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  • 特許-窒素含有量が高い窒化ケイ素膜 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-30
(45)【発行日】2022-10-11
(54)【発明の名称】窒素含有量が高い窒化ケイ素膜
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/42 20060101AFI20221003BHJP
   C23C 16/56 20060101ALI20221003BHJP
   H01L 21/318 20060101ALI20221003BHJP
【FI】
C23C16/42
C23C16/56
H01L21/318 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019572455
(86)(22)【出願日】2018-07-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-31
(86)【国際出願番号】 US2018040879
(87)【国際公開番号】W WO2019010279
(87)【国際公開日】2019-01-10
【審査請求日】2020-02-20
(31)【優先権主張番号】62/528,937
(32)【優先日】2017-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】バス, アタシ
(72)【発明者】
【氏名】ネマニ, シュリーニヴァース ディー.
(72)【発明者】
【氏名】イー, エリー ワイ.
【審査官】宮崎 園子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/065219(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/42
C23C 16/56
H01L 21/318
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
SiN膜を堆積させる方法であって、該方法は、
基材をケイ素-窒素前駆体及びNHプラズマに暴露して、流動性SiNポリマーを堆積させること、及び
前記流動性SiNポリマーを硬化させて、硬化したSiN膜を形成すること
を含み、
前記ケイ素-窒素前駆体が、
である、方法。
【請求項2】
プラズマをリモートプラズマ源によって発生させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記流動性SiNポリマーが、プラズマ中のラジカルに暴露されることによって硬化する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
紫外線暴露又はアニールを含む後処理をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記硬化したSiN膜は、窒素原子の、ケイ素原子に対する比率が0.7以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記基材を25℃以下の温度に維持する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
基材をケイ素-窒素前駆体及びNHプラズマに25℃以下の温度で暴露することによって紫外線硬化無しで形成される、硬化したSiN膜を製造する方法であって、前記硬化したSiN膜における窒素原子の、ケイ素原子に対する比率が、1.0から1.5の範囲にあり、前記ケイ素-窒素前駆体が、
である、硬化したSiN膜を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般的に、薄膜を堆積させる方法に関する。本開示は特に、窒素含有量が高い窒化ケイ素膜を堆積させるプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
