(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-30
(45)【発行日】2022-10-11
(54)【発明の名称】ポリアリーレンスルフィドの分離精製方法
(51)【国際特許分類】
C08G 75/0281 20160101AFI20221003BHJP
C08G 75/0259 20160101ALI20221003BHJP
【FI】
C08G75/0281
C08G75/0259
(21)【出願番号】P 2021537428
(86)(22)【出願日】2019-10-18
(86)【国際出願番号】 KR2019013771
(87)【国際公開番号】W WO2020080898
(87)【国際公開日】2020-04-23
【審査請求日】2021-03-10
(31)【優先権主張番号】10-2018-0125505
(32)【優先日】2018-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0129387
(32)【優先日】2019-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ハンソル・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジュン・ジン・ハン
(72)【発明者】
【氏名】サンファン・ジョ
【審査官】岡部 佐知子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-111548(JP,A)
【文献】国際公開第2016/159234(WO,A1)
【文献】特開2003-113242(JP,A)
【文献】特開2002-293937(JP,A)
【文献】特表2019-507825(JP,A)
【文献】特許第3042640(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 75/0281
C08G 75/0259
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアリーレンスルフィド粒子とアルカリ金属ハロゲン化物粒子、有機溶媒を含む混合液から、デカンタ型遠心分離機を1000rpm~2500rpm条件下で用いて前記ポリアリーレンスルフィド粒子を先に沈降させて分離した後、有機溶媒とともに前記アルカリ金属ハロゲン化物粒子を沈降させて除去する段階;および
前記分離したポリアリーレンスルフィド粒子を水で洗浄する前に100℃~200℃で乾燥する段階;
を含
み、
前記ポリアリーレンスルフィド粒子は、粒子の大きさが100μm~2000μmである、ポリアリーレンスルフィドの分離精製方法。
【請求項2】
前記混合液は、ポリアリーレンスルフィドの合成工程や洗浄工程で生成される廃液である、請求項1に記載のポリアリーレンスルフィドの分離精製方法。
【請求項3】
前記ポリアリーレンスルフィド粒子は、密度が1g/cm
3~1.5g/cm
3である、請求項
1または2に記載のポリアリーレンスルフィドの分離精製方法。
【請求項4】
前記アルカリ金属ハロゲン化物粒子は、塩化ナトリウムおよびヨウ化ナトリウムからなる群より選ばれる1種以上である、請求項1から
3のいずれか一項に記載のポリアリーレンスルフィドの分離精製方法。
【請求項5】
前記アルカリ金属ハロゲン化物粒子は、粒子の大きさが5μm~30μmである、請求項1から
4のいずれか一項に記載のポリアリーレンスルフィドの分離精製方法。
【請求項6】
前記アルカリ金属ハロゲン化物粒子は、密度が1.9g/cm
3~3g/cm
3である、請求項1から
5のいずれか一項に記載のポリアリーレンスルフィドの分離精製方法。
【請求項7】
前記有機溶媒は、N-メチル-2-ピロリドン、アセトン、およびイソプロピルアルコールからなる群より選ばれる1種以上である、請求項1から
6のいずれか一項に記載のポリアリーレンスルフィドの分離精製方法。
【請求項8】
前記混合液は、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、硫化ナトリウム、硫化水素ナトリウム、およびp-ジクロロベンゼンからなる群より選ばれる1種以上をさらに含む、請求項1から
7のいずれか一項に記載のポリアリーレンスルフィドの分離精製方法。
【請求項9】
前記分離したポリアリーレンスルフィド粒子の乾燥段階は、常圧または減圧条件下で行う、請求項1から
8のいずれか一項に記載のポリアリーレンスルフィドの分離精製方法。
【請求項10】
前記乾燥段階以後に得られたポリアリーレンスルフィド粒子は、有機溶媒残留量は0.5重量%以下である、請求項1から
9のいずれか一項に記載のポリアリーレンスルフィドの分離精製方法。
【請求項11】
前記乾燥段階以後に得られたポリアリーレンスルフィド粒子を水で洗浄した後に、100℃~200℃で乾燥する段階をさらに含む、請求項1から
10のいずれか一項に記載のポリアリーレンスルフィドの分離精製方法。
【請求項12】
アルカリ金属の水硫化物およびアルカリ金属の水酸化物を、水およびアミド系化合物の混合溶媒中で脱水反応(dehydration)を行い、アルカリ金属の硫化物、および水とアミド系化合物の混合溶媒を含む硫黄供給源を製造する段階;
前記硫黄供給源を含む反応器にジハロゲン化芳香族化合物およびアミド系化合物を添加し、重合反応させてアルカリ金属ハロゲン化物粒子とともにポリアリーレンスルフィド粒子を合成する段階;
前記ポリアリーレンスルフィド粒子とアルカリ金属ハロゲン化物粒子を含む重合反応生成物を有機溶媒で洗浄する段階;
前記ポリアリーレンスルフィド粒子とアルカリ金属ハロゲン化物粒子、有機溶媒を含む混合液から、デカンタ型遠心分離機を1000rpm~2500rpm条件下で用いて前記ポリアリーレンスルフィド粒子を先に沈降させて分離した後、有機溶媒とともに前記アルカリ金属ハロゲン化物粒子を沈降させて除去する段階;および
前記分離したポリアリーレンスルフィド粒子を水で洗浄する前に100℃~200℃で乾燥する段階;
