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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-30
(45)【発行日】2022-10-11
(54)【発明の名称】高吸収体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/12 20060101AFI20221003BHJP
   C08J 3/24 20060101ALI20221003BHJP
【FI】
C08J3/12 A CEY
C08J3/24 Z
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019507192
(86)(22)【出願日】2017-08-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-09-19
(86)【国際出願番号】 EP2017069446
(87)【国際公開番号】W WO2018029045
(87)【国際公開日】2018-02-15
【審査請求日】2020-07-31
(31)【優先権主張番号】16183579.8
(32)【優先日】2016-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】クリスティーネ ハートナーゲル
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ギーガー
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】マークス シュレーダー
(72)【発明者】
【氏名】ミシェル モラノ
(72)【発明者】
【氏名】ナサニエル トロイ グリーン
【審査官】芦原 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-522406(JP,A)
【文献】特表2013-530281(JP,A)
【文献】国際公開第2012/133734(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/005114(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/040530(WO,A1)
【文献】特表2013-504674(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00-3/28
C08L
C08K
C08F
B01J 20/00-20/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) 酸基を有し、少なくとも部分的に中和されていてもよい、少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマー、
b) 少なくとも1種の架橋剤、
c) 少なくとも1種の開始剤、
d) 任意で、a)に記載したモノマーと共重合可能な1種または複数種のエチレン性不飽和モノマー、および
e) 任意で、1種または複数種の水溶性ポリマー
を含むモノマー溶液または懸濁液を重合することによって高吸収体粒子を製造する方法であって、
i) モノマー溶液を重合させてポリマーゲルを得るステップ、
ii) 任意で、得られたポリマーゲルを破砕するステップ、
iii) ポリマーゲルを乾燥させるステップ、
iv) 乾燥させたポリマーゲルを粉砕および分級してポリマー粒子を得るステップ、
v) 分級したポリマー粒子を熱により表面後架橋させるステップ、
vi) 任意で、表面後架橋させたポリマー粒子を再度分級するステップ、
vii) 任意で、ステップiv)で分離除去したポリマー粒子をステップiii)の前に返送するステップ、および
viii) 任意で、ステップvi)で分離除去したポリマー粒子をステップiii)の前に返送するステップ
を含む方法において、
ステップi)の前に、使用したモノマーa)の全量を基準として計算して少なくとも0.75重量%のヒドロキシホスホン酸またはその塩を前記モノマー溶液に添加し、かつステップiv)とステップvi)との間で、使用したポリマー粒子の全量を基準として計算して少なくとも0.09重量%のアルミニウムカチオンを前記ポリマー粒子に添加し、前記アルミニウムカチオンを硫酸アルミニウムとして使用することを特徴とする方法。
【請求項2】
ステップvi)で分離除去し、ステップiii)の前に返送したポリマー粒子は、粒子径が150μm未満であることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
1-ヒドロキシエチリデン-1,1’-ジホスホン酸をヒドロキシホスホン酸として使用することを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記アルミニウムカチオンをステップv)の前に添加することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
使用したモノマーa)の全量を基準として計算して少なくとも0.8重量%のヒドロキシホスホン酸またはその塩を、ステップi)の前に前記モノマー溶液に添加することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
使用したモノマーa)の全量を基準として計算して少なくとも0.85重量%のヒドロキシホスホン酸またはその塩を、ステップi)の前に前記モノマー溶液に添加することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
使用したポリマー粒子の全量を基準として計算して少なくとも0.1重量%のアルミニウムカチオンを、ステップiv)の後に前記ポリマー粒子に添加することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
使用したポリマー粒子の全量を基準として計算して少なくとも0.11重量%のアルミニウムカチオンを、ステップiv)の後に前記ポリマー粒子に添加することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
請求項1からまでのいずれか1項記載の方法により得られる高吸収体粒子であって、該高吸収体粒子は、遠心分離保持容量が少なくとも25g/gであり、49.2g/cmの圧力下での吸収力が少なくとも15g/gであり、ゲル層透過率が少なくとも60ダルシーであり、かつ前記高吸収体粒子は、温度70℃、相対湿度80%で14日間貯蔵した後に、少なくとも67のL値、7.0未満のa値および14.5未満のb値を有する、高吸収体粒子。
【請求項10】
前記遠心分離保持容量は、少なくとも28g/gである、請求項記載の高吸収体粒子。
【請求項11】
前記49.2g/cmの圧力下での吸収力は、少なくとも18g/gである、請求項または10記載の高吸収体粒子。
【請求項12】
前記ゲル層透過率は、少なくとも75ダルシーである、請求項から11までのいずれか1項記載の高吸収体粒子。
【請求項13】
