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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】ガス供給装置及びガス供給方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/31 20060101AFI20221004BHJP
   C23C 16/511 20060101ALI20221004BHJP
   C23C 16/455 20060101ALI20221004BHJP
   H05H 1/46 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
H01L21/31 B
H01L21/31 C
C23C16/511
C23C16/455
H05H1/46 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018221470
(22)【出願日】2018-11-27
(65)【公開番号】P2020088201
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002756
【氏名又は名称】弁理士法人弥生特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 裕之
(72)【発明者】
【氏名】太田 龍作
【審査官】宇多川 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-032305(JP,A)
【文献】特開2011-119433(JP,A)
【文献】特開2002-060952(JP,A)
【文献】特開2011-001995(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/31
C23C 16/511
C23C 16/455
H05H 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に処理を行うために当該基板を格納する処理容器と、
前記処理容器内を排気して真空雰囲気を形成する排気機構と、
ガス供給源からガスが供給される上流側流路と、当該上流側流路の下流側が複数に分岐して形成されると共に前記処理容器に各々接続される複数の分岐路と、を備えるガス供給路と、
前記上流側流路に供給されたガスを前記複数の分岐路へ分流するために当該分岐路に各々設けられた、開度を変更自在で全閉されない第1のバルブと、
前記上流側流路に設けられ、下流側へガスを給断する第2のバルブと、
前記処理容器内の圧力を検出するための圧力センサと、
検出された前記処理容器内の圧力に基づいて、前記ガス供給路における前記第2のバルブの下流側の異常を検出する異常検出部と、
を備えるガス供給装置。
【請求項2】
前記第1のバルブ及び前記第2のバルブのうち前記第2のバルブのみを囲み、内部が排気される筐体を備える請求項1記載のガス供給装置。
【請求項3】
前記異常検出部により異常が検出されたときに、前記第2のバルブが閉じられるように制御信号を出力する制御部が設けられる請求項1または2記載のガス供給装置。
【請求項4】
平面視、前記処理容器内の周方向に互いに異なる位置にマイクロ波を照射し、前記ガスを活性化してプラズマを形成するマイクロ波照射部が設けられ、
前記複数の分岐路の下流端は、平面視、前記処理容器の周方向に互いに異なる位置に接続される請求項1ないし3のいずれか一つに記載のガス供給装置。
【請求項5】
前記第1のバルブは、
前記ガスの流路を備える本体部と、
前記本体部に対して回転可能であり、回転量に応じて当該本体部に対して進退するハンドルと、
前記ハンドルに接続されて前記流路に対して進退し、当該流路の幅を前記本体部に対する前記ハンドルの位置に応じた幅とする弁体部と、
前記ハンドルの回転によって回転すると共に、前記ハンドルと前記弁体部とを接続する回転軸と、
前記本体部に当接して当該ハンドルの回転量を制限し、前記流路の全閉を防ぐように前記回転軸に設けられた当接部材と、
を備える請求項1ないし4のいずれか一つに記載のガス供給装置。
【請求項6】
基板に処理を行うために処理容器に当該基板を格納する工程と、
排気機構により前記処理容器内を排気して真空雰囲気を形成する工程と、
