IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 愛知製鋼株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-磁気マーカの施工方法 図1
  • 特許-磁気マーカの施工方法 図2
  • 特許-磁気マーカの施工方法 図3
  • 特許-磁気マーカの施工方法 図4
  • 特許-磁気マーカの施工方法 図5
  • 特許-磁気マーカの施工方法 図6
  • 特許-磁気マーカの施工方法 図7
  • 特許-磁気マーカの施工方法 図8
  • 特許-磁気マーカの施工方法 図9
  • 特許-磁気マーカの施工方法 図10
  • 特許-磁気マーカの施工方法 図11
  • 特許-磁気マーカの施工方法 図12
  • 特許-磁気マーカの施工方法 図13
  • 特許-磁気マーカの施工方法 図14
  • 特許-磁気マーカの施工方法 図15
  • 特許-磁気マーカの施工方法 図16
  • 特許-磁気マーカの施工方法 図17
  • 特許-磁気マーカの施工方法 図18
  • 特許-磁気マーカの施工方法 図19
  • 特許-磁気マーカの施工方法 図20
  • 特許-磁気マーカの施工方法 図21
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】磁気マーカの施工方法
(51)【国際特許分類】
   G06K 19/077 20060101AFI20221004BHJP
   E01F 11/00 20060101ALI20221004BHJP
   G05D 1/02 20200101ALI20221004BHJP
   G05D 1/03 20060101ALI20221004BHJP
   G08G 1/042 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
G06K19/077 248
G06K19/077 156
G06K19/077 296
E01F11/00
G05D1/02 J
G05D1/03
G08G1/042 A
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2018111406
(22)【出願日】2018-06-11
(65)【公開番号】P2019214844
(43)【公開日】2019-12-19
【審査請求日】2021-02-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000116655
【氏名又は名称】愛知製鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129654
【弁理士】
【氏名又は名称】大池 達也
(72)【発明者】
【氏名】山本 道治
(72)【発明者】
【氏名】長尾 知彦
(72)【発明者】
【氏名】青山 均
【審査官】甲斐 哲雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-195873(JP,A)
【文献】特開2017-224236(JP,A)
【文献】特開2017-162463(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 19/077
E01F 11/00
G05D 1/02
G05D 1/03
G08G 1/042
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信のための電波を送信あるいは受信するためのアンテナを備える無線タグが磁気発生源をなす本体に保持された磁気マーカを道路に敷設するための施工方法であって、
前記磁気マーカを道路に配置する配置工程と、
前記アンテナを水分から隔離するための防護部を前記磁気マーカに設ける形成工程と、を含み、
前記アンテナは、導電性材料よりなる導波部を含むと共に、いずれか2つの導波部が対向して配置された隙間を形成しており、
前記形成工程は、前記アンテナを水分から隔離する距離が前記隙間の距離よりも長くなるように前記防護部を設ける工程である磁気マーカの施工方法。
【請求項2】
請求項において、前記無線タグは、前記電波に重畳される情報を処理するための処理部と、該処理部から電気的に延設された1次アンテナと、を含む電子部品を有し、当該電子部品が前記隙間に配置されている磁気マーカの施工方法。
【請求項3】
無線通信のための電波を送信あるいは受信するためのアンテナを備える無線タグが保持された磁気マーカを道路に敷設するための施工方法であって、
前記磁気マーカを道路に配置する配置工程と、
前記アンテナを水分から隔離するための防護部を前記磁気マーカに設ける形成工程と、を含み、
前記磁気マーカにおいては、磁気発生源をなす本体の外表面に前記無線タグが保持されており、
前記防護部は、前記無線タグを覆うと共に、当該無線タグの外周側において前記本体の外表面に液密に接するように形成される磁気マーカの施工方法。
【請求項4】
請求項3において、前記本体が柱状をなしている一方、前記無線タグは、当該柱状の本体の端面に配置されて保持されており、
前記配置工程は、前記磁気マーカの高さよりも深くなるように路面に穿設された収容穴に、前記無線タグが配置された端面を上方にして前記磁気マーカを収容する工程であり、
前記形成工程は、前記配置工程を実施した後の前記収容穴に対して溶融状態の高分子材料を供給することにより前記防護部を形成する工程である磁気マーカの施工方法。
【請求項5】
請求項3において、前記本体が柱状をなしている一方、前記無線タグは、当該柱状の本体の端面に配置されて保持されており、
前記配置工程は、前記磁気マーカの高さよりも深くなるように路面に穿設された収容穴に、前記無線タグが配置された端面を上方にして前記磁気マーカを収容する工程であり、
