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特許7150560硬化膜形成用組成物、及び硬化膜形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-30
(45)【発行日】2022-10-11
(54)【発明の名称】硬化膜形成用組成物、及び硬化膜形成方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 163/00 20060101AFI20221003BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20221003BHJP
   C09D 7/20 20180101ALI20221003BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20221003BHJP
   B05D 3/02 20060101ALI20221003BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20221003BHJP
   B05D 1/26 20060101ALI20221003BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20221003BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20221003BHJP
   B05D 3/12 20060101ALI20221003BHJP
   B05D 5/06 20060101ALI20221003BHJP
【FI】
C09D163/00
C09D7/61
C09D7/20
C09D5/00 Z
B05D3/02 Z
B05D7/24 302U
B05D7/24 303B
B05D7/24 303L
B05D7/24 303E
B05D1/26 Z
B05D3/00 D
B05D7/24 302F
B05D7/00 C
B05D3/12 A
B05D7/00 E
B05D5/06 C
B05D5/06 Z
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2018202225
(22)【出願日】2018-10-26
(65)【公開番号】P2019119848
(43)【公開日】2019-07-22
【審査請求日】2021-07-12
(31)【優先権主張番号】P 2017254515
(32)【優先日】2017-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】武内 弘明
(72)【発明者】
【氏名】田村 弘毅
【審査官】上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-152199(JP,A)
【文献】国際公開第2014/104136(WO,A1)
【文献】特開2011-048024(JP,A)
【文献】特開2017-187717(JP,A)
【文献】特開2004-354601(JP,A)
【文献】特開2008-275912(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 163/00
C09D 7/61
C09D 7/20
C09D 5/00
B05D 3/02
B05D 7/24
B05D 1/26
B05D 3/00
B05D 7/00
B05D 3/12
B05D 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ化合物(A)と、中空シリカ(B)と、界面活性剤(C)と、溶剤(S)とを含み、
前記エポキシ化合物(A)が、エポキシ基を有する重合体であり、
前記エポキシ基を有する重合体中の、エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルに由来する単位の含有量が80質量%以上であり、
前記溶剤(S)が、大気圧下での沸点が170℃以上である1種以上の高沸点溶剤(SH)を含む、硬化膜形成用組成物。
【請求項2】
前記高沸点溶剤(SH)の大気圧下での沸点が250℃以下である、請求項1に記載の硬化膜形成用組成物。
【請求項3】
スリット塗布により基板に塗布され、硬化膜を与える、請求項1又は2に記載の硬化膜形成用組成物。
【請求項4】
120mm/秒以上の塗布速度でのスリット塗布用途において用いられる、請求項3に記載の硬化膜形成用組成物。
【請求項5】
前記溶剤(S)が、大気圧下での沸点が170℃未満である1種以上の低沸点溶剤(SL)を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の硬化膜形成用組成物。
【請求項6】
前記低沸点溶剤(SL)が、大気圧下での沸点が80℃以上130℃未満である1種以上の第1低沸点溶剤(SL1)と、大気圧下での沸点が130℃以上170℃未満である1種以上の第2低沸点溶剤(SL2)とからなる、請求項5に記載の硬化膜形成用組成物。
【請求項7】
1種以上の前記高沸点溶剤(SH)のSP値が、いずれも9.0以上12.5以下である、請求項1~6のいずれか1項に記載の硬化膜形成用組成物。
【請求項8】
前記界面活性剤(C)の分子量が2000以上である、請求項1~7のいずれか1項に記載の硬化膜形成用組成物。
【請求項9】
前記エポキシ化合物(A)が、カルボキシ基、カルボン酸無水物基、フェノール性水酸基、及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の官能基を有する、請求項1~8のいずれか1項に記載の硬化膜形成用組成物。
【請求項10】
前記エポキシ化合物(A)が、不飽和二重結合を有する単量体の共重合体である、請求項1~9のいずれか1項に記載の硬化膜形成用組成物。
【請求項11】
前記中空シリカ(B)の体積平均粒子径が50nm以上100nm以下である、請求項1~10のいずれか1項に記載の硬化膜形成用組成物。
【請求項12】
前記エポキシ基を有する重合体が、鎖状脂肪族エポキシ基を有する脂肪族(メタ)アクリル酸エステルと、脂環式エポキシ基を有する脂肪族(メタ)アクリル酸エステルと、不飽和カルボン酸との共重合体であり、
前記中空シリカ(B)の含有量が、前記エポキシ化合物(A)の質量と、前記中空シリカ(B)の質量の合計に対して、70質量%以上である、請求項1~11のいずれか1項に記載の硬化膜形成用組成物。
【請求項13】
下記硬化膜形成条件2により硬化膜を形成した場合に、ヘイズ値が1%以下となる硬化膜を与える、請求項1~12のいずれか1項に記載の硬化膜形成用組成物。
<硬化膜形成条件2>
680mm×880mmのサイズのガラス基板上に、スリットコーターを用いて塗布速度(ガントリースピード)180mm/秒で硬化膜形成用組成物を塗布して、膜厚1000nmの塗布膜を形成する。
形成された塗布膜を20Paの減圧条件下に10秒置いた後、ガラス基板をホットプレート上に載置して、塗布膜を100℃で2分間加熱する。次いで、ガラス基板を、230℃に加熱し、塗布膜を同温度で20分間加熱する。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載の前記硬化膜形成用組成物を、基板上に塗布することによる、塗布膜の形成と、
加熱による前記塗布膜の硬化と、
を含む、硬化膜形成方法。
【請求項15】
前記硬化の前に、前記塗布膜を減圧条件下に置くことによる、前記塗布膜に含まれる前記溶剤(S)の少なくとも一部の除去を含む、請求項14に記載の硬化膜形成方法。
【請求項16】
前記塗布膜の形成が、スリット塗布法により行われる、請求項14又は15に記載の硬化膜形成方法。
【請求項17】
スリット塗布による前記塗布膜の形成における塗布速度が、120mm/秒以上である、請求項16に記載の硬化膜形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ化合物(A)と、中空シリカ(B)と、を含む硬化膜形成用組成物と、当該硬化膜形成用組成物を用いる硬化膜形成方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、液状の種々の樹脂組成物を塗布する方法によって、絶縁膜、保護膜、反射防止膜等の種々の機能性膜が形成されている。
具体的には、イメージセンサー用マイクロレンズを被覆する低屈折率膜や、液晶ディスプレイ、有機EL素子等における反射防止用の低屈折率膜が、感光性樹脂組成物を用いて、所望する形状にパターニングされながら形成される。
【0003】
上記の反射防止用の低屈折率膜として使用し得るパターン化された硬化膜を形成できる感光性樹脂組成物としては、中空又は多孔質粒子と、光重合開始剤と、アルカリ可溶性を有する重合性化合物と、粒子分散剤とを含む感光性樹脂組成物が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-271444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の感光性樹脂組成物を用いれば、平滑な表面を有する低屈折率膜を問題なく形成できる。
