(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】無線通信方法及び基地局
(51)【国際特許分類】
H04W 24/02 20090101AFI20221004BHJP
H04W 76/10 20180101ALI20221004BHJP
H04W 84/12 20090101ALI20221004BHJP
H04W 88/08 20090101ALI20221004BHJP
【FI】
H04W24/02
H04W76/10
H04W84/12
H04W88/08
(21)【出願番号】P 2019057392
(22)【出願日】2019-03-25
【審査請求日】2021-06-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中平 俊朗
(72)【発明者】
【氏名】村上 友規
(72)【発明者】
【氏名】アベセカラ ヒランタ
(72)【発明者】
【氏名】石原 浩一
(72)【発明者】
【氏名】林 崇文
(72)【発明者】
【氏名】鷹取 泰司
【審査官】倉本 敦史
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-537517(JP,A)
【文献】国際公開第2016/049216(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガードインターバル長が異なるように設定された複数の端末局それぞれと、1つ以上の前記端末局と接続可能にされた複数の無線通信部を備えた基地局とを接続する無線通信方法であって、
前記端末局それぞれに設定されたガードインターバル長を示す情報及び前記端末局の接続情報を収集する収集工程と、
収集したガードインターバル長を示す情報及び前記端末局の接続情報それぞれに基づいて、前記無線通信部それぞれに対して許容されるガードインターバル長を設定する設定ポリシー、及び、前記端末局ごとに接続される前記無線通信部を切替える条件を設定する切替ポリシーを算出するポリシー算出工程と、
算出した設定ポリシー及び切替ポリシーに基づいて、接続される前記端末局を前記無線通信部それぞれに対して設定する設定工程と
を含むことを特徴とする無線通信方法。
【請求項2】
前記無線通信部は、
複数の許容されるガードインターバル長を設定可能にされていること
を特徴とする請求項1に記載の無線通信方法。
【請求項3】
アンテナの指向性、又は複数のアンテナの選択若しくは組合せに基づいて、複数の前記無線通信部が許容する伝搬遅延時間をそれぞれ調整する調整工程
をさらに含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の無線通信方法。
【請求項4】
ガードインターバル長が異なるように設定された複数の端末局それぞれと接続される基地局であって、
1つ以上の前記端末局と接続可能にされた複数の無線通信部と、
前記端末局それぞれから設定されたガードインターバル長を示す情報及び前記端末局の接続情報を収集する収集部と、
前記収集部が収集したガードインターバル長を示す情報及び前記端末局の接続情報それぞれに基づいて、前記無線通信部ごとに許容されるガードインターバル長を設定する設定ポリシーと、前記端末局ごとに接続される前記無線通信部を切替える条件を設定する切替ポリシーとを算出するポリシー算出部と、
前記ポリシー算出部が算出した設定ポリシー及び切替ポリシーに基づいて、接続される前記端末局を前記無線通信部それぞれに対して設定する設定部と
を有することを特徴とする基地局。
【請求項5】
前記無線通信部は、
複数の許容されるガードインターバル長を設定可能にされていること
を特徴とする請求項4に記載の基地局。
【請求項6】
アンテナの指向性、又は複数のアンテナの選択若しくは組合せに基づいて、複数の前記無線通信部が許容する伝搬遅延時間をそれぞれ調整する伝搬遅延調整部
をさらに有することを特徴とする請求項4又は5に記載の基地局。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信方法及び基地局に関する。
【背景技術】
【0002】