前記形成工程は、前記配置工程を実施した後の前記収容穴における前記磁気マーカの上方の凹みに収容可能であると共に、前記無線タグを覆いながら当該無線タグの外周側において前記本体の外表面に接することができるように予め準備された保護部材を、前記収容穴に収容し、前記本体の端面に接着する工程である磁気マーカの施工方法。
【請求項6】
請求項4または5において、前記アンテナは、導電性材料よりなる導波部を含むと共に、いずれか2つの導波部が対向して配置された隙間を形成しており、
前記収容穴の深さは、前記磁気マーカの高さに、前記アンテナに形成された前記隙間の距離を加えた寸法よりも深くなっており、
前記形成工程では、路面に対して略面一となるように前記防護部が形成される磁気マーカの施工方法。
【請求項7】
請求項3において、前記本体が柱状をなしている一方、前記無線タグは、当該柱状の本体の外側面に配置されて保持されており、
前記配置工程は、前記磁気マーカの断面よりもひと回り大きい断面を呈するように路面に穿設された収容穴に前記磁気マーカを収容する工程であり、
前記形成工程は、前記配置工程を実施した後の前記収容穴の内側面と、前記磁気マーカの外側面との隙間に、溶融状態の高分子材料を供給することにより前記防護部を形成する工程である磁気マーカの施工方法。
【請求項8】
請求項3において、前記本体が柱状をなしている一方、前記無線タグは、当該柱状の本体の外側面に配置されて保持されており、
前記配置工程は、前記磁気マーカの断面よりもひと回り大きい断面を呈するように路面に穿設された収容穴に、前記磁気マーカを収容する工程であり、
前記形成工程は、前記磁気マーカに対して外挿可能なように予め準備された保護部材を前記収容穴に収容することで、前記磁気マーカに対して前記保護部材を外挿配置し液密状態で取り付ける工程である磁気マーカの施工方法。
【請求項9】
請求項7または8において、前記アンテナは、導電性材料よりなる導波部を含むと共に、いずれか2つの導波部が対向して配置された隙間を形成しており、
前記収容穴は、収容穴の内側面と前記磁気マーカの外側面との間の円筒状の隙間の厚さが、前記アンテナに形成された前記隙間の寸法以上となるように設けられた穴である磁気マーカの施工方法。
【請求項10】
請求項7または8において、前記配置工程は、前記収容穴の中央に前記磁気マーカを位置合わせるための中央位置合わせを実施して当該収容穴に前記磁気マーカを収容する工程であり、
前記中央位置合わせは、内周の深い底面と外周の浅い底面とからなる2段構造の底面を有する収容穴、あるいは内周の深い底面に向けて外周側から次第に深くなるすり鉢状を呈する底面を有する収容穴に対し、前記内周の深い底面に前記柱状の本体が接するよう、収容穴に前記磁気マーカを収容する工程、
あるいは、外周に張り出すフランジ形状が設けられた磁気マーカを、深さ方向において一定の断面形状を呈する収容穴に収容する工程、である磁気マーカの施工方法。
【請求項11】
請求項3において、前記本体がシート状をなしている一方、前記無線タグは、当該シート状の本体の表面に配置されて保持されており、
前記形成工程は、前記配置工程により路面に配置済みの磁気マーカの表面に、前記無線タグを覆うように溶融状態の高分子材料を供給すること、あるいは前記無線タグを覆うように高分子材料よりなる保護シールを接着すること、により前記防護部を形成する工程である磁気マーカの施工方法。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項において、前記形成工程で前記磁気マーカに設ける防護部は、高分子材料よりなる磁気マーカの施工方法。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項において、前記配置工程は、道路の路面に穿設された収容穴に前記磁気マーカを収容する工程であり、
前記形成工程は、当該配置工程の実施後に行われる工程である磁気マーカの施工方法。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項において、前記本体は、磁性材料である酸化鉄の磁粉が、基材である高分子材料中に分散しているフェライトマグネットであり、
前記防護部は、前記本体の外表面のうちの一部を覆うように形成される磁気マーカの施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路に敷設される磁気マーカの施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両側で検出可能に道路に敷設される磁気マーカが知られている(例えば、特許文献1参照。)。磁気マーカを利用すれば、例えば車線に沿って敷設された磁気マーカを利用する自動操舵制御や車線逸脱警報などの各種の運転支援のほか、自動運転を実現できる可能性がある。
【0003】
しかしながら、磁気マーカの検出により取得できる情報は、磁気マーカの有無や、磁気マーカに対する車両の幅方向のずれ量や、磁極性がN極であるかS極であるか等の情報であり、磁気マーカ側から取得できる情報の量や種類が十分とは言えないという問題がある。そこで、本願の出願人は、RFIDタグ等の情報提供部を備えた磁気マーカを提案している(特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-202478号公報
【文献】WO2017/187879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような情報提供部を備える磁気マーカであれば、情報量が十分とは言えないという問題を解決し、無線通信を利用してより多くの情報を車両側に提供できるようになる。しかし、磁気マーカの周囲が浸水する可能性がある雨天等では、電波を減衰させる電磁気的な特性を呈する水分の影響によって無線通信の安定性が損なわれるおそれがある。特に、情報提供部にUHF帯域を適用する場合、この問題が顕著に生じるおそれがある。