を含
み、
前記ポリアリーレンスルフィド粒子は、粒子の大きさが100μm~2000μmである、ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願との相互引用]
本出願は2018年10月19日付韓国特許出願第10-2018-0125505号および2019年10月17日付韓国特許出願第10-2019-0129387号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は成形品に加工時に優れた強度、耐熱性、難燃性、および加工性を有するポリアリーレンスルフィドを重合後より効率的に分離精製する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ポリフェニレンスルフィド(polyphenylene sulfide;PPS)に代表されるポリアリーレンスルフィド(polyarylene sulfide,PAS)は、優れた強度、耐熱性、難燃性および加工性により自動車、電気・電子製品、機械類などで金属、特にアルミニウムや亜鉛などのダイカスト(die casting)金属を代替する素材として幅広く使用されている。特に、PPS樹脂の場合、流動性が良いためガラス繊維などのフィラーや補強剤と混練してコンパウンドとしての使用に有利である。
【0004】
一般的にPASはN-メチルピロリドン(NMP)などのアミド系化合物存在下の重合条件で硫黄供給源とジハロゲン化芳香族化合物を重合反応させて製造する方法が広く知られている。この製造方法の重合反応は脱塩重縮合機構であるため塩化ナトリウムなどの副生成物が多量に生成する。したがって、重合反応後には副生成物の除去工程が必要であるが、通常の処理では副生成物の完全な除去は難しく、市販の汎用のPPS製品中にはアルカリ金属含有量として数千ppm程度が含有されている。このように生成ポリマー中にアルカリ金属塩が残存していると、電気特性などの物性低下を招くなどの問題が発生する。したがって、このようなPASを原料として用いた成形品を電気電子部品の分野に適用するには、PAS中のアルカリ金属による電気特性低下が大きな障害となる。
【0005】
そのため、PAS成分から塩化ナトリウムなどの副生成物を除去する方法としては今でも様々な方法が知られている。例えば、特開昭61-220446号公報には水硫化ナトリウム、水酸化ナトリウムおよびp-ジクロロベンゼンをN-メチル-2-ピロリドン中で反応させて得られたPPSを含む反応物を水および温水で繰り返して洗浄した後、また酸性水溶液で洗浄した後にイオン交換水での洗浄を繰り返す方法が記載されている。しかし、このようにPASの反応生成段階で発生した金属化合物(副生成物)の除去のために、固形のPASおよび金属化合物を含有する混合物を水と接触させて金属化合物を水に溶かしてPASから除去する方法では、金属不純物を除去するために多量の水を用いた多段層の長時間水洗が必要であり、そのため非常に大規模でかつ複雑なプロセスが必要な短所がある。また、この水洗過程で発生する多量の水性廃水の処理も必要であり、プロセスコストや環境負荷の大きな問題がある。一方、このようなPAS成分から塩化ナトリウムなどの副生成物を除去する方法として、最近では振動メッシュ(vibrating mesh)を用いてPAS成分を濾過して分離して塩化ナトリウムを廃スラリーとともに通過させる方法が知られているが、この場合塩化ナトリウム微粉がメッシュ(mesh)孔を塞いで数回の濾過工程(filtration)を行った後には分離効率が落ちる短所がある。
【0006】
また、PASを重合した後にも、残留する未反応物質をN-メチル-2-ピロリドン(NMP)やアセトンなどの有機溶媒や水で洗浄して除去している。このように使用されたN-メチル-2-ピロリドンなどの有機溶媒は高価であるだけでなく、水溶液として排出した場合、環境汚染の主な原因になると知られており、一般的に回収精製して循環再利用されている。しかし、N-メチル-2-ピロリドンなどの有機溶媒は有機物溶解性が高いだけでなく水との相溶性にも優れて水と無限大に混合し、またPAS製造工程からの流出液のように無機塩が多量溶解している場合にはそのまま蒸留することも困難であるため、多様な分離精製方法が試みられてきた。しかし、PAS成分から塩化ナトリウムなどの副生成物を除去するために水洗浄を行う場合に、PAS洗浄に使用した有機溶媒と水が混ざって有機溶媒回収に多くのコストがかかる。
【0007】
そのため、全体工程に使用されるエネルギ消耗および水洗費用を最小化するとともに有機溶媒の回収率を増加させ、かつ連続して繰り返し適用する時にも分離効率の低下なしにポリアリーレンスルフィドをより効率的に分離精製する工程に対する開発が持続的に求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は成形品に加工時に優れた強度、耐熱性、難燃性、および加工性を有するポリアリーレンスルフィドを重合後より効率的に分離精製する方法を提供する。
【0010】
本発明はまた、上述のような分離精製工程を含むポリアリーレンスルフィドの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一実施形態によれば、ポリアリーレンスルフィド粒子とアルカリ金属ハロゲン化物粒子、有機溶媒を含む混合液から、デカンタ型遠心分離機を1000rpm~2500rpm条件下で用いて前記ポリアリーレンスルフィド粒子を先に沈降させて分離した後、有機溶媒とともに前記アルカリ金属ハロゲン化物粒子を沈降させて除去する段階;および前記分離したポリアリーレンスルフィド粒子を水で洗浄する前に100℃~200℃で乾燥する段階;を含む、ポリアリーレンスルフィドの分離精製方法が提供される。
【0012】
