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特許7151709積層体の製造方法、積層体及びフレキシブルプリント基板の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】積層体の製造方法、積層体及びフレキシブルプリント基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/30 20060101AFI20221004BHJP
   B32B 15/082 20060101ALI20221004BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20221004BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
B32B27/30 D
B32B15/082 B
B32B15/08 J
H05K1/03 610H
H05K1/03 670
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019528369
(86)(22)【出願日】2018-04-24
(86)【国際出願番号】 JP2018016666
(87)【国際公開番号】W WO2019008876
(87)【国際公開日】2019-01-10
【審査請求日】2021-02-09
(31)【優先権主張番号】P 2017133883
(32)【優先日】2017-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017193094
(32)【優先日】2017-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】笠井 渉
(72)【発明者】
【氏名】小寺 省吾
【審査官】磯貝 香苗
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/104297(WO,A1)
【文献】特開平08-276547(JP,A)
【文献】特開2017-002115(JP,A)
【文献】特開2005-324511(JP,A)
【文献】特開平06-088624(JP,A)
【文献】特開2016-087799(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 63/00-63/48
B29C 65/00-65/82
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐熱性基材層及び金属箔層の何れか一方又は両方からなる第1基材の片側又は両側に、
フッ素樹脂を含み、JIS K 6768:1999に従って測定される濡れ張力が30~60mN/mである第1面と、前記濡れ張力が第1面の濡れ張力よりもmN/m以上小さい第2面とを有する第2基材を、前記第1面を前記第1基材側に向けて配置し、前記第1基材及び前記第2基材を搬送しながら、20~80℃の温度Tで厚み方向に加圧して積層し、前記第1基材と前記第2基材とが直接積層された積層体Iを得る、積層体の製造方法。
【請求項2】
前記積層体Iの第2基材上に、耐熱性基材層及び金属箔層の何れか一方又は両方からなる第3基材を配置し、前記積層体I及び前記第3基材を搬送しながら、前記フッ素樹脂の融点以上の温度Tで厚み方向に加圧して積層し、前記積層体Iと前記第3基材とが直接積層された積層体IIを得る、請求項1に記載の積層体の製造方法。
【請求項3】
前記積層体Iの第2基材の濡れ張力の制御が表面処理により行われ、該表面処理の方法がコロナ放電処理又は真空プラズマ処理によるものである、請求項1又は2に記載の積層体の製造方法。
【請求項4】
前記第1基材及び前記第2基材を搬送する際に、前記第1基材及び前記第2基材それぞれの下式1で求められる伸度を0.05~1.0%とし、前記第1基材及び前記第2基材の間の前記伸度の差を0.3%以下とする、請求項1~3の何れか一項に記載の積層体の製造方法。
式1:伸度(%)={搬送時に基材にかかる張力(N)/搬送方向と直交する方向での基材の断面積(mm)}/温度Tにおける基材の弾性率(N/mm)×100
【請求項5】
前記第1基材及び前記第2基材を積層する際の加圧力が、3~100kN/mである、請求項1~4の何れか一項に記載の積層体の製造方法。
【請求項6】
前記フッ素樹脂の主鎖の末端基及び主鎖のペンダント基の何れか一方又は両方に、カルボニル基含有基、ヒドロキシ基、エポキシ基、アミド基、アミノ基及びイソシアネート基からなる群から選択される少なくとも1種の官能基が存在する、請求項1~5の何れか一項に記載の積層体の製造方法。
【請求項7】
前記第1基材が耐熱性樹脂フィルムであって、JIS R 6769:1999に記載の静滴法で測定した、その表面の水接触角が5°~60°である、請求項1~6のいずれか一項に記載の積層体の製造方法。
【請求項8】
前記耐熱性樹脂フィルムが、コロナ放電処理、大気圧プラズマ処理又は真空プラズマ処理により、表面処理されたフィルムである、請求項7に記載の積層体の製造方法。
【請求項9】
前記耐熱性樹脂フィルムの吸水率が1.5%以下である、請求項7又は8に記載の積層体の製造方法。
【請求項10】
請求項2に記載の積層体の製造方法により、最表層の少なくとも一方が金属箔層である前記積層体IIを得て、前記最表層の金属箔層の一部をエッチングにより除去してパターン回路を形成する、フレキシブルプリント基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シワ及び層間剥離が抑制された積層体の製造方法、積層体、及びフレキシブルプリント基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フッ素樹脂と他素材との積層体は、フッ素樹脂特有の耐熱性、電気特性、耐薬品性等を活かし、フレキシブルプリント基板の基材、ケーブルの電磁波シールドテープ、ラミネートタイプのリチウムイオン電池用袋等に好適に用いられる。
フッ素樹脂と他素材との積層体を製造する一般的な方法としては、熱ラミネート法が挙げられる。本手法は、2以上の薄膜状物体を、ロール・ツー・ロールで搬送し、前記薄膜状物体の少なくとも一方の面が軟化(あるいは溶融)する温度以上に加熱しながら加圧し、2以上の薄膜状物体を貼り合わせる手法である。しかし、熱ラミネート法で前記積層体を製造する場合、フッ素樹脂の低弾性率ゆえのコシの無さ、及び強度の低さから、貼り合わせ時にフッ素樹脂層にシワが発生したり、フッ素樹脂層が切れたりする問題があった。
【0003】
フッ素樹脂と他素材との積層体の製造方法として以下の方法が提案されている。
(1)両表面に放電処理が施された芳香族ポリイミドのフィルムの一方の表面に、両表面に放電処理が施されたフッ素樹脂フィルムを積層する方法(特許文献1)。
(2)ポリイミドフィルムとフッ素樹脂フィルムを、加熱したロールで荷重を掛けて貼り合わせ、その後、フッ素樹脂の融点以上の温度でアニール処理に付する方法(特許文献2)。
(3)特定の官能基を有するフッ素樹脂を含むフッ素樹脂フィルムと金属箔とを、フッ素樹脂の融点未満で熱ラミネートし、得られたフッ素樹脂層付き金属箔のフッ素樹脂フィルムと耐熱性樹脂フィルムとを、フッ素樹脂の融点以上で熱ラミネートする方法(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】日本特公平5-59828号公報
【文献】日本特開2016-87799号公報
【文献】国際公開第2016/104297号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1~3の方法では、フッ素樹脂と多素材とを、フッ素樹脂の融点未満の温度で仮積層し、その後、フッ素樹脂の融点以上の温度で本積層される。仮積層の温度がフッ素樹脂の融点未満であるため、仮積層せずに本積層する場合に比べて、フッ素樹脂層のシワは抑制される。
しかし、特許文献1~3で用いられる仮積層温度は依然として高温であり、フッ素樹脂層のシワを充分に抑制できない。また、仮積層後の積層体(仮積層体)がカールすることもある。
本発明者らの検討によれば、特許文献1~3の方法において、より低い温度で仮積層した場合、フッ素樹脂層と多素材の層とが接着せず仮積層体が得られないか、仮積層体が得られても、フッ素樹脂層とこれに隣接する多素材の層との間が部分的に剥離し、空気が入り込む問題がある。仮積層体におけるシワや剥離は、本積層後も残る。
【0006】
本発明の目的は、シワ及び層間剥離が抑制された積層体及びその製造方法、並びにシワ及び層間剥離の発生が抑制されたフレキシブルプリント基板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の態様を有する。
〔1〕耐熱性基材層及び金属箔層の何れか一方又は両方からなる第1基材の片側又は両側に、フッ素樹脂を含み、JIS K 6768:1999に従って測定される濡れ張力が30~60mN/mである第1面と、前記濡れ張力が第1面の濡れ張力よりも2mN/m以上小さい第2面とを有する第2基材を、前記第1面を前記第1基材側に向けて配置し、前記第1基材及び前記第2基材を搬送しながら、0℃~100℃の温度Tで厚み方向に加圧して積層し、前記第1基材と前記第2基材とが直接積層された積層体Iを得る、積層体の製造方法。
〔2〕前記積層体Iの第2基材上に、耐熱性基材層及び金属箔層の何れか一方又は両方からなる第3基材を配置し、前記積層体I及び前記第3基材を搬送しながら、前記フッ素樹脂の融点以上の温度Tで厚み方向に加圧して積層し、前記積層体Iと前記第3基材とが直接積層された積層体IIを得る、前記〔1〕の積層体の製造方法。
〔3〕前記積層体Iの第2基材の濡れ張力の制御が表面処理により行われ、該表面処理の方法がコロナ放電処理又は真空プラズマ処理によるものである、前記〔1〕又は〔2〕の積層体の製造方法。
〔4〕前記第1基材及び前記第2基材を搬送する際に、前記第1基材及び前記第2基材それぞれの下式1で求められる伸度を0.05~1.0%とし、前記第1基材及び前記第2基材の間の前記伸度の差を0.3%以下とする、前記〔1〕~〔3〕の何れかの積層体の製造方法。
式1:伸度(%)={搬送時に基材にかかる張力(N)/搬送方向と直交する方向での基材の断面積(mm)}/温度Tにおける基材の弾性率(N/mm)×100
〔5〕前記第1基材及び前記第2基材を積層する際の加圧力が、3~100kN/mである、前記〔1〕~〔4〕の何れかの積層体の製造方法。
〔6〕前記フッ素樹脂の主鎖の末端基及び主鎖のペンダント基の何れか一方又は両方に、カルボニル基含有基、ヒドロキシ基、エポキシ基、アミド基、アミノ基及びイソシアネート基からなる群から選択される少なくとも1種の官能基が存在する、前記〔1〕~〔5〕の何れかの積層体の製造方法。
〔7〕前記第1基材が耐熱性樹脂フィルムであって、JIS R 6769:1999に記載の静滴法で測定した、その表面の水接触角が5°~60°である、前記〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の積層体の製造方法。
〔8〕前記耐熱性樹脂フィルムが、コロナ放電処理、大気圧プラズマ処理又は真空プラズマ処理により、表面処理されたフィルムである前記〔7〕に記載の積層体の製造方法。
〔9〕前記耐熱性樹脂フィルムの吸水率が1.5%以下である、前記〔7〕又は〔8〕に記載の積層体の製造方法。
〔10〕耐熱性基材層及び金属箔層の何れか一方又は両方からなる第1基材の片側又は両側に、フッ素樹脂を含み、JIS K 6768:1999に従って測定される濡れ張力が30~60mN/mである第1面と、前記濡れ張力が第1面の濡れ張力よりも2mN/m以上小さい第2面とを有する第2基材が、前記第1面を前記第1基材側として直接積層された積層体。
〔11〕前記〔2〕の積層体の製造方法により、最表層の少なくとも一方が金属箔層である前記積層体IIを得て、前記最表層の金属箔層の一部をエッチングにより除去してパターン回路を形成する、フレキシブルプリント基板の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の積層体の製造方法によれば、シワ、カール及び層間剥離の発生が抑制された積層体を連続的に安定して製造できる。本発明の積層体は、シワ、カール及び層間剥離の発生が抑制される。本発明のフレキシブルプリント基板の製造方法によれば、シワ、カール及び層間剥離の発生が抑制されたフレキシブルプリント基板を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】積層体Iの一例を示す模式断面図である。
図2】積層体IIの一例を示す模式断面図である。
図3】積層体Iの他の例を示す模式断面図である。