【0006】
本発明は、前記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、より多くの情報を安定的に提供可能な磁気マーカの施工方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、無線通信のためのアンテナを備える無線タグが保持された磁気マーカを道路に敷設するための施工方法に係る発明である。本発明に係る磁気マーカの施工方法は、前記磁気マーカを道路に配置する配置工程と、前記アンテナを水から隔離するための防護部を磁気マーカに設ける形成工程と、を含んでいる。
【発明の効果】
【0008】
無線タグを備える磁気マーカであれば、無線通信を利用してより多くの情報を車両側に提供できる。一方、磁気マーカの周囲が浸水する可能性がある雨天等では、電波を減衰させる電磁気的な特性を呈する水分の影響によって無線通信の安定性が損なわれるおそれがある。
【0009】
これに対して、本発明の磁気マーカの施工方法は、水分からアンテナを隔離する防護部を設ける形成工程を含んでいる。防護部を設ける形成工程を含む施工方法により前記磁気マーカを施工すれば、例えば雨天時などで磁気マーカの周囲に水分が存在する場合であっても、無線通信の確実性が損なわれるおそれを抑制できる。
このように本発明の磁気マーカの施工方法によれば、より多くの情報を安定的に車両側に提供可能なように磁気マーカを施工可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1における、磁気マーカを示す図。
図2】実施例1における、車両が磁気マーカを検出する様子を例示する説明図。
図3】実施例1における、磁気マーカを構成する磁石を示す図。
図4】実施例1における、RFIDタグの斜視図。
図5】実施例1における、タグの正面図。
図6】実施例1における、RFIDタグの内部構造を示す断面図。
図7】実施例1における、通信性能の評価試験に使用した磁気マーカの断面構造を示す図。
図8】実施例1における、通信性能の評価結果を例示する図。
図9】実施例1における、磁気マーカの施工手順を示すフローチャート図。
図10】実施例1における、磁気マーカの施工手順の説明図。
図11】実施例1における、磁気マーカの他の施工手順の説明図。
図12】実施例1における、他の磁気マーカを示す斜視図。
図13】実施例2における、磁気マーカを示す斜視図。
図14】実施例2における、金属箔の展開図。
図15】実施例2における、磁気マーカの施工手順の説明図。
図16】実施例2における、磁気マーカの他の施工手順の説明図。
図17】実施例2における、他の収容穴を示す図。
図18】実施例2における、他の磁気マーカを示す図。
図19】実施例3における、シート状の磁気マーカを示す図。
図20】実施例3における、RFIDタグを示す図。
図21】実施例3における、シート状の磁気マーカの施工手順の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態につき、以下の実施例を用いて具体的に説明する。
(実施例1)
本例は、RFIDタグ(Radio Frequency IDentification Tag、無線タグ)2を備える磁気マーカ1の施工方法に関する例である。この内容について、図1図12を用いて説明する。
【0012】
施工する磁気マーカ1は、図1及び図2のごとく、例えば車線の中央に沿うように路面30Sに配置され、車線逸脱警報やレーンキープアシストや自動運転などの各種の車両制御に利用される道路用のマーカである。この磁気マーカ1では、円柱状の磁石10の一方の端面に、無線通信により情報を提供するRFIDタグ2が保持されている。
【0013】
磁気を検出する磁気センサユニット35、及びRFIDタグ2と通信可能なタグリーダユニット36を装備する車両3(図2)であれば、走行中に磁気マーカ1を磁気的に検出できると共に、RFIDタグ2との無線通信によりタグ情報を取得できる。タグ情報としては、例えば、絶対位置を表す情報や、対応する磁気マーカ1の識別情報や、交差点や分岐路などの道路情報等がある。
【0014】
以下、施工対象の(1)磁気マーカの構成を説明し、続いて、(2)磁気マーカの施工方法について説明する。
(1)磁気マーカの構成
磁気マーカ1は、磁気発生源である本体をなす磁石10の外周面にRFIDタグ2を取り付けたものである。磁石10及びRFIDタグ2の説明に続いて、両者を組み合わせた磁気マーカ1を説明する。
【0015】
(磁石)
磁石10(図3)は、磁性材料である酸化鉄の磁粉を基材である高分子材料(非導電性材料)中に分散させた等方性フェライトプラスチックマグネット又はフェライトラバーマグネットである。非導電性の高分子材料中に磁粉を分散させた磁石10は、電気伝導率が低いという電気的特性を備えていると共に、最大エネルギー積(BHmax)=6.4kJ/立方mという磁気的特性を備えている。
【0016】
直径20mm、高さ28mmの円柱状の磁石10の表面の磁束密度Gsは45mT(ミリテスラ)である。45mTの磁束密度は、例えばオフィス等のホワイトボードや家庭の冷蔵庫の扉等に貼り付けて使用されるマグネットシート等の表面の磁束密度と同等あるいはそれ以下である。この磁石10を含む磁気マーカ1は、車両3のフロア高である地上高100~250mmの範囲において、おおよそ8μT以上の磁気を作用する。例えば、マグネト・インピーダンス素子を有する精度の高いMIセンサ等によれば、磁気マーカ1の磁気を確実性高く検出可能である。
【0017】
