(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-30
(45)【発行日】2022-10-11
(54)【発明の名称】成膜装置
(51)【国際特許分類】
C23C 14/58 20060101AFI20221003BHJP
H01M 10/058 20100101ALI20221003BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20221003BHJP
【FI】
C23C14/58
H01M10/058
H01M10/0562
(21)【出願番号】P 2021529726
(86)(22)【出願日】2020-12-22
(86)【国際出願番号】 JP2020047942
(87)【国際公開番号】W WO2021132238
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2021-05-26
(31)【優先権主張番号】P 2019236187
(32)【優先日】2019-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(72)【発明者】
【氏名】宜保 学
(72)【発明者】
【氏名】廣野 貴啓
(72)【発明者】
【氏名】磯 佳樹
【審査官】山本 一郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/092041(WO,A1)
【文献】特開2010-242200(JP,A)
【文献】特開2016-156061(JP,A)
【文献】特開2015-102975(JP,A)
【文献】特開2014-114467(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/58
H01M 10/058
H01M 10/0562
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基
材を搬送する搬送部と、
前記搬送部によって搬送される前記基
材表面の成膜領域に
窒素およびリチウムを含有する電解質膜を成膜する成膜部と、
前記成膜部よりも前記基材の移動方向に対して下流となる位置に設けられ、前記成膜部での成膜後に前記搬送部によって搬送される前記基
材表面の前記電解質膜に接触して前記成膜領域に含まれる異物を除去する異物除去部と、
前記異物除去部よりも前記基材の移動方向に対して下流となる位置に設けられ、前記異物除去部による異物除去後に前記搬送部によって搬送される前記基材の前記成膜領域に、電解質膜を再成膜する再成膜部と、
を備え
、
前記搬送部は、前記基材裏面が接触して巻回される搬送ローラと第1メインローラと第2メインローラとを有し、
前記成膜部は、前記第1メインローラに巻回された前記基材の表面に向けて原料を出射する成膜源を有し、
前記再成膜部は、前記第2メインローラに巻回された前記基材の表面に向けて原料を出射する成膜源を有し、
前記搬送部において、前記搬送ローラと前記第1メインローラと前記第2メインローラとが、巻回された前記基材裏面に対して前記電解質膜の成膜される前記基材表面が拡がるように位置している、
成膜装置。
【請求項2】
前記異物除去部は、前記基材を挟んで前記搬送ローラの反対側に位置し、前記搬送ローラに巻回された前記基材表面の前記電解質膜に相対的に移動した状態で接触する接触部を有し、
接触部が円筒状のローラとされて、前記ローラが前記基材の搬送方向と交差する方向の軸線を有する、
請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記異物除去部において、前記基材裏面が前記搬送ローラに接触して前記搬送ローラに巻回され、前記基材に近接する前記電解質膜の部分に比べて前記電解質膜の表面が伸長した状態で前記ローラが前記電解質膜に接触する、
請求項2に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記接触部が発泡樹脂材料からなるか、または、前記接触部が不織布からなる、
請求項
2または請求項3に記載の成膜装置。
【請求項5】
前記ローラは、異物における前記電解質膜表面から突出した部分を引っ掛けて、前記電解質膜から異物を分離するとともに、異物における前記電解質膜表面よりも凹んだ部分を押圧して、前記電解質膜から異物を分離することが可能なように網目状あるいは棒状となった部分を有し、
前記ローラが前記基
材の前記搬送方向と逆方向に回転される、
請求項
2又は請求項
4のいずれかに記載の成膜装置。
【請求項6】
前記ローラと前記基
材表面とは、前記接触部の接触点において互いに接触し、
前記ローラの回転方向に沿って前記接触点から見た前記ローラの接線方向は、前記基
材の前記搬送方向とは反対である、
請求項
5に記載の成膜装置。
【請求項7】
前記異物除去部は、吸引部を有し、
前記吸引部は、前記ローラが接触する前記基材の近傍に位置する吸引ノズルと、前記吸引ノズルに接続された吸引ポンプと、を有する、
請求項6に記載の成膜装置。
【請求項8】
前記成膜部では、前記第1メインローラ付近のプラズマ発生領域にプラズマを発生させるとともに、
前記再成膜部では、前記第2メインローラ付近のプラズマ発生領域にプラズマを発生させ、
異物によって膜厚方向に導通しない前記電解質膜を成膜する、
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の成膜装置。
【請求項9】
前記電解質膜として、LiPONの成膜をおこなう、
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の成膜装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は成膜装置に関し、特に、成膜された膜における絶縁性を向上する際に好適な技術に関する。
本願は、2019年12月26日に日本に出願された特願2019-236187号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池の研究がおこなわれている。なかでも、負極、電解質、正極すべてが固体からなる全固体電池は、安全性と高エネルギー密度、長寿命を兼ね備えた電池としてその開発が期待されている。
【0003】
全固体電池の電解質膜の製造方法として、リチウムを含む成膜が必要であり、特許文献1に記載されるように、蒸着によっておこなわれている。
このような電解質膜の成膜工程においては、例えば、リチウムとリンとを含む蒸着源を用いて、窒素を含むプラズマによって成膜して、窒素を含有した膜を成膜することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載された技術では、成膜した膜の特性が例えばリチウムイオン電池の性能として充分でない。このため、リチウムイオン電池の性能向上を可能とするため、膜質改善、特に、電解質膜における絶縁性の向上が望まれている。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、以下の目的を達成しようとするものである。
1.絶縁性を充分に有する成膜を可能とすること。
2.電池製造に充分な電解質膜の製造を可能とすること。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の成膜装置は、基材を搬送する搬送部と、
前記搬送部によって搬送される前記基材表面の成膜領域に窒素およびリチウムを含有する電解質膜を成膜する成膜部と、