図4】積層体IIの他の例を示す模式断面図である。
図5】本発明の第1実施形態で使用されるラミネート装置を示す概略構成図である。
図6】本発明の第2実施形態で使用されるラミネート装置を示す概略構成図である。
図7】本発明の第3実施形態で使用されるラミネート装置を示す概略構成図である。
図8】実施例でのカールの評価方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書における以下の用語の意味は、以下の通りである。
「融点」とは、示差走査熱量測定(DSC)法で測定した融解ピークの最大値に対応する温度を意味する。
「濡れ張力」とは、JIS K 6768:1999に従って測定される値である。濡れ張力の測定においては、試験片上に、濡れ張力既知の試験液に浸した綿棒を素早くこすりつけ、6cmの液膜を形成し、塗布2秒後の液膜の状態を観察し、破れが生じなければ、濡れるとする。液膜の破れが起こらない最大の濡れ張力が、その試験片の濡れ張力とされる。なお、JIS K 6768:1999で規定される試験液の濡れ張力の下限は22.6mN/mである。
【0011】
「熱伸縮率」とは、ISO11501:1995に規定される方法により、175℃×30分の条件で測定される流れ方向(MD)及び流れ方向と直行する方向(TD)両方の値を指す。
「算術平均粗さ(Ra)」は、ISO4287:1997,Amd.1:2009(JIS B0601:2013)に基づき測定される算術平均粗さである。Raを求める際の、粗さ曲線用の基準長さlr(カットオフ値λc)は0.8mmとする。
「溶融流れ速度」とは、JIS K 7210:1999(ISO 1133:1997)に規定されるメルトマスフローレート(MFR)を意味する。
【0012】
「単位」とは、単量体が重合することによって形成された該単量体に由来する原子団を意味する。単位は、重合反応によって直接形成された単位であってもよく、重合体を処理することによって該単位の一部が別の構造に変換された単位であってもよい。
「酸無水物基」とは、-C(=O)-O-C(=O)-で表される基を意味する。
「カルボニル基含有基」とは、構造中にカルボニル基(-C(=O)-)を含む基である。
「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートの総称である。
数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。また、それらの有する単位が同じの場合は、上限値のみに記載し、下限値には省略する場合がある。
「%」は、特に規定のない場合、「質量%」を意味する。
【0013】
〔積層体〕
本発明の積層体の製造方法では、以下の積層体Iを製造し、必要に応じて、積層体Iを用いて以下の積層体IIを製造する。
積層体I:第1基材の片側又は両側に、第2基材がその第1面を第1基材側として直接積層された積層体。
積層体II:積層体Iの第2基材上に、第3基材が直接積層された積層体。
【0014】
第1基材は、耐熱性基材層及び金属箔層の何れか一方又は両方からなる。
第2基材は、フッ素樹脂を含む。また、第2基材は、濡れ張力が30~60mN/mである第1面と、濡れ張力が(第1面の濡れ張力-2mN/m)以下である第2面とを有する。
第2基材は、第1基材の片側に積層されてもよく、両側に積層されてもよい。積層体の反りを抑制する、電気的信頼性に優れる両面金属張積層板を得る等の点からは、第1基材の両側に第2基材が積層されることが好ましい。
第2基材が第1基材の両側に積層される場合、各第2基材は同じであってもよく異なってもよい。積層体の反りの抑制の点からは、各第2基材は同じであることが好ましい。ここで、各第2基材が同じであるとは、各第2基材を構成する材料(フッ素樹脂の種類、他の樹脂や添加剤の種類、これらの含有量等の組成)及び厚さが同じであることを示す。
【0015】
第3基材は、耐熱性基材層及び金属箔層の何れか一方又は両方からなる。
積層体Iが、第1基材の両側に第2基材が積層された積層体である場合、第3基材は、積層体Iの片側に積層されてもよく両側に積層されてもよい。
第3基材が積層体Iの両側に積層される場合、各第3基材は同じであってもよく異なってもよい。積層体の反りの抑制の点からは、各第3基材は同じであることが好ましい。
【0016】
図1は、積層体Iの一例を示す模式断面図である。この例の積層体10は、耐熱性基材層12(第1基材)と、第2基材14とを有する。第2基材14は、耐熱性基材層12の片側に、第1面14aを第1基材側として直接積層される。
図2は、積層体IIの一例を示す模式断面図である。この例の積層体20は、積層体Iとして積層体10を用いたものであり、積層体10と、金属箔層16(第3基材)とを有する。金属箔層16は、積層体10の第2基材14上に直接積層されて、第2基材14の第2面14bと接する。
【0017】
図3は、積層体Iの他の例を示す模式断面図である。この例の積層体10Aは、耐熱性基材層12(第1基材)と、2層の第2基材14とを有する。2層の第2基材14はそれぞれ、耐熱性基材層12の両側に、第1面14aを第1基材側として積層される。
図4は、積層体IIの他の例を示す模式断面図である。この例の積層体20Aは、積層体Iとして積層体10Aを用いたものであり、積層体10Aと、2層の金属箔層16(第3基材)とを有する。2層の金属箔層16はそれぞれ、積層体10Aの2層の第2基材14上に直接積層されて、第2基材14の第2面14bと接する。
【0018】
ただし、積層体I及び積層体IIの構成は、図1~4に示す例に限定されるものではなく、第1基材や、第1基材と組み合わせる第3基材は適宜変更可能である。図1~4における各層の寸法比も適宜変更可能である。
例えば、図1、2に示す例において、第1基材の耐熱性基材層12を金属箔層又は耐熱性基材層及び金属箔層からなる基材としてもよい。図2に示す例において、第3基材の金属箔層16を耐熱性基材層、又は耐熱性基材層及び金属箔層からなる基材としてもよい。
【0019】
積層体IIがフレキシブルプリント基板の製造に用いられる場合、積層体IIの少なくとも一方の最表層が金属箔層となるように、第1基材及び第3基材が選択されることが好ましい。
最表層の少なくとも一方が金属箔層となる積層体IIの積層構成の例として、以下の積層構成が挙げられる。
(1)耐熱性基材層/第2基材/金属箔層
(2)(金属箔層/耐熱性基材層)/第2基材/金属箔層
(3)(金属箔層/耐熱性基材層)/第2基材/耐熱性基材層。
(4)(金属箔層/耐熱性基材層)/第2基材/(耐熱性基材層/金属箔層)
(5)金属箔層/第2基材/耐熱性基材層/第2基材/金属箔層
(6)(金属箔層/耐熱性基材層)/第2基材/耐熱性基材層/第2基材/金属箔層
(7)(金属箔層/耐熱性基材層)/第2基材/耐熱性基材層/第2基材/耐熱性基材層
(8)(金属箔層/耐熱性基材層)/第2基材/耐熱性基材層/第2基材/(耐熱性基材層/金属箔層)
【0020】
ここで、前記(1)の積層構成における「耐熱性基材層/第2基材/金属箔層」とは、耐熱性基材層、第2基材、金属箔層がこの順に積層されることを示し、他の積層構成も同様である。
前記(2)~(4)、(6)~(8)の積層構成における(金属箔層/耐熱性基材層)、(耐熱性基材層/金属箔層)の部分は、耐熱性基材層及び金属箔層からなる基材である。この基材は、第2基材とは反対側の最表層を金属箔層として第2基材と積層される。
前記(1)の積層構成において、第2基材の左側(耐熱性基材層側)及び右側(金属箔層側)のどちらを第1面側としてもよい。前記(2)~(4)の積層構成においても同様である。
【0021】
積層体IIの厚さは、特に限定されないが、通常25~200μmである。フレキシブルプリント基板の製造に用いられる場合は、25~200μmが好ましく、30~150μmが特に好ましい。
【0022】
積層体Iにおける層間の接着強度(第1基材と第2基材との界面の接着強度)は、0.05N/cm以上が好ましく、0.2N/cm以上がより好ましく、0.3N/cm以上が更に好ましい。上限は特に限定されないが、典型的には1.0N/cm以下である。
積層体IIにおける層間の接着強度(第1基材と第2基材との界面の接着強度及び第2基材と第3基材との界面の接着強度のうち、低い方の接着強度)は、9N/cm以上が好ましく、13N/cm以上がより好ましく、15N/cm以上が更に好ましい。積層体IIにおける層間の接着強度は強い程好ましく、上限は特に限定されない。
積層体I、IIそれぞれの接着強度は後述する実施例に記載の方法により測定される。
【0023】
(第1基材)
第1基材は、耐熱性基材層及び金属箔層の何れか一方又は両方からなる。
<耐熱性基材層>
耐熱性基材層は、金属箔以外の耐熱性基材を含む層である。
耐熱性基材としては、耐熱性樹脂フィルム、無機繊維からなる織布又は不織布、有機繊維からなる織布又は不織布等が挙げられる。
耐熱性樹脂としては、例えば、ポリイミド(芳香族ポリイミド等)、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリアリルスルホン(ポリエーテルスルホン等)、芳香族ポリアミド、芳香族ポリエーテルアミド、ポリフェニレンスルファイド、ポリアリルエーテルケトン、ポリアミドイミド、液晶ポリエステル等が挙げられる。
無機繊維としては、ガラス繊維、カーボン繊維等が挙げられる。無機繊維からなる織布及び不織布としては、ガラスクロス、ガラス不織布等が挙げられる。
有機繊維としては、アラミド繊維、ポリベンゾオキサゾール繊維、ポリアリレート繊維等が挙げられる。有機繊維からなる織布及び不織布としては、アラミド紙、アラミドクロス、ポリベンゾオキサゾールクロス、ポリベンゾオキサゾール不織布等が挙げられる。
耐熱性基材層は、単層構造でもよく多層構造でもよい。
【0024】
芳香族ポリイミドフィルムであれば、種々の市販品が使用できる。例えば単層構造の東レ・デュポン社製カプトン(商品名)ENが挙げられる。また例えば多層構造であれば、芳香族ポリイミドフィルムの両面に熱可塑性のポリイミド層が形成された宇部興産社製のユーピレックス(商品名)VT、ユーピレックスNVTや、カネカ社製のピクシオ(商品名)BPが挙げられる。液晶ポリエステルであれば、クラレ社製のベクスター(商品名)CT-Zが挙げられる。
ポリイミドフィルムの中では吸水率が低いものほど、吸湿時の誘電特性の悪化が小さく、また、高温でのラミネート時の発泡が少ないため、好ましい。そのようなポリイミドとしては、ジアミンとしてパラフェニルジアミン、ジカルボン酸として3,3‘4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物の共重合体が好ましい。また、熱可塑性ポリイミド層を有しない芳香族ポリイミドフィルムが好ましい。
【0025】
耐熱性基材層の吸水率は2.0%以下が好ましく、1.5%以下がより好ましく、1.3%以下が更に好ましい。吸水率は、ASTM D570に規定される、23℃の水中に24時間浸漬後の重量変化率である。
ここでいう耐熱性とは、はんだリフローのプロセスにおける最低温度260℃における引張弾性率が10の8乗パスカル以上のことを言う。
耐熱性基材層の厚さは、通常5~150μmであり、7.5~100μmが好ましく、12~75μmが特に好ましい。
【0026】
<金属箔層>
金属箔層は、金属箔からなる層である。金属箔としては、積層体の用途に応じて適宜選択される。例えば、積層体を電子機器や電気機器に用いる場合、金属箔の材質としては、銅、銅合金、ステンレス鋼、その合金、ニッケル、ニッケル合金(42合金も含む。)、アルミニウム、アルミニウム合金等が挙げられる。電子機器や電気機器に用いられる通常の積層体においては、圧延銅箔、電解銅箔等の銅箔が多用されており、本発明においても銅箔が好適である。
金属箔の表面には、防錆層(例えばクロメート等の酸化物皮膜等)や耐熱層が形成されてもよい。金属箔の表面には、第2基材との接着強度を高めるための表面処理(例えばカップリング剤処理等)が施されてもよい。
【0027】
金属箔層の厚さは、積層体の用途に応じて、充分な機能が発揮できる厚さを適宜選定すればよい。例えば、積層体を電子機器や電気機器に用いる場合、5~75μmの範囲内であってよい。
金属箔層の表面粗さは、接着強度が保持できる範囲で、低い方が好ましい。特にRzjisで0.1~2.0μmが好ましい。Rzjisが0.1μm以上あれば、接着性に優れ、2.0μm以下であれば電気特性に優れる。
ここでいう表面粗さRzjisとはJISB0601:2013 附属書JAに規定される十点平均粗さである。
金属箔が銅箔の場合、電気分解によって生成される電解銅箔であっても良く、銅インゴットを圧延して得られる圧延銅箔であっても良い。
【0028】
