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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-30
(45)【発行日】2022-10-11
(54)【発明の名称】被加工物の加工方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20221003BHJP
   B23K 26/38 20140101ALI20221003BHJP
   B23K 26/53 20140101ALI20221003BHJP
   B24B 27/06 20060101ALI20221003BHJP
【FI】
H01L21/78 C
H01L21/78 L
H01L21/78 B
B23K26/38 Z
B23K26/53
B24B27/06 M
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018217620
(22)【出願日】2018-11-20
(65)【公開番号】P2020088068
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(72)【発明者】
【氏名】張 秉得
(72)【発明者】
【氏名】キム ヨンソク
【審査官】齋藤 正貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-119029(JP,A)
【文献】特開2018-148151(JP,A)
【文献】特開2018-060882(JP,A)
【文献】特開2015-050345(JP,A)
【文献】特開2016-181640(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
B23K 26/38
B23K 26/53
B24B 27/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交差する複数の分割予定ラインによって区画された各領域にデバイスを有するデバイス領域と、該デバイス領域を囲む外周余剰領域と、を有する板状の被加工物の該外周余剰領域の表面側に該複数の分割予定ラインに対応して設けられた凹部又は凸部を有するキーパターンを備える該被加工物を、裏面側から加工する被加工物の加工方法であって、
該被加工物の該表面側に樹脂シートを密着させて、該キーパターンを該樹脂シートに転写させる樹脂シート密着ステップと、
該外周余剰領域を該被加工物から分割して該樹脂シートから剥離する外周余剰領域除去ステップと、
該外周余剰領域除去ステップで露出した該外周余剰領域の該キーパターンの跡形を目印にして該複数の分割予定ラインのうち少なくとも一つの分割予定ラインの位置を割り出して、該デバイス領域を該複数の分割予定ラインに沿って加工するデバイス領域加工ステップと、を備えることを特徴とする被加工物の加工方法。
【請求項2】
該樹脂シート密着ステップでは、該被加工物の周りを囲む様に環状フレームを配置した上で該被加工物の該表面側及び該環状フレームに該樹脂シートを密着させることで、該被加工物、該環状フレーム及び該樹脂シートから成るフレームユニットを形成することを特徴とする請求項1に記載の被加工物の加工方法。
【請求項3】
該デバイス領域加工ステップでは、該被加工物を切削ブレードで切削することで該被加工物を加工する、又は、該被加工物に対してレーザービームを照射することで該被加工物を加工することを特徴とする請求項1又は2に記載の被加工物の加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物を分割予定ラインに沿って加工する被加工物の加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハ、セラミックス基板、樹脂パッケージ等の被加工物を、環状の切削ブレードを有する切削装置で切削する切削加工が知られている。高速に回転させた切削ブレードを被加工物の分割予定ラインに沿って切り込ませながら、切削ブレードと被加工物とを相対的に移動させることで、被加工物は切削ブレードの移動の経路に沿って切削される。
【0003】
更に、レーザー照射装置で被加工物を加工するレーザー加工が知られている。例えば、被加工物に吸収される波長のレーザービームを分割予定ラインに沿って照射することにより、被加工物はアブレーション加工され得る。
【0004】
上述の切削加工及びレーザー加工では、通常、被加工物よりも大きな径の開口を有する環状フレームの当該開口に被加工物を配置し、当該開口を塞ぐようにして、被加工物及び環状フレームに粘着テープを貼り付ける。このとき、例えば、被加工物の裏面側が粘着テープに貼り付けられる。
【0005】
そして、被加工物及び環状フレームに貼り付けられた面とは反対側の粘着テープの面が、切削装置又はレーザー照射装置に設けられているチャックテーブルの保持面で吸引保持される。次いで、被加工物の表面側に形成されている特徴的なパターン(即ち、キーパターン)を、可視光を利用して被写体を撮像するCCDカメラ等の撮像装置で撮像する。その後、分割予定ラインの位置を割り出した上で、被加工物は加工される。
【0006】
しかし、被加工物の表面側が保持面で吸引保持される場合には、可視光を用いて被加工物の裏面側からキーパターンを認識できない。そこで、被加工物に重なっていない粘着テープの余剰領域にストリート認識印を形成して、このストリート認識印を撮像装置で撮像する必要があった(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
