(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-30
(45)【発行日】2022-10-11
(54)【発明の名称】スーパーキャパシタ
(51)【国際特許分類】
H01G 11/00 20130101AFI20221003BHJP
H01G 11/46 20130101ALI20221003BHJP
H01G 11/56 20130101ALI20221003BHJP
H01G 11/68 20130101ALN20221003BHJP
【FI】
H01G11/00
H01G11/46
H01G11/56
H01G11/68
(21)【出願番号】P 2019534580
(86)(22)【出願日】2018-08-02
(86)【国際出願番号】 JP2018029042
(87)【国際公開番号】W WO2019027002
(87)【国際公開日】2019-02-07
【審査請求日】2021-04-06
(31)【優先権主張番号】P 2017151014
(32)【優先日】2017-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】303058328
【氏名又は名称】東芝マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】角嶋 邦之
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 敦也
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 亮人
(72)【発明者】
【氏名】平林 英明
(72)【発明者】
【氏名】片岡 好則
【審査官】田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-349503(JP,A)
【文献】特開2017-059455(JP,A)
【文献】特開2008-084708(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 11/00
H01G 11/46
H01G 11/56
H01G 11/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
格子間に酸素イオンを貯蔵できる金属酸化物層と、酸素導電する金属酸化物層と、酸素供給源となる金属酸化物層との3層構造を有
し、
前記格子間に酸素イオンを貯蔵できる金属酸化物層が含む金属酸化物は、酸化ランタン、酸化ハフニウム、酸化ジルコニウムからなる群より選ばれる1種以上であり、前記酸素導電する金属酸化物層が含む金属酸化物は、酸化セリウム、イットリウム安定化ジルコニアからなる群より選ばれる1種以上であり、前記酸素供給源となる金属酸化物層が価数揺動系である金属酸化物を含み、
電圧印加により前記格子間に酸素イオンを貯蔵できる金属酸化物層と前記酸素供給源となる金属酸化物層の間を酸素イオンが前記酸素導電する金属酸化物層を介して移動することにより充放電が可能であり、
前記酸素導電する金属酸化物層の厚さは、前記格子間に酸素イオンを貯蔵できる金属酸化物層の厚さおよび前記酸素供給源となる金属酸化物層の厚さよりも薄い、スーパーキャパシタ。
【請求項2】
前記酸素供給源となる金属酸化物層が含む金属酸化物は、酸化プラセオジム、酸化テルビウムからなる群より選ばれる1種以上である、請求項
1に記載のスーパーキャパシタ。
【請求項3】
前記格子間に酸素イオンを貯蔵できる金属酸化物層および前記酸素供給源となる金属酸化物層にそれぞれ設けられる電極をさらに具備し、前記電極がタングステンを主成分とする、請求項1
又は請求項2に記載のスーパーキャパシタ。
【請求項4】
前記格子間に酸素イオンを貯蔵できる金属酸化物層または前記酸素供給源となる金属酸化物層は酸素欠損を有していない、請求項1ないし請求項
3のいずれか1項に記載のスーパーキャパシタ。
【請求項5】
前記酸素導電する金属酸化物層は酸化セリウムを含み、前記酸素導電する金属酸化物層には4価のセリウムと3価のセリウムとが存在する、請求項1ないし請求項
4のいずれか1項に記載のスーパーキャパシタ。
【請求項6】
前記酸素導電する金属酸化物層は酸素欠損を有している、請求項1ないし請求項
5のいずれか1項に記載のスーパーキャパシタ。
【請求項7】
前記酸素導電する金属酸化物層は、セリウム以外の希土類元素を含有している、請求項1ないし請求項
6のいずれか1項に記載のスーパーキャパシタ。
【請求項8】
前記格子間に酸素イオンを貯蔵できる金属酸化物層の表面および前記酸素供給源となる金属酸化物層の表面にバリア層をそれぞれ有する、請求項1ないし請求項
7のいずれか1項に記載のスーパーキャパシタ。
【請求項9】
前記バリア層が、酸化珪素または酸化アルミニウムを含む、請求項
8記載のスーパーキャパシタ。
【請求項10】
前記酸素導電する金属酸化物層の厚さは10μm以下である、請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載のスーパーキャパシタ。
【請求項11】
