(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】検査支持体用着色ポリエステルフィルム、検査支持体および遮光部材
(51)【国際特許分類】
C08L 67/02 20060101AFI20221004BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20221004BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20221004BHJP
C08K 3/00 20180101ALI20221004BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20221004BHJP
C09J 7/25 20180101ALI20221004BHJP
G01M 11/00 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
C08L67/02
B32B27/36
B32B27/00 M
C08K3/00
C08J5/18 CFD
C09J7/25
G01M11/00 T
(21)【出願番号】P 2017181373
(22)【出願日】2017-09-21
【審査請求日】2020-09-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村中 達也
【審査官】内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-128598(JP,A)
【文献】特開2014-185243(JP,A)
【文献】特開2012-194514(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 67/02
C08K 3/00-3/40
C08J 5/18
B32B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル、着色剤および平均粒径が3.5μm以上の粒子を含む樹脂組成物からなり、
該ポリエステルが、80モル%以上がエチレンテレフタレート単位であるポリエステルであり、
該粒子が、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化チタン、及び耐熱性有機粒子から選ばれる1種以上であり、
該粒子の含有量が0.01~5重量%であり、
透過濃度が1.0以上、かつ、400nm~800nmの波長領域における絶対反射率が
5.0%以下であることを特徴とする
検査支持体用着色ポリエステルフィルム。
【請求項2】
前記着色剤がカーボンブラック粒子である請求項1に記載の
検査支持体用着色ポリエステルフィルム。
【請求項3】
前記着色剤の含有量が0.01~10重量%である請求項1または2に記載の
検査支持体用着色ポリエステルフィルム。
【請求項4】
少なくとも一方の表面の算術平均粗さ(Ra)が80nm以上である請求項1~3のいずれかに記載の
検査支持体用着色ポリエステルフィルム。
【請求項5】
400nm~800nmの波長領域における絶対反射率の最大値と最小値の差(ΔR)が1.0%以下である請求項1~4のいずれかに記載の
検査支持体用着色ポリエステルフィルム。
【請求項6】
前記ポリエステルがポリエチレンテレフタレートである請求項1~5のいずれかに記載の
検査支持体用着色ポリエステルフィルム。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の
検査支持体用着色ポリエステルフィルムと粘着剤層とを積層させた検査支持体。
【請求項8】
請求項1~6のいずれかに記載の
検査支持体用着色ポリエステルフィルムを用いた遮光部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色ポリエステルフィルムに関する。より詳細には、本発明は、例えば、液晶ディスプレイ(以下、LCDと略記する)に用いられる偏光板、位相差板等のLCD構成部材、有機エレクトロルミネッセンス(以下、有機ELと略記する)構成部材、タッチパネル構成部材等、各種ディスプレイ構成部材の検査支持体、またはカメラ、ビデオカメラ、複写機、現像機等の各種光学装置の遮光部材として、好適な着色ポリエステルフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリエステルフィルムを基材とする機能性フィルムが、LCD用偏光板、位相差板、有機EL構成部材などの各種ディスプレイ構成部材の製造用部材として使用されてきた。
【0003】
