(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-30
(45)【発行日】2022-10-11
(54)【発明の名称】オリゴマーの製造方法およびオリゴマーの製造装置
(51)【国際特許分類】
C07C 2/06 20060101AFI20221003BHJP
C07C 11/107 20060101ALI20221003BHJP
C07C 11/02 20060101ALI20221003BHJP
【FI】
C07C2/06
C07C11/107
C07C11/02
(21)【出願番号】P 2021544087
(86)(22)【出願日】2020-08-07
(86)【国際出願番号】 KR2020010469
(87)【国際公開番号】W WO2021033972
(87)【国際公開日】2021-02-25
【審査請求日】2021-04-07
(31)【優先権主張番号】10-2019-0102503
(32)【優先日】2019-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ウン・キョ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ミ・キュン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジュン・ホ・シン
(72)【発明者】
【氏名】ヘ・ビン・キム
【審査官】▲高▼岡 裕美
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0185362(US,A1)
【文献】国際公開第2017/057452(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応器に単量体を含むフィードストリームを供給し、オリゴマー化反応を実施するステップと、
前記反応器の第1排出ストリームを第1分離装置に供給し、前記反応器の第2排出ストリームを第2分離装置に供給するステップと、
前記第2分離装置で単量体を上部排出ストリームとして回収するステップと、
前記第2分離装置の単量体を含む前記上部排出ストリームを単量体溶解装置に供給し、前記単量体溶解装置に供給される溶媒に溶解するステップと、
前記単量体溶解装置の排出ストリームを前記反応器に供給するステップとを含
み、
前記反応器の前記第2排出ストリームを第3分離装置に供給し、前記第3分離装置の上部排出ストリームを反応器に供給し、前記第3分離装置の下部排出ストリームは第2分離装置に供給する、オリゴマーの製造方法。
【請求項2】
前記第2分離装置の前記上部排出ストリームは、気相ストリームである、請求項1に記載のオリゴマーの製造方法。
【請求項3】
前記溶媒は、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、オクタン、シクロオクタン、デカン、ドデカン、ベンゼン、キシレン、1,3,5-トリメチルベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンおよび卜リクロロベンゼンからなる群から選択される1種以上である、請求項1または2に記載のオリゴマーの製造方法。
【請求項4】
前記単量体溶解装置の前記排出ストリームは、前記溶媒に溶解された単量体を含む液相ストリームである、請求項1から3のいずれか一項に記載のオリゴマーの製造方法。
【請求項5】
前記単量体溶解装置の前記排出ストリームの温度は、-10℃~50℃の範囲である、請求項1から4のいずれか一項に記載のオリゴマーの製造方法。
【請求項6】
単量体溶解装置の前記排出ストリームの圧力は、10bar~45barの範囲である、請求項1から5のいずれか一項に記載のオリゴマーの製造方法。
【請求項7】
下記一般式1を満たす、請求項1から6のいずれか一項に記載のオリゴマーの製造方法。
[一般式1]
M2/M1*100≧80重量%
前記一般式1中、M1は、前記第2分離装置の前記上部排出ストリーム内の単量体の含量であり、M2は、前記単量体溶解装置の前記排出ストリーム内の単量体の含量である。
【請求項8】
前記単量体はエチレンであり、前記オリゴマーはアルファオレフィンである、請求項1から
7のいずれか一項に記載のオリゴマーの製造方法。
【請求項9】
供給された単量体を含むフィードストリームをオリゴマー化反応させ、第1排出ストリームを第1分離装置に供給し、第2排出ストリームを第2分離装置に供給する反応器と、