磁石10の外周面のうち、RFIDタグ2の取付面となる端面及び外周側面には、導電層16が形成されている。導電層16は、金属メッキ加工処理による厚さ0.03mmの銅メッキ層である。この導電層16は、磁石10の外周面に接しているが、上記の通り磁石10は電気伝導率が低いため、導電層16は磁石10本体と電気的に導通しない状態になっている。
【0018】
(RFIDタグ)
RFIDタグ2(図4)は、細長い短冊状の平板(図示略)をU字状に折り曲げた金属(導電性材料)製のアンテナ23と、シート状のタグ20と、を含んで構成された電子部品である。RFIDタグ2は、図4中の3辺の寸法A、B、Cが、それぞれ、12mm、7mm、9mmのブロック形状を呈している。本例では、寸法Aと寸法Cとで規定される表面が磁石10に対する取付面になっている。
【0019】
タグ20(図5)は、2mm×3mm大のタグシート200の表面にIC(Integrated Circuit)チップ201が実装された電子部品である。無線通信の電波に重畳される情報を処理するための処理部の一例であるICチップ201は、RFIDタグ2に対して無線で供給された電力により動作し、記憶している情報をタグ情報として無線通信により出力する。タグ20は、好ましくはUHF帯の無線タグである。
【0020】
タグシート200は、PET(PolyEthylene Terephthalate)フィルムから切り出したシート状部材である。タグシート200の表面には、銀ペーストよりなる導電性インクの印刷パターンであるアンテナ205が形成されている。アンテナ205は、切り欠きを有する環状を呈し、ICチップ201を配設するためのチップ配設領域(図示略)が切り欠き部分に形成されている。タグシート200にICチップ201を接合すると、アンテナ205がICチップ201と電気的に接続される。
【0021】
タグ20では、アンテナ205がICチップ201から電気的に延設された状態となっている。このアンテナ205は、外部からの電磁誘導によって励磁電流を発生させる給電用のアンテナとしての役割と、情報を無線送信する通信用のアンテナとしての役割と、を併せ持っている。
【0022】
RFIDタグ2では、例えば樹脂材料を注入して固めるインサート成形等により、U字状をなすアンテナ23が横向きに倒れた状態で樹脂中に保持されている(図4参照。)。ブロック形状のRFIDタグ2は、アンテナ23がなすU字の横幅に対応する寸法B(図6参照。)のみ、アンテナ23の寸法と一致し、他の寸法A及びCは、アンテナ23よりも大きくなっている。RFIDタグ2では、U字状のアンテナ23のうち隙間230を介して対面する一対の平板部231が、それぞれ、ブロック形状のRFIDタグ2の外表面に対して面一をなして露出している。本例のRFIDタグ2では、隙間230を介して対向して配置された一対の平板部231が、アンテナ23が備えるいずれか2つの導波部の一例となっている。本例のRFIDタグ2では、図6のごとく、一対の平板部231が対面する隙間230の距離であるアンテナギャップGが5mmとなっている。
【0023】
RFIDタグ2では、アンテナ23がなすU字状の内側の底面233に対面するようにシート状のタグ20が樹脂中で保持されている。タグ20とアンテナ23との間には隙間が設けられ、両者が電気的に接触せず樹脂を介して電気的に絶縁された状態にある。RFIDタグ2では、ICチップ201から電気的に延設されたタグ20のアンテナ205が1次アンテナとして機能し、静電結合あるいは電磁結合等により電気的に非接触の状態でアンテナ23と結合する。アンテナ23は、タグ20のアンテナ205が送受する電波を仲介し、電波を増幅して電波強度を高めるアンテナとして機能する。
【0024】
なお、RFIDタグ2におけるタグ20の配設位置としては、断面U字状のアンテナ23の内側に位置していれば良い。アンテナ23がなすU字状の底面233ではなく、アンテナ23の互いに対面する平板部231のうちのいずれか一方と対面するようにシート状のタグ20が保持されていても良い。さらに、U字状の底面233と直交すると共に、互いに対面する平板部231にも直交するよう、シート状のタグ20が保持されていても良い。
【0025】
さらに、タグ20とアンテナ23との間に隙間が設けられ、樹脂を介して両者が電気的に絶縁された状態にあるRFIDタグ2(図6参照。)について、タグ20が内蔵するアンテナ205とアンテナ23とを電気的に接触させても良い。この場合には、タグ20のアンテナ205が、アンテナ23を介在して導電層16と電気的に接触することになる。
【0026】
(磁気マーカ)
磁気マーカ1(図1)は、RFIDタグ2、磁石10を組み合わせて組み立てられる。RFIDタグ2は、断面U字状のアンテナ23の平板部231が露出する表面を介して磁石10の端面に取り付けられている。RFIDタグ2の取付は、例えば導電性を有する接着材を利用する接着接合などの化学的な接合であっても良く、超音波振動でRFIDタグ2を加振して接合する超音波金属接合等の物理的な接合であっても良く、ネジ止め等の機械的な接合であっても良い。
【0027】
上記の通り、RFIDタグ2の取付面をなす磁石10の端面には導電層16が形成されている。一方、RFIDタグ2では、磁石10に対する取付面にアンテナ23が露出している。したがって、上記のように磁石10の端面にRFIDタグ2を接合すれば、アンテナ23が導電層16と電気的に接触する状態となる。したがって、磁気マーカ1の導電層16は、アンテナ23と共に、タグ20が内蔵するアンテナ205の外部アンテナのように機能する。
【0028】
なお、RFIDタグ2の取付面とは反対側の表面では、平板部231(アンテナ23)が面一をなして外部に露出している。それ故、磁気マーカ1では、磁石10に接する側の平板部231とは反対側の平板部231が外表面の一部をなし、外部に露出した状態となっている。
