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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-30
(45)【発行日】2022-10-11
(54)【発明の名称】真空断熱材
(51)【国際特許分類】
   F16L 59/065 20060101AFI20221003BHJP
   B32B 15/082 20060101ALI20221003BHJP
   B32B 15/20 20060101ALI20221003BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20221003BHJP
   B32B 27/28 20060101ALI20221003BHJP
   B32B 27/34 20060101ALI20221003BHJP
【FI】
F16L59/065
B32B15/082 Z
B32B15/20
B32B27/30 102
B32B27/28 102
B32B27/34
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019527006
(86)(22)【出願日】2018-06-27
(86)【国際出願番号】 JP2018024468
(87)【国際公開番号】W WO2019004324
(87)【国際公開日】2019-01-03
【審査請求日】2021-03-16
(31)【優先権主張番号】P 2017124831
(32)【優先日】2017-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100174779
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 康晃
(72)【発明者】
【氏名】清水 裕司
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 良一
(72)【発明者】
【氏名】森原 靖
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/103715(WO,A1)
【文献】特開2016-117201(JP,A)
【文献】特開2015-075182(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 59/065
B32B 15/082
B32B 15/20
B32B 27/30
B32B 27/28
B32B 27/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層体(U1)と積層体(U2)とを備え、前記積層体(U1)は、熱可塑性樹脂を含む基材(X1)及び前記基材(X1)の少なくとも一方の面に層(Y1)を有し、かつ、70℃、90%RHの条件下で30日間保管後の水蒸気透過度(Wf)が0.9g/(m2・day)以下であり、前記積層体(U2)は、ポリビニルアルコール系樹脂からなる基材(X2)及び前記基材(X2)の少なくとも一方の面にアルミニウム蒸着層(Y2)を有し、少なくとも1つの前記積層体(U1)を少なくとも1つの前記積層体(U2)の外側に備え、前記積層体(U1)と前記積層体(U2)とがポリアミドフィルムを介して積層されている、真空断熱材。
【請求項2】
基材(X2)がエチレン単位含有量10~65モル%、けん化度90モル%以上のエチレン-ビニルアルコール共重合体からなるフィルムである請求項1に記載の真空断熱材。
【請求項3】
基材(X1)がポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂及びポリアミド系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂からなる、請求項1又は2に記載の真空断熱材。
【請求項4】
層(Y1)が、アルミニウム蒸着層(Y1a)である、請求項1~3のいずれかに記載の真空断熱材。
【請求項5】
層(Y1)が、アルミニウムを含む金属酸化物(A)と無機リン化合物(BI)の反応生成物(R)を含む層(Y1c)であり、層(Y1c)の赤外線吸収スペクトルにおいて、800~1,400cm-1の領域における最大吸収波数が1,080~1,130cm-1の範囲にある、請求項1~3のいずれかに記載の真空断熱材。
【請求項6】
積層体(U1)が、層(Y1)に直接積層した層(Z1)を有し、前記層(Z1)はリン原子を含有する重合体(BO)を含む、請求項1~5のいずれかに記載の真空断熱材。
【請求項7】
層(Z1)が水酸基、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、及びカルボキシル基の塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する重合体(C)を含む、請求項6に記載の真空断熱材。
【請求項8】
重合体(BO)が、ポリ(ビニルホスホン酸)を含む、請求項6又は7に記載の真空断熱材。
【請求項9】
積層体(U1)を最外層に備える、請求項1~8のいずれかに記載の真空断熱材。
【請求項10】
積層体(U1)を2つ以上備える、請求項1~9のいずれかに記載の真空断熱材。
【請求項11】
基材(X1)を最外層に備え、基材(X2)をアルミニウム蒸着層(Y2)よりも内側に備える、請求項1~10のいずれかに記載の真空断熱材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温高湿下での使用及び保管に対する長期信頼性に優れ、品質安定性の高い真空断熱材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から冷蔵庫用の断熱材や住宅用の断熱パネルとして、ポリウレタンフォームからなる断熱材が使われてきた。近年、より優れた材料として、ガスバリア性を有する外被材と芯材とで構成される真空断熱材が使われるようになった。真空断熱材は、ポリウレタンフォームからなる従来の断熱材に比べて、薄型化及び軽量化が可能である。近年、高効率な給湯システムとして普及しつつある自然冷媒ヒートポンプ給湯器では、電気料金の安価な夜間に湯を沸かし、貯湯タンクで保温するといった使われ方が一般的であり、貯湯タンクの設置容積が問題となることがあるが、薄型の真空断熱材を使用することによって、この問題を軽減できる。
【0003】
このような真空断熱材においては、内部を高真空度に保持することにより気体伝熱を小さくして断熱性を向上させているため、その断熱性を長期に亘って維持するためには、極めて優れたガスバリア性を有する外被材を使用する必要がある。
【0004】
かかる外被材に使用される材質としては、成形性の観点から樹脂、特に熱可塑性樹脂が好ましく、例えば、ガスバリア性に優れる樹脂の代表例であるエチレン-ビニルアルコール共重合体やポリビニリデンクロライド等が挙げられる。しかしながら、このようなガスバリア性樹脂では真空断熱材用の外被材に要求されるガスバリア性としては不充分であり、得られる真空断熱材の断熱性を長期に亘って維持することは困難であった。そこで外被材のガスバリア性を改良する目的で、アルミニウム等の金属箔を上記熱可塑性樹脂からなるフィルムに積層した外被材が広く使用されている。
【0005】
しかしながら、上記金属箔を含有する外被材を有する真空断熱材は、長期に亘って高真空度を維持することはできるが、アルミニウム等の金属は熱伝導率が大きいため(例えばアルミニウムの熱伝導率は約200W/m・Kであるのに対し、ポリプロピレン樹脂は約0.23W/m・K、空気で約0.02W/m・K)、熱が金属部分を伝って移動する所謂ヒートブリッジが発生し、断熱性能は大幅に低下することが知られている。
【0006】
そこで、ヒートブリッジの低減と、ガスバリア性の向上とを両立する目的で、アルミニウムなどの金属、及び/又は、シリカやアルミナなどの金属酸化物からなる非常に薄い無機蒸着層を、上記ガスバリア性に優れる熱可塑性樹脂層に積層した積層体を含む外被材が使用されている。例えば、特許文献1には、ヒートブリッジの低減のため、ガスバリア層として、アルミ蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルムを用いる技術が記載されている。
【0007】
さらに、特許文献2では、真空断熱材が高温条件(例えば、100℃、0%RH)で使用される場合においても、充分な長期信頼性及び耐熱性をもたせるため、エチレン-ビニルアルコール共重合体からなるフィルムに、無機蒸着層及び、ポリビニルアルコールに無機物を含んだ複合樹脂層を積層した積層体を含む外被材が記載されている。
【0008】
特許文献3では、高温高湿条件下においても優れたガスバリア性を有する被覆材として、ポリビニルアルコール系樹脂層と金属酸化物とリン化合物との反応生成物を含む層を有する透明ガスバリア層を備えた被覆材が記載されている。
【0009】
【文献】特開2010-138956号公報
【文献】特開2008-114520号公報
【文献】特開2011-226644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記の真空断熱材では、高温高湿条件での使用及び保管時の長期信頼性並びに品質安定性の両立が困難であった。高温高湿条件で使用及び保管する場合の問題点として、高温高湿条件におけるポリビニルアルコール系樹脂層の吸湿による膨張に起因する蒸着層のクラック発生、高温高湿下におけるアルミ蒸着層の腐食等が挙げられる。
【0011】
さらに、基材としてポリビニルアルコール系樹脂以外の熱可塑性樹脂を用い上記課題解決を試みた場合、バリア性が十分に保たれず品質安定性の低下が問題となる。特に、真空断熱材製造時の物理的ストレスによるバリア層の破壊が主な原因として考えられる。
【0012】
本発明は、上記課題を解決するもので、特に高温高湿条件下で使用及び保管する場合にも、長期信頼性に優れ、真空断熱材の製造において品質安定性が良好である真空断熱材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
すなわち本発明は、
[1]積層体(U1)と積層体(U2)とを備え、前記積層体(U1)は、熱可塑性樹脂を含む基材(X1)及び前記基材(X1)の少なくとも一方の面に層(Y1)を有し、かつ、70℃、90%RHの条件下で30日間保管後の水蒸気透過度(Wf)が0.9g/(m・day)以下であり、前記積層体(U2)は、ポリビニルアルコール系樹脂からなる基材(X2)及び前記基材(X2)の少なくとも一方の面にアルミニウム蒸着層(Y2)を有し、少なくとも1つの前記積層体(U1)を少なくとも1つの前記積層体(U2)の外側に備える、真空断熱材;
[2]基材(X2)がエチレン単位含有量10~65モル%、けん化度90モル%以上のエチレン-ビニルアルコール共重合体からなるフィルムである[1]の真空断熱材;
[3]基材(X1)がポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂及びポリアミド系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂からなる、[1]又は[2]の真空断熱材;
[4]層(Y1)が、アルミニウム蒸着層(Y1a)である、[1]~[3]のいずれかの真空断熱材;
[5]層(Y1)が、アルミニウムを含む金属酸化物(A)と無機リン化合物(BI)とが反応してなる反応生成物(R)を含む層(Y1c)であり、層(Y1c)の赤外線吸収スペクトルにおいて、800~1,400cm-1の領域における最大吸収波数が1,080~1,130cm-1の範囲にある、[1]~[3]のいずれかの真空断熱材;
[6]積層体(U1)が、層(Y1)に直接積層した層(Z1)を有し、前記層(Z1)は、リン原子を含有する重合体(BO)を含む[1]~[5]のいずれかの真空断熱材;
[7]層(Z1)が水酸基、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、及びカルボキシル基の塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する重合体(C)を含む[6]の真空断熱材;
[8]重合体(BO)が、ポリ(ビニルホスホン酸)を含む[6]又は[7]の真空断熱材;
[9]積層体(U1)を最外層に備える、[1]~[8]のいずれかの真空断熱材;
[10]積層体(U1)を2つ以上備える、[1]~[9]のいずれかの真空断熱材;
[11]さらにポリアミドフィルムを備える、[1]~[10]のいずれかの真空断熱材;
[12]積層体(U1)と積層体(U2)とがポリアミドフィルムを介して積層されている、[11]の真空断熱材;
[13]基材(X1)を最外層に備え、基材(X2)をアルミニウム蒸着層(Y2)よりも内側に備える、[1]~[12]のいずれかの真空断熱材;
を提供することにより達成される。
【発明の効果】
【0014】
本発明の真空断熱材は、高温高湿条件で使用及び保管した場合においても良好な断熱性を長期に亘って維持でき、物理的ストレスによるバリア層の破壊が抑えられるため、品質安定性が良好である。すなわち、本発明によれば高温高湿条件での使用及び保管時の長期信頼性並びに品質安定性を両立可能な真空断熱材を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の説明において特定の機能を発現する材料として具体的な材料(化合物等)を例示する場合があるが、本発明はそのような材料を使用した態様に限定されない。また、例示される材料は、特に記載がない限り、1種を単独で使用してもよいし2種以上を併用してもよい。
【0016】
本明細書において「ガスバリア性」とは、特に説明がない限り、水蒸気以外のガスをバリアする性能を意味する。また、この明細書において、単に「バリア性」と記載した場合は、ガスバリア性及び水蒸気バリア性の両バリア性を意味する。
【0017】
また本明細書において、「/」は「/」を挟む2層が直接的に積層されていることを表し、「//」は、「//」を挟む2層が接着剤を介して間接的に積層されていることを表す。
【0018】