前記反応器の前記第1排出ストリームの供給を受ける第1分離装置と、
前記反応器の前記第2排出ストリームの供給を受け、上部排出ストリームを単量体溶解装置に供給する第2分離装置と、
前記供給された前記第2分離装置の前記上部排出ストリームを、供給された溶媒で溶解し、排出ストリームを前記反応器に供給する単量体溶解装置とを含
み、
前記反応器の前記第2排出ストリームの供給を受け、下部排出ストリームを前記第2分離装置に供給する第3分離装置をさらに含む、オリゴマーの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年8月21日付けの韓国特許出願第10-2019-0102503号に基づく優先権の利益を主張し、該当韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、オリゴマーの製造方法およびオリゴマーの製造装置に関し、より詳細には、オリゴマーの製造工程で回収された単量体を効率的にリサイクルするオリゴマーの製造方法およびオリゴマーの製造装置に関する。
【背景技術】
【0003】
アルファオレフィン(alpha-olefin)は、共単量体、洗浄剤、潤滑剤、可塑剤などに使用される重要な物質として商業的に広く使用され、特に、1-ヘキセンと1-オクテンは、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)の製造の際、ポリエチレンの密度を調節するための共単量体として多く使用されている。
【0004】
前記1-ヘキセンおよび1-オクテンのようなアルファオレフィンは、代表的にエチレンのオリゴマー化反応により製造されている。前記エチレンのオリゴマー化反応は、エチレンを反応物として使用して、エチレンのオリゴマー化反応(三量体化反応または四量体化反応)によって行われ、前記反応により生成された生成物は、目的とする1-ヘキセンおよび1-オクテンを含む多成分炭化水素混合物だけでなく、未反応のエチレンを含んでいる。前記生成物は、蒸留塔を介して分離工程を経ることになり、この際、未反応のエチレンは回収され、エチレンのオリゴマー化反応に再使用されている。
【0005】
未反応のエチレンは、気相または液相で回収され得る。未反応のエチレンを回収し、エチレンのオリゴマー化反応に再使用するためには、前記回収された未反応のエチレンストリームの圧力を反応器の圧力まで高めなければならない。従来、未反応のエチレンストリームをポンプを用いて反応器の圧力まで高めるためには、未反応のエチレンストリームが液相でなければならないが、そのためには、エチレンの低い沸点によって非常に低い温度の冷媒を使用して、未反応のエチレンストリームを-25℃以下に冷却しなければならない。あるいは、気相で未反応のエチレンを回収する場合、反応器に再使用するために回収された未反応のエチレンストリームの圧力を反応器の圧力まで高めるために、圧縮器を別に設置しなければならない。
【0006】
このように、従来の未反応のエチレンを回収し、オリゴマー化反応に再使用するための方法は、非常に低い温度の冷媒を使用するか、圧縮器を別に設置するなど、投資費用が高く、経済性に劣るという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、上記発明の背景技術で言及した問題を解決するために、投資費用が削減されたオリゴマーの製造方法およびオリゴマーの製造装置を提供することである。
【0008】
すなわち、本発明は、オリゴマーの製造工程で、未反応のエチレンを回収してオリゴマー化反応に再使用するにあたって、非常に低い温度の冷媒の使用や、別の圧縮器を設置する必要がなく、投資費用が削減され、経済性が向上したオリゴマーの製造方法およびオリゴマーの製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するための本発明の一実施形態によると、本発明は、反応器に単量体を含むフィードストリームを供給し、オリゴマー化反応を実施するステップと、前記反応器の第1排出ストリームを第1分離装置に供給し、前記反応器の第2排出ストリームを第2分離装置に供給するステップと、前記第2分離装置で単量体を上部排出ストリームとして回収するステップと、前記第2分離装置の単量体を含む上部排出ストリームを単量体溶解装置に供給し、単量体溶解装置に供給される溶媒に溶解するステップと、前記単量体溶解装置の排出ストリームを反応器に供給するステップとを含むオリゴマーの製造方法を提供する。