その中でも、光学的評価を伴う検査工程において、光を透過させて前記部材を検査する場合、前記部材に、検査支持体として粘着剤層を積層させたポリエステルフィルムと貼り合わせた状態で検査を行う。この時、検査支持体で用いるポリエステルフィルムの透明性が高いと、フィルム自体のぎらつきにより、検出したい異物が検出困難になることがある。
【0004】
そこで、前記部材と検査支持体とを貼り合せた積層構成で光学的評価を行う場合、検査支持体で用いるポリエステルフィルムに着色層を設けた着色ポリエステルフィルムを用いることによって遮光性が付与され、ポリエステルフィルムのぎらつきは抑制されるため、検査精度は向上する。
【0005】
また、前記着色ポリエステルフィルムは遮光性を有することから、カメラ、ビデオカメラ、複写機、現像機等の各種光学装置の遮光部材にも用いられる。従来、シャッターや絞りなどの遮光部材には金属が使用されていたが、小型化、軽量化及び低コスト化に伴い、着色ポリエステルフィルムが用いられることが多くなっている。
【0006】
特許文献1には、塗布欠陥を検査する際に、ポリエステルフィルム基材の裏面側からの反射光が検査の障害になる技術課題の存在が示唆されている。当該技術課題に対する対応策として、油性インキを簡易的に裏面のポリエステルフィルムに塗布した対策が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の手法は油性インキの塗布という性格上、検査の安定性に欠けるとともに、検査対象の面積が大きくなるに伴い、フィルムへの油性インク塗布面積が大きくなる。それにより、油性インクを塗布した場所によっては、濃淡ムラが生じ、均一性に乏しくなるなどの課題を抱えることとなるため、大面積での高度なレベルの欠陥検査が必要とされる場合には、当該手法は不向きであった。
そのため、特に検査支持体として、より高度なレベルで、遮光性と反射防止性とを両立させたポリエステルフィルムが必要とされる状況にあった。
【0009】
本発明は上記実情に鑑みなされたものであって、その解決課題は、LCD用偏光板、位相差板、有機EL構成部材、タッチパネル構成部材等、各種ディスプレイ構成部材製造時の検査支持体として、高度なレベルで欠陥検査が容易に行える着色ポリエステルフィルムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記実状に鑑み、鋭意検討した結果、特定の構成からなる着色ポリエステルフィルムを用いることによれば、上記課題を容易に解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明の要旨は、ポリエステル、着色剤および平均粒径が3.5μm以上の粒子を含む樹脂組成物からなり、透過濃度が1.0以上、かつ、400nm~800nmの波長領域における絶対反射率が6.0%以下であることを特徴とする着色ポリエステルフィルムに存する。
【発明の効果】
【0012】
本発明による着色ポリエステルフィルムを用いれば、例えば、粘着剤層を介して、検査支持体として用いた場合、異物検査などの光学的評価を伴う検査工程において、欠陥検出が容易となる。また、ロールtoロール方式で着色ポリエステルフィルムを搬送させる工程において、ロールとフィルムとの摩擦による傷入りを抑えることができるため、上述の検査を阻害することがなく、その工業的価値は高い。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[着色ポリエステルフィルム]
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明の着色ポリエステルフィルムは単層構成であっても2層以上の積層構成であってもよい。
【0014】
着色ポリエステルフィルムに用いるポリエステルは、ホモポリエステルであっても共重合ポリエステルであってもよい。ホモポリエステルからなる場合、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを重縮合させて得られるものが好ましい。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。代表的なポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)等が例示される。一方、共重合ポリエステルのジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸等の一種または二種以上が挙げられ、グリコール成分として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等の一種または二種以上が挙げられる。何れにしても本発明でいうポリエステルとは、通常60モル%以上、好ましくは80モル%以上がエチレンテレフタレート単位であるポリエステルを指す。