また、本発明の他の一実施形態によれば、アルカリ金属の水硫化物およびアルカリ金属の水酸化物を、水およびアミド系化合物の混合溶媒中で脱水反応(dehydration)を行い、アルカリ金属の硫化物、および水とアミド系化合物の混合溶媒を含む硫黄供給源を製造する段階;前記硫黄供給源を含む反応器にジハロゲン化芳香族化合物およびアミド系化合物を添加し、重合反応させてアルカリ金属ハロゲン化物粒子とともにポリアリーレンスルフィド粒子を合成する段階;前記ポリアリーレンスルフィド粒子とアルカリ金属ハロゲン化物粒子を含む重合反応生成物を有機溶媒で洗浄する段階;前記ポリアリーレンスルフィド粒子とアルカリ金属ハロゲン化物粒子、有機溶媒を含む混合液から、デカンタ型遠心分離機を1000rpm~2500rpm条件下で用いて前記ポリアリーレンスルフィド粒子を先に沈降させて分離した後、有機溶媒とともに前記アルカリ金属ハロゲン化物粒子を沈降させて除去する段階;および前記分離したポリアリーレンスルフィド粒子を水で洗浄する前に100℃~200℃で乾燥する段階;を含む、ポリアリーレンスルフィドの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0013】
前述したように、本発明によればアルカリ金属ハロゲン化物粒子による分離効率の低下なしに、粒子の大きさの差によってポリアリーレンスルフィド粒子を先に沈降分離した後に、水で洗浄する前に最適化した乾燥工程によって有機溶媒が残っていない状態で水洗浄を行って有機溶媒の回収率を増加させて回収費用を顕著に減少させ、連続して数回分離しても高い分離効率でポリアリーレンスルフィド粒子を効率的に分離精製できる優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態により実施例1でポリアリーレンスルフィドを分離精製する工程図を簡略に示す図である。
【
図2】実施例1によるデカンタ型遠心分離機でポリアリーレンスルフィド粒子を沈降分離した後に、アルカリ金属ハロゲン化物粒子を沈降させて除去する工程を例示的に示す模式図である。
【
図3】従来技術により比較例1のポリアリーレンスルフィドを分離精製する工程図を簡略に示す図である。
【
図4】比較例1による振動メッシュ(vibrating mesh)においてポリアリーレンスルフィド粒子を濾過して上部で分離精製し、アルカリ金属ハロゲン化物粒子を下部に通過させて除去する工程を例示的に示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明で、第1、第2などの用語は多様な構成要素を説明するために使用され、前記用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的にのみ使用される。
【0016】
また、本明細書で使用される用語は単に例示的な実施例を説明するために使用されたものであり、本発明を限定することを意図しない。単数の表現は文脈上明白に異なる意味を示さない限り、複数の表現を含む。本明細書で、「含む」、「備える」または「有する」などの用語は実施された特徴、数字、段階、構成要素またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定するためであり、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、構成要素、またはこれらを組み合わせたものなどの存在または付加の可能性をあらかじめ排除しないものと理解されなければならない。
【0017】
本発明は多様な変更を加えることができ、様々な形態を有することができるため、特定の実施例を例示して下記で詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定の開示形態に限定しようとするものではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれるすべての変更、均等物ないし代替物を含むものとして理解しなければならない。
【0018】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0019】
本発明はポリアリーレンスルフィド粒子とアルカリ金属ハロゲン化物粒子、有機溶媒を含む混合液からポリアリーレンスルフィド粒子を効率的に分離精製する方法が提供される。
【0020】
特に、本発明はポリアリーレンスルフィド(Polyarylene sulfide,PAS)の製造工程から生成されるポリアリーレンスルフィド粒子を有機溶媒を用いて洗浄を行った後得られた廃液からポリアリーレンスルフィド粒子を効率的に分離できるように、デカンタ型遠心分離機を用いて粒子の大きさの差によってポリアリーレンスルフィド粒子を先に沈降させて分離した後に、水で洗浄する前に最適化した乾燥工程によって有機溶媒が残っていない状態で水洗浄を行って有機溶媒の回収率を増加させて回収費用を減少させることを特徴とする。
【0021】
また、本発明では重合後生成されたポリアリーレンスルフィド粒子を前記デカンタ型遠心分離機で粒子の大きさの差によって先に沈降分離する方法で、有機溶媒とともにアルカリ金属ハロゲン化物粒子を沈降させて廃液と共に除去することができ、連続して数回分離しても分離効率の低下なしにポリアリーレンスルフィド粒子を効率的に分離回収することができる。
【0022】
具体的には、前記ポリアリーレンスルフィドの分離精製方法は先に、ポリアリーレンスルフィド粒子とアルカリ金属ハロゲン化物粒子、有機溶媒を含む混合液から、デカンタ型遠心分離機を1000rpm~2500rpm条件下で用いて前記ポリアリーレンスルフィド粒子を先に沈降させて有機溶媒とともに分離した後に前記アルカリ金属ハロゲン化物粒子を沈降させて除去する段階を含む。
【0023】
前記ポリアリーレンスルフィドの分離精製方法は、既存の振動メッシュ(vibrating mesh)でないデカンタ型遠心分離機を用いることによって、ポリアリーレンスルフィド粒子を濾過して分離精製する時アルカリ金属ハロゲン化物粒子によってメッシュ(mesh)穴が塞がれて数回の濾過工程(filtration)後には分離効率が落ちる問題を解決し、連続して数回分離しても分離効率が減少しないという特徴がある。