【0010】
また、本発明は、供給された単量体を含むフィードストリームをオリゴマー化反応させ、第1排出ストリームを第1分離装置に供給し、第2排出ストリームを第2分離装置に供給する反応器と、前記反応器の第1排出ストリームの供給を受ける第1分離装置と、前記反応器の第2排出ストリームの供給を受け、上部排出ストリームを単量体溶解装置に供給する第2分離装置と、前記供給された第2分離装置の上部排出ストリームを、供給された溶媒で溶解し、排出ストリームを反応器に供給する単量体溶解装置とを含むオリゴマーの製造装置を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のオリゴマーの製造方法およびオリゴマーの製造装置によると、回収された未反応の単量体を溶媒に溶解し、反応器に供給することで、既存の未反応の単量体の回収工程で求められていた低温の冷媒およびさらなる圧縮器の設置を必要としない。
【0012】
また、回収された未反応の単量体を溶媒に溶解するときに、比較的高い温度で未反応の単量体を溶解することができ、未反応の単量体が溶解されている溶媒は液相であるため、ポンプの使用だけでも反応器の圧力まで高めて反応器に再投入することで、未反応の単量体を再使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態によるオリゴマーの製造方法による工程流れ図である。
【
図2】本発明の一実施形態によるオリゴマーの製造方法による工程流れ図である。
【
図3】比較例によるオリゴマーの製造方法による工程流れ図である。
【
図4】比較例によるオリゴマーの製造方法による工程流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の説明および特許請求の範囲で使用されている用語や単語は、通常的または辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるという原則に則って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念で解釈すべきである。
【0015】
本発明において、「ストリーム(stream)」という用語は、工程内流体(fluid)の流れを意味し得、また、配管内で流れる流体自体を意味し得る。具体的には、前記「ストリーム」は、各装置を連結する配管内で流れる流体自体および流体の流れを同時に意味し得る。また、前記流体は、気体(gas)または液体(liquid)を意味し得る。
【0016】
以下、本発明に関する理解を容易にするために、本発明をより詳細に説明する。
【0017】
本発明によると、オリゴマーの製造方法が提供される。前記オリゴマーの製造方法であって、反応器に単量体を含むフィードストリームを供給し、オリゴマー化反応を実施するステップと、前記反応器の第1排出ストリームを第1分離装置に供給し、前記反応器の第2排出ストリームを第2分離装置に供給するステップと、前記第2分離装置で単量体を上部排出ストリームとして回収するステップと、前記第2分離装置の単量体を含む上部排出ストリームを単量体溶解装置に供給し、単量体溶解装置に供給される溶媒に溶解するステップと、前記単量体溶解装置の排出ストリームを反応器に供給するステップとを含むオリゴマーの製造方法を提供することができる。
【0018】
本発明の一実施形態によると、反応器に単量体を含むフィードストリームを供給し、オリゴマー化反応を実施するステップは、単量体を含むフィードストリームが反応器に供給され、前記反応器の下部で液相で単量体のオリゴマー化反応が行われ得る。前記オリゴマー化反応は、単量体が小重合される反応を意味し得る。重合される単量体の個数に応じて、三量化(trimerization)、四量化(tetramerization)と称し、これをまとめて多量化(multimerization)とする。
【0019】
本発明の一実施形態によると、前記単量体はエチレンであり、オリゴマーはアルファオレフィンであり得る。アルファオレフィンは、共単量体、洗浄剤、潤滑剤、可塑剤などに使用される重要な物質として商業的に広く使用され、特に、1-ヘキセンと1-オクテンは、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)の製造の際、ポリエチレンの密度を調節するための共単量体として多く使用される。前記1-ヘキセンおよび1-オクテンのようなアルファオレフィンは、例えば、エチレンの三量体化反応または四量体化反応により製造することができる。