【0015】
着色ポリエステルフィルムにおいて、遮光性を付与するために着色剤を含有する必要がある。
本発明における前記着色剤が粒子状の場合、着色剤の一次粒径が0.001~3μmであるものを指す。前記一次粒径は、好ましくは0.005~2μm、より好ましくは0.01~1.5μmである。
前記一次粒径が0.001μm以上であることで、フィルム中における粒子が分散されるため、色ムラを抑制することができる。一方、3μm以下であることで、フィルム幅方向における遮光性能のばらつきが抑えられる。
【0016】
前記着色剤は、1種または2種以上併用して使用することができる。前記着色剤の含有量は好ましくは0.01~10重量%、より好ましくは0.05~7.5重量%、さらに好ましくは0.1~5重量%である。
当該含有量が0.01重量%以上であることで、十分に着色され、所望する遮光性を得ることができる。一方、10重量%以下であることで、生産性が十分に得られることができる。
【0017】
着色剤として、具体的には染料または顔料が挙げられる。
着色ポリエステルフィルムに含有される染料としては、天然染料と合成染料に分類することができ、天然染料としては、インジゴ(藍)等が代表される。合成染料としては、アゾ染料、アントラキノン染料、インジゴイド染料、硫化染料、トリフェニルメタン染料、ピラゾロン染料、スチルベン染料、ジフェニルメタン染料、キサンテン染料、アリザリン染料、アクリジン染料、キノンイミン染料(例えば、アジン染料、オキサジン染料、チアジン染料)、チアゾール染料、メチン染料、ニトロ染料、ニトロソ染料、シアニン色素などが挙げられる。
【0018】
また、着色ポリエステルフィルムに含有される顔料としては、有機顔料と無機顔料とに分類することができる。有機顔料としては、フタロシアニン系、ジオキサジン系、アントラキノン系などの顔料で、代表的なものとして、キナクリドン、ウォッチアングレッド、ジオキサジンバイオレット等が挙げられる。無機顔料としては、チタン白、亜鉛華、鉛白、カーボンブラック、ベンガラ、朱、カドミウム赤、黄鉛、群青、コバルト青、コバルト紫、ジンククロメート等が挙げられる。
【0019】
前記着色剤の中でも、添加量に対して効率良く検査波長領域(400nm~800nm)の遮光性及び反射防止性を得ることが出来る点で、カーボンブラック粒子を用いるのが好ましい。カーボンブラック粒子の具体例としては、チャネルブラック、サーマルブラック、ファーネスブラック等を挙げることができる。カーボンブラック粒子の一次粒径は、好ましくは10~100nm、より好ましくは15~70nm、さらに好ましくは20~50nmである。カーボンブラック粒子の一次粒径が10nm以上とすることで、フィルム中において粒子が分散されるため、フィルムの色ムラが抑制されたり、溶融押出機でのフィルターライフが長くなり、十分な生産性が得られたりすることができる。
また、カーボンブラック粒子の一次粒径が100nm以下とすることで、フィルム幅方向における遮光性能のばらつきが抑えられる場合がある。
【0020】
また、着色ポリエステルフィルムの取扱性および遮光性の観点で、着色剤以外に平均粒径が3.5μm以上の粒子を含むことが重要である。
本発明の着色ポリエステルフィルムは、平均粒径が3.5μm以上の粒子が含まれることによって、着色ポリエステルフィルム表面の粗面化による光散乱性およびフィルム搬送適性を付与することができる。
着色ポリエステルフィルムの作製にあたり、着色剤のみでは着色剤自体の波長依存性による影響が大きくなる。たとえ着色剤の含有量を大きくしても、全ての検査波長領域(400nm~800nm)において高いレベルでの遮光性および反射防止性を保持することは困難である。そこで、着色ポリエステルフィルムに着色剤および平均粒径が3.5μm以上の粒子を含有することによって、全ての検査波長領域(400nm~800nm)での遮光性および反射防止性を保持することが可能となる。
【0021】
前記粒子の種類は、本発明の主旨を損なわない範囲であれば、特に限定されるものではない。具体例としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化チタン等の粒子が挙げられる。また、特公昭59-5216号公報、特開昭59-217755号公報等に記載されている耐熱性有機粒子を用いてもよい。この他の耐熱性有機粒子の例として、熱硬化性尿素樹脂、熱硬化性フェノール樹脂、熱硬化性エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等が挙げられる。さらに、ポリエステル製造工程中、触媒等の金属化合物の一部を沈殿、微分散させた析出粒子を用いることもできる。
中でも汎用的に用いることが可能な点で、シリカ粒子がより好ましい。
【0022】