5GHz帯の電波を用いた高速無線アクセスシステムとして、IEEE802.11a規格、11n規格、及び11ac規格に基づく無線LANがある。11a規格では、直交周波数分割多重(OFDM:Orthogonal Frequency Division Multiplexing)変調方式をベースとして、マルチパスフェージング環境での特性を安定化させて、最大54Mbit/sの伝送速度を実現している。さらに、11n規格では、複数アンテナを用いて同一の無線チャネルで空間分割多重を行うMIMO(Multiple Input Multiple Output)や、20MHzの周波数チャネルを2つ同時に利用して40MHzの周波数チャネルを利用するチャネルボンディング技術を用いて、最大600Mbit/sの伝送速度を実現している。
【0003】
また、11acの規格では、20MHzの周波数チャネルを8つまで同時に利用し、最大160MHzの周波数チャネルとして利用するチャネルボンディング技術や、同一の無線チャネルで複数の宛先に対して異なる信号を同時伝送する下り回線のマルチユーザMIMO技術等を利用し、11n規格より高速かつ高効率な無線通信を実現している(例えば非特許文献1参照)。
【0004】
現在では、伝送速度の向上に加えて、伝送効率の向上にも焦点を当てたIEEE802.11ax規格の策定も進められている。11axの規格では、同時伝送による空間的な周波数再利用の促進、OFDM変調方式の効率改善、また、マルチユーザ伝送として、上下回線のOFDMA伝送と上り回線のマルチユーザMIMO伝送が利用される予定である。
【0005】
また、無線LANでは、基地局と端末局の間の伝搬環境のマルチパスによる伝搬遅延を許容するため、OFDM変調信号にガードインターバル(Guard interval:GI)と呼ばれる信号を付加することが知られている。このガードインターバルの長さは、11acまでは400nsと800nsから選択でき、11axでは800nsと1600nsと3200nsから選択することができる。なお、ガードインターバルの長さが長くなるほど、より長い伝搬遅延を許容することができる。一方で、ガードインターバルの長さが長くなるほど、伝送効率は低下する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】IEEE Std 802.11ac-2013, Dec. 2013.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来、基地局からの伝搬遅延が異なる端末局が複数混在する通信環境では、各端末局に対するデータ伝送を行う場合のガードインターバル長は、端末局の伝搬遅延に応じて設定されている。しかしながら、無線LANを構成するために必須となるビーコン信号などの制御信号については、全ての端末局が受信する必要があるため、伝搬遅延の耐性がある長いガードインターバルが設定される。したがって、このような通信環境では、データ伝送と制御信号伝送が混在することから、制御信号の伝送効率の低下に起因してシステム全体の伝送効率が低下する課題がある。
【0008】
本発明は、ガードインターバル長が異なるように設定された複数の端末局それぞれと無線通信を行う場合にも、伝送効率を向上させることができる無線通信方法及び基地局を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様にかかる無線通信方法は、ガードインターバル長が異なるように設定された複数の端末局それぞれと、1つ以上の前記端末局と接続可能にされた複数の無線通信部を備えた基地局とを接続する無線通信方法であって、前記端末局それぞれに設定されたガードインターバル長を示す情報及び前記端末局の接続情報を収集する収集工程と、収集したガードインターバル長を示す情報及び前記端末局の接続情報それぞれに基づいて、前記無線通信部それぞれに対して許容されるガードインターバル長を設定する設定ポリシー、及び、前記端末局ごとに接続される前記無線通信部を切替える条件を設定する切替ポリシーを算出するポリシー算出工程と、算出した設定ポリシー及び切替ポリシーに基づいて、接続される前記端末局を前記無線通信部それぞれに対して設定する設定工程とを含むことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の一態様にかかる無線通信方法は、前記無線通信部が、複数の許容されるガードインターバル