【0020】
本発明の一実施形態によると、前記単量体のオリゴマー化反応ステップは、連続工程に適する反応器で行われ得、好ましくは、連続攪拌式反応器(CSTR)およびプラグフロー反応器(PFR)からなる群から選択される1種以上の反応器を含む反応システム下で行われ得る。
【0021】
本発明の一実施形態によると、前記単量体のオリゴマー化反応は、前記反応システムと通常の接触技術を応用して溶媒の存在または不在の下で均質液相反応、触媒システムが一部溶解されていないか全部溶解されていない形態であるスラリー反応、2相液体/液体反応、または生成物が主媒質として働くバルク相反応またはガス相反応で行われ得る。好ましくは、前記単量体のオリゴマー化反応ステップは、均質液相反応で行われ得る。
【0022】
本発明の一実施形態によると、前記オリゴマー化反応を実施するステップは、10℃~180℃、30℃~150℃または50℃~120℃の温度下で行われ得る。また、前記オリゴマー化反応を実施するステップは、15bar~100bar、20bar~80barまたは25bar~60barの圧力下で行われ得る。前記温度範囲および圧力範囲内でエチレンをオリゴマー化するときに、所望のアルファオレフィンに対して優れた選択度を有することができ、副産物の量が低減し、連続工程の運用上の効率を上昇させ、コストを削減することができる。
【0023】
本発明の一実施形態によると、前記単量体を含むフィードストリームは、気相の単量体、液相の単量体および溶媒を含むことができる。
【0024】
前記フィードストリームに含まれる気相の単量体は、例えば、ナフサ熱分解(NCC:Naphtha Cracking center)工程で分離したエチレン単量体を直接または貯蔵ステップを経た後、単量体を含むフィードストリームに供給され得る。また、前記気相の単量体は、オリゴマーの製造工程内で回収されたストリームを含むことができる。
【0025】
前記フィードストリームとして反応器に供給される液相の単量体は、オリゴマーの製造工程内で回収されたストリームを含むことができる。また、前記液相の単量体は、オリゴマーの製造工程内で回収された気相の単量体を溶媒に溶解したストリームを含むことができる。
【0026】
前記フィードストリームに含まれる溶媒は、前記回収された気相の単量体を溶解するための溶媒を意味し得る。場合に応じて、前記溶媒は、単量体を溶解するための溶媒の他に、別のフィードストリームとして反応器にさらに供給され得る。
【0027】
本発明の一実施形態によると、前記反応器の第1排出ストリームを第1分離装置に供給し、前記反応器の第2排出ストリームを第2分離装置に供給するステップにおいて、分離装置は通常の分離カラムを用いることができる。
【0028】
本発明の一実施形態によると、前記第1排出ストリームは、気相の単量体を含むストリームであり得る。前記第1排出ストリームは、第1分離装置に供給され、気相の単量体を含む上部排出ストリームおよび液相の単量体を含む下部排出ストリームを反応器に供給することができる。この際、前記第1分離装置の上部排出ストリームは、反応器に供給される気相の単量体ストリームと混合器で混合され、反応器に供給されるか、別に反応器に供給され得る。
【0029】
本発明の一実施形態によると、前記第2排出ストリームは、液相の単量体を含むストリームであり得る。前記第2ストリームは、第2分離装置に供給され、単量体を含む気相の上部排出ストリームと、溶媒およびオリゴマーを含む液相の下部排出ストリームとに分離することができる。この際、前記第2分離装置で単量体を上部排出ストリームとして回収するステップにより、オリゴマーの製造工程内で単量体を回収し、再使用することができる。前記第2分離装置の上部排出ストリームとして単量体を回収し、前記第2分離装置の上部排出ストリームは、単量体溶解装置を通過した後、反応器に供給され得る。また、前記第2分離装置の下部ストリームにおいて、溶媒およびオリゴマーは、さらなる分離工程により分離することができ、分離した溶媒は、反応器に供給することができる。また、前記分離したオリゴマーは、また、さらなる分離工程により単量体の三量体および四量体に分離することができる。
【0030】
