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特許7150428環状オレフィン重合用の触媒組成物の製造方法、及び環状オレフィン樹脂組成物の製造方法
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  • 特許-環状オレフィン重合用の触媒組成物の製造方法、及び環状オレフィン樹脂組成物の製造方法 図1
  • 特許-環状オレフィン重合用の触媒組成物の製造方法、及び環状オレフィン樹脂組成物の製造方法 図2
  • 特許-環状オレフィン重合用の触媒組成物の製造方法、及び環状オレフィン樹脂組成物の製造方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-30
(45)【発行日】2022-10-11
(54)【発明の名称】環状オレフィン重合用の触媒組成物の製造方法、及び環状オレフィン樹脂組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 232/00 20060101AFI20221003BHJP
   C08F 4/6592 20060101ALI20221003BHJP
【FI】
C08F232/00
C08F4/6592
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017215882
(22)【出願日】2017-11-08
(65)【公開番号】P2018104676
(43)【公開日】2018-07-05
【審査請求日】2020-10-15
(31)【優先権主張番号】P 2016251670
(32)【優先日】2016-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390006323
【氏名又は名称】ポリプラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】多田 智之
(72)【発明者】
【氏名】宮沢 哲
(72)【発明者】
【氏名】福田 貴史
(72)【発明者】
【氏名】高橋 伸尚
(72)【発明者】
【氏名】喜多川 智子
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-152702(JP,A)
【文献】特開2007-119660(JP,A)
【文献】国際公開第2015/178143(WO,A1)
【文献】特開2008-285656(JP,A)
【文献】Incoronata Tritto et al.,Metallocene catalyzed ethylene- and propene co-norbornene polymerization: Mechanisms from a detailed microstructural analysis,Coordination Chemistry Reviews,Vol.250,米国,2006年,Pages 212-241
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 6/00-246/00
C08F 4/00- 4/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノルボルネン単量体の単独重合を行うか、ノルボルネン単量体と前記ノルボルネン単量体と共重合可能な他の単量体との共重合を行う、環状オレフィン樹脂組成物の製造方法であって
状オレフィン重合用の前記触媒組成物を製造することと、
前記触媒組成物の存在下に、前記単独重合、又は前記共重合を行うことと、を含
前記触媒組成物を製造する方法が、遷移金属化合物(a)と、アルミノキサン(b1)、及びイオン化合物(b2)からなる群より選択される1種以上とを、マイクロリアクター中で混合することを含み、
前記遷移金属化合物(a)が、シクロペンタジエン環を含む配位子と、周期律表第IV族遷移金属とを含む遷移金属錯体であり、
前記イオン化合物(b2)が、前記遷移金属化合物(a)との反応によりカチオン性遷移金属化合物を生成する化合物であり、
得られる環状オレフィン樹脂組成物の分子量分布が1.5を超える、方法。
【請求項2】
前記ノルボルネン単量体、又は前記ノルボルネン単量体と前記他の単量体とを含む重合系に、前記触媒組成物を加える前に、アルミノキサン、及びアルキルアルミニウム化合物から選択される1種以上を存在させる、請求項に記載の環状オレフィン樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
前記触媒組成物の少なくとも一部を、前記ノルボルネン単量体、又は前記ノルボルネン単量体と前記他の単量体とを含む重合系に、連続的に添加する、請求項又はに記載の環状オレフィン樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
環状オレフィン樹脂組成物が、エチレン、1-ヘキセン、及び1-オクテンからなる群より選択される1種以上と、ノルボルネン単量体との共重合体である、請求項のいずれか1項に記載の環状オレフィン樹脂組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状オレフィン重合用の触媒組成物の製造方法、及び環状オレフィン樹脂組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
環状オレフィン単独重合体及び環状オレフィン共重合体は、低吸湿性及び高透明性を有し、光ディスク基板、光学フィルム、光学ファイバー等の光学材料の分野をはじめ、様々な用途に使用されている。
代表的な環状オレフィン共重合体として、透明樹脂として広く使用される、環状オレフィンとエチレンとの共重合体がある。環状オレフィンとエチレンとの共重合体は、そのガラス転移温度を環状オレフィンとエチレンとの共重合組成に応じて変えることが可能なため、広い温度領域でガラス転移温度(Tg)を調整した共重合体を製造することができる。高いTgの共重合体は一般的に耐熱性も良好である(例えば、非特許文献1を参照)。
【0003】
また、環状オレフィンとエチレンとの共重合体以外にも、環状オレフィンとエチレン以外のα-オレフィンとの共重合体が知られている。環状オレフィンとエチレンとの共重合体は、耐熱性と機械的特性のバランスが良好であるが、耐熱性を高めると機械的特性が悪化する場合がある。環状オレフィンとエチレン以外のα―オレフィンとを共重合することにより、環状オレフィンとエチレンとの共重合体で課題である耐熱性と機械的特性とのバランスを改善することができる。
【0004】
このような環状オレフィン樹脂組成物の製造方法に関して、環状オレフィンとエチレンの共重合反応と環状オレフィンとエチレン以外のα-オレフィンとの共重合反応は大きく異なっている。具体的には、環状オレフィンとエチレンとの共重合反応で好適に使用されるジルコノセン系のメタロセン系遷移金属触媒では、環状オレフィンとα-オレフィンとの共重合において、α-オレフィンに起因する連鎖移動反応が生じるため、これまで高分子量体が得られにくいことが知られていた(例えば、非特許文献2を参照)。
【0005】
そのため、高分子量体の環状オレフィンとα-オレフィンとの樹脂組成物を効率良く製造可能な触媒の研究開発が盛んに行われてきた。研究を通じて、環状オレフィンとα-オレフィンとの樹脂組成物は、従来使用されてきたジルコノセン系のメタロセン系遷移金属触媒とは異なった、いわゆるハーフメタロセン(ポストメタロセン)と通称される、チタノセン系のメタロセン系遷移金属触媒により製造可能であることがわかった。以上のように、目的とする環状オレフィン樹脂組成物のモノマー構造に応じて、適切なメタロセン触媒を選択する必要があった(例えば、非特許文献3を参照)。
【0006】
上述のように、環状オレフィン単独重合体及び環状オレフィン共重合体のような環状オレフィン樹脂組成物の合成は、一般に、メタロセン系遷移金属触媒に代表される触媒を用いて行われる。メタロセン系遷移金属触媒、ハーフメタロセン系遷移金属触媒問わず、一般に、メタロセン系遷移金属触媒は高価であるため、触媒使用量の低減は、環状オレフィン樹脂組成物の製造全体に占めるコストを低減させる。そのため、少ない触媒量で多量の環状オレフィン樹脂組成物を製造し得る触媒の開発は、重要な課題である。
例えば、少ない触媒量で環状オレフィン共重合体を合成する方法として、メタロセン系遷移金属触媒の存在下で、少なくとも、ノルボルネンから誘導される環状オレフィンモノマー(A)とC4~C12のα―オレフィンから誘導されるα―オレフィンモノマー(B)とを重合させて共重合体を得る重合工程を含む方法が提案されている(特許文献1及び特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2015/178143号
【文献】国際公開第2015/178144号
【非特許文献】
【0008】
【文献】Incoronata,Trittoら、Coordination Chemistry Reviews,2006年、第250巻、p.212-241
【文献】Jung,H. Y.ら、Polyhedron,2005年、第24巻、p.1269-1273
【文献】塩野毅ら、Macromolecules,2008年、第41巻、p.8292-8294
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1及び2の実施例では、環状オレフィンモノマーと、α-オレフィンモノマーと、助触媒であるアルミノキサンとを反応容器に加えて、反応容器の内容物を所定の重合温度まで加熱した後に、それぞれトルエンに溶解された遷移金属化合物とアルミノキサンとを反応容器に加えて遷移金属化合物の活性化が行われている。このような方法により活性化された触媒組成物を用いる場合、環状オレフィン共重合体の収率は必ずしも良好ではなかった。
【0010】