基板表面への薄膜の堆積は、様々な産業において重要なプロセスであり、これには半導体プロセス、拡散バリアコーティング、及び読み取り/書き込み磁気ヘッド用の誘電体が含まれる。半導体産業において、特に小型化の利点は、薄膜堆積を高レベルで制御して、高アスペクト構造においてコンフォーマルコーティング(conformal coatings)を製造することにより得られる。相対的に制御しながら、またコンフォーマルな堆積で薄膜を堆積するための1つの方法は、化学蒸着法(CVD)である。CVDは、基板(例えばウェハ)を、反応により基板上に膜を堆積させる1つ又は複数の前駆体に暴露することを伴う。流動性化学蒸着(FCVD)は、特にギャップ充填用途のために、流動性膜の堆積を可能にするCVDの種類である。
【0003】
SiN流動性膜は一般的に、ギャップ充填用途に利用される。近年、このような膜は、共反応体としてNHのラジカル形態を有するトリシリルアミン(TSA)により生成される。このTSAプロセスから得られる堆積した膜はそのままの状態で、Si及びNを主成分として含む。これらの膜は通常、窒素の、ケイ素に対する比が、0.4:1から0.7:1の範囲にある。窒素含有量が比較的高い膜は、エッチング選択性問題を解決するためのパターニング用途において、有用であり得る。
【0004】
よって、窒素含有量が比較的高いSiN膜の堆積を可能にする新規な堆積化学法が必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
本開示の1つ又は複数の実施形態は、SiN膜を堆積させる方法に向けられている。この方法は、基板をケイ素-窒素前駆体及びNHプラズマに暴露して流動性SiNポリマーを堆積させることと、この流動性SiNポリマーを硬化させて、硬化したSiN膜を形成することとを含む。これらの実施形態において、ケイ素-窒素前駆体は、以下のうち1つ又は複数:
[式中、R~Rは独立して、H又はC1~C4アルキルである]
を含む。
【0006】
本開示のさらなる実施形態は、SiN膜を堆積させる方法に向けられている。この方法は、25℃以下に保たれた基材を、ケイ素-窒素前駆体及びNHプラズマに暴露して、流動性SiNポリマーを堆積させることと、この流動性SiNポリマーを硬化させて、硬化したSiN膜を形成することとを含み、ここで硬化したSiN膜における窒素原子の、ケイ素原子に対する比率は、約1.0より大きい。これらの実施態様において、ケイ素-窒素前駆体は、以下のうち1つ又は複数:
[式中、R~Rは独立して、H又はメチルであるが、ただし、R~Rのうち少なくとも1つは、メチルである]
を含む。
【0007】
本開示のさらなる実施形態は、基板をケイ素-窒素前駆体及びNHプラズマに約25℃以下の温度で暴露することにより紫外線硬化無しで形成される、硬化したSiN膜に向けられている。これらの実施形態において、硬化したSiN膜における窒素原子の、ケイ素原子に対する比率は、約1.0~約1.5の範囲にあり、ケイ素窒素前駆体は、以下のうち1つ又は複数:
[式中、R~Rは独立して、H又はC1~C4アルキルである]
を含む。
【0008】
本発明の前述の特徴が詳細に理解されるように、先に要約した本発明に関するより具体的な記述は、複数の実施形態を参照することによりなされることがあり、これらの態様のうち幾つかは、添付図面に示されている。しかしながら添付図面は、本発明の典型的な実施形態を説明するためのものに過ぎないため、本願発明の範囲を制限するとみなされるべきではないことに、留意されたい。本発明は、その他の同様に効果的な実施形態について、その余地を残すことができるからである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の1つ又は複数の実施形態に従った、基板断面の概略図を示す。
図2A】本開示の1つ又は複数の実施形態に従った、流動性膜の堆積を示す。
図2B】本開示の1つ又は複数の実施形態に従った、硬化した膜の形成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の幾つかの例示的な実施形態を説明する前に、本発明が、以下の説明で規定される構成又はプロセスの詳細に限定されるわけではないことを理解されたい。本発明は、その他の実施形態で行うことができ、様々なやり方で実施又は実行できる。
【0011】