上流側流路と、当該上流側流路の下流側が複数に分岐して形成され、前記処理容器に各々接続されると共に開度を変更自在で全閉されない第1のバルブが設けられる複数の分岐路と、を備えるガス供給路において、ガス供給源から前記上流側流路にガスを供給する工程と、
前記ガスを前記各分岐路へ分流する工程と、
前記上流側流路に設けられる第2のバルブにより、下流側へガスを給断する工程と、
圧力センサにより前記処理容器内の圧力を検出する工程と、
検出された前記処理容器内の圧力に基づいて、異常検出部により前記ガス供給路における前記第2のバルブの下流側の異常を検出する工程と、
を備えるガス供給方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガス供給装置及びガス供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程においては基板である半導体ウエハ(以下、ウエハと記載する)が処理容器に格納され、当該処理容器内にガスが供給されて処理が行われる。この処理容器内にガスを供給するように配管系が構成される。この配管系から、ガスが漏洩した場合の対策が取られる場合が有る。また、このような配管系にはバルブが設けられる。
【0003】
特許文献1では、第1配管と、処理ガス供給流量制御部と、第2配管と、第1配管と処理ガス供給流量制御部とを接続する第1配管継手部と、第2配管と処理ガス流量制御部とを接続する第2配管継手部と、ガスボックスとを備える装置について示されている。当該ガスボックスは、第1配管継手部、第2配管継手部及び処理ガス流量制御部を格納し、ガスボックス外の雰囲気をガスボックス内に吸い込む吸込口と、ガスボックス内の雰囲気を排気する排気口と、を備える。また、特許文献2には緩み止め構造を備えたバルブが示されている。このバルブは、流路が形成された本体部と、流路に対して進退自在な弁体部と、回転することで弁体部の進退量を調整するハンドル部と、本体部とハンドル部との相対回転を防止する回転防止部材と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-242791号公報
【文献】特開2011-247352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、ガス供給路の下流側を分岐させて処理容器にガスを供給するにあたり、簡素な構成でガス供給路からの前記ガスの漏洩を防ぐことができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のガス供給装置は、基板に処理を行うために当該基板を格納する処理容器と、
前記処理容器内を排気して真空雰囲気を形成する排気機構と、
ガス供給源からガスが供給される上流側流路と、当該上流側流路の下流側が複数に分岐して形成されると共に前記処理容器に各々接続される複数の分岐路と、を備えるガス供給路と、
前記上流側流路に供給されたガスを前記複数の分岐路へ分流するために当該分岐路に各々設けられた、開度を変更自在で全閉されない第1のバルブと、
前記上流側流路に設けられ、下流側へガスを給断する第2のバルブと、
前記処理容器内の圧力を検出するための圧力センサと、
検出された前記処理容器内の圧力に基づいて、前記ガス供給路における前記第2のバルブの下流側の異常を検出する異常検出部と、
を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、ガス供給路の下流側を分岐させて処理容器にガスを供給するにあたり、簡素な構成でガス供給路からの前記ガスの漏洩を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の一実施形態である成膜装置の縦断側面図である。
図2】前記成膜装置を構成する処理容器の横断平面図である。
図3】前記成膜装置を構成するアンテナモジュールの縦断側面図である。
図4】前記成膜装置に設けられる配管に介設されるバルブの概略縦断側面図である。
図5】前記成膜装置に設けられる配管に介設されるバルブの概略縦断側面図である。
図6】前記成膜装置における動作を示すフローである。