一方で、低屈折率膜の、耐熱性、耐アルカリ性、耐溶剤性等を改良する目的等で、アルカリ可溶性を有する重合性化合物に変えて、エポキシ化合物を用いることが望まれる場合がある。エポキシ化合物と、例えば中空シリカのような中空粒子を組み合わせて用いる場合、組成物に好ましい塗布性を与えるために、溶剤が使用される。
【0006】
しかし、本発明者らが検討したところ、エポキシ化合物と、中空シリカと、溶剤とを含む組成物を用いて硬化膜を形成する場合、硬化膜の表面に、もやムラ、筋ムラ、ピン跡のような不具合が生じやすいことが判明した。かかる不具合の発生は、スリット塗布等の塗布方法を採用する場合に顕著である。
【0007】
本発明は上記の課題に鑑みなされたものであって、もやムラ、筋ムラ、ピン跡のような表面の不具合が生じやすいスリット塗布法等の用いて塗布膜を形成しても、これらの表面の不具合を抑制しつつ、硬化膜を形成できる、エポキシ化合物(A)と、中空シリカ(B)と、を含む硬化膜形成用組成物と、当該硬化膜形成用組成物を用いる硬化膜形成方法とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、エポキシ化合物(A)と、中空シリカ(B)と、溶剤(S)とを含む組成物を用いて硬化膜を形成する際に、組成物に界面活性剤(C)を加えて、且つ溶剤(S)として大気圧下での沸点が170℃以上である1種以上の高沸点溶剤(SH)を用いることにより上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明の第1の態様は、エポキシ化合物(A)と、中空シリカ(B)と、界面活性剤(C)と、溶剤(S)とを含み、
溶剤(S)が、大気圧下での沸点が170℃以上である1種以上の高沸点溶剤(SH)を含む、硬化膜形成用組成物である。
【0010】
本発明の第2の態様は、第1の態様にかかる硬化膜形成用組成物を、基板上に塗布することによる、塗布膜の形成と、
加熱による前記塗布膜の硬化と、
を含む、硬化膜形成方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、もやムラ、筋ムラ、ピン跡のような表面の不具合が生じやすいスリット塗布法等の用いて塗布膜を形成しても、これらの表面の不具合を抑制しつつ、硬化膜を形成できる、エポキシ化合物(A)と、中空シリカ(B)と、を含む硬化膜形成用組成物と、当該硬化膜形成用組成物を用いる硬化膜形成方法とを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
≪硬化膜形成用組成物≫
硬化膜形成用組成物は、エポキシ化合物(A)と、中空シリカ(B)と、界面活性剤(C)と、溶剤(S)とを含む。溶剤(S)は、大気圧下での沸点が170℃以上である1種以上の高沸点溶剤(SH)を含む。
エポキシ化合物(A)と、中空シリカ(B)を含む硬化膜形成用組成物を用いて、スリット塗布、ディップ塗布、スプレー塗布、スクリーン印刷塗布等の方法による塗布を行って塗布膜を形成した後、塗布膜を硬化させて得られる塗布膜には、もやムラ、筋ムラ、ピン跡のような表面の不具合が生じやすい。スリット塗布を行う場合、特に、120mm/秒以上の速い塗布速度でスリット塗布を行う場合、かかる表面の不具合の発生が顕著である。
しかし、上記の硬化膜形成用組成物を用いる場合、硬化膜を形成する際に、これらの表面の不具合が生じにくい。
【0013】
つまり、上記の所定の成分を含有する硬化膜形成用組成物は、スリット塗布により基板に塗布されることで、特に、120mm/秒以上の塗布速度でのスリット塗布により基板に塗布されることで、表面の不具合を抑制しつつ硬化膜を与える。
【0014】
<エポキシ化合物(A)>
硬化膜形成用組成物は、高膜形成用組成物を硬化させる成分としてエポキシ基を有するエポキシ化合物(A)を含む。エポキシ化合物(A)としては、エポキシ基を含有する樹脂と、非樹脂型のエポキシ化合物とのいずれも用いることができる。
低温、短時間で、硬化膜形成用組成物からなる塗布膜を硬化させやすい点からは、エポキシ化合物としては、エポキシ基含有樹脂が好ましい。
【0015】
エポキシ化合物(A)は、必要に応じて、周知の硬化剤、又は硬化促進剤とともに使用されてもよい。硬化剤、又は硬化促進剤の使用量は、その種類に応じて、適宜決定される。
【0016】
エポキシ化合物(A)は、カルボキシ基、カルボン酸無水物基、フェノール性水酸基、及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の官能基を有するのが好ましい。
カルボキシ基、カルボン酸無水物基、フェノール性水酸基、及びアミノ基は、いずれもエポキシ基と間で硬化反応を生じさせるか、エポキシ基の硬化反応を促進させる。
このため、エポキシ化合物(A)が、カルボキシ基、カルボン酸無水物基、フェノール性水酸基、及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の官能基を有する場合、硬化膜形成用組成物に硬化剤を含有させなくても、硬化性粗物を良好に硬化させることができる。
【0017】
硬化膜形成用組成物を硬化させる場合、後述するように硬化膜形成用組成物からなる塗布膜を減圧条件下に置く場合がある。この場合、塗布膜からの硬化剤の揮発や昇華が生じることによって、硬化ムラや、硬化膜の表面にわずかな荒れが生じるおそれがある。
しかし、硬化膜形成用組成物が硬化剤を含まないと、硬化膜形成用組成物の過程において、塗布膜を減圧条件下に置く場合でも、表面が平坦であり、ムラなく硬化した硬化膜を形成しやすい。
【0018】
エポキシ化合物(A)は、不飽和二重結合を有する単量体の共重合体であるのが好ましい。かかる共重合体であるエポキシ化合物を、エポキシ化合物(A)として用いる場合、エポキシ化合物が所謂樹脂であるため、硬化性組成物が製膜性に優れる。
また、共重合体であるエポキシ化合物の使用は、エポキシ化合物の調製に使用される単量体を適宜選択することによって、硬化膜の種々の特性を調整しやすい点でも好ましい。
【0019】
以下、エポキシ化合物(A)の具体例に関して、非樹脂型エポキシ基化合物と、エポキシ基含有樹脂とについて説明する。
【0020】
(非樹脂型エポキシ化合物)
非樹脂型エポキシ化合物としては、従来から広く知られる種々のエポキシ化合物を用いることができる。かかるエポキシ化合物の分子量は特に限定されない。エポキシ化合物の中では、耐熱性、耐化学薬品性、機械的特性等に優れる硬化膜を形成しやすい点から、分子内に2以上のエポキシ基を有する多官能エポキシ化合物が好ましい。
【0021】
多官能エポキシ化合物は、2官能以上のエポキシ化合物であれば特に限定されない。多官能エポキシ化合物の例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、及びビフェニル型エポキシ樹脂等の2官能エポキシ樹脂;ダイマー酸グリシジルエステル、及びトリグリシジルエステル等のグリシジルエステル型エポキシ樹脂;テトラグリシジルアミノジフェニルメタン、トリグリシジル-p-アミノフェノール、テトラグリシジルメタキシリレンジアミン、及びテトラグリシジルビスアミノメチルシクロヘキサン等のグリシジルアミン型エポキシ樹脂;トリグリシジルイソシアヌレート等の複素環式エポキシ樹脂;フロログリシノールトリグリシジルエーテル、トリヒドロキシビフェニルトリグリシジルエーテル、トリヒドロキシフェニルメタントリグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、2-[4-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル]-2-[4-[1,1-ビス[4-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル]エチル]フェニル]プロパン、及び1,3-ビス[4-[1-[4-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル]-1-[4-[1-[4-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル]-1-メチルエチル]フェニル]エチル]フェノキシ]-2-プロパノール等の3官能型エポキシ樹脂;テトラヒドロキシフェニルエタンテトラグリシジルエーテル、テトラグリシジルベンゾフェノン、ビスレゾルシノールテトラグリシジルエーテル、及びテトラグリシドキシビフェニル等の4官能型エポキシ樹脂が挙げられる。
【0022】