前記格子間に酸素イオンを貯蔵できる金属酸化物層の膜厚は30μm以上であり、前記酸素導電する金属酸化物層の厚さは10μm以下であり、前記酸素供給源となる金属酸化物層の膜厚は30μm以上である、請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載のスーパーキャパシタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、概ね、スーパーキャパシタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気機器の普及、省エネルギーの観点から電気を効率的に活用することが求められている。これに伴い、電気を充放電できる二次電池の開発が進められている。二次電池としては、Liイオン二次電池、鉛蓄電池、ニッケル水素蓄電池など様々なものが開発されている。例えば、特開2001-338649(特許文献1)にはLi複合酸化物を正極活物質に使ったLiイオン二次電池が開示されている。Liイオン二次電池は、小型化も可能であることから電気機器の電池として活用されている。
【0003】
一方、Liイオン二次電池は、電解液を介してLiイオンを出し入れする構造を有する電池である。そのため、電解液を必須とした電池である。鉛蓄電池やニッケル水素蓄電池も同様に電解液を必須とした電池である。電解液が漏れると火災や爆発の原因となる。このため、Liイオン二次電池では、液漏れを起こさないように密閉構造をとっている。しかしながら、長期使用による劣化、電気機器の使い方、使用環境によって液漏れが発生してしまうといった問題が生じていた。
【0004】
また、特開2003-123737号公報(特許文献2)には、Liイオン電池やスーパーキャパシタ用の電極材料が開示されている。Liイオン電池は電極での化学反応によって電気エネルギーを蓄えるものである。それに対し、キャパシタはイオン分子が電荷を蓄える構造である。このため、キャパシタは充放電時の劣化がLiイオン電池よりも低いため長寿命にできると考えられている。その一方で、特許文献2ではスーパーキャパシタであっても電解液を使用していた。このため、液漏れの問題が生じていた。
【0005】
このような液漏れによる不具合を無くすために固体電解質電池の開発が進められている。例えば、特開2007-48653号公報(特許文献3)には、酸化セリウム(CeO2)を使った固体電解質を用いた燃料電池セルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2001-338649号公報
【文献】特開2003-123737号公報
【文献】特開2007- 48653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
酸化セリウムは酸化物イオン導電特性を有することから、固体電解質電池の電極材料に適している。その一方で、固体電解質電池として更なる向上を求める要望があった。
【0008】
本発明に係る実施形態は、このような課題を解決するためのものであり、高容量化をなしえたスーパーキャパシタを提供するためのものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態にかかるスーパーキャパシタは、格子間に酸素イオンを貯蔵できる金属酸化物層と、酸素導電する金属酸化物層と、酸素供給源となる金属酸化物層との3層構造を有する。格子間に酸素イオンを貯蔵できる金属酸化物層が含む金属酸化物は、酸化ランタン、酸化ハフニウム、酸化ジルコニウムからなる群より選ばれる1種以上である。酸素導電する金属酸化物層が含む金属酸化物は、酸化セリウム、イットリウム安定化ジルコニアからなる群より選ばれる1種以上である。酸素供給源となる金属酸化物層が価数揺動系である金属酸化物を含む。該スーパーキャパシタは、電圧印加により格子間に酸素イオンを貯蔵できる金属酸化物層と酸素供給源となる金属酸化物層の間を酸素イオンが酸素導電する金属酸化物層を介して移動することにより充放電が可能である。酸素導電する金属酸化物層の厚さは、格子間に酸素イオンを貯蔵できる金属酸化物層の厚さおよび酸素供給源となる金属酸化物層の厚さよりも薄い。
【発明の効果】
【0010】
実施形態にかかるスーパーキャパシタは、目的とする金属酸化物層の3層構造を有していることから高容量化できる。また、電解液を使わないで済むので液漏れの心配もない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施形態にかかるスーパーキャパシタの一例を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態にかかるスーパーキャパシタの性能を測定するための回路図である。
【
図3】
図3は、実施形態にかかる一例のスーパーキャパシタの充電の動作を表す概念図である。
【
図4】
図4は、実施形態にかかる一例のスーパーキャパシタの放電の動作を表す概念図である。
【
図5】
図5は、実施形態にかかるスーパーキャパシタの他の一例を示す図である。
【実施形態】
【0012】
実施形態にかかるスーパーキャパシタは、格子間に酸素イオンを貯蔵できる金属酸化物層と、酸素導電する金属酸化物層と、酸素供給源となる金属酸化物層の3層構造を有する。
【0013】