図7】評価試験の結果を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示のガス供給装置の一実施形態である成膜装置1について、図1の縦断側面図を参照しながら説明する。この成膜装置1はウエハWを格納する円形の処理容器11を備えており、当該処理容器11内の複数の箇所からガスが供給される。このガスがマイクロ波によりプラズマ化され、CVD(Chemical Vapor Deposition)によってウエハWにSiBN膜(ホウ素含有シリコン窒化膜)が成膜されるように、当該成膜装置1が構成されている。ウエハWに均一性高い処理を行うために、ガス及びマイクロ波は処理容器11内の複数箇所に各々供給される。後に詳しく述べるが、この成膜装置1においては、そのようにガスを複数箇所に供給できるように構成された配管系において周囲へのガス漏洩のリスクが発生したときに、その旨を検出して当該ガス漏洩を防ぐことができるように構成されている。
【0010】
上記の処理容器11は大気圧雰囲気下に設けられており、当該処理容器11の内部には、ウエハWが載置される円形のステージ12が設けられている。ステージ12は、上記のCVDを行うためにウエハWを所定の温度に加熱できるように構成されている。また、処理容器11内は排気機構13によって例えば常時排気され、所望の圧力の真空雰囲気とされる。図2は処理容器11の横断平面図を示している。処理容器11の側壁においてステージ12の上側には、ガスを供給するための30本の直管状の側壁ノズル14が、処理容器11の周方向に等間隔に設けられている。
【0011】
各側壁ノズル14は、平面視ステージ12の中心部へ向かうように、水平方向にガスを吐出する。処理容器11の側壁には、各側壁ノズル14にガスを供給するために当該側壁の周に沿って形成された平面視円環状のバッファ空間15が形成されている。そしてガスの供給管である6本の配管41の各下流端が、処理容器11の外部からこのバッファ空間15に、処理容器11の周に沿って等間隔に接続されている。つまり、配管41から供給されるガスは、バッファ空間15を介して側壁ノズル14から吐出される。
【0012】
また、処理容器11の天井部には例えば6本の直管状の天井ノズル16が、処理容器11の周に沿って等間隔に設けられている。各天井ノズル16は、垂直下方にガスを供給する。処理容器11の外部から処理容器11の天井部に3本の配管42の下流端が接続されている。処理容器11の天井壁にはバッファ空間(不図示)が形成されており、各配管42から供給されるガスは当該バッファ空間を介して、各天井ノズル16から吐出される。
【0013】
処理容器11の天井部には、各々マイクロ波を処理容器11内に導入するための7つのアンテナモジュール2が設けられており、処理容器11内においてこのアンテナモジュール2が設けられる領域の垂直下方が、マイクロ波の照射領域20として構成される。この照射領域20のうちの1つはステージ12の中心部上に位置し、他の6つは平面で見てステージ12の中心部から離れると共に、処理容器11の周に沿って等間隔に位置している。このように平面で見て照射領域20が処理容器11内の周方向に互いに異なる位置に配置されることに応じて、上記の配管41も平面で見て処理容器11の側壁の周方向に互いに異なる位置に接続され、ガスを導入できるように構成されている。
【0014】
成膜装置1はマイクロ波出力部21を備え(図1参照)、当該マイクロ波出力部21は各アンテナモジュール2にマイクロ波を分配して供給する。マイクロ波照射部をなすアンテナモジュール2は、アンプ部22と、マイクロ波導入機構23とを備える。アンプ部22は、アンプの他に、マイクロ波の位相を変化させてプラズマの分布を調整するための位相器や、当該アンプに対してマイクロ波導入機構23のアンテナ部で反射された反射マイクロ波を分離するアイソレータなどを含む。
【0015】
図3を用いてマイクロ波導入機構23について簡単に説明する。マイクロ波導入機構23は、チューナ25と、アンプ部22により増幅されたマイクロ波を処理容器11内に放射するアンテナ部26と、を備える。さらにマイクロ波導入機構23は、上下に伸びる円筒状の外側導体をなす本体容器27と、本体容器27の中心軸に沿って伸びる内側導体28とを備える。本体容器27及び内側導体28は同軸管を構成し、本体容器27の内周面と内側導体28の外周面との間の空間は、マイクロ波伝送路29を形成する。
【0016】
上記のアンテナ部26は、内側導体28の下端部に接続される平面アンテナ31と、平面アンテナ31の上面側に配置されたマイクロ波遅波材32と、平面アンテナ31の下面側に配置されるマイクロ波透過窓33とを備えている。平面アンテナ31は、複数のスロット(開口部)31Aを備える。マイクロ波遅波材32は例えば石英により構成され、マイクロ波の波長を短くしてプラズマを調整する。マイクロ波透過窓33は、例えば石英やセラミックスなどの誘電体材料により構成され、処理容器11の天井部に形成された開口部を塞ぐ。マイクロ波伝送路29を通って平面アンテナ31に達したマイクロ波は、平面アンテナ31のスロット31Aからマイクロ波透過窓33を透過してTEモードで処理容器11内に放射される。