また、脂環式エポキシ化合物も、高硬度の硬化物を与える点で多官能エポキシ化合物として好ましい。脂環式エポキシ化合物の具体例としては、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル-5,5-スピロ-3,4-エポキシ)シクロヘキサン-メタ-ジオキサン、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシル-3’,4’-エポキシ-6’-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ε-カプロラクトン変性3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、トリメチルカプロラクトン変性3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、β-メチル-δ-バレロラクトン変性3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサン)、エチレングリコールのジ(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシシクロヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、及びエポキシシクロヘキサヒドロフタル酸ジ-2-エチルヘキシル、トリシクロデセンオキサイド基を有するエポキシ樹脂や、下記式(a01-1)~(a01-5)で表される化合物が挙げられる。
【0023】
これらの脂環式エポキシ化合物の具体例の中では、高硬度の硬化物を与えることから、下記式(a01-1)~(a01-5)で表される脂環式エポキシ化合物が好ましい。
【化1】
(式(a01-1)中、Z01は単結合又は連結基(1以上の原子を有する二価の基)を示す。Ra01~Ra018は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、及び有機基からなる群より選択される基である。)
【0024】
連結基Z01としては、例えば、2価の炭化水素基、-O-、-O-CO-、-S-、-SO-、-SO-、-CBr-、-C(CBr-、-C(CF-、及び-Ra019-O-CO-からなる群より選択される2価の基及びこれらが複数個結合した基等を挙げることができる。
【0025】
連結基Zである二価の炭化水素基としては、例えば、炭素原子数が1以上18以下の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基、二価の脂環式炭化水素基等を挙げることができる。炭素原子数が1以上18以下の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、ジメチレン基、トリメチレン基等を挙げることができる。上記二価の脂環式炭化水素基としては、例えば、1,2-シクロペンチレン基、1,3-シクロペンチレン基、シクロペンチリデン基、1,2-シクロヘキシレン基、1,3-シクロヘキシレン基、1,4-シクロヘキシレン基、シクロヘキシリデン基等のシクロアルキレン基(シクロアルキリデン基を含む)等を挙げることができる。
【0026】
a019は、炭素原子数1以上8以下のアルキレン基であり、メチレン基又はエチレン基であるのが好ましい。
【0027】
【化2】
(式(a01-2)中、Ra01~Ra018は、水素原子、ハロゲン原子、及び有機基からなる群より選択される基である。Ra02及びRa010は、互いに結合してもよい。Ra013及びRa016は互いに結合して環を形成してもよい。ma1は、0又は1である。)
【0028】
上記式(a01-2)で表される脂環式エポキシ化合物としては、上記式(a01-2)におけるma1が0である化合物に該当する、下記式(a01-2-1)で表される化合物が好ましい。
【化3】
(式(a01-2-1)中、Ra01~Ra012は、水素原子、ハロゲン原子、及び有機基からなる群より選択される基である。Ra02及びRa010は互いに結合して環を形成してもよい。)
【0029】
【化4】
(式(a01-3)中、Ra01~Ra010は、水素原子、ハロゲン原子、及び有機基からなる群より選択される基である。Ra02及びRa08は、互いに結合してもよい。)
【0030】
【化5】
(式(a01-4)中、Ra01~Ra012は、水素原子、ハロゲン原子、及び有機基からなる群より選択される基である。Ra02及びRa010は、互いに結合してもよい。)
【0031】
【化6】
(式(a01-5)中、Ra01~Ra012は、水素原子、ハロゲン原子、及び有機基からなる群より選択される基である。)
【0032】
式(a01-1)~(a01-5)中、Ra01~Ra018が有機基である場合、有機基は本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、炭化水素基であっても、炭素原子とハロゲン原子とからなる基であっても、炭素原子及び水素原子とともにハロゲン原子、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ケイ素原子のようなヘテロ原子を含むような基であってもよい。ハロゲン原子の例としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、及びフッ素原子等が挙げられる。
【0033】
有機基としては、炭化水素基と、炭素原子、水素原子、及び酸素原子からなる基と、ハロゲン化炭化水素基と、炭素原子、酸素原子、及びハロゲン原子からなる基と、炭素原子、水素原子、酸素原子、及びハロゲン原子からなる基とが好ましい。有機基が炭化水素基である場合、炭化水素基は、芳香族炭化水素基でも、脂肪族炭化水素基でも、芳香族骨格と脂肪族骨格とを含む基でもよい。有機基の炭素原子数は1以上20以下が好ましく、1以上10以下がより好ましく、1以上5以下が特に好ましい。
【0034】
炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、n-ノナデシル基、及びn-イコシル基等の鎖状アルキル基;ビニル基、1-プロペニル基、2-n-プロペニル基(アリル基)、1-n-ブテニル基、2-n-ブテニル基、及び3-n-ブテニル基等の鎖状アルケニル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、及びシクロヘプチル基等のシクロアルキル基;フェニル基、o-トリル基、m-トリル基、p-トリル基、α-ナフチル基、β-ナフチル基、ビフェニル-4-イル基、ビフェニル-3-イル基、ビフェニル-2-イル基、アントリル基、及びフェナントリル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、α-ナフチルメチル基、β-ナフチルメチル基、α-ナフチルエチル基、及びβ-ナフチルエチル基等のアラルキル基が挙げられる。
【0035】
ハロゲン化炭化水素基の具体例は、クロロメチル基、ジクロロメチル基、トリクロロメチル基、ブロモメチル基、ジブロモメチル基、トリブロモメチル基、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、及びパーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロヘプチル基、パーフルオロオクチル基、パーフルオロノニル基、及びパーフルオロデシル基等のハロゲン化鎖状アルキル基;2-クロロシクロヘキシル基、3-クロロシクロヘキシル基、4-クロロシクロヘキシル基、2,4-ジクロロシクロヘキシル基、2-ブロモシクロヘキシル基、3-ブロモシクロヘキシル基、及び4-ブロモシクロヘキシル基等のハロゲン化シクロアルキル基;2-クロロフェニル基、3-クロロフェニル基、4-クロロフェニル基、2,3-ジクロロフェニル基、2,4-ジクロロフェニル基、2,5-ジクロロフェニル基、2,6-ジクロロフェニル基、3,4-ジクロロフェニル基、3,5-ジクロロフェニル基、2-ブロモフェニル基、3-ブロモフェニル基、4-ブロモフェニル基、2-フルオロフェニル基、3-フルオロフェニル基、4-フルオロフェニル基等のハロゲン化アリール基;2-クロロフェニルメチル基、3-クロロフェニルメチル基、4-クロロフェニルメチル基、2-ブロモフェニルメチル基、3-ブロモフェニルメチル基、4-ブロモフェニルメチル基、2-フルオロフェニルメチル基、3-フルオロフェニルメチル基、4-フルオロフェニルメチル基等のハロゲン化アラルキル基である。
【0036】