以降、格子間に酸素イオンを貯蔵できる金属酸化物層を第1金属酸化物層と呼ぶことがある。また、酸素導電する金属酸化物層を第2金属酸化物層と呼ぶことがある。同様に、酸素供給源となる金属酸化物層を第3金属酸化物層と呼ぶことがある。
【0014】
なお、スーパーキャパシタとは、電気二重層コンデンサ(Electric Double Layer Condenser;EDLC)の機能を利用したものである。
【0015】
図1に実施形態にかかるスーパーキャパシタの一例を示した。図中、1はスーパーキャパシタ、2は格子間に酸素イオンを貯蔵できる金属酸化物層、3は酸素導電する金属酸化物層、4は酸素供給源となる金属酸化物層、5は電極、6は電極、である。
【0016】
格子間に酸素イオンを貯蔵できる第1金属酸化物層2と、酸素導電する第2金属酸化物層3と、酸素供給源となる第3金属酸化物層4とは、この順で配置されて3層構造を成している。第1金属酸化物層2における一つの主面が第2金属酸化物層3における一つの主面に接している。第2金属酸化物層3における他の主面が第3金属酸化物層4における一つの主面に接している。
【0017】
電極5及び電極6は、第2金属酸化物層3を間に挟んでいる第1金属酸化物層2及び第3金属酸化物層4の外側にそれぞれ設けられている。電極5は、第1金属酸化物層2における他の主面に接している。電極6は、第3金属酸化物層4における他の主面に接している。電極5及び電極6の平面方向への大きさは、各金属酸化物層から成る3層構造の平面方向への大きさより小さくてもよい。ここでいう平面方向とは、3層構造における積層方向に直交する面の面内方向を指す。
【0018】
格子間に酸素イオンを貯蔵できる金属酸化物層は、その結晶格子の間に酸素イオンを貯蔵できる金属酸化物からなっている。このような金属酸化物は、価数が変化し難いものである。第1金属酸化物層に含むことができるこのような金属酸化物としては、例えば、酸化ランタン(La2O3)、酸化ハフニウム(HfO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
【0019】
また、酸化ランタンとしてはLa2O3が好ましい。また、酸化ハフニウムはHfO2が好ましい。また、酸化ジルコニウムはZrO2が好ましい。これらの金属酸化物は価数変化が起きにくい安定した酸化物である。このような金属酸化物は、金属酸化物層中に酸素イオンを貯蔵することができる。
【0020】
格子間に酸素イオンを貯蔵できる金属酸化物層は膜密度が高い方が好ましい。また、膜密度は95%以上が好ましい。また、格子間に酸素イオンを貯蔵できる金属酸化物層は膜厚が厚い方が酸素イオンを貯め込める量が増える。これによりキャパシタの容量を増やすことができる。また、酸素欠損はないものが好ましい。
【0021】
キャパシタの容量を多くすることを鑑みて、格子間に酸素イオンを貯蔵できる第1金属酸化物層の膜厚は1μm以上、さらには30μm以上が好ましい。
【0022】
また、酸素導電する金属酸化物層に含む金属酸化物は、酸化セリウム(CeO2)、イットリウム安定化ジルコニア(YSZ)からなる群より選ばれる1種以上であることが好ましい。酸素導電は、金属酸化物の価数変化に伴い、酸素イオン(O2-)を行き来させることができる。これにより、酸素イオンを移動させて、キャパシタとしての能力を持たせるものである。例えば、酸化セリウムは、Ce4++e-→Ce3+に価数変化する。
【0023】
酸化セリウムは、酸素イオンの移動により3価と4価との間で変化する。このため、酸素導電する第2金属酸化物層が酸化セリウムを含む場合、第2金属酸化物層に4価のセリウムと3価のセリウムが存在することが好ましい。4価のセリウム(Ce4+)と3価のセリウム(Ce3+)が存在することにより酸素導電を活発に行うことができる。4価のセリウム(Ce4+)と3価のセリウム(Ce3+)の存在は、X線回折(X-Ray Diffraction;XRD)法にて分析することで確認できる。なお、4価のセリウムであればCeO2のピークが検出される。また、3価のセリウムであればCe2O3のピークが検出される。
【0024】
また、酸化セリウムは、CeO2が好ましい。また、酸化セリウム(CeO2)、イットリウム安定化ジルコニア(YSZ)は、結晶構造が蛍石構造である。蛍石構造を有するものは酸素導電性を示す。また、CeO2およびYSZに、希土類元素をドープしてもよい。ドープする希土類元素としては、セリウム以外の希土類元素が好ましい。具体的には、Y(イットリウム)、La(ランタン)、Gd(ガドリニウム)、Yb(イッテルビウム)、Nd(ネオジム)、Ho(ホルミウム)、Sm(サマリウム)、Dy(ディスプロシウム)が挙げられる。
【0025】
セリウム以外の希土類元素の含有量は、15at%以下が好ましい。15at%以下の含有量であれば、蛍石構造を維持できる。セリウム以外の希土類元素を含有させることにより、結晶構造に欠損ができ、酸素イオンが移動し易くなる。セリウム以外の希土類元素は、一つ以上含有することができる。セリウム以外の希土類元素を二つ以上含有する場合、合計の含有量が15at%以下であることが望ましい。含有量は1at%以上15at%以下が好ましい。さらに好ましい含有量は、3at%以上10at%以下である。1at%未満の含有量では、添加の効果が薄い。含有量が15at%を超えると、蛍石構造を維持できなくなるおそれがある。