本発明は、上記の課題に鑑みなされたものであって、環状オレフィンを含む単量体を重合させる際に高収率でポリマーを生成させる、活性化された触媒組成物を製造する方法と、当該方法により製造された活性化された触媒組成物を用いて、ノルボルネン単量体の単独重合を行うか、ノルボルネン単量体とノルボルネン単量体と共重合可能な他の単量体との共重合を行う、環状オレフィン樹脂組成物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、遷移金属化合物(a)として、シクロペンタジエン環を含む配位子と、周期律表第IV族遷移金属とを含む遷移金属錯体を用い、遷移金属化合物(a)と、アルミノキサン(b1)、及びイオン化合物(b2)からなる群より選択される1種以上とを、マイクロリアクター中で混合することを含む方法により、環状オレフィン重合用の触媒組成物を製造することにより上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
より具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0012】
(1) 環状オレフィン重合用の触媒組成物の製造方法であって、
遷移金属化合物(a)と、アルミノキサン(b1)、及びイオン化合物(b2)からなる群より選択される1種以上とを、マイクロリアクター中で混合することを含み、
遷移金属化合物(a)が、シクロペンタジエン環を含む配位子と、周期律表第IV族遷移金属とを含む遷移金属錯体であり、
イオン化合物(b2)が、遷移金属化合物(a)との反応によりカチオン性遷移金属化合物を生成する化合物である、方法。
【0013】
(2) ノルボルネン単量体の単独重合を行うか、ノルボルネン単量体とノルボルネン単量体と共重合可能な他の単量体との共重合を行う、環状オレフィン樹脂組成物の製造方法であって、
(1)に記載の方法により、環状オレフィン重合用の前記触媒組成物を製造することと、
触媒組成物の存在下に、単独重合、又は共重合を行うことと、を含む、方法。
【0014】
(3) ノルボルネン単量体、又はノルボルネン単量体と他の単量体とを含む重合系に、触媒組成物を加える前に、アルミノキサン、及びアルキルアルミニウム化合物から選択される1種以上を存在させる、(2)に記載の環状オレフィン樹脂組成物の製造方法。
【0015】
(4) 触媒組成物の少なくとも一部を、ノルボルネン単量体、又はノルボルネン単量体と他の単量体とを含む重合系に、連続的に添加する、(2)又は(3)に記載の環状オレフィン樹脂組成物の製造方法。
【0016】
(5) 環状オレフィン樹脂組成物が、エチレン、1-ヘキセン、及び1-オクテンからなる群より選択される1種以上と、ノルボルネン単量体との共重合体である、(2)~(4)のいずれか1つに記載の環状オレフィン樹脂組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、環状オレフィンを含む単量体を重合させる際に高収率でポリマーを生成させる、活性化された触媒組成物を製造する方法と、当該方法により製造された活性化された触媒組成物を用いて、ノルボルネン単量体の単独重合を行うか、ノルボルネン単量体と前記ノルボルネン単量体と共重合可能な他の単量体との共重合を行う、環状オレフィン樹脂組成物の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】マイクロリアクターにおいて多段混合を行う場合の流路の形状の好ましい一態様を示す図である。
図2】マイクロリアクターにおいて多段混合を行う場合の流路の形状の、図1に示される態様とは異なる、好ましい一態様を示す図である。
図3】T字型の流路をケース内に備えるマイクロリアクターの形状を模式的に示す図である。
図4】Y字型の流路をケース内に備えるマイクロリアクターの形状を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
≪環状オレフィン重合用の触媒組成物の製造方法≫
環状オレフィン重合用の触媒組成物の製造方法は、
遷移金属化合物(a)と、アルミノキサン(b1)、及びイオン化合物(b2)からなる群より選択される1種以上とを、マイクロリアクター中で混合することを含む。
遷移金属化合物(a)と、アルミノキサン(b1)、及びイオン化合物(b2)からなる群より選択される1種以上とを混合して活性化された触媒組成物を生成させる場合、混合時の発熱等の影響により、重合活性の高い所望のカチオン種のみならず、重合活性が低いうえに熱的に不安定なカチオン種が生成する。
このような理由により、特許文献1及び2の実施例に記載の方法等の従来の方法では、良好な収率で重合体を製造しにくいものと推測される。
対して、マイクロリアクターを用いて、遷移金属化合物(a)と、アルミノキサン(b1)、及びイオン化合物(b2)からなる群より選択される1種以上とを混合する場合、容積に比して伝熱面積が非常に広い為、混合時に発生する熱が良好に除去される。
このため、重合活性の高い所望のカチオン種が生成する割合が高まり、高収率で重合体を与える触媒組成物を製造できると考えられる。
【0020】
以下、触媒組成物の製造に用いられる材料と、マイクロリアクターと、触媒組成物の具体的な製造方法と、について順に説明する。
【0021】
[遷移金属化合物(a)]
遷移金属化合物(a)は、シクロペンタジエン環を含む配位子と、周期律表第IV族遷移金属とを含む遷移金属錯体である。かかる遷移金化合物(a)は、いわゆるメタロセン系触媒であり、Ti、Zr、及びHfからなる群より選択される金属原子を中心金属として含むのが好ましい。
メタロセン系触媒としては、例えば、下記式(1)で表される遷移金属錯体が好ましい。
(Cp)(ZR (A)MLL’・・・(1)
【0022】
式(1)中、(ZR はCpとAを結合する二価の基である。
ZはC、Si、Ge、N、又はPである。
は、水素原子、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアルキルアリール基、炭素原子数7~20のアラルキル基、又は直鎖状であっても、分岐鎖状であっても、環式骨格を含んでいてもよく、不飽和結合を有してもよい炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基である。
(ZR )中のRが複数である場合、複数のRは同一であっても異なっていてもよい。
(ZR )が複数繰り返される場合、複数の(ZR )は同一であっても異なっていてもよい。
Cpは、置換基を有してもよいシクロペンタジエニル基、又は置換基を有してもよいシクロペンタジエン環を含む環式基である。
AはCpと同様の基であるか、-O-、-S-、又は-N(R)-である。
は、水素原子、直鎖状であっても、分岐鎖状であっても、環式骨格を含んでいてもよく、不飽和結合を有してもよい炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアルキルアリール基、又は炭素原子数7~20のアラルキル基である。
Mは、Ti、Zr、及びHfからなる群より選択される金属原子である。
Lは、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアルキルアリール基、炭素原子数7~20のアラルキル基、及び直鎖状であっても、分岐鎖状であっても、環式骨格を含んでいてもよく、不飽和結合を有してもよい炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基からなる群より選択されるモノアニオンシグマリガンドである。
Lは、1以上のSi原子、又はGe原子を含んでいてもよい。
Lが複数である場合、複数のLは同一であっても異なっていてもよく、同一であるのが好ましい。
L’は、ハロゲン原子、-OR、又は-N=C(R)Rである。
は、水素原子、ヘテロ原子を含んでもよい、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアルキルアリール基、炭素原子数7~20のアラルキル基、又は直鎖状であっても、分岐鎖状であっても、環式骨格を含んでいてもよく、不飽和結合を有してもよい炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基である。Rが複数の場合、同一であっても異なっていてもよい。
L’が複数である場合、複数のL’は同一であっても異なっていてもよい。
mは1又は2である。より詳細には、ZがN、又はPである場合、mは1であり、ZがC、Si、又はGeである場合、mは2である。
nは0~4の整数である。
rは0又は1である。rが0である場合、nは0である。
pは0~3の整数である。
qは0~3の整数である。
p+qは、rが1である場合に、金属Mの酸化状態マイナス2(金属Mの酸化状態-2)に等しい。
p+qは、rが0である場合に、金属Mの酸化状態マイナス1(金属Mの酸化状態-1)に等しい。
p+qは4未満である。
【0023】
式(1)で表される遷移金属錯体において、2価の架橋基(ZR は、CR 、(CR 、(CR 、SiR 、GeR 、NR、及びPRからなる群より選択されるのが好ましい。
2価の架橋基は、Si(CH、SiPh、CH、(CH、(CH、C(CH、又はCPhがより好ましい。Phはフェニル基である。
mは1又は2であり、nは0~4の整数である。
【0024】
金属Mにπ結合するリガンドCpは、置換基を有してもよいシクロペンタジエニル基、又は置換基を有してもよいシクロペンタジエン環を含む環式基である。
Cpの好適な例としては、シクロペンタジエニル基、メチルシクロペンタジエニル基、ジメチルシクロペンタジエニル基、トリメチルシクロペンタジエニル基、テトラメチルシクロペンタジエニル基、4-tert-ブチルシクロペンタジエニル基、4-アダマンチルシクロペンタジエニル基、モノメチルインデニル基、ジメチルインデニル基、トリメチルインデニル基、テトラメチルインデニル基、4,5,6,7-テトラヒドロインデニル基、フルオレニル基、5,10-ジヒドロインデノ[1,2-b]インドール-10-イル基、N-メチル-5,10-ジヒドロインデノ[1,2-b]インドール-10-イル基、N-フェニル-5,10-ジヒドロインデノ[1,2-b]インドール-10-イル基、5,6-ジヒドロインデノ[2,1-b]インドール-6-イル;N-メチル-5,6-ジヒドロインデノ[2,1-b]インドール-6-イル、及びN-フェニル-5,6-ジヒドロインデノ[2,1-b]インドール-6-イルが挙げられる。
【0025】