長を設定可能にされていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の一態様にかかる無線通信方法は、アンテナの指向性、又は複数のアンテナの選択若しくは組合せに基づいて、複数の前記無線通信部が許容する伝搬遅延時間をそれぞれ調整する調整工程をさらに含むことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の一態様にかかる基地局は、ガードインターバル長が異なるように設定された複数の端末局それぞれと接続される基地局であって、1つ以上の前記端末局と接続可能にされた複数の無線通信部と、前記端末局それぞれから設定されたガードインターバル長を示す情報及び前記端末局の接続情報を収集する収集部と、前記収集部が収集したガードインターバル長を示す情報及び前記端末局の接続情報それぞれに基づいて、前記無線通信部ごとに許容されるガードインターバル長を設定する設定ポリシーと、前記端末局ごとに接続される前記無線通信部を切替える条件を設定する切替ポリシーとを算出するポリシー算出部と、前記ポリシー算出部が算出した設定ポリシー及び切替ポリシーに基づいて、接続される前記端末局を前記無線通信部それぞれに対して設定する設定部とを有することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の一態様にかかる基地局は、無線通信部が、複数の許容されるガードインターバル長を設定可能にされていることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の一態様にかかる基地局は、アンテナの指向性、又は複数のアンテナの選択若しくは組合せに基づいて、複数の前記無線通信部が許容する伝搬遅延時間をそれぞれ調整する伝搬遅延調整部をさらに有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ガードインターバル長が異なるように設定された複数の端末局それぞれと無線通信を行う場合にも、伝送効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】一実施形態にかかる無線通信システムの構成例を示す図である。
【
図3】一実施形態にかかる基地局の構成例を示す図である。
【
図4】無線通信システムにおける端末局の種別の例を示す図表である。
【
図5】無線通信部の1つに複数の種別の端末局を収容した場合の通信例を示す図である。
【
図6】(a)は、基地局の無線通信部に、種別Aの第1端末局、及び種別Bの第2端末局が接続された場合の通信例を示す図である。(b)は、基地局の無線通信部に、種別Cの第3端末局、及び種別Dの第4端末局が接続された場合の通信例を示す図である。
【
図7】設定ポリシー及び切替ポリシーを用いる基地局の第1動作例を示すフローチャートである。
【
図8】端末局の種別と設定ポリシーとの関係を示す図表である。
【
図9】端末局の種別と切替ポリシーとの関係を示す図表である。
【
図10】設定ポリシー及び切替ポリシーを用いる基地局の第2動作例を示すフローチャートである。
【
図11】一実施形態にかかる基地局の変形例の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、図面を用いて無線通信システムの一実施形態を説明する。
図1は、一実施形態にかかる無線通信システム1の構成例を示す。
図1に示すように、無線通信システム1は、例えば、基地局5と、基地局5と無線通信可能な範囲であるサービスエリア内に存在する第1端末局10、第2端末局20、第3端末局30及び第4端末局40とを備える。
【0018】
ここで、第1端末局10、第2端末局20、第3端末局30及び第4端末局40は、それぞれ設定可能なガードインターバル長が異なっている(
図4参照)。また、第1端末局10、第2端末局20、第3端末局30及び第4端末局40それぞれに対して、同じガードインターバル長を設定された複数の端末局が基地局5のサービスエリア内に存在していてもよい。
【0019】
図2は、第1端末局10の構成例を示す。
図2に示すように、第1端末局10は、複数のアンテナ100、無線通信部102及び通知部104を有する。なお、一般的に端末局が備えているその他の機能ブロックについては図示していない。