【0026】
また、酸素導電する第2金属酸化物層は酸素欠損を有することが好ましい。酸素欠損は、結晶格子を構成する酸素の一部が存在しないことを指す。酸素欠損量に関しても、結晶構造が蛍石構造を維持できる量とする。例えば、酸化セリウムの場合、CeO2-xで表したときの添字xが0≦x≦0.9の範囲内にあることが好ましい。酸素欠損を設けることにより、酸素イオンが移動し易くなり酸素導電を行い易くなる。酸素欠損量が15at%以下であることが好ましく、酸素欠損量が1at%以上15at%以下であることがより好ましい。なお、酸素欠損量の測定は、X線光電分光(X-ray Photoelectron Spectroscopy;XPS)法により行うことができる。例えば、XPSにて3価の酸化セリウムのピークと4価の酸化セリウムのピークとの間のピーク面積比を求めることにより上記CeO2-xにおけるx値を求めることができる。
【0027】
セリウム以外の希土類元素を含有させること及び酸素欠損を設けることは、組合せても良い。両方用いる場合であっても、蛍石構造を維持できるように留意する。結晶構造として蛍石構造を維持した上で、希土類元素の含有または酸素欠損の付与を行うことにより、結晶中で酸素イオンが動き易くなる。これにより酸素導電性能が向上する。
【0028】
また、酸素導電する金属酸化物層は薄い方がよい。酸素導電する金属酸化物層が厚いと、酸素イオンの行き来が難しくなり、キャパシタとしての性能がでなくなる恐れがある。酸素導電する金属酸化物層の厚さは10μm以下が好ましい。
【0029】
また、酸素導電する金属酸化物層は膜密度が高い方がよい。また、酸素導電する金属酸化物層は、結晶粒径が大きい方が好ましい。結晶粒径が小さいと酸化物層中での粒界が増える。粒界は酸素イオンが移動する際の抵抗体となり、酸素導電を阻害する恐れがある。このため、平均粒径は1μm以上のものが好ましい。また、膜密度は95%以上のものが好ましい。
【0030】
また酸素イオンの移動は結晶内で起きることも、結晶粒径が大きい方が好ましい理由である。更には、酸素導電する第2金属酸化物層の厚み方向に対し、結晶粒径が同じであることが好ましい。この場合、酸化物層中の粒界を少なくできる。例えば、膜厚が1μmである場合、平均粒径が1μmであることが好ましい。
【0031】
なお平均粒径は、第2金属酸化物層の厚み方向の断面を走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope;SEM)で撮影したSEM写真から求めることができる。SEM写真に写る結晶子の粒径の最も長い対角線を長径とし、長径の中心から垂直に延ばした対角線を短径とする。下記式(1)に基づいて10粒の結晶子の結晶粒径を求め、その平均値を平均粒径とする。
【0032】
[数1]
粒径 = (長径+短径)÷2 (1)
【0033】
膜密度は、ラザフォード後方散乱分析(Rutherford Backscattering Spectrometry;RBS)法により測定できる。RBS法により求めた密度を実測値とする。また、理論密度として真密度を用いる。膜密度は、下記式(2)により求めるものとする。
【0034】
[数2]
膜密度(%) = (実測値/理論密度)×100 (2)
【0035】
RBS法による測定を行う装置としては、National Electrostatics Corporation製 Pelletron 3SDHを用いることができる。測定条件は、下記のとおりとする:
入射イオン : 4He++
入射エネルギー : 2300 keV
入射角 : 0 deg
散乱角 : 160 deg
試料電流 : 25 nA
ビーム径 : 2 mm φ
面内回転 : 無
照射量 : 80 μC。
【0036】
また、酸素供給源となる金属酸化物層が価数揺動系である金属酸化物を含むことが好ましい。価数揺動とは、価数が変化して安定した酸化物を形成することである。キャパシタの場合は、電気を流すことにより、価数が変化していく性能を示すものである。このような金属酸化物としては、酸化プラセオジム、酸化テルビウムからなる群より選ばれる1種以上が好ましい。
【0037】
酸化プラセオジムは、PrO2、Pr2O3、Pr6O9、Pr6O11で安定する。また、酸化テルビウムはTb2O3、Tb4O7で安定する。これらは電気を流すことにより、酸素イオンが抜けていき価数の異なる酸化物として安定していく。どちらも3価または4価で安定させることができる。
【0038】
酸素供給源となる金属酸化物層は、膜密度が高い方が好ましい。また、膜厚が厚い方が高容量化することができる。また、膜密度は95%以上のものであることが好ましい。
【0039】
第3金属酸化物層の膜厚は1μm以上、さらには30μm以上が好ましい。
【0040】
格子間に酸素イオンを貯蔵できる第1金属酸化物層の酸素分圧が-7eV以上-5eV以下の範囲内にあることが好ましい。
【0041】
また、酸素導電する第2金属酸化物層の価数が変わる酸素分圧が-5eV以上-3eV以下の範囲内にあることが好ましい。
【0042】
また、酸素供給源となる第3金属酸化物層の価数が変わる酸素分圧が-3eV以上-1eV以下の範囲内にあることが好ましい。
【0043】