温度70℃、相対湿度80%で14日間貯蔵した後に、少なくとも70のL値を有する、請求項から12までのいずれか1項記載の高吸収体粒子。
【請求項14】
温度70℃、相対湿度80%で14日間貯蔵した後に、5.8未満のa値および13.0未満のb値を有する、請求項から13までのいずれか1項記載の高吸収体粒子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
説明
本発明は、モノマー溶液の重合および熱による表面後架橋を含む高吸収体の製造方法であって、前記モノマー溶液は、使用したモノマーの全量を基準として計算して少なくとも0.75重量%のヒドロキシホスホン酸を含有し、かつ前記熱による表面後架橋の前、間または後に、使用したポリマー粒子の全量を基準として計算して少なくとも0.09重量%のアルミニウムカチオンをポリマー粒子に添加する方法に関する。
【0002】
高吸収体は、おむつ、タンポン、生理用ナプキンおよび他の衛生用品の製造に使用されるが、市場園芸における保水剤としても使用される。高吸収体は、吸水性ポリマーとも呼ばれる。
【0003】
高吸収体の製造は、研究論文“Modern Superabsorbent Polymer Technology”, F.L. Buchholz und A.T. Graham, Wiley-VCH, 1998, p.71-103に記載されている。
【0004】
高吸収体の性質は、例えば架橋剤の使用量により調整可能である。架橋剤の量が増加するにつれて遠心分離保持容量(CRC)は低下し、21.0g/cmの圧力下での吸収力(AUL0.3psi)は最大値を通過する。
【0005】
性能特性、例えばゲル層透過率(GBP)および49.2g/cmの圧力下での吸収力(AUL0.7psi)を向上させるため、高吸収体粒子は一般に表面後架橋される。それにより粒子表面の架橋度が増加し、そうすることで49.2g/cmの圧力下での吸収力(AUL0.7psi)と遠心分離保持容量(CRC)とを少なくとも部分的に分離することができる。この表面後架橋は、水性ゲル相中で行うことができる。しかし、乾燥、粉砕および篩分けしたポリマー粒子(ベースポリマー)を表面後架橋剤で表面被覆し、熱により表面後架橋させることが好ましい。その目的に適した架橋剤は、ポリマー粒子の少なくとも2つのカルボキシレート基と共有結合を形成し得る化合物である。
【0006】
国際公開第2011/113777号(WO 2011/113777 A1)には、高吸収体の製造が記載されている。その際、重合中またはその後に無機リン酸またはその塩および有機2-ヒドロキシ酸またはその塩が添加される。
【0007】
国際公開第2013/144026号(WO 2013/144026 A1)には、その表面が多価金属イオンと錯形成されており、かつホスホン酸誘導体を含む高吸収体が記載されている。
【0008】
本発明の課題は、高いゲル層透過率(GBP)を示す色安定性の高吸収体の改良された製造方法を提供することであった。
【0009】
前述の課題は、
a) 酸基を有し、少なくとも部分的に中和されていてもよい、少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマー、
b) 少なくとも1種の架橋剤、
c) 少なくとも1種の開始剤、
d) 任意で、a)に記載したモノマーと共重合可能な1種または複数種のエチレン性不飽和モノマー、および
e) 任意で、1種または複数種の水溶性ポリマー
を含むモノマー溶液または懸濁液の重合による高吸収体の製造方法であって、
i) モノマー溶液を重合させてポリマーゲルを得るステップ、
ii) 任意で、得られたポリマーゲルを破砕するステップ、
iii) ポリマーゲルを乾燥させるステップ、
iv) 乾燥させたポリマーゲルを粉砕および分級してポリマー粒子を得るステップ、
v) 分級したポリマー粒子を熱により表面後架橋させるステップ、
vi) 任意で、表面後架橋させたポリマー粒子を再度分級するステップ、
vii) 任意で、ステップiv)で分離除去したポリマー粒子をステップiii)の前に返送するステップ、および
viii) 任意で、ステップvi)で分離除去したポリマー粒子をステップiii)の前に返送するステップ
を含む方法において、
ステップi)の前に、使用したモノマーa)の全量を基準として計算して少なくとも0.75重量%のヒドロキシホスホン酸またはその塩を前記モノマー溶液に添加し、かつステップiv)とステップvi)との間で、使用したポリマー粒子の全量を基準として計算して少なくとも0.09重量%のアルミニウムカチオンを前記ポリマー粒子に添加することを特徴とする方法によって解決された。
【0010】
ヒドロキシホスホン酸の塩として、好ましくはアルカリ金属塩、特に好ましくはナトリウムおよびカリウム塩、極めて特に好ましくはナトリウム塩が使用される。その際、ヒドロキシホスホン酸の中和可能なプロトンのすべてまたは一部を、任意のアルカリ金属カチオンで置き換えることができる。
【0011】
本発明の好ましい一実施形態において、表面後架橋させたポリマー粒子をステップvi)で再度分級し、かつステップvi)で分離除去したポリマー粒子をステップiii)の前に返送する。返送したポリマー粒子は、粒子径が好ましくは250μm未満、特に好ましくは200μm未満、極めて特に好ましくは150μm未満である。
【0012】
好ましくは、1-ヒドロキシエチリデン-1,1’-ジホスホン酸をヒドロキシホスホン酸として使用する。
【0013】
本発明の好ましい一実施形態において、アルミニウムカチオンをステップv)の前に添加する。
【0014】
好ましくは、アルミニウムカチオンを硫酸アルミニウムとして使用する。
【0015】
使用したモノマーの全量を基準として計算して、好ましくは少なくとも0.80重量%、特に好ましくは少なくとも0.85重量%、極めて特に好ましくは少なくとも0.90重量%のヒドロキシホスホン酸またはその塩をモノマー溶液に添加する。
【0016】
ステップiv)とステップvi)との間で、使用したポリマー粒子の全量を基準として計算して、好ましくは少なくとも0.10重量%、特に好ましくは少なくとも0.11重量%、極めて特に好ましくは少なくとも0.12重量%のアルミニウムカチオンをポリマー粒子に添加する。
【0017】
本発明は、モノマー溶液中のヒドロキシホスホン酸の量を相対的に多くし、かつ粒子表面上のアルミニウムカチオンの量を相対的に多くするだけで、高い色安定性および高いゲル層透過率(GBP)が達成されるという知見に基づく。対イオンとして硫酸イオンを使用することで、ゲル層透過率(GBP)が明らかに高くなる。
【0018】
さらに、返送した表面後架橋済みの高吸収体は、モノマー溶液のヒドロキシホスホン酸を吸収しないことが判明した。こうした高吸収体(微粉状物(fine))を本方法に返送した場合、該ポリマー粒子は色安定性を示さず、まだらな変色を招く。こうしたまだらな変色は、特に問題であると感じられる。驚くべきことに、こうした変色は、返送した高吸収体をポリマー粒子段階でヒドロキシホスホン酸で被覆した場合にも観察される。その際、いくつかのポリマー粒子、特に比較的小さなポリマー粒子は、被覆溶液で不十分にしか濡れないか、またはまったく濡れない可能性がある。