本明細書及び添付特許請求の範囲で使用されるように、「基板」という用語は、プロセスが行われる表面又は当該表面の一部をいう。基板に対する言及は、基板の一部のみに言及することがあること(文脈がそうではない旨を明示している場合を除く)は、当業者により理解されるであろう。さらに、基板への堆積についての言及は、未加工の(bare)基板と、1つ若しくは複数の膜を有する、又は当該膜に堆積若しくは形成されたフィーチャを有する基板の双方を意味し得る。
【0012】
ここで使用する「基板」とは、作製プロセスの間に膜プロセスが行われる基板、又は当該基板に形成された材料表面をいう。例えば、処理を行うことができる基板表面には、以下のような材料が含まれる:シリコン、酸化ケイ素、ストレインド・シリコン、シリコン・オン・インシュレータ(SOI:silicon on insulator)、炭素がドープされた酸化ケイ素、アモルファスシリコン、ドープされたシリコン、ゲルマニウム、ヒ化ガリウム、ガラス、サファイア、並びに用途に応じて、その他材料、例えば金属、金属窒化物、金属合金、及びその他導電性材料。基板には、半導体ウェハが含まれるが、これに限られない。基板は、基板表面を研磨、エッチング、還元、酸化、ヒドロキシ化、アニール、紫外線硬化、電子線硬化及び/又はベーキングする前処理工程に暴露することができる。本発明では、基板自体の表面に直接、膜処理を行うことに加えて、開示された任意の膜処理工程を、以下に詳細に開示する基板に形成された下層で行うこともでき、「基板表面」という用語は、文脈により示される通りにこのような下層を含むことが意図されている。よって例えば、膜/層又は部分的な膜/層が基板表面に堆積されている場合、新たに堆積された膜/層の暴露表面が、基板表面となる。
【0013】
本開示についての1つ又は複数の実施形態は、新規なケイ素-窒素前駆体の使用により、窒化ケイ素膜を堆積させる方法に向けられている。この開示の実施形態は、様々なCVD法を利用するものである。幾つかの実施形態では、プラズマCVD(PECVD)プロセスが用いられる。PECVDプロセスは、当分野でよく知られているCVDプロセスに似ており、1つ又は複数の反応体がプラズマとして供給される。理論に縛られるつもりはないが、PECVDプロセスにより、プラズマ反応体に存在するラジカルが、慣用の熱反応によっては利用できない反応を容易にするために用いられる。幾つかの実施形態では、流動性CVD(FCVD)プロセスが用いられる。FCVDプロセスは、当分野でよく知られているCVDプロセスに似ているが、堆積される材料が「流動性(flowable)」である点で異なり、堆積される材料は、基板表面に沿って移動して、基板フィーチャを充填する。FCVDプロセスで堆積される流動性材料は通常、硬化されて、流動性材料が固化され、もはや基板表面に沿って移動できない硬化した膜になる。
【0014】
幾つかの実施形態において、膜堆積プロセスは、基板をケイ素-窒素前駆体及びNHプラズマに暴露して、流動性SiNポリマーを堆積させることを含む。流動性ポリマーを硬化させて、硬化したSiN膜を形成する。
【0015】
図1は、2つのフィーチャ110(例えばトレンチ又はバイアス)を有する基板100の断面図である。図面におけるフィーチャの数は、単に例示を目的として挙げたに過ぎず、本開示の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。当業者であれば、フィーチャが無い場合、又は任意の数のフィーチャがあり得ることを、理解するであろう。フィーチャ110の形状は、あらゆる適切な形状であってよく、この形状にはトレンチ及び円筒形のバイアスが含まれるが、これらに限られない。この関連で使用するように「フィーチャ」という用語は、アスペクト比が約2:1以上である、意図している表面の不規則形状を意味する。フィーチャのアスペクト比は、フィーチャの深さDの、フィーチャの幅Wに対する比である。アスペクト比が比較的大きいフィーチャは、アスペクト比が比較的小さいフィーチャよりも、より細い/長い形状を有することになる。幾つかの実施形態において、フィーチャはアスペクト比が、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、15:1、20:1、25:1、若しくは30:1に等しいか、又はそれ以上である。本開示の目的のために、トレンチは、上部と、表面から底部へと延びる2つの側壁とを備える。図示したように、側壁はそれぞれ、底部に対して実質的に垂直であってよく、又は表面における開口がフィーチャの下部における開口よりも大きくなるように、底部に対して90°以外の角度で傾斜していてよい。