また、可視光に代えて、半導体ウェーハ等を透過する赤外線(IR)を利用したIRカメラで、被加工物の裏面側から表面側のキーパターンの位置を直接的に特定する場合がある。しかし、赤外線は、金属、モールド樹脂等を透過できないので、例えば、被加工物の裏面側に金属層が設けられている場合、この金属層を部分的に除去して貫通孔を形成する必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2009-158648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は係る問題点に鑑みてなされたものであり、キーパターンが形成されている被加工物の表面側が粘着テープに密着している場合に、被加工物の裏面側から表面側のキーパターンの位置を間接的に特定した上で被加工物を加工する被加工物の加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によれば、交差する複数の分割予定ラインによって区画された各領域にデバイスを有するデバイス領域と、該デバイス領域を囲む外周余剰領域と、を有する板状の被加工物の該外周余剰領域の表面側に該複数の分割予定ラインに対応して設けられた凹部又は凸部を有するキーパターンを備える該被加工物を、裏面側から加工する被加工物の加工方法であって、該被加工物の該表面側に樹脂シートを密着させて、該キーパターンを該樹脂シートに転写させる樹脂シート密着ステップと、該外周余剰領域を該被加工物から分割して該樹脂シートから剥離する外周余剰領域除去ステップと、該外周余剰領域除去ステップで露出した該外周余剰領域の該キーパターンの跡形を目印にして該複数の分割予定ラインのうち少なくとも一つの分割予定ラインの位置を割り出して、該デバイス領域を該複数の分割予定ラインに沿って加工するデバイス領域加工ステップと、を備える被加工物の加工方法が提供される。
【0011】
好ましくは、該樹脂シート密着ステップでは、該被加工物の周りを囲む様に環状フレームを配置した上で該被加工物の該表面側及び該環状フレームに該樹脂シートを密着させることで、該被加工物、該環状フレーム及び該樹脂シートから成るフレームユニットを形成する。
【0012】
また、好ましくは、該デバイス領域加工ステップでは、該被加工物を切削ブレードで切削することで該被加工物を加工する、又は、該被加工物に対してレーザービームを照射することで該被加工物を加工する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様に係る被加工物の加工方法では、複数の分割予定ラインに対応して設けられた凹部又は凸部を有するキーパターンが、被加工物の表面側の外周余剰領域に設けられており、このキーパターンは、樹脂シート密着ステップを経て樹脂シートに転写される。
【0014】
そして、外周余剰領域除去ステップで外周余剰領域が取り除かれると、樹脂シートに転写されたキーパターンの跡形が樹脂シートに露出するので、この跡形を目印にして分割予定ラインの位置を割り出すことができる。それゆえ、貫通孔を介してキーパターンを撮像したり、ストリート認識印を粘着テープに形成して用いたりすることなく、キーパターンの位置を間接的に特定した上で、被加工物を加工できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1(A)は、樹脂パッケージ基板の上面図であり、図1(B)は、樹脂パッケージ基板の下面図であり、図1(C)は、図1(A)及び図1(B)のI-I断面図である。
図2】樹脂シート密着ステップ後のフレームユニットの斜視図である。
図3図3(A)は、外周余剰領域除去ステップを示す上面図であり、図3(B)は、外周余剰領域除去ステップ後のフレームユニットの上面図である。
図4図4(A)は、デバイス領域加工ステップを示す一部断面側面図であり、図4(B)は、デバイス領域加工ステップを示す上面図である。
図5】樹脂パッケージ基板の加工方法を示すフロー図である。
図6図6(A)は、ウェーハの表面側の斜視図であり、図6(B)は、デバイス領域の1つのデバイスの表面側の拡大図である。
図7図7(A)は、ウェーハの裏面側の斜視図であり、図7(B)は、樹脂シート密着ステップで形成されたフレームユニットの上面図である。
図8】外周余剰領域除去ステップを示す一部断面側面図である。
図9図9(A)は、外周余剰領域除去ステップ後のウェーハ等の一部断面側面図であり、図9(B)は、図9(A)の領域Aの拡大図である。
図10】デバイス領域加工ステップを示す一部断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
添付図面を参照して、本発明の一態様に係る実施形態について説明する。まず、第1実施形態に係る板状の樹脂パッケージ基板11(被加工物)について説明する。図1(A)は、樹脂パッケージ基板11の上面図であり、図1(B)は、樹脂パッケージ基板11の下面図であり、図1(C)は、図1(A)及び図1(B)のI-I断面図である。
【0017】
樹脂パッケージ基板11は、銅(Cu)等の金属で構成された平板状の基板13を有する。図1(A)に示す様に、基板13の表面側(即ち、樹脂パッケージ基板11の表面11a側)には、複数(第1実施形態では、3つ)のデバイス領域15が形成されている。
【0018】
3つのデバイス領域15は、互いに離れて直線状に配置されている。なお、樹脂パッケージ基板11では、2つのデバイス領域15の間の領域を中間領域15aと称し、3つのデバイス領域15及び2つの中間領域15aから成るひとまとまりの領域を囲む領域を外周余剰領域17と称する。
【0019】
各デバイス領域15は、交差する複数の分割予定ライン19で格子状に複数の領域に区画されており、各領域には、ステージ21が形成されている。各ステージ21の裏面側(即ち、樹脂パッケージ基板11の裏面11b側)には、IC(Integrated Circuit)等のデバイスが形成されたデバイスチップ(不図示)が配置されている。