本発明の真空断熱材は、熱可塑性樹脂を含む基材(X1)及び前記基材(X1)の少なくとも一方の面に層(Y1)を有する積層体(U1)、並びにポリビニルアルコール系樹脂からなる基材(X2)及び前記基材(X2)の少なくとも一方の面にアルミニウム蒸着層(Y2)を有する積層体(U2)を備え、前記積層体(U1)は70℃、90%RHの条件下で30日間保管後の水蒸気透過度(Wf)が0.9g/(m・day)以下であり、前記積層体(U1)を前記積層体(U2)の外側に備える。真空断熱材の外側に積層体(U1)を配置することにより、積層体(U2)に対する水分の影響を最小限に抑え、高温高湿条件での積層体(U2)の劣化を長期的に抑制できる。さらに、真空断熱材の内側に位置する積層体(U2)が基材(X2)の少なくとも一方の面にアルミニウム蒸着層(Y2)を有することで、物理的ストレスによるバリア層の破壊が低減され、良好な品質安定性を保つことができる。なお、「外側」とは真空断熱材を作製した際の外側を意味する。例えば、積層体(U1)及び積層体(U2)を備えるラミネート体(積層体(U1)//積層体(U2)//ヒートシール層)を2つ用意し、ヒートシール層同士を重ね合わせ、任意の3辺をヒートシールして真空包装袋を作製した後、袋内部に芯材を充填して内部空間を真空にした後、最後の辺をヒートシールして真空断熱材を作製する場合、「外側」は積層体(U1)となる。
【0019】
[積層体(U1)]
積層体(U1)は、熱可塑性樹脂を含む基材(X1)及び前記基材(X1)の少なくとも一方の面に層(Y1)を有し、70℃、90%RHの条件下で30日間保管後の水蒸気透過度(Wf)が0.9g/(m・day)以下である。水蒸気透過度(Wf)は、0.8g/(m・day)以下が好ましく、0.5g/(m・day)以下がより好ましく、0.3g/(m・day)以下がさらに好ましい。基材(X2)の外側に、前記水蒸気透過度(Wf)の値を満たす積層体(U1)を少なくとも1つ設けることで、高温高湿条件におけるポリビニルアルコール系樹脂層の吸湿による膨張に起因するアルミニウム蒸着層(Y2)のクラック発生を抑制できる。また高温高湿下において、アルミニウム蒸着層(Y2)の腐食を防ぐことを可能とする。
【0020】
[基材(X1)]
熱可塑性樹脂を含む基材(X1)は、熱可塑性樹脂からなることが好ましい。また、基材(X1)は、フィルム又はシート等の層状であることが好ましい。基材(X1)は熱可塑性樹脂フィルムであることがより好ましい。
【0021】
基材(X1)に用いられる熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレート、ポリブチレンテレフタレートやこれらの共重合体などのポリエステル系樹脂;ナイロン-6、ナイロン-66、ナイロン-12などのポリアミド系樹脂;ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体などの水酸基含有ポリマー;ポリスチレン;ポリ(メタ)アクリル酸エステル;ポリアクリロニトリル;ポリ酢酸ビニル;ポリカーボネート;ポリアリレート;再生セルロース;ポリイミド;ポリエーテルイミド;ポリスルフォン;ポリエーテルスルフォン;ポリエーテルエーテルケトン;アイオノマー樹脂などが挙げられる。基材(X1)の材料は、耐吸湿性及び耐熱性の観点からポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0022】
前記熱可塑性樹脂からなるフィルムを基材(X1)として用いる場合、基材(X1)は延伸フィルムであっても、無延伸フィルムであってもよい。得られる積層体の耐吸湿性及び加工性が優れることから、延伸フィルム、特に二軸延伸フィルムが好ましい。二軸延伸フィルムは、同時二軸延伸法、逐次二軸延伸法、及びチューブラ延伸法のいずれかの方法で製造された二軸延伸フィルムであってもよい。
【0023】
基材(X1)が層状である場合、その平均厚みは、機械的強度や加工性が良好になる観点から、1~1,000μmの範囲が好ましく、5~500μmの範囲がより好ましく、9~200μmの範囲がさらに好ましい。平均厚みは、任意に選ばれた10点での断面の厚みの平均値とする。
【0024】
[層(Y1)]
層(Y1)は、アルミニウム蒸着層(Y1a)であっても、アルミニウム蒸着層(Y1a)以外の蒸着層(Y1b)であっても、アルミニウムを含む金属酸化物(A)と無機リン化合物(BI)とが反応してなる反応生成物(R)を含む層(Y1c)であってもよい。層(Y1)は、高温高湿条件でより長期的に断熱性能を保つ信頼性(長期信頼性)の観点から、層(Y1c)であることが好ましい。
【0025】
[層(Y1a)]
層(Y1a)はアルミニウムを主として含有する蒸着層である。層(Y1)は、本発明の効果を阻害しない範囲でアルミニウム以外の他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、マグネシウム、スズ、ケイ素等のアルミニウム以外の金属又は半金属の他、炭素、窒素等の非金属が挙げられる。
【0026】
層(Y1a)におけるアルミニウムの含有量は60質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましく、90質量%以上が特に好ましく、95質量%以上が最も好ましい。層(Y1a)におけるアルミニウム含有量は、実質的に100質量%であってもよい。アルミニウム含有量が70質量%以上であると、ガスバリア性、耐屈曲性及び高温高湿条件での真空断熱材の長期信頼性が良好になるため好ましい。層(Y1a)におけるアルミニウム含有量が実質的に100質量%とは、不可避的な酸化により微量な(例えば、0.1質量%以下)酸化アルミニウムが含まれる場合を含む。
【0027】
層(Y1a)はアルミニウムのみからなる蒸着層であることが好ましいが、不可避的に酸化が生じ、一部酸化アルミニウムが含まれる場合がある。層(Y1a)に一部酸化アルミニウムが含まれる場合、層(Y1a)を構成するアルミニウム原子の物質量(Almol)に対する酸素原子の物質量(Omol)の比(Omol/Almol)は、0.5以下が好ましく、0.3以下がより好ましく、0.1以下がさらに好ましく、0.08以下が特に好ましく、0.05以下が最も好ましい。
【0028】
層(Y1a)の平均厚みは60nm以上が好ましく、70nm以上がより好ましく、80nm以上がさらに好ましい。また層(Y1a)の平均厚みは200nm以下が好ましく、150nm以下がより好ましく、130nm以下がさらに好ましい。層(Y1a)の平均厚みが60nm以上であると、蒸着層のバリア性が安定的に発現する傾向があり、層(Y1a)の平均厚みが200nm以下であると生産性が向上するため好ましい。
【0029】
層(Y1a)の形成方法としては、真空蒸着法が好ましい。真空蒸着を行う際の加熱方式としては、電子線加熱方式、抵抗加熱方式及び誘導加熱方式のいずれかが好ましい。また蒸着層が形成される基材との密着性及び蒸着層の緻密性を向上させるために、プラズマアシスト法あるいはイオンビームアシスト法を採用して蒸着してもよい。
【0030】
[蒸着層(Y1a)以外の蒸着層(Y1b)]
層(Y1b)は、アルミニウム以外の金属、金属酸化物、金属窒化酸化物、金属炭化窒化物、金属酸化炭化物、窒化ケイ素、炭素含有酸化ケイ素(炭窒化ケイ素)、酸素含有窒化ケイ素(酸窒化ケイ素)などから形成されていてもよい。中でも、酸化アルミニウムや酸化ケイ素などの金属酸化物の蒸着層であることが好ましい。
【0031】
層(Y1b)の好適な平均厚み及び蒸着方法は、前述した層(Y1a)と同様である。
【0032】
[層(Y1c)]
層(Y1c)はアルミニウムを含む金属酸化物(A)と無機リン化合物(BI)とが反応してなる反応生成物(R)を含む。
【0033】
[金属酸化物(A)]
金属酸化物(A)を構成する金属原子(それらを総称して「金属原子(M)」という場合がある)は、周期表の2~14族に属する金属原子から選ばれる少なくとも1種の金属原子であるが、少なくともアルミニウム原子を含む。金属原子(M)は、アルミニウム原子単独であってもよいし、アルミニウム原子とそれ以外の金属原子とを含んでもよい。なお、金属酸化物(A)として、2種以上の金属酸化物(A)を混合して用いてもよい。
【0034】
金属原子(M)に占めるアルミニウム原子の割合は、50モル%以上であることが好ましく、60モル%~100モル%の範囲や、80モル%~100モル%の範囲にあってもよい。金属酸化物(A)の例には、液相合成法、気相合成法、固体粉砕法等の方法によって製造された金属酸化物が含まれる。
【0035】
金属酸化物(A)は、加水分解可能な特性基が結合した金属原子(M)を含有する化合物(E)の加水分解縮合物であってもよい。該特性基の例には、後述する一般式〔I〕のR1が含まれる。化合物(E)の加水分解縮合物は、実質的に金属酸化物とみなすことが可能である。そのため、本明細書では、化合物(E)の加水分解縮合物を「金属酸化物(A)」という場合がある。すなわち、本明細書において、「金属酸化物(A)」は「化合物(E)の加水分解縮合物」と読み替えることができ、また、「化合物(E)の加水分解縮合物」を「金属酸化物(A)」と読み替えることもできる。
【0036】
[加水分解可能な特性基が結合した金属原子(M)を含有する化合物(E)]
無機リン化合物(BI)との反応の制御が容易になり、得られる積層体(U1)のガスバリア性が優れることから、化合物(E)は、下記一般式〔I〕で表される化合物(Ea)を少なくとも1種含むことが好ましい。
Al(R(R3-k 〔I〕
式中、Rは、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、NO、置換基を有していてもよい炭素数1~9のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数5~9のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数2~9のアシロキシ基、置換基を有していてもよい炭素数3~9のアルケニルオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数5~15のβ-ジケトナト基、又は置換基を有していてもよい炭素数1~9のアシル基を有するジアシルメチル基を表す。Rは、置換基を有していてもよい炭素数1~9のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数7~10のアラルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2~9のアルケニル基、又は置換基を有していてもよい炭素数6~10のアリール基を表す。kは1~3の整数を表す。Rが複数存在する場合、Rは互いに同一であってもよいし異なっていてもよい。Rが複数存在する場合、Rは互いに同一であってもよいし異なっていてもよい。
【0037】
化合物(E)は、化合物(Ea)に加えて、下記一般式〔II〕で表される化合物(Eb)を少なくとも1種含んでいてもよい。
(R(Rn-m 〔II〕
式中、Mは、アルミニウム原子以外の金属原子であって周期表の2~14族に属する金属原子から選ばれる少なくとも1種の金属原子を表す。Rは、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、NO、置換基を有していてもよい炭素数1~9のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数5~9のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数2~9のアシロキシ基、置換基を有していてもよい炭素数3~9のアルケニルオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数5~15のβ-ジケトナト基、又は置換基を有していてもよい炭素数1~9のアシル基を有するジアシルメチル基を表す。Rは、置換基を有していてもよい炭素数1~9のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数7~10のアラルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2~9のアルケニル基、又は置換基を有していてもよい炭素数6~10のアリール基を表す。mは1~nの整数を表す。nはMの原子価に等しい。Rが複数存在する場合、Rは互いに同一であってもよいし異なっていてもよい。Rが複数存在する場合、Rは互いに同一であってもよいし異なっていてもよい。
【0038】
及びRが表すアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、ベンジロキシ基、ジフェニルメトキシ基、トリチルオキシ基、4-メトキシベンジロキシ基、メトキシメトキシ基、1-エトキシエトキシ基、ベンジルオキシメトキシ基、2-トリメチルシリルエトキシ基、2-トリメチルシリルエトキシメトキシ基等が挙げられる。
【0039】
及びRが表すアリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基、4-メトキシフェノキシ基等が挙げられる。
【0040】
及びRが表すアシロキシ基としては、例えば、アセトキシ基、エチルカルボニルオキシ基、n-プロピルカルボニルオキシ基、イソプロピルカルボニルオキシ基、n-ブチルカルボニルオキシ基、イソブチルカルボニルオキシ基、sec-ブチルカルボニルオキシ基、tert-ブチルカルボニルオキシ基、n-オクチルカルボニルオキシ基等が挙げられる。
【0041】
及びRが表すアルケニルオキシ基としては、例えば、アリルオキシ基、2-プロペニルオキシ基、2-ブテニルオキシ基、1-メチル-2-プロペニルオキシ基、3-ブテニルオキシ基、2-メチル-2-プロペニルオキシ基、2-ペンテニルオキシ基、3-ペンテニルオキシ基、4-ペンテニルオキシ基、1-メチル-3-ブテニルオキシ基、1,2-ジメチル-2-プロペニルオキシ基、1,1-ジメチル-2-プロペニルオキシ基、2-メチル-2-ブテニルオキシ基、3-メチル-2-ブテニルオキシ基、2-メチル-3-ブテニルオキシ基、3-メチル-3-ブテニルオキシ基、1-ビニル-2-プロペニルオキシ基、5-ヘキセニルオキシ基等が挙げられる。
【0042】
