低屈折層の表面に相対的に含フッ素化合物の含有量が多くなり、低屈折層の表面で光重合性化合物が(共)重合体に転換される転換率が低くなる問題が発生することがある。
【0036】
前記含フッ素化合物に含まれているフッ素原子の含有量は1~60重量%、10~55重量%、20~50重量%、または35~45重量%であり得る。前記含フッ素化合物でフッ素の含有量が少なすぎると、前記低屈折層の表面にフッ素成分が十分に配列されず、防汚性などの物性を十分に確保しにくいことがある。また、含フッ素化合物でフッ素の含有量が多すぎると、前記低屈折層の表面特性が低下するか、または最終の結果物を得るための後端工程中に不良品発生率が高くなることがある。
【0037】
前記含フッ素化合物は、ケイ素またはケイ素化合物をさらに含むことができる。すなわち、前記含フッ素化合物は、選択的に内部にケイ素またはケイ素化合物を含有することができ、具体的には、前記含フッ素化合物中のケイ素の含有量は0.1重量%~20重量%であり得る。
【0038】
前記含フッ素化合物それぞれに含まれるケイ素またはケイ素化合物の含有量も、通常知られている分析方法、例えば、ICP[Inductively Coupled Plasma]分析方法により確認できる。
【0039】
前記含フッ素化合物に含まれるケイ素は、前記実施形態の低屈折層に含まれる他の成分との相溶性を高めることができ、これにより、最終的に製造される低屈折層にヘイズ(haze)が発生することを防止して透明度を高める役割を果たすことができ、かつ最終的に製造される低屈折層や反射防止フィルムの表面のスリップ性を向上させて耐スクラッチ性を高めることができる。
【0040】
一方、前記含フッ素化合物中のケイ素の含有量が大きすぎると、前記低屈折層や反射防止フィルムが十分な透光度や反射防止性能を有せず、表面の防汚性も低下することがある。
【0041】
前記一実施形態による反射防止フィルムの前記低屈折層は、中空状無機粒子をさらに含むことができる。一方、前記中空状無機粒子は、その表面および/または内部に空き空間が存在する形態の粒子を意味する。
【0042】
前記中空状無機粒子は10~200nm、15~150nm、20~130nm、30~110nmまたは40~100nmの直径を有する。前記中空状無機粒子の直径が10nm未満であれば、中空状無機粒子自体が含有する空気の量が少なくなって低屈折率を実現しにくく、200nmを超えれば低屈折層の表面に過度に大きな凹凸が形成されて優れた防汚性および耐スクラッチ性を実現しにくく、低屈折層の厚さが必然的に厚くなる問題が発生することがある。
【0043】
前記中空状無機粒子の具体的な例としては中空シリカ粒子が挙げられる。前記中空シリカ粒子は、有機溶媒により容易に分散するために、表面に置換された所定の官能基を含むことができる。前記中空シリカ粒子の表面に置換可能な有機官能基の例は特に限定されるものではなく、例えば(メタ)アクリレート基、ビニル基、ヒドロキシ基、アミン基、アリル(allyl)基、エポキシ基、イソシアネート基、アミン基、またはフッ素などが前記中空シリカの表面に置換されていてもよい。
【0044】
前記低屈折層の総重量に対する前記中空状無機粒子の含有量は29~60重量%、30~55重量%、または35~50重量%であってもよい。前記中空状無機粒子の含有量が29重量%未満であれば低反射効果が得られにくく、60重量%を超えれば低屈折層の表面に多すぎる凹凸が形成されて表面積が増加して、優れた防汚性が得られにくくなる。
【0045】
また、上述のように、前記中空状無機粒子の含有量(V)が前記低屈折層の総重量に対して29~60重量%であり、前記含フッ素化合物の含有量(F)が前記低屈折層の総重量に対して2~9重量%であると同時に、前記含フッ素化合物の含有量(F)と中空状無機粒子の含有量(V)が下記式2を満足することができる。
[式2]
F≧0.26V-6.11
【0046】
これによって、前記低屈折層を含む反射防止フィルムは、優れた防汚性および耐スクラッチ性を実現でき、380nm~780nmの可視光線波長帯域で2%以下の平均反射率を示してディスプレイ装置の画面の鮮明度を高めることができる。
【0047】
一方、上記式2を2次元グラフで表す場合、x軸はVであり、y軸はFである一次不等式であり、傾きは0.26であり、Y切片は-6.11である。上記式2の傾きが0.26であるため、中空状無機粒子の含有量が含フッ素化合物の含有量に比べて前記反射防止フィルムの防汚性および耐スクラッチ性に及ぼす影響がさらに大きいことを確認できる。また、前記反射防止フィルムが、上述した中空状無機粒子の含有量(V)および含フッ素化合物の含有量(F)の範囲を満足しながらも、上記式2を満足することによって高い耐スクラッチ性および防汚性を同時に実現しながらも、これを含むディスプレイ装置の画面の鮮明度を向上させることができる。万一、前記反射防止フィルムが上記式2を満足しない場合、防汚性および/または耐スクラッチ性が低下したり、平均反射率が高く現れる問題がある。
【0048】
前記中空状無機粒子は、表面に反応性官能基を有する含フッ素化合物がコーティングされたものを単独で使用することができる。または、前記反応性官能基を有する含フッ素化合物がコーティングされた中空状無機粒子と、表面がコーティングされない中空状無機粒子を混合して使用することができる。前記中空状無機粒子の表面を前記反応性官能基を有する含フッ素化合物でコーティングすると、表面エネルギーをより下げることができ、これにより、前記低屈折層の防汚性を向上させることができ、また、低屈折層の耐久性や耐スクラッチ性をより高めることができる。