AはCpと同様の基であるか、-O-、-S-、又は-N(R)-である。Aは、Cpと同様の基であるのが好ましい。
【0026】
金属Mは、Ti、Zr又はHfである。
【0027】
Lとしては、メチル基、エチル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、フェニル基、ベンジル基、及び-CHSi(CH、からなる群より選択される基が好ましく、その中でもメチル基がより好ましい。
L’としては、ハロゲン、-OR(Rは前述の通りである)、又は-N=C(R)Rからなる群より選択される基が好ましく、その中でも-Cl、-O-2,6-(t-Bu)-C、又は-N=C(t-Bu)がより好ましい。
【0028】
nは0~4の整数であり、0~2が好ましい。
【0029】
式(1)で表される遷移金属錯体について、nが0であり、rが0である場合の具体例としては、CpdMCl(O-2,6-(t-Bu)-C)、CpdMMe(O-2,6-(t-Bu)-C)、CpdMMeCl(O-2,6-(t-Bu)-C)、tet-CpdMCl(O-2,6-(t-Bu)-C)、tet-CpdMMe(O-2,6-(t-Bu)-C)、tet-CpdMMeCl(O-2,6-(t-Bu)-C)、CpdMCl(O-2,6-(i-Pr)-C)、CpdMMe(O-2,6-(i-Pr)-C)、CpdMMeCl(O-2,6-(i-Pr)-C)、tet-CpdMCl(O-2,6-(i-Pr)-C)、tet-CpdMMe(O-2,6-(i-Pr)-C)、tet-CpdMMeCl(O-2,6-(i-Pr)-C)、CpdMCl(N=C(t-Bu))、CpdMMe(N=C(t-Bu))、CpdMMeCl(N=C(t-Bu))、(t-BuC)MCl(N=C(t-Bu))、(t-BuC)MMe(N=C(t-Bu))、(t-BuC)MMeCl(N=C(t-Bu))、tet-CpdMCl(N=C(t-Bu))、tet-CpdMMe(N=C(t-Bu))、tet-CpdMMeCl(N=C(t-Bu))、CpdMCl(N=C-(t-Bu-N-CH=CH-N-t-Bu))、CpdMMe(N=C-(t-Bu-N-CH=CH-N-t-Bu))、CpdMMeCl(N=C-(t-Bu-N-CH=CH-N-t-Bu))、tet-CpdMCl(N=C-(t-Bu-N-CH=CH-N-t-Bu))、tet-CpdMMe(N=C-(t-Bu-N-CH=CH-N-t-Bu))、tet-CpdMMeCl(N=C-(t-Bu-N-CH=CH-N-t-Bu))が挙げられる。
上記の例示において、Meはメチル基であり、t-Buはtert-ブチル基であり、i-Prはiso-プロピル基であり、Cpdはシクロペンタジエニル基であり、tet-Cpdはテトラメチルシクロペンタジエニル基であり、また、Mは、式(1)について説明した通りであり、Zr、Ti、又はHfが好ましく、Tiがより好ましい。
【0030】
式(1)で表される遷移金属錯体について、nが0であり、rが1である場合の具体例としては、(MeCpd)MCl2、(MeCpd)MMe、(MeCpd)MMeCl、(MeCpd)MPh、(MeCpd)MBz、(MeCpd)MCl2、(MeCpd)MMe、(MeCpd)MCl、(MeCpd)MPh、(MeCpd)MBz、(EtMeCpd)MCl、[(Ph)MeCpd]MCl、(EtCpd)MCl、(Ind)MCl、(Ind)MMeCl、(Ind)MPh、(Ind)MMe、(Ind)MMeCl、(HInd)MCl、(HInd)MMe、(HInd)MPh、及び(MeCpd)(MeCpd)MClが挙げられる。
上記の例示において、Meはメチル基であり、Etはエチル基であり、Cpdはシクロペンタジエニル基であり、Indはインデニル基であり、HIndは4,5,6,7,-テトラヒドロインデニル基であり、Phはフェニル基であり、Bzはベンジル基である。また、Mは、式(1)について説明した通りであり、Zr、Ti、又はHfが好ましく、Zrがより好ましい。
【0031】
式(1)で表される遷移金属錯体について、nが1又は2であり、rが1である場合の具体例としては、MeC(Cp)(Ind)MCl、MeC(Cp)(Ind)MMe、MeC(Cp)(Ind)MPh、MeC(Cp)(Ind)MBz、MeC(Cp)(Ind)MMeCl、PhC(Cp)(Ind)MCl、PhC(Cp)(Ind)MMe、PhC(Cp)(Ind)MPh、PhC(Cp)(Ind)MBz、PhC(Cp)(Ind)MMeCl、MeSi(MeCpd)MCl、MeSi(MeCpd)MMe、MeSi(MeCpd)MPh、MeSi(MeCpd)MBz、MeSi(MeCpd)MMeCl、MeC(MeCpd)(MeCpd)MCl、MeC(MeCpd)(MeCpd)MMe、MeSi(Ind)MCl、MeSi(Ind)MMe、MeSi(Ind)MPh、MeSi(Ind)MBz、MeSi(Ind)MMeCl、MeSi(MeCpd)MCl、MeSi(MeCpd)MMe、C(Ind)MMe、C(Ind)MPh、C(Ind)MBz、C(HInd)MMe、Ph(Me)Si(Ind)MMe、PhSi(Ind)MMe、MeC(Flu)(Cpd)MCl、MeC(Flu)(Cpd)MMe、MeC(Flu)(Cpd)MPh、MeC(Flu)(Cpd)MBz、PhC(Flu)(Cpd)MCl、PhC(Flu)(Cpd)MMe、PhC(Flu)(Cpd)MPh、PhC(Flu)(Cpd)MBz、C(MeCpd)MCl、C(MeCpd)MMe、CMe(Ind)MCl、CMe(Ind)MMe、MeSiCH(Ind)MCl、MeSiCH(Ind)MMe、MeSiCH(Ind)MPh、MeSiCH(Ind)MBz、MeSiCH(Ind)MMeCl、C(2-MeInd)MCl、C(2-MeInd)MMe、C(3-MeInd)MCl、C(3-MeInd)MMe、C(4,7-MeInd)MCl、C(4,7-MeInd)MMe、C(5,6-MeInd)MCl、C(5,6-MeInd)MMe、C(2-MeHInd)MCl、MeC(HInd)MCl、MeC(HInd)MMe、MeC(HInd)MPh、MeC(HInd)MBz、MeC(HInd)MMeCl、PhC(HInd)MCl、PhC(HInd)MMe、PhC(HInd)MPh、PhC(HInd)MBz、PhC(HInd)MMeCl、C(2-MeHInd)MMe、C(2,4,7-MeInd)MCl、C(2,4,7-MeInd)MMe、C(4,7-MeInd)MCl、C(4,7-MeInd)MMe、C(2,4,7-MeInd)MCl、C(2,4,7-MeInd)MMe、C(2-Me-Benz〔e〕Ind)MCl、C(2-Me-Benz〔e〕Ind)MMe、C(Benz〔e〕Ind)MCl、C(Benz〔e〕Ind)MMe、MeSi(2-MeInd)MCl、MeSi(2-MeInd)MMe、MeSi(4,7-MeInd)MCl、MeSi(4,7-MeInd)MMe、MeSi(5,6-MeInd)MCl、MeSi(5,6-MeInd)MMe、MeSi(2,4,7-MeInd)MCl、MeSi(2,4,7-MeInd)MMe、MeSi(2-MeHInd)MCl、MeSi(2-MeHInd)MMe、MeSi(4,7-MeInd)MCl、MeSi(4,7-MeInd)MMe、MeSi(2,4,7-MeInd)MCl、MeSi(2,4,7-MeInd)MMe、(t-BuNSiMe)(tet―Cpd)MCl、(t-BuNSiMe)(tet―Cpd)MMe、(t-BuNSiMe)(tet―Cpd)MPh、(t-BuNSiMe)(tet―Cpd)MBz、(t-BuNSiMe)(tet―Cpd)MMeCl、1,1’-(MeC)-2,2’-(MeC)(Cpd)MCl2、1,1’-(MeC)-2,2’-(MeC)(Cpd)MMeが挙げられる。
上記の例示において、Meはメチル基であり、Cpdはシクロペンタジエニル基であり、tet-Cpdはテトラメチルシクロペンタジエニル基であり、Indはインデニル基であり、HIndは4,5,6,7,-テトラヒドロインデニル基であり、Fluはフルオレニル基であり、Phはフェニル基であり、Bzはベンジル基である。また、Mは、式(1)について説明した通りであり、Zr、Ti、又はHfが好ましく、Zrがより好ましい。
【0032】
以上説明した式(1)で表される遷移金属化合物の中では、例えば、MeC(Flu)(Cpd)ZrCl、MeC(Flu)(Cpd)ZrMe、MeC(Flu)(Cpd)ZrPh、MeC(Flu)(Cpd)ZrBz、PhC(Flu)(Cpd)ZrCl、PhC(Flu)(Cpd)ZrMe、PhC(Flu)(Cpd)ZrPh、及びPhC(Flu)(Cpd)ZrBzが、後述するノルボルネン単量体とエチレンとの共重合に好ましく使用され、ノルボルネンとエチレンとの共重合により好ましく使用される。
【0033】
また、式(1)で表される遷移金属化合物の他の好ましい例としては、下記式(a1)で表される化合物が挙げられる。
【化1】
【0034】
式(a1)中、Ra1、Ra2、Ra3、及びRa4は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基である。
a1及びRa2は、それぞれC-Si結合、O-Si結合、Si-Si結合、又はN-Si結合によりケイ素原子に結合する。
a3はC-N結合、O-N結合、Si-N結合、又はN-N結合により窒素原子に結合する。
a4はC-M結合により金属原子Mに結合する。
a5及びRa6は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の有機置換基、又は無機置換基であり、p及びqは、それぞれ独立に0~4の整数である。
a5及びRa6がそれぞれ複数である場合、複数のRa5及びRa6は異なる基であってもよい。
複数のRa5のうちの2つの基、又は複数のRa6のうちの2つの基が芳香環上の隣接する位置に結合する場合、当該2つの基が相互に結合して環を形成してもよい。
Mは、周期律表第IV族遷移金属であり、Ti、Zr、又はHfが好ましい。
【0035】
なお、式(a1)中の金属原子Mは、ハプト数1~5の範囲において、フルオレン骨格を有する配位子と、任意の配位形式をとることができる。