及びRが表すβ-ジケトナト基としては、例えば、2,4-ペンタンジオナト基、1,1,1-トリフルオロ-2,4-ペンタンジオナト基、1,1,1,5,5,5-ヘキサフルオロ-2,4-ペンタンジオナト基、2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオナト基、1,3-ブタンジオナト基、2-メチル-1,3-ブタンジオナト基、2-メチル-1,3-ブタンジオナト基、ベンゾイルアセトナト基等が挙げられる。
【0043】
及びRが表すジアシルメチル基のアシル基としては、例えば、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基(プロパノイル基)、ブチリル基(ブタノイル基)、バレリル基(ペンタノイル基)、ヘキサノイル基等の炭素数1~6の脂肪族アシル基;ベンゾイル基、トルオイル基等の芳香族アシル基(アロイル基)等が挙げられる。
【0044】
及びRが表すアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、3-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、1,2-ジメチルブチル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0045】
及びRが表すアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェニルエチル基(フェネチル基)等が挙げられる。
【0046】
及びRが表すアルケニル基としては、例えば、ビニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、イソプロペニル基、3-ブテニル基、2-ブテニル基、1-ブテニル基、1-メチル-2-プロペニル基、1-メチル-1-プロペニル基、1-エチル-1-エテニル基、2-メチル-2-プロペニル基、2-メチル-1-プロペニル基、3-メチル-2-ブテニル基、4-ペンテニル基等が挙げられる。
【0047】
及びRが表すアリール基としては、例えば、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基等が挙げられる。
【0048】
、R、R、及びRが表す各基が有していてもよい置換基としては、例えば、炭素数1~6のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、シクロプロピルオキシ基、シクロブチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等の炭素数1~6のアルコキシ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n-プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n-ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、sec-ブトキシカルボニル基、tert-ブトキシカルボニル基、n-ペンチルオキシカルボニル基、イソペンチルオキシカルボニル基、シクロプロピルオキシカルボニル基、シクロブチルオキシカルボニル基、シクロペンチルオキシカルボニル基等の炭素数1~6のアルコキシカルボニル基;フェニル基、トリル基、ナフチル基等の芳香族炭化水素基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;炭素数1~6のアシル基;炭素数7~10のアラルキル基;炭素数7~10のアラルキルオキシ基;炭素数1~6のアルキルアミノ基;炭素数1~6のアルキル基を有するジアルキルアミノ基等が挙げられる。
【0049】
及びRとしては、ハロゲン原子、NO、置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数2~6のアシロキシ基、置換基を有していてもよい炭素数5~10のβ-ジケトナト基、又は置換基を有していてもよい炭素数1~6のアシル基を有するジアシルメチル基が好ましく、置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルコキシ基がより好ましい。
【0050】
としては、置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基が好ましい。式〔I〕のkは、好ましくは3である。
【0051】
としては、置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基が好ましい。Mとしては、周期表の4族に属する金属原子が好ましく、チタン、ジルコニウムがより好ましい。Mが周期表の4族に属する金属原子の場合、式〔II〕のmは好ましくは4である。
【0052】
なお、ホウ素及びケイ素は半金属に分類される場合があるが、本明細書ではこれらを金属に含めるものとする。
【0053】
化合物(Ea)としては、例えば、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、トリス(2,4-ペンタンジオナト)アルミニウム、トリメトキシアルミニウム、トリエトキシアルミニウム、トリ-n-プロポキシアルミニウム、トリイソプロポキシアルミニウム、トリ-n-ブトキシアルミニウム、トリ-sec-ブトキシアルミニウム、トリ-tert-ブトキシアルミニウム等が挙げられ、中でも、トリイソプロポキシアルミニウム及びトリ-sec-ブトキシアルミニウムが好ましい。化合物(E)として、2種以上の化合物(Ea)を併用してもよい。
【0054】
化合物(Eb)としては、例えば、テトラキス(2,4-ペンタンジオナト)チタン、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラ-n-ブトキシチタン、テトラキス(2-エチルヘキシルオキシ)チタン等のチタン化合物;テトラキス(2,4-ペンタンジオナト)ジルコニウム、テトラ-n-プロポキシジルコニウム、テトラ-n-ブトキシジルコニウム等のジルコニウム化合物等が挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよく、2種以上の化合物(Eb)を併用してもよい。
【0055】
化合物(E)において、本発明の効果が得られる限り、化合物(E)に占める化合物(Ea)の割合に特に限定はない。化合物(Ea)以外の化合物(例えば、化合物(Eb))が化合物(E)に占める割合は、例えば、20モル%以下が好ましく、10モル%以下がより好ましく、5モル%以下がさらに好ましく、0モル%であってもよい。
【0056】
化合物(E)が加水分解されることによって、化合物(E)が有する加水分解可能な特性基の少なくとも一部が水酸基に変換される。さらに、その加水分解物が縮合することによって、金属原子(M)が酸素原子(O)を介して結合された化合物が形成される。この縮合が繰り返されると、実質的に金属酸化物とみなしうる化合物が形成される。なお、このようにして形成された金属酸化物(A)の表面には、通常、水酸基が存在する。
【0057】
本明細書においては、[金属原子(M)のみに結合している酸素原子(O)のモル数]/[金属原子(M)のモル数]の比が0.8以上である化合物を金属酸化物(A)に含めるものとする。ここで、金属原子(M)のみに結合している酸素原子(O)は、M-O-Mで表される構造における酸素原子(O)であり、M-O-Hで表される構造における酸素原子(O)のように金属原子(M)と水素原子(H)に結合している酸素原子は除外される。金属酸化物(A)における前記比は、0.9以上が好ましく、1.0以上がより好ましく、1.1以上がさらに好ましい。この比の上限は特に限定されないが、金属原子(M)の原子価をnとすると、通常、n/2で表される。
【0058】
前記加水分解縮合が起こるためには、化合物(E)が加水分解可能な特性基を有していることが重要である。それらの基が結合していない場合、加水分解縮合反応が起こらないもしくは極めて緩慢となるため、目的とする金属酸化物(A)の調製が困難になる。
【0059】
化合物(E)の加水分解縮合物は、例えば、公知のゾルゲル法で採用される手法によって特定の原料から製造してもよい。該特定の原料としては、化合物(E)、化合物(E)の部分加水分解物、化合物(E)の完全加水分解物、化合物(E)が部分的に加水分解縮合してなる化合物及び化合物(E)の完全加水分解物の一部が縮合してなる化合物からなる群(以下「化合物(E)系成分」と略記する場合がある)より選ばれる少なくとも1種を用いることができる。
【0060】
なお、後述の無機リン化合物(BI)含有物(無機リン化合物(BI)、又は、無機リン化合物(BI)を含む組成物)との混合に供される金属酸化物(A)は、リン原子を実質的に含有しないことが好ましい。
【0061】
[無機リン化合物(BI)]
無機リン化合物(BI)は、金属酸化物(A)と反応可能な部位を含有し、典型的には、そのような部位を複数含有する。無機リン化合物(BI)としては、そのような部位(原子団又は官能基)を2~20個含有する化合物が好ましい。そのような部位の例には、金属酸化物(A)の表面に存在する官能基(例えば、水酸基)と縮合反応可能な部位が含まれ、例えば、リン原子に直接結合したハロゲン原子、リン原子に直接結合した酸素原子等が挙げられる。金属酸化物(A)の表面に存在する官能基(例えば、水酸基)は、通常、金属酸化物(A)を構成する金属原子(M)に結合している。
【0062】
無機リン化合物(BI)としては、例えば、リン酸、二リン酸、三リン酸、4分子以上のリン酸が縮合したポリリン酸、亜リン酸、ホスホン酸、亜ホスホン酸、ホスフィン酸、亜ホスフィン酸等のリンのオキソ酸及びこれらの誘導体(例えば、塩(例えば、リン酸ナトリウム)、ハロゲン化物(例えば、塩化ホスホリル)、脱水物(例えば、五酸化二リン))等が挙げられる。
【0063】
これらの無機リン化合物(BI)は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの無機リン化合物(BI)の中でも、リン酸を単独で使用するか、リン酸とそれ以外の無機リン化合物(BI)とを併用することが好ましい。リン酸を用いることによって、後述するコーティング液(T)の安定性と得られる積層体(U1)のガスバリア性が向上する。リン酸とそれ以外の無機リン化合物(BI)とを併用する場合、無機リン化合物(BI)の50モル%以上がリン酸であることが好ましい。
【0064】
[反応生成物(R)]
反応生成物(R)は、金属酸化物(A)と無機リン化合物(BI)との反応で得られる。ここで、金属酸化物(A)と無機リン化合物(BI)とさらに他の化合物とが反応することで生成する化合物も反応生成物(R)に含まれる。層(Y1c)は、反応に関与しない金属酸化物(A)及び/又は無機リン化合物(BI)を部分的に含んでいてもよい。
【0065】
層(Y1c)において、金属酸化物(A)を構成する金属原子と無機リン化合物(BI)に由来するリン原子とのモル比は[金属酸化物(A)を構成する金属原子]:[無機リン化合物(B)に由来するリン原子]=1.0:1.0~3.6:1.0の範囲にあることが好ましく、1.1:1.0~3.0:1.0の範囲にあることがより好ましい。この範囲外ではガスバリア性能が低下する。層(Y1c)における該モル比は、層(Y1c)を形成するためのコーティング液における金属酸化物(A)と無機リン化合物(BI)との混合比率によって調整できる。層(Y1c)における該モル比は、通常、コーティング液における比と同じである。
【0066】
層(Y1c)の赤外線吸収スペクトルにおいて、800~1,400cm-1の領域における最大吸収波数は1,080~1,130cm-1の範囲にあることが好ましい。金属酸化物(A)と無機リン化合物(BI)とが反応して反応生成物(R)となる過程において、金属酸化物(A)に由来する金属原子(M)と無機リン化合物(BI)に由来するリン原子(P)とが酸素原子(O)を介してM-O-Pで表される結合を形成する。その結果、反応生成物(R)の赤外線吸収スペクトルにおいて該結合由来の特性吸収帯が生じる。本発明者らによる検討の結果、M-O-Pの結合に基づく特性吸収帯が1,080~1,130cm-1の領域に見られる場合には、得られた積層体(U1)が優れたガスバリア性を発現することがわかった。特に、該特性吸収帯が、一般に各種の原子と酸素原子との結合に由来する吸収が見られる800~1,400cm-1の領域において最も強い吸収である場合には、得られた積層体(U1)がさらに優れたガスバリア性を発現することがわかった。
【0067】
これに対し、金属アルコキシドや金属塩等の金属化合物と無機リン化合物(BI)とを予め混合した後に加水分解縮合させた場合には、金属化合物に由来する金属原子と無機リン化合物(BI)に由来するリン原子とがほぼ均一に混ざり合い反応した複合体が得られる。その場合、赤外線吸収スペクトルにおいて、800~1,400cm-1の領域における最大吸収波数が1,080~1,130cm-1の範囲から外れるようになる。
【0068】
層(Y1c)の赤外線吸収スペクトルにおいて、800~1,400cm-1の領域における最大吸収帯の半値幅は、得られる積層体(U1)のガスバリア性の観点から、200cm-1以下が好ましく、150cm-1以下がより好ましく、100cm-1以下がさらに好ましく、50cm-1以下が特に好ましい。
【0069】
層(Y1c)の赤外線吸収スペクトルは実施例に記載の方法で測定できる。ただし、実施例に記載の方法で測定できない場合には、反射吸収法、外部反射法、減衰全反射法等の反射測定、積層体(U1)から層(Y1c)をかきとり、ヌジョール法、錠剤法等の透過測定という方法で測定してもよいが、これらに限定されるものではない。
【0070】
[リン化合物(BH)]
層(Y1c)は、リン化合物(BH)を含んでいてもよい。リン化合物(BH)は、炭素数3以上20以下のアルキレン鎖又はポリオキシアルキレン鎖を介して少なくとも1つの水酸基を有するリン原子と極性基が結合されている。リン化合物(BH)は金属酸化物(A)、無機リン化合物(BI)、及びそれらの反応生成物(R)と比較して表面自由エネルギーが低く、層(Y1c)の前駆体形成過程において表面側に偏析する。リン化合物(BH)は、層(Y1c)に含まれる成分と反応可能な少なくとも1つの水酸基を有するリン原子と他の部材(例えば、接着層(H)、他の層(例えば、インク層))と反応可能な極性基を有するため、密着性が向上し、レトルト処理後も層間接着力を維持できる点から、層間剥離等の外観不良を抑制することが可能となる。
