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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-30
(45)【発行日】2022-10-11
(54)【発明の名称】不織布製造方法
(51)【国際特許分類】
   D04H 1/728 20120101AFI20221003BHJP
   D01D 5/04 20060101ALI20221003BHJP
   D01F 2/00 20060101ALI20221003BHJP
   D04H 1/425 20120101ALI20221003BHJP
【FI】
D04H1/728
D01D5/04
D01F2/00 Z
D04H1/425
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021507121
(86)(22)【出願日】2020-02-20
(86)【国際出願番号】 JP2020006826
(87)【国際公開番号】W WO2020189170
(87)【国際公開日】2020-09-24
【審査請求日】2021-08-19
(31)【優先権主張番号】P 2019050644
(32)【優先日】2019-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001988
【氏名又は名称】特許業務法人小林国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中川 洋亮
(72)【発明者】
【氏名】金村 一秀
(72)【発明者】
【氏名】竹上 竜太
(72)【発明者】
【氏名】井上 和臣
【審査官】藤原 敬士
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-176151(JP,A)
【文献】特開2009-052163(JP,A)
【文献】特開2008-223187(JP,A)
【文献】特開2009-256824(JP,A)
【文献】特開2004-238749(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04H 1/00 - 18/04
D01F 2/00
D01D 1/00 - 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒にファイバ材が溶解している溶液とコレクタとの間に電圧を印加し、前記溶液を前記コレクタへ向けて噴出することにより形成したファイバを、前記コレクタで不織布として捕集する不織布製造方法において、
前記不織布の目付をW(g/m)、帯電量の絶対値を(kV)としたときに、
0.03</W<0.15
を満たす不織布製造方法。
【請求項2】
2(kV)≦(kV)≦20(kV)
を満たす請求項1記載の不織布製造方法。
【請求項3】
前記溶媒は、複数の化合物の混合物である請求項1または2記載の不織布製造方法。
【請求項4】
前記溶媒の沸点が80℃以下である請求項1~3のいずれか1項に記載の不織布製造方法。
【請求項5】
前記溶媒は、ジクロロメタンとメタノールとを含む請求項1~4のいずれか1項に記載の不織布製造方法。
【請求項6】
前記ファイバ材が、セルロース系ポリマーである請求項1~5のいずれか1項に記載の不織布製造方法。
【請求項7】
前記セルロース系ポリマーは、セルロースアシレートである請求項6記載の不織布製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不織布製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ファイバから形成された不織布が知られている。不織布は、種々の分野における用途開発が盛んに行われている。期待される用途には例えば断熱材、吸音材、フィルタなどが挙げられ、また、医療用や細胞の足場材としての利用も期待される。
【0003】
不織布は、例えば、電界紡糸法により製造される。電界紡糸法は、エレクトロスピニング法などとも呼ばれ、ファイバ材(溶媒にファイバ材が溶解した溶液)とコレクタとの間に電圧を印加し、一方をプラス(+)他方を-マイナス(-)に帯電させてファイバ材をコレクタへ向けて噴出させてファイバを形成し、形成したファイバをコレクタで捕集することにより不織布を形成するものである。
【0004】
