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特許7151487樹脂組成物、溶融成形用材料、多層構造体および液体包装用材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】樹脂組成物、溶融成形用材料、多層構造体および液体包装用材料
(51)【国際特許分類】
   C08L 29/04 20060101AFI20221004BHJP
   C08L 53/02 20060101ALI20221004BHJP
   C08K 5/101 20060101ALI20221004BHJP
   B32B 27/28 20060101ALI20221004BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20221004BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
C08L29/04 S
C08L53/02
C08K5/101
B32B27/28 102
B32B27/30 B
B65D65/40 D
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018562127
(86)(22)【出願日】2018-11-22
(86)【国際出願番号】 JP2018043113
(87)【国際公開番号】W WO2019103075
(87)【国際公開日】2019-05-31
【審査請求日】2021-10-04
(31)【優先権主張番号】P 2017224608
(32)【優先日】2017-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123928
【弁理士】
【氏名又は名称】井▲崎▼ 愛佳
(74)【代理人】
【識別番号】100136308
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 優子
(72)【発明者】
【氏名】碓氷 眞太郎
(72)【発明者】
【氏名】池下 美奈子
【審査官】横山 法緒
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/163370(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/082063(WO,A1)
【文献】特開2015-071439(JP,A)
【文献】特開2018-145396(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
B32B 27/28
B32B 27/30
B65D 65/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン-ビニルアルコール系共重合体(A)、スチレン系熱可塑性エラストマー(B)およびソルビン酸エステル(C)を含有する樹脂組成物であって、上記ソルビン酸エステル(C)の含有量が、樹脂組成物の重量当たり0.00001~10ppmであることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
上記スチレン系熱可塑性エラストマー(B)に対するエチレン-ビニルアルコール系共重合体(A)の重量含有比率が、エチレン-ビニルアルコール系共重合体(A)/スチレン系熱可塑性エラストマー(B)=1/99~99/1であることを特徴とする請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項3】
上記スチレン系熱可塑性エラストマー(B)が、ハードセグメントとソフトセグメントを有するブロック共重合体であることを特徴とする請求項1または2記載の樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の樹脂組成物からなることを特徴とする溶融成形用材料。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか一項に記載の樹脂組成物からなる層を備えることを特徴とする多層構造体。
【請求項6】
請求項5記載の多層構造体からなることを特徴とする液体包装用材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレン-ビニルアルコール系共重合体(以下、「EVOH」と称する)を含有する樹脂組成物およびそれを用いた溶融成形用材料、多層構造体および液体包装用材料に関するものであり、さらに詳しくは、着色が抑制された樹脂組成物、かかる樹脂組成物からなる溶融成形用材料、樹脂組成物からなる層を備える多層構造体および液体包装用材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
EVOHは、透明性、酸素等のガスバリア性、保香性、耐溶剤性、耐油性、機械強度等に優れており、フィルム、シート、ボトル等に成形され、食品包装材料、医薬品包装材料、工業薬品包装材料、農薬包装材料等の各種包装材料として広く用いられている。しかし、EVOHは、ガスバリア性に優れる反面、分子鎖に水酸基を豊富に有し結晶化度が高いため、脆い傾向にあり、柔軟性に欠けるという短所がある。
【0003】
そこで、液体を包装する用途等、柔軟性が必要な用途では、EVOH成形品に柔軟性を付与するために、軟質樹脂とブレンドして用いることが一般に行われている。
【0004】
例えば、特許文献1では、柔軟性を付与するために、スチレン-イソブチレン-スチレントリブロック共重合体(SIBS)等に代表されるような、ビニル芳香族モノマー単位からなるポリマーブロックとイソブチレン単位からなるポリマーブロックとのブロック共重合体をブレンドした樹脂組成物が提案されている。
【0005】
また、特許文献2では、EVOH等のポリビニルアルコール系樹脂と、スチレン-ブタジエンブロック共重合体やスチレン-イソプレンブロック共重合体等のブロック共重合体とは相溶性が悪く、混合性の悪さに起因した不均一性から、所望の特性改善を図ることが困難であるとして、ブロック共重合体に代えて、不飽和カルボン酸で変性した変性ブロック共重合体を用いることが提案されている。
【0006】
さらに、特許文献3には、ガスバリア性と内容物の非吸着性を維持しつつ、かつ低温での熱封緘性(ヒートシール性)が改善された樹脂組成物として、EVOH99.5~90重量%と、テルペン系樹脂、ロジン系樹脂およびC5~C10の石油炭化水素樹脂からなる群より選ばれた1種または2種以上の樹脂0.5~10重量%の樹脂組成物が開示されている。
また、かかる樹脂組成物において、フィルムの熱封緘性および耐屈曲性を向上させる目的で、ハードセグメントにポリスチレン、ソフトセグメントにポリブタジエンまたはポリイソプレンを使用したブロックポリマーであるスチレン系熱可塑性エラストマーを配合することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平10-87923号公報
【文献】特開昭63-304043号公報
【文献】特開平7-173348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1~3で開示されているEVOHとスチレン系熱可塑性エラストマーを含む樹脂組成物は、柔軟性に優れるものであるが、溶融混練や溶融成形等の加熱によって着色する傾向があり、改善が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記実情に鑑み鋭意検討した結果、EVOHおよびスチレン系熱可塑性エラストマーを含む樹脂組成物において特定微量のソルビン酸エステルを併用する場合に上記課題が解決することを見出した。
【0010】
すなわち、本発明は、EVOH(A)、スチレン系熱可塑性エラストマー(B)およびソルビン酸エステル(C)を含有する樹脂組成物であって、上記ソルビン酸エステル(C)の含有量が、樹脂組成物の重量当たり0.00001~10ppmである樹脂組成物を第1の要旨とする。また、本発明は、上記樹脂組成物からなる溶融成形用材料を第2の要旨とし、そして上記樹脂組成物からなる層を備える多層構造体を第3の要旨とし、さらに上記多層構造体からなる層を備える液体包装用材料を第4の要旨とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の樹脂組成物は、EVOH(A)、スチレン系熱可塑性エラストマー(B)およびソルビン酸エステル(C)を含有するものであり、上記ソルビン酸エステル(C)の含有量が、樹脂組成物の重量当たり0.00001~10ppmに設定されている。これにより、EVOH(A)とスチレン系熱可塑性エラストマー(B)とを含有する樹脂組成物において、溶融混練や溶融成形等の加熱による着色を抑制する効果に優れる。
【0012】
また、上記スチレン系熱可塑性エラストマー(B)に対するEVOH(A)の重量含有比率が、EVOH(A)/スチレン系熱可塑性エラストマー(B)=1/99~99/1であると、より着色抑制効果に優れるようになる。
【0013】
さらに、上記スチレン系熱可塑性エラストマー(B)が、ハードセグメントとソフトセグメントを有するブロック共重合体であると、より着色抑制効果に優れるようになる。
【0014】