炭素原子、水素原子、及び酸素原子からなる基の具体例は、ヒドロキシメチル基、2-ヒドロキシエチル基、3-ヒドロキシ-n-プロピル基、及び4-ヒドロキシ-n-ブチル基等のヒドロキシ鎖状アルキル基;2-ヒドロキシシクロヘキシル基、3-ヒドロキシシクロヘキシル基、及び4-ヒドロキシシクロヘキシル基等のハロゲン化シクロアルキル基;2-ヒドロキシフェニル基、3-ヒドロキシフェニル基、4-ヒドロキシフェニル基、2,3-ジヒドロキシフェニル基、2,4-ジヒドロキシフェニル基、2,5-ジヒドロキシフェニル基、2,6-ジヒドロキシフェニル基、3,4-ジヒドロキシフェニル基、及び3,5-ジヒドロキシフェニル基等のヒドロキシアリール基;2-ヒドロキシフェニルメチル基、3-ヒドロキシフェニルメチル基、及び4-ヒドロキシフェニルメチル基等のヒドロキシアラルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、sec-ブチルオキシ基、tert-ブチルオキシ基、n-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、n-ヘプチルオキシ基、n-オクチルオキシ基、2-エチルヘキシルオキシ基、n-ノニルオキシ基、n-デシルオキシ基、n-ウンデシルオキシ基、n-トリデシルオキシ基、n-テトラデシルオキシ基、n-ペンタデシルオキシ基、n-ヘキサデシルオキシ基、n-ヘプタデシルオキシ基、n-オクタデシルオキシ基、n-ノナデシルオキシ基、及びn-イコシルオキシ基等の鎖状アルコキシ基;ビニルオキシ基、1-プロペニルオキシ基、2-n-プロペニルオキシ基(アリルオキシ基)、1-n-ブテニルオキシ基、2-n-ブテニルオキシ基、及び3-n-ブテニルオキシ基等の鎖状アルケニルオキシ基;フェノキシ基、o-トリルオキシ基、m-トリルオキシ基、p-トリルオキシ基、α-ナフチルオキシ基、β-ナフチルオキシ基、ビフェニル-4-イルオキシ基、ビフェニル-3-イルオキシ基、ビフェニル-2-イルオキシ基、アントリルオキシ基、及びフェナントリルオキシ基等のアリールオキシ基;ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基、α-ナフチルメチルオキシ基、β-ナフチルメチルオキシ基、α-ナフチルエチルオキシ基、及びβ-ナフチルエチルオキシ基等のアラルキルオキシ基;メトキシメチル基、エトキシメチル基、n-プロポキシメチル基、2-メトキシエチル基、2-エトキシエチル基、2-n-プロポキシエチル基、3-メトキシ-n-プロピル基、3-エトキシ-n-プロピル基、3-n-プロポキシ-n-プロピル基、4-メトキシ-n-ブチル基、4-エトキシ-n-ブチル基、及び4-n-プロポキシ-n-ブチル基等のアルコキシアルキル基;メトキシメトキシ基、エトキシメトキシ基、n-プロポキシメトキシ基、2-メトキシエトキシ基、2-エトキシエトキシ基、2-n-プロポキシエトキシ基、3-メトキシ-n-プロポキシ基、3-エトキシ-n-プロポキシ基、3-n-プロポキシ-n-プロポキシ基、4-メトキシ-n-ブチルオキシ基、4-エトキシ-n-ブチルオキシ基、及び4-n-プロポキシ-n-ブチルオキシ基等のアルコキシアルコキシ基;2-メトキシフェニル基、3-メトキシフェニル基、及び4-メトキシフェニル基等のアルコキシアリール基;2-メトキシフェノキシ基、3-メトキシフェノキシ基、及び4-メトキシフェノキシ基等のアルコキシアリールオキシ基;ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、ノナノイル基、及びデカノイル基等の脂肪族アシル基;ベンゾイル基、α-ナフトイル基、及びβ-ナフトイル基等の芳香族アシル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n-プロポキシカルボニル基、n-ブチルオキシカルボニル基、n-ペンチルオキシカルボニル基、n-ヘキシルカルボニル基、n-ヘプチルオキシカルボニル基、n-オクチルオキシカルボニル基、n-ノニルオキシカルボニル基、及びn-デシルオキシカルボニル基等の鎖状アルキルオキシカルボニル基;フェノキシカルボニル基、α-ナフトキシカルボニル基、及びβ-ナフトキシカルボニル基等のアリールオキシカルボニル基;ホルミルオキシ基、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基、ブタノイルオキシ基、ペンタノイルオキシ基、ヘキサノイルオキシ基、ヘプタノイルオキシ基、オクタノイルオキシ基、ノナノイルオキシ基、及びデカノイルオキシ基等の脂肪族アシルオキシ基;ベンゾイルオキシ基、α-ナフトイルオキシ基、及びβ-ナフトイルオキシ基等の芳香族アシルオキシ基である。
【0037】
a01~Ra018は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1以上5以下のアルキル基、及び炭素原子数1以上5以下のアルコキシ基からなる群より選択される基が好ましく、特に機械的特性に優れる硬化膜を形成しやすいことから、Ra01~Ra018が全て水素原子であるのがより好ましい。
【0038】
式(a01-2)~(a01-5)中、Ra01~Ra018は、式(a01-1)におけるRa01~Ra018と同様である。式(a01-2)及び式(a01-4)において、Ra02及びRa010が、互いに結合する場合、式(a01-2)において、Ra013及びRa016が、互いに結合する場合、及び式(a01-3)において、Ra02及びRa08が、互いに結合する場合に形成される2価の基としては、例えば、-CH-、-C(CH-が挙げられる。
【0039】
式(a01-1)で表される脂環式エポキシ化合物のうち、好適な化合物の具体例としては、下記式(a01-1a)、式(a01-1b)、及び式(a01-1c)で表される脂環式エポキシ化合物や、2,2-ビス(3,4-エポキシシクロヘキサン-1-イル)プロパン[=2,2-ビス(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロパン]等を挙げることができる。
【化7】
【0040】
式(a01-2)で表される脂環式エポキシ化合物のうち、好適な化合物の具体例としては、下記式(a01-2a)及び下記式(a01-2b)で表される脂環式エポキシ化合物が挙げられる。
【化8】
【0041】
式(a01-3)で表される脂環式エポキシ化合物のうち、好適な化合物の具体例としては、Sスピロ[3-オキサトリシクロ[3.2.1.02,4]オクタン-6,2’-オキシラン]等が挙げられる。
【0042】
式(a01-4)で表される脂環式エポキシ化合物のうち、好適な化合物の具体例としては、4-ビニルシクロヘキセンジオキシド、ジペンテンジオキシド、リモネンジオキシド、1-メチルー4-(3-メチルオキシラン-2-イル)-7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン等が挙げられる。
【0043】
式(a01-5)で表される脂環式エポキシ化合物のうち、好適な化合物の具体例としては、1,2,5,6-ジエポキシシクロオクタン等が挙げられる。
【0044】
(エポキシ基含有樹脂)
エポキシ基を有するエポキシ基含有樹脂を用いる場合、必要に応じて周知の硬化剤、又は硬化促進剤等を用いることにより、樹脂に含まれる分子間にエポキシ基間の重付加反応による架橋が生じる。
【0045】
エポキシ基含有樹脂は、エポキシ基を有する単量体又はエポキシ基を有する単量体を含む単量体混合物を重合させて得られる重合体であってもよい。エポキシ基含有樹脂は、水酸基、カルボキシル基、アミノ基等の反応性を有する官能基を有する重合体に対して、例えばエピクロルヒドリンのようなエポキシ基を有する化合物を用いてエポキシ基を導入したものであってもよい。入手、調製、重合体中のエポキシ基の量の調整等が容易であることから、エポキシ基を有する重合体としては、エポキシ基を有する単量体又はエポキシ基を有する単量体を含む単量体混合物を重合させて得られる重合体が好ましい。
【0046】
エポキシ基含有樹脂の好ましい一例としては、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、及びビスフェノールADノボラック型エポキシ樹脂等のノボラックエポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂のエポキシ化物等の環式脂肪族エポキシ樹脂;ナフタレン型フェノール樹脂のエポキシ化物等の芳香族エポキシ樹脂が挙げられる。
【0047】
また、エポキシ基含有樹脂の中では、調製が容易であったり、硬化膜の物性の調整が容易であったりすることから、エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体か、エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルと他の単量体との共重合体が好ましい。
【0048】
エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルは、鎖状脂肪族エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルであっても、後述するような、脂環式エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルであってもよい。また、エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルは、芳香族基を含んでいてもよい。エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルの中では、鎖状脂肪族エポキシ基を有する脂肪族(メタ)アクリル酸エステルや、脂環式エポキシ基を有する脂肪族(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、脂環式エポキシ基を有する脂肪族(メタ)アクリル酸エステルがより好ましい。