【0019】
以下に、高吸収体の製造について詳説する:
高吸収体は、ステップi)でモノマー溶液または懸濁液を重合することにより製造され、通常は非水溶性である。
【0020】
モノマーa)は、好ましくは水溶性であり、すなわち23℃での水への溶解度は、典型的には少なくとも1g/100g水、好ましくは少なくとも5g/100g水、特に好ましくは少なくとも25g/100g水、極めて特に好ましくは少なくとも35g/100g水である。
【0021】
適切なモノマーa)は、例えばエチレン性不飽和カルボン酸、例えばアクリル酸、メタクリル酸およびイタコン酸である。特に好ましいモノマーは、アクリル酸およびメタクリル酸である。アクリル酸が極めて特に好ましい。
【0022】
その他の適切なモノマーa)は、例えばエチレン性不飽和スルホン酸、例えばスチレンスルホン酸および2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(AMPS)である。
【0023】
不純物は、重合に相当の影響を及ぼすことがある。したがって、使用する原料ができるだけ高い純度を有することが望ましい。したがって、モノマーa)を特別に精製することが有利である場合が多い。適切な精製方法は、例えば国際公開第02/055469号(WO 02/055469 A1)、国際公開第03/078378号(WO 03/078378 A1)および国際公開第2004/035514号(WO 2004/035514 A1)に記載されている。適切なモノマーa)は、例えば国際公開第2004/035514号(WO 2004/035514 A1)に従って精製された、アクリル酸99.8460重量%、酢酸0.0950重量%、水0.0332重量%、プロピオン酸0.0203重量%、フルフラール類0.0001重量%、無水マレイン酸0.0001重量%、ジアクリル酸0.0003重量%およびハイドロキノンモノメチルエーテル0.0050重量%を含有するアクリル酸である。
【0024】
モノマーa)の全量におけるアクリル酸および/またはその塩の割合は、好ましくは少なくとも50モル%であり、特に好ましくは少なくとも90モル%であり、極めて特に好ましくは少なくとも95モル%である。
【0025】
モノマーa)は通常、重合禁止剤、好ましくはハイドロキノンモノエーテルを貯蔵安定剤として含有する。
【0026】
モノマー溶液は、それぞれ中和されていないモノマーa)を基準として、ハイドロキノンモノエーテルを好ましくは250重量ppmまで、特に最大でも130重量ppm、特に好ましくは最大でも70重量ppm、好ましくは少なくとも10重量ppm、特に好ましくは少なくとも30重量ppm、殊に約50重量ppm含有する。例えば、モノマー溶液を製造するために、相応する含量のハイドロキノンモノエーテルを有し、かつ酸基を有するエチレン性不飽和モノマーを使用することができる。
【0027】
好ましいハイドロキノンモノエーテルは、ハイドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ)および/またはα-トコフェロール(ビタミンE)である。
【0028】
適切な架橋剤b)は、架橋に適した基を少なくとも2つ有する化合物である。このような基は例えば、ラジカル重合によりポリマー鎖に導入することができるエチレン性不飽和基や、モノマーa)の酸基と共有結合を形成することができる官能基である。さらに、モノマーa)の少なくとも2つの酸基と配位結合を形成することができる多価金属塩も、架橋剤b)として適している。
【0029】
架橋剤b)は、好ましくは、ラジカル重合によりポリマーネットワークに導入することができる重合性の基を少なくとも2つ有する化合物である。適切な架橋剤b)は例えば、欧州特許出願公開第0530438号明細書(EP 0530438 A1)に記載されているようなエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、アリルメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリアリルアミン、テトラアリルアンモニウムクロリド、テトラアリルオキシエタン、欧州特許出願公開第0547847号明細書(EP 0547847 A1)、欧州特許出願公開第0559476号明細書(EP 0559476 A1)、欧州特許出願公開第0632068号明細書(EP 0632068 A1)、国際公開第93/21237号(WO 93/21237 A1)、国際公開第03/104299号(WO 03/104299 A1)、国際公開第03/104300号(WO 03/104300 A1)、国際公開第03/104301号(WO 03/104301 A1)および独国特許出願公開第10331450号明細書(DE 10331450 A1)に記載されているようなジアクリレートおよびトリアクリレート、独国特許出願公開第10331456号明細書(DE 10331456 A1)および独国特許出願公開第10355401号明細書(DE 10355401 A1)に記載されているようなアクリレート基に加えてさらなるエチレン性不飽和基を有する混合アクリレート、または例えば独国特許出願公開第19543368号明細書(DE 19543368 A1)、独国特許出願公開第19646484号明細書(DE 19646484 A1)、国際公開第90/15830号(WO 90/15830 A1)および国際公開第02/032962号(WO 02/032962 A2)に記載されているような架橋剤混合物である。
【0030】
好ましい架橋剤b)は、ペンタエリトリットトリアリルエーテル、テトラアリルオキシエタン、メチレンビスメタクリルアミド、15箇所エトキシル化されたトリメチロールプロパントリアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレートおよびトリアリルアミンである。
【0031】
極めて特に好ましい架橋剤b)は、例えば国際公開第03/104301号(WO 03/104301 A1)に記載されているような、複数箇所エトキシル化および/またはプロポキシル化されたグリセリンをアクリル酸またはメタクリル酸でエステル化してジ-またはトリアクリレートとしたものである。3~10箇所エトキシル化されたグリセリンのジ-および/またはトリアクリレートが特に有利である。1~5箇所エトキシル化および/またはプロポキシル化されたグリセリンのジ-またはトリアクリレートが極めて特に好ましい。3~5箇所エトキシル化および/またはプロポキシル化されたグリセリンのトリアクリレートが最も好ましく、3箇所エトキシル化されたグリセリンのトリアクリレートが殊に好ましい。
【0032】
架橋剤b)の量は、それぞれ使用するモノマーa)の全量を基準として計算して、好ましくは0.25~1.5重量%であり、特に好ましくは0.3~1.2重量%であり、極めて特に好ましくは0.4~0.8重量%である。架橋剤含量が増加するにつれて遠心分離保持容量(CRC)は低下し、21.0g/cmの圧力下での吸収力は最大値を通過する。
【0033】