【0071】
リン化合物(BH)は、例えば、下記一般式〔III〕
-R-U 〔III〕
(式中、Uは少なくとも1つの水酸基を有するリン原子含有基を表し、Rは炭素数3~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基又はポリオキシアルキレン基を表し、Uは極性基を表す。)
で示される。一般式〔III〕のRの直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基又はポリオキシアルキレン基としては、層(Y)のその他の成分よりも表面自由エネルギーが小さく、使用する溶媒への溶解性が良好である観点から、炭素数3以上20以下であることが好ましく、炭素数4以上18以下であることがより好ましく、炭素数6以上14以下であることがさらに好ましい。
【0072】
が表す少なくとも1つの水酸基を有するリン原子含有基(前記一般式〔III〕のU)の例には、リン酸基、亜リン酸基、ホスホン酸基、亜ホスホン酸基、ホスフィン酸基、亜ホスフィン酸基等が挙げられ、中でもリン酸基及びホスホン酸基が好ましく、ホスホン酸基がより好ましい。Uが表す極性基は、インク層、接着層(H)等の隣接する他の部材と反応し得る。そのような極性基の例には、水酸基、カルボキシル基、アミノ基等が挙げられ、中でも水酸基、カルボキシル基が好ましく、水酸基が特に好ましい。
【0073】
リン化合物(BH)の具体例としては、3-ヒドロキシプロピルホスホン酸、4-ヒドロキシブチルホスホン酸、5-ヒドロキシペンチルホスホン酸、6-ヒドロキシヘキシルホスホン酸、7-ヒドロキシヘプチルホスホン酸、8-ヒドロキシオクチルホスホン酸、9-ヒドロキシノニルホスホン酸、10-ヒドロキシデシルホスホン酸、11-ヒドロキシウンデシルホスホン酸、12-ヒドロキシドデシルホスホン酸、13-ヒドロキシトリデシルホスホン酸、14-ヒドロキシテトラデシルホスホン酸、15-ヒドロキシペンタデシルホスホン酸、16-ヒドロキシヘキサデシルホスホン酸、17-ヒドロキシヘプタデシルホスホン酸、18-ヒドロキシオクタデシルホスホン酸、19-ヒドロキシノナデシルホスホン酸、20-ヒドロキシイコシルホスホン酸、3-ヒドロキシプロピルジハイドロジェンホスフェート、4-ヒドロキシブチルジハイドロジェンホスフェート、5-ヒドロキシペンチルジハイドロジェンホスフェート、6-ヒドロキシヘキシルジハイドロジェンホスフェート、7-ヒドロキシヘプチルジハイドロジェンホスフェート、8-ヒドロキシオクチルジハイドロジェンホスフェート、9-ヒドロキシノニルジハイドロジェンホスフェート、10-ヒドロキシデシルジハイドロジェンホスフェート、11-ヒドロキシウンデシルジハイドロジェンホスフェート、12-ヒドロキシドデシルジハイドロジェンホスフェート、13-ヒドロキシトリデシルジハイドロジェンホスフェート、14-ヒドロキシテトラデシルジハイドロジェンホスフェート、15-ヒドロキシペンタデシルジハイドロジェンホスフェート、16-ヒドロキシヘキサデシルジハイドロジェンホスフェート、17-ヒドロキシヘプタデシルジハイドロジェンホスフェート、18-ヒドロキシオクタデシルジハイドロジェンホスフェート、19-ヒドロキシノナデシルジハイドロジェンホスフェート、20-ヒドロキシイコシルジハイドロジェンホスフェート、3-カルボキシプロピルホスホン酸、4-カルボキシブチルホスホン酸、5-カルボキシペンチルホスホン酸、6-カルボキシヘキシルホスホン酸、7-カルボキシヘプチルホスホン酸、8-カルボキシオクチルホスホン酸、9-カルボキシノニルホスホン酸、10-カルボキシデシルホスホン酸、11-カルボキシウンデシルホスホン酸、12-カルボキシドデシルホスホン酸、13-カルボキシトリデシルホスホン酸、14-カルボキシテトラデシルホスホン酸、15-カルボキシペンタデシルホスホン酸、16-カルボキシヘキサデシルホスホン酸、17-カルボキシヘプタデシルホスホン酸、18-カルボキシオクタデシルホスホン酸、19-カルボキシノナデシルホスホン酸、20-カルボキシイコシルホスホン酸等が挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよく、2種以上のリン化合物(BH)を併用してもよい。
【0074】
層(Y1c)において、リン化合物(BH)のモル数MBHと無機リン化合物(BI)のモル数MBIとの比MBH/MBIが1.0×10-4≦MBH/MBI≦2.0×10-2の関係を満たすものが好ましく、密着性がより良好になる観点から、3.5×10-4≦MBH/MBI≦1.0×10-2の関係を満たすものがより好ましく、密着性及びバリア性能ともにより良好になる点から、5.0×10-4≦MBH/MBI≦6.0×10-3の関係を満たすものが特に好ましい。なお、MBH/MBIにおける無機リン化合物(BI)のモル数MBIは、反応生成物(R)を形成するのに用いられる無機リン化合物(BI)を意味する。
【0075】
[重合体(C)]
層(Y1c)は、重合体(C)を含んでいてもよい。重合体(C)は、水酸基、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、及びカルボキシル基の塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する重合体である。重合体(C)は、水酸基、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、及びカルボキシル基の塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する単量体の単独重合体であっても、該単量体を有する共重合体であってもよい。
【0076】
重合体(C)としては、例えば、ポリエチレングリコール;ポリビニルアルコール、炭素数4以下のα-オレフィン単位を1~50モル%含有する変性ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール(ポリビニルブチラールなど)などのポリビニルアルコール系重合体;セルロース、デンプンなどの多糖類;ポリヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリル酸、エチレン-アクリル酸共重合体などの(メタ)アクリル酸系重合体;エチレン-無水マレイン酸共重合体の加水分解物、スチレン-無水マレイン酸共重合体の加水分解物、イソブチレン-無水マレイン酸交互共重合体の加水分解物などのマレイン酸系重合体などが挙げられる。これらの中でも、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール系重合体が好ましい。なお、重合体(C)として、2種以上の重合体(C)を混合して用いてもよい。
【0077】
重合体(C)の分子量に特に制限はないが、より優れたガスバリア性及び力学的特性(落下衝撃強さなど)を有する多層構造体を得るために、重合体(C)の数平均分子量は、5,000以上であることが好ましく、8,000以上であることがより好ましく、10,000以上であることがさらに好ましい。重合体(C)の数平均分子量の上限は特に限定されず、例えば、1,500,000以下である。
【0078】
層(Y1c)が重合体(C)を含む場合、その含有量は層(Y1c)の重量を基準として、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましく、20質量%以下であってもよい。重合体(C)は層(Y1c)中の他の成分と反応していても、反応していなくてもよい。
【0079】
[層(Y1c)におけるその他成分]
層(Y1c)は、他の成分をさらに含むことができる。層(Y1c)に含まれる他の成分としては、例えば、炭酸塩、塩酸塩、硝酸塩、炭酸水素塩、硫酸塩、硫酸水素塩、ホウ酸塩等の無機酸金属塩;シュウ酸塩、酢酸塩、酒石酸塩、ステアリン酸塩等の有機酸金属塩;シクロペンタジエニル金属錯体(例えば、チタノセン)、シアノ金属錯体(例えば、プルシアンブルー)等の金属錯体;層状粘土化合物;架橋剤;高分子化合物;可塑剤;酸化防止剤;紫外線吸収剤;難燃剤等が挙げられる。層(Y1c)における前記の他の成分の含有量は50質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましく、5質量%以下が特に好ましく、0質量%(他の成分を含まない)であってもよい。
【0080】
[層(Y1c)の物性]
X線光電子分光分析法(XPS法)により測定される層(Y1c)の基材(X1)と接していない側の表面~5nmにおけるC/Al比は0.1~15.0の範囲にあることが好ましく、0.3~10.0の範囲にあることがより好ましく、0.5~5.0の範囲にあることが特に好ましい。リン化合物(BH)が層(Y1c)の表面に存在する場合に、良好な密着性を示す。C/Al比は、同時角度分解X線光電子分光分析により測定可能である。
【0081】
層(Y1c)の水接触角は、良好な密着性を示す点から、25°~100°の範囲にあることが好ましく、40°~85°の範囲にあることがより好ましく、55°~70°の範囲にあることが特に好ましい。リン化合物(BH)が層(Y1c)の表面に存在する場合に、層(Y1c)の水接触角が前記範囲になり、良好な密着性を示す。水接触角は接触角計を用いて測定可能である。接触角計は、例えば、協和界面科学株式会社製の全自動接触角計(DMo-901等)を使用できる。
【0082】
[層(Z1)]
積層体(U1)は、層(Z1)を有していてもよい。層(Z1)は、複数のリン原子を有する重合体(BO)を含む。層(Z1)は、層(Y1)に隣接して形成されていることが、耐屈曲性を高める観点から好ましい。層(Z1)は、重合体(BO)のみによって構成されてよいし、前述した重合体(C)をさらに含有していてもよい。層(Z1)が重合体(BO)及び重合体(C)を含有する場合、その質量比WBO:Wは15:85~99:1の範囲にあることが好ましく、60:40~90:10の範囲にあることがより好ましい。
【0083】
[複数のリン原子を有する重合体(BO)]
複数のリン原子を含有する重合体(BO)は、リン酸基、亜リン酸基、ホスホン酸基、亜ホスホン酸基、ホスフィン酸基、及び亜ホスフィン酸基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する重合体であることが好ましい。以下では、これらの官能基を「官能基(PF)」という場合がある。重合体(BO)が有する官能基としては、リン酸基及びホスホン酸基が好ましく、ホスホン酸基がより好ましい。
【0084】
重合体(BO)としては、例えば、6-[(2-ホスホノアセチル)オキシ]ヘキシルアクリレート、2-ホスホノオキシエチルメタクリレート、ホスホノメチルメタクリレート、11-ホスホノウンデシルメタクリレート、1,1-ジホスホノエチルメタクリレートなどのホスホノ(メタ)アクリル酸エステル類の重合体;ビニルホスホン酸、2-プロペン-1-ホスホン酸、4-ビニルベンジルホスホン酸、4-ビニルフェニルホスホン酸などのホスホン酸類の重合体;ビニルホスフィン酸、4-ビニルベンジルホスフィン酸などのホスフィン酸類の重合体;リン酸化デンプンなどが挙げられる。重合体(BO)は、少なくとも1種の官能基(PF)を有する単量体の単独重合体であってもよいし、2種類以上の単量体の共重合体であってもよい。また、重合体(BO)として、単一の単量体からなる重合体を2種以上混合して使用してもよい。中でも、ホスホノ(メタ)アクリル酸エステル類の重合体及びホスホン酸類の重合体が好ましく、ホスホン酸類の重合体がより好ましい。すなわち、重合体(BO)の好ましい一例は、ポリ(ビニルホスホン酸)である。また、重合体(BO)は、ビニルホスホン酸ハロゲン化物やビニルホスホン酸エステルなどのビニルホスホン酸誘導体を単独重合又は共重合した後、加水分解することによっても得ることができる。
【0085】
また、重合体(BO)は、少なくとも1種の官能基(PF)を有する単量体と他のビニル単量体との共重合体であってもよい。リン原子を含有する官能基(PF)を有する単量体と共重合できる他のビニル単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、スチレン、核置換スチレン類、アルキルビニルエーテル類、アルキルビニルエステル類、パーフルオロアルキルビニルエーテル類、パーフルオロアルキルビニルエステル類、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、マレイミド、フェニルマレイミドなどが挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸エステル類、アクリロニトリル、スチレン、マレイミド、及びフェニルマレイミドが好ましい。
【0086】
重合体(BO)の分子量に特に制限はないが、数平均分子量が1,000~100,000の範囲にあることが好ましい。数平均分子量がこの範囲にあると、層(Z1)を積層することによる耐屈曲性の改善効果と、後述するコーティング液(S)の粘度安定性とを、高いレベルで両立できる。また、リン原子1つあたりの重合体(BO)の分子量が100~500の範囲にある場合に耐屈曲性の改善効果をより高めることができる。
【0087】
層(Z1)は、他の成分をさらに含んでいてもよい。他の成分としては、例えば、炭酸塩、塩酸塩、硝酸塩、炭酸水素塩、硫酸塩、硫酸水素塩、ホウ酸塩などの無機酸金属塩;シュウ酸塩、酢酸塩、酒石酸塩、ステアリン酸塩などの有機酸金属塩;シクロペンタジエニル金属錯体(チタノセンなど)、シアノ金属錯体などの金属錯体;層状粘土化合物;架橋剤;重合体(BO)及び重合体(C)以外の高分子化合物:可塑剤;酸化防止剤;紫外線吸収剤;難燃剤などが挙げられる。層(Z1)における前記の他の成分の含有率は、50質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましく、5質量%以下であることが特に好ましく、0質量%(他の成分を含まない)であってもよい。
【0088】
層(Z1)の一層当たりの平均厚みは、他の部材との密着性がより良好になる観点から、0.005μm以上であることが好ましい。層(Z1)の平均厚みの上限は特に限定されないが、経済性の観点から0.3μm以下とすることが好ましい。層(Z1)の平均厚みは、層(Z1)の形成に用いられる後述するコーティング液(S)の濃度や、その塗工方法によって制御できる。