【0049】
芳香族基を含み、エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルの例としては、4-グリシジルオキシフェニル(メタ)アクリレート、3-グリシジルオキシフェニル(メタ)アクリレート、2-グリシジルオキシフェニル(メタ)アクリレート、4-グリシジルオキシフェニルメチル(メタ)アクリレート、3-グリシジルオキシフェニルメチル(メタ)アクリレート、及び2-グリシジルオキシフェニルメチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0050】
鎖状脂肪族エポキシ基を有する脂肪族(メタ)アクリル酸エステルの例としては、エポキシアルキル(メタ)アクリレート、及びエポキシアルキルオキシアルキル(メタ)アクリレート等のような、エステル基(-O-CO-)中のオキシ基(-O-)に鎖状脂肪族エポキシ基が結合する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。このような(メタ)アクリル酸エステルが有する鎖状脂肪族エポキシ基は、鎖中に1又は複数のオキシ基(-O-)を含んでいてもよい。鎖状脂肪族エポキシ基の炭素原子数は、特に限定されないが、3以上20以下が好ましく、3以上15以下がより好ましく、3以上10以下が特に好ましい。
【0051】
鎖状脂肪族エポキシ基を有する脂肪族(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、グリシジル(メタ)アクリレート、2-メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシブチル(メタ)アクリレート、6,7-エポキシヘプチル(メタ)アクリレート等のエポキシアルキル(メタ)アクリレート;2-グリシジルオキシエチル(メタ)アクリレート、3-グリシジルオキシ-n-プロピル(メタ)アクリレート、4-グリシジルオキシ-n-ブチル(メタ)アクリレート、5-グリシジルオキシ-n-ヘキシル(メタ)アクリレート、6-グリシジルオキシ-n-ヘキシル(メタ)アクリレート等のエポキシアルキルオキシアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0052】
脂環式エポキシ基を有する脂肪族(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、例えば下記式(a05-1)~(a05-15)で表される化合物が挙げられる。これらの中でも、下記式(a05-1)~(a05-5)で表される化合物が好ましく、下記式(a05-1)~(a05-3)で表される化合物がより好ましい。また、これら各化合物に関し、脂環に対するエステル基の酸素原子の結合部位はここで示されているものに限られず、一部位置異性体を含んでいてもよい。
【0053】
【化9】
【0054】
【化10】
【0055】
【化11】
【0056】
上記式中、Ra032は水素原子又はメチル基を示し、Ra033は炭素原子数1以上6以下の2価の脂肪族飽和炭化水素基を示し、Ra034は炭素原子数1以上10以下の2価の炭化水素基を示し、tは0以上10以下の整数を示す。Ra033としては、直鎖状又は分枝鎖状のアルキレン基、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、エチルエチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基が好ましい。Ra034としては、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、エチルエチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、フェニレン基、シクロヘキシレン基が好ましい。
【0057】
エポキシ基を有する重合体としては、エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体、及びエポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルと他の単量体との共重合体のいずれも用いることができるが、エポキシ基を有する重合体中の、エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルに由来する単位の含有量は、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上が特に好ましい。
【0058】
エポキシ基を有する重合体が、エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルと他の単量体との共重合体である場合、他の単量体としては、不飽和カルボン酸、エポキシ基を持たない(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド類、アリル化合物、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、スチレン類等が挙げられる。これらの化合物は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0059】
硬化剤や硬化促進剤を用いることなく硬化膜を形成できる点から、エポキシ基を有する重合体が、エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルと、不飽和カルボン酸との共重合体であるのが好ましい。
【0060】
不飽和カルボン酸の例としては、(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリル酸アミド;クロトン酸;マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸、これらジカルボン酸の無水物が挙げられる。
【0061】
エポキシ基を持たない(メタ)アクリル酸エステルの例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、t-オクチル(メタ)アクリレート等の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル(メタ)アクリレート;クロロエチル(メタ)アクリレート、2,2-ジメチルヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、2-メチルフェニル(メタ)アクリレート、3-メチルフェニル(メタ)アクリレート、4-メチルフェニル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレート、ナフタレン-1-イル(メタ)アクリレート、ナフタレン-2-イル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フルフリル(メタ)アクリレート;脂環式骨格を有する基を有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。エポキシ基を持たない(メタ)アクリル酸エステルの中では、脂環式骨格を有する基を有する(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。
【0062】
脂環式骨格を有する基を有する(メタ)アクリル酸エステルにおいて、脂環式骨格を構成する脂環式基は、単環であっても多環であってもよい。単環の脂環式基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。また、多環の脂環式基としては、ノルボルニル基、イソボルニル基、トリシクロノニル基、トリシクロデシル基、テトラシクロドデシル基等が挙げられる。
【0063】
脂環式骨格を有する基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば下記式(a06-1)~(a06-8)で表される化合物が挙げられる。これらの中では、下記式(a06-3)~(a06-8)で表される化合物が好ましく、下記式(a06-3)又は(a06-4)で表される化合物がより好ましい。
【0064】
【化12】
【0065】
【化13】
【0066】