【0029】
上記の通り、磁気マーカ1を構成する円柱状の磁石10の軸方向の長さ(高さ)は28mmである。また、磁石10の軸方向の端面に取り付けられたRFIDタグ2の軸方向の長さ(高さ、図4中の寸法B。)は7mmである。したがって、磁気マーカ1の軸方向の全長(高さ)は、35mmとなる。磁気マーカ1の直径については、磁石10の直径と同じ20mmである。
【0030】
ここで、RFIDタグ2付きの磁気マーカ1について、発明者らは、RFIDタグ2の通信性能に関する各種の試験を行っている。試験の中には、磁気マーカ1を水没させた状態で通信性能を計測する水没試験等が含まれている。これらの試験を通じて、発明者らは、水分がRFIDタグ2の通信性能に悪影響を及ぼすことを確認している。
【0031】
そこで、発明者らは、RFIDタグ2を液密状態で覆う樹脂モールド4(図7)を磁気マーカ1の端面に取り付けて、さらなる水没試験を行った。樹脂モールド4は、例えば、磁気マーカ1を隙間なく収容可能な円筒状のモールド型(図示略)を利用して成形される。例えば、円筒状のモールド型の開口端のうちRFIDタグ2側の開口端に非導電性の樹脂材料を流し込んだ後、樹脂材料の硬化を待ってモールド型から磁気マーカ1を抜き取ることで図7に例示の樹脂モールド4を成形可能である。
【0032】
なお、発明者らは、水没試験に先行して実施された他の通信試験によって、樹脂モールドの形成材料が非導電性の材料であれば、通信性能に対する影響が少ないことを事前に確認している。そこで本例では、樹脂モールド4の形成材料としてエポキシ樹脂を採用している。樹脂モールドの形成材料としては、エポキシ樹脂のほか、シリコーン樹脂などの樹脂材料や、アスファルトなどの高分子材料等であっても良い。
【0033】
水没試験の結果、図7の樹脂モールド4をRFIDタグ2を覆うように設けた場合であっても、通信性能の低下が生じる場合があることが確認されている。発明者らは、通信性能の低下について以下のような理由を考察している。
(通信性能の低下理由)
周囲が浸水して樹脂モールド4の外表面に水分が接すると、樹脂モールド4の外表面に接する水分の境界面が形成される。この水分の境界面は、平板部231と対面するため、一対の平板部231の対面構造によるアンテナ構造と似通った構造が、平板部231と水分の境界面との間にも形成される。この場合、平板部231と水分の境界面との対面構造に電波のエネルギーの一部が作用し、一対の平板部231がなすアンテナ構造が受信する電波のエネルギーが減少する。そして、水分の境界面がなす対面構造に作用した電波のエネルギーは、水分中で発生する渦電流等に変換されて消費され、エネルギー損失となる。
【0034】
発明者らは、このような通信性能の低下理由を鑑み、平板部231と水分の境界面とが対面する距離の長短が、通信性能を左右する可能性に着目した。そこで、発明者らは、水分からアンテナ23を隔離する防護部として機能する樹脂モールド4の厚さ、すなわちRFIDタグ2の表面(平板部231の表面)と樹脂モールド4の外表面との距離、をパラメータとして複数種類の水没試験を実施している。なお、以下の説明では、パラメータであるこの距離を、水分からアンテナ23を隔離できる隔離距離Gw(図7参照。)という。
【0035】
発明者らは、隔離距離Gwをパラメータとした水没試験の試験結果を解析あるいは評価することで、水分からアンテナ23の隔離距離Gwと、アンテナ23の隙間230の距離であるアンテナギャップGと、の間に強い相関関係が存在することを見出している(図8参照。)。
【0036】
図8は、アンテナギャップGと隔離距離Gwとの各組合せについて水没試験を実施した際の通信性能の評価結果を例示している。この水没試験では、磁気マーカ1の真上1mの位置に設置されたタグリーダユニット36により無線通信を実施したときのエラー率を計測している。同図中のA+、A、A-、Bの通信性能の評価は、エラー率の度合いをわかり易く表示するものである。A+は、タグリーダユニット36とRFIDタグ2とが問題なく通信可能な程度のエラー率の度合いを示している。Aは、A+よりもエラー率が高いものの問題なく通信が可能な程度のエラー率の度合いを示している。A-は、一応通信は可能であるが、外部環境の変化等に応じて通信ができなくなるおそれがある程度のエラー率の度合いを示している。Bは、安定的な通信を実現できない程度のエラー率の度合いを示している。
【0037】
図8の通信性能の評価結果においては、アンテナギャップGよりも隔離距離Gwが小さくなったときに通信が不安定になる傾向が顕著である。一方、アンテナギャップGよりも隔離距離Gwが大きくなると、通信が安定する傾向にある。同図に基づけば、隔離距離Gwとして、アンテナギャップGと同じ値か、あるいはアンテナギャップGを超える値を設定すると良いことがわかる。
【0038】
なお、発明者らは、他の水没試験として、アンテナ23の外周に当たる樹脂モールド4の径方向の厚さをパラメータとする試験を実施している。この結果、平板部231の対面方向の厚さ、すなわち図7中の隔離距離Gwと比べれば、樹脂モールド4の径方向の厚さが通信性能に与える影響度合いは小さいことが確認されている。しかしながら、その影響はゼロではないので、アンテナ23の外周に当たる樹脂モールド4の径方向の厚さについても、アンテナギャップGと同等、あるいはそれ以上を確保することが好ましい。
【0039】
(2)磁気マーカの施工方法
磁気マーカ1は、例えば、路面30S(図2参照。)に穿設された収容穴31に収容されて埋設される。一般的に、路面30Sの舗装に用いられるアスファルト等の舗装材料では、骨材として砂利等が利用されている。そのため、路面30Sや路面30Sの内部には無数の孔が形成され、その孔を伝って雨水等が浸透する可能性が高い。
【0040】