第1基材が耐熱性基材層及び金属箔層からなる場合、耐熱性基材層と金属箔層とは、直接積層されてもよく、接着層を介して積層してもよい。接着層の材質としては、例えば熱可塑性ポリイミド、エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0029】
(第2基材)
第2基材は、フッ素樹脂を含み、第2基材は、積層体I、IIにおいてフッ素樹脂を含む層(フッ素樹脂層)を構成する。
第2基材は、フッ素樹脂以外に、添加剤、フッ素樹脂以外の樹脂等を含んでもよい。
第2基材中のフッ素樹脂の含有量は、第2基材の総質量(100質量%)に対し、50質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましい。フッ素樹脂の含有量の上限は特に限定されず、100質量%であってもよい。
【0030】
第2基材の第1面の濡れ張力は、30~60mN/mであり、30~50mN/mが好ましい。
濡れ張力が前記下限値以上である第1面は通常、コロナ放電処理等の表面処理によって生成した接着性官能基(例えばカルボニル基含有基、ヒドロキシ基、アミノ基等)を有しており、接着性官能基の量が多い程、濡れ張力が高い傾向がある。第1面の濡れ張力が前記下限値以上であれば、第1基材と第2基材とを積層する際の温度が低くても、第1面の接着性官能基と第1基材との間で充分な反応が生じ、充分な密着力が得られる。第1面の濡れ張力が前記上限値以下であれば、表面処理により生成する汚染物質が少なく、汚染物質による密着阻害が起こらず、充分な密着力が得られる。
【0031】
第2基材の第2面の濡れ張力は、前記第1面の濡れ張力より2mN/m以上小さく、好ましくは、1面の濡れ張力よりも4mN/m以上小さく、特に好ましくは、第1面の濡れ張力より6mN/m以上小さい。したがって、第1面と第2面との間の濡れ張力の差(第1面の濡れ張力-第2面の濡れ張力)は、2mN/m以上であり、4mN/m以上が好ましく、6mN/m以上が特に好ましい。なお、第2基材の第2面の濡れ張力は、22.6~30.0mN/mであるのが好ましく、22.6~27.3mN/mであるのがより好ましい。
第1基材と第2基材とを積層する際には、一対のロール等のラミネート手段によって第1基材及び前記第2基材の両側から加圧される。このとき、第2基材の第1面は第1基材と接触し、第2面はラミネート手段と接触する。
【0032】
前記濡れ張力の差が前記下限値以上であれば、第1基材と第2基材とを積層する際に、第2基材の第1基材に対する密着力とラミネート手段に対する密着力との間に充分な差が生じる。つまり、ラミネート手段に対する密着力が、第1基材に対する密着力に比べて充分に低くなる。そのため、加圧後に積層体Iがラミネート手段から離れる際に、ラミネート手段によって第2基材が第1基材から引きはがされることを抑制でき、層間剥離のない積層体Iを得ることができる。
前記濡れ張力の差は大きいほど好ましく、その上限、つまり第2面の濡れ張力の下限に特に制限はない。
【0033】
なお、第2基材の第1面、第2面それぞれの濡れ張力は、第2基材を第1基材と積層する前、及び積層体Iとしたときの値である。
積層体IIを得る際には、フッ素樹脂の融点以上の温度Tで加熱されるため、第1面、第2面の濡れ張力は変化する。しかし、積層体Iを得る際の0~100℃の温度Tでは、概ね積層前の濡れ張力が維持される。
【0034】
表面処理によって最表面(第1面又は第2面)に官能基が生成すると、表面処理前に比べて、最表面の元素組成が変化する。
表面処理によって最表面に生成される元素としては、酸素、窒素等が挙げられる。
第1面(表面処理後)における酸素の存在率としては、0.1~10mol%が好ましく、0.5~8mol%がより好ましい。本範囲であれば、第1面の濡れ張力が所望の範囲に入りやすい。
第1面における窒素の存在率としては、0.01~5mol%が好ましく、0.02~4mol%がより好ましい。本範囲であれば、第1面の濡れ張力が所望の範囲に入りやすい。ここで言う元素の存在率とは、X線光電子分光分析により測定される値である。
【0035】
第2基材の第1面及び第2面それぞれの算術平均粗さRaは、0.001~3μmが望ましく、0.005~2μmがより好ましい。Raが前記下限値以上であれば、ロールツーロールでの搬送時にフリーロールに貼りつきにくい。Raが前記上限値以下であれば、他基材と積層したとき密着性がより優れる。
【0036】
第2基材の熱伸縮率は、0.0~-2.0%が好ましく、0.0~-1.0%がより好ましい。熱伸縮率が0.0%以下であれば、第2基材の熱膨張によるシワを防ぎやすい。熱伸縮率が-2.0%以上であれば、ラミネート後の幅方向の寸法が安定する。
熱伸縮率は、第2基材製膜時の条件によって調整できる。
【0037】
第2基材の厚さは、通常1~1000μmであり、5~500μmが好ましく、耐薬品性及び難燃性付与の点から、10μm以上が好ましい。中でも10~500μmが好ましく、10~300μmがより好ましく、10~200μmが特に好ましく、12~50μmが更に好ましい。
【0038】
第2基材は、積層体の生産性、積層体の取扱性等の点から、フッ素樹脂を含むフィルム(以下、フッ素樹脂フィルムともいう。)からなることが好ましい。第2基材は、1枚のフッ素樹脂フィルムからなる単層構造の基材であってもよく、複数枚のフッ素樹脂フィルムからなる多層構造の基材であってもよい。
フッ素樹脂フィルムは、フッ素樹脂を含む成形用材料を公知の成形方法(押出成形法、インフレーション成形法等)によって成形することにより製造できる。成形用材料は、添加剤、フッ素樹脂以外の樹脂等を含んでもよい。
フッ素樹脂フィルムにおけるフッ素樹脂としては、溶融成形可能なフッ素樹脂が好ましい。すなわち、フッ素樹脂フィルムとしては、溶融成形可能なフッ素樹脂を含む成形用材料をフィルムに成形して得られたフィルムが好ましい。
【0039】
第2基材の濡れ張力の制御は表面処理により行われることが好ましい。即ち、第2基材は、例えば、(α)フッ素樹脂フィルムの第1面のみを表面処理する方法、(β)フッ素樹脂フィルムの第1面及び第2面をそれぞれ異なる条件で表面処理する方法、(γ)フッ素樹脂フィルムの第1面から、貫通して第2面も表面処理する方法等により製造できる。
【0040】
方法(α)、(β)、(γ)において表面処理は、表面処理後の第1面の濡れ張力、及び第1面と第2面の濡れ張力の差(第1面の濡れ張力-第2面の濡れ張力)がそれぞれ前記の値を満たすように行われる。
濡れ張力は、表面処理条件、第2基材に含まれるフッ素樹脂のフッ素含有量等によって変動し得る。例えば、表面処理がコロナ放電処理等の放電処理である場合、放電量が大きいほど、濡れ張力が高くなる傾向がある。フッ素樹脂のフッ素含有量としては、70~78質量%が好ましいが、この範囲においては、同じ放電量であっても、フッ素樹脂のフッ素含有量が少ない方が、濡れ張力が高くなる傾向がある。
【0041】
フッ素樹脂フィルムの表面処理としては、処理された表面の濡れ張力を高める処理であればよく、例として、コロナ放電処理、プラズマ処理(大気圧プラズマ放電処理、真空プラズマ放電処理等。ただし、コロナ放電処理を除く。)等の放電処理、プラズマグラフト重合処理、電子線照射、エキシマUV光照射等の光線照射処理、火炎を使用したイトロ処理、金属ナトリウムを用いた湿式エッチング処理等が挙げられる。これらの表面処理を行うと、フッ素樹脂フィルム表面に接着性官能基が生成し、濡れ張力が高まる。
【0042】
表面処理としては、経済性や、所望の濡れ張力を得やすい点から、放電処理が好ましく、コロナ放電処理、大気圧プラズマ処理、真空プラズマ処理が特に好ましい。放電処理においては、その放電中の環境下を、酸素存在下とすることで、酸素ラジカルやオゾンが生成し、効率よくフィルム表面にカルボニル基含有基を導入することができる。その理由は以下のとおりである。
放電により発生した高エネルギー電子(1~10eV程度)の作用によって、表面材料の結合(金属の場合は表面の酸化層又は油膜)の主鎖や側鎖が解離してラジカルとなる。また、空気、水分等の雰囲気ガスの分子も解離しラジカルとなる。この2種類のラジカル同志の再結合反応によって、被処理物表面にヒドロキシ基、カルボニル基、カルボキシ基等の親水性官能基が形成される。その結果、被処理物の表面の自由エネルギーが大きくなり、他の表面との接着・接合が容易になる。
特に真空プラズマ処理であれば、後述する第2工程において、ラミネート温度を下げることができるため、寸法安定性の観点から、より好ましい。
【0043】
コロナ放電処理は、公知の処理システム(コロナ放電処理装置)を適用できる。処理システムは、典型的には、一方の電極は被覆されない電極であり、他方の電極は誘電体に覆われたロール電極(誘電体ロール)である一対の電極が配置されたコロナ放電処理部を備える。電極間に高周波高電圧を印加することによって大気の絶縁破壊を起こし、コロナ放電を形成する。放電中をロールで搬送されるフィルムが通過することによってフィルム表面が処理される。フィルムは一方の電極近傍あるいは電極間の中央付近を通過する。フィルムが電極間の中央付近を通過する場合は、フィルムの両面が処理される。一方、フィルムが誘電体ロールに沿って搬送される場合は、誘電体に被覆されない電極側の表面が処理される。この種の方式の構成は、比較的古くから知られており、様々な樹脂フィルムの表面処理に適用される。なお、電極間距離が数cm以下である必要があるため、立体物や大物の処理は困難であるものの、フィルムのような形状のものでは比較的大面積の処理が可能である。
電極形状としては、ワイヤー状電極、セグメント電極等が挙げられる。セグメント電極の形状としては、針状電極、溝型電極、刃型電極、半球型電極等が挙げられる。放電の均一性の観点からはセグメント電極が好ましく、形状としては刃型電極が好ましい。
誘電体の材質としては、シリコーンゴム、ガラス、セラミックス等が挙げられる。シリコーンゴムが放電の均一性の観点から好ましい。
【0044】
フッ素樹脂フィルムの第1面に対するコロナ放電処理は、放電量として、10~200W・min/mが好ましく、20~150W・min/mがより好ましい。放電量が前記範囲内であれば、処理後の第1面の濡れ張力が前記の範囲内となりやすい。
第1面に対するコロナ放電処理は1回の処理であってもよく、複数回の処理であってもよい。第2面にコロナ放電処理を行う場合も同様である。
コロナ放電処理部のガスは、大気で構わないが、ガスを追加してもよい。追加するガスとしては、例えば、窒素、アルゴン、酸素、ヘリウム、重合性ガス(エチレン等)等が挙げられる。
コロナ放電処理部の絶対湿度は10~30g/mが好ましい。絶対湿度が10g/m以上であれば、スパークが発生することなく安定して放電がされる。30g/m以下であれば、放電量の変化が少なく、均一な濡れ張力としやすい。
【0045】
真空プラズマ処理は減圧容器内にてグロー放電による処理が施される。グロー放電を用いたプラズマ処理であるので、印加する電圧を、従来構成のコロナ放電で使用される電圧に比べて低くすることができ、消費電力を低減することができる。処理圧力は、好ましくは0.1~1330Pa、更に好ましくは、1Pa~266Paの範囲で持続放電するグロー放電処理、いわゆる低温プラズマ処理が処理効率の点で好ましい。
このとき、処理ガスの選択が広い真空での処理が好ましい。処理ガスとしては、特に限定されないが、He、Ne、Ar、窒素、酸素、炭酸ガス、空気、水蒸気等が単独あるいは混合した状態で使用される。なかでも、Ar又は炭酸ガスが放電開始効率の点から好ましい。また、Ar、水素及び窒素の組み合わせも、基材に対し反応性に富む官能基を付与できることから好ましい。
【0046】
上記のガス圧力下で放電電極間に、例えば、周波数10KHz~2GHzの高周波で、10W~100KWの電力を与えることにより安定なグロー放電を行わせることができる。尚、放電周波数帯域としては、高周波以外に低周波、マイクロ波、直流等を用いることができる。真空プラズマ発生装置としては、内部電極型であることが好ましいが、場合によって外部電極型であってもよいし、またコイル炉等の容量結合、誘導結合のいずれであってもよい。
電極の形状は、平板状、リング状、棒状、シリンダー状等種々可能であり、更には処理装置の金属内壁を一方の電極としてアースした形状のものであってもよい。電極間に1,000ボルト以上の電圧を印加し、安定なプラズマ状態を維持するには、入力電極にかなりの耐電圧を持った絶縁被覆を施すことが好ましい。銅、鉄、アルミニウム等の金属むき出しの電極であるとアーク放電となりやすいので、電極表面をホーローコート、ガラスコート、セラミックコート等を施すことが好ましい。
【0047】
フッ素樹脂フィルムに対する真空プラズマ処理を行う場合にあっては、処理強度(出力)を、5~400W・min/mの範囲とすることが好ましい。これにより、フッ素樹脂フィルムの表面における上記した濡れ張力の範囲を得ることができる。