【0049】
前記中空状無機粒子の表面に反応性官能基を有する含フッ素化合物をコーティングする方法としては、通常知られている粒子コーティング方法や重合方法などを特に制限なく使用することができ、例えば、前記中空状無機粒子および反応性官能基を有する含フッ素化合物を水と触媒の存在下でゾル-ゲル反応させて加水分解および縮合反応により、前記中空状無機粒子の表面に反応性官能基を有する含フッ素化合物を結合させることができる。
【0050】
前記低屈折層は、ソリッド状無機粒子をさらに含むことができる。前記ソリッド状無機粒子は、その内部に空き空間が存在しない形態の粒子を意味する。前記低屈折層にソリッド状無機粒子を含むことによって、より少量の中空状無機粒子を使用しても反射防止フィルムの反射率を下げることができ、耐スクラッチ性および防汚性を向上させることができる。前記ソリッド状無機粒子は0.5~100nm、1~50nm、2~30nmまたは5~20nmの直径を有する。
【0051】
一方、前記ソリッド状無機粒子および前記中空状無機粒子それぞれは、表面に(メタ)アクリレート基、エポキシド基、ビニル(Vinyl)基およびチオール(Thiol)基からなる群より選ばれる1種以上の反応性官能基を含むことができる。前記ソリッド状無機粒子および前記中空状無機粒子それぞれが、表面に上述した反応性官能基を含むことによって、前記低屈折層はより高い架橋度を有し、これにより、さらに向上した耐スクラッチ性および防汚性を確保できる。
【0052】
前記中空状無機粒子100重量部に対する前記ソリッド状無機粒子の含有量は1~50重量部、2~40重量部、3~35重量部または5~30重量部である。前記中空状無機粒子が過剰に添加されると、バインダーの含有量の低下によってコーティング膜の耐スクラッチ性や耐摩耗性が低下することがある。
【0053】
前記一実施形態による反射防止フィルムの前記低屈折層は、前記光重合性化合物の(共)重合体をさらに含むことができる。
【0054】
前記光重合性化合物の(共)重合体を形成する光重合性化合物は、(メタ)アクリレートまたはビニル基を含む単量体またはオリゴマーを含むことができる。具体的には、前記光重合性化合物は、(メタ)アクリレートまたはビニル基を1以上、または2以上、または3以上含む単量体またはオリゴマーを含むことができる。
【0055】
前記(メタ)アクリレートを含む単量体またはオリゴマーの具体例としては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、ヘキサエチルメタクリレート、ブチルメタクリレートまたはこれらの2種以上の混合物やまたはウレタン変性アクリレートオリゴマー、エポキシドアクリレートオリゴマー、エーテルアクリレートオリゴマー、テンドリティックアクリレートオリゴマー、またはこれらの2種以上の混合物が挙げられる。この時、前記オリゴマーの分子量は1,000~10,000である。
【0056】
前記ビニル基を含む単量体またはオリゴマーの具体例としては、ジビニルベンゼン、スチレンまたはパラメチルスチレンが挙げられる。
【0057】
前記低屈折層の総重量に対する前記光重合性化合物の(共)重合体の含有量は、これによって限定されるものではないが、最終的に製造される低屈折層や反射防止フィルムの機械的物性などを考慮して、前記光重合性化合物の含有量は10重量%~80重量%、15~70重量%、20~60重量%、または30~50重量%であり得る。前記光重合性化合物の(共)重合体の含有量が10重量%未満であれば、無機粒子間に空き空間が形成されて粒子間の配列の周期性がなくなり、粒子の充填密度(packing density)の低下を誘導することができ、これにより、ストレス(stress)分散が円滑に起こらず、耐スクラッチ性が低下することがある。前記光重合性化合物の(共)重合体の含有量が80重量%を超えれば光重合性化合物が(共)重合体に転換される比率が低くなる。
【0058】
前記低屈折層は、反応性官能基が1以上置換されたポリシルセスキオキサンを含むことができる。前記反応性官能基が1以上置換されたポリシルセスキオキサンは、表面に反応性官能基が存在して前記低屈折層の機械的物性、例えば耐スクラッチ性を高めることができ、以前に知られたシリカ、アルミナ、ゼオライトなどの微細粒子を使用する場合とは異なり、前記低屈折層の耐アルカリ性を向上させることができ、かつ平均反射率や色などの外観特性を向上させることができる。
【0059】
前記ポリシルセスキオキサンは、(RSiO1.5)nで表記され(この時、nは4~30または8~20)、ランダム、梯子形、cageおよび部分的なcageなどの多様な構造を有し得る。例えば、前記低屈折層および反射防止フィルムの物性および品質を高めるために、前記反応性官能基が1以上置換されたポリシルセスキオキサンに反応性官能基が1以上置換され、ケージ(cage)構造を有する多面体オリゴマーシルセスキオキサン(Polyhedral Oligomeric Silsesquioxane)を使用することができる。
【0060】
また、より好ましくは、前記官能基が1以上置換され、ケージ(cage)構造を有する多面体オリゴマーシルセスキオキサンは、分子中にシリコン8~20個を含むことができる。
【0061】
また、前記ケージ(cage)構造を有する多面体オリゴマーシルセスキオキサンのシリコンのうちの少なくとも1個以上には反応性官能基が置換されていてもよく、反応性官能基が置換されていないシリコンには上述した非反応性官能基が置換されていてもよい。
【0062】