【0036】
a1、Ra2、Ra3、及びRa4は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基である。
【0037】
ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基については、炭化水素基がヘテロ原子を含む場合、ヘテロ原子の種類は本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。ヘテロ原子の具体例としては、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子、ケイ素原子、セレン原子、及びハロゲン原子等が挙げられる。
【0038】
a1及びRa2は、それぞれC-Si結合、O-Si結合、Si-Si結合、又はN-Si結合によりケイ素原子に結合する。
O-Si結合によりケイ素原子に結合するRa1及びRa2の好適な例としては、-ORa7、及び-O-C(=O)-Ra7で表される基が挙げられる。
Si-Si結合によりケイ素原子に結合するRa1及びRa2の好適な例としては、-SiRa7 、-Si(ORa7)Ra7 、-Si(ORa7a7、及び-Si(ORa7で表される基が挙げられる。
N-Si結合によりケイ素原子に結合するRa1及びRa2の好適な例としては、-NHRa7、及び-NRa7 で表される基が挙げられる。
ここで、上記のRa7はいずれも炭化水素基である。
【0039】
a3は、C-N結合、O-N結合、Si-N結合、又はN-N結合により窒素原子に結合する。
O-N結合により窒素原子に結合するRa3の好適な例としては、-ORa7、及び-O-C(=O)-Ra7で表される基が挙げられる。
Si-N結合により窒素原子に結合するRa3の好適な例としては、-SiRa7 、-Si(ORa7)Ra7 、-Si(ORa7a7、及び-Si(ORa7で表される基が挙げられる。
N-N結合により窒素原子に結合するRa3の好適な例としては、-NHRa7、及び-NRa7 で表される基が挙げられる。
ここで、上記のRa7はいずれも炭化水素基である。
【0040】
配位子として使用する化合物の調製や入手が容易であることから、Ra1とRa2とは同一の基であるのが好ましい。
【0041】
a1、Ra2、Ra3、及びRa4としては、化学的な安定性に優れることから、ヘテロ原子を含まない炭化水素基が好ましい。
かかる炭化水素基としては、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、二重結合及び/又は三重結合を有してもよい直鎖状又は分岐鎖状の不飽和脂肪族炭化水素基、シクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基、芳香族炭化水素基、及びアラルキル基が好ましい。
【0042】
直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、n-ノナデシル基、及びn-イコシル基が挙げられる。
【0043】
二重結合及び/又は三重結合を有してもよい直鎖状又は分岐鎖状の不飽和脂肪族炭化水素基の好ましい例としては、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基の具体例として挙げた基において、1以上の単結合を二重結合及び/又は三重結合に置き換えた基が挙げられる。
より好ましくは、ビニル基、アリル基、1-プロペニル基、3-ブテニル基、2-ブテニル基、1-ブテニル基、エテニル基、及びプロパルギル基が挙げられる。
【0044】
シクロアルキル基の具体例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、シクロウンデシル基、シクロドデシル基、シクロトリデシル基、シクロテトラデシル基、シクロペンタデシル基、シクロヘキサデシル基、シクロヘプタデシル基、シクロオクタデシル基、シクロノナデシル基、及びシクロイコシル基が挙げられる。
【0045】
シクロアルキルアルキル基の具体例としては、シクロプロピルメチル基、シクロブチルメチル基、シクロペンチルメチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘプチルメチル基、シクロオクチルメチル基、シクロノニルメチル基、シクロデシルメチル基、シクロウンデシルメチル基、シクロドデシルメチル基、シクロトリデシルメチル基、シクロテトラデシルメチル基、シクロペンタデシルメチル基、シクロヘキサデシルメチル基、シクロヘプタデシルメチル基、シクロオクタデシルメチル基、シクロノナデシルメチル基、2-シクロプロピルエチル基、2-シクロブチルエチル基、2-シクロペンチルエチル基、2-シクロヘキシルエチル基、2-シクロヘプチルエチル基、2-シクロオクチルエチル基、2-シクロノニルエチル基、2-シクロデシルエチル基、2-シクロウンデシルエチル基、2-シクロドデシルエチル基、2-シクロトリデシルエチル基、2-シクロテトラデシルエチル基、2-シクロペンタデシルエチル基、2-シクロヘキサデシルエチル基、2-シクロヘプタデシルエチル基、2-シクロオクタエチルデシル基、3-シクロプロピルプロピル基、3-シクロブチルプロピル基、3-シクロペンチルプロピル基、3-シクロヘキシルプロピル基、3-シクロヘプチルプロピル基、3-シクロオクチルプロピル基、3-シクロノニルプロピル基、3-シクロデシルプロピル基、3-シクロウンデシルプロピル基、3-シクロドデシルプロピル基、3-シクロトリデシルプロピル基、3-シクロテトラデシルプロピル基、3-シクロペンタデシルプロピル基、3-シクロヘキサデシルプロピル基、3-シクロヘプタデシルプロピル基、4-シクロプロピルブチル基、4-シクロブチルブチル基、4-シクロペンチルブチル基、4-シクロヘキシルブチル基、4-シクロヘプチルブチル基、4-シクロオクチルブチル基、4-シクロノニルブチル基、4-シクロデシルブチル基、4-シクロドデシルブチル基、4-シクロトリデシルブチル基、4-シクロテトラデシルブチル基、4-シクロペンタデシルブチル基、及び4-シクロヘキサデシルブチル基が挙げられる。
【0046】
芳香族炭化水素基の具体例としては、フェニル基、o-トリル基、m-トリル基、p-トリル基、2,3-ジメチルフェニル基、2,4-ジメチルフェニル基、2,5-ジメチルフェニル基、2,6-ジメチルフェニル基、3,4-ジメチルフェニル基、3,5-ジメチルフェニル基、2,3,4-トリメチルフェニル基、2,3,5-トリメチルフェニル基、2,3,6-トリメチルフェニル基、2,4,5-トリメチルフェニル基、2,4,6-トリメチルフェニル基、3,4,5-トリメチルフェニル基、o-エチルフェニル基、m-エチルフェニル基、p-エチルフェニル基、o-イソプロピルフェニル基、m-イソプロピルフェニル基、p-イソプロピルフェニル基、o-tert-ブチルフェニル基、2,3-ジイソプロピルフェニル基、2,4-ジイソプロピルフェニル基、2,5-ジイソプロピルフェニル基、2,6-ジイソプロピルフェニル基、3,4-ジイソプロピルフェニル基、3,5-ジイソプロピルフェニル基、2,6-ジ-tert-ブチルフェニル基、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル基、α-ナフチル基、β-ナフチル基、ビフェニル-4-イル基、ビフェニル-3-イル基、ビフェニル-2-イル基、アントラセン-1-イル基、アントラセン-2-イル基、アントラセン-9-イル基、フェナントレン-1-イル基、フェナントレン-2-イル基、フェナントレン-3-イル基、フェナントレン-4-イル基、フェナントレン-9-イル基、ピレン-1-イル基、ピレン-2-イル基、ピレン-3-イル基、及びピレン-4-イル基が挙げられる。
【0047】
アラルキル基の具体例としては、ベンジル基、フェネチル基、1-フェニルエチル基、3-フェニルプロピル基、2-フェニルプロピル基、1-フェニルプロピル基、2-フェニル-1-メチルエチル基、1-フェニル-1-メチルエチル基(クミル基)、4-フェニルブチル基、3-フェニルブチル基、2-フェニルブチル基、1-フェニルブチル基、3-フェニル-2-メチルプロピル基、3-フェニル-1-メチルプロピル基、2-フェニル-1-メチルプロピル基、2-メチル-1-フェニルプロピル基、2-フェニル-1,1-ジメチルエチル基、2-フェニル-2,2-ジメチルエチル基、α-ナフチルメチル基、β-ナフチルメチル基、2-α-ナフチルエチル基、2-β-ナフチルエチル基、1-α-ナフチルエチル基、及び1-β-ナフチルエチル基が挙げられる。
【0048】
a1、及びRa2としては、炭素原子数1~20のアルキル基及び炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基が好ましく、炭素原子数1~10のアルキル基及び炭素原子数6~10の芳香族炭化水素基がより好ましく、炭素原子数1~6のアルキル基及びフェニル基がさらに好ましく、炭素原子数1~4のアルキル基が特に好ましい。
【0049】
a3としては、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数3~20のシクロアルキル基、炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基、及び炭素原子数7~20のアラルキル基が好ましい。
【0050】
a4としては、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数2~20のアルケニル基、炭素原子数3~20のシクロアルキル基、炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基、及び炭素原子数7~20のアラルキル基が好ましい。
【0051】
式(a1)中、Ra5及びRa6は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の有機置換基、又は無機置換基であり、p及びqは、それぞれ独立に0~4の整数である。
a5及びRa6がそれぞれ複数である場合、複数のRa5及びRa6は異なる基であってもよい。
【0052】
