(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-30
(45)【発行日】2022-10-11
(54)【発明の名称】検査装置
(51)【国際特許分類】
H01J 37/29 20060101AFI20221003BHJP
H01J 37/28 20060101ALI20221003BHJP
H01J 37/244 20060101ALI20221003BHJP
H01J 37/05 20060101ALI20221003BHJP
H01J 37/073 20060101ALI20221003BHJP
H01J 37/20 20060101ALI20221003BHJP
H01L 21/66 20060101ALI20221003BHJP
【FI】
H01J37/29
H01J37/28 B
H01J37/244
H01J37/05
H01J37/073
H01J37/20 H
H01L21/66 J
(21)【出願番号】P 2019076464
(22)【出願日】2019-04-12
【審査請求日】2021-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】230112025
【氏名又は名称】小林 英了
(74)【代理人】
【識別番号】230117802
【氏名又は名称】大野 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100106840
【氏名又は名称】森田 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100131451
【氏名又は名称】津田 理
(74)【代理人】
【識別番号】100167933
【氏名又は名称】松野 知紘
(74)【代理人】
【識別番号】100174137
【氏名又は名称】酒谷 誠一
(74)【代理人】
【識別番号】100184181
【氏名又は名称】野本 裕史
(72)【発明者】
【氏名】畠山 雅規
【審査官】大門 清
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-064567(JP,A)
【文献】特開2015-035358(JP,A)
【文献】特開2002-313273(JP,A)
【文献】特開平10-339711(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/00-37/36
H01L 21/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を検査する検査装置であって、
前記試料を載置して連続的に移動するステージと、
前記ステージ上の前記試料に対して一次ビームを照射する一次光学系と、
前記ステージ上の前記試料にリターディング電圧を印加するリターディング電源と、
前記一次ビームのランディングエネルギーが検査エネルギー条件とプレチャージエネルギー条件の両方を実現するように、前記リターディング電圧を変更する電圧制御部と、
前記一次ビームを前記試料に照射することにより前記試料から発生した二次ビームの像を生成する二次元センサを含む検出器と、
前記二次ビームを前記二次元センサに導く2次光学系と、
を備え、
前記電圧制御部は、前記二次元センサの1画素内で前記プレチャージエネルギー条件と前記検査エネルギー条件の両方が順に実現されるように、前記二次元センサの画素の送り速度に同期したパルスを前記リターディング電圧に重畳する
ことを特徴とする検査装置。
【請求項2】
前記電圧制御部は、
前記ステージの位置に応じて前記二次元センサに転送クロックを出力する撮像コントローラと、
前記撮像コントローラが出力した前記転送クロックに同期して前記パルスを前記リターディング電圧に重畳するパルス電源と、を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記電圧制御部は、前記パルスのデューティ比を変更可能である
ことを特徴とする請求項1または2に記載の検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査対象の表面に形成されたパターンの欠陥等を検査する検査装置に関し、詳しくは、検査対象の表面の性状に応じて変化する二次荷電粒子を捕捉して画像データを形成し、その画像データに基づいて検査対象の表面に形成されたパターン等を高いスループットで検査する検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の半導体検査装置は、100nmデザインルールに対応した装置と技術であった。しかし、検査対象の試料は、ウエハ、露光用マスク、EUVマスク、NIL(ナノインプリントリソグラフィ)マスク及び基板と多様化しており、現在は試料が5~30nmのデザインルールに対応した装置及び技術が求められている。すなわち、パターンにおけるL/S(ライン/スペース)又はhp(ハーフピッチ)のノードが5~30nmの世代に対する対応が求められている。このような試料を検査装置で検査する場合、高分解能を得ることが必要になる。
【0003】
ここで試料とは、露光用マスク、EUVマスク、ナノインプリント用マスク(及びテンプレート)、半導体ウエハ、光学素子用基板、光回路用基板等である。これらは、パターンを有するものとパターンがないものとがある。パターンが有るものは、凹凸のあるものとないものとが有る。凹凸のないパターンは、異なった材料によるパターン形成がなされている。パターンがないものには、酸化膜がコーティングされているものと、酸化膜がコーティングされていないものとが有る。
【0004】
特許文献1~3には、従来の検査装置の構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開WO2002/001596号
【文献】特開2007-48686号公報
【文献】特開平11-132975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来、検査装置の一次光学系として、熱電子放出型の六ホウ化ランタン(LaB
6)を用いたものが知られている。
図15に示すように、LaB
6を用いた一次光学系の場合、LaB
6から放出される電子のエネルギー分散が比較的大きいことから、ある検査エネルギー条件を選択した際に、その裾野の強度の弱いエネルギーの部分においてプレチャージエネルギー条件を実現することができる。この効果により、LaB
6を用いた一次光学系では、一度のスキャン動作にてプレチャージと検査の両方を実施可能である。しかしながら、検査エネルギー条件とは独立に、的確なプレチャージエネルギー条件を選択することができないという不都合がある。
【0007】
一方、検査装置の一次光学系として、レーザ光が照射されることにより一次ビームを発生する光電面を用いたものの開発が進められている。
図16Aに示すように、光電面を用いた一次光学系の場合、光電面から放出される電子のエネルギー分散が比較的小さいことから、ある検査エネルギー条件を選択した場合に、その裾野の強度の弱いエネルギーの部分でプレチャージエネルギー条件を同時に実現することはできないものの、
図16Bに示すように、リターディング電圧を変更することで、検査エネルギー条件とは独立に、的確なプレチャージエネルギー条件を選択することが可能である。
【0008】
このような光電面を用いた一次光学系による検査手法としては、検査領域に対してプレチャージエネルギー条件にてスキャン動作とステップ動作(視野幅だけ横に移動)を繰り返してプレチャージを実施した後に、同じ検査領域に対して検査エネルギー条件にてスキャン動作とステップ動作を繰り返して検査を実施する、という検査手法が考えられる。しかしながら、この検査手法では、検査時間が長くかかるという不都合がある。また、検査領域の中の1つの小領域に着目した場合、プレチャージを実施してから検査を実施するまでの間に時間が空くため、検査を実施する時にプレチャージの効果が弱まっている可能性がある。
【0009】
本発明は、以上のような問題点に着目し、これを有効に解決すべく創案されたものである。本発明の目的は、検査時間を大幅に短縮できる検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による検査装置は、
試料を検査する検査装置であって、
前記試料を載置して連続的に移動するステージと、
前記ステージ上の前記試料に対して一次ビームを照射する一次光学系と、
前記ステージ上の前記試料にリターディング電圧を印加するリターディング電源と、
前記一次ビームのランディングエネルギーが検査エネルギー条件とプレチャージエネルギー条件の両方を実現するように、前記リターディング電圧を変更する電圧制御部と、
前記一次ビームを前記試料に照射することにより前記試料から発生した二次ビームの像を生成する二次元センサを含む検出器と、
前記二次ビームを前記二次元センサに導く2次光学系と、
を備え、
前記電圧制御部は、前記二次元センサの1画素内で前記プレチャージエネルギー条件と前記検査エネルギー条件の両方が順に実現されるように、前記二次元センサの画素の送り速度に同期したパルスを前記リターディング電圧に重畳する。
【0011】
本発明によれば、電圧制御部が二次元センサの画素の送り速度に同期したパルスをリターディング電圧に重畳することで、二次元センサの1画素内でプレチャージエネルギー条件と検査エネルギー条件の両方が順に実現され得る。これにより、一度のスキャン動作にてプレチャージと検査の両方を実施可能であり、検査領域に対してプレチャージエネルギー条件にてスキャン動作とステップ動作とを繰り返してプレチャージを実施した後に、同じ検査領域に対して検査エネルギー条件にてスキャン動作とステップ動作とを繰り返して検査を実施する、という検査手法に比べて、検査時間を半分程度に短縮できる。また、試料面上の各画素寸法に着目した場合、プレチャージを実施した直後に検査を実施することになるため、プレチャージの効果を有効に利用して検査を実施することができる。
【0012】
本発明による検査装置において、前記電圧制御部は、前記ステージの位置に応じて前記二次元センサに転送クロックを出力する撮像コントローラと、前記撮像コントローラが出力した前記転送クロックに同期して前記パルスを前記リターディング電圧に重畳するパルス電源と、を有してもよい。
【0013】
このような態様によれば、パルス電源が、リターディング電圧にパルスを重畳するタイミングとして、撮像コントローラが出力した転送クロックを利用するため、二次元センサの画素の送り速度に同期したパルスをリターディング電圧に重畳するという機能を、単純な構成により実現することができる。
【0014】
本発明による検査装置において、前記電圧制御部は、前記パルスのデューティ比を変更可能であってもよい。
【0015】
このような態様によれば、電圧制御部によりパルスのデューティ比を変更することで、プレチャージの効果量を調整することができ、様々な条件での検査を行うことができる。
【0016】
本発明による検査装置は、
試料を検査する検査装置であって、
前記試料を載置して連続的に移動するステージと、
前記ステージ上の前記試料に対して一次ビームを照射する一次光学系と、
前記一次ビームを前記試料に照射することにより前記試料から発生した二次ビームの像を生成する二次元センサを含む検出器と、
前記二次ビームを前記二次元センサに導く2次光学系と、
を備え、
前記一次光学系は、
レーザ光を発生するレーザ光源と、
前記レーザ光が照射されることにより前記一次ビームを発生する光電面と、
前記光電面にカソード電圧を印加するカソード電源と、
前記一次ビームのランディングエネルギーが検査エネルギー条件とプレチャージエネルギー条件の両方を実現するように、前記光電面側電圧を変更する光電面側電圧制御部と、
を有し、
前記光電面側電圧制御部は、前記二次元センサの1画素内で前記プレチャージエネルギー条件および前記検査エネルギー条件の両方を順に実現するように、前記二次元センサの画素の送り速度に同期したパルスを前記光電面側電圧に重畳する。