前記ケージ(cage)構造を有する多面体オリゴマーシルセスキオキサンのシリコンのうちの少なくとも1個に反応性官能基が置換されることによって前記低屈折層および前記バインダー樹脂の機械的物性を向上させることができ、同時に残りのシリコンに非反応性官能基が置換されることによって分子構造的に立体的な障害(Steric hindrance)が現れて、シロキサン結合(-Si-O-)が外部に露出する頻度や確率を大きく低下させ、前記低屈折層および前記バインダー樹脂の耐アルカリ性を向上させることができる。
【0063】
前記ポリシルセスキオキサンに置換される反応性官能基は、アルコール、アミン、カルボン酸、エポキシド、イミド、(メタ)アクリレート、ニトリル、ノルボルネン、オレフィン[アリル(ally)、シクロアルケニル(cycloalkenyl)またはビニルジメチルシリルなど]、ポリエチレングリコール、チオールおよびビニル基からなる群より選ばれた1種以上の官能基を含むことができ、好ましくは、エポキシドまたは(メタ)アクリレートである。
【0064】
前記反応性官能基のより具体的な例としては、(メタ)アクリレート、炭素数1~20のアルキル(メタ)アクリレート、炭素数3~20のシクロアルキル(cycloalkyl)エポキシド、炭素数1~10のアルキルシクロアルカン(cycloalkane)エポキシドが挙げられる。前記アルキル(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリレートと結合しない「アルキル」の他の一部分が結合位置であるという意味であり、前記シクロアルキルエポキシドは、エポキシドと結合しない「シクロアルキル」の他の部分が結合位置であるという意味であり、アルキルシクロアルカン(cycloalkane)エポキシドは、シクロアルカン(cycloalkane)エポキシドと結合しない「アルキル」の他の部分が結合位置であるという意味である。
【0065】
一方、前記反応性官能基が1以上置換されたポリシルセスキオキサンは、上述した反応性官能基の他に、炭素数1~20の直鎖または分枝鎖のアルキル基、炭素数6~20のシクロヘキシル基および炭素数6~20のアリール基からなる群より選ばれた1種以上の非反応性官能基を1以上さらに含むことができる。このように前記ポリシルセスキオキサンに反応性官能基と非反応性官能基が表面に置換されることによって、前記反応性官能基が1以上置換されたポリシルセスキオキサンでシロキサン結合(-Si-O-)が分子内部に位置しかつ外部に露出しなくなり、前記低屈折層および反射防止フィルムの耐アルカリ性および耐スクラッチ性をより高めることができる。
【0066】
このような反応性官能基が1以上置換され、ケージ(cage)構造を有する多面体オリゴマーシルセスキオキサン(Polyhedral Oligomeric Silsesquioxane、POSS)の例としては、TMP DiolIsobutyl POSS、Cyclohexanediol Isobutyl POSS、1,2-PropanediolIsobutyl POSS、Octa(3-hydroxy-3methylbutyldimethylsiloxy)POSSなどのアルコールが1以上置換されたPOSS;AminopropylIsobutyl POSS、AminopropylIsooctyl POSS、Aminoethylaminopropyl Isobutyl POSS、N-Phenylaminopropyl POSS、N-Methylaminopropyl Isobutyl POSS、OctaAmmonium POSS、AminophenylCyclohexyl POSS、AminophenylIsobutyl POSSなどのアミンが1以上置換されたPOSS;Maleamic Acid-Cyclohexyl POSS、Maleamic Acid-Isobutyl POSS、Octa Maleamic Acid POSSなどのカルボン酸が1以上置換されたPOSS;EpoxyCyclohexylIsobutyl POSS、Epoxycyclohexyl POSS、Glycidyl POSS、GlycidylEthyl POSS、GlycidylIsobutyl POSS、GlycidylIsooctyl POSSなどのエポキシドが1以上置換されたPOSS;POSS Maleimide Cyclohexyl、POSS Maleimide Isobutylなどのイミドが1以上置換されたPOSS;AcryloIsobutyl POSS、(Meth)acrylIsobutyl POSS、(Meth)acrylate Cyclohexyl POSS、(Meth)acrylate Isobutyl POSS、(Meth)acrylate Ethyl POSS、(Meth)acrylEthyl POSS、(Meth)acrylate Isooctyl POSS、(Meth)acrylIsooctyl POSS、(Meth)acrylPhenyl POSS、(Meth)acryl POSS、Acrylo POSSなどの(メタ)アクリレートが1以上置換されたPOSS;CyanopropylIsobutyl POSSなどのニトリル基が1以上置換されたPOSS;NorbornenylethylEthyl POSS、NorbornenylethylIsobutyl POSS、Norbornenylethyl DiSilanoIsobutyl POSS、Trisnorbornenyl Isobutyl POSSなどのノルボルネン基が1以上置換されたPOSS;AllylIsobutyl