本発明の一実施形態によると、前記第2分離装置で回収した単量体を溶解するステップにおいて、冷媒を使用することもあり、使用しないこともある。一つの例として、前記第2分離装置で回収した単量体を溶解するステップにおいて、冷媒を使用する場合、前記冷媒は、ブライン(エチレングリコール水溶液)、プロピルグリコール水溶液および冷蔵された冷却水からなる群から選択される1種以上を使用することができる。この際、前記冷媒は、総100重量部を基準として、エチレングリコールまたはプロピルグリコール10重量部~70重量部、30重量部~60重量部または50重量部~80重量部を含むことができる。他の一つの例として、前記第2分離装置で回収した単量体を溶解するステップにおいて、冷媒を使用しない場合、冷却水を使用することができる。これは、回収した単量体を溶媒に溶解するために必要な温度に応じて選択することができ、溶媒に溶解しようとする回収した単量体の含量に応じて、これを溶解できる温度以下に冷却することができる冷媒または冷却水を選択することができる。例えば、前記第2分離装置で回収した単量体の80重量%~100重量%、90重量%~100重量%または95重量%~100重量%を溶解することができる冷媒あるいは冷却水を選択することができる。
【0031】
本発明の一実施形態によると、前記第2分離装置の上部排出ストリームに含まれる単量体は、前記単量体溶解装置内で単量体溶解装置に供給される溶媒に溶解され得る。具体的には、第2分離装置で気相の単量体を含む上部排出ストリームを単量体溶解装置に供給し、前記単量体溶解装置に供給される溶媒と混合し、溶媒内に気相の単量体を溶解することができる。この際、前記溶媒は、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、オクタン、シクロオクタン、デカン、ドデカン、ベンゼン、キシレン、1,3,5-トリメチルベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンおよび卜リクロロベンゼンからなる群から選択される1種以上であってもよい。具体的な例として、前記溶媒は、2種を混合して使用してもよい。より具体的な例として、前記溶媒は、メチルシクロヘキサンおよびデカンの混合物であってもよい。前記溶媒として、2種を混合して使用する場合、沸点が高い溶媒を混合して単量体を溶媒に溶解するステップにおいて、より高い温度で単量体を液化することができ、単量体の溶解率を向上させることができる。
【0032】
本発明の一実施形態によると、前記単量体溶解装置に供給される溶媒の温度は10℃~50℃の範囲であり、圧力は10bar~50barの範囲であってもよい。例えば、前記溶媒の供給温度は10℃~50℃、20℃~40℃または25℃~35℃の範囲であり、供給圧力は10bar~50bar、15bar~45barまたは20bar~40barであってもよい。前記温度と圧力の範囲で溶媒を単量体溶解装置に供給することで、単量体溶解装置内で単量体を比較的高い温度で液化することができ、単量体溶解装置の排出ストリームをポンプの使用だけでも反応器の圧力まで高めることができるという利点がある。
【0033】
本発明の一実施形態によると、前記単量体溶解装置に供給される溶媒の含量は、反応器から排出される第2排出ストリーム内のオリゴマー生成物と生成副産物の和に対して、0.5~10倍、0.8~5倍または1~3倍の範囲であってもよい。前記範囲内の含量の溶媒を供給することで、既存のオリゴマーの製造方法で使用されていた溶媒の量と比較して、類似した量の溶媒でオリゴマー生成物を効率的に製造することができる。
【0034】
本発明の一実施形態によると、前記単量体溶解装置の排出ストリームを反応器に供給するステップを含み、前記単量体溶解装置の排出ストリームは、前記溶媒に溶解された単量体を含む液相ストリームであってもよい。具体的には、前記第2分離装置の上部排出ストリームは、気相の単量体を含んでおり、前記気相の単量体をすぐ反応器に供給するためには、反応器の圧力まで高めるための別の圧縮器が設置されなければならない。または、前記気相の単量体を液相に冷却し、ポンプにより反応器の圧力まで高める方法があるが、この場合、前記気相の単量体を液相に冷却するために、非常に低い温度の冷媒が必要となる。
【0035】
本発明の一実施形態によると、前記単量体溶解装置の運転温度および単量体溶解装置の排出ストリームの温度は、-10℃~50℃の範囲であってもよい。例えば、前記単量体溶解装置の運転温度および単量体溶解装置の排出ストリームの温度は、-10℃~50℃、0℃~40℃または5℃~30℃の範囲であってもよい。従来のオリゴマーの製造方法では、回収された気相の単量体を液相に冷却するためには、非常に低い温度の冷媒を使用して約-25℃以下の温度に冷却しなければならないため、高価の冷媒の使用による費用増加の問題があった。しかし、本発明によるオリゴマーの製造方法は、回収された気相の単量体を溶媒に溶解した後、反応器に供給することで、前述のような問題を解決した。