本発明の樹脂組成物からなる溶融成形用材料は、着色が抑制されることから、各種成形物として、例えば、食品、薬品、農薬等の包装材料、特に液体包装用材料として好適に用いることができる。
【0015】
本発明の樹脂組成物からなる層を備える多層構造体は、着色が抑制されることから、各種成形物として、例えば、食品、薬品、農薬等の包装材料、特に液体包装用材料として好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の構成について詳細に説明するが、これらは望ましい実施態様の一例を示すものであり、これらの内容に特定されるものではない。
【0017】
<樹脂組成物>
本発明の樹脂組成物は、EVOH(A)、スチレン系熱可塑性エラストマー(B)およびソルビン酸エステル(C)を含有する。以下、本発明の樹脂組成物の各成分について順に説明する。
【0018】
[EVOH(A)]
本発明で用いるEVOH(A)は、通常、エチレンとビニルエステル系モノマーとを共重合させた後にケン化させることにより得られる樹脂であり、一般的にエチレン-ビニルアルコール系共重合体やエチレン-ビニルエステル系共重合体ケン化物と称される非水溶性の熱可塑性樹脂である。重合法も公知の任意の重合法、例えば、溶液重合、懸濁重合、エマルジョン重合を用いることができるが、一般的にはメタノールを溶媒とする溶液重合が用いられる。得られたエチレン-ビニルエステル系共重合体のケン化も公知の方法で行い得る。
すなわち、本発明で用いるEVOH(A)は、エチレン構造単位とビニルアルコール構造単位を主とし、通常、ケン化されずに残存した若干量のビニルエステル構造単位を含むものである。
【0019】
上記ビニルエステル系モノマーとしては、市場からの入手のしやすさや製造時の不純物の処理効率がよい点から、代表的には酢酸ビニルが用いられる。この他、ビニルエステル系モノマーとしては、例えば、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等の脂肪族ビニルエステル、安息香酸ビニル等の芳香族ビニルエステル等があげられる。なかでも、好ましくは炭素数3~20、より好ましくは炭素数4~10、特に好ましくは炭素数4~7の脂肪族ビニルエステルである。これらは通常単独で用いるが、必要に応じて複数種を同時に用いてもよい。
【0020】
上記EVOH(A)におけるエチレン構造単位の含有量は、ISO14663に基づいて測定することができ、通常20~60モル%、好ましくは25~50モル%、特に好ましくは25~45モル%である。かかる含有量が少なすぎると、高湿時のガスバリア性、溶融成形性が低下する傾向があり、逆に多すぎると、ガスバリア性が低下する傾向がある。
【0021】
上記EVOH(A)におけるビニルエステル成分のケン化度は、JIS K 6726(ただし、EVOHは水/メタノール溶媒に均一に溶解した溶液として用いる)に基づいて測定することができ、通常90~100モル%、好ましくは95~100モル%、特に好ましくは99~100モル%である。かかるケン化度が低すぎる場合にはガスバリア性、熱安定性、耐湿性等が低下する傾向がある。
【0022】
また、上記EVOH(A)のメルトフローレート(MFR)(210℃、荷重2160g)は、通常0.5~100g/10分であり、好ましくは1~50g/10分、特に好ましくは3~35g/10分である。かかるMFRが高すぎると、製膜性が低下する傾向がある。また、MFRが低すぎると溶融押出が困難となる傾向がある。
【0023】
また、本発明に用いられるEVOH(A)は、本発明の効果を阻害しない範囲で、以下に示すコモノマーに由来する構造単位が、さらに含まれていてもよい(例えば、通常EVOH(A)の20モル%以下、好ましくは10モル%以下)。
上記コモノマーとしては、例えば、プロピレン、1-ブテン、イソブテン等のオレフィン類や、2-プロペン-1-オール、3-ブテン-1-オール、4-ペンテン-1-オール、5-ヘキセン-1-オール、3,4-ジヒドロキシ-1-ブテン、5-ヘキセン-1,2-ジオール等の水酸基含有α-オレフィン類や、そのエステル化物である、3,4-ジアシロキシ-1-ブテン、3,4-ジアセトキシ-1-ブテン、2,3-ジアセトキシ-1-アリルオキシプロパン、2-アセトキシ-1-アリルオキシ-3-ヒドロキシプロパン、3-アセトキシ-1-アリルオキシ-2-ヒドロキシプロパン、グリセリンモノビニルエーテル、グリセリンモノイソプロペニルエーテル等、水酸基含有α-オレフィン類のアシル化物等の誘導体、1,3-ヒドロキシ-2-メチレンプロパン、1,5-ヒドロキシ-3-メチレンペンタン等のヒドロキシメチルビニリデン類;これらのエステル化物である1,3-ジアセトキシ-2-メチレンプロパン、1,3-ジプロピオニルオキシ-2-メチレンプロパン、1,3-ジブチロニルオキシ-2-メチレンプロパン等のビニリデンジアセテート類;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、(無水)フタル酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸等の不飽和酸類あるいはその塩あるいは炭素数1~18のモノまたはジアルキルエステル類、アクリルアミド、炭素数1~18のN-アルキルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、2-アクリルアミドプロパンスルホン酸あるいはその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミンあるいはその酸塩あるいはその4級塩等のアクリルアミド類、メタアクリルアミド、炭素数1~18のN-アルキルメタクリルアミド、N,N-ジメチルメタクリルアミド、2-メタクリルアミドプロパンスルホン酸あるいはその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミンあるいはその酸塩あるいはその4級塩等のメタクリルアミド類、N-ビニルピロリドン、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド等のN-ビニルアミド類、アクリルニトリル、メタクリルニトリル等のシアン化ビニル類、炭素数1~18のアルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、アルコキシアルキルビニルエーテル等のビニルエーテル類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル化合物類、トリメトキシビニルシラン等のビニルシラン類、酢酸アリル、塩化アリル等のハロゲン化アリル化合物類、アリルアルコール、ジメトキシアリルアルコール等のアリルアルコール類、トリメチル-(3-アクリルアミド-3-ジメチルプロピル)-アンモニウムクロリド、アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸等のコモノマーがあげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0024】
そして、上記のなかでも、側鎖に一級水酸基を有する構造単位を含有するEVOHは、延伸処理や真空・圧空成形等の二次成形性が良好になる点で好ましく、とりわけ、側鎖に1,2-ジオールを有する構造単位を含有するEVOHが好ましい。
【0025】
EVOH(A)が側鎖に一級水酸基を有する構造単位を含有する場合、その含有量は通常0.1~20モル%、さらには0.1~15モル%、特には0.1~10モル%が好ましい。
【0026】
また、上記EVOH(A)は、異なる他のEVOHとの混合物であってもよく、上記他のEVOHとしては、エチレン構造単位の含有量が異なるもの、上記側鎖に一級水酸基を有する構造単位の含有量が異なるもの、ケン化度が異なるもの、メルトフローレート(MFR)が異なるもの、他の共重合成分が異なるもの等をあげることができる。
【0027】
さらに、本発明で用いるEVOH(A)は、ウレタン化、アセタール化、シアノエチル化、オキシアルキレン化等の「後変性」されたEVOHを用いることもできる。
【0028】
本発明の樹脂組成物における上記EVOH(A)の含有量は、通常1重量%以上であり、好ましくは50重量%以上であり、好ましくは60重量%以上であり、より好ましくは70重量%以上である。なお、EVOH(A)の含有量の上限は、通常99重量%である。かかる値が上記範囲である場合、本発明の効果がより効果的に得られる傾向がある。
【0029】
[スチレン系熱可塑性エラストマー(B)]
本発明で用いられる、スチレン系熱可塑性エラストマー(B)は、一般にスチレン系熱可塑性エラストマーとして知られているものを用いることができる。かかるエラストマーは通常、ハードセグメントとソフトセグメントとを有するブロック共重合体である。詳細には、ハードセグメントとなるビニル芳香族モノマー(代表的にはスチレンモノマー)のポリマーブロック(b1)〔以下、「ポリマーブロック(b1)」と称することがある。〕と、ソフトセグメントとなるゴム成分たる不飽和炭化水素化合物のポリマーブロックおよび、その水添ブロックの少なくとも一方(b2)〔以下、「ポリマーブロック(b2)」と称することがある。〕とを有するブロック共重合体である。
【0030】