【0017】
本発明によれば、光電面側電圧制御部が二次元センサの画素の送り速度に同期したパルスを光電面側電圧に重畳することで、二次元センサの1画素内でプレチャージエネルギー条件と検査エネルギー条件の両方が順に実現され得る。これにより、一度のスキャン動作にてプレチャージと検査の両方を実施可能であり、検査領域に対してプレチャージエネルギー条件にてスキャン動作とステップ動作とを繰り返してプレチャージを実施した後に、同じ検査領域に対して検査エネルギー条件にてスキャン動作とステップ動作とを繰り返して検査を実施する、という検査手法に比べて、検査時間を半分程度に短縮できる。また、試料面上の各画素寸法に着目した場合、プレチャージを実施した直後に検査を実施することになるため、プレチャージの効果を有効に利用して検査を実施することができる。
【0018】
本発明による検査装置において、前記光電面側電圧制御部は、前記ステージの位置に応じて前記二次元センサに転送クロックを出力する撮像コントローラと、前記撮像コントローラが出力した前記転送クロックに同期して前記パルスを前記光電面側電圧に重畳するパルス電源と、を有してもよい。
【0019】
このような態様によれば、パルス電源が、光電面側電圧にパルスを重畳するタイミングとして、撮像コントローラが出力した転送クロックを利用するため、二次元センサの画素の送り速度に同期したパルスを光電面側電圧に重畳するという機能を、単純な構成により実現することができる。
【0020】
本発明による検査装置において、前記光電面側電圧制御部は、前記パルスのデューティ比を変更可能であってもよい。
【0021】
このような態様によれば、光電面側電圧制御部によりパルスのデューティ比を変更することで、プレチャージの効果量を調整することができ、様々な条件での検査を行うことができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、検査時間を大幅に短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施形態に係る検査装置の主要構成要素を示す立面図であって、
図2の線A-Aに沿って見た図である。
【
図2A】
図1に示す検査装置の主要構成要素の平面図であって、
図1の線B-Bに沿って見た図である。
【
図2B】一実施形態に係る本発明の検査装置における基板搬入装置の他の実施例を示す概略断面図である。
【
図3】
図1のミニエンバイロメント装置を示す断面図であって、線C-Cに沿って見た図である。
【
図4】
図1のローダハウジングを示す図であって、
図2の線D-Dに沿って見た図である。
【
図5】ウエハラックの拡大図であって、[A]は側面図で、[B]は[A]の線E-Eに沿って見た断面図である。
【
図6】主ハウジングの支持方法の変形例を示す図である。
【
図7】主ハウジングの支持方法の変形例を示す図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る電子線検査装置の構成を示した図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係る図であり、本発明が適用された電子線検査装置を示す図である。
【
図10】本発明の一実施形態に係る図であり、同一のメインチャンバに、写像光学式検査装置の電子コラムと、SEM式検査装置とを設置する場合の構成の一例を示す図である。
【
図11】本発明の一実施形態に係る電子コラム系の構成を示した図である。
【
図12】本発明の一実施形態におけるNA結像条件でのフォーカス調整の説明図である。
【
図13】本発明の一実施形態におけるNA結像条件でのフォーカス調整の説明図である。
【
図15】LaB
6から放出される電子のエネルギー分散を説明するための図である。
【
図16A】光電面から放出される電子のエネルギー分散を説明するための図である。
【
図16B】プレチャージエネルギー条件が実現されるようにリターディング電圧を変更した場合の、光電面から放出される電子のエネルギー分散を説明するための図である。
【
図17】本発明の一実施形態に係る図であり、変調電源の構成を説明するための図である。
【
図18】本発明の一実施形態に係る図であり、変調電源の動作を説明するための図である。
【
図19】本発明の一実施形態に係る図であり、変調電源の構成の別例を説明するための図である。
【
図20A】本発明の一実施形態に係る図であり、スキャン方法の第1工程を説明するための図である。
【
図20B】本発明の一実施形態に係る図であり、スキャン方法の第2工程を説明するための図である。
【
図20C】本発明の一実施形態に係る図であり、スキャン方法の第3工程を説明するための図である。
【
図20D】本発明の一実施形態に係る図であり、スキャン方法の第4工程を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態の半導体検査装置について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本発明を実施する場合の一例を示すものであって、本発明を以下に説明する具体的構成に限定するものではない。本発明の実施にあたっては、実施の形態に応じた具体的構成が適宜採用されてよい。
【0025】
図1及び
図2Aにおいて、本実施形態の半導体検査装置1の主要構成要素が立面及び平面で示されている。
【0026】
本実施形態の半導体検査装置1は、複数枚のウエハを収納したカセットを保持するカセットホルダ10と、ミニエンバイロメント装置20と、ワーキングチャンバを画成する主ハウジング30と、ミニエンバイロメント装置20と主ハウジング30との間に配置されていて、二つのローディングチャンバを画成するローダハウジング40と、ウエハをカセットホルダ10から主ハウジング30内に配置されたステージ装置50上に装填するローダー60と、真空ハウジングに取り付けられた電子光学装置70と、光学顕微鏡3000と、走査型電子顕微鏡(SEM)3002を備え、それらは
図1及び
図2Aに示されるような位置関係で配置されている。半導体検査装置1は、更に、真空の主ハウジング30内に配置されたプレチャージユニット81と、ウエハに電位を印加する電位印加機構と、電子ビームキャリブレーション機構と、ステージ装置50上でのウエハの位置決めを行うためのアライメント制御装置87を構成する光学顕微鏡871とを備えている。電子光学装置70は、鏡筒71及び光源筒7000を有している。電子光学装置70の内部構造については、後述する。
【0027】
<カセットホルダ>
カセットホルダ10は、複数枚(例えば25枚)のウエハが上下方向に平行に並べられた状態で収納されたカセットc(例えば、アシスト社製のSMIF、FOUPのようなクローズドカセット)を複数個(この実施形態では2個)保持するようになっている。このカセットホルダとしては、カセットをロボット等により搬送してきて自動的にカセットホルダ10に装填する場合にはそれに適した構造のものを、また人手により装填する場合にはそれに適したオープンカセット構造のものをそれぞれ任意に選択して設置できるようになっている。カセットホルダ10は、この実施形態では、自動的にカセットcが装填される形式であり、例えば昇降テーブル11と、その昇降テーブル11を上下移動させる昇降機構12とを備え、カセットcは昇降テーブル上に
図2Aで鎖線図示の状態で自動的にセット可能になっていて、セット後、
図2Aで実線図示の状態に自動的に回転されてミニエンバイロメント装置20内の第1の搬送ユニット61の回動軸線に向けられる。また、昇降テーブル11は
図1で鎖線図示の状態に降下される。このように、自動的に装填する場合に使用するカセットホルダ、或いは人手により装填する場合に使用するカセットホルダはいずれも公知の構造のものを適宜使用すればよいので、その構造及び機能の詳細な説明は省略する。
【0028】
別の実施の態様では、
図2Bに示すように、複数の300mm基板を箱本体501の内側に固定した溝型ポケット(記載せず)に収納した状態で収容し、搬送、保管等を行うものである。この基板搬送箱500は、角筒状の箱本体501と基板搬出入ドア自動開閉装置に連絡されて箱本体501の側面の開口部を機械により開閉可能な基板搬出入ドア502と、開口部と反対側に位置し、フィルタ類及びファンモータの着脱を行うための開口部を覆う蓋体503と、基板Wを保持するための溝型ポケット(図示せず)、ULPAフィルタ505、ケミカルフィルタ506、ファンモータ507とから構成されている。この実施の態様では、ローダー60のロボット式の第1の搬送ユニット61により、基板を出し入れする。
【0029】
なお、カセットc内に収納される基板すなわちウエハは、検査を受けるウエハであり、そのような検査は、半導体製造工程中でウエハを処理するプロセスの後、若しくはプロセスの途中で行われる。具体的には、成膜工程、CMP、イオン注入等を受けた基板すなわちウエハ、表面に配線パターンが形成されたウエハ、又は配線パターンが未だに形成されていないウエハが、カセット内に収納される。カセットc内に収容されるウエハは多数枚上下方向に隔ててかつ平行に並べて配置されているため、任意の位置のウエハと第1の搬送ユニット61で保持できるように、第1の搬送ユニット61のアーム612を上下移動できるようになっている。
【0030】
<ミニエンバイロメント装置>
図1ないし
図3において、ミニエンバイロメント装置20は、雰囲気制御されるようになっているミニエンバイロメント空間21を画成するハウジング22と、ミニエンバイロメント空間21内で清浄空気のような気体を循環して雰囲気制御するための気体循環装置23と、ミニエンバイロメント空間21内に供給された空気の一部を回収して排出する排出装置24と、ミニエンバイロメント空間21内に配設されていて検査対象としての基板すなわちウエハを粗位置決めするプリアライナ25とを備えている。
【0031】
ハウジング22は、頂壁221、底壁222及び四周を囲む周壁223を有し、ミニエンバイロメント空間21を外部から遮断する構造になっている。ミニエンバイロメント空間を雰囲気制御するために、気体循環装置23は、
図3に示されるように、ミニエンバイロメント空間21内において、頂壁221に取り付けられていて、気体(この実施形態では空気)を清浄にして一つ又はそれ以上の気体吹き出し口(図示せず)を通して清浄空気を真下に向かって層流状に流す気体供給ユニット231と、ミニエンバイロメント空間21内において底壁222の上に配置されていて、底に向かって流れ下った空気を回収する回収ダクト232と、回収ダクト232と気体供給ユニット231とを接続して回収された空気を気体供給ユニット231に戻す導管233とを備えている。この実施形態では、気体供給ユニット231は供給する空気の約20%をハウジング22の外部から取り入れて清浄にするようになっているが、この外部から取り入れられる気体の割合は任意に選択可能である。気体供給ユニット231は、清浄空気をつくりだすための公知の構造のHEPA若しくはULPAフィルタを備えている。清浄空気の層流状の下方向の流れすなわちダウンフローは、主に、ミニエンバイロメント空間21内に配置された第1の搬送ユニット61による搬送面を通して流れるように供給され、搬送ユニットにより発生する虞のある塵埃がウエハに付着するのを防止するようになっている。したがって、ダウンフローの噴出口は必ずしも図示のように頂壁に近い位置である必要はなく、搬送ユニットによる搬送面より上側にあればよい。また、ミニエンバイロメント空間全面に亘って流す必要もない。なお、場合によっては、清浄空気としてイオン風を使用することによって清浄度を確保することができる。また、ミニエンバイロメント空間内には清浄度を観察するためのセンサを設け、清浄度が悪化したときに装置をシャットダウンすることもできる。ハウジング22の周壁223のうちカセットホルダ10に隣接する部分には出入り口225が形成されている。出入り口225近傍には公知の構造のシャッタ装置を設けて出入り口225をミニエンバイロメント装置側から閉じるようにしてもよい。ウエハ近傍でつくる層流のダウンフローは、例えば0.3ないし0.4m/secの流速でよい。気体供給ユニットはミニエンバイロメント空間21内でなくその外側に設けてもよい。