有機置換基としては、例えば、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数1~20のアルコキシ基、炭素原子数3~20のシクロアルキル基、炭素原子数2~20の脂肪族アシル基、ベンゾイル基、α-ナフチルカルボニル基、β-ナフチルカルボニル基、炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基、及び炭素原子数7~20のアラルキル基が挙げられる。
【0053】
これらの有機置換基の中では、炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数1~6のアルコキシ基、炭素原子数3~8のシクロアルキル基、炭素原子数2~6の脂肪族アシル基、ベンゾイル基、フェニル基、ベンジル基、及びフェネチル基が好ましい。
【0054】
有機置換基の中では、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、n-プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n-ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、sec-ブチルオキシ基、tert-ブチルオキシ基、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基、及びフェニル基がより好ましい。
【0055】
無機置換基としては、従来芳香環上に置換し得ることが知られている無機基であって、上記式(a1)で表される遷移金属化合物の生成反応を阻害しない基であれば特に限定されない。
無機基の具体例としては、ハロゲン原子、ニトロ基、及びシアノ基等が挙げられる。
【0056】
複数のRa5のうちの2つの基、又は複数のRa6のうちの2つの基が芳香環上の隣接する位置に結合する場合、当該2つの基が相互に結合して環を形成してもよい。かかる環は、式(a1)中のフルオレン骨格に含まれる芳香環と縮合する、縮合環である。縮合環は、芳香環でもよく、脂肪族環でもよく、脂肪族環が好ましい。縮合環は、酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子等のヘテロ原子を環中に有していてもよい。
【0057】
2つのRa5及び/又は2つのRa6により形成された縮合環を備えるフルオレン骨格の具体例は、下式の骨格が挙げられる。
【化2】
【0058】
式(a1)中、Mは、周期律表第IV族遷移金属であり、Ti、Zr、又はHfが好ましく、Tiがより好ましい。
【0059】
以上説明した式(a1)で表される遷移金属化合物の好適な例としては、以下の構造の遷移金属錯体が挙げられる。
【化3】
【0060】
上記の式(a1)で表される遷移金属錯体は、例えば、後述するノルボルネン単量体の単独重合や、後述するノルボルネン単量体と、1-オクテン、1-ヘキセン、又はこれらの混合物との共重合に好ましく使用され、ノルボルネンと、1-オクテン、1-ヘキセン、又はこれらの混合物との共重合により好ましく使用される。
【0061】
[アルミノキサン(b1)]
アルミノキサン(b1)従来より種々のオレフィンの重合に置いて助触媒等として使用されている種々のアルミノキサンを特に制限なく用いることができる。典型的には、アルミノキサンは有機アルミノキサンである。
触媒組成物の製造に際して、アルミノキサン(b1)は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0062】
アルミノキサン(b1)としては、アルキルアルミノキサンが好ましく用いられる。アルキルアルミノキサンとしては、例えば、下記式(b1-1)又は(b1-2)で表される化合物が挙げられる。下記式(b1-1)又は(b1-2)で表されるアルキルアルミノキサンは、トリアルキルアルミニウムと水との反応により得られる生成物である。
【0063】
【化4】
(式(b1-1)及び式(b1-2)中、Rは炭素原子数1~4のアルキル基、nは0~40、好ましくは2~30の整数を示す。)
【0064】
アルキルアルミノキサンとしては、メチルアルミノキサン及びメチルアルミノキサンのメチル基の一部を他のアルキル基で置換した修飾メチルアルミノキサンが挙げられる。修飾メチルアルミノキサンとしては、例えば、置換後のアルキル基として、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基等の炭素数2~4のアルキル基を有する修飾メチルアルミノキサンが好ましく、特に、メチル基の一部をイソブチル基で置換した修飾メチルアルミノキサンがより好ましい。アルキルアルミノキサンの具体例としては、メチルアルミノキサン、エチルアルミノキサン、プロピルアルミノキサン、ブチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン、メチルエチルアルミノキサン、メチルブチルアルミノキサン、メチルイソブチルアルミノキサン等が挙げられ、中でも、メチルアルミノキサン及びメチルイソブチルアルミノキサンが好ましい。
【0065】
アルキルアルミノキサンは、公知の方法で調製することができる。また、アルキルアルミノキサンとしては、市販品を用いてもよい。アルキルアルミノキサンの市販品としては、例えば、MMAO-3A、TMAO-200シリーズ、TMAO-340シリーズ(いずれも東ソー・ファインケム(株)製)やメチルアルミノキサン溶液(アルベマール社製)等が挙げられる。
【0066】
[イオン化合物(b2)]
イオン化合物(b2)は、遷移金属化合物(a)との反応によりカチオン性遷移金属化合物を生成する化合物である。
かかるイオン性化合物としては、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートのアニオン、(CHN(C)Hのような活性プロトンを有するアミンカチオン、(Cのような三置換カルボニウムカチオン、カルボランカチオン、メタルカルボランカチオン、遷移金属を有するフェロセニウムカチオン等のイオン化合物を用いることができる。
【0067】
[溶媒]
以上説明した遷移金属化合物(a)、アルミノキサン(b1)、及びイオン化合物(b2)は、通常、溶媒に溶解又は懸濁、好ましくは溶解した状態で用いられる。
溶媒の種類は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。
好ましい溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、ミネラルオイル、ベンゼン、トルエン、及びキシレン等の炭化水素溶媒や、クロロホルム、メチレンクロライド、ジクロロエタン、及びクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素溶媒が挙げられる。
【0068】
溶媒の使用量は、所望する性能の触媒組成物を製造できる限り特に限定されない。典型的には、遷移金属化合物(a)、アルミノキサン(b1)、及びイオン化合物(b2)の濃度が、好ましくは0.00000001~100mol/L、より好ましくは0.00000005~50mol/L、特に好ましくは0.0000001~20mol/Lの溶媒が使用される。
【0069】
[マイクロリアクター]
マイクロリアクターは、2種以上の液体をマイクロリアクター内に導入するインレットと、2種以上の液体を混合可能な微小な混合場と、2種以上の液体が混合されて得られる混合液を取り出すアウトレットとを備える装置であれば、従来より種々の目的で使用されているマイクロリアクターを特に制限なく用いることができる。
【0070】
例えば、Y字型の流路や、T字型の流路を内部に有するマイクロリアクターを好適に用いることができる。かかるマイクロリアクターは、その側面に、Y字型又はT字型の流路の端部に相当する3つの開口を有するが、そのうちの2つをインレットとして用い、他の1つをアウトレットとして用いる。
かかるマイクロリアクターを用いる場合、2つのインレットから導入された液体が、Y字型の流路や、T字型の流路の交差点付近において良好に混合された後、1つのアウトレットから混合液が取出される。
なお、マイクロリアクターのインレットの数は2以上であれば特に限定されず、アウトレットの数は1以上であれば特に限定されない。
【0071】
Y字型の流路や、T字型の流路を備えるマイクロリアクターの形状は特に限定されない。マイクロリアクターは、単に細径のチューブをジョイントにより連結し、Y字型の流路や、T字型の流路を設けた、非チップ形状の装置であってもよい。また、マイクロリアクターは、板状やブロック状のチップの内部にY字型の流路やT字型の流路が形成されたチップ形状の装置であってもよい。
【0072】
また、例えば図1に示されるような流路を内部に備えるマイクロリアクターを用いて多段混合を行うのも好ましい。図1に示される流路においては、2つのインレット1から、混合される液が供給され、複数の微細流路を液が通過した後、混合場3aで液の混合が生じる。1つの目の混合場3aで混合された液は、再度微細流路を通過した後、2つ目の混合場3bで再度混合される。このような混合が繰り返し行われた後、混合液が、アウトレット2から取り出される。なお、図1には、5つの混合場3a~3eを記載しているが、混合場の数は特に限定されない。
また、図1に示される形状のマイクロリアクターに変えて、図2に示される形状のマイクロリアクターを用いるのも好ましい。図1に示されるマイクロリアクターでは、2つのインレット1から供給される液が、微細流路に入る手前で、水平方向にぶつかり合う。
他方、図2に示されるマイクロリアクターでは、2つのインレット1から供給される液が、2つの流れの方向がなす角が鋭角であるように、微細流路に入る手前でぶつかり合う。
【0073】
マイクロリアクターにおいて、インレットと混合場とを連通する2つの流路がなす角は、1~179°が好ましく、30~150°が好ましく、60~120°がより好ましい。インレットと混合場とを連通する流路が3以上存在する場合には、複数の流路のうちのいずれか2つがなす角が、上記の範囲内であるのが好ましい。
【0074】
前述のY字型の流路や、T字型の流路を内部に有するマイクロリアクターを用いて、シーケンシャルに多段混合を行うこともできる。