上記不飽和炭化水素化合物のポリマーブロックの水添ブロックとは、ジエン化合物および、共役ジエン化合物の少なくとも一方からなるポリマーブロック中の不飽和結合の一部、または全部が水素添加されることにより形成されるものである。例えば、ポリブタジエンブロックは水素添加により、エチレン・ブチレンポリマーブロックやブタジエン・ブチレンポリマーブロック等になる。また、ポリイソプレンブロックは、水素添加により、エチレン・プロピレンポリマーブロック等になる。水素添加は公知の方法で行うことができ、特定のビニル結合部分を選択的に水素添加したものであってもよい。
【0031】
上記スチレン系熱可塑性エラストマー(B)のメルトフローレート(MFR)は、JIS K 7210に準拠して、230℃、荷重2160g条件下で、通常0.01~200g/10分であり、好ましくは0.1~100g/10分であり、より好ましくは1~50g/10分であり、特に好ましくは3~15g/10分である。かかる値が上記範囲内である場合、本発明の効果がより効果的に得られるものとなる。
【0032】
また、スチレン系熱可塑性エラストマー(B)とEVOH(A)のメルトフローレートが近いほど、溶融混練が容易になり、スチレン系熱可塑性エラストマー(B)とEVOH(A)が均一に分散した樹脂組成物が得られやすく、ひいては耐屈曲性、透明性に優れた樹脂組成物が得られやすい。具体的には、230℃、荷重2160g条件下で測定したMFR比〔EVOH(A)/スチレン系熱可塑性エラストマー(B)〕が通常0.1~10、好ましくは0.2~4、より好ましくは0.3~3である。
【0033】
上記スチレン系熱可塑性エラストマー(B)の溶融粘度は、JIS K 7199に準拠して、せん断速度1220sec-1、200℃条件下で、通常100~5000poise、好ましくは500~4000poise、より好ましくは1000~3000poiseである。かかる値が上記範囲内である場合、本発明の効果がより効果的に得られるものとなる。
【0034】
本発明の樹脂組成物において、スチレン系熱可塑性エラストマー(B)に対するEVOH(A)の重量含有比率〔EVOH(A)/スチレン系熱可塑性エラストマー(B)〕は、通常1/99~99/1であり、好ましくは50/50~99/1であり、より好ましくは51/49~99/1、より好ましくは60/40~90/10、特に好ましくは70/30~85/15である。EVOH(A)とスチレン系熱可塑性エラストマー(B)との重合含有比率が上記の範囲内であると、より着色抑制効果に優れるものとなる。
【0035】
また、本発明の樹脂組成物におけるEVOH(A)とスチレン系熱可塑性エラストマー(B)の含有量の総和は、通常70重量%以上であり、好ましくは80重量%以上であり、より好ましくは90重量%以上である。なお、EVOH(A)とスチレン系熱可塑性エラストマー(B)の含有量の総和の上限は、樹脂組成物からソルビン酸エステル(C)を除いた全重量である。
【0036】
以下、本発明で用いるスチレン系熱可塑性エラストマー(B)について詳述する。
スチレン系熱可塑性エラストマー(B)は、上記ハードセグメントとなるポリマーブロック(b1)と、上記ソフトセグメントとなるポリマーブロック(b2)とを含有していればよく、b1-b2で表されるジブロック構造、b1-b2-b1またはb2-b1-b2で表されるトリブロック構造、b1-b2-b1-b2で表されるテトラブロック構造、あるいはb1とb2が5個以上直鎖状に結合しているポリブロック構造であってもよい。これらのうち、b1-b2で表されるジブロック構造、またはb1-b2-b1で表されるトリブロック構造、b1-b2-b1-b2で表わされるテトラブロック構造が、柔軟性および力学特性の点から好ましい。
【0037】
また、スチレン系熱可塑性エラストマー(B)におけるポリマーブロック(b1)の含有率は、通常5~50重量%であり、好ましくは10~40重量%、より好ましくは10~35重量%である。ビニル芳香族構成単位の含有率が適度に大きい場合、EVOH(A)との屈折率の差が小さくなり、透明性が向上する傾向がある。しかし、ビニル芳香族構成単位の含有率が大きすぎる場合、スチレン系熱可塑性エラストマー(B)自体の柔軟性が低下し、樹脂組成物の耐屈曲性改善効果が低下する傾向がある。また、ビニル芳香族構成単位の含有率は、小さい方が耐屈曲性に優れる傾向があるが、逆に小さくなりすぎると、EVOH(A)との相溶性が低下するためフィルムの透明性が低下し、ひいては耐屈曲性改善効果が低下する傾向がある。
【0038】
さらに、スチレン系熱可塑性エラストマー(B)における、ポリマーブロック(b2)の含有率は、通常50~95重量%であり、好ましくは60~90重量%、より好ましくは65~90重量%である。
【0039】
上記ポリマーブロック(b1)を構成するビニル芳香族モノマーとしては、例えば、具体的には、スチレン;α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、t-ブチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、2,4,6-トリメチルスチレン、モノフルオロスチレン、ジフルオロスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、メトキシスチレン等のスチレン誘導体;ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、インデン、アセトナフチレン等のビニル芳香族化合物等があげられる。これらのポリマーブロック(b1)を構成するモノマーのうち、好ましくはスチレン、スチレン誘導体であり、特に好ましくは、スチレンである。また、上記ポリマーブロック(b1)は、上記ビニル芳香族モノマーのホモポリマーブロックであってもよいし、2種以上のビニル芳香族モノマーのランダムコポリマーブロックであってもよい。
【0040】
さらに、ポリマーブロック(b1)は、必要に応じて、上記スチレン誘導体モノマーとともに、本発明の効果を損なわない範囲内(例えば、ポリマーブロック(b1)全体の10重量%以下、好ましくは5重量%以下の含有割合)において1-ブテン、ペンテン、ヘキセン、ブタジエン、イソプレン、メチルビニルエーテル等の他の共重合性モノマーを用いてもよい。
【0041】
上記ポリマーブロック(b2)を構成する不飽和炭化水素化合物モノマーとしては、通常、炭素数2~10の不飽和脂肪族炭化水素化合物であり、具体的には、炭素数4~6の共役ジエン化合物、炭素数4~6のジエン化合物、炭素数2~6のアルケン化合物等があげられ、これらのうち、炭素数2~6のアルケン化合物が好ましく用いられる。
【0042】
上記炭素数4~6の共役ジエン化合物としては、例えば、イソプレン、ブタジエン、1,4-ヘキサジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン等があげられる。
【0043】
上記炭素数4~6のジエン化合物としては、1,5-ヘキサジエン等があげられる。なお、ジエン化合物からなる上記ポリマーブロック(b2)は、上記共役ジエン化合物からなるポリマーブロックを水素添加して得られたものであってもよい。
【0044】
上記炭素数2~6のアルケン化合物としては、エチレン、プロピレン、n-ブチレン、イソブチレン等があげられる。これらのアルケン化合物からなる上記ポリマーブロック(b2)は、上記共役ジエン化合物または、ジエン化合物からなるポリマーブロックを水素添加して得られたものであってもよい。
【0045】
また、上記ポリマーブロック(b2)は、上記不飽和脂肪族炭化水素モノマーの1種からなるホモポリマーブロックであってもよいし、2種以上の不飽和脂肪族炭化水素モノマーからなるランダムコポリマーブロックであってもよい。ポリマーブロック(b2)としては、共役ジエン化合物のポリマーブロックまたは、その水素添加ブロックが好ましい。
【0046】
さらに、ポリマーブロック(b2)は、必要に応じて、上記飽和脂肪族炭化水素モノマーとともに、本発明の効果を損なわない範囲内(例えば、ポリマーブロック(b2)全体の10重量%以下、好ましくは5重量%以下の含有割合)で、上記ポリマーブロック(b1)と同様の他の共重合性モノマーを用いてもよい。
【0047】
本発明で用いられるスチレン系熱可塑性エラストマー(B)は、上記ポリマーブロック(b1)とポリマーブロック(b2)とが結合したもので、ブロック構造は特に限定されず、例えば、ラジアルテレブロックコポリマー、マルチブロックコポリマー、バイモダルコポリマー、テーパーブロックコポリマー等があげられる。
【0048】
また、上記ポリマーブロック(b1)および、ポリマーブロック(b2)は、それぞれ必要に応じて他の共重合性モノマーを共重合したランダムコポリマーブロックであってもよい。他の共重合モノマーとは、例えばエチレンやプロピレン等の炭素数2~3の不飽和炭化水素等である。
ただし、他の共重合性モノマーを含む場合、各ポリマーブロックにおける他の共重合性モノマーの含有率は、各ポリマーブロック重量の10重量%以下とすることが好ましく、5重量%以下とすることがより好ましい。
【0049】
また、本発明で用いるスチレン系熱可塑性エラストマー(B)は、その構造中に極性基を含有しない未変性スチレン系熱可塑性エラストマー(B1)であってもよいし、その構造中にカルボニル基を含有するカルボン酸変性スチレン系熱可塑性エラストマー(B2)であってもよい。また、未変性スチレン系熱可塑性エラストマー(B1)とカルボン酸変性スチレン系熱可塑性エラストマー(B2)とを併用してもよい。未変性スチレン系熱可塑性エラストマー(B1)とカルボン酸変性スチレン系熱可塑性エラストマー(B2)とを併用する場合は、その総和をスチレン系熱可塑性エラストマー(B)の含有量とみなす。