また、下記特許文献1、2には、帯電風を送風して不織布を除電する構成が記載されている。こうすることで、厚みを薄く及び孔径を小さく抑えることができる。つまり、不織布を構成するファイバは、不織布と同じ極性に帯電するため、ファイバ同士の間には斥力(反発し合う力)が生じるが、除電により斥力を抑える(小さくする)ことで、厚み及び孔径を小さく抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-291397号公報
【文献】特開2007-092213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、不織布をフィルタとして用いる場合、孔径の異なる複数枚の不織布を、上流側から下流側へ向けて段階的に孔径が小さくなるように積層し、大きな異物から順に各層で段階的に濾過することがある。しかしながら、この場合、層の境界に、異物などの濾過対象物が集中してしまうといった問題があった。
【0007】
本発明は、上記背景を鑑みてなされたものであり、一端面から他端面に向かって境界なく孔径が変化する不織布を製造可能な不織布製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の不織布製造方法は、溶媒にファイバ材が溶解している溶液とコレクタとの間に電圧を印加し、溶液をコレクタへ向けて噴出することにより形成したファイバを、コレクタで不織布として捕集する不織布製造方法において、不織布の目付をW(g/m)、帯電量の絶対値を(kV)としたときに、0.03</W<0.15を満たす。
【0009】
2(kV)≦(kV)≦20(kV)を満たすことが好ましい。
【0010】
溶媒は、複数の化合物の混合物であることが好ましい。
【0011】
溶媒の沸点が80℃以下であることが好ましい。
【0012】
溶媒は、ジクロロメタンとメタノールとを含むことが好ましい。
【0013】
ファイバ材が、セルロース系ポリマーであることが好ましい。
【0014】
セルロース系ポリマーは、セルロースアシレートであることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、一端面から他端面に向かって境界なく孔径が変化する不織布を製造可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】支持体の幅方向から観察した不織布製造設備の概略図である。
図2】支持体の長手方向から観察した不織布製造設備の概略図である。
図3】不織布の断面拡大画像と厚み方向の各位置における輝度との関係を示す説明図である。
図4】不織布の断面拡大画像と厚み方向の各位置における輝度との関係を示す説明図である。
図5】不織布の検証結果を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1図2に示すように、本発明の不織布製造設備10は、電界紡糸法を用いてファイバ11の形成及び不織布20の製造をするためのものであり、溶液調製部23と不織布製造部24とを備える。溶液調製部23は、ファイバ11を形成する溶液23aを調製するためのものである。溶液調製部23は、ファイバ11の素材(ファイバ材)を、溶媒に溶解することにより、溶液23aを調製する。
【0018】
ファイバ材としては、樹脂(ポリマー)を用いることができる。ポリマーとしては、溶媒に溶解することにより溶液にできるポリマーを用いることが好ましく、有機溶媒に溶解することにより溶液にできるポリマーであることがより好ましい。例えば、ポリ乳酸(PLA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリアクリニトリル(PAN)、ポリビニルアルコール(PVA)、セルロース系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、エラストマなどが挙げられる。
【0019】
セルロース系ポリマーはセルロースアシレートであることが好ましい。セルロースアシレートは、セルロースのヒドロキシ基を構成する水素原子の一部または全部がアシル基で置換されているセルロースエステルである。セルロースアシレートは、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)と、セルローストリアセテート(TAC)とセルロースジアセテート(DAC)のいずれかひとつであることが好ましい。
【0020】