一例として、Y字型の流路を有するマイクロリアクター2基を1段階目の混合装置として用い、1段階目の混合装置として用いたマイクロリアクター2基のアウトレットを、Y字型の流路を有するもう1基のマイクロリアクターの2つのインレットにそれぞれ接続することで、2段混合を行うことができる。
1段階目の混合装置として用いるマイクロリアクターの数を増やすことで、多段混合の段数を増やすことができる。
【0075】
マイクロリアクターの流路の径は、所望する性能の触媒組成物を製造できる限りにおいて特に限定されない。流路の幅は、一般に、1μm~1000μmであり、10~500μmが好ましく、50~200μmがより好ましい。流路の深さは、一般に、1μm~1000μmであり、10~500μmが好ましく、50~200μmがより好ましい。
また、1つのマイクロリアクターが備える流路の数は特に限定されない。
なお、流路の断面形状は特に限定されない。また、マイクロリアクターに供給される液体のマイクロリアクター内での滞留時間も特に限定されない。
【0076】
以上説明したマイクロリアクターが備えるインレットに、触媒組成物の原料を含む液がポンプにより送液される。原料を含む液の送液量は変動してもよいが、脈動が起こらない定量的な送液が好ましい。
送液方法は特に限定されないが、通常ポンプを用いて送液される。送液用のポンプは工業的に使用される送液ポンプのいずれも使用可能である。送液用のポンプは、送液時に脈動をできるだけ生じない機種が望ましい。好ましいポンプとしては、プランジャーポンプ、ギアーポンプ、ロータリーポンプ、ダイヤフラムポンプ等が挙げられる。
【0077】
マイクロリアクターには、通常、遷移金属化合物(a)を含む液と、アルミノキサン(b1)、及びイオン化合物(b2)からなる群より選択される1種以上を含む液とが送液される。
マイクロリアクターに触媒組成物の原料を含む液を送液する際、遷移金属化合物(a)中の遷移金属元素のモル数をMとし、アルミノキサン(b1)中のアルミニウムのモル数をMb1とし、イオン化合物(b2)のモル数をMb2とする場合において、(Mb1+Mb2)/Mの値が、好ましくは1~200000、より好ましくは100~100000、特に好ましくは1000~80000であるように、触媒組成物の原料を含む液が送液されるのが好ましい。
【0078】
触媒組成物の原料を含む液のマイクロリアクターへの導入温度は特に限定されないが、―100~100℃が好ましく、-50~50℃がより好ましい。
マイクロリアクターでは、容積当たりの伝熱面積が大きいため、触媒組成物の原料を混合した際に発生する熱が、良好に除去される。
必要に応じて、触媒組成物の原料が混合された際の熱を除去しやすくする目的で、マイクロリアクターに冷風を送り空冷してもよく、マイクロリアクターを水等の冷媒に浸漬して冷却してもよい。
【0079】
以上説明した方法により製造される触媒組成物は、後述する、ノルボルネン単量体の単独重合、又はノルボルネン単量体とノルボルネン単量体と共重合可能な他の単量体との共重合による環状オレフィン樹脂組成物の製造方法において、特に好ましく使用される。
また、触媒組成物は、リビング重合においても、非リビング重合においても好適に使用可能である。
【0080】
≪環状オレフィン樹脂組成物の製造方法≫
環状オレフィン樹脂組成物の製造方法では、前述の方法により製造された環状オレフィン重合用の触媒組成物を用いて、ノルボルネン単量体の単独重合を行うか、ノルボルネン単量体とノルボルネン単量体と共重合可能な他の単量体との共重合を行う。
ノルボルネン単量体の単独重合と、ノルボルネン単量体と他の単量体との共重合は、リビング重合であっても、非リビング重合であってもよい。より少ない触媒量で、より多くの環状オレフィンポリマーを得たい場合は、連鎖移動反応を意図的に繰り返し進行させる連鎖重合である非リビング重合が一般に好ましい。
【0081】
連鎖重合を進行させるためには、適切な連鎖移動能を有する化合物を反応系内に存在させることが必要である。連鎖移動剤は特に限定されず、連鎖移動能を有する公知の化合物を用いることができる。典型的な連鎖移動剤としては、一般にアルキルアルミニウム化合物、アルキル亜鉛化合物あるいは水素が挙げられる。アルキルアルミニウム化合物は、アルミノキサンに含有されているものを使用してもよいし、適宜添加してもよい。
【0082】
なお、重合が非リビング重合により進行したか、又はリビング重合により進行したかは、得られた重合体の分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))により判別することができる。典型的には、分子量分布が1.1以下である重合体はリビング重合により生成しており、分子量分布が1.1超である重合体は非リビング重合により生成する。
非リビング重合では、分子量分布が1.5を超え2程度であることも多い。
【0083】
以下、環状オレフィン樹脂組成物の製造方法に関して、単量体化合物と、具体的な重合方法とについて説明する。
【0084】
[ノルボルネン単量体]
ノルボルネン単量体としては、例えば、ノルボルネン及び置換ノルボルネンが挙げられ、ノルボルネンが好ましい。ノルボルネン単量体は、1種単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0085】
上記置換ノルボルネンは特に限定されず、この置換ノルボルネンが有する置換基としては、例えば、ハロゲン原子、1価又は2価の炭化水素基が挙げられる。置換ノルボルネンの具体例としては、下記一般式(I)で示されるものが挙げられる。
【0086】
【化5】
(式中、R~R12は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、及び、炭化水素基からなる群より選ばれるものであり、
とR10、R11とR12は、一体化して2価の炭化水素基を形成してもよく、
又はR10と、R11又はR12とは、互いに環を形成していてもよい。
また、nは、0又は正の整数を示し、
nが2以上の場合には、R~Rは、それぞれの繰り返し単位の中で、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
ただし、n=0の場合、R~R及びR~R12の少なくとも1個は、水素原子ではない。)
【0087】
一般式(I)で示される置換ノルボルネンについて説明する。一般式(I)におけるR~R12は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、及び、炭化水素基からなる群より選ばれるものである。
【0088】
~Rの具体例としては、例えば、水素原子;フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子;炭素数1以上20以下のアルキル基等を挙げることができ、これらはそれぞれ異なっていてもよく、部分的に異なっていてもよく、また、全部が同一であってもよい。
【0089】
また、R~R12の具体例としては、例えば、水素原子;フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子;炭素数1以上20以下のアルキル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、エチルフェニル基、イソプロピルフェニル基、ナフチル基、アントリル基等の置換又は無置換の芳香族炭化水素基;ベンジル基、フェネチル基、その他アルキル基にアリール基が置換したアラルキル基等を挙げることができ、これらはそれぞれ異なっていてもよく、部分的に異なっていてもよく、また、全部が同一であってもよい。
【0090】
とR10、又はR11とR12とが一体化して2価の炭化水素基を形成する場合の具体例としては、例えば、エチリデン基、プロピリデン基、イソプロピリデン基等のアルキリデン基等を挙げることができる。
【0091】
又はR10と、R11又はR12とが、互いに環を形成する場合には、形成される環は単環でも多環であってもよく、架橋を有する多環であってもよく、二重結合を有する環であってもよく、またこれらの環の組み合わせからなる環であってもよい。また、これらの環はメチル基等の置換基を有していてもよい。
【0092】
一般式(I)で示される置換ノルボルネンの具体例としては、5-メチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、5,5-ジメチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、5-エチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、5-ブチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、5-エチリデン-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、5-ヘキシル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、5-オクチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、5-オクタデシル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、5-メチリデン-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、5-ビニル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、5-プロペニル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン等の2環の環状オレフィン;
トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ-3,7-ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ-3-エン;トリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ-3,7-ジエン若しくはトリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ-3,8-ジエン又はこれらの部分水素添加物(又はシクロペンタジエンとシクロヘキセンの付加物)であるトリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ-3-エン;5-シクロペンチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、5-シクロヘキシル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、5-シクロヘキセニルビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、5-フェニル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エンといった3環の環状オレフィン;
テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン(単にテトラシクロドデセンともいう)、8-メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン、8-エチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン、8-メチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン、8-エチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン、8-ビニルテトラシクロ[4,4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン、8-プロペニル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エンといった4環の環状オレフィン;
8-シクロペンチル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン、8-シクロヘキシル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン、8-シクロヘキセニル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン、8-フェニル-シクロペンチル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン;テトラシクロ[7.4.13,6.01,9.02,7]テトラデカ-4,9,11,13-テトラエン(1,4-メタノ-1,4,4a,9a-テトラヒドロフルオレンともいう)、テトラシクロ[8.4.14,7.01,10.03,8]ペンタデカ-5,10,12,14-テトラエン(1,4-メタノ-1,4,4a,5,10,10a-ヘキサヒドロアントラセンともいう);ペンタシクロ[6.6.1.13,6.02,7.09,14]-4-ヘキサデセン、ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]-4-ペンタデセン、ペンタシクロ[7.4.0.02,7.13,6.110,13]-4-ペンタデセン;ヘプタシクロ[8.7.0.12,9.14,7.111,17.03,8.012,16]-5-エイコセン、ヘプタシクロ[8.7.0.12,9.03,8.14,7.012,17.113,l6]-14-エイコセン;シクロペンタジエンの4量体等の多環の環状オレフィンを挙げることができる。
【0093】
中でも、アルキル置換ノルボルネン(例えば、1個以上のアルキル基で置換されたビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン)、アルキリデン置換ノルボルネン(例えば、1個以上のアルキリデン基で置換されたビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン)が好ましく、5-エチリデン-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン(慣用名:5-エチリデン-2-ノルボルネン、又は、単にエチリデンノルボルネン)が特に好ましい。
【0094】
[他の単量体]
前述のノルボルネン単量体は、単独で重合されてもよく、ノルボルネン単量体と共重合可能な他の単量体とともに共重合されてもよい。
かかる他の単量体としては、ノルボルネン単量体と共重合可能な単量体化合物であれば特に限定されず、典型的にはα-オレフィンである。α-オレフィンは、ハロゲン原子等の少なくとも1種の置換基で置換されていてもよい。
【0095】
α-オレフィンとしては、C2~C12のα-オレフィンが好ましい。C2~C12のα-オレフィンは特に限定されないが、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、及び1-ドデセン等が挙げられる。中でも、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセンが好ましい。
【0096】
環状オレフィン樹脂組成物を製造する際の単量体の組み合わせとしては、単量体の入手容易性、機械的特性、熱的特性、製造性等のバランスに優れることから、ノルボルネンとエチレンとの組み合わせと、ノルボルネンと、1-オクテン、1-ヘキセン、又はこれらの混合物との組み合わせが好ましい。
ノルボルネンと、エチレンとを組み合わせて用いる場合、機械的特性と熱的特性とのバランスが良好である環状オレフィン樹脂組成物を得るため、単量体中のノルボルネンの量は30モル%以上70モル%未満が好ましい。
ノルボルネンと、1-オクテン、1-ヘキセン、又はこれらの混合物とを組み合わせて用いる場合、良好な機械的特性を有する環状オレフィンが得られやすいことから、環状オレフィン樹脂組成物のガラス転移温度を上げることができ、単量体中のノルボルネンの量は70モル%以上が好ましい。
【0097】
[重合条件]
重合条件は、所望の共重合体が得られる限り、特に限定されず、公知の条件を用いることができ、重合温度、重合圧力、重合時間等は適宜調整される。また、ノルボルネン単量体と他の単量体とを共重合する場合の各単量体成分の使用量は、以下のように例示される。
ノルボルネン単量体1モルに対する他の単量体の添加量として、0.001モル以上30モル以下であることが好ましく、0.01モル以上20モル以下であることがより好ましい。
触媒組成物の使用量は、その調製に用いられる遷移金属化合物の使用量から導出される。触媒組成物の使用量は、その調製に用いられた遷移金属化合物の質量として、ノルボルネン単量体1モルに対し、0.000000001モル以上0.005モル以下が好ましく、0.00000001モル以上0.0005モル以下がより好ましい。
【0098】
重合温度は、所望する速度で重合反応が進行する限り特に限定されない。重合温度は、典型的には、0~120℃であり、10~100℃が好ましく、20~90℃がより好ましい。
重合時間は特に限定されず、所望する収率に達するか、重合体の分子量が所望する程度に上昇するまで重合が行われる。
重合時間は、温度や、触媒組成物の組成や、単量体組成によっても異なるが、典型的には0.01~120時間であり、0.1~80時間が好ましく、0.2~10時間がより好ましい。
【0099】
良好な収率で環状オレフィン樹脂組成物を製造しやすい点から、ノルボルネン単量体、又はノルボルネン単量体と他の単量体とを含む重合系には、触媒組成物を加える前に、アルミノキサン、及びアルキルアルミニウム化合物から選択される1種以上を存在させるのが好ましい。
【0100】
アルミノキサンについては、触媒組成物の製造方法において説明した通りである。
アルキルアルミニウム化合物としては、オレフィン類の重合等に従来より用いられているものを特に限定なく使用できる。アルキルアルミニウム化合物としては、例えば、下記一般式(II)で示される化合物が挙げられる。
(R10AlX3-z (II)
(式(II)中、R10は炭素原子数が1~15、好ましくは1~8のアルキル基であり、Xはハロゲン原子又は水素原子であり、zは1~3の整数である。)
【0101】
炭素原子数が1~15のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、n-オクチル基等が挙げられる。
【0102】
アルキルアルミニウム化合物の具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリn-ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリsec-ブチルアルミニウム、トリn-オクチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム;ジメチルアルミニウムクロリド、ジイソブチルアルミニウムクロリド等のジアルキルアルミニウムハライド;ジイソブチルアルミニウムハイドライド等のジアルキルアルミニウムハイドライド;ジメチルアルミニウムメトキシド等のジアルキルアルミニウムアルコキシドが挙げられる。
【0103】
かかるアルキルアルミニウム化合物は連鎖移動剤として作用し、前述の触媒組成物により触媒される連鎖重合を促進させる。
【0104】
触媒組成物を加える前に、重合系にアルミノキサンを加える場合の使用量は、遷移金属化合物1モルに対するアルミノキサン中のアルミニウムのモル数として、10~1000000モルが好ましく、100~100000モルがより好ましい。
触媒組成物を加える前に、重合系にアルキルアルミニウム化合物を加える場合の使用量は、遷移金属化合物1モルに対するアルミニウムのモル数として、5~500000モルが好ましく、50~50000がより好ましい。
【0105】
触媒組成物の少なくとも一部、好ましくは全部は、ノルボルネン単量体、又はノルボルネン単量体と他の単量体とを含む重合系に、連続的に添加されるのが好ましい。
触媒組成物を連続的に添加することにより、環状オレフィン樹脂組成物の連続製造が可能になり、環状オレフィン樹脂組成物の製造コストを低減させることが可能になる。