POSS、MonoVinylIsobutyl POSS、OctaCyclohexenyldimethylsilyl POSS、OctaVinyldimethylsilyl POSS、OctaVinyl POSSなどのビニル基が1以上置換されたPOSS;AllylIsobutyl POSS、MonoVinylIsobutyl POSS、OctaCyclohexenyldimethylsilyl POSS、OctaVinyldimethylsilyl POSS、OctaVinyl POSSなどのオレフィンが1以上置換されたPOSS;炭素数5~30のPEGが置換されたPOSS;またはMercaptopropylIsobutyl POSSまたはMercaptopropylIsooctyl POSSなどのチオール基が1以上置換されたPOSS;などが挙げられる。
【0067】
前記低屈折層の総重量に対する前記反応性官能基が1以上置換されたポリシルセスキオキサン(polysilsesquioxane)の含有量は1~20重量%、3~15重量%、または5~10重量%であり得る。前記反応性官能基が1以上置換されたポリシルセスキオキサンに由来する部分の含有量が小さすぎる場合、前記低屈折層の耐スクラッチ性を十分に確保しにくいことがある。また、前記バインダー樹脂中、光重合性化合物に由来する部分に対して前記反応性官能基が1以上置換されたポリシルセスキオキサンに由来する部分の含有量が大きすぎる場合にも、前記低屈折層や反射防止フィルムの透明度が低下し、スクラッチ性がむしろ低下することがある。
【0068】
一方、前記低屈折層は、前記光重合性化合物、前記含フッ素化合物および前記反応性官能基が1以上置換されたポリシルセスキオキサン(polysilsesquioxane)間の架橋重合体をさらに含むことができる。
【0069】
このような低屈折層は、光重合性化合物、含フッ素化合物、反応性官能基が1以上置換されたポリシルセスキオキサンを含む光硬化性コーティング組成物を基材上に塗布し、塗布された結果物を光硬化することによって得られる。これにより、前記低屈折層は、光重合性化合物、含フッ素化合物および反応性官能基が1以上置換されたポリシルセスキオキサン(polysilsesquioxane)間の架橋重合体を含むことができる。
【0070】
また、前記光硬化性コーティング組成物は、光重合開始剤をさらに含むことができる。これにより、上述した光硬化性コーティング組成物から製造される低屈折層に、前記光重合開始剤が残留する。
【0071】
前記光重合開始剤としては、光硬化性樹脂組成物に使用されている公知の化合物であれば特に制限なく使用可能であり、具体的には、ベンゾフェノン系化合物、アセトフェノン系化合物、ビイミダゾール系化合物、トリアジン系化合物、オキシム系化合物またはこれらの2種以上の混合物を使用することができる。
【0072】
前記光重合性化合物100重量部に対して、前記光重合開始剤は1~100重量部、5~90重量部、10~80重量部、20~70重量部または30~60重量部の含有量で使用可能である。前記光重合開始剤の量が少なすぎると、前記光硬化性コーティング組成物の光硬化段階で硬化されず、残留する物質が発生することがある。前記光重合開始剤の量が多すぎると、未反応開始剤が不純物として残留するか、または架橋密度が低くなり、製造されるフィルムの機械的物性が低下するか、または反射率が非常に高くなることがある。
【0073】
また、前記光硬化性コーティング組成物は、有機溶媒をさらに含むことができる。前記有機溶媒の非制限的な例としては、ケトン類、アルコール類、アセテート類およびエーテル類、またはこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0074】
このような有機溶媒の具体的な例としては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトンまたはイソブチルケトンなどのケトン類;メタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、n-ブタノール、i-ブタノールまたはt-ブタノールなどのアルコール類;エチルアセテート、i-プロピルアセテートまたはポリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのアセテート類;テトラヒドロフランまたはプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル類;またはこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0075】
前記有機溶媒は、前記光硬化性コーティング組成物に含まれる各成分を混合する時点で添加するか、各成分を有機溶媒に分散させるかまたは混合した状態で添加することにより前記光硬化性コーティング組成物に配合する。前記光硬化性コーティング組成物中の有機溶媒の含有量が少なすぎると、前記光硬化性コーティング組成物の流れ性が低下して、最終的に製造されるフィルムに縞模様が生じるなどの不良が発生することがある。また、前記有機溶媒を過剰に添加時、固形分含有量が低くなり、コーティングおよび成膜が十分に行われず、フィルムの物性や表面特性が低下し、乾燥および硬化過程で不良が発生することがある。これにより、前記光硬化性コーティング組成物は、含まれる成分の全固形分の濃度が1重量%~50重量%、または2~20重量%となるように有機溶媒を含むことができる。
【0076】