上記の通り、磁気マーカ1では、平板部231がRFIDタグ2の外表面と面一をなし、外部に露出している。そのため、磁気マーカ1を収容穴31に収容した後、舗装材料により埋め戻すのみでは、路面30Sから浸透した水分により磁気マーカ1の周囲が浸水し、RFIDタグ2のアンテナ23に水分が付着する状況(隔離距離Gwがゼロ)が起きる可能性が高い。
【0041】
これに対して、本例の磁気マーカ1の施工方法の技術的な特徴のひとつが、アンテナギャップG=5mmよりも長い隔離距離Gw=7mmを施工時に確保する点にある。以下、隔離距離Gw=7mmを確保するための磁気マーカ1の施工手順について、図9のフローチャート、及び図10を参照しながら説明する。
【0042】
磁気マーカ1を施工するに当たっては、まず、図10(a)のごとく、収容穴31を穿設(形成)する(S101)。この収容穴31は、磁気マーカ1の軸方向が鉛直方向に一致する状態で磁気マーカ1を収容するための穴である。上記の通り、磁気マーカ1の軸方向の長さ(RFIDタグ2を含む高さ)Sは、35mmであり、直径は20mmである。収容穴31の内径Eは、直径20mmの磁気マーカ1を収容できる程度であれば良い。一方、収容穴31の深さFは、隔離距離Gwが7mmとなる防護部40(図10(d)参照。)を磁気マーカ1の上方に形成できるよう、35mmに7mmを加算した42mmとなっている。
【0043】
この収容穴31に対しては、RFIDタグ2が設けられていない側の端面を下にして、磁気マーカ1が収容される(S102、配置工程、図10(b))。収容穴31は、深さ42mmなので、底側に隙間ができないように磁気マーカ1を収容すれば、磁気マーカ1の上方に7mmの隙間が形成される(図10(c))。ここで、上記の通り、磁気マーカ1の上端部には、RFIDタグ2が位置している。さらに、RFIDタグ2の外表面では、アンテナ23をなす平板部231が面一をなしている。したがって、上記のように磁気マーカ1を収容穴31に収容すると、磁気マーカ1の上端部に位置する平板部231と、路面30Sと、のギャップが7mmとなる。
【0044】
このように磁気マーカ1が収容された収容穴31に対して、骨材が混入されていない溶融状態のアスファルト(高分子材料の一例)を充填する(S103、図10(d))。その後、充填したアスファルトを冷却、乾燥すれば、アスファルトよりなる防護部40がRFIDタグ2を覆うように形成された状態で、磁気マーカ1の施工を完了できる(S104、形成工程)。
【0045】
以上のような内容の磁気マーカ1の施工方法によれば、磁気マーカ1を施工する際、RFIDタグ2のアンテナ23を水分から隔離する防護部40を作り込むことが可能である。特に本例の施工方法では、図8の通信性能の評価結果を考慮し、磁気マーカ1が備えるRFIDタグ2のアンテナギャップG(5mm)に対して、通信性能の評価結果がA+となるような隔離距離Gw(7mm)を実現する防護部40を形成している。
【0046】
施工時に磁気マーカ1に防護部40を形成すれば、周囲が浸水した場合であっても、水分からアンテナ23を十分に隔離でき、高い通信性能を維持できる。したがって、本例の施工方法によって磁気マーカ1を施工すれば、雨天等の環境であっても、車両3との間の無線通信を確実性高く実現できる。なお、RFIDタグ2の表面のうち、磁石10に接する側の表面側では、磁石10自体が防護部として機能する。この表面側では、磁石10自体によって水分からアンテナ23が隔離される。
【0047】
本例では、磁気マーカ1の収容穴31として、磁気マーカ1を収容できる程度の直径であって、深さが42mmの穴を例示している。この収容穴31によれば、上記の通り、磁気マーカ1の平板部231と路面30Sとのギャップを7mmにできる。収容穴31については、深さ42mmを超える穴であっても良い。さらに、2段構造の収容穴を採用しても良い。深い方の1段目は、磁気マーカ1を収容できる程度の直径であって、磁気マーカ1の高さ程度の深さにすると良い。路面30Sに開口する2段目は、磁気マーカ1よりもひと回り大きい大径であって、深さが7~12mm程度とすると良い。2段構造の収容穴によれば、磁気マーカ1よりも大径の防護部40を形成できる。
【0048】
本例では、本体をなす磁石10の外周側面に直接、導電層16を設けているが、この導電層16の外周に、水分の近接を防止するための防護部を設けることも良い。
本例では、防護部40の形成材料として高分子材料であるアスファルトを例示している。防護部40の形成材料としては、アスファルトのほか、エポキシ樹脂やシリコーン樹脂などの樹脂材料であっても良い。さらに、ガラス繊維等の繊維が高分子材料や樹脂材料に混入された複合材料であっても良い。或いは、シリコーンゴムなどであっても良く、フェライトプラスチックマグネットやフェライトラバーマグネットの基材をなす高分子材料などを利用しても良い。
【0049】
樹脂材料よりなる樹脂層を磁石10の外周に形成し、その樹脂層の外側に導電層を設けることも良い。あるいは、導電層16を設けた磁石10の外周を樹脂材料によりコーティングし、コーティング層の表面にRFIDタグ2を配設することも良い。メッキ層である導電層16に代えて、金属箔等による導電層を設けることも良い。
【0050】
なお、図11のごとく、図10(d)中の防護部40と同じ形状の保護部材401を事前に準備しておくことも良い。保護部材401としては、例えば、エポキシなどの樹脂材料、あるいはアスファルトなどの高分子材料等によるモールド成形品を採用できる。例えば、収容穴31に収容された磁気マーカ1の端面に、例えば接着材を利用して保護部材401を接着等すると良い。あるいは、事前に保護部材401を取り付けた磁気マーカ1を収容穴31に収容しても良い。この保護部材401は、RFIDタグ2のアンテナ23を水分から隔離する防護部として機能する。