【0032】
排出装置24は、第1の搬送ユニット61のウエハ搬送面より下側の位置で第1の搬送ユニット61の下部に配置された吸入ダクト241と、ハウジング22の外側に配置されたブロワー242と、吸入ダクト241とブロワー242とを接続する導管243と、を備えている。この排出装置24は、第1の搬送ユニット61の周囲を流れ下り、第1の搬送ユニット61により発生する可能性のある塵埃を含んだ気体を、吸入ダクト241により吸引し、導管243、244及びブロワー242を介してハウジング22の外側に排出する。この場合、ハウジング22の近くに引かれた排気管(図示せず)内に排出してもよい。
【0033】
ミニエンバイロメント空間21内に配置されたプリアライナ25は、ウエハに形成されたオリエンテーションフラット(円形のウエハの外周に形成された平坦部分を言い、以下においてオリフラと呼ぶ)や、ウエハの外周縁に形成された一つ又はそれ以上のV型の切欠きすなわちノッチを光学的に或いは機械的に検出してウエハの軸線O-Oの周りの回転方向の位置を約±1度の精度で予め位置決めしておくようになっている。プリアライナ25は検査対象の座標を決める機構の一部を構成し、検査対象の粗位置決めを担当する。このプリアライナ25自体は公知の構造のものでよいので、その構造、動作の説明は省略する。
【0034】
なお、図示しないが、プリアライナ25の下部にも排出装置用の回収ダクトを設けて、プリアライナ25から排出された塵埃を含んだ空気を外部に排出するようにしてもよい。
【0035】
<主ハウジング>
図1及び
図2Aにおいて、ワーキングチャンバ31を画成する主ハウジング30は、ハウジング本体32を備え、そのハウジング本体32は、台フレーム36上に配置された振動遮断装置すなわち防振装置37の上に載せられたハウジング支持装置33によって支持されている。ハウジング支持装置33は矩形に組まれたフレーム構造体331を備えている。ハウジング本体32はフレーム構造体331上に配設固定されていて、フレーム構造体上に載せられた底壁321と、頂壁322と、底壁321及び頂壁322に接続されて四周を囲む周壁323とを備えていてワーキングチャンバ31を外部から隔離している。底壁321は、この実施形態では、上に載置されるステージ装置50等の機器による加重で歪みの発生しないように比較的肉厚の厚い鋼板で構成されているが、その他の構造にしてもよい。この実施形態において、ハウジング本体32及びハウジング支持装置33は、剛構造に組み立てられていて、台フレーム36が設置されている床からの振動がこの剛構造に伝達されるのを防振装置37で阻止するようになっている。ハウジング本体32の周壁323のうち後述するローダハウジングに隣接する周壁にはウエハ出し入れ用の出入り口325が形成されている。
【0036】
なお、防振装置37は、空気バネ、磁気軸受け等を有するアクティブ式のものでも、或いはこれらを有するパッシブ式のもよい。いずれも公知の構造のものでよいので、それ自体の構造及び機能の説明は省略する。ワーキングチャンバ31は公知の構造の真空装置(図示せず)により真空雰囲気に保たれるようになっている。台フレーム36の下には装置全体の動作を制御する制御装置2が配置されている。
【0037】
<ローダハウジング>
図1、
図2A及び
図4において、ローダハウジング40は、第1のローディングチャンバ41と第2のローディングチャンバ42とを画成するハウジング本体43を備えている。ハウジング本体43は底壁431と、頂壁432と、四周を囲む周壁433と、第1のローディングチャンバ41と第2のローディングチャンバ42とを仕切る仕切壁434とを有していて、両ローディングチャンバを外部から隔離できるようになっている。仕切壁434には両ローディングチャンバ間でウエハのやり取りを行うための開口すなわち出入り口435が形成されている。また、周壁433のミニエンバイロメント装置及び主ハウジングに隣接した部分には出入り口436及び437が形成されている。このローダハウジング40のハウジング本体43は、ハウジング支持装置33のフレーム構造体331上に載置されてそれによって支持されている。したがって、このローダハウジング40にも床の振動が伝達されないようになっている。ローダハウジング40の出入り口436とミニエンバイロメント装置20のハウジング22の出入り口226とは整合されていて、そこにはミニエンバイロメント空間21と第1のローディングチャンバ41との連通を選択的に阻止するシャッタ装置27が設けられている。シャッタ装置27は、出入り口226及び436の周囲を囲んで側壁433と密に接触して固定されたシール材271、シール材271と協働して出入り口を介しての空気の流通を阻止する扉272と、その扉を動かす駆動装置273とを有している。また、ローダハウジング40の出入り口437とハウジング本体32の出入り口325とは整合されていて、そこには第2のローディングチャンバ42とワーキンググチャンバ31との連通を選択的に密封阻止するシャッタ装置45が設けられている。シャッタ装置45は、出入り口437及び325の周囲を囲んで側壁433及び323と密に接触してそれらに固定されたシール材451、シール材451と協働して出入り口を介しての空気の流通を阻止する扉452と、その扉を動かす駆動装置453とを有している。更に、仕切壁434に形成された開口には、扉461によりそれを閉じて第1及び第2のローディングチャンバ間の連通を選択的に密封阻止するシャッタ装置46が設けられている。これらのシャッタ装置27、45及び46は、閉じ状態にあるとき各チャンバを気密シールできるようになっている。これらのシャッタ装置は公知のものでよいので、その構造及び動作の詳細な説明は省略する。なお、ミニエンバイロメント装置20のハウジング22の支持方法とローダハウジングの支持方法が異なり、ミニエンバイロメント装置20を介して床からの振動がローダハウジング40、主ハウジング30に伝達されるのを防止するために、ハウジング22とローダハウジング40との間には出入り口の周囲を気密に囲むように防振用のクッション材を配置しておけばよい。
【0038】
第1のローディングチャンバ41内には、複数(本実施形態では2枚)のウエハを上下に隔てて水平の状態で支持するウエハラック47が配設されている。ウエハラック47は、
図5に示されるように、矩形の基板471の四隅に互いに隔てて直立状態で固定された支柱472を備え、各支柱472にはそれぞれ2段の支持部473及び474が形成され、その支持部の上にウエハWの周縁を載せて保持するようになっている。そして後述する第1及び第2の搬送ユニットのアームの先端を隣接する支柱間からウエハに接近させてアームによりウエハを把持するようになっている。
【0039】
ローディングチャンバ41及び42は、図示しない真空ポンプを含む公知の構造の真空排気装置(図示せず)によって高真空状態(真空度としては10-5~10-6Pa)に雰囲気制御され得るようになっている。この場合、第1のローディングチャンバ41を低真空チャンバとして低真空雰囲気に保ち、第2のローディングチャンバ42を高真空チャンバとして高真空雰囲気に保ち、ウエハの汚染防止を効果的に行うこともできる。このような構造を採用することによってローディングチャンバ41及び42内に収容されていて次に欠陥検査されるウエハをワーキングチャンバ31内に遅滞なく搬送することができる。このようなローディングチャンバ41及び42を採用することによって、欠陥検査のスループットを向上させ、更に保管状態が高真空状態であることを要求される電子源周辺の真空度を可能な限り高真空度状態にすることができる。
【0040】
第1及び第2のローディングチャンバ41及び42は、それぞれ真空排気配管と不活性ガス(例えば乾燥純窒素)用のベント配管(それぞれ図示せず)が接続されている。これによって、各ローディングチャンバ内の大気圧状態は不活性ガスベント(不活性ガスを注入して不活性ガス以外の酸素ガス等が表面に付着するのを防止する)によって達成される。このような不活性ガスベントを行う装置自体は公知の構造のものでよいので、その詳細な説明は省略する。
【0041】
<ステージ装置>
ステージ装置50は、主ハウジング30の底壁321上に配置された固定テーブル51と、固定テーブル上でY方向(
図1において紙面に垂直の方向)に移動するYテーブル52と、Yテーブル上でX方向(
図1において左右方向)に移動するXテーブル53と、Xテーブル上で回転可能な回転テーブル54と、回転テーブル54上に配置されたホルダ55とを備えている。そのホルダ55のウエハ載置面551上にウエハを解放可能に保持する。ホルダは、ウエハを機械的に或いは静電チャック方式で解放可能に把持できる公知の構造のものでよい。ステージ装置50は、サーボモータ、エンコーダ及び各種のセンサ(図示せず)を用いて、上記のような複数のテーブルを動作させることにより、載置面551上でホルダに保持されたウエハを電子光学装置70から照射される電子ビームに対してX方向、Y方向及びZ方向(
図1において上下方向)に、更にウエハの支持面に鉛直な軸線の回り方向(θ方向)に高い精度で位置決めできるようになっている。なお、Z方向の位置決めは、例えばホルダ上の載置面の位置をZ方向に微調整可能にしておけばよい。この場合、載置面の基準位置を微細径レーザによる位置測定装置(干渉計の原理を使用したレーザ干渉測距装置)によって検知し、その位置を図示しないフィードバック回路によって制御したり、それと共に或いはそれに代えてウエハのノッチ或いはオリフラの位置を測定してウエハの電子ビームに対する平面位置、回転位置を検知し、回転テーブルを微小角度制御可能なステッピングモータなどにより回転させて制御したりする。ワーキングチャンバ内での塵埃の発生を極力防止するために、ステージ装置50用のサーボモータ521、531及びエンコーダ522、532は、主ハウジング30の外側に配置されている。なお、ステージ装置50は、例えばステッパー等で使用されている公知の構造のものでよいので、その構造及び動作の詳細な説明は省略する。また、上記レーザ干渉測距装置も公知の構造のものでよいので、その構造、動作の詳細な説明は省略する。
【0042】
電子ビームに対するウエハの回転位置やX、Y位置を後述する信号検出系或いは画像処理系に予め入力することで、検査の際に得られるウエハの回転位置やX、Y位置を示す信号の基準化を図ることもできる。更に、このホルダに設けられたウエハチャック機構は、ウエハをチャックするための電圧を静電チャックの電極に与えられるようになっていて、ウエハの外周部の3点(好ましくは周方向に等隔に隔てられた)を押さえて位置決めするようになっている。ウエハチャック機構は、二つの固定位置決めピンと、一つの押圧式クランプピンとを備えている。クランプピンは、自動チャック及び自動リリースを実現できるようになっており、かつ電圧印加の導通箇所を構成している。
【0043】
なお、この実施形態では
図2Aで左右方向に移動するテーブルをXテーブルとし、上下方向に移動するテーブルをYテーブルとしたが、同図で左右方向に移動するテーブルをYテーブルとし、上下方向に移動するテーブルをXテーブルとしてもよい。
【0044】
<ローダー>
ローダー60は、ミニエンバイロメント装置20のハウジング22内に配置されたロボット式の第1の搬送ユニット61と、第2のローディングチャンバ42内に配置されたロボット式の第2の搬送ユニット63とを備えている。
【0045】
第1の搬送ユニット61は、駆動部611に関して軸線O1-O1の回りで回転可能になっている多節のアーム612を有している。多節のアームとしては任意の構造のものを使用できるが、この実施形態では、互いに回動可能に取り付けられた三つの部分を有している。第1の搬送ユニット61のアーム612の一つの部分すなわち最も駆動部611側の第1の部分は、駆動部611内に設けられた公知の構造の駆動機構(図示せず)により回転可能な軸613に取り付けられている。アーム612は、軸613により軸線O1-O1の回りで回動できると共に、部分間の相対回転により全体として軸線O1-O1に関して半径方向に伸縮可能になっている。アーム612の軸613から最も離れた第3の部分の先端には、公知の構造の機械式チャック又は静電チャック等のウエハを把持する把持装置616が設けられている。駆動部611は、公知の構造の昇降機構615により上下方向に移動可能になっている。