【0036】
本発明の一実施形態によると、単量体溶解装置の運転圧力および単量体溶解装置の排出ストリームの圧力は、10bar~45barの範囲であってもよい。例えば、前記単量体溶解装置の運転圧力および単量体溶解装置の排出ストリームの圧力は、10bar~40bar、15bar~35barまたは18bar~30barの範囲であってもよい。前記単量体溶解装置の排出ストリームは液相であるため、ポンプの使用だけでも反応器の圧力まで高めることができ、さらなる装置や工程が求められず、工程が単純化し、工程費用を削減することができる。
【0037】
本発明の一実施形態によると、前記オリゴマーの製造方法は、下記一般式1を満たすことができる。
【0038】
[一般式1]
M2/M1*100≧80重量%
【0039】
前記一般式1中、M1は、第2分離装置の上部排出ストリーム内の単量体の含量であり、M2は、単量体溶解装置の排出ストリーム内の単量体の含量である。具体的には、前記一般式1は、第2分離装置で上部排出ストリームとして回収された単量体を単量体溶解装置で溶媒に溶解し、単量体溶解装置の排出ストリームで排出したときに、前記単量体溶解装置の排出ストリームにおいて、溶媒に溶解された単量体の溶解率を意味し得る。この際、前記溶媒に溶解された単量体の溶解率は、80重量%~100重量%、90重量%~100重量%または95重量%~100重量%であってもよい。このように、回収された単量体90重量%以上、または全量を溶媒に溶解して反応器で回収することで、単量体の再使用率に優れ、これにより、オリゴマーの製造効率を向上させ、工程費用を削減することができる。
【0040】
本発明の一実施形態によると、前記反応器の第2排出ストリームを、第3分離装置に供給し、前記第3分離装置の上部排出ストリームを、反応器に供給し、前記第3分離装置の下部排出ストリームを、第2分離装置に供給してもよい。具体的には、前記反応器から排出される液相の第2排出ストリームは、第2分離装置に供給される前に第3分離装置に供給され、気液分離した後、気相の単量体を含む上部排出ストリームを反応器に供給し、液相の単量体を含む下部排出ストリームは第2分離装置に供給することができる。このように、反応器の第2排出ストリームを第2分離装置に供給する前に第3分離装置に供給する方法として分離ステップを追加することで、第2分離装置で上部排出ストリームとして回収する単量体の量が減少し得る。これにより、前記第2分離装置の上部排出ストリームとして回収された単量体を単量体溶解装置で溶媒に溶解する場合よりも高い温度で液化が可能である。
【0041】
本発明によると、オリゴマーの製造装置が提供される。前記オリゴマーの製造装置として、供給された単量体を含むフィードストリームをオリゴマー化反応させ、第1排出ストリームを第1分離装置に供給し、第2排出ストリームを第2分離装置に供給する反応器と、前記反応器の第1排出ストリームの供給を受ける第1分離装置と、前記反応器の第2排出ストリームの供給を受け、上部排出ストリームを単量体溶解装置に供給する第2分離装置と、前記供給された第2分離装置の上部排出ストリームを、供給された溶媒で溶解し、排出ストリームを反応器に供給する単量体溶解装置とを含むオリゴマーの製造装置を提供することができる。
【0042】
本発明の一実施形態によると、前記本発明によるオリゴマー製造装置は、上記に述べているオリゴマーの製造方法による工程を実施するための装置であり得る。
【0043】
本発明の一実施形態によると、前記本発明によるオリゴマーの製造装置は、下記
図1および
図2を参照して説明することができる。例えば、前記オリゴマーの製造装置は、供給された単量体を含むフィードストリームをオリゴマー化反応させる反応器100を含み、前記反応器100で、気相の単量体を含む第1排出ストリームは第1分離装置200に供給され、液相の単量体を含む第2排出ストリームは第2分離装置210に供給され得る。
【0044】