【0020】
各ステージ21の周囲には、複数の電極パターン25が設けられている。各電極パターン25は、矩形状であり、分割予定ライン19に沿って互いに離れて設けられている。第1実施形態では、ステージ21の分割予定ライン19に沿う各一辺につき5つの電極パターン25が設けられている。
【0021】
電極パターン25は、表面11aに露出しており、基板13の表面に対して数μm窪んだ凹部を有する。但し、電極パターン25は、基板13の表面に対して突出した凸部を有してもよく、凹部及び凸部の組み合わせを有してもよい。
【0022】
電極パターン25の裏面11b側は、金属ワイヤー(不図示)等を介してデバイスチップの電極に接続されている。電極パターン25の裏面11b側の一端には、この電極パターン25を挟んで隣接する2つのステージ21の一方側に配置されたデバイスチップの電極が接続されている。
【0023】
また、電極パターン25の裏面11b側の他端には、2つのステージ21の他方側に配置されたデバイスチップの電極が接続されている。分割予定ライン19に沿って樹脂パッケージ基板11を切断するときには、この電極パターン25も分断される。分断後の電極パターン25は、各パッケージデバイスの電極となる。
【0024】
各デバイス領域15の周囲には、各々電極パターン25と同形状である複数の金属パターンであるキーパターン27(ターゲットパターン又はアライメントマークとも言う)が設けられている。
【0025】
各キーパターン27は、表面11a側に露出しており、分割予定ライン19に対応する様に設けられている。第1実施形態では、1つのデバイス領域15を挟むように、1つの分割予定ライン19の延長線上につき2つのキーパターン27が設けられている。
【0026】
キーパターン27の基準となる位置(例えば、分割予定ライン19と平行な一辺)から、分割予定ライン19のセンターラインまでの最短距離は、予め定められている。それゆえ、キーパターン27の基準となる位置の座標位置を特定することにより、分割予定ライン19のセンターラインの座標位置は特定される。
【0027】
キーパターン27は、電極パターン25と同様に、基板13の表面に対して数μm(例えば、1μmから9μm)窪んだ凹部を有する。但し、キーパターン27は、基板13の表面に対して突出した凸部を有してもよく、凹部及び凸部の組み合わせを有してもよい。
【0028】
図1(B)に示す様に、樹脂パッケージ基板11の裏面11b側のデバイス領域15に対応する領域には、3つのモールド樹脂層23が形成されている。第1実施形態の各モールド樹脂層23には、16個のステージ21の裏面側に各々配置されたデバイスチップが封止されている。
【0029】
次に、図2図3(A)、図3(B)、図4(A)、図4(B)及び図5を用いて、樹脂パッケージ基板11を裏面11b側から切削(加工)し、複数のパッケージデバイスに分割する加工方法について説明する。
【0030】
第1実施形態では、まず、貼り付け装置(不図示)を用いて、樹脂パッケージ基板11の表面11a側に樹脂シート31を密着させ、キーパターン27を樹脂シート31に転写させる(樹脂シート密着ステップ(S10))。
【0031】
第1実施形態の樹脂シート31は、樹脂パッケージ基板11よりも大きい径を有する樹脂製の基材層を有する。基材層は、例えば、5μm以上200μm以下の厚さを有し、ポリオレフィン(PO)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の高分子材料で形成されている。
【0032】
この基材層の一面には、粘着層が設けられている。粘着層は、粘着力を有しているが、熱、紫外線等の外的刺激が付与されると硬化して粘着力が低下する樹脂製の接着剤の層である。粘着層は、例えば、基材層の全面に設けられる。
【0033】
樹脂シート密着ステップ(S10)では、貼り付け装置(不図示)を用いて、樹脂パッケージ基板11の表面11aに樹脂シート31を貼り付ける。貼り付け装置は、樹脂パッケージ基板11を支持する支持テーブル(不図示)を有する。
【0034】
支持テーブルは、所定の方向に沿って移動可能に構成されている。支持テーブルの上方には、基材層の粘着層とは反対側に位置する他面を支持テーブルに向けて押圧する円柱状の加圧ローラー(不図示)が配置されている。
【0035】
樹脂シート密着ステップ(S10)では、支持テーブル上に、樹脂パッケージ基板11よりも大きな径の開口部33aを有する金属製の環状フレーム33を配置する。次いで、樹脂パッケージ基板11の表面11a側が上になるように、環状フレーム33の開口部33aに樹脂パッケージ基板11を配置する。これにより、樹脂パッケージ基板11の周りは、環状フレーム33で囲まれる。
【0036】
次に、加圧ローラーと樹脂パッケージ基板11及び環状フレーム33との間に樹脂シート31を挟んだ状態で、支持テーブルと加圧ローラーとを相対的に移動させる。樹脂シート31は、樹脂パッケージ基板11の表面11aと環状フレーム33の一方の面とに密着する。
【0037】
即ち、樹脂シート31は、環状フレーム33の開口部33aを塞ぐ様に、環状フレーム33に貼り付けられ、樹脂シート31は、開口部33aに配置された樹脂パッケージ基板11の表面11a側に貼り付けられる。
【0038】
これにより、樹脂パッケージ基板11、環状フレーム33及び樹脂シート31から成るフレームユニット35が形成される。また、キーパターン27は、樹脂シート31に転写される。図2は、樹脂シート密着ステップ(S10)後のフレームユニット35の斜視図である。なお、図2の破線は、樹脂シート31の外形を示す。