【0050】
未変性スチレン系熱可塑性エラストマー(B1)とは、上記のような構成を有し、かつ変性基を有さないスチレン系熱可塑性エラストマーである。未変性スチレン系熱可塑性エラストマー(B1)の具体例としては、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、SBSの水素添加ブロック共重合体(SEBS)、SISの水素添加ブロック共重合体(SEPS)、SBSのブタジエンブロックのビニル結合部分を水素添加したブロック共重合体(SBBS)、スチレン-イソブチレン-スチレントリブロック共重合体(SIBS)、スチレン-エチレン-ブチレン-結晶ポリオレフィンブロック共重合体(SEBC)等があげられる。これらの未変性スチレン系熱可塑性エラストマー(B1)は、単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。なかでも、SIBSもしくはSEBSが好ましく用いられ、SEBSが特に好ましく用いられる。
【0051】
このような未変性スチレン系熱可塑性エラストマー(B1)としては、市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、カネカ社製の「SIBSTAR072T」;JSR社製の「ダイナロン」、「JSR-TR」、「JSR-SIS」;クラレ社製の「セプトン」、「ハイプラー」;日本ゼオン社製の「クインタック」、旭化成社製の「タフテック」、「タフプレン」;クレイトンポリマー社製の「KratonG」、「KratonD」、「Cariflex TR」;電気化学社製の「電化STR」;日本エラストマー社製の「アサプレンT」等があげられる。
【0052】
つぎにカルボン酸変性スチレン系熱可塑性エラストマー(B2)について詳述する。
上記カルボン酸変性スチレン系熱可塑性エラストマー(B2)は、上記ポリマーブロック(b1)と上記ポリマーブロック(b2)を有するスチレン系熱可塑性エラストマーの構造中に、さらにカルボキシ基を有するものである。
【0053】
カルボン酸変性スチレン系熱可塑性エラストマー(B2)は、カルボキシ基を有しているため、極性基である水酸基を有するEVOH(A)との親和性を有し、さらに、カルボン酸変性スチレン系熱可塑性エラストマー(B2)のブロック共重合体部分は、上記未変性スチレン系熱可塑性エラストマー(B1)と親和性を有する。そのため、スチレン系熱可塑性エラストマー(B)としてカルボン酸変性熱可塑性エラストマー(B2)を用いる場合はEVOH(A)との混合効率や反応効率が高まる傾向がある。また、上記未変性スチレン系熱可塑性エラストマー(B1)と、カルボン酸変性スチレン系熱可塑性エラストマー(B2)とを併用した場合、カルボン酸変性スチレン系熱可塑性エラストマー(B2)は、EVOH(A)と、未変性スチレン系熱可塑性エラストマー(B1)との相溶化剤としての役割を果たすことができる。
【0054】
上記カルボン酸変性スチレン系熱可塑性エラストマー(B2)は、公知の方法、例えば、上記ポリマーブロック(b1)または、ポリマーブロック(b2)の構成モノマーの一部を不飽和カルボン酸または、その誘導体に代えて共重合する方法、上記ポリマーブロック(b1)または、ポリマーブロック(b2)の側鎖の一部に不飽和カルボン酸または、その誘導体をラジカル付加等で導入する方法、あるいは上記未変性熱可塑性エラストマー(B1)を後変性する方法等により得ることができる。
【0055】
上記不飽和カルボン酸または、その誘導体としては、例えば、α,β-不飽和カルボン酸、α,β-不飽和カルボン酸無水物等が好ましく、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸等のα,β-不飽和モノカルボン酸、マレイン酸、コハク酸、イタコン酸、フタル酸等のα,β-不飽和ジカルボン酸、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシメチルメタクリレート等のα,β-不飽和モノカルボン酸エステル等のα,β-不飽和カルボン酸;無水マレイン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、無水フタル酸等のα,β-不飽和ジカルボン酸無水物等のα,β-不飽和カルボン酸無水物等をあげることができる。
【0056】
上記カルボン酸変性スチレン系熱可塑性エラストマー(B2)におけるカルボキシ基の含有量は、滴定法で測定した酸価が通常20mgCH3ONa/g以下であり、好ましくは1~15mgCH3ONa/g、さらに好ましくは1~5mgCH3ONa/gである。かかる酸価が高すぎると、EVOH(A)との反応点が多くなるため、高重合度化物が発生しやすくなり、樹脂組成物のMFRが低下して成形加工性が不足しやすい傾向がある。また、高重合度化物が発生することで、樹脂組成物内で粘度の偏りが発生し、樹脂組成物をフィルムとしたときにスジが発生しやすくなり、耐屈曲性が低下する傾向がある。
【0057】
上記カルボン酸変性スチレン系熱可塑性エラストマー(B2)としては市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば旭化成社製の「タフテック」Mシリーズ、クレイトンポリマー社の「Kraton」FGシリーズ、JSR社製の「f-ダイナロン」シリーズ等があげられる。また、これらのカルボン酸変性スチレン系熱可塑性エラストマー(B2)は、単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0058】
スチレン系熱可塑性エラストマー(B)として、未変性スチレン系熱可塑性エラストマー(B1)とカルボン酸変性スチレン系熱可塑性エラストマー(B2)とを併用する場合の重量含有比率〔カルボン酸変性スチレン系熱可塑性エラストマー(B2)/未変性スチレン系熱可塑性エラストマー(B1)〕は、カルボン酸変性スチレン系熱可塑性エラストマー(B2)の変性率にもよるが、通常0.01~10であり、好ましくは0.01~1であり、より好ましくは0.02~0.8、特に好ましくは0.03~0.5である。
【0059】
[ソルビン酸エステル(C)]
本発明は、EVOH(A)およびスチレン系熱可塑性エラストマー(B)を含有する樹脂組成物において、ソルビン酸エステル(C)を特定微量にて配合することにより、着色を抑制するという顕著な効果を奏するものである。
【0060】
前述のように、一般的にEVOHとスチレン系熱可塑性エラストマーとを含有する樹脂組成物は、溶融混練や溶融成形時に着色しやすいものである。その理由としては、EVOHとスチレン系熱可塑性エラストマーとの溶融混合物は、樹脂組成物にせん断応力がかかるために混合時の熱が発生しやすく、EVOHの脱水が起こり、樹脂組成物が着色するものと推測される。
【0061】
本発明において、ソルビン酸エステル(C)を特定微量配合することにより、樹脂組成物の着色が抑制される理由としては、ソルビン酸エステル(C)は極性が低く、微量でもEVOH(A)中に均一分散しやすい。さらにかかるソルビン酸エステル(C)が加水分解することで、ソルビン酸が発生するものと考えられる。そして、このソルビン酸が、ラジカルを捕捉するため、優れた着色抑制効果が得られるものと推測される。また、加水分解後のソルビン酸エステル(C)のアルコール部位が、ラジカル捕捉後のソルビン酸をさらに捕捉してソルビン酸エステル(C)を生成し、このソルビン酸エステル(C)が再度熱により加水分解するという、触媒サイクルのような状態が発生しているものと推測される。
このようにして、常にラジカルを捕捉可能なソルビン酸が生成することから、樹脂組成物において、ラジカルの発生した早い段階でラジカルを捕捉することが可能となり、優れた着色抑制効果が得られると推測される。本発明においては、ソルビン酸エステル(C)の配合量が特定微量である場合、上記のサイクルが効率よく働き、顕著な着色抑制効果が得られるものと推測される。
【0062】
上記ソルビン酸エステル(C)としては、例えば、ソルビン酸とアルコールやフェノール誘導体との縮合によって得られるソルビン酸エステルがあげられる。具体的にはソルビン酸メチル、ソルビン酸エチル、ソルビン酸プロピル、ソルビン酸ブチル、ソルビン酸ペンチル等のソルビン酸アルキルエステルや、ソルビン酸フェニル、ソルビン酸ナフチル等のソルビン酸アリールエステル等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0063】
なかでも、ソルビン酸エステル(C)として、加水分解した場合に発生するアルコール類の酸性度が比較的低い場合、樹脂組成物の着色が起こりにくいことから、好ましくはソルビン酸アルキルエステルであり、より好ましくはアルコキシ基の炭素数が1~5のソルビン酸アルキルエステルであり、特に好ましくはアルコキシ基の炭素数が1~3のソルビン酸アルキルエステルであり、最も好ましくはソルビン酸メチル、ソルビン酸エチルである。
【0064】
ソルビン酸エステル(C)の分子量は、通常120~220であり、好ましくは120~200であり、特に好ましくは120~160である。分子量が上記範囲である場合、着色抑制効果が効果的に得られる傾向がある。
【0065】