【0020】
アンテナ100は、無線通信部102に接続され、無線通信部102から入力される無線フレームを送信し、受信した無線フレームを無線通信部102に対して出力する。
【0021】
無線通信部102は、例えば通知部104から入力される情報を無線フレームに変換し、アンテナ100に対して出力する。
【0022】
通知部104は、第1端末局10が対応可能な無線通信の規格や通信方式を示す情報を無線通信部102に対して出力する。
【0023】
なお、第2端末局20、第3端末局30及び第4端末局40は、実質的に第1端末局10と同じ構成であるが、第1端末局10とは伝搬遅延の環境がそれぞれ異なり、設定されるガードインターバル長がそれぞれ異なっている。
【0024】
図3は、一実施形態にかかる基地局5の構成例を示す。
図3に示すように、基地局5は、例えば複数のアンテナ50、n個の無線通信部51-1~51-n、収集部52、ポリシー算出部53、設定部54、記憶部55及び制御部56を有する。なお、一般的に基地局が備えているその他の機能ブロックについては図示していない。
【0025】
アンテナ50は、複数本ずつ無線通信部51-1~51-nにそれぞれ接続され、無線通信部51-1~51-nから入力される無線フレームを送信し、受信した無線フレームを無線通信部51-1~51-nに対して出力する。
【0026】
無線通信部51-1~51-nは、例えば複数のアンテナ50を介して、それぞれ独立して1つ以上の端末局(例えば第1端末局10、第2端末局20、第3端末局30及び第4端末局40の少なくともいずれか)と無線通信を行うことができるようにされている。また、無線通信部51-1~51-nは、それぞれ複数の許容されるガードインターバル長を設定可能にされている。
【0027】
収集部52は、無線通信部51-1~51-nから端末局それぞれに設定されるガードインターバル長の情報及び端末局の接続情報を収集し、収集した情報をリスト化してポリシー算出部53へ出力する。例えば、収集部52は、端末局の接続情報として、無線通信部51-1~51-nそれぞれの接続端末局台数・各端末局の種別・想定トラッヒック量などを収集する。
【0028】
ポリシー算出部53は、収集部52から入力された端末局に設定されるガードインターバル長の情報及び端末局の接続情報に基づいて、無線通信部51-1~51-nそれぞれに設定する規格又は通信方式の設定ポリシーと、端末局が接続される無線通信部51-1~51-nのいずれかを決定するための切替ポリシーとを算出し、設定部54に対して出力する。例えば、設定ポリシーは、無線通信部51-1~51-nそれぞれに対して許容されるガードインターバル長の設定を含む。また、切替ポリシーは、端末局ごとに接続される無線通信部51-1~51-nのいずれかを切替える条件の設定を含む。
【0029】
設定部54は、ガードインターバル長の設定ポリシーと、端末局が接続される無線通信部51-1~51-nのいずれかを決定するための切替ポリシーを無線通信部51-1~51-nそれぞれに対して設定する。つまり、設定部54は、ポリシー算出部53が算出した設定ポリシー及び切替ポリシーに基づいて、接続される端末局を無線通信部51-1~51-nそれぞれに対して設定する。
【0030】
記憶部55は、例えば収集部52が収集した情報などを記憶する。制御部56は、図示しないCPU及びメモリを備え、基地局5を構成する各部を制御する。
【0031】
よって、無線通信部51-1~51-nは、設定部54により設定されたガードインターバル長の設定ポリシーに基づいて、それぞれ独立して第1端末局10、第2端末局20、第3端末局30及び第4端末局40のいずれかと無線通信を行う。つまり、無線通信システム1は、ガードインターバル長が異なるように設定された第1端末局10、第2端末局20、第3端末局30及び第4端末局40それぞれと、1つ以上の端末局と接続可能にされた無線通信部51-1~51-nを備えた基地局5とが接続されて構成されている。
【0032】
そして、無線通信部51-1~51-nは、設定部54により設定された接続可能な端末局の切替ポリシーに基づいて、第1端末局10、第2端末局20、第3端末局30及び第4端末局40の接続切替を行う。また、無線通信部51-1~51-nは、収集部52が収集した情報に基づいてポリシー算出部53が算出した設定ポリシー及び切替ポリシーを設定部54によって設定されることにより、設定ポリシー及び切替ポリシーが更新される。