【0046】
この第1の搬送ユニット61は、アーム612がカセットホルダ10に保持された二つのカセットcの内いずれか一方の方向M1又はM2に向かってアームが伸び、カセットc内に収容されたウエハをアームの上に載せ、或いはアームの先端に取り付けたチャック(図示せず)により把持して取り出す。その後アームが縮み(
図2Aに示すような状態)、アームがプリアライナ25の方向M3に向かって伸長できる位置まで回転してその位置で停止する。するとアーム612が再び伸びてアーム612に保持されたウエハをプリアライナ25に載せる。プリアライナ25から前記と逆にしてウエハを受け取った後は、アーム612は更に回転し第2のローディングチャンバ41に向かって伸長できる位置(向きM4)で停止し、第2のローディングチャンバ41内のウエハ受け47にウエハを受け渡す。なお、機械的にウエハを把持する場合にはウエハの周縁部(周縁から約5mmの範囲)を把持する。これはウエハには周縁部を除いて全面にデバイス(回路配線)が形成されており、この部分を把持するとデバイスの破壊、欠陥の発生を生じさせるからである。
【0047】
第2の搬送ユニット63も第1の搬送ユニット61と構造が基本的に同じであり、ウエハの搬送をウエハラック47とステージ装置50の載置面上との間で行う点でのみ相違するだけであるから、詳細な説明は省略する。
【0048】
上記ローダー60では、第1及び第2の搬送ユニット61及び63は、カセットホルダ10に保持されたカセットからワーキングチャンバ31内に配置されたステージ装置50上への及びその逆のウエハの搬送をほぼ水平状態に保ったままで行い、搬送ユニットのアームが上下動するのは、単に、ウエハのカセットからの取り出し及びそれへの挿入、ウエハのウエハラックへの載置及びそこからの取り出し、及び、ウエハのステージ装置50への載置及びそこからの取り出しのときだけである。したがって、大型のウエハ、例えば直径30cmや45cmのウエハの移動もスムースに行うことができる。
【0049】
<ウエハの搬送>
次にカセットホルダ10に支持されたカセットcからワーキングチャンバ31内に配置されたステージ装置50までへのウエハの搬送について、順を追って説明する。
【0050】
カセットホルダ10は、上述したように人手によりカセットをセットする場合にはそれに適した構造のものが、また自動的にカセットをセットする場合にはそれに適した構造のものが使用される。この実施形態において、カセットcがカセットホルダ10の昇降テーブル11の上にセットされると、昇降テーブル11は昇降機構12によって降下されカセットcが出入り口225に整合される。
【0051】
カセットが出入り口225に整合されると、カセットcに設けられたカバー(図示せず)が開き、また、カセットcとミニエンバイロメントの出入り口225との間には筒状の覆いが配置されてカセットc内及びミニエンバイロメント空間21内を外部から遮断する。これらの構造は公知のものであるから、その構造及び動作の詳細な説明は省略する。なお、ミニエンバイロメント装置20側に出入り口225を開閉するシャッタ装置が設けられている場合にはそのシャッタ装置が動作して出入り口225を開く。
【0052】
一方、第1の搬送ユニット61のアーム612は方向M1又はM2のいずれかに向いた状態(この説明ではM2の方向)で停止しており、出入り口225が開くとアームが伸びて先端でカセット内に収容されているウエハのうち1枚を受け取る。なお、アーム612と、カセットcから取り出されるべきウエハとの上下方向の位置調整は、この実施形態では第1の搬送ユニット61の駆動部611及びアーム612の上下移動で行うが、カセットホルダ10の昇降テーブル11の上下動で行ってもよいし、或いはその両者を行ってもよい。
【0053】
アーム612によるウエハの受け取りが完了すると、アーム612は縮み、シャッタ装置を動作して出入り口を閉じ(シャッタ装置がある場合)、次にアーム612は軸線O1-O1の回りで回動して方向M3に向けて伸長できる状態になる。すると、アーム612は伸びて、先端に載せられ或いはチャックで把持されたウエハをプリアライナ25の上に載せ、プリアライナ25によってウエハの回転方向の向き(ウエハ平面に垂直な中心軸線の回りの向き)を所定の範囲内に位置決めする。位置決めが完了すると第1の搬送ユニット61はアーム612の先端にプリアライナ25からウエハを受け取った後、アーム612を縮ませ、方向M4に向けてアーム612を伸長できる姿勢になる。するとシャッタ装置27の扉272が動いて出入り口226及び436を開き、アーム612が伸びてウエハを第1のローディングチャンバ41内のウエハラック47の上段側又は下段側に載せる。なお、前記のようにシャッタ装置27が開いてウエハラック47にウエハが受け渡される前に、仕切壁434に形成された開口435はシャッタ装置46の扉461により気密状態で閉じられている。
【0054】
第1の搬送ユニット61によるウエハの搬送過程において、ミニエンバイロメント装置20のハウジング22の上に設けられた気体供給ユニット231からは清浄空気が層流状に流れ(ダウンフローとして)、搬送途中で塵埃がウエハの上面に付着するのを防止する。搬送ユニット61周辺の空気の一部(この実施形態では供給ユニットから供給される空気の約20%で主に汚れた空気)は排出装置24の吸入ダクト241から吸引されてハウジング外に排出される。残りの空気はハウジング22の底部に設けられた回収ダクト232を介して回収され再び気体供給ユニット231に戻される。
【0055】
ローダハウジング40の第1のローディングチャンバ41内のウエハラック47内に第1の搬送ユニット61によりウエハが載せられると、シャッタ装置27が閉じて、ローディングチャンバ41内を密閉する。すると、第1のローディングチャンバ41内には不活性ガスが充填されて空気が追い出された後、その不活性ガスも排出されてそのローディングチャンバ41内は真空雰囲気にされる。この第1のローディングチャンバ41の真空雰囲気は低真空度でよい。ローディングチャンバ41内の真空度がある程度得られると、シャッタ装置46が動作して扉461で密閉していた出入り口434を開き、第2の搬送ユニット63のアーム632が伸びて先端の把持装置でウエハ受け47から1枚のウエハを受け取る(先端の上に載せて或いは先端に取り付けられたチャックで把持して)。ウエハの受け取りが完了するとアーム632が縮み、シャッタ装置46が再び動作して扉461で出入り口435を閉じる。なお、シャッタ装置46が開く前にアーム632は予めウエハラック47の方向N1に向けて伸長できる姿勢になる。また、前記のようにシャッタ装置46が開く前にシャッタ装置45の扉452で出入り口437、325を閉じていて、第2のローディングチャンバ42内とワーキングチャンバ31内との連通を気密状態で阻止しており、第2のローディングチャンバ42内は真空排気される。
【0056】
シャッタ装置46が出入り口435を閉じると、第2のローディングチャンバ42内は再度真空排気され、第1のローディングチャンバ41内よりも高真空度で真空にされる。その間に、第2の搬送ユニット63のアーム632はワーキングチャンバ31内のステージ装置50の方向に向いて伸長できる位置に回転される。一方ワーキングチャンバ31内のステージ装置50では、Yテーブル52が、Xテーブル53の中心線X
0-X
0が第2の搬送ユニット63の回動軸線O
2-O
2を通るX軸線X
1-X
1とほぼ一致する位置まで、
図2Aで上方に移動し、また、Xテーブル53は
図2Aで最も左側の位置に接近する位置まで移動し、この状態で待機している。第2のローディングチャンバ42がワーキングチャンバ31の真空状態と略同じになると、シャッタ装置45の扉452が動いて出入り口437、325を開き、アーム632が伸びてウエハを保持したアーム632の先端がワーキングチャンバ31内のステージ装置50に接近する。そしてステージ装置50の載置面551上にウエハを載置する。ウエハの載置が完了するとアーム632が縮み、シャッタ装置45が出入り口437、325を閉じる。
【0057】
以上は、カセットc内のウエハをステージ装置50上に搬送するまでの動作について説明したが、ステージ装置50に載せられて処理が完了したウエハをステージ装置50からカセットc内に戻すには前述と逆の動作を行う。また、ウエハラック47に複数のウエハを載置しておくため、第2の搬送ユニット63でウエハラック47とステージ装置50との間でウエハの搬送を行う間に、第1の搬送ユニット61でカセットcとウエハラック47との間でウエハの搬送を行うことができ、検査処理を効率良く行うことができる。
【0058】
具体的には、第2の搬送ユニット63のウエハラック47に、既に処理済のウエハAと未処理のウエハBがある場合、(1)まず、ステージ装置50に未処理のウエハBを移動し、処理を開始し、(2)この処理中に、処理済ウエハAを、アーム632によりステージ装置50からウエハラック47に移動し、未処理のウエハCを同じくアーム632によりウエハラック47から抜き出し、プリアライナ25で位置決めした後、ローディングチャンバ41のウエハラック47に移動する。このようにすることで、ウエハラック47の中は、ウエハBを処理中に、処理済のウエハAが未処理のウエハCに置き換えることができる。
【0059】
また、検査や評価を行うこのような装置の利用の仕方によっては、ステージ装置50を複数台並列に置き、それぞれの装置に一つのウエハラック47からウエハを移動することで、複数枚のウエハを同時処理することもできる。
【0060】
図6において、主ハウジングの支持方法の変形例が示されている。
図6に示された変形例では、ハウジング支持装置33aを厚肉で矩形の鋼板331aで構成し、その鋼板の上にハウジング本体32aが載せられている。したがって、ハウジング本体32aの底壁321aは、前記実施形態の底壁に比較して薄い構造になっている。
図7に示された変形例では、ハウジング支持装置33bのフレーム構造体336bによりハウジング本体32b及びローダハウジング40bを吊り下げて状態で支持するようになっている。フレーム構造体336bに固定された複数の縦フレーム337bの下端は、ハウジング本体32bの底壁321bの四隅に固定され、その底壁により周壁及び頂壁を支持するようになっている。そして防振装置37bは、フレーム構造体336bと台フレーム36bとの間に配置されている。また、ローダハウジング40もフレーム構造体336に固定された吊り下げ部材49bによって吊り下げられている。ハウジング本体32bのこの
図7に示された変形例では、吊り下げ式に支えるので主ハウジング及びその中に設けられた各種機器全体の低重心化が可能である。上記変形例を含めた主ハウジング及びローダハウジングの支持方法では主ハウジング及びローダハウジングに床からの振動が伝わらないようになっている。
【0061】
図示しない別の変形例では、主ハウジングのハウジング本外のみがハウジング支持装置によって下から支えられ、ローダハウジングは隣接するミニエンバイロメント装置20と同じ方法で床上に配置され得る。また、図示しない更に別の変形例では、主ハウジングのハウジング本体のみがフレーム構造体に吊り下げ式で支持され、ローダハウジングは隣接するミニエンバイロメント装置20と同じ方法で床上に配置され得る。
【0062】
上記の実施形態によれば、次のような効果を奏することが可能である。
(A)電子線を用いた写像投影方式の検査装置の全体構成が得られ、高いスループットで検査対象を処理することができる。
(B)ミニエンバイロメント空間内で検査対象に清浄気体を流して塵埃の付着を防止すると共に清浄度を観察するセンサを設けることによりその空間内の塵埃を監視しながら検査対象の検査を行うことができる。