前記成膜部よりも前記基材の移動方向に対して下流となる位置に設けられ、前記成膜部での成膜後に前記搬送部によって搬送される前記基材表面の前記電解質膜に接触して前記成膜領域に含まれる異物を除去する異物除去部と、
前記異物除去部よりも前記基材の移動方向に対して下流となる位置に設けられ、前記異物除去部による異物除去後に前記搬送部によって搬送される前記基材の前記成膜領域に、電解質膜を再成膜する再成膜部と、
を備え、
前記搬送部は、前記基材裏面が接触して巻回される搬送ローラと第1メインローラと第2メインローラとを有し、
前記成膜部は、前記第1メインローラに巻回された前記基材の表面に向けて原料を出射する成膜源を有し、
前記再成膜部は、前記第2メインローラに巻回された前記基材の表面に向けて原料を出射する成膜源を有し、
前記搬送部において、前記搬送ローラと前記第1メインローラと前記第2メインローラとが、巻回された前記基材裏面に対して前記電解質膜の成膜される前記基材表面が拡がるように位置している、
ことにより上記課題を解決した。
本発明の成膜装置は、前記異物除去部は、前記基材を挟んで前記搬送ローラの反対側に位置し、前記搬送ローラに巻回された前記基材表面の前記電解質膜に相対的に移動した状態で接触する接触部を有し、
接触部が円筒状のローラとされて、前記ローラが前記基材の搬送方向と交差する方向の軸線を有する、ことができる。
本発明の成膜装置は、前記異物除去部において、前記基材裏面が前記搬送ローラに接触して前記搬送ローラに巻回され、前記基材に近接する前記電解質膜の部分に比べて前記電解質膜の表面が伸長した状態で前記ローラが前記電解質膜に接触する、
ことができる。
本発明の成膜装置は、前記接触部が発泡樹脂材料からなるか、または、前記接触部が不織布からなる、
ことができる。
本発明において、前記ローラは、異物における前記電解質膜表面から突出した部分を引っ掛けて、前記電解質膜から異物を分離するとともに、異物における前記電解質膜表面よりも凹んだ部分を押圧して、前記電解質膜から異物を分離することが可能なように網目状あるいは棒状となった部分を有し、
前記ローラが前記基材の前記搬送方向と逆方向に回転される、
ことが好ましい。
本発明の成膜装置は、前記ローラと前記基材表面とは、前記接触部の接触点において互いに接触し、
前記ローラの回転方向に沿って前記接触点から見た前記ローラの接線方向は、前記基材の前記搬送方向とは反対である、
ことが可能である。
また、本発明において、前記異物除去部は、吸引部を有し、
前記吸引部は、前記ローラが接触する前記基材の近傍に位置する吸引ノズルと、前記吸引ノズルに接続された吸引ポンプと、を有する、
ことができる。
また、本発明の成膜装置は、前記成膜部では、前記第1メインローラ付近のプラズマ発生領域にプラズマを発生させるとともに、
前記再成膜部では、前記第2メインローラ付近のプラズマ発生領域にプラズマを発生させ、
異物によって膜厚方向に導通しない前記電解質膜を成膜する、
ことができる。
さらに、前記電解質膜として、LiPONの成膜をおこなう、
ことができる。
【0008】
本発明の成膜装置は、基板を搬送する搬送部と、前記搬送部によって搬送される前記基板の成膜領域に電解質膜を成膜する成膜部と、前記成膜部での成膜後に前記搬送部によって搬送される前記基板の前記電解質膜に接触して前記成膜領域に含まれる異物を除去する異物除去部と、を備える。
これにより、基板の成膜領域に付着しているパーティクル等の異物がある場合でも、成膜後にパーティクル等の異物を除去することができる。したがって、パーティクル等の異物によって膜厚方向に電解質膜が導通されることがない。このため、パーティクル等の異物によって膜厚方向に電解質膜の絶縁が破れることを防止することができる。絶縁性が所定の状態である電解質膜を製造可能とすることができる。
【0009】
本発明の成膜装置は、前記異物除去部による異物除去後に前記搬送部によって搬送される前記基板の前記成膜領域に、電解質膜を再成膜する再成膜部、を備える。
これにより、パーティクル等の異物が除去された前記電解質膜の上に、新たに電解質膜を積層して再び成膜する。下側、つまり、基板に近接する位置にある電解質膜は、異物除去部によってパーティクル等の異物が除去されているので、たとえ、上側に再成膜された電解質膜に異物が含まれていた場合でも、このパーティクル等の異物が、膜厚方向で電解質膜を貫通してしまうことを防止できる。したがって、積層されたこれら二層の電解質膜は、パーティクル等の異物によって膜厚方向に導通されることがない。
さらに、パーティクル等の異物が除去された前記電解質膜において、除去された異物に対応する部分を新たに充填した状態で、電解質膜を再び成膜することができ、積層された電解質膜の表面に沿った方向、または、基板の表面に沿った方向において、膜厚の均一性を維持することができる。
【0010】
本発明において、前記異物除去部が前記基板に対して相対的に移動した状態で前記電解質膜に接触する接触部を有する。
これにより、異物除去部と基板との間で相対移動速度を所定の範囲に設定して、パーティクル等の異物を確実に除去するために必要な当接状態(接触状態)を実現する。同時に、成膜した電解質膜の表面に必要以上に影響を与えて、電解質膜そのものにダメージを与えてしまうことを防止することができる。
【0011】
本発明の成膜装置には、前記接触部が発泡樹脂材料からなる。
これにより、異物除去部と基板との当接状態(接触状態)を、異物除去部による異物除去に好適な状態として、パーティクル等の異物を確実に除去することができる。
具体的には、発泡樹脂材料における網目状となった部分で、電解質膜表面に、好適な圧力で当接するとともに、発泡樹脂材料における網目状となった部分で、異物における電解質膜表面から突出した部分を引っ掛けて、電解質膜から異物を分離することができる。あるいは、発泡樹脂材料における網目状あるいは棒状となった部分で、異物における電解質膜表面よりも凹んだ部分を押圧して、電解質膜から異物を分離することができる。さらに、発泡樹脂材料における網目状あるいは棒状となった部分で、電解質膜表面よりも埋め込まれた異物を押圧して、異物の表面を覆う薄い電解質とともに、基板に付着している電解質膜から異物を分離することができる。なお、このような異物除去の機序には、よく判明していない部分もあるが、本発明の接触部により、異物除去は好適におこなうことが可能である。
【0012】
ここで、発泡樹脂材料とは、例えば、スポンジ状の樹脂を意味している。また、異物除去部が設けられる成膜部における電解質膜の成膜条件に関連して、例えば、真空中におけるガス放出等の影響、耐熱性、あるいは、電解質膜への当接状態に影響する強度等を考慮して、樹脂材質を選択することができる。
発泡樹脂材料としては、例えば、ポリエステル、ポリウレタン等を例示することができる。
【0013】
なお、異物除去部と基板との当接状態(接触状態)とは、電解質膜の表面を擦って異物を掻き取るために必要な状態とされ、当接圧、当接速度、異物へ引っ掛かる状態、異物を分離する分離力等を含んでいる。同時に、異物除去部と基板との当接状態(接触状態)とは、電解質膜の表面ダメージを与えないために、当接圧、当接速度、を含んでいる。
【0014】
また、本発明において、前記接触部が不織布からなる。
これにより、異物除去部と基板との当接状態(接触状態)を、異物除去部による異物除去に好適な状態として、パーティクル等の異物を確実に除去することができる。