大気圧プラズマ放電処理においては、0.8~1.2気圧下において不活性ガス(アルゴンガス、窒素ガス、ヘリウムガス等)下で放電することで、グロー放電を発生させる。不活性ガス中には微量の活性ガス(酸素ガス、水素ガス、炭酸ガス、エチレン、4フッ化エチレン等)を混合できる。ガスとしては、フッ素樹脂層の表面のぬれ張力が前記範囲内となりやすい点から、窒素ガスに水素ガスを混合したガスが好ましい。
大気圧プラズマ放電処理における電圧は、通常1~10kVある。電源の周波数は、通常、1~20kHzである。処理時間は、通常0.1秒~10分である。
大気圧プラズマ放電処理の放電電力密度は、5~400W・min/mが好ましい。放電電力密度が前記範囲内であれば、フッ素樹脂層の表面のぬれ張力が前記範囲内となりやすい。
【0048】
また、第1基材及び第3基材が耐熱性樹脂フィルムの場合、フッ素樹脂フィルムと同様の表面処理を行っても良い。表面処理としてはコロナ放電処理、大気圧プラズマ処理又は真空プラズマ処理が好ましく、大気圧プラズマ処理又は真空プラズマ処理がより好ましい。耐熱性樹脂フィルムにこれらの処理を行うことで、後述する第2工程後における接着強度が向上する。
耐熱性樹脂フィルムの表面の水接触角は、5°~60°が好ましく、10°~50°がより好ましく、10°~30°が更に好ましい。該水接触角が前記範囲内であれば、積層後のフッ素樹脂層と耐熱性樹脂層との接着性が更に優れる。
例えば、耐熱性樹脂フィルムが芳香族ポリイミドフィルムの場合、芳香族ポリイミドフィルムの表面の表面処理前の水接触角は好ましくは70°~80°である。水接触角は、JIS R 6769:1999に記載の静滴法で測定した値である。
【0049】
<フッ素樹脂>
フッ素樹脂としては、フィルムを製造しやすい点から、溶融成形が可能なフッ素樹脂が好ましい。かかるフッ素樹脂としては、公知のものを使用できる。
溶融成形が可能なフッ素樹脂としては、荷重49Nの条件下、フッ素樹脂の融点よりも20℃以上高い温度において、溶融流れ速度が0.1~1000g/10分(好ましくは0.5~100g/10分、より好ましくは1~30g/10分、更に好ましくは5~20g/10分)となる温度が存在するフッ素樹脂が好ましい。溶融流れ速度が前記範囲の下限値以上であれば、フッ素樹脂の成形性に優れ、フッ素樹脂フィルムの表面平滑性、外観に優れる。溶融流れ速度が前記範囲の上限値以下であれば、フッ素樹脂フィルムの機械的強度に優れる。
【0050】
フッ素樹脂の融点は、100~325℃が好ましく、250~320℃がより好ましく、280~315℃が更に好ましい。フッ素樹脂の融点が前記範囲の下限値以上であれば、得られる積層体の耐熱性がより優れる。フッ素樹脂の融点が前記範囲の上限値以下であれば、積層体を製造する際に汎用的な成形装置を使用できる。以下、特に言及しない限り、フッ素樹脂とは上記融点を有するフッ素樹脂をいう。
【0051】
フッ素樹脂のフッ素含有量は、70~80質量%が好ましく、70~78質量%が特に好ましい。フッ素含有量は、フッ素樹脂の総質量に対する、フッ素原子の合計質量の割合である。フッ素含有量が前記下限値以上であれば、耐熱性がより優れ、前記上限値以下であれば、成形性がより優れる。フッ素含有量は、19F-NMRにより測定される。
【0052】
フッ素樹脂は、接着性官能基を有しないフッ素樹脂であってもよく、接着性官能基を有するフッ素樹脂であってもよい。積層体IIとしたときの第2基材と第1基材又は第3基材との接着強度がより優れる点から、接着性官能基を有するフッ素樹脂が好ましい。
【0053】
接着性官能基を有しないフッ素樹脂としては、テトラフルオロエチレン/ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)等が挙げられる。
接着性官能基を有しないフッ素樹脂としては、コロナ放電処理等の表面処理によりフッ素樹脂フィルム表面に効率的に接着性官能基を導入し得る点から、ETFE、PVDF等の炭素原子に結合した水素原子を有するフッ素樹脂が好ましい。
【0054】
接着性官能基を有するフッ素樹脂としては、接着性官能基を有する単位や接着性官能基を有する末端基を有する上記フッ素樹脂が挙げられる。具体的には、接着性官能基を有するPFA、接着性官能基を有するFEP、接着性官能基を有するETFE等が挙げられる。
【0055】
接着性官能基を有するフッ素樹脂における接着性官能基としては、カルボニル基含有基、ヒドロキシ基、エポキシ基、アミド基、アミノ基及びイソシアネート基からなる群から選択される少なくとも1種の官能基が好ましい。フッ素樹脂中の接着性官能基は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
【0056】
フッ素樹脂中の接着性官能基は、界面における接着性の点から、カルボニル基含有基であることが好ましい。カルボニル基含有基としては、例えば、炭化水素基の炭素原子間にカルボニル基を有する基、カーボネート基、カルボキシ基、ハロホルミル基、アルコキシカルボニル基、酸無水物基等が挙げられる。
【0057】
炭化水素基の炭素原子間にカルボニル基を有する基における炭化水素基としては、例えば、炭素数2~8のアルキレン基等が挙げられる。なお、該アルキレン基の炭素数は、カルボニル基の炭素原子を含まない炭素数である。アルキレン基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。
ハロホルミル基は、-C(=O)-X(ただし、Xはハロゲン原子である。)で表される。ハロホルミル基におけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。すなわちハロホルミル基としてはフルオロホルミル基(カルボニルフルオリド基ともいう。)が好ましい。
アルコキシカルボニル基におけるアルコキシ基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよく、炭素数1~8のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基又はエトキシ基が特に好ましい。
カルボニル基含有基としては、酸無水物基、カルボキシ基が好ましい。
【0058】
フッ素樹脂中の接着性官能基の含有量は、フッ素樹脂の主鎖炭素数1×10個に対し10~60000個が好ましく、100~50000個がより好ましく、100~10000個が更に好ましく、300~5000個が特に好ましい。該含有量が前記範囲の下限値以上であれば、界面における接着性に更に優れる。該含有量が前記範囲の上限値以下であれば、積層体IIとしたときの第2基材と第1基材又は第3基材との接着強度がより優れる。
【0059】
接着性官能基の含有量は、核磁気共鳴(NMR)分析、赤外吸収スペクトル分析等の方法によって測定できる。例えば、日本特開2007-314720号公報に記載のように赤外吸収スペクトル分析等の方法を用いて、フッ素樹脂を構成する全単位中の接着性官能基を有する単位の割合(モル%)を求め、該割合から、接着性官能基の含有量を算出できる。
【0060】
接着性官能基は、界面における接着性の点から、フッ素樹脂の主鎖の末端基及び主鎖のペンダント基のいずれか一方又は両方として存在することが好ましい。
かかるフッ素樹脂は、単量体の重合の際に、接着性官能基を有する単量体を共重合させる、接着性官能基をもたらす連鎖移動剤や重合開始剤を使用して単量体を重合させる、等の方法で製造できる。これら方法を併用することもできる。特に、接着性官能基を有する単量体を共重合させることにより、接着性官能基が少なくとも主鎖のペンダント基として存在するフッ素樹脂とすることが好ましい。
【0061】
接着性官能基を有する単量体としては、カルボニル基含有基、ヒドロキシ基、エポキシ基、アミド基、アミノ基、又はイソシアネート基を有する単量体が好ましく、酸無水物基又はカルボキシ基を有する単量体が特に好ましい。具体的には、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、ウンデシレン酸等のカルボキシ基を有する単量体、無水イタコン酸(IAH)、無水シトラコン酸(CAH)、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物(NAH)、無水マレイン酸等の酸無水物基を有する単量体、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、エポキシアルキルビニルエーテル等が挙げられる。
【0062】
接着性官能基をもたらす連鎖移動剤としては、カルボキシ基、エステル結合、水酸基等を有する連鎖移動剤が好ましい。具体的には、酢酸、無水酢酸、酢酸メチル、エチレングリコール、プロピレングリコール等が挙げられる。
接着性官能基をもたらす重合開始剤としては、ペルオキシカーボネート、ジアシルペルオキシド、ペルオキシエステル等の過酸化物系重合開始剤が好ましい。具体的には、ジ-n-プロピルペルオキシジカーボネート、ジイソプロピルペルオキシカーボネート、tert-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、ビス(4-tert-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルペルオキシジカーボネート等が挙げられる。
【0063】
接着性官能基が少なくとも主鎖のペンダント基として存在するフッ素樹脂としては、接着性に更に優れる点から、下記の含フッ素重合体Aが特に好ましい。
含フッ素重合体A:テトラフルオロエチレン(TFE)に由来する単位と、酸無水物基を有する環状炭化水素単量体(以下、酸無水物系単量体とも記す。)に由来する単位と、含フッ素単量体(但し、TFEを除く。)に由来する単位とを有する含フッ素重合体。
なお、以下、TFEに由来する単位を「TFE単位」、酸無水物系単量体に由来する単位を「単位(2)」、上記含フッ素単量体に由来する単位を「単位(3)」とも記す。
【0064】
酸無水物系単量体としては、IAH、CAH、NAH、無水マレイン酸等が挙げられ、それは、1種を単独でも、2種以上を併用してもよい。
酸無水物系単量体としては、IAH、CAH及びNAHからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。IAH、CAH及びNAHのいずれかを用いると、無水マレイン酸を用いた場合に必要となる特殊な重合方法(特開平11-193312号公報参照)を用いることなく、酸無水物基を有する含フッ素重合体Aを容易に製造できる。
酸無水物系単量体としては、界面における接着性に更に優れる点から、IAH、NAHが特に好ましい。
【0065】
含フッ素重合体Aには、単位(2)における酸無水物基の一部が加水分解し、その結果、酸無水物系単量体に対応するジカルボン酸(イタコン酸、シトラコン酸、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸、マレイン酸等)の単位が含まれる場合がある。該ジカルボン酸の単位が含まれる場合、該単位の含有量は、単位(2)の含有量に含まれるものとする。
【0066】
単位(3)を構成する含フッ素単量体としては、重合性炭素-炭素二重結合を1つ有する含フッ素化合物が好ましい。例えば、フルオロオレフィン(クロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、ヘキサフルオロイソブチレン等。但し、TFEを除く。)、CF=CFORf1(但し、Rf1は炭素数1~10のペルフルオロアルキル基、又は炭素数2~10のペルフルオロアルキル基の炭素原子間に酸素原子を含む基である。)(以下、PAVEとも記す。)、CF=CFORf2SO(但し、Rf2は炭素数1~10のペルフルオロアルキル基、又は炭素数2~10のペルフルオロアルキル基の炭素原子間に酸素原子を含む基であり、Xはハロゲン原子又は水酸基である。)、CF=CFORf3CO(ただし、Rf3は炭素数1~10のペルフルオロアルキル基、又は炭素数2~10のペルフルオロアルキル基の炭素原子間に酸素原子を含む基であり、Xは水素原子又は炭素数1~3のアルキル基である。)、CF=CF(CFOCF=CF(ただし、pは1又は2である。)、CH=CX(CF(但し、Xは水素原子又はフッ素原子であり、qは2~10の整数であり、Xは水素原子又はフッ素原子である。)(以下、FAEとも記す。)、環構造を有する含フッ素単量体(ペルフルオロ(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール)、2,2,4-トリフルオロ-5-トリフルオロメトキシ-1,3-ジオキソール、ペルフルオロ(2-メチレン-4-メチル-1,3-ジオキソラン)等)等が挙げられる。
【0067】