一方、前記光硬化性コーティング組成物を塗布するのに通常用いられる方法および装置を格別の制限なく使用可能であり、例えば、Meyer barなどのバーコーティング法、グラビアコーティング法、2roll reverseコーティング法、vacuum slot dieコーティング法、2rollコーティング法などを使用することができる。
【0077】
前記光硬化性コーティング組成物を光硬化させる段階では、200~400nmの波長の紫外線または可視光線を照射することができ、照射時の露光量は100~4,000mJ/cm2であり得る。露光時間も特に限定されるものではなく、用いられる露光装置、照射光線の波長または露光量に応じて適切に変更可能である。
【0078】
また、前記光硬化性コーティング組成物を光硬化させる段階では、窒素雰囲気条件を適用するために窒素パージングなどを行うことができる。
【0079】
一方、前記ハードコート層は、通常知られているハードコート層を特に制限なく使用することができる。
【0080】
前記ハードコート層の一例として、光硬化性樹脂を含むバインダー樹脂;および前記バインダー樹脂に分散した有機または無機微粒子を含むハードコート層が挙げられる。
【0081】
前記ハードコート層に含まれる光硬化性樹脂は、紫外線などの光が照射されると、重合反応を起こし得る光硬化性化合物の重合体であって、当業界における通常のものであってよい。具体的には、前記光硬化性樹脂は、ウレタンアクリレートオリゴマー、エポキシドアクリレートオリゴマー、ポリエステルアクリレート、およびポリエーテルアクリレートからなる反応性アクリレートオリゴマー群;およびジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチレンプロピルトリアクリレート、プロポキシル化グリセロールトリアクリレート、トリメチルプロパンエトキシトリアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、プロポキシル化グリセロトリアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、およびエチレングリコールジアクリレートからなる多官能性アクリレート単量体群より選ばれる1種以上を含むことができる。
【0082】
前記有機または無機微粒子は、粒径が具体的に限定されるものではないが、例えば、有機微粒子は1~10μmの粒径を有し、前記無機粒子は1nm~500nm、または1nm~300nmの粒径を有することができる。
【0083】
また、前記ハードコート層に含まれる有機または無機微粒子の具体的な例が限定されるものではないが、例えば、前記有機または無機微粒子は、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、エポキシド樹脂およびナイロン樹脂からなる有機微粒子であるか、酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化インジウム、酸化スズ、酸化ジルコニウムおよび酸化亜鉛からなる無機微粒子であってもよい。
【0084】
前記ハードコート層のバインダー樹脂は、重量平均分子量10,000以上、13,000以上、15,000~100,000または20,000~80,000の高分子量(共)重合体をさらに含むことができる。前記高分子量(共)重合体は、セルロース系ポリマー、アクリル系ポリマー、スチレン系ポリマー、エポキシド系ポリマー、ナイロン系ポリマー、ウレタン系ポリマーおよびポリオレフィン系ポリマーからなる群より選ばれる1種以上であってもよい。
【0085】
一方、前記ハードコート層の他の例としては、光硬化性樹脂の有機高分子樹脂;および前記有機高分子樹脂に分散した帯電防止剤を含むハードコート層が挙げられる。
【0086】
前記帯電防止剤は、4級アンモニウム塩化合物;ピリジニウム塩;1~3個のアミノ基を有する陽イオン性化合物;スルホン酸塩基、硫酸エステル塩基、リン酸エステル塩基、ホスホン酸塩基などの陰イオン性化合物;アミノ酸系またはアミノ硫酸エステル系化合物などの両性化合物;イミノアルコール系化合物、グリセリン系化合物、ポリエチレングリコール系化合物などの非イオン性化合物;スズまたはチタニウムなどを含む金属アルコキシド化合物などの有機金属化合物;前記有機金属化合物のアセチルアセトネート塩などの金属キレート化合物;これら化合物の2種以上の反応物または高分子化物;これら化合物の2種以上の混合物であってもよい。ここで、前記4級アンモニウム塩化合物は、分子内に1個以上の4級アンモニウム塩基を有する化合物であってもよく、低分子型または高分子型を制限なく使用可能である。
【0087】
また、前記帯電防止剤としては、導電性高分子と金属酸化物微粒子も使用可能である。前記導電性高分子としては、芳香族共役系ポリ(パラフェニレン)、ヘテロ環式共役系のポリピロール、ポリチオフェン、脂肪族共役系のポリアセチレン、ヘテロ原子を含む共役系のポリアニリン、混合型共役系のポリ(フェニレンビニレン)、分子中に複数の共役鎖を有する共役系である複鎖型共役系化合物、共役高分子鎖を飽和高分子にグラフトまたはブロック共重合させた導電性複合体などがある。さらに、前記金属酸化物微粒子としては、酸化亜鉛、酸化アンチモン、酸化スズ、酸化セリウム、インジウムスズ酸化物、酸化インジウム、酸化アルミニウム、アンチモンドーピングされた酸化スズ、アルミニウムドーピングされた酸化亜鉛などが挙げられる。
【0088】