【0024】
特に、前記デカンタ型遠心1000rpm~2500rpmの条件下で用いることによって、通常知られている粒子の比重差による沈降により分離を行うのではなく、塩化ナトリウムなどのアルカリ金属ハロゲン化物粒子が比重が高いにも関わらず粒子の大きさの差による沈降速度差によりポリアリーレンスルフィド粒子が最も先に沈降して分離精製することを特徴とする。
【0025】
このように粒子の大きさの差による沈降速度差が示されるように、デカンタ型遠心分離機を1000rpm~2500rpm条件下で用い得る。前記デカンタ型遠心分離機を2500rpmより高い分当たり回転数(rpm)で用いる場合には、アルカリ金属ハロゲン化物の沈降が速やかになりポリアリーレンスルフィド(PAS)とともに沈降して分離効率が低下する。また、前記デカンタ型遠心分離機を1000rpm未満の条件下で用いる場合には、沈降に時間が長くかかってポリアリーレンスルフィド(PAS)内の廃液量が増える問題がある。
【0026】
この時、前記デカンタ型遠心分離機は常温~摂氏180℃の温度条件下で用い得、常圧~5barの圧力条件下で用い得る。ここで、常温とは大気圧条件下での温度(normal pressure,ambient temperature)または室温(room temperature)をいい、約20℃~約28℃、または約22℃~約26℃程度であり得る。また、常圧とは別途の減圧や加圧のない大気圧(normal pressure,atmospheric pressure)をいい、約0.95atm~約1.1atm、または約0.95bar~約1.1bar程度であり得る。
【0027】
本発明によるポリアリーレンスルフィドの分離精製工程で使用できるデカンタ型遠心分離機の具体的な種類は特に制限されない。例えば、デカンタ型遠心分離機は一般的に市販されており、本発明ではこれら市販のものを用いることができる。
【0028】
このようなデカンタ型遠心分離機(decanter centrifugal seperator)は、遠心力を用いて液液系、液固系の混合物を沈降分離、脱水、濃縮などに分離できる装置である。ただし、一般的にデカンタ型遠心分離機は粒子の比重、すなわち、密度差によって比重が大きい粒子を沈降させて分離すると知られている。しかし、本発明はこのようなデカンタ型遠心分離機を最適化条件で駆動して比重差による沈降分離でなく粒子の大きさの差によってポリアリーレンスルフィド粒子を先に沈降分離した後に前記アルカリ金属ハロゲン化物粒子を沈降させて除去することを特徴とする。
【0029】
本発明は特に、ポリアリーレンスルフィド(Polyarylene sulfide,PAS)の製造工程から生成されるポリアリーレンスルフィド粒子と多様な無機塩と不純物が含まれている廃液から、ポリアリーレンスルフィド粒子を効率的に分離しようするものである。そのため、前記デカンタ型遠心分離機に投入される混合液はポリアリーレンスルフィドの合成工程や洗浄工程で生成される廃液やその混合液であり得、重合工程の生成物であるポリアリーレンスルフィド粒子と副生成物であるアルカリ金属ハロゲン化物粒子、洗浄時使用される有機溶媒と水と共に水酸化ナトリウム(sodium hydroxide,NaOH)、酢酸ナトリウム(sodium acetate,NaOAc)、硫化ナトリウム(sodium sulfide,Na2S)、硫化水素ナトリウム(sodium hydrosulfide,NaSH)、およびp-ジクロロベンゼンなどからなる群より選ばれる1種以上をさらに含むものであり得る。
【0030】
ここで、前記ポリアリーレンスルフィド粒子の具体的な例としてはポリフェニレンスルフィド(PPS)が挙げられる。
【0031】
前記ポリアリーレンスルフィド粒子は、粒子の大きさが100マイクロメーター(μm)~2000マイクロメーター(μm)、あるいは150μm~1800μmであり得る。
【0032】
一例として、前記ポリアリーレンスルフィド粒子の大きさは、100μm、40μm、あるいは10μmなどの多様な篩孔径を有する工程規格の標準メッシュシーブ(mesh seive)を用いて測定し得る。前記ポリアリーレンスルフィド粒子の大きさを測定する具体的な条件は特に限定されるものではないが、例えば、前記ポリアリーレンスルフィド粒子を約22℃~26℃で60%~78%の相対湿度下で約3時間以上、好ましくは約6時間以上、または約9時間以上、より好ましくは15時間以上、さらに好ましくは24時間以上保管した後に粒子の大きさを測定し得る。
【0033】
また、前記ポリアリーレンスルフィド粒子は、密度が1g/cm3~1.5g/cm3、あるいは1.1g/cm3~1.45g/cm3であり得る。
【0034】
一例として、前記密度は米国材料試験学会ASTM D 1505の方法で測定し得る。
【0035】
一方、ポリアリーレンスルフィド(Polyarylene sulfide,PAS)の製造工程でポリアリーレンスルフィド粒子とともに副生成物として生成される前記アルカリ金属ハロゲン化物粒子の具体的な例としては塩化ナトリウム(NaCl)およびヨウ化ナトリウム(NaI)などが挙げられ、これらの中で一つ以上であり得る。
【0036】
前記アルカリ金属ハロゲン化物粒子は、粒子の大きさが5μm~30μm、あるいは6μm~28μmであり得る。
【0037】
また、前記アルカリ金属ハロゲン化物粒子は、密度が1.9g/cm3~3g/cm3、あるいは2g/cm3~2.8g/cm3であり得る。
【0038】
ここで、前記アルカリ金属ハロゲン化物粒子の大きさと密度は、ポリアリーレンスルフィド粒子と同様の方法により測定し得る。
【0039】
また、ポリアリーレンスルフィド(Polyarylene sulfide,PAS)の製造工程から生成されるポリアリーレンスルフィド粒子と副生成物であるアルカリ金属ハロゲン化物粒子とともに含まれる前記有機溶媒は洗浄工程で使用されたものであり、前記有機溶媒の具体的な例としては、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、アセトン、およびイソプロピルアルコール(IPA)などが挙げられ、これらの中で一つ以上であり得る。