含フッ素単量体としては、含フッ素重合体Aの成形性、重合体層の耐屈曲性等に優れる点から、HFP、PAVE及びFAEからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
PAVEとしては、CF=CFOCFCF、CF=CFOCFCFCF、CF=CFOCFCFCFCF、CF=CFO(CFF等が挙げられ、CF=CFOCFCFCF(PPVE)が好ましい。
【0068】
FAEとしては、CH=CF(CFF、CH=CF(CFF、CH=CF(CFF、CH=CF(CFF、CH=CF(CFF、CH=CF(CFH、CH=CF(CFH、CH=CF(CFH、CH=CF(CFH、CH=CF(CFH、CH=CH(CFF、CH=CH(CFF、CH=CH(CFF、CH=CH(CFF、CH=CH(CFF、CH=CH(CFF、CH=CH(CFH、CH=CH(CFH、CH=CH(CFH、CH=CH(CFH、CH=CH(CFH等が挙げられる。
FAEとしては、CH=CH(CFq1(但し、q1は、2~6であり、2~4が好ましい。)が好ましく、CH=CH(CFF、CH=CH(CFF、CH=CH(CFF、CH=CF(CFH、CH=CF(CFHがより好ましく、CH=CH(CFF(PFBE)、CH=CH(CFF(PFEE)が特に好ましい。
【0069】
含フッ素重合体Aは、TFE単位及び単位(2)、(3)に加えて、非フッ素系単量体(ただし、酸無水物系単量体を除く。)に由来する単位を更に有してもよい。
非フッ素系単量体としては、重合性炭素-炭素二重結合を1つ有する非フッ素化合物が好ましく、例えば、オレフィン(エチレン、プロピレン、1-ブテン等)、ビニルエステル(酢酸ビニル等)等が挙げられる。非フッ素系単量体は、1種を単独でも、2種以上を併用してもよい。
【0070】
含フッ素重合体Aの好ましい具体例としては、TFE/NAH/PPVE共重合体、TFE/IAH/PPVE共重合体、TFE/CAH/PPVE共重合体、TFE/IAH/HFP共重合体、TFE/CAH/HFP共重合体、TFE/IAH/PFBE/エチレン共重合体、TFE/CAH/PFBE/エチレン共重合体、TFE/IAH/PFEE/エチレン共重合体、TFE/CAH/PFEE/エチレン共重合体、TFE/IAH/HFP/PFBE/エチレン共重合体等が挙げられる。中でも耐熱性が良好であることから、TFE/NAH/PPVE共重合体が好ましい。
ここで、「TFE/NAH/PPVE共重合体」とは、TFE単位とNAH単位とPPVE単位とを有する共重合体を示し、他の共重合体も同様である。
【0071】
含フッ素重合体AがTFE単位と単位(2)と単位(3)とからなる場合、TFE単位と単位(2)と単位(3)との合計100モル%に対して、TFE単位の含有量は、50~99.89モル%が好ましく、50~99.4モル%がより好ましく、50~98.9モル%が更に好ましい。単位(2)の含有量は、0.01~5モル%が好ましく、0.1~3モル%がより好ましく、0.1~2モル%が更に好ましい。単位(3)の含有量は、0.1~49.99モル%が好ましく、0.5~49.9モル%がより好ましく、1~49.9モル%が更に好ましい。
各単位の割合が前記範囲内であれば、第2基材の耐熱性、耐薬品性、高温での弾性率がより優れる。単位(2)の割合が前記範囲内であれば、含フッ素重合体Aにおける酸無水物基の量が適切になり、接着性がより優れる。単位(3)の割合が前記範囲内であれば、含フッ素重合体Aの成形性に優れ、積層体の耐屈曲性がより優れる。
各単位の割合は、含フッ素重合体の溶融NMR分析、フッ素含有量分析、赤外吸収スペクトル分析等により算出できる。
【0072】
含フッ素重合体AがTFE単位と単位(2)と単位(3)と非フッ素系単量体に由来する単位とからなり、非フッ素単量体に由来する単位がエチレンに由来する単位(以下、E単位とも記す。)である場合の各単位の好ましい割合は下記のとおりである。
TFE単位と単位(2)と単位(3)とE単位との合計100モル%に対して、TFE単位の含有量は、25~80モル%が好ましく、40~65モル%がより好ましく、45~63モル%が更に好ましい。単位(2)の含有量は、0.01~5モル%が好ましく、0.03~3モル%がより好ましく、0.05~1モル%が更に好ましい。単位(3)の含有量は、0.2~20モル%が好ましく、0.5~15モル%がより好ましく、1~12モル%が更に好ましい。E単位の含有量は、20~75モル%が好ましく、35~50モル%がより好ましく、37~55モル%が更に好ましい。
各単位の含有量が前記範囲内であれば、耐薬品性等がより優れる。単位(2)の割合が前記範囲内であれば、含フッ素重合体Aにおける酸無水物基の量が適切になり、接着性がより優れる。単位(3)の割合が前記範囲内であれば、含フッ素重合体Aの成形性に優れ、積層体の耐屈曲性等がより優れる。
【0073】
含フッ素重合体Aは、常法により製造できる。例えば少なくともTFEと酸無水物系単量体と含フッ素単量体とを重合することにより含フッ素重合体Aを製造できる。単量体の重合に際しては、ラジカル重合開始剤を用いることが好ましい。
重合方法としては、塊状重合法、有機溶媒(フッ化炭化水素、塩化炭化水素、フッ化塩化炭化水素、アルコール、炭化水素等)を用いる溶液重合法、水性媒体と必要に応じて適当な有機溶媒とを用いる懸濁重合法、水性媒体と乳化剤とを用いる乳化重合法が挙げられ、溶液重合法が好ましい。
【0074】
含フッ素重合体Aを製造する際、酸無水物系単量体の重合中の濃度は、全単量体に対して0.01~5モル%が好ましく、0.1~3モル%がより好ましく、0.1~2モル%が更に好ましい。該単量体の濃度が前記範囲内であれば、重合速度が適度なものになる。該単量体の濃度が高すぎると、重合速度が低下する傾向がある。
酸無水物系単量体が重合で消費されるにしたがって、消費された量を連続的又は断続的に重合槽内に供給し、該単量体の濃度を前記範囲内に維持することが好ましい。
【0075】
(第3基材)
第3基材は、耐熱性基材層及び金属箔層の何れか一方又は両方からなる。耐熱性基材層及び金属箔層はそれぞれ、第1基材において挙げたものと同様のものが挙げられる。
第3基材が耐熱性基材層及び金属箔層からなる場合、耐熱性基材層と金属箔層とは、直接積層されてもよく、接着層を介して積層されてもよい。接着層としては、第1基材において挙げたものと同様のものが挙げられる。第1基材と第3基材は同じであってもよく異なってもよい。
【0076】
〔積層体の製造方法〕
本発明の積層体の製造方法は、下記の第1工程、及び必要に応じて、下記の第2工程を更に有する。
第1工程:第1基材の片側又は両側に第2基材を、第1面を第1基材側に向けて配置し、第1基材及び第2基材を搬送しながら、0~100℃の温度Tで厚み方向(積層方向)に加圧して積層し、第1基材と第2基材とが直接積層された積層体Iを得る工程。
第2工程:積層体Iの第2基材上に第3基材を配置し、積層体I及び第3基材を搬送しながら、第2基材に含まれるフッ素樹脂の融点以上の温度Tで厚み方向(積層方向)に加圧して積層し、積層体Iと第3基材とが直接積層された積層体IIを得る工程。
【0077】
(第1工程)
第1工程は、一対以上のラミネート手段を備えるラミネート装置によって連続的に行われることが好ましい。
ラミネート手段とは、複数の部材を積層方向に加圧することによって圧着する手段を意味する。ラミネート手段は、必要に応じて、加熱機構を有することができる。一対以上のラミネート手段としては、一対以上のロール(金属ロール等)、一対以上のベルト(金属ベルト等)等が挙げられる。
ラミネート装置としては、例えば一対以上のロールを有するロールラミネート装置、一対以上のベルトを有するダブルベルトプレス等が挙げられる。
ここで、ダブルベルトプレス装置とは、上下一対に配置されたエンドレスベルト間に複数のシート材料を連続的に送り込み、熱圧着装置によりエンドレスベルトを介して前記シート材料を熱圧着して積層体を形成する装置のことをいう。前記熱圧着装置には、液圧プレートを用いて面圧する方式(液圧方式と称する)や、エンドレスベルトを回転させるドラム及び/又はドラム間に設置されたローラーによってなされるロール圧方式等、いくつかの種類がある。
【0078】
ロールラミネート装置の具体的な構成は特に限定されるものではない。典型的には、複数の部材を加熱しながら圧着できる一対以上のロールを有する装置が用いられる。
ラミネート手段における加熱方式は、例えば、熱循環方式、熱風加熱方式、誘導加熱方式等、所定の温度で加熱し得る公知の方式を採用できる。
ラミネート手段における加圧方式は、例えば、油圧方式、空気圧方式、ギャップ間圧力方式等、所定の圧力を加えることができる公知の方式を採用できる。
【0079】
ラミネート装置は、ラミネート手段(一対以上のロール等)の前段に、各部材を送り出す送出手段を有してもよく、ラミネート手段の後段に、貼り合わされた部材を巻き取る巻取手段を有してもよい。各部材の送出手段や巻取手段を有することによって、生産性をより一層高めることができる。
各部材の送出手段及び巻取手段の具体的な構成は、例えば、各部材をロール状に巻き取ることのできる公知の巻取機等が挙げられる。
【0080】
以下、第1工程について、第1実施形態、第2実施形態、及び第3実施形態のそれぞれについて、添付の図面を用いて説明する。
【0081】
<第1実施形態>
図5は、第1実施形態で用いられるロールラミネート装置100を示す概略構成図である。ロールラミネート装置100は、一対のラミネートロール101(ラミネート手段)を備える。ラミネートロール101の前段には、第1送出ロール103(送出手段)と、第1送出ロール103の片側に配置された第2送出ロール105(送出手段)とが設けられる。また、ラミネートロール101の後段には、巻取機(図示略)が設けられる。
【0082】
ラミネートロール101は、加熱機構を備え、ロール表面温度を任意の温度に調整できる。加熱機構を備えるロールとしては、電気加熱ロール、熱媒循環式ロール、誘導加熱ロール等が挙げられる。ロール全体の均温性から、誘導加熱ロールが好ましい。
第1送出ロール103には耐熱性基材層12(第1基材)が巻き取られる。第1送出ロール103により、耐熱性基材層12の巻き出し速度を制御し、ラミネートロール101に搬送される耐熱性基材層12にかかる張力を制御できる。
第2送出ロール105には第2基材14が巻き取られる。また、第2送出ロール105において第2基材14は、第2送出ロール105から巻き出された際に、第1面14aが第1送出ロール103側(耐熱性基材層12側)となるように巻き取られる。第2送出ロール105により、第2基材14の巻き出し速度を制御し、ラミネートロール101に搬送される第2基材14にかかる張力を制御できる。
【0083】
ロールラミネート装置100においては、第1送出ロール103から連続的に送り出された長尺の耐熱性基材層12と、第2送出ロール105から連続的に送り出された長尺の第2基材14とが、表面温度がTである一対のラミネートロール101の間にて重ねられた状態となり、一対のラミネートロール101の間を連続的に通過する際に、温度Tにて厚み方向に加圧されて、積層体10(積層体I)となる。
得られた積層体10は、後段の巻取機によって連続的に巻き取られてもよいし、そのまま第2工程に供されてもよい。
【0084】
ラミネートロール101の表面温度(ラミネートロール温度)、つまり耐熱性基材層12及び第2基材14を搬送しながら加圧する際の温度Tは、0~100℃であり、20~80℃がより好ましく、30~60℃が更に好ましい。温度Tが前記下限値以上であれば、積層体10の搬送時に耐熱性基材層12と第2基材14とが剥離しない程度の接着力が得られる。温度Tが前記上限値以下であれば、積層体10のカール、第2基材14のシワが抑えられる。
ラミネートロール温度は、ロール表面を接触式熱電対で測定した温度である。
【0085】
一対のラミネートロール101間の圧力、すなわち耐熱性基材層12及び第2基材14を積層する際の加圧力は、3~100kN/mが好ましく、10~50kN/mがより好ましい。第1工程での加圧力が前記下限値以上であれば、積層体10の搬送時に耐熱性基材層12と第2基材14とが剥離しない程度の接着力が得られやすい。第1工程での加圧力が前記上限値以下であれば、第2基材14のシワをより抑制できる。
【0086】
第1工程では、耐熱性基材層12及び第2基材14を搬送する際の、耐熱性基材層12及び第2基材14それぞれの伸度を0.05~1.0%とし、耐熱性基材層12及び第2基材14の間の伸度の差を0.3%以下とすることが好ましい。耐熱性基材層12及び第2基材14それぞれの伸度は、0.2~0.6%がより好ましい。耐熱性基材層12及び第2基材14それぞれの伸度の差は0.2%以下がより好ましい。
前記伸度は、下式1で求められる値である。
式1:伸度(%)={搬送時に基材にかかる張力(N)/搬送方向と直交する方向での基材の断面積(mm)}/温度Tにおける基材の弾性率(N/mm)×100