溶媒は、1種類の化合物で構成されていてもよいし、2種類以上の化合物で構成されていてもよい。ただし、溶媒は、ファイバ材を溶解する観点の他に、蒸発速度を調整する機能をもつから、蒸発速度を調整する観点では、2種類以上の化合物で構成された混合物である方が好ましい。具体的には、ジクロロメタン(DCM)とメタノール(MeOH)の混合物、クロロホルム(CHCl)、水、ジメチルホルムアミド(DMF)などが挙げられる。また、溶媒としては、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルアセテート、エチルアセテート、プロピルアセテート、ブチルアセテート、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ヘキサン、シクロヘキサン、四塩化炭素、ベンゼン、キシレン、N-メチルピロリドン、ジエチルエーテル、ジオキサン、1-メトキシ-2-プロパノール、トルエン、アセトン、テトラヒドロフランなどを用いることができる。これらは、単独で使用してもよいし、2種類以上を混合して使用してもよい。
【0021】
溶媒は、沸点が80℃以下であることが好ましい。なお、溶媒が複数の化合物の混合物である場合には、質量割合が最も多い化合物の沸点を、溶媒の沸点としてみなす。なお、溶媒が3種以上の化合物の混合物であり、質量割合が最も多い化合物が複数ある場合には、それらのうち沸点が最も高い化合物の沸点を溶媒の沸点とみなす。例えば、溶媒が化合物aと化合物bと化合物cとの混合物であり、(化合物aの質量):(化合物bの質量):(化合物cの質量)=40:40:20というように、質量割合が最も多い化合物が化合物aと化合物bとの2つである場合には、化合物aと化合物bとのうち沸点が高い一方の沸点を溶媒の沸点とみなす。溶媒は有機化合物であること、すなわち有機溶媒であることが好ましい。
【0022】
不織布製造部24は、ノズルユニット25と、集積部26と、電源27と、除電器28と、帯電量計29とを備える。ノズルユニット25は、後述する支持体30の幅方向に長く形成されている(図1参照)。また、本実施形態では、前述のように支持体30の幅方向に長いノズルユニット25を、支持体30の長手方向に並べて配置しており、本実施形態では、3つのノズルユニット25を配置している(ノズルユニット25を3列設けている)(図2参照)。これらノズルユニット25には、ノズルユニット25の長手方向(すなわち、支持体30の幅方向)に沿って複数(本実施形態では3つ)のノズル25aが並べて配されている(図1参照)。各ノズル25aには、溶液調製部23によって調製された溶液23aが供給され、溶液23aは、各ノズル25aから集積部26へ向けて吐出される。なお、ノズルユニット25の数、及び、各ノズルユニット25に設けるノズル25aの数については、本実施形態に限定されず、適宜変更できる。
【0023】
集積部26は、コレクタ52と、支持体供給部57と、支持体巻取部58とを有する。コレクタ52はノズル25aから吐出された溶液23aを誘引し、形成されたファイバ11を捕集して不織布20を得るためのものであり、本実施形態では、ファイバ11を後述の支持体30上に捕集する。コレクタ52は、金属製の帯状物で環状に形成された無端ベルトで構成され、ローラ61、62に張り渡され、ローラ61、62の回転に伴って循環移動する。なお、図1では、図面の煩雑化を避けるため、支持体供給部57、支持体巻取部58、ローラ61、62、及び、後述する除電器28、帯電量計29については図示を省略している。
【0024】
コレクタ52とノズルユニット25(ノズル25a)との間には電源27により電圧が印加される。これにより、コレクタ52とノズル25aとのうち一方がプラス(+)に帯電し、他方がマイナス(-)に帯電する。こうすることで、溶液23aがコレクタ52側へ誘引され、ノズル25aからコレクタ52へ向けて噴出される。コレクタ52は、電源27によって電圧が印加されることにより帯電する素材から形成されていればよく、例えば、ステンレス製とされる。なお、本実施形態では、ノズル25aを(+)、コレクタ52を(-)に帯電させているが、ノズル25aとコレクタ52との極性は逆であってもよい。また、コレクタ52とノズル25aとの一方をアースして電位を0とする構成としてもよい。
【0025】