【0039】
フレームユニット35を構成することで、環状フレーム33を用いずに樹脂パッケージ基板11及び樹脂シート31を一体化する場合に比べて、樹脂パッケージ基板11を分割して得られた複数のデバイスチップ一体的に搬送できるのでデバイスチップの搬送が容易になる。
【0040】
なお、樹脂シート31は、粘着層を有せず、基材層のみを有してもよい。この場合、樹脂シート密着ステップ(S10)では、支持テーブルを加熱することにより、樹脂シート31を軟化及び変形させつつ、加圧ローラーで樹脂シート31を樹脂パッケージ基板11の表面11aと環状フレーム33の一方の面とに密着させる。なお、加熱温度は、樹脂シート31の材料に応じて、各材料の軟化点となる様に適宜調節してよい。
【0041】
また、支持テーブルの加熱及び加圧ローラーによる加圧に代えて、樹脂シート31に対して温風を吹き付けてもよい。温風により、樹脂シート31を軟化及び変形させながら、風圧により樹脂シート31を樹脂パッケージ基板11の表面11a及び環状フレーム33の一方の面に押し付けることができる。それゆえ、樹脂シート31を樹脂パッケージ基板11等に密着させることができる。
【0042】
樹脂シート密着ステップ(S10)の後、樹脂パッケージ基板11の外周余剰領域17を樹脂パッケージ基板11から分割して除去する(外周余剰領域除去ステップ(S20))。外周余剰領域除去ステップ(S20)では、切削装置40で外周余剰領域17を切削する。
【0043】
ここで、図4(A)を参照して、切削装置40の構造の概要について述べる。切削装置40は、樹脂パッケージ基板11を切削する切削ユニット42を有する。切削ユニット42はスピンドル44を有し、スピンドル44の一端には、スピンドル44を高速で回転させるモーター部(不図示)が連結されている。
【0044】
スピンドル44の他端には外周に切り刃が設けられた円環状の切削ブレード46が装着されており、モーター部を駆動することにより、切削ブレード46は高速で回転する。なお、切削ブレード46は、ハブ型であってもハブレス型であってもよい。切削装置40は、更に、フレームユニット35を吸引して保持するチャックテーブル52を有する。
【0045】
チャックテーブル52は、多孔質材料で形成されたポーラスプレート(不図示)を有する。ポーラスプレートには流路(不図示)を介してエジェクタ等の吸引源が接続されており、吸引源からの負圧により、ポーラスプレートの表面は負圧が作用する保持面52aとして機能する。
【0046】
また、チャックテーブル52は、保持面52aの中心を通りZ軸方向に沿う直線を回転軸として回転可能、且つ、X軸方向(即ち、加工送り方向)にスライド移動可能な態様で、テーブル基台50により支持されている。なお、X軸、Y軸及びZ軸は互いに直交する軸である。
【0047】
チャックテーブル52には、チャックテーブル52の側部から外側に突出する様に、複数の(例えば4つの)クランプ54が設けられている。クランプ54は、環状フレーム33を挟持することで、環状フレーム33をチャックテーブル52に対して固定する。
【0048】
ここで、外周余剰領域除去ステップ(S20)の説明に戻る。図3(A)は、外周余剰領域除去ステップ(S20)を示す上面図である。外周余剰領域17を切削するときは、まず、樹脂パッケージ基板11とは反対側の樹脂シート31の面が保持面52aに接する様に、フレームユニット35を保持面52aに載置する。
【0049】
次に、吸引源を作動させてポーラスプレートに負圧を作用させ、フレームユニット35を保持面52aで吸引保持する。その後、切削ブレード46と樹脂パッケージ基板11との接触点である加工点に、純水等の切削液を供給しながら、高速で回転する切削ブレード46を樹脂パッケージ基板11の裏面11b側に切り込ませ、切削ブレード46とチャックテーブル52とを相対的に移動させる。
【0050】
基板13に切り込んだ切削ブレード46の切り込み深さ位置は、樹脂シート31を切断しない所定の深さに調整される。そして、モールド樹脂層23の外周縁(図3(A)にて破線で示す)に沿って、樹脂パッケージ基板11の基板13を切削する。
【0051】
これにより、外周余剰領域17は、樹脂パッケージ基板11から分割される。その後、フレームユニット35を紫外線照射装置(不図示)に移動させる。紫外線照射装置は、透明な支持テーブルを有しており、支持テーブルの下には紫外線を照射する光源が配置されている。
【0052】
また、支持テーブルと光源との間には、樹脂パッケージ基板11の表面11a側に照射される紫外線の範囲を規定するマスク層が設けられる。マスク層は、遮光性を有するクロム(Cr)等の金属薄膜で形成されている。
【0053】
マスク層は、外周余剰領域17に対応する領域に開口を有し、デバイス領域15及び中間領域15aに対応する領域を覆っている。それゆえ、光源から紫外線が照射されると、外周余剰領域17に対応する領域には紫外線が照射されるが、デバイス領域15及び中間領域15aに対応する領域には紫外線が照射されない。
【0054】
紫外線が照射された外周余剰領域17は樹脂シート31の粘着力が低下するので、分割された外周余剰領域17は樹脂シート31から容易に剥離される。例えば、外周余剰領域17の剥離は、不図示の剥離装置で行われるが、作業者自身の手により行われてもよい。
【0055】
このように、デバイス領域15の切削に先立ち、金属から成る基板13の外周余剰領域17の大部分を除去することで、デバイス領域15の切削時に切削ブレード46の砥粒が目詰まりして切削ブレード46の切れ味が低下することを抑制できる。即ち、切削効率が低下することを抑制できる。
【0056】