具体的には、不織布における繊維状となった部分で、電解質膜表面に、好適な圧力で当接するとともに、不織布における繊維状となった部分で、異物における電解質膜表面から突出した部分を引っ掛けて、電解質膜から異物を分離することができる。あるいは、不織布における繊維状あるいは棒状となった部分で、異物における電解質膜表面よりも凹んだ部分を押圧して、電解質膜から異物を分離することができる。さらに、不織布における繊維状あるいは棒状となった部分で、電解質膜表面よりも埋め込まれた異物を押圧して、異物の表面を覆う薄い電解質とともに、基板に付着している電解質膜から異物を分離することができる。なお、このような異物除去の機序には、よく判明していない部分もあるが、本発明の接触部により、異物除去は好適におこなうことが可能である。
【0015】
なお、ここで、異物除去部と基板との当接状態(接触状態)とは、電解質膜の表面を擦って異物を掻き取るために必要な状態とされ、当接圧、当接速度、異物へ引っ掛かる状態、異物を分離する分離力等を含んでいる。同時に、異物除去部と基板との当接状態(接触状態)とは、電解質膜の表面ダメージを与えないために、当接圧、当接速度、等を含んでいる。
【0016】
本発明の成膜装置は、前記接触部が円筒状のローラとされる。
これにより、異物除去部と基板との当接状態(接触状態)が、電解質膜の表面を擦って異物を掻き取るために必要な状態とされ、当接圧、当接速度、異物へ引っ掛かる状態、異物を分離する分離力等を、異物を電解質膜から分離するために好適な状態に制御することが容易となる。これにより、電解質膜の表面ダメージを与えないで、基板に付着している電解質膜から異物を分離することができる。
【0017】
また、本発明の成膜装置は、前記ローラが前記基板の搬送方向と交差する方向の軸線を有する。
これにより、異物除去部と基板との当接状態(接触状態)が、電解質膜の表面を擦って異物を掻き取るために必要な状態とされ、当接圧、当接速度、異物へ引っ掛かる状態、異物を分離する分離力等を、異物を電解質膜から分離するために好適な状態に制御することが容易となる。これにより、電解質膜の表面ダメージを与えないで、基板に付着している電解質膜から異物を分離することができる。
また、接触部の交換を容易におこなうことが可能となる。
【0018】
また、前記ローラが前記基板の前記搬送方向と逆方向に回転される。
これにより、好ましい異物除去部と基板との当接状態(接触状態)が、電解質膜の表面を擦って異物を掻き取るために必要な状態とされ、当接圧、当接速度、異物へ引っ掛かる状態、異物を分離する分離力等を、異物を電解質膜から分離するために好適な状態に制御することが容易となる。これにより、電解質膜の表面ダメージを与えないで、基板に付着している電解質膜から異物を分離することができる。
前記ローラと前記基板とは、前記接触部の接触点において互いに接触し、前記ローラの回転方向に沿って前記接触点から見た前記ローラの接線方向は、前記基板の搬送方向とは反対であることができる。
【0019】
さらに、接触部がブラシ状、フィン状、パッド状とされることもできる。上記のいずれの場合でも、回転軸に接触部を設けて、回転軸を回転させながら、電解質膜に接触部を当接することが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、成膜した電解質膜において、充分な絶縁性を有することが可能な成膜装置を提供することができるという効果を奏することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明に係る成膜装置の第1実施形態を示す模式図である。
【
図2】本発明に係る成膜装置の第1実施形態による製造工程を示す工程図である。
【
図3】本発明に係る成膜装置の第1実施形態による製造工程を示す工程図である。
【
図4】本発明に係る成膜装置の第1実施形態による製造工程を示す工程図である。
【
図5】本発明に係る成膜装置の第2実施形態における異物除去部を示す模式拡大図である。
【
図6】本発明に係る成膜装置の第3実施形態における異物除去部を示す模式拡大図である。
【
図7】本発明に係る成膜装置の第4実施形態における異物除去部を示す模式拡大図である。
【
図8】本発明に係る実験例および比較例の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る成膜装置の第1実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態における成膜装置を示す模式図であり、
図1において、符号10は、成膜装置である。
図1において、X軸、Y軸及びZ軸方向は相互に直交する3軸方向を示し、X軸及びY軸は、水平方向、Z軸方向は鉛直方向を示す。
【0023】
本実施形態に係る成膜装置10は、基材(基板)F上に、窒素およびリチウムを含有する電解質膜FL(
図4参照)を形成するものとされる。具体的には、イオン伝導性を有すると同時に電子に対する非伝導性を有するために、バッテリや二次電池用の固体電解質として適しているLiPON膜を成膜することができる。
【0024】
本実施形態に係る成膜装置10は、
図1に示すように、図示しない真空チャンバ(チャンバ)と、搬送部11と、成膜部12と、再成膜部13と、異物除去部14と、を有する。
本実施形態に係る成膜装置10は、ロールトゥロール装置である場合を説明するが、本発明は、この構成に限定されるものではなく、基板搬送中に枚葉の基板に成膜する構成とすることもできる。
【0025】
成膜装置10における真空チャンバは、密閉可能な構造を有し、真空ポンプを有する排気ラインに接続される。これにより、真空チャンバは、その内部が所定の減圧雰囲気に排気または維持可能に構成される。
【0026】
搬送部11は、真空チャンバ内で、基材Fを搬送するものとされる。本実施形態において、搬送部11は、巻出しローラ111と、巻取りローラ112と、第1メインローラ113と、第2メインローラ114と、複数の搬送ローラ115,116と、を有する。
【0027】
巻出しローラ111、巻取りローラ112は、それぞれ図示しない回転駆動部を備え、
図1における紙面に鉛直なZ方向軸線周りに所定の回転速度で、矢印方向にそれぞれ回転可能に構成されている。
第1メインローラ113、第2メインローラ114は、それぞれ図示しない回転駆動部を備え、
図1における紙面に鉛直なZ軸線周りに所定の回転速度で、矢印方向にそれぞれ回転可能に構成されている。
【0028】
巻出しローラ111は、成膜部12より基材Fの搬送方向上流側に設けられ、基材Fを第1メインローラ113に送り出す機能を有する。なお、巻出しローラ111と第1メインローラ113との間の適宜の位置に独自の回転駆動部を備えていない適宜の数のガイドローラ(図示略)が配置されてもよい。
【0029】
第1メインローラ113は、
図1における紙面に鉛直なZ方向軸線周りに回転可能に構成されている。第1メインローラ113は、基材Fの搬送方向において巻出しローラ111と巻取りローラ112との間に配置される。第1メインローラ113は、
図1におけるY方向における下部の少なくとも一部が、後述するシールド(遮蔽部)123に設けられた開口部123aを通って後述する蒸着源121に臨む位置に配置される。
【0030】
第1メインローラ113は、所定の間隔を空けて開口部123aに対向し、蒸着源121とY方向に対向する。第1メインローラ113は、ステンレス鋼、鉄、アルミニウム等の金属材料で筒状に構成され、その内部に例えば図示しない温調媒体循環系等の温調機構が設けられてもよい。第1メインローラ113の大きさは特に限定されないが、典型的には、Z方向の幅寸法が基材FのZ方向の幅寸法よりも大きく設定される。
【0031】
複数の搬送ローラ115,116は、
図1における紙面に鉛直な軸線周りにそれぞれ回転可能に構成されている。複数の搬送ローラ115,116は、駆動されてもよいし、駆動されなくてもよい。
これにより、真空チャンバ内において、巻出しローラ111から巻取りローラ112へ向かって基材Fが所定の搬送速度で搬送される。