【0040】
一方、本発明の一実施形態により、前述したようにデカンタ型遠心分離機を用いてポリアリーレンスルフィド粒子と有機溶媒を分離した後に、前記分離したポリアリーレンスルフィド粒子を水で洗浄する前に1次乾燥工程によって有機溶媒などを除去する段階を行う。
【0041】
特に、前記ポリアリーレンスルフィド粒子の水洗前1次乾燥工程は、約100℃~約200℃の条件下で水洗浄に先立ち行うことによって、有機溶媒が残っていない状態で水洗浄を行って有機溶媒の回収率を増加させて回収費用を減少させることができる。
【0042】
前記1次乾燥工程は約100℃~約200℃で行い、好ましくは約120℃~約190℃、あるいは約135℃~約180℃で行い得る。特に、前記1次乾燥工程は、重合や洗浄に使用した有機溶媒を蒸発させるために約100℃以上で行い、好ましくは約120℃以上、あるいは約135℃以上で行い得る。また、前記1次乾燥工程で高温の空気との接触によるポリアリーレンスルフィド(PAS)の架橋化を防ぐためには約200℃以下で行い、好ましくは約190℃以下、あるいは約180℃以下で行い得る。
【0043】
また、前記1次乾燥工程は常圧または減圧条件下で行い得る。常圧とは前述したとおりであり、減圧とは常圧未満の圧力条件をいう。一例として、前記1次乾燥工程は4×10-14bar~1.1bar、あるいは4×10-10bar~1.1bar、あるいは4×10-6bar~1.1barの圧力条件下で行い得る。特に、好ましくは、有機溶媒の蒸発をさらに容易にし、架橋化が起きないようにするために減圧条件下で行い得る。
【0044】
本発明では上述したようなポリアリーレンスルフィド粒子の水洗前1次乾燥工程によって有機溶媒が残っていない状態で水洗浄を行い得、前記乾燥後で得られたポリアリーレンスルフィド粒子に有機溶媒残留量は0.5重量%以下、あるいは0.3重量%以下、あるいは0.1重量%以下であることを特徴とする。
【0045】
引き続き、上記した1次乾燥工程によって有機溶媒などを除去した後にポリアリーレンスルフィド粒子に対する水洗浄工程を1回または2回以上繰り返してさらに行い得る。また、前記乾燥したポリアリーレンスルフィド粒子を水で洗浄した後には、水などの溶媒を除去するために2次乾燥工程をさらに行い得る。前記2次乾燥工程は約100℃~約200℃、あるいは130℃~約190℃、あるいは約140℃~約180℃で行い得る。特に、前記2次乾燥工程は、洗浄工程後の水などの溶媒を蒸発させるために約100℃以上、あるいは約130℃以上、あるいは約140℃以上で行い得る。また、前記2次乾燥工程で高温の空気との接触によるポリアリーレンスルフィド(PAS)の架橋化を防ぐためには約200℃以下で行い、好ましくは約190℃以下、あるいは約180℃以下で行い得る。
【0046】
また、前記2次乾燥工程は常圧または減圧条件下で行い得る。常圧とは前述したとおりであり、減圧とは常圧未満の圧力条件をいう。一例として、前記2次乾燥工程は4×10-14bar~1.1bar、あるいは4×10-10bar~1.1bar、あるいは4×10-6bar~1.1barの圧力条件下で行い得る。特に、水などの溶媒蒸発をさらに容易にし、架橋化が起きないようにするために減圧条件下で行い得る。
【0047】
上述したようなポリアリーレンスルフィドの分離精製方法によりデカンタ型遠心分離機を用いて粒子の大きさの差によってポリアリーレンスルフィド粒子を先に沈降分離した後に、水で洗浄する前に最適化した乾燥工程によって有機溶媒が残っていない状態で水洗浄を行って有機溶媒の回収率を増加させて回収費用を顕著に減少させることができる。
【0048】
特に、本発明の分離精製工程により分離精製されたポリアリーレンスルフィド(PAS)粒子に対する回収収率は、約90%以上、あるいは約95%以上、あるいは約98%以上であり、水洗浄工程によって得られた洗浄水内の有機溶媒の残留含有量は約0.5重量%以下、あるいは約0.1重量%以下、あるいは0.05重量%以下であり得る。
【0049】
一方、本発明の他の一実施形態によれば、上述したような分離精製工程を含むポリアリーレンスルフィドの製造方法が提供される。
【0050】
前記ポリアリーレンスルフィドの製造方法は、アルカリ金属の水硫化物およびアルカリ金属の水酸化物を、水およびアミド系化合物の混合溶媒中で脱水反応(dehydration)を行い、アルカリ金属の硫化物、および水とアミド系化合物の混合溶媒を含む硫黄供給源を製造する段階(1段階);前記硫黄供給源を含む反応器にジハロゲン化芳香族化合物およびアミド系化合物を添加し、重合反応させてアルカリ金属ハロゲン化物粒子とともにポリアリーレンスルフィド粒子を合成する段階(2段階);前記ポリアリーレンスルフィド粒子とアルカリ金属ハロゲン化物粒子を含む重合反応生成物を有機溶媒で洗浄する段階(3段階);前記ポリアリーレンスルフィド粒子とアルカリ金属ハロゲン化物粒子、有機溶媒を含む混合液から、デカンタ型遠心分離機を1000rpm~2500rpm条件下で用いて前記ポリアリーレンスルフィド粒子を先に沈降させて分離した後、有機溶媒とともに前記アルカリ金属ハロゲン化物粒子を沈降させて除去する段階(4段階);および前記分離したポリアリーレンスルフィド粒子を水で洗浄する前に100℃~200℃で乾燥する段階(5段階);を含むことを特徴とする。
【0051】
本発明の他の一実施形態による前記ポリアリーレンスルフィドの製造方法を各段階別に説明する。
【0052】
上述した第1段階は硫黄供給源を準備する段階である。
【0053】
前記硫黄供給源はアルカリ金属の水硫化物、アルカリ金属の水酸化物を、水およびアミド系化合物の混合溶媒中で脱水反応(dehydration)を行って製造されたものである。したがって、前記硫黄供給源はアルカリ金属の水硫化物とアルカリ金属の水酸化物の反応によって生成されたアルカリ金属の硫化物と共に、脱水反応後残留する水、アミド系化合物の混合溶媒を含み得る。