【0016】
図1を参照すると、基板100は、2つの材料から、すなわち第1の材料120及び第2の材料130から、構成されていてよい。幾つかの実施形態では、フィーチャ110が側面及び底部で同じ材料によって接合されるように、第1の材料120と第2の材料130とが同じである。幾つかの実施形態では、フィーチャの底部115がフィーチャ110の側壁111、112とは異なる材料であるように、第1の材料120と第2の材料130とが異なっている。
【0017】
フィーチャ110は、基板表面125から底部115への距離Dにわたって、基板100内へと伸びる。フィーチャ110は、フィーチャ110の幅Wを画定する第1の側壁111及び第2の側壁112を有する。側壁及び底部によって形成される開放領域もまた、ギャップと呼ばれる。ギャップを充填する材料は、ギャップフィルと呼ばれる。
【0018】
図2A及び2Bを参照すると、本開示の1つ又は複数の実施形態は、ケイ素-窒素前駆体及びプラズマ(例えばアンモニア)を利用する膜堆積法に向けられている。幾つかの実施形態では、ケイ素-窒素前駆体及びプラズマ反応体を、処理チャンバ内に同時に流し込む。ケイ素-窒素前駆体及びプラズマは、処理チャンバ内で、又は処理チャンバに入れる前に、混合することができる。幾つかの実施形態では、これらの反応体を順次、処理チャンバ内に流し込んで、前駆体とプラズマ反応体との気相混合を回避する。
【0019】
幾つかの実施形態では、ケイ素-窒素前駆体が、一般式(I)を有する化合物を含有する:
式中、R置換基(R~R)はそれぞれ独立して、H又はC1~C4アルキルから選択される。本開示の目的のために、C1~C4アルキルとは、1~4個の炭素原子を有するあらゆる基を意味する。C1~C4アルキル基の例には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、及びt-ブチル基が含まれるが、これらに限られない。幾つかの実施形態では、基Rが全て、同じである。幾つかの実施形態では、R置換基のうち少なくとも1つが、メチル基である。幾つかの実施形態では、基Rのうち少なくとも1つが、水素原子ではない。幾つかの実施形態では、基Rのうち少なくとも1つが、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、又はt-ブチル基を含む。
【0020】
幾つかの実施形態では、ケイ素-窒素前駆体が、式(I)の化合物[式中、R~Rはそれぞれ独立して、H又はC1~C4アルキルである]から実質的に成る。これについて使用するように、「~から実質的に成る」という用語は、ケイ素-窒素前駆体における反応種が、質量基準で、目的とする化学種の約95%以上であることを意味する。幾つかの実施態様において、ケイ素-窒素前駆体は、以下のうち1つ又は複数:
を含む。
【0021】
幾つかの実施形態では、ケイ素-窒素前駆体が、一般式(II)を有する化合物を含有する:
式中、R置換基(R~R)はそれぞれ独立して、H又はC1~C4アルキルから選択される。C1~C4アルキル基の例には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、及びt-ブチル基が含まれるが、これらに限られない。幾つかの実施形態では、基Rが全て、同じである。幾つかの実施形態では、R置換基のうち少なくとも1つが、メチル基である。幾つかの実施形態では、基Rのうち少なくとも1つが、水素原子ではない。幾つかの実施形態では、基Rのうち少なくとも1つが、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、又はt-ブチル基を含む。
【0022】
幾つかの実施形態では、ケイ素-窒素前駆体が、式(II)の化合物[式中、R~Rはそれぞれ独立して、H又はC1~C4アルキルである]から実質的に成る。幾つかの実施態様において、ケイ素-窒素前駆体は、以下のうち1つ又は複数:
を含む。
【0023】
幾つかの実施形態では、ケイ素-窒素前駆体が、一般式(III)を有する化合物を含有する:
式中、R置換基(R~R)はそれぞれ独立して、H又はC1~C4アルキルから選択される。C1~C4アルキル基の例には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、及びt-ブチル基が含まれるが、これらに限られない。幾つかの実施形態では、基Rが全て、同じである。幾つかの実施形態では、R置換基のうち少なくとも1つが、メチル基である。幾つかの実施形態では、基Rのうち少なくとも1つが、水素原子ではない。幾つかの実施形態では、基Rのうち少なくとも1つが、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、又はt-ブチル基を含む。
【0024】
幾つかの実施形態では、ケイ素-窒素前駆体が、式(III)の化合物[式中、R~Rは独立して、H又はC1~C4アルキルである]から実質的に成る。幾つかの実施態様において、ケイ素-窒素前駆体は、以下のうち1つ又は複数:
を含む。
【0025】
ケイ素-窒素前駆体は、1つ若しくは複数のパルスで、又は連続的に供給することができる。前駆体の流量は、あらゆる適切な流量であってよく、流量が以下のような範囲にある場合が含まれるが、これらに限られない:約1~約1000sccmの範囲、又は約2~約500sccmの範囲、又は約3~約200sccmの範囲、又は約5~約100sccmの範囲、又は約10~約50sccmの範囲、又は約15~25sccmの範囲。幾つかの実施形態では、前駆体の流量が、約50sccm以下、45sccm以下、40sccm以下、35sccm以下、30sccm以下、25sccm以下、20sccm以下、又は15sccm以下である。前駆体は、あらゆる適切な圧力で供給することができ、以下のような範囲にある圧力が含まれるが、これらに限られない:約5ミリトル~約25トルの範囲、又は約100ミリトル~約20トルの範囲、又は約5トル~約20トルの範囲、又は約50ミリトル~約2000ミリトルの範囲、又は約100ミリトル~約1000ミリトルの範囲、又は約200ミリトル~約500ミリトルの範囲。
【0026】
ここで使用する「パルス」又は「ドーズ(dose)」とは、断続的に又は非連続的に処理チャンバ内へと導入される反応体の量を指すことを意図している。各パルス内における特定の化合物の量は、パルスの持続時間に応じて、経時的に変化してよい。あらゆる特定の反応体は、1種の化合物、又は2種以上の化合物の混合物/組み合わせを含み得る。
【0027】
各パルス/ドーズの持続時間は可変であり、例えば処理チャンバの容量、また当該処理チャンバに接続された真空システムの性能に合わせて調整することができる。さらに、反応体のドーズ時間は、反応体の流量、反応体の温度、制御弁の種類、使用する処理チャンバの種類、また反応させて適切な膜を形成させる反応体の成分の性質に応じて変えることができる。ドーズ時間はまた、形成される膜の種類や基板の形状に応じて、変えることができる。ドーズ時間は、実質的に基板の全面にわたり反応体の体積を充分に吸着/化学吸着させて、基板上に反応種の層を形成させるために足りるほど長いのが望ましい。
【0028】
幾つかの実施形態において反応体は、不活性で、希釈された、かつ/又はキャリアとなる気体を含む。不活性で、希釈された、かつ/又はキャリアとなる気体は、反応種と混合することができ、パルス状又は一定の流れにすることができる。幾つかの実施形態では、キャリアガスを処理チャンバ内に、約1~約20000sccmの範囲の一定の流れで流し込む。キャリアガスは、膜堆積に干渉しないあらゆるガスであり得る。キャリアガスは例えば、アルゴン、ヘリウム、水素、窒素、ネオンなどのうち一種以上、又はこれらの組み合わせを含むことができる。1つ又は複数の実施形態ではキャリアガスを、処理チャンバへと流し込む前に反応種と混合する。
【0029】
アンモニアプラズマは、あらゆる適切な場所で発生させることができる。プラズマは、処理チャンバ内で発生若しくは点火することができ(例えば直接プラズマ法)、又は処理チャンバの外部で発生させて、処理チャンバ内へと流し込むことができる(例えばリモートプラズマ法)。幾つかの実施形態では、例えばリモートプラズマ源によって、プラズマを処理チャンバの外部で発生させる。幾つかの実施形態ではリモートプラズマを、反応種が堆積膜と直接接触するように堆積チャンバの上流で発生させることができる。
【0030】