【0017】
また、上記のチューナ25は、リング状に上下方向に離間して設けられた誘電体からなるスラグ34A、34Bと、アクチュエータ35と、アクチュエータ35を制御する図示しないチューナコントローラとを含む。アクチュエータ35により、アンプ部22からマイクロ波導入機構23を見たときのインピーダンスが所定の値となるように、スラグ34A、34Bの各々の上下の位置が調整され、平面アンテナ31に至るまでのインピーダンス不整合を高精度で解消する。
【0018】
図1に戻って説明を続ける。処理容器11には圧力センサをなすプレッシャースイッチ19が設けられている。プレッシャースイッチ19は、処理容器11の内部の圧力が、所定の閾値を越える圧力になるとオフからオンに切り替えられ、後述する制御部10に、そのように圧力が閾値を越えたことを示す検出信号を出力する。このプレッシャースイッチ19は、処理容器11内の異常を監視する役割の他に、後に詳しく述べるように配管41、42を含む配管系における異常を監視する役割を有する。
【0019】
既述した処理容器11の側壁に接続される各配管41の上流側はバルブ5、マスフローメータ(MFM)42を、この順に介した後に合流し、合流配管43を形成する。合流配管43の上流側は、バルブV1、マスフローコントローラ(MFC)44、バルブV2をこの順に介して、ガス供給源45に接続される。また、既述した処理容器11の天井部に接続される各配管42の上流側はバルブ5、マスフローメータ(MFM)42を、この順に介した後に合流し、合流配管46を形成する。合流配管46の上流側は、バルブV3、マスフローコントローラ(MFC)47、バルブV4をこの順に介して、ガス供給源45に接続される。
【0020】
バルブV1~V4は、制御部10から出力される制御信号に基づいて開閉され、処理容器11内へのガスの供給と、当該ガスの供給の停止とを切り替えることができる。なお、バルブV1~V4は、処理容器11へのガスの供給を停止させるために、後に詳しく説明する第1のバルブであるバルブ5とは異なり、全閉することができるように構成されている。バルブV1、V3は第2のバルブに相当する。また、合流配管43、46によって形成されるガス流路は上流側流路であり、配管41、42によって形成されるガス流路は分岐路であり、これら上流側流路及び分岐路によりガス供給路が構成される。
【0021】
ガス供給源45については、SiH(モノシラン)ガス、NH(アンモニア)ガス、B(ジボラン)ガスを含有するH(水素)ガス、He(ヘリウム)ガス及びN(窒素)ガスを、合流配管43、46に対して各々給断できるように構成されている。SiHガス、NHガス、BガスについてはSiBN膜を形成するための成膜ガスであり、Heガスについてはプラズマ形成用のガスであり、Nガスについてはキャリアガスである。なお、SiHガスは可燃性ガス、Bガスは毒性ガスである。
【0022】
上記のバルブV1~V4及びMFC44、47を囲む筐体48が設けられており、上記の合流配管43、46は、密閉空間をなす当該筐体48内を引き回されている。筐体48には排気路49が接続されており、当該排気路49を介して筐体48内は排気される。また、図示は省略しているが筐体48には、当該筐体48の外部の雰囲気を筐体48内に取込むための給気口が設けられている。この筐体48は、例えばバルブV1~V4及びMFC44、47を、合流配管43、46に各々接続するための図示しない継手から上記の可燃性ガス及び毒性ガスを含む各ガスが漏洩したときに周囲への拡散を防ぐ、いわゆるガスボックスとして構成されている。なお、筐体48内においては、MFC、MFCの上流側のバルブ及びMFCの下流側のバルブを備えた配管が上記の各ガスの種類毎に設けられ、各ガスについて夫々独立して合流配管43、46の下流側への給断及び流量を制御できるように配管系が形成されている。ここでは説明の便宜上、当該配管系を簡略化して示している。
【0023】