加えて、それぞれの金属酸化物層についての上記酸素分圧は、第1金属酸化物層の酸素分圧<第2金属酸化物層の価数が変わる酸素分圧<第3金属酸化物層の価数が変わる酸素分圧、の関係を満たすことが好ましい。
【0044】
図2に、実施形態にかかるスーパーキャパシタの性能を測定するための一例の回路図を示す。図中、1はスーパーキャパシタ、7は第1のスイッチ、8は電源、9は第2のスイッチ、10は抵抗、11は制御部である。
【0045】
電源8は、例えば、商用電源、発電機、又は電池であり得る。抵抗10は、電流や電圧を測定する装置、又は電気機器などの負荷である。
【0046】
第1のスイッチ7を含んだ回路と第2のスイッチ9を含んだ回路とが電気的に並列に接続されている。制御部11が第1のスイッチ7及び第2のスイッチ9を操作することで回路が切り替わる。第1のスイッチ7側の回路を閉じることで、第1のスイッチ7を含む回路上にある電源8とスーパーキャパシタ1とが電気的に接続される。電源8から供給される電流によってスーパーキャパシタ1が充電され得る。第2のスイッチ9側の回路を閉じることで、第2のスイッチ9を含む回路上にある抵抗10とスーパーキャパシタ1とが電気的に接続される。スーパーキャパシタ1から電流が放電されて、抵抗10に供給され得る。抵抗10として測定機器を用いることで、スーパーキャパシタ1の性能を測定できる。
【0047】
スーパーキャパシタを充放電する際の、各金属酸化物層の役割を説明する。以下に説明するとおりスーパーキャパシタでは、電気二重層の原理に基づいて充放電が行われる。
【0048】
実施形態にかかるスーパーキャパシタ1は、格子間に酸素イオンを貯蔵できる金属酸化物層2と、酸素導電する金属酸化物層3と、酸素供給源となる金属酸化物層4との3層構造を有している。電気を流すことにより、酸素供給源となる金属酸化物層4で酸素イオンを発生する。酸素導電する金属酸化物層3で酸素イオンを酸素導電させ、格子間に酸素イオンを貯蔵できる金属酸化物層2に酸素イオンを貯める。これにより、充電状態となる。
【0049】
また、放電時は、電気を流すことを止めることにより、格子間に酸素イオンを貯蔵できる金属酸化物層2から酸素イオンが酸素供給源となる金属酸化物層4に移動する。間に、酸素導電する金属酸化物層3を設けることにより、充放電の機能を持たせることができる。充電時は、酸素供給源となる金属酸化物層4で発生した酸素イオン(O2-)を酸素導電する金属酸化物層3を介して、格子間に酸素イオンを貯蔵できる金属酸化物層2に貯め込むことができる。放電時は、格子間に酸素イオンを貯蔵できる金属酸化物層2に貯めた酸素イオン(O2-)を酸素導電する金属酸化物層3を介して、酸素供給源となる金属酸化物層4に戻すことができる。これにより、充放電ができる。
【0050】
図3に、一例のスーパーキャパシタの充電の動作を表す。図中、1はスーパーキャパシタ、2は格子間に酸素イオンを貯蔵できる第1金属酸化物層、3は酸素導電する第2金属酸化物層、4は酸素供給源となる第3金属酸化物層、5は電極、6は電極、8は電源、12は酸素イオン、13は酸素欠損である。
【0051】
電源8から電流を流すと、酸素供給源となる第3金属酸化物層4側の電極6に電子(e-)が供給されると共に、第3金属酸化物層4において酸素イオン12と酸素欠損13が生じる。酸素イオン12はドリフトして酸素導電する第2金属酸化物層3へと移動し、格子間に酸素イオンを貯蔵できる第1金属酸化物層2へと誘導される。こうして第1金属酸化物層2に酸素イオン12が蓄積する。また、電極6に電子が蓄積する。第3金属酸化物層4内で酸素イオンがドリフトして再配置することで酸素欠損13が電極6の近方に集中し得る。このように、充電中に酸素イオンがドリフトして移動することで、スーパーキャパシタ1における各金属酸化物層の積層方向の両端に電荷が蓄積される。
【0052】
図4に、一例のスーパーキャパシタの放電の動作を表す。図中、1はスーパーキャパシタ、2は格子間に酸素イオンを貯蔵できる第1金属酸化物層、3は酸素導電する第2金属酸化物層、4は酸素供給源となる第3金属酸化物層、5は電極、6は電極、10は抵抗、12は酸素イオン、13は酸素欠損である。
【0053】
抵抗10に電流が流れる際、酸素供給源となる第3金属酸化物層4側の電極6に蓄積していた電子が抵抗10を含む外部回路に供給されると共に、格子間に酸素イオンを貯蔵できる第1金属酸化物層2に蓄積されていた酸素イオン12が第3金属酸化物層4へとドリフトする。酸素イオン12は、第1金属酸化物層2から第2金属酸化物層3を経由して第3金属酸化物層4へと移動し、酸素欠損13を補填する。
【0054】
また、格子間に酸素イオンを貯蔵できる金属酸化物層または酸素供給源となる金属酸化物層は酸素欠損を有していないことが好ましい。酸素欠損があると、酸素イオン(O2-)を貯めたり、発生させたりする効果が低下する。
【0055】
また、酸素導電する金属酸化物層3の厚さは、格子間に酸素イオンを貯蔵できる金属酸化物層2の厚さおよび酸素供給源となる金属酸化物層4の厚さよりも薄いことが好ましい。前述のように、酸素導電する金属酸化物層3は薄い方が酸素導電させ易い。金属酸化物層2および金属酸化物層4が金属酸化物層3よりも薄いと、金属酸化物層3で酸素導電した酸素イオンを金属酸化物層2中に十分ため込めなくなる。