支持体供給部57は、例えば、帯状のアルミニウムシートからなる支持体30をコレクタ52に供給する。支持体30は、コレクタ52の移動に伴って移動し、ノズルユニット25の下方を通過する。この間に、ノズル25aから噴出したファイバ11が支持体30上に順次捕集されて帯状の不織布20が形成される。この後、不織布20から支持体30が剥がされ、支持体30は、支持体巻取部58に巻き取られる。このようにして形成された不織布20は、ファイバ11同士が絡み合い、また、重なり合うことで、厚みを有するとともに、複数の孔を有するものである(図3参照)。
【0026】
なお、加熱工程を設け、支持体30とともに不織布20を加熱、または、支持体30を剥がした後に不織布20を単体で加熱してもよい。不織布20を加熱することで、不織布20から残留応力(捕集の際にファイバ11に蓄積された力であり、ファイバ11を湾曲させている力)が除去され、ファイバ11が直線化される(図4参照)。
【0027】
除電器28は、不織布20の除電を行うための除電風(帯電風)を不織布20へ向けて送風する。本実施形態では、支持体30の長手方向(不織布20の搬送方向)に並べられたノズルユニット25(ノズル25a)の間に除電器28を配置している(図2参照)。除電器28の近傍(本実施形態では、不織布20の搬送方向上流側(以下、単に上流側と称する場合がある)には、不織布20の帯電量を測定するための帯電量計29が設置されている。そして、上流側の除電器28は、同じく上流側の帯電量計29により測定された不織布20の帯電量に基づいて除電風の極性及び帯電量を決定する。また、不織布20の搬送方向下流側(以下、単に下流側と称する場合がある)の除電器28は、同じく下流側の帯電量計29により測定された不織布20の帯電量に基づいて除電風の極性及び帯電量を決定する。この除電風が不織布20に到達することで不織布20が除電され、不織布20の帯電量が減少する。
【0028】
ここで、不織布20を構成するファイバ11は不織布と同じ極性に帯電するため、不織布20を構成するファイバ11同士の間には斥力(反発し合う力)が生じる。そして、不織布20の帯電量が多くなるほど斥力が大きくなり、ファイバ11同士が離間して不織布20の厚みが厚くまた孔径も大きくなり、不織布20がまとまりのなく肥大化したものとなってしまう。一方、不織布20の帯電量が少なくなるほど斥力が小さくなり、ファイバ11同士の反発が足りずに厚みを確保すること及び孔径を均質に保つことが難しく、不織布20がつぶれてフイルム化したものとなってしまう。
【0029】
このため、本実施形態では、不織布20の帯電量の絶対値を(kV)としたときに、2(kV)≦(kV)≦20(kV)を満たすように、帯電量計29により測定された不織布20の帯電量に基づいて除電器28から不織布20に供給する電荷の極性及び電荷量を制御している。こうすることで、肥大化及びフイルム化が防止され、適度な厚み及び孔径の不織布20を得られる。なお、以下では、帯電量の絶対値(kV)を、単に帯電量(kV)と称する場合がある。
【0030】
また、本実施形態では、不織布20の目付(単位面積あたりの重さ)をW(g/m)としたときに、「0.03</W<0.15」を満たすように、不織布20の帯電量(kV)を制御している。つまり、「/W」が所定の範囲内に保たれるように、目付W(g/m)が大きくなる(不織布20の厚みが厚くなる)に連れて帯電量(kV)を大きくしている。こうすることで、不織布20の厚みが厚くなるに連れてファイバ11同士の間の斥力が大きくなるので、図3図4に示すように、一端面(本実施形態ではコレクタ52側の面)から他端面(本実施形態ではノズル25a側の面)へ向かって境界なく孔径が変化(本実施形態では拡大)する不織布20が得られる。
【0031】
図3図4では、図の上段に、「0.03</W<0.15」を満たすように帯電量(kV)を制御して製造した不織布20の断面拡大画像を示し、図の下段に、この不織布20の厚み方向の各位置における輝度(断面拡大画像の輝度)を示している。また、図3は、加熱工程を介さずに形成された不織布20を示しており、図4は、加熱工程を介して形成された不織布20(図3の不織布20を加熱工程で加熱したもの)を示している。
【0032】