上記の6つの配管41に各々設けられたバルブ5は、合流配管43から当該各配管41へガスを分流させるために設けられる。3つの配管42に各々設けられたバルブ5は、合流配管46から当該各配管42へガスを分流させるために設けられる。即ちバルブ5は、処理容器11内へのガスの供給と、当該供給の停止とを切り替えるためのものでは無く、その上流側に設けられるMFM42と共にスプリッタを構成する。各バルブ5については作業員が手動でその開度を変更可能な構成とされ、その開度変更の際に全閉されることが無いように構成されている。
【0024】
このバルブ5について、概略縦断側面図である図4を参照して説明する。バルブ5は、この例ではいわゆるダイヤフラムバルブとして構成されており、横長のボディ51と、ボディ51に対して固定されると共に当該ボディ51の長さ方向の中央部から上方に伸びるボンネット52と、を備える。ボディ51及びボンネット52は本体部を構成する。
【0025】
ボディ51に設けられる一次側流路54及び二次側流路55は、ボンネット52に設けられる空間53の底部に開口する。この空間53には、一次側流路54の開口及び二次側流路55の開口に被さる弁体部をなすダイヤフラム56が設けられている。空間53におけるダイヤフラム56の下方領域を、一次側流路54と二次側流路55とを接続する流路50とする。ダイヤフラム56の上方には、一次側流路54の開口及び二次側流路55の開口に対向するディスク57が設けられている。ディスク57の上面はバネ58を介して、当該ディスク57の上方に設けられるステム59に接続されている。
【0026】
ステム59の上部は、ボンネット52に上下方向に穿孔された孔61を介して、当該ボンネット52の上方へ延出されており、ステム59の外周面に形成されたねじ62と、孔61の内周面に形成されたねじ63とが互いに螺合している。当該ステム59の上端部にはハンドル64が設けられている。また、当該ステム59においてはフランジである廻り止め65が、ボンネット52よりも上方、且つハンドル64よりも下方に設けられている。
【0027】
作業員がハンドル64を回転させると、回転軸をなすステム59が軸回りに回転する。上記のねじ62、63の螺合により、ハンドル64の回転量に応じて、当該ハンドル64はボンネット52及びボディ51に対して進退すると共に、ステム59を介してハンドル64に接続されるディスク57は流路50に対して進退する。この進退移動時に、ハンドル64、ステム59、廻り止め65、バネ58及びディスク57については、互いの位置が変わらず、ディスク57とハンドル64との距離は一定に構成されている。また、バルブ5の使用時に一次側流路54からボディ51に流れ込むガスの圧力によって、ダイヤフラム56はディスク57に押し付けられる。そのため、ダイヤフラム56の下方における流路50の幅(高さ)、即ちバルブ5の開度は、空間53におけるディスク57の高さ位置に応じたものとなり、言い換えるとボディ51に対するハンドル64の位置に応じた大きさとなる。
【0028】
ところで図4はバルブ5の開度が比較的大きい状態を示している。この図4に示す状態からハンドル64を回してバルブ5の開度を小さくするにあたり、ハンドル64の回転量が大きいと、図5に示すように廻り止め65がボンネット52に当接することで、ハンドル64のさらなる回転が防止される。つまり図5は、バルブ5の開度を最小にした状態を示している。この状態で流路50は閉塞されておらず、従ってバルブ5は全閉されていない。即ち、上記の廻り止め65はハンドル64の回転量を制限し、ステム59において、ディスク57が任意の位置よりも下方に移動できず、バルブ5が全閉されることを防ぐ当接部材として設けられている。
【0029】
なお、開度を変更不可のオリフィスなどではなく、開度を変更可能なバルブ5を配管41、42に設けるのは、成膜装置1のメンテナンス時などにおいて、各配管41、42に分流されるガスの流量を容易に再調整できるようにするためである。また、上記の例ではバルブ5をダイヤフラムバルブとしているが、このバルブ5としては全閉されず、且つ開度が調整可能であればよい。従ってバルブ5としては、例えばニードルによって流路の開度が調整されるニードルバルブによって構成されていてもよい。
【0030】
ここで上記のようにバルブ5が全閉されない構造としている理由を説明するために、仮に全閉可能なバルブ5を用いた場合に起こる事象を説明する。つまり成膜装置1の稼働中にバルブ5については全閉の状態と、全閉ではない所定の開度の状態とで切り替わるものとする。処理容器11の外側は既述のように大気圧とされている。そして当該バルブ5の二次側の圧力は、処理容器11内で排気が行われることにより、当該大気圧より低い負圧となるので、当該バルブ5の二次側からのガス漏れのリスクは低い。しかし、バルブ5が全閉されることで当該バルブ5の一次側に供給されるガスにより、当該バルブ5の一次側の圧力は大気圧よりも高くなってしまうおそれが有り、その結果として当該バルブ5の一次側に設けられる継手から、ガスが周囲に漏洩することが考えられる。ここでいうバルブ5の一次側に設けられる継手とは、具体的には例えばバルブ5及びMFM42を配管41または配管42に各々接続するために設けられる継手である。