開始剤c)としては、重合条件下でラジカルを発生するいずれの化合物を使用してもよく、例えば熱開始剤、レドックス開始剤、光開始剤を使用することができる。適切なレドックス開始剤は、ペルオキソ二硫酸ナトリウム/アスコルビン酸、過酸化水素/アスコルビン酸、ペルオキソ二硫酸ナトリウム/重亜硫酸ナトリウムおよび過酸化水素/重亜硫酸ナトリウムである。好ましくは、熱開始剤およびレドックス開始剤の混合物、例えばペルオキソ二硫酸ナトリウム/過酸化水素/アスコルビン酸が使用される。しかし、還元成分として、好ましくは2-ヒドロキシ-2-スルホナト酢酸の二ナトリウム塩または2-ヒドロキシ-2-スルフィナト酢酸のナトリウム塩、2-ヒドロキシ-2-スルホナト酢酸の二ナトリウム塩および重亜硫酸ナトリウムの混合物が使用される。この種の混合物は、Brueggolite(登録商標)FF6およびBrueggolite(登録商標)FF7(Brueggemann Chemicals;ハイルブロン;ドイツ)として入手可能である。
【0034】
酸基を有するエチレン性不飽和モノマーa)と共重合可能なエチレン性不飽和モノマーd)は例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリレート、ジエチルアミノプロピルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレートである。
【0035】
水溶性ポリマーe)として、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、デンプン、デンプン誘導体、変性セルロース、例えばメチルセルロースまたはヒドロキシエチルセルロース、ゼラチン、ポリグリコールまたはポリアクリル酸を使用することができ、好ましくはデンプン、デンプン誘導体および変性セルロースを使用することができる。
【0036】
通常は、モノマー水溶液が使用される。モノマー溶液の含水量は、好ましくは40~75重量%であり、特に好ましくは45~70重量%であり、極めて特に好ましくは50~65重量%である。モノマー懸濁液、すなわち過飽和のモノマーa)、例えばアクリル酸ナトリウムを有するモノマー溶液を使用することも可能である。含水量の増加にともなってその後の乾燥の際のエネルギー消費が増大し、含水量が低下にともなって重合熱をもはや不十分にしか排出することができなくなる。
【0037】
好ましい重合禁止剤は、最適な作用のために溶存酸素を必要とする。したがって、重合の前に不活性化により、すなわち不活性ガス、好ましくは窒素または二酸化炭素を通すことにより、モノマー溶液から溶存酸素を除去することができる。好ましくは、モノマー溶液の酸素含量を、重合の前に1重量ppm未満、特に好ましくは0.5重量ppm未満、極めて特に好ましくは0.1重量ppm未満に低下させる。
【0038】
ステップi)における重合に適した反応器は、例えば混練反応器またはベルト反応器である。ニーダー内で、モノマー水溶液またはモノマー水性懸濁液の重合時に生じるポリマーゲルを、例えば国際公開第2001/038402号(WO 2001/038402 A1)に記載のように互いに反転する撹拌シャフトによって連続的に破砕する。ベルト上での重合は、例えば独国特許出願公開第3825366号明細書(DE 3825366 A1)および米国特許第6,241,928号明細書(US 6,241,928)に記載されている。ベルト反応器内で重合を行う場合に生じたポリマーゲルは、さらなるステップii)で例えば押出機またはニーダー内で破砕しなければならない。
【0039】
乾燥特性を向上させるために、ニーダーを用いて得られた破砕ポリマーゲルをさらにステップii)で押出成形することができる。
【0040】
得られたポリマーゲルの酸基は通常は、部分的に中和されている。この中和を、モノマーの段階で行うことが好ましい。これは通常は、中和剤を水溶液として混入することにより行われ、または好ましくは固体として混入することによっても行われる。中和度は、好ましくは25~85モル%であり、特に好ましくは30~80モル%であり、極めて特に好ましくは40~75モル%であり、ここで、常用の中和剤、好ましくはアルカリ金属水酸化物、アルカリ金属酸化物、アルカリ金属炭酸塩またはアルカリ金属炭酸水素塩およびそれらの混合物を使用することができる。アルカリ金属塩の代わりにアンモニウム塩を使用することもできる。アルカリ金属としてはナトリウムおよびカリウムが特に好ましいが、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムまたは炭酸水素ナトリウムおよびそれらの混合物が極めて特に好ましい。この場合、固体炭酸塩および炭酸水素塩を封入された形態で使用することもでき、これを、好ましくは重合の直前にモノマー溶液に、重合中または重合後にポリマーゲルに、そして該ポリマーゲルの乾燥前に導入することができる。この封入は、乾燥時まで二酸化炭素が放出されず、かつ生じる高吸収体が高い内部空隙率を有するように、固体炭酸塩または炭酸水素塩の溶解および反応を遅延させる不溶性の、またはゆっくりとしか溶解しない材料により(例えば皮膜形成性ポリマー、不活性無機材料または可融性有機材料で)表面を被覆することによって行われる。
【0041】
任意で、界面活性剤を重合前または重合中にモノマー溶液に添加することができ、次いでモノマー溶液を、重合前または重合中に不活性ガスもしくは水蒸気を用いて、または強力な撹拌によって発泡させることができる。界面活性剤は、アニオン性であっても、カチオン性であっても、双性イオン性であっても、非イオン性であってもよい。皮膚に優しい界面活性剤を使用することが好ましい。
【0042】
次いで、ステップiii)で残留水分含量が好ましくは0.5~10重量%、特に好ましくは1~6重量%、極めて特に好ましくは1.5~4重量%になるまで空気循環ベルト乾燥装置でポリマーゲルを乾燥させる。ここで、残留水分含量は、EDANAにより推奨される試験方法No.WSP 230.2-05 “Mass Loss Upon Heating”に従って測定される。残留水分が多すぎると、乾燥ポリマーゲルのガラス転移温度Tが過度に低くなり、さらに加工することが困難となる。残留水分が少なすぎると、乾燥ポリマーゲルが過度に脆くなり、後続の破砕ステップにおいて粒子径が小さすぎるポリマー粒子(微粉状物(fine))が望ましくないほど大量に生じてしまう。乾燥前のポリマーゲルの固形分は、好ましくは25~90重量%であり、特に好ましくは35~70重量%であり、極めて特に好ましくは40~60重量%である。続いて、乾燥したポリマーゲルを破断し、必要に応じて粗く破砕する。
【0043】
この後、ステップiv)で乾燥ポリマーゲルを粉砕および分級し、その際、粉砕には通常は、一段もしくは多段ロールミル、好ましくは二段もしくは三段ロールミル、ピンミル、ハンマーミルまたは振動ミルを使用することができる。
【0044】
ステップiv)で生成物画分として分離除去したポリマー粒子の平均粒子径は、好ましくは150~850μmであり、特に好ましくは250~600μmであり、極めて特に好ましくは300~500μmである。生成物画分の平均粒子径は、EDANAにより推奨される試験方法No.WSP 220.2-05 “Partikel Size Distribution”により求めることができ、その際、篩画分の質量割合を積算してプロットして平均粒子径をグラフにより求める。ここで、平均粒子径とは、積算して50重量%となるメッシュサイズの値をいう。