【0051】
保護部材401の形成材料としては、上記のほか、PP(PolyPropylene)あるいはPET等の樹脂材料、シリコーン樹脂、シリコーンゴム、或いは磁石10の本体と同じ材質であるフェライトプラスチックマグネットやフェライトラバーマグネット、フェライトプラスチックマグネットやフェライトラバーマグネットの基材をなす高分子材料などを利用しても良い。
【0052】
本例のRFIDタグ2に代えて、このRFIDタグ2を構成するシート状のタグ(図4中の符号20)そのものをRFIDタグとして利用し、外部アンテナと組み合わせることも良い。図12に例示の磁気マーカ1では、円柱状の磁石10の一方の端面に、直径12mmの略円形状の金属箔24が貼付されていると共に、シート状のタグ20(適宜RFIDタグ20という。)が保持されている。略円形状の金属箔24には、中心を通過すると共に、一方の端部のみが外部に連通するスリット状の隙間240が設けられている。金属箔24では、幅3mmの隙間240を介して対面する2つのエリア241が形成されている。この2つのエリア241は、隙間240の他方の端部に当たる底側でつながっており、分離されずに連結されている。
【0053】
スリット状の隙間240の底側に当たる他方の端部には、2mm×3mm大のシート状のRFIDタグ20が配置されている。金属箔24は、静電結合あるいは電磁結合等により電気的に非接触の状態でRFIDタグ20のアンテナ(1次アンテナ。図5中の符号205)と結合し、外部アンテナとして機能する。隙間240を介して対面する2つのエリア241は、隙間240を挟んで対向配置された導波部の一例をなしている。金属箔24を外部アンテナとして利用するRFIDタグ20では、2つのエリア241の隙間240の幅3mmがアンテナギャップGとなっている。図12に例示の磁気マーカ1についても、本例と同様の施工方法により、RFIDタグ20が配置された端面側に防護部を設けると良い。防護部がなす隔離距離Gwは、アンテナギャップG=3mm以上とすると良い。
【0054】
(実施例2)
本例は、実施例1で変形例として例示した図12の磁気マーカに基づき、RFIDタグ20の配設箇所が端面から外周側面に変更された磁気マーカ1の施工方法の例である。この内容について、図13図18を参照して説明する。
【0055】
本例の磁気マーカ1では、図13のごとく、スリット状の隙間250を設けた金属箔25が磁石10の外周側面に巻き付けられるように配置されていると共に、そのスリット状の隙間250にシート状のRFIDタグ20が配置されている。金属箔25は、図14の展開図のごとく、横長の略長方形状を呈し、横幅の寸法が、磁石10の周囲長よりも短い寸法になっている。したがって、この金属箔25を磁石10に巻き付けるように形成した場合、磁石10の周囲の全周には足らず、周方向における1箇所に隙間が形成された状態になる。
【0056】
図14の展開図のごとく、横長の略長方形状の金属箔25には、長手方向に延在すると共に一方の端部のみが外部に開口するスリット状の隙間250が形成されている。この金属箔25では、幅3mmの隙間250を介して対面する2つのエリア251が形成されている。この2つのエリア251は、隙間250の他方の端部に当たる底側でつながっており、分離されずに連結されている。
【0057】
スリット状の隙間250の底側に当たる他方の端部には、2mm×3mmのシート状のRFIDタグ20が配置されている。金属箔25は、上記の第1の態様と同様、静電結合あるいは電磁結合等により電気的に非接触の状態でRFIDタグ20のアンテナ(1次アンテナ。図5中の符号205)と結合し、外部アンテナとして機能する。隙間250を介して対面する2つのエリア251は、隙間250を挟んで対向配置された導波部の一例をなしている。金属箔25を外部アンテナとして利用するRFIDタグ20では、2つのエリア251の隙間250の幅3mmがアンテナギャップGとなっている。
【0058】
次に、この磁気マーカ1の施工手順を説明する。
実施例1と同様に、磁気マーカ1を施工するに当たっては、まず、路面30Sに収容穴311を穿設する(図15(a))。この収容穴311の円形状の底面312には、同芯の円形状の深い底面313が設けられ、これにより収容穴311の底面が二段構造をなしている。この収容穴311は、例えば、外形20mmのドリル等で深さ30mmの穴を穿設した後、外形30mmのドリル等で深さ26mmの穴を穿設することで形成できる。
【0059】
二段構造の収容穴311の底面のうち、深い方の底面313に接するように磁気マーカ1を収容すれば(図15(b)→(c)、配置工程)、収容穴311の内周面と磁気マーカ1の外周側面との間に、厚さ5mmの円筒状の隙間を形成できる(同図(c))。この円筒状の隙間に溶融状態のアスファルト(高分子材料の一例)を充填した後、冷却、乾燥等すれば、アスファルトよりなる円筒状の防護部43を形成できる(図15(d)、形成工程)。なお、磁気マーカ1の上面側については、舗装材料を利用して適宜、覆うと良い。
【0060】
図15に示す一連の施工手順によれば、アスファルトよりなる厚さ5mmの円筒状の防護部43が磁気マーカ1に外挿配置された状態を形成できる。この防護部43によれば、外部アンテナとして機能する金属箔25を水分から隔離する隔離距離Gwとして、アンテナギャップG=3mmを超える5mmを確保できる。
【0061】
特に、本例の施工手順では、二段底の収容穴311の深い底面313に磁気マーカ1を配置することで、収容穴311における磁気マーカ1の中央位置合わせ(収容穴311に対する磁気マーカ1の同芯配置。センタリング。)を確実性高く実現している。収容穴311において磁気マーカ1が精度高くセンタリングされていれば、防護部43の径方向の厚さを均一にでき、これにより、磁気マーカ1の周方向の全域において隔離距離Gw=5mmを実現できる。