【0031】
そこで、例えばMFM42及びバルブ5を囲むことで、当該バルブ5の一次側に設けられる各継手が収納されるようにガスボックスを設けて排気を行い、当該各継手からガスが漏洩しても、そのガスの拡散を防ぐように装置を構成することが考えられる。つまり、上記の筐体48によって構成されるガスボックスとは別個にガスボックスを設けることが考えられる。その他に合流配管43、46にプレッシャースイッチを設けて、当該合流配管43、46内が、大気圧に対して負圧に維持されているか否かを監視することが考えられる。つまり、上記のプレッシャースイッチ19とは別個にプレッシャースイッチを設けることが考えられる。しかし、このようにガスボックスやプレッシャースイッチの数が多くなることは、成膜装置1を構成する機器のレイアウトの制約を大きくしてしまうし、成膜装置1のシステムが肥大化して製造コストを増加させてしまう。
【0032】
しかし上記の成膜装置1においてバルブ5は全閉されず、処理容器11から見て直近の全閉されるバルブは、バルブV1、V3である。従って、合流配管43、46及び配管41、42によって構成されるガス流路において、バルブV1の下流側及びバルブV3の下流側は、処理容器11内の排気により、大気圧に対して負圧に保たれる。このバルブV1の下流側、バルブV3の下流側の各ガス流路について、配管の外部の雰囲気に対するシールが不完全となったとする。つまり各ガス流路から配管の外部へのガス漏れが起き得る状態になったとすると、当該配管の外部の雰囲気が当該流路に流れ込み、ガス流路の圧力が上昇する。それによって処理容器11の圧力も上昇し、プレッシャースイッチ19がオフからオンに切り替わる。即ち、プレッシャースイッチ19によってガス漏洩のリスクが発生したことを検知することができる。従って、上記のバルブ5及びMFM42を囲うガスボックスや、合流配管43、46におけるプレッシャースイッチを設けることが不要になる。そして、上記のように処理容器11から見て直近の全閉されるバルブは、バルブV1、V3であるが、バルブV1、V3については既述のように筐体48に囲まれている。つまり、バルブV1、V3の一次側の圧力が高くなり、当該一次側からガス漏洩が発生しても、周囲へのガスの拡散を防ぐことができる。
【0033】
また、バルブ5が全閉される場合は、バルブ5よりも上流側の流路において、配管の外部とのシールが不完全となってガス漏洩が起き得る状態になっても、バルブ5が全閉されることで処理容器11内の圧力上昇が起こらない。つまり、プレッシャースイッチ19によってバルブ5の上流側における流路の異常の監視は行うことができない。従って、全閉されないバルブ5を用いることで、プレッシャースイッチ19による流路の異常を監視できる範囲が、バルブV1、V3の下流側から処理容器11に至るまでの領域となるように拡大されている。
【0034】
また、図1に示すように、成膜装置1は異常検出部をなす制御部10を備えている。この制御部10はコンピュータにより構成されており、プログラム、メモリ、CPUを備えている。プログラムには、成膜装置1における一連の動作を実施することができるようにステップ群が組み込まれており、当該プログラムによって制御部10は成膜装置1の各部に制御信号を出力し、当該各部の動作が制御される。具体的には、例えばバルブV1~V4の開閉、排気機構13による排気、マイクロ波出力部21によるマイクロ波の供給などの各動作が制御される。上記のプログラムは、例えばコンパクトディスク、ハードディスク、DVDなどの記憶媒体に格納されて、制御部10にインストールされる。また、制御部10は、プレッシャースイッチ19がオンになったときに作業員に異常の発生を知らせるアラームを出力するアラーム出力部を備えている。このアラーム出力部は例えばディスプレイやスピーカーであり、アラームは音声や画面表示である。
【0035】