図3(B)は、外周余剰領域除去ステップ(S20)後のフレームユニット35の上面図である。外周余剰領域除去ステップ(S20)で露出した樹脂シート31には、基板13の外形を示す跡形13a(破線)と、外周余剰領域17に位置していたキーパターン27の跡形27a(実線)とが転写されている。
【0057】
なお、跡形27aは、樹脂シート密着ステップ(S10)で形成される。跡形27aは、キーパターン27が樹脂シート31に対して押圧され、キーパターン27と接触する樹脂シート31の一部が塑性変形することにより形成された立体的な模様である。但し、跡形27aは、変形後の樹脂シート31の一部(例えば、樹脂層)が、外周余剰領域除去ステップ(S20)での紫外線照射により固化されることで形成されてもよい。
【0058】
跡形27aは、安定しており時間が経っても簡単には消えないので、後続のデバイス領域加工ステップ(S30)で表面11a側の分割予定ライン19の位置を割り出すときの目印として利用できる。
【0059】
外周余剰領域除去ステップ(S20)の後、デバイス領域15を分割予定ライン19に沿って裏面11b側から切削する(デバイス領域加工ステップ(S30))。デバイス領域加工ステップ(S30)でも、上述の切削装置40を用いるので切削装置40の重複する説明は省略する。
【0060】
なお、デバイス領域加工ステップ(S30)では、樹脂パッケージ基板11の切削に適した切削ブレード46であって、外周余剰領域除去ステップ(S20)で使用された切削ブレード46とは異なる切削ブレード46が用いられてもよい。また、外周余剰領域除去ステップ(S20)では、いわゆるデュアルダイサーの一方の切削ユニット42が用いられてよく、デバイス領域加工ステップ(S30)では、デュアルダイサーの他方の切削ユニット42が用いられてもよい。
【0061】
デバイス領域加工ステップ(S30)では、まず、切削装置40に設けられている撮像装置で樹脂シート31の上面を撮像する。撮像装置は、例えば、可視光を利用して被写体を撮像するCCDカメラであるが、CMOSカメラ等の他のカメラであってもよい。
【0062】
撮像後、パターンマッチング等の画像処理等の技術を利用して、樹脂シート31の跡形27aから裏面11b側の分割予定ライン19の位置を割り出す。例えば、キーパターン27の形状は、樹脂シート31の跡形27aにそのまま反映されているので、画像処理後の画像における跡形27aの基準の座標位置から分割予定ライン19のセンターラインの座標位置が特定される。
【0063】
次に、切削ユニット42及びチャックテーブル52をX軸方向及びY軸方向に位置合わせして、切削ブレード46の位置を1つの分割予定ライン19のセンターラインに合わせる(即ち、アライメントを行う)。
【0064】
そして、純水等の切削液を供給しながら、切削ブレード46を樹脂パッケージ基板11の裏面11b側に切り込ませ、切削ブレード46とチャックテーブル52とを加工送り方向に沿って相対的に移動させる。これにより、切断線47(図4(B)参照)で示す様に、樹脂パッケージ基板11を切断する。
【0065】
例えば、一の方向と平行な1つの分割予定ライン19に沿ってデバイス領域15を切削した後、割り出し送り方向に所定距離だけチャックテーブル52を移動させ、同様に、一の方向と平行な他の1つの分割予定ライン19に沿ってデバイス領域15を切削する。
【0066】
なお、切削しながら跡形27aの撮像も併せて行い、切削ブレード46の位置と分割予定ライン19のセンターラインの位置とのずれ量±Δμmを検出してもよい。検出された±Δμmのずれは、チャックテーブル52を割り出し送り方向に移動させるときに、解消される。例えば、チャックテーブル52を割り出し送り方向に5000μmだけ移動させるところ、数式1だけ移動させることで、±Δμmのずれは解消される。
【0067】
【数1】
【0068】
このようにして、一の方向と平行な全ての分割予定ライン19に沿ってデバイス領域15を切削する。次いで、チャックテーブル52を90度回転させ、一の方向と直交する他の方向と平行な全ての分割予定ライン19に沿ってデバイス領域15を切削する。このように、表面11aにキーパターン27が無くても分割予定ライン19に沿った分割が可能となる。
【0069】
デバイス領域加工ステップ(S30)終了後、フレームユニット35は切削装置40から紫外線照射装置(不図示)に移される。そして、開口部33aに位置する樹脂シート31の全体に紫外線を照射して、樹脂シート31の粘着力を低下させる。次いで、分割された複数のパッケージデバイスがチャックテーブル52から取り出される。
【0070】
図4(A)は、デバイス領域加工ステップ(S30)を示す一部断面側面図であり、図4(B)は、デバイス領域加工ステップ(S30)を示す上面図である。図5は、樹脂パッケージ基板11の加工方法を示すフロー図である。
【0071】
なお、第1実施形態の第1変形例では、キーパターン27の面積を電極パターン25よりも大きくする。これにより、跡形27aが転写された樹脂シート31を撮像した画像において、跡形27aが特定しやすくなり、デバイス領域加工ステップ(S30)の作業効率が向上する。
【0072】
また、第1実施形態の第2変形例では、外周余剰領域除去ステップ(S20)で、中間領域15aを除去してもよい。これにより、分割予定ライン19の位置を割り出すときに中間領域15aに位置するキーパターン27の跡形27aを目印として利用できる。それゆえ、加工精度をより向上させることができる。
【0073】
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態に係る板状の被加工物は、主として半導体から成るウェーハ61である。図6(A)は、ウェーハ61の表面61a側の斜視図である。
【0074】