【0054】
前記アルカリ金属の硫化物は反応時使用されるアルカリ金属の水硫化物の種類によって決定され得、具体的な例としては硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化ルビジウムまたは硫化セシウムなどが挙げられ、これらのいずれか一つまたは二つ以上の混合物が含まれ得る。
【0055】
前記アルカリ金属の水硫化物とアルカリ金属の水酸化物の反応による硫黄供給源の製造時、使用可能なアルカリ金属の水硫化物の具体的な例としては硫化水素リチウム、硫化水素ナトリウム、硫化水素カリウム、硫化水素ルビジウムまたは硫化水素セシウムなどが挙げられる。これらのいずれか一つまたは二つ以上の混合物が使用され得、これらの無水物または水和物も使用可能である。
【0056】
また、前記アルカリ金属の水酸化物の具体的な例としては水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、または水酸化セシウムなどが挙げられ、これらのいずれか一つまたは二つ以上の混合物が使用され得る。前記アルカリ金属の水酸化物はアルカリ金属の水硫化物1当量に対して0.90~2.0の当量比、より具体的には1.0~1.5の当量比、さらに具体的には1.0~1.2の当量比で使用され得る。
【0057】
一方、本発明において、当量はモル当量(eq/mol)を意味する。
【0058】
また、前記アルカリ金属の水硫化物とアルカリ金属の水酸化物の反応による硫黄供給源の製造時、重合助剤として重合反応を促進させて短時間内にポリアリーレンスルフィドの重合度を高めることができるアルカリ金属の有機酸塩が投入され得る。前記アルカリ金属の有機酸塩は具体的には、酢酸リチウム、または酢酸ナトリウムなどであり得、これらのいずれか一つまたは二つ以上の混合物が使用され得る。前記アルカリ金属の有機酸塩はアルカリ金属の水硫化物1当量に対して0.01~1.0、より具体的には0.01~0.8、さらに具体的には0.05~0.5の当量比で使用され得る。
【0059】
上記したアルカリ金属の水硫化物とアルカリ金属の水酸化物の反応は、水とアミド系化合物の混合溶媒中で行われるが、この際、前記アミド系化合物の具体的な例としてはN,N-ジメチルホルムアミドまたはN,N-ジメチルアセトアミドなどのアミド化合物;N-メチル-2-ピロリドン(NMP)またはN-シクロヘキシル-2-ピロリドンなどのピロリドン化合物;N-メチル-ε-カプロラクタムなどのカプロラクタム化合物;1,3-ジアルキル-2-イミダゾリジノンなどのイミダゾリジノン化合物;テトラメチル尿素などの尿素化合物;または、ヘキサメチルリン酸トリアミドなどのリン酸アミド化合物などが挙げられ、これらのいずれか一つまたは二つ以上の混合物が使用され得る。この中でも反応効率およびポリアリーレンスルフィド製造のための重合時重合溶媒への共溶媒効果を考慮すると前記アミド系化合物はより具体的にはN-メチル-2-ピロリドン(NMP)であり得る。
【0060】
また、前記水はアミド系化合物1当量に対して約1~8の当量比で使用され得、より具体的には約1.5~5、さらに具体的には約2.5~5の当量比で使用され得る。
【0061】
一方、前記第1段階で、アルカリ金属の水硫化物およびアルカリ金属の水酸化物などを含む反応物は脱水反応(dehydration)によりアルカリ金属の硫化物を生成させることができる。この時、前記脱水反応は約130℃~205℃の温度範囲で、約100rpm~約500rpmの速度で攪拌して行われ得る。より具体的には約175℃~200℃の温度範囲で約100rpm~約300rpmの速度で攪拌して行われ得る。この時、前記脱水反応の時間は約30分~6時間以内、または約1時間~3時間以内で行われ得る。
【0062】
このような脱水工程の間に反応物中、水などの溶媒が蒸留などにより除去され得、水と共にアミド系化合物の一部が排出され、また、硫黄供給源内に含まれた一部の硫黄が脱水工程の間の熱によって水と反応して硫化水素気体として揮散され得る。
【0063】
一方、前記のようなアルカリ金属の水硫化物、アルカリ金属の水酸化物およびアルカリ金属塩の反応結果として、アルカリ金属の硫化物が水とアミド系化合物の混合溶媒中に固相に析出される。そのため、本発明によるポリアリーレンスルフィド製造時の硫黄供給源として、上記したアルカリ金属の水硫化物とアルカリ金属の水酸化物を反応させて製造した硫黄供給源が使用される場合、硫黄供給源のモル比は反応時投入したアルカリ金属の水硫化物のモル比とする。
【0064】
引き続き、上記した反応結果として生成されたアルカリ金属の硫化物を含む反応生成物中の水などの溶媒を除去するために、脱水工程が行われる。前記脱水工程はこの分野に良く知られた方法により行われ得るため、その条件は大きく制限されず、具体的な工程条件は前述したとおりである。
【0065】
また、前記脱水工程の間に硫黄供給源内に含まれた硫黄が水と反応して硫化水素とアルカリ金属水酸化物が生成され、生成された硫化水素は揮散するので、脱水工程の間に系外に揮散する硫化水素によって脱水工程後系内に残存する硫黄供給源中の硫黄の量は減少し得る。一例として、アルカリ金属水硫化物を主成分とする硫黄供給源を使用する場合、脱水工程後に系内に残存する硫黄の量は、投入した硫黄供給源内の硫黄のモル量から系外に揮散した硫化水素のモル量を引いた値と同一である。そのため系外に揮散した硫化水素の量から脱水工程後系内に残存する硫黄供給源中に含まれた有効硫黄の量を定量することが必要である。具体的には、前記脱水工程は有効硫黄1モルに対して水が1~5のモル比、より具体的には1.5~4、さらに具体的には1.75~3.5のモル比になるまで行われ得る。前記脱水工程によって硫黄供給源内の水分量が過度に減少する場合には重合工程に先立ち水を添加して水分量を調節することができる。
【0066】