【0045】
粒子径が150μmより大きいポリマー粒子の割合は、好ましくは少なくとも90重量%であり、特に好ましくは少なくとも95重量%であり、極めて特に好ましくは少なくとも98重量%である。
【0046】
ポリマー粒子の粒子径が過度に小さいと、ゲル層透過率(GBP)が低下する。したがって、過度に小さいポリマー粒子(微粉状物(fine))の割合が低いことが望ましい。
【0047】
したがって通常は、過度に小さいポリマー粒子を分離除去して本方法に返送するが、該返送は、好ましくはステップi)における重合の前、間または直後に、すなわちステップiii)におけるポリマーゲルの乾燥の前に行われる。過度に小さいポリマー粒子を、返送の前または返送の間に水および/または水性界面活性剤で給湿することができる。
【0048】
過度に小さいポリマー粒子を、後の処理ステップにおいて、例えばステップv)の表面後架橋または他の被覆ステップの後に、分離除去することも可能である。この場合、返送した過度に小さいポリマー粒子は、表面後架橋されていてもよいし、さもなくば被覆されていてもよく、例えば高熱法シリカで被覆されていてもよい。
【0049】
重合に混練反応器を使用する場合には、過度に小さいポリマー粒子をステップi)における重合の最後の3分の1の間に添加することが好ましい。しかし、過度に小さいポリマー粒子を重合反応器の後続のステップii)において、例えばニーダーまたは押出機においてポリマーゲルに組み込むことも可能である。
【0050】
過度に小さいポリマー粒子を非常に早い段階で、例えばすでにモノマー溶液に添加すると、これによって、得られるポリマー粒子の遠心分離保持容量(CRC)が低下してしまう。しかし、例えば架橋剤b)の使用量を調節することによってこれを相殺することができる。
【0051】
粒子径が最大で850μmであるポリマー粒子の割合は、好ましくは少なくとも90重量%であり、特に好ましくは少なくとも95重量%であり、極めて特に好ましくは少なくとも98重量%である。
【0052】
粒子径が最大で600μmであるポリマー粒子の割合は、好ましくは少なくとも90重量%であり、特に好ましくは少なくとも95重量%であり、極めて特に好ましくは少なくとも98重量%である。
【0053】
ポリマー粒子の粒子径が過度に大きいと、膨潤速度が低下する。したがって、過度に大きいポリマー粒子の割合も同様に低いことが望ましい。したがって、過度に大きいポリマー粒子を、通常は分離除去して粉砕に返送する。
【0054】
特性をさらに向上させるために、ステップv)においてポリマー粒子を熱により表面後架橋させることができる。適切な表面後架橋剤は、ポリマー粒子の少なくとも2つのカルボキシレート基と共有結合を形成することができる基を含む化合物である。適切な化合物は、例えば欧州特許出願公開第0083022号明細書(EP 0083022 A2)、欧州特許出願公開第0543303号明細書(EP 0543303 A1)および欧州特許出願公開第0937736号明細書(EP 0937736 A2)に記載されているような多官能性アミン、多官能性アミドアミン、多官能性エポキシド、独国特許出願公開第3314019号明細書(DE 3314019 A1)、独国特許出願公開第3523617号明細書(DE 3523617 A1)および欧州特許出願公開第0450922号明細書(EP 0450922 A2)に記載されているような二官能性もしくは多官能性のアルコール、または独国特許出願公開第10204938号明細書(DE 10204938 A1)および米国特許第6,239,230号明細書(US 6,239,230)に記載されているようなβ-ヒドロキシアルキルアミドである。
【0055】
さらに、独国特許発明第4020780号明細書(DE 4020780 C1)には環式カーボネートが、独国特許出願公開第19807502号明細書(DE 19807502 A1)には2-オキサゾリジノンおよびその誘導体、例えば2-ヒドロキシエチル-2-オキサゾリジノンが、独国特許発明第19807992号明細書(DE 19807992 C1)にはビス-2-オキサゾリジノンおよびポリ-2-オキサゾリジノンが、独国特許出願公開第19854573号明細書(DE 19854573 A1)には2-オキソテトラヒドロ-1,3-オキサジンおよびその誘導体が、独国特許出願公開第19854574号明細書(DE 19854574 A1)にはN-アシル-2-オキサゾリジノンが、独国特許出願公開第10204937号明細書(DE 10204937 A1)には環状尿素が、独国特許出願公開第10334584号明細書(DE 10334584 A1)には二環式アミドアセタールが、欧州特許出願公開第1199327号明細書(EP 1199327 A2)にはオキセタンおよび環状尿素が、また国際公開第03/031482号(WO 03/031482 A1)にはモルホリン-2,3-ジオンおよびその誘導体が、適切な表面後架橋剤として記載されている。
【0056】
好ましい表面後架橋剤は、エチレンカーボネート、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリアミドとエピクロロヒドリンとの反応生成物、およびプロピレングリコールと1,4-ブタンジオールとから構成される混合物である。
【0057】
極めて特に好ましい表面後架橋剤は、2-ヒドロキシエチル-2-オキサゾリジノン、2-オキサゾリジノンおよび1,3-プロパンジオールである。
【0058】
さらに、独国特許出願公開第3713601号明細書(DE 3713601 A1)に記載されているような追加の重合性エチレン性不飽和基を有する表面後架橋剤を使用することも可能である。
【0059】
表面後架橋剤の量は、それぞれポリマー粒子を基準として、好ましくは0.001~3重量%であり、特に好ましくは0.02~1重量%であり、極めて特に好ましくは0.05~0.2重量%である。
【0060】
表面後架橋は通常は、表面後架橋剤の溶液を乾燥ポリマー粒子に吹き付けて行われる。この吹付けに続いて、表面後架橋剤で被覆したポリマー粒子を表面後架橋させて乾燥させるが、この表面後架橋反応は、乾燥の前だけでなく乾燥の間にも生じ得る。
【0061】
表面後架橋剤の溶液の吹付けは、好ましくは可動式混合器具を備えたミキサー、例えばスクリューミキサー、ディスクミキサーおよびブレードミキサー内で行われる。水平ミキサー、例えばブレードミキサーが特に好ましく、垂直ミキサーが極めて特に好ましい。水平ミキサーと垂直ミキサーとの区別は混合シャフトの据え付けにより行われ、すなわち水平ミキサーは水平に据え付けられた混合シャフトを有し、垂直ミキサーは垂直に据え付けられた混合シャフトを有する。適したミキサーは、例えばHorizontale Pflugschar(登録商標)ミキサー(Gebr.Loedige Maschinenbau GmbH;パーダーボルン;ドイツ)、Vrieco-Nauta Continuous Mixer(Hosokawa Micron BV;ドゥーティンヘム;オランダ)、Processall Mixmill Mixer(Processall Incorporated;シンシナティ;米国)およびSchugi Flexomix(登録商標)(Hosokawa Micron BV;ドゥーティンヘム;オランダ)である。しかし、表面後架橋剤溶液を流動層内で吹き付けることも可能である。