上記式中、Ra035は水素原子又はメチル基を示し、Ra036は単結合又は炭素原子数1以上6以下の2価の脂肪族飽和炭化水素基を示し、Ra037は水素原子又は炭素原子数1以上5以下のアルキル基を示す。Ra036としては、単結合、直鎖状又は分枝鎖状のアルキレン基、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、エチルエチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基が好ましい。Ra037としては、メチル基、エチル基が好ましい。
【0067】
(メタ)アクリルアミド類の例としては、(メタ)アクリルアミド、N-アルキル(メタ)アクリルアミド、N-アリール(メタ)アクリルアミド、N,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド、N,N-アリール(メタ)アクリルアミド、N-メチル-N-フェニル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル-N-メチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0068】
アリル化合物の例としては、酢酸アリル、カプロン酸アリル、カプリル酸アリル、ラウリン酸アリル、パルミチン酸アリル、ステアリン酸アリル、安息香酸アリル、アセト酢酸アリル、乳酸アリル等のアリルエステル類;アリルオキシエタノール;等が挙げられる。
【0069】
ビニルエーテル類の例としては、ヘキシルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、デシルビニルエーテル、エチルヘキシルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、クロロエチルビニルエーテル、1-メチル-2,2-ジメチルプロピルビニルエーテル、2-エチルブチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールビニルエーテル、ジメチルアミノエチルビニルエーテル、ジエチルアミノエチルビニルエーテル、ブチルアミノエチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、テトラヒドロフルフリルビニルエーテル等の脂肪族ビニルエーテル;ビニルフェニルエーテル、ビニルトリルエーテル、ビニルクロロフェニルエーテル、ビニル-2,4-ジクロロフェニルエーテル、ビニルナフチルエーテル、ビニルアントラニルエーテル等のビニルアリールエーテル;等が挙げられる。
【0070】
ビニルエステル類の例としては、ビニルブチレート、ビニルイソブチレート、ビニルトリメチルアセテート、ビニルジエチルアセテート、ビニルバレート、ビニルカプロエート、ビニルクロロアセテート、ビニルジクロロアセテート、ビニルメトキシアセテート、ビニルブトキシアセテート、ビニルフエニルアセテート、ビニルアセトアセテート、ビニルラクテート、ビニル-β-フェニルブチレート、安息香酸ビニル、サリチル酸ビニル、クロロ安息香酸ビニル、テトラクロロ安息香酸ビニル、ナフトエ酸ビニル等が挙げられる。
【0071】
スチレン類の例としては、スチレン;メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、ヘキシルスチレン、シクロヘキシルスチレン、デシルスチレン、ベンジルスチレン、クロロメチルスチレン、トリフルオロメチルスチレン、エトキシメチルスチレン、アセトキシメチルスチレン等のアルキルスチレン;メトキシスチレン、4-メトキシ-3-メチルスチレン、ジメトキシスチレン等のアルコキシスチレン;クロロスチレン、ジクロロスチレン、トリクロロスチレン、テトラクロロスチレン、ペンタクロロスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、ヨードスチレン、フルオロスチレン、トリフルオロスチレン、2-ブロモ-4-トリフルオロメチルスチレン、4-フルオロ-3-トリフルオロメチルスチレン等のハロスチレン;等が挙げられる。
【0072】
エポキシ基含有樹脂の分子量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されないが、ポリスチレン換算の質量平均分子量として、3,000以上30,000以下が好ましく、5,000以上15,000以下がより好ましい。
【0073】
硬化膜形成用組成物中のエポキシ化合物(A)の含有量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。
硬化膜形成用組成物中のエポキシ化合物(A)の含有量は、硬化膜の形成が容易である点から、エポキシ化合物(A)の質量と、中空シリカ(B)の質量の合計に対して、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。
また、低屈折率の硬化膜を形成しやすい点から、硬化膜形成用組成物中のエポキシ化合物(A)の含有量は、エポキシ化合物(A)の質量と、中空シリカ(B)の質量の合計に対して、50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下が特に好ましい。
【0074】
<中空シリカ(B)>
硬化性組成物は中空シリカ(B)を含む。中空シリカ(B)の屈折率は、通常のシリカの屈折率1.46よりも著しく低い。これは、中空シリカ(B)が、1.0の低い屈折率を示す空気を内部に含むためである。
このため、中空シリカ(B)を含む硬化性組成物を用いることにより、低屈折率の硬化膜を形成できる。
中空シリカの屈折率としては、典型的には1.2以上1.3以下が好ましい。
【0075】
中空シリカ(B)としては、従来知られるものを特に制限なく用いることができる。中空シリカは、市販品であっても、合成品であってもよい。
中空シリカ(B)は、粒子径や屈折率を考慮して、公知の中空シリカから選択して使用することができる。
【0076】
中空シリカ(B)の体積平均粒子径は、50nm以上100nm以下が好ましく、60nm以上80nm以下がより好ましい。
【0077】
硬化膜形成用組成物中の中空シリカ(B)の含有量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。硬化膜形成用組成物中の中空シリカ(B)の含有量は、低屈折率の硬化膜を形成しやすい点から、エポキシ化合物(A)の質量と、中空シリカ(B)の質量の合計に対して、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上が特に好ましい。
【0078】
<界面活性剤(C)>
硬化膜形成用組成物は、界面活性剤(C)を含む。界面活性剤(C)と、後述する高沸点溶剤(SH)とを組み合わせて含む硬化膜形成用組成物を用いる場合、スリット塗布のようなムラやピン跡等の表面の不具合が生じやすい塗布方法により硬化膜形成用組成物の塗布を行っても、表面に不具合のない硬化膜を形成しやすい。
界面活性剤(C)が、塗布膜の硬化中の塗布膜表面のレベリングを促進させているためと考えられる。
【0079】
表面に不具合のない硬化膜の形成が特に容易である点から、界面活性剤(C)の分子量は、2000以上が好ましく、3000以上がより好ましい。界面活性剤(C)の分子量の上限は特に限定されない。典型的には、界面活性剤(C)の分子量の上限は、50000以下である。
【0080】
界面活性剤(C)の種類は、所望する効果が得られる限り特に限定されない、界面活性剤(C)としては、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤、及びノニオン系界面活性剤のいずれも用いることができる。界面活性剤(C)の使用による効果が優れている点から、界面活性剤(C)としては、ノニオン系界面活性剤が好ましい。
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、シロキサン系界面活性剤、及びフッ素系界面活性剤が好ましい。
【0081】
硬化膜形成用組成物における界面活性剤(C)の使用量は、エポキシ化合物(A)の量と、中空シリカ(B)の量との合計を100質量部とする場合に、0.01質量部以上10質量部以下が好ましく、0.05質量部以上5質量部以下がより好ましく、0.1質量部以上3質量部以下が特に好ましい。
【0082】
<溶剤(S)>
硬化膜形成用組成物は、溶剤(S)を含む。溶剤(S)は、大気圧下での沸点が170℃以上である1種以上の高沸点溶剤(SH)を含む。
前述の界面活性剤(C)と、高沸点溶剤(SH)とを組み合わせて含む硬化膜形成用組成物を用いる場合、スリット塗布のようなムラやピン跡等の表面の不具合が生じやすい塗布方法により硬化膜形成用組成物の塗布を行っても、表面に不具合のない硬化膜を形成しやすい。
【0083】
硬化膜形成用組成物からなる塗布膜が高沸点溶剤(SH)を含む場合、塗布膜の硬化を進める過程で、溶剤(S)の大部分が塗布膜から除去されても、若干量の高沸点溶剤(SH)が塗布膜中に残存する。そうすると、残存する高沸点溶剤(SH)の影響で、硬化中の塗布膜表面のレベリングが進行する。このような理由により、平滑でムラのない好ましい表面を有する硬化膜が形成されると考えられる。