そのため、上記したようなアルカリ金属の水硫化物とアルカリ金属の水酸化物の反応および脱水によって製造された硫黄供給源は、アルカリ金属の硫化物と共に、水およびアミド系化合物の混合溶媒を含み得、前記水は硫黄供給源内に含まれた硫黄1モルに対して具体的には1.75~3.5のモル比で含まれ得る。また、前記硫黄供給源は硫黄と水の反応によって生成されたアルカリ金属の水酸化物をさらに含み得る。
【0067】
一方、本発明の一実施形態により、第2段階は前記硫黄供給源をジハロゲン化芳香族化合物と重合反応させてポリアリーレンスルフィドを製造する段階である。
【0068】
前記ポリアリーレンスルフィドの製造のために使用可能なジハロゲン化芳香族化合物は、芳香族環での二つの水素がハロゲン原子に置換された化合物として、具体的な例としてはo-ジハロベンゼン、m-ジハロベンゼン、p-ジハロベンゼン、ジハロトルエン、ジハロナフタレン、ジハロビフェニル、ジハロ安息香酸、ジハロジフェニルエーテル、ジハロジフェニルスルホン、ジハロジフェニルスルホキシドまたはジハロジフェニルケトンなどが挙げられ、これらのいずれか一つまたは二つ以上の混合物が使用され得る。前記ジハロゲン化芳香族化合物において、ハロゲン原子はフッ素、塩素、臭素またはヨウ素であり得る。この中でもポリアリーレンスルフィドの製造時反応性および副反応生成減少効果などを考慮すると、p-ジクロロベンゼン(p-DCB)が使用され得る。
【0069】
前記ジハロゲン化芳香族化合物は硫黄供給源1当量を基準として約0.8~1.2の当量で投入され得る。上記した含有量の範囲内で投入される場合、製造されるポリアリーレンスルフィドの溶融粘度低下およびポリアリーレンスルフィド内に存在するクロリン含有量の増加に対する恐れなしに、優れた物性的特徴を有するポリアリーレンスルフィドを製造することができる。硫黄供給源とジハロゲン化芳香族化合物の添加量制御による優れた改善効果を考慮すると、より具体的にはジハロゲン化芳香族化合物は約0.9~1.1の当量で投入され得る。
【0070】
また、前記第2段階を行う前に、ジハロゲン化芳香族化合物の気化を防ぐために前記硫黄供給源を含む反応器の温度を約150℃~200℃の温度で下降させる段階をさらに含み得る。
【0071】
また、上記した硫黄供給源とジハロゲン化芳香族化合物の重合反応は非プロトン性極性有機溶媒として、高温でアルカリに対して安定したアミド系化合物の溶媒中で行われ得る。
【0072】
前記アミド系化合物の具体的な例は、先立って説明したとおりであり、例示した化合物の中でも反応効率などを考慮すると、より具体的には前記アミド系化合物はN-メチル-2-ピロリドン(NMP)またはN-シクロヘキシル-2-ピロリドンなどのピロリドン化合物であり得る。
【0073】
前記第1段階での硫黄供給源中に含まれたアミド系化合物が共溶媒として作用できるので、第2段階で添加されるアミド系化合物は重合反応系内に存在するアミド系化合物に対する水(H2O)のモル比(水/アミド系化合物のモル比)が約0.85以上になるようにする量で添加され得る。
【0074】
また、前記重合反応時分子量調節剤、架橋剤など重合反応や分子量を調節するためのその他添加剤が最終的に製造されるポリアリーレンスルフィドの物性および製造収率を低下させない範囲内の含有量でさらに添加されてもよい。
【0075】
前記硫黄供給源とジハロゲン化芳香族化合物の重合反応は約200℃~300℃で行われ得る。または上記した温度範囲内で温度を変化させて多段階に行われることもできる。具体的には約200℃以上約250℃未満での1次重合反応後、連続して1次重合反応時の温度より高い温度で、具体的には約250℃~約300℃で2次重合反応が行われ得る。
【0076】
上記した重合反応の結果として生成されたポリアリーレンスルフィドは粒子形態で生成され、前記ポリアリーレンスルフィド粒子とともに副生成物としてアルカリ金属ハロゲン化物粒子が生成される。
【0077】
このように生成されたポリアリーレンスルフィド粒子とアルカリ金属ハロゲン化物粒子に関連する特徴は前述したとおりであり、具体的な説明は省略する。
【0078】
一方、本発明の一実施形態により、第3段階は前記重合反応の結果として生成された反応生成物中で重合後生成されるオリゴマー(oligomer)など不純物除去のために有機溶媒を用いて洗浄する段階である。
【0079】
前記有機溶媒の具体的な例としては、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、アセトン、およびイソプロピルアルコール(IPA)などが挙げられ、これらの一つ以上であり得る。
【0080】
このように有機溶媒を使用した洗浄工程はこの分野に良く知られた方法により行われ得るため、その条件は大きく制限されない。
【0081】
一方、本発明の一実施形態により、第4段階は前記重合反応の結果として生成された反応生成物からポリアリーレンスルフィド粒子を先に沈降分離精製する段階である。
【0082】
前記ポリアリーレンスルフィド粒子の分離精製のために、前記ポリアリーレンスルフィド粒子とアルカリ金属ハロゲン化物粒子、アミド系化合物を含む混合液をデカンタ型遠心分離機に投入し、前記デカンタ型遠心分離機を1000rpm~2500rpm条件下で稼動することによって、前記ポリアリーレンスルフィド粒子を先に沈降分離した後にアルカリ金属ハロゲン化物粒子を沈降させて除去する。
【0083】
本発明の他の一実施形態で、前記ポリアリーレンスルフィド粒子をデカンタ型遠心分離機を用いて沈降分離する工程に関連する特徴は前述したとおりであり、具体的な説明は省略する。
【0084】
一方、本発明の一実施形態により、第5段階は前述したようにデカンタ型遠心分離機を用いてポリアリーレンスルフィド粒子と有機溶媒を分離した後に、前記分離したポリアリーレンスルフィド粒子を水で洗浄する前に1次乾燥工程によって有機溶媒などを除去する段階である。
【0085】
特に、前記ポリアリーレンスルフィド粒子の水洗前1次乾燥工程は、約100℃~約200℃で水洗浄に先立ち行うことによって、有機溶媒が残っていない状態で水洗浄を行って有機溶媒の回収率を増加させて回収費用を減少させることができる。