【0062】
表面後架橋剤は、典型的には水溶液として使用される。非水性溶媒の含量および溶媒の全量によって、ポリマー粒子への表面後架橋剤の浸透深さを調節することができる。
【0063】
溶媒として水のみを使用する場合には、界面活性剤を添加することが好ましい。これによって、濡れ挙動が向上するとともに塊状化傾向が低下する。しかし、例えばイソプロパノール/水、1,3プロパンジオール/水およびプロピレングリコール/水といった溶媒混合物を使用することが好ましく、その際、混合重量比は好ましくは、20:80~40:60である。
【0064】
表面後架橋は、好ましくは接触式乾燥装置、特に好ましくはパドル式乾燥装置、極めて特に好ましくはディスク式乾燥装置内で行われる。適した乾燥装置は、例えばHosokawa Bepex(登録商標)Horizontal Paddle Dryer(Hosokawa Micron GmbH;ラインガルテン;ドイツ)、Hosokawa Bepex(登録商標)Disc Dryer(Hosokawa Micron GmbH;ラインガルテン;ドイツ)、Holo-Flite(登録商標)dryers(Metso Minerals Industries Inc.;ダンビル;米国)およびNara Paddle Dryer(NARA Machinery Europe;フレッヒェン;ドイツ)である。さらに、流動層型乾燥装置を使用することもできる。
【0065】
表面後架橋は、ミキサー自体の中で、ジャケットの加熱または温風の吹き込みによって行うことができる。後続の乾燥装置、例えば箱形乾燥装置、回転管炉または加熱可能なスクリューも同様に適している。流動層型乾燥装置内で混合と熱とによる表面後架橋を行うことが特に有利である。
【0066】
好ましい反応温度は、100~250℃の範囲であり、好ましくは120~220℃の範囲であり、特に好ましくは130~210℃の範囲であり、極めて特に好ましくは150~200℃の範囲である。この温度での好ましい滞留時間は、好ましくは少なくとも10分間であり、特に好ましくは少なくとも20分間であり、極めて特に好ましくは少なくとも30分間であり、通常は最大で60分間である。
【0067】
本発明の好ましい一実施形態において、ポリマー粒子を表面後架橋後に冷却する。この冷却は、好ましくは接触式冷却装置、特に好ましくはパドル式冷却装置、極めて特に好ましくはディスク式冷却装置内で行われる。適した冷却装置は、例えばHosokawa Bepex(登録商標)水平型パドル式冷却装置(Hosokawa Micron GmbH;ラインガルテン;ドイツ)、Hosokawa Bepex(登録商標)Disc Cooler(Hosokawa Micron GmbH;ラインガルテン;ドイツ)、Holo-Flite(登録商標)coolers(Metso Minerals Industries Inc.;ダンビル;米国)およびNara Paddle Cooler(NARA Machinery Europe;フレッヒェン;ドイツ)である。さらに、流動層型冷却装置を使用することもできる。
【0068】
冷却装置において、ポリマー粒子を、好ましくは40~90℃、特に好ましくは45~80℃、極めて特に好ましくは50~70℃に冷却する。
【0069】
続いて、表面後架橋済みのポリマー粒子を再度分級することができ、その際、過度に小さいポリマー粒子および/または過度に大きいポリマー粒子を分離除去して本方法に返送する。
【0070】
特性をさらに向上させるために、表面後架橋済みのポリマー粒子を被覆してもよいし、該粒子に後給湿してもよい。
【0071】
この後給湿を、好ましくは40~120℃、特に好ましくは50~110℃、極めて特に好ましくは60~100℃で行う。温度が過度に低いとポリマー粒子は塊状化傾向を示し、比較的高温では水がすでに顕著に蒸発してしまう。後給湿に使用する水の量は、好ましくは1~10重量%であり、特に好ましくは2~8重量%であり、極めて特に好ましくは3~5重量%である。この後給湿によって、ポリマー粒子の機械的安定性が高まるとともに、その帯電傾向が低下する。この後給湿を、熱による表面後架橋の後に冷却装置内で行うことが好ましい。
【0072】
膨潤速度およびゲル層透過率(GBP)の向上に適した被覆は、例えば非水溶性金属塩のような無機不活性物質や、有機ポリマー、カチオン性ポリマー、そして二価または多価金属カチオンである。粉塵の結合に適した被覆は、例えばポリオールである。ポリマー粒子の望ましくないケーキング傾向を打ち消すのに適した被覆は、例えばAerosil(登録商標)200などの高熱法シリカや、Span(登録商標)20などの界面活性剤である。粉塵の結合、ケーキング傾向の低減および機械的安定性の向上に適した被覆は、欧州特許第0703265号明細書(EP 0703265 B1)に記載されているようなポリマー分散液や、米国特許第5840321号明細書(US 5840321)に記載されているようなワックスである。
【0073】
本発明のさらなる対象は、本発明による方法によって製造された高吸収体であって、前記高吸収体粒子は、遠心分離保持容量が少なくとも25g/gであり、49.2g/cmの圧力下での吸収力が少なくとも15g/gであり、ゲル層透過率が少なくとも60ダルシーであり、かつ前記高吸収体粒子は、温度70℃、相対湿度80%で14日間貯蔵した後に、少なくとも67のL値、7.0未満のa値および14.5未満のb値を有する高吸収体である。
【0074】
本発明による高吸収体粒子は、通常、おむつにおいて存在するようなパルプとの混合物においても高い色安定性を示す。それとは対照的に、色安定剤がその表面にしか施与されていない高吸収体粒子は、パルプとの混合物において明らかにより低い色安定性を示す。
【0075】
本発明による方法によって製造された高吸収体粒子は、遠心分離保持容量(CRC)が好ましくは少なくとも26g/gであり、特に好ましくは少なくとも27g/gであり、極めて特に好ましくは少なくとも28g/gである。該高吸収体粒子の遠心分離保持容量(CRC)は、通常は60g/g未満である。
【0076】
本発明による方法によって製造された高吸収体粒子は、49.2g/cmの圧力下での吸収力(AUL0.7psi)が、好ましくは少なくとも16g/gであり、特に好ましくは少なくとも17g/gであり、極めて特に好ましくは少なくとも18g/gである。該高吸収体粒子の49.2g/cmの圧力下での吸収力(AUL0.7psi)は、通常は35g/g未満である。
【0077】
本発明による方法によって製造された高吸収体粒子は、ゲル層透過率(GBP)が、好ましくは少なくとも65ダルシーであり、特に好ましくは少なくとも70ダルシーであり、極めて特に好ましくは少なくとも75ダルシーである。該高吸収体粒子のゲル層透過率(GBP)は、通常は400ダルシー未満である。