式中の基材は、耐熱性基材層12又は第2基材14である。
伸度が前記下限値以上であれば、たるみによる横シワがなく基材を搬送することができる。伸度が前記上限値以下であれば、引張りすぎによる縦シワの発生がなく基材を搬送することができる。伸度の差が前記上限値以下であれば、積層体10のカールをより抑制できる。
【0087】
搬送時に耐熱性基材層12及び第2基材14それぞれにかかる張力は、テンションピックアップロールによって求められる。各基材の張力は、第1送出ロール103、第2送出ロール105によって調整できる。
耐熱性基材層12及び第2基材14それぞれの弾性率(N/mm=MPa)は、動的粘弾性測定によって求められる。
【0088】
耐熱性基材層12及び第2基材14が一対のラミネートロール101間を通過する際の走行速度(ラミネート速度)は、ラミネートが可能な範囲であればよく、例えば0.5~5.0m/分であってよい。
【0089】
耐熱性基材層12及び第2基材14がラミネートロール101間に侵入する際のこれらの基材間の角度は、3°~45°が好ましい。耐熱性基材層12と第2基材14との間の角度が3°以上であれば、これらの基材間の空気がラミネート時に好適に抜ける。45°以下であれば、積層時にシワになりにくい。
【0090】
<第2実施形態>
図6は、第2実施形態で用いられるロールラミネート装置200を示す概略構成図である。なお、第2実施形態において、第一実施形態に対応する構成要素には同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
ロールラミネート装置200は、一対のラミネートロール101を備える。ラミネートロール101の前段には、第1送出ロール103と、その上下にそれぞれ配置された第2送出ロール105及び第3送出ロール107(送出手段)とが設けられる。また、ラミネートロール101の後段には、巻取機(図示略)が設けられる。
【0091】
ロールラミネート装置200は、第3送出ロール107を更に備える以外は、第1実施形態のロールラミネート装置100と同様である。
第3送出ロール107には第2基材14が巻き取られる。また、第3送出ロール107において第2基材14は、第3送出ロール107から巻き出された際に、第1面14aが第1送出ロール103側(耐熱性基材層12側)となるように巻き取られる。第3送出ロール107により、第2基材14の巻き出し速度を制御し、ラミネートロール101に搬送される第2基材14にかかる張力を制御できる。
【0092】
ロールラミネート装置200においては、第3送出ロール107から連続的に送り出された長尺の第2基材14と、第1送出ロール103から連続的に送り出された長尺の耐熱性基材層12と、第2送出ロール105から連続的に送り出された別の長尺の第2基材14とが、表面温度がTである一対のラミネートロール101の間にて重ねられた状態となり、一対のラミネートロール101の間を連続的に通過する際に、温度Tにて厚み方向に加圧されて、積層体10A(積層体I)となる。
得られた積層体10Aは、後段の巻取機によって連続的に巻き取られてもよいし、そのまま第2工程に供されてもよい。
【0093】
ラミネートロール温度(温度T)は第1実施形態と同様であり、好ましい態様も同様である。また、加圧力、耐熱性基材層12及び第2基材14を搬送する際の耐熱性基材層12及び第2基材14それぞれの伸度、耐熱性基材層12及び第2基材14の間の伸度の差それぞれの好ましい値も第1実施形態と同様である。
なお、第2実施形態での第2基材14の伸度は、2つの第2基材14のそれぞれの伸度である。2つの第2基材14の伸度は、同じであってもよく異なってもよく、カールを抑える点では、同じであることが好ましい。
【0094】
<第3実施形態>
図7は、第3実施形態で用いられるダブルベルトプレス装置300を示す概略構成図である。ダブルベルトプレス装置300は、一対の前方上側ドラム301aと前方下側ドラム301b、そして一対の後方上側ドラム302aと後方下側ドラム302b、そして更に、二個の上側ドラムの組と二個の下側ドラムの組のそれぞれの周囲に張り渡されたベルト303a、303bから構成される。図7では、二個の前方ドラム301a、301bが加熱ドラムであり、二個の後方ドラム302a、302bが冷却ドラムである。このダブルベルトプレス装置300の加熱加圧装置は、上下に設けられた加熱加圧具304a、304bから構成されており、ダブルベルトプレス内を上下のベルト303a、303bにより挟まれて搬送される積層体に対して上下の加熱加圧具304a、304bの互いの接近により圧力を付与するように構成される。図7のダブルベルトプレス装置300では更に、加圧冷却装置305a、305bが加熱加圧装置の後方に備えられており、高温にて加圧処理が施された積層体が冷却される。
【0095】
ダブルベルトプレス装置300の前段には、第1送出ロール306(送出手段)と、第1送出ロール306の片側に配置された第2送出ロール307(送出手段)とが設けられる。また、後方ドラム302a、302bの後段には、巻取機(図示略)が設けられる。
第1送出ロール306には耐熱性基材層12(第1基材)が巻き取られる。第1送出ロール306により、耐熱性基材層12の巻き出し速度を制御し、ベルト303a、303bに搬送される耐熱性基材層12にかかる張力を制御できる。
第2送出ロール307には第2基材14が巻き取られる。また、第2送出ロール307において第2基材14は、第2送出ロール307から巻き出された際に、第1面14aが第1送出ロール306側(耐熱性基材層12側)となるように巻き取られる。第2送出ロール306により、第2基材14の巻き出し速度を制御し、ベルト303a、303bに搬送される第2基材14にかかる張力を制御できる。
【0096】
ダブルベルトプレス装置300においては、第1送出ロール306から連続的に送り出された長尺の耐熱性基材層12と、第2送出ロール307から連続的に送り出された長尺の第2基材14とが、表面温度がTであるベルト303a、303bの間にて重ねられた状態となり、ベルト303a、303bの間を連続的に通過する際に、温度Tにて厚み方向に加圧されて、積層体10(積層体I)となる。
得られた積層体10は、後段の巻取機によって連続的に巻き取られてもよいし、そのまま第2工程に供されてもよい。
ベルト温度(温度T)は第1実施形態と同様であり、好ましい態様も同様である。また、加圧力、耐熱性基材層12及び第2基材14を搬送する際の耐熱性基材層12及び第2基材14それぞれの伸度、耐熱性基材層12及び第2基材14の間の伸度の差それぞれの好ましい値も第1実施形態と同様である。
【0097】
以上、第1工程について、第1~第3実施形態を示して説明したが、本発明の第1工程は上記実施形態に限定されない。上記実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の範囲内で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。
例えば、ロールラミネート装置100,200において、一対のラミネートロール101の前段に予熱手段(予熱ロール、予熱ヒーター等)を設け、耐熱性基材層12又は/及び第2基材14を予熱するようにしてもよい。予熱する場合、予熱温度は20~100℃が好ましい。
また、加圧を2回以上行うようにしてもよい。例えば、一対のラミネートロール101を構成する2本のロールのいずれか一方に隣接して1本のロールを配置し、積層する基材を、それら3本のロール間を加圧しながら通すようにしてもよい。
第1基材として、耐熱性基材層12の代わりに、金属箔層を用いてもよく、耐熱性基材層及び金属箔層からなるものを用いてもよい。
【0098】
(第2工程)
第2工程では、第1工程で得た積層体Iの第2基材上に第3基材を配置し、積層体I及び第3基材を搬送しながら、第2基材に含まれるフッ素樹脂の融点以上の温度Tで厚み方向(積層方向)に加圧して積層し、積層体IIを得る。
第2工程は、第1工程と同様に、一対以上のラミネート手段を備えるラミネート装置によって連続的に行われることが好ましい。ラミネート装置としては、第1工程の説明で挙げたものと同様のものが挙げられる。
【0099】
積層体Iが、第1基材の片側に第2基材が積層されたものであり、積層体Iの片側(第2基材側)に第3基材を積層する場合、例えば、図5に示したロールラミネート装置100と同様のロールラミネート装置を用いて第2工程を実施できる。ただし、この場合は、第1送出ロール103を、積層体Iが巻き取られたものとし、第2送出ロール105を、第3基材が巻き取られたものとする。また、第1送出ロール103において積層体Iは、第1送出ロール103から巻き出された際に、第2基材側(第2基材の第2面)が第2送出ロール105側(第3基材側)となるように巻き取られるものとする。
ロールラミネート装置100において、第1送出ロール103から連続的に送り出された長尺の積層体Iと、第2送出ロール105から連続的に送り出された長尺の第3基材とが、表面温度がTである一対のラミネートロール101の間にて重ねられた状態となり、一対のラミネートロール101の間を連続的に通過する際に、温度Tにて厚み方向に加圧されて、積層体IIとなる。得られた積層体IIは、後段の巻取機によって連続的に巻き取ることができる。このとき、積層体Iが積層体10、第3基材が金属箔層16であると、図2に示す積層体20が得られる。
【0100】
積層体Iが、第1基材の両側に第2基材が積層されたものであり、積層体Iの両側に第3基材を積層する場合、例えば、図6に示したロールラミネート装置200と同様のロールラミネート装置を用いて第2工程を実施できる。ただし、この場合は、第1送出ロール103を、積層体Iが巻き取られたものとし、第2送出ロール105及び第3送出ロール107をそれぞれ、第3基材が巻き取られたものとする。
ロールラミネート装置200において、第3送出ロール107から連続的に送り出された長尺の第3基材と、第1送出ロール103から連続的に送り出された長尺の積層体Iと、第2送出ロール105から連続的に送り出された長尺の第3基材とが、表面温度がTである一対のラミネートロール101の間にて重ねられた状態となり、一対のラミネートロール101の間を連続的に通過する際に、温度Tにて厚み方向に加圧されて、積層体IIとなる。得られた積層体IIは、後段の巻取機によって連続的に巻き取ることができる。このとき、積層体Iが積層体10Aで、2つの第3基材がそれぞれ金属箔層16であると、図4に示す積層体20Aが得られる。
【0101】
積層体I及び第3基材を搬送しながら加圧する際の温度Tは、積層体Iの第2基材に含まれるフッ素樹脂の融点以上であり、(前記融点+15℃)以上が好ましく、(前記融点+30℃)℃以上がより好ましい。温度Tが前記下限値以上であれば、第2基材が溶融し、第1基材と第3基材との間の接着強度が優れる。特にフッ素樹脂が接着性官能基を有すると、より優れた接着強度が発現する。また、積層体Iにおいて第2基材のシワが抑制されること、第2工程での積層時に第2基材の両側に他の基材(第1基材又は第3基材)が接することから、フッ素樹脂の融点以上の温度で加熱しても第2基材にシワが発生しにくい。
温度は、金属箔層の酸化防止の点から、400℃以下が好ましく、380℃以下がより好ましい。
ただし、第2基材に真空プラズマ処理をした場合は、温度Tは、積層体Iの第2基材に含まれるフッ素樹脂の融点以上である、(前記融点±0℃)以上が好ましく、(前記融点+5℃)℃以上がより好ましい。前記温度Tが前記下限値以上であれば、第2基材の真空プラズマ処理層が活性化し、第2基材と第3基材との間の接着強度が優れる。温度Tが下がることで、寸法変化率が少ない積層体IIを得ることができる。
また、第1基材及び第3基材の耐熱性樹脂フィルムに真空プラズマ処理をした場合においても同様であり、(前記融点±0℃)以上が好ましく、(前記融点+5℃)℃以上がより好ましい。前記温度Tが前記下限値以上であれば、第1基材及び第3基材の真空プラズマ処理層が活性化し、第2基材と第1基材及び第3基材との間の接着強度が優れる。温度Tが下がることで、寸法変化率が少ない積層体IIを得ることができる。
また、第2工程において高温のロールに接触する際、耐熱性樹脂フィルムの吸水率が高く、かつ実際に吸水していると、発泡が起こる。吸水率が低い耐熱性樹脂フィルムを用い、かつ高温のロールに接触する直前に加熱して水を除去することが好ましく、これらの手段を講ずることで、発泡を防ぐことが可能となる。
【0102】
一対のラミネートロール101間の圧力、すなわち積層体I及び第3基材を積層する際の加圧力は、ラミネートが可能な範囲であればよく、例えば10~100kN/mであってよい。
積層体I及び第3基材が一対のラミネートロール101間を通過する際の走行速度(ラミネート速度)は、ラミネートが可能な範囲であればよく、例えば0.5~5.0m/分であってよい。