【0032】
成膜部12は、
図1に示すように、真空チャンバの外壁により区画された成膜室であり、基材Fの成膜領域に電解質膜FL1(
図2参照)を成膜する。成膜部12は、その内部に蒸着源121と、ガス供給部122と、シールド123と、プラズマ発生電源124と、マグネット125と、を有する。また、成膜部12は、図示しない排気ラインに接続されている。第1メインローラ113は、成膜部12を構成する。
【0033】
再成膜部13は、
図1に示すように、真空チャンバの外壁により区画された成膜室であり、異物除去部14による異物除去後に、基材Fの成膜領域に電解質膜FL2(
図4参照)を再成膜する。再成膜部13は、その内部に蒸着源131と、ガス供給部132と、シールド133と、プラズマ発生電源134と、マグネット135と、を有する。
また、再成膜部13は、図示しない排気ラインに接続されている。第2メインローラ114は、再成膜部13を構成する。
【0034】
成膜部12と再成膜部13とは、同一材料の成膜を可能とされる。成膜部12と再成膜部13とは、連通していてもよいし、仕切板等によって区画されることもできる。
【0035】
成膜部12の蒸着源(成膜源供給部)121は、リチウム金属を蒸発させるリチウム蒸着源であり、例えば、抵抗加熱式蒸着源、誘導加熱式蒸着源、電子ビーム加熱式蒸着源等で構成される。
成膜部12には、成膜ガスを供給するガス供給部122が接続される。ガス供給部122は、プラズマ発生部を構成する。ガス供給部122は、窒素を含む成膜ガスを成膜領域の近傍の領域に供給可能とされる。
【0036】
成膜部12は、図示しない排気ラインによって、所定の減圧雰囲気に維持されると共に、成膜部12内のガス圧が所定の圧力に調整される。
成膜部12には、
図1に示すように、蒸着源(成膜源)121と第1メインローラ113との間に、成膜領域を規定する成膜領域規定部として、開口部123aを有するシールド(遮蔽部)123が設けられる。
【0037】
シールド123は、板状の導体とされ、その電位は例えばグランド(接地状態)とされる。シールド123は、第1メインローラ113に巻回された基材Fに対して、略平行となるように配置される。
また、第1メインローラ113の内部位置、つまり、基材Fの裏面(他面)側となる位置には、マグネット125が配置される。
【0038】
マグネット125は、第1メインローラ113の外方に向けて磁束を形成するように配置される。マグネット125は、開口部123aの付近の領域に向けて磁束を形成するように配置される。
【0039】
また、第1メインローラ113には、プラズマ発生電源124が接続されてプラズマ発生電力が供給可能とされる。プラズマ発生電源124は、交流電源または直流電源とされる。プラズマ発生電源124は、プラズマ発生部を構成する。
【0040】
異物除去部14は、
図1に示すように、成膜部12と再成膜部13との間に配置される。ここで、文言「成膜部12と再成膜部13との間」とは、搬送部11によって搬送される基材Fの搬送位置における上流から下流に向けて、成膜部12、異物除去部14、再成膜部13という順番に並ぶという意味である。
【0041】
異物除去部14は、ローラ141と、吸引部142と、を有する。
ローラ141は、円筒状とされ、成膜部12で成膜領域に電解質膜FL1が成膜された基材Fに対して電解質膜FL1に接触する接触部を構成する。
ローラ141は、成膜部12よりも基材Fの移動方向に対して下流となる位置に設けられる。
ローラ141は、基材Fの搬送方向と交差する方向の軸線(シャフト)を有する。ローラ141は、基材Fの搬送方向と逆方向に回転される。
接触部としての円筒状のローラ141は、発泡樹脂材料からなる。具体的には、ローラ141は、スポンジ状の樹脂が円筒状に形成された外表面を有する。
【0042】
ローラ141は、発泡樹脂材料における網目状となった表面を有する。ここで、文言「網目状」とは、スポンジのように、繊維状あるいは棒状の部分と、この繊維状あるいは棒状の部分が、他の繊維状あるいは棒状の部分に対して互いに離間するように形成された空間上の部分のことを意味する。
【0043】
ローラ141は、この網目状の部分が電解質膜FL1に対して相対的に移動する。
ローラ141は、異物における電解質膜FL1表面から突出した部分を引っ掛けて、電解質膜FL1から異物を分離することが可能なように網目状あるいは棒状の部分を有する。
【0044】
また、ローラ141は、この網目状または棒状の部分が電解質膜FL1表面に好適な圧力で当接する。
ローラ141は、異物における電解質膜FL1表面よりも凹んだ部分を押圧して、電解質膜FL1から異物を分離することが可能なように網目状あるいは棒状となった部分を有する。
さらに、ローラ141は、電解質膜FL1表面よりも埋め込まれた異物を押圧して、異物の表面を覆う薄い電解質とともに、基板に付着している電解質膜FL1から異物を分離することができる網目状あるいは棒状となった部分を有する。
【0045】
ローラ141には、基材Fを挟んでその反対側に、搬送ローラ116が位置する。搬送ローラ116は、その表面に基材Fが巻回されることで、搬送ローラ116に接触する基材Fの面に対して、電解質膜FL1の成膜された基材Fの面が拡がるように位置している。つまり、基材Fに近接する電解質膜FL1の部分に比べて、電解質膜FL1の表面側が伸長した状態で、電解質膜FL1にローラ141の表面が接触する。
【0046】
吸引部142は、ローラ141が接触する基材Fの近傍に位置する吸引ノズル142aと、この吸引ノズル142aに接続された吸引ポンプ142bと、を有する。
吸引ノズル142aは、ローラ141と基材Fとの接触する位置の近傍に開口する。吸引ノズル142aは、基材Fと接触していたローラ141が、回転によって基材Fから離間する箇所の付近に位置に開口する。つまり、吸引ノズル142aは、基材Fの搬送方向に対して逆方向に回転するローラ141に対して、ローラ141よりも上流側に開口する。なお吸引部142を設けない構成も可能である。
【0047】
吸引ポンプ142bは、吸引ノズル142aによって、吸引したパーティクル等の異物を吸引して外部に排出する、または、タンク等に貯留しておくことができる。
なお、吸引部142は、吸引ノズル142aによって、吸引したパーティクル等の異物を吸引するために、ガスを噴出する噴出ノズルを有することもできる。
【0048】
異物除去部14は、ローラ146と、吸引部147と、を有することもできる。
ローラ146は、円筒状とされ、ローラ141が接触した後の成膜部12で成膜領域に電解質膜FL1が成膜された基材Fに対して電解質膜FL1に接触する接触部を構成する。
ローラ146は、ローラ141よりも基材Fの移動方向に対して下流となる位置に設けられる。
ローラ146は、基材Fの搬送方向と交差する方向の軸線(シャフト)を有する。ローラ146は、基材Fの搬送方向と逆方向に回転される。
接触部としての円筒状のローラ146は、発泡樹脂材料からなる。具体的には、ローラ146は、スポンジ状の樹脂が円筒状に形成された外表面を有する。
【0049】
ローラ146は、ローラ141と同様に、発泡樹脂材料における網目状となった表面を有する。ここで、文言「網目状」とは、スポンジのように、繊維状あるいは棒状の部分と、この繊維状あるいは棒状の部分が、他の繊維状あるいは棒状の部分に対して互いに離間するように形成された空間上の部分のことを意味する。
【0050】
ローラ146は、この網目状の部分が電解質膜FL1に対して相対的に移動する。
ローラ146は、異物における電解質膜FL1表面から突出した部分を引っ掛けて、電解質膜FL1から異物を分離することが可能なように網目状あるいは棒状の部分を有する。