【0089】
[層(Y1)の製造方法]
層(Y1a)及び層(Y1b)は、前述した蒸着法等一般的な蒸着法により形成できる。
【0090】
層(Y1c)を形成する場合、工程(I)、(II)及び(III)を含んでもよい。工程(I)では、金属酸化物(A)、無機リン化合物(BI)及び溶媒を混合することによってコーティング液(T)を調製する。工程(II)では、基材(X1)上にコーティング液(T)を塗工することによって、基材(X1)上に層(Y1c)の前駆体層を形成する。工程(III)では、その前駆体層を210℃以上の温度で熱処理することによって、基材(X1)上に層(Y1c)を形成する。以下、工程(I)~(III)の詳細について説明する。
【0091】
[工程(I)]
工程(I)では、金属酸化物(A)、無機リン化合物(BI)及び溶媒を少なくとも混合することによってそれらを含むコーティング液(T)を調製する。1つの観点では、工程(I)において、金属酸化物(A)と無機リン化合物(BI)とを溶媒中で反応させる。
【0092】
金属酸化物(A)、無機リン化合物(BI)及び溶媒を混合する際に、他の化合物(例えば、重合体(C))を共存させてもよい。
【0093】
工程(I)は、以下の工程(I-1)~(I-3)を含むことが好ましい。
工程(I-1):金属酸化物(A)を含む分散液(J)を調製する工程。
工程(I-2):無機リン化合物(BI)を含む溶液(K)を調製する工程。
工程(I-3):工程(I-1)及び(I-2)で得られた分散液(J)と溶液(K)とを混合する工程。
【0094】
工程(I-2)は工程(I-1)より先に行われてもよいし、工程(I-1)と同時に行われてもよいし、工程(I-1)の後に行われてもよい。
【0095】
[工程(I-1)]
工程(I-1)では、金属酸化物(A)を含む分散液(J)を調製する。分散液(J)は金属酸化物(A)の分散液であってもよい。該分散液(J)は、例えば、公知のゾルゲル法で採用されている手法に従い、例えば、化合物(E)系成分、水、及び必要に応じて酸触媒や有機溶媒を混合し、化合物(E)系成分を縮合又は加水分解縮合することによって調製できる。化合物(E)系成分を縮合又は加水分解縮合することによって得られる金属酸化物(A)の分散液は、そのまま金属酸化物(A)を含む分散液(J)として使用できるが、必要に応じて、分散液(J)に対して特定の処理(前記したような解膠や濃度制御のための溶媒の加減など)を行ってもよい。工程(I-1)で使用する溶媒は特に限定されないが、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類、水及びこれらの混合溶媒が好ましい。
【0096】
工程(I-1)は、化合物(E)及び化合物(E)の加水分解物から選ばれる少なくとも1種の化合物を縮合(例えば加水分解縮合)させる工程を含んでもよい。具体的には、工程(I-1)は、上述した化合物(E)系成分から選ばれる少なくとも1種の化合物を縮合又は加水分解縮合する工程を含んでもよい。
【0097】
加水分解縮合に使用する酸触媒としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、炭酸、蟻酸、酢酸、乳酸、酪酸、シュウ酸、マレイン酸、安息香酸、p-トルエンスルホン酸などが挙げられ、中でも塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、乳酸及び酪酸が好ましく、硝酸及び酢酸がより好ましい。加水分解縮合時に酸触媒を使用する場合には、加水分解縮合前のpHが2.0~4.0の範囲にあるように酸の種類に応じて適した量を使用することが好ましい。
【0098】
[工程(I-2)]
工程(I-2)では、無機リン化合物(BI)を含む溶液(K)を調製する。溶液(K)は無機リン化合物(BI)を溶媒に溶解させて調製する。無機リン化合物(BI)の溶解性が低い場合には、加熱処理や超音波処理を施すことによって溶解を促進してもよい。
【0099】
溶液(K)の調製に用いられる溶媒は、無機リン化合物(BI)の種類に応じて適宜選択すればよいが、水を含むことが好ましい。無機リン化合物(BI)の溶解の妨げにならない限り、溶媒は、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、トリオキサン、ジメトキシエタン、アセトン、メチルエチルケトン、エチレングリコール、プロピレングリコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、n-ブチルセロソルブ、グリセリン、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホランなどの有機溶媒を含んでいてもよい。
【0100】
[工程(I-3)]
工程(I-3)では、分散液(J)と溶液(K)とを混合する。分散液(J)と溶液(K)との混合は撹拌下で行うことが好ましい。この際、撹拌している分散液(J)に溶液(K)を添加してもよいし、撹拌している溶液(K)に分散液(J)を添加してもよい。混合完了時点からさらに30分程度撹拌を続けることによって、保存安定性に優れたコーティング液(T)を得ることができる場合がある。
【0101】
工程(I-3)で混合する際の分散液(J)及び溶液(K)の温度は、50℃以下であることが好ましく、30℃以下であることがより好ましく、20℃以下であることがさらに好ましい。
【0102】
コーティング液(T)は、リン化合物(BH)及び/又は重合体(C)を含んでもよい。また、コーティング液(T)は、必要に応じて、酢酸、塩酸、硝酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸から選ばれる少なくとも1種の酸化合物を含んでもよい。
【0103】
工程(I-3)で得られた溶液は、そのままコーティング液(T)として使用できる。この場合、通常、分散液(J)や溶液(K)に含まれる溶媒が、コーティング液(T)の溶媒となる。また、工程(I-3)で得られた溶液に、有機溶媒の添加、pHの調製、添加物の添加など処理を行ったものをコーティング液(T)としてもよい。
【0104】
工程(I-3)で得られた溶液に、得られるコーティング液(T)の安定性が阻害されない範囲で有機溶剤を添加してもよい。有機溶剤を添加することによって、工程(II)における基材(X1)へのコーティング液(T)の塗工が容易になる場合がある。有機溶剤としては、得られるコーティング液(T)において均一に混合されるものが好ましい。有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、トリオキサン、ジメトキシエタン、アセトン、メチルエチルケトン、エチレングリコール、プロピレングリコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、n-ブチルセロソルブ、グリセリン、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホランなどを用いることができる。
【0105】
コーティング液(T)の保存安定性、及びコーティング液(T)の基材(X1)に対する塗工性の観点から、コーティング液(T)の固形分濃度は、1~20質量%の範囲にあることが好ましく、2~15質量%の範囲にあることがより好ましく、3~10質量%の範囲にあることがさらに好ましい。コーティング液(T)の固形分濃度は、例えば、コーティング液(T)の溶媒留去後に残存した固形分の質量を、処理に供したコーティング液(T)の質量で除して算出できる。
【0106】
コーティング液(T)の保存安定性及び真空断熱材のバリア性の観点から、コーティング液(T)のpHは0.1~6.0の範囲にあることが好ましく、0.2~5.0の範囲にあることがより好ましく、0.5~4.0の範囲にあることがさらに好ましい。コーティング液(T)のpHは公知の方法で調整することができ、例えば、酸性化合物や塩基性化合物を添加することによって調整できる。
【0107】
コーティング液(T)の粘度が前記範囲にあるように調整する方法として、例えば、固形分の濃度を調整する、pHを調整する、粘度調節剤を添加する、といった方法を採用できるが、これらに限定されるものではない。
【0108】
本発明の効果が得られる限り、コーティング液(T)は、例えば、炭酸塩、塩酸塩、硝酸塩、炭酸水素塩、硫酸塩、硫酸水素塩、ホウ酸塩等の無機酸金属塩;シュウ酸塩、酢酸塩、酒石酸塩、ステアリン酸塩等の有機酸金属塩;シクロペンタジエニル金属錯体(例えば、チタノセン)、シアノ金属錯体(例えば、プルシアンブルー)等の金属錯体;層状粘土化合物;架橋剤;高分子化合物;可塑剤;酸化防止剤;紫外線吸収剤;難燃剤等の上述した他の物質を含んでもよい。
【0109】
[工程(II)]
工程(II)では、基材(X1)上にコーティング液(T)を塗工することによって、基材(X1)上に層(Y1c)の前駆体層を形成する。コーティング液(T)は、基材(X1)の少なくとも一方の面の上に直接塗工してもよいし、他の層を介して基材(X1)上に塗工してもよい。また、コーティング液(T)を塗工する前に、基材(X1)の表面を公知のアンカーコーティング剤で処理したり、基材(X1)の表面に公知の接着剤を塗工したりするなどして、基材(X1)の表面に接着層(H)を形成しておいてもよい。
【0110】
コーティング液(T)は、必要に応じて、脱気及び/又は脱泡処理してもよい。脱気及び/又は脱泡処理の方法としては、例えば、減圧、加熱、遠心、超音波、などによる方法があるが、減圧を含む方法であることが好ましい。
【0111】
工程(II)で塗工される際のコーティング液(T)は、ブルックフィールド形回転粘度計(SB型粘度計:ローターNo.3、回転速度60rpm)で測定された粘度が、塗工時の温度において3,000mPa・s以下であることが好ましく、2,000mPa・s以下であることがより好ましい。該粘度が3,000mPa・s以下であることによって、コーティング液(T)のレベリング性が向上し、外観がより優れる真空断熱材を得ることができる。工程(II)で塗工される際のコーティング液(T)の粘度は、濃度、温度、工程(I-3)の混合後の撹拌時間や撹拌強度によって調整できる。例えば、工程(I-3)の混合後の撹拌を長く行うことによって、粘度を低くできる場合がある。
【0112】
コーティング液(T)を基材(X1)上に塗工する方法は特に限定されず、例えば、キャスト法、ディッピング法、ロールコーティング法、グラビアコート法、スクリーン印刷法、リバースコート法、スプレーコート法、キスコート法、ダイコート法、メタリングバーコート法、チャンバードクター併用コート法、カーテンコート法、バーコート法など公知の方法を用いることができる。
【0113】
通常、工程(II)において、コーティング液(T)中の溶媒を除去することによって、層(Y1c)の前駆体層が形成される。溶媒の除去方法に特に制限はなく、公知の乾燥方法を適用できる。乾燥方法としては、例えば、熱風乾燥法、熱ロール接触法、赤外線加熱法、マイクロ波加熱法などが挙げられる。乾燥温度は、基材(X1)の流動開始温度よりも0~15℃以上低いことが好ましい。コーティング液(T)が重合体(C)を含む場合には、乾燥温度は、重合体(C)の熱分解開始温度よりも15~20℃以上低いことが好ましい。乾燥温度は70~200℃の範囲にあることが好ましく、80~180℃の範囲にあることがより好ましく、90~160℃の範囲にあることがさらに好ましい。溶媒の除去は、常圧下又は減圧下のいずれで実施してもよい。また、後述する工程(III)における熱処理によって、溶媒を除去してもよい。
【0114】
層状の基材(X1)の両面に層(Y1c)を積層する場合の一例では、まず、コーティング液(T)を基材(X1)の一方の面に塗工した後、溶媒を除去することによって第1の層(第1の層(Y1c)の前駆体層)を形成する。次に、コーティング液(T)を基材(X1)の他方の面に塗工した後、溶媒を除去することによって第2の層(第2の層(Y1c)の前駆体層)を形成する。それぞれの面に塗工するコーティング液(T)の組成は同一であってもよいし、異なってもよい。
【0115】
[工程(III)]
工程(III)では、工程(II)で形成された前駆体層(層(Y1c)の前駆体層)を、210℃以上の温度で熱処理することによって層(Y1c)を形成する。
【0116】
工程(III)では、金属酸化物(A)の粒子同士がリン原子(リン化合物(D)に由来するリン原子)を介して結合される反応が進行する。別の観点では、工程(III)では、反応生成物(R)が生成する反応が進行する。該反応を充分に進行させ、目的とするバリア性を発現するためには、熱処理の温度は、210℃~230℃の範囲にあることが好ましく、215℃~225℃の範囲にあることがより好ましい。200℃以下では充分なバリア性能が得られない傾向となる。熱処理の温度の好ましい上限は、基材(X1)の種類などによって異なるが、ポリエステル系樹脂からなる熱可塑性樹脂フィルムを基材(X1)として用いる場合には、耐熱性の観点から熱処理の温度は230℃以下であることが好ましい。熱処理は、空気雰囲気下、窒素雰囲気下、アルゴン雰囲気下などで実施してもよい。
【0117】
熱処理の時間は、0.1秒~1時間の範囲にあることが好ましく、1秒~15分の範囲にあることがより好ましく、5~300秒の範囲にあることがさらに好ましい。
【0118】
本発明の方法は、層(Y1c)の前駆体層又は層(Y1c)に紫外線を照射する工程を含んでもよい。紫外線照射は、工程(II)の後(例えば塗工されたコーティング液(T)の溶媒の除去がほぼ終了した後)のいずれの段階で行ってもよい。その方法は特に限定されず、公知の方法を適用できる。照射する紫外線の波長は170~250nmの範囲にあることが好ましく、170~190nmの範囲及び/又は230~250nmの範囲にあることがより好ましい。また、紫外線照射に代えて、電子線やγ線などの放射線の照射を行ってもよい。紫外線照射を行うことによって、積層体(U1)のガスバリア性能がより高度に発現する場合がある。
【0119】