一方、前記粒子の形状に関しても特に限定されるわけではなく、球状、塊状、棒状、扁平状等のいずれを用いてもよい。また、その硬度、比重、色等についても特に制限はない。これら一連の粒子は、必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
【0023】
前記粒子の平均粒径の下限は3.5μm以上であり、好ましくは4μm以上である。平均粒径が3.5μm以上であることで、可視光線領域において十分な光散乱効果が得られ、遮光性にも寄与する。また、着色ポリエステルフィルムに十分な耐傷性を有することができる。
一方、前記粒子の平均粒径の上限は特に限定はされないが、20μm以下がより好ましく、10μm以下がさらに好ましい。平均粒径が20μm以下であることで、着色ポリエステルフィルムの搬送中に前記粒子の脱落が抑制される。
【0024】
前記粒子の含有量は、好ましくは0.01~10重量%、より好ましくは0.1~5重量%の範囲である。前記粒子の含有量が0.01重量%以上であることにより、十分な光散乱性、機械的特性を得ることが出来る。一方、10重量%以下であることにより、ロールtoロール方式にてフィルムを搬送させる工程において、ロールとの摩擦によってフィルム表面に生じる傷を低減することができる。
【0025】
なお着色ポリエステルフィルムは、前記粒子以外に本発明の主旨を損なわない範囲で、従来公知の酸化防止剤、帯電防止剤、熱安定剤、潤滑剤、紫外線吸収剤等を必要に応じて添加することができる。
【0026】
本発明において、着色ポリエステルフィルムの透過濃度は1.0以上にすることが必要である。透過濃度はISO5/2の方法に準じるもので、光線透過率(%)を用いて下式により算出される。透過濃度が1.0未満の場合は遮光性が不十分であるため、検査工程において検査不良を生じるおそれがある。
透過濃度=log(100/光線透過率)
【0027】
本発明において、平均粒径が3.5μm以上の粒子を含有させることで、粗面化したフィルムを得られる。着色ポリエステルフィルムの光散乱性やフィルム搬送適性を両立させるためには、着色ポリエステルフィルムの算術平均粗さ(Ra)が80nm以上であることが好ましく、より好ましくは90nm以上、さらに好ましくは100nm以上である。
【0028】
着色ポリエステルフィルムの算術平均粗さ(Ra)が80nm以上とすることで、十分な光散乱性が得られるだけでなく、ロールtoロール方式にてフィルムを搬送させる工程において、ロールとフィルムの摩擦によりフィルム表面に傷が低減されるため好ましい。
【0029】
本発明の着色ポリエステルフィルムの光散乱性の基準として、400nm~800nmの波長領域における絶対反射率は6.0%以下であり、好ましくは5.0%以下であり、より好ましくは4.5%以下である。前記波長領域における絶対反射率を6.0%以下とすることで、着色ポリエステルフィルムからの光の反射の影響を抑制し、検査工程における不具合の発生を抑えることができ、遮光部材としても有効である。
【0030】
また、各波長領域での検査精度を上げるには、400nm~800nmの波長領域における絶対反射率の最大値と最小値の差(ΔR)が1.0%以下であることが好ましく、0.8%以下がより好ましく、0.5%以下がさらに好ましい。
前記絶対反射率、前記ΔRは、着色剤の種類および含有量、粒子の平均粒径および含有量などを調整することによって達成することができる。
【0031】
着色ポリエステルフィルムの厚さは、フィルムとして製膜可能な範囲であれば特に限定されるものではないが、用途上好ましくは9μm~250μm、より好ましくは12μm~100μm、さらに好ましくは25μm~75μmの範囲である。
【0032】
続いて、着色ポリエステルフィルムの製造例について具体的に説明するが、以下の製造例に何ら限定されるものではない。
【0033】
着色ポリエステルフィルムに前記着色剤および前記粒子を添加する方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を採用しうる。例えば、ポリエステルを製造する任意の段階において添加することができるが、好ましくはエステル化の段階、もしくはエステル交換反応終了後の段階でもよい。
また、ベント付き混練押出機を用い、エチレングリコールまたは水などに分散させた前記着色剤および前記粒子のスラリーとポリエステル原料とをブレンドする方法、または、混練押出機を用い、乾燥させた前記着色剤および前記粒子とポリエステル原料とをブレンドする方法などによって行われる。
【0034】
前述のポリエステル原料を使用し、ダイから押し出された溶融シートを冷却ロールで冷却固化して未延伸シートを得る方法が好ましい。この場合、シートの平面性を向上させるためシートと回転冷却ドラムとの密着性を高める必要があり、静電印加密着法および/または液体塗布密着法が好ましく採用される。