積層体Iと第3基材がラミネートロールに侵入する際のこれらの基材間の角度は、ラミネートが可能な範囲であればよく、例えば3°~45°であってよい。
【0103】
本発明の積層体の製造方法は、必要に応じて、第1工程及び第2工程以外の他の工程を更に有していてもよい。他の工程としては、例えば、第2工程後の積層体IIを、第2基材の融点以上に加熱したラミネートロールに加圧せずに接触させ、第2基材とその他の層との接着性を向上させる工程等が挙げられる。
【0104】
本発明の積層板の製造方法にあっては、第1工程において第1基材と第2基材とを積層する際の温度Tが0~100℃であるため、第2基材(フッ素樹脂層)にシワが生じたり、積層体Iがカールしたりすることを抑制できる。また、第2基材の第1面(第1基材との積層面)の濡れ張力を30~60mN/m、その反対側の第2面(ラミネート手段との接触面)の濡れ張力が第1面の濡れ張力より2mN/m以上小さいため、第1基材と第2基材との間の層間剥離を抑制できる。したがって、シワ、カール、層間剥離の少ない積層体Iを得ることができる。また、積層体Iに第3基材を積層したときに、シワや層間剥離の少ない積層体IIを得ることができる。
【0105】
<フレキシブルプリント基板の製造方法>
本発明の積層体の製造方法を用いて、積層体IIとして、少なくとも一方の最表層が金属箔層である積層体を得て、該積層体の最表層の金属箔層の一部をエッチングにより除去してパターン回路を形成する工程を経て、フレキシブルプリント基板を製造できる。
最表層の少なくとも一方が金属箔層である積層体IIの積層構成の例は前記のとおりである。
最表層の少なくとも一方が金属箔層である積層体IIは、例えば、第1工程で第1基材の片側に第2基材を積層する場合には、第1基材及び第3基材の少なくとも一方として金属箔層を用いることで得られる。第1工程で第1基材の両側に第2基材を積層し、第2工程で積層体Iの両側に第2基材を積層する場合には、第3基材として金属箔層を用いることで得られる。金属箔層の代わりに、耐熱性基材層及び金属箔層からなり、第2基材側とは反対側の最表層が金属箔層である基材を用いてもよい。
積層体IIの寸法変化率は低い方が、パターン回路を形成する工程後の反りや、回路の欠陥が少ない。積層体IIの寸法変化率は±0.15%以内であることが好ましく、±0.08%以内であることがより好ましい。本発明におけるフレキシブルプリント基板は、各種の小型化、高密度化された部品が実装されたものでもよい。
【0106】
本発明のフレキシブルプリント基板の製造方法にあっては、本発明の積層体の製造方法を用いるため、シワや層間剥離の少ないフレキシブルプリント基板を得ることができる。
【実施例
【0107】
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定して解釈されない。
なお、例1~22は実施例であり、例23~26は比較例である。各例で使用した評価方法及び材料を以下に示す。
【0108】
(濡れ張力の評価)
フッ素樹脂フィルムの第1面、第2面それぞれの濡れ張力は、ぬれ張力試験用混合液(和光純薬工業社製)を使用し、JIS K 6768:1999に従って測定した。
【0109】
(シワの評価)
積層体(積層体I又は積層体II)を巻き出して長さ5m分の外観を目視で観察し、層間の第2基材(フッ素樹脂フィルム)におけるシワの有無及び状態を評価した。結果を以下の基準で判定した。
○(良好):シワは見られない。
△(可):シワはないが、折れ跡がみられる。
×(不可):フィルムが折れ、シワがある部分が1か所以上見られる。
【0110】
(カールの評価方法)
図8に示すように、積層体Iから10cm×10cmの正方形状の試料を切り出し、得られた試料の四辺をテープで台座に固定し、対角線に沿って長さ10cmの2本の切込みを入れた。これにより、2本の切り込みが交差する部分を頂点とする三角形状の4つの舌片を形成した。その後、4つの舌片のカールの有無を観察し、カールしたものについてはカール高さ(台座面から、カールした舌片の最も高い位置までの高さ)を定規で測定した。4つの舌片のカール高さのうち最も大きい値を積層体のカール高さとした。カールが見られなかったものについてはカール高さを0mmとした。
【0111】
(剥離の評価)
積層体(積層体I又は積層体II)を巻き出して長さ5m分の外観を目視で観察し、層間の剥離(気泡)の有無を評価した。また、剥離が見られた場合、顕微鏡によって、剥離部分の真円換算の直径φを測定した。結果を以下の基準で判定した。
○(良好):剥離は見られない。
△(可):φ1mm未満の剥離が1か所以上10か所未満見られ、φ1mm以上の剥離が見られない。
×(不可):φ1mm未満の剥離が10か所以上見られるか、φ1mm以上の剥離が1か所以上見られる。
【0112】
(接着強度の評価)
積層体Iを長さ150mm、幅10mmに切り出し、評価サンプルを作製した。評価サンプルの長さ方向の一端から50mmの位置まで第1基材と第2基材との間を剥離した。ついで、引張試験機を用いて、引張速度50mm/minで90°となるように剥離し、測定距離20mmから80mmの平均荷重を剥離強度(N/cm)とした。
積層体IIについては、第1基材と第3基材との間を剥離した以外は上記と同様にして剥離強度を測定した。この場合、第1基材と第2基材との間の剥離強度、第3基材と第2基材との間の剥離強度のうち、弱い方の剥離強度が測定される。
【0113】
(寸法変化率)
積層体の寸法変化率について、JIS C6471に準拠して試験を行った。縦240mm×横300mmの長方形に切り取った積層体IIのエッチング前後の寸法変化率、及びエッチング後の積層体IIを150℃×30分で加熱したのちの寸法変化率を測定した。最終的な寸法変化率を以下の式で求めた。
(MD方向の寸法変化率%)
={(150℃×30分加熱後のMD方向寸法)-(エッチング前の積層体IIのMD方向寸法)}/(エッチング前の積層体IIのMD方向寸法)×100
(TD方向の寸法変化率%)
={(150℃×30分加熱後のTD方向寸法)-(エッチング前の積層体IIのTD方向寸法)}/(エッチング前の積層体IIのTD方向寸法)×100
(寸法変化率%)
={(MD方向の寸法変化率%)+(TD方向の寸法変化率%)}/2
【0114】
〔材料〕
フッ素樹脂A:国際公開第2016/104297号の段落[0111]~[0113]の記載に従って製造した含フッ素樹脂。共重合組成(モル比):TFE単位/NAH単位/PPVE単位=97.9/0.1/2.0、融点:305℃、溶融流れ速度:11.0g/10分、フッ素含有量:75質量%。
フッ素樹脂B:重合槽中に連続的に仕込むNAH溶液の量を、重合中に仕込むTFEのモル数に対して0.2モル%に相当する量としたこと以外はフッ素樹脂Aと同様にして製造した含フッ素樹脂。共重合組成(モル比):TFE単位/NAH単位/PPVE単位=97.8/0.2/2.0、融点:305℃、溶融流れ速度:11.0g/10分、フッ素含有量:75質量%。
【0115】
フッ素樹脂C:重合槽中に連続的に仕込むNAH溶液の量を、重合中に仕込むTFEのモル数に対して0.3モル%に相当する量としたこと以外はフッ素樹脂Aと同様にして製造した含フッ素樹脂。共重合組成(モル比):TFE単位/NAH単位/PPVE単位=97.7/0.3/2.0、融点:305℃、溶融流れ速度:11.0g/10分、フッ素含有量:75質量%。
フッ素樹脂D:市販のフッ素樹脂。共重合組成(モル比):TFE単位/PPVE単位=98.0/2.0、融点:310℃、溶融流れ速度:11.0g/10分、フッ素含有量:75質量%。
【0116】
(フッ素樹脂フィルム1)
フッ素樹脂Aを、750mm巾のコートハンガーダイを有する65mmφ単軸押出機を用いて、ダイ温度340℃でフィルム状に押出成形し、成形直後に片面に、放電量30W・min/mでコロナ放電処理をし、厚さ25μm、幅250mmのフッ素樹脂フィルム1を得た。フッ素樹脂フィルム1の第1面(コロナ放電処理された面)の濡れ張力は30mN/m、第2面(コロナ放電処理されていない面)の濡れ張力は22.6mN/m未満であった。
【0117】
(フッ素樹脂フィルム2)
放電量を40W・min/mとした以外はフッ素樹脂フィルム1と同様に、厚さ25μm、第1面の濡れ張力40mN/mのフッ素樹脂フィルム2を得た。
【0118】
(フッ素樹脂フィルム3)
放電量を60W・min/mとした以外はフッ素樹脂フィルム1と同様に、厚さ25μm、第1面の濡れ張力50mN/mのフッ素樹脂フィルム3を得た。
【0119】
(フッ素樹脂フィルム4)
コロナ放電処理を行わなかった以外はフッ素樹脂フィルム1と同様に、厚さ25μm、第1面の濡れ張力22.6mN/m未満のフッ素樹脂フィルム4を得た。
【0120】
(フッ素樹脂フィルム5)
放電量を100W・min/mとした以外はフッ素樹脂フィルム1と同様に、厚さ25μm、第1面の濡れ張力70mN/mのフッ素樹脂フィルム5を得た。
【0121】
(フッ素樹脂フィルム6)
フッ素樹脂Bを使用した以外はフッ素樹脂フィルム3と同様に、厚さ25μm、第1面の濡れ張力50mN/mのフッ素樹脂フィルム6を得た。
【0122】
(フッ素樹脂フィルム7)
フッ素樹脂Cを使用した以外はフッ素樹脂フィルム3と同様に、厚さ25μm、第1面の濡れ張力50mN/mのフッ素樹脂フィルム7を得た。
【0123】
(フッ素樹脂フィルム8)
フッ素樹脂Dを使用した以外はフッ素樹脂フィルム3と同様に、厚さ25μm、第1面の濡れ張力50mN/mのフッ素樹脂フィルム8を得た。
【0124】
(フッ素樹脂フィルム9)
厚さを変更した以外はフッ素樹脂フィルム3と同様に、厚さ12.5μm、第1面の濡れ張力50mN/mのフッ素樹脂フィルム9を得た。
【0125】
(フッ素樹脂フィルム10)
両面を放電量30W・min/mでコロナ放電処理し、両面の濡れ張力を30mN/mとした以外はフッ素樹脂フィルム1と同様に、厚さ25μmのフッ素樹脂フィルム10を得た。
【0126】
(フッ素樹脂フィルム11)
フッ素樹脂フィルム4を、気圧20パスカル、二酸化炭素雰囲気下で110KHzの高周波電圧を印加し、放電電力密度300W・min/mで第1面のみプラズマ処理した。第1面の濡れ張力50mN/mのフッ素樹脂フィルム11を得た。
【0127】
(耐熱性基材1)
厚さ25μmのポリイミドフィルム(カネカ社商品名:ピクシオBP、熱可塑性ポリイミド層付き熱硬化性ポリイミド)を用意した。吸水率は1.3%であった。
【0128】
(耐熱性基材2)
厚さ25μmのポリイミドフィルム(宇部興産社商品名:ユーピレックスVT、熱可塑性ポリイミド層付き熱硬化性ポリイミド)を用意した。吸水率は1.4%であった。
【0129】
(耐熱性基材3)
厚さ25μmのポリイミドフィルム(宇部興産社商品名:ユーピレックスNVT、熱可塑性ポリイミド層付き熱硬化性ポリイミド)を用意した。吸水率は1.4%であった。
【0130】
(耐熱性基材4)
厚さ25μmの液晶ポリエステルフィルム(クラレ社商品名:CTZ-25KS、液晶ポリエステル)を用意した。吸水率は0.1%であった。
(耐熱性基材5)
厚さ25μmのポリイミドフィルム(宇部興産社商品名:ユーピレックスS、熱硬化性ポリイミド)に30W/(m・min)の放電量でコロナ放電処理したものを用意した。吸水率は1.4%であった。
【0131】
(耐熱性基材6)
厚さ25μmのポリイミドフィルム(宇部興産社商品名:ユーピレックスS、熱硬化性ポリイミド)に以下の条件で大気圧プラズマ処理をしたものを用意した。吸水率は1.4%であった。
・プラズマ処理条件:
・ガス種:アルゴンガス99.0atm%、窒素ガス0.5atm%、
水素ガス0.5atm%、・処理周波数:30kHz、
・気圧:102kPa、・放電電力密度:300W・min/m
【0132】
(耐熱性基材7)
厚さ25μmのポリイミドフィルム(宇部興産社商品名:ユーピレックスS、熱硬化性ポリイミド)に、気圧を102kPaの代わりに、20Paにした他は上記耐熱性基材6の場合と同じ条件で真空プラズマ処理をしたものを用意した。吸水率は1.4%であった。
【0133】
(耐熱性基材8)
厚さ25μmの液晶ポリエステルフィルム(クラレ社商品名:CTZ-25KS、液晶ポリエステル)に、上記耐熱性基材6の場合と同じ条件で真空プラズマ処理をしたものを用意した。吸水率は0.1%であった。
(耐熱性基材9)
厚さ25μmのポリイミドフィルム(カネカ社商品名:アピカルNPI、熱硬化性ポリイミド)を用意した。吸水率は1.7%であった。
【0134】
(金属箔1)
厚さ12μmの銅箔(福田金属箔粉工業社商品名:CF-T4X-SV、電解銅箔Rzjis 1.1μm)を用意した。
【0135】
〔例1〕
(第1工程)