ウェーハ61は、デバイス領域65を有し、デバイス領域65は、交差する複数の分割予定ライン69によって複数の領域に区画されている。各領域には、デバイス71が形成されている。図6(B)は、デバイス領域65の1つのデバイス71の表面61a側の拡大図である。
【0075】
ウェーハ61は、デバイス領域65の外側を囲む外周余剰領域67を有する。なお、外周余剰領域67も複数の分割予定ライン69で複数の領域に区画されている。各領域には、デバイス領域65に位置するデバイス71と類似ではあるが回路としては不完全な微細構造のパターンが形成されている。図6(A)では、デバイス領域65と外周余剰領域67との境界が破線で示されている。
【0076】
図6(B)に示す様に、デバイス71の表面61a側には金属パターンの凹部又は凸部を有するキーパターン77(ターゲットパターン又はアライメントマークとも言う)が設けられている。キーパターン77は、デバイス領域65と外周余剰領域67とにまたがる各領域(即ち、複数の分割予定ライン69で区画された各領域)にも、デバイス71と同様に設けられている。キーパターン77は、後に、分割予定ライン69の位置を割り出すときの目印として利用される。
【0077】
また、キーパターン77は、基本的には、外周余剰領域67に位置する各領域(即ち、複数の分割予定ライン69で区画された各領域)にも、デバイス71と同様に設けられる。但し、ウェーハ61の形状に起因して外周余剰領域67の各領域は部分的に欠けているので、キーパターン77の位置がウェーハ61の外周端部よりも外に位置する領域では、キーパターン77が設けられてない。しかし、外周余剰領域67の全ての領域にキーパターン77が設けられていなくても、分割予定ライン69の位置を割り出すのに支障はない。
【0078】
キーパターン77は、金属層と低誘電率(Low-k)材料で形成された絶縁層等とから成る機能層の最表面に露出している。キーパターン77は、例えば、機能層の最表面に位置する絶縁層が部分的に除去されることで最表面に露出する金属層の一部である。つまり、キーパターン77は、ウェーハ61の表面61aに対して数μm窪んだ凹部を有する。
【0079】
但し、第1実施形態と同様に、キーパターン77は、ウェーハ61の表面61aから突出した凸部を有してもよく、凹部及び凸部の組み合わせを有してもよい。また、キーパターン77は、機能層の絶縁層により形成されてもよい。
【0080】
図6(B)では、1つのデバイス71の表面61a側に位置する矩形領域の対角線上に互いに異なる模様の2つのキーパターン77が形成されているが、キーパターン77の数、形状、配置等は、この例に限定されない。キーパターン77は各デバイス71の表面61a側の予め定められた位置に設けられている。
【0081】
第2実施形態においても、キーパターン77の分割予定ライン69と平行な一辺から、キーパターン77に隣接する分割予定ライン69のセンターラインまでの最短距離は予め定められている。なお、キーパターン77の位置は、最近接の分割予定ライン69だけでなく、第2近接又は第3近接の分割予定ライン69に対しても予め定められている。このように、キーパターン77は、複数の分割予定ライン69に対応して設けられている。
【0082】
第2実施形態でも第1実施形態と同様に、外周余剰領域67のキーパターン77は、樹脂シート密着ステップ(S10)を経て樹脂シート31に転写されるので、分割予定ライン69の位置を割り出すために利用できる。
【0083】
なお、ウェーハ61の外周側面には、ウェーハ61の結晶方位を示すノッチ73が形成されているが、ノッチ73に代えて、オリエンテーションフラット(OF)が形成されてもよい。
【0084】
次に、ウェーハ61の裏面61b側について説明する。図7(A)は、ウェーハ61の裏面61b側の斜視図である。ウェーハ61には、TAIKO(登録商標)プロセスと呼ばれる裏面研削技術を経て、裏面61b側に円盤状の空間から成る凹部が形成されている。
【0085】
図7(A)に示す様に、ウェーハ61の外周から所定幅(例えば、2mmから5mm)には、環状部61cが形成されている。また、環状部61cよりも内側には、円盤部61dが形成されている。環状部61cは、表面61a側の外周余剰領域67の範囲に略対応している。環状部61cの内周側面は、デバイス領域65と外周余剰領域67との境界よりも外側に位置してよく、内側に位置してもよい。
【0086】
環状部61cは、TAIKOプロセス前のウェーハ61の厚さを有する。これに対して、円盤部61dでは、裏面61b側がTAIKOプロセスで研削されており、ウェーハ61の厚さがTAIKOプロセス前の厚さよりも薄化されている。環状部61cは、円盤部61dに比べて厚く、剛性が高いので、ウェーハ61全体を円盤部61dと同じ厚さにする場合に比べて、ウェーハ61の反り、割れ、破損等を低減できる。
【0087】
なお、円盤部61dの裏面61b側には、銅等から成る金属膜87が形成されている。金属膜87は、ウェーハ61を複数のデバイスチップに分割した後に、例えば、デバイスチップに生じる熱を外部へ放出するための放熱板として利用される。
【0088】
次に、図7(B)、図8図9(A)、図9(B)及び図10を用いて、ウェーハ61を複数のデバイスチップに分割するウェーハ61の加工方法について説明する。第2実施形態では、まず、上述の貼り付け装置(不図示)を用いて、ウェーハ61と樹脂シート31及び環状フレーム33とを密着させ、キーパターン77を樹脂シート31に転写させる(樹脂シート密着ステップ(S10))。
【0089】
樹脂シート31、環状フレーム33及び貼り付け装置(不図示)は、第1実施形態と同じあるので、説明を省略する。樹脂シート密着ステップ(S10)では、支持テーブル上に、環状フレーム33を配置する。
【0090】
次に、ウェーハ61の表面61a側が上になるように、環状フレーム33の開口部33aにウェーハ61を配置する。これにより、樹脂パッケージ基板11の周りは、環状フレーム33で囲まれる。