(C)ローディングチャンバ及びワーキングチャンバを、一体的に振動防止装置を介して支持したので、外部の環境に影響されずにステージ装置50への検査対象の供給及び検査を行うことができる。
【0063】
<電子検査装置>
図8は、本発明を適用した電子線検査装置の構成を示した図である。上述においては、異物検査方法の原理的な部分について主に説明した。ここでは、上述の異物検査方法を実行するのに適用される異物検査装置について説明する。従って、上述のすべての異物検査方法は、下記の異物検査装置に適用することができる。
【0064】
電子線検査装置の検査対象は試料20である。試料20は、シリコンウエハ、ガラスマスク、半導体基板、半導体パターン基板、又は、金属膜を有する基板等である。本実施の形態に係る電子線検査装置は、これらの基板からなる試料20の表面上の異物10の存在を検出する。異物10は、絶縁物、導電物、半導体材料、又はこれらの複合体等である。異物10の種類は、パーティクル、洗浄残物(有機物)、表面での反応生成物等である。電子線検査装置は、SEM方式装置でもよく、写像投影式装置でもよい。この例では、写像投影式検査装置に本発明が適用される。
【0065】
写像投影方式の電子線検査装置は、電子ビームを生成する1次光学系40と、試料20と、試料を設置するステージ30と、試料からの2次放出電子又はミラー電子の拡大像を結像させる2次光学系60と、それらの電子を検出する検出器70と、検出器70からの信号を処理する画像処理装置90(画像処理系)と、位置合わせ用の光学顕微鏡110と、レビュー用のSEM120とを備える。検出器70は、本発明では2次光学系60に含まれてよい。また、画像処理装置90は本発明の画像処理部に含まれてよい。
【0066】
1次光学系40は、電子ビームを生成し、試料20に向けて照射する構成である。1次光学系40は、電子銃41と、レンズ42、45と、アパーチャ43、44と、E×Bフィルタ46と、レンズ47、49、50と、アパーチャ48とを有する。電子銃41により電子ビームが生成される。レンズ42、45及びアパーチャ43、44は、電子ビームを整形するとともに、電子ビームの方向を制御する。そして、E×Bフィルタ46にて、電子ビームは、磁界と電界によるローレンツ力の影響を受ける。電子ビームは、斜め方向からE×Bフィルタ46に入射して、鉛直下方向に偏向され、試料20の方に向かう。レンズ47、49、50は、電子ビームの方向を制御するとともに、適切な減速を行って、ランディングエネルギーLEを調整する。
【0067】
1次光学系40は、電子ビームを試料20へ照射する。前述したように、1次光学系40は、プレチャージの帯電用電子ビームと撮像電子ビームの双方の照射を行う。実験結果では、プレチャージのランディングエネルギーLE1と、撮像電子ビームのランディングエネルギーLE2との差異は、好適には5~20〔eV〕である。
【0068】
この点に関し、異物10と周囲との電位差があるときに、プレチャージのランディングエネルギーLE1を負帯電領域で照射したとする。LE1の値に応じて、チャージアップ電圧は異なる。LE1とLE2の相対比が変わるからである(LE2は上記のように撮像電子ビームのランディングエネルギーである)。LE1が大きいとチャージアップ電圧が高くなり、これにより、異物10の上方の位置(検出器70により近い位置)で反射ポイントが形成される。この反射ポイントの位置に応じて、ミラー電子の軌道と透過率が変化する。したがって、反射ポイントに応じて、最適なチャージアップ電圧条件が決まる。また、LE1が低すぎると、ミラー電子形成の効率が低下する。本発明は、このLE1とLE2との差異が望ましくは5~20〔eV〕であることを見い出した。また、LE1の値は、好ましくは0~40〔eV〕であり、更に好ましくは5~20〔eV〕である。
【0069】
また、写像投影光学系の1次光学系40では、E×Bフィルタ46が特に重要である。E×Bフィルタ46の電界と磁界の条件を調整することにより、1次電子ビーム角度を定めることができる。例えば、1次系の照射電子ビームと、2次系の電子ビームとが、試料20に対して、ほぼ垂直に入射するように、E×Bフィルタ46の条件を設定可能である。更に感度を増大するためには、例えば、試料20に対する1次系の電子ビームの入射角度を傾けることが効果的である。適当な傾き角は、0.05~10度であり、好ましくは0.1~3度程度である。
【0070】
このように、異物10に対して所定の角度θの傾きを持って電子ビームを照射させることにより、異物10からの信号を強くすることができる。これにより、ミラー電子の軌道が2次系光軸中心から外れない条件を形成することができ、したがって、ミラー電子の透過率を高めることができる。したがって、異物10をチャージアップさせて、ミラー電子を導くときに、傾いた電子ビームが大変有利に用いられる。
【0071】
ステージ30は、試料20を載置する手段であり、x-yの水平方向及びθ方向に移動可能である。また、ステージ30は、必要に応じてz方向に移動可能であってもよい。ステージ30の表面には、静電チャック等の試料固定機構が備えられていてもよい。
【0072】
ステージ30上には試料20があり、試料20の上に異物10がある。1次系光学系40は、ランディングエネルギーLE-5~-10〔eV〕で試料表面21に電子ビームを照射する。異物10がチャージアップされ、1次光学系40の入射電子が異物10に接触せずに跳ね返される。これにより、ミラー電子が2次光学系60により検出器70に導かれる。このとき、二次放出電子は、試料表面21から広がった方向に放出される。そのため、2次放出電子の透過率は、低い値であり、例えば、0.5~4.0%程度である。これに対し、ミラー電子の方向は散乱しないので、ミラー電子は、ほぼ100%の高い透過率を達成できる。ミラー電子は異物10で形成される。したがって、異物10の信号だけが、高い輝度(電子数が多い状態)を生じさせることができる。周囲の二次放出電子との輝度の差異・割合が大きくなり、高いコントラストを得ることが可能である。
【0073】
また、ミラー電子の像は、前述したように、光学倍率よりも大きい倍率で拡大される。拡大率は5~50倍に及ぶ。典型的な条件では、拡大率が20~30倍であることが多い。このとき、ピクセルサイズが異物サイズの3倍以上であっても、異物を検出可能である。したがって、高速・高スループットで実現できる。
【0074】
例えば、異物10のサイズが直径20〔nm〕である場合に、ピクセルサイズが60〔nm〕、100〔nm〕、500〔nm〕等でよい。この例ように、異物の3倍以上のピクセルサイズを用いて異物の撮像及び検査を行うことが可能となる。このことは、SEM方式等に比べて、高スループット化のために著しく優位な特徴である。
【0075】
2次光学系60は、試料20から反射した電子を、検出器70に導く手段である。2次光学系60は、レンズ61、63と、NAアパーチャ62と、アライナ64と、検出器70とを有する。電子は、試料20から反射して、対物レンズ50、レンズ49、アパーチャ48、レンズ47及びE×Bフィルタ46を再度通過する。そして、電子は2次光学系60に導かれる。2次光学系60においては、レンズ61、NAアパーチャ62、レンズ63を通過して電子が集められる。電子はアライナ64で整えられて、検出器70に検出される。
【0076】
NAアパーチャ62は、2次系の透過率・収差を規定する役目を持っている。異物10からの信号(ミラー電子等)と周囲(正常部)の信号の差異が大きくなるようにNAアパーチャ62のサイズ及び位置が選択される。あるいは、周囲の信号に対する異物10からの信号の割合が大きくなるように、NAアパーチャ62のサイズ及び位置が選択される。これにより、S/Nを高くすることができる。
【0077】
例えば、φ50~φ3000〔μm〕の範囲で、NAアパーチャ62が選択可能であるとする。検出される電子には、ミラー電子と二次放出電子が混在しているとする。このような状況でミラー電子像のS/Nを向上するために、アパーチャサイズの選択が有利である。この場合、二次放出電子の透過率を低下させて、ミラー電子の透過率を維持できるようにNAアパーチャ62のサイズを選択することが好適である。
【0078】
例えば、1次電子ビームの入射角度が3°であるとき、ミラー電子の反射角度がほぼ3°である。この場合、ミラー電子の軌道が通過できる程度のNAアパーチャ62のサイズを選択することが好適である。例えば、適当なサイズはφ250〔μm〕である。NAアパーチャ(径φ250〔μm〕)に制限されるために、2次放出電子の透過率は低下する。したがって、ミラー電子像のS/Nを向上することが可能となる。例えば、アパーチャ径をφ2000からφ250〔μm〕にすると、バックグランド階調(ノイズレベル)を1/2以下に低減できる。
【0079】
検出器70は、2次光学系60により導かれた電子を検出する手段である。検出器70は、その表面に複数のピクセルを有する二次元センサ71を含んでいる。検出器70には、種々の二次元型センサを適用することができる。例えば、検出器70には、CCD(Charge Coupled Device)及びTDI(Time Delay Integration)-CCDが適用されてよい。これらは、電子を光に変換してから信号検出を行うセンサである。そのため、光電変換等の手段が必要である。よって、光電変換やシンチレータを用いて、電子が光に変換される。光の像情報は、光を検知するTDIに伝達される。こうして電子が検出される。
【0080】
ここでは、検出器70にEB-TDIを適用した例について説明する。EB-TDIは、光電変換機構・光伝達機構を必要としない。電子がEB-TDIセンサ面に直接に入射する。したがって、分解能の劣化が無く、高いMTF(Modulation Transfer Function)及びコントラストを得ることが可能となる。従来は、小さい異物10の検出が不安定であった。これに対して、EB-TDIを用いると、小さい異物10の弱い信号のS/Nを上げることが可能である。したがって、より高い感度を得ることができる。S/Nの向上は1.2~2倍に達する。
【0081】
図9は、本発明が適用された電子線検査装置を示す。ここでは、全体的なシステム構成の例について説明する。
【0082】
図9において、異物検査装置は、試料キャリア190と、ミニエンバイロメント180と、ロードロック162と、トランスファーチャンバ161と、メインチャンバ160と、電子線コラム系100と、画像処理装置90を有する。ミニエンバイロメント180には、大気中の搬送ロボット、試料アライメント装置、クリーンエアー供給機構等が設けられる。トランスファーチャンバ161には、真空中の搬送ロボットが設けられる。常に真空状態のトランスファーチャンバ161にロボットが配置されるので、圧力変動によるパーティクル等の発生を最小限に抑制することが可能である。
【0083】
メインチャンバ160には、x方向、y方向及びθ(回転)方向に移動するステージ30が設けられ、ステージ30の上に静電チャックが設置されている。静電チャックには試料20そのものが設置される。または、試料20は、パレットや冶具に設置された状態で静電チャックに保持される。
【0084】
メインチャンバ160は、真空制御系150により、チャンバ内を真空状態が保たれるように制御される。また、メインチャンバ160、トランスファーチャンバ161及びロードロック162は、除振台170上に載置され、床からの振動が伝達されないように構成されている。
【0085】
また、メインチャンバ160には電子コラム100が設置されている。この電子コラム100は、1次光学系40及び2次光学系60のコラムと、試料20からの2次放出電子またはミラー電子等を検出する検出器70を備えている。検出器70からの信号は、画像処理装置90に送られて処理される。オンタイムの信号処理及びオフタイムの信号処理の両方が可能である。オンタイムの信号処理は、検査を行っている間に行われる。オフタイムの信号処理を行う場合、画像のみが取得され、後で信号処理が行われる。画像処理装置90で処理されたデータは、ハードディスクやメモリなどの記録媒体に保存される。また、必要に応じて、コンソールのモニタにデータを表示することが可能である。表示されるデータは、例えば、検査領域、異物数マップ、異物サイズ分布/マップ、異物分類、パッチ画像等である。このような信号処理を行うため、システムソフト140が備えられている。また、電子コラム系に電源を供給すべく、電子光学系制御電源130が備えられている。また、メインチャンバ160には、光学顕微鏡110や、SEM式検査装置120が備えられていてもよい。