【0056】
上述の各金属酸化物層の厚さは、3層構造における金属酸化物層の積層方向への厚さを指す。また、各金属酸化物層の合計厚さ(3層構造の厚さ)は、スーパーキャパシタが適用される電圧によって決めることが好ましい。印加される電界としては0.001MV/cm以上、10MV/cm以下が好ましい。例えば、印加電圧100Vの場合、合計の厚さは1μm以上、10000μm以下が好ましい範囲となる。後述するバリア層を用いる場合は、合計の厚さは、各金属酸化物層の合計厚さと後述するバリア層の厚さとを合わせた厚さになる。
【0057】
また、電極5および電極6は導電性を示す材料で形成される。電極5および電極6はタングステンを主成分とすることが好ましい。電極5は格子間に酸素イオンを貯蔵できる金属酸化物層に設けられた電極である。また、電極6は酸素供給源となる金属酸化物層に設けられた電極である。タングステンを主成分とするとは、電極中にタングステンを50wt%100wt%以下含む材料である。タングステンは、上記金属酸化物中に含まれる不要な酸素を吸着する効果がある。このため、電気を流す前に金属酸化物中に含まれる余分な酸素を取り除くことができる。
【0058】
また、タングステンは、格子間に酸素イオンを貯蔵できる金属酸化物層2および酸素供給源となる金属酸化物層4とは反応し難い材料である。このため、金属酸化物層2と金属酸化物層4の性能を劣化させることがない。
【0059】
スーパーキャパシタが、格子間に酸素イオンを貯蔵できる第1金属酸化物層の表面および酸素供給源となる第3金属酸化物層の表面にバリア層を有することが好ましい。
図5にバリア層を設けたセル構造の一例を示した。図中、1はスーパーキャパシタ、2は格子間に酸素イオンを貯蔵できる第1金属酸化物層、3は酸素導電する第2金属酸化物層、4は酸素供給源となる第3金属酸化物層、5は電極、6は電極、14はバリア層、である。
【0060】
二つあるバリア層14の一方は、格子間に酸素イオンを貯蔵できる第1金属酸化物層2の表面のうち、第1金属酸化物層2が第2金属酸化物層3と接する面とは反対側の表面に設けられている。つまり、第1金属酸化物層2と電極5との間にバリア層14が設けられている。
【0061】
また、他方のバリア層14は、酸素供給源となる第3金属酸化物層4の表面のうち、第3金属酸化物層4が第2金属酸化物層3と接する面とは反対側の表面に設けられている。つまり、第3金属酸化物層4と電極6との間にバリア層14が設けられている。バリア層14の平面方向への大きさは、バリア層14が接している電極(電極5又は電極6)の平面方向への大きさ以上であればよい。
【0062】
バリア層を設けることにより、充電時に蓄積されずに流れ出てしまう電流を抑制することができる。また前述したように、実施形態にかかるスーパーキャパシタは酸素イオンの移動により充放電を行うものである。共有結合性を有するバリア層を設けることにより、酸素イオンの移動を3層構造内に抑えることができる。これにより、スーパーキャパシタの容量をさらに向上させることができる。バリア層を設けることにより、容量が10%以上大きくなり得る。
【0063】
また、バリア層は共有結合性かつバンドギャップの大きな材料を含むことが好ましい。このような材料としては、酸化珪素(SiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化ゲルマニウム(Ge2O3)が挙げられる。この中では、酸化珪素(SiO2)および酸化アルミニウム(Al2O3)が安価な材料である。このため、バリア層14は酸化珪素(SiO2)又は酸化アルミニウム(Al2O3)からなるものであることが好ましい。
【0064】
バリア層の厚さが5nm以上100nm以であることが好ましい。
【0065】
バリア層による高容量化の有無はLCRメーターを使った微分容量で測定することができる。例えば、一定電圧を印加し、定常状態となったときの容量を求める方法が挙げられる。実施形態にかかるスーパーキャパシタであれば、4V印加で1分後には定常状態となる。そのため、4V印加で1分後にLCRメーターで測定するものとする。なおLCRメーターの名称における文字L,C,Rは、それぞれインダクタンス(L)、キャパシタンス(C)及び抵抗(R)を意味する。
【0066】
以上のようなスーパーキャパシタは、酸素イオンを発生させること、酸素導電させること、酸素イオンを貯め込むことが効率的に行える。そのため、高容量化を成しえることができる。また、金属酸化物層で各層が構成されていることから、電解液を使用することもない。このため、液漏れの心配もない。
【0067】
次に、実施形態にかかるスーパーキャパシタの製造方法について説明する。実施形態にかかるスーパーキャパシタは、上記構成を有していればその製造方法は特に限定されるものではないが歩留まりよく得るための方法として次のものが挙げられる。
【0068】
基材上に電極を設ける。電極は金属からなるものであることが好ましい。また、金属はタングステンを主成分とするものであることが好ましい。また、金属電極の場合、スパッタリング、メッキなどの成膜技術で形成することができる。
【0069】
次に、格子間に酸素イオンを貯蔵できる金属酸化物層2、酸素導電する金属酸化物層3、酸素供給源となる金属酸化物層4を順次積層していく。