【0091】
その後、加圧ローラーと環状フレーム33及びウェーハ61との間に樹脂シート31を挟んだ状態で、支持テーブルと加圧ローラーとを相対的に移動させる。樹脂シート31は、ウェーハ61の表面61aと、環状フレーム33の一方の面とに密着する。
【0092】
即ち、樹脂シート31は、環状フレーム33の開口部33aを塞ぐ様に、環状フレーム33に貼り付けられ、樹脂シート31は、開口部33aに配置されたウェーハ61の表面61a側に貼り付けられる。
【0093】
これにより、ウェーハ61、樹脂シート31及び環状フレーム33から構成されるフレームユニット85が形成され、樹脂シート31にはキーパターン77が転写される。フレームユニット85を形成することで、環状フレーム33を用いずにウェーハ61及び樹脂シート31を一体化する場合に比べて、樹脂シート31付きウェーハ61の搬送等がより容易になる。
【0094】
図7(B)は、樹脂シート密着ステップ(S10)で形成されたフレームユニット85の上面図である。図7(B)の破線は、樹脂シート31の外形を示す。なお、第1実施形態と同様に、樹脂シート31は、粘着層を有せず、基材層のみを有してもよい。
【0095】
樹脂シート密着ステップ(S10)の後、レーザー加工装置90を用いてウェーハ61の裏面61b側から、環状部61cよりも内側に位置する円盤部61dの環状の領域にレーザービームLを照射して、環状部61cを除去する(外周余剰領域除去ステップ(S20))。
【0096】
図8は、外周余剰領域除去ステップ(S20)を示す一部断面側面図である。レーザー加工装置90は、テーブル基台94、チャックテーブル96及びクランプ98を備えるが、これらは、切削装置40のテーブル基台50、チャックテーブル52及びクランプ54に対応するので、説明を省略する。
【0097】
レーザー加工装置90は、ウェーハ61に吸収される波長のレーザービームLを照射するレーザー加工ヘッド92を更に備える。レーザービームLは、例えば、紫外線の波長(例えば、355nm)を有するパルスレーザービームであり、レーザー発振器(不図示)で生成され、レーザー加工ヘッド92からウェーハ61へ照射される。
【0098】
外周余剰領域除去ステップ(S20)では、まず、ウェーハ61とは反対側の樹脂シート31の面がチャックテーブル96の保持面96aに接する様に、フレームユニット85を保持面96aに載置する。次に、吸引源を作動させてフレームユニット35を保持面96aで吸引保持する。
【0099】
その後、レーザービームLのスポットの位置を環状部61cと円盤部61dとの境界部に合わせた状態で、チャックテーブル96を回転させる。これにより、境界部は円状にアブレーション加工されて、環状部61c(即ち、外周余剰領域67)は、ウェーハ61から分割される。
【0100】
次いで、上述のマスク層が設けられた支持テーブルを利用して、分割された外周余剰領域67のみに紫外線を照射する。その後、外周余剰領域67を樹脂シート31から剥離して除去する。
【0101】
第1実施形態と同様に、外周余剰領域67の剥離は、不図示の剥離装置で行われてよく、作業者自身の手により行われてもよい。図9(A)は、外周余剰領域除去ステップ(S20)後のウェーハ61等の一部断面側面図であり、図9(B)は、図9(A)の領域Aの拡大図である。なお、図9(B)では、除去される前の環状部61cを破線で示す。
【0102】
上述の様に、デバイス領域65及び外周余剰領域67のデバイス71の表面61a側には、キーパターン77が設けられており、図9(B)に示す様に、デバイス領域65のキーパターン77は跡形77aとして、外周余剰領域67のキーパターン77は跡形77bとして、それぞれ樹脂シート31に転写されている。
【0103】
跡形77a及び77bは、上述の跡形27aと同様に、樹脂シート密着ステップ(S10)で形成される。キーパターン77と接触する樹脂シート31の一部が塑性変形等したことにより形成された立体的な模様であり、時間が経っても消えない。
【0104】
なお、跡形77a及び77bは、変形後の樹脂シート31の一部(例えば、樹脂層)が、外周余剰領域除去ステップ(S20)での紫外線照射により固化されていてもよい。跡形77bは、後続のデバイス領域加工ステップ(S30)で分割予定ライン69の位置を割り出すときの目印として利用される。
【0105】
外周余剰領域除去ステップ(S20)の後、裏面61b側からレーザービームLを照射して、デバイス領域65を分割予定ライン69に沿って加工する(デバイス領域加工ステップ(S30))。
【0106】
第2実施形態のデバイス領域加工ステップ(S30)では、上述のレーザービームLを用いてデバイス領域65をアブレーション加工する。デバイス領域加工ステップ(S30)では、まず、レーザー加工装置90に設けられている撮像装置で樹脂シート31の上面を撮像する。
【0107】
撮像装置は、例えば、可視光を利用して被写体を撮像するCCDカメラであるが、CMOSカメラ等の他のカメラであってもよい。そして、パターンマッチング等の画像処理等の技術を利用して、樹脂シート31の跡形77bから裏面61b側における分割予定ライン69の位置を割り出す。
【0108】
例えば、ウェーハ61の表面61aでは、キーパターン77の基準となる位置(例えば、分割予定ライン19と平行な一辺)から分割予定ライン69のセンターラインまでの最短距離は予め定められており、キーパターン77の形状は、樹脂シート31の跡形77bにそのまま反映されているので、画像処理を利用して、跡形77bの座標位置から分割予定ライン69のセンターラインの座標位置を特定できる。
【0109】