【0033】
次に、無線通信システム1の具体的な動作例について説明する。
【0034】
図4は、無線通信システム1における端末局の種別の例を示す。
図4に示した図表において、第1列は、端末局の種別を示しており、ここでは種別A,B,C,Dがあるとする。第2~5列は、選択され得るガードインターバル(GI)長の値を示しており、ここでは400ns,800ns,1600ns,3200nsが選択され得るとされている。また、
図4においては、伝搬遅延を考慮して正常な通信が可能である種別とGIの組合せを丸印(○)で示し、正常な通信が可能でない種別とGIの組合せをバツ印(×)で示している。
【0035】
ここでは、
図1に示した第1端末局10は種別Aに対応し、第2端末局20は種別Bに対応し、第3端末局30は種別Cに対応し、第4端末局40は種別Dに対応するものとする。
【0036】
基地局5の無線通信部51-1~51-nは、各種別の端末局に対応する設定が行われる。無線通信部51-1~51-nの少なくともいずれかは、複数の種別の端末局が接続可能にされる。例えば、無線通信部51-1~51-nの少なくともいずれかは、全ての種別A,B,C,Dに対応することができるガードインターバル長が設定される。したがって、第1端末局10、第2端末局20、第3端末局30及び第4端末局40は、種別にかかわらず、基地局5の無線通信部51-1~51-nのいずれかに接続可能になっている。
【0037】
図5は、無線通信部51-1~51-nのいずれか1つ(以下、単に無線通信部51)に複数の種別の端末局を収容した場合の通信例を示す。ここでは、各データを伝送するときに、無線LAN特有の問題である隠れ端末問題を解決するために、RTS(Request to Send)とCTS(Clear to Send)の信号伝送を行うこととする。
【0038】
RTS及びCTSは、他の基地局や端末局に対してブロードキャストされる信号となるため、全ての端末局に伝送することを目的として、ガードインターバル長を最長の3200nsとするように無線通信部51に設定されて伝送される。
【0039】
一方、個別のデータ伝送や応答確認信号であるBA(Block Ack)については、各種別に応じたガードインターバル長が設定されることとなる。
【0040】
このように、ガードインターバル長が異なる種別の端末局が複数混在する環境では、全ての端末局に信号を伝送することを目的として長いガードインターバルが利用されることとなった場合、伝送効率が最大化されないことがある。
【0041】
図6は、異なる無線通信部51-1~51-nのいずれかにそれぞれ端末局を種別ごとに収容した場合の通信例を示す。
図6(a)は、基地局5の無線通信部51-1に、種別Aの第1端末局10、及び種別Bの第2端末局20が接続された場合の通信例を示す。
図6(b)は、基地局5の無線通信部51-2に、種別Cの第3端末局30、及び種別Dの第4端末局40が接続された場合の通信例を示す。
【0042】
図6(a)に示した場合には、無線通信部51-1は、種別A,Bの両種別に対応するため、ガードインターバル長を3200nsに設定され、第1端末局10及び第2端末局20との間でデータ伝送を行うこととなる。
【0043】
図6(b)に示した場合には、無線通信部51-2は、種別C,Dの両種別に対応するため、ガードインターバル長を800nsに設定され、第3端末局30及び第4端末局40との間でデータ伝送を行うこととなる。
【0044】
このように、無線通信システム1は、各端末局の伝送効率を高めるために、各端末局それぞれのガードインターバル長に基づいて端末局を分類し、異なるガードインターバル長を設定した複数の異なる無線通信部51によって各端末局を収容することが望ましい。
【0045】
そのため、設定部54は、端末局が選択できるガードインターバル長に対応する設定ポリシーと、端末局が接続する無線通信部51を決定するための切替ポリシーを無線通信部51-1~51-nそれぞれに対して設定する。
【0046】
図7は、設定ポリシー及び切替ポリシーを用いる基地局5の第1動作例を示すフローチャートである。基地局5のポリシー算出部53(