基材(X1)と層(Y1c)との間に接着層(H)を配置するために、コーティング液(T)を塗工する前に、基材(X1)の表面を公知のアンカーコーティング剤で処理したり、基材(X1)の表面に公知の接着剤を塗工したりしてもよい。その場合には、熟成処理を行うことが好ましい。具体的には、コーティング液(T)を塗工した後であって工程(III)の熱処理工程の前に、コーティング液(T)が塗工された基材(X1)を比較的低温下に長時間放置することが好ましい。具体的には、熟成処理の温度は110℃未満が好ましく、100℃以下がより好ましく、90℃以下がさらに好ましい。また、熟成処理の温度は、10℃以上が好ましく、20℃以上がより好ましく、30℃以上がさらに好ましい。一方、熟成処理の時間は、0.5~10日の範囲が好ましく、1~7日の範囲がより好ましく、1~5日の範囲がさらに好ましい。このような熟成処理を行うことによって、基材(X1)と層(Y1c)との間の接着力がより強固になる。
【0120】
[層(Z1)の製造方法]
層(Z1)を形成する場合、層(Y1)上にコーティング液(S)を塗工する工程を含んでいてもよい。
【0121】
[コーティング液(S)]
通常、コーティング液(S)は、重合体(BO)が溶媒に溶解された溶液である。コーティング液(S)は、重合体(BO)を溶媒に溶解することによって調製してもよい。また、重合体(BO)を製造した際に得られた溶液をそのまま使用してもよい。重合体(BO)の溶解性が低い場合には、加熱処理や超音波処理を施すことによって溶解を促進してもよい。
【0122】
コーティング液(S)に用いられる溶媒は、重合体(BO)の種類に応じて適宜選択すればよいが、水、アルコール類、又はそれらの混合溶媒であることが好ましい。重合体(BO)の溶解の妨げにならない限り、溶媒は、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トリオキサン、ジメトキシエタンなどのエーテル;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン;エチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、n-ブチルセロソルブなどのグリコール誘導体;グリセリン;アセトニトリル;ジメチルホルムアミドなどのアミド;ジメチルスルホキシド;スルホランなどを含んでもよい。
【0123】
コーティング液(S)は、層(Z)が含みうる上述したその他成分を含有していてもよい。
【0124】
コーティング液(S)における重合体(BO)の固形分濃度は、溶液の保存安定性や塗工性の観点から、0.01~60質量%の範囲にあることが好ましく、0.1~50質量%の範囲にあることがより好ましく、0.2~40質量%の範囲にあることがさらに好ましい。固形分濃度は、コーティング液(T)に関して記載する方法と同様の方法によって求めることができる。
【0125】
コーティング液(S)の保存安定性及び積層体(U1)のガスバリア性の観点から、コーティング液(S)のpHは0.1~6.0の範囲にあることが好ましく、0.2~5.0の範囲にあることがより好ましく、0.5~4.0の範囲にあることがさらに好ましい。コーティング液(S)のpHは、例えば、酸性化合物や塩基性化合物を添加することなどの公知の方法によって調整できる。
【0126】
また、コーティング液(S)は、必要に応じて、脱気及び/又は脱泡処理してもよい。脱気及び/又は脱泡処理の方法としては、例えば、減圧、加熱、遠心、超音波、などによる方法があるが、減圧を含む方法であることが好ましい。
【0127】
塗工される際のコーティング液(S)は、ブルックフィールド形回転粘度計(SB型粘度計:ローターNo.3、回転速度60rpm)で測定された粘度が、塗工時の温度において3,000mPa・s以下であることが好ましく、2,000mPa・s以下であることがより好ましい。該粘度が3,000mPa・s以下であることによって、コーティング液(S)のレベリング性が向上し、外観がより優れる真空断熱材を得ることができる。
【0128】
コーティング液(S)の粘度を調整する方法として、例えば、固形分の濃度を調整する、pHを調整する、粘度調節剤を添加する、といった方法を採用できる。本発明の効果が得られる限り、コーティング液(S)は、上述した他の物質を含んでもよい。
【0129】
コーティング液(S)を塗工する方法は特に限定されず、例えば、キャスト法、ディッピング法、ロールコーティング法、グラビアコート法、スクリーン印刷法、リバースコート法、スプレーコート法、キスコート法、ダイコート法、メタリングバーコート法、チャンバードクター併用コート法、カーテンコート法、バーコート法などの公知の方法を採用できる。
【0130】
通常、コーティング液(S)中の溶媒が除去されることによって、層(Z1)が形成される。コーティング液(S)の溶媒の除去方法は特に限定されず、例えば、熱風乾燥法、熱ロール接触法、赤外線加熱法、マイクロ波加熱法などの公知の乾燥方法を適用できる。乾燥温度は、基材(X1)の流動開始温度より0~15℃以上低いことが好ましい。乾燥温度は70~200℃の範囲にあることが好ましく、80~180℃の範囲にあることがより好ましく、90~160℃の範囲にあることがさらに好ましい。溶媒の除去は、常圧下又は減圧下のいずれで実施してもよい。また、工程(II)と工程(III)との間にコーティング液(S)を塗工する場合は、工程(III)における熱処理によって溶媒を除去してもよい。
【0131】
[接着層(H)]
本発明の積層体において、層(Y1)は、基材(X1)と直接接触するように積層されていてもよいが、基材(X1)と層(Y1)との間に配置された接着層(H)を介して層(Y1)が基材(X1)に積層されていてもよい。この構成によれば、基材(X1)と層(Y1)との接着性を高めることができる場合がある。当該接着剤としては、ポリイソシアネート成分とポリオール成分とを混合し反応させる二液反応型ポリウレタン系接着剤が好ましい。また、公知のシランカップリング剤などの少量の添加剤を加えることによって、さらに接着性を高めることができる場合がある。シランカップリング剤の好適な例としては、イソシアネート基、エポキシ基、アミノ基、ウレイド基、メルカプト基などの反応性基を有するシランカップリング剤を挙げることができる。基材(X1)と層(Y1)とを接着層(H)を介して強く接着することによって、本発明の真空断熱材のバリア性や外観の悪化をより効果的に抑制できる。
【0132】
基材(X1)と層(Y1)との間に接着層(H)を配置した場合、その厚さは0.03~0.18μmの範囲にあることが好ましい。接着層(H)の厚さは、0.04~0.14μmの範囲にあることがより好ましく、0.05~0.10μmの範囲にあることがさらに好ましい。
【0133】
[積層体(U2)]
積層体(U2)は、ポリビニルアルコール系樹脂からなる基材(X2)及び、前記基材(X2)の少なくとも一方の面にアルミニウム蒸着層(Y2)を有する積層体である。基材(X2)はガスバリア性が高い材料であるため、例えば、真空断熱材の製造工程で物理的ストレスを受けたとしても、品質安定性を保つことができる。また、層(Y2)は基材(X2)との親和性が良好であるため、層(Y2)の物理的ストレスによる破壊を低減できる。
【0134】
[基材(X2)]
積層体(U2)は、ポリビニルアルコール系樹脂からなる基材(X2)を有することで、優れたガスバリア性を示す。また、基材(X2)がポリビニルアルコール系樹脂から構成されることで、後述する蒸着層(Y2)との親和性が高まり、耐屈曲性が向上する。ポリビニルアルコール系樹脂としては、ビニルエステル単位がケン化されてなるビニルアルコール単位を有するものであればよく、例えば、ポリビニルアルコール(以下、PVAと略記することがある。)樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合体(以下、EVOHと略記することがある。)樹脂が挙げられる。
【0135】
本発明におけるPVA樹脂は、通常、ビニルエステル単独重合体をケン化することにより得ることができる。ビニルエステルの単独重合及びビニルエステル単独重合体のケン化は公知の方法により行うことができる。ビニルエステルとしては、酢酸ビニルが代表的であるが、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、ピバリン酸ビニル及びバーサティック酸ビニル等のその他の脂肪酸ビニルエステルであってもよい。
【0136】
本発明におけるPVA樹脂は、共重合変性されたPVA樹脂(以下、共重合変性PVA樹脂という)あるいは後変性された変性PVA樹脂(以下、後変性PVA樹脂という)であってもよい。
【0137】
本発明における共重合変性PVA樹脂は、ビニルエステルと、ビニルエステルと共重合可能な不飽和単量体を共重合させた後にケン化して製造されるものであり、その変性量は10モル%未満である。
【0138】
上記ビニルエステルと共重合可能な不飽和単量体としては、例えばエチレン、プロピレン、イソブチレン、α-オクテン、α-ドデセン、α-オクタデセン等のオレフィン類;3-ブテン-1-オール、4-ペンチン-1-オール、5-ヘキセン-1-オール等のヒドロキシ基含有α-オレフィン類及びそれらのアシル化物等の誘導体;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、ウンデシレン酸等の不飽和酸類、それらの塩、モノエステル、あるいはジアルキルエステル;アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のニトリル類;ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド類;エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸類あるいはそれらの塩;アルキルビニルエーテル類、ジメチルアリルビニルケトン、N-ビニルピロリドン、塩化ビニル、ビニルエチレンカーボネート、2,2-ジアルキル-4-ビニル-1,3-ジオキンラン、グリセリンモノアリルエーテル、3,4-ジアセトキシ-1-ブテン等のビニル化合物;酢酸イソプロペニル、1-メトキシビニルアセテート等の置換酢酸ビニル類;塩化ビニリデン、1,4-ジアセトキシ-2-ブテン、ビニレンカーボネート等が挙げられる。
【0139】
後変性PVA樹脂は、PVAをアセト酢酸エステル化、アセタール化、ウレタン化、エーテル化、グラフト化、リン酸エステル化、オキシアルキレン化する方法等によって得られる。
【0140】
PVA樹脂の重合度は1100以上が好ましく、1200以上がより好ましい。またPVA樹脂の重合度は、4000以下が好ましく、2600以下がより好ましい。PVA樹脂の重合度が1100以上であると得られる真空断熱材の機械的強度が良好になるため好ましい。一方、重合度が4000以下であると製膜及び延伸時の加工性が良好になるため好ましい。PVA樹脂の重合度は、JIS K 6726(1994)に記載の方法に従って測定できる。また、PVA樹脂のケン化度は90モル%以上が好ましく、95モル%以上がより好ましく、99モル%以上がさらに好ましい。また、PVA樹脂のケン化度は100モル%以下であっても、99.9モル%以下であってもよい。ケン化度が上記範囲内であることで、耐水性が向上し湿度に対するガスバリア性が良好になるため好ましい。PVA樹脂のケン化度は、JIS K 6726(1994)に記載の方法に従って測定できる。
【0141】
EVOH樹脂は、通常、エチレン-ビニルエステル共重合体をケン化することで得ることができる。エチレン-ビニルエステル共重合体の製造及びケン化は、公知の方法により行うことができる。ビニルエステルとしては酢酸ビニルが代表的であるが、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、ピバリン酸ビニル及びバーサティック酸ビニル等のその他の脂肪酸ビニルエステルであってもよい。EVOH樹脂のエチレン単位含有量は10モル%以上である。
【0142】
EVOH樹脂のビニルエステル成分のケン化度は90モル%以上が好ましく、95モル%以上がより好ましく、99モル%以上がさらに好ましい。ケン化度を90モル%以上とすることで、真空断熱材のガスバリア性を高めること等ができる。また、またEVOH樹脂のケン化度は100モル%以下であっても、99.99モル%以下であってもよい。EVOH樹脂のケン化度は、H-NMR測定を行い、ビニルエステル構造に含まれる水素原子のピーク面積と、ビニルアルコール構造に含まれる水素原子のピーク面積とを測定することにより求めることができる。
【0143】
EVOH樹脂のエチレン単位含有量は10モル%以上であり、15モル%以上がより好ましく、20モル%以上がさらに好ましく、25モル%以上が特に好ましい。また、EVOH樹脂のエチレン単位含有量は65モル%以下が好ましく、55モル%以下がより好ましく、50モル%以下がさらに好ましい。エチレン単位含有量が10モル%以上であると、フィルム等において高湿下におけるガスバリア性あるいは寸法安定性を良好に保つことができる。一方、エチレン単位含有量が65モル%以下であると、フィルム等においてガスバリア性を高めることができる。EVOH樹脂のエチレン単位含有量は、核磁気共鳴(NMR)法により求めることができる。
【0144】
EVOH樹脂は、加熱溶融時の安定性向上のために共重合成分としてビニルシラン化合物を0.0002~0.2モル%含有していてもよい。ビニルシラン化合物としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ(β-メトキシ-エトキシ)シラン、γ-メタクリルオキシプロピルメトキシシランが挙げられる。なかでも、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランが好適に用いられる。
【0145】
EVOH樹脂は、本発明の目的が阻害されない範囲で、他の不飽和単量体を共重合することもできる。他の不飽和単量体としては、前述したPVA樹脂で挙げられたビニルエステルと共重合可能な不飽和単量体を用いることができる。
【0146】
なお、EVOH樹脂が、異なる2種類以上のEVOHの混合物を含む場合には、配合質量比から算出されるそれぞれのエチレン単位含有量又はケン化度を、EVOH樹脂のエチレン単位含有量又はケン化度とする。
【0147】