【0086】
図10は、同一のメインチャンバ160に、写像光学式検査装置の電子コラム100と、SEM式検査装置120とを設置する場合の構成の一例を示している。
図10に示すように、写像光学式検査装置と、SEM式検査装置120が同一のチャンバ160に設置されていると、大変有利である。同一のステージ30に試料20が搭載されており、試料20に対して、写像方式とSEM方式の両方での観察又は検査が可能となる。この構成の使用方法と利点は、以下の通りである。
【0087】
まず、試料20が同一のステージ30に搭載されているので、試料20が写像方式の電子コラム100とSEM式検査装置120との間を移動したときに、座標関係が一義的に求まる。したがって、異物の検出箇所等を特定するときに、2つの検査装置が同一部位の特定を高精度で容易に行うことができる。
【0088】
上記構成が適用されなかったとする。例えば、写像式光学検査装置とSEM式検査装置120が別々の装置として分離して構成される。そして、分離された別々の装置間で、試料20が移動される。この場合、別々のステージ30に試料20の設置を行う必要があるので、2つの装置が試料20のアライメントを別個に行う必要がある。また、試料20のアライメントが別々に行われる場合、同一位置の特定誤差は、5~10〔μm〕となってしまう。特に、パターンのない試料20の場合には、位置基準が特定できないので、その誤差は更に大きくなる。
【0089】
一方、本実施の形態では、
図10に示すように、2種類の検査において、同一のチャンバ160のステージ30に試料20が設置される。写像方式の電子コラム100とSEM式検査装置120との間でステージ30が移動した場合でも、高精度で同一位置を特定可能である。よって、パターンのない試料20の場合でも、高精度で位置の特定が可能となる。例えば、1〔μm〕以下の精度での位置の特定が可能である。
【0090】
このような高精度の特定は、以下の場合に大変有利である。まず、パターンの無い試料20の異物検査が写像方式で行われる。それから、検出した異物10の特定及び詳細観察(レビュー)が、SEM式検査装置120で行われる。正確な位置の特定ができるので、異物10の存在の有無(無ければ疑似検出)が判断できるだけでなく、異物10のサイズや形状の詳細観察を高速に行うことが可能となる。
【0091】
前述したように、異物検出用の電子コラム100と、レビュー用のSEM式検査装置120が別々に設けられると、異物10の特定に多くの時間を費やしてしまう。また、パターンのない試料の場合は、その困難度合いが高まる。このような問題が本実施の形態により解決される。
【0092】
以上に説明したように、本実施の形態では、写像光学方式による異物10のアパーチャ結像条件を用いて、超微小な異物10が高感度で検査される。さらに、写像光学方式の電子コラム100とSEM式検査装置120が同一チャンバ160に搭載される。これにより、特に、30〔nm〕以下の超微小な異物10の検査と、異物10の判定及び分類を、大変効率良く、高速に行うことができる。なお、本実施形態は、前述した実施形態1~28、及び番号を付していない実施形態にも適用できる。
【0093】
次に、写像投影型検査装置とSEMの両方を用いる検査の別の例について説明する。
【0094】
上述では、写像投影型検査装置が異物を検出し、SEMがレビュー検査を行う。しかし、本発明はこれに限定されない。2つの検査装置が別の検査方法に適用されてよい。それぞれの検査装置の特徴を組み合わせることにより、効果的な検査が可能となる。別の検査方法は、例えば、以下の通りである。
【0095】
この検査方法では、写像投影型検査装置とSEMが、異なる領域の検査を行う。更に、写像投影型検査装置に「セルtoセル(cell to cell)」検査が適用され、SEMに「ダイtoダイ(die to die)」検査が適用され、全体として効率よく高精度の検査を実現される。
【0096】
より詳細には、写像投影型検査装置が、ダイの中で繰返しパターンが多い領域に対して、「セルtoセル」の検査を行う。そして、SEMが、繰返しパターンが少ない領域に対して、「ダイtoダイ」の検査を行う。それら両方の検査結果が合成されて、1つの検査結果が得られる。「ダイtoダイ」は、順次得られる2つのダイの画像を比較する検査である。「セルtoセル」は、順次得られる2つのセルの画像を比較する検査であり、セルは、ダイの中の一部である。
【0097】
上記の検査方法は、繰返しパターン部分では、写像投影方式を用いて高速な検査を実行し、一方、繰返しパターンが少ない領域では、高精度で疑似が少ないSEMで検査を実行する。SEMは高速な検査に向かない。しかし、繰返しパターンが少ない領域は比較的狭いので、SEMの検査時間が長くなりすぎずにすむ。したがって、全体の検査時間を少なく抑えられる。こうして、この検査方法は、2つの検査方式のメリットを最大に活かし、高精度な検査を短い検査時間で行うことができる。
【0098】
図11は、メインチャンバ160内と、メインチャンバ160の上部に設置された電子コラム系100を示している。
図8と同様の構成要素については、
図8と同様の参照符号を付し、その説明を省略する。
【0099】
試料20は、x、y、z、θ方向に移動可能なステージ30に設置される。ステージ30と光学顕微鏡110により、高精度のアライメントが行われる。そして、写像投影光学系が電子ビームを用いて試料20の異物検査及びパターン欠陥検査を行う。ここで、試料表面21の電位が重要である。表面電位を測定するために、真空中で測定可能な表面電位測定装置がメインチャンバ160に取り付けられている。この表面電位測定器が、試料20上の2次元の表面電位分布を測定する。測定結果に基づき、電子像を形成する2次光学系60aにおいてフォーカス制御が行われる。試料20の2次元的位置のフォーカスマップが、電位分布を元に製作される。このマップを用いて、検査中のフォーカスを変更制御しながら、検査が行われる。これにより、場所による表面円電位の変化に起因する像のボケや歪みを減少でき、精度の良い安定した画像取得及び検査を行うことが可能となる。
【0100】
ここで、2次光学系60aが、NAアパーチャ62、検出器70に入射する電子の検出電流を測定可能に構成され、更に、NAアパーチャ62の位置にEB-CCDが設置できるように構成れている。このような構成は大変有利であり、効率的である。
図11では、NAアパーチャ62とEB-CCD65が、開口67、68を有する一体の保持部材66に設置されている。そして、NAアパーチャ62の電流吸収とEB-CCD65の画像取得を夫々、独立に行える機構を、2次光学系60aが備えている。この機構を実現するために、NAアパーチャ62、EB-CCD65は、真空中で動作するX、Yステージ66に設置されている。したがって、NAアパーチャ62及びEB-CCD65についての位置制御及び位置決めが可能である。そして、ステージ66には開口67、68が設けられているので、ミラー電子及び2次放出電子がNAアパーチャ62又はEB-CCD65を通過可能である。
【0101】
このような構成の2次光学系60aの動作を説明する。まず、EB-CCD65が、2次電子ビームのスポット形状とその中心位置を検出する。そして、そのスポット形状が円形であって最小になるように、スティグメーター、レンズ61、63及びアライナ64の電圧調整が行われる。この点に関し、従来は、NAアパーチャ62の位置でのスポット形状及び非点収差の調整を直接行うことはできなかった。このような直接的な調整が本実施の形態では可能となり、非点収差の高精度な補正が可能となる。
【0102】
また、ビームスポットの中心位置が容易に検出可能となる。そこで、ビームスポット位置に、NAアパーチャ62の孔中心を配置するように、NAアパーチャ62の位置調整が可能となる。この点に関し、従来は、NAアパーチャ62の位置の調整を直接行うことができなかった。本実施の形態では、直接的にNAアパーチャ62の位置調整を行うことが可能となる。これにより、NAアパーチャの高精度な位置決めが可能となり、電子像の収差が低減し、均一性が向上する。そして、透過率均一性が向上し、分解能が高く階調が均一な電子像を取得することが可能となる。
【0103】
また、異物10の検査では、異物10からのミラー信号を効率よく取得することが重要である。NAアパーチャ62の位置は、信号の透過率と収差を規定するので、大変に重要である。2次放出電子は、試料表面から広い角度範囲で、コサイン則に従い放出され、NA位置では均一に広い領域(例えば、φ3〔mm〕)に到達する。したがって、2次放出電子は、NAアパーチャ62の位置に鈍感である。これに対し、ミラー電子の場合、試料表面での反射角度が、1次電子ビームの入射角度と同程度となる。そのため、ミラー電子は、小さな広がりを示し、小さなビーム径でNAアパーチャ62に到達する。例えば、ミラー電子の広がり領域は、二次電子の広がり領域の1/20以下となる。したがって、ミラー電子は、NAアパーチャ62の位置に大変敏感である。NA位置でのミラー電子の広がり領域は、通常、φ10~100〔μm〕の領域となる。よって、ミラー電子強度の最も高い位置を求めて、その求められた位置にNAアパーチャ62の中心位置を配置することが、大変有利であり、重要である。
【0104】
このような適切な位置へのNAアパーチャ62の設置を実現するために、好ましい実施の形態では、NAアパーチャ62が、電子コラム100の真空中で、1〔μm〕程度の精度で、x、y方向に移動される。NAアパーチャ62を移動させながら、信号強度が計測される。そして、信号強度が最も高い位置が求められ、その求められた座標位置にNAアパーチャ62の中心が設置される。
【0105】
信号強度の計測には、EB-CCD65が大変有利に用いられる。これにより、ビームの2次元的な情報を知ることができ、検出器70に入射する電子数を求めることができるので、定量的な信号強度の評価が可能となるからである。
【0106】
あるいは、NAアパーチャ62の位置と検出器70の検出面の位置とが共役の関係を実現するように、アパーチャ配置が定められてよく、また、アパーチャと検出器の間にあるレンズ63の条件が設定されてよい。この構成も大変有利である。これにより、NAアパーチャ62の位置のビームの像を、検出器70の検出面に結像される。したがって、NAアパーチャ62の位置におけるビームプロファイルを、検出器70を用いて観察することができる。
【0107】
また、NAアパーチャ62のNAサイズ(アパーチャ径)も重要である。上述のようにミラー電子の信号領域が小さいので、効果的なNAサイズは、10~200〔μm〕程度である。更に、NAサイズは、好ましくは、ビーム径に対して+10~100〔%〕大きいサイズである。
【0108】
この点に関し、電子の像は、ミラー電子と二次放出電子により形成される。上記のアパーチャサイズの設定により、ミラー電子の割合をより高めることが可能となる。これにより、ミラー電子のコントラストを高めることができ、つまり、異物10のコントラストを高めることができる。
【0109】
更に詳細に説明すると、アパーチャの孔を小さくすると、アパーチャ面積に反比例して2次放出電子が減少する。そのため、正常部の階調が小さくなる。しかし、ミラー信号は変化せず、異物10の階調は変化しない。よって、周囲の階調が低減した分だけ、異物10のコントラストを大きくでき、より高いS/Nが得られる。
【0110】