【0062】
なお、図16のごとく、図15中の防護部43と同じ形状の保護部材431を、事前に、樹脂材料等によるモールド成形により作製しておくことも良い。例えば、収容穴311に磁気マーカ1を収容した後、磁気マーカ1に対して保護部材431を外挿配置すると良い。あるいは、事前に保護部材431を取り付けた磁気マーカ1を収容穴311に収容しても良い。なお、この保護部材431については、磁気マーカ1に対して液密状態で取り付けられる必要がある。また、円筒状の保護部材431の内側に露出する磁気マーカ1の端面については、舗装材料等で覆って保護すると良い。
【0063】
図17のごとく、収容穴311の形状について、2段構造の底面ではなくすり鉢状の底面を採用しても良い。すり鉢状に凹む底面であれば、収容穴311に対する磁気マーカ1の中央位置合わせ(センタリング)が可能である。また、図18のごとく、磁気マーカ1の下部に、帽子のつばのようなフランジ形状109を設けることも良い。磁気マーカ1の外周に張り出すフランジ形状109によれば、収容穴311に対して磁気マーカ1を確実性高くセンタリングできる。
なお、その他の構成及び作用効果については実施例1と同様である。
【0064】
(実施例3)
本例は、実施例1に基づいて、シート状の磁気マーカ1に変更した例である。この内容について、図19図21を用いて説明する。
本例の磁気マーカ1は、図19のごとく、磁石シート10の表面に、シート状のRFIDタグ27を保持している。
【0065】
本例の磁気マーカ1は、直径100mm、厚さ1.5mmの扁平な円形状を呈し、路面への接着接合が可能なマーカである。この磁気マーカ1をなす磁石シート10は、最大エネルギー積(BHmax)=6.4kJ/立方mの等方性フェライトラバーマグネットをシート状に成形したものである。
【0066】
RFIDタグ27は、図20のごとく、渦巻状に巻回されたパターンのアンテナ272を採用することで、アンテナの性能を高めたものである。RFIDタグ27は、3mm×4mmのシート状を呈している。このRFIDタグ27は、外部アンテナが必須ではなく、単体で車両3側と通信可能である。RFIDタグ27では、渦巻状のアンテナ272の隙間270がアンテナギャップGとなる。このRFIDタグ27では、このアンテナギャップGが0.5mmとなっている。
【0067】
次に本例の磁気マーカ1の施工手順を図21を用いて説明する。
磁気マーカ1を施工するに当たっては、まず、アスファルト等の接着材を塗布した路面30Sに対して、シート状の磁気マーカ1を配置する(図21(a)→(b)、配置工程)。そして、例えば、溶融状態のアスファルトを漏出するスタンプのような施工器具を用い、路面30Sに配置済みの磁気マーカ1の表面にアスファルトによる保護層45を設ける(図21(c)→(d)、形成工程)。保護層45は、アンテナギャップG=0.5mmを超える1mm程度の厚さでRFIDタグ27を覆うように設けられる。この保護層45は、アンテナ272を水分から隔離する防護部として機能し、その隔離距離Gw=約1mmを実現できる。なお、磁気マーカ1の裏面側(路面30S側)については、厚さ1.5mmの磁気マーカ1(磁石シート10)自体が、アンテナ272を水分から隔離する防護部(隔離距離が1.5mmとなる)として機能する。
【0068】
保護層45は、磁気マーカ1の全面に形成しても良い。さらに、アスファルトによる保護層45に代えて、例えば裏面に接着材が塗布されたPP(PolyPropylene)製の保護シールを磁気マーカ1の表面に接着して、RFIDタグ27を覆うことも良い。
【0069】
図19のRFIDタグ27に代えて、実施例1の図12中の外部アンテナとして機能する金属箔24とシート状のRFIDタグ20との組合せを、磁気マーカ1の表面に配置しても良い。上記のように、この構成を採用した場合のアンテナギャップGは3mmとなっている。したがって、磁気マーカ1の表面側だけでなく、裏面側(路面30S側)にも防護部をなす層を設ける必要がある。
【0070】
この磁気マーカ1を施工するに当たっては、骨材を含まないアスファルト層を予め路面30Sに形成したり、PP製の大判シートを路面30Sに貼付しておくと良い。磁気マーカ1の座となるこのアスファルト層あるいは大判シートの厚さは3mm程度とすると良い。3mmのアスファルト層あるいは大判シートと、1.5mm厚の磁気マーカ1と、の組合せが、アンテナを水分から隔離する防護部(隔離距離Gw=4.5mm)として機能する。磁気マーカ1の表面側には、5mm厚の層状の防護部を設けると良い。層状の防護部としては、例えば、アスファルト層のほか、PPなどの樹脂材料製の保護シートであっても良い。
なお、その他の構成及び作用効果については実施例1と同様である。
【0071】
以上、実施例のごとく本発明の具体例を詳細に説明したが、これらの具体例は、特許請求の範囲に包含される技術の一例を開示しているにすぎない。言うまでもなく、具体例の構成や数値等によって、特許請求の範囲が限定的に解釈されるべきではない。特許請求の範囲は、公知技術や当業者の知識等を利用して前記具体例を多様に変形、変更あるいは適宜組み合わせた技術を包含している。
【符号の説明】
【0072】
1 磁気マーカ
10 磁石(本体)
16 導電層
2 RFIDタグ(無線タグ)
20 タグ(電子部品)
201 ICチップ(処理部)
205 アンテナ(1次アンテナ)
23 アンテナ
230 隙間
231 平板部(導波部)
3 車両
35 磁気センサユニット
36 タグリーダユニット
30S 路面
31 収容穴
4 樹脂モールド
40、43 防護部
401、431 保護部材(防護部)
45 保護層(防護部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21