上記ソルビン酸エステル(C)の含有量は、樹脂組成物の重量当たり、0.00001~10ppmである。好ましくは0.00005~5ppm、さらに好ましくは0.0001~4ppm、特に好ましくは0.0005~3ppm、殊に好ましくは0.001~1ppmである。ソルビン酸エステル(C)の含有量を上記範囲とすることにより、着色抑制効果が効果的に得られる。ソルビン酸エステル(C)の含有量が多すぎると、共役二重結合量が増えすぎて着色しやすくなる。
【0066】
上記ソルビン酸エステル(C)の含有量は、EVOH(A)とソルビン酸エステル(C)の総和重量当たり、通常0.0001~10ppmである。好ましくは0.0005~5ppm、さらに好ましくは0.0008~3ppm、特に好ましくは0.001~1.5ppmである。ソルビン酸エステル(C)の含有量を上記範囲とすることにより、着色抑制効果が効果的に得られる傾向がある。ソルビン酸エステル(C)の含有量が多すぎると、共役二重結合量が増えすぎて着色しやすくなる傾向がある。
【0067】
本発明の樹脂組成物中のソルビン酸エステル含有量は、樹脂組成物がペレット等の成形物である場合、つぎの方法により定量することができる。すなわち、まず上記ペレット等の成形物を任意の方法で粉砕(例えば凍結粉砕)し、炭素数1~5の低級アルコール系溶媒に溶解させて試料とする。そして、上記試料を液体クロマトグラフィー質量分析法(LC/MS/MS)を用いて測定することで、ソルビン酸エステル(C)の含有量を定量することができる。
【0068】
また、樹脂組成物が多層構造体等の他の熱可塑性樹脂等と組み合わされた成形物である場合、例えば、多層構造体であれば、測定する樹脂組成物からなる層を任意の方法で多層構造体より取り出した後、上記と同様の方法で定量することができる。
【0069】
[炭化水素系樹脂(D)]
本発明の樹脂組成物においては、分散助剤として炭化水素系樹脂(D)をさらに配合することが好ましい。本発明において、上記炭化水素系樹脂(D)は、数平均分子量が通常100~3000で、かつ軟化点が通常60℃以上170℃未満の樹脂である。このような炭化水素系樹脂(D)は、通常、常温で液体または固体の熱可塑性樹脂に属する。
【0070】
上記炭化水素系樹脂(D)としては、具体的には、ロジン系樹脂(ロジン、水素添加ロジン、不均化ロジン、重合ロジン等の変性ロジン、変性ロジンのグリセリンエステルやペンタエリスリトールエステル等のロジンエステル等)やテルペン系樹脂(テルペン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、水添テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂)等の天然炭化水素樹脂;石油樹脂、クマロンインデン樹脂、フェノール系樹脂(アルキルフェノール樹脂、ロジン変性フェノール樹脂等)、スチレン系樹脂、キシレン系樹脂等の合成炭化水素樹脂等があげられる。
【0071】
上記石油樹脂とは、石油ナフサ等の熱分解により副生する不飽和炭化水素モノマーを含有する留分を重合したものを意味し、具体的には、脂肪族系石油樹脂(C5系石油樹脂)、芳香族系石油樹脂(C9系石油樹脂)、脂肪族/芳香族系石油樹脂(C5/C9系石油樹脂)、脂環族系石油樹脂に分類される。
【0072】
上記脂肪族系石油樹脂(C5系石油樹脂)とは、石油ナフサ分解油のC5留分の精製成分を重合して得られた合成樹脂であり、具体例としては、クイントン100シリーズ(日本ゼオン社製)、エスコレッツ1000シリーズ(エクソンモービル社製)等があげられる。
【0073】
上記芳香族系石油樹脂(C9系石油樹脂)とは、石油ナフサ分解油のC9留分の精製成分を重合して得られた合成樹脂であり、具体例としては、ペトコール(東ソー社製)、日石ネオポリマー(新日本石油社製)等があげられる。
【0074】
上記脂肪族/芳香族系石油樹脂(C5/C9系石油樹脂)とは、上記C5留分とC9留分をブレンドした原料を共重合して得られた合成樹脂であり、具体例としては、ペトロタック(東ソー社製)、トーホーハイレジン(東邦化学工業社製)、クイントン100シリーズ(日本ゼオン社製)、エスコレッツ2000シリーズ(エクソンモービル社製)等があげられる。
【0075】
上記脂環族系石油樹脂には、上記の芳香族系石油樹脂、または脂肪族/芳香族系石油樹脂を水素添加して得られた水添系石油樹脂およびC5留分から抽出されたジシクロペンタジエンを主原料に合成して得られた合成樹脂がある。
なかでも上記の芳香族系石油樹脂、または脂肪族/芳香族系石油樹脂を水素添加して得られた水添系石油樹脂が代表的であり、具体例としては、アルコン(荒川化学工業社製)、アイマーブ(出光興産社製)、エスコレッツ5000シリーズ(エクソンモービル社製)等があげられる。
かかる水添系石油樹脂の場合には、水添率によって樹脂の極性が異なり、主に水添率90%以上の完全水添型と水添率90%未満の部分水添型に2種類に分類される。前者の具体例としては、アルコンPグレード(荒川化学工業社製)、アイマーブPタイプ(出光興産社製)等があげられ、後者の具体例としては、アルコンMグレード(荒川化学工業社製)、アイマーブSタイプ(出光興産社製)等があげられる。
【0076】
また、水素添加以外の方法で得られる脂環族系石油樹脂としてはC5留分から抽出されたジシクロペンタジエンを主原料に合成して得られる合成樹脂、具体例としては、クイントン1000シリーズ(日本ゼオン社製)、マルカレッツMシリーズ(丸善石油化学製)等があげられる。
【0077】
本発明においては、樹脂組成物の透明性や色調等の外観や無臭性を向上させる点で、石油樹脂を用いることが好ましく、さらには脂環族系石油樹脂を用いることが好ましく、特には水添系石油樹脂を用いることが好ましい。
また、水添系石油樹脂の水添率については、特に限定されないが、極性が低いSEBS、SEPS等の水添された未変性スチレン系熱可塑性エラストマー(B1)を用いた場合の親和性を考慮すると、完全水添型の水添系石油樹脂を用いることが好ましい。
【0078】
炭化水素系樹脂(D)の数平均分子量としては、通常100~3000、好ましくは300以上1500未満、特に好ましくは400以上1000未満である。数平均分子量が小さすぎる場合、溶融混合の際に原料投入部で液体になりやすく、特に粘度が低い液体になると、混合不良を起こしやすくなり、分散不良によってフィルム透明性が低下するおそれや、炭化水素系樹脂(D)が成形品から溶出しやすくなる傾向がある。また、数平均分子量が大きすぎる場合、溶融混練時に流体としてスチレン系熱可塑性エラストマー(B)の凝集体内に浸入しにくくなる傾向があり、親油性という炭化水素系樹脂(D)の特性から、EVOH(A)と分離しやすくなり、ひいては成形品において、目ヤニやスジ等外観不良の原因となる傾向がある。
【0079】
上記数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定で得られるポリスチレン換算値により算出することができる。
【0080】
炭化水素系樹脂(D)の軟化点は、通常60℃以上170℃未満、好ましくは95℃以上160℃未満、特に好ましくは120℃以上150℃未満である。軟化点が低すぎる場合、溶融混合の際に原料投入部で粘度の低い液状になりやすく、炭化水素系樹脂(D)の分散助剤としての効果が低下する傾向がある。ひいては、エチレン系熱可塑性エラストマー(B)の分散不良によって、耐屈曲性、透明性の改善効果が低下する傾向がある。また、炭化水素系樹脂(D)が成形品から溶出しやすくなる傾向がある。軟化点が高すぎる場合は、溶融混合の際に炭化水素系樹脂(D)成分の未溶融部分が残存して、分散助剤としての機能が低下し、耐屈曲性、透明性が低下する傾向があり、さらには残存した未溶融部分によってフィルム成形物にフィッシュアイ等の異物が発生する傾向がある。
【0081】
なお、軟化点の測定方法としては、JIS K 2207(環球法)に準拠した方法を用いることができる。
【0082】
炭化水素系樹脂(D)の色相は、JIS K 0071-2(ガードナーナンバー)に準拠した方法で測定するガードナーナンバーが通常3以下、好ましくは2以下、特に好ましくは1以下である。ガードナーナンバーが3を超えると、樹脂組成物の黄色度が強くなり外観特性が低下する傾向がある。
【0083】
また、炭化水素系樹脂(D)が水添系石油樹脂の場合には、JIS K 0071-1(ハーゼンナンバー)に準拠した方法で測定するハーゼンナンバーが通常200以下、好ましくは150以下、特に好ましくは100以下である。ハーゼンナンバーが200以下のものを用いると、外観特性に優れた無色透明な樹脂組成物を得ることができる。
【0084】
炭化水素系樹脂(D)の常温での形態としては、例えば粉末状、塊状、フレーク状、ペレット状(粒状)、液状等があげられるが、特に限定しない。混合時の作業性や計量性の観点からは、フレーク状、ペレット状が好ましく、特にペレット状が好ましい。
【0085】
以上のような炭化水素系樹脂(D)は、スチレン系熱可塑性エラストマー(B)がEVOH(A)中に微分散化できるように作用するという効果だけでなく、溶融成形時には液体化しているので、溶融時における組成物の粘度を減少(MFR値を増加)させることも可能となる。このことは、以下のような効果をもたらすと考えられる。すなわち、スチレン系熱可塑性エラストマー(B)として、カルボン酸変性スチレン系熱可塑性エラストマー(B2)を用いた場合に、カルボン酸変性スチレン系熱可塑性エラストマー(B2)に含まれるカルボキシ基は、EVOH(A)中の水酸基とは反応可能であるため、溶融混練過程において、両官能基が反応し、高重合度化物が生成される場合がある。この高重合度化物の生成によって溶融粘度が増加して、押出機内でのせん断発熱が生じやすくなり、高重合度化物がさらに増加して、フィルム成形物においてスジやフィッシュアイ等の外観不良等を招くおそれがある。しかしながら、炭化水素系樹脂(D)の配合により溶融時の樹脂組成物の粘度を減少させることが可能になると、せん断発熱の抑制、高重合度化物の生成が抑制され、ひいては品質改善の観点でも有効に寄与できると考えられる。