【0084】
高沸点溶剤(SH)の大気圧下での沸点は250℃以下が好ましく、230℃以下がより好ましい。この場合、硬化膜形成用組成物の塗布膜を加熱して硬化させる際に、硬化膜中の高沸点溶剤(SH)の残存量をごく少なくし、高品質な硬化膜を形成しやすい。
【0085】
平滑でムラのない好ましい表面を有する硬化膜を形成しやすい点から、溶剤(S)に含まれる高沸点溶剤(SH)の25℃における表面張力が、いずれも27dyn/cm以上であるのが好ましい。高沸点溶剤(SH)の25℃における表面張力は、28dyn/cm以上がより好ましく、30dyn/cm以上が特に好ましい。かかる表面張力を示す高沸点溶剤(SH)を用いることにより、塗布膜の硬化中に、塗布膜表面のレベリングを良好に進行させることができる。
また、溶剤(S)が、25℃における表面張力が、25dyn/cm以上、好ましくは26dyn/cm以上、より好ましくは27dyn/cm以上である有機溶剤のみを含むのが好ましい。
この場合、塗布膜の硬化中に、塗布膜表面のレベリングを特に良好に進行させやすい。
【0086】
溶剤(S)に含まれる、1種以上の高沸点溶剤(SH)のSP値((cal/cm1/2、Fedor)が、いずれも9.0以上12.5以下であるのが好ましい。
かかる高沸点溶剤(SH)のシリカ粒子(B)に対する親和性が良好であることによって、塗布膜表面のレベリングになんらかの良い影響が生じていると推測される。
【0087】
溶剤(S)は、大気圧下での沸点が170℃未満である1種以上の低沸点溶剤(SL)を含むのが好ましい。高沸点溶剤(SH)とともに、低沸点溶剤(SL)を用いる場合、硬化膜形成用組成物からなる塗布膜から溶剤(S)の除去する際に、低沸点溶剤(SL)と、高沸点溶剤(SH)とが、順次揮発してゆく。このため、溶剤(S)が、塗布膜から急激に揮発しない。この結果、硬化膜表面のムラや荒れ等の欠陥の発生を防ぎつつ硬化膜を形成しやすい。
【0088】
また、低沸点溶剤(SL)は、大気圧下での沸点が80℃以上130℃未満である1種以上の第1低沸点溶剤(SL1)と、大気圧下での沸点が130℃以上170℃未満である1種以上の第2低沸点溶剤(SL2)とを含むのが好ましい。
低沸点溶剤(SL)が、沸点の異なる2種以上の溶剤を含むことによって、硬化膜表面のムラや荒れ等の欠陥の発生を防ぎつつ硬化膜を形成することが、さらに容易である。
【0089】
高沸点溶剤(SH)の具体例としては、ベンジルアルコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル(ブチルカルビトール)、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(DPM)、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテルジプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、N-メチル-2-ピロリドン、1,4-ブタンジオールジアセテート、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテルアセテート、1,6-ヘキサンジオールジアセテート、ε-カプロラクトン、1,3-ブチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールメチル-n-ブチルエーテル、γ-ブチロラクトン、ジプロピレングリコールメチル-n-プロピルエーテル、3-メトキシブチルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、及びプロピレングリコールジアセテートが挙げられる。
溶剤(S)は、これらの高沸点溶剤(SH)を2種以上組み合わせて含んでいてもよい。
【0090】
上記の高沸点溶剤(SH)の中では、入手が容易である点や、塗布性の良好な効果膜形成用組成物を調製しやすいことから、ベンジルアルコール、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル(ブチルカルビトール)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(DPM)、1,4-ブタンジオールジアセテート、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテルアセテート、1,6-ヘキサンジオールジアセテート、ε-カプロラクトン、1,3-ブチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールメチル-n-ブチルエーテル、γ-ブチロラクトン、ジプロピレングリコールメチル-n-プロピルエーテル、3-メトキシブチルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、及びプロピレングリコールジアセテートが好ましい。
【0091】
大気圧下での沸点が80℃以上130℃未満である第1低沸点溶剤(SL1)の好適な具体例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、酪酸エチル、酢酸n-ブチル、及びメチルエチルケトン等が挙げられる。
溶剤(S)は、これらの第1低沸点溶剤(SL1)を2種以上組み合わせて含んでいてもよい。
【0092】
大気圧下での沸点が130℃以上170℃未満である第2低沸点溶剤(SL2)の好適な具体例としては、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコール-n-プロピルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、3-メトキシブタノール、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、蟻酸n-ペンチル、酢酸イソペンチル、プロピオン酸n-ブチル、酪酸n-プロピル、酪酸イソプロピル、酪酸n-ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸n-プロピル、3-ヘプタノン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、2-ヘプタノン、シクロペンタノン、及びシクロヘキサノンが挙げられる。
溶剤(S)は、これらの第2低沸点溶剤(SL2)を2種以上組み合わせて含んでいてもよい。
【0093】
硬化膜形成用組成物における溶剤(S)の使用量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。溶剤(S)の使用量は、形成される硬化膜の膜厚等を勘案したうえで、硬化膜形成用組成物の粘度が、塗布方法に応じた適切な粘度であるように適宜決定される。
【0094】
典型的には、硬化膜形成用組成物の固形分濃度が1質量%以上50質量%以下、好ましくは2質量%以上30質量%以下、より好ましくは3質量%以上20質量%以下であるように溶剤(S)が使用される。
塗布方法がスリット塗布である場合、硬化膜形成用組成物の固形分濃度が1質量%以上15質量%以下、好ましくは2質量%以上12質量%以下、より好ましくは3質量%以上10質量%以下であるように溶剤(S)が使用される。
【0095】
溶剤(S)における、高沸点溶剤(SH)の含有量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。高沸点溶剤(SH)の含有量は、溶剤(S)の質量に対して、2質量%以上60質量%以下が好ましく、2質量%以上50質量%以下がより好ましく、3質量%以上30質量%以下がさらに好ましく、5質量%以上25質量%以下が特に好ましい。
溶剤(S)における、低沸点溶剤(SL)の含有量は、溶剤(S)の質量に対して、40質量%以上98質量%以下が好ましく、50質量%以上98質量%以下がより好ましく、70質量%以上97質量%以下がさらに好ましく、75質量%以上95質量%以下が特に好ましい。
【0096】
低沸点溶剤(SL)が、第1低沸点溶剤(SL1)と、第2低沸点溶剤(SL2)とを含む場合、低沸点溶剤(SL)における両者の含有比率は特に限定されない。
この場合、低沸点溶剤(SL)中の、第1低沸点溶剤(SL1)の含有量は、20質量%以上90質量%以下が好ましく、30質量%以上90質量%以下がより好ましく、40質量%以上80質量%以下がさらに好ましい。
【0097】
<その他の成分>
硬化膜形成用脂組成物は、必要に応じて、各種の添加剤を含有していてもよい。添加剤としては、密着促進剤、酸化防止剤、分散剤、凝集防止剤、消泡剤等が挙げられる。
【0098】
以上説明した各成分を、所望する組成で、均一に混合することにより、硬化膜形成用組成物が製造される。
【0099】