また、x、y方向だけでなく、z軸方向にアパーチャの位置調整を行えるように、アパーチャ等が構成されてよい。この構成も有利である。アパーチャは、ミラー電子が最も絞られる位置に好適に設置される。これによりミラー電子の収差の低減、及び、2次放出電子の削減を、大変効果的に行うことができる。したがって、より高いS/Nを得ることが可能となる。
【0111】
上述のように、ミラー電子は、NAサイズと形状に非常に敏感である。よって、NAサイズと形状と適切に選択することは、高いS/Nを得るために大変重要である。以下、そのような適切なNAサイズと形状の選択を行うための構成の例を説明する。ここでは、NAアパーチャ62のアパーチャ(孔)の形状についても説明する。
【0112】
ここで、NAアパーチャ62は、孔(開口)を有する部材(部品)である。一般に、部材がアパーチャと呼ばれることもあり、孔(開口)がアパーチャと呼ばれることもある。以下のアパーチャ関連の説明において、部材(部品)とその孔を区別するため、部材をNAアパーチャと呼ぶ。そして、部材の孔を、アパーチャという。アパーチャ形状は、一般に、孔の形状を意味する。
【0113】
つづいて、
図12および
図13を用いて、NA結像条件でのフォーカス調整について説明する。
図12は、ミラー電子と二次放出電子のアパーチャでのクロスオーバーポイントの状態を横から見た図である。
図12では、ミラー電子の軌道が破線で示されており、二次放出電子の軌道が実線で示されている。
【0114】
図12に示すように、ミラー電子と二次放出電子では、ベストフォーカス位置に差(フォーカス値差:例えば、約0.5mm)がある。そして、フォーカスを変えていくと、二次放出電子の領域は、フォーカスがプラスになるに従って大きくなるのに対して、ミラー電子の領域は、あるフォーカス点て縦に長く横に細くなり、そのフォーカス点を境にして、フォーカスをプラス方向に変更すると、縦方向はつぶれて横方向は延びる、また、フォーカスをマイナス方向に変更すると、ピークが二つに分裂するように変化していく。
【0115】
図13には、フォーカスを変更して異物を撮像した場合の見え方が示されている。
図13(a)に示すように、フォーカスをマイナス方向にした場合、異物は黒く見える。一方、フォーカスをプラス方向にした場合、異物は白く見える。
図13(b)では、試料表面からのミラー電子が破線で示されており、異物(欠陥)からのミラー電子が実線で示されている。
図13(b)に示すように、フォーカスをマイナスからプラスに変更すると、アパーチャを透過する異物(欠陥)からのミラー電子の量が増える。
【0116】
本実施の形態では、
図8に示すように、一次ビームをE×Bフィルタ46を経由して照射している。すなわち、一次ビームはY軸方向の斜め上方からE×Bフィルタ46に入射している。この場合、X軸方向の入射角の調整は、一次系アライナのX軸方向の電極電圧を調整することにより行うことができる。また、Y軸方向の入射角の調整は、E×Bフィルタ46を用いて調整することができる。
【0117】
<1次光学系における光電子発生装置の変形例>
1次光学系における光電子発生装置の他の例を示す。
図14は、1次系の途中位置から、コラム内に設置されたミラーにより、光電面に光またはレーザが導かれるときの例である。
【0118】
図14は、三角ミラー2070によって光電子を発生させる光又はレーザを光電面に照射するものであり、1次光学系2000の基準電圧がGNDの例である。このとき、例えば、V2、V4とV5がGNDで、その付近が基準電圧空間とする。そして、中心部に光電子の通る穴の開いたミラー、例えば三角ミラー2070を設置して、DUV光または、UVレーザを図示されない管に設けられた穴を通して導入し、この三角ミラー2170によって反射させて光電面2021に照射する。そして、照射された面から光電子が発生し、この光電子がEXレンズ2020およびNA2025、そして、下流のアライナを通過して、試料面に照射される。このとき、発生した光電子が1次系の軌道を形成するために、光電面2021には規定値の電圧が印加されている。一次ビームのランディングエネルギーLEと、試料20に印加されるリターディング電圧RTD電圧と、光電面2021に印加される光電面側電圧V1との間には、LE=RTD電圧-V1の関係が成り立つ。
【0119】
光電面2021から発生する光電子の量は、光またはレーザの照射強度にて決まるので、照射する強度の制御が行われる。これは前述した強度の制御方法が用いられる。この時、ミラーはミラー表面と構造体全体が導体または、導体でコートされている。そして、その電位は基準電位と同じ電位になっている。空間電位を乱さないように同電位となっているのである。また、1次ビームがミラーの影響を受けずに通過できるように、ミラーの光軸中心部には穴が開いており、その穴を1次ビームが通過する。この穴内部においても基準電圧と同電位となるように、導体材料または導体がコートされ基準電圧部に接続されている。
【0120】
また、光電子発生の形状については2つの方法を示す。
図14を用いて説明する。1つは、コラム内にあるミラーの入射前に、ビーム系状を規定するFAアパーチャ2010を用いる。フィールドアパーチャ(FA)2010の形状のビーム形成を行い、そのビームを光電面に照射して、その形状の光電子を発生させる。このとき、フィールドアパーチャ(FA)2010の投影サイズは、フィールドアパーチャ(FA)2010上流にあるレンズ位置により制御される。
【0121】
<1次光学系:変調電源>
次に、
図17及び
図18を参照して、本実施の形態による検査装置100の構成について説明する。
【0122】
図17に示すように、検査装置100は、試料20を載置して連続的に移動するステージ30と、ステージ30上の試料20に対して一次ビームを照射する一次光学系40と、ステージ30上の試料20にリターディング電圧RTDを印加するリターディング電源82と、一次ビームのランディングエネルギーLEが検査エネルギー条件とプレチャージエネルギー条件の両方を実現するように、リターディング電圧RTDを変更する電圧制御部80と、一次ビームを試料20に照射することにより試料20から発生した二次ビームの像を生成する二次元センサ71を含む検出器70と、二次ビームを二次元センサ71に導く2次光学系60と、を備えている。
【0123】
このうち二次元センサ71は、TDI方式のラインスキャンカメラ(以下、TDIカメラと呼ぶ)であり、ステージ30上に載置された試料20を連続的に移動(スキャン)させながら撮像することが可能である。
【0124】
より詳しくは、二次元センサ71の受光面には、格子状に画素(ピクセル)が並んでおり、各画素に入射した光の量に応じた電気信号が得られる。各画素で得られた信号は、像送り方向(撮像方向)の隣の段に一定の周期(送り速度)で送られ、更にその画素に入射した光の量に応じた信号が加算される。これを撮像方向の段数分だけ繰り返し、最終段まで加算されると、その最終段の信号が画像に追加される。そして、一定の周期後には次に最終段に来た信号が同様に画像に追加される。このようにして帯状の画像が連続的に連なった撮像画像が構成されていく。二次元センサ71は、このようにして各段の信号を加算して段数分の加算画像を得ているため、高感度な撮像が可能である。
【0125】
図18に示すように、試料20の検査は、試料20上に一次ビームを照射しながらステージ30を一定速度で移動(スキャン)することにより、連続的に帯状に検査画像を撮像して進めていく。試料20の端まで移動すると、視野幅だけステージ30を横に移動(ステップ)させ、今度は反対方向にステージ30をスキャンさせる。これを繰り返して試料20の全面を検査する。
【0126】
ステージ30の移動速度は、試料20面上の画素寸法の設定値と検査速度の設定値によって決まる。検査画像の撮像は、ステージ30の移動速度と二次元センサ71(TDIカメラ)の画素の送り速度を同期させて行う。より詳しくは、レーザ干渉計(図示しない)からステージ30の位置情報が後述する撮像コントローラ81に入力され、撮像コントローラ81は、ステージ30が1画素分(たとえば100mm)移動する毎に二次元センサ71に転送クロックを出力する。転送クロックの周期は、たとえば3.6μsecである。二次元センサ71は、画素の送り速度を撮像コントローラ81から受け取る転送クロックに同期させる。
【0127】
本実施の形態では、一次光学系40は、レーザ光を発生するレーザ光源49と、レーザ光が照射されることにより一次ビームを発生する光電面2011と、光電面2011にカソード電圧V1を印加するカソード電源84と、を有している。一次ビームのランディングエネルギーLEと、試料20に印加されるリターディング電圧RTDと、光電面2021に印加されるカソード電圧V1との間には、LE=RTD-V1の関係が成り立つ。
【0128】
ところで、発明が解決しようとする課題の欄でも言及したように、熱電子放出型の六ホウ化ランタン(LaB
6)を用いた一次光学系の場合、
図15に示すように、LaB
6から放出される電子のエネルギー分散が比較的大きいことから、ある検査エネルギー条件を選択した際に、その裾野の強度の弱いエネルギーの部分においてプレチャージエネルギー条件を実現することができる。この効果により、LaB
6を用いた一次光学系では、一度のスキャン動作にてプレチャージと検査の両方を実施可能である。しかしながら、検査エネルギー条件とは独立に、的確なプレチャージエネルギー条件を選択することができないという不都合がある。
【0129】
一方、本実施の形態の検査装置100のように、レーザ光が照射されることにより一次ビームを発生する光電面2011を用いた一次光学系40の場合、
図16Aに示すように、光電面2011から放出される電子のエネルギー分散が比較的小さいことから、ある検査エネルギー条件を選択した場合に、その裾野の強度の弱いエネルギーの部分でプレチャージエネルギー条件を実現することはできないものの、
図16Bに示すように、リターディング電圧を変更することで、検査エネルギー条件とは独立に、的確なプレチャージエネルギー条件を選択することが可能である。
【0130】
このような光電面2011を用いた一次光学系による検査手法としては、検査領域に対してプレチャージエネルギー条件にてスキャン動作とステップ動作を繰り返してプレチャージを実施した後に、同じ検査領域に対して検査エネルギー条件にてスキャン動作とステップ動作を繰り返して検査を実施する、という検査手法が考えられる。しかしながら、この検査手法では、検査時間が長くかかるという不都合がある。また、検査領域の中の1つの小領域に着目した場合、プレチャージを実施してから検査を実施するまでの間に時間が空くため、検査を実施する時にプレチャージの効果が弱まっている可能性がある。
【0131】
そこで、本実施の形態の電圧制御部80は、
図18に示すように、二次元センサ71の1画素内でプレチャージエネルギー条件と検査エネルギー条件の両方が順に実現されるように、二次元センサ71の画素の送り速度に同期したパルスをリターディング電圧RTDに重畳するように構成されている。これにより、1画素内でプレチャージエネルギー条件と検査エネルギー条件の両方が順に実現されることで、一度のスキャン動作にてプレチャージと検査の両方を実施可能となる。また、試料20面上の各画素寸法に着目した場合、プレチャージを実施した直後に検査を実施することになるため、プレチャージの効果を有効に利用して検査を実施することができる。
【0132】
図17に示す例では、電圧制御部83は、ステージ30の位置に応じて二次元センサ71に転送クロックを出力する撮像コントローラ81と、撮像コントローラ81が出力した転送クロックに同期してパルスをリターディング電圧RTDに重畳するパルス電源83と、を有している。
【0133】
撮像コントローラ81は、レーザ干渉計(図示しない)からステージ30の位置情報を受け取り、ステージ30の位置が1画素分移動する毎に転送クロックを出力する。二次元センサ71は、画素の送り速度を撮像コントローラ81から受け取る転送クロックに同期させる。
【0134】
パルス電源83は、撮像コントローラ81が出力した転送クロックを受け取り、リターディング電圧にパルスを重畳するタイミングとして利用する。すなわち、パルス電源83は、リターディング電圧に重畳するパルスの周期を、撮像コントローラ81から受け取る転送クロックに同期させる。