【0086】
樹脂組成物における炭化水素系樹脂(D)の重量配合比率は、EVOH(A)、スチレン系熱可塑性エラストマー(B)、ソルビン酸エステル(C)および炭化水素系樹脂(D)の総重量に対して、通常0.5~7.5重量%であり、好ましくは1~6重量%である。炭化水素系樹脂(D)の配合量が少なすぎる場合、炭化水素系樹脂(D)の分散助剤としての配合効果が得られにくくなる傾向がある。一方、多すぎる場合、過剰な炭化水素系樹脂(D)が排斥されることで、フィルムスジ、目ヤニ等の外観不良が発生する傾向がある。
【0087】
[他の熱可塑性樹脂]
本発明の樹脂組成物には、EVOH(A)、スチレン系熱可塑性エラストマー(B)および炭化水素系樹脂(D)以外の樹脂成分として、さらに他の熱可塑性樹脂を、樹脂組成物に対して、通常10重量%以下、好ましくは5重量%以下、特に好ましくは3重量%以下となるような範囲内で含有してもよい。
【0088】
上記他の熱可塑性樹脂としては、具体的には例えば、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-α-オレフィン(炭素数4~20のα-オレフィン)共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、ポリプロピレン、プロピレン-α-オレフィン(炭素数4~20のα-オレフィン)共重合体、ポリブテン、ポリペンテン等のオレフィンの単独または共重合体、ポリ環状オレフィン、あるいはこれらのオレフィンの単独または共重合体を不飽和カルボン酸またはそのエステルでグラフト変性したもの等の広義のポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の塩化ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、ビニルエステル系樹脂、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0089】
[その他の添加剤]
本発明の樹脂組成物には、上記各成分の他、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲内(例えば、通常、樹脂組成物全体の10重量%以下、好ましくは5重量%以下、特に好ましくは3重量%以下の含有割合)において、エチレングリコール、グリセリン、ヘキサンジオール等の脂肪族多価アルコール等の可塑剤;高級脂肪酸(例えばラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、オレイン酸等)、高級脂肪酸の金属塩(例えばステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等)、高級脂肪酸エステル(高級脂肪酸のメチルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、オクチルエステル等)、高級脂肪族アミド(例えばステアリン酸アミド等、オレイン酸アミド等)、ビス高級脂肪酸アミド(例えばエチレンビスステアリン酸アミド等)、低分子量ポリオレフィン(例えば、分子量500~10000程度の低分子量ポリエチレン、または低分子量ポリプロピレン)等の滑剤;乾燥剤;酸素吸収剤;熱安定剤;光安定剤;難燃剤;架橋剤;硬化剤;発泡剤;結晶核剤;防曇剤;生分解用添加剤;シランカップリング剤;アンチブロッキング剤;酸化防止剤;着色剤;帯電防止剤;紫外線吸収剤;抗菌剤;不溶性無機複塩(例えば、ハイドロタルサイト等);界面活性剤;ワックス等の公知の添加剤を適宜配合することができる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0090】
上記熱安定剤としては、溶融成形時の熱安定性等の各種物性を向上させる目的で、酢酸、プロピオン酸、酪酸等の有機酸類またはこれらのアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩、マグネシウム塩等)、亜鉛塩等の塩;または、硫酸、亜硫酸、炭酸、リン酸、ホウ酸等の無機酸類、またはこれらのアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩、マグネシウム塩等)、亜鉛塩等を用いることができる。
これらのうち、特に、酢酸、ホウ酸およびその塩を含むホウ素化合物、酢酸塩、リン酸塩を配合することが好ましい。
【0091】
上記熱安定剤として、酢酸を配合する場合、その配合量は、EVOH(A)100重量部に対して通常0.001~1重量部、好ましくは0.005~0.2重量部、特に好ましくは0.01~0.1重量部である。酢酸の配合量が少なすぎると、酢酸の含有効果が低下する傾向があり、逆に多すぎると均一なフィルムを得ることが難しくなる傾向がある。
【0092】
また、上記熱安定剤として、ホウ素化合物を配合する場合、その配合量は、EVOH(A)100重量部に対してホウ素換算(灰化後、ICP発光分析法にて分析)で通常0.001~1重量部である。ホウ素化合物の配合量が少なすぎると、ホウ素化合物の含有効果が低下する傾向があり、逆に多すぎると均一なフィルムを得ることが困難となる傾向がある。
【0093】
また、上記熱安定剤として、酢酸塩、リン酸塩(リン酸水素塩を含む)を配合する場合、その配合量は、各々EVOH(A)100重量部に対して金属換算(灰化後、ICP発光分析法にて分析)で通常0.0005~0.1重量部である。上記配合量が少なすぎるとその含有効果が低下する傾向があり、逆に多すぎると均一なフィルムを得るのが困難となる傾向がある。なお、樹脂組成物に2種以上の塩を配合する場合は、その総量が上記の配合量の範囲にあることが好ましい。
【0094】
[樹脂組成物の製造方法]
本発明の樹脂組成物は、前記必須成分であるEVOH(A)、スチレン系熱可塑性エラストマー(B)およびソルビン酸エステル(C)と、必要に応じて、炭化水素系樹脂(D)および、上記の各任意成分を用いて製造されるが、製造方法としては、例えば、ドライブレンド法、溶融混合法、溶液混合法、含浸法等の公知の方法があげられ、これらを任意に組み合わせることも可能である。
【0095】
上記ドライブレンド法としては、例えば、(I)EVOH(A)およびスチレン系熱可塑性エラストマー(B)の少なくとも一方を含有するペレットとソルビン酸エステル(C)とをタンブラー等を用いてドライブレンドする方法等があげられる。
【0096】
上記溶融混合法としては、例えば、(II)EVOH(A)およびスチレン系熱可塑性エラストマー(B)の少なくとも一方を含有するペレットとソルビン酸エステル(C)のドライブレンド物を溶融混練して、ペレットや他の成形物を得る方法や、(III)溶融状態のEVOH(A)およびスチレン系熱可塑性エラストマー(B)の少なくとも一方の溶融物にソルビン酸エステル(C)を添加して溶融混練し、ペレットや他の成形物を得る方法等があげられる。
【0097】
上記溶液混合法としては、例えば、(IV)市販のEVOH(A)およびスチレン系熱可塑性エラストマー(B)の少なくとも一方を含有するペレットを用いて溶液を調製し、ここにソルビン酸エステル(C)を配合し、凝固成形してペレット化し、固液分離して乾燥する方法や、(V)EVOH(A)の製造過程で、ケン化後のEVOHの均一溶液(水/アルコール溶液等)にスチレン系熱可塑性エラストマー(B)の溶液およびソルビン酸エステル(C)の少なくとも一方を含有させた後、凝固成形してペレット化し、固液分離して乾燥する方法等があげられる。
【0098】
上記含浸法としては、例えば、(VI)EVOH(A)およびスチレン系熱可塑性エラストマー(B)の少なくとも一方を含有するペレットを、ソルビン酸エステル(C)を含有する水溶液と接触させ、上記ぺレット中にソルビン酸エステル(C)を含浸させた後、乾燥する方法等をあげることができる。
【0099】
また、上記の各方法においては、あらかじめEVOH(A)およびスチレン系熱可塑性エラストマー(B)の少なくとも一方とソルビン酸エステル(C)を所定割合で配合し、ソルビン酸エステル(C)の濃度の高い組成物(マスターバッチ)を作製し、かかる組成物(マスターバッチ)をEVOH(A)もしくはスチレン系熱可塑性エラストマー(B)と配合することにより、所望の濃度の樹脂組成物を得ることも可能である。
【0100】
さらに本発明においては、上記の異なる手法を組み合わせることが可能である。なかでも、生産性や本発明の効果がより顕著な樹脂組成物が得られる点で、溶融混合法が好ましく、特には(II)の方法が好ましい。
【0101】
また、上記炭化水素系樹脂(D)および各任意成分を樹脂組成物に配合する場合も、上記の各製造方法に準じた方法により、樹脂組成物に配合することができる。
【0102】