【0035】
次に得られた未延伸シートは少なくとも一軸方向に延伸されるのが好ましく、中でも二軸方向に延伸されるのがより好ましい。
逐次二軸延伸の場合、最初に前記未延伸シートを一方向にロールまたはテンター方式の延伸機により延伸する。延伸温度は、好ましくは70~120℃、より好ましくは80~110℃であり、延伸倍率は好ましくは2.5~7倍、より好ましくは3.0~6倍である。次いで、一段目の延伸方向と直交する方向に延伸する。延伸温度は通常70~170℃であり、延伸倍率は好ましくは3.0~7倍、より好ましくは3.5~6倍である。そして、引き続き180~270℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、二軸配向フィルムを得る。前記二軸延伸において、一方向の延伸を2段階以上で行う方法を採用することもできる。その場合、最終的に二方向の延伸倍率がそれぞれ上記範囲となるように行うのが好ましい。
【0036】
また、着色ポリエステルフィルムの製造に関しては同時二軸延伸法を採用することもできる。同時二軸延伸法は前記未延伸シートを好ましくは70~120℃、より好ましくは80~110℃で温度コントロールされた状態で機械方向(縦方向)および幅方向(横方向)に同時に延伸し配向させる方法で、延伸倍率としては、面積倍率で好ましくは4~50倍、より好ましくは7~35倍、さらに好ましくは10~25倍である。そして、引き続き、170~250℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、二軸延伸フィルムを得る。上述の延伸方式を採用する同時二軸延伸装置に関しては、スクリュー方式、パンタグラフ方式、リニアー駆動方式等、従来から公知の延伸方式を採用することができる。
【0037】
また本発明の主旨を損なわない範囲において、着色ポリエステルフィルムの少なくとも片面に粘着剤層、離型層、帯電防止層、オリゴマー析出防止層等の塗布層を設けてもよい。
【0038】
前記塗布層を設ける方法の1つとして、前記着色ポリエステルフィルムの延伸工程中にフィルム表面を処理する、いわゆる塗布延伸法(インラインコーティング)を挙げられる。例えば、逐次二軸延伸においては1段目の延伸が終了して、2段目の延伸前に塗布処理を施すことができる。
塗布延伸法により着色ポリエステルフィルム上に塗布層が設けられる場合には、延伸と同時に塗布が可能になると共に塗布層の厚さを延伸倍率に応じて薄くすることができ、着色ポリエステルフィルムとして好適なフィルムを製造できる。
【0039】
着色ポリエステルフィルムに塗布層を設ける方法としては、リバースグラビアコート、ダイレクトグラビアコート、ロールコート、ダイコート、バーコート、カーテンコート等、従来公知の塗工方式を用いることができる。塗工方式に関しては「コーティング方式槇書店 原崎勇次著 1979年発行」に記載例がある。
【0040】
着色ポリエステルフィルム上に塗布層を形成する際の硬化条件に関しては特に限定されるわけではなく、オフラインコーティングにより塗布層を設ける場合、好ましくは120~200℃で1分間~10分間、より好ましくは100~180℃で1分間~10分間熱処理を行うのがよい。また、必要に応じて熱処理と紫外線照射等の活性エネルギー線照射とを併用してもよい。なお、活性エネルギー線照射による硬化のためのエネルギー源としては、従来から公知の装置、エネルギー源を用いることができる。
【0041】
なお、塗布層を設ける前の着色ポリエステルフィルムは、必要に応じてコロナ処理、プラズマ処理等の表面処理を施してもよい。
【0042】
[検査支持体]
続いて、検査支持体について説明する。本発明における検査支持体とは、着色ポリエステルフィルムに粘着剤層を積層させた積層体を指す。
【0043】
前記粘着剤層は、粘着性を有する材料から構成される層を意味し、本発明における主旨を損なわない範囲において、シリコーン系粘着剤、アクリル系粘着剤等、従来から公知の材料を用いることができる。
【0044】
前記粘着剤層は上述の塗布延伸法(インラインコーティング)等のフィルム製造工程内において、着色ポリエステルフィルム上に設けられても良く、一旦製造したフィルム上に系外で塗布する、いわゆるオフラインコーティングを採用してもよく、何れの手法を採用してもよい。
【0045】
また本発明の主旨を損なわない範囲において、検査支持体は粘着剤層が設けられていない面に離型層、帯電防止層、オリゴマー析出防止層等の塗布層を設けてもよい。
【実施例】
【0046】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。また、本発明で用いた測定法は次のとおりである。