EVOH樹脂は、熱安定性あるいは粘度調整の観点からカルボン酸、リン酸等の酸;アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等の金属塩;ボロン酸やその塩、ボロン酸エステル等のホウ素化合物等の添加物を含有していることが好ましい。
【0148】
基材(X2)の形状は、フィルム状であることが好ましい。かかるフィルムの製造方法は公知のものを使用でき、例えば、ドラム、エンドレスベルト等の金属面上に、ポリビニルアルコール系樹脂の溶液を流延してフィルムを形成する流延式成形法、あるいは押出機により溶融押出する溶融成形法が挙げられる。
【0149】
基材(X2)としては、寸法安定性及びガスバリア性の観点より二軸延伸フィルムが好ましい。延伸倍率としては、厚さの均一性、バリア性、機械物性及び成膜性の観点から、縦方向(MD方向)が2.5倍以上4.5倍以下、横方向(TD方向)が2.5倍以上4.5倍以下、かつ面延伸倍率として7倍以上15倍以下の範囲が好ましく、縦方向が2.5倍以上3.5倍以下、横方向が2.5以上3.5倍以下、かつ面延伸倍率として8倍以上12倍以下がより好ましい。かかる延伸処理方法は、通常行われる同時二軸延伸、逐次二軸延伸等公知の方法に従い行うことができる。
【0150】
基材(X2)としては、二軸延伸PVA樹脂フィルム及び二軸延伸EVOH樹脂フィルム等を好適に使用でき、二軸延伸EVOH樹脂フィルムがより好ましい。
【0151】
基材(X2)の厚さは特に制限されないが、工業的な生産性の観点から5μm以上が好ましく、8μm以上がより好ましく、10μm以上がさらに好ましい。また、基材(X2)の厚さは100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましく、40μm以下がさらに好ましく、30μm以下が特に好ましい。
【0152】
[層(Y2)]
層(Y2)はアルミニウムからなる蒸着層である。層(Y2)の態様は好適な平均厚み以外は層(Y1a)と同様である。層(Y2)の平均厚みは20nm以上が好ましく、40nm以上がより好ましく、60nm以上がさらに好ましい。また層(Y2)の平均厚みは150nm以下が好ましく、120nm以下がより好ましく、100nm以下がさらに好ましい。層(Y2)の平均厚みが20nm以上であるとバリア性が安定的に発現する傾向があり、一方、平均厚みが150nm以下であると生産性が向上するため好ましい。
【0153】
[真空断熱材]
本発明の真空断熱材は、真空包装袋と、該真空包装袋により囲まれた内部に配置された芯材とを備え、その内部が減圧されている。本発明の真空断熱材においては、真空包装袋内の空間部は真空状態にある。ここでいう真空状態とは必ずしも絶対的な真空状態を意味せず、真空包装袋内の空間部の圧力が大気圧より充分に低いことを示す。内部圧力は、必要な性能と製造の容易さ等から決定されるが、通常、断熱性能を発揮させるためには2kPa(約15Torr)以下である。本発明の真空断熱材の断熱効果を充分に発現させるためには、真空包装袋の内部圧力は200Pa以下が好ましく、20Pa以下がより好ましく、2Pa以下がさらに好ましい。真空包装袋内の空間部の圧力は0.001Pa以上であってもよい。
【0154】
前記真空断熱材の製造直後の熱伝導率は3.0mW/(m・K)以下が好ましく、2.5mW/(m・K)以下がより好ましい。一方、上記製造直後の熱伝導率は、1.0mW/(m・K)以上が好ましく、1.2mW/(m・K)以上がより好ましい。上記熱伝導率が3.0mW/(m・K)を超えると、真空断熱材の断熱性能が不十分となるおそれがある。上記熱伝導率が1.0mW/(m・K)以上であると、比較的低コストで良好な断熱性能を有する真空断熱材を得ることができる。前記真空断熱材の70℃、90%RHの恒温恒湿器に30日間保管後に測定した後の熱伝導率は6.5mW/(m・K)以下が好ましく、6.0mW/(m・K)以下がより好ましい。一方、上記70℃、90%RHの恒温恒湿器に30日間保管後に測定した後の熱伝導率は、1.0mW/(m・K)以上が好ましく、1.2mW/(m・K)以上がより好ましい。ここで、「熱伝導率」とは、JIS A 1412-1(1999)に準拠し測定される値である。
【0155】
本発明の真空断熱材は、通常行なわれている方法によって製造できる。使用目的等に応じ、任意の形状及び大きさの真空断熱材を形成できる。例えば、以下の方法1~3によって本発明の真空断熱材を製造できる。
(方法1)まず、少なくとも一方の表面にヒートシール性を有する層(例えば、ポリオレフィン層)が配置された、四角形の積層体(U1)及び(U2)を備えるラミネート体を2枚用意する。その2枚のラミネート体を、各々のヒートシール性を有する層が内側となるように重ね合わせ、任意の3辺をヒートシールして真空包装袋を作製する。次に、前記真空包装袋の内部に芯材を充填する。次に、前記真空包装袋の内部の空間を真空状態にし、そのままの状態で最後の辺をヒートシールする。このようにして真空断熱材が得られる。
(方法2)まず、1枚のラミネート体をヒートシール性を有する層が内側となるように折り曲げ、任意の2辺をヒートシールして真空包装袋を作製する。次に、前記真空包装袋の内部に芯材を充填する。次に、前記真空包装袋の内部の空間を真空状態にし、そのままの状態で最後の辺をヒートシールする。このようにして真空断熱材が得られる。
(方法3)まず、2枚のラミネート体で芯材を挟むか、又はラミネート体を折り曲げるようにして芯材を挟む。次に、ラミネート体が重なっている周縁部を、真空排気口を残してヒートシールして内部に芯材が配置された真空包装袋を作製する。次に、前記真空包装袋の内部の空間を真空状態にし、そのままの状態で真空排気口をヒートシールする。このようにして真空断熱材が得られる。
【0156】
[真空包装袋]
真空包装袋は、内部を減圧して用いられる包装材であり、内部と外部とを隔てる隔壁としてフィルム材を備えている。本発明の真空包装袋は、積層体(U1)及び(U2)と該積層体以外の他の部材(例えば熱可塑性樹脂フィルム層、紙層等の他の層など)から構成されるラミネート体を備えている。また、真空包装袋は、該ラミネート体を1つ含むものであってもよく、複数含むものであってもよい。他の部材(他の層など)を有する真空包装袋は、当該他の部材(他の層など)を接着層(H)を介して積層体(U1)又は積層体(U2)に接着することによって製造できる。真空包装袋がこのような他の部材(他の層など)を備えることで、真空包装袋の特性を向上させたり新たな特性を付与できる。例えば、本発明の真空包装袋にヒートシール性を付与したり、バリア性や力学的特性をさらに向上できる。
【0157】
特に、真空包装袋の表面層をポリオレフィン層(以下、PO層と略すことがある)とすると、真空包装袋にヒートシール性を付与し、真空包装袋の力学的特性を向上できるため好ましい。ヒートシール性や力学的特性をより一層向上させる観点から、ポリオレフィンはポリプロピレン又はポリエチレンであることが好ましい。また、真空包装袋の力学的特性を向上させるために、他の層として、二軸延伸ポリプロピレンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム及びポリビニルアルコール系フィルムからなる群より選ばれる少なくとも1つのフィルムを積層体(U1)及び/又は(U2)に積層することが好ましい。力学的特性の向上の観点から、ポリエステルとしてはポリエチレンテレフタレート(PET)が好ましく、ポリアミドとしてはナイロン-6が好ましく、ポリビニルアルコールとしてはエチレン-ビニルアルコール共重合体が好ましい。特にピンホール耐性を高める観点から、ポリアミドフィルムを備えていることが好ましい。特にピンホール耐性をより高める観点から、ポリアミドフィルムを介して積層体(U1)と積層体(U2)とが積層されていることがより好ましい。具体的には、積層体(U1)の基材(X1)と反対側の層と、積層体(U2)の層(Y2)とがポリアミド系樹脂からなる層を介して積層されていることが好ましい。水分透過性の高いポリアミドフィルムを介することで、積層体(U1)とポリアミドフィルム間の接着層(H)の保水量が低下し、高温高湿条件下、積層体(U1)と接着層(H)間のデラミネーションを抑制できる。また、積層体(U1)と積層体(U2)との間に他の層を介することで、ラミネート後に接着層(H)に発生する気泡を抑えることができる。接着層中の気泡はデラミネーションや蒸着層へのダメージにつながることがある。
【0158】
積層体(U1)と積層体(U2)との間、又は他の部材との間に接着層(H)を配置した場合、その厚さは1.0~10.0μmの範囲にあることが好ましい。接着層(H)の厚さは、2.0~7.0μmの範囲にあることがより好ましく、3.0~5.0μmの範囲にあることがさらに好ましい。
【0159】
本発明の真空断熱材に用いられる真空包装袋は、例えば、真空断熱材の外側となる層から内側となる層に向かって、以下の構成を有していてもよい。例えば、下記(1)では、積層体(U1)が最外層である。積層体(U1)と積層体(U2)の向きは限定されないが、積層体(U1)を最外層に用いる場合は、層(Y1)が内側に向かって積層された方が、外部からのバリア層のダメージを防ぐ観点から好ましい。また積層体(U2)は基材(X2)をアルミニウム蒸着層(Y2)よりも内側に備える方が、ポリビニルアルコール系樹脂層の吸湿による膨張に起因する蒸着層のクラック発生を防ぐ観点から好ましい。そのため、積層体(U1)と積層体(U2)を積層する場合、外側から、基材(X1)/層(Y1)//アルミニウム蒸着層(Y2)/基材(X2)という構成がより好ましい。
(1)積層体(U1)//積層体(U2)//PO層、
(2)ポリエステル層//積層体(U1)//積層体(U2)//PO層、
(3)ポリアミド層//積層体(U1)//積層体(U2)//PO層、
(4)PO層//積層体(U1)//積層体(U2)//PO層、
(5)積層体(U1)//PO層//積層体(U2)//PO層、
(6)積層体(U1)//ポリアミド層//積層体(U2)//PO層、
(7)積層体(U1)//積層体(U2)//積層体(U2)//PO層、
(8)積層体(U1)//積層体(U1)//積層体(U2)//PO層、
(9)積層体(U1)//積層体(U2)//積層体(U1)//PO層、
(10)積層体(U1)//積層体(U1)//ポリアミド層//積層体(U2)//PO層。
【0160】
高温高湿条件で使用する場合、積層体(U1)は最外層にあることが好ましい。最外層に設けることで、積層体(U2)のバリア性の低下を防止するだけでなく、内側に有するフィルムの加水分解などによる物性の低下を抑制できる。例えば、ポリアミド層は力学的特性を高めるのに好ましいが、高温高湿下において吸湿によりデラミネーションなどの外観不良を起こす可能性がある。水蒸気バリア性の高い積層体(U1)をポリアミド層の外側に設けることで、デラミネーション等の不良を抑制できる。さらに、積層体(U1)を2つ以上備えることが、高温高湿条件での使用及び保管時の長期信頼性に優れる真空断熱材を提供する観点から好ましい。
【0161】
[芯材]
本発明の真空断熱材に使用される芯材は、断熱性を有するものである限り特に制限はない。例えば、芯材として、パーライト粉末、シリカ粉末、沈降シリカ粉末、ケイソウ土、ケイ酸カルシウム、ガラスウール、ロックウール、及び樹脂の発泡体(例えばスチレンフォームやウレタンフォーム)などが例示できる。また、芯材として、樹脂や無機材料製の中空容器や、ハニカム状構造体などを使用してもよい。また、必要に応じて、水蒸気やガスなどを吸着する吸着材を芯材に含んでもよい。
【0162】
[用途]
本発明の真空断熱材は、保冷あるいは保温が必要な各種用途に使用できる。特に、前記真空断熱材は、高温あるいは高湿下で使用される場合にも、断熱性能の経時的な劣化が極めて起こり難く、断熱材として充分な耐用期間を有するため、給湯機用タンク、温水トイレ用タンク、自動販売機用タンク、燃料電池用タンク、自動車用タンク、食品等の保温用バッグ、温かいペットボトルあるいは缶の保温用、洗濯機のドラムの保温用、コーヒー、お茶等のサーバー、ジャーポットといった断熱性を必要とするあらゆる保温の用途にも有用である。
【実施例
【0163】
以下に、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって何ら限定されない。なお、実施例において積層体(U1)を含むラミネート体を作製した場合、積層体(U1)の向きは、表1の「構成」に記載の順で積層されている。また、積層体(U2)及び積層体(U2’)の向きは表1の注釈に記載の順で積層されている。
【0164】
<実施例で使用する材料>
・「CPP RXC-18(商品名)」:三井化学東セロ株式会社製、無延伸ポリプロピレンフィルム、厚さ50μm、「CPP」と略記する場合がある
・「クラレポバール(登録商標) PVA124(商品名)」:株式会社クラレ製、ポリビニルアルコール樹脂
・「PEG-20000(商品名)」:三洋化成工業株式会社製、ポリエチレングリコール
・「ルミラー(登録商標)P60(商品名)」:東レ株式会社製、二軸延伸ポリエステルフィルム、厚さ12μm、「OPET」と略記する場合がある
・「VM-XL(商品名)」:株式会社クラレ製、アルミニウム蒸着二軸延伸エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルム、厚さ12μm、「積層体(U2)」と略記する場合がある
・「ユニラックス(登録商標)LS-760C(商品名)」:出光ユニテック株式会社製、直鎖状低密度ポリエチレン、「LLDPE」と略記する場合がある
・「タケラックA520(商品名)」「タケネートA50(商品名)」:三井化学株式会社製、ウレタン系二液型接着剤
・「エンブレム(登録商標)ON-BC(商品名)」:ユニチカ株式会社製、延伸ポリアミドフィルム、厚さ15μm、「ONY」と略記する場合がある
・「EF-XL(商品名)」:株式会社クラレ製、二軸延伸エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルム、厚さ12μm
・「OP U-2(商品名)」:三井化学東セロ株式会社製、二軸延伸ポリプロピレンフィルム、厚さ20μm、「OPP」と略記する場合がある
【0165】
<測定方法>
層(Y1)、層(Z1)の平均厚み測定