図1に示す構成を有するロールラミネート装置を用いて、以下の条件で、耐熱性基材1(第1基材)の片面にフッ素樹脂フィルム1(第2基材)が積層された2層構造の積層体Iを製造し、シワ、カール、剥離、接着強度の評価を行った。結果を表1に示す。
一対のラミネートロール101(金属ロール)の表面温度(ラミネート温度)は20℃とした。加圧力は15kN/m、第1基材及び第2基材の搬送速度(ラミネート速度)は3m/分とした。第1基材にかかる張力は200Nとした。第2基材にかかる張力は20Nとした。
【0136】
(第2工程)
次いで、図1に示す構成を有するロールラミネート装置を用いて、以下の条件で、上記で得た積層体Iの第2基材側の面に金属箔1(第3基材)が積層された3層構造の積層体IIを製造し、シワ、剥離、接着強度の評価を行った。結果を表1に示す。
一対のラミネートロール101(金属ロール)の表面温度(ラミネート温度)は360℃とした。加圧力は5kN/m、積層体I及び第3基材の搬送速度(ラミネート速度)は1m/分とした。
【0137】
〔例2〕
第2基材として、フッ素樹脂フィルム1の代わりにフッ素樹脂フィルム2を使用した以外は例1と同様に積層体I及び積層体IIを製造し、評価を行った。結果を表1に示す。
【0138】
〔例3〕
第2基材として、フッ素樹脂フィルム1の代わりにフッ素樹脂フィルム3を使用した以外は例1と同様に積層体I及び積層体IIを製造し、評価を行った。結果を表1に示す。
【0139】
〔例4〕
第1工程において、ラミネート温度を80℃とし、第1基材にかかる張力を190Nとし、第2基材にかかる張力を13Nとした以外は例3と同様に積層体I及び積層体IIを製造し、評価を行った。結果を表1に示す。
【0140】
〔例5〕
第1工程において、ラミネート温度を100℃とし、第2基材にかかる張力を8Nとした以外は例3と同様に積層体I及び積層体IIを製造し、評価を行った。結果を表1に示す。
【0141】
〔例6〕
第1工程において、第2基材にかかる張力を30Nとした以外は例3と同様に積層体I及び積層体IIを製造し、評価を行った。結果を表1に示す。
【0142】
〔例7〕
第1工程において、第1基材にかかる張力を300Nとした以外は例3と同様に積層体I及び積層体IIを製造し、評価を行った。結果を表2に示す。
【0143】
〔例8〕
第1工程において、加圧力を2kN/mとした以外は例3と同様に積層体I及び積層体IIを製造し、評価を行った。結果を表2に示す。
【0144】
〔例9〕
第1工程において、加圧力を40kN/mとした以外は例3と同様に積層体I及び積層体IIを製造し、評価を行った。結果を表2に示す。
【0145】
〔例10〕
第1工程において、加圧力を110kN/mとした以外は例3と同様に積層体I及び積層体IIを製造し、評価を行った。結果を表2に示す。
【0146】
〔例11〕
第1基材として耐熱性基材1の代わりに金属箔1を使用し、第1工程において第1基材にかかる張力を1000Nとし、第3基材として金属箔1の代わりに耐熱性基材1を使用した以外は例3と同様に積層体I及び積層体IIを製造し、評価を行った。結果を表2に示す。
【0147】
〔例12〕
(第1工程)
図2に示す構成を有するロールラミネート装置を用いて、以下の条件で、耐熱性基材1(第1基材)の両面にフッ素樹脂フィルム3(第2基材)が積層された3層構造の積層体Iを製造し、シワ、カール、剥離、接着強度の評価を行った。結果を表2に示す。
一対のラミネートロール101(金属ロール)の表面温度(ラミネート温度)は20℃とした。加圧力は15kN/m、第1基材及び第2基材の搬送速度(ラミネート速度)は3m/分とした。第1基材にかかる張力は200Nとした。2つの第2基材にかかる張力はそれぞれ20Nとした。
【0148】
(第2工程)
次いで、図2に示す構成を有するロールラミネート装置を用いて、以下の条件で、上記で得た積層体Iの両面に金属箔1(第3基材)が積層された5層構造の積層体IIを製造し、シワ、剥離、接着強度の評価を行った。結果を表2に示す。
一対のラミネートロール101(金属ロール)の表面温度(ラミネート温度)は360℃とした。加圧力は5kN/m、積層体I及び第3基材の搬送速度(ラミネート速度)は1m/分とした。
【0149】
〔例13〕
第2基材として、フッ素樹脂フィルム3の代わりにフッ素樹脂フィルム6を使用した以外は例3と同様に積層体I及び積層体IIを製造し、評価を行った。結果を表3に示す。
【0150】
〔例14〕
第2基材として、フッ素樹脂フィルム3の代わりにフッ素樹脂フィルム7を使用した以外は例3と同様に積層体I及び積層体IIを製造し、評価を行った。結果を表3に示す。
【0151】
〔例15〕
第2基材として、フッ素樹脂フィルム3の代わりにフッ素樹脂フィルム8を使用した以外は例3と同様に積層体I及び積層体IIを製造し、評価を行った。結果を表3に示す。
【0152】
〔例16〕
第2基材として、フッ素樹脂フィルム3の代わりにフッ素樹脂フィルム9を使用し、第1工程において第2基材にかかる張力を10Nとした以外は例3と同様に積層体I及び積層体IIを製造し、評価を行った。結果を表3に示す。
【0153】
〔例17〕
第1基材として耐熱性基材1の代わりに耐熱性基材4を使用し、第1工程において第1基材にかかる張力を110Nとした以外は例3と同様に積層体I及び積層体IIを製造し、評価を行った。結果を表3に示す。
【0154】
〔例18〕
第1基材として耐熱性基材1の代わりに耐熱性基材2を使用した以外は例3と同様に積層体I及び積層体IIを製造し、評価を行った。結果を表4に示す。
【0155】
〔例19〕
第1基材として耐熱性基材1の代わりに耐熱性基材3を使用した以外は例3と同様に積層体I及び積層体IIを製造し、評価を行った。結果を表4に示す。
【0156】
〔例20〕
第2基材としてフッ素樹脂フィルム3の代わりにフッ素樹脂フィルム11を使用し、第2工程のラミネート温度を305℃とした以外は例3と同様に積層体I及び積層体IIを製造し、評価を行った。結果を表4に示す。
【0157】
〔例21〕
第1基材として耐熱性基材1の代わりに耐熱性基材4を、第2基材としてフッ素樹脂フィルム3の代わりにフッ素樹脂フィルム11を使用し、第2工程のラミネート温度を305℃とした以外は例3と同様に積層体I及び積層体IIを製造し、評価を行った。結果を表4に示す。
【0158】
〔例22〕
(第1工程)
図7に示す構成を有するダブルベルトプレス装置を用いて、以下の条件で、耐熱性基材2(第1基材)の両面にフッ素樹脂フィルム3(第2基材)が積層された2層構造の積層体Iを製造し、シワ、カール、剥離、接着強度の評価を行った。結果を表4に示す。
一対のベルト303a、303bの表面温度(ラミネート温度)は20℃とした。加圧力は15kN/m、第1基材及び第2基材の搬送速度(ラミネート速度)は3m/分とした。第1基材にかかる張力は200Nとした。第2基材にかかる張力は20Nとした。
【0159】
(第2工程)
次いで、図7に示す構成を有するダブルベルト装置を用いて、以下の条件で、上記で得た積層体Iの第2基材側の面に金属箔1(第3基材)が積層された3層構造の積層体IIを製造し、シワ、剥離、接着強度の評価を行った。結果を表4に示す。
一対のベルト303a、303bの表面温度(ラミネート温度)は360℃とした。加圧力は5kN/m、積層体I及び第3基材の搬送速度(ラミネート速度)は1m/分とした。
【0160】
〔例23〕
第2基材として、フッ素樹脂フィルム3の代わりにフッ素樹脂フィルム4を使用した以外は例3と同様に積層体I及び積層体IIを製造し、評価を行った。結果を表5に示す。
〔例24〕
第2基材として、フッ素樹脂フィルム3の代わりにフッ素樹脂フィルム5を使用した以外は例3と同様に積層体I及び積層体IIを製造し、評価を行った。結果を表5に示す。
【0161】
〔例25〕
第1工程において、ラミネート温度を120℃とした以外は例3と同様に積層体I及び積層体IIを製造し、評価を行った。結果を表5に示す。
〔例26〕
第2基材として、フッ素樹脂フィルム3の代わりにフッ素樹脂フィルム10を使用した以外は例3と同様に積層体I及び積層体IIを製造し評価を行った。結果を表5に示す。
【0162】
〔例27〕
第1基材として、耐熱性基材1の代わりに、耐熱性基材5を使用した以外は例1と同様に積層体I及び積層体IIを製造し、評価を行った。結果を表6に示す。
〔例28〕
第1基材として、耐熱性基材1の代わりに耐熱性基材6を使用した以外は例1と同様に積層体I及び積層体IIを製造し、評価を行った。結果を表6に示す。
【0163】
〔例29〕
第1基材として、耐熱性基材1の代わりに耐熱性基材7を使用した以外は例1と同様に積層体I及び積層体IIを製造し、評価を行った。結果を表6に示す。
〔例30〕
第2基材として、耐熱性基材1の代わりに耐熱性基材8を使用した以外は例1と同様に積層体I及び積層体IIを製造し、評価を行った。結果を表6に示す。
〔例31〕
第2基材として、耐熱性基材1の代わりに耐熱性基材9を使用した以外は例1と同様に積層体I及び積層体IIを製造し、評価を行った。結果を表6に示す。
【0164】
表1~6に、例1~31の第1工程で製造した積層体Iの構成及び製造条件、第2工程で製造した積層体IIの構成を示した。表1~6中、第1基材及び第2基材の弾性率、伸度、及び(第2基材の伸度-第1基材の伸度)は、それぞれ、ラミネート温度における値である。
【0165】
【表1】
【0166】
【表2】
【0167】
【表3】
【0168】
【表4】
【0169】
【表5】
【0170】
【表6】
【0171】
例1~22では、シワ及び層間剥離の発生が抑制された。また、積層体Iのカールが抑制された。例23では、第2基材の第1面の濡れ張力が30mN/m未満であるため、第1基材と第2基材との接着強度が低く、剥離の評価結果が不良であった。積層体Iの剥離部分は、第2工程でも消えず、そのまま積層体IIの剥離となったと考えられる。
例24では、第2基材の第1面の濡れ張力が60mN/m超であるため、第1基材と第2基材との接着強度が低く、剥離の評価結果が不良であった。積層体Iの剥離部分は、第2工程でも消えず、そのまま積層体IIの剥離となったと考えられる。第2基材の第1面は、コロナ放電処理が強すぎて、樹脂が分解した低分子量体が堆積し、これがWBL(Weak Boundary Layer)を形成して第1基材との接着を阻害したと考えられる。
例25では、ラミネート温度が100℃超であるため、第2基材にシワが発生し、カールの評価結果も不良であった。前記ラミネート温度では、第2基材の熱膨張により、シワが発生し、そのシワがラミネートロールに巻き込まれることで折れ跡のつくシワとなったと考えられる。また、ラミネート後、積層体Iの温度が下がるにつれて、強いカールとなったと考えられる。また、積層体Iに入ったシワ、及び強いカールにより、第2工程においてもシワが発生したと考えられる。
例26では、第2基材の第1面の濡れ張力と第2面の濡れ張力とが同じであるため、剥離の評価結果が不良であった。この例では、ラミネートロールと第2基材との密着性が、第1基材と第2基材との密着性に対して充分に高くなり、ラミネートロールから離れる際にロールに第2基材が部分的に貼りついてしまい、剥離になったと考えられる。積層体Iの剥離部分は、第2工程でも消えず、そのまま積層体IIの剥離となったと考えられる。
【0172】
例27~30では、積層体IIの層間の密着性が向上した。これは第1基材である耐熱性基材5~8に表面処理を施したため、第2工程後の第1基材と第2基材の化学的及び物理的結合が強固になったためと考えられる。例31では、吸水率が高めの耐熱性基材を使用したため、剥離の評価が可となった。これは、耐熱性基材の水分が第2工程時に揮発して、わずかな気泡が発生して積層体IIの層間に残ったためと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0173】
本発明により製造された積層体は、フレキシブルプリント基板の基材、ケーブルの電磁波シールドテープ、ラミネートタイプのリチウムイオン電池用袋、等に好適に用いることができる。
なお、2017年7月7日に出願された日本特許出願2017-133883号及び2017年10月2日に出願された日本特許出願2017-193094号の明細書、特許請求の範囲、図面、及び要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。
【符号の説明】
【0174】
10、10A:積層体(積層体I)、12:耐熱性基材層(第1基材)、14:第2基材、14a: 第1面、14b:第2面、16:金属箔層(第3基材)、20、20A:積層体(積層体II)、100、200:ロールラミネート装置、101:ラミネートロール、103:第1送出ロール、105:第2送出ロール、107:第3送出ロール
図1
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図7
図8