以下、成膜装置1によって行われる成膜処理について説明する。排気機構13により所定の真空圧力となるように排気された処理容器11内に図示しない搬送機構によりウエハWが搬入されて、ステージ12に載置され、所定の温度に加熱される。そして、マイクロ波出力部21からマイクロ波がアンテナモジュール2に供給され、処理容器11内に放射される。このマイクロ波の放射と共にバルブV1~V4が開かれ、側壁ノズル14及び天井ノズル16からSiHガス、NHガス、Bガスを含むHガス、Heガス、Nガスが処理容器11内に供給される。これらのガスがマイクロ波の作用により活性化し、プラズマが形成される。そしてプラズマ化したSiHガス、NHガス及びBガスの成分がウエハWに堆積して、ウエハWにSiBN膜が形成される。
【0036】
然る後、処理容器11内へのマイクロ波の放射が停止すると共に、SiHガス、NHガス、Bガスを含むHガス、Heガスの供給が停止する。パージガスとしてNガスの供給が引き続き行われた後、Nガスの供給が停止し、ウエハWは処理容器11外へ搬出される。
【0037】
成膜装置1の稼働中は常時、制御部10によってガス漏洩が起こり得る状態となったか否かの検出が行われる。つまり、上記のようにウエハWへの成膜処理中であっても、当該成膜処理が行われておらず装置が待機中であっても、プレッシャースイッチ19から圧力が閾値を越えたことを示す検出信号が出力されたか否かが制御部10によって監視される。以下、図6のフローを参照しながら、この監視及び監視に関連する動作について説明する。既述したようにバルブV1の下流側及びバルブV3の下流側における配管によって形成される流路と、当該配管の外側とのシールが破れてガス漏洩が起こり得る状態になったとする(ステップS1)。そうすると、配管の周囲の雰囲気が配管内ひいては処理容器11内に流入し、当該処理容器11内の圧力が上昇する。そして、所定の閾値を越えるとプレッシャースイッチ19がオンになり、検出信号が制御部10に出力される(ステップS2)。
【0038】
検出信号を受信した制御部10は、上記のガス漏洩が起こり得る異常な状態となったものとして、アラームを出力する。またバルブV1~V4が開放されて成膜処理が行われている場合は、これらのバルブV1~V4が閉鎖されるように制御信号が出力され、バルブV1、V3の下流側への各ガス供給が停止して成膜処理が停止し、ガス漏洩が防止される(ステップS3)。
【0039】
上記の成膜装置1によれば、全閉可能なバルブV1、V3が介設された合流配管43、46から夫々分岐した配管41、配管42に、全閉されずにガスを当該配管41、42に分流させるためのバルブ5を夫々介設している。そして処理容器11内の圧力によってオンオフが切り替わるプレッシャースイッチ19の状態を、制御部10により監視している。このような構成により、バルブV1、V3の下流側のガス流路における異常の有無を監視することができるので、既述したようにガスボックス及びプレッシャースイッチを設ける数が増加することを防ぐことができる。つまり、この成膜装置1においては装置構成を簡素にしつつ、ガスボックスを構成する筐体48の外側に引き回される配管から、その配管の周囲へのガス漏洩を防ぐことができる。また、成膜装置1によれば異常を検出したときには、バルブV1~V4が自動で閉じられるため、ガス漏洩をより確実に防ぐことができる。
【0040】
なお、上記の筐体48についてバルブV1~V4及びMFC44、47の他に、バルブ5及びMFM42を囲むように構成することが考えられる。しかし、合流配管43から分岐した各配管41及び合流配管46から分岐した各配管42については、その長さが大きくなるほど配管容積が大きくなり、処理容器11へガスが到達する時間が長くなってしまう。その結果として、ウエハWの処理時間が長くなってしまうおそれが有る。従って配管41、42については長さを短くし、MFM42及びバルブ5については、処理容器11の近傍に設けることが好ましい。しかし、ガスボックスについてはバルブなどの各機器を囲み且つ排気を行う構成上、比較的大きなものとなるため、処理容器11の近傍に設けることが難しい。つまり成膜装置1については、筐体48がバルブ5及びMFM42を囲わず、バルブV1~V4及びMFC44、47のみを囲むように構成しているため、バルブ5及びMFM42について上記のように処理容器11の近傍に設けることを可能にしている。従って、成膜装置1によればウエハWの処理時間を短縮化することができる。
【0041】