【0051】
また、ローラ146は、この網目状または棒状の部分が電解質膜FL1表面に好適な圧力で当接する。
ローラ146は、異物における電解質膜FL1表面よりも凹んだ部分を押圧して、電解質膜FL1から異物を分離することが可能なように網目状あるいは棒状となった部分を有する。
さらに、ローラ146は、電解質膜FL1表面よりも埋め込まれた異物を押圧して、異物の表面を覆う薄い電解質とともに、基板に付着している電解質膜FL1から異物を分離することができる網目状あるいは棒状となった部分を有する。
【0052】
ローラ146には、基材Fを挟んでその反対側に、搬送ローラ116が位置する。搬送ローラ116は、その表面に基材Fが巻回されることで、搬送ローラ116に接触する基材Fの面に対して、電解質膜FL1の成膜された基材Fの面が拡がるように位置している。つまり、基材Fに近接する電解質膜FL1の部分に比べて、電解質膜FL1の表面側が伸長した状態で、電解質膜FL1にローラ146の表面が接触する。
【0053】
ローラ146は、ローラ141と同等の構成とされる。ローラ146とローラ141とによって、パーティクル等の除去を2回おこなうように構成されることができる。
また、ローラ146は、ローラ141に対して、硬度、発泡状態、あるいは、押圧力や回転速度等の当接状態などが、異なる構成とされてもよい。これにより、ローラ146とローラ141とが、異なる大きさのパーティクルを除去するように構成されることができる。
【0054】
吸引部147は、ローラ146が接触する基材Fの近傍に位置する吸引ノズル147aと、この吸引ノズル147aに接続された吸引ポンプ147bと、を有する。
吸引ノズル147aは、ローラ146と基材Fとの接触する位置の近傍に開口する。吸引ノズル147aは、基材Fと接触していたローラ146が、回転によって基材Fから離間する箇所の付近に位置に開口する。つまり、吸引ノズル147aは、基材Fの搬送方向に対して逆方向に回転するローラ146に対して、ローラ146よりも上流側に開口する。なお吸引部147を設けない構成も可能である。
【0055】
吸引ポンプ147bは、吸引ノズル147aによって、吸引したパーティクル等の異物を吸引して外部に排出する、または、タンク等に貯留しておくことができる。
なお、吸引部147は、吸引ノズル147aによって、吸引したパーティクル等の異物を吸引するために、ガスを噴出する噴出ノズルを有することもできる。
【0056】
基材Fは、例えば、所定幅に裁断された長尺のフィルムである。基材Fは、銅、アルミニウム、ニッケル、ステンレス等の金属で構成される。基材の材料は金属に限られない。基材Fの材料として、OPP(延伸ポリプロピレン)フィルム、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム、PPS(ポリフェニレンサルファイド)フィルム、PI(ポリイミド)フィルム等の樹脂フィルムが用いられてもよい。基材Fの厚さは、特に限定されず、例えば数μm~数十μmである。また、基材Fの幅や長さについても特に制限はなく、用途に応じて適宜決定可能である。
【0057】
再成膜部13は、異物除去部14よりも基材Fの移動方向に対して下流となる位置に設けられる。
再成膜部13の蒸着源(成膜源供給部)131は、リチウム金属を蒸発させるリチウム蒸発源であり、例えば、抵抗加熱式蒸発源、誘導加熱式蒸発源、電子ビーム加熱式蒸発源等で構成される。
再成膜部13には、成膜ガスを供給するガス供給部132が接続される。ガス供給部132は、プラズマ発生部を構成する。ガス供給部132は、窒素を含む成膜ガスを成膜領域の近傍の領域に供給可能とされる。
【0058】
再成膜部13は、図示しない排気ラインによって、所定の減圧雰囲気に維持されると共に、再成膜部13内のガス圧が所定の圧力に調整される。
再成膜部13には、
図1に示すように、蒸着源(成膜源)131と第2メインローラ114との間に、成膜領域を規定する成膜領域規定部として、開口133aを有するシールド(遮蔽部)133が設けられる。
【0059】
シールド133は、板状の導体とされ、その電位は例えばグランド(接地状態)とされる。シールド133は、第2メインローラ114に巻回された基材Fに対して、略平行となるように配置される。
また、第2メインローラ114の内部位置、つまり、基材Fの裏面(他面)側となる位置には、マグネット135が配置される。
【0060】
マグネット135は、第2メインローラ114の外方に向けて磁束を形成するように配置される。マグネット135は、開口133aの付近の領域に向けて磁束を形成するように配置される。
【0061】
また、第2メインローラ114には、プラズマ発生電源134が接続されてプラズマ発生電力が供給可能とされる。プラズマ発生電源134は、交流電源または直流電源とされる。プラズマ発生電源134は、プラズマ発生部を構成する。
【0062】
成膜装置10は、以上のような構成を有する。
なお図示せずとも、成膜装置10は、ローラ141,146、吸引部142,147、蒸着源121,131や搬送部11、真空ポンプ、ガス供給部122,132、プラズマ発生電源124,134、マグネット125,135等を制御する制御部を備える。上記制御部は、CPUやメモリを含むコンピュータで構成され、成膜装置10の全体の動作を制御する。
【0063】
また、成膜装置10は、図に示す構成に限定されるものではない。成膜装置10の構成は、例えば、成膜部12、再成膜部13、ローラ141,146、吸引部142,147、蒸着源121,131や搬送部11、真空ポンプ、ガス供給部122,132、プラズマ発生電源124,134、マグネット125,135等の配置や大きさ等、および、蒸着源、供給するガス種、供給電位、などは適宜変更することが可能である。あるいは、成膜装置10の上記構成要素のうちいずれかの構成を設けないことも可能である。
【0064】
本実施形態の成膜装置10における成膜方法について説明する。
なお、以下の成膜方法としては、基材F上に、窒素およびリチウムを含有する電解質膜FLを形成する方法について説明する。特に、LiPONからなる電解質膜FLを形成する方法について説明する。
【0065】
LiPONは、イオン伝導性を有すると同時に電子に対する非伝導性を有することに基づき、バッテリや二次電池用の固体電解質として適している。このために使用される典型的な層系では、数μm程度の層厚さを有するLiPON層を成膜可能とする。
【0066】
電子ビーム被覆法を用いたLiPON層の析出も可能である。この場合、リン酸リチウム(LiPO)が、直接に蒸発材料に作用する電子ビームによって、窒素含有の反応性ガス雰囲気内で蒸発させられる。
【0067】
少なくとも元素リチウム、リンおよび酸素を包含する蒸発材料を、真空チャンバ内部で熱的な蒸発装置によって蒸発させることにより、基板上にLiPON層を析出する。
このとき、蒸発材料を直接に電子ビームによって蒸発させる。同時に、窒素含有の成分、好ましくは窒素含有の反応性ガスが真空チャンバ内へ導入され、そして立ち上がる蒸気粒子雲がプラズマによって貫通される。
【0068】
窒素含有の反応性ガスとしては、たとえばアンモニア(NH3)、笑気(NO2)または窒素(N2)のようなガスが適している。窒素含有の反応性ガスの導入に対して、たとえば窒素含有のプレカーサ(前駆体)を真空チャンバ内へ導入することもできる。
【0069】
出発材料(原料)の蒸発は、有利には放射線ヒータを用いて間接的に加熱してもよい。
この場合、通電または誘導加熱されたボート型蒸発器(ルツボ)内部で蒸発材料が直接的に加熱される。
【0070】