本発明の一実施形態によると、前記反応器100に供給されるフィードストリームは、単量体および溶媒を含むことができる。具体的には、前記フィードストリームは、気相の単量体、液相の単量体および溶媒を含むことができる。前記気相の単量体を含むフィードストリームは、反応器100に直接供給される気相の単量体ストリームおよび第1分離装置200で上部排出ストリームとして回収された気相の単量体を含むことができる。前記反応器100に直接供給される気相の単量体ストリームと、第1分離装置200で回収された気相の上部排出ストリームは、個別に反応器100に供給されるか、混合器(図示せず)で混合した混合排出ストリームとして反応器100に供給され得る。
【0045】
また、前記反応器100に供給されるフィードストリームのうち、液相の単量体を含むストリームは、前記第1分離装置200で分離された液相の単量体を含む下部排出ストリームと、第2分離装置210で分離された気相の単量体を溶媒に溶解した単量体溶解装置300の排出ストリームとを含むことができる。この際、前記第2分離装置210の上部排出ストリームは、単量体溶解装置300で、単量体溶解装置300に供給される溶媒に溶解された後、ポンプ400により反応器100に供給され得る。
【0046】
本発明の一実施形態によると、第1分離装置200は、反応器100から第1排出ストリームの供給を受け、気相の単量体を含む上部排出ストリームと、液相の単量体を含む下部排出ストリームとに分離することができる。この際、前記第1分離装置200の上部排出ストリームおよび下部排出ストリームは、反応器100に供給され得る。
【0047】
本発明の一実施形態によると、前記第2分離装置210の下部排出ストリームは、オリゴマー生成物、生成副産物および溶媒を含むことができる。この際、前記オリゴマー生成物、生成副産物および溶媒は、さらなる分離装置(図示せず)により分離することができ、分離した溶媒は、オリゴマーの製造工程内で再使用され得る。また、前記単量体として、エチレン単量体を用いてオリゴマー化反応を行った場合、オリゴマー生成物は、1-ヘキセンおよび1-オクテンを含むことができる。この場合、前記1-ヘキセンおよび1-オクテンは、さらなる分離装置(図示せず)により分離するか、別の工程により分離して使用することができる。
【0048】
本発明の一実施形態によると、前記反応器100の第2排出ストリームの供給を受けて下部排出ストリームを第2分離装置210に供給する第3分離装置220をさらに含んでもよい。具体的には、前記反応器100の第2排出ストリームが第2分離装置210に供給される前に、第3分離装置220により一度気液分離を経た後、気相の単量体を含む第3分離装置220の上部排出ストリームは、反応器100に供給され、液相の単量体を含む第3分離装置220の下部排出ストリームは、第2分離装置210に供給され得る。
【0049】
以上、本発明によるオリゴマーの製造方法および装置について記載および図面に図示しているが、前述の記載および図面の図示は、本発明を理解するための核心の構成のみを記載および図示したものであって、前記記載および図面に図示した工程および装置以外に、別に記載および図示していない工程および装置は、本発明によるオリゴマーの製造方法および装置を実施するために適宜応用され用いられ得る。
【0050】
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明する。しかし、下記の実施例は、本発明を例示するためのものであって、本発明の範疇および技術思想の範囲内で様々な変更および修正が可能であることは、通常の技術者にとって明白であり、これらのみで本発明の範囲が限定されるものではない。
【0051】
実施例
実施例1
図1に図示されている工程流れ図に対して、アスペンテック社製のアスペンプラスシミュレータを用いて、工程をシミュレーションした。この際、反応器100に、単量体としてエチレン(C2)を、反応量である7,000kg/hr以上で供給し、反応器100の反応条件は、90℃の温度および25barの圧力に設定し、溶媒は、メチルシクロヘキサン(methylcyclohexane)を使用し、溶媒の供給量は、反応器100から第2分離装置210に供給される第2排出ストリーム内生成物(product)と生成副産物の和に対して1倍投入した。その結果は、下記表1に示した。
【0052】
【0053】