上記の例ではガス供給装置についてCVDを行う成膜装置1として構成しているが、このような構成とすることには限られない。例えばガス供給装置については、処理容器11内にガスを供給してALD(Atomic Layer Deposition)を行う成膜装置として構成してもよい。また、エッチングガスを処理容器11内に供給してウエハWにエッチングを行うエッチング装置として構成してもよい。さらに、ウエハWの処理の際にはプラズマが形成される装置であってもよいし、プラズマが形成されない装置であってもよい。また、ウエハWへ成膜するにあたり、処理容器11内の各部にも成膜がなされるので、ウエハWへの成膜処理後には処理容器11内にクリーニングガスが供給されて膜が除去される。このクリーニングガスを処理容器11内に供給するにあたり、本開示の技術を適用してもよい。従って本開示の技術は、成膜ガスやエッチングガスなどのウエハWに処理を行うための処理ガスを処理容器11内に供給する場合に適用されることに限られない。
【0042】
また、バルブ5については作業員が手動でその開度を調整する構成であることには限られない。つまり、バルブ5については全閉されなければ、例えば制御部10からの制御信号に基づいて開度が変更される構成であってもよい。ただし、図4図5で説明した構成のバルブ5によれば構造が簡素であるし、作業員が開度を調整する際に誤って全閉してしまうことが無いので好ましい。なお、バルブ5については廻り止め65が設けられず、ハンドル64とボンネット52が互いに当接することで当該ハンドル64が回せなくなるような構成であってもよい。
【0043】
ところでバルブ5が全閉されないとは、少なくとも装置の稼働中においてバルブ5が全閉されないように構成されることである。装置の電源をオンにしてからオフにするまで、処理容器11内へのウエハWの搬入を待つ待機状態と、既述の処理容器11に格納したウエハWの処理と、が繰り返されることになる。このように待機と処理とが繰り返される装置の稼働中において、バルブ5が全閉されなければよい。即ち、ガス漏洩の検出を行うことが必要になるときに、バルブ5が全閉されなければよい。従って、例えば装置の電源を落としている間はバルブ5が全閉されており、装置の電源オンによって制御部10から制御信号が出力されてバルブ5の全閉状態が解除されて1回目の成膜処理を行う前に所定の開度となる。そして、最後の成膜処理が行われた後に電源オフの操作を行うと再度全閉されるような構成であってもよい。
【0044】
なお、今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の特許請求の範囲及びその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【0045】
(評価試験)
上記の成膜装置1に関連して行われた評価試験について説明する。この評価試験では上記の成膜装置1において、合流配管43のバルブV1の下流側の圧力を測定する第1の圧力計、合流配管46のバルブV3の下流側の圧力を各々測定する第2の圧力計を夫々設けた。そして、処理容器11内を排気機構13により排気して真空雰囲気とすると共に、合流配管43、46に夫々Nガスを供給した。合流配管43、46に各々供給するNガスの流量については、次第に上昇させて成膜処理を行う際の設定流量とした。そして、このようにNガスの流量を変更させるにあたり、第1の圧力計及び第2の圧力計によって各々測定される圧力をモニターした。なお、各バルブ5については既述のように全閉されず、その開度は最小とした。
【0046】
図7のグラフは、この評価試験の結果を示している。グラフの横軸にはNガスの供給流量(単位:sccm)、縦軸には検出された配管内の圧力(単位:Pa)を夫々示している。円のプロットは合流配管43における圧力を示し、三角のプロットは合流配管46における圧力を示している。このグラフに示すように、Nガスの流量が上昇するほど合流配管43、46の圧力は上昇するが、Nガスの流量が成膜処理を行う際の流量であっても合流配管43、46内の圧力は10kPa以下であり、処理容器11内の圧力と略同様の圧力に保たれていた。従って、処理容器11に設けたプレッシャースイッチ19により、バルブV1、V3の下流側のガス流路の圧力を監視することができることが確認された。
【符号の説明】
【0047】
1 成膜装置
10 制御部
11 処理容器
13 排気機構
19 プレッシャースイッチ
41、42 配管
43、46 合流側流路
45 ガス供給源
V1、V3 バルブ
5 バルブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7