【0047】
(1)ポリエステルの極限粘度の測定
ポリエステルに非相溶な他のポリマー成分および顔料を除去したポリエステル1gを精秤し、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の混合溶媒100mlを加えて溶解させ、30℃で測定した。
【0048】
(2)平均粒径(d50:μm)の測定
遠心沈降式粒度分布測定装置(株式会社島津製作所社製SA-CP3型)を使用して測定した等価球形分布における積算(重量基準)50%の値を平均粒径とした。
【0049】
(3)着色剤の一次粒径
試料フィルム小片をエポキシ樹脂にて固定成型した後、ミクロトームで切断し、フィルムの断面を透過型電子顕微鏡にて観察した。フィルム断面中に観察される着色剤の最大径(a)とそれと直交する径(b)とを計測し、下式から一次粒径を求めた。ランダムに抽出された500個の着色剤について同様の測定を行い、相加平均を着色剤の一次粒径とした。
一次粒径=(a+b)/2
【0050】
(4)着色ポリエステルフィルムの厚さ測定
試料フィルムを厚み計(Mahr社製、Mahr 1301, Millimar 1240)によって測定した。
【0051】
(5)着色ポリエステルフィルムの算術平均粗さ(Ra)測定
表面粗さ測定機(小坂研究所製、SE3500)を用い、JIS-B-0601-1994の方法に準じてRaを測定した。なおカットオフ値は80μmとして測定した。
【0052】
(6)着色ポリエステルフィルムの絶対反射率測定
紫外可視赤外分光光度計(日本分光社製、V-670)により、偏光子をN偏光、入射角を5°、走査速度を1000nm/min、データ取り込み間隔を1.0nmとし、波長300nm~800nm領域で連続的に絶対反射率を測定した。測定結果から波長400nm、500nm、600nm、700nm、800nmにおける絶対反射率を抽出した。また、波長400nm~800nmにおける、絶対反射率の最大値と最小値を抽出し、その差をΔRとした。
【0053】
(7)着色ポリエステルフィルムの透過濃度、遮光性評価
ポータブル白黒透過濃度計(伊原電子工業社製、Ihac-T5)を用いて、得られたフィルム単枚の透過濃度を測定した。得られた透過濃度の測定値は、下記評価基準により遮光性の評価を行った。
《評価基準》
A:透過濃度が2.0以上(実用上好ましいレベル)
B:透過濃度が1.0以上2.0未満(実用可能なレベル)
C:透過濃度が1.0未満(実用困難なレベル)
【0054】
(8)着色ポリエステルフィルムの耐傷性評価
ラビングテスター(大平理化工業社製)にて、平坦なステンレス(SUS)板(50mm×70mm)を取り付けたアームの総重量を725g、走査速度6m/min、往復回数10回とし、平坦なSUS板と、操作板側に固定した着色ポリエステルフィルム(200mm×100mm)とを擦り合わせた後、着色ポリエステルフィルム表面に入った傷を評価した。ここで述べる傷とは、フィルムに折れ目が入るほどきつい状態であるものを指す。下記評価基準により耐傷性の評価を行った。
《評価基準》
A:傷は全く入らない。(実用上好ましいレベル)
B:1つ以上の傷が入る。(実用困難なレベル)
【0055】
(9)検査適性評価
光源としてA光源(タングステン電球)、C光源(平均昼光相当の光源)、レーザー発信源としてアルゴンレーザー(スペクトラフィジック社製、波長:514.5nm)、ルビーレーザー(アポロ社製、波長:694nm)、YAGレーザー励起色素レーザー(コンテニュアム社、可変波長域:420~560nm「THG励起」)、YAGレーザー励起色素レーザー(550~740nm「SHG励起」)の計6つの光源、発信源のランプまたはレーザーを使用した検出機((株)メック社製、LSC-6000)を用い、検査支持体の上に樹脂シートを設けた積層体の欠点検出を行った。下記評価基準により検査適性の評価を行った。
《判定基準》
A:全ての検出機で検査が可能である。(実用上好ましいレベル)
B:1つでも検査できないことがある。(実用困難なレベル)
【0056】
(10)総合評価
試料フィルムの各項目における評価結果を元に下記評価基準により評価を行った。
《評価基準》
○:遮光性、耐傷性、検査適性のすべてが実用上好ましい、もしくは実用可能なレベルにある。
×:遮光性、耐傷性、検査適性のうち、いずれか1つでも実用困難なレベルのものがある。
【0057】
実施例および比較例で用いたポリエステルは、以下の通りである。
【0058】
〈ポリエステルの製造〉
製造例1(ポリエチレンテレフタレートA)