図3)は、端末局の種別に対する設定ポリシー及び切替ポリシーを算出する(S100)。
【0047】
具体的には、ポリシー算出部53は、収集部52が収集した情報、又は予め設定された接続端末局台数・各端末局の種別・想定トラッヒック量などに基づいて、設定ポリシーと切替ポリシーの全部、又は一部の組み合わせを適用した場合の予測スループットを算出し、予測スループットが最も高くなる設定ポリシーと切替ポリシーを算出結果とする。
【0048】
そして、設定部54は、ポリシー算出部53が算出した端末局それぞれの種別に対する設定ポリシー及び切替ポリシーを無線通信部51-1~51-nに設定する(S102)。S100,S102の処理は、基地局5における初期設定の処理である。
【0049】
次に、収集部52は、新規接続の端末局、又は切替未実施の端末局があるか否かを判断して、新規接続又は切替未実施の端末局がない場合には処理を終了し、新規接続又は切替未実施の端末局がある場合にはS106の処理に進む(S104)。
【0050】
S106の処理において、収集部52は、端末局の選択可能なガードインターバル長の情報を収集する。
【0051】
そして、設定部54は、ポリシー算出部53が算出した切替ポリシーに従って、端末局を指定の無線通信部51に接続又は切替えを行う(S108)。そして、基地局5は、S104の処理に戻り、新規接続又は切替未実施の端末局がなくなるまで処理を繰り返す。
【0052】
なお、S104の処理における新規接続又は切替未実施の端末局があるか否かの判断は、例えば記憶部55が記憶する端末局ごとのS106,S108の処理の実施状況に基づいて制御部56が判断してもよい。
【0053】
また、端末局の接続先を現在の無線通信部51から他の無線通信部51へ切替える具体的な切替方法には、次のような方法がある。例えば、基地局5がDeauthenticationフレームやDisassociationフレームなどを送信することによって端末局との無線接続を切断し、切替後の接続先となる無線通信部51以外の無線通信部51に対する再接続要求を無視又は拒否する方法がある。また、基地局5は、端末局からの接続要求が設定ポリシー及び切替ポリシーにより指定(設定)されている無線通信部51に対する要求でない場合、端末局に対して指定した無線通信部51に接続し直すように指示してもよい。
【0054】
このように、無線通信システム1は、設定ポリシー及び切替ポリシーに基づいて端末局それぞれが接続する無線通信部51を設定するので、従来の端末局が無作為に無線通信部を選択して接続する無線通信システムよりも伝送効率を向上させることができる。
【0055】
次に、設定ポリシー及び切替ポリシーと、基地局5の動作との関係を
図8及び
図9を用いて説明する。
【0056】
図8は、端末局の種別と設定ポリシーとの関係を示す。
図9は、端末局の種別と切替ポリシーとの関係を示す。
図8及び
図9に示すように、例えば、端末局の種別A及び種別Bに対応する設定を設定ポリシーX1及び切替ポリシーY1とし、端末局の種別C及び種別Dに対応する設定を設定ポリシーX2及び切替ポリシーY2とする。ここでは、設定ポリシーにより分類される種別の組合せと、切替ポリシーにより分類される種別の組合せとが同一になっているが、異なっていてもよい。
【0057】
図8及び
図9に示した例では、基地局5は、例えば無線通信部51-1に設定ポリシーX1及び切替ポリシーY1を設定し、種別Aの第1端末局10、及び種別Bの第2端末局20が無線通信部51-1に接続されるように制御を行うとする。
【0058】
このとき、仮に、無線通信部51-1に種別Cの第3端末局30が接続されていた場合、基地局5は、切替ポリシーY2に従って、種別Cの端末局を収容する設定ポリシーX2が設定されている例えば無線通信部51-2へ、第3端末局30の接続先を切替える。
【0059】
また、基地局5は、例えば無線通信部51-2に設定ポリシーX2及び切替ポリシーY2を設定し、種別Cの第3端末局30、及び種別Dの第4端末局40が無線通信部51-2に接続されるように制御を行うとする。
【0060】
このとき、仮に、無線通信部51-2に種別Aの第1端末局10が接続されていた場合、基地局5は、切替ポリシーY1に従って、種別Aの端末局を収容する設定ポリシーX1が設定されている例えば無線通信部51-1へ、第1端末局10の接続先を切替える。