プラズマの発生は、ホロー陰極アーク放電によって実施されてもよい。これにより、高い密度のプラズマを発生させることができる。また、マイクロ波を用いた励起によってもプラズマの発生を実施することができる。さらに、誘導式の入力結合によってもプラズマを発生させることができる。
さらに、磁界重畳されたグロー放電によってプラズマを発生させて、大きな延在面にわたって極めて均質なプラズマ伝播を可能にしてもよい。また、パルスプラズマを使用することで、析出プロセス安定性を向上できる。
【0071】
図2~
図4は、本実施形態における成膜装置による製造工程を示す工程図である。
まず、真空チャンバ内を排気し、成膜部12、再成膜部13、異物除去部14を所定の真空度に維持する。
また、基材Fを支持する搬送部11を駆動させ、基材Fを巻出しローラ111から巻取りローラ112に向けて搬送させる。基材Fは、成膜部12および再成膜部13において、X方向に沿って搬送(移動)される。
なお、基材Fには、あらかじめ、正極あるいは集電体などが所定の領域に形成されている。
【0072】
成膜部12には、搬送部11によって、電解質膜FL1の成膜されていない基材F0が、巻出しローラ111から第1メインローラ113に沿う方向に搬送される。
成膜部12では、ガス供給部122から第1メインローラ113付近の領域に向けて、窒素を含有するガスが成膜領域の近傍の領域に導入される。
また、成膜部12では、接続されたプラズマ発生電源124から、第1メインローラ113にプラズマ発生電力が供給される。同時に、成膜部12では、接続された磁界発生電源から供給された電力によって、マグネット125が磁束を発生する。
これにより、プラズマ発生領域にプラズマが発生する。
【0073】
成膜部12では、蒸着源121が、例えば電子ビーム等によって加熱されてリチウムを含む原料を蒸発させ、第1メインローラ113上の基材Fに向けて出射するリチウムを含む原料の蒸気流を形成する。
このとき、リチウム原料の蒸気流は、シールド123の開口部123aによって、基材Fへの到達領域を規制される。
シールド123の開口部123a付近の領域において、プラズマ化された窒素ガスによって活性化されたリチウムを含む蒸着粒子は、窒素を含有した電解質膜FL1として基材F0の表面に成膜されて基材F1となる。
【0074】
このとき、成膜部12で成膜された電解質膜FL1には、
図2に示すように、パーティクルFP等の異物が存在している。
成膜部12で電解質膜FL1が成膜された基材F1は、搬送部11によって、異物除去部14へと搬送される。
【0075】
異物除去部14では、まず、ローラ141と基材F1とが当接する。これにより、基材F1の搬送方向と逆回転するローラ141が、基材F1に成膜された電解質膜FL1の表面に当接する。
このとき、異物除去部14では、ローラ141と基材F1との当接状態(接触状態)を、異物除去部14による異物除去に好適な状態として設定する。具体的には、基材F1の搬送速度と、基材F1の搬送方向と逆回転するローラ141の回転速度とを、所定の範囲となるように設定する。
【0076】
すると、ローラ141の網目状の部分が電解質膜FL1に対して相対的に移動する。
ローラ141は、パーティクルFP等の異物が電解質膜FL1表面から突出した部分を網目状あるいは棒状の部分に引っ掛けて、電解質膜FL1からパーティクルFP等の異物を分離する。
【0077】
また、ローラ141の網目状または棒状の部分が、電解質膜FL1表面に好適な圧力で当接している。
ローラ141は、網目状あるいは棒状となった部分が、パーティクルFP等の異物における電解質膜FL1表面よりも凹んだ部分を押圧して、電解質膜FL1から異物を分離する。
さらに、ローラ141は、網目状あるいは棒状となった部分が、電解質膜FL1表面よりも埋め込まれたパーティクルFP等の異物を押圧して、パーティクルFP等の異物の表面を覆う薄い電解質とともに、基材F1に付着している電解質膜FL1からパーティクルFP等の異物を分離する。
【0078】
次いで、異物除去部14においては、ローラ141によって電解質膜FL1からパーティクルFP等の異物を分離された基材F2が、搬送部11によって、ローラ146へと搬送される。
【0079】
異物除去部14では、ローラ146と基材F2とが当接する。これにより、基材F2の搬送方向と逆回転するローラ146が、基材F2に成膜された電解質膜FL1の表面に当接する。
このとき、異物除去部14では、ローラ146と基材F2との当接状態(接触状態)を、異物除去部14による異物除去に好適な状態として設定する。具体的には、基材F2の搬送速度と、基材F2の搬送方向と逆回転するローラ146の回転速度とを、所定の範囲となるように設定する。
【0080】
すると、ローラ146の網目状の部分が電解質膜FL1に対して相対的に移動する。
ローラ146は、パーティクルFP等の異物が電解質膜FL1表面から突出した部分を網目状あるいは棒状の部分に引っ掛けて、電解質膜FL1からパーティクルFP等の異物を分離する。
【0081】
また、ローラ146の網目状または棒状の部分が、電解質膜FL1表面に好適な圧力で当接している。
ローラ146は、網目状あるいは棒状となった部分が、パーティクルFP等の異物における電解質膜FL1表面よりも凹んだ部分を押圧して、電解質膜FL1から異物を分離する。
さらに、ローラ146は、網目状あるいは棒状となった部分が、電解質膜FL1表面よりも埋め込まれたパーティクルFP等の異物を押圧して、パーティクルFP等の異物の表面を覆う薄い電解質とともに、基材F1に付着している電解質膜FL1からパーティクルFP等の異物を分離する。
これにより、基材F3は、
図3に示すように、ローラ141によって電解質膜FL1からパーティクルFP等の異物が分離される。
【0082】
次いで、異物除去部14のローラ146によって電解質膜FL1からパーティクルFP等の異物を分離された基材F3が、搬送部11によって、再成膜部13へと搬送される。
【0083】
再成膜部13では、ガス供給部132から第2メインローラ114付近の領域に向けて、窒素を含有するガスが成膜領域の近傍の領域に導入される。
また、再成膜部13では、接続されたプラズマ発生電源134から、第2メインローラ114にプラズマ発生電力が供給される。同時に、再成膜部13では、接続された磁界発生電源から供給された電力によって、マグネット135が磁束を発生する。
これにより、プラズマ発生領域にプラズマが発生する。
【0084】
再成膜部13では、蒸着源131が、例えば電子ビーム等によって加熱されてリチウムを含む原料を蒸発させ、第2メインローラ114上の基材Fに向けて出射するリチウムを含む原料の蒸気流を形成する。
このとき、リチウムを含む原料の蒸気流は、シールド133の開口133aによって、基材F3への到達領域を規制される。
シールド133の開口133a付近の領域において、プラズマ化された窒素ガスによって活性化されたリチウムを含む蒸着粒子は、窒素を含有した電解質膜として基材F3の表面に成膜される。
これにより、電解質膜FL1に積層して、電解質膜FL2が成膜された基材F4となる。
【0085】
このとき、再成膜部13で基材F4に成膜された電解質膜FL2には、
図4に示すように、パーティクルFP等の異物が存在している。しかし、電解質膜FL1には、
図4に示すように、パーティクルFP等の異物が存在していない。
なお、
図4では、電解質膜FL1に、パーティクルFP等の異物が除去された状態を明示しているが、実際にはこの除去部分にも、再成膜部13によって成膜された電解質膜FL2が入り込み、除去部分に電解質膜が充填された状態となっている。ここで、電解質膜FL2は、電解質膜FL1と同等の組成を有することで、電解質膜FL1と電解質膜FL2とは、ほぼ、単層膜としてみなすことができる。