【0070】
各酸化物層は、スパッタ、化学蒸着(Chemical Vapor Deposition;CVD)、スピンコート、電子ビーム蒸着、粉末塗布のいずれかで成膜できる。スパッタ、CVD、スピンコート、電子ビーム蒸着は直接的に金属酸化物層を成膜していく方法である。また、粉末塗布は、目的とする金属酸化物をペーストとして塗布、乾燥させる方法である。また、金属酸化物層は、必要に応じ、500℃以上で熱処理するものとする。熱処理により、金属酸化物層中のOH基をなくすことができる。OH基が存在すると、酸素イオンと反応して酸素導電のじゃまとなる。
【0071】
また、熱処理には、酸素導電する第2金属酸化物層の金属酸化物を粒成長させ、平均粒径を大きくする効果もある。その他、金属酸化物粉末をバインダと混合してペーストを塗布する方法を用いる場合は、熱処理によりバインダを除去することが望ましい。
【0072】
また、各酸化物層中の不純物は5wt%以下にすることが好ましい。
【0073】
第1乃至第3金属酸化物層を積層させて3層構造を得た後、その上にもう一方の電極を設ける。電極、第1乃至第3金属酸化物層、及びもう一方の電極を形成する順番は、上記説明とは逆であってもよい。即ち、基材上に電極を設けた後、第3金属酸化物層、第2金属酸化物層、及び第1金属酸化物層を順次積層して3層構造を形成し、続いて電極を設けてもよい。
【0074】
バリア層を設ける場合は各金属酸化物層を設ける前に、電極の上にバリア層を設ける。また、3層構造を得た後、その上にバリア層を設ける。バリア層の形成には、各金属酸化物層と同様の成膜方法を用いることができる。
【0075】
上述したとおり、酸素導電する第2金属酸化物層に、セリウム以外の希土類元素を含有させることができる。セリウム以外の希土類元素を第2金属酸化物層に含有させる方法としては、(1)第2金属酸化物層を成膜してから注入する方法(イオン注入など)、(2)スパッタ等の成膜雰囲気にセリウム以外の希土類元素を分散させる方法、(3)セリウム以外の希土類元素を含有した金属酸化物粉末を原料として使うこと、などが挙げられる。
【0076】
また、上述したとおり、第2金属酸化物層に酸素欠損を設けることができる。酸素欠損を設ける方法としては、(I)第2金属酸化物層を非酸化性雰囲気中で熱処理する方法が挙げられる。非酸化性雰囲気としては、不活性雰囲気(窒素、アルゴンなど)、還元性雰囲気(水素など)が挙げられる。また、(II)予め酸素欠損を設けた金属酸化物を原料として使う方法が挙げられる。他、(III)スパッタ等の成膜雰囲気中の酸素量を減らす方法が挙げられる。例えば、反応性スパッタを行うとき、スパッタ雰囲気中の酸素量を減らすことにより、酸素欠損を有する金属酸化物層を形成することができる。
【0077】
上記実施形態によれば、格子間に酸素イオンを貯蔵できる第1金属酸化物層と、酸素導電する第2金属酸化物層と、酸素供給源となる第3金属酸化物層とを含むスーパーキャパシタが提供される。第1金属酸化物層と第2金属酸化物層と第3金属酸化物層とは、3層構造を形成している。このスーパーキャパシタは、高い容量を示すことができる。また、このスーパーキャパシタでは、液漏れの心配がない。
【0078】
(実施例)
(実施例1-9)
格子間に酸素イオンを貯蔵できる金属酸化物層、酸素導電する金属酸化物層、酸素供給源となる金属酸化物層として、表1及び表2のものを用意した。また、電極はタングステン電極(タングステン100wt%)とした。また、各金属酸化物層を形成した後、500℃以上の熱処理を行った。また、各金属酸化物層の膜密度は95%以上のものとした。また、実施例1-5及び実施例7-9にかかる酸素導電する金属酸化物層は平均粒径1μm以上のものとした。
【0079】
実施例1-5および実施例7-9では、金属酸化物粉末をペースト状にして塗布し、焼成することで各金属酸化物層を形成した。実施例6では、電子ビーム蒸着により、酸素導電する第2金属酸化物層を形成した。第1金属酸化物層および第3金属酸化物層については、実施例6においても金属酸化物粉末のペーストを塗布および焼成して形成した。
【0080】
実施例6-9では、各金属酸化物層の3層構造と電極との間にバリア層を設けた。また、実施例6および実施例8では、第2金属酸化物層に酸素欠損を設けた。ここで、酸化セリウムをCeO2-xで表したとき、x=0.3となる欠損量が得られた。実施例7では、CeO2にGdを7at%の含有量で含有させた金属酸化物粉末を用いて第2金属酸化物層を形成し、当該第2金属酸化物層に酸素欠損をさらに設けた。ここで、酸化セリウムをCeO2-xで表したとき、x=0.1となる欠損量が得られた。また、実施例9では、CeO2にGdを7at%の含有量で含有させた金属酸化物粉末を用いて第2金属酸化物層を形成した。実施例9では、酸素欠損を設けていない。
【0081】
これにより、実施例1-9にかかるスーパーキャパシタを作製した。
【0082】
【0083】
【0084】
次に、各実施例にかかるスーパーキャパシタに対して、エネルギー密度およびパワー密度を測定した。
【0085】