プラズマは、アンモニアプラズマとの関連で説明する。しかしながら当業者であれば、プラズマが、アンモニアとは異なる反応種を有し得ることを理解するであろう。プラズマは例えば、窒素又はヒドラジンを含み得る。アンモニアプラズマは、適切なプラズマ発生プロセス、又は当業者に知られた技術によって発生させることができる。プラズマは例えば、1つ又は複数のマイクロ波(MW)発生器又は高周波(RF)発生器により、発生させることができる。プラズマ周波数は、使用する特定の反応種に応じて、調整することができる。適切な周波数には、2MHz、13.56MHz、40MHz、60MHz、及び100MHzが含まれるが、これらに限られない。
【0031】
幾つかの実施形態ではNHプラズマを、リモートプラズマ源により発生させる。幾つかの実施形態では、プラズマ出力が、約300W以下である。1つ又は複数の実施形態では、プラズマ出力が、約250W以下、200W以下、150W以下、100W以下、50W以下、又は25W以下である。幾つかの実施形態では、プラズマ出力が、約10W~約200Wの範囲、又は約25W~約175Wの範囲、又は約50W~約150Wの範囲にある。
【0032】
幾つかの実施形態では、プラズマをリモートプラズマ源で発生させ、プラズマに存在するラジカルがケイ素-窒素前駆体と、又は基板と、又は基板上の膜と反応可能なように、処理チャンバの処理領域に流し込む。幾つかの実施形態においてリモートプラズマは、処理チャンバの処理領域におけるイオンよりも数多くのラジカルがあるように、構成されている。
【0033】
幾つかの実施形態ではNHラジカルを、プラズマ源の代わりに、又はプラズマ源に加えて、熱線により発生させる。本明細書及び添付特許請求の範囲で使用するように、「熱線」という用語は、要素にわたって流れる流体中にラジカルを発生させるために充分な温度に加熱可能なあらゆる要素を意味する。幾つかの実施形態において、熱線は、1つ又は複数の金属フィラメントである(例えばタングステン)。幾つかの実施形態では、熱線が、1つ若しくは複数のタングステン、タンタル又はルテニウムを含有するフィラメントである。幾つかの実施形態では、フィラメント温度を、約200℃~約1500℃の範囲、又は約1000℃~約1500℃の範囲、又は1100℃~約1400℃の範囲に維持する。幾つかの実施形態では、フィラメント温度を、約1500℃未満、1400℃未満、1300℃未満、又は1200℃未満の温度に維持する。ラジカル種を発生させるために熱線を使用する幾つかの実施形態では、基板を低温(すなわち、約25℃以下)に保つ。
【0034】
堆積の間、基板100の温度は、制御することができる。幾つかの実施形態では、基板100を、約25℃以下の温度に冷却する。このような冷却は、あらゆる適切な手段によって達成可能であり、この手段には、基板支持体の温度を変えること、又は基板表面に冷却したガスを流すことが含まれるが、これらに限られない。幾つかの実施形態では、基板支持体が、基板温度を伝導作用で変えるように制御可能な冷却装置を含む。1つ又は複数の実施形態では、使用する気体類(これには反応体及び/又はキャリアガスが含まれる)を冷却して、基板温度を局所的に変化させる。幾つかの実施形態では、冷却装置が、基板温度を伝導作用で変化させるために基板表面に隣接したチャンバ内部に配置されている。
【0035】
図2Aを参照すると、基板100を、ケイ素-窒素前駆体及び反応体に暴露して、基板に流動性膜210を形成する。図2Aに図示された流動性膜210は、フィーチャ内にしかないが、当業者であれば、これが単に説明のための例示に過ぎないことを理解するであろう。
【0036】
流動性膜210は、あらゆる適切な温度に維持された基板に、堆積させることができる。幾つかの実施形態では基板を、約-100℃~約25℃の範囲、又は約-75℃~約20℃の範囲、又は約-50℃~約10℃の範囲、又は約-25℃~約0℃の範囲に維持する。理論に縛られるつもりはないが、ケイ素窒素前駆体の重合を促進するために、温度は低く保つ。幾つかの実施形態では基板を、約25℃未満、20℃未満、15℃未満、10℃未満、5℃未満、0℃未満、-10℃未満、-20℃未満、-30℃未満、-40℃未満、-50℃未満、-60℃未満、-70℃未満、-80℃未満、又は-90℃未満の温度に保つ。
【0037】
流動性膜210は、あらゆる適切な圧力で形成することができる。幾つかの実施形態では、流動性膜210の形成に用いる圧力が、約0.5T(トル)~約50Tの範囲、又は約0.75T~約25Tの範囲、又は約1T~約10Tの範囲、又は約2T~約8Tの範囲、又は約3T~約6Tの範囲にある。