【0086】
再成膜部13で電解質膜が成膜された基材F4は、搬送部11によって、巻取りローラ112へと搬送される。
これにより、成膜装置10における成膜を終了する。
【0087】
本実施形態における成膜装置10は、異物除去部14によって、電解質膜FL1の成膜時に存在したパーティクルFP等の異物を除去することができる。これにより、電解質膜FL1において、パーティクルFP等の異物によって膜厚方向に導通することを防止できる。これにより、電解質膜FL1における絶縁性を担保することができる。
【0088】
さらに、異物除去部14によってパーティクルFP等の異物が除去された電解質膜FL1に、さらに電解質膜FL2を積層して再成膜することで、電解質膜FL1および電解質膜FL2において、パーティクルFP等の異物によって膜厚方向に導通することを防止できる。
【0089】
さらに、電解質膜FL1にパーティクルFP等の異物が残存していた場合でも、電解質膜FL1のパーティクルFP等の異物と、積層された電解質膜FL2のパーティクルFP等の異物とが、互いに接触することがない。これにより、単一層となる電解質膜FLにおいて、パーティクルFP等の異物によって膜厚方向に導通することを防止できる。
【0090】
これにより、基材Fの成膜領域に付着しているパーティクルFP等の異物がある場合でも、成膜後にパーティクルFP等の異物を除去することができる。したがって、パーティクルFP等の異物によって膜厚方向に電解質膜FLが導通されることがない。このため、パーティクルFP等の異物によって膜厚方向に電解質膜FLの絶縁が破れることを防止することができる。絶縁性が所定の状態である電解質膜FLを製造可能とすることができる。
【0091】
本実施形態においては、異物除去部14が、ローラ141およびローラ146の二本を有する構成としたが、本発明は、これに限定されない。例えば、異物除去部14が、ローラ141一本のみ、あるいは、三本以上のローラを有することもできる。
【0092】
本実施形態においては、異物除去部14における異物除去処理後に、再成膜部13によって、再成膜しているが、本発明は、これに限定されない。例えば、異物除去部14における異物除去処理後に、再成膜しないこともできる。
さらに、再成膜部13における再成膜後に、再成膜部13よりも下流位置において異物除去処理をおこなうこともできる。
【0093】
本実施形態においては、異物除去部14における異物除去処理を挟んで、成膜部12および再成膜部13によって、電解質膜FLを二回に分けて成膜したが、本発明は、これに限定されない。例えば、三回以上となる複数回の成膜をおこなうことも可能である。
この場合、全ての成膜後に毎回異物除去処理をおこなうことができ、複数の成膜部に対して、複数の成膜部と同数の異物除去部を配置することもできる。さらに、この場合、全ての成膜後に毎回異物除去処理をおこなう必要はなく、複数の成膜部に対して、複数の成膜部の数よりも少ない異物除去部を配置することもできる。
【0094】
以下、本発明に係る成膜装置の第2実施形態を、図面に基づいて説明する。
図5は、本実施形態の成膜装置における異物除去部を示す模式拡大図である。本実施形態において、上述した第1実施形態と異なるのは、異物除去部に関する点であり、これ以外の上述した第1実施形態と対応する構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0095】
本実施形態における異物除去部14は、接触部として不織布からなるローラ143を有する。
具体的には、不織布として、クリーンルーム対応の品質とされたコットンリンターやポリエステル繊維などから形成された部材を挙げることができる。
【0096】
ここで、不織布からなるローラ143を用いる場合においても、第1実施形態のローラ141と同様に、電解質膜FL1の成膜時に存在したパーティクルFP等の異物を除去することができる。
【0097】
本実施形態においても、上記の実施形態と同等の効果を奏することができる。
【0098】
以下、本発明に係る成膜装置の第3実施形態を、図面に基づいて説明する。
図6は、本実施形態の成膜装置における異物除去部を示す模式拡大図である。本実施形態において、上述した第1および第2実施形態と異なるのは、異物除去部に関する点であり、これ以外の上述した第1および第2実施形態と対応する構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0099】
本実施形態における異物除去部14は、接触部としてのローラ144,145を有する。本実施形態においてのローラ144,145には、基材Fの逆側となる位置に、搬送ローラ116が設けられていない。また、ローラ144およびローラ145が、基材Fの搬送方向に対して、互いに極めて隣接して配置される。
【0100】
本実施形態においても、上記の実施形態と同等の効果を奏することができる。
【0101】
以下、本発明に係る成膜装置の第4実施形態を、図面に基づいて説明する。
図7は、本実施形態の成膜装置における異物除去部を示す模式拡大図である。本実施形態において、上述した第1~第3実施形態と異なるのは、異物除去部に関する点であり、これ以外の上述した第1~第3実施形態と対応する構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0102】
本実施形態における異物除去部14は、接触部としてのローラ148を有する。
ローラ148は、その外周がブラシ状、あるいは、フィン状に形成される。
フィン状とされたローラ148は、フィンがローラ148の軸線と略平行に形成されるか、あるいは、ローラ148の軸線と角度を有するように交差して形成されることができる。ブラシ状、あるいは、フィン状のローラ148は、可撓性を有する。
【0103】
本実施形態においても、上記の実施形態と同等の効果を奏することができる。
【0104】
さらに、本発明の異物除去部14においては、接触部として、ローラ状の円筒体(例えば、金属製ローラ、プラスチック製ローラ等)の表面にスポンジ部材やブラシ部材を全面に装着したスクラブローラを用いる構成を採用することもできる。あるいは、異物除去部14においては、円盤状の部材から構成され、電解質膜との接触面にブラシやスポンジが装着されたスクラブパッドを用い、このスクラブパッドを回転させながら、電解質膜表面に当接する構成を採用することもできる。
【0105】
接触部として、スクラブローラに装着可能なブラシ材料としては、特に制限はないが、例えば、化学繊維ブラシとしては、ナイロン6、66、610、612タイプ(例えば、東レデュポン社製タイネックス、アズロン社製、φ0.1~1.6)、グリットナイロン繊維(砥粒入りナイロン、例えば、東レ社製トレグリット、デュポン社製タイネックスA、旭化成社製サングリット、ORK社製グリットサンダー等、φ0.25~1.6)、ポリプロピレン繊維(φ0.1~1.5)、塩化ビニル繊維(φ0.1~0.7)、ポリエステル繊維(φ0.3~0.5)、アクリル樹脂繊維、アラミド繊維(商品名:コーネックス、φ0.15~0.55)、フッ素繊維、導電性繊維等を挙げることができる。
【0106】
接触部として採用する繊維としては、例えば、馬毛、豚毛、羊毛、鹿毛、人毛等が挙げられる。また、植物繊維としては、タンピコ(タンピコ麻の葉からとった繊維)、パーム(椰子の実の繊維)、シダ、シュロ、カルカヤ(メガルカヤの根からとった繊維、剛毛)、サイザル(麻からとった繊維)、ブロン(パルミラ椰子の葉からとった繊維)等が挙げられる。また必要に応じて繊維状の金属も用いることができ、例えば、硬鋼線(φ0.1~0.8)、焼入線(φ0.2~0.8)、金メッキ線(φ0.2~0.5)、ラッピング、針金線、鉄線、ステンレス線(φ0.05~0.8)、真鍮線(φ0.06~0.8)、燐青銅(φ0.06~0.6)等が挙げられる。