エネルギー密度を測定するため、充放電装置を用いて0Vから電界0.01MV/cm相当の電圧までの電圧範囲で充放電試験を実施した。充電は初めに定電流モードで行い電界0.01MV/cm相当の電圧に到達した時点で同充電電圧の定電圧モードに移行し、電流量が一定の値に減少するまで充電を継続した。充電終了後に一定電流で放電を行い、放電時の電気容量からスーパーキャパシタのエネルギー密度(電気容量)を求めた。
【0086】
また、パワー密度(W/kg)は、0.25×(V2-V1)/R/セル重量の計算式で求めた。V2は放電開始電圧であり、V1は放電終了電圧であり、Rはセル抵抗(セル電極面積200cm2) である。
【0087】
また、エネルギー密度およびパワー密度を計算する際のセル重量には、格子間に酸素イオンを貯蔵できる第1金属酸化物層と、酸素導電する第2金属酸化物層と、酸素供給源となる第3金属酸化物層との合計重量、つまりこれら金属酸化物層の3層構造の重量をセル重量とした。
【0088】
また、容量についても測定した。容量はLCRメーターで測定し、4V印加で1分後の容量を微分容量として求めた。
【0089】
その結果を表3に示す。
【0090】
【0091】
表から分かる通り、実施例にかかるスーパーキャパシタはエネルギー密度およびパワー密度が向上した。電解液を使わない固体型であっても、優れた性能を示すことがわかった。また、いずれの実施例にかかるスーパーキャパシタも、酸素導電していることが確認された。
【0092】
第2金属酸化物層にYSZを用いた実施例2のスーパーキャパシタよりも酸化セリウムを用いた他の実施例のスーパーキャパシタの方が、容量が向上していた。酸素導電する第2金属酸化物層に酸化セリウムを用いたものに対しXRD分析をしたところ、4価と3価のセリウムが確認された。4価のセリウムと3価のセリウムの存在により、酸化セリウムを用いた場合の容量が向上したと推察される。
【0093】
また、バリア層を設けたり、第2金属酸化物層に欠損を設けたりすることにより、さらに性能が向上することが確認できた。
【0094】
以上に説明した少なくとも1つの実施形態及び実施例によると、格子間に酸素イオンを貯蔵できる第1金属酸化物層と、酸素導電する第2金属酸化物層と、酸素供給源となる第3金属酸化物層の3層構造を有するスーパーキャパシタが提供される。このスーパーキャパシタは、高い容量を示すことができる。また、このスーパーキャパシタでは、液漏れの心配がない。
【0095】
当初の請求項を、以下に付記する。
【0096】
[1]格子間に酸素イオンを貯蔵できる金属酸化物層と、酸素導電する金属酸化物層と、酸素供給源となる金属酸化物層の3層構造を有することを特徴とするスーパーキャパシタ。
【0097】
[2]格子間に酸素イオンを貯蔵できる金属酸化物層が、酸化ランタン(La2O3)、酸化ハフニウム(HfO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)から選ばれる1種であることを特徴とする[1]記載のスーパーキャパシタ。
【0098】
[3]酸素導電する金属酸化物層が、酸化セリウム(CeO2)、イットリウム安定化ジルコニア(YSZ)から選ばれる1種であることを特徴とする[1]ないし[2]のいずれか1項に記載のスーパーキャパシタ。
【0099】
[4]酸素供給源となる金属酸化物層が価数揺動系であることを特徴とする[1]ないし[3]のいずれか1項に記載のスーパーキャパシタ。
【0100】
[5]酸素供給源となる金属酸化物層が、酸化プラセオジム、酸化テルビウムから選ばれる1種であることを特徴とする[1]ないし[4]のいずれか1項に記載のスーパーキャパシタ。
【0101】
[6]格子間に酸素イオンを貯蔵できる金属酸化物層または酸素供給源となる金属酸化物層に設けられる電極がタングステンを主成分とすることを特徴とする[1]ないし[5]のいずれか1項に記載のスーパーキャパシタ。
【0102】
[7]格子間に酸素イオンを貯蔵できる金属酸化物層または酸素供給源となる金属酸化物層は酸素欠損を有していないことを特徴とする[1]ないし[6]のいずれか1項に記載のスーパーキャパシタ。
【0103】
[8]酸素導電する金属酸化物層の厚さは、格子間に酸素イオンを貯蔵できる金属酸化物層の厚さおよび酸素供給源となる金属酸化物層の厚さよりも薄いことを特徴とする[1]ないし[7]のいずれか1項に記載のスーパーキャパシタ。
[9] 酸素導電する金属酸化物層は酸化セリウムを含み、酸素導電する金属酸化物層には4価のセリウムと3価のセリウムとが存在する、[1]ないし[8]のいずれか1つに記載のスーパーキャパシタ。
[10] 酸素導電する金属酸化物層は酸素欠損を有している、[1]ないし[9]のいずれか1つに記載のスーパーキャパシタ。
[11] 酸素導電する金属酸化物層は、セリウム以外の希土類元素を含有している、[1]ないし[10]のいずれか1つに記載のスーパーキャパシタ。
[12] 格子間に酸素イオンを貯蔵できる金属酸化物層の表面および酸素供給源となる金属酸化物層の表面にバリア層をそれぞれ有する、[1]ないし[11]のいずれか1つに記載のスーパーキャパシタ。
[13] バリア層が、酸化珪素または酸化アルミニウムを含む、[12]記載のスーパーキャパシタ。
【0104】
以上、本発明のいくつかの実施形態を例示したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。