以上説明した硬化膜形成用組成物を用いる場合、好ましくは、下記硬化膜形成条件1により硬化膜を形成した場合に、屈折率が1.30以下となる硬化膜が形成される。
<硬化膜形成条件1>
6インチのシリコン基板にスリットコーターを用いて塗布速度(ガントリースピード)100mm/秒で硬化膜形成用組成物を塗布して、10cm×10cmのサイズで膜厚1000nmの塗布膜を形成する。
形成された塗布膜を20Paの減圧条件下に10秒置いた後、ガラス基板をホットプレート上に載置して、塗布膜を100℃で2分間加熱する。次いで、ガラス基板を、230℃に加熱し、塗布膜を同温度で20分間加熱する。
【0100】
また、以上説明した硬化膜形成用組成物を用いる場合、好ましくは、下記硬化膜形成条件2により硬化膜を形成した場合に、ヘイズ値が1%以下となる硬化膜が形成される。
<硬化膜形成条件2>
680mm×880mmのサイズのガラス基板上に、スリットコーターを用いて塗布速度(ガントリースピード)180mm/秒で硬化膜形成用組成物を塗布して、膜厚1000nmの塗布膜を形成する。
形成された塗布膜を20Paの減圧条件下に10秒置いた後、ガラス基板をホットプレート上に載置して、塗布膜を100℃で2分間加熱する。次いで、ガラス基板を、230℃に加熱し、塗布膜を同温度で20分間加熱する。
【0101】
以上説明した硬化膜形成用組成物を用いることにより、表面に不具合が無く、低屈折率である硬化膜を形成できる。かかる硬化膜は、イメージセンサー用マイクロレンズを被覆する低屈折率膜や、液晶ディスプレイ、有機EL素子等における反射防止用の低屈折率膜等の種々の用途に好適に用いられる。
【0102】
≪硬化膜形成方法≫
硬化膜形成方法は、
前述の硬化膜形成用組成物を、基板上に塗布することによる、塗布膜の形成と、
加熱による塗布膜の硬化と、
を含む、方法である。
【0103】
塗布膜の形成において、塗布方法としては、スリット塗布、ディップ塗布、スピン塗布スプレー塗布、スクリーン印刷塗布等の方法が好ましく使用される。これらの方法の中では、パネルサイズの角基板で面内を均一に製膜できる点でスリット塗布が好ましい。
スリット塗布を行う場合、硬化膜を備える基板を高いスループットで製造できる点で、120mm/秒以上の塗布速度で塗布を行うのが好ましい。
【0104】
前述の通り、エポキシ化合物(A)と、中空シリカ(B)とを含む組成物を上記の条件で塗布して硬化膜を形成する場合、表面に、もやムラ、筋ムラ、ピン跡のような不具合が生じやすい。
しかし、前述の硬化膜形成用組成物を用いる場合、スリット塗布等により塗布膜を形成しても、表面の不具合を抑制しつつ、硬化膜を形成できる。
【0105】
塗布膜の膜厚特に限定されず、例えば、50nm以上5000nm以下が好ましく、100nm以上2000nm以下が特に好ましい。
【0106】
このようにして形成された塗布膜は、次いで加熱による硬化に供される。
塗布膜を加熱する際、一旦、塗布膜を減圧条件に置くのが好ましい。減圧条件に塗布膜を置くことにより、塗布膜中の溶剤(S)の少なくとも一部が除去される。
減圧された雰囲気の温度は、例えば、0℃以上50℃以下であり、好ましく10℃以上30℃以下の室温付近の温度である。
減圧された雰囲気の真空度は特に限定されないが、例えば1Pa以上300Pa以下であり、10Pa以上200Pa以下が好ましい。
上記の減圧条件下で、塗布膜から穏やかに溶剤(S)を除くことにより、表面の不具合を抑制しつつ、硬化膜を形成しやすい。
【0107】
上記のようにして形成された塗布膜は、任意に、減圧条件下に置かれた後、加熱して硬化される。加熱条件は、塗布膜の硬化が良好に進行する限り特に限定されない。
塗布膜の加熱は、例えば、60℃以上150℃以下程度の範囲内の温度での予備加熱と、予備加熱後に行われる150℃以上250℃以下程度の範囲内の温度での本加熱に分けて行われるのが好ましい。
予備加熱の時間は特に限定されないが、典型的には、30秒以上10分以下であり、1分以上5分以下が好ましい。
本加熱の時間は特に限定されないが、典型的には5分以上60分以下であり、10分以上30分以下が好ましい。
【0108】
以上説明した方法により、もやムラ、筋ムラ、ピン跡のような表面の不具合を抑制しつつ、良好に硬化膜を形成することができる。
【実施例
【0109】
以下、実施例を示して本発明をさらに具体的に説明する。本発明の範囲は、これらの実施例に限定されない。
【0110】
〔実施例1~14、及び比較例1~4〕
実施例及び比較例において、エポキシ化合物(A)(成分(A))として、下記のA-1、及びA-2を用いた。
A-1:グリシジルメタクリレートに由来する単位42質量%と、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレートに由来する単位42質量%と、メタクリル酸に由来する単位16質量%とからなるアクリル系共重合体
A-2:グリシジルメタクリレートに由来する単位80質量%と、4-ヒドロキシフェニルメタクリレートに由来する単位20質量%とからなるアクリル系重合体
【0111】
実施例及び比較例において、中空シリカ(B)(成分(B))として、体積平均粒子液が60nmである中空シリカ粒子を用いた。
【0112】
実施例及び比較例において、界面活性剤(C)(成分(C))として、以下のC-1~C-4を用いた。
C-1:フッ素系界面活性剤(PF-656、OMNOVA社製)分子量1500
C-2:シロキサン系界面活性剤(ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、BYK-310ビックケミー社製)分子量4000
C-3:シロキサン系界面活性剤(グラノール440、共栄社化学社製)分子量5300
C-4:フッ素系界面活性剤(APX-4082B、共栄社化学社製)分子量20000
【0113】
実施例及び比較例について、第1低沸点溶剤(SL1)として以下のSL1-1と、第2低沸点溶剤(SL2)として以下のSL2-1及びSL2-2と、高沸点溶剤(SH)として以下のSH-1、SH-2、及びSH-3とを用いた。
SL1-1:プロピレングリコールモノメチルエーテル
SL2-1:3-メトキシブタノール
SL2-2:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
SH-1:ベンジルアルコール
SH-2:ジプロピレングリコールモノメチルエーテル
SH-3:ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル(ブチルカルビトール)
SH-4:プロピレングリコールジアセテート
【0114】
それぞれ、表1~表3に記載の量(質量部)のエポキシ化合物(A)及び中空シリカ(B)と、表1~表3に記載の種類及び量(質量部)の界面活性剤(C)とを、表1~表3に記載の固形分濃度になるように溶剤(S)に溶解・分散させて、各実施例及び比較例の硬化膜形成用組成物を調製した。溶剤(S)としては、表1~表3に記載の組成の混合溶剤を用いた。
【0115】
得られた各硬化膜形成用組成物を用いて、以下の方法により硬化膜におけるムラの発生とピン跡の発生とを評価した。
680mm×880mmのサイズのガラス基板上に、スリットコーターを用いて塗布速度(ガントリースピード)180mm/秒で硬化膜形成用組成物を塗布して、膜厚1000nmの塗布膜を形成した。
形成された塗布膜を20Paの減圧条件下に10秒置いた後、ガラス基板をホットプレート上に載置して、塗布膜を100℃で2分間加熱した。次いで、ガラス基板を、230℃のホットプレート上に移し替え、塗布膜を20分間加熱した。
形成された塗布膜の表面を顕微鏡により観察して、もやムラ、筋ムラ等のムラが観察された場合にムラの評価を×とした。他方、ムラが観察されなかった場合にムラの評価を○とした。
また、顕微鏡観察によりピン跡が観察された場合にピン跡の評価を×とした。他方、ピン跡が観察されなかった場合にピン跡の評価を○とした。
【0116】
前述の硬化膜形成条件1で硬化膜を形成し、形成された硬化膜の屈折率を測定した。屈折率の測定結果を表1~表3に記す。
【0117】
また、前述の硬化膜形成条件2で硬化膜を形成し、形成された硬化膜のヘイズ値を測定した。なお、比較例1、2、及び4の硬化膜形成用組成物についてはヘイズ値の測定を行わなかった。
ヘイズ値が1%以下である場合を○と評価し、1%超である場合を×と評価した。評価結果を表1~表3に記す。
【0118】
【表1】
【0119】
【表2】
【0120】
【表3】
【0121】
表1及び表2から、エポキシ化合物(A)と、中空シリカ(B)と、溶剤(S)とを含み、さらに界面活性剤(C)を含有し、溶剤(S)として、大気圧下での沸点が170℃以上である1種以上の高沸点溶剤(SH)を含む、実施例の硬化膜形成用組成物を用いる場合、表面におけるムラやピン跡の発生を抑制しつつ、良好に硬化膜を形成できることが分かる。
他方、表3から、高沸点溶剤(SH)や界面活性剤(C)を含まない比較例の硬化膜形成用組成物を用いる場合、硬化膜の表面に、ムラかピン跡の少なくとも一方が生じやすいことが分かる。