前記光重合性樹脂の有機高分子樹脂;および前記有機高分子樹脂に分散した帯電防止剤を含むハードコート層は、アルコキシシラン系オリゴマーおよび金属アルコキシド系オリゴマーからなる群より選ばれる1種以上の化合物をさらに含むことができる。
【0089】
前記アルコキシシラン系化合物は、当業界における通常のものであってよいが、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、グリシドキシプロピルトリメトキシシランおよびグリシドキシプロピルトリエトキシシランからなる群より選ばれる1種以上の化合物であってもよい。
【0090】
また、前記金属アルコキシド系オリゴマーは、金属アルコキシド系化合物および水を含む組成物のゾル-ゲル反応により製造できる。前記ゾル-ゲル反応は、前述したアルコキシシラン系オリゴマーの製造方法に準ずる方法で行うことができる。ただし、前記金属アルコキシド系化合物は、水と急激に反応し得るため、
前記金属アルコキシド系化合物を有機溶媒に希釈した後、水をゆっくりドロッピングする方法で前記ゾル-ゲル反応を行うことができる。この時、反応効率などを勘案して、水に対する金属アルコキシド化合物のモル比(金属イオン基準)は、3~170の範囲内で調節することが好ましい。
【0091】
ここで、前記金属アルコキシド系化合物は、チタンテトラ-イソプロポキシド、ジルコニウムイソプロポキシドおよびアルミニウムイソプロポキシドからなる群より選ばれる1種以上の化合物であってもよい。
【0092】
一方、前記一実施形態による反射防止フィルムは、低屈折層に対向するように前記ハードコート層の一面に位置した光透過性基材をさらに含むことができる。
【0093】
前記光透過性基材は、光透過度が90%以上であり、ヘイズ1%以下である透明フィルムであってもよい。また、前記光透過性基材は、環状オレフィン系高分子(cycloolefin polymer)フィルム、ポリ(メタ)アクリレート系フィルム、ポリカーボネートフィルム、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム、ポリノルボルネン(polynorbornene)フィルム、ポリエステルフィルムおよびポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムからなる群より選ばれる1種以上を含むことができる。また、前記光透過性基材の厚さは生産性などを考慮して、10~300μmであってもよいが、これに限定するものではない。
【0094】
具体的には、前記光透過性基材は、波長400nm~800nmで測定される厚さ方向のリタデーション(Rth)が3,000nm以上、4,000~50,000nm、または5,000~40,000nmであってもよい。このような光透過性基材の具体例としては、一軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムまたは二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが挙げられる。前記光透過性基材の厚さ方向のリタデーション(Rth)が3,000nm未満であれば、可視光線の干渉によるレインボー現象が発生することがある。
【0095】
厚さ方向のリタデーションは、通常知られている測定方法および測定装置により確認できる。例えば、厚さ方向のリタデーションの測定装置としては、AXOMETRICS社製の商品名「アクソスキャン(AxoScan)」などが挙げられる。
【0096】
例えば、厚さ方向のリタデーションの測定条件としては、前記光透過性基材に対して、屈折率(589nm)値を前記測定装置に入力した後、温度25℃、湿度40%の条件下で波長590nmの光を用いて、光透過性基材フィルムの厚さ方向のリタデーションを測定し、求められた厚さ方向のリタデーション測定値(測定装置の自動測定(自動計算)による測定値)に基づいて、フィルムの厚さ10μmあたりのリタデーション値に換算することによって求められる。さらに、測定試料の光透過性基材のサイズは、測定器のステージの測光部(直径:約1cm)よりも大きければ良いため、特に制限されないが、縦76mm、横52mm、厚さ13μmの大きさとすることが好ましい。
【0097】
また、厚さ方向のリタデーションの測定に用いる「前記光透過性基材の屈折率(589nm)」の値は、リタデーションの測定対象となるフィルムを形成する光透過性基材と同じ種類の樹脂フィルムを含む未延伸フィルムを形成した後、このような未延伸フィルムを測定試料として用い(なお、測定対象となるフィルムが未延伸フィルムの場合には、そのフィルムをそのまま測定試料として使用できる)、測定装置として屈折率測定装置(株式会社アタゴ製の商品名「NAR-1T SOLID」)を用い、589nmの光源を用いて、23℃の温度条件で、測定試料の面内方向(厚さ方向とは垂直な方向)の589nmの光に対する屈折率を測定して求められる。
【0098】
前記一実施形態の反射防止フィルムは、相対的に低い反射率および全体ヘイズ値を示して、高い透光度および優れた光学特性を実現することができる。具体的には、前記反射防止フィルムの全体ヘイズが0.45%以下、0.05~0.45%または0.10%~0.25%であってもよい。また、前記反射防止フィルムは、380nm~780nmの可視光線波長帯域での平均反射率が2.0%以下、1.5%以下、1.0%以下、または0.1%~0.10%、0.40%~0.80%、または0.54%~0.69%であってもよい。
【0099】
発明の他の実施形態によれば、前記反射防止フィルムを含む偏光板が提供される。前記偏光板は、偏光子と前記偏光子の少なくとも一面に形成される反射防止フィルムとを含むことができる。