【0135】
リターディング電源82が出力するリターディング電圧RTDをA[V]、パルスの最大電圧を+B[V]、最小電圧を-C[V]、カソード電圧V1をD[V]、プレチャージエネルギー条件を実現するランディングエネルギーLEをLE1[V]、検査エネルギー条件を実現するランディングエネルギーLEをLE2[V]とすると、LE1=A+B-D、LE2=A-C-Dの関係が成り立つ。従って、所望のプレチャージエネルギー条件及び検査エネルギー条件が実現されるように、リターディング電圧、パルスの最大電圧、最小電圧、およびカソード電圧は、検査開始前にシミュレーション等に基づいて予め適切に設定される。
【0136】
本実施の形態では、撮像コントローラ81が出力した転送クロックがパルス電源83で利用されることで、リターディング電圧RTDにパルスが重畳される周期と、二次元センサ71の画素の送り速度とが同期され、すなわち二次元センサ71の画素の送り速度に同期したパルスがリターディング電圧RTDに重畳される。これにより、二次元センサ71の1画素内でプレチャージエネルギー条件と検査エネルギー条件の両方が順に実現されるとともに、プレチャージの効果が画素ごとに斑に生じることを防止できる。
【0137】
図18に示す例では、各画素の撮像周期の前半でリターディング電圧A[V]にパルスの最大電圧+B[V]が重畳されることでプレチャージが実施され、後半でリターディング電圧A[V]にパルスの最小電圧-C[V]が重畳されることで検査が実施されているが、各画素でのプレチャージの時間が同じであれば、これに限定されない。各画素の撮像周期の前半で検査が実施され、後半でプレチャージが実施されてもよい。あるいは、各画素の撮像周期の前半でプレチャージが実施され、中盤で検査が実施され、後半で再びプレチャージが実施されてもよいし、各画素の撮像周期の前半で検査が実施され、中盤でプレチャージが実施され、後半で再び検査が実施されてもよい。
【0138】
なお、必ずしも必須ではないが、電圧制御部80は、パルスのデューティ比を変更可能であってもよい。パルスのデューティ比を変更することで、プレチャージの効果量を調整することができ、様々な条件での検査を行うことができる。
【0139】
以上のような本実施の形態によれば、電圧制御部80が二次元センサ71の画素の送り速度に同期したパルスをリターディング電圧に重畳することで、二次元センサ71の1画素内でプレチャージエネルギー条件と検査エネルギー条件の両方が順に実現され得る。これにより、一度のスキャン動作にてプレチャージと検査の両方を実施可能であり、検査領域に対してプレチャージエネルギー条件にてスキャン動作とステップ動作とを繰り返してプレチャージを実施した後に、同じ検査領域に対して検査エネルギー条件にてスキャン動作とステップ動作とを繰り返して検査を実施する、という検査手法に比べて、検査時間を半分程度に短縮できる。また、試料面20上の各画素寸法に着目した場合、プレチャージを実施した直後に検査を実施することになるため、プレチャージの効果を有効に利用して検査を実施することができる。
【0140】
また、本実施の形態によれば、パルス電源83が、リターディング電圧RTDにパルスを重畳するタイミングとして、撮像コントローラ81が出力した転送クロックを利用するため、二次元センサ71の画素の送り速度に同期したパルスをリターディング電圧RTDに重畳するという機能を、単純な構成により実現することができる。
【0141】
また、本実施の形態によれば、電圧制御部83によりパルスのデューティ比を変更することで、プレチャージの効果量を調整することができ、様々な条件での検査を行うことができる。
【0142】
<1次光学系:変調電源の別例>
次に、
図19を参照して、本実施の形態による検査装置100の構成について説明する。以下の説明及び以下の説明で用いる図面では、上述した実施の形態と同様に構成され得る部分について、上述の実施の形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いるとともに、重複する説明を省略する。
【0143】
図19に示す例では、一次光学系40は、レーザ光を発生するレーザ光源49と、レーザ光が照射されることにより一次ビームを発生する光電面2011と、光電面2011にカソード電圧V1を印加するカソード電源84と、一次ビームのランディングエネルギーLEが検査エネルギー条件とプレチャージエネルギー条件の両方を実現するように、カソード電圧V1を変更するカソード電圧制御部85と、を有している。一次ビームのランディングエネルギーLEと、試料20に印加されるリターディング電圧RTDと、光電面2021に印加されるカソード電圧V1との間には、LE=RTD-V1の関係が成り立つ。
カソード電圧制御部85は、二次元センサ2011の1画素内でプレチャージエネルギー条件および検査エネルギー条件の両方を順に実現するように、二次元センサ2011の画素の送り速度に同期したパルスをカソード電圧V1に重畳するように構成されている。これにより、1画素内でプレチャージエネルギー条件と検査エネルギー条件の両方が順に実現されることで、一度のスキャン動作にてプレチャージと検査の両方を実施可能となる。また、試料20面上の各画素寸法に着目した場合、プレチャージを実施した直後に検査を実施することになるため、プレチャージの効果を有効に利用して検査を実施することができる。
図19に示す例では、カソード電圧制御部85は、ステージ30の位置に応じて二次元センサ71に転送クロックを出力する撮像コントローラ81と、撮像コントローラ81が出力した転送クロックに同期してパルスをカソード電圧V1に重畳するパルス電源86と、を有している。
【0144】
撮像コントローラ81は、レーザ干渉計(図示しない)からステージ30の位置情報を受け取り、ステージ30の位置が1画素分移動する毎に転送クロックを出力する。二次元センサ71は、画素の送り速度を撮像コントローラ81から受け取る転送クロックに同期させる。
【0145】
パルス電源86は、撮像コントローラ81が出力した転送クロックを受け取り、カソード電圧V1にパルスを重畳するタイミングとして利用する。すなわち、パルス電源86は、カソード電圧V1に重畳するパルスの周期を、撮像コントローラ81から受け取る転送クロックに同期させる。
【0146】
リターディング電源82が出力するリターディング電圧RTDをA[V]、パルスの最大電圧を+C[V]、最小電圧を-B[V]、カソード電圧V1をD[V]、プレチャージエネルギー条件を実現するランディングエネルギーLEをLE1[V]、検査エネルギー条件を実現するランディングエネルギーLEをLE2[V]とすると、LE1=A-(D+C)、LE2=A-(D-B)の関係が成り立つ。従って、所望のプレチャージエネルギー条件及び検査エネルギー条件が実現されるように、リターディング電圧、パルスの最大電圧、最小電圧、およびカソード電圧は、検査開始前にシミュレーション等に基づいて予め適切に設定される。
【0147】
本実施の形態では、撮像コントローラ81が出力した転送クロックがパルス電源86で利用されることで、カソード電圧V1にパルスが重畳される周期と、二次元センサ71の画素の送り速度とが同期され、すなわち二次元センサ71の画素の送り速度に同期したパルスがカソード電圧V1に重畳される。これにより、二次元センサ71の1画素内でプレチャージエネルギー条件と検査エネルギー条件の両方が順に実現されるとともに、プレチャージの効果が画素ごとに斑に生じることを防止できる。
【0148】
なお、必ずしも必須ではないが、カソード電圧制御部85は、パルスのデューティ比を変更可能であってもよい。パルスのデューティ比を変更することで、プレチャージの効果量を調整することができ、様々な条件での検査を行うことができる。
【0149】
以上のような本実施の形態によれば、カソード電圧制御部85が二次元センサ71の画素の送り速度に同期したパルスをカソード電圧に重畳することで、二次元センサ71の1画素内でプレチャージエネルギー条件と検査エネルギー条件の両方が順に実現され得る。これにより、一度のスキャン動作にてプレチャージと検査の両方を実施可能であり、検査領域に対してプレチャージエネルギー条件にてスキャン動作とステップ動作とを繰り返してプレチャージを実施した後に、同じ検査領域に対して検査エネルギー条件にてスキャン動作とステップ動作とを繰り返して検査を実施する、という検査手法に比べて、検査時間を半分程度に短縮できる。また、試料面20上の各画素寸法に着目した場合、プレチャージを実施した直後に検査を実施することになるため、プレチャージの効果を有効に利用して検査を実施することができる。
【0150】
また、本実施の形態によれば、パルス電源83が、カソード電圧にパルスを重畳するタイミングとして、撮像コントローラ81が出力した転送クロックを利用するため、二次元センサ71の画素の送り速度に同期したパルスをリターディング電圧RTDに重畳するという機能を、単純な構成により実現することができる。
【0151】
また、本実施の形態によれば、カソード電圧制御部85によりパルスのデューティ比を変更することで、プレチャージの効果量を調整することができ、様々な条件での検査を行うことができる。
【0152】
<スキャン方法>
次に、
図20A~
図20Dを参照して、本実施の形態による検査装置のスキャン方法について説明する。
【0153】
本実施の形態のスキャン方法では、まず、
図20Aに示すように、プレチャージエネルギー条件を実現するようなリターディング電圧(プレチャージ電圧)が試料20に印加された状態で、試料20に一次ビームが照射されるとともに、試料20を載置したステージ30が一定速度で移動(スキャン)され(矢印A1参照)、試料20の帯状の検査領域211に対して連続的にプレチャージが実施される。
【0154】
次に、
図20Bに示すように、検査条件を実現するようなリターディング電圧(検査電圧)が試料20に印加された状態で、試料20に一次ビームが照射されるとともに、試料20を載置したステージ30が一定速度で逆向きに移動(スキャン)され(矢印A2参照)、試料20の同じ検査領域211に対して連続的に検査が実施される。
【0155】
次に、
図20Cに示すように、視野幅だけステージ30が横に移動(ステップ)された後(矢印A3参照)、試料にプレチャージ電圧が印加された状態で、試料20に一次ビームが照射されるとともに、試料20を載置したステージ30が一定速度で移動(スキャン)され(矢印A4参照)、前回の検査領域211の隣の検査領域212に対して連続的にプレチャージが実施される。
【0156】
次に、
図20Dに示すように、試料20に検査電圧が印加された状態で、試料20に一次ビームが照射されるとともに、試料20を載置したステージ30が一定速度で逆向きに移動(スキャン)され(矢印A5参照)、試料20の同じ検査領域212に対して連続的に検査が実施される。
【0157】
その後、
図20C及び
図20Dに示す工程が交互に繰り返されることで、試料20全面に対してプレチャージと検査が交互に実施される。
【0158】
以上のような本実施の形態によれば、検査領域に対してプレチャージエネルギー条件にてスキャン動作とステップ動作を繰り返してプレチャージを実施した後に、同じ検査領域に対して検査エネルギー条件にてスキャン動作とステップ動作を繰り返して検査を実施する、という検査手法に比べて、検査時間は変わらないものの、検査領域の中の1つの小領域に着目した場合、プレチャージを実施してから検査を実施するまでの間の時間が短くなるため、プレチャージの効果を有効に利用して検査を実施することが可能である。
【符号の説明】
【0159】
100 検査装置
20 試料
2011 光電面
30 ステージ
40 一次光学系
46 E×Bフィルタ
49 レーザ光源
60 二次光学系
70 検出器
71 二次元センサ
80 電圧制御部
81 撮像コントローラ
82 リターディング電源
83 パルス電源
84 カソード電源
85 カソード電圧制御部
86 パルス電源