【0086】
本発明の他の一実施形態で、前記ポリアリーレンスルフィド粒子を水で洗浄する前に1次乾燥させる工程に関連する特徴は前述したとおりであり、具体的な説明は省略する。
【0087】
以後分離精製されたポリアリーレンスルフィド粒子については通常の方法により、水などを用いた洗浄や濾過、乾燥工程が選択的にさらに行われ得る。
【0088】
前記ポリアリーレンスルフィドの具体的な製造方法は後述する実施例を参照し得る。しかし、ポリアリーレンスルフィドの製造方法が本明細書に記述した内容に限定されるものではなく、前記製造方法は本発明が属する技術分野で通常採用する段階を追加で採用し得、前記製造方法の段階(ら)は通常変更可能な段階(ら)によって変更され得る。
【0089】
以下、本発明の理解を深めるために好ましい実施例を提示する。しかし、下記の実施例は本発明をより容易に理解するために提供されるだけであり、 本発明の内容はこれによって限定されるものではない。
【0090】
実施例1
1-1.ポリフェニレンスルフィドの製造
PPSポリマーを作るために70%硫化水素ナトリウム(NaSH)と水酸化ナトリウム(NaOH)を1:1.05の当量割合で混合して硫化ナトリウムを製造する。この時、0.4当量の酢酸ナトリウム(CH3COONa)粉末および1.65当量のN-メチル-2-ピロリドン(NMP)、4.72当量の脱イオン水(DI water)を反応器に添加した。ここで、当量はモル当量(eq/mol)を意味する。この時、固体試薬を先に入れてNMP、DI water順に投入した。それから、反応器を約150rpmで攪拌し、約195℃まで1時間40分間加熱して脱水させた。その後、反応器の温度を約175℃まで下降させ、硫化水素ナトリウムの1.02倍当量のパラ-ジクロロベンゼン(p-DCB)と1.35当量のN-メチル-2-ピロリドン(NMP)を反応器に添加した。その後反応混合物は、前段反応としては摂氏約230℃まで加熱して約2時間の間反応させ、再び後段反応として摂氏約255℃まで加熱して約2時間反応させた後約3当量の蒸溜水を添加して約5分の間攪拌した。そして、その結果物であるPPSポリマー粒子を含むスラリー500gを得た。前記スラリーにはポリアリーレンスルフィド粒子とアルカリ金属ハロゲン化物粒子、アミド系化合物が含まれている。
【0091】
1-2.ポリフェニレンスルフィドの分離精製回収
前記1-1段階で生成されたスラリー中100gを分取してNMP100gずつを使用して1回洗浄を行った後得られた混合液に対して、
図1に示すようにデカンタ型遠心分離機を用いて濾過工程(filtration)を行ってPPSウエットケーキ(wet cake)にポリアリーレンスルフィドを分離した。この時、前記デカンタ型遠心分離機は常温常圧条件下で1000rpmで使用した。
【0092】
このように得られたPPSウエットケーキ(wet cake)は水洗浄に先立ち温度摂氏150℃で圧力約0.15bar以下の条件下で1次減圧乾燥(vacuum drying)工程を行って乾燥PPS(Dry PPS)を作った。前記乾燥PPS(Dry PPS)で有機溶媒残留量は0.5重量%以下になった。以後に水50gずつを使用して4回繰り返し洗浄を行った後温度摂氏150℃で圧力約0.15bar以下の条件下で2次減圧乾燥(vacuum drying)工程を行った。
【0093】
以上の過程を繰り返して生成されたPPSスラリー100gを濾過するためにかかる時間は投入などの追加時間を含んで合計0.3時間であり、分離精製したPPS粒子の総量は約15.2gであり、回収後廃水に残っているPPS微粉を微細フィルタ(filter)を用いて追加で回収した分量の重量は約0.31gであった。そのため、このように回収された全体PPS粒子総含有量中の分離精製されたPPS粒子の回収収率は約98%であることを確認した。また、最後の乾燥段階以前に行った水洗浄工程によって集められた洗浄水内のNMP含有量は500ppm(0.05重量%)であることを確認した。
【0094】
比較例1
前記実施例1の1-1段階で生成されたスラリー中100gを分取してNMP50gを使用して1回洗浄を行った後得られた混合液に対する分離精製工程を行うことにおいて、
図3に示すようにデカンタ型遠心分離機の代わりに振動メッシュ(vibrating mesh、
図4参照)を用いて常温、常圧条件下で濾過工程(filtration)を行ってPPSウエットケーキ(wet cake)を得て別途の1次乾燥工程なしに水洗浄工程を行ったことを除いては実施例1と同様の方法でポリアリーレンスルフィドの分離精製工程を行った。
【0095】
以上の過程を繰り返して生成されたPPSスラリー100gを濾過するためにかかる時間は合計0.5時間であり、分離精製したPPS粒子の総量は約14.7gで回収収率は約94.8%であった。また、最後の乾燥段階以前に行った水洗浄工程によって集められた洗浄水内のNMP含有量は4重量%で分離効率が大きく低下したことがわかる。
【0096】
比較例2
前記実施例1の1-1段階で生成されたスラリー中100gを分取してNMP50gを使用して1回洗浄を行った後得られた混合液に対する分離精製工程を行うことにおいて、真空乾燥の代わりにトレー(tray)で摂氏90℃常圧乾燥を行ったことを除いては実施例1と同様の方法でポリアリーレンスルフィドの分離精製工程を行った。
【0097】
以上の過程を繰り返して生成されたPPSスラリー100gを濾過するためにかかる時間は投入などの追加時間を含んで合計0.3時間であり、分離精製したPPS粒子の総量は約15.4gであり、回収後廃水に残っているPPS微粉を微細フィルタ(filter)を用いて追加で回収した分量の重量は約0.11gであった。そのため、このように回収された全体PPS粒子総含有量中の分離精製されたPPS粒子の回収収率は約98%であることを確認した。また、最後の乾燥段階以前に行った水洗浄工程によって集められた洗浄水内のNMP含有量は4000ppm(0.4重量%)で分離効率が低下したことがわかる。