【0038】
図2Bを参照すると、堆積後に流動性膜210を硬化させて、硬化した膜220を形成する。流動性膜210は、あらゆる適切な手段で硬化させることができる。幾つかの実施形態では、流動性膜210を、プラズマ内における又は熱線からのラジカルに暴露することによって、硬化させる。幾つかの実施形態では、流動性膜210を、紫外線(UV)に暴露することによって硬化させる。幾つかの実施形態では、流動性膜210を、紫外線(UV)を使用せずに硬化させる。幾つかの実施形態では、流動性膜210を、実質的にラジカルに暴露することのみによって硬化させる。本明細書及び添付特許請求の範囲で使用するように、「実質的にラジカルに暴露することのみによって硬化される」という用語は、流動性膜210の約90%以上、95%以上、98%以上、又は99%以上が、ラジカルにより硬化されることを意味する。
【0039】
幾つかの実施形態では、硬化した膜を、後堆積処理プロセスに供する。幾つかの実施形態では、後堆積処理プロセスが、基板表面又は堆積された膜を研磨、エッチング、還元、酸化、ヒドロキシ化、アニール、UV硬化、電子線硬化又はベーキングするための少なくとも1つのプロセスを含む。
【0040】
図2Bを参照すると、硬化した膜220が、基板100に形成される。ギャップ内には、ギャップフィルの部分的な膜が、側壁111、112及び底部115に沿って形成される。この膜が形成されるにつれて、底部がギャップフィル材料で充填されるより前に、ギャップの頂部が閉鎖されると、継ぎ目が形成され得る。継ぎ目形成は、アスペクト比がより高いフィーチャで比較的生じやすい。それと言うのも、フィーチャの頂部における膜はピンチクローズ(pinch close)する傾向があり、これによってボイドが、堆積されたギャップフィル内に封入されてしまうからである。この関連で使用するように、「継ぎ目」という用語は、側壁111と側壁112との間にある何らかの空間又はボイドを意味し、ここでボイド容積の体積は、ギャップ又はその他フィーチャの体積の1%超である。幾つかの実施形態では、堆積され硬化させたSiN膜が、実質的に継ぎ目を有さない。
【0041】
開示された実施形態についての硬化した膜は、窒素原子の、ケイ素原子に対する比率が、比較的高い。幾つかの実施形態において、硬化したSiN膜は、窒素原子の、ケイ素原子に対する比率が、約0.7以上、0.8以上、0.9以上、又は1.0以上である。幾つかの実施形態において、硬化したSiN膜は、窒素原子の、ケイ素原子に対する比率が、約1.0、1.1、1.2又は1.33という下限から、約1.33、1.4又は1.5という上限の範囲にある。幾つかの実施形態において、硬化されたSiN膜は、実質的に炭素原子を含まない。この関連で使用するように、「実質的に炭素原子を含まない」という用語は、炭素原子が、原子基準で、硬化した膜中で約5%以下、2%以下、又は1%以下であることを意味する。
【0042】
本明細書全体にわたり、「1つの実施形態」、「或る実施形態」、「1つ又は複数の実施形態」又は「実施形態」について言及した場合、実施形態との関連で説明した特定の特徴、構造、材料又は特性が、開示された少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。よって、本明細書を通じて様々な箇所で「1つ又は複数の実施形態において」、「或る実施形態において」、「1つの実施形態において」、又は「実施形態において」のような文言が現れた場合、必ずしも、本開示の同じ実施形態について言及しているわけではない。さらに、特定の特徴、構造、材料又は特性は、1つ又は複数の実施形態において、適切に組み合わせることができる。
【0043】
ここに開示した内容は、特定の実施形態について言及しながら説明したものの、当業者であれば、説明したこれらの実施形態が、単に本開示の原理原則や用途を例証するためのものに過ぎないことを理解するであろう。本開示の技術思想及び範囲から外れない限りにおいて、本開示の方法及び装置について様々な修正及び変更を行うのが可能なことは、当業者には明らかであろう。よって本開示には、添付特許請求の範囲内及びその均等の範囲内にある修正及び変更が含まれ得る。
図1
図2A
図2B