なお、上記各方法によって得られる樹脂組成物のペレットや、上記各方法で用いられるEVOH(A)およびスチレン系熱可塑性エラストマー(B)の少なくとも一方を含有するペレットの形状は任意であり、例えば、球形、オーバル形、円柱形、立方体形、直方体形等任意の形状が採用可能である。ペレットの形状は、通常、オーバル形または円柱形であり、その大きさは、後に成形材料として用いる場合の利便性の観点から、円柱形の場合は底面の直径が通常1~6mm、好ましくは2~5mmであり、長さは通常1~6mm、好ましくは2~5mmである。オーバル形の場合は長径が通常1.5~30mm、好ましく3~20mm、さらに好ましくは3.5~10mmである。短径は通常1~10mm、好ましくは2~6mmであり、特に好ましくは2.5~5.5mmである。かかる長径および短径を測定する方法は、例えばペレットを手に取り観察し、ノギス等の計測器を用いて長径を測定した後に、かかる長径に垂直な断面のうち最大面積となる断面位置を目視および触覚で認定し、かかる断面を想定した場合の短径を同様に測定する方法があげられる。
【0103】
また、本発明の樹脂組成物の含水率は、通常、0.01~0.5重量%であり、好ましくは0.05~0.35重量%、特に好ましくは0.1~0.3重量%である。
【0104】
なお、本発明における樹脂組成物の含水率は以下の方法により測定・算出されるものである。
室温(25℃)下において、樹脂組成物を試料とし、乾燥前重量(W1)を電子天秤にて秤量する。その後、この試料を150℃の熱風乾燥機中で5時間乾燥させる。乾燥後、デシケーター中で30分間放冷して樹脂組成物の温度を室温(25℃)に戻した後の重量(W2)を秤量し、下記式より算出する。
含水率(重量%)=[(W1-W2)/W1]×100
【0105】
本発明の樹脂組成物は、ペレット、あるいは粉末状や液体状といった、さまざまな形態に調製され、各種の成形物の成形材料として提供される。特に本発明においては、溶融成形用材料として提供される場合、本発明の効果がより効率的に得られる傾向があり好ましい。なお、本発明の樹脂組成物には、本発明の樹脂組成物に用いられるEVOH(A)およびスチレン系熱可塑性エラストマー(B)以外の樹脂を混合して得られる樹脂組成物も含まれる。
【0106】
本発明の樹脂組成物のペレットは、そのまま溶融成形に供することが可能であるが、溶融成形時のフィード性を安定させる点で、ペレットの表面に公知の滑剤を付着させることも好ましい。上記滑剤としては、前述の滑剤を用いればよい。かかる滑剤の含有量は、通常、樹脂組成物の5重量%以下、好ましくは1重量%以下である。
【0107】
そして、かかる成形物としては、本発明の樹脂組成物を用いて成形された単層フィルムをはじめとして、本発明の樹脂組成物を用いて成形された層を有する多層構造体として実用に供することができる。
【0108】
[多層構造体]
本発明の多層構造体は、上記本発明の樹脂組成物からなる層を備えるものである。本発明の樹脂組成物からなる層(以下、「樹脂組成物層」と称する)は、本発明の樹脂組成物以外の熱可塑性樹脂を主成分とする他の基材(以下、「基材樹脂」と称する)と積層することで、さらに強度を付与したり、樹脂組成物層を水分等の影響から保護したり、他の機能を付与することができる。
【0109】
上記基材樹脂としては、例えば、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-プロピレン(ブロックおよびランダム)共重合体、エチレン-α-オレフィン(炭素数4~20のα-オレフィン)共重合体等のポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン、プロピレン-α-オレフィン(炭素数4~20のα-オレフィン)共重合体等のポリプロピレン系樹脂、ポリブテン、ポリペンテン、ポリ環状オレフィン系樹脂(環状オレフィン構造を主鎖および側鎖の少なくとも一方に有する重合体)等の(未変性)ポリオレフィン系樹脂や、これらのポリオレフィン類を不飽和カルボン酸またはそのエステルでグラフト変性した不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン系樹脂等の変性オレフィン系樹脂を含む広義のポリオレフィン系樹脂、アイオノマー、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂(共重合ポリアミドも含む)、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ビニルエステル系樹脂、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等のハロゲン化ポリオレフィン、芳香族または脂肪族ポリケトン類等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0110】
これらのうち、疎水性樹脂である、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂が好ましく、より好ましくは、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ環状オレフィン系樹脂およびこれらの不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂であり、特にポリ環状オレフィン系樹脂が疎水性樹脂として好ましく用いられる。
【0111】
多層構造体の層構成は、本発明の樹脂組成物層をa(a1、a2、・・・)、基材樹脂層をb(b1、b2、・・・)とするとき、a/b、b/a/b、a/b/a、a1/a2/b、a/b1/b2、b2/b1/a/b1/b2、b2/b1/a/b1/a/b1/b2等任意の組み合わせが可能である。また、該多層構造体を製造する過程で発生する端部や不良品等を再溶融成形して得られる、本発明の樹脂組成物と基材樹脂との混合物を含むリサイクル層をRとするとき、b/R/a、b/R/a/b、b/R/a/R/b、b/a/R/a/b、b/R/a/R/a/R/b等とすることも可能である。多層構造体の層の数はのべ数にて通常2~15、好ましくは3~10である。上記の層構成において、それぞれの層間には、必要に応じて接着性樹脂を含有する接着性樹脂層を介してもよい。
【0112】
上記接着性樹脂としては、公知のものを使用でき、基材樹脂層「b」に用いる熱可塑性樹脂の種類に応じて適宜選択すればよい。代表的には不飽和カルボン酸またはその無水物をポリオレフィン系樹脂に付加反応やグラフト反応等により化学的に結合させて得られるカルボキシ基を含有する変性ポリオレフィン系重合体をあげることができる。例えば、無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレン、無水マレイン酸グラフト変性ポリプロピレン、無水マレイン酸グラフト変性エチレン-プロピレン(ブロックおよびランダム)共重合体、無水マレイン酸グラフト変性エチレン-エチルアクリレート共重合体、無水マレイン酸グラフト変性エチレン-酢酸ビニル共重合体、無水マレイン酸変性ポリ環状オレフィン系樹脂、無水マレイン酸グラフト変性ポリオレフィン系樹脂等があげられる。そして、これらから選ばれた1種または2種以上の混合物を用いることができる。
【0113】
多層構造体において、本発明の樹脂組成物層と基材樹脂層との間に、接着性樹脂層を用いる場合、接着性樹脂層が樹脂組成物層と接して位置することから、疎水性に優れた接着性樹脂を用いることが好ましい。
【0114】
上記基材樹脂、接着性樹脂には、本発明の趣旨を阻害しない範囲(例えば、基材樹脂、接着性樹脂に対して通常30重量%以下、好ましくは10重量%以下)において、従来知られているような可塑剤、フィラー、クレー(モンモリロナイト等)、着色剤、酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤、核剤、ブロッキング防止剤、ワックス等を含んでいてもよい。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0115】
本発明の樹脂組成物と上記基材樹脂との積層(接着性樹脂層を介在させる場合を含む)は、公知の方法にて行うことができる。例えば、本発明の樹脂組成物のフィルム、シート等に基材樹脂を溶融押出ラミネートする方法、基材樹脂層に本発明の樹脂組成物を溶融押出ラミネートする方法、樹脂組成物と基材樹脂とを共押出する方法、樹脂組成物層と基材樹脂層とを有機チタン化合物、イソシアネート化合物、ポリエステル系化合物、ポリウレタン化合物等の公知の接着剤を用いてドライラミネートする方法、基材樹脂上に樹脂組成物の溶液を塗工してから溶媒を除去する方法等があげられる。これらのなかでも、コストや環境の観点から考慮して、共押出しする方法が好ましい。
【0116】
上記の多層構造体は、次いで必要に応じて(加熱)延伸処理が施される。延伸処理は、一軸延伸、二軸延伸のいずれであってもよく、二軸延伸の場合は同時延伸であっても逐次延伸であってもよい。また、延伸方法としてはロール延伸法、テンター延伸法、チューブラー延伸法、延伸ブロー法、真空圧空成形等のうち延伸倍率の高いものも採用できる。延伸温度は、多層構造体の融点近傍の温度で、通常40~170℃、好ましくは60~160℃程度の範囲から選ばれる。延伸温度が低すぎる場合は延伸性が不良となる傾向があり、高すぎる場合は安定した延伸状態を維持することが困難となる傾向がある。
【0117】