【0100】
前記偏光子の材料および製造方法は特に限定されず、当技術分野で知られている通常の材料および製造方法を使用することができる。例えば、前記偏光子は、ポリビニルアルコール系偏光子であってもよい。
【0101】
前記偏光子と前記反射防止フィルムは、水系接着剤または非水系接着剤などの接着剤によって貼り合わされる。
【0102】
発明のさらに他の実施形態によれば、上述した反射防止フィルムを含むディスプレイ装置が提供される。前記ディスプレイ装置の具体的な例が限定されるものではなく、例えば、液晶表示装置(Liquid Crystal Display)、プラズマディスプレイ装置、有機発光ダイオード装置(Organic Light Emitting Diodes)などの装置であってもよい。
【0103】
一つの例として、前記ディスプレイ装置は、互いに対向する一対の偏光板;前記一対の偏光板間に順次に積層された薄膜トランジスタ、カラーフィルタおよび液晶セル;およびバックライトユニットを含む液晶ディスプレイ装置であってもよい。
【0104】
前記ディスプレイ装置において、前記反射防止フィルムは、ディスプレイパネルの観測者側またはバックライト側の最外角表面に備えられる。
【0105】
前記反射防止フィルムを含むディスプレイ装置は、一対の偏光板のうち、相対的にバックライトユニットからの距離が遠い偏光板の一面に反射防止フィルムが配置される。
【0106】
また、前記ディスプレイ装置は、ディスプレイパネルと、前記パネルの少なくとも一面に備えられた偏光子と、前記偏光子のパネルと接する反対側面に備えられた反射防止フィルムとを含むことができる。
【発明の効果】
【0107】
本発明によれば、高い耐スクラッチ性および防汚性を同時に実現でき、ディスプレイ装置の画面の鮮明度を高めることができる反射防止フィルム、前記反射防止フィルムを含む偏光板、および前記反射防止フィルムを含むディスプレイ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【
図1】
図1(a)は、実施例2の反射防止フィルムの表面を原子間力顕微鏡(AFM)で撮影した写真である。
図1(b)は、実施例3の反射防止フィルムの表面を原子間力顕微鏡(AFM)で撮影した写真である。
【
図2】
図2(a)は、比較例2の反射防止フィルムの表面を原子間力顕微鏡(AFM)で撮影した写真である。
図2(b)は、比較例3の反射防止フィルムの表面を原子間力顕微鏡(AFM)で撮影した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0109】
発明を下記の実施例でより詳しく説明する。ただし、下記の実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の内容が下記の実施例によって限定されるものではない。
【0110】
製造例1:ハードコート層形成用コーティング液の製造
ペンタエリスリトールトリアクリレート16.421g、UA-306T(ウレタンアクリレートでトルエンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリアクリレートとの反応物、Kyoeisha製)3.079g、8BR-500(光硬化型ウレタンアクリレートポリマー、Mw200,000、Taisei Fine Chemical社製)6.158g、IRG-184(開始剤、Ciba社製)1.026g、Tego-270(レベリング剤、Tego社製)0.051g、BYK350(レベリング剤、BYK社製)0.051g、2-ブタノール25.92g、イソプロピルアルコール45.92g、XX-103BQ(ポリスチレンとポリメチルメタクリレートとの共重合粒子、Sekisui Plastic社製、粒径2.0μm、屈折率1.515)0.318g、XX-113BQ(ポリスチレンとポリメチルメタクリレートとの共重合粒子、Sekisui Plastic社製、粒径2.0μm、屈折率1.555)0.708g、およびMA-ST(大きさ10~15nmのナノシリカ粒子がメチルアルコールに分散した分散液、Nissan Chemical社製、30% in MeOH)0.342gを混合して、ハードコート層形成用コーティング液を製造した。
【0111】
製造例2:低屈折層形成用コーティング液の製造
下記表1に記載された成分を混合して、低屈折層形成用コーティング液(C1~C6)を製造した。
【0112】
【表1】
-TMPTA:トリメチロールプロパントリアクリレート
-中空状シリカ粒子分散液:直径約42nm~66nm、JSC catalyst and chemicals社製(20% in MIBK)
-ソリッド状シリカ粒子分散液:直径約12nm~19nm(40.6% in MIBK)
-KBM-5103:シランカップリング剤、Shin-Etsu Silicone社製
-RS-923分散液:含フッ素化合物、DIC社製(40% in MIBK)、重量平均分子量4450g/mol
-Irgacure 127:光重合開始剤、Ciba社製
【0113】
<実施例および比較例:反射防止フィルムの製造>
ポリエチレンテレフタレート(厚さ2μm、SRF PET、Toyobo社製)上に、前記製造例1のハードコート層形成用コーティング液をコーティングし乾燥してハードコート層を形成し、前記ハードコート層上に、前記表1に記載された低屈折層形成用コーティング液をコーティングし乾燥して、反射防止フィルムを製造した。
【0114】