ジメチルテレフタレート100重量部、エチレングリコール60重量部および酢酸マグネシウム4水塩0.09重量部を反応器にとり、加熱昇温すると共にメタノールを留去し、エステル交換反応を行い、反応開始から4時間を要して230℃に昇温し、実質的にエステル交換反応を終了した。次いで、エチルアシッドフォスフェートのエチレングリコールスラリーを0.04重量部、三酸化アンチモンを0.03重量部添加した後、100分で温度を280℃、圧力を15mmHgに達せしめ、以後も徐々に圧力を減じ、最終的に0.3mmHgとした。4時間後、系内を常圧に戻し、極限粘度が0.65dl/gのポリエチレンテレフタレートAを得た。
【0059】
製造例2(ポリエチレンテレフタレートB)
製造例1において製造したポリエチレンテレフタレートAを80重量部と一次粒径20nmのカーボンブラック粒子20重量部とをドライブレンドし、二軸混練押出機を用いて押出し、ポリエチレンテレフタレートBを得た。得られたポリエチレンテレフタレートBの極限粘度は0.58dl/gであった。
【0060】
製造例3(ポリエチレンテレフタレートC)
エステル交換反応開始から4時間を要して240℃に昇温した以外は、製造例1と同様の方法でポリエチレンテレフタレートC’を得た。前記ポリエチレンテレフタレートC’を96.5重量部と平均粒径4.1μmのシリカ粒子3.5重量部とをドライブレンドし、二軸混練押出機を用いて押出し、ポリエチレンテレフタレートCを得た。得られたポリエチレンテレフタレートCの極限粘度は、0.70dl/gであった。
【0061】
製造例4(ポリエチレンテレフタレートD)
製造例1において製造したポリエチレンテレフタレートAを98.75重量部と平均粒径3.2μmのシリカ粒子1.25重量部とをドライブレンドし、二軸混練押出機を用いて押出し、ポリエチレンテレフタレートDを得た。得られたポリエチレンテレフタレートDの極限粘度は、0.64dl/gであった。
【0062】
(実施例1)
上記ポリエチレンテレフタレートA、B、Cをそれぞれ87重量%、5重量%、8重量%の割合で混合した原料を、溶融押出機により溶融押出し、冷却したキャスティングドラム上に、シートを共押出し冷却固化させて、単層の無配向シートを得た。次いで、機械方向(縦方向)に86℃で3.3倍延伸した後、さらにテンター内で予熱工程を経て機械方向と垂直方向(横方向)に115℃で4.3倍延伸した。二軸延伸をした後は、235℃で3秒間の熱処理を行い、その後に幅方向に2.0%の弛緩処理を行い、厚さ38μmの着色ポリエステルフィルムを得た。
次にオフラインにて、下記粘着剤組成物からなる粘着剤層を塗布量(乾燥後)が25g/m2になるようにリバースグラビアコート方式により塗布、次いで、100℃、5分間乾燥させた後、検査支持体を得た。評価結果は下表2に示す。
《粘着剤組成物》
常法により、酢酸エチル中でブチルアクリレート(100重量部)、アクリル酸6重量部)を共重合して重量平均分子量60万(ポリスチレン換算)のアクリル系共重合体の溶液(固形分30重量%)を得た。アクリル系共重合体100重量部(固形分)に対し、N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート、0.2重量部、エポキシ系架橋剤であるテトラッドC(三菱瓦斯化学製)6重量部を添加し粘着剤組成物を得た。
【0063】
(実施例2~5、比較例1~4)
着色ポリエステルフィルムの原料配合を表1の通りに変更する以外は実施例1と同様にして製造し、検査支持体を得た。評価結果は下表2に示す。
【0064】
(比較例5)
上記ポリエチレンテレフタレートAおよびDを86重量%、14重量%の割合でそれぞれ混合した原料を表層用の原料とし、ポリエチレンテレフタレートAを100重量%としたものを中間層用の原料とした。それぞれ異なる溶融押出機により溶融押出し、冷却したキャスティングドラム上に、シートを共押出し冷却固化させて、2種3層積層(表層/中間層/表層)の無配向シートを得た。次いで、機械方向(縦方向)に86℃で3.3倍延伸した後、さらにテンター内で予熱工程を経て機械方向と垂直方向(横方向)に115℃で4.3倍延伸した。二軸延伸をした後は、235℃で3秒間の熱処理を行い、その後に幅方向に2.0%の弛緩処理を行い、厚さ38μmの着色ポリエステルフィルムを得た。
次にオフラインにて実施例1と同様に粘着剤層を積層させて、検査支持体を得た。評価結果は下表2に示す。
【0065】
【0066】
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の着色ポリエステルフィルムを各種部材の検査に用いた場合、高度なレベルにおいて、遮光性および反射防止性を有するため、光学的評価を伴う検査工程において、異物検査などの欠陥検査が容易であり、LCDバックライト、有機EL、無機EL等、各種ディスプレイ用光学部材製造時の検査支持体だけでなく、カメラ、ビデオカメラ、複写機、現像機等の光学装置の遮光部材としても好適に利用することができる。