なお、延伸後に寸法安定性を付与することを目的として、次いで熱固定を行ってもよい。熱固定は周知の手段で実施可能であり、例えば上記延伸フィルムを緊張状態を保ちながら通常80~180℃、好ましくは100~165℃で通常2~600秒間程度熱処理を行う。また、本発明の樹脂組成物から得られた多層延伸フィルムをシュリンク用フィルムとして用いる場合には、熱収縮性を付与するために、上記の熱固定を行わず、例えば延伸後のフィルムに冷風を当てて冷却固定する等の処理を行えばよい。
【0118】
また、本発明の多層構造体を用いてカップやトレイ状の多層容器を得ることも可能である。その場合は、通常絞り成形法が採用され、具体的には真空成形法、圧空成形法、真空圧空成形法、プラグアシスト式真空圧空成形法等があげられる。さらに多層パリソン(ブロー前の中空管状の予備成形物)からチューブやボトル状の多層容器(積層体構造)を得る場合はブロー成形法が採用される。具体的には、押出ブロー成形法(双頭式、金型移動式、パリソンシフト式、ロータリー式、アキュムレーター式、水平パリソン式等)、コールドパリソン式ブロー成形法、射出ブロー成形法、二軸延伸ブロー成形法(押出式コールドパリソン二軸延伸ブロー成形法、射出式コールドパリソン二軸延伸ブロー成形法、射出成形インライン式二軸延伸ブロー成形法等)等があげられる。得られる積層体は必要に応じ、熱処理、冷却処理、圧延処理、印刷処理、ドライラミネート処理、溶液または溶融コート処理、製袋加工、深絞り加工、箱加工、チューブ加工、スプリット加工等を行うことができる。
【0119】
多層構造体(延伸したものを含む)の厚み、さらには多層構造体を構成する樹脂組成物層、基材樹脂層および接着性樹脂層の厚みは、層構成、基材樹脂の種類、接着性樹脂の種類、用途や包装形態、要求される物性等により一概にいえないが、多層構造体(延伸したものを含む)の厚みは、通常10~5000μm、好ましくは30~3000μm、特に好ましくは50~2000μmである。樹脂組成物層は通常1~500μm、好ましくは3~300μm、特に好ましくは5~200μmであり、基材樹脂層は通常5~3000μm、好ましくは10~2000μm、特に好ましくは20~1000μmであり、接着性樹脂層は、通常0.5~250μm、好ましくは1~150μm、特に好ましくは3~100μmである。
【0120】
さらに、多層構造体における樹脂組成物層と基材樹脂層との厚みの比(樹脂組成物層/基材樹脂層)は、各層が複数ある場合は最も厚みの厚い層同士の比にて、通常1/99~50/50、好ましくは5/95~45/55、特に好ましくは10/90~40/60である。また、多層構造体における樹脂組成物層と接着性樹脂層の厚み比(樹脂組成物層/接着性樹脂層)は、各層が複数ある場合は最も厚みの厚い層同士の比にて、通常10/90~99/1、好ましくは20/80~95/5、特に好ましくは50/50~90/10である。
【0121】
このようにして得られたフィルム、シート、延伸フィルムからなる袋およびカップ、トレイ、チューブ、ボトル等からなる容器や蓋材は、一般的な食品、マヨネーズやドレッシング等の調味料、味噌等の発酵食品、サラダ油等の油脂食品、飲料、化粧品、医薬品等の各種の包装材料容器として有用である。特に、本発明の樹脂組成物からなる層は、柔軟性を有し着色が抑制されていることから、本発明の樹脂組成物および本発明の樹脂組成物からなる層を備える多層構造体は、水、食品、薬品、農薬等の液体包装用材料(例えばバッグインボックス用バッグやパウチインディスペンサー用インナーバッグ等)として特に有用である。
【実施例
【0122】
以下、実施例をあげて本発明を具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、実施例の記載に限定されるものではない。
なお、例中「部」、「%」とあるのは、断りのない限り重量基準を意味する。
【0123】
実施例に先立って以下のEVOH(A)およびスチレン系熱可塑性エラストマー(B)のペレットを準備した。
・EVOH(A):エチレン構造単位の含有量29モル%、ケン化度100モル%、MFR3.2g/10分(210℃、荷重2160g)のエチレン-ビニルアルコール共重合体
・スチレン系熱可塑性エラストマー(B-1):スチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体(SIBS)(カネカ社製「SIBSTAR072T」)、スチレン含有量23%、MFR6g/10分〔JIS K 7210(230℃、2160g荷重)〕、溶融粘度2000poise〔JIS K 7199(200℃、せん断速度1220sec-1)〕
・スチレン系熱可塑性エラストマー(B-2):スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)(旭化成社製「タフテックH1041」)、スチレン含有量30%、MFR5g/10分〔JIS K 7210(230℃、2160g荷重)〕
【0124】
<実施例1>
上記EVOH(A)のペレット80部、上記スチレン系熱可塑性エラストマー(B-1)のペレット20部をドライブレンドした。その後ドライブレンドしたペレット100部、ソルビンエステル(C)としてソルビン酸メチル(富士フイルム和光純薬社製、分子量126)0.0000004部(樹脂組成物の重量当たり0.004ppm)をプラストグラフ(ブラベンダー社製)にて、230℃で5分間予熱したのち、230℃、50rpmの条件下において5分間溶融混練し、その後冷却固化させ、塊状の樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物を、粉砕機(ソメタニ産業社製、型式:SKR16-240)用い、回転刃の回転数650rpmにて粉砕して粉砕物を得た。かかる粉砕物は、1mm角から5mm角の小片であった。かかる樹脂組成物の含水率は、0.22%であった。
【0125】
<実施例2>
実施例1において、ソルビン酸メチルの配合量を0.00008部(樹脂組成物の重量当たり0.8ppm)に変更した以外は、実施例1と同様にして実施例2の樹脂組成物およびその粉砕物を得た。かかる樹脂組成物の含水率は、0.21%であった。
【0126】
<実施例3>
実施例1において、ソルビン酸メチルをソルビン酸エチル(富士フイルム和光純薬社製、分子量140)に変更した以外は、実施例1と同様にして実施例3の樹脂組成物およびその粉砕物を得た。かかる樹脂組成物の含水率は、0.16%であった。
【0127】
<実施例4>
実施例1において、スチレン系熱可塑性エラストマー(B-1)をスチレン系熱可塑性エラストマー(B-2)に変更した以外は、実施例1と同様にして実施例4の樹脂組成物およびその粉砕物を得た。かかる樹脂組成物の含水率は、0.19%であった。
【0128】
<比較例1>
実施例1において、ソルビン酸メチルを配合しなかった以外は実施例1と同様にして比較例1の樹脂組成物およびその粉砕物を得た。かかる樹脂組成物の含水率は、0.21%であった。
【0129】
<比較例2>
実施例1において、ソルビン酸メチルの配合量を0.0012部(樹脂組成物の重量当たり12ppm)に変更した以外は、実施例1と同様にして比較例2の樹脂組成物およびその粉砕物を得た。かかる樹脂組成物の含水率は、0.21%であった。
【0130】
下記に示す方法により実施例1~4、比較例1、2の樹脂組成物の着色評価を行った。結果を下記表1に示す。
【0131】
[着色評価]
上記の各粉砕物をサンプルとし、内径32mm高さ30mmの円筒状の容器にサンプルを充填し擦りきった状態で、日本電色工業社製 分光色差計 SE6000にてYI値を測定した。かかる値が大きいほど、樹脂組成物が溶融混練後に黄色く着色していることを意味する。
さらに、上記サンプルを空気雰囲気下のオーブン内で150℃、5時間加熱処理したサンプルについても同様にYI値を測定した。かかる値が大きいほど、樹脂組成物が加熱後に黄色く着色していることを意味する。
【0132】
【表1】
【0133】
上記の表1に示すように、ソルビン酸エステル(C)を本発明で規定する範囲を超えて含有する比較例2は、ソルビン酸エステル(C)を含有しない比較例1と、溶融混練後および150℃、5時間加熱した後のYI値がほぼ同じであった。これに対して特定微量のソルビン酸エステル(C)を含有する実施例1~4の樹脂組成物は、ソルビン酸エステル(C)を含有しない比較例1や、含有量が多すぎる比較例2に比べて樹脂組成物の溶融混練後のYI値、150℃、5時間加熱した後のYI値が共に低かった。
したがって、本発明の樹脂組成物は着色し難く、着色抑制効果に優れることがわかる。
【0134】
上記で得られた各実施例の樹脂組成物を用いて製造する多層構造体、およびこの多層構造体を用いて製造する液体包装用材料は、いずれも着色が抑制されるものである。
【0135】
上記実施例においては、本発明における具体的な形態について示したが、上記実施例は単なる例示にすぎず、限定的に解釈されるものではない。当業者に明らかな様々な変形は、本発明の範囲内であることが企図されている。
【産業上の利用可能性】
【0136】
本発明の樹脂組成物は、柔軟性を有し着色が抑制されていることから、本発明の樹脂組成物および本発明の樹脂組成物からなる層を備える多層構造体は、各種食品、マヨネーズやドレッシング等の調味料、味噌等の発酵食品、サラダ油等の油脂食品、水、飲料、化粧品、医薬品等の各種の包装材料、特には液体包装用材料(例えばバッグインボックス用バッグやパウチインディスペンサー用インナーバッグ等)として特に有用である。