【0106】
以上説明した方法によれば、前述の方法により調製された触媒組成物を用いるため、ノルボルネン単量体の単独重合、又はノルボルネン単量体と他の単量体との共重合が良好に進行し、触媒組成物の使用量が少量であっても高い収率で環状オレフィン樹脂組成物を得ることができる。
【実施例
【0107】
以下、実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0108】
〔実施例1〕
濃度3.17μmol/Lの遷移金属化合物のトルエン溶液を調製した。遷移金属化合物としては、下記構造の化合物を用いた。
【化6】
【0109】
アルミノキサン溶液としては、濃度9.0質量%(Al原子の含有量として)の、TMAO-211トルエン溶液(メチルアルミノキサンの溶液、東ソー・ファインケム(株)製、なお全Alに対して26mol%のトリメチルアルミニウムを含有する)を用いた。
【0110】
遷移金属化合物の溶液と、アルミノキサンの溶液とを、断面が円形であり、径が150μmであるY字型の流路を備えるマイクロリアクター(品名:マイクロボリュームコネクター 1/16” Y SUS0.15mm、VICI社製)に、Al/Mのモル比が、表1に記載の「Al/M比(触媒活性化)」の値であり、且つ、遷移金属化合物の溶液、及びアルミノキサン溶液の流量が1mL/分であるように、シリンジポンプ(KD SCIENTIFIC社製、KDS100)を用いて供給した。マイクロリアクター内の滞留時間は3.18ミリ秒であり、排出された触媒組成物は内径1mm、長さ50cmのテフロン(登録商標)製チューブを11.8秒で通過後にモノマー溶液に連続滴下された。
ここで、Mは、遷移金属化合物の中心金属を意味し、TiあるいはZrである。
なお、マイクロリアクターは、3本の流路がつながれたY字型の流路を備える。3本の流路のうちの、インレットと混合場とを連通する2本の流路が形成する夾角は90°である。
図4に、Y字型の流路を備えるマイクロリアクターの形状を模式的に示す。図4に示すマイクロリアクターは、円盤状のケース4の内部に混合場3においてY字型に連結された流路を備える。図4中、点線部分は、ケース4内に保持される流路の外縁である。
【0111】
上記の条件で得られる、マイクロリアクターのアウトレットから吐出される、活性化された触媒組成物を含む溶液を、重合反応の開始時に、1分間かけて連続的に重合系に供給した。その後、ノルボルネンと、1-オクテンとの共重合を、表1に記載の重合温度で5時間行った。
なお、重合系には、遷移金属化合物量と、メチルアミノキサンに含まれるAl量とのAl/Mのモル比が、表1に記載の「Al/M比(重合槽)」となるように、触媒組成物を重合系に添加する前に、メチルアミノキサンを加えておいた。
重合系に含まれる単量体の種類及び濃度は、表2に記載の通りである。なお、重合系は、溶媒としてトルエンを含む。
【0112】
所定の時間重合を行った後、少量の2-プロパノールを重合系に添加して反応を停止させた。次いで、得られた重合反応液に重合反応に使用した遷移金属化合物とメチルアルミノキサンに対して10モルの塩酸を加えて室温で1時間撹拌させた。次いで、重合溶液と同体積のイオン交換水を加えて、さらに1時間室温で撹拌させた。このようにして得られた溶液を分液漏斗に移し、有機層と水層を分離させた。得られた有機層を同量のイオン交換水で3回洗浄した。次いで、得られた有機層を多量のアセトンに注いで重合体を完全に析出させ、ろ別及び多量のアセトンで重合体の洗浄を行った後、100℃で1日以上減圧乾燥して共重合体を得た。得られた共重合体の質量を測定し、使用した遷移金属化合物に対する得られた共重合体の割合を算出した(表3中の「g(共重合体)/g(遷移金属化合物)」)。
また、得られた共重合体について、数平均分子量(Mn)を求め、Mnと重量平均分子量(Mw)から分子量分布(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)を求めた。DSC法により、ガラス転移温度(Tg)を測定した。NMR測定により、共重合体に含まれる、ノルボルネンに由来する単位の割合を測定した。Mn、Mw/Mn、Tg及びノルボルネンに由来する単位の割合の測定結果を表3に示した。
【0113】
(共重合体分子量(Mn及びMw)の測定条件)
装置:Malvern社製 Viscotek TDA302検出器+Pump autosampler装置
検出器:RI
溶媒:トルエン
カラム:東ソー社製 TSKgel GMHHR-M(300mm×7.8mmφ)
流速:1mL/分
温度:75℃
試料濃度:2.5mg/mL
注入量:100μL
標準試料:単分散ポリスチレン
【0114】
(共重合体ガラス転移温度(Tg)の測定条件)
DSC法(JIS K7121記載の方法)によって、Tgを測定した。
DSC装置:示差走査熱量計(TA Instrument社製 DSC-Q1000)
測定雰囲気:窒素
測定モード:Modurated
昇温条件:2℃/分
【0115】
(ノルボルネンに由来する単位の割合の測定条件)
NMR装置:BrukerAVANCE600
測定溶媒:1、1、2、2-テトラクロロエタンーd
測定核種:13
測定温度:381K
サンプル濃度:70mg/mL
サンプルチューブ径:10mm
測定方法:power gate法
デカップリング:完全デカップリング
積算回数:18000回
ケミカルシフトのリファレンス:1、1、2、2-テトラクロロエタン-dに含まれる、重水素化されていない1、1、2、2-テトラクロロエタンのピークを74.47ppmとした。
ノルボルネンに由来する単位の割合:ノルボルネンと、エチレンとの共重合体は、非特許文献1を参考に実施した。ノルボルネンと、1-オクテン、1-ヘキセン、あるいは、1-デセンとの共重合体は、非特許文献3を参考に実施した。
【0116】
〔実施例2〕
Y字型の流路を備えるマイクロリアクターを、T字型の流路を備えるマイクロリアクター(品名:マイクロボリュームコネクター 1/16” ティー SUS 0.15mm、VICI社製)に変更することの他は、実施例1と同様にして共重合体を得た。
なお、T字型の流路を備えるマイクロリアクター内において、遷移金属化合物の溶液と、アルミノキサンの溶液とを、両者の流れが直交するように供給した。
図3に、T字型の流路を備えるマイクロリアクターの形状を模式的に示す。図3に示すマイクロリアクターは、円盤状のケース4の内部に混合場3においてT字型に連結された流路を備える。図3中、点線部分は、ケース4内に保持される流路の外縁である。
【0117】
〔実施例3〕
Y字型の流路を備えるマイクロリアクターを、混合段数を除いて図2に示されるマイクロリアクターと同様の形状である、略Y字形状の多段混合型の流路を備えるマイクロリアクター(混合段数(混合場の数):13、流路幅:200μm、流路深さ:200μm)に変更することの他は、実施例1と同様にして共重合体を得た。
【0118】
〔実施例4〕
Y字型の流路を備えるマイクロリアクターを、混合段数を除いて図1に示されるマイクロリアクターと同様の形状である、略T字形状の多段混合型の流路を備えるマイクロリアクター(混合段数(混合場の数):13、流路幅:200μm、流路深さ:200μm)に変更することの他は、実施例1と同様にして共重合体を得た。
【0119】
〔実施例5~7〕
単量体の組成を表2に記載の組成に変更することの他は、実施例1と同様にして共重合体を得た。
【0120】
〔実施例8及び9〕
反応温度を40℃から、表1に記載の温度に変更することの他は、実施例5と同様にして共重合体を得た。
【0121】
〔実施例10及び11〕
濃度0.215μmol/Lの遷移金属化合物のトルエン溶液を調製した。遷移金属化合物としては、下記構造の化合物(PhC(Cpd)(Flu)ZrCl)を用いた。
【化7】
【0122】
遷移金属化合物の供給量と、メチルアルミノキサンの供給量とを、表1に記載の「Al/M比(触媒活性化)」の値に従って変更することと、重合系に加えたメチルアルミノキサンの量を、表1に記載の「Al/M比(重合槽)」の値に従って変更することと、単量体の組成を表2に記載の組成に変更することと、重合温度を70℃に変更することとの他は、実施例1と同様にして共重合体を得た。
【0123】
〔比較例1〕
実施例1で触媒組成物の調製に用いた、遷移金属化合物と、アルミノキサンとを、マイクロリアクターを用いることなく、予め重合系に加えることの他は、実施例1と同様にして共重合体を得た。
【0124】
〔比較例2〕
シュレンク管内で遷移金属化合物にアルミノキサンを加えて触媒組成物を調製し、得られた触媒組成物の溶液を重合系に添加することの他は、実施例1と同様にして共重合体を得た。
【0125】
〔比較例3〕
実施例10で触媒組成物の調製に用いた、遷移金属化合物と、アルミノキサンとを、マイクロリアクターを用いることなく、予め重合系に加えることの他は、実施例10と同様にして共重合体を得た。
【0126】
〔比較例4〕
実施例11で触媒組成物の調製に用いた、遷移金属化合物と、アルミノキサンとを、マイクロリアクターを用いることなく、予め重合系に加えることの他は、実施例11と同様にして共重合体を得た。
【0127】
以下、表1に、遷移金属化合物の活性化方法と、マイクロリアクターの流路形状と、Al/M比(重合槽)と、Al/M比(触媒活性化)と、重合温度と、重合時間とを記す。
【表1】
【0128】
以下、表2に、重合反応に用いた単量体の組成を記す。
【表2】
【0129】
以下、表3に、共重合体収量と、g(共重合体)/g(遷移金属化合物)と、共重合体特性(数平均分子量、分子量分布、Tg、ノルボルネンに由来する単位の割合)とを記す。
【表3】
【0130】
実施例1~7と、比較例1及び2との比較、実施例10及び11と、比較例3及び4との比較によれば、マイクロリアクターを用いて調製された触媒組成物を用いることにより、使用した触媒組成物の量に対して得られる環状オレフィン樹脂組成物の割合が高いことが分かる。従って、環状オレフィン樹脂組成物の製造に供される触媒組成物は、マイクロリアクターによって製造されることが好ましいことが明らかになった。
【符号の説明】
【0131】
1:インレット
2:アウトレット
3:混合場
3a~3e:混合場
4:ケース
図1
図2
図3
図4