【0061】
図10は、設定ポリシー及び切替ポリシーを用いる基地局5の第2動作例を示すフローチャートである。
【0062】
まず、基地局5の収集部52(
図3)は、端末局の選択可能なガードインターバル長の情報を収集する(S200)。
【0063】
次に、基地局5のポリシー算出部53は、収集部52が収集した情報に基づいて、端末局の種別、設定ポリシー、又は切替ポリシーの更新が必要であった場合、端末局の種別に対する設定ポリシー及び切替ポリシーを新たに算出することにより、設定ポリシー及び切替ポリシーを更新する(S202)。例えば、ポリシー算出部53は、スループットが予め設定されたしきい値を下回った場合などに、設定ポリシー及び切替ポリシーを新たに算出する。
【0064】
設定部54は、ポリシー算出部53が新たに算出した端末局それぞれの種別に対する設定ポリシー及び切替ポリシーを無線通信部51-1~51-nに設定する(S204)。例えば、設定部54は、ポリシー算出部53が端末局の種別、設定ポリシー及び切替ポリシーのいずれか1つでも更新した場合には、無線通信部51-1~51-nに対して更新内容を設定する。
【0065】
そして、基地局5は、設定部54が新たに設定した切替ポリシーに従って、端末局を指定の無線通信部51に接続又は切替えを行う(S206)。
【0066】
次に、基地局5の変形例について説明する。
【0067】
図11は、一実施形態にかかる基地局5の変形例(基地局5a)の構成例を示す。
図11に示すように、基地局5aは、例えば複数のアンテナ50、n個の無線通信部51-1~51-n、収集部52、ポリシー算出部53、設定部54、記憶部55、制御部56及び伝搬遅延調整部57を有する。なお、一般的に基地局が備えているその他の機能ブロックについては図示しておらず、
図3に示した基地局5の構成と実質的に同一の構成には同一の符号が付してある。
【0068】
伝搬遅延調整部57は、例えば無線通信部51-1~51-nが備える図示しないアナログ素子に対する重みづけ、又は、無線通信部51-1~51-nにおけるデジタル信号処理によってアンテナ50それぞれに対する重み付けを行う。そして、伝搬遅延調整部57は、複数のアンテナ50の送受信信号を合成することによって、アンテナの指向性を変更する。アンテナの指向性を変化させて、パスの伝搬遅延を調整することにより、端末局の種別の分類を調整することは可能である。
【0069】
すなわち、伝搬遅延調整部57は、アンテナの指向性を変化させてパスの伝搬遅延量の調整を行うことにより、効率の良いガードインターバル長を増加させること、及び最適な無線通信部51に切替えることを実現させて、基地局5aの伝送速度を向上させることができる。
【0070】
また、基地局5aは、アンテナの送受信信号を合成させることに限らず、分散アンテナを含めた複数のアンテナの切替や選択により、パスの伝搬遅延量の調整を行うように構成されてもよい。すなわち、伝搬遅延調整部57は、アンテナの指向性、又は複数のアンテナの選択若しくは組合せに基づいて、無線通信部51-1~51-nが許容する伝搬遅延時間をそれぞれ調整するように構成されてもよい。
【0071】
なお、無線通信システム1は、設定ポリシー及び切替ポリシーを設定する場合に、特定の端末局の通信品質を最大化するように設定を行ってもよいし、各端末局の通信品質を平均的に改善するように設定を行ってもよい。また、無線通信システム1は、1つの基地局5内において接続切替を行う場合を例に説明したが、これに限定されることなく、例えば複数の異なる基地局間で接続切替を行うようにされてもよい。
【0072】
また、本発明の基地局5,5aが備える収集部52、ポリシー算出部53及び設定部54等は、コンピュータとプログラムによっても実現でき、当該プログラムを記録媒体に記録することも、ネットワークを通して提供することも可能にされている。
【符号の説明】
【0073】
1・・・無線通信システム、5,5a・・・基地局、10・・・第1端末局、20・・・第2端末局、30・・・第3端末局、40・・・第4端末局、102・・・無線通信部、104・・・通知部、50・・・アンテナ、51-1~51-n・・・無線通信部、52・・・収集部、53・・・ポリシー算出部、54・・・設定部、55・・・記憶部、56・・・制御部、57・・・伝搬遅延調整部