次に、レーザー加工ヘッド92及びチャックテーブル96をX軸方向及びY軸方向に位置合わせして、レーザービームLのスポットの位置を1つの分割予定ライン69のセンターラインに合わせる(即ち、アライメントを行う)。
【0110】
次に、レーザービームLを裏面61b側からウェーハ61に照射しながら、レーザー加工ヘッド92とチャックテーブル96とを加工送り方向に沿って相対的に移動させる。そして、一の方向と平行な全ての分割予定ライン69に沿ってデバイス領域65をアブレーション加工する。
【0111】
なお、切削時に跡形77bの撮像も併せて行い、レーザービームLのスポットの位置と分割予定ライン69のセンターラインの位置とのずれ量±Δμmを検出してもよい。第1実施形態と同様に、検出された±Δμmのずれは、チャックテーブル52を割り出し送り方向に移動させるときに、解消される。
【0112】
次いで、チャックテーブル96を90度回転させ、一の方向と直交する他の方向と平行な全ての分割予定ライン69に沿ってデバイス領域65をアブレーション加工する。これにより、デバイス領域65は複数のデバイスチップに分割される。図10は、デバイス領域加工ステップ(S30)を示す一部断面側面図である。
【0113】
デバイス領域加工ステップ(S30)終了後、レーザー加工装置90から、紫外線照射装置(不図示)にフレームユニット85を移し、樹脂シート31に紫外線を照射して樹脂シート31の粘着力を低下させる。次いで、分割された複数のデバイスチップをチャックテーブル96から取り出す。
【0114】
本実施形態では、ウェーハ61の表面61a側に樹脂シート31を貼り付けるので、裏面61b側の凹部に倣うように樹脂シート31を貼り付けるための特殊なチャックテーブル等の設備が不要である。加えて、ウェーハ61を透過する赤外線を用いて裏面61b側から表面61a側を観察する赤外線カメラではなく、通常の可視光カメラを用いて加工時のアライメントを行うことができる。
【0115】
なお、第2実施形態のデバイス領域加工ステップ(S30)では、いわゆるステルスダイシング加工を行ってもよい。ステルスダイシング加工は、レーザービームの波長等を除いて主としてレーザー加工装置90と同じ装置を用いて行われるので、レーザー加工装置90の構成要素を用いてステルスダイシング加工を説明する。ステルスダイシング加工では、まず、ウェーハ61の表面61a側をチャックテーブル96で吸引保持する。
【0116】
次いで、ウェーハ61を透過する波長(例えば、1064nm又は1300nm)のレーザービームをレーザー加工ヘッド92からウェーハ61の裏面61b側へ照射し、レーザービームの集光点をウェーハ61の内部に位置付ける。
【0117】
そして、レーザー加工ヘッド92とチャックテーブル96とを加工送り方向に沿って相対的に移動させることにより、分割予定ライン69に沿ってウェーハ61の内部に改質層を形成する。なお、ウェーハ61には、ウェーハ61の厚さ方向の異なる位置に複数の改質層が形成されてよい。
【0118】
次いで、ウェーハ61の裏面61b側に応力を与えるブレーキング装置(不図示)、又は、フレームユニット85の樹脂シート31を拡張するエキスパンダ装置(不図示)を用いて、ウェーハ61を複数のデバイスチップに分割する。
【0119】
その後、紫外線照射装置(不図示)にフレームユニット85を移し、樹脂シート31の粘着力を低下させる。次いで、分割された複数のデバイスチップをチャックテーブル96から取り出す。
【0120】
その他、上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。例えば、樹脂シート31を環状フレーム33に貼り付けることは必須ではない。樹脂パッケージ基板11、ウェーハ61等の被加工物の平面視でのサイズと同等又はこれよりも大きい樹脂シート31に被加工物を固定した上で、被加工物を切削してもよい。
【0121】
また、切削やレーザー加工以外にも、プラズマダイシングのマスクを被加工物に形成するために、キーパターン27やキーパターン77が利用されてもよい。例えば、プラズマに対するマスクとなる透明又は半透明の液状樹脂でウェーハ61の裏面61b側を被覆し、その後、樹脂シート31に転写したキーパターン77の跡形77bを利用して、分割予定ライン69の位置を割り出す。
【0122】
そして、液状樹脂が固化した樹脂層をレーザービームでアブレーション加工して、分割予定ライン69に沿って樹脂層を除去する。その後、分割予定ライン69に沿う部分が除去された樹脂層をマスクとして、ウェーハ61を分割予定ライン69に沿ってプラズマにより切断する(プラズマダイシング)。
【符号の説明】
【0123】
11 樹脂パッケージ基板(被加工物)
11a 表面
11b 裏面
13 基板
13a 跡形
15 デバイス領域
15a 中間領域
17 外周余剰領域
19 分割予定ライン
21 ステージ
23 モールド樹脂層
25 電極パターン
27 キーパターン
27a 跡形
31 樹脂シート
33 環状フレーム
33a 開口部
35 フレームユニット
40 切削装置
42 切削ユニット
44 スピンドル
46 切削ブレード
47 切断線
50 テーブル基台
52 チャックテーブル
52a 保持面
54 クランプ
61 ウェーハ(被加工物)
61a 表面
61b 裏面
61c 環状部
61d 円盤部
65 デバイス領域
67 外周余剰領域
69 分割予定ライン
71 デバイス
73 ノッチ
77 キーパターン
77a、77b 跡形
85 フレームユニット
87 金属膜
90 レーザー加工装置
92 レーザー加工ヘッド
94 テーブル基台
96 チャックテーブル
96a 保持面
98 クランプ
A 領域
L レーザービーム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10