【0107】
接触部として、スクラブローラに装着可能なスポンジ材料としては、特に制限はないが、ゴムスポンジ・発泡体(例えば、クロロプレンゴムスポンジ、天然ゴムスポンジ、ポリエチレンスポンジ、エチレン・プロピレンゴムスポンジ、ニトリルゴムスポンジ、フッ素スポンジ、シリコーンスポンジ、オプシーラー(登録商標)、ルシーラ(登録商標)等)、ウレタンスポンジ(例えば、軟質ウレタンフォーム(エーテル系)、軟質ウレタンフォーム(エステル系)、硬質ウレタンフォーム、低反発ウレタンフォーム、エネタン(低反発ウレタンフォームに抗菌性付与)等)、ポリエチレンフォーム等を挙げることができる。ポリエチレンフォームとしては、例えば、サンペルカ、オプセル、スーパーオプセル(以上、三和化工社製、商品名)、ソフトロンボード、ソフトロンS(以上、積水化学工業社製、商品名)、トーレペフ(東レ社製、商品名)、ライトロンS、ライトロンボード(以上、積水化成品工業社製、商品名)、サンテックフォーム(旭化成株式会社製、商品名)、モルトフィルター(株式会社イノアックコーポレーション登録商標)等を挙げることができる。
【0108】
あるいは、接触部として用いられるその他の材料としては、EVAフォーム、生分解性ケナフフォーム(第一化学社製)、不織布・フェルト、発泡スチロール等、ベンコット(旭化成株式会社登録商標)、アンティコン(CONTEC社製、商品名)等を挙げることができる。
【0109】
本発明においては、上記の各実施形態における個々の構成を、それぞれ、組み合わせて採用することもできる。
【実施例】
【0110】
以下、本発明にかかる実施例を説明する。
【0111】
ここで、本発明における成膜装置の具体例として、成膜した電解質膜における絶縁状態の確認試験について説明する。
【0112】
上述した
図1に示す成膜装置10により、LiPON膜(電解質膜)を形成し、その膜質として、絶縁性を測定した。
成膜条件を、以下に示す。
【0113】
基材F搬送スピード:0.5~5m/min
基材F:PET樹脂
成膜部12における成膜厚さ:1μm
再成膜部13における成膜厚さ:1μm
【0114】
また、異物除去部14におけるローラ141の諸元を示す。
発泡樹脂材料:モルトフィルターMP-55(株式会社イノアックコーポレーション製)
発泡樹脂材料:ポリエステル
発泡樹脂材料密度:57±5kg/m2
発泡樹脂材料引張強さ:147kPa以上
発泡樹脂材料引張伸び率:200%以上
回転スピード:0.5~5m/min
【0115】
<実験例1~3>
上記のLiPON膜(電解質膜)において、2mm角、10mm角、30mm角の成膜領域を選択し、これを実験例1~3として、電極を形成して膜厚方向における絶縁性を測定した。
ここで、複数の成膜領域において、5MΩ以上とされる規定の絶縁率を満たしたものを「適」とし、規定の絶縁率を満たさなかったものを「不適」として、測定対象の全数に対する「適」の個数をパーセンテージで表した。
その結果を
図8に示す。
図8において、それぞれの結果は、2mm、10mm、30mmとして示している。
【0116】
<比較例1~3>
実験例1~3と同様に成膜するが、異物除去部14による異物除去処理をおこなわないでLiPON膜(電解質膜)において、2mm角、10mm角、30mm角の成膜領域を選択し、これを比較例1~3として、実験例1~3と同様に電極を形成して膜厚方向における絶縁性を測定した。
その結果を
図8に示す。
【0117】
図8に示す結果から、異物除去部14による異物除去処理をおこなうことで、規定の絶縁率を満たした「適」の個数が増加していることがわかる。なお、絶縁率を測定する面積が増大することで、「適」の条件を満たすパーセンテージは低下するが、異物除去部14による異物除去処理をおこなうことで、規定の絶縁率を満たした「適」の個数が増加していることがわかる。
【0118】
<実験例4>
実験例1~3と同様に成膜するが、異物除去部14におけるローラ141の発泡樹脂材料を変更した。
発泡樹脂材料:モルトフィルターMP-65(株式会社イノアックコーポレーション社製)
発泡樹脂材料:ポリエステル
発泡樹脂材料密度:57±5kg/m2
発泡樹脂材料引張強さ:147kPa以上
発泡樹脂材料引張伸び率:200%以上
【0119】
<実験例5>
実験例1~3と同様に成膜するが、異物除去部14におけるローラ141の発泡樹脂材料を変更した。
発泡樹脂材料:モルトフィルターMP-80(株式会社イノアックコーポレーション社製)
発泡樹脂材料:ポリエステル
発泡樹脂材料密度:80±10kg/m2
発泡樹脂材料引張強さ:196kPa以上
発泡樹脂材料引張伸び率:300%以上
【0120】
<比較例4>
実験例1~3と同様に成膜するが、異物除去部14におけるローラ141の発泡樹脂材料を変更した。
発泡樹脂材料:モルトフィルターMP-50(株式会社イノアックコーポレーション社製)
発泡樹脂材料:ポリエステル
発泡樹脂材料密度:30±5kg/m2
発泡樹脂材料引張強さ:147kPa以上
発泡樹脂材料引張伸び率:200%以上
【0121】
<比較例5>
実験例1~3と同様に成膜するが、異物除去部14におけるローラ141の発泡樹脂材料を変更した。
発泡樹脂材料:モルトフィルターMP-40(株式会社イノアックコーポレーション社製)
発泡樹脂材料:ポリエステル
発泡樹脂材料密度:30±5kg/m2
発泡樹脂材料引張強さ:147kPa以上
発泡樹脂材料引張伸び率:200%以上
【0122】
<比較例6>
実験例1~3と同様に成膜するが、異物除去部14におけるローラ141の発泡樹脂材料を変更した。
発泡樹脂材料:モルトフィルターMP-30(株式会社イノアックコーポレーション社製)
発泡樹脂材料:ポリエステル
発泡樹脂材料密度:30±5kg/m2
発泡樹脂材料引張強さ:98kPa以上
発泡樹脂材料引張伸び率:200%以上
【0123】
実験例4,5および比較例4~6においても、実験例1~3と同様にLiPON膜(電解質膜)において、2mm角、10mm角、30mm角の成膜領域を選択し、電極を形成して膜厚方向における絶縁性を測定した。
【0124】
この結果、実験例4,5においても、異物除去部14による異物除去処理をおこなうことで、規定の絶縁率を満たした「適」の個数が増加していることがわかった。
これに対して、比較例4~6においては、異物除去部14による異物除去処理をおこなっても、規定の絶縁率を満たした「適」の個数が増加していないことがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明の活用例として、電解質膜として、LiPONの成膜をおこなう装置や、さらに、絶縁膜として、SiO、SiNの成膜をおこなう装置を挙げることができる。
【符号の説明】
【0126】
10…成膜装置
11…搬送部
12…成膜部
13…再成膜部
14…異物除去部
111…巻出しローラ
112…巻取りローラ
113…第1メインローラ
114…第2メインローラ
115,116…搬送ローラ
121,131…蒸着源(成膜源)
122,132…ガス供給部
123,133…シールド(遮蔽部)
123a,133a…開口部
124,134…プラズマ発生電源
125,135…マグネット
141,143,144,145,146,148…ローラ
142,147…吸引部
142a,147a…吸引ノズル
142b,147b…吸引ポンプ
F…基材(基板)
FL,FL1,FL2…電解質膜
FP…パーティクル