具体的には、前記ポリエチレンテレフタレート上に前記製造されたハードコート層形成用コーティング液を#12mayer barを用いてコーティングした後、60℃の温度で2分間乾燥し、UV硬化して、ハードコート層(コーティング厚さ5μm)を形成した。UVランプはH bulbを用い、窒素雰囲気下で硬化反応を進行した。硬化時に照射されたUV光量は48mJ/cm2である。
【0115】
前記ハードコート層上に、下記表2のように前記低屈折層形成用コーティング液を#4mayer barを用いて厚さが約110~120nmとなるようにコーティングし、90℃の温度で1分間乾燥および硬化した。前記硬化時には窒素パージ下で前記乾燥されたコーティング液に294mJ/cm2の紫外線を照射して、反射防止フィルムを製造した。
【0116】
また、前記低屈折層形成用コーティング液(C1~C6)でそれぞれ形成された、低屈折層の総重量に対するそれぞれの中空状無機粒子の含有量(V)および含フッ素化合物の含有量(F)を下記表2に示す。また、下記式2を満足するか否かを確認し、式2を満足する場合○と表示し、満足しない場合Xと表示した。
[式2]
F≧0.26V-6.11
【表2】
【0117】
測定および評価
1.低屈折層表面のフッ素原子の含有量の測定
実施例および比較例で得られた反射防止フィルムを2cm×2cm(横×縦)に切断してサンプルホルダーの上に置いて、クリップを用いて固定した後、X線光電子分光法(X-ray Photoelectron Spectroscopy、K-alphaTM+XPS system、Thermo Fisher Scientific)を用いて低屈折層の表面を分析し、電子分光化学分析法(ESCA;Electron Spectroscopy for Chemical Analysis)を用いてsurveyおよびnarrow scan spectrumを得て定性および定量分析を行った。その結果、低屈折層表面でのフッ素原子の含有量を得て、これを下記表3に示す。
【0118】
一方、前記低屈折層の表面は、「低屈折層の一面(例えば、空気層と接する低屈折層の一面)から低屈折層の厚さ方向に10nm厚さ以内」を意味し、前記低屈折層の表面でフッ素の含有量は、「低屈折層の一面(例えば、空気層と接する低屈折層の一面)から低屈折層の厚さ方向に10nm厚さ以内に存在する元素の総原子量に対するフッ素元素の含有量」を意味する。
【0119】
2.表面積差百分率(SADP)および中心線平均粗さ(Ra)の測定
実施例および比較例で得られた反射防止フィルムの表面形状を測定するために原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope、Park Systems、XE7)を用いた。具体的には、試片を0.8cm×0.8cm(横×縦)に切断してサンプルステージにカーボンテープを使用して付着し、原子間力顕微鏡で平坦な部分を観察した。測定のための探針(Tip)としてPPP-NCHR 10(Force constant:42N/m、Resonance Frequency 330kHz)を用い、詳しい測定条件は次の通りである。
x-scan size:1μm、
y-scan size:1μm
Scan rate:0.7~1Hz
Z Servo Gain:1
Set Point:10~15nm
【0120】
上記条件で測定したデータをXEIプログラムを用いてパターン化し、次の条件で実行した。
Scope:Line
Orientation:X and Y axis
Regression order:1
【0121】
以降、分析されたデータから表面積差百分率および中心線平均粗さ(Ra)を導出し、特に、表面積差百分率は、下記式1に2次元/3次元の面積を代入して計算し、その結果を下記表3に示す。
[式1]
表面積差百分率(%)=(3次元の面積-2次元の面積)/2次元の面積))×100
【0122】
一方、
図1(a)および(b)は、それぞれ実施例2および実施例3の反射防止フィルムの表面を原子間力顕微鏡(AFM)で撮影した写真であり、
図2(a)および(b)は、それぞれ比較例2および比較例3の反射防止フィルムの表面を原子間力顕微鏡で撮影した写真である。
【0123】
3.平均反射率の評価
実施例および比較例で得られた反射防止フィルムが可視光線領域(380~780nm)で示す平均反射率をSolidspec3700(SHIMADZU社製)装置を用いて測定し、その結果を下記表3に示す。
【0124】
4.防汚性の評価
実施例および比較例で得られた反射防止フィルムの表面にモナミ社製のネームペン黒(中間文字用)を利用して50gの荷重で直線を描いて、光学顕微鏡(Olympus社製、BX51)を用いて形成されたディウェッティング液滴(dewetting droplet)間の間隔を10回以上測定した後、その算術平均値によって防汚性を下記基準により判断し、その結果を下記表3に示す。
【0125】
<判断基準>
○:ディウェッティング液滴(dewetting droplet)間の間隔の算術平均値が200μm超
△:ディウェッティング液滴間の間隔の算術平均値が200μm以下50μm超
X:ディウェッティング液滴間の間隔の算術平均値が50μm以下、またはディウェッティングされない
【0126】
【0127】
上記表3によると、実施例1~3においては、低屈折層の表面でフッ素原子の含有量が8.0原子%超であり、表面積差百分率が20%以下であり、中心線平均粗さが10nm以下であり、これにより、平均反射率が1.41%以下に低く、比較例1~3に比べて防汚性が顕著に優れていることを確認した。