【0078】
本発明による方法によって製造された高吸収体粒子は、温度70℃、相対湿度80%で14日間貯蔵した後に、好ましくは少なくとも68、特に好ましくは少なくとも69、極めて特に好ましくは少なくとも70のL値を有する。
【0079】
本発明による方法によって製造された高吸収体粒子は、温度70℃、相対湿度80%で14日間貯蔵した後に、好ましくは6.6未満のa値および14.0未満のb値、特に好ましくは6.2未満のa値および13.5未満のb値、極めて特に好ましくは5.8未満のa値および13.0未満のb値を有する。
【0080】
方法:
以下に記載する“WSP”を付して示した標準試験方法は、“Worldwide Strategic Partners” EDANA(Avenue Eugene Plasky, 157, 1030 Brussels, Belgium, www.edana.org)およびINDA(1100 Crescent Green, Suite 115, Cary, North Carolina 27518, USA, www.inda.org)により共同刊行された“Standard Test Methods for the Nonwovens Industry”2005年版に記載されている。該刊行物は、EDANAおよびINDAのいずれからも入手可能である。
【0081】
別段の記載がない限り、測定は、23±2℃の周囲温度および50±10%の相対空中湿度で行われるべきである。吸水性ポリマー粒子を、測定前に十分に混合する。
【0082】
遠心分離保持容量(Centrifuge Retention Capacity)
遠心分離保持容量(CRC)を、EDANAにより推奨される試験方法No.WSP 241.2-05 “Fluid Retention Capacity in Saline, After Centrifugation”に従って測定する。
【0083】
21.0g/cm の圧力下での吸収力(Absorption under Load)
吸水性ポリマー粒子の21.0g/cmの圧力下での吸収力(AUL0.3psi)を、EDANAにより推奨される試験方法No.WSP 242.2-05 “Absorption Under Pressure, Gravimetric Determination”に従って測定する。
【0084】
49.2g/cm の圧力下での吸収力(Absorption under Load)
49.2g/cmの圧力下での吸収力(AUL0.7psi)を、EDANAにより推奨される試験方法No.WSP 242.2-05 “Absorption Under Pressure, Gravimetric Determination”と同様に測定し、その際、21.0g/cmの圧力(AUL0.3psi)に代えて49.2g/cmの圧力(AUL0.7psi)に設定する。
【0085】
ゲル層透過率(Gel Bed Permeability)
0.3psi(2070Pa)の圧力負荷下での膨潤ゲル層のゲル層透過率(GBP)を、米国特許出願公開第2005/0256757号明細書(US 2005/0256757)(段落[0061]および[0075])に記載されているように、吸水性ポリマー粒子の膨潤ゲル層のゲル層透過率として求める。
【0086】
CIE色度(L、a、b)
比色定量を、“LabScan XE S/N LX17309”型比色計(HunterLab、レストン、米国)を用いて、CIELAB法(Hunterlab,第8巻,1996年,第7号,pp.1-4)に従って行う。その際、色は、3次元系の座標L、aおよびbで表される。Lは明度を表し、その際、L=0は黒色を意味し、L=100は白色を意味する。aおよびbの値は、赤色/緑色または黄色/青色の色軸上の色の位置を表し、その際、正のaは赤色を表し、負のaは緑色を表し、正のbは黄色を表し、負のbは青色を表す。式HC60=L-3bによりHC60値を算出する。
【0087】
この比色定量は、DIN 5033-6による三刺激値による方法と一致している。
【0088】

例1
アクリル酸406.8g、アクリル酸ナトリウム水溶液(濃度37.3重量%)4271.4g、水130.4gおよび3箇所エトキシル化されたグリセリントリアクリレート(濃度約85重量%)5.86gから構成され、30分間かけて窒素ガスにより空中酸素を除去したモノマー溶液を、LUK8.0K2型の2つの軸平行シャフトを備えた重合反応器(Coperion Werner&Pfleiderer GmbH & Co.KG;シュトゥットガルト、ドイツ)内で重合させた。このモノマー溶液をさらに、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸二ナトリウム塩水溶液(濃度20重量%)77.29gと混合した。ペルオキソ二硫酸ナトリウム水溶液(濃度15重量%)15.84g、過酸化水素水溶液(濃度1重量%)1.41gおよびアスコルビン酸水溶液(濃度0.5重量%)91.12gを添加することによって重合を開始させた。重合は約30分後に終了した。得られたポリマーゲルを、6mmの多孔板を備えた市販のミンチ機を用いて3回細かくし、実験室用乾燥棚内で175℃で90分間乾燥させた。乾燥させたポリマーを粉砕し、150~710μmの粒子径に篩分けした。このようにして製造したベースポリマーは、38g/gの遠心分離保持容量(CRC)を示していた。
【0089】
ベースポリマー1000gを、表面後架橋のために、M5R型すき刃式ミキサー(Gebrueder Loedige Maschinenbau GmbH;パーダーボルン;ドイツ)内で、23℃、シャフト回転数200rpmで2つの2成分噴霧ノズルを用いて以下の溶液で被覆した:
溶液I:N-(2-ヒドロキシエチル)-2-オキサゾリジノン0.50g
1,3-プロパンジオール0.50g
硫酸アルミニウム水溶液(濃度26.8重量%)33.10g
溶液II:イソプロパノール10.0g。
【0090】
これら2つの溶液を吹き付けた後に温度を195℃に上げ、この反応混合物を、この温度およびシャフト回転数60rpmで75分間保持した。続いて、この反応混合物を23℃で150~710μmの粒子径に再度篩分けした。
【0091】
得られた高吸収体粒子を分析した。色安定性を調べるために、該高吸収体粒子を70℃、相対湿度80%で14日間貯蔵した。結果を表1にまとめた。
【0092】
例2(比較例)
例1と同様に行った。モノマー溶液に、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸二ナトリウム塩水溶液(濃度20重量%)77.29gに代えて、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸二ナトリウム塩水溶液(濃度20重量%)を36.61gしか混合しなかった。
【0093】
得られた高吸収体粒子を分析した。色安定性を調べるために、該高吸収体粒子を70℃、相対湿度80%で14日間貯蔵した。結果を表1にまとめた。
【0094】
例3(比較例)
例1と同様に行った。表面後架橋に、硫酸アルミニウム水溶液(濃度26.8重量%)42.90gに代えて硫酸アルミニウム水溶液(濃度26.8重量%)を11.10gしか使用しなかった。