図3図4において、断面拡大画像には、ファイバ11が白く写り、孔が黒く写る。すなわち、断面拡大画像では、ファイバ11部分の輝度が高く、孔部分の輝度が低い。このため、断面拡大画像の輝度が高いほどファイバ11が密であり(繊維密度が高く)孔径も小さく、反対に、輝度が低いほどファイバ11が疎であり(繊維密度が低く)孔径も大きいことを示している。そして、図3図4からは、「0.03</W<0.15」を満たすように帯電量(kV)を制御して製造した不織布20が、コレクタ52側からノズル25a側へ向かって境界なく孔径が拡大していることが確認できた。このように、厚み方向において境界なく孔径が拡大している不織布20は、孔径の異なる2枚の不織布を積層してフィルタとして用いた場合のように層同士の境界部分に除去対象物が集中してしまうといったことがないので、フィルタとして用いる場合に特に好適である。
【0033】
なお、本実施形態では、帯電量(kV)及び目付W(g/m)は、ファイバ11の捕集中の一時点におけるリアルタイムの値を示すものである。つまり、前述のように帯電量(kV)については帯電量計29により測定したリアルタイムの帯電量を示している。また、目付W(g/m)については、ノズル25aから噴出された溶液23aの量に基づいてリアルタイムの目付を算出して用いている。しかし、本発明はこれに限定されず、帯電量(kV)及び目付W(g/m)として、ファイバ11の捕集が終了した時点における最終的な値を用いてもよい。
【0034】
また、本実施形態では、帯電量(kV)として、帯電量計29で測定された実測値を用いる例で説明をしたが、帯電量計29を廃止し、帯電量(kV)として理論値を用いてもよい。この場合、電源27の印加電圧及び除電器28からの除電風の帯電量などに基づいて帯電量(kV)の理論値を算出すればよい。さらに、本実施形態では、目付W(g/m)として、ノズル25aから噴出された溶液23aの量に基づいて算出された理論値を用いる例で説明をしたが、本発明はこれに限定されない。ファイバ11の捕集が終了した時点における最終的な目付W(g/m)としては、製造された不織布20の単位面積あたりの重さを実際に測定することによって得られた実測値を用いることも可能である。
【0035】
図5に、帯電量(kV)と目付W(g/m)との関係を検証した検証結果を示す。検証では、帯電量(kV)が「0.03</W<0.15」の範囲内であるものを適用例(適用例1~8)、帯電量(kV)が「0.03</W<0.15」の範囲外であるものを参考例(参考例1~3)とし、これら適用例1~8と参考例1~3とで帯電量(kV)、目付W(g/m)、ファイバ材、溶媒、濃度を異ならせて不織布20を製造した。そして、このようにして製造した適用例1~8及び参考例1~3の不織布20それぞれについて、繊維密度比を算出し、算出した繊維密度比に基づいて評価した。
【0036】
なお、図5においては、目付W(g/m)及び帯電量(kV)として、ファイバ11の捕集が終了した時点における最終的な値を用い、/Wについてもこの値を用いて算出している。また、濃度は、ファイバ材の質量をM1、溶媒の質量をM2としたときに、{M1/(M1+M2)}×100の値である。さらに、繊維密度比は、不織布20の一端面側の繊維密度(断面画像の輝度)に対する他端面側の繊維密度(断面画像の輝度)の割合を算出した値である。また、評価は、繊維密度比が80%を下回り、厚み方向における孔径の変化が十分に大きいものを「A」、繊維密度比が80%以上であるものの90%は下回っており、厚み方向における孔径の変化が大きいものを「B」、繊維密度比が90%以上であるものの95%は下回っており、厚み方向における孔径の変化が確認できるものを「C」、繊維密度比が95%以上であり、厚み方向における孔径の変化を確認することが困難なものを「D」とした。
【0037】
適用例1~8及び参考例1~3の不織布20の製造条件及び評価は、図5に示す通りである。なお、参考例2については、ファイバ11が解れて支持体30から不織布20を剥離できず、繊維密度比を算出できなかったため、繊維密度比については「-」と記し、評価を「D」としている。以上の検証により、帯電量(kV)が「0.03</W<0.15」の範囲内とすることで、厚み方向において孔径の変化を生じさせることが可能であり、特にフィルタとして用いた場合に有効な不織布20を製造できることが確認できた。帯電量(kV)と目付W(g/m)との関係は、0.05</W<0.13が好ましく、0.09</W<0.12がより好ましい。
【符号の説明】
【0038】
10 不織布製造設備
11 ファイバ
20 不織布
23 溶液調製
23a 溶液
24 不織布製造部
25 ノズルユニット
25a ノズル
26 集積部
27 電源
28 除電器
29 帯電量計
30 支持体
52 コレクタ
57 支持体供給部
58 支持体巻取部
61、62 ローラ
図1
図2
図3
図4
図5