作製例で得られた積層体(U1)を、収束イオンビーム(FIB)を用いて切削し、断面観察用の切片を作製した。作製した切片を試料台座にカーボンテープで固定し、加速電圧30kVで30秒間白金イオンスパッタを行った。積層体(U1)の断面を、電界放出形透過型電子顕微鏡を用いて観察し、各層の平均厚みを算出した。測定条件は以下の通りとした。
装置:日本電子株式会社製JEM-2100F
加速電圧:200kV
倍率:250,000倍
【0166】
(2)層(Y1)の赤外線吸収スペクトル
実施例で形成される層(Y1)の赤外線吸収スペクトルは、以下の方法で測定した。
まず、基材(X1)上に積層した層(Y1)について、フーリエ変換赤外分光光度計(Perkin Elmer社製、「Spectrum One」)を用いて、赤外線吸収スペクトルを測定した。赤外線吸収スペクトルは、ATR(全反射測定)のモードで、700~4000cm-1の範囲で測定した。層(Y1c)の厚さが1μm以下である場合には、ATR法による赤外線吸収スペクトルでは基材(X1)由来の吸収ピークが検出され、層(Y1)のみに由来する吸収強度を正確に求めることができない場合がある。このような場合には、基材(X1)のみの赤外線吸収スペクトルを別途測定し、それを差し引くことで層(Y1)由来のピークのみを抽出した。
【0167】
(3)積層体(U1)の水蒸気透過度
無延伸ポリプロピレンフィルム(「CPP RXC-18(商品名)」三井化学東セロ株式会社製、厚さ50μm、以下「CPP」と略記する場合がある)に、2液型の接着剤(三井化学社製タケラックA520、同社製タケネートA50及び酢酸エチルを質量比で6:1:9.3に混合した液)を乾燥膜厚が4μmとなるように塗工し、作製例で得られた積層体(U1)とのラミネート体「積層体(U1)//CPP」を作製した。具体的には、基材(X1)が最外層となるようにラミネートした。ラミネート体を裁断し、サイズが12cm×12cmであるラミネート体を2枚得た。その2枚のラミネート体をCPP層同士が内面となるように重ね合わせ、3方を10mm幅でヒートシールした後、袋内に塩化カルシウムを詰めて、残りの一辺をシールし、ラミネート袋を作製した。得られたラミネート袋を70℃、90%RHの恒温恒湿装置に入れ、一日間隔でラミネート袋を取り出し、秤量する操作を繰り返し、質量増加量を測定した。5日目の質量増加量を基に算出する水蒸気透過度が安定するため、そのときの水蒸気透過度を水蒸気透過度(Ws)とした。
水蒸気透過度(g/(m・day))=質量増加量(g)/(フィルムの表面積(m)・保管時間(day))
また、ラミネート袋を70℃、90%RHの恒温恒湿器に30日間保管後に測定した後、同様な方法で水蒸気透過度(Wf)を測定した。
【0168】
(4)ゲルボフレックス試験後のラミネート体の酸素透過度
実施例及び比較例で得られたラミネート体が物理的ストレスを受けた場合のガスバリア性について、耐屈曲性に関するゲルボフレックス試験前後の酸素透過度を測定し、評価した。具体的には、作製したラミネート体を210mm×297mmにカットし、23℃、50%RHに調湿した。調湿されたフィルムを用い、同一雰囲気下で、直径3.5インチの円筒状にして、ゲルボフレックステスター(理学工業(株)製)に両端を固定し、初期間隔7インチ、最大屈曲時の間隔1インチ、ストロークの最初の3.5インチで440度の角度のひねりを加え、その後の2.5インチは直線水平動である動作の繰り返し往復動を3回行った。酸素透過度は、酸素透過量測定装置(MOCON社製「OX-TRAN2/20」)を用いて測定した。具体的には、キャリアガス側にシーラント(LLDPE)が向くようにラミネート体をセットし、温度が40℃、酸素供給側の湿度が90%RH、キャリアガス側の湿度が0%RH、酸素圧が1atm、キャリアガス圧力が1atmの条件下で酸素透過度(単位:ml/(m・day・atm))を測定した。キャリアガスとしては2体積%の水素ガスを含む窒素ガスを使用した。
【0169】
(5)ラミネート体の外観
ラミネート体の外観を、目視によって下記のように評価した。
A:気泡等は確認されない。
B:接着層中に気泡が確認される。
【0170】
(6)真空断熱材のピンホール発生率
実施例及び比較例で得られた真空断熱材を100個作製し、作製直後の熱伝導率が10mW/(m・K)以上であった真空断熱材の数からピンホール発生率を算出した。
【0171】
(7)真空断熱材の熱伝導率
実施例及び比較例で得られた真空断熱材を70℃、90%RHでそれぞれ一定期間保管した後、熱伝導率測定装置(英弘精機株式会社製HC-074/600)を用い、真空断熱材の一方の側を35℃とし、他方の面側を10℃とすることで真空断熱材の熱伝導率を測定した。真空断熱材を作製した直後と、70℃、90%RHの恒温恒湿器に15日間、30日間それぞれ保管後に測定した。
【0172】
(8)真空断熱材の外観
70℃、90%RHの恒温恒湿器に、15日間、21日間、30日間保管した後の真空断熱材の外観を、目視によって下記のように評価した。
A:保管前とほとんど変化が見られない
B:気泡、デラミネーション、色ムラなどの変化が見られた
【0173】
<積層体(U1)の作製例>
[作製例1-1]
「ルミラー(登録商標)P60(商品名)」(OPET)(以下「基材(X1-1)」と略記する場合がある)を基材(X1)として用い、バッチ式蒸着装置(株式会社アルバックの「EWA-105」)を用い、アルミニウムを溶融、蒸発させることで基材(X1)の一方の面に100nmのアルミニウム蒸着層(Y1-1)を有する積層体(U1-1)を得た。
【0174】
[作製例1-2]
蒸留水230質量部を撹拌しながら70℃に昇温した。その蒸留水に、アルミニウムイソプロポキシド88質量部を1時間かけて滴下し、液温を徐々に95℃まで上昇させ、発生するイソプロパノールを留出させることによって加水分解縮合を行った。得られた液体に、60質量%の硝酸水溶液4.0質量部を添加し、95℃で3時間撹拌することによって加水分解縮合物の粒子の凝集体を解膠させた。その後、その液体を、固形分濃度が酸化アルミニウム換算で10質量%になるように濃縮した。こうして得られた分散液18.66質量部に対して、蒸留水58.19質量部、メタノール19.00質量部、及び5質量%のポリビニルアルコール水溶液0.50質量部を加え、均一になるように撹拌することによって、分散液を得た。続いて、液温を15℃に維持した状態で分散液を撹拌しながら85質量%のリン酸水溶液3.66質量部を滴下して加え、粘度が1,500mPa・sになるまで15℃で撹拌を続け、目的のコーティング液(T-1)を得た。該コーティング液(T-1)における、アルミニウム原子とリン原子とのモル比は、アルミニウム原子:リン原子=1.15:1.00であった。基材(X1-1)上に、乾燥後の厚さが0.5μmになるようにバーコーターによって溶液(T-1)をコートしたのち、110℃で5分間乾燥した後、210℃で1分間の熱処理を施し層(Y1-2)を形成させ、積層体(U1-2)を得た。層(Y1-2)の赤外線吸収スペクトルを上記(2)に従って測定したところ、最大吸収波数は1108cm-1であった。
【0175】
[作製例1-3]
熱処理温度を220℃に変更したこと以外は作製例1-2と同様の方法で層(Y1-3)を形成させ、積層体(U1-3)を得た。
【0176】
[作製例1-4]
窒素雰囲気下、ビニルホスホン酸10g及び2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)2塩酸塩0.025gを水5gに溶解させ、80℃で3時間撹拌した。冷却後、重合溶液に水15gを加えて希釈し、セルロース膜であるスペクトラムラボラトリーズ社製の「Spectra/Por」(登録商標)を用いてろ過した。ろ液中の水を留去した後、50℃で24時間真空乾燥することによって、ポリ(ビニルホスホン酸)を得た(BO1)。GPC分析の結果、該重合体の数平均分子量はポリエチレングリコール換算で10,000であった。該重合体に水とメタノールの混合溶媒(質量比で水:メタノール=7:3)に溶解させ、固形分濃度が1質量%のコーティング液(S-1)を得た。積層体(U1-3)の層(Y1-3)上に、バーコーターによってコーティング液(S-1)をコートしたのち、110℃で3分間乾燥させて、平均厚み0.03μmの層(Z1-1)を形成させ、基材(X)/層(Y1-3)/層(Z1-1)からなる積層体(U1-4)を得た。
【0177】
[作製例1-5]
作製例1-4で合成したポリビニルホスホン酸(BO1)を70質量%、ポリビニルアルコール(「クラレポバール(登録商標)PVA124(商品名)」、株式会社クラレ製)を30質量%含む混合物を準備した。この混合物を、水とメタノールの混合溶媒(質量比で水:メタノール=7:3)に溶解させ、固形分濃度が1質量%のコーティング液(S-2)を得た。積層体(U1-1)の層(Y1-1)上に、バーコーターによってコーティング液(S-2)をコートしたのち、110℃で3分間乾燥させて、乾燥後の平均厚み0.03μmの層(Z1-2)を形成させ、基材(X)/層(Y1-1)/層(Z1-2)からなる積層体(U1-5)を得た。
【0178】
[作製例1-6]
作製例1-4で合成したポリビニルホスホン酸(BO1)を70質量%、重量平均分子量20,000のポリエチレングリコール(「PEG-20000(商品名)」三洋化成工業株式会社製)を30質量%含む混合物を準備した。この混合物を、水とメタノールの混合溶媒(質量比で水:メタノール=7:3)に溶解させ、固形分濃度が1質量%のコーティング液(S-3)を得た。積層体(U1-3)の層(Y1-3)上に、バーコーターによってコーティング液(S-3)をコートしたのち、110℃で3分間乾燥させて平均厚み0.03μmの層(Z1-3)を形成させ、積層体(U1-6)を得た。
【0179】
[作製例1-7]
アルミニウムの平均厚みを40nmにした以外は作製例1-1と同様の方法で層(Y1-4)を形成させ、積層体(U1-7)を得た。なお、積層体(U1-7)はWfが2.5g/(m/day)であり、本発明の積層体(U1)に該当するものではない。
【0180】
[作製例1-8]
酸素を導入しながらアルミを溶融、蒸発させることで、基材(X1-1)の一方の面に酸化アルミニウム蒸着層を形成した以外は作製例1-1と同様の方法で層(Y1-5)を形成させ、積層体(U1-8)を得た。なお、積層体(U1-8)はWfが1.7g/(m/day)であり、本発明の積層体(U1)に該当するものではない。
【0181】
[作製例1-9]
熱処理温度を200℃に変更したこと以外は作製例1-2と同様の方法で層(Y1-6)を形成させ、積層体(U1-9)を得た。なお、積層体(U1-9)はWfが1.2g/(m/day)であり、本発明の積層体(U1)に該当するものではない。
【0182】
作製例1-1~1-9で得られた積層体(U1-1)~積層体(U1-9)について、上記(3)記載の方法に従い水蒸気透過度を測定した。
【0183】
<積層体(U2)の作製例>
二軸延伸エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルム(「EF-XL(商品名)」株式会社クラレ製)を基材(X2)として用いたこと以外は作製例1-8と同様な方法で層(Y2-2)を形成させ、積層体(U2-2)を得た。
【0184】
<実施例及び比較例>
[実施例1]
積層体(U2)として、アルミ蒸着二軸延伸エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルム(「VM-XL(商品名)」株式会社クラレ製)を準備した。厚さ50μmの無延伸LLDPE(「ユニラックス(登録商標)LS-760C(商品名)」出光ユニテック株式会社製)と積層体(U1-1)と積層体(U2)とを2液型の接着剤(三井化学社製タケラックA520、同社製タケネートA50及び酢酸エチルを質量比で6:1:9.3に混合した液)を接着層の乾燥膜厚が4μmとなるように塗工し、層(U1-1)/接着層/積層体(U2)/接着層/LLDPE層からなるラミネート体を作製した。得られたラミネート体の評価を上記(4)の方法に従い評価した。
【0185】
得られたラミネート体を裁断し、サイズが50cm×50cmである被覆材を2枚得た。その2枚のラミネート体をLLDPE層同士が内面となるように重ね合わせ、3方を10mm幅でヒートシールして3方袋である真空包装袋を作製した。
【0186】
得られた真空包装袋の開口部から断熱性の芯材及び吸着材として酸化カルシウム入り小袋を充填し、真空断熱パネル製造装置(株式会社エヌ・ピー・シー製KT-500RD型)を用い、20℃で内部圧力2.0Paの状態で真空包装袋を密封することによって、真空断熱材を作製した。断熱性の芯材には、160℃の雰囲気下で1時間乾燥したガラスファイバーを用いた。得られた真空断熱材の評価を上記(7)~(8)の方法に従い評価した。
【0187】
[実施例2~13、比較例1~9]
表1に示した通りのラミネート体を作製した以外は、実施例1と同様の方法でラミネート体及び真空断熱材を作製し評価を行った。また、実施例3~8、10及び13で得られたラミネート体については、上記(5)の方法に従い気泡の発生についての評価を行った。また、実施例5~7、10及び13並びに比較例8で得られた真空断熱材については、上記(6)の方法に従いピンホール発生率の評価を行った。
【0188】
【表1】
【0189】
【表2】
【0190】
実施例1~13で得られた真空断熱材は比較例1~9で得られた真空断熱材と比較して熱伝導率の経時変化が小さく、真空断熱材が元来有するバリア性が高いレベルで維持されていることが示唆される。積層体(U2)を用いない場合、積層体(U1)は真空時のダメージによりガスバリア性が低下し、熱伝導率の増加が確認される。また積層体(U1)を用いない場合は積層体(U2)を用いたとしても、積層体(U2)の吸湿によるガスバリア性の低下による熱伝導率の増加が確認される。層(Y1c)の熱処理温度が低い場合、アルミニウムを含む金属酸化物(A)と無機リン化合物(BI)とが反応が不十分となり、水と親和性の高い極性基が存在することにより積層体(U1)の水蒸気バリア性の低下が確認される。積層体(U1)と積層体(U2)を用い、積層体(U2)の外側に水蒸気バリア性の高い積層体(U1)を設けることで高温高湿下においても高いガスバリア性が維持でき、真空断熱材は優れた熱伝導率を維持できる。
【産業上の利用可能性】
【0191】
以上説明したように、本発明のラミネート体を用いた真空断熱材は、特に高温高湿条件下で使用する場合にも、長期に亘り優れた断熱性能を保持できる。