前記表1を参照すると、第4ストリームにおいて、第3ストリームとして回収されたエチレンが100%の溶解率で溶解されたことを確認することができ、この際、回収されたエチレンが、単量体溶解装置300で溶媒に溶解されて排出される温度は10℃であり、回収されたエチレン冷却温度が従来の-25℃以下であったことに比べて著しく高い温度であることを確認することができる。また、第4ストリームの圧力は20barであり、ポンプ400を通過した後の第5ストリームを見ると、圧力が25barであり、反応器100と同じ圧力で上昇したことが分かる。
【0054】
実施例2
第1溶媒としてメチルシクロヘキサン(methylcyclohexane)を使用し、第2溶媒としてデカン(decane)を使用して、工程をシミュレーションした以外は、実施例1と同じ方法で実施した。この際、第1溶媒は、生成物(product)と生成副産物の和に対して1倍、第2溶媒は0.5倍で投入した。その結果は、下記表2に示した。
【0055】
【0056】
前記表2を参照すると、実施例1と比較して2種の溶媒を使用した場合、第4ストリームにおいて、第3ストリームとして回収されたエチレンが100%の溶解率で溶解されたことを確認することができる。また、回収されたエチレンが、単量体溶解装置300で溶媒に溶解されて排出される温度は23℃であり、溶媒を1種使用する場合に比べてより高い温度で回収されたエチレン単量体を液化することができることが分かる。
【0057】
実施例3
図2に図示されている工程流れ図に対して、アスペンテック社製のアスペンプラスシミュレータを用いて、工程をシミュレーションした。この際、反応器100に単量体としてエチレン(C2)を、反応量である7,000kg/hr以上で供給し、反応器100の反応条件は、90℃の温度および25barの圧力に設定し、溶媒は、メチルシクロヘキサン(methylcyclohexane)を使用し、溶媒の供給量は、反応器100から第2分離装置210に供給される第2排出ストリーム内の生成物(product)と生成副産物の和に対して1倍で投入した。その結果は、下記表3に示した。
【0058】
【0059】
前記表3を参照すると、第4ストリームにおいて、第3ストリームとして回収されたエチレンが100%の溶解率で溶解されたことを確認することができる。また、実施例1と比較して、反応器100と第2分離装置210との間にさらに第3分離装置220を設置し、エチレン単量体の一部を一次的に反応器100に回収させ、これにより、単量体溶解装置300に供給される回収されたエチレン単量体の量が減少し、より高い温度である23℃でエチレン単量体を液化することができる。
【0060】
比較例
比較例1
図3に図示されている工程流れ図に対して、アスペンテック社製のアスペンプラスシミュレータを用いて、工程をシミュレーションした。この際、反応器100に単量体としてエチレン(C2)を、反応量である7,000kg/hr以上で供給し、反応器100の反応条件は、90℃の温度および25barの圧力に設定し、反応器100に供給される溶媒は、メチルシクロヘキサン(methylcyclohexane)を使用し、溶媒の供給量は、反応器100から第2分離装置210に供給される第2排出ストリーム内の生成物(product)と生成副産物の和に対して1倍で投入した。その結果は、下記表4に示した。
【0061】
【0062】
前記表4を参照すると、回収された気相のエチレン単量体を含む第2-1ストリームをポンプ400を用いて反応器100の圧力まで高めるためには液相になる必要がある。このために、凝縮器500が必要となり、前記凝縮器500で凝縮されたエチレン単量体を含むストリームである第4-1ストリームを見ると、温度が-26℃であり、実施例1~3と比較して著しく低い温度であることが分かる。
【0063】
比較例2
図4に図示されている工程流れ図に対して、アスペンテック社製のアスペンプラスシミュレータを用いて、工程をシミュレーションした。この際、反応器100に単量体としてエチレン(C2)を反応量である7,000kg/hr以上で供給し、反応器100の反応条件は、90℃の温度および25barの圧力に設定し、反応器に供給される溶媒は、メチルシクロヘキサン(methylcyclohexane)を使用し、溶媒の供給量は、反応器100から第2分離装置210に供給される第2排出ストリーム内の生成物(product)と生成副産物の和に対して1倍で投入した。その結果は、下記表5に示した。
【0064】
【0065】
前記表5を参照すると、第2分離装置210で回収された気相のエチレン単量体を反応器100に供給するために、圧力を高めるために圧縮器600を別に設置したことが分かる。この場合、投資費用の増加によって経済性が低下するという問題が発生する。