【0095】
得られた高吸収体粒子を分析した。色安定性を調べるために、該高吸収体粒子を70℃、相対湿度80%で14日間貯蔵した。結果を表1にまとめた。
【0096】
例4(比較例)
例1と同様に行った。モノマー溶液は、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸二ナトリウム塩を含んでいなかった。代わりに、モノマー溶液に、2-ヒドロキシ-2-スルホナト酢酸二ナトリウム塩15.46gを混合した。
【0097】
重合中、生じたポリマーゲルが重合反応器のシャフトの周囲に巻きついた。実験を中断せざるを得なかった。
【0098】
例5(比較例)
例1と同様に行った。モノマー溶液は、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸二ナトリウム塩を含んでいなかった。
【0099】
得られた高吸収体粒子を分析した。色安定性を調べるために、該高吸収体粒子を70℃、相対湿度80%で14日間貯蔵した。結果を表1にまとめた。
【0100】
例6
例1と同様に行った。表面後架橋に硫酸アルミニウムを使用しなかった。代わりに、トリ乳酸アルミニウム水溶液(濃度18.9重量%)80.8gを使用した。
【0101】
得られた高吸収体粒子を分析した。色安定性を調べるために、該高吸収体粒子を70℃、相対湿度80%で14日間貯蔵した。結果を表1にまとめた。
【0102】
【表1】
【0103】
SXL:表面後架橋
Cublen:1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸二ナトリウム塩
Blancolen:2-ヒドロキシ-2-スルホナト酢酸二ナトリウム塩
)比較実験
**)不可能、重合中断。
【0104】
例1~3の結果は、多量のヒドロキシホスホン酸(Cublen)および多量のアルミニウムカチオンを用いなければ、高い色安定性および高いゲル層透過率(GBP)を示す高吸収体が得られないことを示している。
【0105】
例4は、色安定化に必要なモノマー溶液中の量の2-ヒドロキシスルホン酸(Blancolen)が重合を妨害することを示している。
【0106】
例1および6は、乳酸イオンよりも硫酸イオンの方が対イオンとして有利であることを示している。
【0107】
例7
水、カ性ソーダ水溶液およびアクリル酸を混合することによって、濃度43.0重量%のアクリル酸/アクリル酸ナトリウム溶液を製造した。そのように製造したモノマー溶液の中和度は、72.0モル%であった。
【0108】
このモノマー溶液を、約23℃で窒素で脱気した。多価エチレン性不飽和架橋剤として、3箇所エトキシル化されたグリセリントリアクリレート(濃度約85重量%)を使用した。3箇所エトキシル化されたグリセリントリアクリレートの使用量は、使用したアクリル酸の全量を基準として計算して0.16重量%であった。
【0109】
さらに、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸二ナトリウム塩の20重量%水溶液を該モノマー溶液に添加した。1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸二ナトリウム塩の使用量は、使用したアクリル酸の全量を基準として計算して0.30重量%であった。
【0110】
ラジカル重合を開始するために、次の成分を使用した:過酸化水素(1.0重量%水溶液を0.002重量%)、ペルオキソ二硫酸ナトリウム(15重量%水溶液を0.15重量%)およびアスコルビン酸(0.5重量%水溶液を0.01重量%)。重量パーセントは、使用したアクリル酸の全量を基準として計算したものである。
【0111】
個々の成分を、List ORP 10型ニーダー反応器(ListAG、アリスドルフ、スイス)に連続的に計量供給した。モノマー溶液の処理量は、40kg/hであった。
【0112】
この反応溶液は、供給時に約23℃の温度を有していた。反応器内でのこの反応混合物の滞留時間は、約15分間であった。重合およびゲル破砕の後、それぞれ1kgの水性ポリマーゲルを300μmの篩メッシュの底部を備えた乾燥板に施与し、空気循環乾燥棚内で175℃で60分間乾燥させた。乾燥させたポリマーゲルをロールミルで粉砕し、分級した。
【0113】
色安定性を調べるために、該高吸収体粒子を70℃、相対湿度80%で14日間貯蔵した。結果を表2にまとめた。
【0114】
例8
例7と同様に行った。反応器の最初の3分の1において、粒子径が150μm未満である高吸収体0.86kg/hをさらに添加した。添加した該高吸収体粒子は熱により表面後架橋済みであり、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸二ナトリウム塩を含んでいなかった。
【0115】
色安定性を調べるために、該高吸収体粒子を70℃、相対湿度80%で14日間貯蔵した。結果を表2にまとめた。
【0116】
例9
例7と同様に行った。反応器の最初の3分の1において、粒子径が150μm未満である高吸収体1.72kg/hをさらに添加した。添加した該高吸収体粒子は熱により表面後架橋済みであり、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸二ナトリウム塩を含んでいなかった。
【0117】
色安定性を調べるために、該高吸収体粒子を70℃、相対湿度80%で14日間貯蔵した。結果を表2にまとめた。
【0118】
例10
例7と同様に行った。反応器の最初の3分の1において、粒子径が150μm未満である高吸収体2.58kg/hをさらに添加した。添加した該高吸収体粒子は熱により表面後架橋済みであり、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸二ナトリウム塩を含んでいなかった。
【0119】
色安定性を調べるために、該高吸収体粒子を70℃、相対湿度80%で14日間貯蔵した。結果を表2にまとめた。
【0120】
例11
例7と同様に行った。反応器の最初の3分の1において、粒子径が150μm未満である高吸収体3.44kg/hをさらに添加した。添加した該高吸収体粒子は熱により表面後架橋済みであり、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸二ナトリウム塩を含んでいなかった。
【0121】
色安定性を調べるために、該高吸収体粒子を70℃、相対湿度80%で14日間貯蔵した。結果を表2にまとめた。
【0122】
【表2】
【0123】
視認可能なまだらな変色なし +
視認可能なまだらな変色がわずかにある -
はっきりした視認可能なまだらな変色がある --
非常にはっきりした視認可能なまだらな変色がある ---。
【0124】
例7~11の結果は、熱による表面後架橋によって、高吸収体粒子がもはや1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸二ナトリウム塩を吸収しなくなり、貯蔵の間に変色することを示している。添加した高吸収体の量とともに、まだらな変色が増加する。